(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099339
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
B25J19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215933
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707BS12
3C707CT05
3C707CV08
3C707CW08
3C707CY05
3C707CY26
3C707HS27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】引き出される電線の本数が多いエンドエフェクタであっても交換容易性を確保する。
【解決手段】本発明に係る多関節ロボットは、ロボットアームと、ロボットアームの先端に設けられエンドエフェクタと、エンドエフェクタをロボットアームの先端に取付けるためのヘッドアタッチメント3と、エンドエフェクタと地上側に固定配置された制御盤とを接続する電線13とを有する多関節ロボット1において、エンドエフェクタから引き出された電線と制御盤から引き出された電線とを接続するための接続部(端子台51)が、ヘッドアタッチメント3と一体化されていることを特徴とする。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、当該ロボットアームの先端に設けられエンドエフェクタと、当該エンドエフェクタを前記ロボットアームの先端に取付けるためのヘッドアタッチメントと、前記エンドエフェクタと地上側に固定配置された制御盤とを接続する電線とを有する多関節ロボットにおいて、
前記エンドエフェクタから引き出された前記電線と前記制御盤から引き出された前記電線とを接続するための接続部が、前記ヘッドアタッチメントと一体化されていることを特徴とする多関節ロボット。
【請求項2】
前記接続部が防爆規格に準拠した接続箱の内部に配設され、当該接続箱が前記ヘッドアタッチメントと一体化されていることを特徴とする請求項1の多関節ロボット。
【請求項3】
前記接続部が端子台を有し、当該端子台に対して前記エンドエフェクタから引き出された前記電線が着脱可能に接続されることを特徴とする請求項2の多関節ロボット。
【請求項4】
前記接続箱が前記端子台に臨んで開口した開口部を有し、前記エンドエフェクタから引き出された前記電線が前記開口部を通して前記端子台に対して接続されることを特徴とする請求項3の多関節ロボット。
【請求項5】
前記エンドエフェクタから引き出された前記電線が当該電線が貫通する面板を有し、当該面板が前記開口部を塞ぐようにして前記接続箱に対して着脱可能に装着されることを特徴とする請求項4の多関節ロボット。
【請求項6】
前記エンドエフェクタが複数ユニットで構成されると共に、当該複数ユニットから引き出された複数電線が大形の前記面板で保持され、当該大形の面板が前記接続箱に形成された大形の前記開口部に対して着脱可能に装着されることを特徴とする請求項5の多関節ロボット。
【請求項7】
前記エンドエフェクタが複数ユニットで構成されると共に、当該複数ユニットのそれぞれが小形の前記面板を有し、当該小形の面板が前記接続箱に形成された小形の前記開口部に対して着脱可能に装着されることを特徴とする請求項5の多関節ロボット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項の多関節ロボットにおいて、前記エンドエフェクタがインクジェットヘッドで構成されていることを特徴とする塗装用多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1(特開2015‐058515)や特許文献2(特開2004‐1177号公報)に記載のように、多関節ロボットの先端にエンドエフェクタ(例えば塗装用スプレーガン、スポット溶接用ガンなど)を取付けた作業用多関節ロボットが多くの産業分野で多用されている。エンドエフェクタから引き出されたエンドエフェクタ側電線は、ロボット側からくるロボット側電線と接続される。これら電線にはロボットが稼働する際に大きなストレス(屈曲や引張り)が掛かるので、特許文献1の発明では手首部(取付部とも言う)よりもエンドエフェクタ側で、エンドエフェクタ側電線とロボット側電線とを端子接続している。
【0003】
エンドエフェクタが塗装用のインクジェットヘッド等の場合、エンドエフェクタ側電線とロボット側電線の本数が多くなる。したがって、端子接続に手間が掛かり、インクジェットヘッド等の交換容易性を確保するのが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の課題は、引き出される電線の本数が多いエンドエフェクタであっても交換容易性を確保可能な多関節ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の多関節ロボットは、ロボットアームと、当該ロボットアームの先端に設けられエンドエフェクタと、当該エンドエフェクタを前記ロボットアームの先端に取付けるためのヘッドアタッチメントと、前記エンドエフェクタと地上側に固定配置された制御盤とを接続する電線とを有する多関節ロボットにおいて、前記エンドエフェクタから引き出された前記電線と前記制御盤から引き出された前記電線とを接続するための接続部が、前記ヘッドアタッチメントと一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、引き出される電線の本数が多いエンドエフェクタであっても交換容易性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る多関節ロボットの概略図である。
【
図3A】内部を示すため前壁を省略したヘッドアタッチメントと接続箱の組立斜視図である。
【
図3B】ヘッドアレイユニットをヘッドアタッチメントに取付ける状態を示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る多関節ロボットの概略図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る多関節ロボットの概略図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る多関節ロボットの概略図である。
【
図9】手術用ロボットのアーム遠位端に取付けられた鉗子の(a)斜視図と(b)拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の第1実施形態に係る多関節ロボットから図面を参照して順に説明する。本発明の多関節ロボット1の特徴は、エンドエフェクタとしてのインクジェットヘッド20をロボットアームの先端に取付けるためのヘッドアタッチメント3に、インクジェットヘッド20から引き出された電線24a、24bと、エンドエフェクタ制御盤14から引き出された電線13Bとを接続するための接続部としての端子台51が、一体化されていることである。
【0009】
●第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態に係る多関節ロボットの概略図である。多関節ロボット1は、
図1に示すように複数のリンクと、各リンクを接続する複数の回転軸J1~J6を有する多関節ロボット(6軸の垂直多関節ロボット)である。
【0010】
この多関節ロボット1の基台10上に、垂直な回転軸J6を介して水平旋回可能な旋回ベース(基本第1軸)9が配設されている。旋回ベース(基本第1軸)9上に、水平な回転軸J5を介して下部アーム(基本第2軸)8が前後動可能に配設されている。
【0011】
下部アーム(基本第2軸)の上端部に、水平な回転軸J4を介して旋回部7が配設されている。この旋回部7に、回転軸J3を介して上部アーム(基本第3軸)6が配設されている。上部アーム(基本第3軸)6は、回転軸J4を中心として上下動可能であり、回転軸J3を中心として旋回可能である。
【0012】
上部アーム(基本第3軸)6の先端に、回転軸J2を介して手首部(手首第1軸~手首第3軸)5が配設されている。手首部5に、ヘッドアタッチメント3を介してエンドエフェクタ2が取付けられている。ヘッドアタッチメント3は回転軸J1を中心として回転可能に構成されている。
【0013】
回転軸J2、J4、J5は、
図1表面から見て、時計方向又は半時計方向に回転する。また、回転軸J1、J3、J6は、回転軸を中心に
図1の手前又は奥方向に回転する。
【0014】
ヘッドアタッチメント3には、エンドエフェクタ2と接続箱4が取付けられる。接続箱4は、エンドエフェクタ2から引き出された複数の電線を、ロボット側から配設された電線13(13A、13B)と接続するためのコネクタや端子台を取付ける部材を搭載し、接続箱4の中で接続するためのものである。
【0015】
接続箱4から電線13が引き出され、当該電線13は接続箱4の電線引出し部11で固定される。その後、電線13は、旋回部7の上面に立設された電線固定部12Aを介して、地上に固定配置されたエンドエフェクタ制御盤14に接続される。旋回部7はアーム6、8に比べて動き(揺動量)が少ないので、電線固定部12Aの動き(揺動量)も少ない。
【0016】
ここで、各回転軸の回転制御については、図示はしていないが、一般的にはサーボモータを各軸に搭載し、これらをロボット制御装置で制御することにより、エンドエフェクタ2を移動させる。エンドエフェクタ2が塗料を吐出する吐出装置である場合は、塗装するターゲットの被塗装面に沿うように移動させることで塗装を行うことができる。
【0017】
電線13の寿命は電線13の屈曲による断線である。この断線に対して悪影響を及ぼすのは、電線13の屈曲回数が大きく屈曲半径が小さいことである。逆に言えば、屈曲回数を減らし屈曲半径を大きくすれば、電線13の寿命を延ばすことができる。
【0018】
本願発明は、屈曲回数と屈曲半径に悪影響を及ぼさない箇所で電線13を固定することで、屈曲回数減と屈曲半径大を実現する。詳しくは、電線13を、ヘッドアタッチメント3を取付ける手首部(手首第1軸~手首第3軸)5の回転軸と、
(1)平行なアームには固定しない。
(2)同じ直線上になる回転軸を持つアームであって、手首部(手首第1軸~手首第3軸)5の回転方向と逆に回転することが可能なアームには固定しない。
(3)同じ直線上になる回転軸を持つアームであって、手首部(手首第1軸~手首第3軸)5の回転方向と同一回転方向であっても位相差が発生するアームには固定しない。
【0019】
前記(1)~(3)のアームに電線13を固定すると、電線13の屈曲回数が大きく屈曲半径が小さくなるので、電線13の断線につながる。したがって、多関節ロボット1の上部アーム6や下部アーム8を避けて(アームから離間して)、電線13の中間部を固定ないし支持することで屈曲回数減と屈曲半径大を実現し、電線13の寿命を延ばすようにしている。
【0020】
●インクジェットヘッド
本実施形態では、エンドエフェクタ2として例えば
図2のインクジェットヘッド20を使用することができる。この
図2を用いて、一般に知られたピエゾ素子を使用したインクジェットヘッド20の概略について説明する。インクジェットヘッド20はピエゾ素子22を有し、このピエゾ素子22に駆動機構部23を介してニードル21が取付けられている。
【0021】
インクジェットヘッド20には8本のニードル21が搭載されている。各ニードル21はピエゾ素子22を駆動源とし、ピエゾ素子22の伸縮振動が駆動機構部23を介してニードル21に
図2の左右動として伝達される。
【0022】
ピエゾ素子22に電圧を加えるための正極用電線24aと負極用電線24bの2本の電線が取付けられている。これら電線24a、24bを介してピエゾ素子22に電圧を印加することによりピエゾ素子22が圧縮・伸長する。この圧縮・伸長により、当該圧縮・伸長方向に取付けられたニードル21が移動される。
【0023】
一方、ニードル21を収容した液室26の一端に対して、入口パイプ25aから高圧塗料が供給されるようになっている。液室26に供給された塗料は、液室26の反対側の出口パイプ25bから出ていくようになっている。
【0024】
液室26のニードル21の先端が当たる面には、ノズル状の塗料吐出口27が形成されている。ニードル21が
図2の左右方向に駆動(往復動)されることにより吐出口27が開閉し、吐出口27の開時に液室26内の高圧塗料が吐出口27から外部に吐出される。
【0025】
インクジェットヘッド20は電線引出し口28を有する。この電線引出し口28から電線24a、24bがヘッド外に引き出される。
【0026】
電線引出し口28にはシーリング材29が充填されている。シーリング材29によってヘッド内部が外部と遮断され、これによりインクジェットヘッド20の耐圧防爆性が担保されている。
【0027】
耐圧防爆性の基準を満たすため、電線24a、24bを電線保護管である金属製のコンジット24dに通すことが要求される場合もある。この場合、コンジット24dの一端が、インクジェットヘッド20の電線引出し口28に取付けられるコンジットフィッチング24cによって、電線引出し口28に固定される。
【0028】
コンジット24dを使用するとエンドエフェクタ2の重量増となり多関節ロボット1の作動性に影響する。またコンジット24dによって電線のフレキシビリティが低下するので電線接続性も悪くなる。
【0029】
コンジット24dを使用しない場合は、コンジット24d以外の何らかの方法で電線24a、24bを外部から受けるダメージより保護する必要がある。ところで、インクジェットヘッド20の1つの吐出口27から1回の開時に吐出する塗料の量は数nl(ナノリットル)程度と微量である。このため、例えば自動車の車体等の塗装で要求される、単位時間あたりの塗装面積に対応するために、吐出口27の数を増やすことが行われている。
【0030】
詳細は省略するが、一般の塗装に要求される単位時間あたりの塗装面積を満足するために、
図2に示すヘッドは6台以上必要となることが一般的である。つまり、インクジェットヘッド20をエンドエフェクタ2として仮に6台搭載した場合、96本の電線(2本x8素子x6台)がインクジェットヘッド20から引き出されることになる。この引き出される電線の本数は、一般的に知られている静電塗装用の塗装ガンから引き出される電線本数(2~3本)と比較して格段に多い。
【0031】
静電塗装用塗装ガンは電線本数が少ないため、塗装ガンの交換作業性は特に問題とならない。塗装ガンの電線長さが仮に8m程度であるとしても、電線自体の重量も軽いため塗装ガンの交換作業性が著しく悪化することはない。
【0032】
しかし、インクジェットヘッド20は引き出される電線本数が格段に多いため、電線本数がヘッドの交換作業性を著しく悪化させる要因となる。本実施形態は、電線本数が多いヘッドの交換作業性を向上する。
【0033】
●ヘッドアタッチメントと接続箱
図3Aは、ヘッドアタッチメント3と接続箱4の組立斜視図である。また、
図3Bは
図4のヘッドアレイユニットをヘッドアタッチメント3へ取り付ける状態を示している。ここでヘッドアレイユニットとは、
図4のように複数ヘッドが一体化されたインクジェットヘッド20のことをいう。
【0034】
ヘッドアタッチメント3は箱状の筐体を有する。
図3A、
図3Bではヘッドアタッチメント3の内部を示すため筐体前壁を省略している。
【0035】
ヘッドアタッチメント3は、筐体側面に固定された円柱状の取付け部3aを介して、上部アーム6の先端の手首部5に取付けられる。ヘッドアタッチメント3の上面には、接続箱4が配設される。
【0036】
ヘッドアタッチメント3内には、複数のインクジェットヘッド20が搭載される。各インクジェットヘッド20は、
図4のようにそのノズル側がヘッドアレイホルダ3bに一体化されてヘッドアレイユニットを構成している。
【0037】
図4(a)(b)は、ヘッドアレイユニットの実施形態を示す一例である。複数(図示例は6つ)のインクジェットヘッド20が、板状のヘッドアレイホルダ3b上に一列状(アレイ状)で一体化されている。
【0038】
インクジェットヘッド20から引き出された電線は、面板41の上面から立ち上がったポッド部41aに挿通・支持されている。面板41は、インクジェットヘッド20の上方においてヘッドアレイホルダ3bと平行に配設されている。
【0039】
インクジェットヘッド20個々の位置調整は、ヘッドアレイホルダ3bに対する取付け時に実施することができる。ヘッドアレイホルダ3bは、インクジェットヘッド20を接続箱4内に搭載後、ヘッドアタッチメント3の下側開口に固定されてヘッドアタッチメント3の一部を構成する。
【0040】
図4(a)では6個のポッド部41aがある大形の面板41を使用しているが、各ヘッドアレイユニットに
図4(b)のように1つのポッド部42aを有する小形の面板42を6つ使用する構成も可能である。小形の面板42を使用する場合は、接続箱4の底板4bに当該小形の面板42に対応した大きさの小形の切欠き孔(開口部)を複数形成することができる。小形の切欠き孔を形成することにより接続箱4の耐圧防爆性を向上することができる。
【0041】
ヘッドアレイホルダ3bは、インクジェットヘッド20の数によって、
図3Aのように1枚で構成したり
図3Bのように2枚以上の複数枚で構成したりすることができる。ヘッドアレイホルダ3bは、ヘッドアレイユニットをヘッドアタッチメント3の下側開口からヘッドアタッチメント3内に収容した状態で、ヘッドアタッチメント3の下側開口の縁部に固定される。この状態でヘッドアレイホルダ3bはヘッドアタッチメント3の一部となる。
【0042】
接続箱4の上板4aに、ロボット側の制御盤14から引き回された電線(集約電線)13を6分割した電線(集約電線)13Aが接続されている。接続箱4の内部には、左右側板4c間に掛け渡されたディンレール50が配設されている。
【0043】
このディンレール50に、既知のプッシュ式の2段端子台51が複数台取り付けられている。各電線(集約電線)13Aは多数本の個別電線13Bとして端子台51の上端に着脱可能に接続されている。
【0044】
なお、制御盤14からくる電線は電線13(13A、13B)だけではない。
図3A、
図3Bには制御盤14からくる電線として電線13A、13Bのみ示しているが、実際には他の電線も存在する。
【0045】
一方、ポッド部41aから立ち上がった電線24a、24bの上端部は、接続箱4内の端子台51の下端に着脱可能に接続される。この端子台51により、制御盤14からくる電線13Aの個別電線13Bと、ヘッド側の電線24a、24bとが接続される。
【0046】
ディンレール50ないし端子台51の下側の接続箱4の底板4bに、開口部としての矩形状の切欠き孔4dが左右一対で形成されている。当該切欠き孔4dを通して、ポッド部41aから立ち上がった電線24a、24bの上端部が接続箱4内に引き込まれ、端子台51の下端に着脱可能に接続される。
【0047】
●ヘッドアレイユニットの取り付け
ヘッドアタッチメント3に対するヘッドアレイユニットの取り付けは、ヘッドアレイユニット全体を
図3Bの矢印方向に持上げることで行う。そして面板41を接続箱4の切欠き孔4dを塞ぐようにして接続箱4に着脱可能に取付ける。面板41が接続箱4と一体化されることで接続箱4の耐圧防爆性を向上することができる。
【0048】
次に、ヘッドアレイホルダ3bをヘッドアタッチメント3の下端開口部を塞ぐように着脱可能に取付ける。面板41とヘッドアレイホルダ3bの取り付け順は逆でも構わない。そして、ヘッド側の電線24a、24bの上端に取り付けられた棒端子(又はフェルール端子)43を端子台51に差し込む。
【0049】
ここで、接続箱4と端子台51は所定の防爆規格(例えば工場電気設備防爆指針による電気機械器具防爆構造規格)を満足するものを使用することができる。接続箱4と端子台51に防爆性が要求されない場合は、面板41を省略したり、端子台51を代用品としての一般的な産業用コネクタに置き換えたりすることができる。
【0050】
接続箱4内の端子台51に対してインクジェットヘッド20の電線24a、24bを接続することで、電線24a、24bをロボット1のアーム6、8に沿って艤装する作業を省略することができる。また、電線24a、24bの接続部(端子台51)を安全増防爆対応の接続箱4内に配置する場合は所定の防爆規格を満足することができる。このように、エンドエフェクタ2の交換単位(ヘッドアレイユニット)に、接続箱4の一部(切欠き孔4dや端子台51)と協働して所定の防爆規格を満足する構成(面板41や棒端子43)を備えることで、エンドエフェクタ2の交換性を向上することができる。
【0051】
●ヘッドアレイユニットの取り外し
ヘッドアレイユニットをヘッドアタッチメント3から取り外すには、先ず、ヘッドアタッチメント3の筐体前板を
図3Bのように取外す。そして、棒端子43を全て端子台51より抜き取る。次に面板41を接続箱4から取り外す。
【0052】
そして、ヘッドアタッチメント3からヘッドアレイホルダ3bを取り外す。これで、ヘッドアレイユニットをヘッドアタッチメント3から取り外すことができる。
【0053】
●接続箱に対する面板の固定状態
図5を参照して、接続箱4に対する面板41の固定状態について説明する。面板41には、インクジェットヘッド20から引き出された電線24a、24bを接続箱4内に引き込むための引き込み孔41bが6個形成されている。
【0054】
各引き込み孔41bは、面板41の内面から接続箱4内に突出したポッド部41aの孔と連通している。面板41は
図3Bに示す切欠き孔4dを閉塞するように接続箱4の底板4bに着脱可能に固定される。
【0055】
図5は、引き込み孔41b(6箇所)が形成された面板41が2枚で接続箱4に取り付けられている図である。
図5では1枚の面板41に対して6個の引き込み孔41bがある構成を示しているが、1枚の面板41に設ける引き込み孔41bの数は任意である。
【0056】
また、面板41の形状は面を構成するもの(板状)であれば必ずしも四角形である必要はない。面板41の形状は本発明には影響しないので円形等でも良い。
【0057】
図4のヘッドアレイユニットにおいて、ヘッド20から引き出された電線24a、24bは面板41上に形成されたポッド部41aに引き込まれている。ポッド部41aには防爆規格を満たすためにシーリング材が充填される。このシーリング材によって接続箱4の内部を外部から遮断し、外部から接続箱4内への爆発性雰囲気の流入を阻止する。
【0058】
電線24a、24bの先端(上端)には棒端子43が取付けられている。棒端子43は接続箱4内の端子台51に接続される。
【0059】
図4のヘッドアレイユニットの構成を採用することにより、ヘッド単独の交換時に発生する電線孔通し作業、シーリング作業、コンジット24d、コンジットフィッチング24cの取り付け作業等を予め済ませておくことができる。これにより、ヘッド交換時間を短縮して作業性を向上することができる。なお、電線24a、24bが何らかの形で防護されていれば、コンジット24dやコンジットフィッチング24cの取付け作業は不要である。
【0060】
●第2実施形態
図6は本発明の第2実施形態に係る多関節ロボット1の概略図である。この
図6は、
図1の構成に、電線固定部12Bと伸縮部材15を追加したものである。
【0061】
電線固定部12Bは全体としてL字状であり、旋回部7の上面に立設されている。電線固定部12Bの上部は上部アーム6の方向に水平に張出している。
【0062】
この水平に張出した先端に、伸縮部材15の上端部が連結されている。伸縮部材15の下端部は、電線13の中間部の弛み部13aが被塗装物16に触れないように弛み部13aに連結されている。
【0063】
電線13の中間部の弛み部13aの弛み量は、電線固定部12Bと電線引出し部11との間の距離により決まるが、この距離は回転軸J1、J2、J3の動作により変わる。当該距離の最大変化に対応して、伸縮部材15の長さや電線固定部12Bの高さを設定することができる。
【0064】
電線固定部12Bと電線引出し部11との間の距離が最短になった場合、電線13の弛み量は最大になる。この場合でも、弛み部13aが被塗装物16に触れないように、伸縮部材15の長さや電線固定部12Bの高さを設定することができる。伸縮部材15の伸縮により、回転軸J1、J2、J3の動作によるエンドエフェクタ2の移動を妨げない構成になっている。
【0065】
●第3実施形態
図7は本発明の第3実施形態に係る多関節ロボット1の概略図である。この
図7は、多関節ロボット1の基台10の側方に電線固定部12Cを立設し、当該電線固定部12Cの上端部に電線13の中間部を固定するようにしたものです。
【0066】
電線固定部12Cを多関節ロボット1の外側に配設したことが特徴である。多関節ロボット1に制限重量がある場合、電線固定部12Cによって多関節ロボット1に制限重量を緩和することができる。
【0067】
●第4実施形態
図8は本発明の第4実施形態に係る多関節ロボット1の概略図である。この実施形態も、多関節ロボット1の基台10の側方に電線固定部12Dを立設している。多関節ロボット1に制限重量がある場合、電線固定部12Cによって多関節ロボット1に制限重量を緩和することができる。
【0068】
電線固定部12Dは全体としてL字状であり、電線固定部12Dの上部は上部アーム6の方向に水平に張出している。この水平に張出した先端に、伸縮部材15の上端部が連結されている。
【0069】
伸縮部材15の下端部は、電線13の中間部の弛み部13aが被塗装物16に触れないように弛み部13aに連結されている。すなわち、
図8の本発明の第4実施形態は、
図6の第2実施形態と
図7の第3実施形態の組合せに相当する。
【0070】
●まとめ
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば本発明は、6軸の垂直多関節ロボットの他、5軸以下又は7軸以上の多関節ロボットにも適用可能である。
【0071】
また本発明の多関節ロボットは手術用ロボットにも適用可能であり、この場合のエンドエフェクタ2は例えば
図9(a)(b)に示す鉗子102である。
図9(a)は手術用ロボットのアーム101の遠位端に取付けられた鉗子102、102の斜視図である。
図9(b)は鉗子102の拡大図である。
【0072】
各鉗子102、102は関節部103、103を介してアーム101の遠位端に連結されている。関節部103、103は複数の関節を有し自在に屈曲可能とされている。アーム101の遠位端には関節部103、103の他に内視鏡104も連結されている。この内視鏡104で鉗子102、102の状態をモニタすることができる。
【0073】
関節部103は
図9(b)のように鉗子操作電線103aとトルク伝達チューブ103bを有する。鉗子操作電線103aをその延在方向に移動(往復動)させることで鉗子102を開閉することができる。また、トルク伝達チューブ103bを回動させることによって関節部103の先端の手首部としての手首関節を回動することができる。
【0074】
鉗子操作電線103aとトルク伝達チューブ103bは、
図1、
図6~
図8と同様にアーム101の遠位端に設けられた電線引出し部から引出され、エンドエフェクタ制御盤としての鉗子制御盤に接続される。鉗子操作電線103aとトルク伝達チューブ103bの中間部は、アーム101から離間した電線固定部で支持される。
【0075】
●付記
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
<第1態様>
第1態様は、ロボットアームと、当該ロボットアームの先端に設けられエンドエフェクタと、当該エンドエフェクタを前記ロボットアームの先端に取付けるためのヘッドアタッチメントと、前記エンドエフェクタと地上側に固定配置された制御盤とを接続する電線とを有する多関節ロボットにおいて、前記エンドエフェクタから引き出された前記電線と前記制御盤から引き出された前記電線とを接続するための接続部が、前記ヘッドアタッチメントと一体化されていることを特徴とする多関節ロボットである。
<第2態様>
第2態様は、前記接続部が防爆規格に準拠した接続箱の内部に配設され、当該接続箱が前記ヘッドアタッチメントと一体化されていることを特徴とする第1態様の多関節ロボットである。
<第3態様>
第3態様は、前記接続部が端子台を有し、当該端子台に対して前記エンドエフェクタから引き出された前記電線が着脱可能に接続されることを特徴とする第1態様又は第2態様の多関節ロボットである。
<第4態様>
第4態様は、前記接続箱が前記端子台に臨んで開口した開口部を有し、前記エンドエフェクタから引き出された前記電線が前記開口部を通して前記端子台に対して接続されることを特徴とする第3態様の多関節ロボットである。
<第5態様>
第5態様は、前記エンドエフェクタから引き出された前記電線が当該電線が貫通する面板を有し、当該面板が前記開口部を塞ぐようにして前記接続箱に対して着脱可能に装着されることを特徴とする第4態様の多関節ロボットである。
<第6態様>
第6態様は、前記エンドエフェクタが複数ユニットで構成されると共に、当該複数ユニットから引き出された複数電線が大形の前記面板で保持され、当該大形の面板が前記接続箱に形成された大形の前記開口部に対して着脱可能に装着されることを特徴とする第5態様の多関節ロボットである。
<第7態様>
第7態様は、前記エンドエフェクタが複数ユニットで構成されると共に、当該複数ユニットのそれぞれが小形の前記面板を有し、当該小形の面板が前記接続箱に形成された小形の前記開口部に対して着脱可能に装着されることを特徴とする第5態様の多関節ロボットである。
<第8態様>
第8態様は、第1態様から第7態様のいずれか1の態様の多関節ロボットにおいて、前記エンドエフェクタがインクジェットヘッドで構成されていることを特徴とする塗装用多関節ロボットである。
<第9態様>
第9態様は、前記電線の中間部を支持する電線固定部を、前記ロボットアームから離間した位置に配設したことを特徴とする第1態様から第8態様のいずれか1の態様の多関節ロボットである。
<第10態様>
第10態様は、前記多関節ロボットが、基台と、当該基台上に配設された旋回ベースと、当該旋回ベース上に配設された下部アームと、当該下部アームの上端部に配設された旋回部と、当該旋回部に配設された上部アームと、当該上部アームの先端に配設された手首部と、当該手首部に配設されたエンドエフェクタとを有することを特徴とする第1態様から第8態様のいずれか1の態様の多関節ロボットである。
<第11態様>
第11態様は、前記旋回ベースに前記電線固定部が配設されていることを特徴とする第10態様の多関節ロボットである。
<第12態様>
第12態様は、前記電線固定部に伸縮部材の一端が連結されると共に、当該伸縮部材の他端が、前記エンドエフェクタと前記電線固定部との間の前記電線の中間部に連結されていることを特徴とする第11態様の多関節ロボットである。
<第13態様>
第13態様は、前記基台の側方に前記電線固定部が立設されていることを特徴とする第10態様の多関節ロボットである。
<第14態様>
第14態様は、前記電線固定部に伸縮部材の一端が連結されると共に、当該伸縮部材の他端が、前記エンドエフェクタと前記電線固定部との間の前記電線の中間部に連結されていることを特徴とする第13態様の多関節ロボットである。
<第15態様>
第15態様は、前記エンドエフェクタが、塗装用スプレーガン、スポット溶接用ガン又は手術用鉗子であることを特徴とする第1態様から第14態様のいずれか1の態様の多関節ロボットである。
【符号の説明】
【0076】
1:多関節ロボット 2:エンドエフェクタ
3:ヘッドアタッチメント 3a:取付け部
3b:ヘッドアレイホルダ 4:接続箱
4a:上板 4b:底板
4c:側板 4d:切欠き孔(開口部)
5:手首部 6:上部アーム(基本第3軸)
7:旋回部 8:下部アーム(基本第2軸)
9:旋回ベース(基本第1軸) 10:基台
11:電線引出し部 12A-12D:電線固定部
13:電線(集約電線) 13A:電線(集約電線)
13B:個別電線 13a:弛み部
14:エンドエフェクタ制御盤 15:伸縮部材
16:被塗装物 20:インクジェットヘッド
21:ニードル 22:ピエゾ素子
23:駆動機構部 24a:正極用電線
24a、24b:電線 24b:負極用電線
24c:コンジットフィッチング 24d:コンジット
25a:入口パイプ 25b:出口パイプ
26:液室 27:吐出口
28:電線引出し口 29:シーリング材
41、42:面板 41a、42a:ポッド部
41b:引き込み孔 43:棒端子(又はフェルール端子)
50:ディンレール 51:端子台(接続部)
101:アーム 102:鉗子
103:関節部 103a:鉗子操作電線
103b:トルク伝達チューブ 104:内視鏡
J1~J6:回転軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開2015-58515号公報
【特許文献2】特開2004‐1177号公報