(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】バッテリの充電状態の予測方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220104BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220104BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220104BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20220104BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20220104BHJP
G01R 31/388 20190101ALI20220104BHJP
【FI】
H02J7/00 X
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
G01R31/367
G01R31/3828
G01R31/388
(21)【出願番号】P 2019219659
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2020-09-28
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】509343390
【氏名又は名称】新盛力科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】伍崇永
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227545(JP,A)
【文献】特開2001-281306(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010475(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 -10/48
H01M 10/60 -10/667
G01R 31/367
G01R 31/3828
G01R 31/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを有する電子機器に用いられるバッテリの充電状態の予測方法であって、
前記バッテリの電流が0より小さいと判断された場合、前記バッテリの放電時における残容量調整手順を実行するステップを含み、
前記バッテリの放電時における残容量調整手順を実行するステップとして、
前記バッテリの電圧を検出し、
検出された前記バッテリの電圧に基づいて、ルックアップテーブルから対応する基準充電状態を検索し、
検出された前記バッテリの電圧から電圧閾値を減算することで電圧差を取得し、
現時点の充電状態を前記電圧差で除算することで第1の傾きを取得し、
前記基準充電状態を前記電圧差で除算することで第2の傾きを取得し、
前記第1の傾きを前記第2の傾きで除算することで調整比率を取得し、
前記バッテリが放電した電荷容量をクーロン・カウント法でカウントすることで放電のカウント容量を算出し、
前記放電のカウント容量に前記調整比率を乗算することで調整値を取得し、
事前に記録されていた残容量から前記調整値を減算することで新たな残容量を予測し、
前記新たな残容量を満充電容量で除算することで新たなバッテリの充電状態を予測する方法。
【請求項2】
更に、満充電容量の更新手順を含み、前記満充電容量の更新手順のステップとして、
検出された前記バッテリの電圧が前記電圧閾値以下か否かを判断し、
前記バッテリの電圧が前記電圧閾値以下でない場合には前記満充電容量の更新手順を停止し、前記バッテリの電圧が前記電圧閾値以下の場合には前記バッテリの電流が0より小さいか否かを引き続き判断し、
前記バッテリの電流が0より小さい場合には前記満充電容量の更新手順を停止し、前記バッテリの電流が0より小さくない場合には前記満充電容量の更新手順の実行を開始し、
前記満充電容量の更新手順を実行するステップとして、
前記バッテリに充電されている前記電荷容量を前記クーロン・カウント法でカウントすることで充電のカウント容量を算出し、且つ、前記事前に記録されていた残容量に前記充電のカウント容量を加算することで新たに記録する残容量を取得し、
前記バッテリが満充電状態か否かを判断し、満充電状態の場合には前記新たに記録する残容量を前記満充電容量として更新し、満充電状態でない場合には、前記バッテリの電流が0より小さいか否かを判断するステップに戻る請求項1に記載のバッテリの充電状態の予測方法。
【請求項3】
更なるステップとして、
前記バッテリの電流又は平均電流が0か否かを判断し、
前記バッテリの電流又は平均電流が0の場合には、バッテリの静態時における残容量補正手順を実行し、前記バッテリの電流又は前記平均電流が0でない場合には前記バッテリが充電又は放電しており、
前記バッテリの静態時における残容量補正手順を実行するステップとして、
前記バッテリの電圧を検出し、
検出された前記バッテリの電圧に基づいて、前記ルックアップテーブルから対応する基準残容量を検索し、
前記事前に記録されていた残容量が前記基準残容量よりも大きいか否かを判断し、前記事前に記録されていた残容量が前記基準
残容量よりも小さい場合には、前記バッテリの電流又は平均電流が0か否かを判断するステップに再び戻り、前記事前に記録されていた残容量が前記基準残容量よりも大きい場合には、前記
新たな残容量が前記基準残容量よりも小さくなる
まで、前記事前に記録されていた残容量
からの自家消費容量
の減算によって前記新たな残容量の更新を繰り返す自家消費容量控除手順を実行し、前記自家消費容量控除手順が完了すると、再び前記バッテリの電流又は平均電流が0か否かを判断するステップに戻る請求項1に記載のバッテリの充電状態の予測方法。
【請求項4】
更に、
前記バッテリの電流が0よりも大きいと判断された場合、バッテリの充電時における残容量カウント手順を実行するステップを含み、
前記バッテリの充電時における残容量カウント手順を実行するステップとして、
前記バッテリに充電されている前記電荷容量を前記クーロン・カウント法でカウントすることで充電のカウント容量を算出し、
前記事前に記録されていた残容量に前記充電のカウント容量を加算することで前記新たな残容量を取得し、
前記新たな残容量を前記満充電容量で除算することで前記新たなバッテリの充電状態を予測する請求項1に記載のバッテリの充電状態の予測方法。
【請求項5】
前記電圧閾値は、低い充電状態に対応する電圧又は放電終止電圧である請求項1に記載のバッテリの充電状態の予測方法。
【請求項6】
前記ルックアップテーブルは、前記バッテリの電圧と前記基準充電状態及び前記基準残容量との対応表である請求項3に記載のバッテリの充電状態の予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は予測方法に関し、特に、バッテリの充電状態を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ技術の進化に伴い、現在では多くの電子機器にバッテリが設けられており、バッテリに蓄えられた電気量を利用して電子機器の運転に必要なエネルギーを供給している。バッテリに蓄えられた電気量は、電子機器の運転に応じて徐々に減少していく。バッテリに蓄えられた電気量が完全に使用されて電子機器が予告なく運転を停止することのないよう、通常、電子機器はバッテリの充電状態(State of Charge,SOC)を予測する。バッテリの充電状態(SOC)は、バッテリ内の使用可能な電気エネルギーの状態とも定義され、通常はパーセンテージで表される。例えば、SOC=残容量(Remaining Capacity,RM)/満充電容量(Full Charged Capacity,FCC)である。バッテリの充電状態(SOC)を予測することで、電子機器の使用者は、バッテリに蓄えられた電気量が不足した場合に事前にバッテリに対し充電動作を実行可能となる。
【0003】
従来技術では、例えば電圧ルックアップ法(OVC Lookup Table)のようなルックアップテーブル法でバッテリの充電状態(SOC)を予測することが多い。電圧ルックアップ法のテーブルには、電圧別に対応する充電状態(SOC)が羅列されている。よって、その時点におけるバッテリの電圧を検出することで、電圧ルックアップ法のテーブルから対応する充電状態(SOC)が照合される。電圧ルックアップ法によれば、迅速且つ容易にバッテリの充電状態(SOC)を予測可能であるが、バッテリの放電過程では、大電流の放電や苛酷な環境(例えば、高温又は低温環境)に起因して充電状態(SOC)の予測に誤差が生じることが多い。そのため、バッテリがカットオフ電圧まで放電された場合に、充電状態(SOC)がそのまま0%まで急低下してバッテリの放電を停止し、バッテリを電力とする電子機器が運転を突然停止する恐れがある。例えば、バッテリを電気自動車に使用する場合には、電気自動車が充電状態(SOC)の予測誤差に起因して予告なく走行を停止し、走行の安全に問題を生じる恐れがある。
【0004】
上記に鑑みて、本発明は、バッテリの充電状態を予測するための革新的な方法を提供する。前記方法によれば、正確なバッテリの充電状態(SOC)を予測可能なため、バッテリを電力として使用する電子機器が予告なく運転を停止するとの事態が回避される。これを本発明の目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、正確なバッテリの充電状態を予測可能とすることで、バッテリの放電時に充電状態が瞬時に0%まで急低下してバッテリの放電が停止するとの事態を回避し、バッテリを電力として使用する電子機器の操作上の安全性及び安定性を向上させるバッテリ容量の予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明はバッテリの充電状態の予測方法を提供する。前記予測方法は、バッテリを有する電子機器に用いられ、バッテリの電流が0より小さいと判断された場合、バッテリの放電時における残容量調整手順を実行するステップを含む。バッテリの放電時における残容量調整手順を実行するステップとして、バッテリの電圧を検出し、検出されたバッテリの電圧に基づいてルックアップテーブルから対応する基準充電状態を検索し、検出されたバッテリの電圧から電圧閾値を減算することで電圧差を取得し、現時点の充電状態を電圧差で除算することで第1の傾きを取得し、基準充電状態を電圧差で除算することで第2の傾きを取得し、第1の傾きを第2の傾きで除算することで調整比率を取得し、バッテリが放電した電荷容量をクーロン・カウント法でカウントすることで放電のカウント容量を算出し、放電のカウント容量に調整比率を乗算することで調整値を取得し、事前に記録されていた残容量から調整値を減算することで新たな残容量を予測し、新たな残容量を満充電容量で除算することで新たなバッテリの充電状態を予測する。
【0007】
本発明の実施例では、更に、満充電容量の更新手順を含み、そのステップとして、検出されたバッテリの電圧が電圧閾値以下か否かを判断し、バッテリの電圧が電圧閾値以下でない場合には満充電容量の更新手順を停止し、バッテリの電圧が電圧閾値以下の場合にはバッテリの電流が0より小さいか否かを引き続き判断し、バッテリの電流が0より小さい場合には満充電容量の更新手順を停止し、バッテリの電流が0より小さくない場合には満充電容量の更新手順の実行を開始する。満充電容量の更新手順を実行するステップとして、バッテリに充電されている電荷容量をクーロン・カウント法でカウントすることで充電のカウント容量を算出し、且つ、事前に記録されていた残容量に充電のカウント容量を加算することで新たに記録する残容量を取得し、バッテリが満充電状態か否かを判断し、満充電状態の場合には新たに記録する残容量を満充電容量として更新し、満充電状態でない場合には、バッテリの電流が0より小さいか否かを判断するステップに戻る。
【0008】
本発明の実施例では、更なるステップとして、バッテリの電流又は平均電流が0か否かを判断し、バッテリの電流又は平均電流が0の場合には、バッテリの静態時における残容量補正手順を実行し、バッテリの電流又は平均電流が0でない場合にはバッテリが充電又は放電している。バッテリの静態時における残容量補正手順を実行するステップとして、バッテリの電圧を検出し、検出されたバッテリの電圧に基づいて、ルックアップテーブルから対応する基準残容量を検索し、事前に記録されていた残容量が基準残容量よりも大きいか否かを判断し、事前に記録されていた残容量が基準容量よりも小さい場合には、バッテリの電流又は平均電流が0か否かを判断するステップに再び戻り、事前に記録されていた残容量が基準残容量よりも大きい場合には、新たに記録する残容量が基準残容量よりも小さくなるよう、事前に記録されていた残容量について自家消費容量控除手順を少なくとも1回実行し、自家消費容量控除手順が完了すると、再びバッテリの電流又は平均電流が0か否かを判断するステップに戻る。
【0009】
本発明の実施例では、更に、バッテリの電流が0よりも大きいと判断された場合にバッテリの充電時における残容量カウント手順を実行するステップを含み、バッテリの充電時における残容量カウント手順を実行するステップとして、バッテリに充電されている電荷容量をクーロン・カウント法でカウントすることで充電のカウント容量を算出し、 事前に記録されていた残容量に充電のカウント容量を加算することで新たな残容量を取得し、新たな残容量を満充電容量で除算することで新たなバッテリの充電状態を予測する。
【0010】
本発明の実施例において、電圧閾値は、低い充電状態に対応する特定の電圧又は放電終止電圧である。
【0011】
本発明の実施例において、ルックアップテーブルは、バッテリの電圧と基準充電状態及び基準残容量との対応表である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明における電子機器の回路構造を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明におけるバッテリの充電状態の予測方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明のバッテリの放電時における残容量調整手順のフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明におけるバッテリの電圧及び充電状態のグラフである。
【
図5】
図5は、本発明のバッテリの静態時における残容量補正手順のフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明におけるバッテリの満充電容量更新のフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明におけるバッテリの放電時における充電状態予測曲線と、従来技術におけるバッテリの放電時における充電状態予測曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における電子機器の回路構造を示す
図1、本発明におけるバッテリの充電状態の予測方法のフローチャートである
図2、本発明のバッテリの放電時における残容量調整手順のフローチャートである
図3、本発明におけるバッテリの電圧及び充電状態のグラフである
図4、及び本発明のバッテリの静態時における残容量補正手順のフローチャートである
図5を参照する。
図1に示すように、本発明における電子機器100としては、電気自動車、携帯型電子機器、又は、バッテリを主な供給電源とするデバイスが考えられ、バッテリ10、プロセッサ11、記憶ユニット12、表示ユニット13、電流検出回路14及び電圧検出回路15を含む。プロセッサ11は、バッテリ10、記憶ユニット12、表示ユニット13、電流検出回路14及び電圧検出回路15に接続される。記憶ユニット12には、バッテリ容量予測プログラム120とルックアップテーブル121が記憶されるとともに、バッテリの残容量(Remaining Capacity,RM)とバッテリの満充電容量(Full Charged Capacity,FCC)が情報として記録される。本発明の電子機器100は、バッテリ容量予測プログラム120によりバッテリ10の充電状態(State of Charge,SOC)を予測する。予測された充電状態(SOC)は、記憶ユニット12に記憶されて表示ユニット13に表示される。
【0014】
図2に示すように、本発明におけるバッテリの充電状態(SOC)の予測方法のフローは次の通りである。まず、ステップS201において、プロセッサ11はバッテリ容量予測プログラム120を起動し、電流検出回路14によりバッテリ10の電流(I)を検出することで、バッテリ10の電流(I)又は平均電流(I
avg)が0か否かを判断する。バッテリ10の電流(I)又は平均電流(I
avg)が0でない場合にはバッテリ10が充放電状態にあるため、続いてステップS203を実行し、バッテリ10の電流(I)が0より小さいか否かをプロセッサ11により判断する。バッテリ10の電流(I)が0より小さい場合、バッテリ容量予測プログラム120は、バッテリの放電時における残容量調整手順S21を実行する。一方、バッテリ10の電流(I)が0より小さくない場合、バッテリ容量予測プログラム120は、バッテリの充電時における残容量カウント手順S23を実行する。そして、ステップS201に戻り、バッテリ10の電流(I)又は平均電流(I
avg)が0の場合、バッテリ10は非充放電状態にあるため、バッテリ容量予測プログラム120は、バッテリの静態時における残容量補正手順S25を実行する。
【0015】
図3に示すように、バッテリ10が放電中の場合、バッテリ容量予測プログラム120は、バッテリの放電時における残容量調整手順S21を実行する。まず、ステップS211において、プロセッサ11は電圧検出回路15によりバッテリ10の電圧(V
X)を検出し、検出された電圧(V
X)に基づいて、ルックアップテーブル121から対応する基準充電状態(SOC
ref)を検索する。本発明の実施例において、ルックアップテーブル121は、バッテリの電圧と基準充電状態(SOC
ref)及び基準残容量(RM
ref)との対応表であり、各バッテリの電圧に対応する基準充電状態(SOC
ref)と基準残容量(RM
ref)を羅列している。例えば、電圧A1(mV)は基準充電状態B1(%)と基準残容量C1(mA)に対応し、電圧A2(mV)は基準充電状態B2(%)と基準残容量C2(mA)に対応し、…、電圧A
N(mV)は基準充電状態B
N(%)と基準残容量C
N(mA)に対応する等となる。ステップS213では、検出された電圧(V
X)から電圧閾値(V
th)を減算することで電圧差(V
d=V
X-V
th)を取得する。本発明の実施例において、電圧閾値(V
th)は、例えば、SOC 0%に対応する電圧値やSOC 5%に対応する電圧値というように、低い充電状態(SOC)に対応する特定の電圧としてもよい。或いは、本発明の他の実施例において、電圧閾値(V
th)は放電終止電圧(EDV,End of Discharge Voltage)としてもよい。
図4に示すように、ステップS215では、現時点の充電状態(SOC
now)を電圧差(V
d)で除算することで、バッテリ10の放電曲線301における第1の傾き(Slope1)を取得する。また、基準充電状態(SOC
ref)を電圧差(V
d)で除算することで第2の傾き(Slope2)を取得する。その後、第1の傾き(Slope1)を第2の傾き(Slope2)で除算することで調整比率(Adj(%))を取得する。続いて、ステップS217において、バッテリ10が放電した電荷容量をクーロン・カウント法でカウントすることで、放電のカウント容量(Count_Dsg)を算出する。そして、放電のカウント容量に調整比率を乗算することで調整値(Adj_Value=Count_Dsg×Adj(%))を取得する。その後、事前に記録されていた残容量(RM
prev)から調整値(Adj_Value)を減算すれば、新たな残容量(RM
new=RM
prev-Adj_Value)が補償される。再び
図2を参照して、バッテリの放電時における残容量調整手順S21の実行を終えたあと、ステップS205を実行し、補償された残容量(RM
new)を満充電容量(FCC)で除算すれば新たなバッテリの充電状態(SOC
new=RM
new/FCC)が得られる。
【0016】
上述したように、バッテリの使用過程では、大電流の放電や苛酷な環境に起因して充電状態(SOC)の予測に誤差が生じることが多い。そこで、第1の傾き(Slope1)が第2の傾き(Slope2)よりも大きい場合には、現時点の充電状態が実際の充電状態よりも高くなっているため、事前に記録されていた残容量(RMprev)から大きな調整値(Adj_Value)を減算する。反対に、第1の傾き(Slope1)が第2の傾き(Slope2)よりも小さい場合には、現時点の充電状態が実際の充電状態よりも低くなっているため、事前に記録されていた残容量(RMprev)から小さな調整値(Adj_Value)を減算する。このように、バッテリ10の放電過程で速やかに残容量(RM)を調整することで、予測されるバッテリの充電状態(SOC)をいっそう正確とすることができる。
【0017】
ステップS203に戻り、バッテリ10の電流(I)が0よりも大きいとプロセッサ11により判断された場合、バッテリ容量予測プログラム120は、バッテリの充電時における残容量カウント手順S23を実行する。バッテリの充電時における残容量カウント手順S23では、バッテリ10に充電されている電荷容量をクーロン・カウント法でカウントすることで、充電のカウント容量(Count_chg)を算出する。そして、事前に記録されていた残容量(RMprev)に充電のカウント容量(Count_chg)を加算すれば、新たな残容量(RMnew=RMprev+Count_chg)が得られる。その後、バッテリの充電時における残容量カウント手順S23の実行を終えると、ステップS205を実行し、新たな残容量(RMnew)を満充電容量(FCC)で除算すれば新たなバッテリの充電状態(SOCnew)が得られる。
【0018】
次に、ステップS201に戻り、バッテリ10の電流(I)又は平均電流(I
avg)が0であるとプロセッサ11により判断された場合、バッテリ10は非充放電状態にあるため、バッテリ容量予測プログラム120は、バッテリの静態時における残容量補正手順S25を実行する。
図5に示すように、静態時における残容量補正手順S25では、まず、ステップS251において、プロセッサ11が電圧検出回路15によりバッテリ10の電圧(V
X)を検出し、検出された電圧(V
X)に基づいて、ルックアップテーブル121から対応する基準残容量(RM
ref)を検索する。ステップS253において、プロセッサ11は、事前に記録されていた残容量(RM
prev)が基準残容量(RM
ref)よりも大きいか否かを判断する。事前に記録されていた残容量(RM
prev)が基準残容量(RM
ref)よりも小さい場合には、残容量(RM
prev)を更新せずに再びステップS201に戻り、バッテリ10の電流(I)又は平均電流(I
avg)が0か否かをプロセッサ11により引き続き判断する。反対に、事前に記録されていた残容量(RM
prev)が基準残容量(RM
ref)よりも大きい場合には、ステップS255を実行し、事前に記録されていた残容量(RM
prev)について自家消費容量(self-consumption capacity)の控除手順を少なくとも1回実行することで、新たな残容量(RM
new=RM
prev-Self_con)を取得する。その後、新たな残容量(RM
new)が基準残容量(RM
ref)よりも小さくなるまでステップS253及びS255を引き続き実行する。本発明において、自家消費容量(Self_con)とは残容量の自己修正値であり、例えば1mAh又はその他の数値といった小さな単位の数値である。自家消費容量(Self_con)控除手順が完了し、且つ新たな残容量(RM
new)が基準残容量(RM
ref)よりも小さくなると、新たな残容量(RM
new)を記憶ユニット12に記録する。そして、再びステップS201に戻り、バッテリ10の電流(I)又は平均電流(I
avg)が0か否かをプロセッサ11により引き続き判断する。このように、記録される残容量(RM
new)を自家消費容量(Self_con)により複数回補正することで、記録される残容量(RM
new)をルックアップテーブル121において対応する基準残容量(RM
ref)に徐々に近付けることができる。その後、静態時における残容量補正手順S25の実行を終えると、ステップS205を実行し、新たな残容量(RM
new)を満充電容量(FCC)で除算すれば新たなバッテリの充電状態(SOC
new)が得られる。
【0019】
また、本発明の一実施例では、
図6に示すように、満充電容量(FCC)の更新手順を更に含む。満充電容量(FCC)の更新手順では、まずステップS271において、バッテリ10の電圧(V
X)が電圧閾値(V
th)以下か否かをプロセッサ11により判断する。電圧閾値(V
th)は、放電終止電圧(EDV)としてもよい。電圧(V
X)が電圧閾値(V
th)以下でない場合にはステップS272を実行し、満充電更新フラグ(FCC_Update_Flag)を0に設定して満充電容量(FCC)の更新を停止する。反対に、電圧(V
X)が電圧閾値(V
th)以下の場合には引き続きステップS273を実行し、バッテリ10の電流(I)が0より小さいか否かを判断する。バッテリ10の電流(I)が0より小さい場合にはステップS272に戻り、満充電容量(FCC)の更新を停止する。反対に、バッテリ10の電流(I)が0より小さくない場合には、満充電更新フラグ(FCC_Update_Flag)を1に設定し、満充電容量(FCC)の更新手順S28の実行を開始する。満充電容量(FCC)の更新手順S28では、ステップS281において、バッテリ10に充電されている電荷容量をクーロン・カウント法でカウントすることで充電のカウント容量(Count_chg)を算出する。そして、事前に記録されていた残容量(RM
prev)に充電のカウント容量(Count_chg)を加算することで新たな残容量(RM
new=RM
prev+Count_chg)を取得する。続いて、ステップS282において、バッテリ10が満充電か否かを判断する。バッテリ10が満充電状態の場合にはステップS283を実行し、新たな残容量(RM
new)を新たな満充電容量(FCC
new=RM
new)として更新する。反対に、バッテリ10が満充電でない場合にはステップS273に戻り、バッテリ10の電流(I)が0より小さいか否かを判断して、満充電容量(FCC)の更新手順S28を引き続き実行するか否かを決定する。このように、満充電容量(FCC)を更新することで、より正確なバッテリの充電状態(SOC)を予測可能となる。
【0020】
本発明におけるバッテリの放電時における充電状態予測曲線と、従来技術におけるバッテリの放電時における充電状態予測曲線を示す
図7を参照する。
図7に示すように、従来の技術では、電圧ルックアップ法のみでバッテリの放電時における充電状態(SOC)を予測しており、その場合の予測結果は曲線303のようになる。前記曲線303は線形の曲線である。また、電圧ルックアップ法のみでバッテリの放電時における充電状態(SOC)を予測する場合には、大電流の放電又は苛酷な環境条件に起因して充電状態(SOC)の予測に誤差が生じやすい。バッテリの電気量が過大評価され、且つその充電状態(SOC)が低いレベルにある場合、放電を続けると充電状態(SOC)がそのまま0%まで急低下する恐れがある。例えば、曲線303において、バッテリの電気量が過大評価され、且つ10%という低い充電状態(SOC)にある場合、バッテリが放電を続けると、バッテリの充電状態(SOC)が10%から0%まで瞬時に急低下する結果、バッテリを電力とする電子機器が予告なしに運転を停止してしまう。
【0021】
本発明では、バッテリ容量予測プログラム120がバッテリの放電時における充電状態(SOC)を予測する。この場合の予測結果は曲線305のようになる。また、前記曲線305は放物線状をなす。
図7を例にすると、本発明におけるバッテリ容量予測プログラム120は、不正確な残容量(RM)及び充電状態(SOC)を調整する。バッテリ10の充電状態(SOC)が40%以下まで放電されたとき、曲線305上の充電状態(SOC)は線形の曲線303上の充電状態(SOC)と比較して明らかに調整されている。このように、本発明では、バッテリ容量予測プログラム120によってバッテリの充電状態(SOC)を速やかに調整する。そのため、バッテリ10が低い充電状態(SOC)にある場合に放電を続けても、バッテリの充電状態(SOC)が瞬時に0%まで急低下することがない。例えば、バッテリ10は、放電過程において充電状態(SOC)が10%から瞬時に0%まで急低下することがないため、バッテリ10を電力として使用する電子機器の運転上の安全性及び安定性が向上する。
【0022】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。即ち、本発明の特許請求の範囲に記載する形状、構造、特徴及び精神に基づきなされる等価の変形及び補足は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0023】
100 電子機器
10 バッテリ
11 プロセッサ
12 記憶ユニット
120 バッテリ容量予測プログラム
121 ルックアップテーブル
13 表示ユニット
14 電流検出回路
15 電圧検出回路
301 曲線
303 曲線
305 曲線