(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025087237
(43)【公開日】2025-06-10
(54)【発明の名称】デバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250603BHJP
H01L 21/67 20060101ALI20250603BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20250603BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20250603BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20250603BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20250603BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20250603BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 E
H01L21/78 M
H01L21/78 Y
B23K26/57
C09J7/38
C09J201/00
H01L21/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201750
(22)【出願日】2023-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】野末 喬城
(72)【発明者】
【氏名】福元 彰朗
(72)【発明者】
【氏名】若山 洋司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隼
【テーマコード(参考)】
4E168
4J004
4J040
5F047
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4E168AE05
4E168CB03
4E168DA04
4E168DA06
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5F047FA01
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5F131EC32
5F131EC54
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5F131EC67
5F131EC73
(57)【要約】
【課題】比較的大きいサイズのワーク小片を取り扱う場合であっても焼け付きの問題を抑制して良好にワーク小片を取り扱うことが可能なデバイス製造方法を提供する。
【解決手段】界面アブレーション層を備えるワークハンドリングシート上にワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して前記積層体を配置する配置工程と、レーザー光を照射して界面アブレーションを生じさせることで前記ワーク小片を分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程とを備えることを特徴とするデバイス製造方法であって、前記レーザー光は、その軌跡が線状であり、前記軌跡同士の間隔が30μm以上130μm以下であり、前記ワーク小片の主面の中心から最も離れて位置する前記軌跡によって囲まれる領域の面積が前記主面の面積の5%以上、40%以下であるデバイス製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と、前記界面アブレーション層における片面側に積層された基材とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備えることを特徴とするデバイス製造方法であって、
前記分離工程において、前記ワーク小片の各々に対して照射される前記レーザー光は、その軌跡が線状であり、隣接する前記軌跡同士の間隔が30μm以上、130μm以下であり、前記ワーク小片の各々について、前記ワーク小片の主面の中心から最も離れて位置する前記軌跡によって囲まれる領域の面積が、前記主面の面積の5%以上、40%以下である
ことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項2】
前記界面アブレーション層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、
前記配置工程と前記分離工程との間に、前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス製造方法。
【請求項3】
前記ワーク小片の主面の形状は、最小の一辺の長さが1mm以上の矩形であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス製造方法。
【請求項4】
前記レーザー光の軌跡は、少なくとも一部において、略平行に配列された複数の直線となっていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス製造方法。
【請求項5】
前記分離工程における照射は、点状のレーザー光の照射によって行われ、
前記軌跡は、当該照射によって生じた複数の点状の照射痕から構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス製造方法。
【請求項6】
隣接する前記照射痕同士の間隔dsは、前記照射痕の直径r以下であることを特徴とする請求項5に記載のデバイス製造方法。
【請求項7】
前記界面アブレーション層は、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品や半導体装置等のワーク小片を取り扱うために使用可能なワークハンドリングシートを用いたデバイス製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハおよび各種パッケージ類は、大径の状態で製造され、これらは素子小片(半導体チップ)に切断分離(ダイシング)されるとともに個々に剥離(ピックアップ)された後に、次の工程であるマウント工程に移される。この際、半導体ウエハ等の被加工物は、基材および粘着剤層を備える半導体加工用シートに貼着された状態で、バックグラインド、ダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンド、ピックアップ、マウンティング等の加工が行われる。
【0003】
上述したピックアップおよびマウンティングの工程では、半導体加工用シート上における半導体チップを、吸引コレットを用いて個々に取り上げ、所定の位置に配置することが行われる。このとき、半導体加工用シートの裏面から、ニードルを用いて半導体チップを突き上げたり、半導体加工用シートをエキスパンドさせて、半導体チップ同士を離間させることも行われる。
【0004】
ところで、近年、マイクロ発光ダイオードを用いたディスプレイの開発において、個々のマイクロ発光ダイオードの基板への配置のために、レーザー光の照射を利用することが検討されている。例えば、特許文献1には、複数のマイクロ発光ダイオードを、所定の層を介して支持体に保持した後、当該層に対してレーザー光を照射することで、その照射した位置において当該層のアブレーションを生じさせ、それによって支持体から分離(レーザーリフトオフ)したマイクロ発光ダイオードを配線基板に載置する方法が検討されている。レーザー光は、指向性および収束性に優れているため、照射する位置を制御しやすく、選択的な載置を良好に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したレーザーリフトオフの手法では、低密度なエネルギーを有するレーザーを照射すると、十分なアブレーションを生じさせることができず、ワーク小片を支持体から良好に分離することができない。特に、一辺がmmオーダーに達するような大きいサイズのワーク小片を取り扱う場合には、低密度なエネルギーを使用した場合、分離が非常に困難となる。その一方で、高密度なエネルギーを有するレーザーを照射してしまうと、支持体等が焼け付いてしまい、不具合が生じるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、比較的大きいサイズのワーク小片を取り扱う場合であっても焼け付きの問題を抑制して良好にワーク小片を取り扱うことが可能なデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と、前記界面アブレーション層における片面側に積層された基材とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程とを備えることを特徴とするデバイス製造方法であって、前記分離工程において、前記ワーク小片の各々に対して照射される前記レーザー光は、その軌跡が線状であり、隣接する前記軌跡同士の間隔が30μm以上、130μm以下であり、前記ワーク小片の各々について、前記ワーク小片の主面の中心から最も離れて位置する前記軌跡によって囲まれる領域の面積が、前記主面の面積の5%以上、40%以下である
ことを特徴とするデバイス製造方法を提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)に係るデバイス製造方法では、分離工程の際に、前述した条件でレーザー光を照射することで、ワークハンドリングシート等の焼き付きを抑えて、ワーク小片を良好に分離することができ、結果として効率的にデバイスを製造することができる。
【0010】
上記発明(発明1)において、前記界面アブレーション層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、前記配置工程と前記分離工程との間に、前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程を備えることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1,2)において、前記ワーク小片の主面の形状は、最小の一辺の長さが1mm以上の矩形であることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1~3)において、前記レーザー光の軌跡は、少なくとも一部において、略平行に配列された複数の直線となっていることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1~4)において、前記分離工程における照射は、点状のレーザー光の照射によって行われ、前記軌跡は、当該照射によって生じた複数の点状の照射痕から構成されていることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明5)において、隣接する前記照射痕同士の間隔dsは、前記照射痕の直径r以下であることが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明1~6)において、前記界面アブレーション層は、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有することが好ましい(発明7)。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るデバイス製造方法は、比較的大きいサイズのワーク小片を取り扱う場合であっても焼け付きの問題を抑制して良好にワーク小片を取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るデバイス製造方法におけるレーザー光の照射について説明する図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るデバイス製造方法におけるレーザー光の照射について説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るデバイス製造方法におけるレーザー光の照射について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るデバイス製造方法は、以下に説明する準備工程、配置工程および分離工程を備える。
【0019】
準備工程では、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と、当該界面アブレーション層における片面側に積層された基材とを備えるワークハンドリングシートにおける、当該界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する。
【0020】
配置工程では、上記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、上記積層体における上記ワーク小片側の面が向かい合うように上記積層体を配置する。
【0021】
分離工程では、上記積層体における上記界面アブレーション層における、少なくとも1つの上記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、上記界面アブレーション層における上記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する上記ワーク小片を上記ワークハンドリングシートから分離し、上記ワーク小片を上記対象物上に載置する。
【0022】
上述したレーザー光の照射により、
図2(a)に示されるように、界面アブレーション層201における照射された位置(
図2(a)中では、軌跡10が存在する位置)において界面アブレーションを生じさせることができる。具体的には、レーザー光の照射によって、界面アブレーション層201における基材202に近位な領域において、当該領域を構成していた成分が蒸発または揮発する。そして、上記蒸発または揮発によって生じたガスが基材202と界面アブレーション層201との間に溜まり、空洞(ブリスター)が形成される。当該ブリスターの形成によって、界面アブレーション層201が局所的に変形する。これにより、界面アブレーション層201とワーク小片100とが接触する面積が減少し、界面アブレーション層201から剥がされるようにワーク小片100が分離する。これらの結果、当該界面アブレーションが生じた位置に存在するワーク小片100を、対象物上に載置することができる。レーザー光の照射は、所定のワーク小片100の位置に対して選択的に行うことができるため、当該ワーク小片100を選択的に界面アブレーション層201から分離することが可能となる。
【0023】
特に、本実施形態に係るデバイス製造方法は、上記ワーク小片の各々に対して照射される上記レーザー光について以下の条件を満たす。
【0024】
すなわち、上記レーザー光は、その軌跡が線状である。また、隣接する上記軌跡同士の間隔が30μm以上、130μm以下である。さらに、上記ワーク小片の各々について、上記ワーク小片の主面の中心から最も離れて位置する上記軌跡によって囲まれる領域の面積が、上記主面の面積の5%以上、40%以下である。
【0025】
上記のように、軌跡が線状となるようにレーザー光を照射し、且つ、軌跡同士の間隔および軌跡によって囲まれる領域の面積が上記条件を満たすようにレーザー光を照射することによって、
図2(a)に示すように、効率的に界面アブレーション層201の局所的な変形を生じさせることができ、それにより、ワーク小片100と界面アブレーション層201とが端部から良好に分離するものとなる。
【0026】
ここで、仮に、軌跡10同士の間隔や軌跡10によって囲まれる領域が、上述した条件よりも狭い場合には、
図2(b)に示すように、ワーク小片100の分離を生じさせるほどの界面アブレーション層201の形状変化が生じない。この場合、ワーク小片100が界面アブレーション層201に接触したままとなり、ワーク小片100を良好に分離できない。
【0027】
一方、軌跡10同士の間隔や軌跡10によって囲まれる領域が、上述した条件よりも広い場合には、
図2(c)に示すように、ワーク小片100が存在する大部分の領域において、界面アブレーション層201が基材202から分離してしまい、界面アブレーション層201の局所的な形状変化が生じない。その結果、ワーク小片100と界面アブレーション層201との接触が殆ど維持され、ワーク小片100を良好に分離できないものとなる。
【0028】
これらに対し、本実施形態に係るデバイス製造方法では、上述の通り、界面アブレーション層201の局所的な変形が効果的に生じ、ワーク小片100を良好に分離することが可能となる。特に、上記レーザー光の照射は、過度に高密度なエネルギーを有するレーザー光を照射したり、レーザー光を過度に繰り返し照射することを要しないため、ワークハンドリングシート等の焼き付きを抑制することができる。
【0029】
1.軌跡
以下、上記分離工程におけるレーザー光の照射の軌跡について詳述する。
【0030】
(1)線状
図1(a)は、本実施形態におけるレーザー光の照射によって生じる軌跡を模式的に示した図である。特に、
図1(a)は、複数のワーク小片100が設けられたワークハンドリングシート200について、ワーク小片100の1つが存在する位置をワークハンドリングシート200側からみた平面図である。
【0031】
図1(a)に示されるように、レーザー光の照射によって生じる軌跡10は、線状となっている。特に、
図1(a)で示される軌跡10は、複数の直線状の軌跡10が互いに平行に配列している。
【0032】
本実施形態におけるレーザー光の照射によって生じる軌跡10は、
図1(a)に示されるような直線状のものに限られず、曲線状であってもよい。曲線状である場合、その形状は、円(真円または楕円)あるいはその円の一部であってもよく、また、渦巻き状であってもよい。さらに、軌跡10は、直線と曲線とが混在するものであってもよく、また、線状の軌跡10とともに、点状の軌跡が混在してもよい。
【0033】
本実施形態に係るデバイス製造方法では、軌跡10同士の間隔について前述した条件を満たすものであるが、これは、軌跡10同士が隣接する状態となっていることを前提としている。すなわち、軌跡10が複数存在している場合には、それらが配列している状態となっていることを意味する。また、軌跡10が渦巻き状である場合には、必然的に、軌跡10の内側の部分と外側の部分とで隣接した状態となる。なお、軌跡10が直線である場合には、
図1(a)で示されるように、複数の軌跡10が略平行に配列していることが好ましい。また、軌跡10が、円またはその一部である場合には、それらが同心円状に配列していることが好ましい。
【0034】
なお、本実施形態に軌跡10とは、レーザー光を照射する際の軌跡(レーザー光がたどる軌跡)を指すものではなく、レーザー光の照射完了後において、照射によって生じた痕(照射痕)によって構成される軌跡を指すものとする。そのため、例えば、点状(スポット状)のレーザー光を照射する場合には、それによって生じる個々の照射痕1が、線状の軌跡10を構成している場合(例えば、
図1(b)に示される場合)も、本実施形態における線状の軌跡10に該当する。
【0035】
(2)軌跡同士の間隔
前述の通り、本実施形態に軌跡10では、隣接する上記軌跡同士の間隔(
図1(b)では、「dl」で示される距離)が30μm以上、130μm以下となっている。なお、ここにいう間隔dlとは、
図1(b)に示される通り、軌跡10(照射痕1)の端部から隣接する軌跡10の端部までの間の距離を指すものとする。
【0036】
間隔dlが上記範囲となるようにレーザー光を照射することで、界面アブレーション層201の局所的な変更を効果的に生じさせることができ、結果として、ワーク小片100の良好な分離が可能となる。この観点から、上記間隔dlは、70μm以上であることが好ましく、特に50μm以上であることが好ましい。また、上記間隔dlは、125μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であることが好ましい。
【0037】
(3)軌跡によって囲まれる領域の面積
前述の通り、本実施形態における軌跡10では、ワーク小片100の各々について、当該ワーク小片100の主面の中心から最も離れて位置する上記軌跡10によって囲まれる領域(
図1(a)では「A」で示される領域)の面積が、上記主面の面積の5%以上、40%以下となっている。ここで、当該領域Aは、中心から最も離れて位置する上記軌跡10によって囲まれてなるものであるため、軌跡10と軌跡10との間における、軌跡10が存在していない部分をも含む。
【0038】
領域Aが上記条件を満たすようにレーザー光を照射することで、界面アブレーション層201の局所的な変更を効果的に生じさせることができ、結果として、ワーク小片100の良好な分離が可能となる。この観点から、上記面積の割合は、10%以上であることが好ましく、特に20%以上であることが好ましい。また、上記割合は、33%以下であることが好ましく、特に27%以下であることが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態に係るデバイス製造方法では、上記領域Aが、ワーク小片の主面のいずれかの位置に偏って位置しないようにレーザー光を照射することが好ましく、特に、上記領域Aが、ワーク小片の主面の中心を含むように照射することが好ましく、とりわけ、上記領域Aの中心と、ワーク小片の主面の中心とが重なるように照射することが好ましい。
【0040】
(4)点状(スポット状)のレーザー光の照射
前述の通り、本実施形態に係るデバイス製造方法では、分離工程の際に、点状(スポット状)のレーザー光の照射を行ってもよい。その場合、
図1(b)に示される通り、当該照射によって生じる点状(小さな円状)の照射痕1が軌跡10を構成するものとなる。
【0041】
ここで、上述した点状の照射痕1の直径(
図1(b)中、「r」で示される距離)は、0.1μm以上であることが好ましく、特に1μm以上であることが好ましく、さらには5μm以上であることが好ましい。この範囲であることで、界面アブレーションを良好に生じさせ易くなる。また、上記直径rは、480μm以下であることが好ましく、特に240μm以下であることが好ましく、さらには120μm以下であることが好ましい。この範囲であることで、界面アブレーションを良好に生じさせ易くなるとともに、ワークハンドリングシート200等の焼き付きを抑制し易くなる。
【0042】
界面アブレーションを良好に生じさせ易くなるという観点から、隣接する照射痕1同士の間隔(
図1(b)中、「ds」で示される距離)は、照射痕1の直径r以下であることが好ましく、特に、隣接する照射痕1同士の間隔dsが照射痕1の直径rの半分以下であることが好ましく、さらには、隣接する照射痕1同士の間隔dsが0であること(すなわち、照射痕1同士が一部で重複していること)が好ましい。なお、ここにいう間隔dsとは、
図1(b)に示される通り、照射痕1の端部から隣接する照射痕1の端部までの間の距離を指すものとする。
【0043】
また、隣接する点状の照射痕1同士の間隔dsは、20μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好まし、さらには0μm以下であることが好ましい。この範囲であることで、界面アブレーションを良好に生じさせ易くなるとともに、ワークハンドリングシート200等の焼き付きを抑制し易くなる。
【0044】
点状のレーザー光の照射をする場合、照射痕1が線状の軌跡10を構成する結果となっていれば、照射の順番は特に限定されない。
図3は、点状のレーザー光の照射の順番を模式的に示す図である。
図3(a)から(d)において、数字を囲む各々の丸が1つの照射痕1を示し、数字が照射の順番を意味する。例えば、
図3(a)では、1番目から5番目まで直線状に順に照射することで1つ目の軌跡10を形成した後、当該軌跡10の隣に6番目から10番目まで直線状に順に照射することで2つ目の軌跡10を形成するものとなっている。
図3(a)から(d)で示される全ての例が、本実施形態に係るデバイス製造方法に採用することができる。ただし、これらの例に限られず、軌跡10が線状となるような照射であれば、本実施形態に係るデバイス製造方法に採用することができる。
【0045】
2.準備工程
準備工程においては、前述した通り、ワークハンドリングシート200上に複数のワーク小片100が保持されてなる積層体を準備する。当該ワークハンドリングシート200は、ワーク小片100を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層201と、当該界面アブレーション層201における片面側に積層された基材202とを備える。
【0046】
本実施形態に係るワークハンドリングシート200においては、界面アブレーション層201が、ワーク小片を保持可能である。すなわち、本実施形態に係るワークハンドリングシート200は、界面アブレーション層201における基材202とは反対の面上に積層されたワーク小片を、その状態のまま保持することができる。
【0047】
上記保持の具体的な態様は限定されないものの、好ましい例としては、界面アブレーション層201がワーク小片に対する粘着性を発揮することで保持することが挙げられる。この場合、界面アブレーション層201は、後述する通り、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含むこと、すなわち粘着剤層であることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態における界面アブレーション層201は、レーザー光の照射によって界面アブレーションするものである。すなわち、界面アブレーション層201は、上記レーザー光の照射を受けた領域において、局所的な界面アブレーションするものである。なお、上記レーザー光としては、界面アブレーションを生じさせることが可能であれば特に限定されず、紫外域、可視光域および赤外域のいずれの波長を有するレーザー光であってよく、中でも、紫外域の波長を有するレーザー光が好ましい。
【0049】
本明細書において、界面アブレーションとは、上記レーザー光のエネルギーによって界面アブレーション層201を構成する成分の一部が蒸発または揮発し、それによって生じたガスが界面アブレーション層201と基材202との界面に溜まって空隙(ブリスター)が生じることを指す。この場合、ブリスターによって界面アブレーション層201の形状が変化し、ワーク小片が界面アブレーション層201から剥がれ落ちて、ワーク小片が分離することとなる。
【0050】
(1)界面アブレーション層
本実施形態における界面アブレーション層201の具体的な構成や組成は、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションするという性質を有する限り、特に限定されない。ワーク小片を保持可能であるという性質を良好に発揮しやすいという観点からは、前述した通り、界面アブレーション層201は、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含むことが好ましい。
【0051】
上記粘着剤としては、ワーク小片100等の被着体に対する十分な保持力(粘着力)を発揮することができる限り、特に限定されない。上記粘着剤の例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、所望の粘着力を発揮し易いという観点から、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0052】
また、界面アブレーション層201は、活性エネルギー線硬化性成分を含有することが好ましい。界面アブレーション層201が当該成分を含有することにより、活性エネルギー線の照射によって界面アブレーション層201を硬化させることができ、それにより、本実施形態に係るワークハンドリングシート200とワーク小片100との密着性を低下させることができる。そのため、上述した界面アブレーションを生じさせる前に、または上述した界面アブレーションと同時に、活性エネルギー線の照射によって密着性を低下させることにより、本実施形態に係るワークハンドリングシート200からのワーク小片100の分離を確実に行うことが可能となる。また、ワーク小片の十分な分離を生じさせるために必要となるレーザー光の照射量をさらに低減することが可能となる。さらに、本実施形態におけるワークハンドリングシート200では、活性エネルギー線の照射によってワーク小片に対する密着性が低下するため、活性エネルギー線の照射前における密着性を高めに設定することも可能となる。それにより、本実施形態におけるワークハンドリングシート200に対して、他のシート等からワーク小片を転写する際に、当該他のシート等におけるワーク小片の残留を防いで、良好な転写を行うことが可能となる。
【0053】
特に、界面アブレーション層201が粘着剤から構成される場合、界面アブレーション層201は、活性エネルギー線硬化性成分として、活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤(以下、「活性エネルギー線硬化性粘着剤」という場合がある。)を含有することが好ましい。
【0054】
上記活性エネルギー線硬化性粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性ポリマー(活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー)と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。また、活性エネルギー線硬化性粘着剤は、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーと、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物であってもよい。
【0055】
上記活性エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖に活性エネルギー線硬化性を有する官能基(活性エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル重合体(以下「活性エネルギー線硬化性重合体」という場合がある。)であることが好ましい。この活性エネルギー線硬化性重合体は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系重合体と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られるものであることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。さらに、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0056】
上述した官能基含有モノマー単位を有するアクリル系重合体は、官能基含有モノマーとともに、その他のモノマーを重合させてなるものであってよい。このような官能基含有モノマーおよびその他のモノマー、ならびに上述した不飽和基含有化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば国際公開第2018/084021号に開示されるものを使用することができる。
【0057】
上記活性エネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、特に15万以上であることが好ましく、さらには20万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、150万以下であることが好ましく、特に100万以下であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0058】
上述した活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分としては、例えば、不飽和基含有化合物を反応させる前の上記(メタ)アクリル酸エステル重合体を使用することができる。
【0059】
上記活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、特に15万以上であることが好ましく、さらには20万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、150万以下であることが好ましく、特に100万以下であることが好ましい。
【0060】
また、上述した少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0061】
活性エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、当該粘着剤に対して、光重合開始剤を添加することが好ましい。本実施形態における界面アブレーション層201が光重合開始剤を含有することで、特に活性エネルギー線として紫外線を用いる場合に、界面アブレーション層201の重合硬化時間および光線照射量を低減しながらも、効果的に界面アブレーション層201を硬化させることが可能となる。
【0062】
上述した光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
上述した光重合開始剤の中でも、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0064】
界面アブレーション201中における光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.3質量部以上であることが好ましく、さらには0.5質量部以上であることが好ましい。また、上記含有量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、特に15質量部以下であることが好ましく、さらには10質量部以下であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲であることで、効果的に界面アブレーション層201を硬化させ易くなる。
【0065】
また、本実施形態における界面アブレーション層201は、紫外線吸収剤を含有することも好ましい。界面アブレーション層201中に紫外線吸収剤が存在することで、界面アブレーション層201が、レーザー光からエネルギーを受け取る効率が向上する。これにより、効果的に界面アブレーションが生じ、保持したワーク小片を界面アブレーション層201から良好に分離することが可能となる。特に、ワーク小片の十分な分離を生じさせるために必要となるレーザー光の照射量が低減し、レーザー光の照射装置の稼働コストを低減できるとともに、ターゲットとするワーク小片のみを良好に分離し易くなって精度が向上し、さらには、過度なレーザー光照射による装置およびワーク小片等の損傷を防ぐこともできる。
【0066】
本実施形態における紫外線吸収剤の種類は特に限定されない。本実施形態における紫外線吸収剤は、有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよいが、良好な界面アブレーションを生じさせ易いという観点からは有機化合物であることが好ましい。
【0067】
紫外線吸収剤が有機化合物である場合、当該紫外線吸収剤の好ましい例としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、ハイドロキノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸系紫外線吸収剤等の化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上述した紫外線吸収剤の中でも、YAGの第三次高調波(355nm)において良好な吸収性を有し、且つ良好な界面アブレーションを生じさせ易いという観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の少なくとも1種を使用することが好ましく、とりわけヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を使用することが好ましい。
【0069】
また、本実施形態における紫外線吸収剤は、波長355nmの光線の吸光度が、0.5以上であることが好ましく、特に1.0以上であることが好ましく、さらには1.2以上であることが好ましく、とりわけ2.0超であることが好ましい。これにより、良好な界面アブレーションを生じさせ易くなる。なお、上記吸光度の上限値については特に限定されず、例えば4.0以下であってよい。
【0070】
本実施形態における界面アブレーション層201中における紫外線吸収剤の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、特に3質量%以上であることが好ましく、さらには5質量%以上であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が1質量%以上であることで、界面アブレーション層201がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。また、本実施形態における界面アブレーション層201中における紫外線吸収剤の含有量は、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、特に50質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が75質量%以下であることで、界面アブレーション層201形成のための材料の粘度が適度なものとなり、良好な造膜性を確保し易くなる。
【0071】
また、本実施形態における界面アブレーション層201を構成する活性エネルギー線硬化性粘着剤は、上述した成分の他に、架橋剤等を含有してもよい。
【0072】
本実施形態における界面アブレーション層201の厚さは、3μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましく、さらには25μm以上が好ましい。また、界面アブレーション層201の厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に60μm以下であることが好ましく、さらには50μm以下であることが好ましい。界面アブレーション層201の厚さが上記範囲であることで、界面アブレーション層201上におけるワーク小片100の保持と、界面アブレーションによるワーク小片100の分離とを両立し易いものとなる。
【0073】
(2)基材
本実施形態における基材202は、その組成や物性について特に限定されない。ワークハンドリングシート200が所望の機能を発揮し易いという観点からは、基材202は、樹脂から構成されることが好ましい。基材202が樹脂から構成される場合、当該樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン-ノルボルネン共重合体、ノルボルネン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂;(メタ)アクリル酸エステル共重合体;ポリウレタン;ポリイミド;ポリスチレン;ポリカーボネート;フッ素樹脂などが挙げられる。また、基材12を構成する樹脂は、上述した樹脂を架橋したものや、上述した樹脂のアイオノマーといった変性したものであってもよい。また、基材202は、上述した樹脂からなる単層のフィルムであってもよく、あるいは、当該フィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。
【0074】
本実施形態における基材202の表面には、界面アブレーション層201に対する密着性を向上させる目的で、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。
【0075】
本実施形態における基材202は、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。また、界面アブレーション層201が、活性エネルギー線により硬化する材料を含む場合、基材202は活性エネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。
【0076】
本実施形態における基材202の製造方法は、樹脂から基材202を製造するものである限り特に限定されない。例えば、Tダイ法、丸ダイ法等の溶融押出法;カレンダー法;乾式法、湿式法等の溶液法等によって、樹脂をシート状に成形することで製造することができる。
【0077】
本実施形態における基材202の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。また、基材202の厚さは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが最も好ましい。基材202の厚さが上記範囲であることで、ワークハンドリングシート200が剛性と柔軟性とを所定のバランスで備えるものとなり、ワーク小片の良好なハンドリングを行い易いものとなる。
【0078】
(3)ワーク小片
本実施形態における準備工程では、上述したワークハンドリングシート200における界面アブレーション層201側の面上に複数のワーク小片100が保持されてなる積層体が準備される。
【0079】
上記積層体は、予め個片化されたワーク小片100を、ワークハンドリングシート200上に積層することで準備されてもよく、あるいは、ワークハンドリングシート200の界面アブレーション層201上にワーク(ワーク小片の材料となるもの)を積層した後、当該ワークを個片化して、複数のワーク小片100とすることで得られたものであってもよい。すなわち、ワーク小片100は、ワークハンドリングシート200上にてワークをダイシングすることで得られたものであってもよい。
【0080】
本実施形態におけるワーク小片100の形状やサイズについては特に限定されない。例えば、ワーク小片100の平面視形状は、矩形や円形等の定形であってもよく、または、不定形であってもよい。
【0081】
ワーク小片100の寸法としては、ワーク小片100が矩形である場合、その最小の一辺が、0.3mm以上であることが好ましく、特に1mm以上であることが好ましく、さらには1.5mm以上であることが好ましい。また、上記最小の一辺は、50mm以下であることが好ましく、特に20mm以下であることが好ましく、さらには10mm以下であることが好ましい。
【0082】
ワーク小片100の具体例としては、半導体部品や半導体装置等が挙げられ、より具体的には、メモリ、イメージセンサ、パワーデバイス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等が挙げられる。
【0083】
3.配置工程
配置工程においては、前述した通り、ワーク小片100を受容可能な対象物に対して、前述した積層体におけるワーク小片100側の面が向かい合うように上記積層体を配置する。当該配置は、公知の装置等を用いて行うことができる。
【0084】
上記対象物としては、製造するデバイスに応じて適宜決定されるものの、ワーク小片100が発光ダイオードである場合には、対象物の具体例としては、基板、シート、リール等が挙げられ、特に配線が設けられた配線基板が好適に使用される。
【0085】
4.硬化工程
本実施形態に係るデバイス製造方法では、上記配置工程と後述する分離工程との間に、任意に硬化工程を設けることができる。特に、当該硬化工程は、界面アブレーション層201が前述した活性エネルギー線硬化性成分を含有する場合に好適である。
【0086】
硬化工程では、前述した積層体における界面アブレーション層201の全体に対し、または、前述した積層体における界面アブレーション層201における、少なくとも1つのワーク小片100が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、当該界面アブレーション層201を全体的または局所的に硬化させる。
【0087】
界面アブレーション層201が前述した活性エネルギー線硬化性成分を含有する場合、上述の通り活性エネルギー線を照射することによって、当該界面アブレーション層201を全体的または部分的に硬化させることができる。これにより、硬化した界面アブレーション層201のワーク小片100に対する密着性が低下し、ワーク小片100の分離をより確実に行うことが可能となる。
【0088】
上述した活性エネルギー線としては、例えば、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを使用でき、具体的には、紫外線や電子線などを使用することができる。特に、取扱いが容易な紫外線が好ましい。
【0089】
紫外線を使用する場合、その照射量は、光量が、10mJ/cm2以上であることが好ましく、35mJ/cm2以上であることがより好ましく、特に95mJ/cm2以上であることが好ましく、さらには190mJ/cm2以上であることが好ましい。光量がこの範囲であることにより、その後に行う界面アブレーションの作用と相まって、ワーク小片100の分離を良好に行い易くなる。なお、光量の上限値は特に限定されず、例えば、10000mJ/cm2以下であることが好ましく、特に5000mJ/cm2以下であることが好ましく、さらには2000mJ/cm2以下であることが好ましい。また、照度は、1mW/cm2以上、1000mW/cm2以下であることが好ましい。
【0090】
硬化工程における活性エネルギー線の照射は、公知の手法を用いて行うことができ、例えば、光源として高圧水銀ランプや紫外線LEDを備える紫外線照射装置や、後述する分離工程でも使用されるレーザー光照射装置を用いることができる。
【0091】
5.分離工程
分離工程では、前述した積層体における界面アブレーション層201における、少なくとも1つのワーク小片100が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、当該界面アブレーション層201における上記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在するワーク小片100をワークハンドリングシート200から分離し、当該ワーク小片100を対象物上に載置する。
【0092】
上記照射は、前述した照射の条件を満たすものである限り、特に限定されず、公知のレーザー光照射装置を使用して行うことができる。なお、ワークハンドリングシート200等の焼き付けを抑制し易いという観点から、照射は、1度照射した位置に対して再度照射しないことが好ましい。
【0093】
また、上記照射を行う際には、ワークハンドリングシート200とワーク小片100とからなる積層体を、ガラス等の支持体に積層した状態で行ってもよく、あるいは、当該支持体に積層せずに行ってもよい。後者の場合、工程を削減できる観点から好ましい。支持体に積層させない場合、例えば、上記積層体の端部のみを支えた状態で照射を行ってもよく、また、上記積層体を対象物上に載置した状態で照射を行ってもよい。
【0094】
上記照射として、前述したような点状(スポット状)の照射を行う場合、1度の照射のエネルギーは、20μJ以上であることが好ましく、特に30μJ以上であることが好ましく、さらには40μJ以上であることが好ましい。これにより、効率的に界面アブレーションを生じさせ易くなる。なお、上記エネルギーの上限値としては、100μJ以下であることが好ましく、特に75μJ以下であることが好ましく、さらには50μJ以下であることが好ましい。これにより、ワークハンドリングシート200等の焼き付きを抑制し易いものとなる。
【0095】
なお、硬化工程における活性エネルギー線の照射および分離工程におけるレーザー光の照射を、ともに上述したレーザー光照射装置を用いて行う場合、硬化工程および分離工程を同時に行ってもよい。すなわち、分離工程におけるレーザー光の照射を、硬化工程における活性エネルギー線の照射を兼ねるものとして行い、界面アブレーション層201の局所的な硬化と界面アブレーションとを同時に行ってもよい。
【0096】
6.その他の工程
本実施形態に係るデバイス製造方法は、上述した準備工程、配置工程、硬化工程および分離工程以外の工程を備えていてもよい。例えば、準備工程と分離工程との間の任意のタイミングにおいて、グラインド、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、モールディング、検査、転写工程等を行っても良い。
【0097】
7.デバイス
本実施形態に係るデバイス製造方法によれば、使用するワーク小片100や対象物を適宜選択することで様々なデバイスを製造することができる。例えば、ワーク小片100として、前述した半導体部品等を選択した場合には、当該半導体部品を備えた電子部品等をデバイスとして製造することができる。
【0098】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0099】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0100】
〔製造例1〕(ワークハンドリングシートAの製造)
(1)粘着性組成物の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル80質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部とを、溶液重合法により重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。この(メタ)アクリル酸エステル重合体に対し、そのアクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して80モル%のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(活性エネルギー線硬化性成分)を得た。このアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を前述の方法によって測定したところ、100万であった。
【0101】
上記で得られた、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体100質量部(固形分換算,以下同じ)と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,商品名「コロネートL」)2.0質量部と、光重合開始剤としての2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「Omnirad379」)3.0質量部と、紫外線吸収剤としてのトリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤,BASF社製,製品名「Tinuvin477」)10.0質量部とを溶媒中で混合し、粘着性組成物の塗布液を得た。
【0102】
(2)界面アブレーション層(粘着剤層)の形成
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離面に対して、上記工程(1)で得られた粘着性組成物の塗布液を塗布し、得られた塗膜を加熱により乾燥させた。これにより、塗膜が乾燥してなる厚さ30μmの界面アブレーション層と、剥離シートとが積層されてなる積層体を得た。
【0103】
(3)ワークハンドリングシートの作製
上記工程(2)で得られた積層体における界面アブレーション層側の面と、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製,製品名「T-910 WM19」,厚さ:50μm)の片面とを貼り合わせることで、剥離シートが貼付された状態のワークハンドリングシートAを得た。
【0104】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0105】
〔製造例2〕(ワークハンドリングシートBの製造)
界面アブレーション層を、その厚さが45μmとなるように形成したこと以外、製造例1と同様にしてワークハンドリングシートBを得た。
【0106】
〔製造例3〕(ワークハンドリングシートCの製造)
粘着性組成物中の紫外線吸収剤の配合量を20.0質量部に変更したこと以外、製造例1と同様にしてワークハンドリングシートCを得た。
【0107】
〔実施例1〕
(1)ワークハンドリングシート上におけるチップの準備(準備工程)
シリコンウエハ(#2000,厚さ:24μm)の片面に、ダイシングシート(リンテック社製,製品名「D-485H」)の粘着面を貼付した。続いて、当該ダイシングシートにおける上記粘着面の周縁部(シリコンウエハとは重ならない位置)に、ダイシング用リングフレームを付着させた。さらに、リングフレームの外径に合わせてダイシングシートを裁断した。その後、ダイシング装置(ディスコ社製,製品名「DFD6362」)を用いて、シリコンウエハを、3mm×3mmのサイズ(3mm□)を有するチップにダイシングした。
【0108】
続いて、製造例1で製造したワークハンドリングシートAから剥離シートを剥離し、それにより露出した露出面と、上記の通り得られた積層体における複数のチップが存在する面とを貼り合わせた。その後、複数のチップからダイシングシートを剥離した。これにより、複数のチップをダイシングシートからワークハンドリングシートAに転写し、ワークハンドリングシートA上に複数のチップが設けられてなる積層体を得た。
【0109】
(2)積層体の配置(配置工程)
続いて、水平に載置した支持板に対して、上記の通り得られた積層体におけるチップ側の面が向かい合うように配置した。このとき、積層体と支持体とが平行となり、且つ、これらの間に僅かな隙間ができるように配置した。
【0110】
(3)活性エネルギー線の照射(硬化工程)
その後、光源として高圧水銀ランプを備えた紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用い、上述した積層体におけるワークハンドリングシートA側の面に対し、紫外線を照射(照度:230mW/cm2,光量:380mJ/cm2)することで、ワークハンドリングシートAにおける界面アブレーション層を全体的に硬化させた。
【0111】
(4)レーザー光照射によるチップの分離(分離工程)
最後に、レーザー光照射装置(YAG第三次高調波(波長355nm)かつパルス幅20nsで、光量700mJ/cm2)を用いて、ワークハンドリングシート越しにチップに対してレーザー光を照射した。照射条件は、周波数:40kHz、照射量:50μJ/shotとした。
【0112】
このときの照射は、
図1(a)および(b)に示すように、点状のレーザー光を順次照射し、その軌跡が、互いに平行な複数の線となるように行った。また、この複数の線状の軌跡から構成される領域が、チップの中央部に位置するように照射した。点状のレーザー光の照射の順番は、
図4(a)に示すように、一つの軌跡の一端から開始して他端に向けて順に照射した後、隣接する軌跡についても、同じ側の一端から開始して他端に向けて順に照射することを繰り返して行った。このような照射パターンを「照射パターン1」とした。
【0113】
また、照射によって生じた一つの照射痕の直径rを測定すると、20μmであった。さらに、軌跡同士の間隔dl(一つの線と、それに隣接する線との間隔)を測定すると、55μmであった。さらに、一つの軌跡の中において隣接する照射痕同士の間隔ds(一つの照射痕と、それに隣接する照射痕との間隔)を測定すると、5μmであった。
【0114】
さらに、チップの中心から最も離れて位置する軌跡によって囲まれる領域は矩形(略正方形)となり、そのサイズは1mm×1mm(1mm□)であった。そして、この領域の面積(1mm2)の、チップ面積(9mm2)に対する割合を算出すると、11.1%であった。
【0115】
なお、上述した照射は、複数のチップの中から100個のチップ(縦10個×横10個のチップのまとまり)を選択し、それらの各々に対して行った。
【0116】
〔実施例2~12および比較例1~4〕
ワークハンドリングシートの種類、チップのサイズおよび厚さ、紫外線の光量、照射領域のサイズ、チップ面積に対する照射面積の割合、軌跡同士の間隔、ならびに、隣接する照射痕同士の間隔を表1に示す通り変更した以外、実施例1と同様にレーザーリフトオフを行った。
【0117】
〔比較例5〕
分離工程の際に、照射パターンを以下の通り変更したこと以外、実施例1と同様にレーザーリフトオフを行った。なお、この比較例5の照射パターンを、「照射パターン2」とした。
【0118】
すなわち、照射パターン1と同様に点状のレーザー光を、チップ中央の1.5mm×1.5mm(1.5mm□)の領域内に、ランダムに約120箇所照射した。この領域の面積(2.25mm2)の、チップ面積(9mm2)に対する割合を算出すると、25.0%であった。また、隣接する照射痕同士の間隔dsを測定すると、約80μmであった。
【0119】
〔試験例1〕(レーザーリフトオフ適性の評価)
実施例および比較例として行ったレーザーリフトオフについて、ワークハンドリングシートからのチップの脱離の有無を確認し、以下の基準に基づいて、レーザーリフトオフ適性を評価した。結果を表1に示す。
○…良好に脱離が生じたチップの数の割合が70%以上であった。
×…良好に脱離が生じたチップの数の割合が70%未満であった。
【0120】
〔試験例2〕(焼き付きの評価)
実施例および比較例として行ったレーザーリフトオフ後のワークハンドリングシートについて、デジタル顕微鏡(キーエンス社製,製品名「VHX-7000」)を用いて倍率50倍にて焼き付きの有無を確認し、以下の基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
○…焼き付きが無かった。
×…焼き付きが有った。
【0121】
【0122】
表1から分かるように、実施例に係るレーザーリフトオフでは、ワークハンドリングシートの焼き付き等の不具合も起こることがなく、良好な脱離が生じることがわかった。