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特開2026-139891電極触媒インク、電極触媒層、固体電解質膜からなる膜電極接合体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】
(43)【公開日】
(54)【発明の名称】電極触媒インク、電極触媒層、固体電解質膜からなる膜電極接合体
(51)【国際特許分類】
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
【FI】
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】
(21)【出願番号】
(22)【出願日】
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】坂本 顕士
(72)【発明者】
【氏名】土田 修三
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】関 良平
【テーマコード(参考)】
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA22C
4G169BB04A
4G169BB06B
4G169BC66B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CC32
4G169DA03
4G169EA08
4G169FA03
4G169FB23
4G169FB57
4G169FC10
4J039AD23
4J039AE13
4J039BA06
4J039BA13
4J039BC16
4J039BE01
4J039BE12
4J039EA44
4K011AA69
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
5H018AA06
5H018BB12
5H018EE04
5H018EE12
5H018EE16
5H018EE17
5H018HH00
5H018HH05
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】厚膜の電極触媒層を形成することが可能な塗工インク粘度を増大させた電極触媒インクを提供する。
【解決手段】電極触媒インクは、アイオノマー(A)と、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)と、溶媒(C)と、を含有し、溶媒(C)は、ケトン系溶剤及び水を含み、ケトン系溶剤に対する水の体積比〔水/ケトン系溶剤〕が、0.05以上0.55未満の範囲である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項
アイオノマー(A)と、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)と、溶媒(C)と、を含有し、
前記溶媒(C)は、ケトン系溶剤及び水を含み、前記ケトン系溶剤に対する前記水の体積比〔水/ケトン系溶剤〕が、0.05以上0.55未満の範囲である、電極触媒インク。
【請求項
前記アイオノマー(A)と前記溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra1は、5.5MPa1/2以上13.5MPa1/2未満である、請求項1に記載の電極触媒インク。
【請求項
非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)と前記溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra2は、4.5MPa1/2以上12.5MPa1/2未満である、請求項1に記載の電極触媒インク。
【請求項
前記溶媒(C)のケトン系溶剤は、アセトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、イソホロンである、請求項1に記載の電極触媒インク。
【請求項
前記アイオノマー(A)は、カチオン性官能基を有するフッ素含有ポリマーである、請求項1~4に記載の電極触媒インク。
【請求項
前記電極触媒(B)は、Niである、請求項1~5に記載の電極触媒インク。
【請求項
前記溶媒(C)における、ケトン系溶剤に対する水の体積比〔水/ケトン系溶剤〕は、0.20以上0.35未満の範囲である、請求項1~6に記載の電極触媒インク。
【請求項
アイオノマー(A)と、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)とを含む電極触媒層であって、
前記アイオノマー(A)は、溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra1が、7.5MPa1/2以上10.0MPa1/2未満であって、
前記電極触媒(B)は、前記溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra2が、7.0MPa1/2以上12.0MPa1/2未満である、
電極触媒層。
【請求項
前記電極触媒層の厚みが、10μm以上50μm未満である、請求項8に記載の電極触媒層。
【請求項
請求項1から7のいずれか1項に記載の電極触媒インクを基材の上に塗布する工程と、
塗布した前記電極触媒インクの前記溶剤を乾燥させて、前記アイオノマーと前記電極触媒とからなる電極触媒層を得る工程と、
を含む、電極触媒層の製造方法。
【請求項
固体電解質膜、又は、ガス拡散層である基材と、
前記基材の上に前記基材と物理的及び電気的に接続して設けられた請求項8又は9に記載の電極触媒層と、
を備えた、膜電極接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本開示は、水電解装置の水電解セルの電極触媒層及び燃料電池の膜電極接合体の電極触媒層の形成に用いられる電極触媒インク、電極触媒層、固体電解質膜からなる膜電極接合体に関する。
【背景技術】
従来、燃料電池システムなどにおいて、膜電極接合体の電極触媒層を作製するために、例えば、電極触媒インクを固体電解質膜又はガス拡散層の少なくとも一方の面に塗布及び乾燥して製造する方法が知られている。例えば、特許文献1(特許第5813257号)には、塗膜割れを生じることなく電極触媒層を形成する方法として、添加溶媒のSP値と蒸発速度とを選定する燃料電池用電極触媒インク組成物が開示されている。
電極触媒インクにおいて、触媒及び有機ポリマー等の触媒材料が凝集すると、触媒層の塗膜割れが発生し、これらの結果、電極性能がばらつく、電極触媒の製造コストの増加や電極触媒の生産性低下の懸念がある。そのため、電極触媒インクにおいて、触媒材料の凝集を抑制することが重要である。
また、従来、膜電極接合体の電極触媒層を固体電解質膜又はガス拡散層の少なくとも一方の面に塗布する方法として、スプレー法、ダイコート法、スリットコート法、ディップ法、及びインクジェット法である。これにより、アノード及びカソードの少なくとも一方に電極触媒が含まれた電極触媒層が得られるが、なかでも、特許文献2(特許第4917741号)のようなダイコート法による直接塗布方式が、経済性と電解質膜と触媒層との密着性が得られやすいという利点から工業的に好ましい。
一方、近年カーボンニュートラル実現に向けて、太陽光及び風力等の再生可能エネルギーの利用し、水電解装置を用いたグリーン水素の製造が着目されている。水素を安価かつ安定的に製造するために、高効率かつ長寿命な水電解装置のイノベーションが求められているなか、使用される新たな触媒材料や固体電解質膜の創出が期待されている。水電解方式のなかで、白金やイリジウムに代わる非貴金属系触媒材料を用いたアニオン交換膜型水電解(AEMWE)が期待される。例えば、非特許文献1(R.Wang et al. Int.J.Hydrog. Energy 47(2022))には、非貴金属系触媒材料を活用した触媒層付き固体電解質膜に関する検討結果が提示されている。これらによると、貴金属系触媒に比べて、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒は水電解性能が低いことから、触媒層厚みが、少なくとも貴金属系触媒の約10倍以上の乾燥厚み20~50μm必要であることが示されている。
しかしながら、ダイコート法のよう直接塗布方式で電極触媒インクを固体電解質膜又はガス拡散層の少なくとも一方の面に、乾燥厚み20~40μmで塗布及び乾燥して製造する場合、塗工インク粘度が低いと電極触媒層の膜厚を均一に調節することが困難になる。その結果、電極性能ばらつき、電極触媒の製造コストの増加や電極触媒の生産性低下という問題が発生する。
例えば、特許文献3(特許第5807654号)には、電極触媒インクの触媒及び有機ポリマー等の触媒材料の凝集及び電極触媒インクの増粘を両立させる方法として、触媒インク濃縮工程を設けて、かつSP値12.3以下のアルコールを添加する方法が開示されている。
しかしながら、この方法では、乾燥厚み2~3μmの薄膜塗工の場合では有効な手段ではあるが、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒を乾燥厚み20~40μmの厚膜塗工の場合、電極触媒の分散安定性が不十分で、電極触媒の凝集による電極触媒層のひび割れの発生を十分に抑制することができない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献】特許第5813257号公報
【特許文献】特許第4917741号公報
【特許文献】特許第5807654号公報
【非特許文献】
【非特許文献】R.Wang et al. Int.J.Hydrog. Energy 47(2022)
【非特許文献】JPCC(Journal of Physical Chemistry C) 119(2015)18303
【非特許文献】JACS(Journal of American Chemical Society) 134(2012)17253
【非特許文献】JACS(Journal of American Chemical Society) 135(2013)16977
【非特許文献】JACS(Journal of American Chemical Society) 135(2013)11580
【非特許文献】IJHE(International Journal of Hydrogen Energy) 47(2022)4304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
本開示は、厚膜の電極触媒層を形成することが可能な塗工インク粘度を増大させた電極触媒インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本開示に係る電極触媒インクは、アイオノマー(A)と、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)と、溶媒(C)と、を含有し、溶媒(C)は、ケトン系溶剤及び水を含み、ケトン系溶剤に対する水の体積比〔水/ケトン系溶剤〕が、0.05以上0.55未満の範囲である。
本開示に係る電極触媒層は、アイオノマー(A)と、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)とを含む電極触媒層であって、アイオノマー(A)は、溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra1が、7.5MPa1/2以上10.0MPa1/2未満であって、電極触媒(B)は、溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra2が、7.0MPa1/2以上12.0MPa1/2未満である。
【発明の効果】
本開示に係る電極触媒インクによれば、電極触媒及び有機ポリマー等の電極触媒材料の優れた分散安定性と増粘性を有する電極触媒インクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図】ハンセン空間における、アイオノマーと混合溶剤とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra1と、電極触媒と混合溶剤とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra2とを示す概念図である。
【図】アイオノマー(A)、電極触媒(B)及び溶媒(C)の一例のハンセン溶解度パラメータを示す表1である。
【図】溶媒に対する分散性及び溶解性評価結果の表2である。
【図】実施例1~7、比較例1~3における溶媒(C)の体積比を示す表3である。
【図】実施例1~7、比較例1~3におけるHSP距離Ra1及びRa2を示す表4である。
【図】実施例1~7、比較例1~3における評価結果を示す表5である。
【発明を実施するための形態】
<本開示に至る経緯について>
ダイコート法のように直接塗布方式で電極触媒インクを厚膜塗布及び乾燥して製造する場合、電極触媒インクの触媒材料・有機ポリマーの凝集を抑制することに加えて、電極触媒インクの塗工粘度を制御することも重要である。
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を検討した結果、電極触媒インクに含まれる溶媒に着目し、触媒及び有機ポリマー等の電極触媒材料に対する適切な親和性を有するような溶剤設計されていることが重要であることを突き止めた。そして、凝集抑制と増粘性付与とを実現する溶媒を容易に選定し得ることを見出し、本開示を完成した。
以下、本開示の本実施の形態の概要について説明する。
本実施の形態に係る電極触媒インクは、水電解セルや燃料電池等の膜電極接合体の電極触媒層を作製するために、例えば、電極触媒インクを固体電解質膜又はガス拡散層の少なくとも一方の面に塗布及び乾燥して電極触媒層を製造する際に使用される。つまり、「電極触媒インク」とは、電極触媒用インクである。
第1の態様に係る電極触媒インクは、アイオノマー(A)と、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)と、溶媒(C)と、を含有し、溶媒(C)は、ケトン系溶剤及び水を含み、ケトン系溶剤に対する水の体積比〔水/ケトン系溶剤〕が、0.05以上0.55未満の範囲である。
第1の態様によれば、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)の優れた分散安定性と増粘性を有する電極触媒インクが提供されうる。
本開示の第2の態様に係る電極触媒インクは、上記第1の態様において、アイオノマー(A)と溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra1は、5.5MPa1/2以上13.5MPa1/2未満であってもよい。
第2の様態によれば、優れた分散性をより確実に有する電極触媒層を提供できる。
本開示の第3の態様に係る電極触媒インクは、上記第1又は第2の態様において、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)と溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra2は、4.5MPa1/2以上12.5MPa1/2未満であってもよい。
第3の様態によれば、優れた分散性をより確実に有する電極触媒層を提供できる。
本開示の第4の態様に係る電極触媒インクは、上記第1から第3のいずれかの態様において、溶媒(C)のケトン系溶剤は、アセトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、イソホロンであってもよい。
第4の様態によれば、優れた増粘性をより確実に有する電極触媒を提供できる。
本開示の第5の態様に係る電極触媒インクは、上記第1から第4のいずれかの態様において、アイオノマー(A)は、カチオン性官能基を有するフッ素含有ポリマーであってもよい。
第5の様態によれば、電極触媒層の触媒活性が高く保たれやすい。
本開示の第6の態様に係る電極触媒インクは、上記第1から第5のいずれかの態様において、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)は、Niであってもよい。
第6の様態によれば、電極触媒層は優れた触媒活性をより確実に有しやすい。
本開示の第7の態様に係る電極触媒インクは、上記第1から第6のいずれかの態様において、溶媒(C)における、ケトン系溶剤に対する水の体積比〔水/ケトン系溶剤〕は、0.20以上0.35未満の範囲であってもよい。
第7の様態によれば、より優れた増粘性を有する電極触媒層を提供できる。
本開示の第8の態様に係る電極触媒層は、アイオノマー(A)と、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)とを含む電極触媒層であって、アイオノマー(A)は、溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra1が、7.5MPa1/2以上10.0MPa1/2未満であって、電極触媒(B)は、溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra2が、7.0MPa1/2以上12.0MPa1/2未満である。
第8の様態によれば、電極触媒層が低い過電圧を有しやすい。
本開示の第9の態様に係る電極触媒層は、上記第8の態様において、電極触媒層の厚みが、10μm以上50μm未満であってもよい。
第9の様態によれば、優れた触媒活性と耐久性を確実に有しやすい。
本開示の第10の態様に係る電極触媒層の製造方法は、第1から第7のいずれかの態様に係る電極触媒インクを基材の上に塗布する工程と、塗布した電極触媒インクの溶剤を乾燥させて、アイオノマーと電極触媒とからなる電極触媒層を得る工程と、を含む。
第10の様態によれば、経済性と電解質膜と触媒層との密着性が得られやすい。
本開示の第11の態様に係る膜電極接合体は、固体電解質膜、又は、ガス拡散層である基材と、基材の上に基材と物理的に及び電気的に接続して設けられた第8又は第9の態様に係る電極触媒層と、を備える。
第11の様態によれば、電極触媒層が低い過電圧と耐久性を有する膜電極接合体を得られる。
以下、本開示の実施形態に係る電極触媒インク及びその製造方法、電極触媒層及びその製造方法、並びに、膜電極接合体の詳細について説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る電極触媒インクは、アイオノマー(A)と、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)と、溶媒(C)と、を含有する。溶媒(C)は、ケトン系溶剤及び水を含み、ケトン系溶剤に対する水の体積比〔水/ケトン系溶剤〕が、0.05以上0.55未満の範囲である。このような構成であれば、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)の優れた分散安定性と増粘性を有する電極触媒インクを提供できる。
以下に、この電極触媒インクを構成する構成要素について説明する。
〔アイオノマー(A)〕
上記した通り、電極触媒インクは、アイオノマー(A)を含む。アイオノマー(A)は、イオン伝導性を有する有機ポリマーである。例えば、プロトン伝導性を有していてもよく、アニオン伝導性を有していてもよいが、アニオン伝導性を有しているものが好ましい。
アニオン伝導性を有していると、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)活用したアニオン交換膜型水電解(AEMEW)への展開が可能となる。これにより、電触媒インクを乾燥させることによって得られる電極触媒は、希薄アルカリ溶液及び純水での優れた触媒活性を有することができる。
アイオノマー(A)は、特定の有機材料に限定されない。アイオノマー(A)は、フッ素を含むイオン交換樹脂であってもよく、フッ素を含む有機ポリマーであってもよい。フッ素が含まれていることによって、アイオノマー(A)の熱安定性及び電気化学安定性を向上させることができる。さらに、フッ素が含まれていることによって、電極触媒の耐アルカリ性をより確実に向上させることができる。
アイオノマー(A)は、例えば、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)の表面の少なくとも一部もしくは近傍に存在することで、立体障害効果により非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)の凝集を抑制することができる。また、アイオノマー(A)の等価質量(EW)は、特定の値に限定されない。等価質量とは、カチオン性の官能基1モル当たりのアイオノマー(A)の質量を意味する。アイオノマー(A)の等価質量は、1,100g/mol以下であってもよく、900g/mol以下であってもよい。これにより、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)の凝集がより確実に抑制されうる。その結果、電極触媒インクにおいて、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)及びアイオノマー(A)は、優れた分散性をより確実に有しやすい。アイオノマー(A)の等価質量の下限値は、特定の値に限定されず、500g/molであってもよい。等価質量が小さいほど、溶媒(C)の一つである水との水素結合によるインタラクションが容易に形成され、塗工粘度を増大させることが可能となる。
アイオノマー(A)としては、例えば、プロトン伝導性のアイオノマーとして、スルホン酸基を含有するパーフルオロカーボンポリマーであり、ナフィオン(登録商標)などが挙げられる。ナフィオンは、以下の化学式を有するパーフルオロカーボンポリマーである。
【化
また、アニオン伝導性のアイオノマーとしては、例えば、ポリスチレン,ポリエーテルスルホン,ポリフェニリンあるいは共重合型ポリマーなどの炭化水素系主鎖骨格に,アンモニウムやイミダゾリウムカチオンから成るイオン交換基を付加し,アニオン導電性を付与されている。特に主鎖骨格の疎水部に、ポリアリーレンエーテル鎖、パールルオロアルキル鎖を有することで、アニオン導電性と膜物性がバランスよく発現する。例えば、PAP-BP、PAP-TP(PiperION社製のPiperION Anion Exchange Resin)や、Fumatech社製のFAA-3、Dioxide Materials社製のSustainionや、などが挙げられる。PAP-BPは、以下の化学式を有する。
【化
また、必要に応じて、アイオノマー(A)に、イオン伝導性を有していない有機ポリマーを添加してもよい。この場合であっても、アイオノマー(A)によって生じる立体障害により非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)同士の凝集が抑制されうる。これにより、電極触媒インクにおいて、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)及びアイオノマー(A)は、優れた分散性をより確実に有しやすい。イオン伝導性を有しない有機ポリマーの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
〔非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)〕
上記した通り、電極触媒インクは、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)を含む。非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)は、例えば、水電解セルのアノード又はカソードにおいて、水素及び酸素等のガスの生成反応に対して活性を有する材料である。従来、例えばアノード側は、貴金属触媒であるIrOxが電極触媒として利用されている。しかしながら、IrOxは資源量制約があり高コストのため、現在、代替となる非貴金属系電極触媒の開発が進められている。
非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)は、例えば、NiO、Fe、Ni-Fe系合金、Ni-Al系合金、NiCo、NiFe、NiFeCoOx、MnFeOx、CoFeOx、CuFeOx、CuCoO、CeMnFeO、NiAlMo、CaFe、CaFeO、SrFeO、LaFeO、YFeO、BaFe、Ni/CeO-La/Cなどが挙げられる。特に2種以上の遷移金属を含むものが好ましい。例えば、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Znからなる群より選ばれる少なくとも2つを含む。特に、触媒表面にNiよりも原子番号が小さい遷移金属を含ませるとフェルミレベルが下がって電気化学反応が促進されるので好ましい。例えば、非特許文献2~6では、Ni-Fe系合金、NiCoOx、NiFeOx、NiFeCoOx、MnFeOx、CoFeOx、CuCoOxなどが開示されている。
電極触媒(B)の平均一次粒径は100nm以下であってもよい。好ましくは10~80nmである。平均粒径の下限値は、特定の値に限定されない。また、典型的には、粒子の形状を有する。粒子の形状は、特定の形状に限定されない。その形状の例は、球状、楕円球状、繊維状、及び鱗片状であってよい。
〔溶媒(C)〕
溶媒(C)は、電極触媒インクにおいてアイオノマー(A)と非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)とを分散させる溶媒であるとともに、電極触媒インクの塗工粘度を増大させる溶媒でもある。
溶媒(C)は、水とケトン系溶剤とを含む混合溶媒である。ケトン系溶剤は、例えば、アセトン、MEK、MIBK、MIPK、DEK、DIBK、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロンである。好ましくは、アセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロンであり、更に好ましくは、アセトン、ジアセトンアルコールである。ケトン系溶媒は、これらから選ばれる少なくとも1つのケトン系溶媒のみが用いられてもよく、あるいは複数種類を組み合わせて用いられてもよい。
溶媒(C)において、上記ケトン系溶剤に対する水の体積比〔水/ケトン系溶剤〕を、0.05以上0.55未満にすることで、アイオノマー(A)は、水による水素結合性のネットワークが強固に形成され、特異的な増粘性を得ることができる。また、それとともに、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)と溶媒(C)との親和性が良好に保たれる。本発明者は、上記ケトン系溶剤に対する水の体積比〔水/ケトン系溶剤〕を、0.05以上0.55未満にすることによって、上記の結果、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)の分散安定性が著しく向上することを見出した。更に好ましくは、ケトン系溶剤に対する水の体積比〔水/ケトン系溶剤〕が、0.20以上0.35未満である。
なお、溶媒(C)における、水とケトン系溶剤の各々の含有量は、特定の値に限定されない。また、溶媒(C)の各溶媒は互いに相溶し、相分離していないことが望ましい。そのため、例えば、水とケトン系溶剤以外にも、必要に応じて適宜溶媒を添加してもよい。溶媒としては、極性溶媒が好ましく、アルコール系やグリコール類が好ましい。
[ハンセン溶解度パラメータ(HSP)について]
物質間の溶解特性を表すパラメータとして、ハンセン溶解度パラメータ(以下、「HSP」とも記載する)がある。HSPは、ヒルデブランドの溶解度パラメータを、ロンドン分散力、双極子間力及び水素結合力の3個の凝集エネルギー成分に分割したベクトル量のパラメータを意味する。本開示において、HSPのロンドン分散力に対応する成分を分散項δdと記載し、双極子間力に対応する成分を極性項δpと記載し、水素結合力に対応する成分を水素結合項δhと記載する。各パラメータの単位は、MPa1/2である。
図1は、ハンセン空間における、アイオノマーと混合溶剤とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra1と、電極触媒と混合溶剤とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra2とを示す概念図である。図2は、アイオノマー(A)、電極触媒(B)及び溶媒(C)の一例のハンセン溶解度パラメータを示す表1である。
HSPはベクトル量であるので、例えば、純粋な物質において、同一のHSPの値を有する物質は、ほとんど存在しない。一般的に使用される物質については、HSPのデータベースが構築されている。このデータベースを参照することによって、特定の物質のHSPの値を入手することが可能である。一方、データベースにHSPの値が登録されていない物質の場合、Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)等のコンピュータソフトウェアを用いることによって、物質の化学構造からHSPの値が計算可能である。加えて、複数の物質を含む混合物のHSPの値は、各物質のHSPの値に、混合物全体に対する各物質の体積比を乗じた値の和として算出できる。例えば、溶媒Sa及び溶媒Sbからなる混合溶媒SmのHSPの値は、混合溶媒におけるそれらの溶媒の体積比が溶媒Saの体積:溶媒Sbの体積で表してx:yであるときに、以下の数1により表される。
【数
そこで、アイオノマー(A)及び非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)及び等の触媒材料の凝集を抑制するアイオノマー(A)及び非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)のHSP値及び電極触媒インクに含まれる溶媒(C)のHSP値を用いて、HSP空間におけるアイオノマー(A)と溶媒(C)とのHSP距離Ra1、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)及び溶媒(C)とのHSP距離Ra2を、各々下記式にて算出した。
Ra1=4×(δda-δdc)2+(δpa-δpc)2+(δha-δhc)2
Ra2=4×(δdb-δdc)2+(δpb-δpc)2+(δhb-δhc)2
なお、アイオノマー(A)のHSPの分散項、極性項、水素結合項は、各々δda、δpa、δha、貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)のHSPの分散項、極性項、水素結合項は、各々δdb、δpb、δhb、溶媒(C)のHSPの分散項、極性項、水素結合項は、各々δdc、δpc、δhcである。
その結果、電飾触媒インクにおいて、溶媒(C)が水とケトン系溶剤とを含む場合、前記アイオノマー(A)と前記溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra1は、4.6MPa1/2以上9.9MPa1/2以下であることが好ましい。また、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)と前記溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra2は、3.5MPa1/2以上12.8MPa1/2以下であることが好ましいことがわかった。
これにより、アイオノマー(A)が凝集しにくく、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)とアイオノマー(A)とが吸着してアイオノマー(A)が非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)の表面に存在しやすい。加えて、電極触媒インクにおいて、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)と溶媒(C)との親和性が良好に保たれ、電極触媒インクにおいて、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)が良好に分散しやすい。さらに、電極触媒インクにおいて、アイオノマー(A)は、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)の表面から離れにくい。その結果、電極触媒インクにおいて、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)及びアイオノマー(A)は、優れた分散性をより確実に有しやすいため、優れたアニオン伝導性を確保することができる。
なお、電極触媒インクに含まれている溶媒の種類は、例えば、ガスクロマトグラフィー、質量分析法及び核磁気共鳴法によって定性的かつ定量的に求めることができる。電極触媒インクに含まれている溶媒が複数種類の溶媒を含む混合溶媒である場合、混合溶媒に含まれている各溶媒の含有量の比率も、上記した方法により求めることができる。
電極触媒インクにおける固形分濃度は、固体電解質膜又はガス拡散層の少なくとも一方の面に触媒層を均一に、また、厚膜に形成するという観点から、3~50質量%の範囲が好ましく、5~40質量%の範囲がより好ましく、10~30質量%の範囲が特に好ましい。
〔添加剤〕
電極触媒インクは、必須ではないが、触媒粒子を分散させるための分散剤を含有することができる。分散剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を挙げることができる。これらの中でも、ノニオン界面活性剤が好ましい。また、電極触媒インクは、本開示の効果を阻害しない範囲で、可塑剤、安定剤、密着助剤、保水剤、着色剤等の添加剤を含有することができる。
電極触媒インクの調製方法は、特に限定されず、当該技術分野で公知の方法を用いることができる。例えば、電極触媒粒子を溶媒に混錬して撹拌し、アイオノマーを加えて再度撹拌を行った後、分散装置で分散する方法、あるいは、電極触媒粒子を溶媒に混錬し、アイオノマーを加えて撹拌し、溶媒を更に加えて再度撹拌を行った後、分散装置で分散する方法、などが挙げられる。上記分散装置としては、例えば、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、プラネタリーミキサー、ディゾルバー、超音波分散装置、混練脱泡装置などが挙げられる。
実施の形態1に係る電極触媒インクによれば、電極触媒インクの触媒及び有機ポリマー等の触媒材料の凝集を抑制しつつ、塗工インク粘度を増大させることができる。これにより、この電極触媒インクを固体電解質膜又はガス拡散層の少なくとも一方の面に直接塗布し、膜電極接合体の厚膜の電極触媒層を形成することができる。
(実施の形態2)
〔電極触媒層〕
実施の形態2に係る電極触媒層は、実施の形態1に係る電極触媒インクを用いて形成され、アイオノマー(A)と、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)とを含む固形物である。具体的には、この電極触媒層は、溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra1が、5.5MPa1/2以上13.5MPa1/2未満であるアイオノマー(A)と、溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離Ra2が、4.5MPa1/2以上12.5MPa1/2未満である電極触媒(B)との固形物である。この場合、電極触媒層は、電極触媒インクを用いて形成されているが、溶媒(C)を乾燥によって失っており、電極触媒インクにおける上記溶媒(C)を実質的に含まない。
また、電極触媒層において、アイオノマー(A)の含有量に対する非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)の含有量の質量比〔(B)の質量/(A)の質量)〕は、2.0~20.0の範囲が好ましく、3.0~10.0の範囲が特に好ましい。
これにより、電極触媒層におけるアイオノマー(A)及び電極触媒(B)の分散性が制御され、電解性能、ガス拡散性や耐久性の観点から適切な触媒層の微細構造が形成されるため、低い過電圧を有することができる。
更に、電極触媒層の厚みは、電解性能、ガス拡散性や耐久性の観点から、10~50μmであることが好ましく、20~40μmであることが特に好ましい。
〔電極触媒層の製造方法〕
電極触媒層は、例えば、以下の工程によって形成できる。
(1)実施の形態1に係る電極触媒インクを基材の上に塗布する。基材は、例えば、固体電解質膜であってもよい。
(2)塗布した電極触媒インクの溶剤を乾燥させて、アイオノマーと電極触媒とからなる電極触媒層を得る。
(実施の形態3)
〔膜電極接合体及びその製造方法〕
本実施の形態3に係る膜電極接合体は、固体電解質膜、又は、ガス拡散層である基材と、基材の上に基材と物理的及び電気的に接続して設けられた上記電極触媒層と、を備える。上記電極触媒層は、実施の形態2に係る電極触媒層である。この膜電極接合体は、例えば、プロトン交換膜型の水電解装置、アニオン交換膜型の水電解装置、又はアルカリ隔膜型の水電解装置に使用される。また、この膜電極接合体は、上記の水電解装置において、アノード及びカソードの少なくとも1つに使用されうる。
電極触媒層は、基材となるものに上記電極触媒インクを塗布及び乾燥することで形成される。基材としては、特に制限されるものではないが、例えば、固体電解質膜、又は多孔性カーボンペーパーなどからなるガス拡散層が挙げられる。基材としては、固体電解質膜が、経済性と触媒層との密着性が得られやすいという利点から工業的に好ましい。
固体電解質膜としては、プロトンあるいはアニオン水酸イオンのイオン伝導性を示すものであれば一般に知られているものを用いることができるが、プロトン交換樹脂、アニオン交換樹脂が、良好な性能を与えるために好適に用いられる。プロトン交換樹脂、アニオン交換樹脂共に、炭化水素系高分子から成るもの、フッ素系高分子から成るものの2つに分類されることが多い。耐久性が重視される場合にはフッ素系高分子から成るプロトン交換樹脂、アニオン交換樹脂が適用されるが、近年、環境面から、炭化水素系高分子から成るプロトン交換樹脂、アニオン交換樹脂も適用される。なかでも、電極触媒インクとの界面密着性の観点から、アニオン交換樹脂から構成される固体電解質膜が好ましい。
基材が固体電解質膜である場合、固体電解質膜にスクリーン印刷、ダイコーター塗布などにより上記電極触媒インクを用いた電極触媒層形成用ペーストを適用して電極触媒層を形成させることにより、触媒層付固体電解質膜(CCM)を製造することができる。更に、ガス拡散層を接合することにより、膜-電極接合体を製造することができる。
さらに、該膜電極接合体を用いることにより、水電解装置又は燃料電池を得ることができる。
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本開示の一例であり、本開示は以下の実施例に限定されない。
(実施例)
〔電極触媒インクの原材料〕
一例として、下記に示す原材料を用いて、電極触媒インクを調製した。
アイオノマー(A):
アニオン伝導性アイオノマー:PAP-BP(PiperION社製)
プロトン伝導性アイオノマー:CHF13S・C(Sigma-Aldrich社製)
非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒(B)
NiFeOx触媒:
溶媒(C)
水:純水
ケトン系溶剤:アセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン
アルコール系溶剤:メタノール、エタノール
〔ハンセン溶解度パラメータの算出〕
上記原材料のハンセン溶解度パラメータを表1に示す。データーは公知のデータベースの値を用いた。なお、アニオン伝導性アイオノマー:PAP-BP(PiperION社製)とNiFeOx触媒に関しては、図3の表2に示す溶媒を用いて、Hansen球法で溶解度パラメータを算出した。
なお、図3の表2におけるアイオノマーの溶解性や電極触媒の分散性評価は、下記の通りで実施した。各種の触媒材料0.02gに各種溶媒20mlを添加して調製した分散液を超音波式ホモジナイザーにて超音波処理を行った後、分散液を室温で放置した。電極触媒に関しては、15分以上放置させても沈降しない分散液を「A」と評価した。5分以上15分未満で沈降した分散液を「B」と評価した。また、5分未満で沈降した分散液を「C」と評価した。また、水、アセトン、エタノール各々の溶媒中の平均粒径を、粒度分布測定装置を用いて測定した。その結果、分散性が良好な溶液ほど、粒径サイズが小さいことがわかった。
また、アイオノマーに関しては、目視で、完全溶解して透明であるものを「〇」と評価した。また、目視で完全溶解しなかったものを「×」と評価した。
〔電極触媒インクの調製〕
アイオノマー(A)と電極触媒(B)として、NiFeOx触媒を質量比5:1かつ総質量120mgとなるように混合した。得られた混合物に、図4の表3に示す体積比の混合溶媒を総質量350mg加え、電極触媒インク前駆体を調製した。電極触媒インク前駆体を、湿式微粒化装置を用いて、微細処理することで実施例及び比較例の電極触媒インクを調製した。
なお、実施例1~7及び比較例1~3は、アイオノマー(A)として、PAP-BP(PiperION社製)を使用した。
実施例8のみ、アイオノマー(A)は、CHF13S・C(Nafion)を使用した。
〔HSP距離Ra1及びRa2の算出)
実施例及び比較例に係る電極触媒インクにおいて、溶媒(C)とアイオノマー(A)とのHSP距離Ra1[MPa1/2]、溶媒(C)と電極触媒(B)とのHSP距離Ra2[MPa1/2]を、それぞれ、以下の式(1)及び(2)に従って決定した。HSP距離Ra1及びRa2を図5の表4に示す。
なお、アイオノマー(A)のHSPの分散項δda、極性項δpa及び水素結合項δhaとし、NiO触媒のHSPの分散項δdb、極性項δpb及び水素結合項δhbとし、溶媒(C)のHSPの分散項δdc、極性項δpc及び水素結合項δhcとした。
式(1)
Ra1=4×(δda-δdc)+(δpa-δpc)+(δha-δhc)
式(2)
Ra2=4×(δdb-δdc)+(δpb-δpc)+(δhb-δhc)
〔電極触媒インクの分散性評価〕
実施例及び比較例に係る電極触媒インクにおいて、分散性評価結果を図6の表5に示す。電極触媒インク前駆体を、湿式微粒化装置を用いて、微細処理することで得られた実施例及び比較例の電極触媒インク電極触媒を、15分以上放置させても沈降しない分散液を「A」と評価した。5分以上15分未満で沈降した分散液を「B」と評価した。また、5分未満で沈降した分散液を「C」と評価した。
〔電極触媒インクの粘性評価〕
実施例及び比較例に係る電極触媒インクにおいて、粘度評価結果を図6の表5に示す。電極触媒インク前駆体を、湿式微粒化装置を用いて、微細処理することで得られた実施例及び比較例の電極触媒インク電極触媒を、レオメーター・粘度計を用いて、せん断速度100(l/s)の時の粘度で、30cp以上200cp以下の範囲であれば、「A」と評価した。なお、200cp以上の粘度は「B」と評価した。また、30cp未満の粘度は「C」と評価した。
(電極触媒インクの固化物の外観の評価)
実施例1、2、6及び各比較例1、3に係る電極触媒インクをアプリケーターにて、乾燥厚み20μmになるように、ナフィオン膜に塗布し、室温にて乾燥させることによって固化物を得た。外観目視により、固形物の目視外観評価を実施した。結果を図6の表5に示す。
【産業上の利用可能性】
本開示に係る電極触媒インクによれば、塗工インク粘度を増大させているので、非貴金属及び非貴金属の酸化物の少なくとも一方を含む電極触媒を用いた厚膜の電極触媒層を形成することができる。そこで、水電解装置の水電解セルの電極触媒層及び燃料電池の膜電極接合体の電極触媒層の形成に用いられる。
【図
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