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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】リンクチェーン、特にブシュチェーン
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/02 20060101AFI20220105BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20220105BHJP
   F16G 13/06 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F16G13/02 D
F16G13/02 B
F16J15/18 C
F16G13/06 A
F16G13/06 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018527174
(86)(22)【出願日】2016-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2016078706
(87)【国際公開番号】W WO2017089478
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】102015120382.0
(32)【優先日】2015-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509032933
【氏名又は名称】ケッテンヴルフ ベトリープス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KettenWulf Betriebs GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヘベッカー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハーネマン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】パドベルク,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ケンパー,シュテファン
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-252536(JP,A)
【文献】特開昭54-145845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/00
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクチェーンであって、
ブシュ(3)を備える内プレート(1)と、
ピン(4)を備える外プレート(2)とを含み、
ピン(4)およびブシュ(3)はチェーンリンクを形成し、
チェーンリンクのシールのためのシールアセンブリが設けられ、
シールアセンブリは、内プレート(1)と外プレート(2)との間に配設され、シールアセンブリは、シール(9)と、シール受容空間(11)とを含むリンクチェーンにおいて、
シール(9)は、シール受容空間(11)内に配設され、
シール受容空間(11)は、外プレート(2)において、スラストワッシャ(7)と環状凹部(8)とから形成され、金属リングの形態で設計されるリング(10)が、シール受容空間(11)内に配設され、金属リングはスラストワッシャ(7)とともにシール(9)の半径方向外方にラビリンスシールを形成し、または
シール受容空間(11)は、スラストワッシャ(7)と受けディスク(12)とから形成され、スラストワッシャ(7)は、受けディスク(12)とともに、シール(9)の半径方向外方にラビリンスシールを形成することを特徴とするリンクチェーン。
【請求項2】
シールアセンブリは、ブシュ(3)の半径方向外方に配設されることを特徴とする、請求項1に記載のリンクチェーン。
【請求項3】
ブシュ(3)には、内プレート(1)から突出する突出部(31)が設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のリンクチェーン。
【請求項4】
外プレート(2)の前方に、ブシュ前面が配設されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のリンクチェーン。
【請求項5】
スラストワッシャ(7)または受けディスク(12)は、ブシュ(3)の突出部(31)に取り付けられることを特徴とする、請求項3または4に記載のリンクチェーン。
【請求項6】
プレート(1,2)は、半製品から、特に平面材または金属板から作製されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のリンクチェーン。
【請求項7】
ブシュ(3)および/またはピン(4)には、少なくとも1つの潤滑剤充填開口部(43)が設けられることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のリンクチェーン。
【請求項8】
ブシュ(3)および/またはピン(4)には、潤滑剤受容アセンブリ(44)、特に溝、面、または穴が設けられることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のリンクチェーン。
【請求項9】
ブシュ(3)は、前方側に半径方向溝(32)を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のリンクチェーン。
【請求項10】
潤滑剤、特にオイルでシール受容空間(11)を充填することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のリンクチェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に上位概念に従った、リンクチェーン、特に、ブシュチェーン、好ましくはコンベヤチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
リンクチェーン、特にブシュチェーンは、実質的に、2つの無端に相並んだ要素から構成されてなる。これらの要素は、内部材および外部材とも称される。外部材は、通常、2つのピンによってしっかりと互いに結合された2つの外プレートからなる。内部材は、通常、2つの内プレートと2つのブシュから構成され、それぞれが隣接する外部材のピンとで、チェーンリンクを形成する。これらのリンクは、たとえばパワートレインに設けられたスプロケットへのリンクチェーンの巻き付きを可能にする。
【0003】
リンクチェーンは、他の多くの用途と並んで、コンベアチェーンとして好んで用いられ、その場合、ローラが細長いピンまたはブシュに取り付けられており、複数のプレート、または少なくともいくつかのプレートが、プラットフォームなどの取り付け部に結合されて構成される。この目的のために、プレートはたとえばアングルプレートとして設計され、アングルプレートは自身のプレートに加えてブームが付いており、アタッチメントを接続することができる。横断面において、L字形プレートの例を挙げている。
【0004】
様々な品物や原材料を搬送する際には、リンクチェーンは搬送品および周囲や環境の影響にさらされる。その場合、汚れや他の物質や液体がチェーンリンクに侵入し、より速い、またより強度の摩耗の原因になり得る。
【0005】
したがって、そのような場合にはチェーンリンクがしばしばシールされる。適切なリンクチェーンまたはシールアセンブリの構造は、たとえば、ドイツ国特許出願公開第2726033号明細書またはドイツ国特許出願公開第3629591号明細書から知られている。
【0006】
ドイツ国特許出願公開第2726033号明細書の図1において、シールリップがブシュの前面に図示されたシールが当接して密に設けられていることが分かる。スペーサリングは、このシールが機械的過負荷によって破壊されることを防止する。ブシュと外プレートとの間には、スペーサリングがある。
【0007】
このようなシールは、リンクが「油密性」でシールされるという利点を有する。これは、オイルまたはグリースのような潤滑剤でチェーンリンクを充填することができ、したがって、さらなるメンテナンスを必要とせずに長期間にわたって動作させることができることを意味している。したがって、リンクは永久的に潤滑される。オイルは、ピンの一般的な潤滑穴を介して導入される。
【0008】
しかしながら、このようなリンクチェーンは、いくつかの欠点がある。
【0009】
ブシュと外プレートとの間の距離に起因して、負荷下においてピンにかなりの曲げ応力が生じる可能性がある。さらに、ピンの撓み、したがってブシュとピンとの間のより強いエッジ圧力が予想される。次に、ピンの曲げとエッジの加圧は、疲労強度と最大伝達可能なチェーン引張力の低下につながり得る。総じて、より大きな摩耗とより低い破壊荷重になると予想される。
【0010】
さらにまた、ブシュまたはブシュ前面は、シール面としての、およびブシュとしての課題を満たす必要がある。このことによって、必要な特性について、特に、高額になり、コストを高騰させることになる、材料と製造に関して妥協することが必須となる。
【0011】
さらにまた、ピンと外プレートとの間の接触面に隣接する外プレートに凹部がある場合、その接触面が減少することになる。外プレートは、通常、ピンに押し付けられるので、それに対応してより小さい接触面または接合面となり、よって、プレス嵌めは、より少ない力とモーメントしか伝達できない。さらに、プレート穴のこの箇所では、ベアリング圧が増加することになる。
【発明の概要】
【0012】
本発明の課題は、改良されたリンクチェーンを提供すること、特に、上述の短所を少なくとも1つ、好ましくはすべてを克服する、または少なくとも改良をもたらす、リンクチェーンを提供することである。特に、リンクピンにおける予測される曲げ応力および/またはエッジ圧力を、構造上の措置によって予め低下させておくことが可能であって、および/またはブシュの材料選択または加工ために要する妥協がわずかである、またはまったくないチェーンを提供することであり、かかるチェーンは、シール面としてブシュ前面を利用することから得られ、および/または、かかるチェーンの場合、好ましくは全プレート強度が接触面に寄与する。
【0013】
発明に従えば、この課題は、請求項1の特徴を有するリンクチェーンによって達成される。シールアセンブリが、内プレートと外プレートとの間に配設されることによって、シールアセンブリはある程度、ブシュまたはブシュ前面の領域からプレートの領域内に移動することができる。それでも油密または潤滑剤を通さないチェーンリンクを実現することができる。シールアセンブリは、ブシュの前面には隣接しない。したがって、ブシュ前面がもはや封止面として必要とされないので、たとえば、ブシュまたはその前面について表面処理、材料選択などに妥協する必要はない。さらに、ブシュと外プレートとの間の距離は短くなり、したがってブシュはピンを外プレートまで覆うことができる。これによって、ピンとブシュとの間の良好な力の伝達を達成することが可能となり、一般的にピンの撓みが小さくなる。また、たとえば、外プレートとピンとの間の接触面を小さくすることになる凹部を設ける必要がない。内プレートと外プレートとの間にシールアセンブリが配設され、ブシュ前面と外プレートとの間にはシールアセンブリはもはや配設されていないので、半径方向にシールするためのスペースは、ブシュから遠くに配置されることになる。これにより、シールとブシュの間に大きな「自由空間」が生まれる。この空間を油で満たすことが可能である。この結果、一般的に、潤滑剤溜めのサイズが大きくなり、リンクチェーンの寿命やメンテナンス間隔が長くなる。
【0014】
本発明のさらなる有利な実施形態は、特に、従属請求項の特徴から明らかになるであろう。各請求項の目的または特徴は、基本的に互いに任意に組み合わせることができる。
【0015】
本発明の有利な実施形態において、シールアセンブリはブシュの半径方向外側に配設可能である。したがって、シールアセンブリはもはやブシュの前面には置かれない。したがって、ブシュ前面はもはや封止面として必要とされないので、たとえば、ブシュまたはその前面について表面処理、材料選択などにおいてまったく妥協する必要はない。さらに、ブシュと外プレートとの間の距離を短くすることができるので、ブシュが外プレートまでピンを覆うことができる。これは、ピンとブシュとの間のより良好な力の伝達に寄与し、一般的にピンの撓みは小さくなる。また、たとえば、外プレートとピンとの間の接触面積を減少させることになる凹部を設ける必要がない。内プレートと外プレートとの間にシールアセンブリが配設され、ブシュ前面と外プレートとの間にはシールアセンブリはもはや配設されていないので、シール用のシール受容空間は、半径方向において、ブシュからさらに離れている。これにより、シールとブシュの間により大きな「自由空間」が生じる。この空間を油で満たすことができ、この結果、潤滑剤溜めがより大きくなり、リンクチェーンの寿命やメンテナンス間隔が長くなる。
【0016】
本発明のさらに有利な実施形態において、突出部を有するブシュが内プレートから外プレートの方向に突出するように構成してもよい。そのような突出部は、シールアセンブリの一部に再びなるスラストワッシャを取り付けるために使用できる。さらに、この突出部を介して、ブシュによってピンが最大限に覆われて、一般的にはより大きな荷重、特に曲げ荷重がピンによって受け止められることを達成することが可能であり、したがって、突出部はピンの補強の一種として働く。さらに、突出部は、内プレートから外プレートを離間させるためのスペーサリングとして使用することができ、したがって、必ずしも別個のスペーサリングを設ける必要がない。
【0017】
本発明のさらなる有利な実施形態において、特にブシュ前面は、特に外プレートの前に直接配設されている。たとえば、ブシュ前面と外プレートとの間にはシールがない。外プレートは、それに応じてブシュの前面側で支持することができ、それによって、ピンに作用するより高い曲げ荷重を受け止めることに寄与することができる。これにより、ピンの曲げが小さくなり、および/またはピンとブシュとの間のエッジ圧力が減少する。にもかかわらず、好ましいことに、ブシュ前面と外プレートとの間には、チェーンリンクが自由に回転することができる一定の隙間がある。
【0018】
本発明のさらなる有利な実施形態において、シールアセンブリがシールおよびシール受容空間を備えてなるものとすることが可能である。シール受容空間は、シールを収容するのに役立つ。さらに、シール受容空間は、たとえば油、グリースなどの潤滑剤で充填することが可能であり、チェーンリンクの潤滑のための溜めとして機能する。
【0019】
本発明の有利な実施形態において、シール受容空間は、スラストワッシャおよび受けディスクから形成される構成とすることが可能である。この変形例は、プレート間のシール受容空間として実施可能であることを示している。有利なことに、この変形例において、シールのためのシール面は、スラストワッシャによって完全に形成することが可能である。この点において、プレート表面のシール面としての構成に特別の注意を払う必要がないので、プレートの特別な処理をここで行う必要がない。受けディスクは、シールの受け入れまたは保持に合わせて形成されてもよい。
【0020】
本発明のさらに有利な実施形態において、特に外プレートにおいて、スラストワッシャおよび環状凹部からシール受容空間が形成される。この変形例は、プレート間のシール受容空間の設計のためのさらなる可能性を示し、この別個の受けディスクを、プレートの内の1つのプレートの環状凹部で置き換えることが可能である。この実施形態の利点は、スペースができるところにある。シール受容空間がプレート内に部分的に入り込むので、内プレートと外プレートとは互いに接近して配設可能である。
【0021】
本発明のさらなる有利な実施形態において、スラストワッシャまたは受けディスクが、ブシュの突出部に取り付けられてなる構成とすることも可能である。内プレートから突出したブシュの突出部は、スラストワッシャまたは受けディスクのための接続手段として使用することが可能である。これにより、シール受容空間に収容されたシールを簡単かつ効果的に取り付けることができる。
【0022】
本発明のさらなる有利な実施形態において、リング、特に金属リングがシール受容空間内に配設されてなる構成とすることが可能である。金属リングは、シールとともにラビリンスシールを形成することが可能である。さらに、リングは、シール受容空間を増大させることが可能である。
【0023】
本発明のさらなる有利な実施形態において、プレートは、半製品から、特に平面材または金属板から作製されてなることが可能である。半製品、特に平面材または金属板で作製されたプレートの場合、たとえ少量であっても経済的に製造することが可能である。さらに、ほぼ任意の輪郭形状およびサイズを実現することができる。顧客の希望のもの、カスタムメイドの製品が、簡単かつ安価に実現可能である。だがもちろん、プレートを鍛造プレートとすることも可能である。
【0024】
本発明のさらなる有利な実施形態において、ブシュおよび/またはピンには、潤滑剤充填開口部を設けることが可能である。これらの潤滑剤充填開口部を介して、チェーンリンクには、適切に潤滑剤を充填することが可能である。
【0025】
本発明のさらなる有利な実施形態において、ブシュおよび/またはピンには、潤滑剤受容アセンブリ、特に溝、面、または穴が設けられることが可能である。潤滑剤受容アセンブリは、たとえば、溝、面、または穴として、ピン、またはブシュの内壁上に配設可能であり、チェーンリンクの内部の潤滑剤溜めとして機能する。最終的に、こうすることによって、リンクチェーンはメンテナンスがあまりいらない、またはメンテナスフリーのものとなる。
【0026】
本発明のさらなる有利な実施形態において、潤滑剤、特にオイルまたはグリースでシール受容空間を充填することができる。シール受容空間は、チェーンリンク用の潤滑剤溜めとして機能し、長期の潤滑を確保することが可能である。
【0027】
これに関連して、好ましいことに、ブシュは前面に放射状の溝を有してなるものとすることが可能である。これによって、潤滑剤をシール受容空間から潤滑剤受容アセンブリ内に、およびその逆で輸送することができる。
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の好ましい実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に従ったリンクチェーンの斜視図である。
図2】断面図において、シール受容空間を形成する凹部とスラストワッシャとを備えた本発明に従ったリンクチェーンを示す。
図3図2の拡大詳細図である。
図4】断面図において、シール受容空間を形成するスラストワッシャおよび受けディスクを備えたさらなる実施形態における本発明に従ったリンクチェーンを示す。
図5】断面図において、シール受容空間を形成するスラストワッシャおよび凹部を備えたさらなる実施形態における本発明に従ったリンクチェーンを示す。
図6】断面図において、シール受容空間を形成する凹部とスラストワッシャとを備えた本発明に従ったリンクチェーンを示す。
図7】斜視図において、それぞれは、トラフ型断面およびL字型断面を有する実施形態におけるスラストワッシャを示す。
図8】斜視図において、受けディスクを示す。
図9】斜視図において、凹部と、それぞれに組み込まれたリングとを有するプレートを示す。
図10】斜視図において、凹部を有するプレートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
リンクチェーンの構成は、当業者には十分に知られている。リンクチェーン、特にブシュチェーンは、実質的に、2つの相並んだ要素から構成されてなる。これらの要素は、内部材および外部材とも称される。外部材は、通常、2つのピン4によって互いに結合された2つの外プレート2からなる。内部材は、通常、2つのブシュ3によって相互接続された2つの内プレート1から構成されてなる。常に、ブシュ3と、該ブシュ3に挿入されたブシュピン4に隣接したチェーンとがチェーンリンクを形成する。これらのリンクは、たとえばパワートレインに設けられたスプロケットへのリンクチェーンの巻き付きを可能にする。前述の実施形態は、単純なリンクチェーンを形成する。もちろん、内部材または外部材は、それぞれもっと多くのプレートも可能である。また、ブロックプレートまたはブロックプレートチェーンの場合などは、各チェーンのプレートの数を少なくすることも考えられる。本発明に従ったチェーンは、直線状またはクランク状のプレートを備えることが可能である。特に、ブシュコンベヤチェーンの場合、全構成が可能である。
【0031】
コンベヤチェーンとして使用するとき、好ましいことに、長くされたピン4またはブシュ3には、対応するローラ5が設けられ、ならびに/または、プレート、特に内プレート1および/もしくは外プレート2には、対応の接続要素6が備えられる。これにより、プラットフォームなどの輸送設備を接続することが可能である。
【0032】
プレート、ピン、およびブシュの材料としては、原則的に金属材料であればよい。また、高強度プラスチックなどの非金属材料も考えられる。プレートは、製造技術的に、半製品、特に、平面材料、または金属板から作製可能であり、または鍛造部品もしくは鋳造部品として実施することが可能である。また、プラスチックまたは他の適切な材料の射出成形または3D印刷も可能である。さらにまた、好ましくは、ピン端部には、外プレート2に接続するための肩部41が設けられる。その結果として生じる停止作用のために、外プレート2の非常に正確な取り付けが可能となる。
【0033】
本発明に実質的に必須の領域は、内プレート1と外プレート2との間の領域である。この点において、本発明に従ったリンクチェーンは、ブシュ3を有する少なくとも1つの内プレート1と、ピン4を有する外プレート2とを備える。ピン4は、ブシュ3に挿入され、チェーンリンクを形成する。本発明に従ったリンクチェーンは、ブシュ3とピン4とから形成されたチェーンリンクをシールするために設けられたシールアセンブリも有する。
【0034】
本発明に従えば、内プレート1と外プレート2との間、特に半径方向外方にブシュ3が配置されることが提供される。
【0035】
本発明に従ったリンクチェーンのシール構造は、実質的にシール受容空間11とシール受容空間11に受け入れられたシール9とを含む。シール受容空間11は、プレート1,2間に、ブシュ3の半径方向外方に対応して配置されている。
【0036】
シール受容空間11は、特にシールを受け入れるように機能し、様々な方法で形成することが可能である。
【0037】
好ましい実施形態において、シール受容空間は、スラストワッシャ7と環状凹部8とを含む。好ましくは、外プレート2の凹部8とスラストワッシャ7とが内プレート1の前方に配置される。そのような実施形態が特に図2および図3に示されている。しかしながら、基本的にはその逆も考えられる。
【0038】
また、ストップリングとして扱うことができるスラストワッシャ7は、好ましくは、ほぼ断面が箱形の溝の形をしている。言い換えれば、スラストワッシャ7は、その断面において、真直ぐな基部側と、基部側から、特にその端部から延びる2つの脚部とを有する。脚部は長さが異なるように設計することが可能である。スラストワッシャ7は、他の形状を有していてもよい。これは、たとえば平らであってもよく、そして長方形の断面を有するものであってもよい。またL字状の断面でもよい。
【0039】
好ましくは、ブシュ3には、突出部31が設けられ、寸法としてはブシュ端部から内プレート1の表面までの突出部であって、内プレートから突出する突出部としてもよい。好ましくは、スラストワッシャ7は、この、内プレート1から突出している、ブシュ3の突出部に取り付けられ、内プレート1の前方に配設されている。好ましくは、シールアセンブリ、特にシールの内径は、ブシュの、特にブシュの突出部の外径よりも大きい。スラストワッシャ7の取り付けは、好ましくは、ブシュ3、または突出部31、またはその他の摩擦接合部またはインターロック接合部に圧入することによって行われる。突出部31は、スラストワッシャ7用の受け部として以外に、スペーサリングの機能を果たし、機械的過負荷に対してシール9を保護する。
【0040】
環状溝でもよい環状凹部8は、断面が箱形の溝の形状を有し、それゆえ、凹部8は、好ましくは、底部と2つの垂直側面とを有する。
【0041】
組み立てられた状態では、スラストワッシャ7と環状凹部8とのそれぞれの開口部が対向しているので、スラストワッシャ7と環状凹部8との間にはシール受容空間11が存在する。
【0042】
あるいは、シール受容空間11は、スラストワッシャ7と受けディスク12とによって形成されてもよい。この場合、プレート内に環状凹部を設けることができる。受けリングと称してもよい受けディスクは、この場合には、主として、シール受容空間11内でのシール9の取り付けに役立つ。スラストワッシャ7および受けディスク12を、内プレート1または外プレート2上に選択的に配設してもよい。スラストワッシャ7は、好ましくは、内プレート1の前方に、受けディスク12は、外プレート2の前方に配設される。そのような実施形態を図4に示す。スラストワッシャ7はまた、受けディスク12とともに、シール9を保護するラビリンスまたはラビリンスシールを形成する。
【0043】
あるいは、シール受容空間11は、環状凹部13に収容されたスラストワッシャ7と環状凹部8とによって形成することができる。好ましくは、環状凹部8は外プレート2に設けられ、環状凹部13はスラストワッシャ7とともに内プレート1に設けられている。そのような実施形態を図5に示す。ここで用いられるスラストワッシャ7は、たとえばL字状の断面を有する。
【0044】
結果として、特に上記の例示的な実施形態と関連して、ブシュ3またはブシュ3の突出部31の周囲領域を取り囲む、好ましくは矩形断面を有するシール受容空間11が得られる。実質的に、スラストワッシャ7は、シール面、すなわちシールが押圧して擦れる面の機能を担う。シール9とスラストワッシャ7または機械加工されたプレートの表面とは、好ましくは、外向きに油密であり、少なくとも大部分が油密シール構造を提供する。スラストワッシャ7の材料としては、好ましくは鋼、ステンレス鋼または浸炭鋼である。ここでは多くの可能性が考えられる。それぞれのシール面形成要素、すなわちスラストワッシャ7では、いくつかの条件を満たさなければならない。それらは、シールだけでなくスラストワッシャ7自体の急速な摩耗を防止するために、硬化され、精密機械加工されるべきである。また、コーティングまたは他の機械加工も考えられる。好ましくは、スラストワッシャのシール面はあまり大き過ぎない表面粗さを有する。表面粗さは、適切な処理手段によって調整することができる。しかしながら、最終的には、スラストワッシャの加工または製造は、シール面としてのプレートの対応する加工よりも容易である。ここでも、シール面は別個の部分、ここではスラストワッシャ、によって提供されるので、シール面としての適性に関するプレート材料の選択に特別の注意を払う必要はない。また、スラストワッシャの代わりに、それぞれのプレート面をシール面として機能させることができるように処理することも考えられる。処理としては、たとえば、それぞれのプレート表面上のコーティングだけでなく、硬化、熱処理、機械加工などの他の加工方法も可能である。
【0045】
環状凹部8または受けディスク12は、主としてシール9をシール受容空間内に保持するように機能する。
【0046】
シール9は、好ましくは、シールリングまたは環状シールである。シール9は、チェーンリンクへの汚れの進入およびチェーンリンクからの潤滑油/油の飛散を防止するためのものである。シール9は、対応する弾性特性を有していなければならないので、シール9とそれぞれのシール面との間には、常に、規定された接触/圧力が存在する。これは別個の弾性要素によっても達成することができる。シール9は、たとえば、3つの構成要素からなるシールである。
【0047】
シール受容空間11には、シール9に加えて、リング10、好ましくは、金属リングが挿入されていてもよい。リング10は、たとえば、スラストワッシャ7およびスラストワッシャの脚部とともにラビリンスシールを形成してもよい。しかしながら、たとえば、反対側のプレートの環状凹部とともに別の対をなすものも考えられる。さらに、リング10は、シール9の組立補助および/または機械的保護として作用することができる。ブシュ3または突出部31は、外プレート2に衝突することによって軸方向の遊びの制限に貢献する。
【0048】
既に上述したように、シール9は、潤滑剤シールから技術的に実現可能な寸法でチェーンリンクをシールする。チェーンリンクは潤滑剤で充填することができる。潤滑油としては、たとえば、油またはグリースを挙げることができる。
【0049】
好ましくは、潤滑剤は、ブシュ3および/またはピン4に設けられた潤滑剤充填開口部43を介して充填される。図2および図3に従った実施形態において、たとえば、ピンとブシュの両方に潤滑剤充填開口部43が設けられている。図6の実施形態において、たとえば、ピン4の両端面に2つの潤滑剤充填開口部43が設けられている。
【0050】
ブシュ3および/またはピン4には、溝、面または穴などの潤滑剤受容アセンブリ44が設けられていてもよい。実質的に、潤滑剤受容アセンブリ44は、潤滑剤をブシュ3とピン4との間に保持するように機能する。好ましくは、潤滑剤充填開口部43と潤滑剤受容アセンブリ44との間のピン4またはブシュ3には、充填された潤滑剤が潤滑剤受容アセンブリ44に到達することができるチャネル42が設けられる。潤滑剤充填開口部43は、たとえば適切なニップルまたはねじによって閉鎖することができる。このように、チャネル42は、潤滑剤溜めとして機能することができる。最終的に、潤滑剤はチェーンリンク内に分配される。
【0051】
またシール受容空間11内に潤滑剤が充填されていることが好ましい。ここで受容される潤滑剤は、実質的に、チェーンリンクのための潤滑剤溜めとして機能し、かつシールを潤滑剤で濡らすために役立つ。これに関連して、ブシュ3は、前方側に半径方向溝32を有することが好ましい。これらの溝32を介して、シール受容空間とチェーンリンクとの間で潤滑剤を交換することができる。
【0052】
図面には以下の参照符号が使用されている。
【符号の説明】
【0053】
1 内プレート
2 外プレート
3 ブシュ
4 ピン
5 ローラ
6 接続要素
7 スラストワッシャ
8 凹部/リング溝
9 シール
10 リング
11 シール受容空間
12 受けディスク
13 凹部
31 突出部
32 溝
41 肩部
42 チャネル
43 潤滑剤充填開口部
44 潤滑剤受容アセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10