(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009308
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】系統運用計画制御装置及び系統運用計画制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/24 20060101AFI20250110BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20250110BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20250110BHJP
H02J 3/18 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
H02J3/24
H02J3/00 170
H02J13/00 311R
H02J3/18 185
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112222
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 皓
(72)【発明者】
【氏名】東野 正和
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 廣次
(72)【発明者】
【氏名】三ッ本 憲史
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AB05
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA03
5G066AA01
5G066AA03
5G066AD07
5G066AD08
5G066AE01
5G066AE05
5G066AE09
5G066FA01
5G066FB17
(57)【要約】
【課題】系統短絡容量の状況に応じた系統連系インバータの制御に関し、系統不安定を抑制すること。
【解決手段】実施形態に係る系統運用計画制御装置は、比較部と、判断部と、生成部と、を備える。前記比較部は、複数の電力変換装置が接続された電力系統についての運用計画時の系統短絡容量と、実運用時の系統短絡容量とを比較する。前記判断部は、前記運用計画時の系統短絡容量と前記実運用時の系統短絡容量とが異なる場合に前記電力系統の系統不安定化が予測されると判断し、前記複数の電力変換装置のうちのいずれかである制御対象の電力変換装置の運転モードを変更すると判断する。前記生成部は、前記電力系統の系統不安定化が予測される場合に、前記制御対象の電力変換装置の運転モードの変更を指示する信号を生成し、当該制御対象の電力変換装置に送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力変換装置が接続された電力系統についての運用計画時の系統短絡容量と、実運用時の系統短絡容量とを比較する比較部と、
前記運用計画時の系統短絡容量と前記実運用時の系統短絡容量とが異なる場合に前記電力系統の系統不安定化が予測されると判断し、前記複数の電力変換装置のうちのいずれかである制御対象の電力変換装置の運転モードを変更すると判断する判断部と、
前記電力系統の系統不安定化が予測される場合に、前記制御対象の電力変換装置の運転モードの変更を指示する信号を生成し、当該制御対象の電力変換装置に送信する生成部と、を備える、
系統運用計画制御装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記実運用時の系統短絡容量が前記電力系統の系統不安定化に関する閾値以下であるかを判定し、前記運用計画時の系統短絡容量と前記実運用時の系統短絡容量とが異なる場合、かつ、前記実運用時の系統短絡容量が前記閾値以下である場合に、前記電力系統の系統不安定化が予測されると判断する、
請求項1に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項3】
前記判断部は、前記電力系統の系統不安定化が予測される場合に、接続された前記電力系統の系統短絡容量を補正する少なくとも1つの系統安定化装置のうちのいずれかである制御対象の系統安定化装置を起動すると判断する、
請求項1に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項4】
前記制御対象の系統安定化装置は、同期発電機及び同期調相機のうちの少なくともいずれかである、
請求項3に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項5】
前記制御対象の電力変換装置は、系統追従型の制御機能を有する電力変換装置である、
請求項1に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項6】
前記制御対象の電力変換装置は、系統形成型の制御機能を有する電力変換装置であり、
前記制御対象の電力変換装置の運転モードの変更は、前記系統追従型から前記系統形成型への制御の変更である、
請求項5に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項7】
前記電力系統の系統不安定化が予測される場合に、前記複数の電力変換装置のうちのいずれかの電力変換装置の前記運転モードの変更で、増強すべき系統短絡容量の一部である第1の系統短絡容量を前記運用計画時に確保し、接続された前記電力系統の系統短絡容量を補正する少なくとも1つの系統安定化装置のうちのいずれかを起動することで、残りの前記増強すべき系統短絡容量である第2の系統短絡容量を前記運用計画時に確保する、計画部をさらに備える、
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項8】
前記計画部は、前記第1の系統短絡容量及び前記第2の系統短絡容量の配分を経済合理性に基づいて決定する、
請求項7に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項9】
前記電力系統における複数の点のそれぞれの系統短絡容量を前記運用計画時に計算する計画部をさらに備える、
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項10】
前記電力系統における複数の点それぞれの前記運用計画時の系統短絡容量を前記運用計画時に設定する計画部をさらに備える、
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項11】
前記複数の電力変換装置のうちのいずれかの電力変換装置の制御を系統追従型から系統形成型に変更する前記運転モードの変更における、前記電力系統の系統短絡容量の改善効果を前記運用計画時に判断する計画部をさらに備える、
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項12】
前記計画部は、接続された前記電力系統の系統短絡容量を補正する少なくとも1つの系統安定化装置のうちのいずれかの起動を併用する場合の前記系統短絡容量の改善効果を前記運用計画時にさらに判断する、
請求項11に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項13】
前記計画部は、前記少なくとも1つの系統安定化装置のうちのいずれかの起動を併用する場合の経済合理性を前記運用計画時にさらに判断する、
請求項12に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項14】
前記電力系統における複数の点のそれぞれの系統短絡容量を前記運用計画時に計算し、前記複数の電力変換装置のうちのいずれかであって、前記複数の点のうちの前記運用計画時の系統短絡容量が前記電力系統の系統不安定化に関する閾値以下である対象点において前記電力系統に連系されている電力変換装置の前記運転モードを前記運用計画時に変更する、計画部をさらに備える、
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項15】
前記計画部は、前記対象点において前記電力系統に連系されている電力変換装置が存在しない場合、当該対象点で増強すべき系統短絡容量を算出し、
前記複数の電力変換装置のうちのいずれかであって、前記増強すべき系統短絡容量を補うことが可能な前記対象点からの電気的距離が最短の電力変換装置の前記運転モードを前記運用計画時に変更する、計画部をさらに備える、
請求項14に記載の系統運用計画制御装置。
【請求項16】
複数の電力変換装置が接続された電力系統についての運用計画時の系統短絡容量と、実運用時の系統短絡容量とを比較し、
前記運用計画時の系統短絡容量と前記実運用時の系統短絡容量とが異なる場合に、前記実運用時の系統短絡容量が前記電力系統の系統不安定化に関する閾値以下であるかを判定し、前記実運用時の系統短絡容量が前記閾値以下である場合に、前記複数の電力変換装置のうちのいずれかである制御対象の電力変換装置の運転モードを変更すると判断し、
前記実運用時の系統短絡容量が前記閾値以下である場合に、複数の電力変換装置のうちのいずれかである制御対象の電力変換装置の運転モードの変更を指示する信号を生成し、当該制御対象の電力変換装置に送信する、
系統運用計画制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、系統運用計画制御装置及び系統運用計画制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)由来の電源の主力化に伴い、発電機の運転が減少し、代わりにインバータ電源が電力系統に投入される系統連系が多くなっている。系統連系するインバータ電源(系統連系インバータ)には、例えばPQ制御の応答性の高さから電流制御で系統に追従するGFL(Grid Following)制御が搭載されることが多い。
【0003】
このような中、一般にGFL制御は、系統慣性力の低下や系統短絡容量の減少、同期化力の減少といった問題が指摘されている。これに対して、例えば、インバータ電源をGFM(Grid Forming)制御により電圧制御し、系統短絡容量の変化に応じて慣性定数やダンピング定数を変更する手法が提案されている(特許文献1)。また、例えば、系統短絡容量の減少によってハンチングが発生した場合に、制御系のゲインを下げることでハンチングを抑制する手法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7183486号公報
【特許文献2】特開平4-236131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えばGFM制御中の系統連系インバータとGFL制御中の系統連系インバータとが電力系統において混在する場合など、GFM制御中の系統連系インバータだけでは、十分な系統短絡容量の確保が困難な場合があった。系統短絡容量が十分に確保できないと、系統不安定の要因となり得る。また、制御系のゲインのみを引き下げても、その限界を迎えて系統不安定が引き起こされる場合があった。
【0006】
上記を鑑みて各実施形態が解決する課題は、系統短絡容量の状況に応じた系統連系インバータの制御に関し、系統不安定を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る系統運用計画制御装置は、比較部と、判断部と、生成部と、を備える。前記比較部は、複数の電力変換装置が接続された電力系統についての運用計画時の系統短絡容量と、実運用時の系統短絡容量とを比較する。前記判断部は、前記運用計画時の系統短絡容量と前記実運用時の系統短絡容量とが異なる場合に前記電力系統の系統不安定化が予測されると判断し、前記複数の電力変換装置のうちのいずれかである制御対象の電力変換装置の運転モードを変更すると判断する。前記生成部は、前記電力系統の系統不安定化が予測される場合に、前記制御対象の電力変換装置の運転モードの変更を指示する信号を生成し、当該制御対象の電力変換装置に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る系統運用システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る運用計画制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る電力系統の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るインバータ電源の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る系統運用システムにより実行される、運用時の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る運用計画制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係るインバータ電源の構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第3の実施形態に係る運用計画制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態に係るインピーダンスマップについて説明するための図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態に係る系統運用システムにより実行される、計画時の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第4の実施形態に係る運用計画制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第5の実施形態に係る運用計画制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第6の実施形態に係る系統運用システムにより実行される、計画時の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る系統運用計画制御装置及び系統運用計画制御方法の各実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
<第1の実施形態に係る系統運用システムの全体構成>
図1は、第1の実施形態に係る系統運用システム1の全体構成の一例を示す図である。系統運用システム1は、
図1に示すように、電力系統3及び運用計画制御装置5を含む。電力系統3及び運用計画制御装置5は、通信ネットワークN1を介して通信可能に接続される。ここで、実施形態に係る運用計画制御装置5は、系統運用計画制御装置の一例である。
【0011】
電力系統3は、
図1に示すように、複数のインバータ電源31、少なくとも1つの同期発電機32及び少なくとも1つの同期調相機33を有する。複数のインバータ電源31、少なくとも1つの同期発電機32及び少なくとも1つの同期調相機33は、直接、あるいは系統ネットワークN2を介して電気的に接続されている。ここで、実施形態に係るインバータ電源31は、電力変換装置の一例である。また、実施形態に係る同期発電機32及び同期調相機33は、それぞれ系統安定化装置の一例である。なお、電力系統3及びその各部の詳細については、後述する。
【0012】
<第1の実施形態に係る系統運用システムの各装置の構成>
次に、第1の実施形態に係る系統運用システム1の各装置の構成について説明する。
【0013】
運用計画制御装置5は、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成を有する。一例として、運用計画制御装置5は、バスなどにより相互に接続された、プロセッサと、メモリと、インタフェースとを有する。
【0014】
運用計画制御装置5のプロセッサとしては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの各種のプロセッサが適宜利用可能である。例えば、プロセッサは、メモリにロードしたプログラムを実行することにより、運用計画制御装置5を統括的に制御する。
【0015】
運用計画制御装置5のメモリとしては、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、Flashメモリ等の各種の記憶媒体や記憶装置が適宜利用可能である。例えば、ROMは、プロセッサが実行する各種プログラムや各種データを記憶する。RAMは、例えば運用計画制御装置5の主記憶装置であり、プロセッサによる各種処理に必要なデータや各種プログラムを一時的に記憶する。
【0016】
例えば、運用計画制御装置5のインタフェースは、運用計画制御装置5の外部との間においてデータを送受信するためのインタフェース回路である。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係る運用計画制御装置5の機能構成の一例を示す図である。一例として、運用計画制御装置5は、プロセッサがROMから読み出した少なくとも1つのプログラムをRAMにロードして実行することにより、短絡容量比較部52、計画短絡容量格納部53、制御内容判断部54、制御信号格納部55及び制御信号生成部56といった運用計画制御装置5の有する各機能を実現する。ここで、実施形態に係る短絡容量比較部52は、比較部の一例である。また、実施形態に係る制御内容判断部54は、判断部の一例である。また、実施形態に係る制御信号生成部56は、生成部の一例である。
【0018】
短絡容量比較部52は、複数のインバータ電源31が接続された電力系統3についての運用計画時の系統短絡容量と、実運用時の系統短絡容量とを取得する。なお、本実施形態では、運用計画時の系統短絡容量を「計画短絡容量」と記載する場合もある。同様に、実運用時の系統短絡容量を「検出短絡容量」と記載する場合もある。
【0019】
一例として、短絡容量比較部52は、計画短絡容量格納部53から運用計画時の系統短絡容量を読み出して取得する。一例として、短絡容量比較部52は、インバータ電源31から運用時の系統短絡容量を取得する。なお、短絡容量比較部52は、例えばインバータ電源31の外部で運用時の系統短絡容量が検出される場合、その検出を行った装置、あるいは当該装置と通信する装置から運用時の系統短絡容量を取得してもよい。また、運用時の系統短絡容量は、例えば系統電圧のハンチングや高調波の検出などに基づいて検出されるが、どのような検出方法で検出されたものであってもよい。
【0020】
また、短絡容量比較部52は、取得した運用計画時の系統短絡容量と、実運用時の系統短絡容量とを比較する。短絡容量比較部52は、系統短絡容量の比較結果を制御内容判断部54に供給する。
【0021】
計画短絡容量格納部53は、運用計画時の系統短絡容量を格納している。一例として、運用計画時の系統短絡容量は、予め定められて計画短絡容量格納部53に格納されているとする。なお、運用計画時の系統短絡容量は、例えば電力系統3の状態に応じて算出されるが、例えば電力系統3の運用計画の計画者などにより所望の値として設定されたものであってもよい。
【0022】
制御内容判断部54は、短絡容量比較部52から運用計画時の系統短絡容量と実運用時の系統短絡容量との比較結果を取得する。また、制御内容判断部54は、運用計画時と実運用時との間で系統短絡容量が異なる場合に、電力系統3の系統不安定化が予測されると判断する。なお、系統短絡容量が異なるとは、予め定められた所定値又は所定割合以上の差があることであればよい。
【0023】
一例として、制御内容判断部54は、運用計画時と実運用時との間で系統短絡容量が異なる場合、実運用時の系統短絡容量が電力系統3の系統不安定化に関する閾値以下であるかを判定する。ここで、系統不安定化に関する閾値は、例えば予め定められて計画短絡容量格納部53などに格納されていればよい。例えば、実運用中の系統短絡容量と計画時の系統短絡容量との比を、閾値とすることが挙げられる。一例として、制御内容判断部54は、実運用時の系統短絡容量が電力系統3の系統不安定化に関する閾値以下である場合に、電力系統3の系統不安定化が予測されると判断する。
【0024】
また、制御内容判断部54は、電力系統3の系統不安定化が予測される場合、制御対象のインバータ電源31の運転モードを変更すると判断する。ここで、制御対象のインバータ電源31とは、短絡容量比較部52による比較において実運用時の系統短絡容量が運用計画時の系統短絡容量と異なるとされた、少なくとも1つのインバータ電源31である。このインバータ電源31においては、系統追従型の制御、すなわちGFL(Grid Following)制御が行われているとする。
【0025】
一例として、制御内容判断部54は、電力系統3の系統不安定化が予測される場合、制御対象のインバータ電源31の運転モードを、GFL制御を行う運転モードから、系統形成型の制御、すなわちGFM(Grid Forming)制御を行う運転モードへ変更すると判断する。換言すれば、制御内容判断部54は、電力系統3の系統不安定化が予測される場合、制御対象のインバータ電源31の制御をGFL制御からGFM制御へ切り替えると判断する。一例として、制御内容判断部54は、制御対象のインバータ電源31の制御をGFL制御からGFM制御へ切り替えると判断した場合、制御対象のインバータ電源31を示す情報と、GFL制御からGFM制御へ切り替えると判断したことを示す情報とを制御信号生成部56に供給する。
【0026】
制御信号格納部55は、インバータ電源31の運転モードの変更を指示するための制御信号が予め定められて格納されている。
【0027】
制御信号生成部56は、制御対象のインバータ電源31を示す情報と、GFL制御からGFM制御へ切り替えると判断したことを示す情報とを制御内容判断部54から受信した場合、すなわち電力系統3の系統不安定化が予測される場合、制御対象のインバータ電源31に供給する制御信号を生成する。また、制御信号生成部56は、生成した制御信号を制御対象のインバータ電源31に送信する。
【0028】
一例として、制御信号生成部56は、制御信号格納部55を参照し、制御対象のインバータ電源31の制御を変更するための制御信号を読み出して生成する。
【0029】
図3は、第1の実施形態に係る電力系統3の構成の一例を示す図である。電力系統3は、電力供給の系統である。電力系統3は、電力を供給する電源部と、電力を消費する負荷部とを含む。電源部は、複数のインバータ電源31、少なくとも1つの同期発電機32及び少なくとも1つの同期調相機33を含む。
図3は、電力系統3に連系された複数のインバータ電源31として、インバータ電源31a、インバータ電源31b、インバータ電源31c及びインバータ電源31dを例示する。また、
図3は、電力系統3に接続された任意の負荷、同期発電機32及び同期調相機33を例示する。
【0030】
図3の例において、インバータ電源31a、インバータ電源31b及びインバータ電源31dは、GFL制御が行われているインバータ電源31である。一方、インバータ電源31cは、GFM制御が行われているインバータ電源31である。
【0031】
また、
図3の例において、GFL制御が行われているインバータ電源31a及びインバータ電源31bは、電力系統3における複数のノード(点)のうちの同一ノードで電力系統3に連系されている。
【0032】
また、
図3の例において、GFM制御が行われているインバータ電源31cは、電力系統3における複数のノード(点)のうちの任意の負荷と同一ノードで電力系統3に連系されている。また、インバータ電源31cは、系統ネットワークN2を介して、インバータ電源31a、インバータ電源31b及びインバータ電源31dなどに接続されている。
【0033】
また、
図3の例において、GFL制御が行われているインバータ電源31dは、電力系統3における複数のノード(点)のうちの任意の負荷と同一ノードで電力系統3に連系されている。また、インバータ電源31dは、系統ネットワークN2を介して、インバータ電源31a、インバータ電源31b及びインバータ電源31cなどに接続されている。
【0034】
また、
図3の例において、同期発電機32及び同期調相機33は、それぞれ電力系統3における複数のノード(点)のうちの同一ノードで電力系統3に接続されている。また、同期発電機32及び同期調相機33は、それぞれ系統ネットワークN2を介して、各インバータ電源31などに接続されている。
【0035】
同期発電機32は、電力系統3を介し、負荷に対して電力を供給する。同期発電機32は、その運転により電力系統3の系統短絡容量の変動を抑制、あるいは増加させる回転機である。換言すれば、同期発電機32は、接続された電力系統3の系統短絡容量を補正する。
【0036】
同期調相機33は、電力系統3を介し、無効電力を調整する。同期調相機33は、系統電圧が低下した場合でも一定の無効電力を供給することにより、電力系統3の系統短絡容量の変動を抑制、あるいは増加させる回転機である。換言すれば、同期調相機33は、接続された電力系統3の系統短絡容量を補正する。
【0037】
図4は、第1の実施形態に係るインバータ電源31の構成の一例を示す図である。インバータ電源31は、電力系統3に投入された、すなわち系統連系された系統連系インバータである。インバータ電源31は、例えば、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)由来の電源であるが、蓄電池を用いて構成されていてもよい。インバータ電源31は、電力系統3を介し、負荷に対して電力を供給する。
【0038】
一例として、インバータ電源31は、系統追従型の制御機能(GFL機能)を有する電力変換装置である。一例として、インバータ電源31は、電圧源として動作する系統形成型の制御機能(GFM機能)をさらに有する電力変換装置である。
【0039】
インバータ電源31は、
図4に示すように、直流電源部311、交直変換部312、連系リアクトル313、電流センサ314、電圧センサ315、GFL制御部316a、GFM制御部316b、信号送受信部317、制御切替部318、PWM(Pulse Width Modulation)制御部319及び検出短絡容量計算部51を有する。
【0040】
インバータ電源31は、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成を有する。一例として、インバータ電源31は、バスなどにより相互に接続された、プロセッサと、メモリと、インタフェースとを有する。
【0041】
インバータ電源31のプロセッサとしては、CPU、GPU、ASIC、FPGAなどの各種のプロセッサが適宜利用可能である。例えば、プロセッサは、メモリにロードした少なくとも1つのプログラムを実行することにより、インバータ電源31を統括的に制御する。一例として、インバータ電源31は、プロセッサがROMから読み出したプログラムをRAMにロードして実行することにより、信号送受信部317及び検出短絡容量計算部51といったインバータ電源31の有する各機能を実現する。なお、GFL制御部316a及びGFM制御部316bなどのインバータ電源31の他の要素について同様に実現されてもよい。
【0042】
インバータ電源31のメモリとしては、ROMやRAM、HDD、SSD、Flashメモリ等の各種の記憶媒体や記憶装置が適宜利用可能である。例えば、ROMは、プロセッサが実行する各種プログラムや各種データを記憶する。RAMは、例えばインバータ電源31の主記憶装置であり、プロセッサによる各種処理に必要なデータや各種プログラムを一時的に記憶する。
【0043】
例えば、インバータ電源31のインタフェースは、インバータ電源31の外部との間においてデータを送受信するためのインタフェース回路である。
【0044】
直流電源部311は、直流電力を供給する。例えば、直流電源部311は、太陽光発電設備や風力発電設備などの再エネ由来の電源、あるいは蓄電池である。
【0045】
交直変換部312の入力ノードは、直流電源部311の出力ノードに電気的に接続される。交直変換部312は、直流電源部311からの直流電力を交流電力に変換する。一例として、交直変換部312は、PWM制御部319からのPWM信号に基づいて、直流電源部311から出力された直流電力を交流電力に変換する。
【0046】
連系リアクトル313は、交直変換部312の出力ノードと、電力系統3全体との接続ノード、すなわちインバータ電源31の出力ノードとの間に設けられる。
【0047】
電流センサ314は、インバータ電源31の出力ノードにおける交流電流を計測する。電圧センサ315は、インバータ電源31の出力ノードにおける交流電圧を計測する。電流センサ314及び電圧センサ315は、それぞれ連系リアクトル313の出力ノードとインバータ電源31の出力ノードとの間に設けられる。
【0048】
GFL制御部316aの入力ノードは、電流センサ314及び電圧センサ315のそれぞれの検出信号の出力ノードに電気的に接続される。GFL制御部316aは、インバータ電源31においてGFL制御を実行する。
【0049】
GFM制御部316bの入力ノードは、電流センサ314及び電圧センサ315のそれぞれの検出信号の出力ノードに電気的に接続される。GFM制御部316bは、インバータ電源31においてGFM制御を実行する。
【0050】
信号送受信部317は、インバータ電源31のインタフェースを介して運用計画制御装置5と通信する。一例として、信号送受信部317は、検出短絡容量計算部51による系統短絡容量の計算結果(自端短絡容量)を運用計画制御装置5へ送信する。一例として、信号送受信部317は、自端短絡容量に応じた制御切替指令などの運用計画制御装置5からの信号を受信する。この制御切替指令は、運用計画制御装置5の制御信号生成部56により生成されて送信された制御信号の一例である。
【0051】
制御切替部318の一対の入力ノードは、それぞれ、GFL制御部316aの出力ノード及びGFM制御部316bの出力ノードに電気的に接続される。制御切替部318の出力ノードは、PWM制御部319の入力ノードに電気的に接続される。制御切替部318の制御ノードは、信号送受信部317の内部出力ノードに電気的に接続される。制御切替部318は、信号送受信部317により受信された制御切替指令に応じて、一対の入力ノードのいずれか一方を、出力ノードに電気的に接続する。換言すれば、制御切替部318は、制御切替指令に応じてインバータ電源31の運転モードをGFL制御及びGFM制御の間で切り替えるスイッチである。
【0052】
PWM制御部319の出力ノードは、交直変換部312の制御ノードに電気的に接続される。PWM制御部319は、GFL制御部316a又はGFM制御部316bからの信号を用いてPWM信号を生成し、交直変換部312に供給する。
【0053】
検出短絡容量計算部51の入力ノードは、電流センサ314及び電圧センサ315のそれぞれの検出信号の出力ノードに電気的に接続される。検出短絡容量計算部51の出力ノードは、信号送受信部317の内部入力ノードに電気的に接続される。検出短絡容量計算部51は、電流センサ314及び電圧センサ315により計測された交流電流及び交流電圧を用いて、インバータ電源31の出力ノードにおける実運用時の系統短絡容量(検出短絡容量)を検出する。一例として、検出短絡容量計算部51は、計測された交流電流及び交流電圧を用いて有効電力及び/又は無効電力を算出してハンチングを検知することにより検出短絡容量を算出する。検出短絡容量計算部51は、算出した検出短絡容量を信号送受信部317へ供給する。
【0054】
<第1の実施形態に係る系統運用システムの処理>
次に、第1の実施形態に係る系統運用システム1の処理について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る系統運用システム1により実行される、運用時の処理の一例を示すフローチャートである。
【0055】
図5の流れは、例えば30分ごとなど、予め定められた一定周期で繰り返し実施される。なお、周期の長さは任意に設定可能であり、さらに実施の間隔が不定、すなわち不定周期で繰り返し実施されてもよい。
【0056】
また、
図5の流れは、予め定められた系統運用計画に沿って電力系統3が運用されている状態で実施される。
【0057】
インバータ電源31は、現時点での系統短絡容量を検知する(S101)。具体的には、検出短絡容量計算部51は、実運用時の系統短絡容量を検出する。なお、このインバータ電源31の運転モードは、GFL制御であるとする。
【0058】
運用計画制御装置5は、現時点での系統短絡容量が運用計画と異なるかを判断する(S102)。具体的には、短絡容量比較部52は、検知した実運用時の系統短絡容量を運用計画で予定されていた系統短絡容量と比較する。また、制御内容判断部54は、比較結果から運用計画時の系統短絡容量が得られているかを判断する。ここで、本判定は、電力系統3の系統不安定化が予測されるかの判定の一例である。
【0059】
現時点での系統短絡容量が運用計画に沿った系統短絡容量である場合(S102:No)、
図5の流れは終了する。
【0060】
一方、現時点での系統短絡容量が運用計画と異なる場合(S102:Yes)、運用計画制御装置5は、GFL制御で系統不安定化になるかを判断する(S103)。具体的には、運用計画時と実運用時との間で系統短絡容量が異なる場合、制御内容判断部54は、実運用時の系統短絡容量が電力系統3の系統不安定化に関する閾値以下であるかを判定する。ここで、本判定は、電力系統3の系統不安定化が予測されるかの判定の一例である。
【0061】
GFL制御で系統不安定化にならない場合(S103:No)、運用計画制御装置5は、GFL制御を継続すると判断する(S104)。具体的には、制御内容判断部54は、制御対象のGFL制御中のインバータ電源31に関し、電力系統3の系統不安定化が予測されないため、運転モードを変更しないと判断する。
【0062】
一方、GFL制御で系統不安定化になる場合(S103:Yes)、運用計画制御装置5は、GFM制御に変更すると判断する(S105)。具体的には、制御内容判断部54は、制御対象のGFL制御中のインバータ電源31に関し、電力系統3の系統不安定化が予測されるため、運転モードを変更すると判断する。また、制御信号生成部56は、制御対象のGFL制御中のインバータ電源31をGFM制御に変更するための制御信号を生成し、当該インバータ電源31へ送信する。そして、インバータ電源31は、運用計画制御装置5からの制御信号に応じて、電力変換に用いる制御部をGFL制御部316aからGFM制御部316bへ切り替える。その後、
図5の流れはS101の処理へ戻る。
【0063】
例えば、
図3の例において、GFL制御が行われているインバータ電源31a及びインバータ電源31bが電力系統3に連系されているノード(点)において、具体的には、インバータ電源31bにおいて検知された実運用時の系統短絡容量に基づいて電力系統3の系統不安定化が予測されたとする。この場合、インバータ電源31bにおいて制御切替部318が動作され、インバータ電源31bの運転モードがGFM制御に変更される。
【0064】
なお、上述の第1の実施形態では、GFL制御中のインバータ電源31を制御対象の装置として系統短絡容量の状況に応じた制御を行って電力系統3の系統短絡容量の増強を図る系統運用システム1を例示したが、これに限らない。系統運用システム1は、系統短絡容量の状況に応じて、GFL制御中のインバータ電源31に加えて、同一の電力系統3に接続されている同期発電機32及び同期調相機33の少なくとも一方をさらに制御対象としてもよい。具体的には、系統運用システム1は、実運用時の系統短絡容量の増強として、インバータ電源31の制御変更のみでは足りない場合、あるいは経済合理性がある場合は、同期発電機32や同期調相機33などの回転機をさらに起動してもよい。
【0065】
つまり、第1の実施形態に係る系統運用システム1は、系統短絡容量の状況に応じた制御対象として、同期発電機及び同期調相機のうちの少なくともいずれかである系統安定化装置を併用してもよい。
【0066】
例えば、第1の実施形態に係る系統運用システム1において、制御内容判断部54は、電力系統3の系統不安定化が予測される場合に、接続された電力系統3の系統短絡容量を補正する同期発電機32及び同期調相機33の少なくとも一方を起動すると判断してもよい。
【0067】
例えば、第1の実施形態に係る系統運用システム1において、制御内容判断部54は、電力系統3の系統不安定化が予測される場合、かつ、経済合理性がある場合に、接続された電力系統3の系統短絡容量を補正する同期発電機32及び同期調相機33の少なくとも一方を起動すると判断してもよい。ここで、経済合理性とは、その運転コストに対する系統短絡容量の補正量といった費用対効果の指標であってもよいし、運転コスト自体が許容されるかといった指標であってもよい。
【0068】
例えば、第1の実施形態に係る系統運用システム1において、制御内容判断部54は、計画値との差分などの増強すべき系統短絡容量の一部(第1の系統短絡容量)を制御対象のインバータ電源31の運転モードの変更で確保してもよい。同様に、制御内容判断部54は、増強すべき系統短絡容量の他の一部、例えば残りの増強すべき系統短絡容量(第2の系統短絡容量)を、制御対象とした同期発電機32及び同期調相機33の少なくとも一方の起動で確保してもよい。また、制御内容判断部54は、その配分を経済合理性に基づいて決定してもよい。
【0069】
<第1の実施形態に係る系統運用システムの効果>
このように、第1の実施形態に係る系統運用システム1は、系統短絡容量の予測量と運用時の検出量とに差が生じた場合に、該当のインバータ電源31の制御をGFL制御からGFM制御に切り替えるように構成されている。
【0070】
この構成によれば、電力系統3のあるノードにおいて系統短絡容量が必要であるところ、同期発電機32による系統短絡容量確保が困難な場合や、インバータ定数の調整のみでは系統短絡容量確保の対応が困難な場合であっても、系統短絡容量を確保することができる。換言すれば、本実施形態に係る構成によれば、系統短絡容量の状況に応じて、系統連系インバータの制御に関して柔軟な対応を実現し、実系統の系統短絡容量増強を図ることができる。これにより、系統短絡容量の不足に起因した系統不安定化を抑制することができる。
【0071】
なお、上述した第1の実施形態は、系統運用システム1の各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、第1の実施形態に係る変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、既に説明した内容との相違点を主に説明し、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0072】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る系統運用システム1について説明する。第2の実施形態では、運用計画制御装置5において実運用時の系統短絡容量の検出が行われる系統運用システム1について説明する。なお、第2の実施形態の説明においては、第1の実施形態と同様の構成又は動作を示す箇所には、図面等において同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
<第2の実施形態に係る系統運用システムの構成>
図6は、第2の実施形態に係る運用計画制御装置5の機能構成の一例を示す図である。
図7は、第2の実施形態に係るインバータ電源31の構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係る系統運用システム1は、
図6及び
図7に示すように、インバータ電源31に代えて、運用計画制御装置5に検出短絡容量計算部51が設けられること以外は、第1の実施形態に係る系統運用システム1の構成と同様である。
【0074】
例えば、第2の実施形態に係る系統運用システム1において、運用計画制御装置5の検出短絡容量計算部51は、インバータ電源31から電流センサ314及び電圧センサ315により計測された交流電流及び交流電圧を示す計測情報を取得する。そして、検出短絡容量計算部51は、検出した実運用時の系統短絡容量を短絡容量比較部52に供給する。
【0075】
例えば、第2の実施形態に係る系統運用システム1において、インバータ電源31の信号送受信部317の入力ノードは、電流センサ314及び電圧センサ315のそれぞれの検出信号の出力ノードに電気的に接続される。そして、信号送受信部317は、電流センサ314及び電圧センサ315により計測された、自端の交流電流及び交流電圧を運用計画制御装置5とへ送信する。
【0076】
<第2の実施形態に係る系統運用システムの効果>
このように、運用計画制御装置5に検出短絡容量計算部51が設けられる第2の実施形態に係る系統運用システム1であっても、第1の実施形態に係る系統運用システム1と同様の効果が得られる。
【0077】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る系統運用システム1について説明する。第1及び第2の実施形態では、予め作成された電力系統3の運用計画である系統運用計画に沿った運用時に、系統運用計画の計画短絡容量を用いてインバータ電源31の制御を変更する系統運用システム1を説明したが、この計画短絡容量は、運用計画制御装置5において算出されてもよい。なお、第3の実施形態の説明においては、上述の第1の実施形態と同様の構成又は動作を示す箇所には、図面等において同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0078】
<第3の実施形態に係る系統運用システムの構成>
図8は、第3の実施形態に係る運用計画制御装置5の機能構成の一例を示す図である。
図8は、同期発電機32の起動/停止の計画である同期発電機運用計画の策定に携わることが可能な事業者により系統運用システム1が運用される場合を例示する。
【0079】
第3の実施形態に係る運用計画制御装置5は、プロセッサがROMから読み出した少なくとも1つのプログラムをRAMにロードして実行することにより、
図8に示すように、運用計画部6としての機能をさらに実現する。運用計画部6は、
図8に示すように、同期発電機運用計画部61、インピーダンスマップ作成部62、計画短絡容量計算部63、計画短絡及び制御内容計画部67としての機能を含む。ここで、実施形態に係る運用計画部6は、計画部の一例である。
【0080】
同期発電機運用計画部61は、同期発電機32や蓄電池の起動/停止といった同期発電機32や蓄電池の運用計画を作成する。例えば、同期発電機運用計画部61は、再エネ発電予測情報及び制御内容の計画情報を取得する。ここで、再エネ発電予測情報とは、例えば再エネ発電による発電量の予測値を示す情報である。また、制御内容の計画情報とは、制御内容計画部67により生成された同期発電機32や蓄電池の起動/停止といった運転状態又はその変更を示す情報である。そして、同期発電機運用計画部61は、再エネ発電予測情報及び制御内容の計画情報に基づいて、同期発電機32や蓄電池の運用計画を作成する。同期発電機運用計画部61は、作成した運用計画を示す情報をインピーダンスマップ作成部62に供給する。
【0081】
なお、同期発電機運用計画部61は、再エネ発電を予測し、再エネ発電予測情報を生成してもよい。この場合、同期発電機運用計画部61は、電力系統3に接続されたインバータ電源31の現在の制御モードを示すインバータ制御情報や、電力系統3の遮断機の開閉状態などの系統に関する情報を示す系統データ、インバータ電源31の性能や過去の発電量の履歴を示す情報、天気予報の情報、予想潮流などの他の系統運用計画の情報に基づいて、再エネ発電を予測してもよい。
【0082】
インピーダンスマップ作成部62は、系統運用計画を取得する。インピーダンスマップ作成部62は、系統運用計画に沿って、インピーダンスマップを作成する。系統運用計画は、上述したように、同期発電機32や蓄電池の運転状態を示す運転状態情報、同期発電機32や蓄電池の制御内容の計画情報、再エネ発電予測情報、インバータ制御情報、系統データといった情報を含む。なお、インピーダンスマップ作成部62は、インバータ電源31からその制御モードを示す状態信号を受信することによりインバータ制御情報を取得してもよいし、制御信号生成部56からの制御信号による制御の履歴からインバータ制御情報を取得してもよい。また、インピーダンスマップ作成部62は、電力系統3の遮断機からその開閉状態を示す信号を取得してもよい。
【0083】
図9は、第3の実施形態に係るインピーダンスマップについて説明するための図である。インピーダンスマップ作成部62は、負荷部と電源部とを有する電力系統3に関し、各送電線やインバータ電源31、同期発電機32、同期調相機33、負荷などの各部のインピーダンスを示すインピーダンスマップを生成する。なお、インピーダンスマップは、
図9に例示するように、電力系統3の各ノードにおけるインピーダンスを示す情報であればよく、マップとして視認可能な情報に限らない。インピーダンスマップ作成部62は、生成したインピーダンスマップを計画短絡容量計算部63に供給する。
【0084】
計画短絡容量計算部63は、インピーダンスマップ作成部62からのインピーダンスマップを取得する。また、計画短絡容量計算部63は、取得したインピーダンスマップを用いて、各ノードの運用計画時の系統短絡容量(計画短絡容量)を算出する。計画短絡容量計算部63は、算出した計画短絡容量を計画短絡容量判断部64に供給する。
【0085】
一例として、計画短絡容量計算部63は、系統運用計画の計画時に、電力系統3における複数のノード(点)のそれぞれの系統短絡容量を計算する。
【0086】
一例として、計画短絡容量計算部63は、系統運用計画の計画時に、電力系統3における複数のノード(点)のそれぞれの系統短絡容量である計画短絡容量を、実運用時の検出短絡容量の閾値として設定する。
【0087】
計画短絡容量判断部64は、電力系統3の各ノードについて、系統短絡容量が不足するか判断する。換言すれば、計画短絡容量判断部64は、管理範囲内の電力系統3に系統短絡容量不足のノードが存在するかを判断する。例えば計画短絡容量判断部64は、計画短絡容量判断部64からの計画短絡容量が、予め定められて運用計画制御装置5の内部メモリなどに格納された、計画短絡容量に関する閾値以下である場合に、そのノードで系統短絡容量が不足すると判断する。計画短絡容量が閾値以下であることは、例えば短絡比や短絡容量比、系統短絡容量とインバータ電源31の皮相電力出力との比などに基づいて判断されるが、他の判断方法であってもよい。計画短絡容量判断部64は、管理範囲内の電力系統3に系統短絡容量不足のノードが存在する場合には、その計画短絡容量を計画短絡容量補正量計算部65に供給する。また、計画短絡容量判断部64は、管理範囲内の電力系統3に系統短絡容量不足のノードが存在しない場合には、その計画短絡容量を計画短絡容量格納部53に供給するとともに、系統運用計画に従い、インバータ電源31や同期発電機32、同期調相機33などの制御対象の制御信号を制御信号格納部55に供給する。
【0088】
計画短絡容量補正量計算部65は、管理範囲内の電力系統3に系統短絡容量不足のノードが存在する場合に、該当するノードにおいて補正すべき系統短絡容量、すなわち増強すべき系統短絡容量を算出する。例えば、計画短絡容量補正量計算部65は、電力系統3の系統不安定性を抑制する観点から確保すべき系統短絡容量と計画短絡容量との差分を増強すべき系統短絡容量として算出する。つまり、計画短絡容量補正量計算部65は、算出した計画短絡容量が閾値以下であるノードに対して系統が安定となる系統短絡容量の補正量を計算する。
【0089】
接続インバータ探索部66は、管理範囲内の電力系統3に系統短絡容量不足のノードが存在する場合に、該当するノードにおいて、インバータ電源31が接続されているかを判断する。また、接続インバータ探索部66は、GFL制御からGFM制御に変更した場合の系統短絡容量の補正値が最大となるようなインバータ電源31を探索する。接続インバータ探索部66は、探索されたインバータ電源31を示す情報を制御内容計画部67に供給する。
【0090】
制御内容計画部67は、例えば制御内容判断部54と同様にして、探索されたインバータ電源31に関して制御を変更するかを判断する。例えば、制御内容計画部67は、系統短絡容量不足のノード又はその周辺のノードに接続されているインバータ電源31の制御を、GFL制御からGFM制御に変更した時の系統短絡容量の補正量を計算し、効果が高いインバータの制御をGFL制御からGFM制御に変更する。なお、制御内容計画部67は、2つ以上の複数のインバータ電源31の制御を切り替えてもよく、制御を切り替えるインバータ電源31の台数は、例えば増強すべき系統短絡容量と制御変更による補正量との関係などから適宜設定され得る。ここで、インバータ電源31の制御を変更した場合の系統短絡容量の補正量は、改善効果の一例である。
【0091】
一例として、制御内容計画部67は、複数のインバータ電源31のうちのいずれかの制御を系統追従型から系統形成型に変更する運転モードの変更における、電力系統3の系統短絡容量の改善効果を運用計画時に判断する。
【0092】
一例として、制御内容計画部67は、電力系統3における複数のノード(点)のそれぞれの系統短絡容量を運用計画時に計算し、複数のインバータ電源31のうちのいずれかであって、複数のノード(点)のうちの運用計画時の系統短絡容量が電力系統3の系統不安定化に関する閾値以下であるノード(対象点)において電力系統3に連系されているインバータ電源31の運転モードを運用計画時に変更する。
【0093】
なお、本実施形態に係る系統運用システム1は、上述の各実施形態と同様に、系統短絡容量の状況に応じて、GFL制御中のインバータ電源31に加えて、同一の電力系統3に接続されている同期発電機32及び同期調相機33の少なくとも一方をさらに制御対象としてもよい。具体的には、本実施形態に係る系統運用システム1は、運用計画時の系統短絡容量の増強として、インバータ電源31の制御変更のみでは足りない場合、あるいは経済合理性がある場合は、同期発電機32や同期調相機33などの回転機をさらに起動してもよい。
【0094】
一例として、制御内容計画部67は、接続された電力系統3の系統短絡容量を補正する少なくとも1つの同期発電機32及び同期調相機33のうちのいずれかの起動を併用する場合の系統短絡容量の補正量(改善効果)を運用計画時にさらに判断する。
【0095】
一例として、制御内容計画部67は、少なくとも1つの同期発電機32及び同期調相機33のうちのいずれかの起動を併用する場合の経済合理性を運用計画時にさらに判断する。
【0096】
<第3の実施形態に係る系統運用システムの処理>
次に、第3の実施形態に係る系統運用システム1の処理について説明する。
図10は、第3の実施形態に係る系統運用システム1により実行される、計画時の処理の一例を示すフローチャートである。
【0097】
図10の流れは、例えば系統運用計画を立案する段階、すなわち運用計画時に実施される。
【0098】
運用計画制御装置5の運用計画部6は、系統運用計画を作成する(S201)。また、運用計画部6のインピーダンスマップ作成部62は、系統運用計画に沿ってインピーダンスマップを作成する(S202)。
【0099】
計画短絡容量計算部63は、インピーダンスマップを用いて、管理範囲内の電力系統3における複数のノードのうちの1つの対象のノードにおける系統短絡容量を計算する(S203)。そして、計画短絡容量判断部64は、対象のノードにおいて系統短絡容量が不足するかを判断する(S204)。
【0100】
対象のノードにおいて系統短絡容量が不足していない場合(S204:No)、計画短絡容量計算部63は、管理範囲内の電力系統3における複数のノードのいずれかで系統短絡容量が不足すると予測されるかを判断する(S205)。
【0101】
管理範囲内の電力系統3における複数のノードのいずれかで系統短絡容量が不足すると予測される場合(S205:Yes)、
図10の流れはS203の処理へ戻る。一方で、管理範囲内の電力系統3における複数のノードのいずれかで系統短絡容量が不足すると予測されない場合(S205:No)、
図10の流れは終了する。
【0102】
また、対象のノードにおいて系統短絡容量が不足している場合(S204:Yes)、計画短絡容量補正量計算部65は、該当するノードにおいて補正すべき系統短絡容量を計算する(S206)。そして、接続インバータ探索部66は、該当するノードにおいて、インバータ電源31が接続されているかを判断する(S207)。
【0103】
該当するノードにおいて、インバータ電源31が接続されている場合(S207:Yes)、制御内容計画部67は、該当するインバータ電源31がGFL制御であるかを判断する(S208)。そして、制御内容計画部67は、該当するインバータ電源31がGFL制御である場合(S208:Yes)、該当するインバータ電源31をGFM制御に変更する(S209)。一方、該当するインバータ電源31がGFL制御ではない場合、すなわちGFM制御である場合(S208:No)、
図10の流れはS203の処理へ戻る。
【0104】
また、該当するノードにおいて、インバータ電源31が接続されていない場合(S207:No)、接続インバータ探索部66は、GFL制御からGFM制御に変更した場合の系統短絡容量の補正量が最大となるような少なくとも1つのインバータ電源31を探索する(S210a)。そして、制御内容計画部67は、S208~S209の処理と同様にして、該当するインバータ電源31がGFL制御であるかを判断(S211)し、該当するインバータ電源31がGFL制御である場合(S211:Yes)に、該当するインバータ電源31をGFM制御に変更する(S212)。一方、該当するインバータ電源31がGFL制御ではない場合、すなわちGFM制御である場合(S211:No)、S209の処理と同様にして、
図10の流れはS203の処理へ戻る。
【0105】
<第3の実施形態に係る系統運用システムの効果>
このように、第3の実施形態に係る系統運用システム1は、インピーダンスマップを用いて算出した系統短絡容量が不足している場合、そのノードに接続されたインバータ電源31、あるいは必要な系統短絡容量補正量に対して最大の効果が得られるようなインバータ電源31を探索し、そのインバータ電源31の制御をGFL制御からGFM制御に変更するように構成されている。
【0106】
この構成によれば、系統短絡容量が不足するノードに関し、系統短絡容量の改善を実運用に先立つ運用計画立案のタイミングで効率よく行うことができる。また、インピーダンスマップを用いる上記構成によれば、実運用時に系統短絡容量が運用計画から外れた場合でも、新たな系統短絡容量の計算の実行を最小限に抑えることができる。同様に、上記構成によれば、制御の切替対象のインバータ電源31を最小限に抑えることができる。さらに、上記構成によれば、経済合理性を考慮して制御を切り替えることもできる。
【0107】
なお、第3の実施形態に係る技術は、上述の第1及び第2の実施形態に係る系統運用システム1のいずれにも適用可能である。
【0108】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る系統運用システム1について説明する。第3の実施形態では、運用計画制御装置5において同期発電機32の起動/停止の計画である同期発電機運用計画が作成される系統運用システム1を説明したが、同期発電機運用計画は、運用計画制御装置5の外部で作成されてもよい。なお、第4の実施形態の説明においては、上述の第3の実施形態と同様の構成又は動作を示す箇所には、図面等において同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0109】
<第4の実施形態に係る系統運用システムの構成>
図11は、第4の実施形態に係る系統運用システム1の機能構成の一例を示す図である。第4の実施形態に係る系統運用システム1は、
図11に示すように、同期発電機運用計画装置7がさらに設けられている一方、運用計画制御装置5には同期発電機運用計画部61が設けられていないこと以外は、第3の実施形態に係る系統運用システム1の構成と同様である。
【0110】
同期発電機運用計画装置7は、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成を有する。一例として、同期発電機運用計画装置7は、バスなどにより相互に接続された、プロセッサと、メモリと、インタフェースとを有する。
【0111】
同期発電機運用計画装置7のプロセッサとしては、CPU、GPU、ASIC、FPGAなどの各種のプロセッサが適宜利用可能である。例えば、プロセッサは、メモリにロードした少なくとも1つのプログラムを実行することにより、同期発電機運用計画装置7を統括的に制御する。一例として、同期発電機運用計画装置7は、プロセッサがROMから読み出したプログラムをRAMにロードして実行することにより、同期発電機運用計画部61と同様の機能を含む、同期発電機運用計画装置7の有する各機能を実現する。
【0112】
同期発電機運用計画装置7のメモリとしては、ROMやRAM、HDD、SSD、Flashメモリ等の各種の記憶媒体や記憶装置が適宜利用可能である。例えば、ROMは、プロセッサが実行する各種プログラムや各種データを記憶する。RAMは、例えば同期発電機運用計画装置7の主記憶装置であり、プロセッサによる各種処理に必要なデータや各種プログラムを一時的に記憶する。
【0113】
同期発電機運用計画装置7のインタフェースは、同期発電機運用計画装置7の外部との間においてデータを送受信するためのインタフェース回路である。
【0114】
同期発電機運用計画装置7は、同期発電機32や蓄電池の起動/停止といった同期発電機32や蓄電池の運用計画を作成する。例えば、同期発電機運用計画装置7は、再エネ発電予測情報及び運用計画制御装置5の制御内容計画部67からの制御内容の計画情報を取得する。そして、同期発電機運用計画装置7は、再エネ発電予測情報及び制御内容の計画情報に基づいて、同期発電機32や蓄電池の運用計画を作成する。同期発電機運用計画装置7は、作成した運用計画を示す情報を運用計画制御装置5のインピーダンスマップ作成部62に供給する。
【0115】
<第4の実施形態に係る系統運用システムの効果>
このように、第4の実施形態に係る系統運用システム1は、運用計画制御装置5の外部で作成された同期発電機32や蓄電池の運用計画を用いてインピーダンスマップを作成するように構成されている。この構成であっても、第3の実施形態に係る系統運用システム1と同様の効果が得られる。
【0116】
なお、第4の実施形態に係る技術は、上述の第1~第3の実施形態に係る系統運用システム1のいずれにも適用可能である。
【0117】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る系統運用システム1について説明する。第3~第4の実施形態では、同期発電機32の起動/停止の計画である同期発電機運用計画の策定に携わることが可能な事業者により系統運用システム1が運用される場合を説明したが、系統運用システム1は、発電機の起動停止に関与できない事業者により運用されてもよい。なお、第5の実施形態の説明においては、上述の第3の実施形態と同様の構成又は動作を示す箇所には、図面等において同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0118】
<第5の実施形態に係る系統運用システムの構成>
図12は、第5の実施形態に係る運用計画制御装置5の機能構成の一例を示す図である。第5の実施形態に係る系統運用システム1は、
図12に示すように、運用計画制御装置5に同期発電機運用計画部61が設けられていないこと以外は、第3の実施形態に係る系統運用システム1の構成と同様である。
【0119】
第5の実施形態に係る運用計画制御装置5のインピーダンスマップ作成部62は、同期発電機32や蓄電池の制御内容の計画情報である同期発電機運用計画情報を、系統運用システム1の外部から取得する。
【0120】
第5の実施形態に係る運用計画制御装置5の制御内容計画部67は、上述の各実施形態と同様に、系統短絡容量の状況に応じて、GFL制御中のインバータ電源31に加えて、同一の電力系統3に接続されている同期調相機33をさらに制御対象としてもよい。一方で、制御内容計画部67は、同期発電機32及び蓄電池については、制御対象としない。
【0121】
<第5の実施形態に係る系統運用システムの効果>
このように、第5の実施形態に係る系統運用システム1は、系統運用システム1の外部で作成された同期発電機32や蓄電池の運用計画を用いてインピーダンスマップを作成するように構成されている。この構成であっても、運用計画時の系統短絡容量の増強として同期調相機33や蓄電池を併用できないこと以外は、第3の実施形態に係る系統運用システム1と同様の効果が得られる。
【0122】
なお、第5の実施形態に係る技術は、上述の第1~第4の実施形態に係る系統運用システム1のいずれにも適用可能である。
【0123】
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る系統運用システム1について説明する。第3~第5の実施形態では、GFL制御からGFM制御に変更した場合の系統短絡容量の補正量が最大となるような少なくとも1つのインバータ電源31を探索する系統運用システム1を説明したが、系統運用システム1は、他の条件でGFL制御からGFM制御に変更するインバータ電源31を探索してもよい。なお、第6の実施形態の説明においては、上述の第3の実施形態と同様の構成又は動作を示す箇所には、図面等において同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0124】
<第6の実施形態に係る系統運用システムの構成>
第6の実施形態に係る接続インバータ探索部66は、管理範囲内の電力系統3に系統短絡容量不足のノードが存在する場合に、該当するノードにおいて、インバータ電源31が接続されているかを判断する。また、接続インバータ探索部66は、該当するノードからの電気的距離が最短の少なくとも1つのインバータ電源31を探索する。接続インバータ探索部66は、探索されたインバータ電源31を示す情報を制御内容計画部67に供給する。
【0125】
<第6の実施形態に係る系統運用システムの処理>
図13は、第6の実施形態に係る系統運用システム1により実行される、計画時の処理の一例を示すフローチャートである。
【0126】
第6の実施形態に係る接続インバータ探索部66は、系統短絡容量が不足している対象のノード(対象点)に電力系統3に連系されているインバータ電源31が接続されていない場合(S207:No)、対象のノードで増強すべき系統短絡容量、すなわち系統安定に必要な系統短絡容量を計算する。そして、接続インバータ探索部66は、算出した系統短絡容量が得られるように、電気的距離が最短となるインバータ電源31を探索する(S210b)。ここで、電気的距離とは、例えばインピーダンスマップ(
図9参照)上での距離に相当する。つまり、対象のノードからの電気的距離が最短となるインバータ電源31とは、対象のノードから見たインピーダンスが最小のインバータ電源31である。
【0127】
そして、制御内容計画部67は、該当するインバータ電源31がGFL制御であるかを判断(S211)し、該当するインバータ電源31がGFL制御である場合(S211:Yes)に、該当するインバータ電源31をGFM制御に変更する(S212)。一方、該当するインバータ電源31がGFL制御ではない場合、すなわちGFM制御である場合(S211:No)、
図13の流れはS203の処理へ戻る。
【0128】
<第6の実施形態に係る系統運用システムの効果>
このように、第6の実施形態に係る系統運用システム1は、増強すべき系統短絡容量を補うことが可能な対象のノードからの電気的距離が最短のインバータ電源31の運転モードを運用計画時に変更するように構成されている。
【0129】
この構成であれば、予め系統短絡容量が小さいと予測されたノードに対して、系統短絡容量を補正することができる。これにより、系統運用計画を実行する前に、系統短絡容量の低下を抑制することができる。また、電気的距離の要素を入れることで、制御を変更した場合に効果があるインバータ電源31に関して、その制御の変更のための計算量を削減することができる。このため、上記構成によれば、ノード周辺にインバータ電源31が存在しない場合において、そのノードにおける系統安定に必要な系統短絡容量を得つつ、より短時間で補正量を算出することができる。
【0130】
なお、第6の実施形態に係る技術は、上述の第1~第5の実施形態に係る系統運用システム1のいずれにも適用可能である。
【0131】
なお、上記実施形態の各装置で実行されるプログラムは、各装置が備える記憶媒体(ROM又は記憶部)に予め組み込んで提供するものとするが、これに限らず、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。さらに、記憶媒体は、コンピュータ或いは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0132】
また、上記実施形態の各装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよく、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0134】
(付記)
(1)
複数の電力変換装置が接続された電力系統についての運用計画時の系統短絡容量と、実運用時の系統短絡容量とを比較する比較部と、
前記運用計画時の系統短絡容量と前記実運用時の系統短絡容量とが異なる場合に前記電力系統の系統不安定化が予測されると判断し、前記複数の電力変換装置のうちのいずれかである制御対象の電力変換装置の運転モードを変更すると判断する判断部と、
前記電力系統の系統不安定化が予測される場合に、前記制御対象の電力変換装置の運転モードの変更を指示する信号を生成し、当該制御対象の電力変換装置に送信する生成部と、を備える、
系統運用計画制御装置。
(2)
前記判断部は、前記実運用時の系統短絡容量が前記電力系統の系統不安定化に関する閾値以下であるかを判定し、前記運用計画時の系統短絡容量と前記実運用時の系統短絡容量とが異なる場合、かつ、前記実運用時の系統短絡容量が前記閾値以下である場合に、前記電力系統の系統不安定化が予測されると判断する、
上記(1)に記載の系統運用計画制御装置。
(3)
前記判断部は、前記電力系統の系統不安定化が予測される場合に、接続された前記電力系統の系統短絡容量を補正する少なくとも1つの系統安定化装置のうちのいずれかである制御対象の系統安定化装置を起動すると判断する、
上記(1)又は上記(2)に記載の系統運用計画制御装置。
(4)
前記制御対象の系統安定化装置は、同期発電機及び同期調相機のうちの少なくともいずれかである、
上記(3)に記載の系統運用計画制御装置。
(5)
前記制御対象の電力変換装置は、系統追従型の制御機能を有する電力変換装置である、
上記(1)から上記(4)のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
(6)
前記制御対象の電力変換装置は、系統形成型の制御機能を有する電力変換装置であり、
前記制御対象の電力変換装置の運転モードの変更は、前記系統追従型から前記系統形成型への制御の変更である、
上記(5)に記載の系統運用計画制御装置。
(7)
前記電力系統の系統不安定化が予測される場合に、前記複数の電力変換装置のうちのいずれかの電力変換装置の前記運転モードの変更で、増強すべき系統短絡容量の一部である第1の系統短絡容量を前記運用計画時に確保し、接続された前記電力系統の系統短絡容量を補正する少なくとも1つの系統安定化装置のうちのいずれかを起動することで、残りの前記増強すべき系統短絡容量である第2の系統短絡容量を前記運用計画時に確保する、計画部をさらに備える、
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
(8)
前記計画部は、前記第1の系統短絡容量及び前記第2の系統短絡容量の配分を経済合理性に基づいて決定する、
上記(7)に記載の系統運用計画制御装置。
(9)
前記電力系統における複数の点のそれぞれの系統短絡容量を前記運用計画時に計算する計画部をさらに備える、
上記(1)から上記(8)のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
(10)
前記電力系統における複数の点それぞれの前記運用計画時の系統短絡容量を前記運用計画時に設定する計画部をさらに備える、
上記(1)から上記(9)のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
(11)
前記複数の電力変換装置のうちのいずれかの電力変換装置の制御を系統追従型から系統形成型に変更する前記運転モードの変更における、前記電力系統の系統短絡容量の改善効果を前記運用計画時に判断する計画部をさらに備える、
上記(1)から上記(10)のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
(12)
前記計画部は、接続された前記電力系統の系統短絡容量を補正する少なくとも1つの系統安定化装置のうちのいずれかの起動を併用する場合の前記系統短絡容量の改善効果を前記運用計画時にさらに判断する、
上記(11)に記載の系統運用計画制御装置。
(13)
前記計画部は、前記少なくとも1つの系統安定化装置のうちのいずれかの起動を併用する場合の経済合理性を前記運用計画時にさらに判断する、
上記(12)に記載の系統運用計画制御装置。
(14)
前記電力系統における複数の点のそれぞれの系統短絡容量を前記運用計画時に計算し、前記複数の電力変換装置のうちのいずれかであって、前記複数の点のうちの前記運用計画時の系統短絡容量が前記電力系統の系統不安定化に関する閾値以下である対象点において前記電力系統に連系されている電力変換装置の前記運転モードを前記運用計画時に変更する、計画部をさらに備える、
上記(1)から上記(13)のうちのいずれか一項に記載の系統運用計画制御装置。
(15)
前記計画部は、前記対象点において前記電力系統に連系されている電力変換装置が存在しない場合、当該対象点で増強すべき系統短絡容量を算出し、
前記複数の電力変換装置のうちのいずれかであって、前記増強すべき系統短絡容量を補うことが可能な前記対象点からの電気的距離が最短の電力変換装置の前記運転モードを前記運用計画時に変更する、計画部をさらに備える、
上記(14)に記載の系統運用計画制御装置。
(16)
複数の電力変換装置が接続された電力系統についての運用計画時の系統短絡容量と、実運用時の系統短絡容量とを比較し、
前記運用計画時の系統短絡容量と前記実運用時の系統短絡容量とが異なる場合に、前記実運用時の系統短絡容量が前記電力系統の系統不安定化に関する閾値以下であるかを判定し、前記実運用時の系統短絡容量が前記閾値以下である場合に、前記複数の電力変換装置のうちのいずれかである制御対象の電力変換装置の運転モードを変更すると判断し、
前記実運用時の系統短絡容量が前記閾値以下である場合に、複数の電力変換装置のうちのいずれかである制御対象の電力変換装置の運転モードの変更を指示する信号を生成し、当該制御対象の電力変換装置に送信する、
系統運用計画制御方法。
【符号の説明】
【0135】
1 系統運用システム
3 電力系統
31 インバータ電源
311 直流電源部
312 交直変換部
313 連系リアクトル
314 電流センサ
315 電圧センサ
316a GFL制御部
316b GFM制御部
317 信号送受信部
318 制御切替部
319 PWM制御部
32 同期発電機
33 同期調相機
5 運用計画制御装置
51 検出短絡容量計算部
52 短絡容量比較部
53 計画短絡容量格納部
54 制御内容判断部
55 制御信号格納部
56 制御信号生成部
6 運用計画部
61 同期発電機運用計画部
62 インピーダンスマップ作成部
63 計画短絡容量計算部
64 計画短絡容量判断部
65 計画短絡容量補正量計算部
66 接続インバータ探索部
67 制御内容計画部
7 同期発電機運用計画装置
N1 通信ネットワーク
N2 系統ネットワーク