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特開2025-7653半導体モジュール、半導体モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007653
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】半導体モジュール、半導体モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109194
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 公晴
(72)【発明者】
【氏名】大部 利春
(72)【発明者】
【氏名】伊東 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】市倉 優太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 尚威
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 和靖
(72)【発明者】
【氏名】丸野 広司
(72)【発明者】
【氏名】田多 伸光
(72)【発明者】
【氏名】田代 匠太
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 尚隆
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
(57)【要約】
【課題】半導体パッケージの出力端子とモジュールケースの天板との間で力が伝わりやすくする半導体モジュール、半導体モジュールの製造方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の半導体モジュールは、半導体チップパッケージと、モジュールケースと、を持つ。半導体チップパッケージは、モジュールケースの天板に接続される出力端子を持つ。出力端子と天板とは、規定の締結方向で締結力を付与されて互いに接続される。出力端子と天板との間には、締結力を付与する前において締結方向で隙間が形成されるとともに、隙間を目標隙間量に調整するシムが配置される。実施形態の半導体モジュールの製造方法は、半導体チップパッケージの出力端子とモジュールケースの天板との間に、隙間を調整するシムを配置した後、出力端子と天板とに締結力を付与して、出力端子と天板とを互いに接続する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップのコレクタ側およびエミッタ側の各々に金属電極を接合した半導体チップパッケージと、
前記半導体チップパッケージを収容するモジュールケースと、を備え、
前記半導体チップパッケージは、前記モジュールケースの天板に接続される出力端子を備え、
前記出力端子と前記天板とは、規定の締結方向で締結力を付与されて互いに接続され、
前記出力端子と前記天板との間には、締結力を付与する前において前記締結方向で隙間が形成されるとともに、前記隙間を目標隙間量に調整するシムが配置されている、半導体モジュール。
【請求項2】
前記シムは、導電性グリスを塗布した状態で、前記出力端子と前記天板との間に配置されている、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記出力端子と前記天板とは、前記締結方向に沿うボルトを用いて締結され、
前記ボルトは、前記シムを貫通するように配置されている、請求項1又は2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記モジュールケース内に複数の前記半導体チップパッケージが収容され、
前記シムの厚さは、前記モジュールケース内における各半導体チップパッケージの配置位置に応じて異なっている、請求項1又は2に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記出力端子は、前記モジュールケースのパッケージ搭載面に沿う第一の方向における、前記半導体チップパッケージの本体の一側面から突出し、さらに前記パッケージ搭載面に沿う方向でかつ前記第一の方向と交差する第二の方向で、前記一側面の中央位置よりも一側にずれて配置され、
前記モジュールケース内に複数の前記半導体チップパッケージが収容され、
複数の前記半導体チップパッケージは、前記パッケージ搭載面に沿う方向で、互いに一側面同士を対向させて配置された半導体チップパッケージ対を構成している、請求項1又は2に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記出力端子は、前記半導体チップパッケージの前記本体の一側面に沿って前記天板側に延び、前記本体の上面よりも上方において、平面視で前記本体と反対側に突出するように延びている、請求項5に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
半導体チップパッケージの出力端子とモジュールケースの天板との間に、規定の締結方向の隙間を設定するとともに、前記隙間を目標隙間量に調整するシムを配置した後、前記出力端子と前記天板とに締結力を付与して、前記出力端子と前記天板とを互いに接続する、半導体モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記モジュールケース内に複数の前記半導体チップパッケージが収容され、
前記シムは、厚さの異なる複数種が設定され、
前記シムの厚さは、前記モジュールケース内における各半導体チップパッケージの配置位置に応じて異ならせる、請求項7に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記モジュールケース内に複数の前記半導体チップパッケージが収容され、
前記シムは、厚さの異なる複数種が設定され、
前記シムの厚さは、各半導体チップパッケージの前記出力端子の実測高さに応じて異ならせる、請求項7又は8に記載の半導体モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体モジュール、半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、耐圧数kVでMW級の電力変換器を構築するためには、半導体素子の電流容量を大きくすることが求められる。そのために、複数の半導体素子を並列実装した半導体モジュールが提案されている。高圧大電流を許容するためには、半導体素子の故障時に半導体モジュールの運転継続性や安全性を確保することが必要である。
【0003】
大容量変換機向け半導体モジュールの防爆設計として、半導体パッケージの出力端子をモジュールケースの天板に接続することがある。この構成では、半導体素子の故障時に、出力端子が天板を押し上げて上方向に変形させ、並列配置された他の半導体パッケージを短絡故障(伴連れ短絡故障)させる。しかし、出力端子と天板との接続部の構造や公差によっては、伴連れ短絡故障発生確率が低くなる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6860453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、半導体パッケージの出力端子とモジュールケースの天板との間で力が伝わりやすくする半導体モジュール、半導体モジュールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体モジュールは、半導体チップパッケージと、モジュールケースと、を持つ。半導体チップパッケージは、モジュールケースの天板に接続される出力端子を持つ。出力端子と天板とは、規定の締結方向で締結力を付与されて互いに接続される。出力端子と天板との間には、締結力を付与する前において締結方向で隙間が形成されるとともに、隙間を目標隙間量に調整するシムが配置される。実施形態の半導体モジュールの製造方法は、半導体チップパッケージの出力端子とモジュールケースの天板との間に、隙間を調整するシムを配置した後、出力端子と天板とに締結力を付与して、出力端子と天板とを互いに接続する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の半導体モジュールの要部を示す正面図。
図2】上記半導体モジュールにおける複数の半導体チップパッケージの配置を示す平面図。
図3A】上記半導体モジュールの出力端子とモジュールケースの天板との間に目標隙間量を設けた状態を示す相当する正面図。
図3B図3Aの状態から出力端子と天板とを締結した状態を示す正面図。
図4】上記モジュールケースの角位置にある半導体チップパッケージにおいて、出力端子と天板とを締結した際の、トルク倍率とチップ発生応力倍率との相関を示すグラフ。
図5】上記半導体チップパッケージのチップ応力増加倍率と短絡故障発生確率との相関を示すグラフ。
図6】上記モジュールケースの中心位置にある半導体チップパッケージにおいて、出力端子と天板とを締結した際の、トルク倍率とチップ発生応力倍率との相関を示すグラフ。
図7】上記天板の各部の隙間量を一定にしてこれら各部に締結力を付与した場合の、天板各部の位置と変位量との相関を示すグラフ。
図8】上記半導体モジュールにおける複数の半導体チップパッケージの位置に応じた目標隙間量を示す平面図。
図9】上記半導体モジュールにおける複数の半導体チップパッケージの配置の第一変形例を示す平面図。
図10】上記半導体モジュールにおける複数の半導体チップパッケージの配置の第一変形例を示す正面図。
図11】上記半導体モジュールにおける複数の半導体チップパッケージの配置の第二変形例を示す平面図。
図12】上記半導体モジュールにおける複数の半導体チップパッケージの配置の第二変形例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の半導体モジュール1を、図面を参照して説明する。なお、同一の又は対応する構成要素には同一の符号を付して複数回の説明を省略する場合がある。
【0009】
(半導体モジュール1)
図1は、実施形態の半導体モジュール1の要部を示す正面図である。図2は、半導体モジュール1における複数の半導体チップパッケージ10の配置を示す平面図である。
実施形態の半導体モジュール1は、半導体素子(半導体チップ)2を含む半導体チップパッケージ10を、モジュールケース5内に複数収容した構成である。半導体モジュール1は、複数の半導体チップパッケージ10と、複数の半導体チップパッケージ10を収容するモジュールケース5と、を備えている。
【0010】
実施形態の半導体モジュール1は、MW級等の大容量電力変換器向けの半導体装置である。半導体モジュール1は、IGBT等の半導体素子2を含む半導体チップパッケージ10を複数並列に備えて電流量を確保している。半導体モジュール1は、モジュールケース5内に複数の半導体チップパッケージ10を格子状に配置している。例えば、半導体モジュール1は、設備内の水平な床面(設置場所)Gに設置される。半導体モジュール1は、モジュールケース5の下面を床面Gと平行にして設置される。
【0011】
図中矢印Zは、半導体モジュール1を設置場所Gに設置した際の上下方向(鉛直方向)を示す。矢印Z方向は、設置場所Gの法線方向であり、設置場所Gが傾斜していれば矢印Z方向も傾斜する。以下の説明における上下、前後、左右の向きは、特に記載が無ければ、半導体モジュール1を設置場所Gに設置した状態の向きと同一とする。図中矢印Yは前後方向、図中矢印Xは左右方向をそれぞれ示す。
【0012】
また、図中符号6はモジュールケース5の底部を構成する冷却器、符号18は半導体チップパッケージ10を封止する絶縁性封止材、符号11は半導体チップパッケージ10の金属ケース、符号8はモジュールケース5の天板、符号9はモジュールケース5の支柱(側壁)、符号20は半導体チップ2のエミッタ電極3にスペーサ20aを介して接合されるエミッタ用導体、符号30は半導体チップ2のコレクタ電極4に接合されるコレクタ用導体、符号35は冷却器6に突設されて半導体チップパッケージ10のコレクタ用導体30に接合される凸部、をそれぞれ示す。
【0013】
(半導体チップパッケージ10)
図1に示すように、半導体チップパッケージ10は、例えば単一の半導体素子2と、半導体素子2を収容して覆う金属ケース11と、金属ケース11の内側で半導体素子2の表面(上面)のエミッタ電極3に一端側が接続され、一端側から他端側に向けて延び、他端側が金属ケース11の外側に突出するエミッタ用導体(金属電極)20と、半導体素子2の裏面(下面)のコレクタ電極4に接続されるコレクタ用導体(金属電極)30と、を備えている。
【0014】
半導体素子2は、エミッタ電極3を上方に向けるとともに、コレクタ電極4を下方に向けて水平に配置されている。
半導体素子2のエミッタ電極3側には、エミッタ用導体20が配置されている。エミッタ電極3には、スペーサ20aを介して、エミッタ用導体20が接続されている。スペーサ20aは、半田によりエミッタ電極3およびにエミッタ用導体20にそれぞれ接合されている。スペーサ20aは、エミッタ用導体20の一部として一体形成されてもよい。エミッタ用導体20は、金属ケース11の外側に突出し、モジュールケース5の天板8の下面8aに通電可能に接続される。モジュールケース5の天板8は、半導体モジュール1のエミッタ電極となる。
【0015】
半導体素子2のコレクタ電極4側には、コレクタ用導体30が配置されている。コレクタ用導体30には、冷却器6の凸部35が通電可能に接続されている。コレクタ用導体30および凸部35は、例えば上下方向に沿うボルトを用いた締結等によって接続されている。冷却器6は、半導体チップパッケージ10のコレクタ側に配置され、モジュールケース5の底部を構成している。冷却器6は、半導体モジュール1のコレクタ電極となる。
【0016】
半導体チップ2は、金属ケース11に収納されている。金属ケース11内に配置された構成は、金属ケース11内に封入された絶縁性封止材18によって封止されている。絶縁性封止材18は、金属ケース11の外側も被覆している。金属ケース11およびその内側に配置された構成、ならびに金属ケース11の内外に設けられた絶縁封止材18を含んで、半導体チップパッケージ10の本体10cと称する。
【0017】
金属ケース11は、半導体チップ2と平行に配置される上下壁12,13と、上下壁12,13の例えば左右方向一側(図中左側)の端部間に渡る側壁14と、を備えている。金属ケース11は、上下壁12,13を水平にして配置されている。金属ケース11は、側壁14を例えば前後方向に沿わせて配置されている。金属ケース11は、例えばアルミ合金等の金属で構成されている。
【0018】
金属ケース11は、側壁9と対向する部位を側部開口部15とし、側部開口部15に形成された開口を通じて、エミッタ用導体20を金属ケース11の内側から外側へ引き出し可能とする。図中符号10dは半導体チップパッケージ10の本体10cにおけるエミッタ用導体20が引き出される側の側面(右側面)を示す。
【0019】
エミッタ用導体20は、金属ケース11の内側から外側(図では右方)へ左右方向に沿って直線状に延びる基部21と、金属ケース11の外側で基部21の先端側から上方に向けて屈曲し、上下方向に沿って直線状に延びる縦延出部22と、縦延出部22の先端側から右方(平面視で半導体チップパッケージ10の本体10cと反対側)に向けて屈曲し、左右方向に沿って直線状に延びる横延出部23と、を一体に備えている。横延出部23は、全体が半導体チップパッケージ10の本体10cの上面(本体上面10e)よりも上方に位置している。横延出部23は、モジュールケース5の天板8に、上下方向に沿うボルト24を用いた締結によって接続されている。
【0020】
金属ケース11は、下壁13に下部開口部(第二開口部)16を有し、下部開口部16に形成された開口を通じて、コレクタ用導体30の下面を金属ケース11の外側に露出可能とする。下部開口部16が形成される部位には、絶縁封止材18が設けられていない。コレクタ用導体30は、金属ケース11の内側に配置されるが、下部開口部16を通じて、冷却器6の凸部35と接続可能である。
【0021】
すなわち、半導体チップパッケージ10は、冷却器6のパッケージ搭載面6bに上下方向で対向する下部に、冷却器6の凸部35を挿入可能とするパッケージ開口部10bを備えている。パッケージ開口部10bは、冷却器6の凸部35を、半導体チップパッケージ10の内部に位置する半導体チップ2のコレクタ側(コレクタ用導体30)に接合可能とする。冷却器6の凸部35を半導体チップパッケージ10の内部に接合した後、冷却器6と半導体チップパッケージ10とは、第二絶縁性封止材18aにより絶縁される。
【0022】
(モジュールケース5)
図1に示すように、モジュールケース5は、冷却器6と、側壁9と、天板8と、を備えている。
冷却器6は、水平な上下面を有し、例えば冷媒を流す冷媒路を内蔵している。冷却器6の上面23aは、複数の半導体チップパッケージ10を搭載するパッケージ搭載面6bを構成している。パッケージ搭載面6bの外周側には、上下方向に沿って側壁9が設けられている。側壁9は、例えば絶縁材料により形成されている。側壁9は、上下方向から見て、パッケージ搭載面6bの外周を囲うように連続して設けられている。側壁9は、上下方向から見て、パッケージ搭載面6bの外周の全周に渡って設けられている。冷却器6および側壁9は、上方に開放するケース本体5aを形成している。側壁9の上端部は、ケース本体5aの上端開口部5bを形成している。上端開口部5bに形成された開口は、水平な天板8によって閉塞されている。天板8は、上下方向から見て、冷却器6と重なるように設けられている。天板8は、上下方向から見た外周部が、側壁9により支持されている。冷却器6、側壁9および天板8は、例えば上下方向に沿うボルトを用いた締結等によって結合されている。
【0023】
(冷却器6)
図1を参照し、冷却器6は、熱伝導性(熱伝導率)および導電性(導電率)の高いアルミニウム合金等の金属材料で形成された冷却器本体6aを有している。冷却器本体6aは、水平な上面6bを形成し、この上面6bをパッケージ搭載面6bとしている。冷却器本体6aは、パッケージ搭載面6bから部分的に上方に突出する複数の凸部35を備えている。複数の凸部35は、モジュールケース5内に収容する複数の半導体チップパッケージ10と同数に設けられている。各凸部35は、対応する半導体チップパッケージ10の配置位置にそれぞれ設けられている。
【0024】
各凸部35は、冷却器本体6aと同一材料で一体形成されている。各凸部35は、パッケージ搭載面6bにおける水平な平面部から上方に断面一定で突出している。各凸部35は、コレクタ用導体30を兼ねている。各凸部35は、対応する半導体チップパッケージ10のコレクタ側に形成されたパッケージ開口部10bに、下方から挿入される。各凸部35は、対応する半導体チップパッケージ10のコレクタ側にそれぞれ接続されている。
【0025】
図2は、冷却器6を上下方向(パッケージ搭載面6bの法線方向)から見た平面図である。
パッケージ搭載面6bには、複数の半導体チップパッケージ10が前後左右に並んで配置されている。複数の半導体チップパッケージ10は、前後方向および左右方向にそれぞれ間隔を空けて並んでいる。
【0026】
図3Aは、半導体チップパッケージ10の出力端子(エミッタ用導体20)とモジュールケース5の天板8とをボルト締結する前の状態を示す正面図、図3Bは、図3Aの状態から出力端子20と天板8とをボルト締結した後の状態を示す正面図である。
【0027】
図3Aを参照し、天板8と出力端子20との間には、シム(金属薄板材)25が配置されている。シム25は、その両面(天板8および出力端子20の各々との接触面)に、導電性グリス26が塗布されている。
半導体チップパッケージ10をパッケージ搭載面6bに配置したとき、天板8の下面8aと出力端子20の上面(横延出部23の上面23a)との間には、上下方向の隙間S1が空く設定とされている。この隙間S1を目標となる隙間量(目標隙間量)S2に調整するために、厚さ違いの金属薄板材25を複数種類用意し、隙間S1に応じて選択可能としている。
【0028】
図3Bを参照し、出力端子20と天板8とは、上下方向に沿うボルト24により締結されている。半導体チップパッケージは、冷却器6に対して固定されている。この半導体チップパッケージの出力端子20に天板8を締結することで、天板8の締結部周辺がボルト24の締結力によって目標隙間量S2だけ下方に撓む。この撓みによって、天板8に応力が発生し、この応力が、出力端子20ひいては半導体チップパッケージに入力される。天板8の締結部では、ボルト24がシム25を貫通するように配置され、ボルト24の締結力によってシム25を確実に挟圧する。
【0029】
(作用)
出力端子20と天板8との接続部に複数の部品を配置する構造では、当該接続部の組み立ての複雑性が懸念される。実施形態の接続部の構造では、半導体チップパッケージ10毎の出力端子20の高さのばらつきを吸収するために、全ての出力端子20の上面23aの高さを計測し、その高さに応じたシム(金属薄板材)25を設置している。各半導体チップパッケージに適した厚さのシム25を選定し、各半導体チップパッケージ10の配置位置に応じた目標隙間量S2を設定することで、天板8の発生応力の均等化が図られる。
【0030】
天板8とシム25との間、および出力端子20とシム25との間に、それぞれ導電性グリス26を塗布することで、接触電気抵抗を低下させるとともに、天板8または出力端子20にシム25を仮止めすることができる。
その際、天板8とシム25との間に隙間S1を設けるように設置する。これにより、ボルト24で締結すると、出力端子20を引き上げ半導体チップ2にあらかじめ応力を発生させる。
【0031】
図4は、モジュールケース5の角位置にある半導体チップパッケージ10において、出力端子20と天板8との間に目標隙間量S2を設けた状態から出力端子20と天板8とを締結した際の、トルク倍率とチップ発生応力倍率との関係を示す図である。
図4の横軸のトルク倍率とは、ボルト24の規定の締付トルクに対する実際のトルクの割合を示す。図4の縦軸のチップ発生応力倍率とは、ボルト24を締め込んだ際に半導体チップ2に発生する応力の発生倍率を示す。
ボルト24の軸力(トルク)を上げていくと、徐々にチップ発生応力が大きくなる。天板8と金属薄板材25の間の隙間が0に近づくにつれ、チップ発生応力は一定になる。このときのチップ応力発生倍率を「1」とする。
【0032】
図5は、チップ応力増加倍率と短絡故障発生確率との関係を示す図である。
チップ応力増加倍率は、半導体素子2にクラックが発生する応力を「1」とした場合の応力増加倍率である。半導体素子2に発生する応力が基準値「1」より小さいとクラックが発生しない。半導体素子2に発生する応力が基準値「1」を超えて大きいほどクラックが発生しやすい。例えば、図5に示す特性を利用して、半導体モジュール1内に並列した半導体素子2を伴連れ短絡故障させる。例えば、初期応力が基準値「1」を超えず、かつ、初期応力と追加応力との合計が基準値「1」を超えるように設計する。これにより、通常時は短絡故障を起こさず、何れかの半導体チップ2の故障時には他の半導体チップ2の伴連れ短絡故障を起こすことができる。例えば、図4のグラフを参照し、ボルト24の締結トルクによる初期応力が基準値「1」を超えないように、目標隙間量S2およびトルクを設定する。
【0033】
図6は、モジュールケース5のパッケージ搭載面6bの中心位置にある半導体チップパッケージ10において、出力端子20と天板8との間に目標隙間量S2を設けた状態から出力端子20と天板8とを締結した際の、トルク倍率とチップ発生応力倍率との関係を示す図である。
【0034】
天板8と金属薄板材25の間の隙間が0に近づくにつれ、チップ発生応力は一定になる。このときのチップ応力発生倍率は、モジュールケース5の角位置にある半導体チップパッケージ10では「1」であるが、モジュールケース5の中心位置にある半導体チップパッケージ10では半分程度である。
【0035】
モジュールケース5の角位置では天板8が支柱9(側壁9)に近く、撓みに対する発生応力が大きいため、半導体チップパッケージ10に発生する応力も大きくなる。モジュールケース5の中心位置では天板8が支柱9(側壁9)から遠く、撓みに対する発生応力が相対的に小さいため、半導体チップパッケージ10に発生する応力も相対的に小さくなる。すなわち、半導体モジュール1内の位置により半導体チップ2に発生する応力にばらつきが出る。
【0036】
目標隙間量S2を一定とした場合、例えばモジュールケース5の角位置にある半導体チップパッケージ10の目標隙間量S2に合わせると、モジュールケース5の中心位置にある半導体チップパッケージ10では発生応力が低下し、伴連れ短絡故障を起こし難くなる。例えばモジュールケース5の中心位置にある半導体チップパッケージ10の目標隙間量S2に合わせると、モジュールケース5の角位置にある半導体チップパッケージ10では半導体素子2にクラックが発生しやすくなる。
【0037】
実施形態では、各半導体チップパッケージ10の半導体素子2に発生する応力を均等化するために、モジュールケース5内の位置によって天板8の撓みすなわち目標隙間量S2を異ならせている。実施形態では、厚さ違いの金属薄板材25を複数種類用意し、天板8と出力端子20との間の隙間S1に応じて選択可能としている。
【0038】
図7は、天板8の各部に対応する隙間量S2を一定としてこれらの各部にボルト24による締結力を付与した場合の、天板8各部の位置と変形量との関係を示す図である。
【0039】
図7の横軸は、半導体モジュール1内の半導体チップパッケージ10の位置を示す。パッケージ搭載面6bに沿う第一の方向で、位置「0」および位置「4」は支柱9(側壁9)の位置(半導体モジュール1の角位置に対応)となり、位置「2」は第一の方向の中央位置(半導体モジュール1の中心位置に対応)となる。
図7の縦軸は、側壁9の上端高さを「1」とした場合の天板8の上下方向の変位量率(変形率)を示す。
【0040】
図7に示すように、天板8は、側壁9から離れるほど変形しやすくなり、チップ発生応力を低下させる。伴連れ短絡故障を起こしやすくするためには、チップ発生応力を大きくする必要がある。
【0041】
図8は、半導体モジュール1内の半導体チップパッケージ10の位置に応じた目標隙間量S2を示す図である。
図7で説明したように、天板8は、側壁9に近いほど変形し難く、チップ発生応力が大きくなりやすい。このため、側壁9に近い半導体チップパッケージ10X,10Yの目標隙間量S2は、半導体モジュール1の中心に近い半導体チップパッケージ10Zの目標隙間量S2よりも、低い値に設定される。特に、側壁9の角部に近い半導体チップパッケージ10Xの目標隙間量S2は、側壁9の中央部に近い半導体チップパッケージ10Yの目標隙間量S2よりも低い値に設定される。天板8は、側壁9から離れるほど変形しやすくなるので、半導体モジュール1の中心に近い半導体チップパッケージ10Zの目標隙間量S2は、側壁9に近い半導体チップパッケージ10X,10Yの目標隙間量S2よりも、高い値に設定される。これにより、半導体モジュール1の全ての半導体チップパッケージ10に一定のチップ発生応力を発生させることが可能である。
【0042】
実施形態の半導体モジュール1によれば、
複数の半導体チップパッケージ10の締結部における各々の目標隙間量S2を管理することで、各半導体チップパッケージ10内の半導体チップ2にボルト締結によって規定の応力を発生させる。これにより、各半導体チップパッケージ10に短絡故障(伴連れ短絡故障)を発生させやすくすることができる。
半導体モジュール1内の各半導体チップパッケージ10の配置位置に応じて異なった目標隙間量S2を決定することで、すべての半導体チップ2に同等の応力値を発生させる。これにより、伴連れ短絡故障が発生する半導体チップパッケージ10の確率を増やすことができる。
【0043】
(変形例1)
図9図10は、半導体モジュール1内の半導体チップパッケージ10の配置の第一変形例を示す。
出力端子20は、モジュールケース5のパッケージ搭載面6bに沿う第一の方向(例えば左右方向)における、半導体チップパッケージ10の本体10cの一側面10d(図中左側から1列目および3列目に並ぶ半導体チップパッケージでは右側面、2列目および4列目に並ぶ半導体チップパッケージでは左側面)から本体10c外側に突出する。出力端子20は、一側面10dから本体10c外側に突出する。出力端子20は、パッケージ搭載面6bに沿う方向でかつ第一の方向と交差する第二の方向(例えば前後方向)において、一側面10dの中央位置c1よりも一側に片寄って配置されている。
【0044】
複数の半導体チップパッケージ10は、半導体チップパッケージ対10fを構成している。半導体チップパッケージ対10fは、パッケージ搭載面6bに沿う方向で、互いに一側面10d同士を対向させている。半導体チップパッケージ対10fは、各半導体チップパッケージ10の間で出力端子20を互い違いに配置している。このため、出力端子20同士を互いに突き当てるように配置する場合と比べて、一対の半導体チップパッケージ10の本体10c同士を接近させることが可能である。
【0045】
この変形例で例示するように、半導体チップパッケージ10の目標隙間量S2は、モジュールケース5の角部から徐々に高い値に設定される構成に限らない。例えば、パッケージ搭載面6bに沿う一方向(図では前後方向)で、外側から内側に向けて徐々に高い値に設定される構成としてもよい。
【0046】
(変形例2)
図11図12は、半導体モジュール1内の半導体チップパッケージ10の配置の第二変形例を示す。
出力端子20は、天板8との接続部を形成する横延出部23が最も本体10c外側に突出している。横延出部23は、本体10cよりも上方に位置している。よって横延出部23が互い違いに配置されていれば、横延出部23を平面視で本体10cとオーバーラップするように配置することが可能である。第二変形例の半導体チップパッケージ対10fでは、一対の半導体チップパッケージ10の本体10c同士をさらに接近させることが可能である。
【0047】
第二変形例でも第一変形例と同様、パッケージ搭載面6bに沿う一方向(図では前後方向)で、外側から内側に向けて徐々に高い値に設定される構成である。
【0048】
以上説明したように、実施形態の半導体モジュール1は、半導体チップ2のコレクタ側およびエミッタ側の各々に金属電極20,30を接合した半導体チップパッケージ10と、半導体チップパッケージ10を収容するモジュールケース5と、を備え、半導体チップパッケージ10は、モジュールケース5の天板8に接続される出力端子20を備え、出力端子20と天板8とは、規定の締結方向で締結力を付与されて互いに接続され、出力端子20と天板8との間には、締結力を付与する前において締結方向で隙間S1が形成されるとともに、隙間S1を目標隙間量S2に調整するシム25が配置されている。
【0049】
この構成によれば、半導体チップパッケージ10の出力端子20とモジュールケース5の天板8とを規定の締結方向の締結力によって接続する半導体モジュール1において、締結力を付与する前の出力端子20と天板8との間には、締結方向で隙間S1を有するとともに、隙間S1を調整するシム25が挟み込まれる。適宜の厚さのシム25を用いることで、出力端子20と天板8との間の締結前の隙間S1を規定の値(目標隙間量S2)に調整することができる。締結前の隙間S1を規定値に調整することで、出力端子20と天板8とを締結した際、天板8に規定の撓みを発生させることができる。これにより、出力端子20から天板8への入力、および天板8から出力端子20への入力の何れも制御しやすくなり、出力端子20と天板8との間で安定して力を伝えることができる。その結果、半導体素子2の故障時、伴連れ短絡故障を発生させやすくすることができる。
【0050】
実施形態の半導体モジュール1において、シム25は、導電性グリス26を塗布した状態で、出力端子20と天板8との間に配置されている。
この構成によれば、導電性グリス26によって、出力端子20と天板8との間の導電性を確保するとともに、出力端子20又は天板8にシム25を付着させることで、シム25を組み付けやすくすることができる。
【0051】
実施形態の半導体モジュール1において、出力端子20と天板8とは、締結方向に沿うボルト24を用いて締結され、ボルト24は、シム25を貫通するように配置されている。
この構成によれば、出力端子20と天板8とを締結するボルト24がシム25を貫通することで、シム25を組み付けやすく、かつシム25に対して確実に締結力を付与し、天板8に規定の撓みを発生させることができる。
【0052】
実施形態の半導体モジュール1において、モジュールケース5内に複数の半導体チップパッケージ10が収容され、シム25の厚さは、モジュールケース5内における各半導体チップパッケージ10の配置位置に応じて異なっている。
この構成によれば、モジュールケース5内における各半導体チップパッケージ10の配置位置に応じてシム25の厚さを異ならせることで、天板8の位置を考慮して、出力端子20と天板8との間の締結前の隙間S1を規定の値に調整することができる。例えばモジュールケース5における天板8を支持する側壁9に近い位置と側壁9から離れた位置とでは、天板8の撓みに対する応力の大きさが異なる。モジュールケース5の位置に応じて出力端子20と天板8との間の締結前の隙間S1を調整することで、天板8の発生応力の均等化を図ることができる。締結前の隙間S1がシム25無しで規定値となる半導体チップパッケージ10においては、シム25を配置しなくてもよい。すなわち、複数の半導体チップパッケージ10の少なくとも一つにシム25を配置する構成であればよい。
【0053】
実施形態の半導体モジュール1において、出力端子20は、モジュールケース5のパッケージ搭載面6bに沿う第一の方向における、半導体チップパッケージ10の本体10cの一側面10dから突出し、さらにパッケージ搭載面6bに沿う方向でかつ第一の方向と交差する第二の方向で、一側面10dの中央位置c1よりも一側にずれて配置され、モジュールケース5内に複数の半導体チップパッケージ10が収容され、複数の半導体チップパッケージ10は、パッケージ搭載面6bに沿う方向で、互いに一側面10d同士を対向させて配置された半導体チップパッケージ対10fを構成している。
この構成によれば、出力端子20が第一の方向の一側面10dから突出しさらに一側面10dの中央位置c1よりも第二の方向一側にずれて配置され、一対の半導体チップパッケージ10が一側面10d同士を対向させて半導体チップパッケージ対10fを構成することで、各半導体チップパッケージ10の間で出力端子20が互い違いに配置される。このため、各半導体チップパッケージ10の出力端子20同士が突き当たるように配置される場合と比べて、一対の半導体チップパッケージ10の本体10c同士を接近させることができ、半導体チップパッケージ対10fをコンパクトに配置し、半導体モジュール1全体の小型化を図ることができる。
【0054】
実施形態の半導体モジュール1において、出力端子20は、半導体チップパッケージ10の本体10cの一側面10dに沿って天板8側に延び、本体上面10eよりも上方において、平面視で本体10cと反対側に突出するように延びている。
この構成によれば、第一の方向の側面10dから突出しかつ第二の方向の中央位置c1よりも一側にずれた出力端子20が、本体上面10eよりも上方において平面視で本体10cと反対側に突出するように延びることで、各出力端子20が第二の方向で互い違いに配置され、かつ本体上面10eに配置される。このため、一対の半導体チップパッケージ10の本体10c同士をさらに接近させることができ、複数の半導体チップパッケージ10をよりコンパクトに配置することができる。
【0055】
実施形態の半導体モジュール1の製造方法は、半導体チップパッケージの出力端子20とモジュールケースの天板8との間に、規定の締結方向の隙間S1を設定するとともに、隙間S1を目標隙間量S2に調整するシム25を配置した後、出力端子20と天板8とに締結力を付与して、出力端子20と天板8とを互いに接続する。
この構成によれば、半導体チップパッケージ10の出力端子20とモジュールケース5の天板8とを、規定の締結方向の締結力によって互いに接続する半導体モジュール1において、締結力を付与する前の出力端子20と天板8との間には、締結方向で隙間S1が設定されるとともに、隙間S1を調整するシム25が挟み込まれている。適宜の厚さのシム25を選択することで、出力端子20と天板8との間の締結前の隙間S1を規定の値に調整することができる。締結前の隙間S1を規定値に調整することで、出力端子20と天板8とを締結した際、天板8に規定の撓みを発生させることができる。これにより、出力端子20から天板8への入力、および天板8から出力端子20への入力の何れも制御しやすく、出力端子20と天板8との間で安定して力を伝えることができる。その結果、半導体素子2の故障時、伴連れ短絡故障を発生させやすくすることができる。
【0056】
実施形態の半導体モジュール1の製造方法において、モジュールケース5内に複数の半導体チップパッケージ10が収容され、シム25は、厚さの異なる複数種が設定され、シム25の厚さは、モジュールケース5内における各半導体チップパッケージ10の配置位置に応じて異ならせる。
この構成によれば、モジュールケース5内における各半導体チップパッケージ10の配置位置に応じてシム25の厚さを異ならせることで、天板8の位置を考慮して、出力端子20と天板8との間の締結前の隙間S1を規定の値に調整することができる。例えばモジュールケース5における天板8を支持する側壁9に近い位置と側壁9から離れた位置とでは、天板8の撓みに対する応力の大きさが異なる。モジュールケース5の位置に応じて出力端子20と天板8との間の締結前の隙間S1を調整することで、天板8の発生応力の均等化を図ることができる。
【0057】
実施形態の半導体モジュール1の製造方法は、モジュールケース5内に複数の半導体チップパッケージ10が収容され、シム25は、厚さの異なる複数種が設定され、シム25の厚さは、各半導体チップパッケージ10の出力端子20の実測高さに応じて異ならせる。
この構成によれば、各半導体チップパッケージ10の出力端子20の実測高さに応じてシム25の厚さを異ならせることで、各半導体チップパッケージ10の公差による個体差を考慮して、出力端子20と天板8との間の締結前の隙間S1を規定の値に調整することができる。これにより天板8の発生応力の均等化を図ることができる。
【0058】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、半導体チップパッケージ10と、モジュールケース5と、シム25と、を持つことにより、出力端子20と天板8との間の締結前の隙間S1を規定の値に調整することができる。出力端子20と天板8とを締結した際、天板8に規定の撓みを発生させることができる。半導体素子の故障時、伴連れ短絡故障を発生させやすくすることができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0060】
(付記1)
半導体チップのコレクタ側およびエミッタ側の各々に金属電極を接合した半導体チップパッケージと、
前記半導体チップパッケージを収容するモジュールケースと、を備え、
前記半導体チップパッケージは、前記モジュールケースの天板に接続される出力端子を備え、
前記出力端子と前記天板とは、規定の締結方向で締結力を付与されて互いに接続され、
前記出力端子と前記天板との間には、締結力を付与する前において前記締結方向で隙間が形成されるとともに、前記隙間を目標隙間量に調整するシムが配置されている、半導体モジュール。
【0061】
(付記2)
前記シムは、導電性グリスを塗布した状態で、前記出力端子と前記天板との間に配置されている、付記1に記載の半導体モジュール。
【0062】
(付記3)
前記出力端子と前記天板とは、前記締結方向に沿うボルトを用いて締結され、
前記ボルトは、前記シムを貫通するように配置されている、付記1又は2に記載の半導体モジュール。
【0063】
(付記4)
前記モジュールケース内に複数の前記半導体チップパッケージが収容され、
前記シムの厚さは、前記モジュールケース内における各半導体チップパッケージの配置位置に応じて異なっている、付記1から3の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0064】
(付記5)
前記出力端子は、前記モジュールケースのパッケージ搭載面に沿う第一の方向における、前記半導体チップパッケージの本体の一側面から突出し、さらに前記パッケージ搭載面に沿う方向でかつ前記第一の方向と交差する第二の方向で、前記一側面の中央位置よりも一側にずれて配置され、
前記モジュールケース内に複数の前記半導体チップパッケージが収容され、
複数の前記半導体チップパッケージは、前記パッケージ搭載面に沿う方向で、互いに一側面同士を対向させて配置された半導体チップパッケージ対を構成している、付記1から4の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0065】
(付記6)
前記出力端子は、前記半導体チップパッケージの前記本体の一側面に沿って前記天板側に延び、前記本体の上面よりも上方において、平面視で前記本体と反対側に突出するように延びている、付記5に記載の半導体モジュール。
【0066】
(付記7)
半導体チップパッケージの出力端子とモジュールケースの天板との間に、規定の締結方向の隙間を設定するとともに、前記隙間を目標隙間量に調整するシムを配置した後、前記出力端子と前記天板とに締結力を付与して、前記出力端子と前記天板とを互いに接続する、半導体モジュールの製造方法。
【0067】
(付記8)
前記モジュールケース内に複数の前記半導体チップパッケージが収容され、
前記シムは、厚さの異なる複数種が設定され、
前記シムの厚さは、前記モジュールケース内における各半導体チップパッケージの配置位置に応じて異ならせる、付記7に記載の半導体モジュールの製造方法。
【0068】
(付記9)
前記モジュールケース内に複数の前記半導体チップパッケージが収容され、
前記シムは、厚さの異なる複数種が設定され、
前記シムの厚さは、各半導体チップパッケージの前記出力端子の実測高さに応じて異ならせる、付記7又は8に記載の半導体モジュールの製造方法。
【符号の説明】
【0069】
1…半導体モジュール、2…半導体素子、5…モジュールケース、5a…ケース本体、6b…パッケージ搭載面、8…天板、10…半導体チップパッケージ、10c…本体、10d…一側面、c1…中央位置、10e…本体上面、10f…半導体チップパッケージ、20…エミッタ用導体(金属電極、出力端子)、30…コレクタ用導体(金属電極)、24…ボルト、25…シム(金属薄板材)、26…導電性グリス、S1…隙間、S2…目標隙間量
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12