(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007590
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】光ケーブル探査方法及び探査システム
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109091
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西原 弘
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BD02
(57)【要約】
【課題】敷設されている複数の光ケーブルの中から特定の光ケーブルを容易に探査することを可能にする光ケーブル探査方法及び探査システムを提供する。
【解決手段】光ケーブル探査システムは、第1の装置と、第2の装置とを備える。第1の装置は、回転トルク発生部で回転トルクを発生し、伝達部で回転トルクを振動として複数の光ケーブルの中から選択された光ケーブルのテンションメンバの特定箇所に伝達する過程を備える。第2の装置は、選択された光ケーブルで発生する振動音を音取得部で検出し、検出した振動音を分析部でデジタル信号に変換し、デジタル信号のパルス周期及び振幅を算出する過程を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ケーブルの中から特定の光ケーブルを探査する際に用いられる光ケーブル探査システムで実行される方法であって、
第1の装置と、第2の装置とを備え、
前記第1の装置が、回転トルク発生部で回転トルクを発生し、伝達部で前記回転トルクを振動として複数の前記光ケーブルの中から選択された前記光ケーブルのテンションメンバの特定箇所に伝達する過程と、
前記第2の装置が、選択された前記光ケーブルで発生する振動音を音取得部で検出し、検出した前記振動音を分析部でデジタル信号に変換し、前記デジタル信号のパルス周期及び振幅を算出する過程と、
を備える光ケーブル探査方法。
【請求項2】
前記回転トルク発生部で発生する前記回転トルクによって前記伝達部で得られる前記振動のパルス周期を前記分析部に送信する過程をさらに備える、
請求項1に記載の光ケーブル探査方法。
【請求項3】
複数の光ケーブルの中から特定の光ケーブルを探査する際に用いられる光ケーブル探査システムであって、
第1の装置と、第2の装置とを備え、
前記第1の装置は、回転トルクを発生する発生部と、前記回転トルクを振動として複数の前記光ケーブルの中から選択された前記光ケーブルのテンションメンバに伝達する伝達部と、を有し、
前記第2の装置は、選択された前記光ケーブルで発生する振動音を検出する音取得部と、検出する前記振動音をデジタル信号に変換し、前記デジタル信号のパルス周期及び振幅を算出する分析部と、を有する、
光ケーブル探査システム。
【請求項4】
前記第1の装置は、前記発生部で発生する回転を制御する制御部をさらに有する、
請求項3に記載の光ケーブル探査システム。
【請求項5】
前記第2の装置は、前記分析部で算出する前記パルス周期及び前記振幅を波形として表示する表示部をさらに有する、
請求項4に記載の光ケーブル探査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光ケーブル探査方法及び探査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信用の光ケーブルは、敷設ルートに沿って設けられた管路、ダクトなどの内部に敷設されている。また、同一の敷設ルートに、多数の光ケーブルが敷設されることがある。光ケーブル敷設後の分岐工事や交換工事などの際には、作業者は機器を停止し、当該ケーブルを両端から引っ張り合い、わずかなケーブルの動きを感知することで、複数の光ケーブルの中から対象の光ケーブルを判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この判別方法は機器を停止する必要がある上、多大な時間と労力を要する。また、人手による作業によって対象の光ケーブルを判別するため、対象の光ケーブルの正確な判別が難しいことがある。敷設経路が複雑であったり敷設条数が多い場合には、対象ケーブルの判別が困難であり、誤って対象ではないケーブルを特定してしまう虞がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、機器を停止することなく敷設されている複数のケーブルの中から特定の光ケーブルを容易に探査することを可能にする光ケーブル探査方法及び探査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る光ケーブル探査システムは、第1の装置と、第2の装置とを備える。第1の装置は、回転トルク発生部で回転トルクを発生し、伝達部で回転トルクを振動として複数の光ケーブルの中から選択された光ケーブルのテンションメンバの特定箇所に伝達する過程を備える。第2の装置は、選択された光ケーブルで発生する振動音を音取得部で検出し、検出した振動音を分析部でデジタル信号に変換し、デジタル信号のパルス周期と振幅を算出する過程を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一つの実施形態の光ケーブル探査システムの構成の一例を示した図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の振動発生装置を示す説明図である。
【
図3】
図3は、振動発生装置の機能ブロックの一例を示した図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の分析装置を示す説明図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の分析装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、ケーブル探査処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
以下、添付図面を参照して、光ケーブル探査システム1の実施形態を詳細に説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。なお、本明細書では、序数は、部品や部材を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0009】
図1は、一つの実施形態の光ケーブル探査システム1の構成の一例を示した図である。
図1に示される光ケーブル探査システム1は、光ケーブルの分岐工事や交換工事などの際に、ビルディング内等に敷設されている複数の光ケーブルの中から対象の光ケーブル10を作業者が判別するためのシステムである。
【0010】
図1に示されるように、光ケーブル探査システム1は、一例として第1の制御盤13と第2の制御盤14と複数の光ケーブル10で構成されたシステムにおいて光ケーブルの探査の為に使用され、振動発生装置11と、分析装置12と、を備えている。なお、振動発生装置11については、
図1においてその一部である回転制御器115のみが図示されている。
【0011】
光ケーブル10は、光信号を伝播する通信用ケーブルである。各光ケーブル10の一端は第1の制御盤13に、他端は第2の制御盤14に接続される。第1の制御盤13と第2の制御盤14との間の通信は、複数の光ケーブル10を介して実行される。
【0012】
第1の制御盤13、第2の制御盤14は、それぞれ制御機器や電気回路、計器、スイッチ類などを一箇所に集中設備した装置である。第2の制御盤14は、第1の制御盤13とは離れた箇所に設置される。第1の制御盤13と第2の制御盤14とは、光ケーブル10を介して互いに通信する。
【0013】
振動発生装置11は、例えば第1の制御盤13側に設置され、複数の光ケーブル10の中から選択された光ケーブルの一端に対して振動を与えるための振動発生装置である。なお、
図1では振動発生装置11を第1の制御盤13側に設置した例を示した。これに対し、振動発生装置11を第2の制御盤14側に設置することもできる。振動発生装置11は、第1の装置の一例である。この振動発生装置11の構成については後で詳しく説明する。
【0014】
分析装置12は、第1の制御盤13と第2の制御盤14との間の任意の位置において、複数の光ケーブル10の中から選択された光ケーブルにおいて発生させた振動音を検出しその波形を分析する装置である。分析装置12は、各光ケーブル10から検出された振動音の波形と振動発生装置11が発生する振動の波形とに基づいて、振動発生装置11によって直接振動が与えられている光ケーブルを特定する。分析装置12は、第2の装置の一例である。この分析装置12の構成についても後で詳しく説明する。
【0015】
[振動発生装置11]
次に、振動発生装置11の構成について説明する。振動発生装置11は、回転トルクを発生させ、当該回転トルクを振動に変換して敷設されている光ケーブル10の一端に当該振動を伝達する装置である。
【0016】
図2は、本実施形態の振動発生装置11を示す説明図である。
図2に示した様に、振動発生装置11は、モータ110と、軸112と、カム114と、回転制御器115と、を有する。なお、振動発生装置11は、他の部品を有しても良い。振動発生装置11が有する具体的な機能については後述する(
図3参照)。
【0017】
なお、
図2に示した様に、光ケーブル10は、テンションメンバ100と、グラスファイバ(不図示)と、を有する。テンションメンバ100は、光ケーブル10の中心軸として構成されている。グラスファイバは、テンションメンバ100の周囲に束ねられている。
【0018】
作業者に選択された光ケーブル10のテンションメンバ100の一端は、第1の制御盤13の内面に対して通常は固定されているが、測定の際に外し自由端の状態とする。また、同様に、グラスファイバの一端は、第1の制御盤13の機器に接続されている。一方、作業者に選択されていない光ケーブル10のテンションメンバ100の一端は、第1の制御盤13の内面に対して固定されている。
【0019】
光ケーブル10のテンションメンバ100の他端は、第2の制御盤14の内面に対して固定されている。光ケーブル10のテンションメンバ100の他端は、例えばケーブル止めによって第2の制御盤14の内面に対して固定されているが、これに限られない。また、グラスファイバの他端は、第2の制御盤14の機器に接続されている。
【0020】
モータ110は、回転トルクを発生させる。モータ110は、例えば第1の制御盤13の内面に取付けられているマグネット130及びマグネット130に取付けられている伸縮金具132によって、第1の制御盤13に対して固定されている。この構成により、作業者がマグネット130の第1の制御盤13に対する固定位置を変えることによって、第1の制御盤13内におけるモータ110の取付位置は変更可能である。即ち、作業者は、光ケーブル10の位置に対応した位置にモータ110を設置することができる。
【0021】
モータ110には、回転制御器115が接続されている。モータ110は、回転トルク発生部の一例である。回転制御器115は、第1の制御盤13の外部に設置されているが、これに限られない。回転制御器115は、モータ110の回転を制御する。これにより、作業者は、モータ110の回転を任意の回転数に設定することができる。回転制御器115は、制御部の一例である。
【0022】
軸112は、モータ110の軸心に接続されている。モータ110が回転トルクを発生させると、軸112は、モータ110の軸心を回転中心として回転する。カム114は、略平板状に形成され、当該カム114の周縁部の一部が軸112の周縁部に接続されている。カム114は、モータ110が回転トルクを発生させると、モータ110の軸心を回転中心として、軸112と一体になって回転する。カム114は、伝達部の一例である。
【0023】
図3は、振動発生装置50の機能ブロックの一例を示した図である。
図3に示した様に、振動発生装置50は、回転トルク発生部502と、伝達部504と、制御部506とを備える。
【0024】
回転トルク発生部502は、モータ110の軸112を回転させることで、軸112に回転トルクを発生させる。モータ110が軸112を回転させる方向は、例えばモータ110に対して時計回りであるが、これに限られない。また、モータ110は、軸112の回転方向を一定の周期で変化させても良い。
【0025】
伝達部504は、軸112に発生した回転トルクをカム114に伝達する。さらに、伝達部504は、選択された光ケーブル10のテンションメンバ100に回転するカム114が接触することで、カム114の回転トルクを振動としてテンションメンバ100へ伝達する。
【0026】
制御部506は、モータ110の回転する向きや回転速度(回転数)を、作業者の指示通りに制御する。制御部506は、作業者から受ける指示の代わりに、あらかじめインプットされた内容に従ってモータ110の回転する向きや回転速度を制御することも可能である。
【0027】
テンションメンバ100に伝達された振動は、当該テンションメンバ100を伝い、選択された光ケーブル10上に接触しているマイク120に伝達される。
【0028】
[分析装置12]
次に、分析装置12の構成について説明する。分析装置12は、テンションメンバ100を伝って伝達された振動の音を検出し、その音の波形を分析し、表示する装置である。
【0029】
図4は、本実施形態の分析装置12を示す説明図である。
図4に示されるように、分析装置12は、マイク120と、パルス分析器122と、モニタ124と、を有する。
【0030】
マイク120は、カム114から選択された光ケーブル10に伝達された振動によって発生する振動音を検出する。マイク120は、例えば、単一指向性のダイナミック型マイクが使用されるが、これに限られない。マイク120は、音取得部の一例である。
【0031】
マイク120は、例えば、選択された光ケーブル10上において、第1の制御盤13内の一端部と、第2の制御盤14内の他端部と、の中間位置に接触させる。マイク120を接触させる位置はこれに限られず、選択された光ケーブル10上における作業者の指定する任意の位置で良い。
【0032】
パルス分析器122は、マイク120で取得する光ケーブル10の振動音を入力し、入力する振動音をデジタル信号に変換し、デジタル信号のパルス周期と振幅を算出する。パルス分析器122は、振動音のパルス周期と振幅以外の情報を算出してもよい。パルス分析器122は可搬タイプであり、作業者が指定する任意の位置に設置される。パルス分析器122は、後述するモニタ124を含む構成としても良い。
【0033】
モニタ124は、少なくともパルス分析器122が算出する振動音のパルス周期と振幅を波形として表示する。モニタ124に表示される振動音の波形は、パルス分析器122で算出するパルス波形を作業者が視認可能な形で表示される。モニタ124には、マイク120が検知する振動音の波形以外の情報が表示されてもよく、例えば振動音の周波数が数値で表示されてもよい。モニタ124は、表示部の一例である。
【0034】
次に、
図5を用いて、分析装置60の機能構成を説明する。
図5は、本実施形態の分析装置60の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、
図5の機能ブロック図は、光ケーブル探査システム1が、本発明の内容を実現するために必要な最小限の構成を示す。
【0035】
音取得部602は、選択された光ケーブル10のテンションメンバ100に伝播する振動音をマイク120により検知する。そして、検知した振動音は、アナログ信号に変換される。
【0036】
分析部604は、マイク120で変換されるアナログ信号をパルス分析器122によりサンプリングし、少なくとも振動音の周期及び振幅を算出する。分析部604は、振動音の周期及び振幅以外の情報を算出してもよい。
【0037】
表示部606は、分析部604で算出する振動音の周期及び振幅を波形としてモニタ124に表示する。モニタ124には、マイク120が取得する振動音の波形以外の情報が表示されてもよい。
【0038】
[ケーブル探査処理]
次に、光ケーブル探査システム1を用いたケーブル探査処理について説明する。ケーブル探査処理の概要は以下の様である。すなわち、作業者は、対象の光ケーブル10を判別するために、まず任意の光ケーブル10を一つ選択する。そして、選択された光ケーブル10の一端のテンションメンバ100の固定を外し、自由端にする。振動発生装置11は、振動を発生させ、当該振動を選択された光ケーブル10の一端に伝達する。
【0039】
選択された光ケーブル10の一端に伝達された振動は、当該光ケーブル10を伝い、選択された光ケーブル10上に接触されている分析装置12に到達する。分析装置12は、伝播した振動から発生する振動音を検知し、当該振動音を波形に変換する。作業者が変換された波形を認知し、当該波形を振動発生装置11で発生した振動の周期と照合することで、作業者は選択された光ケーブル10が特定しようとする対象の光ケーブル10か否かを判別する。
【0040】
次に、上記ケーブル探査処理における光ケーブル探査システム1の動作の流れについて、
図6を用いて説明する。
図6は、ケーブル探査処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図6における破線は、光ケーブル探査システム1の動作に対応する部分の一例である。また、以下においては、説明の便宜上第1の制御盤13側を上流側とし、第1の制御盤13側に対して第2の制御盤14側を下流側とする。
【0041】
まず、ステップS101において、上流側の作業者は、敷設されている複数の光ケーブル10の中から、特定の振動を与える対象の光ケーブル10を選択する。
【0042】
次に、ステップS102において、上流側の作業者は、第1の制御盤13に対して固定されている、対象の光ケーブル10のテンションメンバ100の一端を自由端の状態にする。ここで、自由端となったテンションメンバ100の一端は、カム114が回転した際にカム114の周縁部と接触する位置になるようにする。
【0043】
次に、ステップS103において、モータ110は、一定の向き及び回転数で、軸112及びカム114と共に回転する。すなわち、モータ110の回転により、軸112及びカム114は、回転トルクが発生する。モータ110が回転する向き及び回転数は、回転制御器115により制御される。モータ110が回転する向き及び回転数は一定でなくてもよく、時間経過とともに変化してもよい。
【0044】
次に、ステップS104において、回転するカム114の一部が、選択された光ケーブル10のテンションメンバ100の一端に接触する。そして、当該テンションメンバ100の一端は、回転するカム114から受ける運動エネルギーによって振動する。このとき、回転するカム114の回転数は、テンションメンバ100の一端の振動数と一致する。換言すると、カム114は、当該カム114の回転トルクを振動として選択された光ケーブル10のテンションメンバ100の一端に伝達する。ここで、軸112の中心軸の方向は、選択された光ケーブル10の中心軸の方向と略同一である。換言すると、軸112は、選択された光ケーブル10のテンションメンバ100と略同一の方向に伸びている。
【0045】
ステップS104において、カム114の回転トルクが選択された光ケーブル10のテンションメンバ100の一端に伝達され、テンションメンバ100の一端が振動すると、当該テンションメンバ100の一端では振動による振動音が発生する。そして、発生した振動音は、テンションメンバ100の一端を起点として当該テンションメンバ100を伝播する。
【0046】
次に、ステップS105において、マイク120は、選択された光ケーブル10のテンションメンバ100の一端で発生し伝播する振動音を検出し、電気信号(アナログ信号)に変換する。マイク120が振動音を検出する箇所は、選択された光ケーブル10上の任意の箇所であるが、本実施形態では、選択された光ケーブル10の一端と他端との中間点である。
【0047】
次に、ステップS106において、パルス分析器122は、マイク120によって変換される電気信号をサンプリングし、デジタル信号に変換する。そして、パルス分析器122は、変換したデジタル信号の周期及び振幅を算出する。
【0048】
そして、ステップS107において、モニタ124は、算出される振動音のデジタル信号の周期及び振幅を例えば波形として表示する。また、モニタ124には、RAM(Random Access Memory)が組み込まれ、モニタ124が振動音の周期及び振幅または波形の情報を記憶してもよい。
【0049】
次に、ステップS108において、下流側の作業者(典型的には第1の制御盤13と第2の制御盤14との中間付近に位置する作業者)はモニタ124に表示される振動音の波形から振動音のパルス周期を読み取る。そして、下流側の作業者は、読み取った振動音のパルス周期がステップS104で発生した振動のパルス周期と同等であるかを判定する。作業者が同等と判定した場合、下流側の作業者は、ステップS101で選択された光ケーブル10を対象の光ケーブル10と判定し、決定する(ステップS109)。また、振動の伝播により複数の光ケーブル10で同等のパルス周期の振動が検出された場合は、下流側の作業者は、振幅が最大となる光ケーブル10を対象ケーブルと判定する。
【0050】
一方、ステップS108において、下流側の作業者が読み取った振動音のパルス周期がステップS104で発生した振動のパルス周期と同等ではないと判定した場合、上流側の作業者は、ステップS101で選択されていない光ケーブル10を一つ選択する(ステップS110)。そして、下流側の作業者は、マイク120を他の光ケーブル10へとずらし、ステップS105乃至S110の処理を実行する。下流側の作業者は、ステップS104で発生した振動のパルス周期が検出される光ケーブル10が見つかるまでステップS105乃至S110の処理を繰り返し実行する。
【0051】
ステップS101からステップS110までの処理のうち、ステップS103からステップS107までの処理は、本実施形態の光ケーブル探査システム1によって実行される。ステップS101、ステップS102、及びステップS108乃至ステップS110の処理は、作業者によって実行される。
【0052】
以上の実施形態で実行される方法において、光ケーブル探査システム1は、振動発生装置11と、分析装置12とを備える。振動発生装置11は、モータ110で回転トルクを発生し、カム114で回転トルクを振動として複数の光ケーブル10の中から選択された光ケーブルのテンションメンバ100に伝達する過程と、分析装置12が、選択された光ケーブル10で発生する振動音をマイク120で検出し、検出した振動音をパルス分析器122でデジタル信号に変換し、デジタル信号のパルス周期と振幅を算出する過程と、を備える。
【0053】
上述の方法において、作業者は、分析装置12で算出される振動音のパルス周期が、振動発生装置11で発生する振動のパルス周期と同等かを判断する。これにより、作業者は、選択された光ケーブル10が対象の光ケーブルか否かを判別でき、ひいては特定の光ケーブル10を容易に探査することができる。
【0054】
また、本実施形態で実行される方法において、モータ110で発生する回転トルクによってカム114で発生する振動のパルス周期をパルス分析器122に送信する過程をさらに備える。
【0055】
上述の方法によれば、パルス分析器122が、カム114で発生する振動のパルス周期と、マイク120で検出した振動音から算出されるパルス周期とを照合することで、作業者は選択された光ケーブル10が対象の光ケーブルか否かをより正確に判別できる。
【0056】
また、本実施形態において、光ケーブル探査システム1は、振動発生装置11と、分析装置12とを備える。振動発生装置11は、回転トルクを発生するモータ110と、回転トルクを振動として複数の光ケーブル10の中から選択された光ケーブル10のテンションメンバ100に伝達するカム114と、を有する。分析装置12は、選択された光ケーブル10で発生する振動音を検出するマイク120と、検出する振動音をデジタル信号に変換し、デジタル信号のパルス周期と振幅を算出するパルス分析器122と、を有する。
【0057】
上述の光ケーブル探査システム1において、作業者は、分析装置12で算出されるパルス周期が、振動発生装置11で発生する振動のパルス周期と同等かを判断する。これにより、作業者は、選択された光ケーブル10が対象の光ケーブルか否かを判別でき、ひいては特定の光ケーブル10を容易に探査することができる。
【0058】
また、本実施形態において、振動発生装置11は、モータ110が発生させる回転を制御する回転制御器115をさらに有する。
【0059】
上述の構成によれば、回転制御器115がモータ110の回転を制御することで、モータ110はより様々なパターンの回転トルクを発生させることができる。これにより、作業者は、より様々なパターンの振動音を用いて対象の光ケーブルか否かをより正確に判別することができる。
【0060】
また、本実施形態では、分析装置12は、パルス分析器122で算出するパルス波形を表示するモニタ124をさらに有する。
【0061】
上述の構成によれば、作業者は、パルス分析器122で算出するパルス波形を視認することができる。これにより、作業者は、パルスの情報から選択された光ケーブル10が対象の光ケーブルか否かを自ら判別することができる。
【0062】
(変形例)
上記実施形態においては、下流側の作業者が、マイク120を設置する光ケーブル10を変更し、対象とする光ケーブル10を見つけるまでステップS105乃至S110の処理を繰り返し実行する場合を例とした。これに対し、複数の光ケーブル10のそれぞれに設置するマイク120を複数設け、パルス分析器122において、各マイク120から得られる振動音のうち、ステップS104のパルス周期と最も近い振動音が得られた光ケーブル10を自動的に選択するようにしてもよい。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 光ケーブル探査システム
10 光ケーブル
11 振動発生装置
12 分析装置
100 テンションメンバ
110 モータ
114 カム
115 回転制御器
120 マイク
122 パルス分析器
124 モニタ