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特許6992126アレルゲン検出のためのシグナル発生ポリヌクレオチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】アレルゲン検出のためのシグナル発生ポリヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20220127BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220127BHJP
   G01N 33/542 20060101ALI20220127BHJP
   G01N 33/02 20060101ALI20220127BHJP
   C12Q 1/6804 20180101ALI20220127BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
G01N33/53 Q
G01N33/542 A
G01N33/02
C12Q1/6804 Z
C12M1/34 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020100200
(22)【出願日】2020-06-09
(62)【分割の表示】P 2018242372の分割
【原出願日】2014-10-28
(65)【公開番号】P2020162612
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】61/896,399
(32)【優先日】2013-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/938,528
(32)【優先日】2014-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/991,068
(32)【優先日】2014-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/009,958
(32)【優先日】2014-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/026,361
(32)【優先日】2014-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516127204
【氏名又は名称】ドッツ テクノロジー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】DOTS Technology Corp.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ギルボア-ゲフィン、アディ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、レヌカ バブ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-525661(JP,A)
【文献】Biosensors and Bioelectronics,2012年12月20日,Vol.43,p245-251
【文献】Analytical Biochemistry,2001年06月15日,Vol.294,p126-131
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C12N 1/00-38
G01N 33/00-98
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号16、17、42~65からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、ピーナッツアレルゲンに特異的に結合するシグナル発生ポリヌクレオチド。
【請求項2】
フルオロフォア及びクエンチャーをさらに含み、これらは、前記クエンチャーが前記フルオロフォアの蛍光を消光するのに十分な程度に近傍にある、請求項1に記載のシグナル発生ポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記フルオロフォア及び前記クエンチャーが、前記ヌクレオチド配列の反対端に連結されており、前記ヌクレオチド配列の5’末端の5~20個の核酸塩基残基が、ヘアピン構造を形成可能な前記ヌクレオチド配列の3’末端の5~20個の核酸塩基残基に少なくとも80%相補性であることにより、前記クエンチャーが、前記フルオロフォアの蛍光を消光するのに十分な程度に前記フルオロフォアの近傍に配置される、請求項2に記載のシグナル発生ポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記ヌクレオチド配列の5’末端にアニーリングされた5~20核酸塩基長のリンカー配列を更に含み、前記リンカー配列は、前記ヌクレオチド配列の5’末端と少なくとも80%の相補性を有し、前記ヌクレオチド配列がフルオロフォアを含み、前記リンカー配列がクエンチャーを含むか、又は前記ヌクレオチド配列がクエンチャーを含み、前記リンカー配列がフルオロフォアを含む、請求項2に記載のシグナル発生ポリヌクレオチド。
【請求項5】
試料中のアレルゲンを検出するためのデバイスであって、
(a)試料を受容し、その試料から1つ以上の緩衝液を用いてアレルゲンを抽出するように構成された試料収集チャンバ及びタンパク質抽出膜を含むカートリッジと、
(b)試料から抽出されたアレルゲンと接触するように構成された少なくとも1つの検出チャンバであって、前記試料収集チャンバと関わりを持つ前記検出チャンバ、及び核酸に基づく検出分子と、
(c)蛍光励起、蛍光発光のフィルタリング、及び蛍光発光の検出のための手段を備える検出器ユニットであって、前記検出チャンバと関わりを持ち、蛍光シグナルを検出し、検出されたシグナルをデジタル化するように構成されている検出器ユニットと、
(d)前記検出されたシグナルを受信し、前記アレルゲンの検出を示すための少なくとも1つの表示ウィンドウと、
(e)針の内部にあるドリルビットを含むドリルプローブを有する試料採取機構と
を備え
前記核酸に基づく検出分子は、配列番号16、17、42~65からなる群から選択される、ピーナッツアレルゲンに特異的に結合するヌクレオチド配列を含む、デバイス。
【請求項6】
1対の検出チャンバを含み、前記1対の検出チャンバの一方の検出チャンバが、陰性対照を提供し、前記1対の検出チャンバの他方の検出チャンバが、前記アレルゲンを検出し、任意選択で、デバイスは前記アレルゲンの検出を示すための1対の表示ウィンドウを含み、前記1対の表示ウィンドウが、前記1対の検出チャンバに対応する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記カートリッジが、前記試料収集チャンバ内への前記試料の進入に先立って、消化緩衝液を試料収集チャンバに送るためのシリンジポンプを含み、任意選択で、
前記シリンジポンプは、流体導管を介して前記試料収集チャンバ及び前記検出チャンバと流体連通しており、前記流体導管は、シリンジの出口から前記試料収集チャンバまで伸長する第1の導管と、前記検出チャンバから前記シリンジまで伸長する第2の流体導管とを含み、前記第1の導管は、流体を前記シリンジに引き込む際に、前記試料収集チャンバから前記シリンジへと流体が逆流することを防止するように構成されている第1の一方向バルブを含み、前記第2の流体導管は、流体を前記シリンジから運び出す際に、流体が前記検出チャンバ内へと流れることを防止するように構成されている第2の一方向バルブを含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
(i)前記カートリッジが使い捨てであるか、又は
(ii)前記核酸に基づく検出分子は、前記ピーナッツアレルゲンに特異的に結合するアプタマーを含むシグナル発生ポリヌクレオチドである、
請求項5~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲンを検出するための方法、デバイス、及び分子に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギーは、全世界で何百万もの人々、合衆国では約1500万人に影響を及ぼしている重大な医学的状態であり、その中には多くの小児が含まれている。アレルギー反応では、免疫系が、アレルゲンを誤って脅威として標的とし、それを攻撃する。アレルギー反応は、皮膚、消化器系、胃腸管、呼吸器系、循環系、及び心血管系に影響を及ぼす場合があり、幾つかのアレルギー反応では、複数の臓器系が影響を受ける。アレルギー反応は、軽症から重症又は生死に関わるものまで様々である。重篤な症状には、呼吸困難、低血圧、胸痛、意識消失、及びアナフィラキシーが含まれ得る。アレルギーを有する人々は、現在、特定のアレルゲンを含有する可能性のあるあらゆる食品を回避することにより、自身のアレルギーを管理している。こうした制限は、患者の生活の質に大きな影響を及ぼし、食品のアレルゲン含有を正しく評価する方法は依然として存在しない。合衆国では、3分に1人が、食物アレルギーの症状で緊急処置室に搬送されている。アレルゲンの存在を迅速に決定する方法があれば、有益性は大きいであろう。患者自身が食品を試験して、アレルゲン含有を正確に及び直ちに決定することが可能な携帯デバイスは、詳細な情報を得たうえで食べるか否かを決断するために有益であろう。
【0003】
McKayの特許文献1には、食物アレルゲンを検出するための食事用マットであって、吸収材料、及び上記マットの別々の領域に塗布されている化学試薬の小さなスポットで形成されている食事用マットが教示されている。食品がアレルギー原因物質を含有していれば、化学試薬の外観が変化し、食品中にアレルギー原因物質が存在することを指し示すことになる。検出限界及び検出特異性は、スポットに使用される化学試薬次第である。欠点としては、固形食品を分析する場合、固形食品とスポット試薬との反応時間が長いため、偽陰性を示す可能性が高いということである。
【0004】
Jungらの特許文献2及び特許文献3には、1つ又は複数のアレルゲン指標を分析するように構成されているマイクロ流体チップで試料を処理し、1つ又は複数の検出ユニットでアレルゲン指標を検出し、1つ又は複数の表示ユニットで結果を表示することより、アレルゲンを検出する方法が教示されている。この検出システムは、マイクロ流体チップ、試薬送達ユニット、遠心分離ユニット、分析ユニット、検出ユニット、表示ユニット、及び記録ユニットを含む。このデバイスは、携帯できるほど小型ではない。
【0005】
Scottらの特許文献4には、食物アレルゲンを検出するための携帯デバイスであって、筺体、試料入口ポート、試料に含まれている可能性のあるアレルゲンの存在を示すための手段、及び上記試料に含まれている可能性のあるアレルゲンに対する抗体を含み、上記抗体が検出可能なタグで標識されているアレルゲン検出チップを含む携帯デバイスが教示されている。
【0006】
Roydsの特許文献5には、食品試料中の有害汚染物質の存在を特定するための食品試験デバイスであって、使い捨ての試料容器;ブレードアッセンブリを含む機械的液化装置;及び有害汚染物質に対する親和性を有し、液化食品試料中の有害汚染物質を検出し、有害汚染物質を認識すると視覚的な合図を生成することが可能な試薬を有する試験供給区画を含むデバイスが教示されている。
【0007】
アプタマー、並びにアプタマーを使用して食品中のタンパク質を検出するためのデバイス及び方法が、以下のものを含む幾つかの特許及び特許出願(それらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている:Kimらの特許文献6には、官能化ポリジアセチレン分子センサーのマイクロアレイが教示されている;Brunnerらの特許文献7には、アプタマーに基づく抗CETP抗体誘導抗原を使用して、アテローム性動脈硬化症を治療するための方法が教示されている;及びRasoolyらの特許文献8には、「電気的浸透」(ランダム抵抗ネットワークによる電気の流れ)と呼ばれる物理的原理を使用して、半導体での生体分子結合を電気的に検出するための方法及びシステムが教示されている。1つの実施形態では、標的分子と結合する捕捉分子は、アプタマーであってもよい。Lowery,Jr.らの特許文献9には、分析物を収集及び検出するためのNMRシステム及び方法が教示されている。Yokotaらの特許文献10には、内因性カイロミクロンを使用することにより標的遺伝子発現を抑制するために核酸を送達するためのシステムであって、上記核酸がアプタマーであってもよいシステムが教示されている。Herzogらの特許文献11には、ペプチドYY(PYY)の発現レベルが低減されているトランスジェニック動物、及び上記トランスジェニック動物を使用して、アプタマーのライブラリーをスクリーニングし、PYYのアゴニスト及びアンタゴニストを特定するための方法が教示されている。Lieberらの特許文献12には、分析物を検出するための蛍光に基づくナノスケールワイヤバイオセンサーデバイス及び方法であって、アプタマーが、上記ナノスケールワイヤに対して間接的に固定されていてもよいデバイス及び方法が開示されている。Hornbeckらの特許文献13には、カルシノーマ及び/又は白血病で特定された新規のチロシンリン酸化部位を検出及び定量化するための側方流動デバイスが教示されている。Mataらの特許文献14には、血清レチノール、レチノール結合タンパク質(RBP)、及び/又はトランスサイレチン(TTR)の活性又は利用能を調節することができる巨大分子及び他の分析物を検出するためのバイオセンサーが教示されている。Gordonらの特許文献15には、捕捉剤の組み合わせを使用することを含み、捕捉剤がアプタマーであってもよい、試料中にある少量のタンパク質アイソフォーム(例えば、選択的スプライシング、又は異なる疾患タンパク質アイソフォーム、又は分解産物による)を検出するための方法、試薬、及び装置が教示されている。Vukicevicらの特許文献16には、硬骨及び軟組織の欠損及び障害を診断及び治療するための、骨形態形成タンパク質(BMP)、例えば、BMP-1プロコラーゲンc-プロテイナーゼの核酸バイオセンサーが教示されている。
【0008】
アナフィラトキシンC5a-(補体因子5a)-結合アプタマーが、Buchnerらの特許文献17、特許文献18、及び特許文献19に記載されている。また、Buchnerらの特許文献20には、CXCケモカインストロマ細胞由来因子-1(SDF-I)に結合するアプタマーが記載されている。
【0009】
分子ビーコン(MB)は、フルオロフォア部分及びクエンチャー部分を両方とも含み、スイッチのように作用するヘアピン型オリゴヌクレオチドである。閉じた状態では、フルオロフォア及びクエンチャーは共に近傍にあり、蛍光は、共鳴エネルギー移動により消光される(「スイッチオフ」)。構造変化によりヘアピン構造が開き、フルオロフォアがクエンチャーと離れると、クエンチャーはもはや消光することができず、蛍光は回復する(「スイッチオン」)。MBは、感度が高く、優れた分子認識特異性を有するプローブを必要とする検出デバイス及び診断アッセイに特に有用である。それらは、非常に標的特異的であり、ヌクレオチドが1でも異なると核酸標的配列は無視される。MBの他の利点は、以下の通りである:(1)高感度であり、リアルタイムモニタリングが可能である;(2)バックグラウンドシグナルが低く、200倍を超える蛍光増強が可能である;(3)MBでは、過剰な未ハイブリダイズプローブからプローブ-標的ハイブリッドを単離することが不可能又は望ましくない場合、「分離せずに検出する」ことが可能である。MBのループ-ステム構造がもたらす特異性は、様々な生物学的環境で使用可能であることが実証されている。本明細書で開示されている組成物、方法、及びデバイスは、溶液中(in vitro)でのRNA-DNA相互作用の研究、タンパク質-DNA相互作用の研究、生体系内での測定、及びバイオセンサーの設計に応用可能である。例えば、本明細書に記載の組成物は、PCR中にDNA/RNA増幅をリアルタイムでモニタリングすること等のin vitro研究;臨床診断用の迅速で信頼性の高い突然変異検出(非特許文献1);スペクトル核型決定(非特許文献2):DNA粘着末端対合(SEP)分析;RNAの細胞内局在性及び細胞輸送経路の可視化(非特許文献3)に使用することができる。
【0010】
例示的な分子ビーコンは、非特許文献4に概説されており、以下の文献に記載されている:Litmanらの特許文献21、この文献には、癌に関連するマイクロRNA(miRNA)配列、並びにアプタマー及び分子ビーコンを使用したそれらの検出が教示されている;Meyersらの特許文献22、この文献には、新規のプロテインキナーゼ、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ、セリン/トレオニンホスファターゼ、プロリルオリゴペプチダーゼ、トリプシン、セリンプロテアーゼ、及びユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼファミリーメンバーが教示されており、明細書では、それらは「53070、15985、26583、21953、m32404、14089、及び23436」と呼ばれており、概して、アプタマー又は分子ビーコンを使用してそれらを検出する方法が開示されている;及びKapeller-Libermannらの特許文献23、この文献には、3つの新規とされているプロテインキナーゼファミリーメンバーが教示されており、明細書では、それらは「2504、15977、及び14760」と呼ばれており、概して、アプタマー又は分子ビーコンを使用したそれらの検出が開示されている。
【0011】
迅速で正確なアレルゲン検出用の携帯可能な及び再使用可能なデバイスの必要性が依然として存在している。単一のデバイスを用いて複数のアレルゲンを検出する必要性も依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第5,824,554号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0182339号明細書
【文献】米国特許第8,617,903号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0210033号明細書
【文献】米国特許第7,527,765号明細書
【文献】米国特許第8,633,140号明細書
【文献】米国特許第8,618,046号明細書
【文献】米国特許第8,614,466号明細書
【文献】米国特許第8,563,298号明細書
【文献】米国特許第8,507,458号明細書
【文献】米国特許第8,236,933号明細書
【文献】米国特許第8,232,584号明細書
【文献】米国特許第7,977,462号明細書
【文献】米国特許第7,973,079号明細書
【文献】米国特許第7,855,057号明細書
【文献】米国特許第7,850,964号明細書
【文献】国際公開第2009/040113号
【文献】国際公開第2010/108657号
【文献】国際公開第2013/104540号
【文献】国際公開第2009/019007号
【文献】米国特許第8,188,255号明細書
【文献】米国特許第7,282,360号明細書
【文献】米国特許第6,730,491号明細書
【非特許文献】
【0013】
【文献】Xiaoら、(2009年)Fluorescence Detection of Single Nucleotide Polymorphisms via a Single,Self-Complementary,Triple-stem DNA Probe.Angew Chem.Int.Ed.Engl.48巻(24号):4354~4358頁
【文献】Kostrikisら、Science、1998年、279巻:1228頁
【文献】Tanら、(2005年)Molecular Beacons for Bioanalytical Applications.Analyst 130巻:1002~1005頁
【文献】Leungら、2011年(Nucleic Acids Research、2012年、40巻(3号):941~955頁)
【発明の概要】
【0014】
本発明は、種々のタイプの試料中でのアレルゲン検出に使用するためのデバイス、方法、及び検出分子を提供する。
本発明の1つの態様は、試料中の1種又は複数種のアレルゲンを検出するための方法であって、(a)アレルゲンを含有する疑いのある試料を得るステップ、(b)1種又は複数種の緩衝液で(a)の試料を消化するステップ、(c)上記消化試料を検出分子と接触させるステップ、(d)上記接触試料を励起手段で処理するステップ、及び(e)上記検出分子及び上記アレルゲンの相互作用を可視化するステップを含む方法である。
【0015】
本発明の別の態様は、試料中のアレルゲンを検出するためのデバイスである。上記デバイスは、以下の部品を支持するように構成されている本体を含む:(a)上記試料を収集及び処理するためのカートリッジ;(b)蛍光励起を提供するための手段;(c)蛍光発光をフィルタリングするための光フィルタ;(d)上記アレルゲン及び検出分子を混合するための検出チャンバ;(e)検出シグナルをデジタル化するための手段を含む、蛍光発光を検出するための検出器;及び(f)上記検出シグナルを受け取り、上記アレルゲンの検出を示すための表示ウィンドウ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の1つの実施形態による検出デバイス10の概略図である。
図2A】本発明の検出デバイスの別の実施形態で使用されるカートリッジ1400の概略図である。この図には、シリンジプランジャー1408をシリンジ1406のバレルに押し込んだ時のカートリッジ内の流体の流れの方向が示されている。流体(消化緩衝液D)は、一方向バルブ1422から混合チャンバ1410に注入される。
図2B図2Aの同じカートリッジ1400の概略図である。この図には、シリンジプランジャー1408をシリンジ1406のバレルから引き出した時のカートリッジ内の流体の流れの方向が示されている。流体は、検出チャンバ1426から第2の一方向バルブ1424を介してシリンジ1406のバレルへと引き出されて戻る。
図3】その前部ローブと後部ローブ(それぞれ、2015及び2025)との間に配置されている把持ハンドル2017を有する砂時計型の基本形状をしている検出デバイス2000の別の実施形態を示す図である。
図4】コア配列202、フルオロフォア204、クエンチャー206、及びリンカー配列208を含むシグナル発生ポリヌクレオチドSPN-A200により表わされる検出分子の第2の配列を示す図である。
図5】ヘアピン型シグナル発生ポリヌクレオチドSPN-E300により表わされる検出分子とその標的分子リゾチームとの反応を示す図である。また、アプタマーコア配列302、フルオロフォア304、およびクエンチャー306が示されている。
図6】二量体シグナル発生ポリヌクレオチドSPN-E400(アニーリングされたリンカー配列408を含む)により表わされる検出分子とその標的分子リゾチームとの反応を示す図である。また、アプタマーコア配列402、フルオロフォア404、およびクエンチャー406が示されている。
図7A】一般的なシグナル発生ポリヌクレオチド500と分子標的としてのリゾチームとの反応を示す図である。シグナル発生ポリヌクレオチド500は、フルオロフォア504が連結されているコア配列502を有する。また、シグナル発生ポリヌクレオチド500は、クエンチャー506が連結されているリンカー配列508を含む。リンカー配列508が、コア配列502にアニーリングされると、それによりクエンチャー506がフルオロフォア504の近傍に配置されるリゾチームがコア配列502に結合すると、ヘアピンを有する二次構造が形成され、それによりリンカー配列508が放出され、クエンチャー506は、もはやフルオロフォア504の蛍光を消光しなくなる。
図7B】一般的なヘアピン型シグナル発生ポリヌクレオチド600と分子標的としてのリゾチームとの反応を示す図である。シグナル発生ポリヌクレオチド600は、フルオロフォアが5’末端に連結されており、クエンチャー606が3’末端に連結されているコア配列602を有する。コア配列602は、クエンチャー606をフルオロフォア604に十分に接近させて、その蛍光を消光するヘアピン区画を有する。リゾチームがコア配列602に結合すると、ヘアピン構造が崩れ、クエンチャー606はフルオロフォア504から離れ、クエンチャー606は、もはやフルオロフォア604の蛍光を消光しなくなる。
図8】SPN-Eによるリゾチームの蛍光検出のグラフである(519nmの光学濃度対リゾチーム濃度)。
図9A】様々な濃度のリゾチームを有する3つの試料の、SPN-Eによるリゾチームの蛍光検出の範囲を示す棒グラフである(519nmの光学濃度)。
図9B】様々なピコグラム量のリゾチームを含む3つの試料並びに卵白及びBSAを含む試料の、SPN-Eによるリゾチームの蛍光検出の範囲を示す棒グラフである(519nmの光学濃度)。卵白は、むろんリゾチームを含有する。
図10】ミルク又はBSAと混合したリゾチームを有する2つの試料を含む、様々な濃度のリゾチームを有する4つの試料の、SPN-Eによるリゾチームの蛍光検出の範囲を示す棒グラフである(519nmの光学濃度)。
図11A】卵白のみ又はタンパク質溶液と混合した卵白を様々に希釈した一連の7つの試料の、SPN-Eによるリゾチームの蛍光検出の範囲を示す棒グラフである(519nmの光学濃度)。卵白は、むろんリゾチームを含有する。
図11B】希釈卵白のみ又はタンパク質溶液(BSA)と混合した希釈卵白の、SPN-Eによるリゾチームの蛍光検出の範囲を示す棒グラフである(519nmの光学濃度)。卵白は、むろんリゾチームを含有する。
図12】リゾチームに対するSPN-Eの特異的結合を実証する棒グラフである。卵白は、むろんリゾチームを含有する。
図13A】SPN-Aによるピーナッツアレルゲンara h1の蛍光検出のグラフである(519nmの光学濃度対ピーナッツバター濃度)。
図13B】1試料当たり様々な濃度のSPN-Aを含有する一連の試料の、SPN-Aによるピーナッツアレルゲンara h1の蛍光検出を示すグラフである(519nmの光学濃度対リゾチーム濃度)。
図14A】SPN-Aをピーナッツバターの試料と混合した後の時間の関数としての、SPN-Aによるピーナッツアレルゲンara h1の蛍光検出のグラフである(519nmの光学濃度)。BSAの対照グラフは、比較のために示されている。
図14B】SPN-Eをリゾチームの試料と混合した後の時間の関数としての、SPN-Eによるリゾチームの蛍光検出のグラフである(519nmの光学濃度)。BSAの対照グラフは、比較のために示されている。
図15】10%、20%、及び40%エタノール(EtOH)を含有するPBS系緩衝液で抽出された総タンパク量を示すヒストグラムである。GFは、グルテンを含まないことを意味する。
図16】Tris塩基pH8.0、5mM EDTA、及び20%エタノールを含有するTris系緩衝液(DOTS緩衝液)並びにNeogen(登録商標)緩衝液でのグルテン回収を示すヒストグラムである。
図17A】改変Tris系緩衝液A、C、及びDでのグルテン回収(ppm)を示す図である。
図17B】改変Tris系緩衝液B、E、及びFでのグルテン回収(ppm)を示す図である。
図18A】Trsi系緩衝液A+及びNeogen(登録商標)抽出緩衝液でのグルテン回収を示す図である。
図18B】Trsi系緩衝液A+及びNeogen(登録商標)抽出緩衝液でのグルテン回収を示す図である。
図19】Trsi系緩衝液A+及びNeogen(登録商標)抽出緩衝液でのミルクアレルゲン回収を示す図である。試料は、試験用に1:10に希釈した。Tris緩衝液A+では、ベーキング前にスパイクした場合のミルクアレルゲンの回収は10%であり、ベーキング後にスパイクした場合の回収は100%であることが示されている。
図20A】Trsi系緩衝液A+及びNeogen(登録商標)緩衝液でのベーキング後のアレルゲン回収を示す図である。
図20B】Trsi系緩衝液A+及びNeogen(登録商標)緩衝液でのベーキング前のアレルゲン回収を示す図である。
図21A】PBS系緩衝液:P+緩衝液及びP-緩衝液でのベーキング前のアレルゲン回収を示す図である。
図21B】PBS系緩衝液:P+緩衝液及びP-緩衝液緩衝液でのベーキング後のアレルゲン回収を示す図である。
図22A】Elution ELISAキットでの回収率と比較した、PBS系K緩衝液でのアレルゲン回収率を示す図である。K緩衝液でのベーキング前の回収率を示す。
図22B】Elution ELISAキットでの回収率と比較した、PBS系K緩衝液でのアレルゲン回収率を示す図である。K緩衝液でのベーキング後の回収率を示す。
図23】Tris系T緩衝液及びPBS系K緩衝液間のカシューアレルゲン回収の比較を示す図である。この実験では、バニラプリンを食品マトリックスとして使用した。
図24】PBS系P+緩衝液中での卵白に対するMB6結合親和性を示す図である。P+緩衝液は、卵白に対するSPNの結合親和性を低下させることが示されている。
図25】P+緩衝液及びP-緩衝液中での卵白に対するSPN MB-5結合の蛍光検出のプロットである。ゼラチンの影響は、MB-5の結合にとって重要ではないことが示されている。
図26A】K緩衝液中での卵白に対するMB6結合親和性を示す図である。K緩衝液は、SPNの結合親和性を増加させることが示されている。
図26B】K緩衝液中での卵白に対するMB4結合親和性を示す図である。K緩衝液は、SPNの結合親和性を増加させることが示されている。
図27A】PBS系K緩衝液中での純粋な卵白タンパク質に対するMB5結合親和性を示す図である。
図27B】Tris系T緩衝液中での純粋な卵白タンパク質に対するMB5結合親和性を示す図である。
図28A】チョコレートケーキにスパイクしたリゾチームのMB6検出を示す棒グラフである。
図28B】チョコレートケーキにスパイクしたリゾチームのMB4検出を示す棒グラフである。
図29A】卵を含有する食品中にあるリゾチームのMB6検出を示す棒グラフである。
図29B】卵を含有する食物中にあるリゾチームのMB4検出を示す棒グラフである。
図30A】純粋なピーナッツ粉末に対するMB7結合の蛍光検出のグラフである。
図30B】MB7は、1ppmというより低いレベルでピーナッツ(P)粉末と特異的に結合するが、マグケーキ(MC)マトリックスにスパイクすると、卵白(EW)又はオボムコイド(ovo)とは結合しないことを示す図である。
図31A】純粋なピーナッツ粉末に対するMB9結合の蛍光検出のグラフである。
図31B】MB9は、1ppmというより低いレベルでピーナッツ(P)粉末と特異的に結合するが、マグケーキ(MC)マトリックスにスパイクすると、卵白(EW)又はオボムコイド(ovo)とは結合しないことを示す図である。
図32A】ベーキング前のケーキ及びベーキング後のケーキにスパイクした低ppmレベルのピーナッツのMB7検出を示す図である。
図32B図32AのMB7検出をppmに変換した棒グラフである。
図33A】ベーキング前のケーキ及びベーキング後のケーキにスパイクした低ppmレベルのピーナッツのMB9検出を示す図である。
図33B図33AのMB9検出をppmに変換した棒グラフである。
図34】ELISAアッセイでのピーナッツ回収率と比較した、K緩衝液でのMB7及びMB9回収率を示すヒストグラムである。
図35A】プレッツェル及びアイスクリーム等の加工食品中の希釈ピーナッツアレルゲンのMB7検出を示すヒストグラムである。
図35B】プレッツェル及びアイスクリーム等の加工食品中の希釈ピーナッツアレルゲンのMB9検出を示すヒストグラムである。
図36A】PBS系K緩衝液中での純粋なピーナッツタンパク質に対するMB9結合親和性を示す図である。
図36B】Tris系T緩衝液中での純粋なピーナッツタンパク質に対するMB9結合親和性を示す図である。
図37A】時点0分~時点30分のMB7検出シグナルの比較を示す図である。
図37B】時点0分~時点30分のMB9検出シグナルの比較を示す図である。
図38A】様々な試料サイズのトゥインキー(TWINKIE(商標))中のミルクアレルゲン回収を示すヒストグラムである。
図38B】様々な試料サイズのプリン中のミルクアレルゲン回収を示すヒストグラムである。
図38C】様々な試料サイズの牛挽肉にスパイクしたミルクアレルゲン回収を示すヒストグラムである。
図39】様々なサイズのトゥインキー(TWINKIE(商標))中でのリゾチームに対するMB5結合親和性を示す図である。試料サイズが増加すると、MB5結合が低下し得ることが示されている。
図40A】様々な分離装置(GM:gentleMAC;MM:miniMAC;低:Contiuum分離装置 低ワット;高:Contiuum分離装置 高ワット)を使用した、鶏肉からのミルクアレルゲン回収を示す図である。
図40B】様々な分離装置を使用した、トゥインキー(TWINKIE(商標))からのミルクアレルゲン回収を示す図である。
図40C】様々な分離装置を使用した、糖衣からのミルクアレルゲン回収を示す図である。
図41】様々な分離装置を使用したMB5結合を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述の及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面に示されているような本発明の特定の実施形態の以下の説明から明白になるであろう。概略図は、必ずしも正しく縮尺されていない。むしろ、ある操作原理を示す際には誇張されている。
【0018】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似の又は等価な方法及び物質を、本発明が特徴とする方法の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び物質は、下記の詳細な説明、例、及び請求項に記載されている。種々の特徴が参照番号を使用して説明されている場合、同様の機能を有する特徴を説明するために、類似の参照番号が使用されている。
【0019】
分析デバイスを使用して食品安全性を保証することは、その確実性を満たすという地点にまだ到達していない。特に、多種多様な既知アレルゲンを検出するための、単純だが正確で高感度な迅速検出スキームに基づく携帯デバイスは、依然として開発されていない。食品安全性管理の状況における、アプタマーに基づく分析のより最近の概説の1つによると、非常に多様な市販の分析ツールがアレルゲン検出用に開発されているものの、それらのほとんどは、イムノアッセイに依存していることが示されていた。更に、このグループの成分用にアプタマーを選択した研究が現れつつあることが示されていた(Amaya-Gonzalezら、Sensors 2013年、13巻、16292~16311頁、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0020】
本明細書に記載の方法及びデバイスは、アレルゲンを検出するための、核酸に基づく検出分子の使用を企図するものである。幅の広い構想では、本明細書に記載の方法及びデバイスは、食品安全性に加えて、例えば、民間背景及び戦場背景における疾患の医学的診断、環境モニタリング/管理、及び生物兵器を検出するための軍事利用等の種々様々な場面で、試料中の任意のタンパク質含有量を検出するために使用することができる。更に幅広い応用では、本発明の方法及びデバイスは、核酸に基づく検出分子が結合するあらゆる生体分子を検出するために使用することができる。幾つかの非限定的な例として、この検出方法及びデバイスは、癌マーカーのスポット検出、現場診断(化学薬品との接触、外傷性頭部損傷等)、第三世界での応用(TB、HIV検査等)、急患診療(脳卒中マーカー、頭部損傷等)、及びその他多数に使用することができる。
【0021】
下述のように、そのような核酸に基づく検出分子の1つの特定の種類は、アプタマーである。アプタマーは、SELEXプロセス(以下に記載されている)という反復手法を使用して、本質的にあらゆる分子標的(又はその部分)に対して生成することができるため、本発明者らは、アプタマーが検出分子のコア配列を提供するために特に好適であることを認識している。そのようなアプタマーは、それらの標的に対する親和性及び結合特異性が高い。また、本発明者らは、シグナル発生ポリヌクレオチド(以下に詳しく説明されている)の生成にコア配列としてアプタマーを使用することにより、種々のリポーター分子を便利に結合させることが可能になることを認識している。また、アプタマーコア配列に基づくシグナル発生ポリヌクレオチドの生産コストが比較的低いことは、本明細書に記載のセンサーデバイス等の生体分子センサーの、単純だが効果的である検出アッセイの開発という目的に関して有利である。最後に、本発明者らは、食品安全性を保証するために周囲温度で高感度に再現性よく反復して使用することのできる単純で携帯可能なセンサーでの使用に特に好適である、シグナル発生ポリヌクレオチド等のアプタマーに基づく検出配列を使用して、種々の食品マトリックス中のアレルゲン検出を簡易に実施することができることを認識している。
【0022】
非限定的な例では、アナフィラキシー毒性アレルゲンであるβ-コングルチン、Lup an 1に特異的な一本鎖DNAアプタマーのin vitro選択プロセスが報告されている(Nadalら、(2012年)DNA Aptamers against the Lup an 1 Food Allergen.PLoS ONE 7巻(4号):e35253)。手短に言えば、ルピナスに由来するβ-コングルチンサブユニットが精製され、磁気ビーズと化学的に架橋された。ペプチド質量フィンガープリント法を使用して、ビーズ表面のβ-コングルチンの存在が確認された。ホスホロチオエート化順方向プライマー及びT7遺伝子6エキソヌクレアーゼを使用して、1014の集団多様性を有するDNAライブラリー貯留が増幅され、一本鎖93量体DNA配列が生成された。ライブラリー貯留は、タンパク質結合磁気ビーズと共にインキュベートされた。PCRを使用してSELEXの各ラウンドがモニタされ、タンパク質結合ビーズから開放されたDNAの量が、非結合ビーズから得られたものと比較された。酵素結合オリゴヌクレオチドアッセイ(ELONA)及び表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、進化がモニタされた。15ラウンドのSELEX後、増幅されたDNAがクローニングされ、配列決定され、コンセンサスモチーフが特定され、それらのモチーフに対する親和性及び特異性が評価され、それらの二次構造が予測された。得られたアプタマーは、競合ELONAを使用して、β-コングルチンルピナスアレルゲンの検出及び定量化が評価された。このようにして、3.6×10-7のKを有する独自の93量体が選択され、1.7×10-9のKを有する11量体に短縮された(Nadalら、(2013年)Probing high-affinity 11-mer DNA aptamer against Lup an 1 (β-conglutin).Anal.Bioanal.Chem.405巻:9343~9349頁)。この短縮11量体は、グアニン豊富であり、スタッキングしたグアニン四分子で構成されるG-四本鎖構造へと折り畳むと予測され、この構造は、グアニン間のフーグスティーン型水素結合により、及び四分子間に位置する陽イオンとの相互作用により安定化されている。最近、各単量体アプタマーがドナー/アクセプター部分により隣接されている、短縮11量体抗β-コングルチンアプタマーの高親和性二量体形態を使用して、Lup an 1を迅速かつ高感度に検出するための、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を活用した高感度法が報告された。上記二量体形態は、標的が存在しないと、励起フルオロフォアから近位の第2のフルオロフォアへのFRETにより蛍光発光を生じさせる。しかしながら、β-コングルチンを付加すると、特異的相互作用により、二重アプタマー構造に変化が生じて、蛍光発光の増加がもたらされる。この方法は、非常に特異的及び高感度であり、検出限界は150pMであり、食品中の毒性β-コングルチンサブユニットを、室温にてたった1分間で直接検出するための効果的なツールを提供する(Mairalら、FRET-based dimeric aptamer probe for selective and sensitive Lup an 1 allergen detection.Biosensors and Bioelectronics、(2014年)54巻:207~210頁)。
【0023】
本明細書に記載のデバイスを使用して検出することができるアレルゲンファミリーには、ピーナッツ、ツリーナッツ(tree nut)等の豆果、卵、ミルク、大豆、スパイス、種、魚、甲殻類、小麦グルテン、米、果物、及び野菜に由来するアレルゲンが含まれる。アレルゲンは、粉末に存在してもよく、又は食事に存在してもよい。このデバイスは、これらアレルゲンの有無を確認すること、並びにこれらアレルゲンの量を定量化することが可能である。
【0024】
実施形態の幾つかでは、8種の主要な食物アレルゲン(つまり、小麦、卵、ミルク、ピーナッツ、ツリーナッツ、魚、甲殻類、及び大豆)の検出を目標とするアプタマーを設計及び試験することができる。8種の主な食物アレルゲンは、食物アレルギーの90%を占める。高い選択性、特異性、及び安定性を有するアプタマーを選択し、検出分子として更に標識する。
【0025】
本発明のデバイス及び方法は、試料中の病原性微生物を検出及び特定することができる。検出することができる病原体には、細菌、酵母、真菌、ウイルス、及びウイルス様生物が含まれる。病原体は、動物及び植物に疾患を引き起こす場合があり、食物、水、土壌、又は他の供給源を汚染する場合があり、又は軍事分野では生物兵器として使用される場合がある。本デバイスは、これら病原体を検出及び特定することが可能である。
【0026】
別の重要な応用には、医療を施すための、例えば、疾患を診断し、疾患進行を病期分類し、ある治療に対する応答をモニタするための、本発明の方法及びデバイスの使用を含む。
【0027】
食品安全の分野以外への拡張応用には、軍事組織による戦場での使用;抗生物質及び生物学的薬物の試験;殺虫剤及び肥料等の製品の試験;栄養補助食品、種々の食品成分、及びカフェイン及びニコチン等のバルクで調製される添加剤の環境試験;並びに個体が、著しいレベルの個々のアレルゲンに暴露されているか否かを決定するための、唾液、皮膚、及び血液等の臨床試料の試験が含まれる。
【0028】
本発明の組成物
本明細書には、アレルゲンを検出するためのアッセイ、デバイス、及び/又はキットを設計、調製、使用、及び製造するための化合物、組成物、及び方法が記載されている。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「アレルゲン」は、対象体の免疫反応を引き起こすか、誘発するか、又は引き金を引く化合物、物質、又は組成物を意味する。そのため、アレルゲンは、典型的には抗原と呼ばれる。
【0030】
試料中のそのようなアレルゲンの検出を可能にするように、1種又は複数種のアレルゲンと相互作用可能な若しくは相互作用する、及び/又は結合可能な若しくは結合するあらゆる分子を、本明細書中では、「アレルゲン検出分子」又は「検出分子」と呼ぶ。
【0031】
検出デバイス及びカートリッジ
本発明の1つの態様は、カートリッジを使用する検出デバイスである。1つの実施形態では、本発明の検出デバイスは、様々な食品試料中の微量濃度のアレルゲンを特異的に検出することができる携帯型の製品である。
【0032】
幾つかの実施形態では、検出デバイスは、単純で迅速な(5分未満)1段階実施用に設計されている。
幾つかの実施形態では、検出デバイスは、特定のアレルゲン専用の使い捨てカートリッジが、そのカートリッジに特有のアレルゲンを検出するためのデバイスに配置されるように設計されている。
【0033】
図1を参照すると、検出デバイス10の1つの実施形態が示されている。このデバイスは、プラスチック又は他の好適な支持材料で形成されていてもよい主支持本体12を有する。主支持本体12には、本体12の作用表面の適所にカートリッジ14を保持するための手段が提供されている。これから、カートリッジの1つの一般的な実施形態を説明し、その後、カートリッジ1400の別の実施形態を説明することにする。カートリッジ14は、アレルゲンの存在を試験しようとする食品試料S等の試料を保持するための収集チャンバ16を含む。ある実施形態では、カートリッジ14は使い捨てである。ある実施形態では、収集チャンバ16には、試料を消化するためのある容積の緩衝液が提供されている。緩衝液の容積は、約100μLから約500μLまでの範囲であってもよい。また、デバイス10には、マイクロ真空ポンプ(図示せず)、プローブ20、及びプローブホルダ(図示せず)の組み合わせを含んでいてもよい試料収集機構18が含まれている。また、カートリッジ14は、抽出膜22を有するタンパク質抽出チャンバを含む。真空ポンプは、抽出膜22を通して抽出されるタンパク質の流速を増加させるために使用することができる。また、2つの検出チャンバ24a及び24bが使い捨てのカートリッジに含まれている。検出チャンバ24aは、陰性対照を保持し、検出チャンバ24bは、アレルゲン等の目的とする分子標的の存在を示すシグナルを発するためのシグナル発生ポリヌクレオチドを保持する。
【0034】
発光ダイオード(LED)26a及び26bが、本体12によりカートリッジ14に隣接して支持されている。LED26a及び26bは本質的に同一のものであり、シグナル発生ポリヌクレオチドのフルオロフォアを励起させるのに適切な励起波長の光を提供する。LED26a及び26bの光路は、それらの対応する検出チャンバ24a及び24bに向かっている。
【0035】
また、検出チャンバ24a及び24bから放射される蛍光を受信し、目的の波長(複数可)のみを透過させるフィルタ28、及び光電子増倍管(PMT)シグナルを有用な読出しに変換する(つまり、蛍光出力を測定し、それをデジタル信号に変換する)ためのプロセッサを含む対応する蛍光検出器30a及び30bが、本体12によりカートリッジ14の外部に支持されている。その後、デジタル信号に対応するデータは、ユーザインタフェーススクリーンとして機能する対応する表示ウィンドウ32a及び32bに提供される。図1に示される本例では、表示ウィンドウは両方とも、測定が「陰性」であることを表示している。これは、対照が、その目的機能を果たしており、試料の分析が、試験中のアレルゲンをいかなる有意義なレベルでも含有しないことを示している。
【0036】
ある実施形態では、デバイス10の長さは、およそ10cmの長さである。プローブ20から得られた試料は、収集チャンバ16へと移される。プローブ20は、多数の試料(最大200mgまでのおよそ5つの試料)を得るために使用される。デバイスが作動していない時は、収集プローブ20は、見えないようにデバイス10内部に隠されており、電子的コマンド又は手動のいずれかにより露出することになる。
【0037】
提供されていてもよい他の特徴には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:例えば、食品のコア試料を得るためのドリル。試料収集プローブには、任意選択でカバーが提供されていてもよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、収集チャンバは、100~500μLの消化緩衝液を含有するのに十分な容積を有する。収集チャンバに移された食品標本は、小型ドリルを使用して均質化されることになる。消化緩衝液は、2%Tween(登録商標)、塩濃度(0mmol/L、200mmol/L、又は1mol/LのNaCl)、及び脱脂粉乳(0~25%)を有するPBS又はTRISから選択してもよい。消化を促進するために、コラゲナーゼ等のプロテイナーゼを提供することにより、酵素による消化を追加することが望ましい場合がある。
【0039】
幾つかの実施形態では、1つ又は複数のタンパク質抽出膜を使用してもよく、消化された溶液は、タンパク質抽出膜に移されることになる。溶液は、精製タンパク質を収集する膜を通過して流れるであろう。膜は、0.5nM~0.5μMの細孔を有し、200KDaよりも小型のタンパク質を分離することができるであろう。タイミングが重要であるため、真空を使用して流速を増加させてもよい。幾つかの好適なタンパク質抽出カラムが知られており、過度な実験を行うことなく、本デバイスのある実施形態に使用するように構成することができる。消化された後、食品標本は、タンパク質抽出膜から2つの検出チャンバ24a及び24bへと流れる。陰性対照チャンバ24aは、クエンチャー分子のみで標識されている検出分子(例えば、アプタマー)を含有し、他方のチャンバ24bは、蛍光マーカー及びクエンチャー分子の両方で標識されているシグナル発生ポリヌクレオチド(SPN)を含有する。精製タンパク質が各検出チャンバに入ったら、対応するLED26a及び26bは、光を放射してフルオロフォアの励起を誘発させることになる。
【0040】
幾つかの実施形態では、任意の食品試料の分析に十分なアレルゲンタンパク質(例えば、最低でも2mg/mlの総タンパク質)を回収するユニバーサルタンパク質抽出緩衝液。
【0041】
他の実施形態では、複数の食品マトリックスで効率的であるはずであるアルキメデス型スクリュー及び真空ポンプ等の食品試料採取機構用の種々の選択肢を試験してもよい。これらの機構は、種々の食品テキスチャーで試験し、迅速で単純な1段階手順用に最適化することになるであろう。1つの実施形態では、図面及び下記に記載のように、アルキメデス型スクリュー機構が、最大の可能性を有する。試料を収集している間、針の内部にあるドリルビットがモータにより回転し、スクリューポンプとして機能することになる。ドリルビットの「チップクリーニング」作用は、標的試料の小片を捕捉し、それらを収集針から混合チャンバの中間部分へと運搬する役目を果たす。25 20の異なる食品マトリックスから0.5gの試料を取得することに成功したら成功と言えるであろう。食品マトリックスの幾つかの例は、表7に列挙されている。
【0042】
分子から放射された光は、特定のフィルタを通過するであろう。フィルタを通過して伝達された光は捕捉され、デジタル信号に変換され、それがユーザインタフェースを作動させることになる。対照チャンバは、陰性シグナルを生成するはずである試薬を含有することになり、それがバックグラウンドになるであろう。
【0043】
幾つかの実施形態では、表示ウィンドウ32a及び32bの各々は、試験した試料がアレルゲンを含有するか否かを表示することになるスクリーンを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、検出デバイスは、1つ又は複数のデータベースと、直接的に又は無線で、操作可能に接続されていることが有利な場合がある。ユーザの設定に基づいて、収集したデータを、他と共有することができる。幾つかの場合では、データは、他のユーザ又はヘルスケア分野のユーザと共有することができる。
【0044】
デバイス10は、最小限の維持しか必要としないように設計されている。LED26a及び26b並びにフィルタ28は、予測では、定期的に、例えば年1回取り替えを必要とするであろう。
【0045】
上述したように、本発明の検出デバイスに使用されるカートリッジ1400の別の実施形態を、これから図2A及び2Bを参照して説明する。簡潔に示すために、この実施形態のカートリッジには、図1に示されているような1対の検出チャンバが示されていない。しかしながら、当業者であれば、過度な実験を行わずに、図1に示されているような1対の検出チャンバを含むように図2A及び2Bのカートリッジ実施形態を改変することができるであろう。同様に、図2A及び2Bのカートリッジ1400は、図1に示されている他のカートリッジ特徴を含むように構成することができ、当業者であれば、そのような改変及び応用が本発明の範囲内であることを認識するであろう。例えば、検出チャンバ(複数可)がカートリッジの外部に又は別のカートリッジに配置されているデバイスの他の実施形態を設計することができる。カートリッジ1400の機能は、その構成部品の説明と同時に記載されるであろう。
【0046】
ここで図2A及び2Bを参照すると、本発明の検出デバイスのある実施形態で使用されるカートリッジ1400が示されている。カートリッジ1400の主本体は、キャリアプレート1402により提供される。キャリアプレート1402は、デバイスと共に使用される緩衝液及び他の試薬と適合するように選択されたプラスチックで成型されていてもよい。キャリアプレート1402により支持されている部品は、下記で説明するが、一体的に成型された圧入ボタン構成等の、公知の取り付け及び接続手段によりキャリアプレート1402に取り付けられている。プロセッサとアクチュエータとの通信用の電気部品間の接続は、例えば、従来法により作製することができる。有利には、キャリアプレート1402は、検出デバイスの主支持本体(図示せず)にある対応する部分と接続するように構成されている複数のコネクタ1404を含む。そのようなコネクタ1404は、射出成形等のプロセスによりキャリアプレート1402を製造するプロセス中に形成してもよい。
【0047】
また、キャリアプレート1402には、プランジャー型シリンジ1406が取り付けられている。プランジャー1408は、シリンジ1406のバレルから引き出されると、キャリアプレート1402の縁部を越えて伸長する。シリンジ1406の目的は、消化緩衝液Dを混合チャンバ1410内に注入するための手段を提供することである。本実施形態では、混合チャンバ1410は、図2A及び2Bに示されている向きでキャリアプレース1402の上半分の実質的に中心に位置している。ある実施形態では、プランジャー1408をシリンジバレル内へと押し込むことにより、シリンジ1406を物理的に作動させる。他の実施形態では、シリンジ1406は、プロセッサ(図示せず)の制御で自動的に作動する。カートリッジのある別の実施形態における、バルブ及びシリンジを制御するためのプロセッサ-アクチュエータシステムの設計は、当業者の能力内にある。
【0048】
混合チャンバ1410内には、アルキメデス型ミキサ(スクリューポンプとしても知られている)が設けられている。ミキサは、混合チャンバ1410の内容物のらせん混合運動を伝達するためのらせん型コンベヤの形態の、スクリュー1414を有するスピンドル1412を含む。スピンドル1412は、モータコネクタ1416を介して接続されているモータ(図示せず)により回転する。
【0049】
ある実施形態では、カートリッジ1400は使い捨てであり、混合チャンバに動力を供給するモータ(図示せず)は、カートリッジ1400を廃棄する前にモータコネクタ1416から取り外され、新しいカートリッジに取り付けて、モータを保存することが可能なモジュール型ユニットである。ある実施形態では、検出デバイスには、使用したカートリッジが取り外され、新しいカートリッジと交換される間、モータを検出デバイスの本体の適所に保持するモータブラケット、クランプ、又はホルダが設けられている。
【0050】
スピンドル1412の端部には、末端が針1420である中空ドリルビット1418が接続されている。針1420は、試料Sに突き刺さるのに十分なゲージである。有利には、針を固定するチャック1419は調整可能であり、したがって、種々の材料から試料を得るために種々のゲージの針を受け入れることができる。同様に、チャック1419は、種々の異なるサイズのドリルビットも受け入れることができる。中空ドリルビット1418が作動すると、試料Sの部分は、ドリルビット1418の内部を通って針1420から混合チャンバ1410の内部へと運搬される。試料Sの部分が混合チャンバ1410に移送された後。
【0051】
消化緩衝液Dは、シリンジ1406のプランジャー1408を押し込むことにより(矢印が示すように)、混合チャンバ1410へと運搬される。シリンジ1406から混合チャンバ1410の右側ポートへと伸長する消化緩衝液導管には、第1の一方向バルブ1422が設けられている。この第1の一方向バルブ1422は、消化緩衝液及び混合チャンバ1410の他の内容物がシリンジ内へ逆流することを防止する。消化緩衝液Dは、試料を分解して、カートリッジ1400の検出アッセイがそのために設計されている標的生体分子を放出させる。混合期間はプロセッサ(図示せず)によりプログラムされていてもよく、その混合期間後、混合チャンバ1410の左側ポートは、プロセッサによりプログラムされており、消化試料が、第2の導管を通って検出チャンバ1426へと運搬されるように開放される(ある実施形態では、プロセッサは、モジュール型モータを使用する実施形態で上述したものと同様の様式で、カートリッジ1400を廃棄する前に取り外すことができるモジュール型ユニットである)。他の実施形態では、プロセッサも使い捨てであり、カートリッジ1400と共に廃棄される。他の実施形態では、プロセッサは含まれておらず、導管内の流体の移動は、もっぱら、第1及び第2の一方向バルブ1422及び1424と連動してプランジャー1408の押し込み及び延伸によりもたされる陽圧及び陰圧により誘導される。例えば、図2Aの矢印で示されているように、シリンジから混合チャンバ1410への消化緩衝液Dの移動は、シリンジ1406のバレル内へとプランジャー1408を押し込むことにより達成され、一方向バルブ1422は、上述のように逆流を防止する。
【0052】
ここで図2Bを参照すると、矢印は、シリンジ1406のプランジャー1408がシリンジバレルから引き出される際の流体の移動を示す。流体は、検出チャンバ1426から一方向バルブ1424を通ってシリンジ1406のバレルへと引き出されることが分かる。特に、一方向バルブ1422は、流体が、混合チャンバ1410からシリンジ1406へと流れることを防止する。
【0053】
また、混合チャンバ1410から検出チャンバ1426に至る導管には、消化試料に存在する夾雑物の少なくとも幾つかを除去するための精製フィルタ1428が設けられている。そのような夾雑物には、例えば、核酸又はその消化断片が含まれていてもよい。そのような夾雑物は、アッセイ本来の機能に有害な効果を示す場合がある。別の実施形態では、各々が、種々の異なるタイプの試料中に存在する場合のある特定の種類の夾雑物を除去するため選択される、複数のそのような精製フィルタが設けられていてよい。
【0054】
検出チャンバ1426から出ていく導管には、検出チャンバからの気体は逃すが、検出チャンバ1426からの流体が流れることを防止する疎水性フィルタ1430が設けられている。
【0055】
カートリッジ1400は、導管が、戦略的に配置されたフィルタ1428及び1430並びに一方向バルブ1422及び1424と循環ループを形成するという独特な構成であるため、シリンジプランジャー1408を、何回かのサイクルで引出し及び押込み、十分な試料材料を検出チャンバ1426に確実に送達することが可能になる。更に、試料の移送には、精密ステッピングモータ/制御モータが1つあれば十分である。別の設計では、消化緩衝液を送達するのに1つのモータを必要とし、試料を検出チャンバ内へと引き出すのに別のモータを必要とするであろう。追加のモータがあると、サイズ、重量、コスト、及び検出デバイスに必要な電力が増加するため、図2A及び2Bに示されている設計の有益性は高い。
【0056】
本発明の1つの実施形態による検出デバイスのカートリッジ1400を作動させると、試料収集針1420が標的試料S内に挿入されることにより分析が開始される。試料を収集している間、針1420の内部にあるドリルビット1418がモータにより回転し、それによりスピンドル1412及びスクリュー1414が回転する。ドリルビット1418の「チップクリーニング」作用は、標的試料Sの小片を捕捉し、それらを収集針から混合チャンバ1410の中間部分へと運搬する役目を果たす。
【0057】
標的試料Sの小片が収集され、混合チャンバ1410に送達されたら、シリンジプランジャー1408が押し込まれる。これにより、消化緩衝液Dが、一方向バルブ1422から混合チャンバ1410内へと入れられる。第2の一方向バルブ1424が、検出チャンバ内への逆流を防止する向きに配置されていることに留意すべきであり、その機能は下記で再度説明するものとする。消化緩衝液Dが混合チャンバ1410に送達されると、混合モータは、所定の時間及び速度プロファイルに従ってスピンドル1412を回転させて、試料Sを適切に均質化し、目的の構成生体分子を放出させる。混合モータは、モータコネクタ1416に取り付けられており、この同じモータが、ドリルビット1418を回転させる。
【0058】
試料Sを消化及び均質化した後、それを精製フィルタ1428を介して検出チャンバ1426内へと通過させる。これは、シリンジプランジャー1408を引き出すことにより達成してもよい。しかしながら、この操作を行っている間、一方向バルブ1422は、材料が混合チャンバから出て逆流することを阻止する役目を果たし、一方向バルブ1424は、精製フィルタ1428に陰圧をかけるために開放され、それにより試料Sは検出チャンバ1426内へと引き出される。疎水性フィルタ1430は、上述したように、邪魔な気体を逃しつつ、試料Sの漏出防止を可能にする。試料Sが検出チャンバ1426に存在する場合、分析ユニットは、試料Sの調査を実施し、測定値をユーザに報告することができる。
【0059】
図2A及び2Bに示されているカートリッジ1400の他の実施形態には、図1に示されているデバイスの実施形態で上述されているような1対の検出チャンバが含まれる。
他の実施形態には、シリンジ1406を引いて、混合チャンバ1410内部を減圧し、それにより針から試料を「吸引する」ことになる吸引機構が含まれていてもよい。
【0060】
また、他の実施形態には、試料Sが、気体(空気)又は流体によりシリンジ型デバイスからチャンバ内へと押し込まれるポンプ機構が含まれていてもよい。
また、他の実施形態には、収集針からかえし(barb)を自動展開し、その後標的試料片を保持して混合チャンバ内へと収集針を後退させるためのバネ式フック又はもり型機構が含まれていてもよい。この手法は、「生検銃」として知られている既存の医療デバイスの機能と同様である。
【0061】
ここで図3を参照して、検出デバイスの更なる実施形態を説明する。この検出デバイス2000の実施形態には、ユーザが片手を使用して取り扱うために便利なエルゴノミックス設計が施されており、2015に一般的に示されている前方ローブを有する砂時計型又はバーベル型に構成されている。前方ローブ2015は、カートリッジ2140と接続するための手段を有する。取り付けると、カートリッジ2140が、前向きローブ2015の可視部の大半を占める。前向きローブ2015は、試料コレクター2020が、分析の必要な試料Sに向かうように伸長させることができる。砂時計型の狭小部分は、把持ハンドル2017としての機能を提供する。ユーザがオーバーハンド握り(overhand grip)で握ると、ハンドル2017の前方近傍にある、デバイス2000に位置するコントロールパネル2019を親指で自由に操作することができる。2025に一般的に示されている後方ローブは、デバイス2000内部にあるため視界から隠されている検出チャンバを支持するものである。後方ローブ2025の外側表面は、分析結果を示すディスプレイモニタ2032を含む。
【0062】
この実施形態のデバイス2000は、連続様式での多試料分析を伴う分析作業に特に好適である。例えば、この実施形態は、多ロットの所与の製品が分析される品質管理試験での使用に望ましいであろう。エルゴノミックス設計であるため、長期間の使用でもユーザの不快感は最小限である。デバイス2000は試料Sに向かって伸長し、試料Sの部分は、試料コレクター2020により収集され、カートリッジ2140の混合チャンバで処理される。標的分子が試料マトリックスから放出され、検出チャンバに運搬され、分析結果が、ディスプレイモニタ2032に表示される。ある実施形態では、単純な肘屈曲の動作で、デバイス2000が、試料収集位置から、分析結果を見るのに好適な位置へと十分に移動することになるように、右利き又は左利きのいずれのユーザでも見やすくディスプレイモニタ2032の向きを調整することができる。
【0063】
アレルゲン
本発明によると、アレルゲンには、食品に由来するもの、環境に由来するもの、又は家庭内ペットの鱗屑等の非ヒトタンパク質に由来するものが含まれる。
【0064】
食物アレルゲンには、これらに限定されないが、以下のものに含まれるタンパク質が含まれる:ピーナッツ、エンドウ、ヒラマメ、及び豆等の豆果、並びに豆果関連植物ルピナス、アーモンド、カシュー、クルミ、ブラジルナッツ、ハシバミ/ヘーゼルナッツ、ピーカン、ピスタチオ、ブナの実、バターナッツ、クリ、チンカピングリ、ココナッツ、ギンナン、レイシナッツ、マカダミアナッツ、ナンガイナッツ(nangai nut)、及び松果等のツリーナッツ、卵、魚、カニ、ザリガニ、ロブスター、小エビ、及びエビ等の甲殻類、ハマグリ、カキ、ムール貝、及びホタテ貝等の軟体動物、ミルク、大豆、小麦、グルテン、トウモロコシ、牛肉、豚肉、羊肉、及び鶏肉等の肉類、ゼラチン、亜硫酸塩、ごま、ヒマワリ、及びケシの実等の種子、並びにコリアンダー、ニンニク、及びマスタード等の香辛料、果物、セロリ等の野菜、並びに米。例えば、ルピナス、ヒマワリ、又はケシ等の植物に由来する種子は、種付パン等の食品に使用してもよく、又はパン若しくはペストリーを作るために使用される粉末を作るために粉砕してもよい。
【0065】
最近の総説には、病原体、アレルゲン、不純物、毒素、及び他の禁止汚染物質を管理して食品安全性を保証するための、アプタマーを使用して開発された分析戦略が記載されている。(Amaya-Gonzalezら、Aptamer-Based Analysis:A Promising Alternative for Food Safety Control、Sensors、2013年、13巻:16292~16311頁;Amaya-Gonzalezら、Aptamer binding to coelic disease-triggering hydrophobic proteins:Towards a sensitive gluten detection system.、Anal.Chem.、2013年提出)。また、グルテンの検出方法は、Amaya-GonzalezらのPCT国際公開第PCT/ES2013/000133号、2013年6月28日に記載されている。
【0066】
シーフードアレルゲンは、典型的には、タラのパルブアルブミン及び甲殻類のトロポミオシンを含む筋肉タンパク質の群に属する。アルギニンキナーゼ及びミオシン軽鎖等の他のアレルゲンも、アレルギー誘発に重要な役割を果たす場合がある。トロポミオシンは、甲殻類及び軟体動物間の分子的及び臨床的交差反応性の原因である主なアレルゲンであり、イエダニ及び昆虫等の他の吸入無脊椎動物の原因アレルゲンであると考えられる。
【0067】
検出分子:アプタマー
本発明の検出分子には、これらに限定されないが、1種又は複数種のアレルゲンと会合可能又は結合可能な任意の1種又は複数種の分子が含まれる。
【0068】
幾つかの実施形態では、本発明の検出分子は、1つ又は複数のアプタマーを含む。
本明細書で使用される場合、「アプタマー」は、in vitro選択又は同じことだがSELEX(指数関数的増幅によるリガンドの系統的進化)の反復ラウンドにより、低分子、タンパク質、核酸等の種々の分子標的に、並びに細胞、組織、及び生物にさえ結合するように遺伝子操作された核酸種である。核酸アプタマーは、古典的なワトソン-クリック型塩基対以外の相互作用により、分子に対する特異的結合親和性を有する。核酸アプタマーは、ファージディスプレイにより生成されるペプチド又はモノクローナル抗体(mAb)のように、選択した標的に特異的に結合し、結合することにより、それらの標的が機能する能力を阻止することが可能である。また、幾つかの場合では、アプタマーは、ペプチドアプタマーであってもよい。本明細書で使用される場合、「アプタマー」は、特に核酸アプタマーを指す。
【0069】
「化学的抗体」と呼ばれることが多いアプタマーは、抗体と同様の特徴を有する。典型的な核酸アプタマーは、サイズがおよそ10~15kDa(20~45ヌクレオチド)であり、少なくともナノモルの親和性でその標的と結合し、近縁関係にある標的を区別する。
【0070】
アプタマーは、一価であってもよく又は多価であってもよい。アプタマーは、単量体、二量体、三量体、四量体、又はより高次の多量体であってもよい。個々のアプタマーモノマーを連結して、多量体アプタマー融合分子を形成することができる。非限定的な例として、二量体アプタマーを形成するように、ランダムアプタマーの5’側領域及び3’側領域の両方に相補的な配列を含む連結オリゴヌクレオチド(つまり、リンカー)を設計してもよい。三量体又は四量体のアプタマーの場合、ランダムアプタマーの3’側領域に相補的な配列を含み、したがってハイブリダイゼーションにより多量体アプタマー融合体を生成するように、小型の三量体又は四量体(つまり、ホリデイジャンクション様)DNAナノ構造体を遺伝子操作することになるであろう。加えて、3~5又は5~10のdT豊富なヌクレオチドを遺伝子操作して、アプタマー結合モチーフ間の一本鎖領域としてのリンカーポリヌクレオチドにすることができる。これにより、複数のアプタマーの可撓性及び自由度が提供され、細胞リガンド又は受容体との多価性相互作用を調整し相乗効果が生みだされる。
【0071】
或いは、ビオチン化アプタマーをストレプトアビジンと混合することにより、多量体アプタマーを形成することもできる。
本明細書で使用される場合、用語「多量体アプタマー」又は「多価アプタマー」は、複数の単量体ユニットを含むアプタマーを指し、単量体ユニットは、各々がそれ自体アプタマーであってもよい。多価アプタマーは、多価性の結合特徴を有する。多量体アプタマーは、ホモ多量体であってもよく、又はヘテロ多量体であってもよい。用語「ホモ多量体」は、同じ種類の複数の結合ユニットを含む多量体アプタマーを指す。つまり、各ユニットは、同じ標的分子の同じ結合部位に結合する。用語「ヘテロ多量体」は、異なる種類の複数の結合ユニットを含む多量体アプタマーを指す、つまり、各結合ユニットは、同じ標的分子の異なる結合部位に結合するか、又は各結合ユニットは、異なる標的分子の結合部位に結合する。したがって、ヘテロ多量体は、異なる結合部位で1つの標的分子と結合する多量体アプタマーを指していてもよく、又は異なる標的分子と結合する多量体アプタマーを指していてもよい。また、異なる標的分子と結合するヘテロ多量体を、多重特異的多量体と呼ぶこともある。
【0072】
核酸アプタマーは、一連の連結ヌクレオシド又はヌクレオチドを含む。用語「核酸」は、その最も幅広い意味では、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含む。これらポリマーは、ポリヌクレオチドと呼ばれることが多い。本発明の例示的な核酸分子又はポリヌクレオチドには、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:D型又はL型のいずれでもよい核酸、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(β-D-リボ立体構造を有するLNA、α-L-リボ立体構造を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能性を有する2’-アミノ-LNA、及び2’-アミノ官能性を有する2’-アミノ-α-LNAを含むLNA)、又はそれらのハイブリッド。
【0073】
当業者であれば、用語「RNA分子」又は「リボ核酸分子」は、自然界で発現又は見出されるようなRNA分子だけでなく、本明細書に記載のような又は当技術分野で知られているような1つ又は複数のリボヌクレオチド/リボヌクレオシド類似体又は誘導体を含むRNAの類似体及び誘導体も包含することを認識するであろう。厳密に言えば、「リボヌクレオシド」は、ヌクレオシド塩基及びリボース糖を含み、「リボヌクレオチド」は、1つ、2つ、又は3つのリン酸部分を有するリボヌクレオシドである。しかしながら、本明細書で使用される場合、用語「リボヌクレオシド」及び「リボヌクレオチド」は等価であると考えることができる。RNAは、核酸塩基構造、リボフラノシル環が修飾されていてもよく、又はリボース-リン酸骨格が修飾されていてもよい。
【0074】
核酸アプタマーは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、又はリボ核酸及びデオキシリボ核酸の混合物であってもよい。アプタマーは、一本鎖のリボ核酸、デオキシリボ核酸、又はリボ核酸及びデオキシリボ核酸の混合物であってもよい。
【0075】
幾つかの実施形態では、アプタマーは、少なくとも1つの化学的修飾を含む。幾つかの実施形態では、化学的修飾は、糖位置における核酸の化学的置換、リン酸位置における化学的置換、及び塩基位置における化学的置換から選択される。他の実施形態では、化学的修飾は、修飾ヌクレオチドの組込み;3’キャッピング;高分子量の非免疫原性化合物との結合;親油性化合物との結合;及びリン酸骨格へのホスホロチオアートの組込みから選択される。好ましい実施形態では、高分子量の非免疫原性化合物は、ポリアルキレングリコールであり、より好ましくはポリエチレングリコール(PEG)である。別の分子、通常は薬物又は治療用タンパク質にPEGを共有結合するプロセスは、PEGylationとして知られている。PEGylationは、PEGの反応性誘導体を標的分子と共にインキュベーションすることにより日常的に達成されている。薬物又は治療用タンパク質にPEGを共有結合で結合することにより、作用剤が宿主の免疫系から隠蔽され、それにより免疫原性及び抗原性の低減を提供することができ、作用剤の流体力学的サイズ(溶液中でのサイズ)を増加させ、腎臓クリアランスを低減することにより、その循環時間を延長することができる。また、PEGylationは、疎水性の薬物及びタンパク質に水溶解性を提供することができる。
【0076】
別の好ましい実施形態では、3’キャップは、逆位デオキシチミジンキャッピング(inverted deoxythymidine cap)である。
幾つかの実施形態では、P(O)O基が、P(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、P(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、又はCH2(「ホルムアセタール」)、又は3’-アミン(-NH-CH2-CH2-)に置換されており、式中各R又はR’が独立してH又は置換若しくは非置換アルキルである核酸アプタマーが提供される。連結基は、-O-、-N-、又は-S-連結により、隣接するヌクレオチドと結合させることができる。核酸アプタマーの連結は、全て同一であることが必要であるとは限らない。
【0077】
非限定的な例として、核酸アプタマーは、D-リボース核酸残基又はL-リボース核酸残基を含んでいてもよく、また、以下のものを含むがそれらに限定されない少なくとも1つの修飾リボヌクレオシドを含んでいてもよい:2’-O-メチル修飾ヌクレオシド、5’ホスホロチオアート基を含むヌクレオシド、コレステリル誘導体又はドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオシド、ロックドヌクレオシド、脱塩基ヌクレオシド、逆位デオキシリボヌクレオシド又は逆位リボヌクレオシド、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオシド、2’-アミノ修飾ヌクレオシド、2’-アルキル修飾ヌクレオシド、モルホリノヌクレオシド、ホスホルアミダート、又はヌクレオシドを含む非天然塩基、又はそれらの任意の組み合わせ。或いは、核酸アプタマーは、少なくとも2個の修飾リボヌクレオシド、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、又は少なくとも20個以上の、最大で分子の全長にわたる修飾リボヌクレオシドを含んでいてもよい。修飾は、核酸分子中のそのような複数の修飾デオキシリボヌクレオシド又は修飾リボヌクレオシドの各々で同じである必要はない。
【0078】
核酸に基づく検出分子は、核酸塩基(当技術分野では単に「塩基」と呼ばれることが多い)修飾又は置換を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「未修飾」又は「天然」核酸塩基には、プリン塩基アデニン(A)及びグアニン(G)、並びにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、以下のもの等の他の合成及び天然核酸塩基が含まれる:5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン、及びチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、並びに他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル、並びに他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-ダアザアデニン、並びに3-デアザグアニン及び3-デアザアデニン。更なる核酸塩基には、以下のものが含まれる:米国特許第3,687,808号明細書に開示されているもの、Modified Nucleosides in Biochemistry,Biotechnology and Medicine、Herdewijn,P.編 Wiley-VCH、2008年に開示されているもの;The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering、858~859頁、Kroschwitz、J.L編 John Wiley&Sons(1990年)に開示されているもの、Englischら、Angewandte Chemie,International Edition、1991年、30巻、613頁に開示されているもの、及びSanghvi,YS、第15章、dsRNA Research and Applications、289~302頁、Crooke、S.T.及びLebleu,B.編、CRC Press、1993年により開示されているもの。
【0079】
アプタマーに好適なヌクレオチドの長さは、約15から約100ヌクレオチド(nt)までの範囲であり、種々の他の好ましい実施形態では、長さが、15~30nt、20~25nt、30~100nt、30~60nt、25~70nt、25~60nt、40~60nt、25~40nt、30~40nt、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ntのいずれか、又は40~70ntである。しかしながら、配列は、アプタマーと本明細書に記載の距離にある2つの標的との相互作用を受け入れることができるように、十分な可撓性を持つように設計することができる。
【0080】
幾つかの実施形態では、核酸アプタマーは、二本鎖特徴を示す1つ又は複数の領域を含む。そのような二本鎖領域は、内部自己相補性から生じてもよく、又は第2の若しくは更なるアプタマー若しくはオリゴヌクレオチド分子との相補性から生じてもよい。幾つかの実施形態では、二本鎖領域は、長さが4~12、4~10、及び4~8の塩基対の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、二本鎖領域は、5、6、7、8、9、10、11、又は12の塩基対の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、二本鎖領域は、ステム領域を形成してもよい。二本鎖特徴を有するそのような伸長ステム領域は、核酸アプタマーを安定させる役目を果たすことができる。本明細書で使用される場合、用語「二本鎖特徴」は、2つの核酸分子の任意の長さにわたって、それらの配列が、その長さの50パーセントを超える塩基対合(標準又は非標準)を形成することを意味する。
【0081】
アプタマーを更に修飾して、ヌクレアーゼ及び他の酵素活性からの保護をもたらしてもよい。アプタマー配列は、当技術分野で知られている任意の好適な方法により修飾することができる。例えば、ホスホロチオアートを骨格に組み込んでもよく、5’-修飾ピリミジンを、DNAアプタマーのssDNAの5’端部に組み込んでもよい。RNAアプタマーの場合、リボース骨格の2’-OH基を、例えば2’-デオキシ-NTP又は2’-フルオロ-NTPで置換したもの等の修飾ヌクレオチドを、T7 RNAポリメラーゼ突然変異体を使用してRNA分子に組み込むことができる。ヌクレアーゼに対するこれら修飾アプタマーの耐性は、それらを、精製ヌクレアーゼ又はマウス血清由来のヌクレアーゼのいずれかと共にインキュベートすることにより試験することができ、アプタマーの完全性は、ゲル電気泳動法により分析することができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、そのような修飾核酸アプタマーは、修飾ヌクレオチドの全体が合成であってもよく、又は修飾ヌクレオチドのサブセットが合成であってもよい。修飾は、同一であってもよく、異なっていてもよい。ヌクレオチドは全てが修飾されていてもよく、全てが同一の修飾を含んでいてもよい。ヌクレオチドは全てが修飾されていてもよいが、異なる修飾を含んでいてもよい。例えば、同じ塩基を含むヌクレオチドは全てが、1つのタイプの修飾を有していてもよく、他の塩基を含むヌクレオチドは、異なるタイプの修飾を有していてもよい。例えば、プリンヌクレオチドは全てが1つのタイプの修飾(又は未修飾)を有していてもよく、ピリミジンヌクレオチドは全てが、別の異なるタイプの修飾(又は未修飾)を有している。このように、オリゴヌクレオチド、又はオリゴヌクレオチドのライブラリーは、本明細書に開示されている修飾の任意の組み合わせを使用して生成される。
【0083】
検出方法の幾つかの非限定的な例には、以下のものが含まれる:CCRF-CEM細胞(CCL-119 T細胞、ヒト急性リンパ芽球性白血病)及びRamos細胞(CRL-1596、B細胞、ヒトバーキットリンパ腫)の細胞表面分子に選択的なアプタマー結合金ナノ粒子(ACGNP)を使用して癌細胞を直接検出するためのアッセイ(Medleyら、Gold Nanoparticle-Based Colorimetric Assay for the Direct Detection of Cancerous Cells.、Anal.Chem.2008年、80巻:1067~1072頁);標的分析物と結合すると、赤色分散ナノ粒子へと迅速分解を起こすアプタマー結合金ナノ粒子(AuNP)の使用(Luら、第14章:Nanoparticles/Dip Stick,in Nucleic Acid and Peptide Aptamers:Methods and Protocols、Gunter Mayer(編)、535巻:223~239頁);及びヒト血清中でIgEを超高感度で検出するための、サンドイッチ増幅要素としてアプタマー-AuNP結合体を使用する微分パルスボルタンメトリー(DPV)に基づくバイオセンサー(1~10,000ng/mLの範囲にわたり、LODが0.52ng/mLと低い)(Wangら、Aptamer-Au NPs conjugates-accumulated methylene blue for the sensitive electrochemical immunoassay of protein、Talanta、2010年4月15日、81巻(1~2号):63~67頁)。
【0084】
しかしながら、多くの電気化学的バイオセンサーに共通する少なくとも1つの欠点は、リアルタイム検出ではなく、分析物溶液との長期間インキュベーションを必要とするオフライン測定という性質を持つことである(Pilloliら、Advances in biosensor development based on integrating nanotechnology and applied to food-allergen management.Trends in Analytical Chemistry、6月 2013年、47巻:12~26頁)。
【0085】
検出分子:抗体
幾つかの実施形態では、本発明の検出分子は、抗体を含む。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、最も幅広い意味で使用されており、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば、少なくとも2つの完全抗体で形成される二重特異性抗体)、及び所望の生物活性を示す限りダイアボディ等の抗体断片を含むが、それらに限定されない種々の実施形態を包含する。抗体は、主にアミノ酸に基づく分子であるが、糖部分等の1つ又は複数の修飾を更に含んでいてもよい。
【0086】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、完全抗体の一部を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖抗体;単鎖抗体分子;並びに抗体断片で形成される多特異的抗体が含まれる。抗体をパパイン消化すると、「Fab」断片と呼ばれる、各々が単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合性断片が産生される。また、残りは「Fc」断片を産生する。この名称は、それが容易に結晶化され得ることを反映している。ペプシン処理すると、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原と架橋することが可能なF(ab’)2断片が産出される。検出分子は、これら断片の1つ又は複数を含んでいてもよい。本明細書の目的では、「抗体」は、重鎖及び軽鎖可変ドメイン並びにFc領域を含んでいてもよい。
【0087】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽鎖(L)及び2つの同一の重鎖(H)で構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有結合ジスルフィド結合により重鎖と結合しており、免疫グロブリンアイソタイプが異なると重鎖のジスルフィド結合の数は異なる。また、各重鎖及び軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VH)を有し、その後に幾つかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)及び他方の末端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインとアラインしており、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインとアラインしている。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「可変ドメイン」は、抗体によって配列が非常に異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性に使用される特異的抗体ドメインを指す。本明細書で使用される場合、用語「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む抗体断片を指す。この領域は、非共有結合で強固に結合されている1つの重鎖及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。
【0089】
あらゆる脊椎種に由来する抗体「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ及びラムダと呼ばれる明白に異なる2つのタイプの1つに帰属させることができる。抗体は、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに帰属させることができる。5つの主要クラスの完全抗体が存在する:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM。これらの幾つかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2に更に分類されてもよい。
【0090】
「単鎖Fv」又は「scFv」は、本明細書で使用される場合、VH抗体ドメイン及びVL抗体ドメインの融合タンパク質を指し、これらドメインは、共に連結されて単一のポリペプチド鎖になっている。幾つかの実施形態では、Fvポリペプチドリンカーにより、scFvは、抗原と結合するための所望の構造を形成することが可能になる。
【0091】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小型の抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖中に、軽鎖可変ドメインVLに接続された重鎖可変ドメインVHを含む。同じ鎖中の2つのドメイン間の対合が可能にならない程度に短いリンカーを使用することにより、ドメインを、別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を生成させる。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号明細書;国際公開第93/11161号;及びHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻:6444~6448頁(1993年)により詳細に記載されている。これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0092】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に均質な細胞(又はクローン)の集団から得られる抗体を指し、つまり、集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生中に生じる可能性のある変異体を除いて、そのような変異体の存在は、一般的に少量であるが、同一であり及び/又は同一のエピトープに結合する。典型的には様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含むポリクローナル抗体の調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対する。
【0093】
「モノクローナル」という修飾語は、抗体が実質的に均質な集団から得られているという特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。本明細書のモノクローナル抗体には、重鎖及び/又は軽鎖の部分が、特定の種に由来するか又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同性であり、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか又は別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体並びにそのような抗体の断片の対応する配列と同一又は相同性である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)が含まれる。
【0094】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、含まれている非ヒト免疫グロブリン由来の配列が最小限であるキメラ抗体である。おおむね、ヒト化抗体は、レシピエントの抗体に由来する超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類等の非ヒト種の抗体(ドナー抗体)に由来する超可変領域の残基に置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0095】
抗体に関して本明細書中で使用される場合、用語「超可変領域」は、抗原結合に関与するアミノ酸残基を含む抗体の抗原結合ドメイン内の領域を指す。超可変領域内に存在するアミノ酸が、相補性決定領域(CDR)の構造を決定する。本明細書で使用される場合、「CDR」は、その標的抗原又はエピトープに相補的な構造を含む抗体の領域を指す。
【0096】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、抗体模倣体であってもよい。用語「抗体模倣体」は、抗体の機能又は効果を模倣し、それらの分子標的と特異的に高親和性で結合するあらゆる分子を指す。したがって、抗体模倣体には、ナノボディ等が含まれる。
【0097】
幾つかの実施形態では、抗体模倣体は、アフィボディ分子、アフィリン、アフィティン(affitin)、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマー(Fynomer)、及びクニッツ(Kunitz)、及びドメインペプチドを含むが、それらに限定されない、当技術分野で知られているものであってもよい。他の実施形態では、抗体模倣体は、1つ又は複数の非ペプチド領域を含んでいてもよい。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「抗体変異体」は、天然抗体と比較して、それらのアミノ酸配列、組成、又は構造に幾つかの差異を含む、構造及び/又は機能が抗体と類似する生体分子を指す。
【0099】
モノクローナルであろうと又はポリクローナルであろうと、抗体の調製は、当技術分野で既知である。抗体を産生するための技術は、当技術分野で周知であり、例えば、Harlow及びLane「Antibodies,A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988年、並びにHarlow及びLane「Using Antibodies: A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999年に記載されている。
【0100】
1つの実施形態では、上述のような抗体、抗体断片、それらの変異体又は誘導体を含む検出分子は、アレルゲンに対して特異的な免疫反応性を示す。また、抗体又は抗体の断片を含む検出分子は、アレルゲンの標的部位に結合することができる。
【0101】
本発明の抗体は、それらの標的分子(複数可)により、それらの生成に使用された抗原により、それらの機能により(アゴニストとしてか又はアンタゴニストとしてか)、及び/又はそれらが機能する細胞ニッチにより特徴付けることができる。
【0102】
抗体機能の測定は、in vitro又はin vivoにて、正常な生理的状態下において標準物質に対して行ってもよい。また、測定は、抗体の存在又は非存在に対して行ってもよい。そのような測定方法には、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、活性アッセイ、リポーターアッセイ、ルシフェラーゼアッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アレイ、遺伝子アレイ、及びリアルタイム逆転写酵素(RT)PCR等の、組織又は血清若しくは血液等の流体での標準的測定が含まれる。
【0103】
検出分子抗体は、アレルゲンタンパク質の又はアレルゲンタンパク質に沿った任意の数の位置で結合又は相互作用してもよい。企図されているアレルゲン抗体標的部位には、上記アレルゲンを検出するためのありとあらゆる考え得る部位が含まれる。
【0104】
本発明の検出分子化合物は、1つ又は複数のアレルゲン標的部位に結合(可逆的に又は不可逆的に)することにより、それらの効果を発揮する。理論により束縛されることは望まないが、抗体の結合部位である標的部位は、タンパク質又はタンパク質ドメイン若しくは領域により形成されることが最も多い。しかしながら、標的部位には、糖、脂質、核酸分子、又は結合エピトープの任意の他の形態等の生体分子も含まれ得る。
【0105】
本発明の検出分子抗体、並びにそれらを生成するために使用される抗原は、主にアミノ酸に基づく分子である。これら分子は、「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「タンパク質」であってもよい。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」は、2から50までの又はそれを超えるアミノ酸を有するアミノ酸に基づく分子を指す。より小さなペプチドには、2アミノ酸の分子を指す「ジペプチド」、及び3アミノ酸の分子を指す「トリペプチド」という特別な指示名称が適用される。50を超える連続したアミノ酸を有するアミノ酸に基づく分子は、ポリペプチド又はタンパク質とみなされる。
【0107】
用語「アミノ酸」は、あらゆる天然L-アルファ-アミノ酸並びに非天然アミノ酸を指す。アミノ酸は、以下のような1文字表記又は3文字表記のいずれかにより特定される:アスパラギン酸(Asp:D)、イソロイシン(Ile:I)、トレオニン(Thr:T)、ロイシン(Leu:L)、セリン(Ser:S)、チロシン(Tyr:Y)、グルタミン酸(Glu:E)、フェニルアラニン(Phe:F)、プロリン(Pro:P)、ヒスチジン(His:H)、グリシン(Gly:G)、リジン(Lys:K)、アラニン(Ala:A)、アルギニン(Arg:R)、システイン(Cys:C)、トリプトファン(Trp:W)、バリン(Val:V)、グルタミン(Gln:Q)、メチオニン(Met:M)、及びアスパラギン(Asn:N)。ここでは、アミノ酸がまず列挙され、その後の括弧内にそれぞれ3文字コード又は1文字コードが列挙されている。
【0108】
抗体:製造
本発明の抗体は、当技術分野で知られているか又は本出願に記載されている方法により産生されるポリクローナル、又はモノクローナル、又は組換えであってもよい。
【0109】
幾つかの実施形態では、本発明の抗体は、当業者により知られている検出可能な標識で検出するために標識されていてもよい。標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、又は酵素コファクター、又は当技術分野で知られている任意の他の標識であってもよい。幾つかの態様では、所望の抗原に結合する抗体は、標識されていないが、一次抗体に特異的に結合する標識二次抗体との結合により検出することができる。
【0110】
本発明の抗体には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:ポリクローナル、モノクローナル、多特異性、ヒト、ヒト化、又はキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリーにより産生される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体)、細胞内で産生される抗体(つまり、細胞内抗体)、及び上記のもののいずれかのエピトープ結合性断片。本発明の抗体は、鳥類及び哺乳類を含む任意の動物起源に由来してもよい。好ましくは、そのような抗体は、ヒト、ネズミ科動物(例えば、マウス及びラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、又はニワトリ起源である。本発明の抗体は単一特異的であってもよく、又は多特異的であってもよい(例えば、二重特異的、三重特異的、又はそれより高次の多重特異的)。多特異性抗体は、本発明のペプチドの異なるエピトープに特異的であってもよく、又は本発明のペプチド、及び異種性ペプチド又は固体支持材料等の異種性エピトープの両方に特異的であってもよい。(例えば、以下の文献を参照されたい:国際公開第93/17715号;国際公開第92/08802号;国際公開第91/00360号;国際公開第92/05793号;Tutt,A.ら、Trispecific F(ab’)3 derivatives that use cooperative signaling via the TCR/CD3 complex and CD2 to activate and redirect resting cytotoxic T cells.J Immunol.1991年7月1日;147巻(1号):60~9頁;米国特許第4,474,893号明細書;第4,714,681号明細書;第4,925,648号明細書;第5,573,920号明細書;第5,601,819号明細書;及びKostelny,S.A.ら、Formation of a bispecific antibody by the use of leucine zippers.J Immunol.1992年3月1日;148巻(5号):1547~53頁)。例えば、抗体は、本発明のペプチド配列の反復ユニットを含むペプチドに対して産生されてもよく、又は本発明の2つ以上のペプチド配列を含むペプチドに対して産生されてもよく、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0111】
非限定的な例として、マスト細胞結合IgE抗体に対するアレルゲン結合を競合的に阻害し、それによりマスト細胞脱顆粒を阻害するヘテロ二価リガンド(HBL)系が設計されている(Handlogtenら、Design of a Heterobivalent Ligand to Inhibit IgE Clustering on Mast Cells、Chemistry&Biology、2011年9月23日、18巻(9号):1179~1188頁)。
【0112】
幾つかの実施形態では、抗体は、アレルゲンの任意の領域から調製することができる。本発明では、抗体を生成するためのペプチドは、好ましくは、長さが少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、より好ましくは、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、好ましくは約5~約50アミノ酸、より好ましくは長さが約10~約30アミノ酸、更により好ましくは長さが約10~約20アミノ酸の配列を含む。
【0113】
より大型のポリペプチド又はタンパク質が抗体の生成に使用される、本発明のある実施形態では、それらは、長さが好ましくは少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、又はそれを超えるアミノ酸である。
【0114】
本発明のモノクローナル抗体は、当業者に知られている十分に確立された方法を使用して調製することができる。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して調製される(Kohler,G.ら、Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity.、Nature、1975年8月7日:256巻(5517号):495~7頁)。ハイブリドーマ法では、典型的には、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物を、免疫作用剤(例えば、本発明のペプチド)で免疫して、その免疫作用剤に特異的に結合することになる抗体を産生するか又は産生可能なリンパ球を誘発させる。或いは、リンパ球をin vitroで免疫してもよい。その後、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を使用して、リンパ球を不死化細胞株と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,J.W.ら、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice.Academic Press.1986年;59-1031)。不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯動物、ウサギ、ウシ、及びヒト起源のミエローマ細胞である。通常、ラット又はマウスミエローマ細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の増殖又は生存を阻害する1種又は複数種の物質を含有する好適な培養培地で培養してもよい。例えば、親細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠如している場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含むであろう(「HAT培地」)。これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
【0115】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地等の培地に感受性であるものである。より好ましい不死化細胞株は、マウスミエローマ系統であり、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、サンディエゴ市、カリフォルニア州、及びアメリカ培養細胞系統保存機関、マナッサス市、バージニア州から取得することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒトミエローマ及びマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株も記載されている(Kozbor,D.ら、A human hybrid myeloma for production of human monoclonal antibodies.J Immunol.1984年12月;133巻(6号):3001~5頁;Brodeur,B.ら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications.Marcel Dekker,Inc.New York.1987年;33巻:51~63頁)。
【0116】
その後、ハイブリドーマ細胞が培養されている培養培地を、モノクローナル抗体の存在についてアッセイしてもよい。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性(つまり、特異的免疫反応性)は、免疫沈降法により、又はラジオイムノアッセイ(RIA)若しくは酵素結合免疫吸着法(ELISA)等のin vitro結合アッセイにより決定される。そのような技術及びアッセイは、当業者に知られている。モノクローナル抗体の結合特異性は、例えば、スキャチャード分析により決定することができる(Munson,P.J.ら、Ligand:a versatile computerized approach for characterization of ligand-binding systems.Anal Biochem.1980年9月1日;107巻(1号):220~39頁)。
【0117】
所望のハイブリドーマ細胞を特定した後、クローンを限界希釈手順によりサブクローンし、標準的な方法により増殖させる。この目的に好適な培養培地には、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地又はRPMI-1640培地が含まれる。或いは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物中の腹水としてin vivoで増殖させてもよい。
【0118】
サブクローンが分泌したモノクローナル抗体を、例えば、プロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製手順により培養培地又は腹水から単離又は精製してもよい。
【0119】
また、別の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号明細書に記載のもの等の組換えDNA法により作製してもよい。この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して容易に単離及び配列決定することができる(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)。本発明のハイブリドーマ細胞は、DNAの好ましい供給源としての役目を果たす。単離したら、DNAを発現ベクターに配置し、その後それを、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は形質転換しなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しないミエローマ細胞等の宿主細胞に形質移入して、組換え宿主細胞中でのモノクローナル抗体の合成を得る。また、DNAを、例えば、相同性マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を代用することにより(米国特許第4,816,567号明細書)、又は免疫グロブリンコード配列、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部若しくは全てに共有結合で連結することにより修飾してもよい。そのような非免疫グロブリンポリペプチドを、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに用いてもよく、又は本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに用いて、キメラ二価抗体を作成してもよい。
【0120】
また、別の実施形態では、本発明の抗体は、当業者に知られている種々の手順により産生してもよい。ポリクローナル抗体をin vivoで産生する場合、遊離ペプチド又はキャリア結合ペプチドのいずれかを、例えば腹腔内注射及び/又は皮内注射して、ウサギ、ラット、マウス、ヒツジ、又はヤギ等の宿主動物を免疫する。注射物質は、典型的には、約100μgのペプチド又はキャリアタンパク質を含有するエマルジョンである。また、宿主種に応じて、種々のアジュバントを使用して、免疫学的応答を増加させてもよい。アジュバントには、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:フロインド(完全及び不完全)、水酸化アルミニウム等の鉱物ゲル、リソレシチン等の界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシニアン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメット-ゲラン菌(Bacillus Calmette-Guerin))及びコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)等の他の有用なヒトアジュバント。そのようなアジュバントも、当技術分野で周知である。有用な抗体力価をもたらすために、例えば約2週間の間隔で幾つかのブースター注射が必要である場合があり、力価は、例えば、固体表面に吸着された遊離ペプチドが使用されるELISAアッセイにより検出することができる。免疫動物に由来する血清中の抗体の力価は、抗体の選択により、例えば、当技術分野で周知の方法により、ペプチドを固体支持体に吸着させ、選択した抗体溶出することにより増加させることができる。
【0121】
抗体、変異体、及びそれらの断片を含む検出分子は、ハイスループットディスカバリ法を使用して選択及び産生することができる。1つの実施形態では、合成抗体、変異体、及びそれらの断片を含む検出分子は、ディスプレイライブラリーの使用により産生される。用語「ディスプレイ」は、本明細書で使用される場合、タンパク質又はペプチドが所与の宿主の表面に発現又は「提示」されることを指す。用語「ライブラリー」は、本明細書中に使用される場合、固有のcDNA配列のコレクションを指す。ライブラリーは、少ない場合で2個の固有cDNAから数千億個までの固有cDNAを含んでいてもよい。好ましい実施形態では、合成抗体を含む検出分子は、抗体ディスプレイライブラリー又は抗体断片ディスプレイライブラリーを使用して産生される。用語「抗体断片ディスプレイライブラリー」は、本明細書中に使用される場合、各メンバーが、抗体の少なくとも1つの可変領域を含む抗体断片をコードするディスプレイライブラリーを指す。そのような抗体断片は、好ましくはFab断片であるが、単鎖可変断片(scFv)等の他の抗体断片も同様に企図される。Fab抗体断片ライブラリーでは、コードされた各Fabは、Fab断片の相補性決定領域(CDR)の可変ループ内に含まれるアミノ酸配列を除いて同一であってもよい。別の又は更なる実施形態では、個々のVH及び/又はVL領域内のアミノ酸配列も同様に異なっていてもよい。
【0122】
ディスプレイライブラリーは、これらに限定されないが、酵母、バクテリオファージ、細菌、及びレトロウイルスを含む、幾つかの考え得る宿主で発現させることができる。使用することができる更なるディスプレイ技術には、リボソームディスプレイ、マイクロビーズディスプレイ、及びタンパク質-DNA連結技術が含まれていてもよい。好ましい実施形態では、Fabディスプレイライブラリーは、酵母又はバクテリオファージで発現される(本明細書では「ファージ」又は「ファージ粒子」とも呼ばれる。発現されると、Fabは、ファージ又は酵母の表面を修飾し、そこで所与の抗原と相互作用することができる。アレルゲンを含む抗原又は所望の標的部位に由来する抗原を使用して、その抗原に対して最も高い親和性を有する抗体断片を発現するファージ粒子又は酵母細胞を選択してもよい。その後、結合した抗体断片のCDRをコードするDNA塩基配列を、結合した粒子又は細胞を使用して配列決定することにより決定することができる。1つの実施形態では、抗体の発生にはポジティブ選択が使用される。本明細書で使用される場合、用語「ポジティブ選択」は、標的部位を含む抗原に対する親和性に基づいて、抗体及び/又はそれらの断片をディスプレイライブラリーから選択するプロセスを指す。幾つかの実施形態では、抗体の発生にはネガティブ選択が使用される。本明細書で使用される場合、用語「ネガティブ選択」は、抗体を産生するための標的部位を欠如する抗原を使用して、抗体発生中に所与のディスプレイライブラリーから抗体及び/又はその断片を除外するプロセスを指す。幾つかの実施形態では、ディスプレイライブラリーを使用して抗体発生における選択を複数ラウンド行う間に、ポジティブ選択及びネガティブ選択を両方とも使用する。
【0123】
酵母ディスプレイでは、Chaoら(Chao,G.ら、Isolating and engineering human antibodies using yeast surface display.Nat Protoc.2006年;1巻(2号):755~68頁)に記載のように、様々な抗体断片をコードするcDNAを酵母細胞に導入し、そこでそれらを発現させ、抗体断片を細胞表面に「提示」させる。酵母表面提示では、発現された抗体断片は、酵母アグルチニンタンパク質、Aga2pを含む更なるドメインを含有する。このドメインは、表面に発現されたAga1pとジスルフィド結合を形成することにより、抗体断片融合タンパク質を酵母細胞の外側表面に結び付けることを可能にする。結果として、特定の抗体断片に覆われた酵母細胞がもたらされる。抗体断片が各々固有の配列を有する、これら抗体断片をコードするcDNAのディスプレイライブラリーをまず使用する。これら融合タンパク質を、所望の抗原性標的ペプチドと相互作用することができる、何百万個もの酵母細胞の細胞表面に発現させ、細胞と共にインキュベートする。標的ペプチドは、好適な抗体断片との結合がうまくいった後で、効率的な細胞選別を可能にする化学基又は磁気基で共有結合的に又は別様に修飾してもよい。回収は、磁気活性化細胞選別法(MACS)、蛍光活性化細胞選別法(FACS)、又は当技術分野で知られている他の細胞選別法により行うことができる。酵母細胞の部分集団を選択したら、対応するプラスミドを分析して、CDR配列を決定することができる。
【0124】
バクテリオファージディスプレイ法では、典型的には、fd、F1、及びM13ビリオンを含む糸状ファージが使用される。そのような株は、非細胞溶解性であり、宿主の継続的な増殖及びウイルス力価の増加が可能である。本発明の抗体の作製に使用することができるファージディスプレイ法の例は、以下の文献に記載されているものが含まれる:Mierschら(Miersch,S.ら、Synthetic antibodies:Concepts,potential and practical considerations.Methods.2012年8月;57巻(4号):486~98頁)、Bradburyら(Bradbury,A.R.ら、Beyond natural antibodies:the power of in vitro display technologies.Nat Biotechnol.2011年3月;29巻(3号):245~54頁)、Brinkmanら(Brinkmann,U.ら、Phage display of disulfide-stabilized Fv fragments.J Immunol Methods.1995年5月11日;182巻(1号):41~50頁);Amesら(Ames,R.S.ら、Conversion of murine Fabs isolated from a combinatorial phage display library to full length immunoglobulins.J Immunol Methods.1995年8月18日;184巻(2号):177~86頁);Kettleboroughら(Kettleborough,C.A.ら、Isolation of tumor cell-specific single-chain Fv from immunized mice using phage-antibody libraries and the re-construction of whole antibodies from these antibody fragments.Eur J Immunol.1994年4月;24巻(4号):952~8頁);Persicら(Persic,L.ら、An integrated vector system for the eukaryotic expression of antibodies or their fragments after selection from phage display libraries.Gene.1997年3月10日;187巻(1号):9~18頁);PCT出願PCT/GB91/01134号;PCT出願国際公開第90/02809号;国際公開第91/10737号;国際公開第92/01047号;国際公開第92/18619号;国際公開第93/11236号;国際公開第95/15982号;国際公開第95/20401号;並びに米国特許第5,698,426号明細書;第5,223,409号明細書;第5,403,484号明細書;第5,580,717号明細書;第5,427,908号明細書;第5,750,753号明細書;第5,821,047号明細書;第5,571,698号明細書;第5,427,908号明細書;第5,516,637号明細書;第5,780,225号明細書;第5,658,727号明細書;第5,733,743号明細書、及び第5,969,108号明細書。これらの文献の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0125】
バクテリオファージでの抗体断片発現は、断片をコードするcDNAを、ウイルスコートタンパク質を発現する遺伝子に挿入することにより実施することができる。糸状バクテリオファージのウイルスコートは、一本鎖ゲノムによりコードされている5つのコートタンパク質で構成されている。コートタンパク質pIIIは、典型的にはN末端での抗体断片発現に好ましいタンパク質である。抗体断片発現がpIIIの機能を妨害する場合、ウイルス機能は、野生型pIIIの共発現により回復する場合がある。そのような発現は、ウイルスコートに発現される抗体断片の数を減らすことになるが、標的抗原による抗体断片への接近を増強することができる。或いは、ウイルスタンパク質並びに抗体断片タンパク質の発現は、複数のプラスミドにコードされていてもよい。この方法を使用すると、感染性プラスミドの全体サイズを低減させ、形質転換効率を増強させることができる。
【0126】
上述のように、高親和性の抗体又は抗体断片を発現する宿主を選択した後、抗体又は後退断片に由来するコード領域を単離し、ヒト抗体を含む抗体全体又は任意の他の所望の抗原結合性断片を生成するために使用し、例えば、下記に詳述するような、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む、任意の所望の宿主で発現させることができる。
【0127】
高親和性抗体をコードするDNA配列を、親和性成熟として知られているプロセスの更なる選択ラウンドにかけて、突然変異させてもよい。用語「親和性成熟」は、本明細書で使用される場合、抗体をコードするcDNA配列又は抗体断片をコードするcDNA配列を、突然変異及び選択の連続ラウンドにかけて、所与の抗原に対する親和性が増加した抗体を産生する方法を指す。好ましい実施形態では、このプロセスは、in vitroで実施される。これを達成するために、エラープローンPCRを使用してCDRコード配列の増幅を実施して、これらに限定されないが、点突然変異、領域突然変異、挿入突然変異、及び欠失突然変異を含む突然変異を含有する数百万個のコピーを生成することができる。本明細書で使用される場合、用語「点突然変異」は、ヌクレオチド配列内の1つのヌクレオチドが、異なるヌクレオチドに変更されている核酸突然変異を指す。本明細書で使用される場合、用語「領域突然変異」は、2つ以上の連続ヌクレオチドが、異なるヌクレオチドに変更されている核酸突然変異を指す。本明細書で使用される場合、用語「挿入突然変異」は、1つ又は複数のヌクレオチドが、ヌクレオチド配列に挿入されている核酸突然変異を指す。本明細書で使用される場合、用語「欠失突然変異」は、1つ又は複数のヌクレオチドが、ヌクレオチド配列から除去されている核酸突然変異を指す。挿入突然変異又は欠失突然変異は、コドン全体の完全な置換、又は開始コドンの1つ若しくは2つのヌクレオチドを変更することにより、あるコドンを別のコドンに変更することが含まれていてもよい。
【0128】
CDRをコードするcDNA配列に対して突然変異誘発を実施して、CDR重鎖及び軽鎖領域に単突然変異を有する数百万個の突然変異を生成することができる。別の手法では、親和性を向上させる可能性が最も高いCDR残基のみにランダム突然変異を導入する。こうした新しく生成された突然変異ライブラリーを使用して、標的ペプチドに対する親和性が更に高い抗体断片をコードするクローンをスクリーニングするプロセスを繰り返すことができる。突然変異及び選択のラウンドを継続することにより、益々より高い親和性を有するクローンの合成が促進される(Chao,G.ら、Isolating and engineering human antibodies using yeast surface display.Nat.Protoc.2006年;1巻(2号):755~68頁)。
【0129】
Fab及びscFv等の抗体及び抗体断片を産生するために使用することができる技術例には、以下の文献に記載のものが含まれる:米国特許第4,946,778号明細書及び第5,258,498号明細書;Mierschら(Miersch,S.ら、Synthetic antibodies:Concepts,potential and practical considerations.Methods.2012年8月;57巻(4号):486~98頁)、Chaoら(Chao,G.ら、Isolating and engineering human antibodies using yeast surface display.Nat Protoc.2006年;1巻(2号):755~68頁)、Hustonら(Huston,J.S.ら、Protein engineering of single-chain Fv analogs and fusion proteins.Methods Enzymol.1991年;203巻:46~88頁);Shuら(Shu,L.ら、Secretion of a single-gene-encoded immunoglobulin from myeloma cells.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1993年9月1日;90巻(17号):7995~9頁);及びSkerraら(Skerra,A.ら、Assembly of a functional immunoglobulin Fv fragment in Escherichia coli.Science.1988年5月20日;240巻(4855号):1038~41頁)。これらの文献の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0130】
ヒトにおける抗体のin vivo使用及びin vitro検出アッセイを含む幾つかの用途には、キメラ、ヒト化、又はヒト抗体を使用することが好ましい。キメラ抗体は、マウスモノクローナル免疫グロブリンに由来する可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体等の、抗体の異なる部分が、異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を産生するための方法は、当技術分野で知られている。(Morrison,S.L.、Transfectomas provide novel chimeric antibodies.Science.1985年9月20日;229巻(4719号):1202~7頁;Gillies,S.D.ら、High-level expression of chimeric antibodies using adapted cDNA variable region cassettes.J Immunol Methods.1989年12月20日;125巻(1~2号):191~202頁;及び米国特許第5,807,715号明細書;第4,816,567号明細書;及び第4,816,397号明細書。これらの文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0131】
ヒト化抗体は、所望の抗原と結合し、非ヒト種に由来する1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有する非ヒト種に由来する抗体分子である。多くの場合、ヒトフレームワーク領域のフレームワーク残基を、ドナー抗体のCDR及びフレームワーク領域の対応する残基と置換して、抗原結合を変更、好ましくは向上させる。こうしたフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法により、例えば、CDR及びフレームワーク残基の相互作用をモデリングして、抗原結合に重要なフレームワーク残基を特定することにより、及び配列を比較して、特定位置の非通常フレームワーク残基を特定することにより特定される。(米国特許第5,693,762号明細書及び第5,585,089号明細書;Riechmann,L.ら、Reshaping human antibodies for therapy.Nature.1988年3月24日;332巻(6162号):323~7頁。これらの文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0132】
抗体は、以下のものを含む、当技術分野で知られている種々の技術を使用してヒト化することができる:例えば、CDR移植(欧州特許第239,400号明細書;PCT出願国際公開第91/09967号;米国特許第5,225,539号明細書;第5,530,101号明細書;及び第5,585,089号明細書);ベニアリング(veneering)又はリサーフェイシング(resurfacing)(欧州特許第592,106号明細書;欧州特許第519,596号明細書;Padlan,E.A.A possible procedure for reducing the immunogenicity of antibody variable domains while preserving their ligand-binding properties.Mol Immunol.1991年4月~5月;28巻(4~5号):489~98頁;Studnicka,G.M.ら、Human-engineered monoclonal antibodies retain full specific binding activity by preserving non-CDR complementarity-modulating residues.Protein Eng.1994年6月;7巻(6号):805~14頁;Roguska,M.A.ら、Humanization of murine monoclonal antibodies through variable domain resurfacing.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1994年2月1日;91巻(3号):969~73頁);及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号明細書)。これらの文献の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0133】
完全なヒト抗体は、外来性タンパク質に対する免疫反応を回避又は緩和するため、ヒト患者の治療処置に特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用して、上述の抗体ディスプレイ法を含む、当技術分野で知られている様々な方法により作製することができる。米国特許第4,444,887号明細書及び第4,716,111号明細書;並びにPCT出願国際公開第98/46645号、国際公開第98/50433号、国際公開第98/24893号、国際公開第98/16654号、国際公開第96/34096号、国際公開第96/33735号、及び国際公開第91/10741号も参照されたい。これらの文献の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0134】
また、ヒト抗体は、機能的な内因性免疫グロブリンは発現することはできないが、ヒト免疫グロブリンポリヌクレオチドを発現することができるトランスジェニックマウスを使用して産生することができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリンポリヌクレオチド複合体を、ランダムに、又は相同組換えにより、マウス胚幹細胞に導入してもよい。或いは、ヒト重鎖及び軽鎖ポリヌクレオチドに加えて、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域をマウス胚幹細胞に導入してもよい。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリンポリヌクレオチドは、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別に又は同時に、機能性を失うように退化させてもよい。特に、JH領域のホモ接合欠失は、内因性抗体産生を妨げる。修飾胚幹細胞を増殖させ、胚盤胞にマイクロインジェクションして、キメラマウスを産生する。その後、キメラマウスを飼育して、ヒト抗体を発現するホモ接合性の子孫を生み出す。トランスジェニックマウスを、通常の方法を用いて、選択した抗原、例えば、本発明のポリペプチドの全体又は部分で免疫する。
【0135】
したがって、そのような技術を使用すれば、有用なヒトIgG、IgA、IgM、IgD、及びIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するための技術の概説は、Lonberg及びHuszar(Lonberg,N.ら、Human antibodies from transgenic mice.Int.Rev.Immunol.1995年;13巻(1号):65~93頁)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を産生するための技術、並びにそのような抗体を産生するためのプロトコールの詳細な考察は、以下の文献を参照されたい:PCT出願国際公開第98/24893号;国際公開第92/01047号;国際公開第96/34096号;国際公開第96/33735号;米国特許第5,413,923号明細書;第5,625,126号明細書;第5,633,425号明細書;第5,569,825号明細書;第5,661,016号明細書;第5,545,806号明細書;第5,814,318号明細書;第5,885,793号明細書;第5,916,771号明細書;第5,939,598号明細書;第6,075,181号明細書;及び第6,114,598号明細書。これらの文献の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。加えて、Abgenix,Inc.社(フリーモント、カリフォルニア州)、Protein Design Labs,Inc.社(マウンテンビュー、カリフォルニア州)、及びGenpharm社(サンホゼ、カリフォルニア州)等の企業が、上述の技術に類似した技術を使用して、選択した抗原に対するヒト抗体を提供する業務を行うことができる。
【0136】
本発明の抗体分子を、動物、細胞株、化学合成、又は組換え発現により産生したら、それを、免疫グロブリン又はポリペプチド分子を精製するための、当技術分野で知られている任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、特に特異性抗原であるプロテインAに対する親和性による親和性クロマトグラフィー、及びサイズ分類カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の差異、又はタンパク質を精製するための任意の他の標準的技術により精製(つまり、単離)することができる。加えて、本発明の抗体又はその断片を、本明細書に記載の又はそうでなければ当技術分野で知られている異種性ポリペプチド配列に融合して、精製を容易にしてもよい。
【0137】
検出分子の変異体
アミノ酸に基づく検出分子は、完全なポリペプチド、複数のポリペプチド、又はポリペプチドの断片として存在していてもよく、それらは、1つ又は複数の核酸、核酸の断片、又は前述のもののいずれかの変異体により、独立してコードされていてもよい。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、ほとんどの場合ペプチド結合で共に連結されていることが多いアミノ酸残基(天然又は非天然)のポリマーを意味する。この用語は、本明細書で使用される場合、任意のサイズ、構造、又は機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。幾つかの場合、コードされたポリペプチドは、約50アミノ酸よりも小さく、そのようなポリペプチドは、ペプチドと名付けられる。ポリペプチドがペプチドである場合、その長さは、少なくとも約2、3、4、又は少なくとも5のアミノ酸残基になるであろう。したがって、ポリペプチドには、遺伝子産物、天然ポリペプチド、合成ポリペプチド、相同体、オルソログ、パラログ、断片、及び前述のものの他の等価物、変異体、及び類似体が含まれる。ポリペプチドは、単分子であってもよく、二量体、三量体、又は四量体等の多分子複合体であってもよい。また、ポリペプチドは、単鎖又は複数鎖のポリペプチドを含んでいてもよく、結合又は連結されていてもよい。用語ポリペプチドは、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的化学類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用される場合がある。
【0138】
本発明のある実施形態によると、検出分子の変異体が提供される。
用語「ポリペプチド変異体」は、天然配列又は参照配列とアミノ酸配列が異なる分子を指す。アミノ酸配列変異体は、天然配列又は参照配列と比較して、アミノ酸配列内のある位置に置換、欠失、及び/又は挿入を有していてもよい。通常、変異体は、天然配列又は参照配列に対して少なくとも約50%の同一性(相同性)を有し、好ましくは、天然配列又は参照配列に対して、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の同一性(相同性)を有するであろう。
【0139】
用語「ポリヌクレオチド変異体」は、天然配列又は参照配列と核酸配列が異なる分子を指す。核酸配列変異体は、天然配列又は参照配列と比較して、アミノ酸配列内のある位置に置換、欠失、及び/又は挿入を有していてもよい。通常、変異体は、天然配列又は参照配列に対して少なくとも約50%の同一性(相同性)を有し、好ましくは、天然配列又は参照配列に対して、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の同一性(相同性)を有するであろう。
【0140】
幾つかの実施形態では、「変異模倣体」が提供される。本明細書で使用される場合、用語「模倣変異体」は、活性化配列を模倣することになる1つ又は複数のアミノ酸(又は核酸)を含有するものである。例えば、グルタマートは、リン酸化トレオニン及び/又はリン酸化セリンの模倣体としての役目を果たすことができる。或いは、模倣変異体は、不活化、又は模倣体を含有する不活化産物をもたらす場合があり、例えば、フェニルアラニンは、チロシンの不活化置換としての作用する場合があり、又はアラニンは、セリンの不活化置換として作用する場合がある。本発明の検出分子のアミノ酸配列(又は核酸配列)は、天然アミノ酸(又は核酸)を含んでいてもよい。或いは、検出分子は、天然及び非天然アミノ酸又は非天然核酸)を含んでいてもよい。
【0141】
用語「アミノ酸配列変異体」は、天然配列又は開始配列と比較して、アミノ酸配列に幾つかの差異がある分子を指す。用語「核酸配列変異体」は、天然配列又は開始配列と比較して、核酸配列に幾つかの差異がある分子を指す。配列変異体は、アミノ酸配列内のある位置に置換、欠失、及び/又は挿入を有していてもよい。「天然」配列又は「開始」配列を、野生型配列と混同してはならない。本明細書で使用される場合、天然配列又は開始配列は、比較することができる元の分子を指す相対的な用語である。「天然」又は「開始」配列又は分子は、野生型(自然界に見出されるその配列)であってもよいが、野生型の配列である必要はない。
【0142】
通常、変異体は、天然配列に対して少なくとも約70%の相同性を有し、好ましくは、天然配列に対して、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の相同性を有するであろう。
【0143】
「相同性」は、アミノ酸配列又は核酸配列に適用される場合、配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入して、最大の相同性パーセントを達成した後の、第2の配列の配列中の残基と同一である候補配列中の残基のパーセントとして定義される。アラインメントの方法及びコンピュータプログラムは、当技術分野で周知である。相同性は、同一性パーセントの計算に依存するが、計算に導入されるギャップ及びペナルティのため、値が異なる場合があることが理解される。
【0144】
「相同体」とは、アミノ酸配列又は核酸配列に適用される場合、第2の種の第2の配列と実質的な同一性を有する他の種の対応する配列を意味する。
用語「類似体」は、それぞれ、1つ又は複数のアミノ酸又は核酸の変更、例えば、残基の置換、付加、又は欠失のため異なるが、親ポリペプチド又は親ポリヌクレオチドの特性を依然として維持するポリペプチド変異体又はポリヌクレオチド変異体を含むことが意図されている。
【0145】
用語「誘導体」は、用語「変異体」と同義的に使用され、参照分子又は開始分子に対して、任意の様式で修飾又は変更がなされた分子を指す。
本発明では、変異体及び誘導体を含む、アミノ酸又は核酸に基づく幾つかのタイプの検出分子が企図される。これらには、置換、挿入、欠失、及び共有結合による変異体及び誘導体が含まれる。したがって、置換、挿入、及び/又は付加、欠失、及び共有結合による修飾を含む検出分子は、本発明の範囲内に含まれる。
【0146】
タンパク質の場合、例えば、配列タグ又は1つ若しくは複数のリジン等のアミノ酸を、本発明のペプチド配列に(例えば、N末端又はC末端に)付加してもよい。配列タグは、ペプチド精製又は局在化に使用することができる。リジンは、ペプチド溶解性を増加させるか又はビオチン化を可能にするために使用することができる。或いは、任意選択で、ペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシ末端及びアミノ末端の領域に位置するアミノ酸残基を欠失させて、短縮配列を提供してもよい。或いは、例えば、可溶性であり、固体支持体に結合されるより大型な配列の一部として配列を発現させる等、配列の用途に応じて、あるアミノ酸(例えば、C末端残基又はN末端残基)を欠失させてもよい。
【0147】
「置換変異体」は、天然又は開始配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基又は少なくとも1つのヌクレオシド(又はヌクレオチド)が取り除かれ、異なるアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)が同じ位置のその場所に挿入されているものである。分子中の1つのアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)のみが置換されている場合、置換は単一であってもよく、2つ以上のアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)が同じ分子中で置換されている場合、置換は複数であってもよい。
【0148】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドの状況における用語「保存的アミノ酸置換」は、通常、同様のサイズ、電荷、又は極性を有する異なるアミノ酸を有する配列中に存在するアミノ酸の置換を指す。
【0149】
ペプチド又はタンパク質中の保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、及びロイシン等の無極性(疎水性)残基を別の無極性残基に置換することが含まれる。同様に、保存的置換の例には、アルギニン及びリジン間、グルタミン及びアスパラギン間、並びにグリシン及びセリン間等の、1つの極性(親水性)残基を別の極性残基に置換することが含まれる。加えて、リジン、アルギニン、又はヒスチジン等の塩基性残基を別の塩基性残基に置換すること、又はアスパラギン酸又はグルタミン酸等の1つの酸性残基を別の酸性残基に置換することが、保存的置換の更なる例である。非保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、メチオニン等の無極性(疎水性)アミノ酸残基を、システイン、グルタミン、グルタミン酸、又はリジン等の極性(親水性)残基に置換すること、及び/又は極性残基を無極性残基に置換することが含まれる。
【0150】
「挿入変異体」は、1つ又は複数のアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)が、天然配列又は開始配列の特定の位置のアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)と直接隣接して挿入されている変異体である。アミノ酸又はヌクレオチドと「直接隣接している」とは、アミノ酸のアルファ-カルボキシ官能基又はアルファ-アミノ官能基のいずれかに接続されていることを意味し、ポリヌクレオチドのそのヌクレオシド又はヌクレオチドの5’又は3’に直接接続されていることを意味する。
【0151】
「欠失変異体」は、天然配列又は開始配列中の1つ又は複数のアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)が取り除かれているものである。通常、欠失変異体は、分子の特定の領域の1つ又は複数のアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)が欠失しているものであろう。
【0152】
用語「誘導体」は、本明細書で参照される場合、天然又は開始タンパク質又はポリヌクレオチドを、有機タンパク質性又は非タンパク質性誘導体化剤で修飾することを含む。また、タンパク質誘導体は、翻訳後修飾を含んでいてもよい。共有結合修飾は、伝統的には、分子の標的アミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)残基を、選択した原子又は残基と反応可能な有機誘導体化剤と反応させることにより、又はタンパク質の場合は、選択した組換え宿主細胞中で機能する翻訳後修飾の機序を利用することにより導入される。そのような修飾は、当技術分野の通常技術内にあり、過度な実験作業を行わずに実施される。
【0153】
共有結合誘導体には、具体的には、タンパク質が、非タンパク質性ポリマーと共有結合で結合されている融合分子が含まれる。非タンパク質性ポリマーは、通常、親水性合成ポリマー、つまり、合成でなければ自然界には見出されないポリマーである。しかしながら、自然界に存在し、組換え法又はin vitro法により産生されるポリマーは、自然界から単離されるポリマーと同様に有用である。親水性ポリビニルポリマー、例えば、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンは、本発明の範囲以内に入る。特に有用なのは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリビニルアルキルエンエーテルである。タンパク質は、米国特許第4,640,835号明細書;第4,496,689号明細書;第4,301,144号明細書;第4,670,417号明細書;第4,791,192号明細書、又は第4,179,337号明細書に記載のように、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレン等の種々の非タンパク質性ポリマーと連結されていてもよい。これらに文献の各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0154】
「特徴」は、分子の特徴的なアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)配列に基づく要素と規定される。本発明のある実施形態の検出分子の特徴には、表面発現特徴、局所的立体構造の形状、折り畳み構造、ループ、ハーフループ(half-loop)、ドメイン、ハーフドメイン(half-domain)、部位、末端、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0155】
本明細書で使用される場合、用語「表面発現特徴」は、最外側表面に出現するタンパク質又はポリヌクレオチドの成分を指す。
本明細書で使用される場合、用語「局所的立体構造の形状」は、タンパク質又はポリヌクレオチドの限定可能な空間内にある構造的な発現特徴を意味する。
【0156】
本明細書で使用される場合、用語「折り畳み構造」は、エネルギー最小化で得られるアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)配列の立体構造を意味する。折り畳み構造は、二次又は三次レベルの折り畳みプロセスで生じ得る。タンパク質の二次レベルの折り畳み構造の例には、ベータシート及びアルファヘリックスが含まれる。タンパク質の三次レベルの折り畳み構造の例には、エネルギー力の集結又は分離により形成されるドメイン及び領域が含まれる。このようにして形成される領域には、疎水性及び親水性ポケット等が含まれる。
【0157】
ポリペプチド及びポリヌクレオチドに関して本明細書で使用される場合、用語「ターン」は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドのバックボーンの方向を変更し、1つ、2つ、又は3つ以上のアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)残基が関与していてもよい屈曲を意味する。
【0158】
本明細書で使用される場合、用語「ループ」は、配列のバックボーンの方向を逆転させ、4つ以上のアミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)残基を含む、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの構造的特徴を指す。Olivaらは、少なくとも5つの種類のタンパク質ループを特定している(J.Mol.Bio.266巻(4号):814~830頁;1997年)。
【0159】
タンパク質を参照する際に本明細書で使用される場合、用語「ハーフループ」は、少なくとも半分の数のアミノ酸残基をそれが由来するループとして有する、ループであると特定された部分を指す。ループは、必ずしも偶数のアミノ酸残基を含むとは限らない場合があることが理解される。したがって、ループが奇数のアミノ酸を含有するか又は含むと特定された場合、奇数ループのハーフループは、ループの整数部分又は次の整数部分を含むことになる(ループのアミノ酸数/2+/-0.5アミノ酸)。例えば、7アミノ酸のループであると特定されたループは、3個のアミノ酸又は4個のアミノ酸のハーフループをもたらす場合がある(7/2=3.5+/-0.5は、3又は4)。
【0160】
本明細書で使用される場合、用語「ドメイン」は、1つ又は複数の特定可能な構造的又は機能的な特徴又は特性(例えば、結合能力、分子相互作用の部位としての役目)を有するポリペプチド又はポリヌクレオチドのモチーフを指す。
【0161】
本明細書で使用される場合、アミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)に基づく実施形態に関する用語「部位」は、「アミノ酸残基」及び「核酸残基」と同義的に使用される。部位は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに基づく分子内で修飾、遺伝子操作、変更、誘導体化、変異されていてもよいポリペプチド又はポリヌクレオチド内の位置を表わす。
【0162】
本明細書で使用される場合、用語「末端」は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの端部を指す。そのような端部は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの最初の部位又は最後の部位のみに限定されず、末端領域の追加アミノ酸又はヌクレオシド(又はヌクレオチド)を含んでいてもよい。本発明のポリペプチドに基づく分子は、N末端(遊離アミノ基(-NH2)を有するアミノ酸で終了する)及びC末端(遊離カルボキシル基(-COOH)を有するアミノ酸により終了する)を両方とも有することを特徴とする場合がある。本発明のタンパク質は、幾つかの場合、ジスルフィド結合又は非共有結合力により一緒になった複数のポリペプチド鎖(多量体、オリゴマー)で構成されている。こうした種類のタンパク質は、複数のN末端及びC末端を有するであろう。或いは、ポリペプチドの末端は、場合によっては、有機結合体等の非ポリペプチド基づく部分で始まる又は終わるように修飾されていてもよい。本発明のポリヌクレオチドに基づく分子は、5’末端及び3’末端を両方とも有することを特徴とする場合がある。
【0163】
特徴のいずれかが、本発明の分子の要素であると特定又は規定された場合、これらの特徴の幾つかの操作及び/又は修飾はいずれも、移動、交換、逆転、欠失、無作為化、又は複製することにより実施することができる。更に、特徴の操作は、本発明の分子に対する修飾と同じ結果をもたらすことができると理解される。例えば、ドメインの欠失を含む操作を行えば、全長分子より短いものをコードするように核酸を修飾した場合と同様に、分子の長さの変更がもたらされるであろう。
【0164】
修飾及び操作は、指定部位突然変異誘発等の当技術分野で知られている方法により達成することができる。その後、得られた修飾分子の活性を、本明細書に記載したもの等のin vitroアッセイ若しくはin vivoアッセイ、又は当技術分野で知られている任意の他の好適なスクリーニングアッセイを使用して試験してもよい。
【0165】
同位体変異体
本発明の検出分子は、同位体である1つ又は複数の原子を含有していてもよい。本明細書で使用される場合、用語「同位体」は、1つ又は複数の追加の中性子を有する化学元素を指す。1つの実施形態では、本発明の化合物は、重水素化されていてもよい。本明細書で使用される場合、用語「重水素化」は、1つ又は複数の水素原子が重水素同位体で置換されている物質を指す。重水素同位体は、水素の同位体である。水素の核は、1つのプロトンを含有するが、重水素核は、プロトン及び中性子を両方とも含有する。検出分子は、安定性等の化合物の物理的特性を変更するために、又は化合物を、診断及び実験応用で使用できるようにするために重水素化されている場合がある。
【0166】
結合体及び組み合わせ
本発明では、本発明のある実施形態の検出分子、抗原、及び/又は抗体は、1つ又は複数の相同性又は非相同性の分子と複合体を形成してもよく、結合してもよく、又は組み合わせてもよいことが企図されている。本明細書で使用される場合、「相同性分子」は、開始分子と比べて構造又は機能の少なくとも1つが類似している分子を意味し、「非相同性分子」は、開始分子と比べて構造又は機能の少なくとも1つが異なる分子である。したがって、構造的相同体は、構造が実質的に類似している分子である。それらは同一であってもよい。機能的相同体は、機能が実質的に類似している分子である。それらは同一であってもよい。
【0167】
本発明の検出分子は、結合体を含んでいてもよい。本発明のそのような結合体には、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)、又はグロブリン);炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、又はヒアルロン酸);又は脂質等の天然物質又はリガンドが含まれる。また、リガンドは、合成ポリマー、例えば、合成ポリアミノ酸、オリゴヌクレオチド(例えば、アプタマー)等の組換え又は合成分子であってもよい。ポリアミノ酸の例には、以下のものが含まれる:ポリリシン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル-マレイン酸無水物コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、又はポリホスファジン。ポリアミンの例には、以下のものが含まれる:ポリエチレンイミン、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬似ペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、陽イオン性脂質、陽イオン性ポルフィリン、ポリアミンの四級塩、又はアルファヘリックスペプチド。
【0168】
本発明のある実施形態の検出分子は、以下のものと結合するように設計されていてもよい:他のポリヌクレオチド、色素、挿入剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、プソラレン、ミトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、アルキル化剤、ホスファート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性同位体標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ、タンパク質、例えば糖タンパク質又はペプチド、例えば、コリガンドに対する特異的親和性を有する分子、又は抗体、例えば、癌細胞、内皮細胞、又は骨細胞等の指定の細胞タイプと結合する抗体、ホルモン及びホルモン受容体、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、コファクター、又は薬物等の非ペプチド種。
【0169】
アレルゲンを標識するか又はアレルゲンに目印を付けることを可能にするように、結合部分を検出分子抗体に付加してもよい。そのような標識/目印分子には、これらに限定されないが、ユビキチン、蛍光分子、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、及びジゴキシゲニンが含まれる。
【0170】
幾つかの実施形態では、検出分子は、他の検出分子と組み合わせてもよい。
幾つかの実施形態では、検出分子は、以下のもの等の検出可能作用剤を含んでいてもよい:種々の有機低分子、無機化合物、ナノ粒子、酵素又は酵素基質、蛍光物質、発光物質(例えば、ルミノール)、生物発光物質(例えば、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリン)、化学発光物質、放射性物質(例えば、18F、67Ga、81mKr、82Rb、111In、123I、133Xe、201Tl、125I、35S、14C、3H、又は99mTc(例えば、ペルテクネタート(テクネタート(VII)、TcO4)として)、及び造影剤(例えば、金(例えば、金ナノ粒子)、ガドリニウム(例えば、キレート化Gd)、酸化鉄(例えば、超常磁性酸化鉄(SPIO)、単結晶酸化鉄ナノ粒子(MION)、及び超微小超常磁性酸化鉄(USPIO))、マンガンキレート化合物(例えば、Mn-DPDP)、硫酸バリウム、ヨウ素化造影剤(イオヘキソール)、マイクロバブル、又はペルフルオロカーボン)。そのような光学的に検出可能な標識には、限定ではないが、以下のものが含まれる:例えば、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;アクリジン及び誘導体(例えば、アクリジン及びアクリジンイソチオシアナート);5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸;(EDANS);4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド-3,5ジスルホナート;N-(4-アニリノ-l-ナフチル)マレイミド;アントラニルアミド;BODIPY;ブリリアントイエロー;クマリン及び誘導体(例えば、クマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、及び7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(クマリン151));シアニン色素;シアノシン;4’,6-ジアミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5’5’’-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン;ジエチレントリアミンペンタアセタート;4、4’-ジイソチオシアナトジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸;4,4’-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;5-[ジメチルアミノ]-ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアナート(DABITC);エオシン及び誘導体(例えば、エオシン及びエオシンイソチオシアナート);エリトロシン及び誘導体(例えば、エリトロシンB及びエリトロシンイソチオシアナート);エチジウム;フルオレセイン及び誘導体(例えば、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’,7’-ジメトキシ-4’,5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、X-ローダミン-5-(及び-6)-イソチオシアナート(QFITC又はXRITC)、及びフルオレスカミン);2-[2-[3-[[1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-2H-ベンズ[e]インドール-2-イリデン]エチリデン]-2-[4-(エトキシカルボニル)-1-ピペラジニル]-1-シクロペンテン-1-イル]エテニル]-1,1-ジメチル-3-(3-スルホルプロピル)-1H-ベンズ[e]インドリウム水酸化物、N,N-ジエチルエタンアミンとの分子内塩、化合物(1:1)(IR144);5-クロロ-2-[2-[3-[(5-クロロ-3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾール-イリデン)エチリデン]-2-(ジフェニルアミノ)-1-シクロペンテン-1-イル]エテニル]-3-エチルベンゾチアゾリウムペルクロラート(IR140);マラカイトグリーンイソチオシアナート;4-メチルウンベリフェロンオルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローザニリン;フェノールレッド;B-フィコエリトリン;o-フタルジアルデヒド;ピレン及び誘導体(例えば、ピレン、ピレンブチラート、及びサクシニミジル1-ピレン);ブチラート量子ドット;リアクティブレッド4(CIBACRONTMブリリアントレッド3B-A);ローダミン及び誘導体(例えば、6-カルボキシ-X-ローダニン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンB 塩化スルフォニルローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアナート、スルホロダミンB、スルホロダミン101、スルホロダミン101の塩化スルホニル誘導体(テキサスレッド)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA) テトラメチルローダミン、及びテトラメチルローダミンイソチオシアナート(TRITC));リボフラビン;ロゾール酸;テルビウムキレート誘導体;シアニン-3(Cy3);シアニン-5(Cy5);シアニン-5.5(Cy5.5)、シアニン-7(Cy7);IRD700;IRD800;Alexa647;La Jolta Blue;フタロシアニン;及びナフタロシアニン。
【0171】
幾つかの実施形態では、検出可能な作用剤は、活性化されると検出可能になる検出不能な前駆体(例えば、テトラジン-フルオロフォア構築体(例えば、テトラジン-BODIPY FL、テトラジン-オレンジグリーン488、又はテトラジン-BODIPY TMR-X)又は酵素活性化可能な蛍光発光剤(例えば、PROSENSE(商標)(VisEn Medical社)))であってもよい。幾つかの実施形態では、検出不能な前駆体は、例えば、フルオレセイン及びDABCYLの組み合わせ等のフルオロフォア及びクエンチャーの組み合わせを含む。フルオロフォア及びクエンチャー対を選択するための指針は、Didenko,Vladimir V.編、Fluorescent energy transfer nucleic acid probes:designs and protocols.335巻、Springer社、2006年のS.A.E.Marras Selection of Fluorophore and Quencher Pairs for Fluorescent Nucleic Acid Hybridization Probesに記載されており、この文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。酵素標識組成物を使用することができるin vitroアッセイには、これらに限定されないが、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫沈降アッセイ、免疫蛍光法、酵素免疫測定法(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及びウエスタンブロット分析が含まれる。
【0172】
シグナル発生ポリヌクレオチド
ある実施形態によると、分子標的に対して高親和性で特異的に結合すると検出可能になるポリヌクレオチド配列が提供される。そのようなポリヌクレオチド配列は、上述のようなSELEXプロセスを使用して生成することができる。
【0173】
あるタイプの例示的なシグナル発生ポリヌクレオチドでは、配列の5’末端が、蛍光分子に結合されており、3’末端が、5’末端と結合する5~20ヌクレオチド長の逆方向相補配列を担持する。これにより、配列が折り畳むと、ステム-ループ構造が形成される。クエンチャー分子は、3’末端に結合される。当業者であれば、クエンチャーが5’末端に結合され、フルオロフォアが3’末端に結合される別の構成が可能であることを認識するであろう。そのような別のシグナル発生ポリヌクレオチドは、当業者であれば、過度な実験を行わずに本明細書の文脈で調製することができる。
【0174】
分子標的としてのリゾチームと結合するためのステム-ループ構造を用いて設計された例示的なシグナル発生ポリヌクレオチドを、下記に記載することにする。
ある実施形態では、5’末端のフルオロフォア分子は、Gヌクレオチド残基により引き起こされる消光を防止するために、Tヌクレオチド残基に結合されている。
【0175】
より高い融解温度(Tm)は回避されるべきであることを鑑みると、シグナル発生ポリヌクレオチドが、分子標的と結合するための熱力学有利性を有するためには、2つの鎖のTm又はΔGは、分子標的の結合親和性よりも低いことが必要であろう。好ましい分子標的結合を保持するために、Mg+2又はKを加えて平衡をシフトさせてもよい。最大で約37mMのKClを加えることにより、所与のシグナル発生ポリヌクレオチドの平衡は、分子標的の結合が有利になる方向にシフトし、最大で約5mMのMgClを加えることにより、平衡は、二本鎖構造が保持される方向にシフトし、それにより分子標的に対するシグナル発生ポリヌクレオチドの親和性は低下するであろう。
【0176】
ステム-ループ構造を作成するのに、2つの逆相補鎖が反対側にある必要はない。逆相補鎖は、5’末端に付加/アニーリングしてもよい。配列は、構造を物理的に妨害するのに十分な長さを有していなければならない。二本鎖結合は、分子標的と結合するために必要な二次構造折り畳みの形成を妨げる必要がある。
【0177】
ある実施形態では、シグナル発生ポリヌクレオチドは、フルオロフォアに連結されているコア配列、及びクエンチャーに連結されているより短いアニーリングリンカー配列を有するか、又はその逆である二量体性の物体である。
【0178】
ある実施形態では、シグナル発生ポリヌクレオチド配列は、2’-O-メチル修飾で化学的に修飾されている。そのような修飾は、分子標的の結合に関する結合親和性及び感度にそれほど影響しないが、安定性を増強すると予想される。
【0179】
本発明の標的:アレルゲン
本発明は、アレルゲンと結合する検出分子(それら自体は、単量体又は多量体)を提供する。上述のように、検出分子は、核酸に基づいていてもよく、又はアミノ酸に基づいていてもよい。
【0180】
幾つかの実施形態では、検出分子の標的は、アレルゲンタンパク質又はその変異体である。幾つかの実施形態では、検出分子は、それら自体がアレルゲンと結合するタンパク質又は他の生体分子と結合又は会合するように設計されていてもよい。
【0181】
本発明によると、理論により束縛されることは望まないが、検出分子は、完全に又は部分的にアレルゲンと結合してもよい。
幾つかの実施形態では、アレルゲンは、食物アレルゲンである。食物に関連するアレルゲンタンパク質の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:ブラインシュリンプ(Brine shrimp)(Art fr 5)、カニ(Cha f 1)、北海エビ(North Sea Shrimp)(Cra c 1、 Cra c 2、Cra c 4、Cra c 5、Cra c 6、Cra c 8)、アメリカロブスター(Hom a 1、Hom a 3、Hom a 6)、ショウナンエビ(white shrimp)(Lit v 1、Lit v 2、Lit v 3、Lit v4)、オニテナガエビ(giant freshwater prawn)(Mac r 1)、シュリンプ(Met e 1、Pen a 1、Pen i 1)、甘エビ(northern shrimp)(Pan b 1)、イセエビ(Pan s 1)、ブラックタイガーエビ(Pen m 1、Pen m 2、Pen m 3、Pen m 4、Pen m 6)、狭ツメザリガニ(narrow-clawed crayfish)(Pon i 4、Pon i 7)、ワタリガニ(blue swimmer crab)(Por p 1)、家畜牛(Bos d 4、Bos d 5、Bos d 6、Bos d 7、Bos d 8、Bos d 9、Bos d 10、Bos d 11、Bos d 12)、大西洋ニシン(Clu h 1)、コイ(common carp)(Cyp c 1)、バルトタラ(Gad c 1)、タイセイヨウタラ(Gad m 1、Gad m 2、Gad m 3)、及びタラ(Gad c 1)、ニワトリ(Gal d 1、Gal d 2、Gal d 3、Gal d 4、Gal d 5)、バラムンダ(Lat c 1)、メグリム(Lepidorhombus whiffiagonis)(Lep w 1)、シロザケ(Onc k 5)、タイセイヨウサケ(Sal s 1、Sal s 2、Sal s 3)、ニジマス(Onc m 1)、モザンビークティラピア(Ore m 4)、食用ガエル(Ran e 1、Ran e 2)、タイヘイヨウイワシ(Sar sa 1)、メヌケ(ocean perch)(Seb m 1)、キハダマグロ(Thu a 1、Thu a 2、Thu a 3)、メカジキ(Xip g 1)、アワビ(Hal m 1)、ヒメリンゴマイマイ(brown garden snail)(Hel as 1)、イカ(Tod p 1)、パイナップル(Ana c 1、Ana c 2)、アスパラガス(Aspa o 1)、大麦(Hor v 12、Hor v 15、Hor v 16、Hor v 17、Hor v 20、Hor v 21)、バナナ(Mus a 1、Mus a 2、Mus a 3、Mus a 4、Mus a 5)、バナナ(Musxp1)、米(Ory s 12)、ライ麦(Sec c 20)、小麦(Tri a 12、Tri a 14、Tri a 18、Tri a 19、Tri a 25、Tri a 26、Tri a 36、Tri a 37)、トウモロコシ(コーン)(Zea m 14、Zea m 25)、キーウィフルーツ(Act c1、Act c 2、Act c 5、Act c 8、Act c 10、Act d 1、Act d 2、Act d 3、Act d 4、Act d 5、Act d 6、Act d 7、Act d 8、Act d 9、Act d 10、Act d 11)、カシュー(Ana o 1、Ana o 2、Ana o 3)、セロリ(Api g 1、Api g 2、Api g 3、Api g 4、Api g 5、Api g 6)、ピーナッツ(Ara h 1、Ara h 2、Ara h 3、Ara h 4、Ara h 5、Ara h 6、Ara h 7、Ara h 8、Ara h 9、Ara h 10、Ara h 11、Ara h 12、Ara h 13)、ブラジルナッツ(Ber e 1、Ber e 2)、和カラシ(oriental mustard)(Bra j 1)、菜種(Bra n 1)、キャベツ(Bra o 3)、カブ(Bra r 1、Bra r 2)、ピーマン(Cap a 1w、Cap a 2)、ピーカン(Car i 1、Car i 4)、クリ(Cas s 1、Cas s 5、Cas s 8、Cas s 9)、レモン(Cit I 3)、タンジェリン(Cit r 3)、甘果オレンジ(sweet orange)(Cit s 1、Cit s 2、Cit s 3)、ハシバミ(Cor a 1、Cor a 2、Cor a 8、Cor a 9、Cor a 11、Cor a 12、Cor a 13、Cor a 14)、マスクメロン(Cuc m 1、Cuc m 2、Cuc m 3)、ニンジン(Dau c 1、Dau c 4、Dau c 5)、ソバ(common buckwheat)(Fag e 2、Fag e 3)、ダッタンソバ(tartarian buckwheat)(Fag t 2)、イチゴ(Fra a 1、Fra a 3、Fra a 4)、大豆(Gly m 1、Gly m 2、Gly m 3、Gly m 4、Gly m 5、Gly m 6、Gly m 7、Gly m 8)、ヒマワリ(Hel a1、Hel a 2、Hel a 3)、クログルミ(Jug n 1、Jug n 2)、セイヨウグルミ(English walnut)(Jug r 1、Jug r 2、Jug r 3、Jug r 4)、栽培レタス(Lac s 1)、レンズマメ(Len c 1、Len c 2、Len c 3)、レイシ(Lit c 1)、青花ルピナス(narrow-leaved blue lupin)(Lup an 1)、リンゴ(Mal d 1、Mal d 2、Mal d 3、Mal d 4)、カッサバ(Man e 5)、クワ(Mor n 3)、アボカド(Pers a 1)、グリーンビーンズ(Pha v 3)、ピスタチオ(Pis v 1、Pis v 2、Pis v 3、Pis v 4、Pis v 5)、エンドウ(Pis s 1、Pis s 2)、アプリコット(Pru ar 1、Pru ar 3)、セイヨウミザクラ(sweet cherry)(Pru av 1、Pru av 2、Pru av 3、Pru av 4)、セイヨウスモモ(European plum)(Pru d 3)、アーモンド(Pru du 3、Pru du 4、Pru du 5、Pru du 6)、モモ(Pru p 1、Pru p 2、Pru p 3、Pru p 4、Pru p 7)、ザクロ(Pun g 1)、セイヨウナシ(Pyr c 1、Pyr c 3、Pyr c 4、Pyr c 5)、トウゴマ(Ric c 1)、赤ラズベリー(red raspberry)(Rub i 1、Rub i 3)、ゴマ(Ses i 1、Ses i 2、Ses i 3、Ses i 4、Ses i 5、Ses i 6、Ses i 7)、イエローマスタード(yellow mustard)(Sin a 1、Sin a 2、Sin a 3、Sin a 4)、トマト(Sola I 1、Sola I 2、Sola I 3、Sola I 4)、ジャガイモ(Sola t 1、Sola t 2、Sola t 3、Sola t 4)、リョクトウ(Vig r 1、Vig r 2、Vig r 3、Vig r 4、Vig r 5、Vig r 6)、ブドウ(Vit v 1)、ナツメ(Chinese date)(Ziz m 1)、アナカーディム・オシデンタール(Anacardium occidentale)(Ana o 1.0101、Ana o 1.0102)、オアピウム・グラウェオレーンス(Apium graveolens)(Api g 1.0101、Api g 1.0201)、ダウクス・カロタ(Daucus carota)(Dau c1.0101、Dau c1.0102、Dau c1.0103、Dau c1.0104、Dau c1.0105、Dau c1.0201)、シトラス・シネンシス(Citrus sinensis)(Cit s3.0101、Cit s3.0102)、グリシン・マックス(Glycine max)(Gly m1.0101、Gly m1.0102、Gly m3.0101、Gly m3.0102)、レンス・クリナリス(Lens culinaris)(Len c1.0101、Len c1.0102、Len c1.0103)、ピスム・サティブム(Pisum sativum)(Pis s1.0101、Pis s1.0102)、リコペルシコン・サティブム(Lycopersicon sativum)(Lyc e2.0101、Lyc e2.0102)、フラガリア・アナナッサ(Fragaria ananassa)(Fra a3.0101、Fra a3.0102、Fra a3.0201、Fra a3.0202、Fra a3.0203、Fra a3.0204、Fra a3.0301)、マルス・ドメスティカ(Malus domestica)(Mal d1. 0101、Mal d1.0102、Mal d1.0103、Mal d1.0104、Mal d1.0105、Mal d1.0106、Mal d1.0107、Mal d1.0108、Mal d1.0109、Mal d1.0201、Mal d1.0202、Mal d1.0203、Mal d1.0204、Mal d1.0205、Mal d1.0206、Mal d1.0207、Mal d1.0208、Mal d1.0301、Mal d1.0302、Mal d1.0303、Mal d1.0304、Mal d1.0401、Mal d1.0402、Mal d1.0403、Mal d3.0101w、Mal d3.0102w、Mal d3.0201w、Mal d3.0202w、Mal d3.0203w、Mal d4.0101、Mal d4.0102、Mal d4.0201、Mal d4.0202、Mal d4.0301、Mal d4.0302)、プルヌス・アビウム(Prunus avium)(Pru av1.0101、Pru av1.0201、Pru av1.0202、Pru av1.0203)、及びプルヌス・ペルシカ(Prunus persica)(Pru p4.0101、Pru p4.0201);並びにそれらの任意の変種。食物に関連するアレルゲンの名前は、IUISアレルゲン命名法小委員会により系統的に命名及び列挙されている(International Union of Immunological Societies Allergen Nomenclature Sub-Committee,List of isoallergens and variantsを参照)。
【0182】
食物アレルゲンに加えて、検出分子は、空気中に浮遊している微粒子/アレルゲン及び他の環境アレルゲンを検出することができる。アレルゲンを含有する試料は、以下のものから得ることができる:植物(例えば、雑草、芝草、木、花粉)、動物(例えば、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、ラット、モルモット、マウス、及びアレチネズミ等の哺乳動物の鱗屑、尿、唾液、血液、又は他の体液に見出されるアレルゲン)、真菌/カビ、昆虫(例えば、ハチ、ジガバチ、及びスズメバチ等の刺咬昆虫、及びユスリカ科(chirnomidae)(ユスリカ(non-biting midge))、並びにイエバエ、ショウジョウバ、シープブローハエ(sheep blow fly)、アメリカオビキンバエ、コクゾウムシ、カイコ、ミツバチ、ユスリカの幼虫、ハチミツガの幼虫、ゴミムシダマシ、ゴキブリ、及びテニブリオ・モリトール(Tenibrio molitor)カブト虫の幼虫;クモ、及びイエダニ等のダニ)、ゴム(例えば、ラテックス)、金属、化学薬品(例えば、薬物、タンパク質洗剤添加物)、並びに自己アレルゲン及びヒト自己アレルゲン(例えば、Hom s 1、Hom s 2、Hom s 3、Hom s 4、Hom s 5)(Allergen Nomenclature:International Union of Immunological Societies Allergen Nomenclature Sub-Committee、List of allergens and Allergen Nomenclature:International Union of Immunological Societies Allergen Nomenclature Sub-Committee、List of isoallergens and variantsを参照)。
【0183】
本発明の検出分子及びデバイスを使用して検出することができる植物由来のアレルゲンタンパク質の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:アッシュ(Fra e 1)、ヒノキ(Cha o1、Cha o 2)、スギ(Cry j1、Cry j 2)、イトスギ(Cup a 1)、セイヨウヒノキ(common cypress)(Cup s 1、Cup s 3)、マウンテンシダー(mountain cedar)(Jun a 1、Jun a 2、Jun a 3、Jun s 1)、プリッキィジュニペル(prickly juniper)(Jun o 4)、イースタンレッドシダー(eastern red cedar)(Jun v 1、Jun v 3)、ハルガヤ(sweet vernal grass)(Ant o 1)、サフランクロッカス(saffron crocus)(Cro s 1、Cro s 2)、バミューダグラス(Bermuda grass)(Cyn d 1、Cyn d 7、Cyn d 12、Cyn d 15、Cyn d 22w、Cyn d 23、Cyn d 24)、カモガヤ(orchard grass)(Dac g 1、Dac g 2、Dac g 3、Dac g 4、Dac g 5)、ヒロハノウシノケグサ(meadow fescue)(Fes p 4)、シラゲガヤ(velvet grass)(Hol I 1、Hol I 5)、大麦(Hor v 1、Hor v 5)、ライグラス(rye grass)(Lol p 1、Lol p 2、Lol p 3、Lol p 4、Lol p 11)、バヒアグラス(bahia grass)(Pas n 1)、カナリアクサヨシ(canary grass)(Pha a 1、Pha a 5)、オオアワガエリ(Phl p 1、Phl p 2、Phl p 4、Phl p 5、Phl p 6、Phl p 7、Phl p 11、Phl p 12、Phl p 13)、ナツメヤシ(Pho d 2)、ケンタッキーブルーグラス(Kentucky blue grass)(Poa p 1、Poa p 5)、ライムギ(Sec c 1、Sec c 5、Sec c 38)、セイバンモロコシ(Johnson grass)(Sor h 1)、コムギ(Tri a 15、Tri a 21、Tri a 27、Tri a 28、Tri a 29、Tri a 30、Tri a 31、Tri a 32、Tri a 33、Tri a 34、Tri a 35、Tri a 39)、トウモロコシ(Zea m 1、Zea m 12)、ハンノキ(Aln g 1、Aln g 4)、アオゲイトウ(redroot pigweed)(Ama r 2)、ブタクサ(Amb a 1、Amb a 2、Amb a 3、Amb a 4、Amb a 5、Amb a 6、Amb a 7、Amb a 8、Amb a 9、Amb a 10、Amb a 11)、ブタクサモドキ(western ragweed)(Amb p 5)、オオブタクサ(giant ragweed)(Amb t 5)、ヨモギ(mugwort)(Art v 1、Art v 2、Art v 3、Art v 4、Art v 5、Art v 6)、テンサイ(Beta v 1、beta v 2)、ヨーロッパシラカンバ(European white birch)(Bet v 1、Bet v 2、Bet v 3、Bet v 4、Bet v 6、Bet v 7)、カブ(Bra r 5)、クマシデ(hornbeam)(Car b 1)、クリ(Cas s 1)、ニチニチソウ(rosy periwinkle)(Cat r 1)、シロザ(lamb’s-quarter)、アカザ(pigweed)(Che a 1、Che a 2、Che a 3)、アラビカコーヒーノキ(Cof a 1、Cof a 2、Cof a 3)、ハシバミ(Cor a 6、Cor a 10)、ヘーゼルナッツ(Cor a1.04、Cor a2、Cor a8)、ヨーロッパブナ(European beech)(Fag s 1)、アッシュ(Fra e 1)、ヒマワリ(Hel a 1、Hel a 2)、パラゴムノキ(para rubber tree)(Hev b 1、Hev b 2、Hev b 3、Hev b 4、Hev b 5、Hev b 6、Hev b 7、Hev b 8、Hev b 9、Hev b 10、Hev b 11、Hev b 12、Hev b 13、Hev b 14)、カナムグラ(Japanese hop)(Hum j 1)、イボタノキ(privet)(Lig v 1)、メルクリアリス・アヌア(Mercurialis annua)(Mer a 1)、オリーブ(Ole e 1、 Ole e 2、Ole e 3、Ole e 4、Ole e 5、Ole e 6、Ole e 7、Ole e 8、Ole e 9、Ole e 10、Ole e 11)、ヨーロッパホフォルンビーム(European hophornbeam)(Ost c 1)、カベイラクサ(Parietaria judaica)(Par j 1、Par j 2、Par j 3、Par j 4)、パリエタリア・オフィシナリス(Parietaria Officinalis)(Par o 1)、ヘラオオバコ(Plantago lanceolata)(Pal I 1)、カエデバスズカケノキ(London plane tree)(Pla a 1、Pla a 2、Pla a 3)、スズカケノキ(Platanus orientalis)(Pla or 1、Pla or 2、Pla or)、ホワイトオーク(white oak)(Que a)、ロシアアザミ(Russian thistle)(Sal k 1、Sal k 2、Sal k 3、Sal k 4、Sal k 5)、トマト(Sola I 5)、ライラック(Syr v 1、Syr v 5)、ロシアアザミ(Sal k 1)、ヘラオオバコ(English plantain)(Pla l1)、ブタクサ(Ambrosia artemisiifolia)(Amb a8. 0101、Amb a8.0102、Amb a9.0101、Amb a9.0102)、ヘラオオバコ(Plantago lanceolata)(Pla l1.0101、Pla l1.0102、Pla l1.0103)、カベイラクサ(Parietaria judaica)(Par j 3.010)、バミューダグラス(Cynodon dactylon)(Cyn d1.0101、Cyn d1.0102、Cyn d1.0103、Cyn d1.0104、Cyn d1.0105、Cyn d1.0106、Cyn d1. 0107、Cyn d1.0201、Cyn d1.0202、Cyn d1.0203、Cyn d1.0204)、シラゲガヤ(Holcus lanatus)(Hol I1.0101、Hol I1.0102)、ホソムギ(Lolium perenne)(Phl p1.0101、Phl p1.0102、Phl p4.0101、Phl p4.0201、Phl p5.0101、Phl p5.0102、Phl p5.0103、Phl p5.0104、Phl p5.0105、Phl p5.0106、Phl p5.0107、Phl p5.0108、Phl p5.0201、Phl p5.0202)、ライムギ(Secale cereale)(Sec c20.0101、Sec c20.0201)、ベツラ・ベルコサ(Betula Verrucosa)(Bet v1. 0101、Bet v1.0102、Bet v 1.0103、Bet v 1.0201、Bet v 1.0301、Bet v1.0401、Bet v 1.0402、Bet v 1.0501、Bet v 1.0601、Bet v 1.0602、Bet v1.0701、Bet v1.0801、Bet v1.0901、Bet v1.1001、Bet v1.1101、Bet v1.1201、Bet v 1.1301、Bet v1.1401、Bet v1.1402、Bet v1.1501、Bet v1.1502、Bet v1.1601、Bet v1.1701、Bet v 1.1801、Bet v1.1901、Bet v1.2001、Bet v1.2101、Bet v1.2201、Bet v1.2301、Bet v1.2401、Bet v 1.2501、Bet v1.2601、Bet v1.2701、Bet v1.2801、Bet v1.2901、Bet v1.3001、Bet v1.3101、Bet v 6.0101、Bet v6.0102)、セイヨウシデ(Carpinus betulus)(Car b1.0101、Car b1.0102、Car b1.0103、Car b1.0104、Car b1.0105、Car b1.0106、Car b1.0106、Car b1.0106、Car b1.0106、Car b1.0107、Car b1.0107、Car b1.0108、Car b1.0201、Car b1.0301、Car b1.0302)、セイヨウハシバミ(Corylus avellana)(Cor a1.0101、Cor a1.0102、Cor a1.0103、Cor a1.0104、Cor a1.0201、Cor a1.0301、Cor a1.0401、Cor a1.0402、Cor a1.0403、Cor a1.0404)、ヨウシュイボタ(Ligustrum vulgare)(Syr v1.0101、Syr v1.0102、Syr v1.0103)、スギ(Cryptomeria japonica)(Cry j2.0101、Cry j2.0102)、及びホソイトスギ(Cupressus sempervirens)(Cup s1.0101、Cup s1.0102、Cup s1.0103、Cup s1.0104、Cup s1.0105);並びにそれらの任意の変種。
【0184】
ルピナスは、ルピナス属に属するマメ科の草本である。ヨーロッパでは、ルピナスの粉末及び種子は、パン、クッキー、ペストリー、パスタ、ソース、並びにミルク又は大豆の代替としての飲料、及び無グルテン食品に広く使用されている。最近、国際免疫学会連合(IUIS、International Union of Immunological Societies)アレルゲン命名法小委員会は、β-コングルチンをLup an 1アレルゲンと命名した。(Nadalら、(2012年)DNA Aptamers against the Lup an 1 Food Allergen.PLoS ONE 7巻(4号):e35253)、及びより最近では、Lup an 1(β-コングルチン)に対する高親和性11量体DNAアプタマーが報告された(Nadalら、(2013年)Probing high-affinity 11-mer DNA aptamer against Lup an 1(β-conglutin).Anal.Bioanal.Chem.405巻:9343~9349頁)。
【0185】
本発明の検出分子及びデバイスを使用して検出することができるダニ由来のアレルゲンタンパク質の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:ダニ(Blo t 1、Blo t 3、Blo t 4、Blo t 5、Blo t 6、Blo t 10、Blo t 11、Blo t 12、Blo t 13、Blo t 19、Blot t 21);コナヒョウダニ(American house dust mite)(Der f 1、Der f 2、Der f 3、Der f 7、Der f 10、Der f 11、Der f 13、Der f 14、Der f 15、Der f 16、Der f 17、Der f 18、Der f 22、Der f 24);デルマトファゴイデス・ミクロセラス(Dermatophagoides microceras)(イエダニ)(Der m 1);ヤケヒョウヒダニ(European house dust mite)(Der p 1、Der p 2、Der p 3、Der p 4、Der p 5、Der p 6、Der p 7、Der p 8、Der p 9、Der p 10、Der p 11、Der p 14、Der p 15、Der p 20、Der p 21、Der p 23);オイログリフス・マイネイ(Euroglyphus maynei)(イエダニ)(Eur m 2、Eur m 2、Eur m 3、Eur m 4、 Eur m 14);貯蔵庫ダニ(storage mite)(Aca s 13、Gly d 2、Lep d 2、Lep d 5、Lep d 7、Lep d 10、Lep d 13、Tyr p 2、Tyr p 3、Tyr p 10、Tyr p 13、Tyr p 24)、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)(Der f1. 0101、Der f1.0102、Der f1.0103、Der f1.0104、Der f1.0105、Der f2.0101、Der f2.0102、Der f2.0103、Der f2.0104、Der f2.0105、Der f2.0106、Der f2.0107、Der f2.0108、Der f2.0109、Der f2.0110、Der f2.0111、Der f2.0112、Der f2.0113、Der f2.0114、Der f2.0115、Der f2.0116、Der f2.0117)、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)(Der p1. 0101、Der p1.0102、Der p1.0103、Der p1.0104、Der p1.0105、Der p1.0106、Der p1.0107、Der p1.0108、Der p1.0109、Der p1.0110、Der p1.0111、Der p1.0112、Der p1.0113、Der p1.0114、Der p1.0115、Der p1.0116、Der p1.0117、Der p1.0118、Der p1.0119、Der p1.0120、Der p1.0121、Der p1.0122、Der p1.0123、Der p2.0101、Der p2.0102、Der p2.0103、Der p2.0104、Der p2.0105、Der p2.0106、Der p2.0107、Der p2.0108、Der p2.0109、Der p2.0110、Der p2.0111、Der p2.0112、Der p2.0113)、オイログリフス・マイネイ(Eur m2. 0101、Eur m2.0102)、サヤアシニクダニ(Lepidoglyphus destructor)(Lep d2. 0101、Lep d2.0101、Lep d2.0101、Lep d2.0102、Lep d2.0201、Lep d2.020)及びイエニクダニ(Glycyphagus domesticus)(Gly d2.0101、Gly d2.0201);及びそれらの任意の変種。
【0186】
本発明の検出分子及びデバイスを使用して検出することができる動物由来のアレルゲンタンパク質の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:家畜ウシ(Bos d 2、Bos d 3、Bos d 4、Bos d 5、Bos d 6、Bos d 7、Bos d 8)、イヌ(Can f 1、Can f 2、Can f 3、Can f 4、Can f 5、Can f 6)、家畜ウマ(Equ c 1、Equ c 2、Equ c 3、Equ c 4、Equ c 5)、ネコ(Fel d 1、Fel d 2、Fel d 3、Fel d 4、Fel d 5w、Fel d 6w、Fel d 7、Fel d 8)、マウス(Mus m 1)、モルモット(Cav p 1、Cav p 2、Cav p 3、Cav p 4、Cav p 6)、ウサギ(Ory c 1、Ory c 3、Ory c 4)ラット(Rat n 1)、乳牛(Bos domesticus)(Bos d 2.0101、Bos d 2.0102、Bos d 2.0103)、及びウマ(Equus caballus)(Equ c2.0101、Equ c 2.0102);並びにそれらの任意の変種。
【0187】
本発明の検出分子及びデバイスを使用して検出することができる昆虫由来のアレルゲンタンパク質の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:ネッタイシマカ(yellow fever mosquito)(Aed a 1、Aed a 2、Aed a 3)、東洋ミツバチ(Eastern hive bee)(Api c 1)、オオミツバチ(giant honeybee)(Api d 1)、ミツバチ(Api m 1、Api m 2、Api m 3、Api m 4、Api m 5、Api m 6、Api m 7、Api m 8、Api m 9、Api m 10、Api m 11、Api m 12)、ハトダニ(pigeon tick)(Arg r 1)、チャバネゴキブリ(German cockroach)(Bla g 1、Bla g 2、Bla g 3、Bla g 4、Bla g 5、Bla g 6、Bla g 7、Bla g 8、Bla g 11)、マルハナバチ(bumble bee)(Bom p 1、Bom p 4、Bom t 1、Bom t 4)、カイコガ(Bomb m 1)、ミッジ(midge)(Chi k 10、Chi t 1、Chi t 1. 01、Chi t 2、Chi t 2. 0101、Chi t 2. 0102、Chi t 3、Chi t 4、Chi t 5、Chi t 6、Chi t 6. 01、Chi t 7、Chi t 8、Chi t 9)、ネコノミ(Cte f 1、Cte f 2、Cte f 3)、スズメバチ(yellow hornet)(Dol a 5)、北米産スズメバチ(white face hornet)(Dol m 1、Dol m 2、Dol m 5)、ヌカカ(biting midge)(For t 1、For t 2)、サバンナツェツェバエ(Savannah Tsetse fly)(Glo m 5)、ナミテントウ(Har a 1、Har a 2)、セイヨウシミ(Lep s 1)、チャタテムシ(Lip b 1)、オーストラリアキバハリアリ(Australian jumper ant)(Myr p 1、Myr p 2、Myr p 3)、ワモンゴキブリ(Per a
1、Per a 3、Per a 6、Per a 7、Per a 9、Per a 10)、ノシメマダラメイガ(Plo i 1、Plo i 2)、ジガバチ(Pol a 1、Pol a 2、Pol a 5、Pol e 1、Pol e 4、Pol e 5、Pol f 5、Pol g 1、Pol g 5、Pol m 5、Poly p 1、Poly s 5、Ves vi 5)、地中海アシナガバチ(Mediterranean paper wasp)(Pol d 1、Pol d 4、Pol d 5)、トロピカルファイアーアント(tropical fire ant)(Sol g 2、Sol g 3、Sol g 4)、ヒアリ(Solenopsis invicta)(レッドインポートファイアーアント(red imported fire ant))(Sol I 1、Sol I 2、Sol I 3、Sol I 4)、ブラックファイアーアント(black fire ant)(Sol r 2、Sol r 3)、ブラジルファイアーアント(Brazilian fire ant)(Sol r 2、Sol r 3)、ウマバエ(horsefly)(Tab y 1、Tab y 2、Tab y 5)、マツノギョウレツケムシガ(pine processionary moth)(Tha p 1、Tha p 2)、カリフォルニアサシガメ(California kissing bug)(Tria p 1)、ヨーロッパスズメバチ(European hornet)(Vesp c 1、Vesp c 5)、ベスパ・マグニフィカ(Vespa magnifica)(スズメバチ)(Vesp ma 2、Vesp ma 5)、ベスパ・マンダリニア(Vespa mandarinia)(オオスズメバチ)(Vesp m 1、Vesp m 5)、黄蜂(yellow jacket)(Ves f 5、Ves g 5、Ves m 1、Ves m 2、Ves m 5)、ヨーロッパクロスズメバチ(Vespula germanica)(黄蜂)(Ves p 5)ベスプラ・スクアモサ(黄蜂)(Vespula squamosa)(Ves s 1、Ve s s5)、キオビクロスズメバチ(Vespula vulgaris)(黄蜂)(Ves v 1、Ves v 2、Ves v 3、Ves v 4、Ves v 5、Ves v 6)、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)(Bla g 1.0101、Bla g 1.0102、Bla g 1. 0103、Bla g 1.02、Bla g 6.0101、Bla g 6.0201、Bla g 6.0301)、ワモンゴキブリ(Periplaneta Americana)(Per a1. 0101、Per a1.0102、Per a1.0103、Per a1.0104、Per a1.02、Per a3.01、Per a3.0201、Per a3.0202、Per a3.0203、Per a7.0101、Per a7.0102)、モンスズメバチ(Vespa crabo)(Ves pc 5.0101、Ves pc 5.0101)、ベスパ・マンダリナ(Vespa mandarina)(Vesp m 1.01、Vesp m 1.02);並びにそれらの任意の変種。
【0188】
本発明の検出分子及びデバイスを使用して検出することができる真菌/カビ由来のアレルゲンタンパク質の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)(アルタナリア腐敗真菌)(Alt a 1、Alt a 3、Alt a 4、Alt a 5、Alt a 6、Alt a 7、Alt a 8、Alt a 10、Alt a 12、Alt a 13)、アスペルギルス・フラブス(Aspergillus flavus)(真菌)(Asp fl 13)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)(真菌)(Asp f 1、Asp f 2、Asp f 3、Asp f 4、Asp f 5、Asp f 6、Asp f 7、Asp f 8、Asp f 9、Asp f 10、Asp f 11、Asp f 12、Asp f 13、Asp f 15、Asp f 16、Asp f 17、Asp f 18、Asp f 22、Asp f 23、Asp f 27、Asp f 28、Asp f 29、Asp f 34)、アスペルギル・ニガー(Aspergillus niger)(Asp n 14、Asp n 18、Asp n 25)、アスペルギル・オリザ(Aspergillus oryzae)(Asp o 13、Asp o 21)、アスペルギル・ベルシコロル(Aspergillus versicolor) (Asp v 13)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(酵母)(Cand a 1、Cand a 3)、カンジダ・ボイジニイ(Candida boidinii)(酵母)(Cand b 2)、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)(Cla c 9、Cla c 14)、クラドスポリウム・ヘルバルム(Cladosporium herbarum)(Cla h 2、Cla h 5、Cla h 6、Cla h 7、Cla h 8、Cla h 9、Cla h 10、Cla h 12)、クルブラリア・ルナタ(Curvularia lunat)(異名:コクリオボルス・ルナツス(Cochliobolus lunatus))(Cur l 1、Cur I 2、Cur I 3、Cur I 4)、エピコックム・プルプラセンス(Epicoccum purpurascens)(土壌菌)(Epi p 1)、フザリウム・カルモラム(Fusarium culmorum)(N.A.)、フザリウム・プロリフェラツム(Fusarium proliferatum)(Fus p 4)、ペニシリウム・ブレビコンパクツム(Penicillium brevicompactum)(Pen b 13、Pen b 26)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillum chrysogenum)(Pen ch 13、Pen ch 18、Pen ch 20、Pen ch 31、Pen ch 33、Pen ch 35)、ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum)(Pen c 3、Pen c 13、Pen c 19、Pen c 22、Pen c 24、Pen c 30、Pen c 32)、ペニシリウム・クルストスム(Penicillium crustosum)(Pen cr 26)、ペニシリウム・オキサリクム(Penicillium oxalicum)(Pen o 18)、スタキボトリス・カルタルム(Stachybotrys chartarum)(Sta c 3)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)(Tri r 2、Tri r 4)、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)(Tri t 1, Tri t 4)、シロシベ・クベンシス(Psilocybe cubensis)(Psi c 1, Psi c 2)、ササクレヒトヨダケ(Cop c 1、Cop c 2、Cop c 3、Cop c 5、Cop c 7)、ロドトルラ・ムシラギノサ(Rhodotorula mucilaginosa)(Rho m 1、Rho m 2)、マラセジア・フルフール(Malassezia furfur)(Malaf2、Malaf3、Malaf4)、マラセジア・シンポジアリス(Malassezia sympodialis)(Malas1、Malas5、Malas6、Malas7、Malas8、Malas9、Malas10、Malas11、Malas12、Malas13)、及びアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternat)(Alt a1.0101、Alt a1.0102);並びにそれらの任意の変種。
【0189】
更なるアレルゲンの例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:センチュウ(Ani s 1、Ani s 2、Ani s 3、Ani s 4)、ムシ(Asc s 1)、軟体サンゴ(Den n 1)、ゴム(ラテックス)(Hev b 1、Hev b 2、Hev b 3、Hev b 5、Hev b 6、Hev b 7、Hev b 8、Hev b 9、Hev b 10、Hev b 11、Hev b 12、Hev b 13),オベチェ(obeche)(Trip s 1)、及びパラゴムノキ(Heveabrasiliensis)(Hev b6.01、Hev b6.0201、Hev b6.0202、Hev b6.03、Hev b8.0101、Hev b8.0102、Hev b8.0201、Hev b8.0202、Hev b8.0203、Hev b8.0204、Hev b10.0101、Hev b10.0102、Hev b10.0103、Hev b11.0101、Hev b11.0102);並びにそれらの任意の変種。
【0190】
幾つかの実施形態では、本方法及びデバイスは、病院での臨床食物アレルギー又はアレルギー検査に使用して、患者がアレルギーを示す食物/アレルゲン(複数可)を特定することができる。加えて、本発明の携帯デバイスは、食物/環境アレルギーを有する人々が、例えば、家庭で市販の食品を試験するための、又はレストランで注文した料理を検査するための持ち運び試験装置として使用することができる。食品試料は、生鮮食品、冷凍食品、冷却食品、又は動物由来の肉及び/又は野菜を含む加工食品であってもよい。
【0191】
本発明の標的:病原体
幾つかの実施形態では、本発明は、試料中の病原性微生物と結合する検出分子を提供する。検出分子は、上記で考察されているように、病原性微生物に特異的な1つ又は複数の標的タンパク質と結合するように設計されている核酸分子(好ましくは、アプタマー)である。標的タンパク質は、病原体により分泌される分子、表面タンパク質、病原体が攻撃する宿主で誘導されるタンパク質、又は標的タンパク質の部分であってもよい。本発明は、細菌、酵母、真菌、胞子、ウイルス、又はプリオン等の多数の異なるタイプの病原性微生物の検出及び特定を可能にする。
【0192】
本明細書で使用される場合、用語「病原体」は、あらゆる疾患誘発物質(特に、ウイルス又は細菌又は他の微生物)を意味する。
幾つかの態様では、本方法及びデバイスは、試料中の病原性微生物の、非常に迅速で、特異性及び感度の高い検出及び特定を提供する。本発明は、医療、市民の安全、軍事目的、又は政府使用に使用することができる。
【0193】
本発明によると、病原性微生物は、病原性細菌である。ある実施形態では、病原性細菌は、以下のもの等のヒト病原性細菌である:例えば、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)、ブルセラ・カニス(Brucella canis)、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)、ブルセラ・スイス(Brucella suis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クラミジア・トラコマーティス(Chlamydia trachomatis)、クラミドフィラ(Chlamydophila)、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、大腸菌(Escherichia coli)、腸毒性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli)、腸毒性大腸菌(Enteropathogenic E. Coli)、大腸菌O 175:H7、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、レプトスピラ・インターロガンス(Leptospira interrogans)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコプラズマ・ニューモニア(Mycolasma pneumonia)、ナイサリア・ゴノレア(Neissaria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitides)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、シゲラ・ソネイ(Shigella sonnei)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミデス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)。
【0194】
幾つかの態様では、病原体は、以下のもののメンバー等の病原性ウイルスであってもよい:例えば、パピローマウイルス、パルボウィルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、痘苗ウイルス、アレナウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス、ピコルナウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウィルス、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ポリオーマウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、アストロウイルス、カリチウイルス、フラビウイルス、トガビウイルス(Togavivirus)、ヘペビウイルス(Hepevivirus)、オルトミクソウイルス、ブンヤウイルス、又はフィロウイルス、
病原体は、以下のもの等の状態の原因物質である真菌であってもよい:例えば、白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリコーシス、コクシジオイド症、パラコクシジオイデス症、ムコール症、カンジダ症、皮膚糸状菌症、プロトテコーシス、粃糠疹、菌腫、パラコクシジオイデス症、フェオフィホ真菌症、シュードアレシェリア症、砂毛症、又はニューモシスティス。
【0195】
幾つかの実施形態では、病原体は、植物の病気を引き起こす植物病原菌であってもよい。植物の病気を引き起こす病原体には、真菌、細菌、原生生物、ウイルス、卵菌、ウイルス様生物、ウイロイド、フィトプラズマ、原生動物、及び線虫が含まれる。植物の病気を引き起こす真菌の大多数は、子嚢菌綱及び担子菌綱に含まれる。重要な細菌性植物病原菌には、バークホルデリア(Burkholderia)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、シュードモナス・シリンゲ病原型(Pseudomonas syringae pv)、及びフィトプラズマ(phytoplasma)が含まれる。非限定的な例として、植物病原菌には、以下のものが含まれる:キサントモナス・アクソノポディス(Xanthomonas axonopodis)(柑橘類潰瘍病を引き起こす)、P.パチライジ(P.pachyrhizi)(大豆さび病を引き起こす)、未培養細菌(uncultured bacterium)(枯死性黄化病を引き起こす)、テヌイウイルス(トウモロコシ縞葉枯病を引き起こす)、フィトフトラ・ラモラム(Phytophthora ramorum)(水生菌)(オーク突然死を引き起こす)、カンジダタス・リベリバクター・アシアティクス(Candidatus Liberibacter asiaticus)(カンキツグリーニング病を引き起こす)、及びピアス病菌(Xyllella fastidiosa)(ピアス病を引き起こす)。
【0196】
幾つかの実施形態では、病原体は、動物に感染可能な動物病原体であってもよい。動物病原体には、これらに限定されるが、以下のものが含まれる:クラミドフィラ・アボルタス(Chlamydophila abortus)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、ブタ回虫(Ascaris suum)、アスペルギルスフミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、他のアスペルギルス種、アスツレラ・マルトシダ(asteurella multocida)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、バベシア・カバリ(Babesia caballi)、バベシア・トラウトマンニ(Babesia trautmanni)、バベシア・モタシ(Babesia motasi)、アスツレラ・マルトシダ(asteurella multocida)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidi)、ネオスポラ・カニナム(Neospora caninum)、アイメリア種、エーリキア・ルミナンチウム(Ehrlichia ruminantium)、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV又はBVD);ブルータングウイルス(BTV);口蹄疫ウイルス(FMDV);悪性カタル熱(MCF);ヒツジヘルペスウィルス-2(OvHV-2);アルセラフィンヘルペスウィルス-1(AHV1);ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV又はPRRS);牛疫ウイルス(RPV);ブタ水疱病ウイルス(SVDV又はSVD);ブタ水疱疹ウイルス(VESV);水疱性口内炎ウイルス(VSV);ウシヘルペスウィルス-1(BHV-1又はBHV);パラポックス(PPDX又はPPox);及びウシ丘疹性口内炎ウイルス(BPSV)。
【0197】
幾つかの実施形態では、検出分子は、病原性微生物の特定の属、種、又は株に特異性を示す。
幾つかの実施形態では、本発明は、試料中の病原体を検出及び特定するために使用することができる。幾つかの実施形態では、試料は、食品試料、飲料試料、水試料、土壌試料、植物試料、農業試料、動物試料、生物試料、外科生検、医薬品試料、又はパーソナルケア試料である。
【0198】
幾つかの実施形態では、本発明は、食品汚染を検出し、食品安全を管理するために、食品産業で使用することができる。本発明によると、検出分子は、食品試料中の微生物(例えば、腐敗微生物及び病原性微生物)を検出及び特定することができる。
【0199】
幾つかの実施形態では、食品試料は、食物であってもよく、又は食品であってもよい。試料は、生の成分であってもよく、完成した食品であってもよく、又は製造若しくは貯蔵の環境から採取してもよい。非限定的な例として、食品試料は、生肉若しくは肉製品、乳製品(例えば、チーズヨーグルト)、野菜若しくは野菜に基づく製品(例えば、サラダ)、乳児用調合乳、又は缶食品であってもよい。
【0200】
幾つかの実施形態では、試料は、ビール等の飲料試料、又はビールの醸造中に採取した試料であってもよい。言いかえれば、本発明は、ビール腐敗細菌等の微生物の存在を検出するために使用することができる。幾つかの態様では、飲料は、飲料水を含む。したがって、本発明は、飲料水中の病原体汚染を検出するために使用することができる。
【0201】
幾つかの実施形態では、病原性微生物の存在を動物試料中で検出することができる。動物試料は、以下のものを含む哺乳動物試料を有する任意の生物に由来していてもよい:ヒト、家畜(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ラマ、エミュー、ダチョウ、又はロバ)、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、アヒル、又は狩猟鳥)、魚類(例えば、サケ又はチョウザメ)、実験動物(例えば、ウサギ、モルモット、ラット、又はマウス)、伴侶動物(例えば、イヌ又はネコ)、又は野生動物。
【0202】
1つの実施形態では、試料は、眼ケア製品、例えば、コンタクトレンズ液又は抗ヒスタミン点眼剤等のパーソナルケア製品であってもよい。
幾つかの実施形態では、試料は、医薬品製剤(例えば、薬物)であってもよい。
【0203】
幾つかの実施形態では、病原性微生物の存在を植物試料中で検出することができる。本発明によると、植物試料は、葉、根、花、種子、果実、茎、又は植物の任意の部分であってもよい。試料は、それらに限定されないが、路地農作物又は温室栽培植物を含むあらゆる植物を指す。また、本発明は、野生植物(つまり、人工的に栽培されていない植物)から得られる植物試料を包含する。
【0204】
幾つかの実施形態では、病原性微生物の存在は、これらに限定されないが以下のものを含む環境試料中で検出することができる:空気試料、農業試料(植物試料及び作物試料を含む)、水試料、及び土壌試料。水試料は、例えば、これらに限定されないが、飲料水、貯蔵下水、海水、湖、地下水、川、及び他の水源から得ることができる。本発明で開示されている方法は、家庭使用、地方自治体使用、又は政府使用に応用することができる。
【0205】
幾つかの実施形態では、本発明による検出分子を製造プラントで使用して、そこで使用されている設備の又は設備中の病原性微生物の存在を検出することができる。
幾つかの実施形態では、本発明は、研究室でのツールとして使用することができる。例えば、検出分子は、in vitro細胞培養中の病原体汚染を検出することができる。
【0206】
本発明には公衆衛生応用での使用を見出し得ることが想起される。例えば、検出分子を使用して、国内の/世界的な感染性疾患において病原性微生物の存在を検出することができる。
【0207】
本発明は、生物学的病原体及び毒素を戦場にて検出、収集、及び特定するための、軽量で低価格な1人で持ち運びできるデバイスを提供することも想起される。1つの実施形態では、本発明のデバイス及び方法は、生物学的作用物質の存在を検出し、標的種を特定することができる。
【0208】
本発明の標的:疾患タンパク質
アレルゲンタンパク質及び病原性タンパク質に加えて、本発明は、疾患関連タンパク質等の他の標的分子と結合して、疾患及び障害を診断、病期分類する検出分子を提供する。疾患関連タンパク質は、分泌ポリペプチド及びペプチド(例えば、循環分子);細胞表面タンパク質(例えば、受容体);特定の疾患状態で発現又は過剰発現されるバイオマーカー;アイソフォーム;疾患状態にしか存在しない特定のタンパク質の誘導体及び/又は変異体;障害を引き起こす突然変異タンパク質;及びウイルス感染等の宿主の臨床状態を引き起こす別の生物に由来するタンパク質であってもよい。検出分子は、標的タンパク質のエピトープ又は試験するタンパク質のオリゴペプチドのセグメントに特異的に結合するように設計されている核酸分子(好ましくは、アプタマー)であってもよい。核酸に基づく検出分子は、診断用タンパク質又はその部分に結合し、in vitro診断の分野において、特に、例えば、戦場及び難民キャンプ地でのポイントオブケア(POC)診断の分野において、迅速で低価格なアッセイ及びデバイスを提供する。
【0209】
非限定的な例として、本発明による分泌循環タンパク質には、増殖中の腫瘍細胞、炎症関連マーカー、ホルモン、サイトカイン、代謝産物、及びウイルス感染症、細菌感染症、又は真菌感染症に由来する可溶性分子を指し示すバイオマーカーが含まれる。例えば、サイトカイン感知マイクロウェルが開発されており、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に基づくアプタマービーコンを使用して、IFN-γが検出された(Tuleuovaら、Micropatterning of Aptamer Beacons to Create Cytokine-Sensing Surfaces.Cellular and Molecular Bioengineering、2010年、3巻(4号):337~344頁)。
【0210】
また、非限定的な例として、本発明による細胞表面タンパク質は、受容体、細胞表面マーカー、微生物抗原、又は受容体リガンドである。
幾つかの実施形態では、診断用の標的タンパク質は、対象体(ヒト及び動物を含む)に由来する生体試料から得られる。生体試料は、体液、組織、組織生検(例えば、外科生検)、皮膚スワブ、単離細胞集団、又は細胞調製物であってもよい。体液試料は、血液、血清、血漿、髄液、脳脊髄液、滑液、羊水、涙液、気管支肺胞洗浄液、痰、膣液、精液、咽頭洗浄液、鼻洗浄液、唾液、尿、並びに組織、器官、及び細胞の溶解産物、又は他の供給源から選択される少なくとも1つであってもよい。幾つかの態様では、細胞集団及び細胞調製物中の細胞は、初代細胞及びin vitro培養細胞コレクションを含む。他の態様では、細胞集団は、疾患細胞(例えば、癌細胞)を含有している。ある実施形態では、細胞集団及び細胞調製物中の細胞は、動物細胞、植物細胞、ウイルス細胞、細菌細胞、及び真菌細胞から選択される。
【0211】
本発明によると、検出方法及びデバイスは、標的分子の存在、非存在、又は量を決定するために使用することができ、上記標的分子は、臨床状態に関連する標的分子であり、上記検出可能な部分の量は、対象体に臨床状態が存在することを指し示す。非限定的な例として、本発明の方法は、ウイルス感染、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、サイトメガロウィルス(CMV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、及びインフルエンザウイルス(ヒト及びトリの両方)の検出に使用することができる。また、以下のもの等の細菌感染の検出に使用することができる:リステリア(Listeria)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus Aureus)、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)、コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium Diphtheriae)(ジフテリアを引き起こす)、大腸菌、B群連鎖球菌(Group B streptococcus)(GBS)、A群連鎖球菌(Group A streptococcus)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium Tuberculosis)(結核(TB)を引き起こす)、サルモネラ(Salmonella)、ビブリオ・コレラエ(Vibrio Cholerae)、カンピロバクター(Campylobacter)、ブルセラ症、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria Meningitidis)(髄膜炎菌を引き起こす)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumonia)、及びカンジダ(Candida)。
【0212】
本明細書に記載の組成物及び方法は、例えば、アレルギー、臓器特異的疾患、寄生虫症、並びに炎症性及び自己免疫性疾患を含む、NF-[カッパ]B活性化不全に関連する不要な又は有害な免疫応答の治療又は予防に有用である。アレルギーの例には、以下のものが含まれる:季節性呼吸アレルギー、花粉症等の空気アレルゲンに対するアレルギー、血清IgEを低減することにより治療可能なアレルギー、及び好酸球増加症、喘息、湿疹、動物アレルギー、食物アレルギー、慢性じんま疹、ラテックスアレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、又はアレルギー脱感作により治療可能なアレルギー。本発明の検出分子を使用して診断することができる他の臨床状態には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:癌(例えば、固形腫瘍、カルシノーマ、肉腫、リンパ腫、白血病、胚細胞腫、芽細胞腫、又は転移)、炎症性疾患(クローン病、慢性炎症性眼疾患、慢性炎症性肺疾患、及び慢性炎症性肝臓疾患、自己免疫溶血性貧血、特発性白血球減少症、潰瘍性大腸炎、皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織疾患、過敏性腸症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群(抗リン脂質抗体症候群)、原発性粘液水腫、甲状腺中毒、悪性貧血、自己免疫萎縮性胃炎、完全脱毛症、アジソン病、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、シェーグレン症候群、関節リウマチ、交感性眼炎、橋本病/甲状腺機能不全、セリアック病/疱疹状皮膚炎、成人発症性特発性上皮小体機能低下(AOIH)、筋萎縮性側索硬化症、及び脱髄疾患原発性胆汁性肝硬変、混合性結合組織疾患、慢性活動性肝炎、多内分泌腺不全、白斑、セリアック病、慢性活動性肝炎、クレスト症候群、皮膚筋炎、拡張型心筋症、好酸球性筋痛症候群、後天性表皮水疱症(EBA)、巨細胞性動脈炎、グレーブス病/超甲状腺炎、強皮症、慢性特発性血小板減少性紫斑病、末梢神経障害、糖尿病性神経障害、ヘモクロマトーシス、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、特発性IgA腎症、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、ランバート-イートン症候群、リニアIgA皮膚症、心筋炎、ナルコレプシー、壊死性脈管炎、新生児狼瘡症候群(NLE)、ネフローゼ症候群、類天疱瘡、天疱瘡、多発性筋炎、原発性硬化性胆管炎、乾癬、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)、ライター症候群、及び敗血症)、遺伝的障害、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症、関節炎自己免疫性肝炎、クローン病、1型真性糖尿病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、スティフマン症候群、甲状腺炎、シデナム舞踏病、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、自己免疫再生不良性貧血、自己免疫溶血性貧血、チャーグストラウス疾患、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、及びウィスコットアルドリッチ症候群)、代謝障害、脳疾患、及び心疾患。また、本発明により治療又は予防することができる他の不要な免疫反応には、血友病の抗第VIII因子抗体又は糖尿病の抗インスリン抗体等の、組換え治療剤に対する抗体が含まれる。
【0213】
短鎖一本鎖DNA抗トロンビンアプタマーが公知であり、特徴付けられている(Hamaguchiら、Aptamer Beacons for the Direct Detection of Proteins.Analytical Biochemistry 2001年、294巻:126~131頁;Wangら、Ultrasensitive colorimetric detection of protein by aptamer-Au nanoparticles conjugates based on a dot-blot assay.Chem.Commun.、2008年、2520~2522頁)。1つのそのような抗トロンビンアプタマーのヌクレオチド配列は、5’GGTTGGTGTGGTTGG3’(配列番号10)である。ハイブリダイゼーションの熱力学と活性化の速度との間に強い逆相関性があることが示されており。アプタマー内のトロンビン結合四本鎖をあらかじめ組織しておくことにより、応答速度が大幅に増加した。したがって、トロンビンの添加1分以内の活性が3倍になるようにアプタマービーコンを設計することができた。(Hallら、Kinetic Optimization of a Protein-Responsive Aptamer Beacon.Biotechnology and Bioengineering、2009年、103巻(6号):1049~1059頁;この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0214】
幾つかの態様では、生体試料中の標的タンパク質を検出するための方法は、コンパニオン診断として使用することができる。特定の疾患に関連するバイオマーカーが患者に存在すること及び/又は存在しないことは、特定の治療に価値のある情報を提供するであろう。医師は、患者の治療結果を予測し、患者のために最も有効な治療計画をしつらえることができる。
【0215】
他の実施形態では、本発明は、対象体の病期及び進行並びに治療計画の効力をモニタするために、つまり治療に対する対象体の応答をモニタするために使用することができる。
したがって、本発明は、戦場等の軍事状況並びに民間状況で使用することができる。携帯デバイス及び使い捨てのカートリッジを採用することより使用が容易になり、本発明の迅速検出は、需要が大きい創傷感染症及び感染性疾患等の疾患の現場診断を満たす。
【0216】
本発明の標的:他の分子
幾つかの実施形態では、本発明は、非タンパク質標的分子、例えば、ガングリオシド、脂質、リン脂質、炭水化物、低分子(例えば、マイコトキシン及び抗生物質)、ハプテン、及び核酸(DNA又はRNA)に結合する検出分子を提供する。
【0217】
幾つかの態様では、本発明の検出分子は、低分子結合アプタマーであってもよい。幾つかの態様では、低分子結合アプタマーは、環境中に残留する殺虫剤及び肥料の存在を検出するように応用されてもよい。低分子結合アプタマーは、殺虫剤、肥料、及び他の塩化芳香族汚染物質を認識することができる。そのような検出により、使用後に残留する殺虫剤及び肥料の除去が支援されるであろう。
【0218】
殺虫剤の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:有機リン系殺虫剤(例えば、ホレート、プロフェノホス、イソカルボホス、及びオメトアート);カルバマート系殺虫剤;有機塩素系殺虫剤(例えば、DDT及びクロルデン);ピレスロイド系殺虫剤;及びスルホニル尿素系除草剤(例えば、ニコスルフロン、トリフルスルフロンメチル)。
【0219】
他の態様では、低分子結合アプタマーを使用して、試料中の毒素、例えば、シリアル及びワイン等の幅広く多様な日用食品を汚染する低分子マイコトキシンの存在を検出することができる。低分子結合検出分子(好ましくは、アプタマー)を応用して、メタボロミクス及び創薬等の他の分野で使用することができる。
【0220】
他の態様では、低分子結合アプタマーを使用して、ツタウルシ、トウヨウウルシ、セイヨウウルシ、又はドクウルシに見出されるウルシオール等の非食品毒素を検出することができ、そのような毒素は、ウルシオール誘導性接触皮膚炎を引き起こす。ウルシオールは、それ自体はタンパク質でないが、ハプテンとして作用し、接触した皮膚細胞の膜内在性タンパク質と化学的に反応し、結合し、その形状を変化させる。影響を受けた細胞は、正常な身体部分として認識されないため、T細胞媒介性免疫応答が刺激される。
【0221】
ユニバーサル標的抽出緩衝液
幾つかの実施形態では、ユニバーサルタンパク質抽出緩衝液を使用して、任意の食品マトリックスを分析するのに十分な標的タンパク質(例えば、アレルゲン)(最低2mg/ml 総タンパク質)を回収することができる。幾つかの実施形態では、ユニバーサルタンパク質抽出緩衝液の調合物は、室温にて最小限の時間(1分未満)でタンパク質を抽出することができる。緩衝液は、食品試料採取、均質化、及びろ過を含むことになる抽出プロトコールに組み込まれていることが必要な場合がある。抽出プロトコールは、様々な食品マトリックスにて長期間にわたって効率的及び反復可能であるように実施することができる。このユニバーサル調合物は、試験する食品に及ぼす影響を最小限に抑え、およそ0.5gの食品しか採取せずに、試料中の濃度が非常に低いことが予想される微量のアレルゲンの検出を可能にするように試みることが、臨床的に重要であろう。この最適化されたタンパク質抽出プロセスは、任意の食品マトリックス中でのアレルゲン検出を可能にする、迅速で正確なユニバーサルプロトコールを提供するであろう。
【0222】
キット及びパッケージング
キット。本発明の検出分子、化合物、及び組成物は、他の成分又は試薬と組み合わされていてもよく、又は商業販売又は流通用のキット又は他の市販製品の成分として調製されていてもよい。
【0223】
キットには、化合物又は組成物と共に、キットの投与及び/又は使用に関する説明書が含まれている。また、キットには、以下のもの:シリンジ、バッグ、又はボトルの1つ又は複数が含まれていてもよい。
【0224】
パッケージング。本発明の検出分子の製剤及び/又は組成物は、製剤がPVC含有及びPVC非含有容器及び容器密閉機構と適合するため、任意の許容される容器密閉機構を使用し、種々の医薬的に又は診断的に許容される容器での使用に包装することができる。許容される容器の例には、これらに限定されないが、アンプル、並びに事前充填用のシリンジ及びカートリッジ等が含まれる。
【0225】
或いは、製剤は、患者への投与前に2つの区画を混合することができるように、混合バックの1つの区画に凍結乾燥アプタマーを含み、上記混合バックの別の区画に許容される溶媒を含んでいてもよい。許容される容器は、当技術分野で周知であり、商業的に入手可能である。好ましくは、製剤は、ブチルゴム栓を有する1型ガラスバイアルに保存されている。液体形態の製剤は、冷却環境で保管されていてもよい。或いは、凍結乾燥製剤は、室温で保管してもよく、又は冷却若しくは冷凍されていてもよい。
【0226】
好ましくは、製剤は無菌である。「無菌」製剤は、本明細書で使用される場合、無菌状態にされており、その後は微生物学的汚染に曝されていない製剤を意味する。つまり、無菌組成物を保持する容器は易感染性ではない。無菌組成物は、概して、アメリカ食品薬品局の医薬品適正製造基準(「cGMP」)規制に従って、医薬品製造業者により調製される。
【0227】
幾つかの実施形態では、無菌医薬製剤は、無菌処理技術を使用して調製することができる。無菌性は、無菌物質及び管理作業環境を使用することにより維持される。容器及び装置は全て、好ましくは熱減菌により充填前に無菌化される。その後、組成物をフィルタに通し、ユニットを充填すること等により、容器を無菌状態下で充填する。したがって、製剤を容器に無菌充填することにより、最終滅菌の熱応力を回避することができる。
【0228】
幾つかの実施形態では、製剤は、最終的に湿熱を使用して滅菌される。最終滅菌を使用すると、医薬製剤を含有する最終密閉容器内の生存可能な微生物を全て破壊することができる。典型的には、オートクレーブを使用して、最終的にパッケージングされた薬物製品の最終熱減菌を達成する。最終製品の最終滅菌を達成するための医薬品工業における典型的なオートクレーブサイクルは、121℃で少なくとも10分間である。
【0229】
均等物及び範囲
当業者であれば、本明細書に記載の本発明による特定の実施形態には多くの均等物があることを認識、又は日常的な実験作業を行なうだけで確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の記載に限定されるとは意図されておらず、むしろ添付の特許請求の範囲に示されている通りである。
【0230】
特許請求の範囲では、「1つの」、「その」及び「前記」等の冠詞は、状況と矛盾しない限り、又は状況からそうではないことが明らかでない限り、1つ又は複数を意味することができる。群の1つ又は複数のメンバー間に「又は」を含む請求項又は記載は、状況と矛盾しない限り、又は状況からそうではないことが明らかでない限り、群のメンバーの1つ、2つ以上、又は全てが、所与の産物又はプロセスに存在するか、使用されるか、又は他の態様で関連する場合に該当するとみなされる。本発明は、群の厳密に1つのメンバーが、所与の産物又はプロセスに存在するか、使用されるか、又は他の態様で関連する実施形態を含む。本発明は、群メンバーの2つ以上又は全てが、所与の産物又はプロセスに存在するか、使用されるか、又は他の態様で関連する実施形態を含む。
【0231】
また、用語「含む」は、非限定的であることが意図されており、追加の要素又はステップの介在を許容するが、それを必要とはしないことに留意されたい。したがって、用語「含む」が本明細書で使用される場合、用語「からなる」も包含又は開示される。
【0232】
範囲が示されている場合、終点は含まれるものとする。更に、別様の指定がない限り、又は状況及び当業者の理解からそうではないことが明らかでない限り、範囲として表されている値は、本発明の様々な実施形態に示されている範囲内の任意の特定の値又は部分範囲を、状況が明白にそうではないことを示さない限り、範囲の下限の単位の10分の1までとみなすことができる。
【0233】
用語「約」が使用される場合、示されている値の+/-10%を反映することが理解される。加えて、従来技術内に分類される本発明の任意の特定の実施形態は、請求項の任意の1つ又は複数から明示的に除外される場合があることが理解されるべきである。そのような実施形態は、当業者に知られているとみなされるため、除外されることが明示的にそこに示されなくとも、除外される場合がある。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の核酸;任意の生産方法;任意の使用方法等)、は、従来技術の存在に関するか否かに関わりなく、理由の如何によらず、任意の1つ又は複数の請求項から除外することができる。
【0234】
引用情報源、例えば、本明細書で引用されている参考文献、刊行物、データベース、データベースエントリー、及び技術は全て、引用の際に明示的に示されていなくとも、参照により本出願に組み込まれる。引用情報源の記載と本出願の記載とが矛盾する場合、本出願の記載が優先するものとする。セクション及び表の表題は、限定的であることが意図されていない。
【0235】
実施例
実施例1:検出システム
本発明の検出システムの1つの実施形態は、図1に示されている。
【0236】
このデジタル検出デバイスは、食品回収機構、ドリル又は浸軟部材、フロースルーを促進するための任意選択のポンプ又は真空、1つ又は複数の励起手段(例えば、LED)、励起手段から放射された光を受け取る1つ又は複数のフィルタ、測定機構、及びユーザインタフェーススクリーンを備える。
【0237】
デバイスのカートリッジ又は使い捨て若しくは交換可能な部分は、カバーを有していてもよい1つ又は複数の収集プローブ、アレルゲン特異的カートリッジ、1つ又は複数の励起手段(例えば、LED光)、及び1つ又は複数のフィルタを備えていてもよい。
【0238】
実施例2:シグナル発生ポリヌクレオチドとしてのアプタマーの設計
この概念証明例では、2つの既知アプタマー配列を使用して、3つの異なるシグナル発生ポリヌクレオチドを設計した。Ara h 1タンパク質アレルゲンに対するアプタマーは、TranらのSelection of aptamers against Ara h 1 protein for FO-SPR biosensing of peanut allergens in food matrices.Biosensors and Bioelectronics、2013年、43巻、245~251頁に記載されている(この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。このアプタマーの配列は、以下に示されている。
【0239】
5’CGCACATTCCGCTTCTACCGGGGGGGTCGAGCTGAGTGGATGCGAATCTGTGGGTGGGCCGTAAGTCCGTGTGTGCGAA3’(配列番号1)
配列番号1の初期アプタマーを修飾して、5’T残基を付加し、フルオロフォア-クエンチャー対の機能を向上させた。その後、フルオレセインを、以下に示されているように5’T残基に結合した。
【0240】
5’フルオレセインTCGCACATTCCGCTTCTACCGGGGGGGTCGAGCTGAGTGGATGCGAATCTGTGGGTGGGCCGTAAGTCCGTGTGTGCGAA3’(配列番号2)
3’ダブシルクエンチャーを有する9ヌクレオチドのリンカーを、配列番号2のT修飾アプタマーの5’末端の最初の10残基に相補的になるよう、以下に示されているように設計した。
【0241】
3’ダブシルAGCGTGTAA5’(配列番号3)
その後、この9ヌクレオチドのリンカー(配列番号3)を、主修飾抗ピーナッツアレルゲンアプタマー配列(配列番号2)の5’末端にアニーリングして、フルオレセインフルオロフォアをダブシルクエンチャー部分の近傍に配置した。ピーナッツアレルゲンAra
h 1の検出用に構築されたシグナル発生ポリヌクレオチドの構造は、以下に示されている。
【0242】
【化1】
【0243】
配列番号2及び3をアニーリングすることにより調製したシグナル発生ポリヌクレオチドは、本明細書ではSPN-Aと表記される二量体である。SPN-Aの二次構造は、図4に示されている。シグナル発生ポリヌクレオチド200の部分の構成は、コア配列202、フルオロフォア204、クエンチャー206、及びリンカー配列208である。
【0244】
同様に、シグナル発生ポリヌクレオチドを、TranらのSelection and Characterization of DNA Aptamers for Egg White Lysozyme.Molecules 2010年、15巻(3号)、1127~1140頁に記載されている卵白リゾチームに対するアプタマーの配列に基づいて設計した(この文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。このアプタマーの配列は、以下に示されている。
【0245】
5’GCAGCTAAGCAGGCGGCTCACAAAACCATTCGCATGCGGC3’(配列番号4)
配列番号4の初期アプタマーを修飾して、5’T残基を付加し、フルオロフォア-クエンチャー対の機能を向上させた。その後、フルオレセインを、以下に示されているように5’T残基に結合した。
【0246】
5’フルオレセインTGCAGCTAAGCAGGCGGCTCACAAAACCATTCGCATGCGGC3’(配列番号5)
3’-ダブシルクエンチャーを有する10ヌクレオチドのリンカーを、配列番号5のT修飾アプタマーの5’末端の最初の10残基に相補的になるよう、以下に示されているように設計した。
【0247】
3’ダブシルACGTCGATTC5’(配列番号6)
その後、この10ヌクレオチドのリンカー(配列番号6)を、主修飾抗リゾチームアプタマー配列(配列番号5)の5’末端にアニーリングして、フルオレセインフルオロフォアをダブシルクエンチャー部分の近傍に配置した。リゾチームの検出用に構築されたシグナル発生ポリヌクレオチドの構造は、以下に示されている。
【0248】
【化2】
【0249】
配列番号5及び6をアニーリングすることにより調製した二量体シグナル発生ポリヌクレオチドは、本明細書ではSPN-Eと表記される。SPN-Eとリゾチームとの反応は、図6に概略的に示されている。シグナル発生ポリヌクレオチドSPN-E400の部分の構成は、コア配列402、フルオロフォア404、クエンチャー406、及びリンカー配列408である。リゾチームと結合することにより、ヘアピン構造が崩れ、フルオロフォア404がクエンチャー406から遠ざかり、それによりフルオロフォア404は、励起されると蛍光を発することが可能になることが分かる。
【0250】
第3のシグナル発生ポリヌクレオチドを、上述の配列番号4のアプタマー配列に基づいて設計した。5’T残基を配列番号4に追加し、3’末端を、配列番号4の初期アプタマー配列の5’末端の最後の5核酸塩基に相補的な5核酸塩基の区画に付加することにより修飾した。その後、5’-フルオレセイン及び3’ダブシル部分を連結して、以下に示されている配列(配列番号7)を生成した。この配列には、追加した5核酸塩基の区画、及び初期アプタマー配列の5’末端の最初の5核酸塩基(追加した5’T残基を含まない)に下線が引かれている。
【0251】
5’フルオレセインTGCAGCTAAGCAGGCGGCTCACAAAACCATTCGCATGCGGCGCTGCDABCYL3’(配列番号7)
このシグナル発生ポリヌクレオチドは、本明細書ではSPN-Eと表記されるヘアピン体である。5’末端及び3’末端の下線が引かれている残基は、図5の左端構造(コア配列302)に示されているようなヘアピン二次構造を形成するように相補的であることが認識されるであろう。この構造では、フルオロフォア304及びクエンチャー306が互いに近傍に配置され、クエンチャー306によりフルオロフォア304が消光される。シグナル発生ポリヌクレオチドがリゾチームに結合すると、右端構造のコア配列302に示されているように、シグナル発生ポリヌクレオチド300の2つの末端のハイブリダイゼーションが崩壊し、フルオロフォア304がクエンチャー306から分離することにより、フルオロフォア304の活性化をもたらすことができる。
【0252】
実施例3:標的分子の検出に際してヘアピン型シグナル発生ポリヌクレオチドの蛍光測定値を得るための手順
この例では、蛍光測定値を取得し、それにより、タンパク質等の分子標的の存在を特定及び定量化する際のシグナル発生ポリヌクレオチドの有効性を決定するための1つの手順が記載される。この手順は、例えば、SPN-E等のヘアピン型シグナル発生ポリヌクレオチド、並びにSPN-E及びSPN-A等の二量体シグナル発生ポリヌクレオチドの検出に有用である。
【0253】
目的タンパク質を、再蒸留水で適切な濃度に希釈する。シグナル発生ポリヌクレオチドを、10mM TRIS-HCl、pH7.5で200μMに希釈する。この溶液を、3分間99℃に加熱し、その後室温に冷却する。TRIS-HClの代わりに、PBS、又はpH8.3のトリス(ヒドロキシアミノ)メタン-グリシン-カリウム緩衝液(TGK緩衝液)を使用してもよい。タンパク質溶液を、96ウェルプレートのウェルに添加し、その後、マルチピペットを使用して、できるだけ手早くシグナル発生ポリヌクレオチドを各ウェルに添加する。その後、蛍光測定値を、2分間隔で40分間測定する。
【0254】
実施例4:二量体シグナル発生ポリヌクレオチドの蛍光測定値を得るための手順
この例では、蛍光測定値を取得し、それにより、タンパク質等の分子標的の存在を特定及び定量化する際のシグナル発生ポリヌクレオチドの有効性を決定するための手順が記載される。この手順は、例えば、SPN-A及びSPN-E等の部分的に二本鎖のシグナル発生ポリヌクレオチドの検出に有用である。
【0255】
シグナル発生ポリヌクレオチドSPN-A及びSPN-Eのコア配列(それぞれ、配列番号2及び5)を、10mM TRIS-HCl、pH7.5に、各々200μMの濃度となるように再懸濁する。その後、それら溶液を、約95℃から約100℃までの温度範囲内で5分間加熱する。その後、対応する10核酸塩基のDABCYL連結鎖(SPN-A及びSPN-Eの場合、それぞれ配列番号3及び6)を添加し、混合物を、30分間暗所で室温に冷却してアニーリングを促進させる。30分後、シグナル発生ポリヌクレオチド混合物を100μMに希釈する。
【0256】
連続希釈したリゾチームを、表1に記載のように調製する。
【0257】
【表1】
【0258】
連続希釈したピーナッツバターPBS溶液を、表2に記載のように調製する。
【0259】
【表2】
【0260】
また、PBSで1:1に希釈した生全卵白(試料E1)から開始して、希釈卵白を調製する。その後、この元の調製物を1:10に希釈して試料E2を生成し、それを1:100に希釈して試料E3を生成し、それを1:1000に希釈して試料E4を生成する。
【0261】
1つの実験では、60μLのタンパク質溶液を96ウェルプレートに添加し、その後、濃度が50μMのシグナル発生ポリヌクレオチドを60μL添加した。対照には、シグナル発生ポリヌクレオチドのみ(ウェル8及び9)、緩衝液(ウェル10)、及びウシ血清アルブミンと混合したシグナル発生ポリヌクレオチド(BSA-ウェル11及び12)が含まれていた。96ウェルプレートにおける試料の配置は、下記の表3に示されている。
【0262】
【表3】
【0263】
この実験の結果は、タンパク質及びシグナル発生ポリヌクレオチドの濃度を減少させることができることを示した。シグナル発生ポリヌクレオチドの開始濃度を、200μMから100μMに低減させた。また、スキムミルクを含む混合タンパク質溶液(PBSで0.1mg/mL及び0.01mg/mLに希釈)を調査した。また、卵白と同じように(上述)希釈した卵黄を含む更なる対照を加えた。卵白及び卵黄の更なる混合物を調製した(1:2、1:20、及び1:20,000)。シグナル発生ポリヌクレオチドをタンパク質溶液と混合した2分以内に蛍光測定値を取得することが有利であった。シグナル発生ポリヌクレオチド+BSA対照のサンプリングを3回繰り返して、安定対照が存在したことを確認した。種々の濃度のシグナル発生ポリヌクレオチドが調査されている場合、対応する濃度のシグナル発生ポリヌクレオチド+BSA対照試料を同時に評価してもよい。試料のプレート全体を測定して、蛍光シグナルの安定性を確認することが有利である。
【0264】
実施例5:シグナル発生ポリヌクレオチドの概念実証実験
実施例4に記載の予備実験に基づいて開発した基本プロトコールを下記に記載する。
基本プロトコール
タンパク質試料を、PBSで指定の濃度に希釈する。シグナル発生ポリヌクレオチド溶液を、10mM TRIS-HCl、pH7.5で200μMの濃度に調製し、3分間99℃に加熱し、その後20分間室温に冷却する。容積が60μLのタンパク質溶液を、96ウェルプレートのウェルに添加する。シグナル発生ポリヌクレオチドを、タンパク質試料の添加後できるだけ素早くウェルに添加する。蛍光測定値を直ちに記録する。測定値は全て、495nmの励起波長を用いて25℃にて測定し、発光は、519nmの蛍光ピークをモニタする。シグナル発生ポリヌクレオチドは、TriLink Biotechnologies社(サンディエゴ、カリフォルニア州)が合成し、純品リゾチームは、Pierce社(Thermoscientific社)から入手し、BSAは、Sigma Aldrich社から入手した。
【0265】
シグナル発生ポリヌクレオチドSPN-E及びSPN-Eによるリゾチームの検出
アッセイを実施して、用量曲線を得た(1試料当たり、12μMのシグナル発生ポリヌクレオチドSPN-Eの検出)。結果は、図8に示されており、SPN-Eが、0.6ng/mLから1200ng/mLまで範囲の濃度のリゾチームを検出することを示している。これは、1試料当たり50pg未満のリゾチームに相当する。
【0266】
図9Aにプロットされているデータは、100μM濃度のSPN-Eが、5ng/mL濃度のリゾチームを検出し、検出レベルを3pg/試料に増加させることを示す。図9Bにプロットされているデータは、SPN-Eを使用すると、1:20に希釈した未処理卵白中のリゾチームを検出することができたことを示す(試料サイズは30μLであった)。SPN-Eの場合、陰性対照タンパク質としてのBSAで発生したシグナルは最小限であった。
【0267】
図10にプロットされているデータは、100μMのSPN-Eによる混合タンパク質溶液中のリゾチームの検出は、このタンパク質をミルク又はBSAと混合しても著しくは変化しないことを示す。
【0268】
図11Aにプロットされているデータは、SPN-Eを使用すると、混合されているタンパク質に関わらず、微量レベルの卵白を検出することができることを示す。100μMのSPN-Eは、1:20,000に希釈した卵白を検出することができる(試料サイズ30μL)。卵白を卵黄又はミルクと混合しても、SPN-Eが卵白の存在を検出する能力を著しく減少させることはなかった。図11Bにプロットされているデータは、SPN-Eも、混合されているタンパク質に関わらず、卵白を検出することができることを示す。SPN-Eの濃度を減少させても、1:20に希釈した卵白を依然として検出することができる(図示せず図示せず。試料サイズ30μL)。卵白を対照タンパク質BSAと混合しても、検出は、著しく低減することはなかった。
【0269】
特異的結合を評価することを目的とした別の実験では、リゾチーム及び卵白を両方とも、SPN-Eの短鎖アンチセンス鎖を含む対照シグナル発生ポリヌクレオチドで処理した。図12に示されているように、タンパク質試料を対照シグナル発生ポリヌクレオチドで処理しても、シグナルは検出されなかった。
【0270】
シグナル発生ポリヌクレオチドSPN-AによるピーナッツアレルゲンAra h1の検出
この実験では、SPN-Aが、ピーナッツバター(低脂肪Skippy(商標))中のピーナッツアレルゲンAra h1を検出する能力を試験した。ピーナッツバターは、炒ったピーナッツ並びに他の成分を含有する。およそ1mgのピーナッツバターをつまようじに取り、1mLのPBSで希釈した。加熱又は遠心分離ステップは関与しなかった。図13A及び13Bに示されているデータは、SPN-Aが、0.1μg/mLから1mg/mLまでの範囲の濃度のピーナッツバター中のAra h1アレルゲンを検出したことを示す。
【0271】
SPN-A及びSPN-Eの蛍光シグナルの安定性
SPN-A及びSPN-Eの蛍光シグナルの安定性を決定した。図14Aに示されているように、SPN-Aの蛍光シグナルは、タンパク質試料と混合した約20分後に約30%減少した。シグナルは、少なくとも3時間、比較的安定していた。図14Bには、SPN-Eの場合と同様なプロットが示されており、SPN-Eの蛍光シグナルが、タンパク質試料と混合した後、約12%減少したことが観察された。シグナルは、少なくとも2時間安定していた。
【0272】
ELISAに対するシグナル発生ポリヌクレオチドの優位性
シグナル発生ポリヌクレオチドは、広範囲の濃度で使用することができ、低くとも6μM及び高くとも100μMの濃度で効果的に結合することが示された。検出時間は瞬時であり、検出シグナルは、少なくとも2時間安定している。リゾチームシグナル発生ポリヌクレオチドの1つは、0.6ng/mLと低い濃度でリゾチームを検出することが示された。
【0273】
シグナル発生ポリヌクレオチドは、10mM Tris-HCl緩衝液中で、並びにPBS中でリゾチームを検出可能である。
両タイプ(ステム-ループ構造、並びにアニーリングされたリンカー配列を有する一本鎖構造)のシグナル発生ポリヌクレオチドが、食品マトリックス中のタンパク質を検出可能であった。リゾチームを検出するように設計したシグナル発生ポリヌクレオチド(SPN-E及びSPN-E)は、卵白、卵白及び卵黄の混合物、スキムミルクと混合した卵白、及びBSAと混合した卵白中でリゾチームを検出可能である。
【0274】
Ara h1を検出するように設計したシグナル発生ポリヌクレオチドは、ピーナッツバター中のこのアレルゲンを検出可能であることが示された。
実験は全て室温で実施し、それにより、シグナル発生ポリヌクレオチドは、室温で安定していることが示された。
【0275】
表4には、上述の実験から得られた一連のパラメータが示されており、分子標的を検出するためのシグナル発生ポリヌクレオチドの使用が、現在より広く用いられているELISA技術よりも有利であることが示されている。これらパラメータは、シグナル発生ポリヌクレオチドに基づく検出アッセイが、ELISA技術よりも明白に有利であり、ELISA技術に取って代わり得ることを示している。
【0276】
【表4】
【0277】
実施例6:アレルゲン検出及び診断デバイスに有用な他のアプタマー
本開示のデバイス及び方法に有用なアプタマー配列は他にもある。例えば、免疫グロブリンE(IgE)並びにルピナス及びグリアジンタンパク質アレルゲンに対するアプタマーが報告されている。例示的な配列は、以下に示されている。
【0278】
Lup an 1(β-コングルチン)に対する11量体のSGQアプタマーは、ヌクレオチド配列:5’GGTGGGGGTGG3’(配列番号8)を有する。(Nadalら、2013年、Anal.Bioanal.Chem.405巻:9343~9349頁を参照。この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0279】
特異的にグリアジンを認識及び結合することが可能な一本鎖DNAアプタマーは、ヌクレオチド配列:5’AAACTACTAACTAGGTAAGATCACGCAGCACTAAACGACGTAGTTGCCA3’(配列番号9)を有する(Pintoら、2014年、Label-free detection of gliadin food allergen mediated by real-time apta-PCR.Anal.Bioanal.Chem.406巻(2号):515~24頁。この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0280】
また、アトピー性アレルギー疾患に関連する既知のバイオマーカーである免疫グロブリンE(IgE)を標的とするアプタマーが設計されている。ヒト血清中の免疫グロブリンE(IgE)を検出するための、アプタマーに基づく水晶振動子微量天秤(QCM)バイオセンサー及び抗体基づく水晶振動子微量天秤(QCM)バイオセンサーの性能を比較すると、アプタマーに基づくバイオセンサーの検出限界がより低いことを観察することができた。抗IgEアプタマー(D17.4)の塩基配列は、5’GGGGCACGTTTAT-CCGTCCCTCCTAGTGGCGTGCCCC3’(配列番号11)と特定された(Yaoら、Development of a Quartz Crystal Microbalance Biosensor with Aptamers as Bio-recognition Element.Sensors 2010年、10巻:5859~5871頁;この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。IgEに対する別のDNAアプタマーが、以下の配列を有するように設計された:5’GCGCGGGGCACGTTTATCCGTCCCTCCTAGTGGCGTGCCCCGCGC3’(配列番号12)(Wangら、Fluorescence protection assay:a novel homogeneous assay platform toward development of aptamer sensors for protein detection.2011年、Nucleic Acids Research、39巻(18号)e122)。
【0281】
実施例7:消化緩衝液の最適化
SPNアレルゲン検出プラットフォームを生成する際の最初のステップは、任意の食品マトリックス中のアレルゲン検出を可能にする迅速で正確なユニバーサルプロトコールを用いて、タンパク質抽出プロセスを最適化及び統合することである。種々の抽出緩衝液プロトコールには、還元剤、遮断剤、洗浄剤、及び界面活性剤が含まれるであろう。
【0282】
ユニバーサルな試料採取に好適な化学薬品を試験及び最適化する(表5にリスト列挙されている)。この目的に使用することができる緩衝液は、表6に列挙されている。
【0283】
【表5】
【0284】
【表6】
【0285】
アレルゲンタンパク質毎に少なくとも3回の異なるELISAアッセイで試験することにより、これら試験緩衝液を、食物アレルゲン分野において現在主にELISA試験用に使用されている既知の抽出緩衝液と比較する。最適な抽出緩衝液は、ELISAアッセイの最適化で試験されていることが知られている最大20種の異なる食品マトリックス(ベーキング品、ソーセージ、スープ、アイスクリーム等、表7)並びにより難しい食品マトリックス(サラダドレッシング、醤油、及びチョコレート)を試験及び比較することになる系統的プロセスにより選択することができる。マトリックスの均一性は、gentleMAC分離装置のタンパク質抽出プログラムを使用することにより確立されるであろう。
【0286】
選択プロセスの例として、約0.5mgの食品試料に、処理(ベーキング、煮沸、フライ等)の前後に、既知量のアレルゲンをスパイクする。全タンパク質抽出並びに特定アレルゲン回収を試験及び記録して、様々な抽出緩衝液の効率を比較する。測定値は、全タンパク質抽出量及び特定アレルゲンの相対的回収率(スパイクした量の%)になるであろう。結果は、市販のELISAアッセイの3つの異なる抽出緩衝液と比較して、3つの異なる緩衝液中での処理前後の全タンパク質、特定アレルゲン回収(卵、小麦、ピーナッツ、魚、甲殻類、ミルク、カシュー、大豆等)を比較する表になるであろう。
【0287】
最適な緩衝液を選択したら、均質化プロセスを加速することにより、抽出時間を減少させる。これは、ブレードの位置及びサイズを変更することにより、混合RPMを増加させることにより、及び緩衝液対試料比を減少させることにより達成することができる。加えて、市販のPESポリエーテルスルホン、PCTE(ポリカルボナート)、又はポリビニリデンジフルオリド(PVDF)等の低タンパク結合性フィルタで均質化溶液をろ過することにより、残屑粒子並びにより大型のタンパク質複合体を除去する。
【0288】
【表7-1】
【0289】
【表7-2】
【0290】
【表7-3】
【0291】
【表7-4】
【0292】
【表7-5】
【0293】
列挙した食品マトリックスに由来する全タンパク質を、様々な抽出緩衝液を使用して抽出し、全タンパク質回収率を、BCAタンパク質キット(Thermo Scientific Pierce社)を使用して試験し、様々な抽出緩衝液での特定アレルゲン回収率を、ELISAアッセイキット(Elution Technologies社 Neogen社及びBioCheck社)で試験し、SPN結合と比較する(GloMax検出システム)ことになるであろう。
【0294】
実施例8:デバイス試料採取機構の確立及び最適化
試験及び最適化プロセスを確立して、高脂肪で高度に加工されている食品からタンパク質を抽出し、タンパク質抽出時間を1分未満に減少させるという目的を達成する。
【0295】
高脂肪、酸、又は食品着色料を含有する幾つかの食品マトリックスは、タンパク質抽出が難しいが、非特異的結合を低減することになる幾つかの化学薬品(ゼラチン、BSA、又はスキムミルク)を抽出緩衝液に導入し、フィルタの細孔径を小さくしてより大型の分子を除去し、界面活性剤濃度を増加させて脂肪含量を克服し、試料対緩衝液比を増加させること等を行うことになる。処理時間を減少させると、フィルタを閉塞させ、検出機構に干渉するおそれがある残屑及びタンパク質複合体がより多く発生する可能性がある。その後、ミキサのrpmを増加させることにより、緩衝液のpHを上昇/低下させることにより、並びにフィルタの細孔径を増加させることにより、消化プロセスを最適化する。これらの変更は、時間を考慮する状況でなされるであろう。
【0296】
市販のELISAアッセイの3つの異なる抽出緩衝液と比較して、3つの異なる緩衝液中での処理前後の全タンパク質量、特定アレルゲン回収(全8個のアレルゲン)を比較する表を作成する。この表は、少なくとも20個の異なる食品マトリックスからの平均回収率を表示することになる(表7を参照)。この比較表に基づいて、更なる分析及び最適化のために、最も高い全収量及び特異的回収率を示す抽出緩衝液を決定する。
【0297】
実施例9:8種の食物アレルゲン用の検出アプタマーの選択及び最適化
MBのシグナル伝達能力及びアプタマーのタンパク質結合特異性を組み合わせて、食物アレルゲンに結合し、食物アレルゲン存在のシグナルを発生させることになるシグナル発生ポリヌクレオチド(SPN)を生成するために、本出願に記載のSELEXを使用して、食物アレルゲンアプタマーのin vitroスクリーニング及び選択を行うことになるであろう。アプタマーの各々について5つの異なる配列の解離定数を試験する。これら5つの配列は、特定のアレルゲンタンパク質のポジティブ選択及び他の7種のアレルゲンタンパク質のネガティブ選択の両方により選択されるであろう。本発明者らが選択することになるタンパク質は、折り畳まれているタンパク質、及び変性したタンパク質を両方とも含むであろう。10ラウンドの選択後に残った配列を更に分析して、Kd親和性、シグナル対バックグラウンド比、LOD、標的化、及びEC50/IC50を決定することになる。低ナノモル範囲(<300nM)のKdを有する最上位5つの配列を、更なる分析に選択することになる。Kdは、好ましくは、ForteBioにより評価することになるが、必要に応じて、ドットブロット、ゲルシフトアッセイ、又はフローサイトメトリを含む他の手段を試みる。Kdが低いほど、結合親和性は高く、感度が増加することになる。
【0298】
SELEX選択プロセスを、ELISAアッセイ製造業者から購入し、特定アレルゲンの標準物質としてAOACにより承認されている粗タンパク質試料で実施する。このタンパク質は、純品、処理、及び変性アレルゲンタンパク質の混合物である。これにより、タンパク質の様々な形態全てに結合することになるアプタマーの選択が可能になる。アプタマーは、選択性を増加させるために、他の7種のアレルゲンのいずれに対してもネガティブ選択にかけられるであろう。
【0299】
主要8種の食物アレルゲンの各々に対して特異的なアプタマー配列を選択したら、そのアプタマーの配列を、MB構造に組み込むことになるであろう。アプタマー配列は、MBのループ配列として設計し、結果的にSPN分子となるであろう。タンパク質が存在すると、タンパク濃度に応じて、SPNの蛍光シグナルが変化するであろう。
【0300】
様々なSPNの結合感度及び特異性を評価及び最適化するために、それらの結合親和性を、様々な食品マトリックス(表7を参照)で試験し、ELISAキット試験と比較することになる。緩衝液中のMgCl:KCl比を変更し、選択したアプタマーの結合親和性及び選択性を最適化する。MgCl2が存在すると、Tmがより高くなり、ステム-ループ構造の形成が有利となり、NaCl又はKClを添加すると、活性SPNタンパク結合が有利となる。また、非操作アプタマーを試験し、選択後の操作アプタマーと比較する。結合親和性が低い場合、隣接配列の長さを変化させ、二重らせんに化学修飾又はミスマッチを加えて、非結合構造を増加/減少させる。こうした修飾がうまくいかない場合、選択した配列から異なる配列を選択して操作する。
【0301】
このプロセスにより、8種のアレルゲン(つまり、小麦、卵、ミルク、ピーナッツ、ツリーナッツ、魚、甲殻類、及び大豆)全てに対する配列全てを選択し、最上位の5つの配列を、それらのKd値に基づいて評価することになり、それを、8種のアレルゲンの各々に対するSPNとして操作する。これら配列の結合親和性は、非操作配列と比べて著しく高くはないであろう。
【0302】
実施例10:デバイス試料採取機構の確立及び最適化
試料採取機構を更に最適化して、信頼性が高く、再現性があり、様々な食品マトリックス間で精度が高い食品試料採取を確実なものにする。
【0303】
試料採取プロセス
食品試料の分析は、標的試料に試料収集プローブを挿入することにより開始される。試料を収集している間、針の内部にあるドリルビットがモータにより回転し、スクリューポンプ(アルキメデス型スクリューとしても知られている)として機能する。ドリルビットの「チップクリーニング」作用は、標的試料の小片を捕捉し、収集針から混合チャンバの中間へとそれらを移送する役目を果たす。この機構は、1回転で特定量の食品を試料採取するように最適化されるであろう。くり抜き能力は、広範な食品のテキスチャーで試験し、最適化されるであろう。
【0304】
消化及びタンパク質抽出
標的試料の小片が収集され、混合チャンバに送達されたら、シリンジポンププランジャーが押し込まれる。これにより、消化緩衝液が混合チャンバ内へと注入される。これにより、消化緩衝液が、一方向バルブ1422から混合チャンバ内へと注入される。一方向バルブ1424は、検出チャンバ内への逆流を防止する向きに配置されており、その機能はステップ3で説明されるであろう。消化緩衝液が混合チャンバに送達されると、混合モータは、所定の時間及び速度プロファイルに従って混合スピンドルを回転させ、試料を適切に均質化し、目的の構成生体分子を放出させる。駆動モータが、モータ取り付け地点に取り付けられており、これは、第1のステップ中でドリル用ビットスクリューポンプを回転させるものと同じモータである。
【0305】
混合ユニットのRPM、トルク、並びにブレード配置を最適化して、様々な食品テキスチャーの十分な均質化を確実にすることになる。抽出緩衝液と食品試料との比率を振って、食品試料を希釈せずに、高レベルのタンパク質を抽出することになる。
【0306】
ろ過
試料を消化及び均質化したら、以前に押し込んだシリンジポンププランジャーを引く出すことにより、それを精製フィルタを介して検出チャンバ内へと通過させなければならない。しかしながら、この時、一方向バルブ1424は、材料が混合チャンバから出て逆流することを阻止する役目を果たし、一方向バルブ1422は、精製フィルタに陰圧をかけるために開放され、それにより試料は検出チャンバ内へと引き出される。疎水性フィルタが、検出チャンバの出口に設置されており、あらゆる邪魔なガスを通過させつつ、目的試料の漏出を防止する。試料が検出チャンバに存在すれば、分析ユニットは、試料の調査を実施し、測定値をユーザに報告することができる。
【0307】
ろ過ユニットは、残屑を除去することができるだけでなく、アレルゲンタンパク質を濃縮することもできる。ほとんどの食物アレルゲンは、70KDa未満である。閾値が100KDaである膜を使用して、本発明者らは、本発明者らの試料中のアレルゲンタンパク質を大幅に濃縮することになるが、それには、極めて高い圧力(100psi)が必要となるであろう。様々な細孔径(0.2、0.1、0.03、及び0.01um)を有するフィルタを試験し、逆浸透膜と比較することになる。
【0308】
フィルタ及び一方向バルブが戦略的に配置されている独自構成の循環ループは、シリンジポンププランジャーを、数サイクルにわたって引き出し及び押し込んで、十分な試料物質が検出チャンバに送達されることを確実にすることができることを意味する。また、試料の輸送には、混合モータは別として、たった1つの追加の精密ステッピングモータ/制御モータしか必要としないことを意味する。そうでなければ、消化緩衝液を送達するのに1つのモータが必要とされ、試料を検出チャンバ内へと引き出すのに別のモータが必要とされるであろう。各々に追加モータがあると、デバイス全体のサイズ、重量、コスト、及び電力消費が増加するため、この有益性は重要である。
【0309】
第1のステップで試料が収集されたら、その後のステップは全て、分析ユニットの制御下で自動的に実施されるように設計されており、更なるユーザとのやりとりは必要とされない。
【0310】
こうした最適化により、単一ステップであり、測定が正確で、再現性のある機構である食品試料採取機構が確立される。タンパク質抽出は、1分以内に終わるであろう。
実施例11:シグナル発生ポリヌクレオチドの設計
以下の方法を使用して、シグナル発生ポリヌクレオチドを遺伝子操作する。
【0311】
まず設計用のポリヌクレオチドを選択する。その後、選択したポリヌクレオチドの三次元折り畳みを、mFOLDソフトウェア(Michael Zuker&Nick Markham(著作権)、Rensselaer Polytechnic Institute、The RNA Institute、College of Arts and Sciences、State University of New York at Albany内、SUNY Albany Research IT Groupが支援)を使用して実施する。
【0312】
その後、4~18又は4~12のヌクレオチド配列を、初期折り畳み分析を行ったポリヌクレオチドの3’に付加する。この付加ヌクレオチド配列は、部分的に又は全体が、初期ポリヌクレオチドの5’末端の配列に逆方向相補的である配列である。
【0313】
その後、最初のポリヌクレオチド及び付加ポリヌクレオチドを含む、その結果生じたシグナル発生ポリヌクレオチドの三次元構造を、m-FOLDで分析する。熱力学パラメータ又は構造パラメータの選択を含む場合があるmFOLD分析に基づき、選択候補を選択する。幾つかの実施形態では、更なる試験のために選択された完全ポリヌクレオチド配列は、5’末端及び3’末端が互いに結合されている閉ステム-ループ構造を形成し、ΔGが最も低いポリヌクレオチド配列である。
【0314】
実施例12:様々な抽出緩衝液を使用したタンパク質抽出及びアレルゲン回収の試験
実施例7に提案されているように、様々な化学成分を有する様々な消化/抽出緩衝液を、アレルゲン検出用の独占所有できる抽出緩衝液を見出すために試験及び比較した。このユニバーサル抽出緩衝液は、タンパク質抽出及びアレルゲン回収を最大化することができる。ユニバーサル抽出緩衝液は、任意のアレルゲン及びあらゆる食品(例えば、加工前又は加工後)に適用可能であろう。加えて、ユニバーサル抽出緩衝液は、シグナル発生ポリヌクレオチド(SPN)結合親和性を向上させ、非特異性の結合を最小限に抑え、信号雑音比を増加させることができる。
【0315】
系統的な実験を設計して、様々な抽出緩衝液の全タンパク質抽出及び特定アレルゲン回収を比較した。Tris系緩衝液、PBS系緩衝液、及びNeogen(登録商標)ELISA抽出緩衝液を試験し、互いに比較した。実験で使用した緩衝液は、表8に列挙した。最大のタンパク質回復及びSPN検出性能を達成するために、Tris系緩衝液及びPBS系緩衝液に様々な改変を実施して、緩衝液条件を最適化した。
【0316】
【表8】
【0317】
実験のセットアップ:様々な濃度のアレルゲン(例えば、グルテン)を、ベーキング前又はベーキング後のケーキにスパイクした。また、普通のパン、無グルテン(GF)パン、及び無グルテンケーキを食品源として使用し、様々な試験抽出緩衝液を用いてアレルゲン回収を試験した。様々な抽出緩衝液を食品試料に添加した(緩衝液の配合は、上記の表に記載されている通りであった)。1:20(0.5gの試料及び10mlの緩衝液)、1:10(0.5grの試料及び5mlの緩衝液)、1:5(0.5grの試料及び2.5緩衝液)を始めとして、様々な試料対緩衝液比を試験した。また、本発明者らは、試料サイズを増加させ、緩衝液を2.5mlで一定に維持しようと試みた。食品試料は、2.5ml緩衝液中0.5、1、1.5、2、及び2.5grであった。緩衝液を有する食品試料を、gentleMAC又は手持ちホモジナイザーを使用して均質化した。均質化された溶液は、室温で15分間放置して堆積物を沈降させるか、又は5000rpmで5分間遠心分離したかのどちらかであった。上澄み水溶液を収集し、更なる分析用に新しいチューブに移した。全タンパク質抽出物を、BCA pierceキットを使用して、又は全窒素試験(試験ストリップ)で試験した。特定アレルゲン回収率は、市販のELISAキットを使用して試験した。卵及びピーナッツ試料について、特異的SPNを同様に試験した。
【0318】
比較すると、PBS系緩衝液では、図15に示されているように、βメルカプトエタノールを付加しても、全タンパク質抽出は増加しなかったが、10%EtOHを付加すると、全タンパク質抽出が増加した。
【0319】
様々なpH値及び添加剤を有するTris系緩衝液を、Neogen(登録商標)グルテン抽出緩衝液と比較した。結果は、pH8.0、5mM EDTA、及び20%EtOHを有するTris緩衝液が(図16ではDOTS緩衝液と表記されている)、Neogen(登録商標)グルテン抽出緩衝液と比較して、より良好なグルテン回収率をもたらしたことを示した。更に、ベーキング後のグルテン回収は、Tris緩衝液(pH8.0、5mM EDTA、及び20%EtOH、DOTS緩衝液として)を用いると200%増加したが、Neogen(登録商標)緩衝液(図16)では回収されなかった。更に、この比較は、いずれかの緩衝液で1:50に希釈した後のベーキング前のものから回収されたグルテンは、希釈され過ぎて検出することができないことを示唆した。また、pH8.0の100mM Tris緩衝液は、pH7.4のTris緩衝液よりも良好であり、EDTA(5mM)及び10%EtOHを添加すると、全タンパク質抽出が向上したことが示されている。
【0320】
抽出緩衝液を更に最適化するために、Tris系緩衝液を、表5)に列挙されているような様々な塩及び添加剤で更に改変した。各改変Tris系pH8.0緩衝液の成分は、表9に示されている。
【0321】
【表9】
【0322】
図17には、緩衝液A~Fを使用したグルテン回収が示されている。その後、緩衝液Aを更に改変して、ゼラチン濃度を0.5%に減少させた。そのように減少させたことにより、より容易にろ過を行うことができる。この改変緩衝液は、緩衝液A+と表記されている。試験では、ベーキング前及びベーキング後のケーキを、40μg/100μlグルテンでスパイクした。ベーキングしたものを、緩衝液A+又はNeogen(登録商標)抽出緩衝液のいずれかで抽出し、抽出試料を、検出用のELISAキットの線形範囲に入るように、試料に応じて1:10、1:100、又は1:1000の比率で希釈した。図18(A及びB)は、緩衝液A+のみが、スパイクしたグルテンの約7~10%を回収することができることを示していた。図5は、緩衝液A+を使用したミルクアレルゲンの回収率を示していた。緩衝液A+を使用した場合、ミルクアレルゲンをスパイクしたベーキング前のもの及びベーキング後のもののそれぞれ10%及び100%が回収された。Neogen(登録商標)ELISA抽出緩衝液は、緩衝液A+と同様の回収率をもたらした(図19)。
【0323】
緩衝液A+の抽出能力を、グルテン、甲殻類、カシュー、ピーナッツ、大豆、及びミルク等の他の一般的なアレルゲンを用いて試験し、Neogen ELISA緩衝液と比較した。結果は、図20(A及びB)に示されている。
【0324】
別の一連の試験では、PBS系緩衝液を、表5に列挙されている様々な塩及び添加剤を用いて更に改変した。改変PBS系緩衝液を、P+緩衝液又はP-緩衝液と表記した。P+緩衝液及びP-緩衝液の成分は、表10に列挙されている。
【0325】
【表10】
【0326】
P+緩衝液及びP-緩衝液によるアレルゲン回収を、ベーキング前ものもの及びベーキング後のものを用いて試験した。図21A及び21Bは、それぞれベーキング前ものもの及びベーキング後のものでのアレルゲン回収率を示していた。
【0327】
PBS緩衝液を更に改変して、アレルゲン回収率を増加させた。改変には、MgClの濃度を低下させること、及び別の塩KClを添加することが含まれる。K緩衝液と表記されている改変PBS系緩衝液の成分は、表11に列挙されている。
【0328】
【表11】
【0329】
試験結果によると、K緩衝液は、アレルゲン回収率を著しく増加させることができ、試験したあらゆるアレルゲン及び食品源全て(例えば、ベーキング前及びベーキング後)に適用可能であることが示唆される(表12を参照)。
【0330】
【表12】
【0331】
Elution ELISA緩衝液(Elution Technologies社 Neogen社、及びBioCheck社)と比較すると、K緩衝液は、Elution緩衝液と同等の抽出能力を有する(図22A及びB)。
【0332】
Tris系緩衝液は、通常、オリゴヌクレオチド結合実験に好ましいという事実を考慮して、K緩衝液中のPBS成分をTris pH 8.0と置換して、T緩衝液を生成する。T緩衝液中の成分は、表13に列挙されている。アレルゲン回収並びにSPN結合に対するTris塩基の影響を試験した。図23では、K緩衝液、T緩衝液、及びElution ELISA緩衝液でのカシューアレルゲン回収を比較した。
【0333】
【表13】
【0334】
実施例13:様々な抽出緩衝液を使用したSPN結合親和性の試験
様々な抽出緩衝液のアレルゲン回収率を試験した後、SPN媒介性アレルゲン検出用のユニバーサル抽出緩衝液を開発するために、様々な緩衝液で回収したアレルゲンに対するシグナルポリヌクレオチド(SPN)結合親和性を試験及び比較した。
【0335】
リゾチームSPN(MB4、MB5、及びMB6)を使用して、一連の結合アッセイを実施した。実験手順:食品試料を上述のように均質化し、概して2.5mlの緩衝液を0.5食品試料に添加した。試料を均質化し、遠心分離した。25ulの試料を、96平底ウェルプレートに添加した。特異的SPNを、100uM濃度に再懸濁し、25ulのSPNをプレートに添加した。終濃度は50uMであった。試料を、青色レーザを使用するGloMax(登録商標)Promega(登録商標)プレートリーダで直ちに測定した。(検出は、緩衝液のみ及びスパイク無しのバックグラウンドを差し引いたFITCの強度として定量化した)。
【0336】
シグナルポリヌクレオチドMB4、MB5、及びMB6の配列は、下記に示されている:
MB4:5’フルオレセイン-TGCAGCTAAGCAGGCGGCTCACAAAACCATTCGCATGCGGCTGCA-ダブシル-3’(配列番号13)
MB5:5’フルオレセイン-TGCAGCTAAGCAGGCGGCTCACAAAACCATTCGCATGCGGCCTGCA-ダブシル-3’(配列番号14)
MB6:5’フルオレセイン-TGCAGCTAAGCAGGCGGCTCACAAAACCATTCGCATGCGGCGCTGCA-ダブシル-3’(配列番号15)
図24及び25には、卵白に対するMB6結合親和性に対する、P+緩衝液及びP-緩衝液の影響が比較されている。P+緩衝液及びP-緩衝液の結合曲線が類似していることは(図25)、抽出緩衝液中のゼラチンの存在は、タンパク質抽出に非常に重要であるが、ゼラチンの影響は、SPNの結合には重要ではないことを示唆する。図10に示されているように、P+緩衝液は、卵白に対するSPNの結合親和性を減少させる。しかしながら、この結果は、K緩衝液が、卵白に対するSPNの結合親和性を増加させることができることを示唆する(図26)。T緩衝液中の純粋な卵白タンパク質に対するSPN結合親和性と比較して、K緩衝液は、より低いリゾチームレベルの検出を可能にすることができる(図27)。同様に、T緩衝液は、チョコレートケーキ(図28)、及びトゥインキー(TWINKIE(商標))等の卵を含有する食品(図29)にスパイクしたより低レベルのリゾチームの検出を可能にする。
【0337】
また、Ara H1 SPN(MB7及びMB9)の結合親和性を、K緩衝液で試験した。シグナルポリヌクレオチドMB7及びMB9は、それぞれ以下の配列を有するように設計した。MB7:5’フルオレセイン-TCGCACATTCCGCTTCTACCGGGGGGGTCGAGCTGAGTGGATGCGAATCTGTGGGTGGGCCGTAAGTCCGTGTGTGCGAA TGTGCGA ダブシル-3’(配列番号16)MB9:5’フルオレセイン-TCGCACATTCCGCTTCTACCGGGGGGGTCGAGCTGAGTGGATGCGAATCTGTGGGTGGGCCGTAAGTCCGTGTGTGCGAA AATGTGCGA ダブシル-3’(配列番号17)
MB7及びMB9は両方とも、ピーナッツアレルゲンと特異的に結合することができるが、卵白及びオボムコイドには結合しない(MB7は図30A並びにB、及びMB9は図31A並びにB)。
【0338】
また、食品マトリックス中のピーナッツアレルゲンに対するMB7及びMB9結合親和性に対するK緩衝液の影響を試験した。様々な量のピーナッツ粉末を、ベーキング前又はベーキング後のいずれかのマグケーキマトリックスにスパイクした。K緩衝液を使用してアレルゲンを回収し、抽出した試料を、SPN(つまり、MB7又はMB9)検出前に希釈した。図32(A及びB)は、MB7が、抽出緩衝液としてK緩衝液を使用した場合、ベーキング前又はベーキング後のケーキにスパイクした低ppmレベルを検出することができることを示していた。同様に、図33(A及びB)に示されているように、MB9も、抽出緩衝液としてK緩衝液を使用した場合、ベーキング前又はベーキング後のケーキにスパイクした低ppmレベルを検出することができる。ELISAアッセイ検出によるアレルゲン回収率と比較して、MB7及びMB9は両方とも、K緩衝液を抽出緩衝液として使用した場合、ピーナッツ回収率を著しく増加させる(図34)。
【0339】
商業的に加工された食品も試験した。結果は、MB7及びMB9は、K緩衝液を抽出緩衝液として使用した場合、プレッツェル及びアイスクリーム等の加工食品中の希釈ピーナッツアレルゲンを検出することができることを示す(図35)。
【0340】
また、純粋なピーナッツタンパク質に対するMB9結合親和性に対するK緩衝液及びT緩衝液の影響を比較するための試験を実施した。図36に示されるように、T緩衝液は、より低いAraH1レベルの検出を可能にすることができる。
【0341】
その後、本発明者らは、様々な反応時間でSPN検出シグナルを更に試験し、0分での即時検出シグナルが、30分時点でのシグナルとそれほど変わらないことを見出した。図37A及びBは、MB7及びMB9の即時検出シグナルが、30分時点でのシグナルと類似することを示していた。
【0342】
実施例14:SPN結合親和性に対する物理的妨害の影響の試験
その後、本発明者らは、試料サイズ、タンパク質試料の調製方法、及び物理的なプログラム、及びアレルゲン回収に対するそれらの影響、及びアレルゲンに対するSPN結合親和性を更に試験した。
【0343】
実験手順
食品試料及びサイズ:0.5g、1g、1.5g、及び2gのトゥインキー(TWINKIE(商標))、バニラプリン、及びスパイクした牛肉を試験に使用した。
【0344】
分離装置:GentleMAC、miniMAC、低ワット及び高ワットの連続分離装置を使用して食品試料を処理した。gentleMACのタンパク質プログラムを使用して、タンパク質試料を調製した。
【0345】
抽出緩衝液:実施例11及び12で考察されているT緩衝液を、タンパク質抽出及びアレルゲン回収に使用した。
ろ過:残屑を除去し、試料を濃縮し、特定サイズのタンパク質を濃縮するために、試料を処理した後、ろ過手順を実施した。
【0346】
試験結果
全ての試料サイズでミルクアレルゲン回収に著しい差はないことが示されている(図38A~C)。しかしながら、リゾチームに対するMB5結合は、より大きな試料サイズで低下した(図39)。
【0347】
様々な分離装置及びタンパク質プログラムを試験した。結果は、様々な食品間で変動性が高いことを示唆する。例えば、使用する分離装置が異なると、鶏肉、トゥインキー(TWINKIE(商標))、及び糖衣からのミルクアレルゲン回収も異なる(図40A~C)。リゾチームに対するMB5の結合は、他の分離装置と比較して、gentleMACを用いた場合に、最も高かった。しかしながら、低ワットContiuum分離装置は、gentleMACとそれほど変わらなかった(図41)。
【0348】
実施例15:8種の食物アレルゲン用に選択及び設計されたシグナルポリヌクレオチド
食物アレルゲンを検出することができるアプタマーに基づくシグナルポリヌクレオチドをスクリーニング、選択、及び遺伝子操作する際の基本実験設計は、実施例9及び11に記載されている。そのような選択及び設計手順の後、SELEX法に基づくin vitroスクリーニング実験を実施し、カウンタ標的(非標的タンパク質の組み合わせ)よりも、卵、グルテン、ミルク、大豆、魚、ピーナッツ、カシュー、及び甲殻類を含むアレルゲン標的に対して結合するアプタマーを選択し、標的食物アレルゲンを検出するそれらの能力について更に遺伝子操作した。
【0349】
実験プロセス
種々のRNAライブラリーを使用し、23℃にて、100mM Tris[pH8]、5mM EDTA、150mM NaCl、10mM MgCl2、0.1%SDS、0.1%ゼラチン、1%NP-40(Tergitol)、0.5%デオキシコラートナトリウムを含む選択緩衝液中での結合能力について選択した。所与の選択ラウンドは、RNAライブラリーメンバーをいずれかの緩衝液のみでインキュベート(ネガティブ選択)することから始め、その後応答しなかった(つまり、切断しなかった)ライブラリーの部分を収集した。各ラウンドの第2の部分(必要な場合)は、前のネガティブ選択ステップに由来する非応答分子を、非陽性標的(カウンタとして)の完全な組み合わせと共に、又は再び第2のネガティブ選択を行うために選択緩衝液のみと共にインキュベートすることを含んでいた。もう一度、非応答性(非切断)分子を収集するであろう。各ラウンドの最終ステップは、前のステップに由来する物質を、陽性標的(必要に応じて、アレルゲンの各々)と共に緩衝液中でインキュベートし、その後、応答物質(つまり、切断されたRNA)を収集することを含む。各ラウンドの後で、逆転写によるcDNAの生成、PCRによるライブラリー増幅、及び転写によるRNAライブラリーの再生成を行った。多様なランダム配列の初期ライブラリーを、再度、プロジェクトに応じて、様々な連続ラウンドの選択(つまり、ネガティブ、カウンタ、及びポジティブ選択)にかけ、増幅されたライブラリーを3つの画分に分割して、並列評価を実施した。並列評価は、増幅ライブラリーの3分の1を選択緩衝液のみに、別の3分の1を選択緩衝液中のカウンタ標的複合体に、及び増幅ライブラリーの最後の3分の1を緩衝液中の標的アレルゲンに同時に接触させることを含む。標的アレルゲン及びカウンタ標的の両方と無差別に反応するか、又は標的アレルゲンが存在しなくとも依然として応答を生成するあらゆる残留RNA分子を、更なる分析のために特定し、廃棄した。
【0350】
並列評価後の増幅RNAライブラリーを、PAGEゲル評価に供した。40pmoleの増幅ライブラリーを、選択緩衝液中の陰性標的(緩衝液のみ)、カウンタ標的、又は標的アレルゲンのいずれかと別々に接触させた。23℃で5分間インキュベーションした後、陽性応答(つまり、切断)物質を示すライブラリーを収集し、エタノール沈殿し、逆転写し、配列決定及びバイオインフォマティクス分析のためにPCR増幅した。
【0351】
選択されたアプタマー
一連のアプタマー配列を選択し、カシュー、ピーナッツ、魚、ミルク、大豆、グルテン、卵、及び甲殻類を含む8種の異なる食物アレルゲンを検出するためのシグナルポリヌクレオチドとして更に設計を行った。6つの異なるシグナルポリヌクレオチドを、それぞれ、カシュー、ピーナッツ、魚、卵、及びグルテンを検出するために選択し、5つを、それぞれ、ミルク、大豆、及び甲殻類を検出するために選択した。これらシグナルポリヌクレオチドの配列は、表14に列挙されている。表14にSPNとして表示されているアプタマー(各シグナルポリヌクレオチドの結合領域)に加えて、プライマー対を含む元の配列が、表14にRibo-SPNとして表示されているシグナルポリヌクレオチド(つまり、リボスイッチ配列)を設計するための開始配列として列挙されている。その後、各食物アレルゲンについて選択されたアプタマーの5’端部及び3’末端の1つ又は両方のいずれかを更に修飾して、結合親和性を最適化する。また、修飾配列の幾つかは、表14に含まれており、SPN-compと表示されている。5’末端にフルオレセイン(例えば、FITC/FAM分子)及び3’端部にクエンチャーを有することが意図されている修飾配列は、本明細書に記載のようにアレルゲン検出を試験することになるシグナルポリヌクレオチドである。また、実施例10に記載の設計手順に従って、各々の設計されたシグナルポリヌクレオチドの三次元構造を予測する。熱力学データは全て、表15を参照されたい。
【0352】
【表14-1】
【0353】
【表14-2】
【0354】
【表14-3】
【0355】
【表14-4】
【0356】
【表14-5】
【0357】
【表14-6】
【0358】
【表14-7】
【0359】
【表14-8】
【0360】
【表15-1】
【0361】
【表15-2】
【0362】
以下、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)シグナル発生ポリヌクレオチド配列を設計する方法であって、
(a)第1のポリヌクレオチドのエネルギー計算又は構造計算を実施し、目的のエネルギー値及び構造特徴のうちの少なくともいずれか一方を有する配列のサブセットを選択するステップ、
(b)選択されたポリヌクレオチドのサブセットの1つ又は複数のメンバーの5’末端に、長さが4~18ヌクレオチドの配列を付加することにより第2のポリヌクレオチドを生成するステップであって、付加されたポリヌクレオチドの少なくとも一部分が、前記第1のポリヌクレオチドの逆相補鎖である配列を含むステップ、
(c)(b)で得られた配列の三次元の構造を分析するステップ、及び
(d)(c)の分析に基づいて、前記5’末端及び3’末端を互いに結合させる閉ステム-ループ構造を形成し、最も低いΔGを有するシグナル発生ポリヌクレオチド配列を選択するステップを含む方法。
【0363】
(付記2)試料中の1種又は複数種のアレルゲンを検出するための方法であって、
(a)アレルゲンを含有する疑いのある試料を取得すること、
(b)(a)の試料を1種又は複数種の緩衝液で消化すること、
(c)消化した試料を検出分子と接触させること、
(d)接触させた試料を励起手段で処理すること、及び
(e)前記検出分子及び前記アレルゲンの相互作用を可視化することを含む方法。
【0364】
(付記3)前記検出分子が核酸を含む、付記2に記載の方法。
(付記4)前記核酸がアプタマーである、付記3に記載の方法。
(付記5)前記アプタマーがフルオロフォア及びクエンチャーを含み、これらは、前記クエンチャーが前記フルオロフォアの蛍光を消光するのに十分な程度に近傍にある、付記4に記載の方法。
【0365】
(付記6)前記フルオロフォア及び前記クエンチャーが、前記アプタマーの配列の反対端に連結されており、前記配列の5’末端の5~20個の核酸塩基残基が、ヘアピン構造を形成可能な前記配列の3’末端の5~20個の核酸塩基残基に少なくとも80%相補性であることにより、前記クエンチャーが、前記フルオロフォアの蛍光を消光するのに十分な程度に前記フルオロフォアの近傍に配置される、付記5に記載の方法。
【0366】
(付記7)前記検出分子がリンカー配列を更に含み、前記リンカー配列は、5~20核酸塩基長であり、前記アプタマーの配列の5’末端にアニーリングされ、前記アプタマーの配列の5’末端と少なくとも80%の相補性を有し、前記アプタマー配列がフルオロフォアを含み、前記リンカー配列がクエンチャーを含むか、又は前記アプタマー配列がクエンチャーを含み、前記リンカー配列がフルオロフォアを含む、付記4に記載の方法。
【0367】
(付記8)前記アレルゲンに対する前記検出分子の結合が、前記クエンチャーを前記フルオロフォアから分離させることにより、前記フルオロフォアの蛍光検出が可能になる、付記5に記載の方法。
【0368】
(付記9)前記アレルゲンに対する前記検出分子の結合が、前記検出分子の二次構造の変化を引き起こす、付記8に記載の方法。
(付記10)前記1種又は複数種の緩衝液が、K緩衝液及びT緩衝液を含む、付記2に記載の方法。
【0369】
(付記11)前記緩衝液がT緩衝液である、付記10に記載の方法。
(付記12)食品試料中のアレルゲンを検出するためのデバイスであって、
(a)試料を処理するためのカートリッジを保持するように構成されている支持本体、
(b)試料収集チャンバ、
(c)タンパク質抽出チャンバ、
(d)検出チャンバ、及び
(e)表示ウィンドウを含むデバイス。
【0370】
(付記13)試料中のアレルゲンを検出するためのデバイスであって、
(a)試料を収集及び処理するためのカートリッジ、
(b)蛍光励起を提供するための手段、
(c)蛍光発光をフィルタリングするための光フィルタ、
(d)前記アレルゲン及び検出分子を混合するための検出チャンバ、
(e)検出されたシグナルをデジタル化するための手段を含む、蛍光発光を検出するための検出器、及び
(f)前記検出されたシグナルを受信し、前記アレルゲンの検出を示すための表示ウィンドウを支持するように構成されている本体を含むデバイス。
【0371】
(付記14)前記カートリッジが、試料収集機構、収集チャンバ、タンパク質抽出膜、及び1つ又は複数の検出チャンバを含む、付記13に記載のデバイス。
(付記15)1対の検出チャンバを含む、付記14に記載のデバイス。
【0372】
(付記16)前記カートリッジが使い捨てである、付記13に記載のデバイス。
(付記17)蛍光励起を提供するための手段が、前記支持本体に設置されている1対の発光ダイオード(LED)により提供され、前記1対の各LEDが、前記1対の検出チャンバの対応する検出チャンバに隣接している、付記14に記載のデバイス。
【0373】
(付記18)前記光フィルタが、1対の検出チャンバに隣接して位置しており、蛍光を、前記1対の検出チャンバから前記光フィルタを通して前記検出器に伝達するように構成されている、付記13に記載のデバイス。
【0374】
(付記19)前記アレルゲンの検出を示すための1対の表示ウィンドウを更に含み、前記1対の表示ウィンドウが、前記1対の検出チャンバに対応する、付記18に記載のデバイス。
【0375】
(付記20)前記1対の検出チャンバの一方の検出チャンバが、陰性対照を提供し、前記1対の検出チャンバの他方の検出チャンバが、前記アレルゲンを検出する、付記19に記載のデバイス。
【0376】
(付記21)前記カートリッジが、前記検出チャンバ内への前記試料の進入に先立って、消化緩衝液を試料混合チャンバに送るためのシリンジポンプを含む、付記13に記載のデバイス。
【0377】
(付記22)前記シリンジポンプが、流体導管を介して前記混合チャンバ及び前記検出チャンバと流体連通しており、シリンジの出口から前記混合チャンバまで伸長する第1の導管が、流体を前記シリンジに引き込む際に、前記混合チャンバから前記シリンジへと流体が逆流することを防止するように構成されている第1の一方向バルブを含む、付記21に記載のデバイス。
【0378】
(付記23)前記検出チャンバから前記シリンジまで伸長する第2の流体導管を更に含み、前記第2の流体導管が、流体を前記シリンジから運び出す際に、流体が前記検出チャンバ内へと流れることを防止するように構成されている第2の一方向バルブを含む、付記22に記載のデバイス。
【0379】
(付記24)前記混合チャンバが、前記試料を混合するための混合スクリュー、及び試料の一部を取得し、前記混合チャンバ内に運び込むための針を有する中空ドリルビットを含む、付記21に記載のデバイス。
【0380】
(付記25)前記カートリッジが、前記混合スクリュー及び前記ドリルビットの両方を駆動するためのモータを含む、付記24に記載のデバイス。
(付記26)前記モータが、前記カートリッジから取り外し可能であり、再使用可能である、付記25に記載のデバイス。
【0381】
(付記27)前記第2の流体導管に疎水性フィルタを更に含む、付記23に記載のデバイス。
(付記28)前記デバイスが、取手により接続されている1対のローブを有する砂時計形状を有し、一方のローブが、カートリッジを可逆的に保持するように構成されており、他方のローブが、前記検出チャンバのための筺体及び前記表示ウィンドウのための表面を提供する、付記13に記載のデバイス。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図30A
図30B
図31A
図31B
図32A
図32B
図33A
図33B
図34
図35A
図35B
図36A
図36B
図37A
図37B
図38A
図38B
図38C
図39
図40A
図40B
図40C
図41
【配列表】
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