(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025086947
(43)【公開日】2025-06-10
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/44 20060101AFI20250603BHJP
H02K 3/487 20060101ALI20250603BHJP
【FI】
H02K3/44 B
H02K3/487
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201239
(22)【出願日】2023-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】吉村 友彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 希幸
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA03
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC04
5H604CC16
(57)【要約】
【課題】コイルの冷却効率の向上に寄与できる回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機3におけるステータ21は、円筒状のヨーク39及び複数のティース43を有し、ヨーク39の周方向で隣り合うティース43の間にスロット47が区画されたステータコア27と、ティース43に巻回されたコイル31と、ステータコア27とコイル31とを樹脂でモールド成形した樹脂モールド部35と、を有する。スロット47には、ヨーク39の径方向に開口するスロット開口48を塞ぐ柱状の絶縁部材33が配置されている。スロット47内において、絶縁部材33とコイル31との間に樹脂モールド部35が設けられることによって、絶縁部材33とコイル31とが離間配置される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に固定されるとともに前記回転軸と一体に回転するロータと、
前記ロータの外側に配置され、円筒状のヨーク、及び、前記ヨークの内周面から前記ロータに向けて突出する複数のティースを有し、前記ヨークの周方向で隣り合う前記ティースの間にスロットが区画されたステータコアと、前記ティースに巻回されたコイルと、前記ステータコアと前記コイルとを樹脂でモールド成形した樹脂モールド部と、を有するステータと、
前記回転軸、前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジングと、を備える回転電機であって、
前記スロットには、前記スロットが前記ロータに向けて前記ヨークの径方向に開口するスロット開口を塞ぐ柱状の絶縁部材が配置され、
前記スロット内において、前記絶縁部材と前記コイルとの間に前記樹脂モールド部が設けられることによって、前記絶縁部材と前記コイルとが離間配置されることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記スロット内において、前記径方向における前記絶縁部材と前記コイルとの間の前記樹脂モールド部の最小厚さは、前記径方向における前記絶縁部材の最大厚さよりも薄い請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記絶縁部材は、前記ヨークの軸方向に延在し、内部に前記樹脂モールド部が設けられている軸方向延在路と、前記軸方向延在路から分岐して前記コイルに向けて開口し、内部に前記樹脂モールド部が設けられている分岐路と、を有している請求項1又は2記載の回転電機。
【請求項4】
前記絶縁部材は、前記スロット内において、前記コイルに向けて突出し、前記ヨークの軸方向に並ぶ複数の突出部と、各前記突出部を前記軸方向に各々が貫通し、内部に前記樹脂モールド部が設けられている複数の貫通路と、を有し、
各前記貫通路の間から前記コイルに向けて前記樹脂がモールドされている請求項1又は2記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の回転電機が開示されている。この回転電機は、回転軸と、ロータと、ステータと、これら回転軸、ロータ及びステータを収容するハウジングと、を備えている。
【0003】
ロータは、回転軸に固定されるとともに、回転軸と一体に回転する。ステータは、ロータの外側に配置されたステータコアと、コイルと、樹脂モールド部と、を有している。
【0004】
ステータコアは、円筒状のヨークと、ヨークの内周面からロータに向けて突出する複数のティースと、を有している。周方向で隣り合う各ティースの間にはスロットが形成されている。
【0005】
コイルは、ティースに巻回されている。
【0006】
樹脂モールド部は、ステータコアとコイルとを樹脂でモールド成形している。
【0007】
この回転電機では、樹脂モールド部の内側にコイルを封止するとともに、樹脂モールド部によってステータコアに対してコイルを固定している。また、この回転電機では、コイル全体ではなく、コイルを部分的に樹脂モールド部で覆うことによって、コイルの冷却効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、回転電機においては、放熱効率を高めるために、コイルの冷却効率をさらに向上させることが望まれている。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、コイルの冷却効率の向上に寄与できる回転電機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の回転電機は、回転軸と、
前記回転軸に固定されるとともに前記回転軸と一体に回転するロータと、
前記ロータの外側に配置され、円筒状のヨーク、及び、前記ヨークの内周面から前記ロータに向けて突出する複数のティースを有し、前記ヨークの周方向で隣り合う前記ティースの間にスロットが区画されたステータコアと、前記ティースに巻回されたコイルと、前記ステータコアと前記コイルとを樹脂でモールド成形した樹脂モールド部と、を有するステータと、
前記回転軸、前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジングと、を備える回転電機であって、
前記スロットには、前記スロットが前記ロータに向けて前記ヨークの径方向に開口するスロット開口を塞ぐ柱状の絶縁部材が配置され、
前記スロット内において、前記絶縁部材と前記コイルとの間に前記樹脂モールド部が設けられることによって、前記絶縁部材と前記コイルとが離間配置されることを特徴とする。
【0012】
本発明の回転電機では、スロットにおける径方向の内方のスロット開口が絶縁部材によって塞がれている。そして、スロット内において、絶縁部材とコイルとの間に樹脂モールド部が設けられることによって、絶縁部材とコイルとが離間配置されている。
【0013】
かかる構成においては、スロット内に樹脂モールド部が形成される際、スロット内のコイルには、絶縁部材とコイルとの間に徐々に充填されていく未硬化樹脂からの加圧力が作用する。これにより、スロット内においてコイルが絶縁部材から離間する方向に押しやられる。その結果、コイルとステータコアとの接触面積が増大する。このコイルを絶縁部材から離間する方向に押しやろうとする加圧力は、スロット内において絶縁部材とコイルとの間に設けられた樹脂モールド部によって維持される。よって、回転電機の作動中、コイルからステータコアへの伝熱性が向上する。
【0014】
したがって、本発明の回転電機は、コイルの冷却効率の向上に寄与できる。
【0015】
スロット内において、ヨークの径方向における絶縁部材とコイルとの間の樹脂モールド部の最小厚さは、ヨークの径方向における絶縁部材の最大厚さよりも薄いことが好ましい。
【0016】
この場合、径方向における絶縁部材とコイルとの間の樹脂モールド部の最小厚さが径方向における絶縁部材の最大厚さよりも厚い場合と比較して、絶縁部材とコイルとの間の樹脂モールド部からコイルに作用する径方向の外方への加圧力を増大させてコイルとステータコアとの接触面積が増大させるのに有利となる。このため、コイルからステータコアへの伝熱性を一層向上させることができる。
【0017】
絶縁部材は、ヨークの軸方向に延在し、内部に樹脂モールド部が設けられている軸方向延在路と、軸方向延在路から分岐してコイルに向けて開口し、内部に樹脂モールド部が設けられている分岐路と、を有していることが好ましい。
【0018】
この場合、分岐路の開口からコイルに向けて樹脂モールド部の樹脂がモールドされる。このため、より効果的に、樹脂モールド部の樹脂によってコイルを絶縁部材から離間する方向に押しやることができる。その結果、コイルからステータコアへの伝熱性を一層向上させることができる。
【0019】
絶縁部材は、スロット内において、コイルに向けて突出し、ヨークの軸方向に並ぶ複数の突出部と、複数の突出部を軸方向に各々が貫通し、内部に樹脂モールド部が設けられている複数の貫通路と、を有していることが好ましい。そして、各貫通路の間からコイルに向けて樹脂モールド部の樹脂がモールドされていることが好ましい。
【0020】
この場合、軸方向に並ぶ複数の突出部の間において、樹脂モールド部の樹脂によってコイルを絶縁部材から離間する方向に押しやることができる。このため、スロット内の軸方向の中央部に近い部位、すなわちスロット内のコイルが高温になり易い部位で、コイルを絶縁部材から離間する方向に押しやることができる。その結果、コイルからステータコアへの伝熱性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回転電機は、コイルの冷却効率の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施例1の回転電機を備える電動圧縮機を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例1の回転電機に係り、ステータを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例1の回転電機に係り、ステータコアを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例1の回転電機に係り、ステータコアのティースにコイルを巻回した状態を模式的に示す軸心O方向と直角方向の断面図である。
【
図5】
図5は、実施例1の回転電機に係り、絶縁部材に相当するセパレータを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施例1の回転電機に係り、ステータコアのティースに巻回したコイルとティースとの間にセパレータを軸心O方向から挿入した状態を模式的に示す部分斜視図である。
【
図7】
図7は、実施例1の回転電機に係り、ステータコアのティースに巻回したコイルとティースとの間にセパレータを軸心O方向から挿入した状態を模式的に示す軸心O方向と直角方向の断面図である。
【
図8】
図8は、実施例1の回転電機に係り、
図7のA-A断面を模式的に示す軸心O方向の断面図である。
【
図9】
図9は、実施例1の回転電機に係り、ステータを模式的に示す軸心O方向と直角方向の断面図である。
【
図10】
図10は、実施例1の回転電機に係り、
図9のB-B断面を模式的に示す軸心O方向の断面図である。
【
図11】
図11は、実施例2の回転電機に係り、絶縁部材に相当する第1蓋部材を一体に有するボビンをステータコアのティースに取り付ける様子を模式的に示す部分斜視図である。
【
図12】
図12は、実施例2の回転電機に係り、第1蓋部材を一体に有するボビンをステータコアのティースに取り付けた後、そのボビンにコイルを巻回した状態を模式的に示す部分斜視図である。
【
図13】
図13は、実施例3の回転電機に係り、絶縁部材に相当する第2蓋部材を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、実施例3の回転電機に係り、ステータコアのティースに第2蓋部材が取り付けられた状態を模式的に示す部分斜視図である。
【
図15】
図15は、実施例3の回転電機に係り、ステータコアのティースにコイルを巻回した後、そのティースに第2蓋部材を取り付けた状態を模式的に示す軸心O方向と直角方向の断面図である。
【
図16】
図16は、実施例3の回転電機に係り、
図15のC-C断面を模式的に示す軸心O方向の断面図である。
【
図17】
図17は、実施例3の回転電機に係り、ステータを模式的に示す軸心O方向と直角方向の断面図である。
【
図18】
図18は、実施例3の回転電機に係り、
図17のD-D断面を模式的に示す軸心O方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例1~3を図面を参照しつつ説明する。実施例1~3の回転電機を備える電動圧縮機は、図示しない車両に搭載されており、車両の冷凍回路を構成している。
【0024】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の回転電機を備える電動圧縮機は、ハウジング1と、電動モータ3と、圧縮機構5と、インバータ7とを備えている。電動モータ3は、本発明における「回転電機」の一例である。ハウジング1は、筒状のハウジング本体11と、第1カバー13と、第2カバー15とを有している
【0025】
本実施例では、
図1に示す実線矢印によって、電動圧縮機及び電動モータ3の前後方向を規定している。この電動圧縮機は、自己の前方が車両の前方となり、自己の後方が車両の後方となる姿勢で車両に搭載されている。なお、電動圧縮機は、搭載される車両に応じて、自己の姿勢を適宜変更可能である。
【0026】
図1に示すように、ハウジング本体11は、後壁11aと周壁11bとを有している。後壁11aは、ハウジング本体11の後端に位置しており、ハウジング本体11の径方向に延びている。周壁11bは、後壁11aと接続しており、後壁11aから軸心O方向で前方に向かって延びている。これらの後壁11aと周壁11bとにより、ハウジング本体11は、軸心O方向に延びる有底の略円筒状に形成されている。ここで、軸心O方向は、電動モータ3の前後方向と平行である。また、以下の説明において、単に径方向又は周方向というときは、それぞれ軸心O方向の径方向又は周方向を意味する。
【0027】
これらの後壁11a及び周壁11bによって、ハウジング本体11の内部には、モータ室17が形成されている。モータ室17は、後壁11a及び周壁11bによって、ハウジング本体11、ひいては電動圧縮機の外部から区画されている。図示を省略するものの、周壁11bにはモータ室17に連通する吸入口が形成されている。この吸入口を通じてモータ室17内には冷媒ガスが吸入される。
【0028】
また、周壁11bの前端には、複数のボルト孔11cが形成されている。ボルト孔11cは、軸心O方向で後方に向かって延びている。なお、
図1では、複数のボルト孔11cのうちの一つを図示している。
【0029】
第1カバー13は、ハウジング本体11の前方に位置している。第1カバー13は、各ボルト孔11cに挿通された複数のボルト13aによって、周壁11bの前端に固定されている。第1カバー13の内部には、吐出室(図示略)が形成されている。なお、
図1では、複数のボルト13aのうちの一つを図示している。
【0030】
第2カバー15は、ハウジング本体11の後方に位置している。第2カバー15は図示しない複数のボルトによって、後壁11aに固定されている。第2カバー15は有底の筒状に形成されており、後壁11aとの間にインバータ室19を形成している。
【0031】
インバータ7は、インバータ室19に収容されている。インバータ7は電動モータ3の作動制御を行う。なお、インバータ7は公用品であり、構成に関する詳細な説明を省略する。
【0032】
電動モータ3は、具体的には、圧縮機用の電動モータである。電動モータ3は、モータ室17内に設けられている。また、電動モータ3は、インバータ7と電気的に接続されている。
【0033】
電動モータ3は、ステータ21と、回転軸23と、ロータ25とを備えている。
【0034】
ステータ21は、ロータ25の外側に配置され、
図3及び
図4等に示すステータコア27と、
図1、
図4、
図6~
図10に示すコイル31と、
図5~
図10に示すセパレータ33と、
図1、
図2、
図9及び
図10に示す樹脂モールド部35と、を備えている。セパレータ33は、本発明における「絶縁部材」の一例である。
【0035】
図1に示すように、ステータコア27は、多数の電磁鋼板37を軸心O方向に積層することにより形成されている。
図3及び
図4等に示すように、ステータコア27は、筒状のヨーク39と、6個のティース43とを有している。各電磁鋼板37におけるヨーク39の外周縁部41が互いに溶接されることにより、ステータコア27として一体化されている。なお、カシメ加工によって各電磁鋼板37を固定してもよい。各電磁鋼板37におけるヨーク39の外周縁部41以外の部位は、軸心O方向に隣り合う電磁鋼板37同士は積層されているだけで互いに固定されていない。なお、ステータ21は、焼嵌めによってハウジング本体11の周壁11bに固定されている。
【0036】
ヨーク39は、軸心Oを中心として、軸心O方向、すなわち前後方向に延びる円筒形状をなしている。軸心O方向は、ヨーク39の軸方向に一致し、軸心O方向の径方向、周方向は、ヨーク39の径方向、周方向にそれぞれ一致する。
【0037】
図3及び
図4等に示すように、各ティース43は、同一の形状であり、ヨーク39の周方向に等間隔で配置されている。各ティース43は、ヨーク39と一体をなしており、ヨーク39の内周面39aから、ステータコア27の中心、すなわち軸心Oに向かって径方向の内方に延びている。各ティース43は、ヨーク39、ひいてはステータコア27の前端から後端まで、軸心O方向においてヨーク39の全体に延びている。
【0038】
各ティース43は、径方向の外方から内方に向かうに連れて周方向の幅が徐々に小さくなっている。各ティース43は、径方向の内方の先端部44に、周方向の両側に円弧状に突出する鍔部45を有している。両鍔部45を含むティース43の先端面43aは円弧面とされている。各鍔部45は、径方向の外方を向く外向面45aを有している。
【0039】
周方向で隣り合う各ティース43の間には6個のスロット47が形成されている。各スロット47は、周方向に等間隔で配置されている。各スロット47は同一の形状であり、軸心O方向でヨーク39の前端から後端まで延びている。各スロット47は、径方向の内方が開口したスロット開口48を有している。詳しくは、隣り合うティース43の周方向に対向する鍔部45同士の間隙によりスロット開口48が形成されている。
【0040】
図示は省略するが、各ティース43における周方向の両側面、各ティース43における軸心O方向の両端面、及び、各ティース43における各鍔部45の外向面45aは、絶縁紙によって覆われている。
【0041】
コイル31は、各ティース43に対して絶縁被膜を有する導線を巻回させることによって設けられている。
図1、
図4、
図6~
図10に示すように、コイル31は、一対のコイルエンド部49と、6個のスロット被収容部51とを有している。各コイルエンド部49は、ステータコア27から軸心O方向に突出している。各スロット被収容部51は、スロット47にそれぞれ収容されている。
【0042】
セパレータ33は、電気絶縁性と耐熱性とを有する樹脂製であり、具体的にはPPS(ポリフェニレンサルファイド)よりなる。セパレータ33は、柱状をなして、スロット47内を軸心O方向に延在している。セパレータ33は、2個のセパレータ部331を有している。
【0043】
図5、
図6及び
図8等に示すように、各セパレータ部331は、円柱を円柱の軸方向に沿って二分割した外形状をなしており、二分割した切断面に相当する矩形平面33aと、径方向の外方に突出する帯状曲面33bと、2個の半円形側面33cと、を有している。各セパレータ部331は、軸心O方向の径方向の外方に半円形状に突出する突出部53を有している。そして、突出部53の突出先端である半円弧の頂点部分が押圧部53aとされている。
【0044】
また、各セパレータ部331は、軸心O方向に平行に延びる貫通路54を有している。貫通路54は、矩形平面33aの長手方向に矩形平面33aに沿って平行に延びており、貫通路54の両端は帯状曲面33bに開口している。すなわち、貫通路53は、突出部53を軸心O方向に貫通している。
【0045】
各スロット47内には、各鍔部45の径方向の外方の位置に、2個のセパレータ33が周方向に並んで配置されている。各セパレータ33においては、2個のセパレータ部331が軸心O方向に並んで配置されている。すなわち、セパレータ33は全部で12個設けられ、セパレータ部331は全部で24個設けられている。そして、各セパレータ33は、スロット47内において、コイル31のスロット被収容部51に向けて突出し、軸心O方向に並ぶ2個の突出部53を有している。各セパレータ33の軸心O方向の長さは、ティース43の軸心O方向の長さよりも若干長い。軸心O方向の一方のセパレータ部331は、ティース43よりも軸心O方向の一方に突出している。軸心O方向の他方のセパレータ部331は、ティース43よりも軸心O方向の他方に突出している。
【0046】
図7に示すように、各セパレータ33は、各セパレータ部331の矩形平面33aが鍔部45の外向面45aに当接するとともに、押圧部53aがスロット被収容部51に当接している。また、スロット47内で周方向に並ぶ2個のセパレータ33は、周方向に対向する各セパレータ部331の半円形側面33c同士が当接している。これにより、各スロット47のスロット開口48が、2個のセパレータ33の各セパレータ部331の矩形平面33aによって塞がれている。
【0047】
樹脂モールド部35は、電気絶縁性と耐熱性とを有する樹脂製であり、具体的にはセラミックス粉末のフィラーが混入されたエポキシ樹脂よりなる。
【0048】
図1、
図2、
図9及び
図10に示すように、樹脂モールド部35は、ステータコア27とコイル31とを樹脂でモールド成形することで、ステータコア27とコイル31とを覆っている。樹脂モールド部35は、一対のエンド被覆部55と、6個のスロット充填部57と、を有している。
【0049】
なお、
図7は、セパレータ部331の突出部53の突出先端である押圧部53aの部位で切断した軸心O方向と直角方向の断面図である。また、
図9は、軸心O方向に並ぶ2個のセパレータ部331の間で切断した軸心O方向と直角方向の断面図である。また、
図9及び
図10において、コイル31を示す部分には樹脂モールド部35を示す樹脂ハッチングが図示されていないが、実際は、コイル31を示す部分にも樹脂モールド部35の樹脂がコイル31の導線同士の隙間に侵入、充填されている。
【0050】
各エンド被覆部55は各コイルエンド部49を覆っている。各スロット充填部57は、各スロット47に充填されて各スロット被収容部51を覆っている。各エンド被覆部55と各スロット充填部57とは一体に形成されている。
【0051】
各スロット充填部57は、間隙充填部59を有している。間隙充填部59は、径方向において、セパレータ33とスロット被収容部51との間に介在するとともに、セパレータ33とスロット被収容部51とに当接している。
図10に示すように、間隙充填部59の径方向の最小厚さT2、すなわちスロット47内において、径方向におけるセパレータ33とスロット被収容部51との間の間隙充填部59の最小厚さT2は、径方向におけるセパレータ33の最大厚さT1よりも所定量薄い。なお、径方向におけるセパレータ33とスロット被収容部51との間の間隙充填部59の最小厚さT2は、径方向におけるセパレータ33とスロット被収容部51の内周面との最短距離と言い換えることもできる。
【0052】
図9及び
図10に示すように、樹脂モールド部35は、24個の突出部内充填部61を有している。各突出部内充填部61は、各セパレータ部331の貫通路54内に充填されている。各突出部内充填部61は、各セパレータ部331の軸心O方向の一方と他方とにそれぞれ設けられた間隙充填部59と一体に形成されている。
【0053】
詳しくは、軸心O方向の一方のセパレータ部331における突出部内充填部61は、後述する第1間隙S1に充填された間隙充填部59と、後述する第3間隙S3に充填された間隙充填部59とに、それぞれ一体に形成されている。また、軸心O方向の他方のセパレータ部331における突出部内充填部61は、第3間隙S3に充填された間隙充填部59と、後述する第2間隙S2に充填された間隙充填部59とに、それぞれ一体に形成されている。
【0054】
このステータ21は、次のように製造することができる。まず、ステータコア27の各ティースに43に絶縁紙を取り付けた後、
図4に示すように、各ティース43にコイル31を巻回して、各スロット47にスロット被収容部51を配置する。この際、スロット被収容部51は、スロット47内における径方向の外方に配置される。このときのスロット被収容部51の径方向寸法はC1である。
【0055】
そして、
図6~
図8に示すように、各スロット47において、各鍔部45とスロット被収容部51との間に、軸心O方向の一方と他方とからそれぞれセパレータ部331を押し込んで、各セパレータ部331を各鍔部45とスロット被収容部51との間で挟持する。これにより、各セパレータ部331の押圧部53aによってスロット被収容部51が径方向の外方に押しやられ、スロット被収容部51がヨーク39の内周面39aに押圧される。すなわち、スロット被収容部51がセパレータ33とヨーク39との間で挟持される。
図8に示すように、このときのスロット被収容部51の径方向寸法は、C1より小さいC2である。
【0056】
この状態において、
図8に示すように、各セパレータ部331の突出部53に対して軸心O方向の一方と他方とのそれぞれに、各セパレータ部331とスロット被収容部51との間に径方向の第1~第3間隙S1~S3が形成されている。第1間隙S1は、軸心O方向の一方のセパレータ部331よりも軸心O方向の一方に形成されている。第2間隙S2は、軸心O方向の他方のセパレータ部331よりも軸心O方向の他方に形成されている。第3間隙S3は、軸心O方向の一方のセパレータ部331よりも軸心O方向の他方に形成されるとともに、軸心O方向の他方のセパレータ部331よりも軸心O方向の一方に形成されている。すなわち、第3間隙S3は、軸心O方向に並ぶ2個のセパレータ部331の間に形成されている。
【0057】
そして、ステータコア27とコイル31と各セパレータ33との一体物を金型のキャビティ内に配置し、軸心O方向の一方からキャビティ内に未硬化樹脂を所定の注入圧力により注入、充填して、トランスファー成形により樹脂モールド部35を成形する。
【0058】
この際、キャビティ内に注入された未硬化樹脂は、軸心O方向の一方のセパレータ部331の貫通路54と第1間隙S1とに注入された後、第3間隙S3及び軸心O方向の他方のセパレータ部331の貫通路54に注入され、最後に第2間隙S2に注入される。そして、これらの軸心O方向の一方のセパレータ部331の貫通路54と、第1間隙S1と、第3間隙S3と、軸心O方向の他方のセパレータ部331の貫通路54と、第2間隙S2とに未硬化樹脂が充填される。これにより、スロット47内において、軸心O方向の両端部でスロット被収容部51に向けて樹脂がモールドされるとともに、軸心O方向の中央部、すなわち2個の貫通路54の間からスロット被収容部51に向けて樹脂がモールドされる。その結果、スロット47内において、セパレータ33とスロット被収容部51との間に樹脂モールド部35の間隙充填部59が設けられることによって、セパレータ33とスロット被収容部51とが径方向に離間配置される。
【0059】
こうして、一対のエンド被覆部55と、6個のスロット充填部57と、24個の突出部内充填部61とが一体に形成された樹脂モールド部35が成形され、ステータ21が完成される。最終的なスロット被収容部51の径方向寸法は、C2より小さいC3となる。
【0060】
図1に示すように、ロータ25は、ステータ21の内側に配置されている。ロータ25は、軸心O方向に延びる円筒状をなしている。また、ロータ25には永久磁石(図示略)が設けられている。ロータ25には、回転軸23が焼き嵌めによって固定されており、ロータ25と回転軸23とが一体化されている。ロータ25は、コイル31に電流が流れることで、回転軸23と一体で軸心O周りに回転可能となっている。
【0061】
圧縮機構5としては、公知のスクロール型圧縮機構が採用されている。圧縮機構5は、ハウジング本体11内に収容されている。圧縮機構5は、ハウジング本体11内において、モータ室17よりも前方で周壁11bの内周面に固定された固定スクロールと、固定スクロールに対向して配置され、回転軸23によって回転可能な可動スクロールとを有している。固定スクロールと可動スクロールとは噛合しており、両者間に冷媒ガスの圧縮を行う圧縮室を形成している。なお、固定スクロール、可動スクロール及び圧縮室については、いずれも図示を省略する。
【0062】
この電動圧縮機が備える電動モータ3におけるステータ21では、スロット47内において周方向に並ぶ2個のセパレータ33の各セパレータ部331の各矩形平面33aが鍔部45の外向面45aに当接することによって、スロット47における径方向の内方のスロット開口48が塞がれている。また、スロット47に収容されたコイル31のスロット被収容部51は、スロット47に充填された樹脂モールド部35のスロット充填部57によって覆われている。そして、スロット充填部57の間隙充填部59は、径方向において、セパレータ33とスロット被収容部51との間に介在して両者に当接している。
【0063】
このため、スロット47に充填された未硬化樹脂が硬化することにより間隙充填部59が形成される際、スロット被収容部51には、セパレータ33とスロット被収容部51との間に徐々に充填されていく未硬化樹脂からの加圧力が作用する。これにより、スロット被収容部51が径方向の外方に押しやられる。その結果、スロット被収容部51とヨーク39の内周面39aとの接触面積が増大する。よって、電動モータ3の作動中、スロット被収容部51からステータコア27への伝熱性が向上するので、コイル31の熱をスロット被収容部51からステータコア27へ効果的に伝導させることができる。
【0064】
したがって、電動モータ3、ひいてはこの電動モータ3を備える実施例1の電動圧縮機は、コイル31の冷却効率の向上に寄与できる。
【0065】
特に、この電動モータ3では、スロット47内において、径方向におけるセパレータ33とスロット被収容部51との間の間隙充填部59の最小厚さT2は、径方向におけるセパレータ33の最大厚さT1よりも所定量薄くされている。このため、セパレータ33とスロット被収容部51との間に形成される間隙充填部59によって、スロット被収容部51を径方向の外方に効果的に加圧することができる。
【0066】
この電動モータ3では、軸心O方向に並ぶ2個のセパレータ部331が径方向の外方に突出する突出部53をそれぞれ有しており、各突出部53には突出部53を軸心O方向に貫通する貫通路54が形成されている。そして、2個の突出部53に対して軸心O方向の一方と他方とにおいて、セパレータ33とスロット被収容部51との間に径方向の第1~第3間隙S1~S3が形成されており、これらの第1~第3間隙S1~S3に充填された間隙充填部59と、2個の貫通路54に充填された突出部内充填部61とが一体に形成されている。
【0067】
このため、第1~第3間隙S1~S3に充填された3か所の間隙充填部59と2個の突出部内充填部61とが一体となって、スロット被収容部51を径方向の外方に押圧するので、その径方向外方への加圧力が増大する。また、スロット47内において、軸心O方向における両端部と中央部との3か所で、スロット被収容部51が径方向の外方に加圧されるため、軸心O方向においてより均等にスロット被収容部51を径方向の外方に押しやることができる。このため、スロット被収容部51からステータコア27への伝熱性をより一層向上させることができる。
【0068】
また、ティース43にセパレータ33を取り付ける際、各セパレータ部331の押圧部53aによってスロット被収容部51を径方向の外方に押しやることで、スロット被収容部51をヨーク39の内周面39aに押圧することができる。このため、スロット被収容部51とステータコア27との接触面積を一層増大させることができ、コイル31の熱をスロット被収容部51からステータコア27へ一層効果的に伝導させることができる。
【0069】
(実施例2)
実施例2の電動圧縮機は、電動モータ3に換えて
図12に示す電動モータ3Aを備えている。電動モータ3Aも本発明における「回転電機」の一例である。この電動モータ3Aでは、ステータ21Aが、セパレータ33に換えてボビン63を備えている。
【0070】
図11に示すように、このステータ21Aにおけるステータコア27Aのティース43Aは、実施例1における鍔部45と比べて周方向に小さく突出する鍔部45Aを有している。このため、スロット47内で周方向に対向する鍔部45A同士の間隙により形成される、スロット47の径方向内方のスロット開口48Aは、実施例1におけるスロット開口48よりも大きくされている。
【0071】
ボビン63は、電気絶縁性と耐熱性とを有する樹脂製であり、具体的にはPPS(ポリフェニレンサルファイド)よりなる。ボビン63は、2個のボビン部631を有している。2個のボビン部631は、軸心O方向に並んで配置されている。
【0072】
各ボビン部631は、ティース43Aを覆うティース被覆部65と、スロット47のスロット開口48Aを塞ぐ2個の第1蓋部材67と、を有している。第1蓋部材67は、本発明における「絶縁部材」の一例である。
【0073】
各ボビン部631において、2個の第1蓋部材67は、ティース被覆部65における径方向内方の端部に、ティース被覆部65の周方向の両側面に設けられている。ティース被覆部65と、2個の第1蓋部材67とは、一体に形成されている。一方のボビン部631の第1蓋部材67と、他方のボビン部631の第1蓋部材67とは、一体的に柱状をなして、スロット47内を軸心O方向に延在している。
【0074】
各ティース被覆部65は、ティース43Aの軸心O方向の端面と、ティース43Aの周方向の両側面と、ティース43Aの両鍔部45Aとを覆っている。各ティース被覆部65は、ティース43Aに嵌合される嵌合凹部65aを有している。
【0075】
各第1蓋部材67は、実施例1におけるセパレータ部331と基本的には同一の形状を有している。すなわち、第1蓋部材67は、円柱を円柱の軸方向に沿って二分割した外形状をなしており、二分割した切断面に相当する矩形平面67aと、径方向の外方に突出する帯状曲面67bと、2個の半円形側面67cと、を有している。
【0076】
また、各第1蓋部材67は、突出部69と、突出部69を軸心O方向に貫通する貫通路71と、を有している。突出部69は、軸心O方向の径方向の外方に半円形状に突出している。なお、突出部69の突出先端は、実施例1における突出部53の突出先端とは異なり、スロット被収容部51を径方向の外方に押圧する押圧部として機能しない。貫通路71は、矩形平面67aの長手方向に矩形平面67aに沿って平行に延びており、貫通路71の両端は帯状曲面67bに開口している。すなわち、貫通路71は、突出部69を軸心O方向に貫通している。
【0077】
図11及び
図12に示すように、2個のボビン部631は、各ティース43Aに対して、軸心O方向に並んで配置されている。軸心O方向の一方のボビン部631は、ティース43Aに対して、軸心O方向の一方から挿入される。これにより、軸心O方向の一方のボビン部631の嵌合凹部65aが、ティース43Aにおける軸心O方向の一方の部位に嵌合されている。軸心O方向の他方のボビン部631は、ティース43Aに対して、軸心O方向の他方から挿入される。これにより、軸心O方向の他方のボビン部631の嵌合凹部65aが、ティース43Aにおける軸心O方向の他方の部位に嵌合されている。こうして、軸心O方向の一方のボビン部631と軸心O方向の他方のボビン部631とが突合せ状態でティース43Aに取り付けられている。
【0078】
また、各スロット47内において、周方向に対向する鍔部45A同士の間に、2個の第1蓋部材67が周方向に並んで配置されている。周方向に並ぶ2個の第1蓋部材67は、周方向に対向する半円形側面67c同士が当接している。これにより、スロット47のスロット開口48Aが、スロット47内で周方向に並ぶ2個の第1蓋部材67によって塞がれている。
【0079】
このステータ21Aは、次のように製造することができる。まず、ステータコア27Aの各ティース43Aに2個のボビン部631を取り付ける。そして、各ボビン部631のティース被覆部65にコイル31を巻回する。この際、ティース被覆部65における径方向外方の部位にコイル31を巻回する。こうして、スロット47内において、第1蓋部材67よりも径方向外方にスロット被収容部51を配置する。
【0080】
そして、得られたステータコア27Aとコイル31と各ボビン63との一体物を、実施例1と同様に、金型のキャビティ内に配置して、トランスファー成形により樹脂モールド部を成形して、ステータ21Aを完成する。
【0081】
この電動モータ3Aでは、スロット47のスロット開口48Aを塞ぐ第1蓋部材67がボビン63に一体に形成されている。このため、ティース43Aにボビン63を取り付けることにより、ティース43Aに対する第1蓋部材67の取付も完了する。その結果、第1蓋部材67の組み付け工程を省くことができる。
【0082】
その他の構成及び作用効果は実施例1と同様である。
【0083】
(実施例3)
実施例3の電動圧縮機は、電動モータ3に換えて
図17に示す電動モータ3Bを備えている。電動モータ3Bも本発明における「回転電機」の一例である。この電動モータ3Bでは、ステータ21Bが、セパレータ33に換えて第2蓋部材73を備えている。第2蓋部材73は、本発明における「絶縁部材」の一例である。
【0084】
このステータ21Bにおけるステータコア27Bのティース43Bは、実施例1におけるティース43とは異なり、径方向の内方の先端部44以外は、径方向の外方から内方に向かって略一定の周方向幅で延びている。
【0085】
第2蓋部材73は、電気絶縁性と耐熱性とを有する樹脂製であり、具体的にはPPS(ポリフェニレンサルファイド)よりなる。
【0086】
図13及び
図14に示すように、第2蓋部材73は、柱状をなして、スロット47内を軸心O方向に延在している。第2蓋部材73は、蓋本体部75と、蓋頭部77と、を有している。蓋本体部75は、径方向の内方を向く内向面75aと、周方向を向く一対の側面75bとを有している。蓋頭部77には、後述する軸方向延在路79の入口79aが開口している。入口79aは、蓋頭部77における周方向の両端付近にそれぞれ配置されている。
【0087】
図14に示すように、第2蓋部材73の蓋頭部77は、周方向に隣り合うティース43Bに架設されている。
図15に示すように、第2蓋部材73の蓋本体部75は、スロット47内において、内向面75aが周方向に隣り合う鍔部45の各外向面45aに当接するとともに、一対の側面75bが周方向に隣り合うティース43Bの側面に当接している。これにより、各スロット47のスロット開口48が蓋本体部75によって塞がれている。
【0088】
図16に示すように、第2蓋部材73の軸心O方向の長さは、ティース43Bの軸心O方向の長さよりも若干長い。第2蓋部材73は、2個の軸方向延在路79と、各軸方向延在路79からそれぞれ4個ずつ直角方向に分岐する分岐路81と、を有している。
【0089】
軸方向延在路79は、第2蓋部材73における周方向の両端付近にそれぞれ配置されている。軸方向延在路79は、軸心O方向に平行に延びている。軸方向延在路79は、軸心O方向の一方に入口79aを有する袋小路状に形成されている。軸方向延在路79における軸心O方向の他方の端部は、第2蓋部材73における軸心O方向の他方の端部付近まで延びている。
【0090】
軸方向延在路79から分岐する4個の分岐路81は、軸心O方向においてほぼ均等の間隔で配置されている。4個の分岐路81のうちの一つは入口79a付近に配置され、他の一つは軸方向延在路79における軸心O方向の他方の端部に配置されている。各分岐路81は、軸方向延在路79から分岐して径方向の外方に向かって、径方向に平行に延びている。各分岐路81は、径方向の外方に向かって開口する出口81aを有している。
【0091】
図17及び
図18に示すように、このステータ21Bにおける樹脂モールド部35Bは、一対のエンド被覆部55Bと、6個のスロット充填部57Bと、を有している。
【0092】
なお、
図15及び
図17は、切断面が分岐路81を通るように切断した軸心O方向と直角方向の断面図である。また、
図17及び
図18において、コイル31を示す部分には樹脂モールド部35Bを示す樹脂ハッチングが図示されていないが、実際は、コイル31を示す部分にも樹脂モールド部35Bの樹脂がコイル31の導線同士の隙間に侵入、充填されている。さらに、
図14ではコイル31の図示を省略している。
【0093】
各エンド被覆部55Bは各コイルエンド部49を覆っている。各スロット充填部57Bは、各スロット47に充填されて各スロット被収容部51を覆っている。各エンド被覆部55Bと各スロット充填部57Bとは一体に形成されている。
【0094】
各スロット充填部57Bは、間隙充填部59Bを有している。間隙充填部59Bは、径方向において、第2蓋部材73の蓋本体部75とスロット被収容部51との間に介在するとともに、蓋本体部75とスロット被収容部51とに当接している。
図18に示すように、スロット47内において、径方向における第2蓋部材73の蓋本体部75とスロット被収容部51との間の間隙充填部59Bの最小厚さT2は、径方向における第2蓋部材73の蓋本体部75の最大厚さT1よりも所定量薄い。
【0095】
また、樹脂モールド部35Bは、12個の蓋内充填部83Bを有している。各蓋内充填部83Bは、各第2蓋部材73の軸方向延在路79と各分岐路81とに充填されている。各蓋内充填部83Bは、間隙充填部59Bと一体に形成されている。
【0096】
このステータ21Bは、次のように製造することができる。まず、ステータコア27Bの各ティース43Bに絶縁紙を取り付けた後、各ティース43Bにコイル31を巻回して、各スロット47にスロット被収容部51を配置する。この際、スロット被収容部51は、スロット47内における径方向の外方に配置される。
図16に示すように、このときのスロット被収容部51の径方向寸法はC2である。
【0097】
そして、各スロット47における径方向内方の端部に、軸心O方向の一方から第2蓋部材73の蓋本体部75を挿入して、第2蓋部材73の蓋頭部77を周方向に隣り合うティース43Bに架け渡す。
【0098】
そして、得られたステータコア27Bとコイル31と各第2蓋部材73との一体物を、実施例1と同様に、金型のキャビティ内に配置して、トランスファー成形により樹脂モールド部35Bを成形して、ステータ21Bを完成する。
図18に示すように、最終的なスロット被収容部51の径方向寸法は、C2より小さいC3となる。
【0099】
この電動モータ3Bでは、樹脂モールド部35Bの成形時、各分岐路81の出口81aから径方向の外方に向かって未硬化樹脂が流出することによって、間隙充填部59Bが形成される。このため、間隙充填部59Bが形成される際、未硬化樹脂の注入圧力が径方向外方に向かって作用する。その結果、より効果的に、スロット被収容部51を径方向の外方に押しやることができる。また、4個の分岐路81が軸心O方向において略等間隔で設けられているので、軸心O方向においてより均等にスロット被収容部51を径方向の外方に押しやることができる。
【0100】
その他の構成及び作用効果は実施例1と同様である。
【0101】
以上において、本発明を実施例1~3に即して説明したが、本発明は上記実施例1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0102】
例えば、実施例1では2個のセパレータ部331を軸心O方向に並べて配置し、実施例2では2個のボビン部631を軸心O方向に並べて配置するが、本発明はこれに限られない。例えば、2個のセパレータ部331を一体に形成したり、2個のボビン部631を一体に形成したりしても良い。また、ヨーク39の軸方向長さと同等以上の軸方向長さを有するセパレータ部331を1個だけ配置したり、ヨーク39の軸方向長さと同等以上の軸方向長さを有するボビン部631を1個だけ配置したりしても良い。
【0103】
実施例1~3では、実施例1におけるセパレータ部331が貫通路54を有し、実施例2における第1蓋部材67が貫通路71を有し、実施例3における第2蓋部材73が軸方向延在路79と分岐路81とを有するが、本発明はこれらに限られない。例えば、本発明における絶縁部材は、貫通路、軸方向延在路及び分岐路を有しないものであっても良い。
【0104】
さらに、圧縮機構5として、ベーン式圧縮機構や斜板式圧縮機構の他、遠心式圧縮機構等を採用しても良い。
【0105】
また、圧縮機構5は、燃料電池へ圧送するための空気や水素等、冷媒ガス以外の流体を圧縮しても良い。つまり、圧縮機構5は、燃料電池車用途であっても良い。
【0106】
明細書及び図面等の開示から、以下の技術的思想を抽出することができる。
【0107】
(付記1)
回転軸と、
前記回転軸に固定されるとともに前記回転軸と一体に回転するロータと、
前記ロータの外側に配置され、円筒状のヨーク、及び、前記ヨークの内周面から前記ロータに向けて突出する複数のティースを有し、前記ヨークの周方向で隣り合う前記ティースの間にスロットが区画されたステータコアと、前記ティースに巻回されたコイルと、前記ステータコアと前記コイルとを樹脂でモールド成形した樹脂モールド部と、を有するステータと、
前記回転軸、前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジングと、を備える回転電機であって、
前記スロットには、前記スロットが前記ロータに向けて前記ヨークの径方向に開口するスロット開口を塞ぐ柱状の絶縁部材が配置され、
前記スロット内において、前記絶縁部材と前記コイルとの間に前記樹脂モールド部が設けられることによって、前記絶縁部材と前記コイルとが離間配置されることを特徴とする回転電機。
【0108】
(付記2)
前記スロット内において、前記径方向における前記絶縁部材と前記コイルとの間の前記樹脂モールド部の最小厚さは、前記径方向における前記絶縁部材の最大厚さよりも薄い付記1記載の回転電機。
【0109】
(付記3)
前記絶縁部材は、前記ヨークの軸方向に延在し、内部に前記樹脂モールド部が設けられている軸方向延在路と、前記軸方向延在路から分岐して前記コイルに向けて開口し、内部に前記樹脂モールド部が設けられている分岐路と、を有している付記1又は2記載の回転電機。
【0110】
(付記4)
前記絶縁部材は、前記スロット内において、前記コイルに向けて突出し、前記ヨークの軸方向に並ぶ複数の突出部と、各前記突出部を前記軸方向に各々が貫通し、内部に前記樹脂モールド部が設けられている複数の貫通路と、を有し、
各前記貫通路の間から前記コイルに向けて前記樹脂がモールドされている付記1乃至3のいずれか1項記載の回転電機。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、本発明は車両用電動圧縮機等の電動機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1…ハウジング
3、3A、3B…電動モータ(回転電機)
21、21A、21B…ステータ
23…回転軸
25…ロータ
27、27A、27B…ステータコア
31…コイル
33…セパレータ(絶縁部材)
35、35B…樹脂モールド部
39…ヨーク
43、43A、43B…ティース
47…スロット
48、48A…スロット開口
53、69…突出部
54、71…貫通路
67…第1蓋部材(絶縁部材)
73…第2蓋部材(絶縁部材)
79…軸方向延在路
81…分岐路