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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】吸収性物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A61F13/15 390
A61F13/15 350
A61F13/15 352
A61F13/15 355A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017120199
(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公開番号】P2019000584
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】萩田 浩己
(72)【発明者】
【氏名】田代 文大
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-514349(JP,A)
【文献】特表2014-531268(JP,A)
【文献】特許第6089155(JP,B1)
【文献】特開2007-282972(JP,A)
【文献】特開2003-145485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更することにより、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記切り換え工程においては、
前記複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の厚み又は目付が異なっており、
前記第二製造条件は、前記吸収体をプレスするプレス条件であることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項2】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更することにより、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記切り換え工程においては、
前記複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の厚みが異なっており、
前記第二製造条件は、前記吸収体にエンボスを形成するエンボス形成条件であることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項3】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更することにより、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記切り換え工程においては、
前記複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記吸収性物品は弾性部材を備え、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、前記弾性部材の応力が異なっており、
前記第二製造条件は、前記弾性部材に接着剤を塗布する接着剤塗布条件であることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項4】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更することにより、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記切り換え工程においては、
前記複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記吸収性物品を製造する際には、前記材料としてシート状資材を該シート状資材が巻かれた資材コイルから繰り出して搬送し、
前記第二製造条件は、前記シート状資材のテンション条件であることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項5】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更することにより、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記切り換え工程においては、
前記複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記吸収性物品を製造する際には、吸収体の検査を検査部により実行し、
前記第二製造条件は、前記検査部による検査条件であることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項6】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の厚みが異なっており、
前記切り換え工程において前記吸収体をプレスするプレス条件を第二製造条件として変更するか否かを、前記厚みの異なり度合いに応じて決定する決定工程を有し、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更すると決定した場合には、
前記切り換え工程において、
第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で前記第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更しないと決定した場合には、
前記切り換え工程において、前記第二製造条件を変更せずに前記第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換えることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項7】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の厚みが異なっており、
前記切り換え工程において前記吸収体にエンボスを形成するエンボス形成条件を第二製造条件として変更するか否かを、前記厚みの異なり度合いに応じて決定する決定工程を有し、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更すると決定した場合には、
前記切り換え工程において、
第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で前記第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更しないと決定した場合には、
前記切り換え工程において、前記第二製造条件を変更せずに前記第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換えることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項8】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の目付が異なっており、
前記切り換え工程において前記吸収体をプレスするプレス条件を第二製造条件として変更するか否かを、前記目付の異なり度合いに応じて決定する決定工程を有し、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更すると決定した場合には、
前記切り換え工程において、
第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で前記第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更しないと決定した場合には、
前記切り換え工程において、前記第二製造条件を変更せずに前記第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換えることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項9】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の目付が異なっており、
前記切り換え工程において前記吸収体にエンボスを形成するエンボス形成条件を第二製造条件として変更するか否かを、前記目付の異なり度合いに応じて決定する決定工程を有し、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更すると決定した場合には、
前記切り換え工程において、
第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で前記第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更しないと決定した場合には、
前記切り換え工程において、前記第二製造条件を変更せずに前記第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換えることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項10】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記吸収性物品は弾性部材を備え、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、前記弾性部材の応力が異なっており、
前記切り換え工程において前記弾性部材に接着剤を塗布する接着剤塗布条件を第二製造条件として変更するか否かを、前記応力の異なり度合いに応じて決定する決定工程を有し、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更すると決定した場合には、
前記切り換え工程において、
第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で前記第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更しないと決定した場合には、
前記切り換え工程において、前記第二製造条件を変更せずに前記第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換えることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項11】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記吸収性物品を製造する際には、前記材料としてシート状資材を該シート状資材が巻かれた資材コイルから繰り出して搬送し、
前記切り換え工程において前記シート状資材の材質、幅、厚み、目付の少なくとも一つを第一製造条件として変更し、
前記切り換え工程において前記シート状資材のテンション条件を第二製造条件として変更するか否かを、前記材質、幅、厚み、目付の少なくとも一つの変更度合いに応じて決定する決定工程を有し、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更すると決定した場合には、
前記切り換え工程において、
前記第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で前記第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更しないと決定した場合には、
前記切り換え工程において、前記第二製造条件を変更せずに前記第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換えることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【請求項12】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記吸収性物品を製造する際には、吸収体の検査を検査部により実行し、
前記吸収体は、パルプ繊維を有し、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、前記パルプ繊維の目付が異なっており、
前記切り換え工程において前記検査部による検査条件を第二製造条件として変更するか否かを、前記パルプ繊維の目付の異なり度合いに応じて決定する決定工程を有し、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更すると決定した場合には、
前記切り換え工程において、
第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で前記第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記決定工程において前記第二製造条件を変更しないと決定した場合には、
前記切り換え工程において、前記第二製造条件を変更せずに前記第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換えることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら吸収性物品を製造する吸収性物品製造方法は既によく知られている。かかる吸収性物品としては、例えば、展開型やパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン等を挙げることができる。
【0003】
ところで、製造ラインにおいて吸収性物品を製造しているときに、製造する吸収性物品の仕様を客先の依頼等に基づいて変更する場合がある。例えば、客先から出来合い品(既製品)よりも吸収体の厚みが少し大きい吸収性物品の注文(依頼)が入った場合に、出来合い品(第一仕様の吸収性物品)の製造から、出来合い品からのマイナーチェンジ版である注文品(第二仕様の吸収性物品)の製造へ製造ラインを切り換えるケースを挙げることができる。
【0004】
そして、このような切り換えの際には、搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/191438号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる切り換えを行う際に、従来は、製造ラインを一度ストップさせてから(つまり、材料の搬送を一旦停止してから)、切り換えを行っていた。しかしながら、かかる方法においては、生産性が低下する問題が発生することとなる。そこで、製造ラインをストップさせることなく(つまり、材料の搬送を維持した状態で)、切り換えを行うことが考えられる。しかしながら、このような場合には、第一仕様と第二仕様とが混在した吸収性物品(不良品)が生産されてしまう場合があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、吸収性物品の不良品の数を減少させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更することにより、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記切り換え工程においては、
前記複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせ、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の厚み又は目付が異なっており、
前記第二製造条件は、前記吸収体をプレスするプレス条件であることを特徴とする吸収性物品製造方法である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸収性物品の不良品の数を減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】吸収性物品1の製造ラインを示した模式図である。
図2】比較例を説明するための説明模式図である。
図3】第一実施形態に係る製造ラインを示した模式図である。
図4】第一実施形態に係るフローチャートである。
図5】第一仕様の吸収性物品1と第二仕様の吸収性物品1に印刷されるプリントを示した概念図である。
図6】第二実施形態に係る製造ラインを示した模式図である。
図7】第二実施形態に係るフローチャートである。
図8】第三実施形態に係る製造ラインを示した模式図である。
図9】第三実施形態に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
材料を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品を製造する製造工程と、
前記材料の搬送を維持した状態で、前記搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更することにより、前記第一仕様の吸収性物品の製造から第二仕様の吸収性物品の製造へ切り換える切り換え工程と、を有する吸収性物品製造方法であって、
前記切り換え工程においては、
前記複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、前記搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、
前記第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせることを特徴とする吸収性物品製造方法。
【0014】
このような吸収性物品製造方法によれば、吸収性物品の不良品の数を減少させることが可能となる。
【0015】
かかる吸収性物品製造方法であって、
前記切り換え工程においては、
前記複数種類の製造条件を、前記搬送経路における上流側から順番に変更することが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品製造方法によれば、吸収性物品の不良品の数をより適切に減少させることが可能となる。
【0017】
かかる吸収性物品製造方法であって、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の厚みが異なっており、
前記切り換え工程において前記吸収体をプレスするプレス条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記厚みの異なり度合いに応じて決定することが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品製造方法によれば、吸収性物品の仕様変更があると常にプレス条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等にはプレス条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、プレス条件を変更するという決定になったときには、変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0019】
かかる吸収性物品製造方法であって、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の厚みが異なっており、
前記切り換え工程において前記吸収体にエンボスを形成するエンボス形成条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記厚みの異なり度合いに応じて決定することが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品製造方法によれば、吸収性物品の仕様変更があると常にエンボス形成条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等にはエンボス形成条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、エンボス形成条件を変更するという決定になったときには、変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0021】
かかる吸収性物品製造方法であって、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の目付が異なっており、
前記切り換え工程において前記吸収体をプレスするプレス条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記目付の異なり度合いに応じて決定することが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品製造方法によれば、吸収性物品の仕様変更があると常にプレス条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等にはプレス条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、プレス条件を変更するという決定になったときには、変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0023】
かかる吸収性物品製造方法であって、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、吸収体の目付が異なっており、
前記切り換え工程において前記吸収体にエンボスを形成するエンボス形成条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記目付の異なり度合いに応じて決定することが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品製造方法によれば、吸収性物品の仕様変更があると常にエンボス形成条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等にはエンボス形成条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、エンボス形成条件を変更するという決定になったときには、変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0025】
かかる吸収性物品製造方法であって、
前記吸収性物品は弾性部材を備え、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、前記弾性部材の応力が異なっており、
前記切り換え工程において前記弾性部材に接着剤を塗布する接着剤塗布条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記応力の異なり度合いに応じて決定することが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品製造方法によれば、吸収性物品の仕様変更があると常に接着剤塗布条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等には接着剤塗布条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、接着剤塗布条件を変更するという決定になったときには、変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0027】
かかる吸収性物品製造方法であって、
前記吸収性物品を製造する際には、前記材料としてシート状資材を該シート状資材が巻かれた資材コイルから繰り出して搬送し、
前記切り換え工程において前記シート状資材の材質、幅、厚み、目付の少なくとも一つを前記製造条件として変更し、
前記切り換え工程において前記シート状資材のテンション条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記材質、幅、厚み、目付の少なくとも一つの変更度合いに応じて決定することが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品製造方法によれば、シート状資材の材質、幅、厚み、目付の少なくとも一つに変更があると常にテンション条件の変更を行うのではなく、変更度合いが微小なとき等にはテンション条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、テンション条件を変更するという決定になったときには、変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0029】
かかる吸収性物品製造方法であって、
前記吸収性物品を製造する際には、吸収体の検査を検査部により実行し、
前記吸収体は、パルプ繊維を有し、
前記第一仕様の吸収性物品と前記第二仕様の吸収性物品とでは、前記パルプ繊維の目付が異なっており、
前記切り換え工程において前記検査部による検査条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記パルプ繊維の目付の異なり度合いに応じて決定することが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品製造方法によれば、吸収性物品の仕様変更があると常に検査条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等には検査条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、検査条件を変更するという決定になったときには、変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0031】
かかる吸収性物品製造方法であって、
前記吸収性物品には、プリントが形成されており、
前記切り換え工程において、共通する表示を維持しつつ仕様に係る表示を変更するように、前記プリントの形成条件を前記製造条件として変更することが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品製造方法によれば、プリントの形成条件の変更を最小限に留めつつ、仕様が変更されたことを適切にユーザーに伝達することが可能となる。
【0033】
===本実施の形態に係る吸収性物品製造方法について===
本実施の形態に係る吸収性物品製造方法は、吸収性物品1の吸収性物品製造装置10(製造ライン)で使用される。すなわち、本実施の形態に係る吸収性物品製造方法は、吸収性物品1の製造に供される。
【0034】
吸収性物品1の例としては、展開型やパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン等を挙げることができるが、着用対象者の排泄液を吸収する物品であればどのようなものでも構わない。
【0035】
吸収性物品1は、排泄液を吸収する吸収体2と、吸収体の厚さ方向の肌側に配された液透過性のトップシートと、吸収体の非肌側に配されて非肌側への排泄液の漏れを防ぐ液不透過性のバックシートと、弾性部材の一例としての糸ゴム9を有している。そして、バックシートは、バックフィルムとバック不織布とを備え、双方が重なることにより形成されている。
【0036】
吸収体2は、液体吸収性素材を成形した吸収性コアを有する。液体吸収性素材としては、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー(SAP)を例示できて、ここでは、これらが使用されている。トップシートやバック不織布の素材例としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂繊維を含有する不織布を挙げることができ、バックフィルムについては、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルムを例示できる。
【0037】
図1は、吸収性物品1の製造ラインを示した模式図である。
トップシートの材料となるトップシート資材3は、シート状資材であり、このトップシート資材3の製造ラインへの搬入は、トップシート資材3がコイル状に巻かれた資材コイル3aの形態でなされる。すなわち、トップシート資材3が巻かれた資材コイル3aからトップシート資材3が繰り出され、繰り出されたトップシート資材3は搬送方向(トップシート資材3の連続方向)に不図示の搬送機構によって搬送される。そして、トップシート資材3は、後述するバックシート資材5と合流する合流位置A1へと至ることとなる。
【0038】
また、同様に、バックシート(バックフィルム及びバック不織布)の材料となるバックフィルム資材6及びバック不織布資材7は、共にシート状資材であり、このバックフィルム資材6及びバック不織布資材7の製造ラインへの搬入は、バックフィルム資材6及びバック不織布資材7がそれぞれコイル状に巻かれた資材コイル6a,7aの形態でなされる。すなわち、バックフィルム資材6及びバック不織布資材7がそれぞれ巻かれた資材コイル6a,7aから、バックフィルム資材6及びバック不織布資材7がそれぞれ繰り出され、繰り出されたバックフィルム資材6及びバック不織布資材7はそれぞれ搬送方向(バックフィルム資材6及びバック不織布資材7の連続方向)に不図示の搬送機構により搬送される。そして、バックフィルム資材6及びバック不織布資材7は、やがて合流位置A2にて合流し、接着剤(本実施の形態においては、ホットメルト接着剤)により接合一体化され、バックシート資材5が生成されることとなる。
【0039】
なお、ホットメルト接着剤は、バックフィルム資材6及びバック不織布資材7のうちの後者に、合流位置A2の手前で塗布される。すなわち、接着剤塗布装置(第一塗布装置12とする)が、合流位置A2よりも搬送方向における上流側で、バック不織布資材7にホットメルト接着剤を塗布するようになっている。
【0040】
また、本実施の形態においては、吸収性物品1にプリントが形成されており、このプリントは、インクジェット装置31によって、バックフィルム資材6に印刷される。すなわち、インクジェット装置31が、合流位置A2よりも搬送方向における上流側で、バックフィルム資材6にプリントを印刷するようになっている。
【0041】
生成されたバックシート資材5は、搬送方向(バックシート資材5の連続方向)に不図示の搬送機構により搬送され、やがて、トップシート資材3と合流する合流位置A1へと至ることとなる。
【0042】
また、吸収体2(材料であり、かつ、製品の一部である)は、パルプ繊維と高吸収性ポリマー(SAP)とを単票状に成形することにより生成される。吸収体2は、回転ドラム21aと散布ダクト(不図示)を有する積繊ドラム装置21により生成される。回転ドラム21aの外周面には、回転方向に製品ピッチD1で複数の凹部が形成され、散布ダクトにより当該外周面(凹部)に向けてパルプ繊維と高吸収性ポリマー(SAP)が散布される。そして、凹部に、パルプ繊維と高吸収性ポリマー(SAP)が積層されて、これにより凹部に吸収体2が生成される。凹部内の吸収体2は、ベルトコンベア23へ引き渡され、その後、吸収体2は、ベルトコンベア23によって製品ピッチD1で並んだ状態で搬送方向に搬送される。
【0043】
そして、吸収体2は、やがて吸収体プレス装置25に至り、当該吸収体プレス装置25によりプレスされる。吸収体プレス装置25は、互いに対向する二つのプレスローラー25aを備え、当該プレスローラー25aの間の隙間(クリアランス)の大きさが管理されている。そして、吸収体2が、この隙間(クリアランス)を通過することによりプレス(圧縮)されることとなる。
【0044】
吸収体プレス装置25を通過した吸収体2は、さらに搬送方向に搬送され、やがてエンボス形成装置27に至る。そして、当該エンボス形成装置27により、吸収体2にはエンボスが形成される。このエンボスにより、吸収体2における排泄液の広がり度合い等を制御することが可能となる。エンボス形成装置27は、互いに対向する二つのエンボス形成ローラー27aを備えており、これらのエンボス形成ローラー27a間に吸収体2が挟まれることにより、エンボスが吸収体2に形成される。なお、詳しくは後述するが、本実施の形態においては、互いに異なる仕様の吸収性物品1(第一仕様の吸収性物品1及び第二仕様の吸収性物品1)を製造するために、2組(第一仕様用と第二仕様用)のエンボス形成装置27(第一仕様用について第一エンボス形成装置27b、第二仕様用について第二エンボス形成装置27cとする)が用意されている。
【0045】
エンボス形成装置27を通過した吸収体2は、さらに搬送方向に搬送され、やがて、トップシート資材3及びバックシート資材5と合流する合流位置A1に至ることとなる。
【0046】
そして、合流位置A1では、吸収体2、トップシート資材3、及び、バックシート資材5がホットメルト接着剤により接合一体化され、基材シート8が生成されることとなる。
【0047】
なお、ホットメルト接着剤は、トップシート資材3及びバックシート資材5に、合流位置A1の手前で塗布される。すなわち、接着剤塗布装置(第二塗布装置13とする)が、合流位置A1よりも搬送方向における上流側で、トップシート資材3にホットメルト接着剤を塗布し、接着剤塗布装置(第三塗布装置14とする)が、合流位置A1よりも搬送方向における上流側で、バックシート資材5にホットメルト接着剤を塗布するようになっている。
【0048】
また、合流位置A1には、糸ゴム9(材料であり、かつ、製品の一部である)も搬送され、糸ゴム9も、吸収体2、トップシート資材3、及び、バックシート資材5と共に接合一体化される(すなわち、基材シート8には糸ゴム9が含まれる)。糸ゴム9は、糸ゴム9がコイル状に巻かれた保持部(便宜上、糸ゴムコイル9aと呼ぶ)から繰り出され、繰り出された糸ゴム9は搬送方向(糸ゴム9の連続方向)に不図示の搬送機構により搬送される。糸ゴム9には、合流位置A1の手前で、ホットメルト接着剤が塗布される。すなわち、接着剤塗布装置(第四塗布装置15とする)が、合流位置A1よりも搬送方向における上流側で、糸ゴム9にホットメルト接着剤を塗布するようになっている。
【0049】
生成された基材シート8は、さらに搬送方向に搬送され、やがて、エンドカッター29に至る。そして、エンドカッター29により基材シート8が切断され、吸収性物品1が製造される。
【0050】
なお、本実施の形態においては、検査部の一例としての検査カメラ装置33で吸収性物品1(吸収体2)の検査を実行するようになっている。検査カメラ装置33は、エンボス形成装置27よりも下流側かつ合流位置A1よりも上流側の搬送経路において、吸収体2を撮影し、撮影された画像に対し二値化の画像処理を施す。そして、検査カメラ装置33は、黒色部を液体吸収性素材が正常に存在する正常部、白色部を液体吸収性素材が欠損している異常部と判断することにより、吸収性物品1(吸収体2)における不良の有無を判定する。
【0051】
また、本実施の形態においては、シート状資材(トップシート資材3、バックフィルム資材6、バック不織布資材7)のテンション(張力)をコントロールするテンション調整装置35(所謂ダンサーユニット)が、各々のシート状資材に対応させて複数備えられている。すなわち、トップシート資材3のテンション(張力)をコントロールするテンション調整装置35(第一テンション調整装置36とする)が、資材コイル3aの下流側の搬送経路に設けられ、バックフィルム資材6のテンション(張力)をコントロールするテンション調整装置35(第二テンション調整装置37とする)が、資材コイル6aの下流側の搬送経路に設けられ、バック不織布資材7のテンション(張力)をコントロールするテンション調整装置35(第三テンション調整装置38とする)が、資材コイル7aの下流側の搬送経路に設けられており、各々のテンション調整装置35の移動ロール35aがその位置を変えることによりテンション(張力)が調整されるようになっている。
【0052】
<<<本実施の形態に係る切り換え工程について>>>
ところで、製造ライン(吸収性物品製造装置10)において吸収性物品1を製造しているときに、製造する吸収性物品1の仕様を客先の依頼等に基づいて変更する場合がある。例えば、客先から出来合い品(既製品)よりも吸収体2の厚みが少し大きい吸収性物品1の注文(依頼)が入った場合に、出来合い品(第一仕様の吸収性物品1)の製造から、出来合い品からのマイナーチェンジ版である注文品(第二仕様の吸収性物品1)の製造へ製造ライン(吸収性物品製造装置10)を切り換えるケースを挙げることができる。
【0053】
そして、このような切り換えの際には、搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更する場合がある。例えば、液体吸収性素材(パルプ繊維や高吸収性ポリマー(SAP))の量を多くするために積繊ドラム装置21の製造条件(つまり、吸収体材料供給条件)を変更し、かつ、吸収体プレス装置25の製造条件(プレス条件)を変更する(すなわち、クリアランスを広げる)。
【0054】
かかる切り換えを行う際に、従来は、製造ラインを一度ストップさせてから(つまり、材料の搬送を一旦停止してから)、切り換えを行っていた。しかしながら、かかる方法においては、生産性が低下する問題が発生することとなる。そこで、製造ラインをストップさせることなく(つまり、材料の搬送を維持した状態で)、切り換えを行うことが考えられる。しかしながら、このような場合には、以下のような別の問題が生じ得る。
【0055】
当該問題について、図2を用いて説明する。図2は、比較例を説明するための説明模式図である。第一仕様の吸収性物品1を製造する製造工程を実施しているときに、前述した注文(依頼)が入った場合には、材料の搬送を維持した状態で、搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更する。すなわち、位置P1で積繊ドラム装置21の製造条件(吸収体材料供給条件)を変更し、位置P2で吸収体プレス装置25の製造条件(プレス条件)を変更することとなる。
【0056】
しかしながら、このような変更を行うと、符号Xで示した吸収体2は、変更前の吸収体材料供給条件で既に形成され、液体吸収性素材の量については第一仕様の吸収性物品1に対応したものであるにもかかわらず、変更後のプレス条件、すなわち、第二仕様の吸収性物品1に対応したプレス条件でプレスされることとなるため、第一仕様と第二仕様とが混在した吸収性物品1となってしまう(このような吸収性物品1は、不良品となってしまう)。
【0057】
そこで、本実施の形態においては、複数種類の製造条件のうちの第一製造条件(すなわち、吸収体材料供給条件)を、搬送経路における第一位置(すなわち、位置P1)で変更する変更タイミングよりも、第一位置(位置P1)よりも下流側に位置する第二位置(すなわち、位置P2)で第二製造条件(すなわち、プレス条件)を変更する変更タイミングを遅らせる。そして、このことにより、符号Xで示した吸収体2に、変更前の吸収体材料供給条件とプレス条件とを適用することが可能となる。そのため、第一仕様と第二仕様とが混在した吸収性物品1、すなわち、不良品の数を減少させることができる。
【0058】
上記においては、本願発明の主旨を分かり易く説明するために、2種類の製造条件のみを変更する簡易的な例を挙げたが、以下では、より実際の例に則した3つの実施形態(第一実施形態乃至第三実施形態と呼ぶ)を例に挙げて説明する。
【0059】
<第一実施形態について>
図3は、第一実施形態に係る製造ラインを示した模式図である。図4は、第一実施形態に係るフローチャートである。
【0060】
先ず、出来合い品(第一仕様の吸収性物品1)を製造する製造工程を実行しているときに(ステップS1)、出来合い品よりも吸収体2とバックフィルムの厚みが少し大きい吸収性物品1の注文(依頼)が入ったとする。この注文(依頼)は、通常よりも若干多い排泄液に対応可能な商品を想定している。
【0061】
かかる場合には、出来合い品(第一仕様の吸収性物品1)の製造から、出来合い品からのマイナーチェンジ版である注文品(第二仕様の吸収性物品1)の製造へ製造ライン(吸収性物品製造装置10)を切り換えることとなるが、切り替えを実行する前に、幾つかの製造条件について、その製造条件の変更を行うかどうかについて決定する。
【0062】
すなわち、本実施の形態においては、積繊ドラム装置21の製造条件(吸収体材料供給条件)を変更して、液体吸収性素材(パルプ繊維や高吸収性ポリマー(SAP))の量を多くするが、吸収体プレス装置25の製造条件(プレス条件)とエンボス形成装置27の製造条件(エンボス形成条件)については、製造条件(プレス条件、エンボス形成条件)を、吸収体2の厚みの異なり度合い(つまり、第一仕様から第二仕様への変更時に吸収体2の厚みをどれだけ変えるか)に応じて、変えたり変えなかったりする。これは、吸収体2の厚みの異なり度合いが微小(例えば、1割減以上1割増以下)である場合には、製造条件(プレス条件、エンボス形成条件)を変えなくても対応できるからである。ここでは、プレス条件とエンボス形成条件を変更するか否かを、吸収体2の厚みの異なり度合いに応じて決定した結果(ステップS3、ステップS5)、双方とも変更することになったとする。
【0063】
また、シート状資材供給条件(ここでは、バックフィルム資材供給条件)を変更して、バックフィルム資材6を厚みの大きいものに変更するが、かかる際に、バックフィルム資材6のテンション条件(具体的には、テンション値)を、バックフィルム資材6の厚みの変更度合いに応じて、変えたり変えなかったりする。これは、バックフィルム資材6の厚みの変更度合いが微小(例えば、1割減以上1割増以下)である場合には、テンション条件を変えなくてもよいが、変更度合いが大きい場合には、テンション条件を変える必要があるからである。ここでは、テンション条件を変更するか否かを、バックフィルム資材6の厚みの変更度合いに応じて、決定した結果(ステップS7)、変更しないことになったとする。
【0064】
また、本実施の形態においては、吸収性物品1の仕様が第一仕様から第二仕様に変更されると、この仕様変更に応じた前記プリントの変更を行うようになっている。したがって、当該プリントの変更を行うために、インクジェット装置31の製造条件(プリントの形成条件)が変更される。
【0065】
図5は、第一仕様の吸収性物品1と第二仕様の吸収性物品1に印刷されるプリントを示した概念図である。左図が第一仕様に対応したプリントを、右図が第二仕様のプリントを、それぞれ表している。このように、本実施の形態においては、共通する表示(本実施の形態においては、キャラクター絵柄)を維持しつつ仕様に係る表示を変更する(本実施の形態においては、「普通」→「多め」)。そして、このような維持及び変更を実現するように、プリントの形成条件を変更することとなる。
【0066】
以上で説明したように、本実施の形態においては、出来合い品(第一仕様の吸収性物品1)の製造から、注文品(第二仕様の吸収性物品1)の製造へ製造ライン(吸収性物品製造装置10)を切り換える際に、吸収体材料供給条件、プレス条件、エンボス形成条件、バックフィルム資材供給条件、プリント形成条件を変更することとなる。
【0067】
例えば、液体吸収性素材(パルプ繊維や高吸収性ポリマー(SAP))の量が多くなるように吸収体材料供給条件を変更する。
【0068】
また、クリアランスを広げるようにプレス条件を変更する。
【0069】
また、エンボスパターンが厚みの大きい吸収体2に対応したものとなるようにエンボスパターン形成条件を変更する。具体的には、第一仕様用の第一エンボス形成装置27bから第二仕様用の第二エンボス形成装置27cへエンボス形成装置27を切り換えて、エンボスパターンを変更する。なお、かかる場合には、第二エンボス形成装置27cへの切り換えとなるので、エンボス形成条件は、図3の位置P3’ではなく、位置P3で変更されることとなる。
【0070】
また、バックフィルム資材6がより厚い資材となるように、バックフィルム資材供給条件を変更する。具体的には、第二仕様に対応したバックフィルム資材6(より厚いバックフィルム資材6)が巻かれた資材コイル6aを準備し、当該第二仕様に対応したバックフィルム資材6を、搬送中の第一仕様に対応したバックフィルム資材6に、公知の方法で継ぐ(この資材継ぎは、バックフィルム資材6の搬送を止めずに行うことができる)。なお、バックフィルム資材供給条件が変更される位置(図3の位置P4)は、資材が継がれる位置となる。
【0071】
また、図5の右図に示したプリントが形成されるように、プリント形成条件を変更する。
【0072】
そして、かかる変更を行う際には、複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせる。さらに、本実施の形態においては、5つの製造条件について、変更タイミングを下流のものほど後にする。つまり、5つの製造条件を、搬送経路における上流側から順番に変更する。
【0073】
ここで、「搬送経路における上流側(下流側)」の定義について説明する。すなわち、複数の位置のどちらが上流(下流)であるか特定する方法について説明する。先ず、「搬送経路」がどこになるかは、製造条件が変更される位置がどこであるかに依存する。つまり、前述した簡易的な例では、位置P1と位置P2のみが当該位置であったので、位置P1と位置P2が共通して存在する吸収体2の移動経路(ベルトコンベア23)が「搬送経路」となる(図2の太線参照)。そして、かかる場合には、「搬送経路」が合流(分岐)のない一本線となるので、搬送方向における手前側の位置が上流側となり、奥側の位置が下流側となる。
【0074】
一方、第一実施形態においては、図3に示すように、位置P1で吸収体材料供給条件を変更し、位置P2でプレス条件を変更し、位置P3でエンボス形成条件を変更し、位置P4でバックフィルム資材供給条件を変更し、位置P5でプリント形成条件を変更する。そのため、「搬送経路」は、吸収体2の移動経路とバックフィルム資材6(及びバックシート資材5)の移動経路を合わせたものとなる(図3の太線参照)。つまり、前記簡易的な例とは異なり、第一実施形態においては、「搬送経路」が合流(分岐)のある線となる。
【0075】
そして、この場合には、最も下流の合流位置(今回の例では、合流位置が一つしかないため、合流位置A1)を基準にして、「上流側(下流側)」の判断を行う。さらに、当該判断は製品ピッチのピッチ数で(製品ピッチを単位として)行われる。
【0076】
具体的に説明する。合流位置A1から(を基準とした)位置P1までの距離(移動経路の長さ)をL1とし、吸収体2の移動経路における製品ピッチをD1(図3参照)とする。合流位置A1から位置P1までのピッチ数は、N1(=L1/D1)ピッチとなる。同様の方法で、合流位置A1から位置P2までのピッチ数N2、合流位置A1から位置P3までのピッチ数N3、合流位置A1から位置P4までのピッチ数N4、合流位置A1から位置P5までのピッチ数N5を求めることができる。そして、ピッチ数を比較した際にその数が大きい方が上流側に位置すると判断する。ここでは、N3<N2<N5<N1<N4であり、したがって、位置P3が最も下流であり、位置P2、位置P5、位置P1、位置P4の順に上流になっていく。なお、製品ピッチは、吸収体2の移動経路とバックフィルム資材6の移動経路とで異なるのが通常なので(図3のD1とD2の長さ参照)、単純に距離を用いて「上流側(下流側)」の判断を行うと誤る場合がある(ピッチ数による判断と距離による判断は必ずしも一致しない)。
【0077】
なお、言うまでも無く、かかるピッチ数による判断は、前述した「搬送経路」が一本線の例にも適用可能である。
【0078】
そして、本実施の形態においては、5つの製造条件を、搬送経路における上流側から順番に変更する。すなわち、先ず、バックフィルム資材供給条件を変更する(ステップS9)。その後、時間を遅らせて、吸収体材料供給条件を変更する(ステップS11)。その後、時間を遅らせて、プリント形成条件を変更する(ステップS13)。その後、時間を遅らせて、プレス条件を変更する(ステップS15)。その後、時間を遅らせて、エンボス形成条件を変更する(ステップS17)。なお、時間をどのくらい遅らせるかについては、二つの(前後の)製造条件のピッチ数の差を生産スピード(1秒間に何枚の吸収性物品が製造されるか)で割った値とするのが、不良品の数を最小にする観点から望ましい。例えば、生産スピードがS(枚/秒)だとすれば、バックフィルム資材供給条件の変更から(N4-N1)/S(秒)後に吸収体材料供給条件を変更するのが望ましい。
【0079】
上述したように、本実施の形態に係る吸収性物品製造方法は、材料(吸収体2、トップシート資材3、バックフィルム資材6、バック不織布資材7、糸ゴム9等)を該材料に対応した搬送経路で搬送しながら第一仕様の吸収性物品1を製造する製造工程と、材料の搬送を維持した状態で、搬送経路における互いに異なる位置で複数種類の製造条件を変更することにより、第一仕様の吸収性物品1の製造から第二仕様の吸収性物品1の製造へ切り換える切り換え工程と、を有することとした。そして、切り換え工程においては、複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせることとした。
【0080】
そのため、前述した通り、第一仕様と第二仕様とが混在した吸収性物品1、すなわち、不良品の数を減少させることができる。
【0081】
また、本実施の形態に係る切り換え工程においては、複数種類の製造条件を、搬送経路における上流側から順番に変更することとした。つまり、第一製造条件を第一位置で変更する変更タイミングよりも第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせる方策を、複数種類の製造条件の全てについて確実に行われるようにした。そのため、不良品の数をより適切に減少させることが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態においては、第一仕様の吸収性物品1と第二仕様の吸収性物品1とでは、吸収体2の厚みが異なっており、ステップS3に示した通り、切り換え工程において吸収体2をプレスするプレス条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記厚みの異なり度合いに応じて決定することとした。
【0083】
そのため、吸収性物品1の仕様変更があると常にプレス条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等にはプレス条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、プレス条件を変更するという決定になったときには、前述した変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0084】
また、本実施の形態においては、第一仕様の吸収性物品1と第二仕様の吸収性物品1とでは、吸収体2の厚みが異なっており、ステップS5に示した通り、切り換え工程において吸収体2にエンボスを形成するエンボス形成条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記厚みの異なり度合いに応じて決定することとした。
【0085】
そのため、吸収性物品1の仕様変更があると常にエンボス形成条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等にはエンボス形成条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、エンボス形成条件を変更するという決定になったときには、前述した変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0086】
また、本実施の形態において、吸収性物品1を製造する際には、材料としてバックフィルム資材6を該バックフィルム資材6が巻かれた資材コイル6aから繰り出して搬送し、切り換え工程においてバックフィルム資材6の材質、幅、厚み、目付の少なくとも一つ(本実施の形態においては、厚みとしたが、材質、幅、目付が変更される場合も同様に適用可能である)を前記製造条件として変更し、切り換え工程においてバックフィルム資材6のテンション条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記材質、幅、厚み、目付の少なくとも一つの変更度合いに応じて決定することとした。
【0087】
そのため、バックフィルム資材6の材質、幅、厚み、目付の少なくとも一つに変更があると常にテンション条件の変更を行うのではなく、変更度合いが微小なとき等にはテンション条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、テンション条件を変更するという決定になったときには、前述した変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0088】
なお、本実施の形態においては、材料としてバックフィルム資材6を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、他のシート状資材にも適用可能である。例えば、トップシート資材3、バック不織布資材7にも適用可能であり、その場合には、これらのシート状資材についてテンション条件の変更有無が決定されることとなる。
【0089】
また、本実施の形態に係る吸収性物品1には、プリントが形成されており、切り換え工程において、共通する表示を維持しつつ仕様に係る表示を変更するように、プリントの形成条件を前記製造条件として変更することとした。
【0090】
そのため、プリントの形成条件の変更を最小限に留めつつ、仕様が変更されたこと(仕様がマイナーチェンジしたこと)を適切にユーザーに伝達することが可能となる。
【0091】
<第二実施形態について>
次に、第二実施形態について、図6及び図7を用いて説明する。 図6は、第二実施形態に係る製造ラインを示した模式図である。図7は、第二実施形態に係るフローチャートである。
【0092】
第一実施形態においては、第一仕様の吸収性物品1と第二仕様の吸収性物品1とで吸収体2の厚みが異なる例を挙げたが、第二実施形態においては、吸収体2の厚みではなく目付が異なっている。また、吸収体2の目付が異なることに伴い、吸収体2内のパルプ繊維の目付も異なっているので、検査に異常が生じないように検査カメラ装置33による検査条件(具体的には、前記二値化の画像処理の閾値)を変更する。
【0093】
先ず、出来合い品(第一仕様の吸収性物品1)を製造する製造工程を実行しているときに(ステップS1)、出来合い品よりも吸収体2の目付とバックフィルムの厚みが少し大きい吸収性物品1の注文(依頼)が入ったとする。この注文(依頼)は、通常よりも若干多い排泄液に対応可能な商品を想定している。
【0094】
かかる場合には、出来合い品(第一仕様の吸収性物品1)の製造から、出来合い品からのマイナーチェンジ版である注文品(第二仕様の吸収性物品1)の製造へ製造ライン(吸収性物品製造装置10)を切り換えることとなるが、切り替えを実行する前に、幾つかの製造条件について、その製造条件の変更を行うかどうかについて決定する。
【0095】
すなわち、本実施の形態においては、積繊ドラム装置21の製造条件(吸収体材料供給条件)を変更して、液体吸収性素材(パルプ繊維や高吸収性ポリマー(SAP))の量を多くするが、吸収体プレス装置25の製造条件(プレス条件)とエンボス形成装置27の製造条件(エンボス形成条件)については、製造条件(プレス条件、エンボス形成条件)を、吸収体2の目付の異なり度合い(つまり、第一仕様から第二仕様への変更時に吸収体2の目付をどれだけ変えるか)に応じて、変えたり変えなかったりする。これは、吸収体2の目付の異なり度合いが微小(例えば、1割減以上1割増以下)である場合には、製造条件(プレス条件、エンボス形成条件)を変えなくても対応できるからである。ここでは、プレス条件とエンボス形成条件を変更するか否かを、吸収体2の目付の異なり度合いに応じて決定した結果(ステップS3、ステップS5)、双方とも変更することになったとする。
【0096】
また、検査カメラ装置33による検査条件(具体的には、前記二値化の画像処理の閾値)を、パルプ繊維の目付の異なり度合いに応じて、変えたり変えなかったりする。これは、パルプ繊維の目付の異なり度合いが微小(例えば、1割減以上1割増以下)である場合には、検査条件を変えなくても正確な検査が維持できるが、異なり度合いが大きい場合には、閾値を変えないと、検査異常(誤診断)が生ずるからである。ここでは、閾値を変更するか否かを、パルプ繊維の目付の異なり度合いに応じて、決定した結果(ステップS6)、変更することになったとする。
【0097】
また、ステップS7及びステップS9については、第一実施形態のステップS7及びステップS9と同様、バックフィルム資材供給条件とプリントの形成条件を変更し、テンション条件を変更しない。
【0098】
以上で説明したように、本実施の形態においては、出来合い品(第一仕様の吸収性物品1)の製造から、注文品(第二仕様の吸収性物品1)の製造へ製造ライン(吸収性物品製造装置10)を切り換える際に、吸収体材料供給条件、プレス条件、エンボス形成条件、バックフィルム資材供給条件、プリント形成条件、検査条件を変更することとなる。
【0099】
例えば、液体吸収性素材(パルプ繊維や高吸収性ポリマー(SAP))の量が多くなるように吸収体材料供給条件を位置P1で変更する。
【0100】
また、クリアランスを広げるようにプレス条件を位置P2で変更する。
【0101】
また、エンボスパターンが目付の大きい吸収体2に対応したものとなるようにエンボスパターン形成条件を位置P3変更する。具体的には、第一仕様用の第一エンボス形成装置27bから第二仕様用の第二エンボス形成装置27cへエンボス形成装置27を切り換えて、エンボスパターンを変更する。
【0102】
また、バックフィルム資材6がより厚い資材となるように、バックフィルム資材供給条件を位置P4で変更する。
【0103】
また、図5の右図に示したプリントが形成されるように、プリント形成条件を位置P5で変更する。
【0104】
また、パルプ繊維の目付が変更になった後でも、二値化後の黒色部を正常部と正しく判断し、かつ、白色部を異常部と正しく判断できるように、検査条件(二値化の画像処理の閾値)を位置P6で変更する。
【0105】
そして、かかる変更を行う際には、複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせる。さらに、本実施の形態においては、6つの製造条件について、変更タイミングを下流のものほど後にする。つまり、6つの製造条件を、搬送経路における上流側から順番に変更する。
【0106】
すなわち、位置P6が最も下流であり、位置P3、位置P2、位置P5、位置P1、位置P4の順に上流になっていくため、先ず、バックフィルム資材供給条件を変更する(ステップS9)。その後、時間を遅らせて、吸収体材料供給条件を変更する(ステップS11)。その後、時間を遅らせて、プリント形成条件を変更する(ステップS13)。その後、時間を遅らせて、プレス条件を変更する(ステップS15)。その後、時間を遅らせて、エンボス形成条件を変更する(ステップS17)。その後、時間を遅らせて、検査条件を変更する(ステップS19)。
【0107】
上述したように、第二実施形態においても、第一実施形態と同様、切り換え工程においては、複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせることとした。
【0108】
そのため、第一仕様と第二仕様とが混在した吸収性物品1、すなわち、不良品の数を減少させることができる。
【0109】
また、複数種類の製造条件を、搬送経路における上流側から順番に変更することとしたため、不良品の数をより適切に減少させることが可能となる。
【0110】
また、本実施の形態においては、第一仕様の吸収性物品1と第二仕様の吸収性物品1とでは、吸収体2の目付が異なっており、ステップS3に示した通り、切り換え工程において吸収体2をプレスするプレス条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記目付の異なり度合いに応じて決定することとした。
【0111】
そのため、吸収性物品1の仕様変更があると常にプレス条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等にはプレス条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、プレス条件を変更するという決定になったときには、前述した変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0112】
また、本実施の形態においては、第一仕様の吸収性物品1と第二仕様の吸収性物品1とでは、吸収体2の目付が異なっており、ステップS5に示した通り、切り換え工程において吸収体2にエンボスを形成するエンボス形成条件を前記製造条件として変更するか否かを、前記目付の異なり度合いに応じて決定することとした。
【0113】
そのため、吸収性物品1の仕様変更があると常にエンボス形成条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等にはエンボス形成条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、エンボス形成条件を変更するという決定になったときには、前述した変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0114】
また、本実施の形態においては、吸収性物品1を製造する際には、吸収体2の検査を検査カメラ装置33により実行し、吸収体2は、パルプ繊維を有し、第一仕様の吸収性物品1と第二仕様の吸収性物品1とでは、パルプ繊維の目付が異なっており、切り換え工程において検査カメラ装置33による検査条件を前記製造条件として変更するか否かを、パルプ繊維の目付の異なり度合いに応じて決定することとした。
【0115】
そのため、吸収性物品1の仕様変更があると常に検査条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等には検査条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、検査条件を変更するという決定になったときには、前述した変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0116】
<第三実施形態について>
次に、第三実施形態について、図8及び図9を用いて説明する。 図8は、第三実施形態に係る製造ラインを示した模式図である。図9は、第三実施形態に係るフローチャートである。
【0117】
第一及び第二実施形態においては、吸収体2に係る仕様変更がある場合について述べたが、第三実施形態においては、第一仕様の吸収性物品1と第二仕様の吸収性物品1とで糸ゴム9の応力が異なる。ここで、糸ゴム9の応力とは、糸ゴム9の1本当たりの収縮力である。本実施の形態においては、糸ゴム9の応力を異ならせる例として、糸ゴム9を応力の大きいものに入れ換える例を挙げるが、例えば、糸ゴム9の倍率を変更する例であってもよい。
【0118】
先ず、出来合い品(第一仕様の吸収性物品1)を製造する製造工程を実行しているときに(ステップS1)、出来合い品よりも糸ゴム9の応力がより大きい吸収性物品1の注文(依頼)が入ったとする。この注文(依頼)は、装着時に通常よりもずれにくい(落ちにくい)商品を想定している。
【0119】
かかる場合には、出来合い品(第一仕様の吸収性物品1)の製造から、出来合い品からのマイナーチェンジ版である注文品(第二仕様の吸収性物品1)の製造へ製造ライン(吸収性物品製造装置10)を切り換えることとなるが、切り替えを実行する前に、糸ゴム9に接着剤を塗布する接着剤塗布条件の変更を行うかどうかについて決定する。
【0120】
すなわち、本実施の形態においては、糸ゴム供給条件を変更して、糸ゴム9を応力の大きいものに変更するが、第四塗布装置15の製造条件(接着剤塗布条件)については、接着剤塗布条件(具体的には、ホットメルト接着剤の塗布量)を、応力の異なり度合い(つまり、第一仕様から第二仕様への変更時に応力をどれだけ変えるか)に応じて、変えたり変えなかったりする。これは、応力の異なり度合いが微小(例えば、1割減以上1割増以下)である場合には、接着剤塗布条件(塗布量)を変えなくても対応できるからである。ここでは、接着剤塗布条件(塗布量)を変更するか否かを、応力の異なり度合いに応じて決定した結果(ステップS3)、変更することになったとする。
【0121】
したがって、本実施の形態においては、出来合い品(第一仕様の吸収性物品1)の製造から、注文品(第二仕様の吸収性物品1)の製造へ製造ライン(吸収性物品製造装置10)を切り換える際に、糸ゴム供給条件及び接着剤塗布条件を変更することとなる。
【0122】
例えば、糸ゴム9が応力の大きいものとなるように糸ゴム供給条件を位置P7で変更する。
【0123】
また、塗布量を多くするように接着剤塗布条件を位置P8で変更する。
【0124】
そして、かかる変更を行う際には、複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせる。すなわち、先ず、位置P7で糸ゴム供給条件を変更する(ステップS5)。その後、時間を遅らせて、位置P8で接着剤塗布条件を変更する(ステップS7)。
【0125】
上述したように、第三実施形態においても、第一実施形態及び第二実施形態と同様、切り換え工程においては、複数種類の製造条件のうちの第一製造条件を、搬送経路における第一位置で変更する変更タイミングよりも、第一位置よりも下流側に位置する第二位置で第二製造条件を変更する変更タイミングを遅らせることとした。
【0126】
そのため、第一仕様と第二仕様とが混在した吸収性物品1、すなわち、不良品の数を減少させることができる。
【0127】
また、本実施の形態においては、吸収性物品1は糸ゴム9を備え、第一仕様の吸収性物品1と第二仕様の吸収性物品1とでは、糸ゴム9の応力が異なっており、切り換え工程において糸ゴム9に接着剤を塗布する接着剤塗布条件を前記製造条件として変更するか否かを、応力の異なり度合いに応じて決定することとした。
【0128】
そのため、吸収性物品1の仕様変更があると常に接着剤塗布条件の変更を行うのではなく、異なり度合いが微小なとき等には接着剤塗布条件を変更しないこととなるため、かかる際には不良品の発生を回避できる。また、接着剤塗布条件を変更するという決定になったときには、前述した変更タイミングを遅らせる方策により、不良品の数を減らすことが可能となる。
【0129】
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0130】
上記実施の形態においては、製造条件として、シート状資材供給条件、吸収体供給条件、弾性部材供給条件、プレス条件、エンボス形成条件、検査条件、接着剤塗布条件、プリント形成条件、テンション条件を挙げたが、これに限定されるものではない。一例として、改質剤を塗布する改質剤塗布条件を挙げることができる。改質剤とは、例えば、排泄液のすべりや吸収を良くする成分や、吸収性物品に接触する肌の肌荒れを抑制する成分や、排泄液による異臭を抑制する成分を有する液体等を挙げることができる。
【0131】
また、シート状資材供給条件としてバックフィルム資材供給条件を挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、トップシート資材供給条件やバック不織布資材供給条件であってもよい。
【0132】
また、上記実施の形態においては、吸収体材料供給条件を変更する例としてパルプ繊維や高吸収性ポリマー(SAP)の量を変える例を挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、パルプ繊維や高吸収性ポリマー(SAP)の種類を変える例であってもよい。
【0133】
また、プレス条件を変更する例として隙間(クリアランス)の大きさを変える例を挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、吸収体プレス装置25の二つのプレスローラー25aの間には隙間がなく、プレスの大きさは二つのプレスローラー25aが接触する接触圧で管理されており、当該接触圧の大きさを変える例であってもよい。また、プレスローラー25aは加熱ローラーとなっており、当該加熱ローラーの設定温度を変える例であってもよい。
【0134】
また、エンボス形成条件を変更する事例としてエンボスパターンを変える例を挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、エンボスの圧力や位置を変える例であってもよい。
【0135】
また、上記実施の形態においては、弾性部材として糸ゴム9を例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、弾性を有するシート状部材であってもよい。
【0136】
また、上記実施の形態においては、テンション条件を変更するか否かを、バックフィルム資材6の厚みの変更度合いに応じて、決定した結果(ステップS7)、変更しないこととしたが、これに限定されるものではなく、変更することとしてもよい。そして、かかる際には、テンション条件の変更タイミングをバックフィルム資材供給条件の変更タイミングよりも遅らせることとなる。
【符号の説明】
【0137】
1 吸収性物品、2 吸収体
3 トップシート資材、3a 資材コイル
5 バックシート資材
6 バックフィルム資材、6a 資材コイル
7 バック不織布資材、7a 資材コイル
8 基材シート
9 糸ゴム、9a 糸ゴムコイル
10 吸収性物品製造装置、12 第一塗布装置、13 第二塗布装置
14 第三塗布装置、15 第四塗布装置
21 積繊ドラム装置、21a 回転ドラム、23 ベルトコンベア
25 吸収体プレス装置、25a プレスローラー
27 エンボス形成装置、27a エンボス形成ローラー
27b 第一エンボス形成装置、27c 第二エンボス形成装置
29 エンドカッター
31 インクジェット装置、33 検査カメラ装置
35 テンション調整装置、36 第一テンション調整装置
37 第二テンション調整装置、38 第三テンション調整装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9