(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026036810
(43)【公開日】2026-03-06
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20260227BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20260227BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20260227BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20260227BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20260227BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20260227BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20260227BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/485 ZHV
B60W20/00 900
F02D19/08 D
F02D45/00 360A
B60L50/16
B60L50/61
B60K6/485
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024139585
(22)【出願日】2024-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐樹
【テーマコード(参考)】
3D202
3G092
3G384
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB08
3D202BB21
3D202DD01
3D202DD18
3D202DD20
3D202DD24
3D202DD26
3D202DD28
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3D202DD47
3D202EE10
3G092AB05
3G092AC02
3G092CB05
3G092EA09
3G092EC09
3G092FA06
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3G092HB06Z
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3G384AA15
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3G384BA03
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3G384EE31
3G384FA06Z
3G384FA22Z
3G384FA56Z
3G384FA66Z
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BD17
5H125EE25
(57)【要約】
【課題】エンジンの出力が過剰に制限されることを抑制できるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】アルコール含有燃料が供給されることにより駆動するエンジンと、反力トルクを出力することによって発電する発電機と、エンジンと発電機と駆動輪に接続された出力部材とを差動回転可能に連結する差動機構と、発電機によって発電された電力が供給されて充電する蓄電装置とを備えたハイブリッド車両の制御装置であって、エンジンに供給される燃料量に対するアルコールの含有量であるアルコール濃度を検出する濃度検出部と、蓄電装置の温度を検出する温度検出部とを備え、濃度検出部によって検出されたアルコール濃度が高いほど、エンジンの上限回転数を低く設定し、かつ温度検出部によって検出された蓄電装置の温度が低いほど、エンジンの上限回転数を低く設定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールを含有した燃料が供給されることにより駆動するエンジンと、反力トルクを出力することによって反力トルクと回転数とに応じた電力を発電する発電機と、前記エンジンと前記発電機と駆動輪に接続された出力部材とを差動回転可能に連結する差動機構と、前記発電機によって発電された電力が供給されて充電する蓄電装置とを備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記エンジンを制御するコントローラと、
前記エンジンに供給される燃料量に対する前記アルコールの含有量であるアルコール濃度を検出する濃度検出部と、
前記蓄電装置の温度を検出する温度検出部とを更に備え、
前記コントローラは、
前記濃度検出部によって検出された前記アルコール濃度が高いほど、前記エンジンの上限回転数を低く設定し、かつ
前記温度検出部によって検出された前記蓄電装置の温度が低いほど、前記エンジンの上限回転数を低く設定する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンと、発電機と、駆動輪とが差動機構を介して連結され、発電機の反力トルクによってエンジン回転数を制御するように構成されたハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンと、第1モータと、出力ギヤとが遊星歯車機構に連結され、その出力ギヤから駆動輪にトルクを伝達するギヤトレーン部に第2モータが連結されたハイブリッド車両の制御装置が記載されている。この制御装置は、エンジンが高回転数で回転している状態から急減速された場合に、第1モータと、遊星歯車機構を構成するピニオンギヤとが上限回転速度を超えないように、エンジンと第1モータとを制御するように構成されている。具体的には、急減速が検出された場合に、フューエルカット制御を実行するとともに、第1モータとピニオンギヤとの上限回転数を下げ、更に、第1モータのフィードバック制御のゲインを大きくするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された制御装置は、急減速が検出された場合に、フューエルカット制御や上限回転数の変更などを行うものであるから、一時的に増加した第1モータやピニオンギヤの回転数を迅速に低減することができる。しかしながら、急減速が検出されてからエンジンや第1モータの出力を変更するものであるため、制御遅れやエンジンの出力の低下遅れなどによって、第1モータの回転数が一時的に増加する。そのような場合には、第1モータの発電電力が一時的に急増することになるため、蓄電装置や電気回路を構成する電子部品などに作用する電力が過剰となって、耐久性が低下する可能性がある。
【0005】
一方、上記のような一時的な発電電力の急増を抑制するために、エンジンの出力を予め制限することが考えられる。しかしながら、エタノールなどのアルコールを含有した燃料を利用したエンジンの場合には、そのアルコールの含有量(含有割合)に応じてエンジンの出力可能な最大トルクが変動する。また、エンジンの出力可能な最大トルクは、エンジンの回転数に応じて変化する。そのため、アルコールの含有量が多い場合を想定して、エンジンの出力を制限するために、エンジンの上限回転数を制限すると、アルコールの含有量が比較的少ない場合にも、エンジンの最大トルクが制限されることになり、車両の最大駆動力を過剰に制限することになる可能性がある。
【0006】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、エンジンの出力が過剰に制限されることを抑制できるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、アルコールを含有した燃料が供給されることにより駆動するエンジンと、反力トルクを出力することによって反力トルクと回転数とに応じた電力を発電する発電機と、前記エンジンと前記発電機と駆動輪に接続された出力部材とを差動回転可能に連結する差動機構と、前記発電機によって発電された電力が供給されて充電する蓄電装置とを備えたハイブリッド車両の制御装置であって、前記エンジンを制御するコントローラと、前記エンジンに供給される燃料量に対する前記アルコールの含有量であるアルコール濃度を検出する濃度検出部と、前記蓄電装置の温度を検出する温度検出部とを更に備え、前記コントローラは、前記濃度検出部によって検出された前記アルコール濃度が高いほど、前記エンジンの上限回転数を低く設定し、かつ前記温度検出部によって検出された前記蓄電装置の温度が低いほど、前記エンジンの上限回転数を低く設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、エンジンに供給される燃料量に対するアルコールの含有量であるアルコール濃度が高いほど、また、蓄電装置の温度が低いほど、エンジンの上限回転数を低く設定する。したがって、アルコール濃度が高い場合に、エンジンの回転数や出力トルクを低く設定することができる。そのため、出力部材の回転数が急激に変化することに伴って、反力トルクを出力している発電機の回転数が変化する場合に、その発電機の回転数が過剰に増加することを抑制できる。その結果、発電機の発電電力が過剰に大きくなることを抑制でき、蓄電装置や蓄電装置と発電機とに接続された電子部品に過電流が流れるなどの耐久性の低下を抑制できる。また、アルコール濃度が低くエンジンの最大トルクが低い場合には、上記のような発電機の回転数が急激に変化したとしても、発電機による発電電力を抑制できるため、エンジンの上限回転数の低く設定しないことにより、エンジンの出力が過剰に制限されることを抑制できる。
【0009】
また、蓄電装置の温度が低いほど、エンジンの上限回転数を制限する。言い換えると、蓄電装置の温度が高い場合には、エンジンの上限回転数の制限量を小さくする。その結果、蓄電装置の温度が高く、蓄電装置に入力可能な電力が高い場合に、エンジンの出力が過剰に制限されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施形態におけるハイブリッド車両の一例を説明するためのスケルトン図である。
【
図2】アルコール濃度に応じたエンジンの最大トルクの変化を説明するための線図である。
【
図3】動力分割機構を構成する各回転要素の回転数の変化を説明するための共線図である。
【
図4】エンジンの上限回転数を設定する制御例を説明するためのブロック図である。
【
図5】アルコール濃度と蓄電装置の温度とに基づいたエンジンの上限回転数を設定するためのマップである。
【
図6】エンジンの上限回転数を制限した場合におけるエンジン回転数の変化、第1モータの回転数の変化、蓄電装置に印加される電圧の変化、蓄電装置に入力される電力の変化、およびフューエルカット制御の実行フラグの変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を具体化した場合の一例に過ぎないのであって、本発明を限定するものではない。
【0012】
図1には、この発明の実施形態におけるハイブリッド車両の一例を説明するためのスケルトン図を示してある。
図1に示すハイブリッド車両(以下、単に車両と記す。)Veは、エンジン(ENG)1、第1モータ(MG)2、および第2モータ(図示せず)を駆動力源として備えている。
【0013】
このエンジン1は、従来のエンジン車両やハイブリッド車両の駆動力源として設けられたエンジンと同様に、空気と燃料との混合気を燃焼することによって動力を発生させるように構成されている。この燃料として、エタノールなどのアルコールをガソリンに混合したアルコール含有燃料を使用することができる。
【0014】
このようなアルコール含有燃料は、通常のガソリンやディーゼルなどの燃料と比較して、オクタン価が高いため、出力可能な最大トルクが高くなる。
図2には、エンジン1の最大トルクを、エンジン1に供給される燃料量に対するアルコールの含有量であるアルコール濃度毎に示してある。なお、
図2における横軸に、エンジン回転数を採り、縦軸に、エンジントルクを採ってある。
【0015】
図2に示すように、従来のガソリンやディーゼルを燃料とした場合と同様に、アルコール濃度に拘わらず、エンジン回転数が所定回転数となるまでの間は、エンジン回転数の増加に伴ってエンジン1の最大トルクが増加し、エンジン回転数が所定回転数以上になると、エンジン回転数の増加に伴ってエンジン1の最大トルクが低下する。また、その最大トルクは、エンジン1の回転数に拘わらず、アルコール濃度が高いほど大きくなる。
【0016】
上述したようにアルコール濃度によってエンジン1の最大トルクが変化するため、燃料のアルコール濃度を検出する濃度センサ3が、例えば、図示しない燃料タンクやフューエルデリバリーパイプなどに設けられている。この濃度センサ3が、この発明の実施形態における「濃度検出部」に相当する。なお、エンジン1には、その回転数(または回転角)を検出するためのクランク角センサ4が設けられている。
【0017】
第1モータ2および第2モータは、従来のハイブリッド車両や電気自動車の駆動力源として設けられたモータと同様に構成することができる。すなわち、電力が供給されることによって駆動トルクを出力するモータとしての機能に加えて、出力軸が連れ回されることによって、その出力軸の動力を電力に変換する発電機としての機能を備えている。具体的には、永久磁石式の同期モータや誘導モータによって構成することができる。この第1モータ2が、この発明の実施形態における「発電機」に相当する。なお、各モータ2には、その回転角を検出するためのレゾルバ5が設けられている。
【0018】
また、第1モータ2および第2モータには、図示しないインバータなどの電子部品によって構成されたパワーコントロールユニット(以下、PCUと記す。)6を介して蓄電装置7が接続されている。この蓄電装置7は、従来の電気自動車やハイブリッド車両に設けられた電源と同様に、直流電圧を出力する電源であって、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池、あるいは電気二重層キャパシタなどによって構成することができる。この蓄電装置7は、複数の電池を直列に配置した組電池によって構成していてもよい。
【0019】
したがって、PCU6を制御することによって蓄電装置7から第1モータ2や第2モータに電力を供給することによって、第1モータ2や第2モータが駆動トルク(回転数を増加させるトルク)を出力するモータとして機能する。また、第1モータ2や第2モータが連れ回されることによって電力を発生する発電機として機能する場合には、その電力を蓄電装置7に充電することができる。
【0020】
上記の蓄電装置7は、その温度に応じて内部抵抗が変動するため、蓄電装置7の温度が低温の場合には、蓄電装置7に大きな電流が流れる。したがって、蓄電装置7から出力する許容放電電力や蓄電装置7を充電する許容充電電力を、蓄電装置7の温度に応じて制限するように構成されている。そのため、
図1に示すように蓄電装置7には、その温度を検出するための温度センサ8が設けられ、また、各モータ2に通電される電流値を検出するための電流計9が、各モータ2とPCU6との間に設けられている。この温度センサ8が、この発明の実施形態における「温度検出部」に相当する。なお、蓄電装置7とPCU6との間には、蓄電装置7から出力された電圧または蓄電装置7に印加される電圧を検出するための電圧計10が設けられている。
【0021】
また、
図1に示す車両Veは、エンジン1の出力トルクを第1モータ2と駆動輪(図示せず)とに分割する動力分割機構11を備えている。この動力分割機構11は、エンジン1、第1モータ2、および駆動輪が差動回転可能に連結された差動機構であって、
図1に示す例では、シングルピニオン型の遊星歯車によって構成されている。すなわち、サンギヤSと、サンギヤSと同心円上に配置されたリングギヤRと、サンギヤSおよびリングギヤRに噛み合うピニオンギヤPを自転および公転可能に保持するキャリヤCとによって構成されている。そのサンギヤSには、第1モータ2が連結され、キャリヤCには、エンジン1が連結され、リングギヤRには、駆動輪にトルクを伝達するための出力ギヤ12が連結されている。この出力ギヤ12が、この発明の実施形態における「出力部材」に相当する。
【0022】
なお、リングギヤRから駆動輪にトルクを伝達するための図示しないギヤトレーン部が設けられていて、そのギヤトレーン部に第2モータがトルク伝達可能に連結されている。すなわち、動力分割機構11を介してエンジン1からギヤトレーン部に伝達されたトルクに、第2モータから出力されたトルクを加えることができるように構成されている。その第2モータには、蓄電装置7に充電された電力や、第1モータ2によって発電された電力が供給されるように構成されている。
【0023】
上述したエンジン1、各モータ2(具体的には、各PCU6)を制御するためのコントローラ13が設けられている。このコントローラ13は、従来の車両に設けられたコントローラと同様に、マイクロコンピュータを主体に構成されていて、入力される信号と、予め記憶されている演算式やマップなどとに基づいて、エンジン1や各モータ2を制御するための指令信号を生成して出力するように構成されている。
【0024】
コントローラ13に入力される信号は、濃度センサ3、クランク角センサ4、レゾルバ5、温度センサ8、電流計9、電圧計10、運転者によるアクセル装置の操作量を検出するためのアクセル開度センサ14、駆動輪の回転数を検出するための車輪速センサ15、および蓄電装置7の充電残量を検出するためのSOCセンサ16などである。
【0025】
上記のコントローラ13は、アクセル開度センサ14によって検出された信号と、車輪速センサ15によって検出された信号とに基づいて、車両Veに要求される走行パワーを求める。また、SOCセンサ16によって検出された信号に基づいて、蓄電装置7を充電するために要求される充電パワーを求める。なお、蓄電装置7の充電残量が上限値以上である場合には、充電パワーは、負の値として求められる。そして、走行パワーと充電パワーとを加算することによってエンジン1に要求されるパワー(以下、要求エンジンパワーと記す。)が求められる。
【0026】
上記の要求エンジンパワーを出力する際の燃費が良好となるエンジン1の運転点を求める。このエンジン1の運転点は、エンジン1の出力トルクと回転数とで定められたものであり、エンジンパワー毎に燃費が良好となる運転点を予め実験やシミュレーションによって求めて構築された最適燃費線マップがコントローラ13に記憶されている。したがって、要求エンジンパワーと最適燃費線マップとに基づいて、エンジン1の運転点を求める。
【0027】
図3には、動力分割機構11を構成する各回転要素の回転数の変化を説明するための共線図を示してあり、車両Veが所定車速で駆動走行している状態を破線で示し、急制動した状態を実線で示してある。
【0028】
なお、動力分割機構11におけるサンギヤSには、第1モータ2が連結されているため、サンギヤSの回転数と第1モータ2の回転数とが同一であり、キャリヤCには、エンジン1が連結されているため、キャリヤCの回転数とエンジン1の回転数とが同一である。また、リングギヤRには、出力ギヤ12やギヤトレーン部を介して駆動輪が連結されているため、駆動輪の回転数にギヤトレーン部のギヤ比を除算した回転数がリングギヤRの回転数となる。
図3には、便宜上、ギヤ比を「1」として示してあるため、リングギヤRの回転数と駆動輪の回転数とを同一のものとして示してある。
【0029】
図3に示すように所定車速で駆動走行している場合には、上述した要求エンジンパワーと最適燃費線マップとに基づいて定められた回転数とトルクとなるようにエンジン1が制御されている。なお、エンジントルクの向きを破線の矢印で示してある。
【0030】
また、エンジントルクが動力分割機構11を介して出力されるように、第1モータ2の反力トルクが定められる。この反力トルクは、動力分割機構11のギヤ比に応じてエンジン1から第1モータ2に伝達されるトルクと同一の大きさに定められる。なお、エンジン1から第1モータ2に伝達されるトルクよりも大きなトルクを第1モータ2から出力することによって、エンジン回転数が低下し、それとは反対に、エンジン1から第1モータ2に伝達されるトルクよりも小さなトルクを第1モータ2から出力することによって、エンジン回転数が増加するとともに、出力ギヤ12に伝達されるトルクが低下する。すなわち、第1モータ2のトルクを制御することによってエンジン回転数を連続的に変更することができる。したがって、動力分割機構11は、無段変速機として機能することができるように構成されている。言い換えると、第1モータ2の反力トルクは、エンジン1から第1モータ2に伝達されるトルク(またはその推定値)に基づくトルク(フィードフォワード項)と、エンジン1の実際の回転数と目標回転数との差に基づくトルク(フィードバック項)とに応じて求められる。なお、第1モータ2の反力トルクの向きを破線の矢印で示してある。
【0031】
上述したように所定車速で走行している状態で、ブレーキペダルが踏み込まれるなどによって駆動輪の回転数が急激に低下する場合には、
図3に実線で示すようにエンジン1の回転数を維持したまま、またはほぼ変化することなく、第1モータ2の回転数が急激に増加する。これは、エンジン1の出力の制御遅れや、エンジン1の出力が低下するために不可避的な遅れが生じるなどにより、エンジン1から駆動トルクが出力されているためである。
【0032】
そのように第1モータ2の回転数が増加した場合には、エンジン回転数が増加することを抑制し、またはアイドル回転数相当までエンジン回転数を低下させるために、第1モータ2から反力トルクが出力される。その結果、第1モータ2は、その反力トルクと回転数とを乗算して求められる電力を発電する。
【0033】
この発明の実施形態における制御装置は、上記のように第1モータ2の回転数が急激に増加した場合における第1モータ2の発電電力が、蓄電装置7に通電可能な電力(Win)を超過することを抑制するように構成されている。
【0034】
図4には、その制御例の機能的構成を説明するためのブロック図を示してある。
図4に示す例は、上述したように要求エンジンパワーと最適燃費線とに基づいたエンジン回転数を算出する通常回転数算出部17を備えている。一方、エンジン1の上限回転数は、車両Veに設けられた種々の部品の耐久性や特性などを考慮して制限される場合がある。したがって、それらの制限要因に基づいてエンジン1の上限回転数を算出する上限回転数算出部18が設けられている。
図4には、便宜上、エンジン1や車両Veに設けられた部品がフェールした場合に決定される上限回転数を算出するフェール時上限回転数算出部19を示してある。
【0035】
このフェール時上限回転数算出部19は、フェールが発生した要因や、車速などに対応したエンジン1の上限回転数を予めコントローラ13に記憶しておき、フェールを判定する他のコントローラからの出力信号に基づいて、エンジン1の上限回転数を定めるように構成されている。
【0036】
また、
図4に示す例では、上限回転数算出部18として、アルコール濃度と蓄電装置7の温度(電池温度)とに基づいてエンジン1の上限回転数を算出するアルコール濃度上限回転数算出部20を備えている。このアルコール濃度上限回転数算出部20は、予め記憶された
図5に示すマップに基づいてエンジン1の上限回転数を算出するように構成されている。
【0037】
図5に示すマップは、横軸にアルコール濃度を採り、縦軸にエンジン1の上限回転数(上限Ne)を採ってあり、図に示すように蓄電装置7の温度が所定温度以上である場合には、アルコール濃度に拘わらず、エンジン1の上限回転数を所定回転数Ne1に設定するように構成されている。この所定回転数Ne1は、例えば、第1モータ2による最大発電電力を、エンジン1の最大トルク(アルコール濃度が最大値)で除算した回転数に設定されている。
【0038】
また蓄電装置7の温度が低下するに連れて、エンジン1の上限回転数を低回転数に設定する。これは、蓄電装置7の温度が低下することに伴って、蓄電装置7に入力可能な電力が制限されるためである。さらに、蓄電装置7の温度が所定温度以上である場合には、アルコール濃度が高くなるに連れて、エンジン1の上限回転数を低回転数に設定する。これは、アルコール濃度が高いほど、エンジン1の最大トルクが増加するためである。
【0039】
すなわち、
図5に示すマップは、温度要因によって制限された蓄電装置7に入力可能な電力を、アルコール濃度に応じた最大トルクで除算した回転数を、エンジン1の上限回転数に設定するように構成されている。なお、
図5に示す例では、便宜上、蓄電装置7の温度が同一温度である場合に、アルコール濃度に応じて上限回転数が3段階に区分けされるように示してあるが、更に複数に区分けして上限回転数を定めてもよい。また、上記のように温度要因による蓄電装置7の入力可能電力と、アルコール濃度に応じた最大トルクとが定まれば、エンジン1の上限回転数を定めることができるため、逐次、演算によってエンジン1の上限回転数を定めてもよい。
【0040】
そして、上記の通常回転数算出部17によって求められたエンジン回転数と、フェール時上限回転数算出部19やアルコール濃度上限回転数算出部20などを含む上限回転数算出部18によって算出された複数の上限回転数とが、調停部21に入力される。この調停部21は、入力された複数の回転数のうちから最も低い回転数を抽出し、その回転数を、エンジン1の目標回転数として出力するように構成されている。
【0041】
図6には、所定車速で走行している状態から急減速して停止した場合におけるエンジン回転数の変化、第1モータ2の回転数(MG回転数)の変化、蓄電装置7に印加される電圧の変化、蓄電装置7に入力される電力の変化、およびフューエルカット制御の実行フラグの変化を説明するためのタイムチャートを示してある。なお、アルコール濃度や蓄電装置7の温度に応じてエンジン1の上限回転数を設定した場合の変化を実線で示し、エンジン1の上限回転数を設定しない場合の変化を破線で示してある。
【0042】
図6に示すt0時点では、所定車速で駆動走行していることにより、車輪速、エンジン回転数、第1モータ2の回転数が一定に保たれている。また、その際には、エンジン1から駆動トルクを出力していることにより、第1モータ2は、エンジン1から伝達されるトルクに対応した反力トルクを出力している。そのため、第1モータ2では、所定の電力が発電され、それに伴って蓄電装置7に所定の電圧が印加されている。
図6には、発電電力を負の値として示してある。なお、アルコール濃度が高く、または蓄電装置7の温度が低いことにより、エンジン回転数が制限されている場合には、エンジン回転数が制限されていない場合よりも低回転数である。そのため、エンジン回転が制限されている場合には、エンジン回転数が制限されていない場合よりも、第1モータ2の回転数、第1モータ2による発電電力、および蓄電装置7に印加される電圧が低くなっている。
【0043】
運転者によってブレーキ操作されるなどにより、t1時点で駆動輪に制動トルクが作用し、その結果、車輪速が低下し始めている。そのような場合には、上述したようにエンジン1の出力の制御遅れや、エンジン1の出力が低下するために不可避的な遅れが生じるなどにより、エンジン1から駆動トルクが出力されているため、エンジン回転数が維持されるとともに、第1モータ2の回転数が増加する。なお、第1モータ2の回転数の増加量は、エンジン回転数と動力分割機構11のギヤ比とに応じて定まるため、エンジン回転数が制限されていない場合には、エンジン回転数が制限されている場合よりも、エンジン回転数の差に応じた分、多くなっている。
【0044】
また、第1モータ2の回転数が増加している間も、エンジン1から出力されるトルクに応じた反力トルクを第1モータ2から出力し続けていることによって、第1モータ2による発電電力や蓄電装置7に印加される電圧は、第1モータ2の回転数に比例して増加している。この第1モータ2による発電電力や蓄電装置7に印加される電圧も、エンジン回転数が制限されていない場合の方が、第1モータ2の回転数の差に応じて高くなっている。なお、
図6に示す例では、第1モータ2による発電電力が所定電力以上となったt2時点で、エンジン1への燃料の供給を停止するフューエルカット制御を実行するためのフラグがオンに切り替えられている。
【0045】
停車したt3時点で第1モータ2の回転数が最大回転数となり、その後、エンジン回転数をアイドル回転数相当に低下させるために、第1モータ2がトルクを出力することにより、エンジン回転数と第1モータ2の回転数とが低下し始めている。その第1モータ2の回転数の低下に伴って、第1モータ2による発電電力や蓄電装置7に印加される電圧が低下し始めている。なお、t4時点で、第1モータ2による発電電力が所定電力未満となることによって、フューエルカット制御を実行するためのフラグがオフに切り替わっている。
【0046】
そして、t5時点で、エンジン回転数がアイドル回転数相当まで低下するとともに、そのエンジン回転数に応じた回転数に第1モータ2の回転数が低下している。その結果、第1モータ2による発電電力や蓄電装置7に印加される電圧が、一定に維持されている。
【0047】
上述したようにアルコール濃度が高いほど、または、蓄電装置7の温度が低いほど、エンジン1の上限回転数を低く設定することにより、車輪速が低下して第1モータ2の回転数が増加した場合であっても、エンジン1の回転数を制限していない場合よりも、第1モータ2の回転数を低くすることができる。また、
図2に示すようにエンジン1の最大トルクは、エンジン回転数に依存するため、エンジン1の上限回転数を低く設定することによって、エンジン1から出力されるトルクを制限することができる。そのような場合には、第1モータ2による反力トルクが小さくすることができる。そのため、第1モータ2の回転数が増加した場合における第1モータ2の発電電力を抑制することができ、PCU6や蓄電装置7に過電流が流れるなどの耐久性の低下を抑制できる。
【0048】
言い換えると、アルコール濃度が低い場合には、エンジン1の上限回転数が制限されず、または、その制限量が小さいため、アルコール濃度が低い場合は、エンジン1の出力トルクが過剰に制限されることを抑制できる。
【0049】
また、蓄電装置7の温度が低いほど、エンジン1の上限回転数を制限する。言い換えると、蓄電装置7の温度が高い場合には、エンジン1の上限回転数の制限量を小さくする。その結果、蓄電装置7の温度が高く、蓄電装置7に入力可能な電力が高い場合に、エンジン1の出力が過剰に制限されることを抑制できる。
【符号の説明】
【0050】
1 エンジン
2 モータ
3 濃度センサ
7 蓄電装置
8 温度センサ
11 動力分割機構
12 出力ギヤ
13 コントローラ
15 車輪速センサ
17 通常回転数算出部
18 上限回転数算出部
19 フェール時上限回転数算出部
20 アルコール濃度上限回転数算出部
21 調停部
C キャリヤ
P ピニオンギヤ
R リングギヤ
S サンギヤ
Ve 車両