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特許6992177多成分エポキシド樹脂組成物およびその硬化剤成分
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】多成分エポキシド樹脂組成物およびその硬化剤成分
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20220127BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220127BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220127BHJP
   C09J 11/08 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
C08G59/40
C08L63/00 Z
C09J163/00
C09J11/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020524739
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2018080129
(87)【国際公開番号】W WO2019086654
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】17200077.0
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ニコル ベーレンス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ボーンシュレーグル
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-523239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0119745(US,A1)
【文献】特開2011-213983(JP,A)
【文献】特表2001-525469(JP,A)
【文献】米国特許第06649729(US,B1)
【文献】特表2016-532742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
C09J 163/00-163/10
C09J 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分エポキシド樹脂組成物用の硬化剤成分であって、前記成分が、硬化剤として、少なくとも1つのマンニッヒ塩基、およびエポキシド基に対して反応性であるアミン、ならびに促進剤として、ノボラック樹脂の群からの少なくとも1つのポリフェノール、を含み、
前記マンニッヒ塩基が、フェノール、スチレン化フェノール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、およびビスフェノールからなる群から選択されるフェノール化合物と、アルデヒドまたはアルデヒド前駆体、および窒素原子に結合した分子中に少なくとも2つの活性水素原子を有するアミンと、を反応させることによって得ることができ、
前記エポキシド基に対して反応性であるアミンが、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および芳香族アミンからなる群から選択され、前記アミンが、窒素原子に結合した分子当たり平均して少なくとも2つの反応性水素原子を有し、前記分子中に少なくとも2つのアミノ基を有するポリアミンであり、
前記ノボラック樹脂が、前記硬化剤成分の重量から無機構成物の重量を差し引いたものに基づいて、5~30重量%の割合で前記硬化剤成分中に含有されている、
硬化剤成分。
【請求項2】
前記フェノール化合物が、フェノールおよびスチレン化フェノール、ならびにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の硬化剤成分。
【請求項3】
前記アルデヒドが、脂肪族アルデヒドを含むことを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の硬化剤成分。
【請求項4】
前記マンニッヒ塩基が、エポキシドに対して反応性である少なくとも前記ポリアミンを使用して形成されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硬化剤成分。
【請求項5】
前記ノボラック樹脂が、以下の式に対応し、
【化1】
式中、
およびRは互いに独立して、Hまたは-CHを表し、
、R、R、およびRが互いに独立して、H、-CH、もしくは脂肪族ラジカル、またはアルカリールラジカルを表し、式中、nが、0~20である、ことを特徴と
する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の硬化剤成分。
【請求項6】
前記ノボラック樹脂が、以下の式に対応し、
【化2】
式中、
が、Hを表し;
が、C1~C15アルキルを表し;
mが、0、1、または2であり;
nが、0~15である、ことを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の硬化剤成分。
【請求項7】
が、-CHを表し、mが、1もしくは2であるか、またはRが、tert-ブチルもしくはC~C15アルキル基を表し、mが、1である、ことを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の硬化剤成分。
【請求項8】
前記ノボラック樹脂が、前記硬化剤成分中に8~25重量%の割合で含有されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の硬化剤成分。
【請求項9】
前記マンニッヒ塩基が、前記硬化剤成分の有機割合に基づいて、10~70重量%の割合で前記硬化剤成分中に含有されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の硬化剤成分。
【請求項10】
前記アミンが、前記硬化剤成分の有機割合に基づいて、20~80重量%の割合で前記硬化剤成分中に含有されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の硬化剤成分。
【請求項11】
前記硬化剤成分が、希釈剤、溶媒、促進剤、シラン、増粘剤、および無機充填剤の群からのさらなる添加剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の硬化剤成分。
【請求項12】
多成分エポキシド樹脂組成物であって、
少なくとも1つの硬化性エポキシド樹脂、および任意選択的に反応性希釈剤、を含有するエポキシド樹脂成分(A)と、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの硬化剤成分(B)と、を含み、
前記エポキシド樹脂成分(A)と前記硬化剤成分(B)とが、互いに分離している、多成分エポキシド樹脂組成物。
【請求項13】
前記多成分エポキシド樹脂組成物が、共促進剤、接着促進剤、反応性希釈剤、増粘剤、および充填剤からなる群から選択されるさらなる添加剤を含む、請求項12に記載の多成分エポキシド樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分エポキシド樹脂組成物、特に留め付けのためのエポキシド樹脂組成物、およびエポキシドの硬化剤成分として少なくとも1つのマンニッヒ塩基を含有するエポキシド樹脂組成物用の硬化剤成分に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性エポキシド樹脂およびアミン硬化剤をベースにした多成分モルタル組成物は、しばらく前から知られており、接着剤、亀裂を修復するためのスパックリングペースト、ならびにアンカーロッド、強化バー、およびさまざまな基板のボアホールのネジなどの建設要素を留め付けるための化学ダボとして使用されている。
【0003】
エポキシド樹脂用の硬化剤成分の構成物としてのマンニッヒ塩基の使用は、とりわけ特許文献1および特許文献2に記載されている。マンニッヒ塩基は、概して、留め付けのための多成分エポキシド樹脂組成物の硬化剤成分として、ポリアミンおよび任意選択的にさらなる構成物と組み合わせて使用される。mXDAなどのポリアミンと比較して、マンニッヒ塩基は、非極性物質であり、ひいては、湿潤基材で簡単に洗い流すことができないという点で有利である。したがって、硬化剤成分中にマンニッヒ塩基を含有する硬化性組成物は、湿潤ボアホール内で硬化した後、低分子ポリアミンに基づく硬化剤を含む比較組成物よりも高い引き抜き力を示す。
【0004】
特許文献3は、フェンアルカミンと、スチレン化フェノールまたはスチレン化フェノールノボラックとの組み合わせを含有するエポキシド用の硬化剤成分を記載している。フェンアルカミンは、カシューナッツ殻液(CNSL)、ホルムアルデヒド、およびジエチレンジアミンなどのポリアミンを反応させることで得られる、特定の強力な疎水性マンニッヒ塩基である。
【0005】
特許文献4は、潜在性硬化剤および促進剤を含むエポキシド樹脂組成物を開示しており、促進剤は、ノボラックに基づくマンニッヒ塩基から形成される。
【0006】
エポキシド樹脂およびマンニッヒ塩基に基づくモルタル組成物の硬化速度を、マンニッヒ塩基のフェノール含有量によってある特定の程度まで制御することができるが、それ以外の場合、硬化速度は混合物中に存在するアミンに依存する。市販されており、RE 100(リヒテンシュタインのシャーンにあるHilti社)またはFIS EM 390 S(ドイツのヴァルダハタールにあるFischer社)などのマンニッヒ塩基に基づく硬化剤を含む従来のエポキシド樹脂組成物は、20℃で塗布した際に少なくとも12時間の硬化時間を有し、硬化時間は、その時間の後に留め付け部を負荷に供することができる時間を指す。次の加工ステップまでの待ち時間を短縮するために、硬化を加速させることが適切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102013113465号明細書
【文献】国際公開第2005/090433号
【文献】国際公開第2014/067095号
【文献】欧州特許出願公開0351365号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明によって対処される問題は、硬化剤としてマンニッヒ塩基を含有し、留め付けのために好適な多成分エポキシド樹脂組成物用の硬化剤成分を提供することであり、多成分組成物は、従来のモルタル組成物と比較して低減された硬化時間を有するが、比較的高い引き抜き抵抗を有するように意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基礎を形成する問題は、請求項1に記載の硬化剤成分を提供することによって解決される。本発明による硬化剤成分の好ましい実施形態は、従属請求項に提供されており、これらは、任意選択的に互いに組み合わせられてもよい。
【0010】
本発明はまた、請求項13に記載の多成分エポキシド樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明によるエポキシド樹脂組成物の好ましい実施形態は、従属請求項に提供されており、これらは、任意選択的に互いに組み合わせられてもよい。
【0012】
本発明によれば、多成分エポキシド樹脂組成物用の硬化剤成分であって、硬化剤として、少なくとも1つのマンニッヒ塩基、およびエポキシド基に対して反応性であるアミン、ならびに促進剤として、ノボラック樹脂の群からの少なくとも1つのポリフェノール、を含み、マンニッヒ塩基が、フェノール、スチレン化フェノール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、およびビスフェノールからなる群から選択されるフェノール化合物と、アルデヒドまたはアルデヒド前駆体、および窒素原子に結合した分子中に少なくとも2つの活性水素原子を有するアミンと、を反応させることによって得ることが可能であり、ノボラック樹脂が、硬化剤成分の有機割合に基づいて、5~30重量%の割合で硬化剤成分中に含有される、硬化剤成分が提供される。
【0013】
留め付けのための多成分エポキシド樹脂組成物中での、本発明による硬化剤成分の使用は、硬化反応の相当な加速をもたらす。硬化した組成物は、湿潤ボアホール内で優れた引き抜き抵抗を示し、ひいては、短い期間、約6時間以内だけで負荷に供することができる。
【0014】
硬化剤成分の有機割合とは、硬化剤成分の重量から砂および/またはセメントなどの無機構成物の重量を差し引いたものを指す。
【0015】
本発明による硬化剤成分の好ましい実施形態によれば、エポキシド基に対して反応性であるアミンは、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および芳香族アミンからなる群から選択される。アミンは、好ましくは、窒素原子に結合した分子当たり平均して少なくとも2つの反応性水素原子を有する。
【0016】
硬化剤成分中のエポキシド樹脂用の硬化剤として使用され得るアミンは、原則として当業者に知られている。アミンは、好ましくは、分子中に少なくとも2つのアミノ基を有するポリアミンである。硬化剤成分中でポリアミンを使用すると、特に安定したネットワークを達成することができる。
【0017】
本発明の文脈内で、本明細書および以下の説明で使用される用語は、以下の意味を有する。
【0018】
「脂肪族化合物」とは、芳香族化合物を除く、非環式または環式の飽和または不飽和炭素化合物であり、
「脂環式化合物」とは、ベンゼン誘導体または他の芳香族系を除く、炭素環構造を有する化合物であり、
「芳香脂肪族化合物」とは、官能化された芳香脂肪族化合物の場合、存在する官能基が化合物の芳香族部分ではなく脂肪族に結合しているような芳香族骨格を有する脂肪族化合物であり、
「芳香族化合物」とは、ヒュッケル則(4n+2)に従う化合物であり、
「アミン」とは、1個、2個、または3個の水素原子を炭化水素基で置換することによりアンモニアから誘導され、一般構造RNH(一級アミン)、RNH(二級アミン)、およびRN(三級アミン)を有する化合物である(参照:A.D.McNaught and A.Wilkinson,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997)によって編集されたIUPAC Chemical Terminology,2nd ed.(the「Gold Book」))。
【0019】
エポキシド硬化剤として好適なアミンの例を、本発明の範囲を制限することなく、以下に示す。1,2-ジアミノエタン(エチレンジアミン)、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ジアミノブタン、2,2-ジメチル-1、3-プロパンジアミン(ネオペンタンジアミン)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、2-メチル-1、5-ジアミノペンタン、1,3-ジアミノペンタン、2,2,4-もしくは2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサンおよびそれらの混合物(TMD)、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA)、1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン(1,3-BAC)、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、1,2-および1,4-ジアミノシクロヘキサン(1,2-DACHおよび1,4-DACH)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、ビス(4-アミノ-3-)メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、ジエチレントリアミン(DETA)、4-アザヘプタン-1、7-ジアミン、1,11-ジアミノ-3、6,9-トリオキウンデカン(trioxundecane)、1,8-ジアミノ-3、6-ジオキサオクタン、1,5-ジアミノ-メチル-3-アザペンタン、1,10-ジアミノ-4、7-ジオキサデカン、ビス(3-アミノプロピル)アミン、1,13-ジアミノ-4,7、10-トリオキサトリデカン、4-アミノメチル-1、8-ジアミノオクタン、2-ブチル-2-エチル-1、5-ジアミノペンタン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、1,3-ベンゼンジメタンアミン(m-キシリレンジアミン、mXDA)、1,4-ベンゼンジメタンアミン(p-キシリレンジアミン、pXDA)、5-(アミノメチル)ビシクロ[[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチルアミン(NBDA、ノルボルナンジアミン)、ジメチルジプロピレントリアミン、ジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミン(DMAPAPA)、ジエチルメチルベンゼンジアミン(DETDA)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(ダプソン)、混合多環式アミン(MPCA)(例えば、Ancamine 2168)、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin C260)、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、(3(4),8(9)ビス(アミノメチルジシクロ[5.2.1.02,6]デカン(異性体の混合物、三環式一級アミン;TCD-ジアミン)、1,8-ジアミノ-p-メンタン、N-アミノエチル-ピペラジン(N-AEP)、N-3-(アミノプロピル)ピペラジン、ピペラジン。
【0020】
本発明による硬化剤成分中の好ましい硬化剤は、2-メチルペンタンジアミン(DYTEK A)、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、1,3-ベンゼンジメタンアミン(m-キシリレンジアミン、mXDA)、1,4-ベンゼンジメタンアミン(p-キシリレンジアミン、PXDA)、1,6-ジアミノ-2、2,4-トリメチルヘキサン(TMD)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、N-エチルアミノピペラジン(N-EAP)、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3-BAC)、(3(4),8(9)ビス(アミノメチル)ジシクロ[5,2,1.02,6]デカン(異性体の混合物、三環式一級アミン;TCD-ジアミン)、1,14-ジアミノ-4、11-ジオキサテトラデカン、ジプロピレントリアミン、2-メチル-1、5-ペンタンジアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、二級ポリオキシプロピレンジアミンおよびトリアミン、2,5-ジアミノ-2、5-ジメチルヘキサン、ビス(アミノ-メチル)トリシクロペンタジエン、1,8-ジアミノ-p-メンタン、ビス(4-アミノ-3、5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、ジペンチルアミン、N-2-(アミノエチル)ピペラジン(N-AEP)、N-3-(アミノプロピル)ピペラジン、ピペラジンなどのポリメチルである。
【0021】
アミンを、個別に使用することも、指定されたアミンのうちの2つ以上の混合物で使用することもできる。
【0022】
上記のアミンと組み合わせて、本発明による硬化剤成分に使用されるマンニッヒ塩基は、アミンおよびアルデヒドと、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、ビスフェノールFまたはビスフェノールAなどのビスフェノール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるフェノール化合物との反応生成物である。
【0023】
マンニッヒ塩基を形成するために、フェノール化合物は、好ましくは一級または二級アミン、およびアルデヒドまたは分解の結果としてアルデヒドを生じるアルデヒド前駆体と反応する。アルデヒドまたはアルデヒド前駆体は、特に約50℃~90℃の昇温で水溶液として反応混合物に有利に添加され、アミンおよびフェノール化合物と反応し得る。
【0024】
マンニッヒ塩基を形成するために、フェノールもしくはスチレン化フェノール、レゾルシノール、スチレン化レゾルシノール、ビスフェノールAもしくはビスフェノールF、特に好ましくはフェノールもしくはスチレン化フェノール、スチレン化レゾルシノールもしくはビスフェノールAが好ましくは使用される。
【0025】
マンニッヒ塩基を形成するために使用されるアルデヒドは、好ましくは脂肪族アルデヒド、特に好ましくはホルムアルデヒドである。水の存在下で加熱することによって分解してホルムアルデヒドを形成するトリオキサンまたはパラホルムアルデヒドは、好ましくはアルデヒド前駆体として使用され得る。
【0026】
マンニッヒ塩基を形成するように、アルデヒドおよびフェノール化合物との反応のために使用されるアミンは、好ましくは、エポキシドに対して反応性である上記アミンのうちの1つであり、好ましくはポリアミンである。アミンは、好ましくは、マンニッヒ塩基が遊離アミノ基を有するように過剰に存在する。
【0027】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明による硬化剤成分中の促進剤として使用されるノボラック樹脂は、以下の式(I)に対応する。
【化1】
式中、
およびRは互いに独立して、Hまたは-CHを表し、
、R、R、およびRは互いに独立して、H、-CH、もしくは脂肪族ラジカル、好ましくは最大15個の炭素原子を有する直鎖の、任意選択的に部分的に不飽和の非分岐炭化水素鎖、またはアルカリールラジカル、好ましくは-Cを表し;
式中、
nは、0~20、好ましくは0~15である。
【0028】
特に好ましくは、ノボラック樹脂は以下の式(II)に対応する。
【化2】
式中、
は、Hを表し;
基は、C~C15アルキルラジカル、好ましくはメチルラジカルまたはtert-ブチルラジカルを表し;
mは、0、1、または2、好ましくは1であり;
nは、0~15、好ましくは0~6である。
【0029】
ノボラック樹脂は、最も特に好ましくは、上の式(II)に対応し、式中、Rは、-CHを表し、mが、1もしくは2であるか、またはRが、tert-ブチルもしくはC~C15アルキルラジカルを表し、mが、1であり、nは、0~15、好ましくは1~15である。
【0030】
本発明による硬化剤成分は、好ましくは、硬化剤成分の有機割合の重量に基づいて、8~25重量%の割合でノボラック樹脂を含有する。
【0031】
エポキシド樹脂に対して反応性であるアミンは、好ましくは、本発明による硬化剤成分中に、20~80重量%、特に好ましくは35~60重量%の割合で含有される。さらに、硬化剤成分は、好ましくは、いずれの場合も、硬化剤成分の有機割合の重量に基づいて、10~70重量%、特に好ましくは30~65重量%の割合で少なくとも1つのマンニッヒ塩基を含有する。
【0032】
さらなる実施形態では、硬化剤成分は、溶媒、さらなるフェノール性促進剤、共促進剤、接着促進剤、および無機充填剤の群からのさらなる添加剤を含む。
【0033】
非反応性希釈剤(溶媒)は、好ましくは、硬化剤成分の総重量に基づいて、最大30重量%、例えば、1~20重量%の量で含有され得る。好適な溶媒の例は、アセトンなどの低級アルキルケトン、ジメチルアセトアミドなどのジ低級アルキル低級アルカノイルアミド、キシレンまたはトルエンなどの低級アルキルベンゼン、フタル酸エステルまたはパラフィンである。硬化剤成分は、好ましくは溶媒を含まない。
【0034】
さらなるフェノール性促進剤は、好ましくは、サリチル酸、スチレン化フェノールおよびカルダノール、ならびにそれらの混合物から選択される。これらは、硬化剤成分の総重量に基づいて、0~10重量%の割合で硬化剤成分中に存在し得る。
【0035】
例えば、ベンゼンアルコール、三級アミン、イミダゾールもしくは三級アミノフェノール、オルガノホスフィン、リン酸エステルなどのルイス塩基もしくは酸、またはそれらの2つ以上の混合物を共促進剤として使用することができる。共促進剤はまた、エポキシド樹脂と適合性がある場合、エポキシド樹脂成分(A)中に存在し得る。
【0036】
共促進剤は、好ましくは、硬化剤組成物の総重量に基づいて、0.001~5重量%の重量割合で硬化剤組成物中に含有される。
【0037】
好適な共促進剤の例は、特に、トリス-2,4,6-ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノ)フェノール、およびビス[(ジメチルアミノ)メチル]フェノールである。好適な共促進剤混合物は、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、およびビス(ジメチルアミノメチル)フェノールを含有する。この種の混合物は、例えば、Ancamine(登録商標)K54(ベルギーのAirProducts)として市販されている。
【0038】
接着促進剤を使用することにより、ボアホール壁とモルタル組成物との架橋が改善され、それにより、硬化状態での接着が増加する。好適な接着促進剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、および3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのさらなる反応性有機基で官能化されたシランの群から選択される。特に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AMMO)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(AMEO)、2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(DAMO)、およびトリメトキシシリルプロピルジエチレンテトラミン(TRIAMO)が接着促進剤として好ましい。
【0039】
接着促進剤は、硬化剤成分の総重量に基づいて、最大10重量%、好ましくは0.1~5重量%の量で含有され得る。
【0040】
無機充填剤、特に、ポルトランドセメントもしくはアルミナセメントなどのセメントおよびその他の水硬性無機物質、石英、ガラス、コランダム、磁器、陶器、バライト、ライトスパー、石膏、タルク、および/またはチョーク、ならびにそれらの混合物を充填剤として使用することができる。さらに、ヒュームドシリカなどの増粘剤を無機充填剤として使用することもできる。無機充填剤は、砂、細粉、または成形体の形態、好ましくは繊維またはボールの形態で添加され得る。充填剤はまた、多成分モルタル組成物の1つまたはすべての成分中に存在し得る。
【0041】
充填剤の割合は、硬化剤成分の総重量に基づいて、好ましくは0~75重量%、例えば10~75重量%、好ましくは15~75重量%、より好ましくは20~50重量%、さらにより好ましくは25~40重量%である。
【0042】
本発明はまた、多成分エポキシド樹脂組成物、好ましくは、少なくとも1つの硬化性エポキシド樹脂を含有するエポキシド樹脂成分(A)と、上に記載されるような少なくとも1つの硬化剤成分(B)と、を含む2成分エポキシド樹脂組成物に関する。
【0043】
多成分エポキシド樹脂組成物は、好ましくは、建設目的に使用される。「建設目的」という表現は、コンクリート/コンクリート、鋼/コンクリート、もしくは鋼/鋼、または他の鉱物材料との上記材料のうちの1つの構造的接着、建築物の繊維強化ポリマーによる強化用途、コンクリート、鋼、もしくは他の鉱物材料製の表面の化学的留め付け、特に建設要素、およびアンカーロッド、アンカーボルト、(ネジ山付き)ロッド、(ネジ山付き)スリーブ、強化バー、ネジなどのような、(強化)コンクリート、レンガ、その他の鉱物材料、金属(例えば、鋼)、セラミック、プラスチック、ガラス、および木材などのさまざまな基材のボアホール内でのアンカー固定手段の化学的留め付けを指す。最も特に好ましくは、本発明によるエポキシド樹脂組成物は、アンカー固定手段を化学的に留め付けるために使用される。
【0044】
エポキシド樹脂成分(A)中の硬化性エポキシドとして、当業者に知られており、この目的のために市販されている複数の化合物は、分子当たり平均して2つ以上のエポキシド基、好ましくは2つのエポキシド基を含有すると考慮される。これらのエポキシド樹脂は、飽和および不飽和の両方、ならびに脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式であり得、ヒドロキシル基も有し得る。それらはまた、混合または反応条件下で破壊的な二次反応を引き起こさない置換基、例えば、アルキルまたはアリール置換基、エーテル基などを含有し得る。本発明の文脈では、三量体および四量体エポキシドも好適である。
【0045】
エポキシド樹脂は、好ましくは、多価アルコール、特にビスフェノールおよびノボラックなどの多価フェノールから誘導されたグリシジルエーテル、特に、平均1.5以上、特に2以上、例えば、2~10のグリシジル基官能性を有するものである。
【0046】
エポキシド樹脂は、120~2000q/EQ、好ましくは140~400、特に155~195、例えば、165~185のエポキシ当量(EEW)を有し得る。複数のエポキシド樹脂の混合物を使用することもできる。
【0047】
エポキシド樹脂を調製するために使用される多価フェノールの例は、レゾルシノール、ヒドロキノン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)、ジヒドロキシフェニルメタンの異性体混合物(ビスフェノールF)、テトラブロモビスフェノールA、ノボラック、4,4’-ジヒドロキシフェニルシクロヘキサン、および4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルプロパンである。
【0048】
エポキシド樹脂は、好ましくは、ビスフェノールAもしくはビスフェノールF、またはそれらの混合物のジグリシジルエーテルである。180~190/g/EQのEEWを有するビスフェノールAおよび/またはFに基づく液体ジグリシジルエーテルが特に好ましくは使用される。
【0049】
さらなる例は、Mn≦2000g/モルの平均分子量を有する、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂、および/またはビスフェノールF-エピクロロヒドリン樹脂である。
【0050】
エポキシド樹脂の割合は、樹脂成分(A)の総重量に基づいて、0~100重量%、好ましくは10~70重量%、特に好ましくは30~60重量%である。
【0051】
エポキシド樹脂に加えて、エポキシド樹脂成分(A)は、任意選択的に、少なくとも1つの反応性希釈剤を含有し得る。芳香族基を含有するエポキシド基よりも低い粘度を有する脂肪族、脂環式、または芳香族のモノ-または特に多価アルコールのグリシジルエーテルが反応性希釈剤として使用される。反応性希釈剤の例は、モノグリシジルエーテル、例えば、o-クレジルグリシジルエーテル、ならびに1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、およびヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどの少なくとも2つのエポキシド官能性を有するグリシジルエーテル、ならびにグリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテル、もしくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTGE)などのトリ-もしくはより高次のグリシジルエーテルである。これらの反応性希釈剤のうちの2つ以上の混合物、好ましくはトリグリシジルエーテルを含有する混合物、特に好ましくは1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)およびトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTGE)の混合物を使用することもできる。
【0052】
反応性希釈剤は、好ましくは、樹脂成分(A)の総重量に基づいて、0~60重量%、特に1~20重量%の量で存在する。
【0053】
多成分モルタル組成物の総重量中のエポキシド成分(A)の割合は、好ましくは5~90重量%、特に20~80重量%、30~70重量%、または40~60重量%である。
【0054】
好適なエポキシド樹脂および反応性希釈剤はまた、Michael Dornbusch,Ulrich Christ and Rob Rasing,「Epoxidharze」,Vincentz Network GmbH&Co.KG(2015),ISBN13:9783866308770の標準参照に見つけることができる。これらの化合物は、参照により本明細書に含まれる。さらに、エポキシド樹脂成分(A)は、硬化剤組成物について既に記載されるように、従来の添加剤、特に接着促進剤および充填剤を含有し得る。
【0055】
接着促進剤は、エポキシド樹脂成分(A)の総重量に基づいて、最大10重量%、好ましくは0.1~5重量%の量で含有され得る。
【0056】
充填剤の割合は、エポキシド樹脂組成物(A)の総重量に基づいて、好ましくは0~75重量%、例えば10~75重量%、好ましくは15~75重量%、より好ましくは20~50重量%、さらにより好ましくは25~40重量%である。
【0057】
多成分エポキシド樹脂組成物へのさらなる考えられる添加剤はまた、任意選択的に有機的に後処理されたヒュームドシリカ、ベントナイト、アルキル-およびメチルセルロース、ならびにヒマシ油誘導体などのチキソトロープ剤、フタル酸エステルもしくはセバシン酸エステルなどの可塑剤、安定剤、帯電防止剤、増粘剤、柔軟剤、硬化触媒、レオロジー助剤、湿潤剤、例えば、混合時の改善された制御のための成分の異なる染色のための染料もしくは顔料などの着色添加剤、ならびに湿潤剤、減感剤、分散剤、および反応速度の他の制御剤、またはそれらの2つ以上の混合物である。
【0058】
多成分エポキシド樹脂組成物は、好ましくは、反応を防止するために、モルタル組成物のエポキシド樹脂成分(A)と硬化剤成分(B)とが別々に配置される2つ以上の別個のチャンバを備えることを特徴とする、カートリッジまたはフィルムポーチ内に存在する。
【0059】
意図した使用のために、エポキシド樹脂成分(A)と硬化剤成分(B)とは別々のチャンバから吐出され、好適なデバイス、例えば、静的混合器または溶解器内で混合される。次いで、エポキシド樹脂成分(A)と硬化剤成分(B)との混合物を、既知の注入デバイスによって、以前に清浄化したボアホールに導入する。次いで、固定する成分をモルタル組成物に挿入して、位置合わせする。硬化剤成分(B)の反応性構成物は、エポキシド樹脂組成物が所望の期間内、好ましくは数分または数時間以内に環境条件下で硬化するように、重付加により樹脂成分(A)のエポキシドと反応する。
【0060】
成分AおよびBは、好ましくは、EEWおよびAHEW値に応じてバランスのとれた化学量論が得られる比率で混合される。
【0061】
AHEW値(アミン水素当量、H当量)は、1モルの反応性Hを含有する硬化剤成分の量を提供する。AHEWは、使用される反応物、および反応物から計算される原材料の既知のH当量からの反応混合物の配合に基づいて、当業者に既知の方法で判定される。
【0062】
メタ-キシリレンジアミンの例(Mw=136g/モル、官能性=4eq/モル)では、AHEWは、例として次のように計算される。
【数1】
【0063】
EEW(エポキシド当量-エポキシド当量値)は、概して、いずれの場合でも使用されるエポキシド樹脂成分の製造業者によって提供されるか、または既知の方法に従って計算される。EEWは、1モルのエポキシド基を含有するエポキシド樹脂のグラム単位の量を提供する。
【0064】
実験的に、AHEWを、エポキシド樹脂(既知のEEWを含む)とアミン成分との混合物からガラス転移温度(T)を判定することによって得た。この場合、エポキシド樹脂/アミン混合物のガラス転移温は、異なる比率で判定した。サンプルを-20K/分の加熱速度で21℃から-70℃に冷却し、第1の加熱サイクルで250℃(加熱速度10K/分)に加熱し、次いで、-70℃に再冷却し(加熱速度-20K/分)、最後のステップで200℃に加熱した(20K/分)。第2の加熱サイクルで最高のガラス転移温度(「T2」)を有する混合物は、エポキシド樹脂とアミンとの最適な比率を有する。AHEW値は、既知のEEWおよび最適なエポキシド樹脂/アミン比率から計算され得る。
【0065】
例:EEW=158g/モル
最大T2を有するアミン/エポキシド樹脂混合物:4.65gのエポキシド樹脂を含む1gのアミン
【数2】
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明のさらなる利点は、好ましい実施例の以下の説明に見出すことができるが、決して限定するものとして理解されるものではない。
【0067】
マンニッヒ塩基の調製
一般的な調製指示
マンニッヒ塩基は、以下で指定されるように、それ自体が既知の方法に従って調製することができる。
2モルの1つ以上のアミンを、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を有する250mlの3つ口フラスコ内に準備する。準備されたアミンを、攪拌により約1モルのフェノールまたはスチレン化フェノールと混合する。混合物を約80℃に加熱する。次いで、激しく攪拌しながら、約0.7モルのホルムアルデヒドを水中に37%ホルムアルデヒド水溶液として約45分間滴下で添加する。ホルムアルデヒドの添加が完了した後、反応混合物を約105℃に再加熱し、反応混合物をこの温度で約120分間保持する。次いで、好適な温度(例えば、約110℃)で真空を増加させながら水を留去する。圧力が十分に(例えば、約50mbarまで)低減したら、反応混合物から残留水を除去するために、温度をさらに約130℃に増加させて、次いで、この温度でしばらく、例えば、約60分間保持することができる。
【0068】
マンニッヒ塩基MBS2の合成
220g(0.91モル)のNovares LS 500(ドイツのRutgers Novares GmbHからのスチレン化フェノール、平均モル質量243g/モル)を、KPG攪拌機および内部温度計を有する1Lの3つ口フラスコ内で190.4g(221ml、1.64モル、1.8eqに対応)の1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンと混合して、反応混合物を80℃(内部温度)に加熱する。続いて、115ml(1.46モル、1.6eq)のホルムアルデヒド(37%;安定剤として10~15%のMeOH、d=1.09g/cm)を滴下で注意深く添加する。ホルムアルデヒドの添加中、反応混合物の温度は90℃を超えてはならない(発熱反応)。ホルムアルデヒド溶液の添加が完了した後、反応混合物を85~90℃でさらに45分間撹拌する。次いで、混合物を100℃に加熱し、この温度で1時間保持する。続いて、約140℃で、得られた水と過剰なホルムアルデヒドとを3時間、強い流れの窒素で吹き飛ばす。生成物は室温まで冷却すると固化する。
【0069】
マンニッヒ塩基の収量は、456gの粗生成物である。
【0070】
マンニッヒ塩基MBS1の合成
504g(2.07モル)のNovares LS 500を、KPG攪拌機および内部温度計を有する2Lの3つ口フラスコ内で601ml(4.6モル;2.2eq;d=1.032g/cm)のm-キシリレンジアミンと混合して、反応混合物を80℃(内部温度)に加熱する。続いて、327ml(4.15モル)のホルムアルデヒド(37%;安定剤として10~15%のMeOH、d=1.09g/cm)を約1.5時間緩徐に添加する。ホルムアルデヒドの添加中、反応混合物の温度は90℃を超えてはならない(発熱反応)。ホルムアルデヒド溶液の添加が完了した後、反応混合物を85~95℃でさらに2時間撹拌する。次いで、混合物を100℃に加熱し、この温度で約1時間保持する。続いて、約140℃で、得られた水と過剰なホルムアルデヒドとを3時間、強い流れの窒素で吹き飛ばす。生成物は室温まで冷却すると固化する。
【0071】
マンニッヒ塩基の収量は、1.13kgの粗生成物である。
【0072】
実施例1~4、ならびに比較例1および2
温度測定による反応速度の判定
硬化反応の温度曲線にわたって硬化剤成分とエポキシド樹脂成分との混合物の硬化を達成するために、異なる割合のノボラック樹脂と異なるノボラック樹脂とを有する硬化剤成分を調製した。この場合、硬化反応の温度曲線は、ノボラック樹脂および硬化剤成分中のノボラック樹脂の割合を変更することにより広範囲で調整され得ることがわかった。
【0073】
以下の実施例の量の仕様は、重量パーセント(重量%)で表す。
【0074】
エポキシド樹脂成分Aを調製するために、以下の表に指定された構成物をスピード混合器内で混合した。混合物のエポキシド当量EEWは、158g/EQであった。
【0075】
加えて、以下の表2に指定されるように構成された異なる硬化剤成分Bを調製した。上に記載される合成指示に従って得られたマンニッヒ塩基MBS2およびm-キシリレンジアミン(mXDA;製造業者;ドイツのAldrich)をアミン硬化剤として使用した。ドイツのDIC Europeからの商品名Phenolite TD-2093 Yで入手可能なフェノールノボラック樹脂を促進剤として使用した。
【表1】
【表2】
【0076】
エポキシド成分Aを、いずれの場合も、スピード混合器内で、表2に指定された重量比で硬化剤成分Bのうちの1つと混合した。混合物を20mlのロールエッジガラスに注ぎ込んだ。温度センサをロールエッジガラスの中央に留置し、混合物の温度変化を記録した(デバイス:Yokogawa、DAQ station、モデル:DX1006-3-4-2)。経時的な温度変化は、混合物の硬化の測定として役立つ。硬化が加速される場合、最高温度をより短い時間にシフトさせる。さらに、ほとんどの場合、最高温度も高くなる。温度が10K増加した後の時間t+10K、到達した最高温度Tmax、および最高温度に到達した後の時間tTmaxを測定する。
【0077】
硬化反応中に異なる硬化剤成分Bで達成された温度変化の結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0078】
異なる硬化剤成分Bの硬化反応温度曲線の結果は、比較例1の組成物では10Kの温度増加がないことを示している。約4.5時間後に測定される最高温度は、わずか29℃である。比較例2の硬化剤成分Bは、約1.5時間後に10Kの温度増加を生み出し、約2.65時間後に130℃の最高温度を測定する。
【0079】
実施例1~4による硬化剤成分Bは、19~74分後に10Kの温度増加を達成し、最高温度は138~190℃である。したがって、最高温度は比較例の最高温度を大幅に上回っている。特に、最高温度は、39分~1.65時間の間に既に到達しており、ひいては、比較例2よりも少なくとも1時間早い。したがって、ノボラック樹脂を添加すると、反応、ひいては、硬化が大幅に加速される。加速は、フェノールノボラックの濃度に依存し(より高い濃度で有意な加速を達成することが可能である)、使用するフェノールノボラックのタイプに依存する。
【0080】
実施例5および6、ならびに比較例3
温度測定による反応速度の判定
エポキシド樹脂成分Aを調製するために、上の表1に指定された構成物をスピード混合器内で混合した。混合物のエポキシド当量EEWは、158g/EQであった。
【0081】
加えて、以下の表4に指定されるように構成された異なる硬化剤成分を調製した。ビスフェノールAおよびアミンmXDAに基づき、オランダのMomentive Specialty Chemicalsから商品名Epikure 132で入手可能なマンニッヒ塩基、ならびにmXDA(製造業者:ドイツのAldrich)およびItochu Deutschlandによる1,3-シクロヘキサンジメタンアミン(1,3-BAC)をアミン硬化剤として使用した。ドイツのDIC Europeからの商品名Phenolite TD-2131で入手可能なフェノールノボラック樹脂を促進剤として使用した。
【表4】
【0082】
エポキシド成分Aを、いずれの場合も、表2に指定された重量比で硬化剤成分Bのうちの1つと混合した。混合物を20mlのロールエッジガラスに注ぎ込んだ。温度センサをロールエッジガラスの中央に留置し、混合物の温度変化を記録した(デバイス:Yokogawa、DAQ station、モデル:DX1006-3-4-2)。経時的な温度変化は、混合物の硬化の測定として役立つ。硬化が加速される場合、最高温度をより短い時間にシフトさせる。さらに、ほとんどの場合、最高温度も高くなる。温度が10K増加した後の時間t+10K、到達した最高温度Tmax、および最高温度に到達した後の時間tTmaxを測定する。
【0083】
硬化反応中に異なる硬化剤成分Bで達成された温度変化の結果を以下の表5に示す。
【表5】
【0084】
さらに、本発明による硬化剤成分Bを含む組成物は、比較例3よりも実施例5および6によるより迅速な硬化挙動を示す。10Kの温度増加、および最大温度に到達するまでの時間は共に、比較例よりも短い。実施例5および6の硬化剤成分Bで達成される最高温度は、それぞれ184℃および200℃であり、比較例3の硬化剤成分で達成される最高温度80℃よりも著しく高い。
【0085】
実施例7~10、および比較例4~7
異なる硬化時間後の破壊負荷の判定
エポキシド樹脂成分Aを調製するために、以下の表6に指定された構成物をスピード混合器内で混合した。混合物のエポキシド当量EEWは、257g/EQであった。
【表6】
【0086】
異なる硬化剤成分Bを調製するために、以下の表7に指定された構成物を使用し、以下の表8に指定された組成物中で一緒に混合した。mXDA-レゾルシノール系マンニッヒ塩基は、欧州特許第0645408号の合成指示と同様に合成した。mXDA中に溶解したmXDA-レゾルシノール系マンニッヒ塩基を硬化剤として使用した。mXDAを含まない含有量は60%であった。
【表7】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【0087】
硬化性エポキシド樹脂組成物を調製するために、成分AおよびBを、スピード混合器内で、EEWおよびAHEW値に応じてバランスのとれた化学量論が得られる比率で混合する。混合物を1Lのカートリッジにできるだけ泡なしで注ぎ込み、すぐにボアホールへと導入する。
【0088】
ETAG 001 PART 5による、ネジ山付きロッドM12を使用した抽出試験では、以下のプロセスを実行する。
【0089】
まず、ハンマードリルを使用して、水平コンクリート試験ピース(コンクリートタイプC20/C25)にボアホール(直径14mm;深さ72mm)を作製する。ボアホールは、圧縮空気(2×6bar)、ワイヤブラシ(2×)、そして再び圧縮空気(2×6bar)によって清浄化する。次いで、留め付けのために、ボアホールを、ボアの底部から3分の2だけ、試験する関連の硬化性エポキシド樹脂組成物で充填する。各ボアホールにネジ山付きロッドを手動で押し込む。過剰なモルタルは、ヘラで除去する。特定の試験のために指定された時間の後、ネジ山付きロッドを破損するまで引っ張り、破損負荷を測定する。
【表9】
【0090】
実施例7~14による硬化剤成分を含む本発明によるエポキシド樹脂組成物は、比較例4~7による硬化剤成分を含むエポキシド樹脂組成物よりも実質的に迅速な硬化を示す。本発明による硬化剤成分を使用して生み出されたモルタル組成物は、わずか6時間後に負荷に供することができる。これにより、次の加工ステップまでの待機時間を大幅に低減し、後続の加工作業をはるかに早く実行することを可能にすることが可能になる。