(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 11/00 20060101AFI20220105BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20220105BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220105BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20220105BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20220105BHJP
F16F 1/38 20060101ALI20220105BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20220105BHJP
B61F 5/30 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C08L11/00
C08L7/00
C08K3/22
C08K3/32
F16F1/36 C
F16F1/36 Y
F16F1/38 Y
F16F15/08 D
F16F15/08 K
B61F5/30 C
(21)【出願番号】P 2017202251
(22)【出願日】2017-10-19
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】堀内 薫
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-024045(JP,A)
【文献】特開2010-013504(JP,A)
【文献】特開2008-297343(JP,A)
【文献】特開2016-027117(JP,A)
【文献】特開2013-087133(JP,A)
【文献】特開2007-023102(JP,A)
【文献】特開2005-146256(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104177714(CN,A)
【文献】特開平10-195250(JP,A)
【文献】特開2017-008221(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289463(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
F16F15/00- 15/36
F16F 1/00- 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分として、ポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムを含有し、前記ゴム成分の全量を100重量部としたとき、さらに難燃剤として
のイントメッセント系のリン酸塩
として少なくともリン酸アンモニウムを0.01~30重量部および
水酸化マグネシウムを1~200重量部含有することを特徴とする鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分の全量を100重量部としたとき、前記ポリクロロプレンゴムを50
重量部を超え100重量部
未満および前記天然ゴムを0
重量部を超え50重量部
未満含有する請求項
1に記載の鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム成分として、ポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムを含有する鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に鉄道車両においては、様々な形状および防振性能を有する緩衝ゴムが使用されている。例えば、ブッシュ型の緩衝ゴムは、車体と台車との間に取り付けられた力伝達リンク装置の一部であり、かかる緩衝ゴムは上下左右の動きで発生する力を吸収し、動きに対する復元力を発生させる。近年では火災の発生などを考慮し、かかる鉄道車両用緩衝ゴムに対して難燃性を向上することが要求されている。
【0003】
ゴムの難燃性向上を図る場合、原料となるゴム組成物中に難燃剤を配合する技術が知られている。難燃剤としては、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤などが公知であり、特にハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモンを併用すると優れた難燃効果が得られることが一般的に知られている。しかしながら、近年では環境意識の高まりから、難燃性を向上しつつも、燃焼時の発煙性が低いこと(低発煙性)、燃焼時の有毒ガスの発生をより低減させることが求められており、ハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモンを併用する技術では、環境面で問題があった。
【0004】
環境面での配慮から、ゴム組成物中に非ハロゲン系難燃剤を配合する技術は存在する。例えば、下記特許文献1では、ポリクロロプレンゴムに対して水酸化マグネシウムおよび赤燐を配合した難燃性ゴムが報告されている。また、下記特許文献2では、ポリクロロプレンゴムに対して金属水和物、赤燐およびシランカップリング剤を配合した難燃性ゴムが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-146256号公報
【文献】特開2007-023102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、鉄道車両用緩衝ゴムでは難燃性の向上に加え、モジュラスや引張強度などのゴム常態物性の向上が要求される。しかしながら、本発明者が検討した結果、前記特許文献に記載のゴムでは、難燃性向上と、かかるゴム常態物性の維持向上とが両立できないことが判明した。
【0007】
また、鉄道車両用緩衝ゴムでは難燃性の向上に加え、火災などで出火した際には、発煙性を抑制することも要求される。しかしながら、本発明者が検討した結果、難燃性を向上することにより、必ずしも発煙性が抑制できる訳では無く、両者を改良するためには更なる工夫が必要であることが判明した。
【0008】
本発明は上記課題を解決すべく開発されたものであり、モジュラスや引張強度などのゴム常態物性をバランス良く向上しつつ、難燃性の向上と発煙性の抑制とを両立した鉄道車両用緩衝ゴムの原料となる鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、ゴム成分として、ポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムを含有し、前記ゴム成分の全量を100重量部としたとき、さらに難燃剤としてイントメッセント系のリン酸塩を0.01~30重量部および金属水酸化物を1~200重量部含有することを特徴とする鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物に関する。
【0011】
一般に高分子の燃焼は、特に燃焼が継続した場合に高分子表面には高分子の分解性生成物が蓄積したり、溶融高分子が材料から垂れたり、はじけたりするため、その高分子の種類によって様相が大きく異なる。本発明者が鉄道車両用緩衝ゴムのゴム成分として選択した、ポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムの併用系の燃焼挙動について鋭意検討した結果、これらのゴム成分に対し、難燃剤としてイントメッセント系のリン酸塩を配合した場合、ポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムの併用ゴムの燃焼時に、ゴム表面にイントメッセント(発泡膨張層)が形成され、これがポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムの燃焼時に防護壁となって、燃焼抑制の効果を発揮することが判明した。
【0012】
前記のとおり、本発明では、ポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムの併用ゴムと、イントメッセント系のリン酸塩とを組み合わせることにより、ゴム燃焼時の燃焼を効果的に阻害し、難燃性を向上することができる。さらに、このような効果的な燃焼抑制メカニズムを構築することで、一般に配合量増量に伴い、モジュラスや引張強度などのゴム常態物性の悪化に繋がる難燃剤の配合量を抑制することができるため、ゴム常態物性の悪化を抑制することができる。その結果、本発明では、難燃性と、モジュラスや引張強度などのゴム常態物性とをバランス良く向上した鉄道車両用緩衝ゴムの原料となるゴム組成物を提供することができる。
【0013】
本発明においては、イントメッセント系のリン酸塩に加えて、金属水酸化物をポリクロロプレンゴムおよび天然ゴム中に配合している。金属水酸化物は、ゴムの燃焼時に水分子を放出することにより、発煙性を抑制することができる。
【0014】
なお、後述の実験結果が示すとおり、ポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムを含むゴム中で、イントメッセント系のリン酸塩と金属水酸化物とを併用した場合、難燃性の向上と発煙性の抑制とにおいて、相乗効果を発揮する。このため、本発明においては、難燃性の向上と発煙性の抑制とを高いレベルで両立することができる。
【0015】
上記鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物において、前記金属水酸化物として、水酸化マグネシウムを含有することが好ましい。かかる構成によれば、最終的に得られる鉄道車両用緩衝ゴムの発煙性をさらに抑制することができる。
【0016】
上記鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物において、前記ゴム成分の全量を100重量部としたとき、前記ポリクロロプレンゴムを50重量部を超え100重量部未満および前記天然ゴムを0重量部を超え50重量部未満含有することが好ましい。ポリクロロプレンゴムと天然ゴムとの比率をかかる配合比としつつ、イントメッセント系のリン酸塩を配合することで、燃焼時に、ゴム表面にイントメッセント(発泡膨張層)を効果的に形成することができる。その結果、最終的に得られる鉄道車両用緩衝ゴムの難燃性の向上と、発煙性の抑制とを両立しつつ、モジュラスや引張強度などのゴム常態物性とをさらにバランス良く向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物は、ゴム成分として、ポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムを含有し、さらに難燃剤としてイントメッセント系のリン酸塩および金属水酸化物を含有する。
【0018】
本発明においては、最終的に得られる鉄道車両用緩衝ゴムの難燃性と、モジュラスや引張強度などのゴム常態物性とをさらにバランス良く向上するために、ゴム成分としてポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムを併用する。なお、本発明においては、ポリクロロプレンゴムおよび天然ゴム以外のジエン系ゴム、例えばポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)などをゴム成分中に含んでも良い。
【0019】
ゴム成分の全量を100重量部としたとき、ポリクロロプレンゴムを50重量部を超え100重量部未満および天然ゴムを0重量部を超え50重量部未満含有することが好ましく、ポリクロロプレンゴムを60~100重量部および天然ゴムを0~40重量部含有することがより好ましい。ポリクロロプレンゴムと天然ゴムとの比率をかかる配合比としつつ、イントメッセント系のリン酸塩を配合することで、燃焼時に、ゴム表面にイントメッセント( 発泡膨張層)を効果的に形成することができる。
【0020】
本発明においては、難燃剤として、特にポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムの併用系に対し効果的なイントメッセント系のリン酸塩を使用する。リン酸塩としては当業者に公知のリン酸塩が使用可能であるが、特にリン酸マグネシウムやリン酸アンモニウムを使用することが好ましい。リン酸マグネシウムやリン酸アンモニウムなどを含有する難燃剤として、市販品も好適に使用可能であり、例えばADEKA社製の「FP-2200」などが挙げられる。
【0021】
ポリクロロプレンゴムおよび天然ゴムの燃焼時に、ゴム表面にイントメッセント(発泡膨張層)を効果的に形成することで、最終的に得られる鉄道車両用緩衝ゴムのモジュラスや引張強度などのゴム常態物性の維持向上を図りつつ、難燃性の向上と発煙性の抑制とを両立するために、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、リン酸塩を0.01~30重量部含有することが好ましく、1~20重量部含有することがより好ましく、5~15重量部含有することがさらに好ましい。
【0022】
金属水酸化物としては、難燃剤として公知の化合物を使用することができる。具体的には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを例示することができる。最終的に得られる鉄道車両用緩衝ゴムのモジュラスや引張強度などのゴム常態物性の維持向上を図りつつ、難燃性の向上と発煙性の抑制とを両立するために、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、金属水酸化物を1~200重量部含有することが好ましく、50~200重量部含有することがより好ましく、100~150重量部含有することがさらに好ましい。最終的に得られる鉄道車両用緩衝ゴムの発煙性をさらに抑制するためには、金属水酸化物として水酸化マグネシウムを使用することがより好ましい。
【0023】
本発明に係る鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物は、ゴム成分、リン酸塩および金属水酸化物以外に、カーボンブラックおよびシリカなどの充填剤、加硫剤、加硫促進剤、シラン系カップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲において適宜配合し用いることができる。
【0024】
カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなどが用いられる。カーボンブラックは、加硫後のゴムの硬度、補強性などのゴム特性を調整し得る範囲で使用することができる。ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、10~50重量部とすることが好ましい。
【0025】
加硫剤としては、通常のゴム用硫黄が例示され、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。加硫後の機械物性、あるいは他のゴム物性などを考慮した場合、ゴム成分100重量部に対する加硫剤の配合量は、0.5~5重量部が好ましい。
【0026】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0027】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0028】
本発明に係る鉄道車両用緩衝ゴム用ゴム組成物は、上述したポリクロロプレンゴムおよび天然ゴム、難燃剤としてのイントメッセント系のリン酸塩および金属水酸化物に加えて、カーボンブラック、シリカ、加硫剤、加硫促進剤、シラン系カップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0029】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、ゴム成分およびカーボンブラックのみを予め混練マスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでも良い。
【0030】
本発明に係るゴム組成物を所望の形状に成型することにより、様々な鉄道車両用緩衝ゴムを製造することができる。かかる緩衝ゴムは、モジュラスや引張強度などのゴム常態物性が維持向上されつつ、難燃性に優れたものであり、具体的には例えばISO5660-1に準じた発熱試験においても、優れた難燃性を示すものである。
【実施例】
【0031】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
【0032】
(ゴム組成物の調製)
ゴム成分100重量部に対して、表1の配合処方に従い、実施例1、比較例1~3のゴム組成物を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、ゴム組成物を調整した。表1に記載の各配合剤を以下に示す。
【0033】
a)ゴム成分
ポリクロロプレンゴム(CR);電気化学工業社製、商品名「デンカクロロプレン DCR-36」
天然ゴム(NR);商品名「RSS#3」
b)難燃剤
イントメッセント系のリン酸塩(リン酸マグネシウムおよびリン酸アンモニウム含有);ADEKA社製、商品名「FP-2200」
金属水酸化物(水酸化マグネシウム);協和化学工業社製、商品名「キスマ5A」
c)カーボンブラック(HAF-LS);東海カーボン社製、商品名「シースト300」
d)酸化亜鉛;三井金属鉱業社製、商品名「亜鉛華3号」
e)酸化マグネシウム;協和化学工業社製、商品名「キョーワマグ150」
f)ワックス;日本精蝋社製、商品名「ミクロクリスタリンワックス」
g)プロセスオイル;JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「プロセスX-140」
h)老化防止剤
6C;住友化学社製、商品名「アンチゲン6C」
i)加硫促進剤
DM;三新化学工業社製、商品名「サンセラーDM-G」
TS;三新化学工業社製、商品名「サンセラーTS-G」
j)硫黄;細井化学工業社製、商品名「5%オイル処理硫黄」
【0034】
(評価)
評価は、各ゴム組成物を所定の金型を使用して、150℃で30分間加熱、加硫して得られたサンプルゴムについて行った。
【0035】
<ゴム常態物性>
ゴム硬度に関しては、JIS K 6253に準拠して測定した。また、引張物性に関しては、JIS K 6251に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0036】
<比重>
JIS K 6268の試験手順B法に準拠して測定した。
【0037】
<難燃性>
ISO 5660-1(発熱試験)に準拠し、100×100×6mmのサンプルを作成し、試験時間20分間、測定間隔2秒毎、輻射量25kW/m
2の測定条件で発熱速度を測定し、得られた測定結果を下記の式1に代入してARHE(average rate of heat emission)を求め、その最大値をMARHE(maximum average rate of heat emission)とした。評価は、比較例1のMARHEを100として指数評価を行い、数値が低いほど難燃性に優れることを意味する。結果を表1に示す。
【数1】
t
n=測定時間,t
n-1=t
n秒から2秒前の測定時間,t
1=測定開始時間(t
1=0)
q
n=t
n秒時の発熱速度,q
n-1=t
n-1秒時の発熱速度
2秒毎に積算値を算出し、ARHEの最大値をMARHEとする。
【0038】
<発煙性>
ISO 5659-2(発煙試験)に準拠し、Ds maxを求めた。評価は、比較例1のDs maxを100として指数評価を行い、数値が低いほど発煙性の抑制効果に優れることを意味する。結果を表1に示す。
【0039】
【0040】
表1の結果から明らかなとおり、実施例1と比較例2とを比較した場合、難燃性および発煙性の抑制効果のいずれも、実施例1の方が優れており、特に実施例1と比較例2とでは、金属水酸化物の配合量が同じにもかかわらず、発煙性の抑制効果が著しく向上している。この対比結果から、イントメッセント系のリン酸塩と金属水酸化物とを併用することにより、発煙性の抑制効果の点で相乗効果が存在することが分かる。また、実施例1と比較例3とを比較した場合、実施例1の難燃剤の総配合量が110重量部で、比較例3の難燃剤の総配合量(120重量部)よりも少ないにもかかわらず、難燃性および発煙性の抑制効果のいずれも、実施例1の方が優れており、特に実施例1と比較例3とでは、イントメッセント系のリン酸塩の配合量が大幅に減っているにもかかわらず、難燃性が向上している。この対比結果から、イントメッセント系のリン酸塩と金属水酸化物とを併用することにより、発煙性の抑制効果の点でも相乗効果が存在することが分かる。