IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2026.8.2 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -熱発電電池 図1
  • -熱発電電池 図2
  • -熱発電電池 図3
  • -熱発電電池 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】
(43)【公開日】
(54)【発明の名称】熱発電電池
(51)【国際特許分類】
   
   
   
【FI】
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】
(21)【出願番号】
(22)【出願日】
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信靖
(72)【発明者】
【氏名】椎 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】吉田 京平
(72)【発明者】
【氏名】石本 仁
【テーマコード(参考)】
【Fターム(参考)】
5H032AA08
5H032CC01
5H032CC09
5H032CC16
5H032CC17
5H032EE04
(57)【要約】
【課題】電解質層の厚さの変化に伴う性能低下を抑制する観点から有利な熱発電電池を提供する。
【解決手段】熱発電電池1aは、熱発電体10、第一部材21、第二部材22、絶縁部材30、加圧部材40、及び弾性部材50を備える。熱発電体10は、熱電変換層13と、電解質層14とを備えており熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。熱電変換層13は、電子熱励起層11及び電子輸送層12を備えている。電子熱励起層11では、熱により励起電子が生じる。加圧部材40は、電解質層14を厚み方向に加圧する。弾性部材50は、電解質層14と同一平面に沿って配置されており、電解質層14の厚み方向に垂直な方向における熱膨張によって圧縮変形可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項
熱により励起電子が生じる電子熱励起層及び電子輸送層を含む熱電変換層と、前記熱電変換層と積層された電解質層とを備え、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電体と、
導電性を有する第一部材と、
導電性を有し、前記第一部材と電気的に絶縁されており、前記第一部材とともに前記熱発電体を収容するケースを構成する、第二部材と、
前記電解質層の厚み方向に垂直な方向において、前記第一部材又は前記第二部材と、前記電解質層及び前記熱電変換層とを電気的に絶縁する絶縁部材と、
前記熱発電体と前記第一部材とを電気的に接続し、かつ、前記電解質層を厚み方向に加圧する加圧部材と、
前記電解質層と同一平面に沿って配置されており、前記電解質層の厚み方向に垂直な方向における熱膨張によって圧縮変形可能な弾性部材と、を備えた、
熱発電電池。
【請求項
複数の前記熱発電体が積層されている、
請求項1に記載の熱発電電池。
【請求項
前記弾性部材は、空洞及び異方弾性を有するポリマー材料からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の熱発電電池。
【請求項
前記弾性部材は、平面視において前記電解質層の周囲に配置されている、又は、前記弾性部材の周囲が前記ケースの内面に接するように配置されている、
請求項1に記載の熱発電電池。
【請求項
前記電解質層は、固体電解質、ゲル電解質、又は電解液を含む、
請求項1に記載の熱発電電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本開示は、熱発電電池に関する。
【背景技術】
従来、熱を利用して発電がなされる熱発電電池が知られている。
特許文献1には、熱電変換層及び固体電解質層が積層された複数の熱利用発電素子を含み、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電体を備えた、熱発電電池が記載されている。この熱発電電池は、熱発電体に加えて、導電性のケースと、絶縁部材と、圧縮導電体とを備えている。熱電変換層は、電子熱励起層及び電子輸送層を有する。圧縮導電体は、ケースに収容され、熱発電体及びケースに挟まれて圧縮される。これにより、熱発電体へ不要な圧力が印加されることが防止され、熱発電体の破損が抑制される。
特許文献2には、熱励起電子及び正孔を生成する半導体を含む第1部分、電荷輸送イオン対が移動できる電解質を含む第2部分、及び電極となる物質を含む第3部分が、この順番で接している熱電発電素子を含む電池が記載されている。この熱電発電素子において、第1部分の半導体の価電子帯電位が電荷輸送イオン対の酸化還元電位よりも正である。第1部分及び第2部分の界面で2つのイオンのうち、より酸化されやすいイオンの酸化反応が生じ、第3部分及び第2部分の界面で2つのイオンのうち、より還元されやすいイオンの還元反応が生じる。この熱電発電素子は温度勾配を必要としない。第1部分及び第3部分の最短距離L及びイオン拡散厚IDTは所定の条件を満たしている。特許文献2において、半導体と電極との間の電解質の厚みを電解質に応じて、最適化することによって、電池特性が改善することを見出されたと説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献】特開2020-108315号公報
【特許文献】国際公開第2022/191101号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特許文献の記載は、電解質層の厚さの変化に伴う性能低下を抑制する観点から再検討の余地を有する。そこで、本開示は、電解質層の厚さの変化に伴う性能低下を抑制する観点から有利な新規の熱発電電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
本開示は、
熱により励起電子が生じる電子熱励起層及び電子輸送層を含む熱電変換層と、前記熱電変換層と積層された電解質層とを備え、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電体と、
導電性を有する第一部材と、
導電性を有し、前記第一部材と電気的に絶縁されており、前記第一部材とともに前記熱発電体を収容するケースを構成する、第二部材と、
前記電解質層の厚み方向に垂直な方向において、前記第一部材又は前記第二部材と、前記電解質層及び前記熱電変換層とを電気的に絶縁する絶縁部材と、
前記熱発電体と前記第一部材とを電気的に接続し、かつ、前記電解質層を厚み方向に加圧する加圧部材と、
前記電解質層と同一平面に沿って配置されており、前記電解質層の厚み方向に垂直な方向における熱膨張によって圧縮変形可能な弾性部材と、を備えた、
熱発電電池を提供する。
【発明の効果】
本開示によれば、電解質層の厚さの変化に伴う性能低下を抑制する観点から有利な新規の熱発電電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図図1は、本開示の熱発電電池の一例を示す断面図である。
【図図2は、電解質層及び弾性部材の一例を示す平面図である。
【図図3は、電解質層が熱膨張するときの電解質層及び弾性部材を示す平面図である。
【図図4は、電解質層及び弾性部材の別の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
(本開示の基礎となった知見)
熱により生じる励起電子及び電解質での酸化還元反応を利用する熱発電電池は、温度差がなくても発電可能であり、様々な用途での活用が期待される。特に、熱電変換層及び電解質層を備える熱発電体がケースに収容された電池は、このような熱発電電池の用途を広げる可能性を有する。
特許文献1に記載の熱発電電池では、熱発電体及びケースに挟まれた圧縮導電体の変形によって、圧縮導電体を介してケースから熱発電体に加わる圧力を低減でき、熱発電体の破損を抑制できる。熱発電体の温度が上昇すると、電解質層は熱膨張しうる。圧縮導電体は、ケースから熱発電体に加わる圧力を低減できるので、電解質層の熱膨張に伴い生じる圧力も低減するように変形しうると考えられる。この場合、電解質層の厚みは増加しうる。特許文献2によれば、電解質層の厚みは熱発電電池の性能に大きな影響を及ぼしうる。このため、電解質層の熱膨張に伴い電解質層の厚みが増加すると、熱発電電池の性能が低下する可能性がある。
そこで、本発明者らは、熱発電体の温度が上昇して電解質層の熱膨張が生じても、電解質層の厚みが変化しにくい構成を実現できないか日夜検討を重ねた。その結果、電解質層を厚み方向に加圧して電解質層の厚み方向に熱膨張が生じにくくすることが重要であることが新たに分かった。加えて、電解質層の厚み方向に垂直な方向に電解質層の熱膨張を許容する弾性部材を設けることによって、熱発電体の温度が上昇しても電解質層の厚みが変化しにくいことを新たに見出した。本発明者らは、この新たな知見に基づいて、本開示の熱発電電池を完成させた。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。よって、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、及び接続形態等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状および寸法比等については正確な表示ではない場合がある。
(実施形態)
図1は、本開示の熱発電電池の一例を示す断面図である。図1に示す通り、熱発電電池1aは、熱発電体10と、第一部材21と、第二部材22と、絶縁部材30と、加圧部材40と、弾性部材50とを備えている。熱発電体10は、熱電変換層13と、電解質層14とを備えており、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。熱発電体10において、熱電変換層13及び電解質層14は積層されている。熱電変換層13は、電子熱励起層11及び電子輸送層12を備えている。電子熱励起層11では、熱により励起電子が生じる。加えて、電子熱励起層11では、励起電子と対になって正孔が生じる。電子熱励起層11は、例えば、電解質層14に接している。
電子熱励起層11で生じた正孔は、電子熱励起層11と電解質層14との界面において、電解質層14に含まれるイオンMm+を酸化する。これにより、イオンMm+がイオンMn+になる。ここで、m及びnは正の整数であり、n>mの条件が満たされる。例えば、n=m+1の条件が満たされる。電子熱励起層11で生じた励起電子は、電子輸送層12に移動する。電子輸送層12において電子が過剰になると、電子が熱発電体10の外部に移動し、熱発電電池1aの外部の電気抵抗(図示省略)を通過して電解質層14に到達する。電解質層14に到達した電子は、電解質層14におけるイオンMn+を還元する。これにより、イオンMn+がイオンMm+になる。イオンMn+の還元により生じたイオンMm+は、電子熱励起層11と電解質層14との界面に向かって拡散する。このような熱による励起電子の生成と、電解質層14に含まれる電解質に由来する酸化還元反応とが起こることによって、熱発電体10が熱エネルギーを電気エネルギーに変換して発電がなされる。
図1に示す通り、熱発電電池1aにおいて、例えば、複数の熱発電体10が積層されている。熱発電電池1aは、1つのみの熱発電体10を備えていてもよい。図1に示す通り、熱発電体10同士の間に集電体は配置されていない。このような場合でも、熱発電電池1aは、所望の性能を発揮できる。熱発電体10同士の間に集電体が配置されていてもよい。例えば、互いに隣接する2つの熱発電体10において、一方の熱発電体10の電子輸送層12を通過した電子が他方の熱発電体10の電解質層14に供給されうる。
電子熱励起層11は、その厚み方向において、電子輸送層12と電解質層14との間に配置されている。電子熱励起層11は、熱により励起電子が生じる限り特定の層に限定されない。電子熱励起層11は、例えば、所定の熱電変換材料を含んでいる。熱電変換材料の例は、Si及びGe等の金属半導体、テルル化合物半導体、シリコンゲルマニウム化合物半導体、シリサイド化合物半導体、スクッテルダイト化合物半導体、クラスレート化合物半導体、ホイスラー化合物半導体、ハーフホイスラー化合物半導体、金属酸化物半導体、及び有機半導体である。電子熱励起層11は、熱電変換材料としてゲルマニウム(Ge)を含んでいてもよい。この場合、比較的低温の熱により多数の励起電子が生じやすい。電子熱励起層11は、バインダ、焼結助剤、及び添加剤等を含んでいてもよい。バインダは、熱電変換材料を結合させる。焼結助剤は、熱電変換材料を含む電子熱励起層11の前駆体の成形を補助する。電子熱励起層11は、例えば、スキージ法、スクリーン印刷法、放電プラズマ焼結法、圧縮成形法、スパッタリング法、真空蒸着法、化学気相成長(CVD)法、及びスピンコーティング等の方法によって形成される。
電子輸送層12は、上記の通り、電子熱励起層11で生成された励起電子を熱発電体10の外部へ輸送する。電子輸送層12は、例えば、所定の電子輸送材料を含んでいる。電子輸送材料は、その伝導帯電位が熱電変換材料の伝導帯電位と同じかそれよりも正である材料である。電子輸送材料の伝導帯電位と、熱電変換材料の伝導帯電位との差は、例えば0.01V以上0.1V以下である。電子輸送材料の例は、半導体材料、金属材料、及び電子輸送性有機物等である。電子輸送層12は、例えば、スキージ法、スクリーン印刷法、放電プラズマ焼結法、圧縮成形法、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、及びスピンコーティング等の方法によって形成される。
電子輸送材料としての半導体材料の例は、例えば、電子熱励起層11に含まれる半導体材料として例示した半導体と同じである。電子輸送材料としての金属含有材料は、例えば金属、合金、N型金属酸化物、N型金属硫化物、ハロゲン化アルカリ金属、及びアルカリ金属等である。N型金属酸化物又は硫化物に含まれる金属の例は、ニオブ、チタン、亜鉛、錫、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、及びマンガンである。電子輸送性有機物の例は、N型導電性高分子、N型低分子有機半導体、及びπ電子共役化合物等である。電子輸送層12は、複数の電子輸送材料を含んでもよい。電子輸送層12は、電子輸送材料以外の材料を含んでもよい。電子輸送層12は、例えば、電子輸送材料を結合させるバインダ及び電子輸送層12の前駆体の成形を補助する焼結助剤、及び添加剤を含んでもよい。
電子輸送層12は、単層構造を有していてもよいし、多層構造を有していてもよい。例えば、電子輸送層12は、金属層及び半導体層を含む積層体であってもよい。この場合、半導体層が電子熱励起層11に接触していてもよい。金属層に含まれる金属の例は、チタン、金、白金、銀、タングステン、及びタンタルである。この場合、金属層の化学反応が防止されやすい。金属層は、例えば、白金層(Pt層)であり、半導体層はN型Si層であってもよい。N型Si層は、例えば、リン等がドーピングされたシリコン層である。
電解質層14では、例えば、熱発電体10で励起電子が生成される温度で所定の電荷輸送イオン対がその内部を移動できる。上記のイオンMm+及びイオンMn+が電荷輸送イオン対に相当しうる。電解質層14を電荷輸送イオン対が移動することによって、電解質層14に電流が流れる。「電荷輸送イオン対」は、互いに価数が異なる安定な一対のイオンである。一方のイオンが酸化又は還元されると他方のイオンとなる。これにより、電子と正孔とを移動させることできる。電解質層14に含まれる電荷輸送イオン対の酸化還元電位は、電子熱励起層11に含まれる熱電変換材料の価電子帯電位よりも負である。このため、電子熱励起層11と電解質層14との界面では、電荷輸送イオン対のうち、酸化されやすいイオンが酸化され、他方のイオンとなる。電荷輸送イオン対の例は、Fe2+及びFe3+、並びに、Cu+及びCu2+である。なお、電解質層14は、電荷輸送イオン対以外のイオンを含んでもよい。電解質層14は、例えば、スキージ法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、ゾルゲル法、又はスピンコーティングによって形成されうる。
電解質層14に含まれる電解質は、例えば、所望の温度で物理的及び化学的に安定な物質であり、多価イオンを含む。多価イオンの例は、銅イオン及び鉄イオンである。電解質層14は、電解質として、固体電解質、ゲル電解質、又は電解液を含んでいてもよい。
固体電解質の例は、ナトリウムイオン伝導体、銅イオン伝導体、鉄イオン伝導体、リチウムイオン伝導体、銀イオン伝導体、水素イオン伝導体、ストロンチウムイオン伝導体、アルミニウムイオン伝導体、フッ化物イオン伝導体、塩化物イオン伝導体、及び酸化物イオン伝導体である。固体電解質は、例えば、60万以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体である。PEGの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量である。固体電解質がPEGである場合、例えば、銅イオン及び鉄イオン等の多価イオン源が電解質層14に含まれてもよい。電解質層14には、アルカリ金属イオンを含んでいてもよい。この場合、熱発電電池1aの寿命が長くなりやすい。電解質層14は、固体電解質以外の材料を含んでもよい。例えば、電解質層14は、固体電解質を結合させるバインダ及び固体電解質を含む前駆体の成形を補助する焼結助剤などを含んでもよい。
電解質層14が電解液を含む場合、電解液は、セパレータとして機能する、樹脂多孔膜、不織布、及び紙等に含浸されていてもよい。電解液の溶媒は、水であってもよいし、非水溶媒であってもよい。
ゲル電解質の例は、ポリマーゲルである。ポリマーゲルに含まれるポリマーの例は、ポリエチレンオキシド(PEO)系ポリマー、ポリアクリロニトリル(PAN)系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系ポリマー、及びフッ化ビニリデン(VDF)系共重合体である。
上記の通り、熱発電体10は熱エネルギーを電気エネルギーに変換するので、電解質層14の周囲の温度は高くなりうる。このため、電解質層14において熱膨張が生じうる。
第一部材21は、導電性を有する。第二部材22は、第一部材21と電気的に絶縁されており、第一部材21とともに熱発電体10を収容するケース20を構成する。ケース20は、例えば、中空容器である。例えば、第一部材21がケース20の蓋をなしており、第二部材22がケース20の本体をなしている。第一部材21及び第二部材22のそれぞれは、例えば、金属製又は合金製の部材である。合金の例は、オーステナイト系ステンレスである。
第一部材21は、例えば、熱発電電池1aにおける正極及び負極の一方を含む。第一部材21は、例えば、底壁21a及び側壁21bを有する。底壁21aは、例えば、平面視で、円状、楕円状、又は多角形状である。
第二部材22は、例えば、熱発電電池1aにおける正極及び負極の他方を含む。第二部材22の内部には、熱発電体10、絶縁部材30、加圧部材40、及び弾性部材50が収容されている。また、第二部材22の内部には、第一部材21の側壁21bの少なくとも一部が配置されている。第二部材22は、例えば、底壁22a及び側壁22bを有する。底壁22aは、例えば、平面視で、円状、楕円状、又は多角形状である。例えば、複数の熱発電体10に含まれる複数の電子輸送層12において第二部材22の底壁22aに最も近い電子輸送層12は、底壁22aに接触している。
絶縁部材30は、電解質層14の厚み方向に垂直な方向(z軸方向)において、第一部材21又は第二部材22と、電解質層14及び及び熱電変換層13とを電気的に絶縁する。これにより、熱発電電池1aの短絡が防止される。絶縁部材30は、例えば、第一部材21と第二部材22とを電気的に絶縁している。絶縁部材30は、例えば、第一部材21又は第二部材22と熱発電体10の全体を電気的に絶縁している。絶縁部材30は、例えば、ケース20の内部の隙間を埋めている。例えば、絶縁部材30は、第一部材21の側壁の内面に接して配置されており、第二部材22の側壁は、絶縁部材30によって囲まれている。絶縁部材30によって第一部材21の側壁21bと第二部材22の側壁22bとの隙間が封止されている。絶縁部材30は、例えば、耐熱性及び電気的絶縁性を有する樹脂を含む。この樹脂の例は、フッ素含有樹脂である。
加圧部材40は、熱発電体10と第一部材21とを電気的に接続し、かつ、電解質層14を厚み方向に加圧する。加圧部材40は、例えば、導電性を有し、熱発電体10と第一部材21との間に配置されている。加圧部材40は、例えば、金属製又は合金製である。合金の例は、オーステナイト系ステンレスである。
加圧部材40は、例えば、弾性変形可能な部材を含んでいる。このような部材の弾性変形に伴う反発力によって、電解質層14を厚み方向に加圧できる。加圧部材40は、ばねを含んでいてもよい。図1に示す通り、加圧部材40は、例えば、ばね41と、スペーサー42とを含んでいる。ばね41は、例えば、第一部材21の底壁21aの内面に接触した状態で弾性変形している。スペーサー42は、ばね41と熱発電体10との間に配置されており、ばね41の弾性変形により生じた反発力を熱発電体10に対して均一に作用させている。ばね41は、例えば、ばねワッシャーである。
図1に示す通り、加圧部材40と熱発電体10との間には電極板16が配置されている。電極板16の一方の主面はスペーサー42に接触している。電極板16の一方の主面はスペーサー42に接触している。電極板16の他方の主面は、熱発電体10に接触している。電極板16の他方の主面は、電解質層14に接触している。電極板16は、例えば、金属製又は合金製である。スペーサー42が電極板16を兼ねていてもよく、スペーサー42が電解質層14に接触していてもよい。
図2は、電解質層14及び弾性部材50の一例を示す平面図である。図1及び図2に示す通り、弾性部材50は、電解質層14と同一平面(z軸に垂直な平面)に沿って配置されており、電解質層14の厚み方向に垂直な方向における熱膨張によって圧縮変形可能な部材である。弾性部材50は、電解質層14とその厚み方向に重なるように配置されている。
熱発電体10が熱エネルギーを電気エネルギーに変換するときに、電解質層14の周囲の温度は高くなり、電解質層14が熱膨張しようとする。一方、電解質層14の厚み方向に垂直な方向に電解質層14が熱膨張しようとするとき、弾性部材50は圧縮変形可能であるので、電解質層14の厚み方向に垂直な方向に熱膨張しうる。これにより、熱発電体10が熱エネルギーを電気エネルギーに変換するときに、電解質層14の厚みが変化しにくく、熱発電電池1aの性能が低下しにくい。また、電解質層14に生じる熱応力が低くなりやすく、電解質層14の耐久性が高くなりやすい。電解質層14が熱膨張していない場合であっても、電解質層14の厚み方向に垂直な方向に電解質層14がずれることが弾性部材50によって防止されやすい。
図3は、電解質層14が熱膨張するときの電解質層14及び弾性部材50を示す平面図である。図3において、二点鎖線は、電解質層14が熱膨張する前の電解質層14の輪郭を示している。図3に示す通り、電解質層14は、その厚み方向(z軸方向)に垂直な方向に熱膨張し、平面視において直径が大きくなる。一方、電解質層14の熱膨張に伴って、電解質層14の厚み方向に垂直な方向における弾性部材50が圧縮変形してその寸法が減少する。電解質層14の周囲の温度が低下すると、電解質層14の厚み方向に垂直な方向における熱膨張量が少なくなり、弾性部材50の圧縮変形量も少なくなる。
弾性部材50は、電解質層14の厚み方向に垂直な方向において電解質層14に隣接している。弾性部材50は、電解質層14に常時接触していてもよいし、電解質層14の熱膨張量が少ない又は電解質層14が熱膨張してないときに接触していなくてもよい。
弾性部材50は、電解質層14と同一平面に沿って配置されており、電解質層14の厚み方向に垂直な方向における熱膨張によって圧縮変形可能な部材である限り、特定の部材に限定されない。弾性部材50は、例えば、空洞、及び、異方弾性を有するポリマー材料からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいる。この場合、弾性部材50は、電解質層14の厚み方向に垂直な方向における熱膨張によって容易に圧縮変形しやすい。弾性部材50が空洞を有する場合、その空洞は、弾性部材50の外部と連通していてもよいし、密閉空間として形成されていてもよい。弾性部材50は、連続気泡を有する多孔体であってもよい。空洞を有する弾性部材50に含まれる固体材料は、樹脂材料であってもよいし、ゴム材料であってもよい。
異方弾性を有するポリマー材料の例は、所定方向に配向しているフィラーがマトリクスに分散しているポリマー材料である。異方弾性を有するポリマー材料を含む弾性部材50の電解質層14の厚み方向に垂直な方向における圧縮弾性率は、その弾性部材50の厚み方向における圧縮弾性率よりも低い。
図2に示す通り、弾性部材50は、例えば、平面視において電解質層14の周囲に配置されている。このような構成によれば、電解質層14がその厚み方向に垂直な方向に熱膨張するときに、電解質層14の周囲に向かって均一に膨張しやすい。このため、電解質層14の特定の箇所において熱応力が高くなることを防ぎやすい。弾性部材50は、その周囲がケース20の内面に接するように配置されていてもよい。弾性部材50は、例えば、平面視において、電解質層14の形状に適合する開口を有し、その開口に電解質層14が配置されている。
図2に示す通り、例えば、電解質層14は平面視で円状であり、弾性部材50は平面視で円環状である。この場合、平面視において、弾性部材50の中心と電解質層14の中心とは一致していてもよい。電解質層14は、例えば、楕円状又は多角形状であってもよい。
図1及び2に示す通り、弾性部材50は、望ましくは層状である。この場合、電解質層14の厚み方向に垂直な方向における弾性部材50の圧縮変形量が大きくなりやすく、電解質層14の厚み方向に垂直な方向における大きな熱膨張量に対処しやすい。
図4は、電解質層14及び弾性部材50の別の一例を示す平面図である。図4に示す通り、電解質層14は、平面視において弾性部材50の周囲に環状に配置されている。このような構成によれば、平面視における電解質層14の面積が大きくなりやすく、熱発電電池1aの性能を高めやすい。この場合、電解質層14は、平面視において、弾性部材50の形状に適合する開口を有し、その開口に弾性部材50が配置されている。
(付記)
以上の記載より、下記の技術が開示される。
(技術1)
熱により励起電子が生じる電子熱励起層及び電子輸送層を含む熱電変換層と、前記熱電変換層と積層された電解質層とを備え、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電体と、
導電性を有する第一部材と、
導電性を有し、前記第一部材と電気的に絶縁されており、前記第一部材とともに前記熱発電体を収容するケースを構成する、第二部材と、
前記電解質層の厚み方向に垂直な方向において、前記第一部材又は前記第二部材と、前記電解質層及び前記熱電変換層とを電気的に絶縁する絶縁部材と、
前記熱発電体と前記第一部材とを電気的に接続し、かつ、前記電解質層を厚み方向に加圧する加圧部材と、
前記電解質層と同一平面に沿って配置されており、前記電解質層の厚み方向に垂直な方向における熱膨張によって圧縮変形可能な弾性部材と、を備えた、
熱発電電池。
(技術2)
複数の前記熱発電体が積層されている、
技術1に記載の熱発電電池。
(技術3)
前記弾性部材は、空洞及び異方弾性を有するポリマー材料からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
技術1又は2に記載の熱発電電池。
(技術4)
前記弾性部材は、平面視において前記電解質層の周囲に配置されている、又は、前記弾性部材の周囲が前記ケースの内面に接するように配置されている、
技術1から3のいずれか1項に記載の熱発電電池。
(技術5)
前記電解質層は、固体電解質、ゲル電解質、又は電解液を含む、
技術1から4のいずれか1項に記載の熱発電電池。
【産業上の利用可能性】
本開示の熱発電電池は、従来の電池の用途を含む様々な用途で使用可能である。
【符号の説明】
1a 熱発電電池
10 熱発電体
11 電子熱励起層
12 電子輸送層
13 熱電変換層
14 電解質層
20 ケース
21 第一部材
22 第二部材
30 絶縁部材
40 加圧部材
50 弾性部材
【図
【図
【図
【図