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特開2025-7747処理装置、光学検査システム、被写体表面画像の構成方法、欠陥識別画像の構成方法、被写体表面画像の構成プログラム、被写体表面の角度推定方法、及び、被写体表面の傾斜角度の推定プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007747
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】処理装置、光学検査システム、被写体表面画像の構成方法、欠陥識別画像の構成方法、被写体表面画像の構成プログラム、被写体表面の角度推定方法、及び、被写体表面の傾斜角度の推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20250109BHJP
   G01N 21/57 20060101ALI20250109BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20250109BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20250109BHJP
   G06V 10/143 20220101ALI20250109BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250109BHJP
   G06T 7/13 20170101ALI20250109BHJP
【FI】
G01N21/892 Z
G01N21/57
G01N21/27 A
G01B11/26 H
G06V10/143
G06T7/00 610B
G06T7/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109352
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 宏弥
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
(72)【発明者】
【氏名】岡野 英明
(72)【発明者】
【氏名】神川 卓大
(72)【発明者】
【氏名】大野 啓文
(72)【発明者】
【氏名】高木 義昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】氏原 洋輔
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
2G059
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA31
2F065BB05
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM03
2F065QQ31
2G051AA90
2G051AB02
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
2G051EA17
2G051EC03
2G051EC05
2G051ED04
2G051ED08
2G059AA05
2G059BB08
2G059DD12
2G059EE02
2G059EE11
2G059FF01
2G059FF04
2G059GG02
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA06
5L096FA15
5L096FA17
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA05
5L096GA06
5L096GA55
(57)【要約】
【課題】 種々の形状を有する被写体表面の状態を把握するための処理を行う、処理装置を提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、被写体表面画像の構成に用いる処理装置は、1又は複数のプロセッサを有する。1又は複数のプロセッサは、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体の表面に照射したときに撮像部により得た、基準となる撮像画像を含む複数時間における複数枚の撮像画像について、複数枚の撮像画像から選択される1又は複数の撮像画像をシフトさせて基準となる撮像画像に重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像を構成する。
【選択図】 図10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、前記照明光に対して相対的に移動する被写体の表面に照射したときに撮像部により得た、基準となる撮像画像を含む複数時間における複数枚の撮像画像について、前記複数枚の撮像画像から選択される1又は複数の撮像画像をシフトさせて前記基準となる撮像画像に重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像を構成する、1又は複数のプロセッサを有する、被写体表面画像の構成に用いる処理装置。
【請求項2】
少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、前記照明光に対して相対的に移動する被写体の表面に照射したときに撮像部により所定のフレームレートで基準となる撮像画像を得るとともに、前記基準となる撮像画像に続く撮像画像を得ながらそれぞれをシフトさせて前記撮像画像よりも前に撮像した撮像画像と順に重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像を構成する、1又は複数のプロセッサを有する、被写体表面画像の構成に用いる処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記少なくとも1つの被写体表面画像を構成するとき、前記撮像部におけるフレームレート、前記撮像部に対する前記被写体の搬送速度、前記撮像部に対する前記被写体の搬送方向に沿う方向の前記撮像部の画素数に基づいて前記撮像画像のシフト量を設定する、
請求項1又は請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記シフト量Δxを
Δx=(ν・n)/(2x・f
:前記被写体の搬送方向に沿う前記撮像部の視野の半分
+1:前記被写体の搬送方向に沿う前記撮像部の画素数
:前記撮像部のフレームレート
ν:前記撮像部に対する前記被写体の搬送速度
に基づいて設定する、
請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記撮像画像をシフトさせて重ね合わせ、前記少なくとも1つの被写体表面画像を構成するとき、前記撮像画像を前記基準となる撮像画像に対して四則演算に基づいて合成する、請求項1又は請求項2に記載の処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記撮像画像及び少なくとも1つの被写体表面画像の少なくとも一方に対して欠陥識別のための画像処理を施して、前記撮像画像及び少なくとも1つの被写体表面画像の少なくとも一方において欠陥を抽出させる、請求項1又は請求項2に記載の処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記欠陥識別のための画像処理を施すとき、前記撮像画像及び前記少なくとも1つの被写体表面画像の少なくとも一方に対して、画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行う、請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
それぞれ異なる方向に向かう照明光を、前記照明光に対して相対的に移動する被写体の表面に照射したときに撮像部により所定のフレームレートで基準となる撮像画像を得ると、前記基準となる撮像画像に対して欠陥識別のための画像処理を施して、前記基準となる撮像画像に対応する基準欠陥識別画像を得るとともに、前記基準となる撮像画像に続く撮像画像を得ながらそれぞれに欠陥識別のための画像処理を施して前記撮像画像を欠陥識別画像とし、前記欠陥識別画像のそれぞれをシフトさせて、前記基準欠陥識別画像に続く欠陥識別画像を順に重ね合わせ、少なくとも1つの被写体の表面の欠陥識別画像を構成する、1又は複数のプロセッサを有する、被写体表面の欠陥識別画像の構成に用いる処理装置。
【請求項9】
少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を被写体の表面に照射したときに撮像部により得た撮像画像のうち、光が入射された画素の位置に基づいて、前記撮像画像に写る前記被写体の表面の傾斜角度を推定する、1又は複数のプロセッサを有する、被写体表面の傾斜角度を算出するための処理装置。
【請求項10】
前記撮像部と前記被写体の表面との距離をaとし、
前記撮像部と前記被写体の搬送方向に沿う前記撮像部の視野Fの半分をxとし、
前記照明光の光源が前記撮像部の光軸上の点光源であるとするとき、前記光源と前記被写体の表面との距離をaとし、
前記被写体の表面のある位置における傾斜角度をθとし、
前記撮像部が前記被写体の前記搬送方向に沿う画素数をn+1(nは自然数)とし、
前記撮像部で撮像される像のうち、前記被写体の表面からの光が入射される位置の画素位置をnとするとき、
前記プロセッサは、
θ=1/2tan-1{x/a(2n/n-1)}+
1/2tan-1{x/a(2n/n-1)}
に基づいて前記被写体の表面の傾斜角度を推定する、請求項9に記載の処理装置。
【請求項11】
前記被写体の表面に対して、前記それぞれ異なる方向に向かう照明光を照射する照明部と、
前記被写体の表面を所定のフレームレートで撮像する撮像部と、
前記被写体の表面を前記照明部及び前記撮像部に対して相対的に所定方向に移動させる搬送部と、
請求項1又は請求項2に記載の処理装置と、
を有する、光学検査システム。
【請求項12】
前記被写体と前記撮像部との間に設けられるカラー開口を有し、
前記カラー開口は、前記少なくとも1つの面内において、異なる波長スペクトルの光を選択的に通過させる少なくとも2つの波長選択領域を有し、
前記撮像部は、前記波長選択領域を通過する前記異なる波長スペクトルの光を受光可能であり、
前記処理装置は、前記撮像部で受光した波長スペクトルの光の色数に基づいて前記被写体の表面の欠陥を出力可能である、
請求項11に記載の光学検査システム。
【請求項13】
少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、前記照明光に対して相対的に移動する被写体の表面に照射すること、
前記被写体の表面を撮像部で撮像し、基準となる撮像画像を含む複数時間における複数枚の撮像画像を得ること、
前記複数枚の撮像画像から選択される1又は複数の撮像画像をシフトさせて前記基準となる撮像画像に重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像を構成すること
を含む、被写体表面画像の構成方法。
【請求項14】
少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、前記照明光に対して相対的に移動する被写体の表面に照射すること、
前記被写体の表面を撮像部により所定のフレームレートで撮像し、基準となる撮像画像を得るとともに、前記基準となる撮像画像に続く撮像画像をそれぞれシフトさせて前記撮像画像よりも前に撮像した撮像画像と重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像を構成すること
を含む、被写体表面画像の構成方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの被写体表面画像を構成するとき、前記撮像画像の少なくとも複数枚を、前記撮像部におけるフレームレート、前記撮像部に対する前記被写体の搬送速度、前記撮像部に対する前記被写体の搬送方向に沿う方向の前記撮像部の画素数に基づいて前記撮像画像のシフト量を設定する、
請求項13又は請求項14に記載の構成方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの被写体表面画像に対して欠陥識別のための画像処理を施す、請求項13又は請求項14に記載の構成方法。
【請求項17】
少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、前記照明光に対して相対的に移動する被写体の表面に照射すること、
前記被写体の表面を撮像部で撮像し、基準となる撮像画像を含む複数時間における複数枚の撮像画像を得ること、
前記複数枚の撮像画像に対して欠陥識別のための画像処理を施して、前記複数時間における複数枚の撮像画像の欠陥識別変換画像を生成すること、
前記複数枚の欠陥識別変換画像から選択される1又は複数の欠陥識別変換画像をシフトさせて前記基準となる撮像画像に対応する基準欠陥識別変換画像に重ね合わせ、少なくとも1つの欠陥識別画像を構成すること
を含む、欠陥識別画像の構成方法。
【請求項18】
少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、前記照明光に対して相対的に移動する被写体の表面に照射したときに撮像部により得た、基準となる撮像画像を含む複数時間における複数枚の撮像画像について、前記複数枚の撮像画像から選択される1又は複数の撮像画像をシフトさせて前記基準となる撮像画像に重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像を構成する処理を1又は複数のプロセッサに実行させる、被写体表面画像の構成プログラム。
【請求項19】
少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、前記照明光に対して相対的に移動する被写体の表面に照射したときに撮像部により所定のフレームレートで基準となる撮像画像を得るとともに、前記基準となる撮像画像に続く撮像画像をそれぞれシフトさせて前記撮像画像よりも前に撮像した撮像画像と重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像を構成する処理を1又は複数のプロセッサに実行させる、被写体表面画像の構成プログラム。
【請求項20】
少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を被写体の表面に照射すること、
前記被写体の表面を撮像部で撮像し、撮像画像を得るとともに、前記撮像画像における光が入射された画素の位置を特定すること、
前記光が入射された画素の位置に基づいて、前記撮像画像に写る前記被写体の表面の傾斜角度を推定すること
を含む、被写体表面の角度推定方法。
【請求項21】
少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を被写体の表面に照射したときに撮像部により得た撮像画像のうち、光が入射された画素の位置に基づいて、前記撮像画像に写る前記被写体の表面の傾斜角度を推定する処理を1又は複数のプロセッサに実行させる、被写体表面の傾斜角度の推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、処理装置、光学検査システム、被写体表面画像の構成方法、欠陥識別画像の構成方法、被写体表面画像の構成プログラム、被写体表面の角度推定方法、及び、被写体表面の傾斜角度の推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業において、搬送中の物体の表面を非接触に検査することが重要となっている。従来方法では、搬送中の物体に照明光を照射し、撮像素子を用いて物体表面からの反射光を撮像し、取得した画像を解析することによって物体の表面を検査する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6391281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、種々の形状を有する被写体表面の状態を把握するための処理を行う、又は、被写体表面の欠陥識別画像の構成に用いる処理装置、処理装置を有する光学検査システム、被写体表面画像の構成方法、欠陥識別画像の構成方法、被写体表面画像の構成プログラム、被写体表面の角度推定方法、及び、被写体表面の傾斜角度の推定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、被写体表面画像の構成に用いる処理装置は、1又は複数のプロセッサを有する。1又は複数のプロセッサは、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体の表面に照射したときに撮像部により得た、基準となる撮像画像を含む複数時間における複数枚の撮像画像について、複数枚の撮像画像から選択される1又は複数の撮像画像をシフトさせて基準となる撮像画像に重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る光学検査システムを示す概略図。
図2図1に示す照明部のZX平面に沿う概略図。
図3】比較例の光学検査装置を用いて、搬送部上を搬送される被写体の表面を撮像部で撮像する例を示す概略図。
図4図3に示す光学検査装置を用いて、適宜のフレームレートで被写体の表面を撮影した像を並べたもの。
図5】第1実施形態に係る光学検査システムの搬送部で搬送される平板状の被写体、被写体の像を光学的に取得する光学検査装置、及び、ZX平面における被写体の表面への照明光を示す模式図。
図6図5中の符号VIで示す方向から見た、被写体、光学検査装置、及び、YZ平面における被写体の表面への照明光を示す模式図。
図7図5中の符号VIで示す方向から見た、被写体、光学検査装置、及び、YZ平面における被写体の表面への照明光を示す、図6とは異なる模式図。
図8図5及び図6に示す光学検査装置で適宜の時間間隔ごとに取得し得る像I1,I2,…,Inの模式図。
図9図8に示す画像に基づいて構成した、1枚の被写体の表面構成画像。
図10】第1実施形態に係る光学検査システムを用いた、1枚の被写体の表面構成画像を構成するためのフローチャート。
図11図10に示すフローチャートにおいて、適宜の時間間隔ごとに取得し得る像I1,I2,…,Inを適宜にシフトさせて並べた状態を示す模式図。
図12】第1実施形態に係る光学検査システムを用いて、実際のプラスチック平板の表面にキズを付けた被写体の表面を、撮影した像を取得時間順に並べたもの。
図13図12に示す画像に基づいて構成した、1枚の被写体の表面構成画像。
図14図10に示すフローチャートに欠陥識別画像の構成工程を加えたもの。
図15図13に示す画像に基づいて構成した、1枚の被写体の欠陥識別画像。
図16図5に示す光学検査装置において、被写体の表面が、XY平面に対して傾斜する傾斜平面である例を示す概略図。
図17図16及び図6に示す光学検査装置で適宜の時間間隔ごとに取得し得る像I1,I2,…,Inの模式図。
図18図17に示す画像に基づいて構成した、1枚の被写体の表面構成画像。
図19図5に示す光学検査装置において、被写体の表面が、XY平面に対して平行な平面と、XY平面に対して傾斜する傾斜平面とが連続する例を示す概略図。
図20図19及び図6に示す光学検査装置で適宜の時間間隔ごとに取得し得る像I1,I2,…,Inの模式図。
図21図20に示す画像に基づいて構成した、1枚の被写体の表面構成画像。
図22】第1実施形態の変形例に係る光学検査システムを用いた、1枚の被写体の表面構成画像を構成するためのフローチャート。
図23】第2実施形態に係る光学検査システムを示す概略図。
図24図23に示す光学検査装置、及び、その光学検査装置における被写体の表面と反射光との関係を示す概略図。
図25】プラスチック平板の表面にキズを付けた被写体の表面を、第2実施形態に係る光学検査システムを用いて、適宜のフレームレートで撮影した像を取得し、並べたもの。
図26図25に示す画像に基づいて構成した、1枚の被写体の表面構成画像。
図27図26に示す画像に基づいて構成した、1枚の被写体の欠陥識別画像。
図28】第2実施形態の変形例に係る光学検査システムで1枚の被写体の表面構成画像の構成を経ずに、1枚の被写体の欠陥識別画像を構成する例を示す概略図。
図29図28に示すように1枚の被写体の欠陥識別画像を構成ための処理装置のフローチャート。
図30】第3実施形態に係る光学検査システムを示す概略図。
図31図30に示す光学検査システムの光学検査装置の模式図。
図32図30に示す光学検査システムで取得した像に基づいて被写体の表面の傾斜角度を推定するための処理装置のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
本明細書において、光は電磁波の一種であり、X線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波なども含まれるものとする。以降の実施形態において、光は可視光であるとし、例えば波長400nmから750nmの領域にあるとする。
【0009】
(第1実施形態)
図1には、本実施形態に係る光学検査システム10を示す。図1に示すように、光学検査システム10は、被写体(サンプル)Sを搬送する搬送部12と、搬送される被写体Sの像を光学的に取得する光学検査装置14と、光学検査装置14に有線又は無線で接続される処理装置16とを有する。
【0010】
ここで、搬送部12及び光学検査装置14に図1に示すXYZ直交座標系を規定する。X軸は、搬送部12により被写体Sが移動する方向とする。ここでは、図1中の紙面右側を+X方向とする。Y軸は、X軸に直交し、X軸とともに床面に水平な面を規定する。ここでは、図1中の紙面奥側に向かう方向を+Y方向とする。Z軸は、X軸及びY軸に直交し、例えば上方に向かう方向を+Z方向とする。
【0011】
搬送部12は、Y軸方向に沿って適宜の幅を有し、被写体Sを例えば+X方向などの一方向に搬送する。搬送部12は、被写体Sを所定の搬送速度で+X方向に移動させることが好適である。搬送部12は、光学検査装置14で検査される位置において、Z軸の座標が一定で、被写体Sの高さが変化しないことが好適である。搬送部12は、後述するが、処理装置16により制御される。
【0012】
ここでいう搬送とは、被写体Sに照明光を照射し被写体Sの複数枚の画像を取得する光学検査装置14に対して被写体Sが相対的に動いていればよい。例えば静止した光学検査装置14に対して被写体Sを動かしてもよいし、静止した被写体Sに対して光学検査装置14を動かしてもよいし、両者をともに動かしてもよい。つまり、光学検査装置14に対して被写体Sが相対的に動いていれば何でもよい。搬送部12は、被写体Sを搬送するために用いられてもよく、光学検査装置14を搬送するために用いられてもよい。
また、光学検査装置14に対して被写体Sの相対的な動きは連続的でもよいし、断続的でもよい。例えば光学検査装置14が画像を取得する瞬間において、光学検査装置14及び被写体Sが静止していてもよいし、画像を取得する瞬間において、光学検査装置14及び被写体Sが相対的に動いていてもよい。つまり、相対的に動いた被写体Sを撮影できればその動き方は何でもよい。
本実施形態においては、例えば、静止した光学検査装置14に対して、搬送部12により、一定速度で被写体Sを動かし、光学検査装置14の視野内に入った被写体Sの表面の像を光学検査装置14の後述する撮像部24で複数回、取得するものとする。
【0013】
光学検査装置14は、被写体Sに照明光を照明する照明部22と、撮像部(カメラ)24とを有する。光学検査装置14の照明部22及び撮像部24は、後述するが、処理装置16により制御される。
【0014】
照明部22は、光源32を有する。光源32は、撮像部24の光軸に対して発散した光を被写体Sの表面に向けて照明する。このような照明光を生成する手段はレンズを用いてもよいしリフレクターを用いてもよい。被写体Sの表面には、ある時間において、撮像部24が写す視野内の被写体Sの位置によって異なる入射角で光が当たっていればよい。
【0015】
図2には、照明部22のZX平面に沿う概略図を示す。図2に示すように、光源32は例えばZ軸に沿って並べられた発光ダイオード(LED)32a,32b,32cを有し、本実施形態では、例えば+X方向に白色光を発光する。LED32a,32b,32cの数は、3つに限らず、適宜に設定可能である。光源32はLED32a,32b,32cに限らず、白熱電球、蛍光管、水銀灯等であってもよい。光源32の発光は白色に限らない。また光源32は撮像部24の光軸C上に配置してもよいし、光軸C上に配置しなくてもよい。光源32を撮像部24の光軸上に配置しない場合は、例えばハーフミラー等のビームスプリッター34を用いることで、光源32から発せられた光を、ビームスプリッター34を介して被検体を照明してもよい。ビームスプリッター34は偏光ビームスプリッターでもよいし、無偏光ビームスプリッターでもよい。
本実施形態では、照明部22は、光源32とハーフミラー34と照明レンズ36とを有し、光源32からの光が照明レンズ36を通してハーフミラー34で反射し、被写体Sの表面に向けられるものとする。
【0016】
なお、光源32とハーフミラー34との間には、照明レンズ36が配置される。照明レンズ36は、シリンドリカルレンズ、自由曲面レンズ、フレネルレンズ、あるいは、凹面ミラー等が用いられる。照明レンズ36は、光源32a,32b,32cからの光をZX平面にてそれぞれ平行光にする。そして、ZX平面において、光源32aからの平行光の照明光は、撮像部24の光軸C上の照明光Laに沿って-Z方向に向かう。光源32bからの平行光の照明光Lbは、ZX平面において、照明光Laとは異なる位置で、異なる方向に向かう。光源32cからの平行光の照明光Laは、ZX平面において、照明光La,Lbとは異なる位置で、異なる方向に向かう。
【0017】
このようにして、照明部22は、少なくとも1つの面内(ZX平面内)においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を被写体Sの表面に照射する。なお、光源32のLED32a,32b,32cは、同時期に点灯させる。照明部22は、実質的に平行光と見做せる照明光を射出可能な光源32を光軸C上に配置して、被写体Sの表面に照射するようにしてもよい。
【0018】
図1に示すように、撮像部24は、例えば結像光学素子42と、イメージセンサー44とを有する。
【0019】
結像光学素子42は、1枚のレンズであってもよく、複数枚のレンズであってもよく、また、必要に応じてレンズにミラーが組み合わせられていてもよい。結像光学素子42は、光を結像できる構成であれば何でもよい。
【0020】
イメージセンサー44は、結像光学素子42で結像される複数の像I1,I2,…,In(nは2以上の整数)を適宜のフレームレートで取得する。イメージセンサー44は、各画素において例えばRGBを分光して取得可能である。イメージセンサー44は、X軸方向に例えばn+1(nは自然数)の画素数があり、Y軸方向に例えばm+1(mは自然数)の画素数がある。イメージセンサー44は、処理装置16により制御される適宜のフレームレートで適宜の視野内の像を取得するように動作する。なお、フレームレートは、例えば、搬送部12による被写体Sの搬送速度により調整され得る。
【0021】
各画素は少なくとも2つの異なる波長の光線、つまり第1の波長の光線と第2の波長の光線を受光できるとする。イメージセンサー44が配置された領域を含む面を、結像光学素子42の像面とする。イメージセンサー44はエリアセンサーでもよく、ラインセンサーでもよい。エリアセンサーとは、同一面内にエリア状に画素を配列させたものである。また、ラインセンサーは、画素をライン状に配列させたものである。また各画素でR、G、Bの3チャンネルの色チャンネルを備えるものでよい。本実施形態では、イメージセンサー44はエリアセンサーとし、各画素は赤、青、緑の3つの色チャンネルを備えるとする。
【0022】
処理装置16は、撮像部24で撮像した画像を保持し、後述する画像処理を施すためのプロセッサ52と、画像を保存するための記憶装置54とを有する。
【0023】
プロセッサ52は例えばCPUやGPUであるが、後述する画像処理を施すことができる素子であればなんでもよい。プロセッサ52は、処理装置16の処理に必要な演算及び制御などの処理を行うコンピュータの中枢部分に相当し、処理装置16全体を統合的に制御する。プロセッサ52は、ROM又は補助記憶デバイスなどの記憶装置54に記憶されたシステムソフトウェア、アプリケーションソフトウェア又はファームウェアなどのプログラムに基づいて、処理装置16の各種の機能を実現するべく制御を実行する。プロセッサ52は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、DSP(digital signal processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、GPU(graphics processing unit)等を含む。あるいは、プロセッサ52は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。処理装置16に設けられるプロセッサ52は、1つであってもよく、複数であってもよい。
【0024】
処理装置16は、記憶装置54に記憶されるプログラム等をプロセッサ52に実行させることにより、各種の機能を発揮させる処理を実行する。なお、処理装置16の制御プログラムは、処理装置16の記憶装置54に記憶されておらず、適宜のサーバー上やクラウド上に置かれていることも好適である。この場合、制御プログラムは、通信インタフェースを介して例えば光学検査システム10が有するプロセッサ52と通信しながら実行される。すなわち、本実施形態に係る処理装置16は、光学検査システム10が有していてもよく、光学検査システム10から離れた、各種の検査場のシステムのサーバーやクラウド上にあってもよい。このため、記憶装置54に記憶されるのではなく、サーバー又はクラウド上に光学検査プログラムがあり、通信インタフェースを介して例えば光学検査システム10が有するプロセッサ52と通信しながらプログラムが実行されることも好適である。したがって、プロセッサ52(処理装置16)は、後述する光学検査プログラム(光学検査アルゴリズム)を実行し得る。
【0025】
プロセッサ52(処理装置16)は、照明部22の光源32の発光タイミング、イメージセンサー44での画像データの取得タイミング、イメージセンサー44からの画像データの取得等を制御するとともに、例えば四則演算等により複数の画像を重ね合わせたり、ある画像に対して適宜の画像処理を行い得る。
【0026】
また、記憶装置54は例えばHDDやSSDであるが、例えば画像を記憶(保存)できるものであればなんでもよい。
【0027】
以下、第1実施形態に係る光学検査システム10の動作について説明する。
【0028】
被写体Sは撮像部24の光軸に垂直な方向に一定の速度で動いているとし、光学検査システム10はその最中の被写体Sの画像を複数枚取得する。また被写体Sは平面、曲面、又は、これらの組み合わせであるとする。
【0029】
ここで、図3は、本実施形態に係る光学検査システム10の光学検査装置14とは照明光が異なる、比較例の光学検査装置114を用いて、搬送部12上を+X方向に搬送される被写体Sの表面を撮像部24で撮像する例を示す概略図である。比較例の光学検査装置114は、例えばZX平面、YZ平面によらず、通常の照明光である、拡散光を用いて被写体Sの表面を照明し、撮像部24で像を取得する。
【0030】
図4には、図3に示す光学検査装置114を用いて、適宜のフレームレートで被写体Sの表面を撮影した像を並べたものを示す。上側の像ほど、下側の像に比べて早い時間に撮影した像である。なお、図4中の破線は、撮像部24の視野Fに対する被写体Sの仮想的な外形を示す。
【0031】
ここでは、図3に示す被写体Sは、説明の簡単のため、矩形状の平面板として形成され、被写体Sの表面上に星が描かれているとする。被写体Sの表面(図3中の上面)は例えば光沢面であるとする。
【0032】
図4に示すように、光学検査装置114は、搬送部12の搬送位置に応じて、撮像部24の視野F内の被写体Sの表面の全体の像を取得し得る。そして、光学検査装置114により取得し得る像は、それぞれ視野Fの全体が撮像される。
【0033】
図5は、図1に示す光学検査システム10の搬送部12で搬送される平板状の被写体S、被写体Sの像を光学的に取得する光学検査装置14、及び、ZX平面における照明光を示す模式図である。図5中、照明部22の図示を省略する。なお、ここでの被写体Sは、図3に示す光学検査装置114で撮影した、図4に示すものと同じものとする。
【0034】
図6は、図5中の符号VIで示す方向から見た、被写体S、光学検査装置14、及び、YZ平面における照明光を示す模式図である。図7は、図5中の符号VIで示す方向から見た、被写体S、光学検査装置14、及び、YZ平面における照明光を示す、図6とは異なる模式図である。図6及び図7中、照明部22の図示を省略する。
【0035】
図6に示すように、YZ平面における照明光の一例は、例えば拡散光である。また、図7に示すように、YZ平面における照明光の他の一例は、例えばZ軸に平行な光である。本実施形態では、YZ平面における照明光が、図6に示す拡散光であるものとして説明する。
【0036】
図8には、図5及び図6に示す本実施形態に係る光学検査装置14で適宜の時間間隔ごとに取得し得る像I1,I2,…,Inの模式図を示す。なお、図8中の破線は、視野Fに対する被写体Sの位置及び大きさを仮想的に示すものであり、画像として得られているわけではない。
【0037】
図8中の上側の像ほど、下側の像に比べて早い時間に撮影した像である。図8中の5つの像I1,I2,I3,I4,I5は、後述するフロー(図10参照)において必ずしも、処理装置16が撮像部24のイメージセンサー44に撮像させた第1番目から第5番目の像とは限らないが、便宜的に符号I1,I2,I3,I4,I5とする。例えば像I1と像I2との間に1又は複数の更なる像が撮像されていてもよい。すなわち、図8中、5つの画像I1,I2,I3,I4,I5を並べて示すが、例えば最上段の画像I1と上から2番目の画像I2との間に、異なる時間で1又は複数の画像が取得され得る。これは、像I2と像I3との間、像I3と像I4との間、像I4と像I5との間でも同じである。これら図示しない像は、適宜に記憶装置54に記憶されていることが好適である。また、本実施形態では、説明の便宜のため、像I1を基準となる撮像画像とする。基準となる撮像画像は、例えば像I2,I3,I4,I5のいずれから選択されてもよい。
【0038】
図9には、図8に示す画像に基づいて構成した、1枚の被写体Sの表面構成画像Isを示す。図9中の表面構成画像Isの横方向の長さは、被写体SのX軸方向に沿う長さに応じて適宜に設定し得る。
【0039】
図10には、本実施形態に係る光学検査システム10の処理装置16の1又は複数のプロセッサ52による処理のフローチャートを示す。
【0040】
ここで、本実施形態に係る光学検査装置14の検査に用いる被写体Sは、図3に示す光学検査装置114で撮影したものと全く同じものを用いるものとする。また、搬送部12による被写体Sの搬送速度、被写体Sに対する撮像部24の設定は同一であるとする。ここでは、本実施形態に係る光学検査装置14は、通常の撮影の場合の光学検査装置114と比較して、被写体Sの表面への照明が異なる。
【0041】
図10に示すように、まず、処理装置16(1又は複数のプロセッサ52)は、搬送部12で被写体Sを搬送しながら、光学検査装置14によって、照明部22から被写体Sの表面に、搬送部12で搬送される被写体Sの位置によって異なる入射角の照明光を照射したときの被写体Sの表面のそれぞれ一部の複数枚の画像I1,I2,…,Inを取得する(ステップS11)。
【0042】
本実施形態に係る図1図2図5及び図6に示す光学検査装置14の照明部22から被写体Sの表面に入射されるZX平面に沿う光のうち、撮像部24の光軸上に沿って被写体Sの表面に入射される光は、被写体Sの表面が平面(XY平面に平行な平面)であるから、ほぼ正反射し、ハーフミラー34、結像光学素子42を通してイメージセンサー44に入射される。一方、光学検査装置14の照明部22から被写体Sの表面に入射される光のうち、撮像部24の光軸から外れる光が被写体Sの表面に入射されると、反射の法則により、撮像部24の結像光学素子42に入射され難くなる。このような撮像部24の光軸から外れる光が被写体Sの表面に入射されると、被写体Sの表面からの反射光の一部は、撮像部24の結像光学素子42に向かって反射しない光となり、例えば結像光学素子42及びイメージセンサー44の視野F内から外れる。このため、図1図2図5及び図6に示す光学検査装置14の撮像部24は、X軸方向における撮像部24の光軸C及びその近傍の像を得ることができるが、X軸方向における光軸C及びその近傍から外れる部分の像は得られにくい。すなわち、X軸方向における撮像部24の光軸C及びその近傍の像は、被写体Sの表面の像として得ることができるが、X軸方向における光軸C及びその近傍から外れる部分は撮像部24に光が入射されず、例えば黒色として写る。
【0043】
すなわち、光学検査装置14のZX平面において、被写体Sの表面への照明光のうち、反射の法則に基づいて撮像部24の結像光学素子42に向かって反射する光は、正反射成分として撮像部24で撮像される。
【0044】
一方、本実施形態に係る図6に示す光学検査装置14の照明部22(図示せず)から被写体Sの表面に入射されるYZ平面に沿う光のうち、撮像部24の光軸C上に沿って被写体Sの表面に入射される拡散光は、ハーフミラー34、結像光学素子42を通してイメージセンサー44に入射される。また、撮像部24の光軸Cから外れて被写体Sの表面に入射される光は拡散光であるから、ハーフミラー34、結像光学素子42を通してイメージセンサー44に入射される。このため、図6に示す例において、撮像部24は、Y軸方向における撮像部24の光軸C及びその近傍の像だけでなく、撮像部24の光軸C及びその近傍に加えて、Y軸方向に沿って光軸Cから外れる部分の像も得られる。
【0045】
したがって、図5及び図6に示すように、被写体Sが平板で、被写体Sの表面が平面であるとき、本実施形態に係る光学検査装置14で取得し得る被写体Sの表面の像I1,I2,I3,I4,I5は、図8に示すように、イメージセンサー44の視野内のうち、X軸方向の一部となる。一方、本実施形態では、イメージセンサー44は、イメージセンサー44の視野F内において、対応するX軸の範囲内におけるY軸方向全体の像を得ることができる。
【0046】
ここで、処理装置16(1又は複数のプロセッサ52)は、搬送部12による被写体Sの搬送方向、搬送速度、及び、搬送部12上の被写体Sの位置が分かっている。また、プロセッサ52は、画像I1,I2,…,Inのそれぞれの取得時間、及び、取得時間間隔(フレームレート)が分かっている。
【0047】
処理装置16(1又は複数のプロセッサ52)は、基準となる画像I1を設定し、取得した被写体Sの表面のそれぞれ一部の画像(図8に示す画像I2,I3,I4,I5に限らず、各画像間に取得される像も含むが、ここでは便宜的に像I2,I3,I4,I5とする)から、搬送部12の搬送速度等に応じてピックアップした画像I2,I3,I4,I5をそれぞれ例えばn×Δx(nは自然数)ずつシフトさせて重ね合わせ、少なくとも1枚の被写体表面構成画像Isを構成する(ステップS12)。このとき、第1番目の基準となる画像I1は例えばシフトさせず、第2番目の画像を1×Δx、-X方向にシフトさせ、第3番目の画像を2×Δx、-X方向にシフトさせるなど、(n-1)×Δxずつ-X方向にシフトさせて、1枚の被写体Sの表面画像Is(図9参照)を生成する。
ここでは、処理装置16は、被写体表面画像Isを構成するとき、撮像部24のイメージセンサー44におけるフレームレート、撮像部24に対する被写体Sの搬送速度、撮像部24のイメージセンサー44に対する被写体Sの搬送方向に沿う方向のイメージセンサー44の画素数に基づいて撮像画像I2,I3,…,Inのシフト量を設定する。
【0048】
このように、本実施形態に係る処理装置16は、撮像部24で撮像した複数枚の画像I1,I2,I3,…を図11に示すように並べ直し、後述するように処理することで、被写体Sの位置関係に応じた新たな1枚の被写体表面構成画像Is(図9参照)を生成する。
【0049】
搬送部12による被写体Sの搬送方向、搬送速度及び位置と像I1,I2,…,Inの時間との関係から、例えば、画像I1に対して、画像I2の像抽出部分をΔx、-X軸方向にシフトさせ、これを画像I21とする。同様に、画像I2に対して、画像I3の像抽出部分をΔx、-X軸方向にシフトさせ、これを画像I31とする。すなわち、画像I1に対して画像I3の像抽出部分を2×Δx、-X軸方向にシフトさせる。このようにして、例えば画像I2,I3,…,Inを順次1つ前の画像に対してΔxずつ、-X軸方向にシフトさせる。すなわち、処理装置16は、画像I21,I31,…,In1を作成する。
【0050】
そして、画像I1に対して、このように画像処理した画像I21,I31,…,In1を例えば足し合わせる。このようにすると、処理装置16は、被写体Sの表面に関する像(構成画像)Isを生成することができる。
なお、画像I1,I2間など、画像の一部が重なり得る。この場合、処理装置16は、重なり部分の一方を引いたり、重なり部分の画素値を平均化したりする。このため、被写体表面画像Isを構成するとき、処理装置16は、撮像画像I2,…,Inを基準となる撮像画像I1に対して適宜の四則演算に基づいて合成する。
【0051】
被写体Sの搬送方向をX軸方向とし、撮像部24の視野Fの半分をxとし、イメージセンサー44の搬送方向の画素数をn+1とし、イメージセンサー44のフレームレートをfとし、被写体Sの搬送速度をνとすると、例えば、N+1枚目(Nは自然数)に取得した画像は、1つ前のN枚目に取得した画像に対して-X方向にΔxだけシフトさせて重ねればよい。各撮影画像のシフト量Δxは、Δx=(ν・n)/(2x・f)、で求められる。
【0052】
一例として、x=50mmとし、n=1000pixとし、ν=100m/sとし、f=50fpsとする。このとき、Δx=20pixとして得られる。このため、処理装置16は、複数の画像I2,I3,…,Inを基準となる画像I1に対してΔx=20pix×(n-1)ずつ-X方向にずらして例えば足し合わせることで、被写体Sの表面構成画像Is(図9参照)を得ることができる。このような像Isは、ZX平面において、拡散光ではなく、実質的に平行光と見做せる照明光の正反射光により得られる。
【0053】
本実施形態に係る被写体Sの表面構成画像Is(図9参照)は、ZX平面における限られた方向からの照明光によって得ることができる。このため、本実施形態による光学検査システム10は、被写体Sの表面構成画像Isは、被写体Sの表面に正対する光とは異なる他の光の影響を受けにくい、被写体Sの表面の像Isを取得することができる。搬送により被写体Sと光学検査装置14との位置関係は時々刻々と変化する。このため、被写体の表面に正対する光は、光学検査装置14との位置関係において、時々刻々と変化する。したがって、ある時間における被写体Sの像Inと、他の時間における被写体Sの像In+1とは異なる。そして、処理装置16は、被写体の像をx,n,ν,fとの関係でΔxを設定し、画像処理することで、被写体Sの表面の例えば全体像Isを取得することができる。
【0054】
図12には、実際にプラスチック平板の表面にキズを付けた被写体Sの表面を、本実施形態に係る光学検査システム10を用いて、適宜のフレームレートで撮影した像I1,I2,…,I6を並べたものを示す。上側の像ほど、下側の像に比べて早い時間に撮影した像である。そして、図13には、図12に示す画像に基づいて構成した、1枚の被写体Sの表面構成画像Isを示す。図13に示すように、本実施形態に係る光学検査システム10によれば、実際の被写体Sの表面の像と同等の像(被写体Sの表面構成画像Is)を得ることができる。
【0055】
図14に示すように、処理装置16は、図13に示す被写体Sの表面構成画像Isに対して画像処理(ステップS13)を施すことができる。処理装置16のプロセッサ52は、被写体Sの表面構成画像Isに対して欠陥識別のための画像処理を施すとき、被写体Sの表面構成画像Isに対して、画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行う。ここでは、画像処理の一例としてDoG(Difference of Gaussian)処理を用いるものとする。図13及び図15を見れば明らかなように、被写体Sの表面の構成画像Isからキズdだけが鮮明化された欠陥識別画像Idが得られることがわかる。このような画像処理によって、処理装置16は、被写体Sの表面構成画像Isに示される欠陥を抽出することができる。欠陥識別画像Idは、1つだけでなく、複数得られ得る。
【0056】
処理装置16による画像処理は例えば直線検出やエッジ検出処理、周波数フィルタリング、キャニーフィルタリング、ラプラシアンフィルタリング、ガウシアンフィルタリング、DoG処理等である。被写体Sの表面の欠陥を抽出し得る画像処理であれば具体的な手法はなんでもよい。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、種々の形状を有する被写体Sの表面の状態を把握するための処理を行う、処理装置16、処理装置16を有する光学検査システム10、被写体Sの表面画像Isの構成方法、被写体Sの表面画像Isの構成プログラムが提供される。
【0058】
本実施形態に係る、被写体Sの表面画像Isの構成方法は、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体Sの表面に照射すること、被写体Sの表面を撮像部24で撮像し、基準となる撮像画像I1を含む複数時間における複数枚の撮像画像I1,I2,I3,I4,I5を得ること、撮像画像I1,I2,I3,I4,I5のうちから選択される複数枚の撮像画像I2,I3,I4,I5をそれぞれシフトさせて重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成することを含む。
本実施形態に係る、被写体Sの表面画像Isの構成プログラムは、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体Sの表面に照射したときに撮像部24により得た、基準となる撮像画像I1を含む複数時間における複数枚の撮像画像I1,I2,I3,I4,I5について、撮像画像I1,I2,I3,I4,I5のうちから選択される複数枚の撮像画像I2,I3,I4,I5をシフトさせて重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成する処理を1又は複数のプロセッサ52に実行させる。
本実施形態に係る、被写体表面画像の構成に用いる処理装置は、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体Sの表面に照射したときに撮像部24により得た、基準となる撮像画像I1を含む複数時間における複数枚の撮像画像I1,I2,I3,I4,I5について、撮像画像I1,I2,I3,I4,I5のうちから選択される複数枚の撮像画像I2,I3,I4,I5をシフトさせて重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成する、1又は複数のプロセッサ52を有する。
【0059】
実施形態によれば、光学検査システム10は、被写体Sの表面に対して、それぞれ異なる方向に向かう照明光を照射する照明部22と、被写体Sの表面を所定のフレームレートで撮像する撮像部24(イメージセンサー44)と、被写体Sの表面を照明部22及び撮像部24に対して相対的に所定方向に移動させる搬送部12と、1又は複数のプロセッサ52を有する処理装置16と、を有する。処理装置16の1又は複数のプロセッサ52は、上述したように用いられる。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、種々の形状を有する被写体表面の状態を把握するための処理を行う、処理装置16、処理装置16を有する光学検査システム10、被写体Sの表面画像Isの構成方法、及び、被写体Sの表面画像Isの構成プログラムを提供することができる。
【0061】
実施形態によれば、プロセッサ52は、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成するとき、撮像部24(イメージセンサー44)におけるフレームレート、撮像部24に対する被写体Sの搬送速度、撮像部24に対する被写体Sの搬送方向に沿う方向の撮像部24(イメージセンサー44)の画素数に基づいて撮像画像I2,I3,…,Inのシフト量を設定する。
プロセッサ52は、シフト量Δxを、Δx=(ν・n)/(2x・f)に基づいて設定する。ここで、x:被写体Sの搬送方向に沿う撮像部24(イメージセンサー44)の視野の半分、n+1:被写体Sの搬送方向に沿う撮像部24(イメージセンサー44)の画素数、f:撮像部24(イメージセンサー44)のフレームレート、ν:撮像部24(イメージセンサー44)に対する被写体Sの搬送速度である。
【0062】
プロセッサ52は、撮像画像I2,I3,I4,I5をシフトさせて重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成するとき、基準となる撮像画像I1に対して例えば四則演算に基づいて合成する。
なお、画像I1,I2,…,Inを重ね合わせる方法についてはいろいろな手段が考えられる。例えば、重なった画像同士の複数の画素値を比較し、最も大きい画素値を持つ画素をそのまま構成画像Isにおける画素値として採用することができる。重なった複数の画素値の平均値を採用することができる。この方法で被写体Sの表面画像Isを構成すれば、被写体Sの位置関係が正しく写る構成画像Isを得ることができる。
【0063】
プロセッサ52は、少なくとも1つの被写体表面画像Isに対して欠陥識別のための画像処理を施して被写体表面画像Isにおいて欠陥を抽出させた欠陥抽出画像Idを得る。
【0064】
プロセッサ52は、欠陥識別のための画像処理を施すとき、少なくとも1つの被写体表面画像Isに対して、画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行う。
【0065】
次に、被写体Sの表面全体がXY平面に対して傾斜する例について、図16から図18を用いて説明する。
【0066】
図16には、図5に示す光学検査装置14において、被写体Sの表面が、XY平面に対して傾斜する傾斜平面である例を示す。図16中、照明部22の図示を省略する。図16に示す例では、+X方向に向かうにつれて高くなる傾斜面として形成される。なお、被写体Sの表面に対する、YZ平面に沿う照明光は、図6に示すように拡散光とする。
【0067】
図16に示す例では、ZX平面における撮像部24の光軸Cに沿う照明光は、反射の法則により、撮像部24の結像光学素子42に入射され難くなる。一方、ZX平面における被写体Sへの照明光のうち、反射の法則に基づいて撮像部24の結像光学素子42に向かって反射する光は、正反射成分として撮像部24の結像光学素子42に入射され、イメージセンサー44で撮像される。
【0068】
図17には、図16及び図6に示す光学検査装置14で取得し得る像I1,I2,…,I6の例を示す。上側の像ほど、下側の像に比べて早い時間に撮影した像である。なお、図17中の破線は、視野Fに対する被写体Sの位置及び大きさを示すものであり、画像として得られているわけではない。
【0069】
図18には、上述したフロー(図10参照)に基づいて構成した1枚の被写体Sの表面構成画像Isを示す。被写体Sの表面が傾斜面であっても、上述したものと同様に被写体Sの表面構成画像Isを得ることができる。仮に、実際にプラスチック平板の表面にキズを付けた被写体Sの表面が傾斜面であっても、図12及び図14に示すように被写体Sの表面構成画像Isを得ることができる。処理装置16は、被写体Sの表面構成画像Isに対して画像処理を施すことができる。このような画像処理によって、被写体Sの表面構成画像Isに示される欠陥を抽出することができる(図15参照)。
【0070】
したがって、図16に示す傾斜面の表面を有する被写体Sであっても、本実施形態によれば、種々の形状を有する被写体Sの表面の状態を把握するための処理を行う、処理装置16、処理装置16を有する光学検査システム10、被写体Sの表面画像Isの構成方法、被写体Sの表面画像Isの構成プログラムが提供される。
【0071】
次に、被写体Sの表面がXY平面に対して平行な面と、傾斜する面とが組み合わせて形成される例について、図19から図21を用いて説明する。
【0072】
図19には、図5に示す光学検査装置14において、被写体Sの表面が、XY平面に対して平行な平面S1と、XY平面に対して傾斜する傾斜平面S2とが連続する例を示す。図19中、照明部22の図示を省略する。図19に示す例では、傾斜平面S2は、+X方向に向かうにつれて高くなる傾斜面として形成される。なお、被写体Sの表面に対する、YZ平面に沿う照明光は、図6に示すように拡散光とする。
【0073】
図19に示す例では、ZX平面における撮像部24の光軸Cに沿う照明光は、反射の法則による正反射により、撮像部24の結像光学素子42に入射される。ZX平面における被写体Sへの照明光のうち、反射の法則に基づいて撮像部24の結像光学素子42に向かって反射する光は、正反射成分として撮像部24の結像光学素子42に入射され、イメージセンサー44で撮像される。
【0074】
図20には、図19及び図6に示す光学検査装置14で取得し得る像I1,I2,I3,I4,I5の例を示す。上側の像ほど、下側の像に比べて早い時間に撮影した像である。なお、図20中の破線は、視野Fに対する被写体Sの位置及び大きさを示すものであり、画像として得られているわけではない。
【0075】
図21には、上述したフロー(図10参照)に基づいて構成した1枚の被写体Sの構成画像Isを示す。被写体Sの表面が平面S1と傾斜平面S2との組み合わせであっても、上述したものと同様に被写体Sの表面構成画像Isを得ることができる。仮に、実際にプラスチック平板の表面にキズを付けた被写体Sの表面が傾斜面であっても、図12及び図13に示すように被写体Sの表面構成画像Isを得ることができる。処理装置16は、被写体Sの表面構成画像Isに対して画像処理を施すことができる。処理装置16は、このような画像処理によって、被写体Sの表面構成画像Isに示される欠陥を抽出することができる(図14参照)。
【0076】
したがって、図18に示す平面S1と傾斜平面S2とを組み合わせた表面を有する被写体Sであっても、本実施形態によれば、種々の形状を有する被写体Sの表面の状態を把握するための処理を行う、処理装置16、処理装置16を有する光学検査システム10、被写体Sの表面画像Isの構成方法、被写体Sの表面画像Isの構成プログラムが提供される。
【0077】
なお、図1に示すように、被写体Sの表面が波打った状態の場合であっても、被写体Sの表面は、上述した例のように平面と傾斜面との組み合わせとして、実際の像が取得され、1枚の被写体Sの表面画像Isが構成される。したがって、本実施形態によれば、種々の形状を有する被写体Sの表面の状態を把握するための処理を行う、処理装置16、処理装置16を有する光学検査システム10、被写体Sの表面画像Isの構成方法、被写体Sの表面画像Isの構成プログラムが提供される。
【0078】
(変形例)
図5から図21に示す被写体Sは、被写体Sの全体が1つの視野F内に収まるような大きさの例として図示した。例えば、被写体Sの撮像画像を取り終えてから、適宜の撮像画像I1,I2,…,Inを用いて表面構成画像Isを形成する例について説明した。処理装置16は、例えば、被写体Sの撮像画像を取り終えるよりも前に順次足し合わせて最終的に所定長さの像Isを構成するようにしてもよい。例えばロールから繰り出されるシート状部材などは、搬送方向に沿う長さが例えば数十メートルや数百メートルなどになり、被写体Sの全体が1つの視野F内に収まらない場合があり得る。このような場合、処理装置16は、例えば、図22に示す、以下のフローに基づいて、例えば搬送方向に沿って所定長さに被写体Sの表面の検査範囲を区切るように、所定長さの被写体Sの表面構成画像Isを生成し、被写体Sの表面の状態を把握するための処理を行い得る。
なお、本実施形態に係る処理は、例えば被写体Sの表面構成画像がイメージセンサー44の視野F内に入るような、被写体Sの搬送方向に沿う全体長さが適宜に短い被写体Sにも適用し得る。
【0079】
搬送部12は、所定の速度で被写体Sを+X方向に搬送するものとする。
【0080】
処理装置16は、搬送中の被写体Sの表面に対して、位置によって異なる入射角の照明光を照射したときの被写体Sの表面の一部画像を取得するとともに、取得画像を被写体Sの表面構成画像の第1番目とする(ステップS21)。
【0081】
次に、処理装置16は、搬送方向に沿って被写体Sの後端が撮像部24の視野F内を通り過ぎたか否か判断する(ステップS22)。これは、処理装置16が搬送部12に配置されるセンサー出力を検知してもよく、撮像部24の像の抽出状況によって検知してもよい。ここでは後者であるものとする。
【0082】
被写体Sの後端が撮像部24の視野F内を通り過ぎていない場合(S22-No)、処理装置16は、搬送方向に沿って例えば所定の長さ又は搬送方向に沿う所望の画素数の被写体表面画像Isが取得されたか否か判断する(ステップS23)。ここでは、所定の長さ又は搬送方向に沿う所望の画素数の被写体表面画像Isとは、実質的に、イメージセンサー44に光が入射されたX軸方向に沿う範囲の長さ又は画素をいう。すなわち、仮に、被写体表面画像Isが形成されたときのX軸方向に沿う所望の長さ又は所望の画素数をいう。このため、イメージセンサー44に光が入射されず、像として得られていない部分のX軸方向に沿う長さ又は画素を除外する。
【0083】
被写体Sの搬送方向に沿う長さは、例えば、視野F内の画素数と被写体の寸法とを所定関係に設定し、本フローでの取得画像の取得回数をカウントすることで算出し得る。
【0084】
処理装置16は、所定長さ又は所望の画素数に到達していなければ(ステップS23-No)、再びステップS21の処理を行い、被写体Sの表面の一部画像を取得するとともに、取得画像を被写体Sの表面構成画像の第2番目とする。なお、第1番目の被写体Sの表面の一部画像と、第2番目の被写体Sの表面の一部画像とは、第2番目の被写体Sの表面の一部画像をΔxシフトさせ、第1番目の被写体Sの表面の画像と重ね合わせる。このとき、像の一部が重なることが好適である。
【0085】
処理装置16は、このような作業を繰り返し、例えば第n番目の画像により、所望の長さの被写体表面構成画像(サンプル表面構成画像)Isが得られたら、その時点の像を、被写体Sの表面の構成画像Isとする(S24)とともに、再びステップS21の処理に戻り、新たな第1番目の被写体Sの表面の画像を得る。なお、この新たな第1番目の被写体Sの表面の画像は、1枚の被写体表面画像Isの像の一部と重なることが好適である。
【0086】
なお、被写体Sの後端が撮像部24の視野F内を通り過ぎた場合(S22-Yes)、処理装置16は、ステップS21で生成した画像を表面構成画像Isとして構成する(ステップS25)。
【0087】
本変形例に係る光学検査システム10によれば、実際の被写体Sの表面の像と同等の像(被写体Sの表面構成画像Is)を得ることができる。このとき、被写体Sのうち、適宜の長さの1又は複数の表面構成画像Isを得ることができる(S24)。また、被写体Sの後端を含む1枚の表面構成画像Isを得ることができる(S25)。
【0088】
そして、処理装置16は、被写体Sの表面構成画像Isに対して上述した画像処理(図13及び図15参照)を施すことができる(ステップS13)。このような画像処理によって、被写体Sの表面構成画像Isに示される欠陥を抽出することができる。処理装置16による画像処理は例えば直線検出やエッジ検出処理、周波数フィルタリング、キャニーフィルタリング、ラプラシアンフィルタリング、ガウシアンフィルタリング、DoG(Difference of Gaussian)処理等である。被写体Sの表面の欠陥を抽出し得る画像処理であれば具体的な手法はなんでもよい。
【0089】
したがって、本変形例によれば、種々の形状を有する被写体Sの表面の状態を把握するための処理を行う、処理装置16、処理装置16を有する光学検査システム10、被写体Sの表面画像Isの構成方法、被写体Sの表面画像Isの構成プログラムが提供される。
【0090】
したがって、本実施形態の変形例に係る、被写体Sの表面画像Isの構成方法は、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体Sの表面に照射すること、被写体Sの表面を撮像部24により所定のフレームレートで撮像し、基準となる撮像画像を得るとともに、基準となる撮像画像に続く撮像画像をそれぞれシフトさせてその撮像画像よりも前に撮像した撮像画像と重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成することを含む。
【0091】
また、本実施形態の変形例において、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成するとき、撮像画像の少なくとも複数枚を、撮像部24におけるフレームレート、撮像部24に対する被写体Sの搬送速度、撮像部24に対する被写体Sの搬送方向に沿う方向の撮像部24の画素数に基づいて撮像画像のシフト量を設定する。
【0092】
また、本実施形態の変形例において、少なくとも1つの被写体表面画像Isに対して欠陥識別のための画像処理を施す。
【0093】
本実施形態の変形例に係る、被写体表面画像Isの構成に用いる処理装置16は、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体Sの表面に照射したときに撮像部24により所定のフレームレートで基準となる撮像画像I1を得るとともに、基準となる撮像画像I1に続く撮像画像I2,I3,…,Inを得ながらそれぞれをシフトさせて撮像画像I2,I3,…よりも前に撮像した撮像画像I1,I2,…と順に重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成する、1又は複数のプロセッサ52を有する。
【0094】
本実施形態の変形例に係る、被写体表面画像Isの構成プログラムは、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体Sの表面に照射したときに撮像部24により所定のフレームレートで基準となる撮像画像I1を得るとともに、基準となる撮像画像I1に続く撮像画像I2,I3,…,Inをそれぞれシフトさせて撮像画像I2,I3,…よりも前に撮像した撮像画像と重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成する処理を1又は複数のプロセッサ52に実行させる。
プロセッサ52は、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成するとき、撮像部24におけるフレームレート、撮像部24に対する被写体Sの搬送速度、撮像部24に対する被写体Sの搬送方向に沿う方向の撮像部24の画素数に基づいて撮像画像のシフト量を設定する。
【0095】
プロセッサ52は、、シフト量Δxを、Δx=(ν・n)/(2x・f)に基づいて設定する。ここで、x:被写体Sの搬送方向に沿う撮像部24(イメージセンサー44)の視野の半分、n+1:被写体Sの搬送方向に沿う撮像部24(イメージセンサー44)の画素数、f:撮像部24(イメージセンサー44)のフレームレート、ν:撮像部24(イメージセンサー44)に対する被写体Sの搬送速度である。
【0096】
プロセッサ52は、撮像画像I2,I3,I4,I5をシフトさせて重ね合わせ、少なくとも1つの被写体表面画像Isを構成するとき、基準となる撮像画像I1に対して四則演算に基づいて合成する。
【0097】
プロセッサ52は、少なくとも1つの被写体表面画像Isに対して欠陥識別のための画像処理を施して被写体表面画像Isにおいて欠陥を抽出させた欠陥抽出画像Idを得る。
【0098】
プロセッサ52は、欠陥識別のための画像処理を施すとき、少なくとも1つの被写体表面画像Isに対して、画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行う。
【0099】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る光学検査システム10について、図23から図27を用いて説明する。本実施形態は第1実施形態に係る光学検査システム10の光学検査装置14の変形例であって、第1実施形態で説明下部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0100】
図23には、本実施形態に係る光学検査システム10の模式図を示す。図24には、本実施形態に係る光学検査装置14の概略図を示す。
【0101】
図23及び図24に示すように、本実施形態に係る光学検査装置14は、被写体Sと撮像部24の結像光学素子42との間の光軸C上に、光軸Cと直交し、例えばXY平面に平行なシート状のカラー開口(波長選択部)26が設けられる。カラー開口26は、例えば照明部22のハーフミラー34と撮像部24の結像光学素子42との間に設けられることが好適である。
【0102】
カラー開口26は、少なくとも2つ以上の波長選択領域(本実施形態では3つの波長選択領域72,74,76)を有する。それらをそれぞれ、第1の波長選択領域72、第2の波長選択領域74、第3の波長選択領域76とする。なお、第1の波長選択領域72、第2の波長選択領域74、及び、第3の波長選択領域76が並ぶ方向は、X軸に沿う。つまり、第1の波長選択領域72、第2の波長選択領域74、及び、第3の波長選択領域76は、それぞれX軸と交差する。第1の波長選択領域72、第2の波長選択領域74、及び、第3の波長選択領域76が延びる方向は、Y軸に沿う。つまり、第1の波長選択領域72、第2の波長選択領域74、及び、第3の波長選択領域76は、Y軸に沿って延びている。ただし、この限りではなく、第1の波長選択領域72、第2の波長選択領域74、及び、第3の波長選択領域76はY軸と交差してもよい。
【0103】
第1の波長選択領域72は第1の波長を含む波長スペクトルを有する光線を通過させる。ここで、光線を通過させるとは、透過あるいは反射によって光線を物点から像点に向かわせることを意味する。一方、第1の波長選択領域72は、第1の波長とは異なる第2の波長、第3の波長の光線を実質的に遮蔽する。ここで遮蔽とは、光線を通過させないことを意味する。つまり、光線を物点から像点に向かわせないことを意味する。第2の波長選択領域74は第2の波長の光線を含む波長スペクトルを通過させるが、第1の波長、第3の波長の光線を実質的に遮蔽する。第3の波長選択領域76は第3の波長の光線を含む波長スペクトルを通過させるが、第1の波長、第2の波長の光線を実質的に遮蔽する。このため、カラー開口26の波長選択領域72,74,76は、3つの異なる波長スペクトルの光を選択的に通過させる。
【0104】
例えば、第1の波長は450nmの青光とし、第2の波長は650nmの赤光とし、第3の波長は550nmの緑光とする。ただし、これに限らず、各波長は何でもよい。
【0105】
イメージセンサー44の各画素は少なくとも第1の波長の光線、第2の波長の光線、第3の波長の光線を受光できるとする。本実施形態では、イメージセンサー44の各画素は赤、青、緑の3つの色チャンネルを備えるとする。つまり、波長450nmの青光、波長650nmの赤光、波長550nmの緑光をそれぞれ独立な色チャンネルで受光できるとする。ただし、各色チャンネルは完全に独立である必要はなく、実質は、任意の色チャンネルにおいて感度が高い波長以外の波長にもわずかに感度を持っていてもよい。
【0106】
本実施形態では、カラー開口26は、例えば+X方向に向かって順に、第1の波長選択領域72、第2の波長選択領域74、第3の波長選択領域76が並べられたものを1つのセットし、これが+X方向に向かって複数セット並べられている。
【0107】
本実施形態の光学検査システム10の動作原理について説明する。
【0108】
例えば、それぞれ平行光の光線La,Lbが図24に示すように被写体Sの表面に照射されるとする。図24において、物点Oaは鏡面で欠陥がなく、物点Obには光の波長にサイズが近いミクロンサイズの凹凸欠陥があるとする。このとき、物点Oaにおいて反射する光の方向分布(BRDF;Bidirectional Reflectance Distribution Function)は狭い分布を持つ。一方、物点ObにおけるBRDFは広い分布を持つ。つまり、物点Oaと物点Obにおいて、それぞれ異なるBRDFを有する。
【0109】
照明光Laによって物点Oaから反射光が生じる。物点Oaからの反射光は、カラー開口26の例えば第2の波長選択領域74のみを通過し、例えば、波長650nm(赤光)の波長スペクトルを有する光となる。又は、第1の波長選択領域72及び第2の波長選択領域74を通過し、例えば、波長450nm(青光)、及び、波長650nm(赤光)の波長スペクトルを有する光となる。そして、このような光が撮像部24で撮像される。
【0110】
照明光Lbによって物点Obから反射光が生じる。物点Obからの反射光は、カラー開口26の第1の波長選択領域72、第2の波長選択領域74、第3の波長選択領域76の例えば複数セットを通過する。このため、第1の波長選択領域72を通過した光は、第1の波長の光(青光)となり、第2の波長選択領域74を通過した光は、第2の波長の光(赤光)となり、第3の波長選択領域76を通過した光は、第3の波長の光(緑光)となる。なお、物点Obからの反射光のうち、第1の波長選択領域72に入射した第2の波長の光、第3の波長の光は遮光され、第2の波長選択領域74に入射した第1の波長の光、第3の波長の光は遮光され、第3の波長選択領域76に入射した第1の波長の光、第2の波長の光は遮光される。
【0111】
物点Oaからの反射光が結像光学素子42に到達できれば、物点Oaは結像光学素子42によって第1の像点Iaにうつされる。本実施形態では、物点Obからの反射光は結像光学素子42に到達し、第2の像点Ibにうつされる。
【0112】
しかし、1つの像を取得する場合、もし照明光Laが照明光Lbと同じ方向を向いている場合、物点Oaからの反射光は結像光学素子42に到達できない。なぜならば、物点Oaと物点Obにおける被写体Sの表面の法線方向が異なり、照明方向と法線方向に応じて反射方向が決まるためである。つまり、被写体Sの表面の法線方向に応じて照明光の方向を適切に設定しないと反射光は結像光学素子42に到達できない。反射光が結像光学素子42に到達しなければ、物点Oaは画像に写らないことになる。このため、物点Oaからの反射光が結像光学素子42に到達しなければ、1つの画像では、物点Oaの表面状態を検査することはできない。
【0113】
物点Obは結像光学素子42によって第2の像点Ibにうつされる。しかし、もし第照明光Lbが照明光Laと同じ方向を向いている場合、物点Obからの反射光は結像光学素子42に到達できない。なぜならば、物点Oaと物点Obにおける被写体Sの表面の法線方向が異なり、照明方向と法線方向に応じて反射方向が決まるためである。つまり、被写体Sの表面の法線方向に応じて照明光の方向を適切に設定しないと反射光はレンズに到達できない。反射光が結像光学素子42に到達しなければ、物点Obは画像に写らないことになる。このため、物点Obからの反射光が結像光学素子42に到達しなければ、1つの画像では、物点Obの表面Sの状態を検査することはできない。
【0114】
以上により、それぞれ異なる法線方向を持つ物点Oaと物点Obに対し、異なる方向を有する照明光La,Lbを照射することにより、被写体Sの表面構成画像Isの一部となり得る1つの画像Iをそれぞれ取得することができる。
【0115】
したがって、処理装置16は、第1実施形態で説明したように、複数枚の取得画像から、1枚の被写体Sの構成画像Isを構成する。
【0116】
第1の像点Iaでは、例えば赤光のみがイメージセンサー44によって受光される。そのため、処理装置16において、1種類の波長選択領域74を光が通過したことが認識される。又は、第1の像点Iaでは、青光及び赤光がイメージセンサー44によって受光される。そのため、処理装置16において、2種類の波長選択領域72,74を光が通過したことが認識される。
【0117】
一方、第2の像点Ibにおいて、青光、赤光、緑光が同時に受光される。そのため、処理装置16において、3種類の波長選択領域72,74,76を光が通過したことが認識される。このように、色の数を推定する処理を色数推定処理と呼ぶ。処理装置16のプロセッサ52は、色数推定処理により各像点Ia,Ibで受光した色数(色の数)を取得できる。
【0118】
被写体Sの表面構成画像Isは各画素で取得した色の数の情報を持っている。このため、処理装置16は、各画素における色の数の情報に基づいて、画像処理を行うことで、欠陥部分として抽出することができる。本実施形態の例では、処理装置16のプロセッサ52が3つの色数を受光したと出力した場合、その受光位置に対応する物点に欠陥がある、と判断する。また、処理装置16のプロセッサ52が1つの色数のみを受光したと出力した場合、その受光位置に対応する物点には欠陥がない、と判断する。また、処理装置16のプロセッサ52が2つの色数を受光したと出力した場合、光が領域72,74の境界又は領域74,76の境界を通過する可能性があるため、その受光位置に対応する物点には欠陥がない、と判断する。
【0119】
被写体Sの表面性状・微小形状によってさまざまな方向に反射される光を一般的に散乱光と呼ぶ。すでに上述したように、散乱光の分布の広がりの程度はBRDFで表せる。また、色数が大きいBRDFは広がっており、色数が小さいほどBRDFは狭くなると考えられる。つまり、色数推定処理により、各像点における色数が取得できれば、各物点におけるBRDFの違いを識別できる。これにより、少なくとも2つの異なる波長選択領域72,74,76を有するカラー開口26を通過した被写体Sからの光を撮像して画像を取得し、その画像から光が通過した波長選択領域72,74,76の数を推定する色数推定処理を行い、色数を取得し、色数に基づき、被写体Sの表面からの散乱光の方向分布を識別することができる。BRDFは表面Sの性状・微小形状と相関があるため、本実施形態により、被写体Sの表面における各物点Oa,Obの表面Sの性状・微小形状の違いを識別できるという効果がある。これにより、照明を分光することなく、処理装置16は、非接触で被検体Sの表面の性状・微小形状(表面の状態)を識別できる。
【0120】
図25には、プラスチック平板の表面にキズを付けた被写体Sの表面を、本実施形態に係る光学検査システム10を用いて、適宜のフレームレートで撮影した像I1,I2,I3,I4,I5を取得し、並べたものを示す(ステップS11)。処理装置16は、これら像I1,I2,I3,I4,I5を第1実施形態で説明したようにシフトし、例えば足し合わせると、図26に示す表面画像Isを得ることができる。すなわち、本実施形態では、図14に示すフローに基づいて、各画像I1,I2,…,Inがこのような欠陥の有無の情報を持った状態で、適宜にシフトされ、被写体Sの少なくとも1つの表面画像Isが構成される(ステップS12)。
【0121】
さらに、このような被写体Sの少なくとも1つの表面画像Isに基づいて、プロセッサ52は、少なくとも1つの被写体表面画像Isに対して欠陥識別のための画像処理を施して被写体表面画像Isにおいて欠陥を抽出させた欠陥抽出画像Idを得る(ステップS13)。プロセッサ52は、欠陥識別のための画像処理を施すとき、少なくとも1つの被写体表面画像Isに対して、画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行う。
【0122】
なお、例えば、物点Oaは鏡面であるから、物点Oaからの反射光は、狭い分布を持つBRDFとなる。この場合であっても、第1の波長選択領域72と第2の波長選択領域74との境界を通る場合、2色を持ってイメージセンサー44に入射される場合がある。このため、カラー開口26は、3つの領域を1つのセットとして形成されることが好適である。各領域72,74,76の幅は同じであることが好適であるが、異なっていてもよい。
【0123】
このように、撮像部24に多色のカラー開口(カラーフィルター)を設けると、曲面上で反射する光の方向分布(BRDF)に応じて撮影画像の色を変化させることができる。すなわちBRDF情報を色情報として取得することができ、これに基づいて被写体Sの表面における欠陥を識別することができる。
【0124】
具体的には、取得した画像の色情報に対して画像処理を施すことによって欠陥を検出する。画像処理は例えば直線検出やエッジ検出処理、周波数フィルタリング、キャニーフィルタリング、ラプラシアンフィルタリング、ガウシアンフィルタリング、DoG(Difference of Gaussian)処理等である。被写体Sの欠陥が検出できる画像処理であれば具体的な手法はなんでもよい。
【0125】
ここで、例として、プラスチック板の表面に存在するキズを、本実施形態の光学検査システム10の光学検査装置14で撮像した画像I1,I2,…,Inに基づく被写体Sの表面画像Isと、その画像Isに対して画像処理を施して欠陥を識別した欠陥識別画像Idを図27に示す。画像処理には例としてDoG処理を用いた。図26及び図27を見れば明らかなように、取得画像からキズだけが鮮明化されたことがわかる。
【0126】
本実施形態に係る処理装置16は、第1実施形態で説明したフロー(図14参照)に基づいて複数枚の画像I1,I2,…,In(図25参照)に基づいて1枚の構成画像Is(図26参照)を得た後で、欠陥を識別するための画像処理を施し欠陥識別画像Id(図27参照)を得た。処理装置16は、被写体Sの表面画像Isを構成した後、被写体Sの表面画像Isに対して欠陥識別のための画像処理を施すことによって、実質的に画像処理は1枚の画像Isに対してのみ施せばよいことになるので計算にかかるコストを低減でき、結果として高速な検知が可能となる。また、処理装置16が欠陥識別画像Idを得るためには、撮像部24で撮像した複数枚の画像I1,I2,…,Inのすべてを処理装置16で保持あるいは保存する必要は必ずしもない。すなわち、撮像部24から処理装置16へと順次転送される画像データに対し、第1実施形態で述べた、被写体Sの表面画像Isを保持していれば、欠陥識別画像Idを得ることができるため、処理装置16は、順次転送される画像データすべてを処理装置16の記憶装置54で保持あるいは保存しなくてもよい。撮像部24で得たすべての画像を保持あるいは保存しなくてよいということは、保持や保存にかかる処理コストを低減できるということである。また、処理装置16は、処理コストが低減した分だけ高速な動作が可能になるという利点もある。
【0127】
本実施形態によれば、光学検査システム10の光学検査装置14は、被写体Sと撮像部24との間に設けられるカラー開口26を有する。カラー開口26は、少なくとも1つの面内(ZX平面)において、異なる波長スペクトルの光を選択的に通過させる少なくとも2つの波長選択領域72,74,76を有する。撮像部24(イメージセンサー44)は、波長選択領域72,74,76を通過する、異なる波長スペクトルの光を受光可能である。そして、処理装置16(プロセッサ52)は、撮像部24で受光した波長スペクトルの光の色数に基づいて被写体Sの表面の欠陥を出力可能である。
【0128】
本実施形態によれば、種々の形状を有する被写体Sの表面の欠陥識別画像Idの構成に用いる処理装置16、処理装置を有する光学検査システム10、被写体Sの表面の欠陥識別画像Idの構成に用いる構成プログラムを提供することができる。
【0129】
(変形例)
第2実施形態の変形例に係る光学検査システム10について図28及び図29を用いて説明する。
【0130】
上述した第2実施形態に係る処理装置16では、一旦、各撮像画像I1,I2,…,Inから被写体Sの表面構成画像Is(図26参照)を構成した後、処理装置16がその被写体Sの表面構成画像Isを画像処理して、欠陥を抽出した1つの欠陥抽出画像Id(図27参照)を構成するものとした。
【0131】
図28に示すように、処理装置16は、画像I1,I2,…,Inを取得するごとに欠陥抽出画像Id1,Id2,…,Idnを構成し、これらを適宜に重ね合わせて被写体Sの1つの表面画像Isの構成を経ずに、1つの欠陥抽出画像Idを構成する。
【0132】
変形例に係る処理装置16のプロセッサ52は、図29に示すフローに基づいて動作させる。
【0133】
処理装置16はまず、複数の画像I1,I2,…,Inを取得する(ステップS31)。処理装置16は、複数の画像I1,I2,…,Inに対してそれぞれ、欠陥識別処理を施し、欠陥識別のための複数の一部構成画像Id1,Id2,…,Idnを得る(ステップS32)。したがって、本変形例によれば、プロセッサ52は、撮像画像I1,I2,…,Inに対して欠陥識別のための画像処理を施して撮像画像I1,I2,…,Inにおいて欠陥を抽出させる。また、プロセッサ52は、欠陥識別のための画像処理を施すとき、撮像画像に対して、画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行う。
【0134】
そして、処理装置16は、得られた欠陥識別のための複数の一部構成画像Id1,Id2,…,Idnに対して適宜に画像をシフトさせて、例えば四則演算を行い、1枚の欠陥識別画像Idを得る(ステップS33)。複数の画像I1,I2,…,Inにまたがって同一の欠陥が識別された場合、処理装置16は、各画像I1,I2,…,Inから直接的に欠陥識別のための複数の一部構成画像(欠陥識別変換画像)Id1,Id2,…,Idnを構成し、これらを例えば足し合わせて1枚の欠陥識別画像Idを得る際に、識別されたその欠陥の信号が重ね合わされ増大する効果がある。すなわち、処理装置16は、欠陥識別がより頑健、高精度に実施できるという利点がある。
【0135】
本変形例によれば、被写体Sの表面の欠陥識別画像Idの構成に用いる処理装置16は、それぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体Sの表面に照射したときに撮像部24により所定のフレームレートで基準となる撮像画像I1を得ると、基準となる撮像画像I1に対して欠陥識別のための画像処理を施して、基準となる撮像画像I1に対応する基準欠陥識別画像(基準欠陥識別変換画像)Id1を得るとともに、基準となる撮像画像I1に続く撮像画像I2,…を得ながらそれぞれに欠陥識別のための画像処理を施して撮像画像I2,…を欠陥識別画像(欠陥識別変換画像)Id2,…とし、欠陥識別画像Id2,Id3,…のそれぞれをシフトさせて、基準欠陥識別画像Id1に続く欠陥識別画像Id2,Id3,…を順に重ね合わせ、少なくとも1つの被写体Sの表面の欠陥識別画像Idを構成する、1又は複数のプロセッサ52を有する。
本実施形態に係る、欠陥識別画像Idの構成方法は、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体Sの表面に照射すること、被写体Sの表面を撮像部24で撮像し、基準となる撮像画像I1を含む複数時間における複数枚の撮像画像を得ること、複数枚の撮像画像I2,I3,…,Inに対して欠陥識別のための画像処理を施して、複数時間における複数枚の撮像画像I1,I2,…,Inの欠陥識別変換画像Id1,Id2,…,Idnを生成すること、複数枚の欠陥識別変換画像Id1,Id2,…,Idnから選択される1又は複数の欠陥識別変換画像Id2,Id3,…,Idnをシフトさせて基準となる撮像画像I1に対応する基準欠陥識別変換画像Id1に重ね合わせ、少なくとも1つの欠陥識別画像Idを構成することを含む。
言い換えると、本実施形態に係る、欠陥識別画像Idの構成プログラムは、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を、照明光に対して相対的に移動する被写体Sの表面に照射すること、被写体Sの表面を撮像部24で撮像し、基準となる撮像画像I1を含む複数時間における複数枚の撮像画像を得ること、複数枚の撮像画像I2,I3,…,Inに対して欠陥識別のための画像処理を施して、複数時間における複数枚の撮像画像I1,I2,…,Inの欠陥識別変換画像Id1,Id2,…,Idnを生成すること、複数枚の欠陥識別変換画像Id1,Id2,…,Idnから選択される1又は複数の欠陥識別変換画像Id2,Id3,…,Idnをシフトさせて基準となる撮像画像I1に対応する基準欠陥識別変換画像Id1に重ね合わせ、少なくとも1つの欠陥識別画像Idを構成すること1又は複数のプロセッサに実行させる。
【0136】
本変形例によれば、種々の形状を有する被写体Sの表面の欠陥識別画像Idの構成に用いる処理装置16、処理装置を有する光学検査システム10、欠陥識別画像Idの構成方法、被写体Sの表面の欠陥識別画像Idの構成に用いる構成プログラムを提供することができる。
【0137】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る光学検査システム10について、図30から図32を用いて説明する。本実施形態は第1実施形態及び第2実施形態に係る光学検査システム10の変形例であって、第1実施形態及び第2実施形態で説明下部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
本実施形態では、処理装置16は、上述した被写体Sの表面構成画像Isの構成処理に加えて、又は、上述した被写体Sの表面構成画像Isの構成処理に代えて、被写体Sの表面の位置に応じた角度を推定する処理を行う例について説明する。ここでは被写体Sの表面構成画像Isの構成処理の説明は省略する。
【0138】
図30に示すように、例えば搬送部12で搬送される被写体Sの表面からの正反射光は、被写体Sの表面の傾斜角度に応じて変化する。そして、ZX平面内でのイメージセンサー44への正反射光の入射位置は、被写体Sの表面のX軸に対する傾斜角度に応じて変化する。なお、図30中、照明部22の図示を省略する。
【0139】
ここで、図31に示す光学検査装置14を考える。図31中の照明部32からの光は、ZX平面において、撮像部24の光軸C上から光軸Cに沿って被写体Sの表面に向かう平行光であり、撮像部24の光軸C上から+xの位置で被写体Sの表面に向かう平行光であり、撮像部24の光軸C上から-xの位置で被写体Sの表面に向かう平行光である。このため、照明部22は、少なくとも1つの面内(ZX平面内)においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を被写体Sの表面に照射する。
撮像部24の結像光学素子42と被写体Sの表面との距離をaとする。結像光学素子42とX軸方向に沿う撮像部24の視野Fの半分xとを結ぶ仮想的な線分と、撮像部24の光軸と、のなす角度をθcとする。
また、光源32が撮像部24の光軸上の点光源であるとする。光源32と被写体Sの表面との距離をaとする。撮像部24の光軸とX軸方向に沿う撮像部24の視野Fの半分xとのなす角度をθcとする。光源32とX軸方向に沿う撮像部24の視野Fの半分xとを結ぶ仮想的な線分と、撮像部24の光軸と、のなす角度をθlとする。
被写体Sの表面のある位置における傾斜角度θsと、その位置で反射された光が画像上(イメージセンサー44上)に写る画素位置nは次の関係式で表される。
θs=1/2tan-1{x/a(2n/n-1)}+
1/2tan-1{x/a(2n/n-1)}
このため、視野F内のうち、光がイメージセンサー44に入力され、各撮像画像I1,I2,…,Inが得られた画素位置nが検出されると、x,a,n,aは光学検査装置14から既知であるため、角度θsが算出される。処理装置16は、画素位置nを、各撮像画像I1,I2,…,Inの画素値、すなわち、明るさ等から判定することができる。このため、各撮像画像I1,I2,…,In上の画素位置nと被写体Sの表面の傾斜角度とが1対1に対応する。
【0140】
なお、例えばθsが0°近傍であり、被写体Sの表面がXY平面に平行であり、照明光が撮像部24の光軸上で、光軸に沿って被写体Sに照射される場合、各撮像画像I1,I2,…,In上の実視野Fの符号Ob(図30参照)で示す位置に正反射光が入射される。被写体Sの表面の傾斜角度に応じて、被写体Sの表面からの反射光は、撮像部24に入射される。傾斜面の法線方向が向かう方向に応じて、被写体Sの表面からの反射光は、撮像部24のイメージセンサー44のうち、+X方向側に入射されるか、-X方向側に入入射されるか分かれる。例えば図30に示す物点Oaで示す位置の傾斜面の例では、被写体Sの表面からの反射光は、撮像部24のイメージセンサー44のうち、+X方向側に入射される。そして、物点Oaで示す位置の傾斜面の傾斜角度が大きいほど、被写体Sの表面からの反射光は、撮像部24のイメージセンサー44のうち、+xに近い側に入射され、傾斜角度が小さいほど、被写体Sの表面からの反射光は、撮像部24のイメージセンサー44のうち、光軸Cに近い位置に入射される。
また、図示しないが、傾斜面が物点Oaに示す位置での向きとは反対向きである場合、被写体Sの表面からの反射光は、撮像部24のイメージセンサー44のうち、-X方向側に入射される。
【0141】
第1実施形態で説明した光学検査装置14を用いた図5から図21に示す例のように、光学検査装置14で搬送中の被写体Sの画像I1,I2,…,Inを複数枚撮影すると、傾斜角度や曲面の形状(傾斜角度)に応じて画像I1,I2,…,Inの写り方が変わる。つまり、搬送中の被写体Sを撮影して得た複数の画像I1,I2,…,Inは、被写体Sの元々の位置関係が必ずしも保たれていない。そして、この角度θsに基づくと、得られた画像I1,I2,…,Inから被写体Sの表面の傾斜角度が推定される。すなわち、処理装置16は、実際に得られた画像I1,I2,…,Inに基づいて、被写体Sの表面の傾斜角を推定することができる。
【0142】
したがって、図32に示すように、処理装置16のプロセッサ52は、例えば、搬送部12で被写体Sを搬送しながら、被写体Sの位置によって異なる入射角の照明光を照射した画像を取得する(ステップS41)。このときの取得された画像I1,I2,…,Inは、被写体Sの表面の角度情報をそれぞれ含む。
【0143】
そして、処理装置16のプロセッサ52は、各画像I1,I2,…,Inに基づいて、被写体Sの表面の傾斜角度を出力(推定)する(ステップS42)。このため、本実施形態に係る光学検査システム10により、例えば被写体Sの表面の角度を推定することができる。これにより、処理装置16のプロセッサ52は、例えば被写体Sの表面に存在し得るキズとともに、被写体Sの表面が所望の形状に形成されているか、推定することができる。
【0144】
したがって、本実施形態に係る、被写体Sの表面の角度推定方法は、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を被写体Sの表面に照射すること、被写体Sの表面を撮像部24で撮像し、撮像画像I1,I2,…,Inを得るとともに、撮像画像I1,I2,…,Inにおける光が入射された画素の位置を特定すること、光が入射された画素の位置に基づいて、撮像画像I1,I2,…,Inに写る被写体Sの表面の傾斜角度を推定することを含む。
【0145】
本実施形態に係る、被写体Sの表面の傾斜角度の推定プログラムは、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を被写体Sの表面に照射したときに撮像部24により得た撮像画像I1,I2,…,Inのうち、光が入射された画素の位置に基づいて、撮像画像I1,I2,…,Inに写る被写体Sの表面の傾斜角度を推定する処理を1又は複数のプロセッサ52に実行させる。
【0146】
本実施形態に係る、被写体Sの表面の傾斜角度を算出するための処理装置16は、少なくとも1つの面内においてそれぞれ異なる方向に向かう照明光を被写体Sの表面に照射したときに撮像部24により得た撮像画像I1,I2,…,Inのうち、光が入射された画素の位置に基づいて、撮像画像I1,I2,…,Inに写る被写体Sの表面の傾斜角度を推定する、1又は複数のプロセッサ52を有する。
【0147】
そして、実施形態によれば、撮像部24と被写体Sの表面との距離をaとし、撮像部24と被写体Sの搬送方向に沿う撮像部24の視野Fの半分をxとし、照明光の光源32が撮像部24の光軸C上の点光源であるとするとき、光源32と被写体Sの表面との距離をaとし、被写体Sの表面のある位置における傾斜角度をθとし、撮像部24が被写体Sの搬送方向に沿う画素数をn+1(nは自然数)とし、撮像部24で撮像される像のうち、被写体Sの表面からの光が入射される位置の画素位置をnとするとき、プロセッサ52は、θ=1/2tan-1{x/a(2n/n-1)}+1/2tan-1{x/a(2n/n-1)}に基づいて被写体Sの表面の傾斜角度を推定する。
【0148】
本実施形態によれば、被写体Sの表面の角度推定方法、及び、被写体Sの表面の傾斜角度の推定プログラムを提供することができる。
【0149】
以上述べた少なくともひとつの実施形態によれば、種々の形状を有する被写体表面の状態を把握するための処理を行う、又は、被写体表面の欠陥識別画像の構成に用いる処理装置、処理装置を有する光学検査システム、被写体表面画像の構成方法、欠陥識別画像の構成方法、被写体表面画像の構成プログラム、被写体表面の角度推定方法、及び、被写体表面の傾斜角度の推定プログラムを提供することができる。
【0150】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0151】
10…光学検査システム、12…搬送部、14…光学検査装置、16…処理装置、22…照明部、24…撮像部、32…光源、34…ハーフミラー(ビームスプリッター)、36…照明レンズ、42…結像光学素子、44…イメージセンサー、52…プロセッサ、54…記憶装置、I1,I2,…,In…撮像画像、Is…表面構成画像、S…被写体。
図1
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