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特開2025-91128真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025091128
(43)【公開日】2025-06-18
(54)【発明の名称】真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/02 20060101AFI20250611BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20250611BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
F16L59/02
F16L59/065
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206194
(22)【出願日】2023-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】棟田 琢
【テーマコード(参考)】
3H036
4F100
【Fターム(参考)】
3H036AA08
3H036AA09
3H036AB02
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB23
3H036AB24
3H036AB25
3H036AB33
3H036AC01
4F100AA01B
4F100AA01C
4F100AA01D
4F100AA01E
4F100AB01B
4F100AB01D
4F100AK41A
4F100AK42A
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CC00C
4F100CC00E
4F100EH46C
4F100EH46E
4F100GB15
4F100JJ02
(57)【要約】
【課題】本開示は、断熱性能の低下が抑制された真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材を提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示は、ポリエステル系樹脂層と、所定の厚さを有するガス抜け防止層と、を有する、真空断熱材用外包材を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂層と、所定の厚さを有するガス抜け防止層と、を有する、真空断熱材用外包材。
【請求項2】
前記ガス抜け防止層が無機膜を有し、前記無機膜が無機化合物膜を有し、前記ガス抜け防止層の厚さが10nm以上である、請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項3】
前記ガス抜け防止層が無機膜を有し、前記無機膜が金属膜を有し、前記ガス抜け防止層の厚さが50nm以上である、請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項4】
前記ガス抜け防止層がコーティング膜を有し、前記ガス抜け防止層の厚さが400nm以上である、請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項5】
前記ガス抜け防止層が、2つ以上の層を有する、請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項6】
前記ガス抜け防止層が、2つ以上の無機膜を有する、請求項5に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項7】
前記ガス抜け防止層が、2つ以上のコーティング膜を有し、前記無機膜と前記コーティング膜とが交互に配置されている、請求項6に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項8】
前記ポリエステル系樹脂層が、ポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項9】
前記ガス抜け防止層の前記ポリエステル系樹脂層とは反対側の面に、熱溶着可能な層を有する、請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項10】
前記真空断熱材用外包材が積層フィルムを有し、前記積層フィルムが、前記ポリエステル系樹脂層と、前記ポリエステル系樹脂層の一方の面に配置された前記ガス抜け防止層とを有する、請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項11】
2つ以上の前記積層フィルムを有する、請求項10に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項12】
前記積層フィルムの前記ポリエステル系樹脂層側の面に、ガスバリアフィルムを有する、請求項10に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項13】
芯材と、前記芯材が封入された外包材とを有する真空断熱材であって、
前記外包材が、請求項1から請求項12までのいずれかに記載の真空断熱材用外包材である、真空断熱材。
【請求項14】
熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、
前記真空断熱材は、芯材と、前記芯材が封入された外包材とを有し、
前記外包材が、請求項1から請求項12までのいずれかに記載の真空断熱材用外包材である、真空断熱材付き物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の省エネルギー化を目的として、真空断熱材が用いられている。真空断熱材は、外包材の袋体内に芯材が配置され、上記袋体内が大気圧よりも圧力が低い真空状態に保持されている部材であり、内部の熱対流が抑制されるため、良好な断熱性能を発揮することができる。なお、真空断熱材に用いられる上記外包材のことを、真空断熱材用外包材、または単に外包材と称して説明する。
【0003】
真空断熱材用外包材においては、真空断熱材内部の真空状態を長期間保持するために、酸素や水蒸気等のガスの透過を抑制するためのガスバリア性が要求される。そのため、一般に、真空断熱材用外包材には、ガスバリアフィルムを含む構成が採用されている。例えば特許文献1には、熱溶着可能なフィルムと、上記熱溶着可能なフィルムの第1の主面側に位置し、金属または無機化合物からなるガスバリア膜を少なくとも有するガスバリアフィルムを1つ以上と、を含む真空断熱材用外包材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-210958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の真空断熱材用外包材においては、ガスバリアフィルムの基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適に用いられている。PETフィルムは、安価であり、高い機械強度を有し、さらに耐熱性も高い。これらの特性は、基材上にガスバリア層を形成する過程での加工性の高さにつながるため、高いガスバリア性を有するガスバリアフィルムを製造しやすい。また、真空断熱材用外包材に適用した場合にも強靭さは利点となる。
【0006】
一方、本願の発明者は、PETフィルムを有するガスバリアフィルムを真空断熱材用外包材に適用すると、真空断熱材の熱伝導率が高くなり、断熱性能が低下する問題が生じることを新たに知見した。
【0007】
本開示は、上記問題に鑑みてなされた発明であり、断熱性能の低下が抑制された真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態は、ポリエステル系樹脂層と、所定の厚さを有するガス抜け防止層と、を有する、真空断熱材用外包材を提供する。
【0009】
本開示の他の実施形態は、芯材と、上記芯材が封入された外包材とを有する真空断熱材であって、上記外包材が、上述の真空断熱材用外包材である、真空断熱材を提供する。
【0010】
本開示の他の実施形態は、熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材が封入された外包材とを有し、上記外包材が、上述の真空断熱材用外包材である、真空断熱材付き物品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、断熱性能の低下が抑制された真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示における真空断熱材用外包材の一例を示す概略断面図である。
図2】本開示における真空断熱材用外包材における溶存ガスの動きを示す概略断面図である。
図3】本開示における真空断熱材用外包材における溶存ガスの動きを示す概略断面図である。
図4】本開示における真空断熱材用外包材の他の例を示す概略断面図である。
図5】本開示における真空断熱材用外包材の他の例を示す概略断面図である。
図6】本開示における真空断熱材用外包材の他の例を示す概略断面図である。
図7】本開示における真空断熱材の一例を示す概略斜視図および断面図である。
図8】従来の真空断熱材用外包材の一例を示す概略断面図である。
図9】従来の真空断熱材用外包材における溶存ガスの動きを示す概略断面図である。
図10】従来の真空断熱材用外包材における溶存ガスの動きを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品を実施態様に含む。以下、本開示の実施態様を、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
【0014】
また、本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0015】
上述したように、従来、真空断熱材用外包材におけるガスバリアフィルムの基材としては、PETフィルムが好適に用いられている。図8は、従来の真空断熱材用外包材の一例を示す概略断面図である。図8に示す真空断熱材用外包材60は、厚さ方向において、熱溶着可能な層61と、第1ガスバリアフィルムF11と、第2ガスバリアフィルムF12と、保護フィルム65と、を有する。熱溶着可能な層61と第1ガスバリアフィルムF11との間、第1ガスバリアフィルムF11と第2ガスバリアフィルムF12との間、第2ガスバリアフィルムF12と保護フィルム65との間には、接着層64が配置されている。第1ガスバリアフィルムF11および第2ガスバリアフィルムF12はそれぞれ、PETフィルム62と、PETフィルム62の一方の面に配置されたガスバリア層63とを有する。
【0016】
図8に示すように、一般的に、真空断熱材用外包材は複数のガスバリアフィルムを有しており、複数のガスバリアフィルムのうち、最も内側(真空断熱材としたときに厚さ方向で芯材側となる方向)に位置する第1ガスバリアフィルムF11は、熱溶着可能な層61に、接着層64を介して直接積層されることが多い。これは、ガスバリアフィルムと熱溶着可能な層との間に接着層以外の別の層を配置する特段の理由が無ければ、製造工程やコスト面で当然の設計である。
【0017】
また、図8に示すように、一般的に、複数のガスバリアフィルムのうち、最も内側(真空断熱材としたときに厚さ方向で芯材側となる方向)に位置する第1ガスバリアフィルムF11では、ガスバリア層63は、PETフィルム62に対して熱溶着可能な層61とは反対側に配置される。これは、第1ガスバリアフィルムF11において、ガスバリア層63がPETフィルム62に対して熱溶着可能な層61側に配置されている場合よりも、ガスバリア層63がPETフィルム62に対して熱溶着可能な層61とは反対側に配置されている場合のほうが、真空断熱材用外包材60の耐突き刺し性が良くなるので、断熱性能の低下を抑制できるからである。また、第1ガスバリアフィルムF11と熱溶着可能な層61とを接着層64を介して積層する際に、第1ガスバリアフィルムF11のガスバリア層63を保護し、ガスバリア層63の傷付きによるガスバリア性の低下を抑制するためである。さらに、第1ガスバリアフィルムF11のガスバリア層63側の面と熱溶着可能な層61とを接着層64を介して積層する場合よりも、第1ガスバリアフィルムF11のPETフィルム62側の面と熱溶着可能な層61とを接着層64を介して積層する場合のほうが、ラミネート強度が高くなるためである。
【0018】
本願の発明者は、PETフィルムを有するガスバリアフィルムを適用した外包材を用いて製造された真空断熱材の熱伝導率が高くなる理由について検討したところ、PETフィルムは気体の溶解度係数が高く、窒素、酸素、二酸化炭素等の溶存ガスをPETフィルム中に多く含むためであると推察した。例えば、PETフィルム(Mylarfilm)の25℃での二酸化炭素の溶解度係数は、16.6×10-3cc/cc・cmHg(文献値)である。溶解度係数Sは、透過係数P/拡散係数Dにより算出することができる。上記文献値は、「材料と水分ハンドブック―吸湿・防湿・調湿・乾燥-」 共立出版株式会社 1968年(p.387)に記載の値である。
【0019】
真空断熱材は、例えば、以下のように製造される。真空断熱材用外包材を2枚準備し、それぞれの熱溶着可能な層同士を向き合わせて重ね、三辺の外縁を熱融着し、一辺が開口する袋体を得る。この袋体に、開口から芯材を入れた後、真空チャンバーに挿入し、上記開口から空気を吸引し、袋体の内部が減圧された状態で開口を封止することで、真空断熱材を得ることができる。
【0020】
この減圧時における従来の真空断熱材用外包材中の溶存ガスの動きについて、図9(a)および図9(b)を用いて説明する。図9(b)は、図9(a)の二点鎖線枠内における溶存ガスの動きを説明するための概略断面図である。また、真空断熱材製造後の大気中における従来の真空断熱材用外包材中の溶存ガスの動きについて、図10(a)および図10(b)を用いて説明する。図10(b)は、図10(a)の二点鎖線枠内における溶存ガスの動きを説明するための概略断面図である。
【0021】
図9(a)に示すように、真空断熱材用外包材60から得た袋体75の開口72から芯材71を入れた後、真空チャンバーCに挿入し、真空チャンバーC内を減圧する。図9(a)および図9(b)に示すように、減圧時においては、外包材60中の溶存ガスGが袋体75の内部または外部に向けて移動する。袋体75の内部に移動した溶存ガスGは、開口72から袋体75の外部に放出される。しかし、PETフィルム62中の溶存ガスGが多いため、PETフィルム62中の溶存ガスGは完全には袋体75の外部に放出されず、PETフィルム62中に溶存ガスGが多く残る。この状態で、開口72が封止され、図10(a)に示すように真空断熱材70が形成されると、図10(b)に示すように、PETフィルム62中の溶存ガスGが、真空断熱材70の内部に侵入し、真空断熱材70の内部真空度が悪化する。特に、熱溶着可能な層61のすぐ外側(真空断熱材としたときに厚さ方向で芯材側となる方向(内側)とは反対方向)に配置されているPETフィルム62からは、溶存ガスGが真空断熱材70の内部に侵入しやすく、真空断熱材70の内部真空度の悪化が顕著となる。
【0022】
このような問題に対し、本願の発明者は、外包材において、PETフィルムよりも内側(真空断熱材としたときに厚さ方向で芯材側となる方向)に、PETフィルム中の溶存ガスの透過を抑制するためのガス抜け防止層を配置することで、真空断熱材の熱伝導率上昇を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0023】
以下、本開示における真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品についてそれぞれ説明する。
【0024】
A.真空断熱材用外包材
本開示における真空断熱材用外包材は、ポリエステル系樹脂層と、所定の厚さを有するガス抜け防止層と、を有する。
【0025】
図1は、本開示における真空断熱材用外包材の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、真空断熱材用外包材10は、ポリエステル系樹脂層1と、所定の厚さを有するガス抜け防止層2と、を有することを特徴とする。図1に示すように、真空断熱材用外包材10は、積層フィルム(第1積層フィルムF1)を有しており、積層フィルム(第1積層フィルムF1)が、ポリエステル系樹脂層1と、ポリエステル系樹脂層1の一方の面に配置されたガス抜け防止層2とを有することが好ましい。すなわち、ポリエステル系樹脂層1およびガス抜け防止層2が、積層フィルム(第1積層フィルムF1)を構成していることが好ましい。また、真空断熱材用外包材10は、ポリエステル系樹脂層1と、ガス抜け防止層2と、熱溶着可能な層3とを、厚さ方向において、この順に有することが好ましい。
【0026】
図1において、真空断熱材用外包材10は、2つの積層フィルム(第1積層フィルムF1、第2積層フィルムF2)を有しており、第1積層フィルムF1および第2積層フィルムF2はそれぞれ、ポリエステル系樹脂層1と、ポリエステル系樹脂層1の一方の面に配置されたガス抜け防止層2とを有している。第1積層フィルムF1、第2積層フィルムF2ではそれぞれ、ポリエステル系樹脂層1に対して熱溶着可能な層3側にガス抜け防止層2が配置されている。また、熱溶着可能な層3と第1積層フィルムF1との間、第1積層フィルムF1と第2積層フィルムF2との間には、接着層4が配置されている。
【0027】
真空断熱材を製造する際の減圧時における本開示の真空断熱材用外包材中の溶存ガスの動きについて、図2(a)および図2(b)を用いて説明する。図2(b)は、図2(a)の二点鎖線枠内における溶存ガスの動きを説明するための概略断面図である。また、真空断熱材製造後の本開示の真空断熱材用外包材中の溶存ガスの動きについて、図3(a)および図3(b)を用いて説明する。図3(b)は、図3(a)の二点鎖線枠内における溶存ガスの動きを説明するための概略断面図である。
【0028】
真空断熱材の製造は、図2(a)に示すように、2枚の真空断熱材用外包材10を準備し、それぞれの熱溶着可能な層同士を向き合わせて重ね、三辺の外縁を熱融着し、一辺が開口する袋体15を得る。この袋体15に、開口52から芯材11を入れた後、真空チャンバーCに挿入し、上記開口52から空気を吸引する。袋体15の内部が減圧された状態で開口52を封止することで、図3(a)に示すように、真空断熱材50を得る。
【0029】
図2(b)に示すように、減圧時においては、外包材10中における溶存ガスGが袋体15の内部または外部に向けて移動する。袋体15の内部に移動した溶存ガスGは、開口52から袋体15の外部に放出される。この状態で、開口52が封止され、図3(a)に示すように真空断熱材50が形成されると、本開示における外包材10においては、ポリエステル系樹脂層1と熱溶着可能な層3との間にガス抜け防止層2が配置されているため、すなわち、ポリエステル系樹脂層1よりも内側(真空断熱材としたときに厚さ方向で芯材側となる方向)にガス抜け防止層2が配置されているため、図3(b)に示すように、ガス抜け防止層2がポリエステル系樹脂層1中の溶存ガスGの透過を抑制し、ポリエステル系樹脂層1中の溶存ガスGが真空断熱材50の内部に侵入するのを抑制できる。したがって、真空断熱材の内部真空度の悪化が抑制される。
【0030】
従来では、図8に示すように、一般的に、外包材は複数のガスバリアフィルムを有しており、複数のガスバリアフィルムのうち、最も内側(真空断熱材としたときに厚さ方向で芯材側となる方向)に位置する第1ガスバリアフィルムF11では、ガスバリア層63は、PETフィルム62に対して熱溶着可能な層61とは反対側に配置される。これは、上述したように、断熱性能、ガスバリア性、ラミネート強度のためである。
【0031】
これに対し、本開示においては、ガス抜け防止層は、ポリエステル系樹脂層に対して熱溶着可能な層側に配置される。このようにガス抜け防止層を配置することにより、本開示の効果を奏することができる。
【0032】
以下、本開示における真空断熱材用外包材の各構成及び特性について、詳細に説明する。
【0033】
1.ガス抜け防止層
本開示におけるガス抜け防止層は、所定の厚さを有する。ガス抜け防止層の厚さは、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過を抑制できる厚さである。
【0034】
ガス抜け防止層は、ポリエステル系樹脂層の一方の面に配置される。ガス抜け防止層は、ポリエステル系樹脂層と直接接していることが好ましい。また、ガス抜け防止層およびポリエステル系樹脂層は、積層フィルムを構成していることが好ましい。
【0035】
ガス抜け防止層としては、無機膜、コーティング膜等が挙げられる。ガス抜け防止層は、無機膜を有していてもよく、コーティング膜を有していてもよく、無機膜およびコーティング膜の両方を有していてもよい。
【0036】
(1)無機膜
無機膜としては、金属膜、無機化合物膜が挙げられる。
【0037】
(a)金属膜
金属膜は、金属または合金で形成された薄膜である。金属膜に用いられる金属および合金としては、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過を抑制できる薄膜が得られればよく、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等の金属、上記金属を1以上含む合金が挙げられる。
【0038】
ガス抜け防止層は、1つの金属膜を有していてもよく、2つ以上の金属膜を有していてもよい。ガス抜け防止層が2つ以上の金属膜を有する場合、同一組成の金属膜を組み合わせてもよく、異なる組成の金属膜を組み合わせてもよい。
【0039】
金属膜は、蒸着法により形成される蒸着膜であってもよく、コーティング等の塗布法により形成されるコーティング膜であってもよい。中でも、ポリエステル系樹脂層との密着性が高く、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過をより抑制できることから、蒸着膜が好ましい。なお、金属膜が蒸着膜である場合、1回の蒸着により形成された膜を、1つの金属膜とする。例えば、2回の蒸着により同一組成の金属膜を形成する場合、2つの金属が積層されているとする。
【0040】
ガス抜け防止層が金属膜を有する場合、ガス抜け防止層の厚さは、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過を抑制できる厚さであれば特に限定されない。上記の場合、ガス抜け防止層の厚さは、例えば、50nm以上が好ましく、70nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。一方、上記の場合、ガス抜け防止層の厚さは、例えば、500nm以下であり、400nm以下であってもよく、300nm以下であってもよい。具体的には、ガス抜け防止層が金属膜を有する場合、ガス抜け防止層の厚さは、50nm以上500nm以下であり、70nm以上400nm以下であってもよく、100nm以上300nm以下であってもよい。金属膜を有するガス抜け防止層の厚さが薄すぎると、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過を十分に抑制できない場合がある。また、強度を確保できず、経時劣化する場合がある。一方、金属膜を有するガス抜け防止層の厚さが厚すぎると、形成が困難である場合がある。なお、例えばガス抜け防止層が1つの金属膜のみを有する場合、1つの金属膜の厚さが上記範囲内であればよい。また、例えばガス抜け防止層が2つ以上の金属膜のみを有する場合、2つ以上の金属膜の厚さの合計が上記範囲内であればよい。このとき、金属膜が蒸着膜である場合、上述したように、1回の蒸着により形成された膜を、1つの金属膜とする。また、例えばガス抜け防止層が金属膜と後述のコーティング膜とを有する場合、ガス抜け防止層の厚さは、後述のコーティング膜を有するガス抜け防止層の厚さを満たすことが好ましい。
【0041】
(b)無機化合物膜
無機化合物膜は、無機化合物を主成分とする薄膜である。無機化合物膜に用いられる無機化合物としては、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過を抑制できる薄膜が得られればよく、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタン、ニッケル、鉄、銅、マグネシウム、カルシウム、カリウム、錫、ナトリウム、ホウ素、鉛、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム等の金属元素または非金属元素の酸化物または窒化物が挙げられる。中でも、金属酸化物が好ましい。
【0042】
ガス抜け防止層は、1つの無機化合物膜を有していてもよく、2つ以上の無機化合物膜を有していてもよい。ガス抜け防止層が2つ以上の無機化合物膜を有する場合、同一組成の無機化合物膜を組み合わせてもよく、異なる組成の無機化合物膜を組み合わせてもよい。
【0043】
無機化合物膜は、蒸着法により形成される蒸着膜であってもよく、コーティング等の塗布法により形成されるコーティング膜であってもよい。中でも、ポリエステル系樹脂層との密着性が高く、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過をより抑制できることから、蒸着膜が好ましい。なお、無機化合物膜が蒸着膜である場合、1回の蒸着により形成された膜を、1つの無機化合物膜とする。例えば、2回の蒸着により同一組成の無機化合物膜を形成する場合、2つの無機化合物膜が積層されているとする。
【0044】
ガス抜け防止層が無機化合物膜を有する場合、ガス抜け防止層の厚さは、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過を抑制できる厚さであれば特に限定されない。上記の場合、ガス抜け防止層の厚さは、例えば、10nm以上が好ましく、15nm以上であってもよく、20nm以上であってもよい。一方、上記の場合、ガス抜け防止層の厚さは、例えば、200nm以下であり、150nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。具体的には、ガス抜け防止層が無機化合物膜を有する場合、ガス抜け防止層の厚さは、10nm以上200nm以下であり、15nm以上150nm以下であってもよく、20nm以上100nm以下であってもよい。無機化合物膜を有するガス抜け防止層の厚さが薄すぎると、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過を十分に抑制できない場合がある。また、強度を確保できず、経時劣化する場合がある。一方、無機化合物膜を有するガス抜け防止層の厚さが厚すぎると、形成が困難である場合がある。なお、例えばガス抜け防止層が1つの無機化合物膜のみを有する場合、1つの無機化合物膜の厚さが上記範囲内であればよい。また、例えばガス抜け防止層が2つ以上の無機化合物膜のみを有する場合、2つ以上の無機化合物膜の厚さの合計が上記範囲内であればよい。このとき、無機化合物膜が蒸着膜である場合、上述したように、1回の蒸着により形成された膜を、1つの無機化合物膜とする。また、例えばガス抜け防止層が無機化合物膜と上記金属膜とを有する場合、ガス抜け防止層の厚さは、上述の金属膜を有するガス抜け防止層の厚さを満たすことが好ましい。また、例えばガス抜け防止層が無機化合物膜と後述のコーティング膜とを有する場合、ガス抜け防止層の厚さは、後述のコーティング膜を有するガス抜け防止層の厚さを満たすことが好ましい。
【0045】
(2)コーティング膜
コーティング膜としては、M-O-P結合(ここで、Mは無機原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する膜、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜、および、金属元素と酸素元素と親水基含有樹脂とを含有する混合化合物膜等が挙げられる。
【0046】
(a)M-O-P結合を有する膜
M-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する膜としては、例えば金属酸化物およびリン化合物の反応生成物を含む膜が挙げられる。
【0047】
上記金属酸化物としては、原子価が2価以上の金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、マグネシウム、カルシウム等の周期表第2族の金属、亜鉛等の周期表第12族の金属、アルミニウム等の周期表第13族の金属、ケイ素等の周期表第14族の金属、チタン、ジルコニウム等の遷移金属等の金属の酸化物を挙げることができる。中でも、酸化アルミニウム(アルミナ)が好ましい。
【0048】
また、上記リン化合物としては、例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体が挙げられる。中でも、リン酸が好ましい。具体的な金属酸化物およびリン化合物の反応生成物については、例えば、特開2011-226644号公報に開示される反応生成物と同様である。
【0049】
M-O-P結合の存在は、赤外線吸収スペクトル(測定波数域:800cm-1以上1400cm-1以下の範囲内)において、最大赤外線吸収ピークが1080cm-1以上1130cm-1以下の範囲内に出現することで確認する。赤外線吸収スペクトルの測定方法としては、特に限定されず、例えば、全反射測定法(ATR法)による測定方法、外包材のガスバリア層からサンプルをかきとり、その赤外線吸収スペクトルをKBr法で測定する方法、採取したサンプルを顕微赤外分光法により測定方法等を用いることができる。
【0050】
(b)ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜
ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜は、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間に多価金属イオンによる架橋結合を有する。ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩は、ポリカルボン酸系ポリマーおよび多価金属化合物の反応生成物である。
【0051】
ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩の存在は、赤外線吸収スペクトルの1490cm-1以上1659cm-1以下の範囲内において、1560cm-1付近に吸収極大を有する吸収ピークの出現により確認する。上記ピークは、多価金属と塩を形成しているカルボキシル基(-COO-)に帰属するC=O伸縮振動のピークである。通常、カルボキシル基の塩(-COO-)に帰属するC=O伸縮振動は、1490cm-1以上1659cm-1以下の赤外光波数領域に、1560cm-1付近に吸収極大を有する吸収ピークを与える。赤外線吸収スペクトルは、透過法、ATR法(減衰全反射法)、KBrペレット法、拡散反射法、光音響法(PAS法)等で測定することができる。
【0052】
ポリカルボン酸系ポリマーとしては、分子内に2個以上のカルボキシル基を有するポリマーが挙げられる。例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸-メタクリル酸コポリマー等のカルボキシル基を有するモノマーの単独重合体又は共重合体を挙げることができる。
【0053】
また、多価金属化合物としては、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基を架橋可能であれば特に限定されず、例えば、アルカリ土類金属、周期表8族金属、周期表11族金属、周期表12族金属、周期表13族金属等の金属の、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩が挙げられる。これらは、1種のみの使用であっても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩としては、例えば、アクリル酸亜鉛、メタアクリル酸亜鉛、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸カルシウム、アクリル酸アルミニウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸マグネシウム、メタクリル酸カルシウムが挙げられる。
【0055】
ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜は、さらにバインダー樹脂を含むことができる。上記バインダー樹脂としては、親水性バインダーや疎水性バインダーを用いることができる。親水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルソース、アルギン酸ナトリウム、エチレン-ビニルアルコール共重合体、デンプン、デキストラン、ゼラチン、およびそれらの変性物が挙げられる。バインダー樹脂は、これらの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0056】
ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜は、例えば、溶媒にカルボン酸系樹脂、多価金属化合物およびバインダー樹脂を溶解したバリア層形成用溶液を塗布し、電子線を照射して形成することができる。また、ポリカルボン酸系重合体層と多価金属化合物含有層とを隣接させて積層し、層間反応によりポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜を形成することができる。
【0057】
(c)金属元素と酸素元素と親水基含有樹脂とを含有する混合化合物膜
金属元素と酸素元素と親水基含有樹脂とを含有する混合化合物膜は、一般式R M(OR(ただし、式中、R、Rは、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上の金属アルコキシドと、親水基含有樹脂と、を含有し、さらに、ゾルゲル法によって重縮合して得られるゾルゲル化合物を含む膜である。以下、金属元素と酸素元素と親水基含有樹脂とを含有する混合化合物膜のことをゾルゲル化合物膜とする。
【0058】
ゾルゲル化合物膜は、親水基含有樹脂中の炭素原子(C)と金属アルコキシド中の金属原子(M)との間に、酸素(O)を介した架橋結合C-O-M結合を有することができる。
【0059】
金属アルコキシドは、一般式R M(ORで表わされるものであり、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物等であってもよい。Mとしては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムが挙げられる。また、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基を挙げることができる。また、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR)が存在する場合には、(OR)は同一であっても、異なってもよい。
【0060】
中でも、金属アルコキシドは、ケイ素を含むアルコキシシランであることが好ましい。アルコキシシランとしては、テトラメトキシシランSi(OCH、テトラエトキシシランSi(OC、テトラプロポキシシランSi(OC、テトラブトキシシランSi(OC等が挙げられる。
【0061】
親水基含有樹脂は、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、アミノ基
(-NH)、カルボニル基(>CO)、スルホ基(-SOH)等の親水基を有する樹脂である。親水基含有樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
ゾルゲル化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)と、ポリビニルアルコール(PVA)との重縮合体である、SiとOとPVAとを含有するゾルゲル化合物が挙げられる。
【0063】
ゾルゲル化合物膜は、例えば、金属アルコキシド、親水基含有樹脂、シランカップリング剤、ゾル-ゲル法触媒、酸、水、有機溶媒等を混合して調製したバリア層形成用溶液を塗布し、乾燥後加熱処理を行うことで形成することができる。
【0064】
ゾルゲル化合物膜のその他詳細については、例えば特許第5568897号公報、特開2017-61956号公報に開示される詳細と同様とする。
【0065】
(c)コーティング膜の厚さ
ガス抜け防止層がコーティング膜を有する場合、ガス抜け防止層の厚さは、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過を抑制できる厚さであれば特に限定されない。上記の場合、ガス抜け防止層の厚さは、例えば、400nm以上が好ましく、450nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。一方、上記の場合、ガス抜け防止層の厚さは、例えば、1000nm以下であり、900nm以下であってもよく、800nm以下であってもよい。具体的には、ガス抜け防止層がコーティング膜を有する場合、ガス抜け防止層の厚さは、400nm以上1000nm以下であり、450nm以上900nm以下であってもよく、500nm以上800nm以下であってもよい。コーティング膜を有するガス抜け防止層の厚さが薄すぎると、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過を十分に抑制できない場合がある。また、強度を確保できず、経時劣化する場合がある。一方、コーティング膜を有するガス抜け防止層の厚さが厚すぎると、形成が困難である場合がある。なお、例えばガス抜け防止層が1つのコーティング膜のみを有する場合、1つのコーティング膜の厚さが上記範囲内であればよい。また、例えばガス抜け防止層がコーティング膜と他の膜とを有する場合、ガス抜け防止層全体の厚さが上記範囲内であればよい。
【0066】
(3)その他
ガス抜け防止層は、1つの層のみを有していてもよく、2つ以上の層を有していてもよい。ガス抜け防止層が2つ以上の層を有する場合、同一組成の層を組み合わせてもよく、異なる組成の層を組み合わせてもよい。
【0067】
ガス抜け防止層は、2つ以上の無機膜を有することが好ましい。ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過をより抑制できる。また、ガス抜け防止層として必要な厚さを単層で形成しようとすると、形成速度を遅くすることが考えられるが、例えば物理蒸着法(PVD)の場合は、ポリエステル系樹脂層に与えられる熱量が多くなるため、ポリエステル系樹脂層のカールが強くなるおそれがある。そのため、ポリエステル系樹脂層およびガス抜け防止層を有する積層フィルムと熱溶着可能な層とを積層する工程等、後工程に影響を与える可能性がある。ガス抜け防止層が2つ以上の無機膜を有する場合、同一組成の無機膜を組み合わせてもよく、異なる組成の無機膜を組み合わせてもよい。
【0068】
また、ガス抜け防止層は、2つ以上の無機膜と、1つ以上のコーティング膜とを有しており、厚さ方向に無機膜とコーティング膜とが交互に配置されていることが好ましい。中でも、ガス抜け防止層は、2つ以上の無機膜と、2つ以上のコーティング膜とを有しており、厚さ方向に無機膜とコーティング膜とが交互に配置されていることが好ましい。無機膜とコーティング膜とが交互に配置されていることにより、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過をさらに抑制できる。この場合、同一組成の無機膜を組み合わせてもよく、異なる組成の無機膜を組み合わせてもよい。また、同一組成のコーティング膜を組み合わせてもよく、異なる組成のコーティング膜を組み合わせてもよい。例えば図4において、第1積層フィルムF1では、ガス抜け防止層2が、ポリエステル系樹脂層1側から順に、無機膜2a、コーティング膜2b、無機膜2c、およびコーティング膜2dを有する。
【0069】
ガス抜け防止層の厚さは、上述したように、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスの透過を抑制できる厚さである。ガス抜け防止層の厚さは、ガス抜け防止層の種類および層構成に応じて適宜設定される。ガス抜け防止層の厚さの上限は、例えば、1000nm以下であり、800nm以下であってもよく、600nm以下であってもよい。ガス抜け防止層の厚さが厚すぎると、折り曲げ等の機械的な応力を受けたときに欠陥が発生しやすくなる場合や、可撓性が低下する場合がある。
【0070】
2.ポリエステル系樹脂層
本開示におけるポリエステル系樹脂層は、ポリエステル系樹脂を含有する。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。上述したように、PETフィルムは、安価であり、高い機械強度を有し、さらに耐熱性も高い。また、PETフィルムは気体の溶解度係数が高く、窒素、酸素、二酸化炭素等の溶存ガスをPETフィルム中に多く含むため、本開示が有用である。
【0071】
ポリエステル系樹脂層としては、フィルムが好適に用いられる。よって、ポリエステル系樹脂層としては、PETフィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系樹脂層がフィルムである場合、上記フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。また、延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0072】
ポリエステル系樹脂層は、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。
【0073】
ポリエステル系樹脂層には、種々のプラスチック配合剤や添加剤等が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂が挙げられる。
【0074】
ポリエステル系樹脂層の厚さは、特に限定されず、例えば6μm以上、100μm以下であり、好ましくは9μm以上、50μm以下である。
【0075】
3.積層フィルム
本開示においては、上記ガス抜け防止層および上記ポリエステル系樹脂層が、積層フィルムを構成していることが好ましい。積層フィルムにおいては、ポリエステル系樹脂層の一方の面にガス抜け防止層が配置される。上述したように、ポリエステル系樹脂層とガス抜け防止層とは、直接接していることが好ましい。
【0076】
積層フィルムにおいて、ガス抜け防止層は、ポリエステル系樹脂層よりも内側(真空断熱材としたときに厚さ方向で芯材側となる方向)に配置される。積層フィルムは、ポリエステル系樹脂層のガス抜け防止層とは反対側の面に、ガスバリア層をさらに有していてもよい。なお、ガスバリア層については、後述のガスバリアフィルムにおけるガスバリア層と同様である。
【0077】
本開示においては、ガス抜け防止層が、ポリエステル系樹脂層よりも内側(真空断熱材とした時に厚さ方向で芯材側となる方向)に配置されていることにより、真空断熱材の内部真空度の悪化が抑制される。そのため、ポリエステル系樹脂層およびガス抜け防止層を有する積層フィルムと、熱溶着可能な層との間には、溶存ガスを多く含む層が配置されていないことが好ましい。よって、積層フィルムは、接着層を介して熱溶着可能な層に直接積層されていることが好ましい。
【0078】
本開示における真空断熱材用外包材は、積層フィルムを1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。真空断熱材用外包材が積層フィルムを2つ以上有する場合、すべての積層フィルムにおいて、ポリエステル系樹脂層よりも内側(真空断熱材としたときに厚さ方向で芯材側となる方向)にガス抜け防止層が配置される。例えば図1において、真空断熱材用外包材10は、2つの積層フィルム(第1積層フィルムF1、第2積層フィルムF2)を有しており、第1積層フィルムF1および第2積層フィルムF2ではそれぞれ、ポリエステル系樹脂層1よりも内側にガス抜け防止層2が配置されている。これにより、ポリエステル系樹脂層中の溶存ガスが真空断熱材の内部へ侵入するのを抑制できる。
【0079】
4.熱溶着可能な層
本開示における真空断熱材用外包材は、一方の主面側に熱溶着可能な層を有することが好ましい。熱溶着可能な層は、加熱により溶着可能な層である。熱溶着可能な層は、真空断熱材用外包材の厚さ方向の一方の表面を担う部材であり、本開示における真空断熱材用外包材を用いて真空断熱材を作製する際に芯材と接し、また、芯材を封止する際に、対向する真空断熱材用外包材同士の端部を接合する部材である。
【0080】
熱溶着可能な層の材料としては、加熱によって溶融して融着することが可能であることから、熱可塑性樹脂や熱溶融性樹脂等を用いることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0081】
ここで、ポリオレフィン系樹脂は、溶解度係数が低い。ポリプロピレンフィルム(密度0.9083g/cm、一軸配向)の20℃における二酸化炭素の溶解度係数は、4.8×10-3cc/cc・cmHg(文献値)である。また、ポリエチレンフィルム(密度0.9205g/cm、無配向)の24℃における二酸化炭素の溶解度係数は、3.2×10-3cc/cc・cmHg(文献値)である。上記文献値は、「材料と水分ハンドブック―吸湿・防湿・調湿・乾燥-」 共立出版株式会社 1968年(p.386-387)に記載の値である。よって、ポリオレフィン系樹脂を含む層は溶存ガスの量が少ないため、真空断熱材とした時に内部に侵入する溶存ガスの量を低減することができ、内部真空度の悪化をより抑制することができる。
【0082】
熱溶着可能な層には、必要に応じて、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃化剤、充填剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0083】
熱溶着可能な層の厚さは、真空断熱材用外包材同士を接合したときに所望の接着力を得ることができる厚さであればよく、例えば、15μm以上100μm以下が好ましく、25μm以上90μm以下がより好ましく、30μm以上80μm以下がさらに好ましい。
【0084】
5.ガスバリアフィルム
本開示における真空断熱材用外包材は、上記積層フィルムのポリエステル系樹脂層側の面に、ガスバリアフィルムを有していてもよい。ガスバリアフィルムは、酸素や水蒸気等のガスの障壁として、ガスが真空断熱材の外部から内部に侵入するのを抑制する。また、ガスバリアフィルムを構成する樹脂基材が溶存ガスを多く含む場合であっても、ガス抜け防止層がガスバリアフィルムよりも内側に配置されていることにより、真空断熱材の内部への溶存ガスの透過を抑制できる。
【0085】
本開示における真空断熱材用外包材は、ガスバリアフィルムを1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。外包材がガスバリアフィルムを2つ以上有する場合、全てのガスバリアフィルムが、上記積層フィルムのポリエステル系樹脂層側の面に配置されていることが好ましい。また、外包材が上記積層フィルムを2つ以上有する場合、ガスバリアフィルムは、全ての積層フィルムよりも外側に配置されていることが好ましい。
【0086】
ガスバリアフィルムは、例えば、樹脂基材と、樹脂基材の少なくとも一方の面に配置されたガスバリア層とを有する。外包材がガスバリアフィルムを1つ有する場合、ガスバリアフィルムにおいて、ガスバリア層は、樹脂基材に対して熱溶着可能な層側に配置されていることが好ましい。樹脂基材によりガスバリア層を保護できる。また、外包材がガスバリアフィルムを2つ以上有する場合、2つ以上のガスバリアフィルムのうち最も外側に位置するガスバリアフィルムにおいて、ガスバリア層は、樹脂基材に対して熱溶着可能な層側に配置されていることが好ましい。樹脂基材によりガスバリア層を保護できる。
【0087】
例えば図5において、積層フィルムF1のポリエステル系樹脂層1側の面に、ガスバリアフィルムF3が配置されている。ガスバリアフィルムF3は、樹脂基材5と、樹脂基材5の一方の面に配置されたガスバリア層6とを有しており、ガスバリア層6は、樹脂基材5に対して熱溶着可能な層3側に配置されている。
【0088】
(1)樹脂基材
樹脂基材としては、フィルムが好適に用いられる。樹脂基材がフィルムである場合、上記フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。また、延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0089】
樹脂基材は、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。樹脂基材の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン-ビニルエステル共重合体およびそのケン化物、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、アセタール樹脂、セルロース樹脂を使用することができる。
【0090】
樹脂基材には、種々のプラスチック配合剤や添加剤等が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂が挙げられる。
【0091】
樹脂基材の厚さは、特に限定されず、例えば6μm以上、200μm以下であり、好ましくは9μm以上、100μm以下である。
【0092】
(2)ガスバリア層
本開示におけるガスバリアフィルムは、樹脂基材の少なくとも一方の面に配置されたガスバリア層を有する。ガスバリア層と樹脂基材とは直接接していることが好ましい。ガスバリア層としては、無機膜、コーティング膜等が挙げられる。ガスバリア層は、無機膜を有していてもよく、コーティング膜を有していてもよく、無機膜およびコーティング膜の両方を有していてもよい。
【0093】
無機膜およびコーティング膜についてはそれぞれ、上記ガス抜け防止層における無機膜およびコーティング膜と同様である。
【0094】
ガスバリア層は、樹脂基材の片面のみに配置されていてもよく、樹脂基材の両面にそれぞれ配置されていてもよい。
【0095】
ガスバリア層は、1つの層を有していてもよく、2つ以上の層を有していてもよい。ガスバリア層が2つ以上の層を有する場合、同一組成の層を組み合わせてもよく、異なる組成の層を組み合わせてもよい。ガスバリア層が2つ以上の層を有する場合、2つ以上の層全体でガスバリア層1つ分とする。例えば、ガスバリア層は、樹脂基材側から順に、無機膜とコーティング膜とを有していてもよい。
【0096】
ガスバリア層の厚さは、所望のガスバリア性を発揮可能な厚さであれば特に限定されず、ガスバリア層の種類および層構成に応じて適宜設定される。ガスバリア層が無機膜のみを有する場合、ガスバリア層の厚さは、例えば、1nm以上1000nm以下であり、5nm以上500nm以下であってもよい。また、ガスバリア層が無機膜およびコーティング膜を有する場合、ガスバリア層の厚さは、例えば、100nm以上1000nm以下であり、200nm以上400nm以下であってもよい。ガスバリア層の厚さが薄すぎると、所望のガスバリア性を発揮できない場合がある。また、強度を確保できず、経時劣化する場合がある。一方、ガスバリア層の厚さが厚すぎると、折り曲げ等の機械的な応力を受けたときに欠陥が発生しやすくなる場合や、可撓性が低下する場合がある。
【0097】
(3)その他
ガスバリアフィルムは、上述した樹脂基材およびガスバリア層を有するガスバリアフィルムに限定されず、金属箔を有するガスバリアフィルムであってもよい。ガスバリアフィルムに用いられる金属箔として、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、チタンの箔が挙げられる。金属箔は、ガスバリア性が良好であり、耐屈曲性に優れている。さらに、アルミニウム箔は加工しやすく安価である。金属箔を有するガスバリアフィルムは、金属箔のみで構成されていてもよく、複数の金属箔で構成されていてもよく、金属箔に他の層が積層されていてもよい。
【0098】
金属箔を有するガスバリアフィルムの厚さは、特に限定されず、例えば、4μm以上9μm以下であり、5μm以上7μm以下であってもよい。
【0099】
6.接着層
本開示における真空断熱材用外包材においては、外包材を構成する各層が、熱溶着等により直接接触して配置されていてもよく、接着層を介して配置されていてもよい。
【0100】
接着層に用いられる接着剤としては、感圧性接着剤、熱可塑性接着剤、硬化性接着剤等が挙げられる。接着剤としては、例えば、主剤および硬化剤を含む2液硬化型の接着剤が用いられる。また、主剤および主剤と混合しても反応しないように公知の方法でブロック化した潜在性硬化剤を含む1液硬化型接着剤や、硬化剤および硬化剤と混合しても反応しないように公知の方法でブロック化した潜在性主剤を含む1液硬化型接着剤を用いてもよい。
【0101】
接着剤としては、具体的には、エポキシ系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、無機ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケートや低融点ガラス等からなる無機系接着剤を用いることができる。
【0102】
中でも、接着剤は、ポリアクリル酸エステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤が好ましい。特に、接着剤は、官能基としてイソシアネート基を有する化合物を含むことが好ましく、具体的には、ポリウレタン系接着剤であることが好ましい。
【0103】
接着剤は、硬化促進剤、触媒、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤等の任意の材料を含有していてもよい。
【0104】
接着層の厚さは、所望の接着力を示すことが可能な厚さであればよく、接着層の組成等に応じて適宜設定される。接着層の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm未満であり、1μm以上4μm以下であってもよい。
【0105】
接着層は、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。真空断熱材用外包材として透明性が必要とされる場合、接着層は透明性を有することが好ましい。
【0106】
接着層は、シート状またはフィルム状の接着剤を用いてもよく、接着剤組成物を塗布し、乾燥および硬化させて形成してもよい。
【0107】
7.保護フィルム
本開示における真空断熱材用外包材10においては、例えば図6に示すように、熱溶着可能な層3とは反対の主面側に保護フィルム7が配置されていてもよい。保護フィルムは、積層フィルムの熱溶着可能な層とは反対側の面に配置され、積層フィルムを保護する部材である。また、真空断熱材用外包材が積層フィルムのポリエステル系樹脂層側の面にガスバリアフィルムを有する場合、保護フィルムは、ガスバリアフィルムも保護する。なお、保護フィルムは、いずれの面にもガス抜け防止層またはガスバリア層が配置されていない点で、積層フィルムおよびガスバリアフィルムと区別される。
【0108】
保護フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂が挙げられる。
【0109】
保護フィルムの厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上200μm以下であり、10μm以上100μm以下であってもよい。
【0110】
8.特性
本開示における真空断熱材用外包材は、ガスバリア性を有することが好ましい。
【0111】
本開示における真空断熱材用外包材において、水蒸気透過度は、例えば0.5g/(m・day)以下が好ましく、0.3g/(m・day)以下がより好ましく、0.1g/(m・day)以下がさらに好ましい。
【0112】
水蒸気透過度は、ISO 15106-5:2015(差圧法)に準拠して、水蒸気透過度測定装置を用いて、温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で測定する。まず、所望のサイズに切り取った真空断熱材用外包材のサンプルを、厚さ方向において対向する最表面のうち、一方の最表面である熱溶着可能な層と反対側に位置する最表面層が高湿度側(水蒸気供給側)となるようにして、上記装置の上室と下室との間に装着し、透過面積約50cm(透過領域:直径8cmの円形)として温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で測定を行う。水蒸気透過度測定装置は、例えば、英国Technolox社製の「DELTAPERM」を用いる。水蒸気透過度の測定は、1つの真空断熱材用外包材につき、少なくとも3つのサンプルに対して行い、それらの測定値の平均をその条件での水蒸気透過度の値とする。
【0113】
また、本開示における真空断熱材用外包材において、酸素透過度は、例えば、0.5cc/(m・day・atm)以下が好ましく、0.1cc/(m・day・atm)以下がより好ましい。
【0114】
酸素透過度は、JIS K7126-2:2006(プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第2部:等圧法、付属書A:電解センサ法による酸素ガス透過度の試験方法)を参考に、酸素ガス透過度測定装置を用いて、温度23℃、湿度60%RHの条件で測定する。酸素ガス透過度測定装置としては、例えば、米国MOCON社製の「OXTRAN」を用いる。測定は、所望のサイズに切り取った真空断熱材用外包材の、厚さ方向に対向する2つの最表面のうち、一方の最表面である熱溶着可能な層とは反対側の最表面が酸素ガスに接するようにして、上記装置内に装着し、透過面積約50cm(透過領域:直径8cmの円形)として、キャリアガスおよび試験ガスの状態を温度23℃、湿度60%RHの条件として測定を行う。上記測定の際、上記装置内にキャリアガスを流量10cc/分で60分以上供給してパージする。上記キャリアガスは5%程度水素を含む窒素ガスを用いることができる。パージ後、上記装置内に試験ガスを流し、流し始めてから平衡状態に達するまでの時間として12時間を確保した後に測定する。試験ガスは少なくとも99.5%の乾燥酸素を用いる。酸素透過度の測定は、1つの条件で少なくとも3つのサンプルについて行い、それらの測定値の平均をその条件での酸素透過度の値とする。
【0115】
9.その他
本開示における真空断熱材用外包材は、透明性を有していてもよく、有さなくてもよく、本開示における真空断熱材用外包材が用いられる真空断熱材の用途に応じて適宜設定される。上記真空断熱材用外包材の透明性については、厳密な透過率で規定されず、用途等に応じて適宜決定する。
【0116】
本開示における真空断熱材用外包材が透明性を有する場合、上記真空断熱材用外包材を用いた真空断熱材は、その内部の視認が可能となる。このため、真空断熱材の内部に芯材と共に検知剤を入れることで、検知剤の変化から内部の真空状態を目視で確認することが可能となる。
【0117】
本開示における真空断熱材用外包材の製造方法としては、例えば、予め製造した各フィルムを上述した接着層を介して貼り合せる方法が挙げられる。また、熱溶融させた各フィルムの原材料をTダイ等で順次押出しして積層することで、本開示における真空断熱材用外包材を製造してもよい。
【0118】
本開示における真空断熱材用外包材は、真空断熱材に用いることができる。真空断熱材において、本開示における真空断熱材用外包材は、熱溶着可能な層が芯材側となるようにして、芯材を介して対向して配置して用いることができる。
【0119】
B.真空断熱材
本開示における真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する外包材とを有する真空断熱材であって、上記外包材が上述の真空断熱材用外包材である。
【0120】
図7(a)は、本開示における真空断熱材の一例を示す概略斜視図、図7(b)は図7(a)のX-X断面図である。図7に例示する真空断熱材50は、芯材11と、芯材11を封入する外包材10とを有し、外包材10が、図1で説明した真空断熱材用外包材である。真空断熱材50は、2枚の外包材10が、それぞれの熱溶着可能な層が向き合うように対向し、端部12が熱融着により接合された袋体となっており、袋体の中に芯材11が封入され、袋体内部が減圧されている。
【0121】
本開示によれば、芯材を封入する外包材が、上述した真空断熱材用外包材であることで、良好な断熱性能を維持することができる真空断熱材となる。
【0122】
以下、本開示における真空断熱材について、構成ごとに説明する。
【0123】
1.真空断熱材用外包材
本開示における真空断熱材用外包材は、芯材を封入する部材であり、上述の「A.真空断熱材用外包材」の項で説明した真空断熱材用外包材と同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0124】
2.芯材
本開示における芯材は、真空断熱材用外包材により封入される部材である。なお、封入されるとは、真空断熱材用外包材を用いて形成された袋体の内部に密封されることをいう。
【0125】
芯材は、熱伝導率が低いことが好ましい。また、芯材は、空隙率が50%以上、特に90%以上の多孔質材とすることができる。
【0126】
芯材を構成する材料としては、粉体、発泡体、繊維体等を用いることができる。上記粉体は、無機系、有機系のいずれでもよく、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、凝集シリカ粉末、導電性粉体、炭酸カルシウム粉末、パーライト、クレー、タルクを用いることができる。中でも、乾式シリカと導電性粉体との混合物は、真空断熱材の内圧上昇に伴う断熱性能の低下が小さいため、内圧上昇が生じる温度範囲で使用する際に有利である。さらに、上述の材料に酸化チタンや酸化アルミニウムやインジウムドープ酸化錫等の赤外線吸収率が小さい物質を輻射抑制材として添加すると、芯材の赤外線吸収率を小さくすることができる。
【0127】
上記発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等を用いることができる。中でも連続気泡を形成する発泡体が好ましい。
【0128】
上記繊維体は、無機繊維でもよく有機繊維でもよいが、断熱性能の観点から無機繊維を用いることが好ましい。このような無機繊維としては、グラスウールやグラスファイバー等のガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、ロックウール等を挙げることができる。これらの無機繊維は、熱伝導率が低く、粉体よりも取り扱いが容易である点で好ましい。
【0129】
芯材は、上述した材料を単独で使用してもよく、2種以上の材料を混合した複合材であってもよい。
【0130】
3.その他
本開示における真空断熱材は、真空断熱材用外包材の内部に芯材が封入され、上記内部が減圧されて真空状態となっている。真空断熱材内部の真空度は、例えば5Pa以下であることが好ましい。内部に残存する空気の対流による熱伝導を低くすることができ、優れた断熱性を発揮することが可能となるからである。
【0131】
真空断熱材の熱伝導率は低い程好ましく、例えば熱伝導率(初期熱伝導率)が5mW/(mK)以下であることが好ましい。真空断熱材が熱を外部に伝導しにくくなり、高い断熱効果を奏することができるからである。中でも、上記初期熱伝導率は、4mW/(mK)以下であることがより好ましい。熱伝導率は、JIS A1412-2:1999に準拠し、高温側30℃、低温側10℃、平均温度20℃の条件で測定した値とする。
【0132】
また、本開示における真空断熱材においては、上述の真空断熱材用外包材を用いるため、断熱性能の劣化が抑制される。
【0133】
本開示における真空断熱材の製造方法は、一般的な方法を用いることができる。例えば、上述した真空断熱材用外包材を2枚準備し、それぞれの熱溶着可能な層同士を向き合わせて重ね、三辺の外縁を熱融着し、一辺が開口する袋体を得る。この袋体に、開口から芯材を入れた後、上記開口から空気を吸引し、袋体の内部が減圧された状態で開口を封止することで、真空断熱材を得ることができる。
【0134】
本開示における真空断熱材は、例えば、熱絶縁性を要する物品に用いることができる。上記物品については後述する。
【0135】
C.真空断熱材付き物品
本開示における真空断熱材付き物品は、熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、上記真空断熱材が、芯材と、芯材が封入された外包材とを有し、上記外包材が、上述の真空断熱材用外包材である。
【0136】
本開示によれば、物品に用いられる真空断熱材が上述の真空断熱材用外包材を有するため、真空断熱材が良好な断熱性能を発揮することができる。物品がこのような真空断熱材を備えることで、高温環境または高温高湿環境となる物品や物品が用いられる対象物の省エネルギー化を達成することができる。
【0137】
本開示における真空断熱材、およびそれに用いられる真空断熱材用外包材については、上述した「B.真空断熱材」および「A.真空断熱材用外包材」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
【0138】
本開示における物品は、熱絶縁領域を有する。ここで上記熱絶縁領域とは、真空断熱材により熱絶縁された領域であり、例えば、保温や保冷された領域、熱源や冷却源を取り囲んでいる領域、熱源や冷却源から隔離されている領域である。これらの領域は、空間であっても物体であってもよい。
【0139】
上記物品として、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、保温器、保冷器等の電気機器、保温容器、保冷容器、輸送容器、コンテナ、貯蔵容器等の容器、車両、航空機、船舶等の乗り物、家屋、倉庫等の建築物、壁材、床材等の建築資材等が挙げられる。
【0140】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【0141】
本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
[1] ポリエステル系樹脂層と、所定の厚さを有するガス抜け防止層と、を有する、真空断熱材用外包材。
[2] 上記ガス抜け防止層が無機膜を有し、上記無機膜が無機化合物膜を有し、上記ガス抜け防止層の厚さが10nm以上である、[1]に記載の真空断熱材用外包材。
[3] 上記ガス抜け防止層が無機膜を有し、上記無機膜が金属膜を有し、上記ガス抜け防止層の厚さが50nm以上である、[1]または[2]に記載の真空断熱材用外包材。
[4] 上記ガス抜け防止層がコーティング膜を有し、上記ガス抜け防止層の厚さが400nm以上である、[1]から[3]までのいずれかに記載の真空断熱材用外包材。
[5] 上記ガス抜け防止層が、2つ以上の層を有する、[1]から[4]までのいずれかに記載の真空断熱材用外包材。
[6] 上記ガス抜け防止層が、2つ以上の無機膜を有する、[5]に記載の真空断熱材用外包材。
[7] 上記ガス抜け防止層が、2つ以上のコーティング膜を有し、上記無機膜と上記コーティング膜とが交互に配置されている、[6]に記載の真空断熱材用外包材。
[8] 上記ポリエステル系樹脂層が、ポリエチレンテレフタレートフィルムである、[1]から[7]までのいずれかに記載の真空断熱材用外包材。
[9] 上記ガス抜け防止層の上記ポリエステル系樹脂層とは反対側の面に、熱溶着可能な層を有する、[1]から[8]までのいずれかに記載の真空断熱材用外包材。
[10] 上記真空断熱材用外包材が積層フィルムを有し、上記積層フィルムが、上記ポリエステル系樹脂層と、上記ポリエステル系樹脂層の一方の面に配置された上記ガス抜け防止層とを有する、[1]から[9]までのいずれかに記載の真空断熱材用外包材。
[11] 2つ以上の上記積層フィルムを有する、[10]に記載の真空断熱材用外包材。
[12] 上記積層フィルムの上記ポリエステル系樹脂層側の面に、ガスバリアフィルムを有する、[10]または[11]に記載の真空断熱材用外包材。
[13] 芯材と、上記芯材が封入された外包材とを有する真空断熱材であって、
上記外包材が、[1]から[12]までのいずれかに記載の真空断熱材用外包材である、真空断熱材。
[14] 熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、
上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材が封入された外包材とを有し、
上記外包材が、[1]から[12]までのいずれかに記載の真空断熱材用外包材である、真空断熱材付き物品。
【符号の説明】
【0142】
1 … ポリエステル系樹脂層
2 … ガス抜け防止層
3 … 熱溶着可能な層
4 … 接着層
5 … 樹脂基材
6 … ガスバリア層
7 … 保護フィルム
10 … 真空断熱材用外包材
11 … 芯材
50 …真空断熱材
F1 … 第1積層フィルム
F2 … 第2積層フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10