(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】調整可能耳掛けを含む顔用マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220104BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A62B18/02 C
(21)【出願番号】P 2019542387
(86)(22)【出願日】2017-08-07
(86)【国際出願番号】 SG2017050396
(87)【国際公開番号】W WO2019032041
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2019-08-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515108347
【氏名又は名称】エスティー エンジニアリング イノスパークス ピーティーイー.リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ST ENGINEERING INNOSPARKS PTE.LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】オン, ウェルン イーアール
(72)【発明者】
【氏名】リー, ウェイ リアン, ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ロ, ミカイル
(72)【発明者】
【氏名】ムン, メン ワイ
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-295852(JP,A)
【文献】特開2003-010351(JP,A)
【文献】特開2012-005791(JP,A)
【文献】特開2000-199110(JP,A)
【文献】特開2018-108196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/11
A62B18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔用マスクであって、
a)吐き出した空気および吸い込まれる空気をフィルタリングする中央部分と、
b)前記中央部分から離れるよう水平方向に延伸した引き裂き可能領域と、事前切断された開口とを有する第1の耳掛けと、
c)前記中央部分から離れるよう水平方向に延伸した引き裂き可能領域と、事前切断された開口とを有する第2の耳掛けと、から構成され、
前記第1の耳掛けおよび前記第2の耳掛けは、前記中央部分の各側面側に位置しており、
前記第1の耳掛けの前記引き裂き可能領域を引き裂くまたは切断することにより、前記第1の耳掛けの前記事前切断された開口のサイズを大きくすることができ、
前記第2の耳掛けの前記引き裂き可能領域を引き裂くまたは切断することにより、前記第2の耳掛けの前記事前切断された開口のサイズを大きくすることができ、
前記第1の耳掛けの前記引き裂き可能領域および前記第2の耳掛けの前記引き裂き可能領域は、引き裂きまたは切断することにより、前記事前切断された開口の前記サイズを大きくすることを支援する2つ以上のノッチを有するミシン目の線を備えており、
前記2つ以上のノッチは、前記顔用マスクが装着された後の前記引き裂き可能領域の更なる引き裂きを防止することを特徴とする顔用マスク。
【請求項2】
前記ノッチは、前記ノッチのそれぞれから追加的な引き裂きを起こすために必要な力を増加させることにより、フィードバックを提供する請求項1に記載の顔用マスク。
【請求項3】
前記顔用マスクは、織物材料から構成されている請求項1に記載の顔用マスク。
【請求項4】
前記第1の耳掛けの前記引き裂き可能領域および前記第2の耳掛けの前記引き裂き可能領域は、前記引き裂き可能領域を特定することを支援し、さらに、引き裂きに対する抵抗を低減させるために、事前に引き裂かれた領域を備えている請求項1に記載の顔用マスク。
【請求項5】
前記中央部分は、弾性織物から構成されており、
前記第1の耳掛けおよび前記第2の耳掛けは、弾性織物から構成されている請求項1に記載の顔用マスク。
【請求項6】
中央部分と、前記中央部分の各側面側に位置する2つの耳掛け領域と、から構成された顔用マスクであって、
前記耳掛け領域のそれぞれは、前記中央部分から離れるよう、水平方向に延伸した引き裂き可能領域と、事前切断された開口とを備え、
前記引き裂き可能領域は、ミシン目の線を備え、
前記ミシン目の線を引き裂くまたは切断することにより、前記耳掛け領域のそれぞれのサイズを大きくすることができ、
前記ミシン目の線は、引き裂くことを支援する2つ以上のノッチを備えており、
前記ノッチは、前記顔用マスクが装着された後、力を、前記ミシン目の線から離れる方向へ向けることにより、前記ミシン目の線の不本意な引き裂きを防止することを特徴とする顔用マスク。
【請求項7】
前記2つの事前切断された開口は、スリット、四角形状、三角形状、楕円形状、または円筒形状の少なくとも1つの形状である請求項6に記載の顔用マスク。
【請求項8】
前記ミシン目の線のそれぞれの一部分は、前記ミシン目の線を特定することを支援し、さらに、引き裂きに対する抵抗を低減させるために、事前に引き裂かれた領域を備えている請求項6に記載の顔用マスク。
【請求項9】
前記ノッチは、前記ノッチのそれぞれからの追加的な引き裂きを起こすために必要な力を増加させることにより、フィードバックを提供する請求項6に記載の顔用マスク。
【請求項10】
前記中央部分および前記2つの耳掛け領域は、弾性織物から構成されている請求項6に記載の顔用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の調整可能な耳掛けを含む顔用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
装着者の鼻と口を覆う顔用マスクは、様々な目的(例えば、細菌の拡散を防ぐ目的および/または空気をフィルタリングする目的)で利用可能である。多くの構成が、ユーザーが、顔用マスクを着用し、固定することを支援するために導入されている。従来のマスクは、顔の後ろで結ばれる帯(ストライプ)、顔の後ろまたは耳の周りで輪(ループ)を形成する粘着性の帯または弾性の帯(「耳掛け(Ear loop)構成」)を使用する。各構成は、利点と欠点を有している。
【0003】
耳掛けの構成は、粘着性の帯を有する構成よりも好まれることが多い。粘着性の帯は、粘着性の帯を装着者の肌から剥がす、または、取り外す際に、痛みを伴い得る。さらに、装着者の耳の周りで輪を形成する構成は、装着者の頭を包む構成よりも好まれることが多い。前者は、通常、着脱が容易であり、また、装着者の髪の毛に絡みにくい。
【0004】
典型的には、耳掛け構造は、装着者の頭のサイズの違いに対応するために、弾性材料で形成される。例えば、米国特許第4,941,470号は、一対の耳掛けによって、所定の場所で保持される顔用マスクを開示している。マスクの織物パネルおよび耳掛けは、織物パネルと耳掛けの自由端との接合点を加熱することにより、互いに接合されている。この従来の「ワンサイズフィットオール(one-size fits all:1つのサイズにフィットするだけ)」構成の欠点は、マスクおよび耳掛けが適切にフィットしない可能性があるという点である。
【0005】
この問題を解決するため、米国公開特許公報第2015/0335080号および米国特許第5,819,731号に開示されているような、耳掛けを調整可能とした構成が考え出されている。前者のものにおいて、耳掛けのそれぞれが、長尺部材から形成され得る。長尺部材のそれぞれの中間部分がマスクのパネルの孔に挿通されたとき、「巻き取り式の輪(Take-up loops)」が形成される。この輪(巻き取り式の輪)または長尺部材に沿ったスライダーは、耳掛けのサイズを大きく、または、小さくする調整機能を提供することができる。後者は、装着者の耳の回りで輪を形成した後、マスクの前方へ延伸し、さらに、首の後方を囲むように延伸する調整可能なバンドの使用を採用している。
【0006】
上述の公開特許公報および特許は、耳掛けを調整可能とする方法を提供しているが、それらのマスクは、適切なフィットを保証するために、装着者のかなりの労力を要求するものである。さらに、それらのマスクは、追加的なオブジェクト(すなわち、使用のための追加的なコンポーネント)を要求し得る。したがって、耳掛けを調整可能とすることができるとともに、この機能を実現するために必要なオブジェクトを最小化することができる、調整可能な耳掛けのより手間のかからない手段についてのニーズが存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、装着者のサイズに適用するよう調整可能で、それによって、快適さと適切な密閉を保証可能な顔用マスク用の耳掛けのニーズが存在していることを認識している。マスクの装着は、素早く、かつ、容易であるべきである。さらに、マスクは、追加的なオブジェクトまたはコンポーネントを必要とすることなく、調整可能であるべきである。装着者は、マスクを彼または彼女の顔の上に配置し、さらに、マスクが安全かつ快適となるように、容易に、耳掛けのサイズを調整可能であるべきである。他のマスクは、耳を覆うようフィットする複数のコンポーネントを有しているが、装着者の顔上のマスクのしっかりとしたフィットを犠牲にすることなく、マスクのフィットをカスタマイズできる洗練された、または、直感的に使いやすい解決方法は存在していない。
【0008】
以下の概要は、開示の実施形態に特有の革新的な特徴のいくつかの理解を容易とするために提供され、さらに、完全な開示として提供される意図はない。本明細書で開示される複数の実施形態の様々な態様の完全な理解が、明細書全体、特許請求の範囲、図面、および要約を参照することにより、全体として得られるであろう。
【0009】
本発明は、弾性織物から形成された調整可能な耳掛けを有するマスクに関する。各耳掛けは、事前切断された開口を有し得、装着者は、該開口に彼/彼女の耳の一方を挿通させることができる。好ましい構成において、マスクは、耐久性があり、装着者にとって快適な弾性織物から構成されている。
【0010】
より具体的には、本発明は、(a)吐き出した空気および吸い込まれる空気をフィルタリングする中央部分と、(b)引き裂き可能領域を有する第1の耳掛けと、(c)引き裂き可能領域を有する第2の耳掛けと、から構成された一体構造(single piece)の顔用マスクを含む。第1の耳掛けおよび第2の耳掛けは、中央部分の側面側に位置しており、さらに、第1の耳掛けおよび第2の耳掛けのそれぞれは、装着者が耳の周りで第1の耳掛けおよび第2の耳掛けのそれぞれを固定するための開口を備えている。装着者は、第1の耳掛けの引き裂き可能領域を引き裂くまたは切断することにより、第1の耳掛けのサイズを大きくすることができる。さらに、装着者は、第2の耳掛けの引き裂き可能領域を引き裂くまたは切断することにより、第2の耳掛けのサイズを大きくすることができる。
【0011】
引き裂き可能領域には、装着者が、引き裂くまたは切断することにより開口のサイズを大きくすることを支援するよう、ミシン目が入れられている。さらに、引き裂き可能領域は、装着者が、引き裂きまたは切断することにより開口のサイズを大きくすることを支援する1つ以上のノッチを備えていてもよい。複数のノッチは、複数のノッチのそれぞれから更なる引き裂きを起こすために必要な力を増加させることにより、装着者にフィードバックを提供し得る。織物材料およびノッチは、顔用マスクが装着された後に、引き裂き可能領域が更に引き裂かれることを防止することができる。引き裂き可能領域の一部分は、装着者が、引き裂き可能領域を特定することを支援し、さらに、引き裂きに対する抵抗を低減させるために、部分的に引き裂かれてもよい。代替的な構成において、第1の耳掛けおよび第2の耳掛けは、弾性紐(コード)、バンド、ストリング(弦)、または糸であってもよい。
【0012】
また、本発明は、中央空気フィルタリング部分と、中央空気フィルタリング部分の側面側に位置する2つの事前切断された耳掛け領域と、から構成された顔用マスクを含む。耳掛け領域のそれぞれは、1つ以上のミシン目が入れられたセクションを備えていてもよい。装着者は、該1つ以上のミシン目が入れられたセクションを引き裂くまたは切断することにより、耳掛け領域のサイズを大きくすることができる。2つの事前切断された耳掛け領域は、四角形状、三角形状、または楕円形状であってもよい。さらに、ミシン目が入れられたセクションのそれぞれの一部分は、装着者が、ミシン目が入れられたセクションを特定することを支援し、さらに、引き裂きに対する抵抗を低減するよう、部分的に引き裂かれていてもよい。また、ミシン目が入れられたセクションは、装着者が、引き裂くまたは切断することを支援する1つ以上のノッチを備えていてもよい。
【0013】
また、本発明は、中央空気フィルタリング部分と、中央空気フィルタリング部分の側面側に位置する第1の耳掛けおよび第2の耳掛けと、から構成された顔用マスクを含む。この構成において、各耳掛けは、紐(コード)から構成されている。各紐は、中点部分と、上側より糸と、下側より糸と、を備えている。上側より糸および下側より糸は、中央空気フィルタリング部分に接続されている。1つ以上の溶融領域が、中点領域に形成されており、中点領域において、上側および下側より糸が互いに固定されている。装着者は、上側より糸と下側より糸を互いに分離するために、溶融部分を引き裂く、剥がす、または切断することにより、耳掛けのサイズを大きくすることができる。紐は、ストリングまたは糸から構成されていてもよい。
【0014】
本発明の他の態様および利点は、一例として本発明の原理を示す添付の図面と共に参照される以下の詳細な説明から明確となるであろう。
【導入】
【0015】
本発明の第1の態様は、装着者の頭のサイズに適応するよう容易に調整可能な顔用マスクである。
【0016】
本発明の第2の態様は、装着者の頭のサイズに適用するために、引き裂きまたは破ることにより調整可能な織物材料から形成された耳掛けを有する顔用マスクである。
【0017】
本発明の第3の態様は、複数のミシン目および/またはノッチを有する引き裂き可能領域を備える耳掛けを有する顔用マスクである。
【0018】
本発明の第4の態様は、装着者の頭のサイズに適応するよう、自身のより糸を互いに離すよう引き裂くまたは破ることにより調整可能な可撓性紐から形成された調整可能耳掛けを有する顔用マスクである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本明細書中の図面は、選択された実施形態の説明のみを目的としているが、全ての可能性のある実施を説明するものではなく、本発明の範囲を限定する意図もない。
【0020】
上記概要は、図示された実施形態の以下の詳細な説明と同様、添付の図面と共に参照された際、より良く理解される。本発明の説明の目的のため、本開示の例示的な構成が図面中に示されている。しかしながら、本開示は、本明細書中に開示された特定の方法および手段に限定されない。可能な限り、同様の要素は、同じ参照番号によって示されている。
【0021】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施形態に係る、事前切断された調整可能な耳掛けと、引き裂き可能領域とを有する顔用マスクを示している。
【0022】
【
図1B】
図1Bは、本発明の別の実施形態に係る、装着者が耳掛けのサイズを大きくすることを支援する複数のノッチを有する、引き裂き可能領域を備える事前切断された耳掛けを示している。
【0023】
【
図1C】
図1Cは、本発明の別の実施形態に係る、装着者が耳掛けのサイズを大きくすることを支援する複数のミシン目を有する、引き裂き可能領域を備える事前切断された耳掛けを示している。
【0024】
【
図1D】
図1Dは、本発明の別の実施形態に係る、装着者が耳掛けのサイズを大きくすることを支援する複数のノッチおよびミシン目を有する、引き裂き可能領域を備える事前切断された耳掛けを示している。
【0025】
【
図2A】
図2Aは、本発明の別の実施形態に係る、装着者が耳掛けのサイズを大きくすることを支援する引き裂き可能領域を備える代替的な形状の耳掛けを示している。
【0026】
【
図2B】
図2Bは、本発明の別の実施形態に係る、装着者が耳掛けのサイズを大きくすることを支援する引き裂き可能領域を備える代替的な形状の耳掛けを示している。
【0027】
【
図2C】
図2Cは、本発明の別の実施形態に係る、装着者が耳掛けのサイズを大きくすることを支援する引き裂き可能領域を備える代替的な形状の耳掛けを示している。
【0028】
【
図2D】
図2Dは、本発明の別の実施形態に係る、装着者が耳掛けのサイズを大きくすることを支援する引き裂き可能領域を備える代替的な形状の耳掛けを示している。
【0029】
【
図3】
図3は、本発明の別の実施形態に係る、事前に引き裂かれた引き裂き可能領域を有する
図2Cの耳掛け領域を示している。
【0030】
【
図4A】
図4Aは、本発明の別の実施形態に係る、代替的な構成を示しており、該構成において、耳掛けは、複数の接合領域を有する調整可能な可撓性紐から構成されている。
【0031】
【
図4B】
図4Bは、本発明の別の実施形態に係る、代替的な構成を示しており、該構成において、耳掛けは、調整可能な可撓性紐から構成されており、さらに、複数の領域において接合している。
【発明の詳細な説明】
【0032】
定義
本明細書中において「1つの実施形態/態様」または「実施形態/態様」と述べた際には、実施形態/態様に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態/態様に含まれることを意味する。本明細書中での様々な箇所における「1つの実施形態/態様において」または「他の実施形態/態様において」との文言の使用は、必ずしも、全て同じ実施形態/態様を参照するものではなく、他の実施形態/態様と互いに排他的な別の実施形態/態様または代替的な実施形態/態様を示すものではない。さらに、いくつかの実施形態/態様によって示され、他のものによっては示されない様々な特徴が記述される。同様に、いくつかの実施形態/態様に必須であるが、他の実施形態/態様には必須ではない様々な要件が記述される。実施形態および態様は、特定の対象に対して用いられ、互いに同じ意味で用いることができる。
【0033】
本明細書内で用いられる用語は、一般的には、各用語が用いられる特定の文脈および開示の文脈中において、本分野におけるそれぞれの元々の意味を有している。特定の用語は、以下または明細書中の他の箇所に述べられる本発明を記述するために用いられ、実施者に対して本発明の記述に関する追加的なガイドを提供する。利便性のため、特定の用語は、例えば、斜字体および/または引用符を使用することによって強調されていてもよい。強調の使用は、用語の範囲および意味に対して影響を与えることはなく、用語の範囲および意味は、強調があろうとなかろうと、同じ文脈において同じものである。同じものが、1つ以上の方法で言及され得ることは、理解されるであろう。
【0034】
続いて、代替的な文言および同意語が、本明細書中で述べられる任意の1つ以上の用語に対して使用されていてもよい。用語が本明細書中において詳細述べられているか議論されているか否かに応じて、任意の特別な重要性が置かれるものではない。特定の用語の同意語が提供される。1つ以上の同意語の詳説は、他の同意語の使用を排除するものではない。本明細書において述べられた任意の用語の例を含む本明細書中の任意の箇所における例示の使用は、説明のためのみのものであり、本発明または任意の例として用いられた用語の範囲や意味をさらに限定する意図はない。同様に、本発明は、本明細書で述べられる様々な実施形態に限定されない。
【0035】
本発明の範囲をさらに限定する意図なく、本発明の実施形態に係る、例示的な器具、装置、方法、およびそれらの関連する結果物が以下に述べられる。項目またはサブ項目は、読み手の利便性のための例示において用いられており、本発明の範囲を限定するものではないことに留意されたい。特に特別な規定がなければ、本明細書において用いられている全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野における当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有している。不一致がある場合、定義を含む本文書が意味を支配する。
【0036】
用語「等方性」または「等方性材料」は、異なる方向の軸に沿って測定された際に同じ値(例えば、強度および弾力性)を示す材料を指す。
【0037】
用語「メカニカルフィルター」は、主としてレスピレーター(保護マスク)の繊維による遮断および固着によりゴミのような特定の物質を保持するレスピレーターを指す。
【0038】
用語「ノッチ」は、耳掛けの織物のような材料の孔、スリット、または間隙を指す。
【0039】
用語「ミシン目」は、一般的に、孔を貫通させることによって形成された一連の複数の孔を指し、引き裂き、切断、または破ることを補助するよう機能する。
【0040】
本明細書において用いられる他の技術用語は、それらが用いられる分野における様々な技術辞典で挙げられているような、通常の意味を有している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、可撓性および/または弾性織物から形成される調整可能な耳掛けを有するマスクを含む。
図1Aは、本発明の1つの態様に係る耳掛けを備えるマスク100を示している。中央部分(影付き部分)は、空気をフィルタリングする従来のマスク材料から構成され得る。通常の使用において、この部分は、装着者の口と鼻を覆う。中央部分は、吸い込まれる空気をフィルタリングし、装着者を、空気中のゴミ、細菌、または特定の物質から保護することができる。また、中央部分は、吐き出された空気をフィルタリングし、装着者から他者への細菌(例えば、バクテリアやウイルス)の拡散を防止することができる。マスクは、一回のみの使用(すなわち、使い捨て)のために形成され得る。
【0042】
図1Bは、マスク100の耳掛けをより詳細に示している。各耳掛けは、装着者の耳を覆って、または、装着者の耳の周りで固定するための事前切断された開口120を備えている。各耳掛けのサイズは、装着者の頭のサイズに適用するために調整可能である。好ましい構成において、複数のノッチ110を備える引き裂き可能部分は、事前切断された耳掛けに隣接している。引き裂き可能部分は、装着者が、織物を引き裂くまたは切断することにより、耳掛けのサイズを適切なサイズにまで容易に大きくすることを可能とする。
【0043】
図示のように、複数のノッチは、引き裂き可能領域を形成し、さらに、マスクの中央から離れる方向に延伸している。複数のノッチは、事前規定された領域(すなわち、引き裂き線)に沿った引き裂きを可能としている。また、複数のノッチは、マスクに対して力がかけられた際に、引き裂きのさらなる伝播を防止することができる。すなわち、マスクを装着するための力が、該領域をさらに引き裂くことはないであろう。代わりに、そのような力は、引き裂き可能領域から離れた方向に向くことになる。これにより、通常の装着の間に、不本意な耳掛けのサイズの増大や引き裂きが防止される。また、ユーザーが、必要以上の引き裂き(すなわち、「暴走引き裂き(runaway tear)」)を実行することや必要とされるよりも大きな孔を形成してしまうことを防止する。また、各ノッチ周りの織物、例えば、縫い目またはより薄い織物を、補強することができる。
【0044】
また、耳掛けの複数のノッチは、装着者が耳掛けのサイズを大きくするために引き裂く際に、装着者にフィードバックを提供することができる。このフィードバックは、ユーザーに更なる引き裂きを停止するための指標を提供することができる。より具体的には、フィードバックは、引き裂き線から離れる方向へ、力の向きを変更することにより、引き裂きの伝番を中止/停止させる。
【0045】
例えば、最初の引き裂きは、ユーザーのわずかな労力しか必要としないものであってもよい。引き裂きが最初のノッチに到達した後、第2のノッチへの追加的な引き裂きを行うためには、より多くの力が必要となる。このパターンは、装着者が第2のノッチから第3のノッチへ引き裂きを行う際にも同様である。このフィードバックは、手動による引き裂きの際、および、材料を切断するための道具を使用した際の双方で提供される。装着者は、マスクが快適にフィットし、さらに、所定の場所で留まるように十分にぴったりフィットするまで、引き裂きを続けることができる。
【0046】
また、マスクのそれぞれの側の複数のノッチのような事前規定された複数のセクションは、マスクを取り換える際の一貫性のある調整を保証する。装着者がマスクを取り換える際、彼/彼女は、前に装着していたマスクのサイズと一致するように、新しいマスクの耳掛けのサイズを素早く調整することができる。例えば、マスクは、各耳掛けのサイズが第1のノッチまで大きくされていたときに、適切に装着者にフィットすると仮定する。この場合、装着者は、マスクを装着する前に、第1のノッチまでそれぞれの側を引き裂くことにより調整を素早く実行可能である。
【0047】
図1Cも、耳掛けをより詳細に示している。この代替的な構成において、複数のミシン目130を備える引き裂き可能部分が、耳掛け120に隣接している。
図1Dは、複数のミシン目と複数のノッチ135の双方を備える引き裂き可能領域を有する構成を示している。引き裂き可能領域は、例えば、装着者により見つけやすくなるために、破線によってマークされていてもよい。
【0048】
耳掛けのサイズを大きくするために、装着者は、複数のノッチ、ミシン目、または前述の線に沿って引き裂きまたは切断を実行し、これにより、マスクが装着された際の耳掛けの張力を減少させることができる。この作業は、装着者にとって快適な点まで、段階的な方法で実行され得、同時に、マスクを固定するために適切な量の張力を提供することになる。
【0049】
線は、引き裂き可能領域に沿ってプリントされ得、耳掛けが引き裂かれるべき場所を示す。他の実施形態において、この線には、織物を引き裂く動作を容易にし、引き裂きの方向を制御するために、ミシン目が入れられる。他の実施形態において、この線は曲がっている。さらに別の実施形態において、引き裂かれるべき2つ以上のセクション(図示せず)が存在している。
【0050】
代替的な構成において、引き裂き可能部分は、物理的に変更されていてもよい(例えば、折り畳まれている、または、折り目が入れられている)。このような構成は、複数の特定の種類の材料を用いてマスクを構成する際に、実用的であり得る。複数のノッチまたはマークを用いる場合、この変更は、装着者に対して、引き裂き可能領域を、より見つけやすくすることができる。さらに、この変更は、耳掛けの他の領域が引き裂かれないようにしつつ、引き裂き可能領域に沿った引き裂きを維持することを支援することができる。
【0051】
マスクの耳掛け部分の織物は、織布の1つ以上の層の間に挟まれた、高い弾性を有する薄い弾性ポリマー層から形成されていてもよい。この織物は、弾性ポリマー層のような高い弾性または降伏力を有していなくともよいが、引き延ばしに対応可能となるような方法で織り込まれている。さらに、弾性織物は、任意の切断具をすることなく容易に引き裂き可能であり、かつ、マスクが装着された際に機能しなくなることがないのに(すなわち、破けたり、引き裂かれたりしないのに)十分な強度となるような材料で形成、および/または、設計され得る。
【0052】
複数のノッチは、引き裂きの方向と停止点の双方を示すためにマークされていてもよい。複数のノッチの間の距離は、各引き裂きに対する張力が大きく低減するのに十分なだけ大きく、同時に、引き裂き作業を妨害しないのに十分なだけ短くなっている。
図1Bに示されているように、複数のノッチ110は、互いに等距離となっていてもよいし、互いに実質的に等距離となっていてもよい。代替的な構成において、複数のノッチは、マスクの設計および使用を改善するのに好適となるように互いに離間されていてもよい。例えば、耳掛けの追加的な複数のノッチは、互いにより近づくよう、離間されていてもよい。第1のいくつかのノッチは、装着者が、使用のために耳掛けのサイズを素早く調整することを可能とすることができる。残りのノッチは、最大の快適さのための微調整を可能としてもよい(図示せず)。
【0053】
図2Aは、三角形形状140を有する代替的な形状の耳掛けの構成を示している。また、事前切断された開口は、三角形形状150を有している。ここで、引き裂き可能領域は、複数のミシン目およびノッチ135を有している。引き裂き可能領域は、マスクの中心から離れるよう、水平方向に延伸している。装着者は、耳掛けのサイズを大きくするために、引き裂き可能領域に沿って引き裂き可能である。この形状は、快適さおよび改良されたフィットの点で、従来の形状よりも優れたものとなり得る。
【0054】
図2Bは、装着者にとってより人間工学的に優れたものとなり得る湾曲形状を有する耳掛け160を示している。ここで、事前切断された耳掛けは、水平方向から、水平から約45度傾いた方向に延伸している。事前切断された開口165は、同様の形状とされている。引き裂き可能領域135は、事前切断された開口の角度に従っている(水平から約45度)。この構成は、装着者の頭のサイズ、彼/彼女の顔の特徴、および彼/彼女が通常の装着者よりもより低い角度でマスクを装着することを好むか否かに基づいて、ユーザーにとってより好ましい構成となり得る。他の構成と同様、装着者は、引き裂き可能領域135に沿って引き裂き、耳掛けのサイズを大きくすることができる。ここで、引き裂き可能領域135は、複数のミシン目およびノッチを備えている。この構成において、耳掛けのサイズは、水平というよりは、角度がついて大きくなる。
【0055】
図2Cは、楕円形状180の事前切断された領域を有する代替的な形状の耳掛け170を示している。
図2Dは、テーパー状の楕円形状の事前切断された領域210を有する同様の構成の耳掛け190を示している。双方の構成において、引き裂き可能領域135は、引き裂きのための複数のミシン目およびノッチを備えている。
【0056】
(
図1D-3に示されているような)複数のノッチを有する構成の場合、装着者は、マークされた線(破線)に沿って、第1のノッチまで引き裂きを行い、耳掛けのサイズを大きくする。マスクがキツイと感じたら、彼/彼女は、線に沿ってさらに引き裂きを行い、耳掛けのサイズをさらに大きくすることができる。3つのノッチが図中に示されているが、構成は、より多くの、または、より少ない数のノッチを備えていてもよい。
【0057】
図3は、部分的に事前に引き裂かれた引き裂き可能領域145を有する
図2Cの耳掛けを示している。事前に引き裂かれた領域は、少なくとも2つの利点を提供する。第1は、装着者がマスクを引き裂くための目立つ開始点を提供できることである。領域が既に部分的に引き裂かれているので、ノッチ、マーク、またはミシン目の線に沿った引き裂きを続けることを、より直感的とすることができる。第2は、事前切断されたセクションによって、耳に装着された際に、弾性織物が折り重なるようになることである。これにより、耳に接触する弾性織物の表面積を増大させることができ、その結果、表面上での圧力の量を低減することができる。最後に、これにより、耳に対する不快感によってマスクを調整または取り外さなければならないことがなくなるので、ユーザーは、より長い期間マスクを装着することができるようになる。このような事前に引き裂かれた領域は、マークされていても、マークされていなくてもよい。
【0058】
代替的な実施形態において、マスク200は、
図4Aに示されているように、紐(コード)、ストリング、糸、または同様の弾性または可撓性材料から形成された耳掛けを備えていてもよい。好ましい構成において、耳掛けは、少なくとも2つの点225において、マスクの中央部分の一方の側に接合されている単一の弾性ストリング220から形成されている。ストリングの1つ以上の部分は、接合点230において互いに「接合」されている。ユーザーは、1つ以上の接合点230における領域を引き裂くことにより、ストリングの長さ(および、耳掛けのサイズ)を大きくすることができる。
【0059】
互いに接合されているストリングの接合点は、引き裂き可能領域として機能する。装着者は、耳を、耳掛け内に挿入することによりマスクを装着し、その結果、ストリングに張力が発生する。ストリングの接合点のそれぞれを、道具の補助無し、または、道具の補助有りで、剥がす、または、引き裂くことにより、耳掛けのサイズを大きくすることができる。よって、ユーザーは、接合点を1つ1つ剥がすまたは引き裂くことにより、紐の長さ(および、耳掛けのサイズ)を効果的に大きくすることができる。ユーザーは、マスクを彼/彼女の顔でしっかりと固定するために十分な張力を維持しつつ、マスクが快適となるまで、そのようにすることができる。
図4Aでは、2つの接合点230が紐220上に示されているが、耳掛けが、2つを超える接合点を備えていてもよい。代替的な構成において、紐は、単一の接合点(図示せず)を有していてもよい。接合点は、耳掛けの長さに実質的に沿って延伸していてもよい。ユーザーは、より糸を剥がして、耳掛けのサイズを大きくしてもよい。
【0060】
図4Bは、紐、ストリング、糸、または同様の弾性または可撓性材料200から形成された同様の耳掛け構成200を示している。耳掛けは、2つの点225において、マスクの中央部分に接合されている。互いに接合されたストリングの点230は、引き裂き可能領域として機能する。ここで、上側接合点(第1の引き裂き可能領域)および下側接合点(第2の接合領域)が存在する。ユーザーは、これら領域を引き裂くことにより、ストリングの長さ(および、耳掛けのサイズ)を大きくすることができる。この構成は、装着者の頭、彼/彼女の顔の特徴、および彼/彼女がより大きな/小さな角度でマスクを装着することを好むか否かに対応するための調整を可能とする。
【実施例】
【0061】
使い捨てマスクのフィット感を改善するための本発明の使用
本発明の典型的な使用において、装着者は、彼または彼女の耳を、第1の耳掛け内に挿通させる。必要であれば、装着者は、耳掛けに隣接する引き裂き可能セクションに沿った引き裂きを実行することにより、耳掛けのサイズを大きくすることができる。より具体的には、耳掛けの事前規定されたセクション(すなわち、引き裂き可能領域)は、耳掛けの開口のサイズを効果的に大きくするために引き裂きまたは切断可能となっており、これにより、耳掛けからの張力を低減させることができる。引き裂き可能領域は、複数のノッチおよび/またはミシン目領域を備えていてもよい。装着者は、引き裂き可能領域を引き裂くことにより耳掛けのサイズを大きくし、彼/彼女の頭のサイズに適応させる。
【0062】
その後、装着者は、彼または彼女の耳を、第2の耳掛け内に挿通させる。第2の耳掛けも、引き裂き可能領域を備えている。上述のように、装着者は、上述のように引き裂きを実行することにより、第2の耳掛けのサイズを大きくすることができる。
【0063】
マスクを両耳の周りに配置した後、装着者は、追加的な調整を行うことができる(すなわち、引き裂きにより、耳掛けの一方または双方のサイズをさらに大きくすることができる)。装着者は、マスクが快適にフィットし、さらに、彼/彼女の顔にしっかりとフィットするように、耳掛けのサイズを調整することができる。装着者は、マスクが、快適であることと、使用のために十分なだけしっかりと密着することの双方を満たすように、耳掛けのサイズを大きくすることを続けることができる。
【0064】
好ましい構成において、マスクは、一回のみの使用(すなわち、使い捨て)を意図しているものである。よって、装着者は、理想的なフィットのために各面においていくつノッチを引き裂けばよいかに、精通することができる。これにより、装着者は、使用の度に、素早くかつ容易に、各耳掛けのサイズを好ましいサイズにすることができる。
【0065】
上述または他の特徴および機能の変形、またはそれらの代替物は、他のシステムまたは用途に組み合わせ可能であることは理解されるであろう。本分野に溶ける当業者によって今後為される、それらの様々な予測または予期しない代替物、変更、変形、または改良も、以下の特許請求の範囲よって規定される範囲に含まれるであろう。
【0066】
現在の本発明の実施形態が、可能性のある態様をカバーするよう相当に詳細に、包括的に記述されたが、本分野における当業者であれば、本発明の他のバージョンもまた可能であることを、認識できるであろう。