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  • 特許-路面カッター 図1
  • 特許-路面カッター 図2
  • 特許-路面カッター 図3
  • 特許-路面カッター 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】路面カッター
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/09 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
E01C23/09 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021139444
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2021-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391065655
【氏名又は名称】株式会社クライム
(74)【代理人】
【識別番号】100108327
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 雄太
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-128008(JP,U)
【文献】実開昭49-81533(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水タンクから円形ブレードの冷却水路と洗浄水路への分岐の手前に電動ラインポンプが設けてあり、電動ラインポンプの下流側に分岐が設けてあって円形ブレード冷却水路と洗浄水路に流路が分岐されており、電動ラインポンプの入・切スイッチが泥水を吸引するバキュームポンプのスイッチの入・切と連動させてある路面カッター装置。
【請求項2】
請求項1において、電動ラインポンプの入・切スイッチが路面カッター装置の操作盤に設けてある路面カッター装置。
【請求項3】
請求項1において、電動ラインポンプはボリュートポンプである路面カッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装道路を切断する路面カッターに関する。更に詳しくは舗装路面の切断の際に使用する円形ブレードを冷却する冷却水及び路面の切断の際に発生する舗装体の切削粉を清掃除去するための洗浄水を必要に応じ必要量を切断箇所に供給できるようにして切断作業を効率的におこなえるようにし、かつ、路面を清浄に保つことができるようにした路面カッターに関する。
【背景技術】
【0002】
舗装道路は、車両の交通負荷、及び経年劣化によって欠損、ひび割れが生ずるので、舗装路面を切断撤去して新たに舗装する補修工事が必要となる。
既存の舗装の切断除去方法は、円形ブレードの周辺にダイヤモンドチップを装着した円形ブレードによって舗装を切断して撤去し、路盤を整備して新たに舗装工事を行っている。
【0003】
路面カッターの一般的な構造は、特許文献1(特開昭2001―219422号公報)、及び引用文献2(特許第6694756号公報)に示されるように、走行用の車輪を備えた本体内にエンジンが搭載されており、その動力は路面カッターの走行並びに切断用の円形ブレードの駆動源として使用されている。
円形ブレードによる舗装体の切断時の摩擦熱によって円形ブレードが加熱されるので冷却用の水を供給する水タンクを備えている。路面カッターに付属装備させた水タンクの容量に限度があるので、別途移動可能な水タンクを使用して路面カッターに水を供給することもおこなわれている。
【0004】
舗装体の切断によって発生する粉塵が周囲へ飛散するのを防止し、また、切断時の騒音の拡散防止のため、図3に示されるように概略半円形のカッターカバー20で円形ブレード2は包囲されており、冷却水を半円形カバー内に放射して切削粉を水中に取り込んで分散させ、切削粉を含む泥水を吸引ポンプを使用して吸引して回収タンク6に回収することによって路面を清浄に保つようにしており、円形ブレード2の過熱を防止する冷却水に加えて切削粉の飛散防止回収及び路面の洗浄用の洗浄水を供給する別途の供給路が装備されるようになった。
また、半円形カバーの下端にはゴム製の蛇腹及びブラシが設けてあり、ゴム製の蛇腹が路面に密着して水が漏れ出して路面を汚染しないようにしている。
【0005】
冷却水と洗浄水の二系統の水供給方式として、図3に示すように、水タンク1から重力によって冷却水と洗浄水を円形ブレード2及び円形ブレード2の前後に設けた洗浄ブラシ3a、3bに供給するタイプの路面カッターが知られている。
水タンク1から円形ブレード2への流路の途中に分岐管5が設けてあり、一方を円形ブレード2の冷却水とし、他方を道路舗装体の切削粉の洗浄水とに分けて供給している。冷却水は円形ブレード2を包囲する半円形のカッターカバー20の頂部の散水ノズル25から円形ブレード2に供給され、円形ブレード2を冷却すると共に舗装体の切削粉の回収にも利用される。
【0006】
カッターカバー20の左右両端の路面に接触する部分に近接して吸引ポンプに連結された洗浄ブラシ3a、3bが設けてあり、半円形カバー20の後方端部側の洗浄ブラシ3aに向けて洗浄水ノズル4から洗浄水を放出し、切削粉をブラシ3aの内方に押し込み、また、半円形カバー20の下端に設けられた蛇腹20aから漏れ出た冷却水を洗浄ブラシ3a、3bで吸引清掃して泥水を泥水回収タンク6に回収することによって路面が泥水で汚れるのを防止している。
【0007】
図3に示す路面カッターの従来例は、水タンク1から重力落差によって冷却水と洗浄水を円形ブレード2及び円形ブレード2の前後に設けた洗浄ブラシ3aに供給するものであり、水タンク1から円形ブレード2への流路の途中に分岐管5が設けてあり、一方を円形ブレード2の冷却水とし、他方を道路舗装体の切削粉の洗浄水とに分けて供給している。冷却水は円形ブレード2を包囲する半円形のカッターカバー20の頂部の散水ノズル25から円形ブレード2に供給され、円形ブレード2を冷却すると共に舗装体の切削粉の回収にも利用される。
【0008】
図4に示す従来技術においては、水タンク1から円形ブレード2の冷却のために供給される冷却水は、重力落差だけでなく、水タンクに近接して設けたポンプPを使用して冷却水を供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭2001―219422号公報
【文献】特許第6694756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、路面カッターに搭載した水タンクまたは独立した移動式水タンクから重力落差式給水方式、または、ポンプでコンクリートカッターに冷却水と洗浄水を供給していた。
重力落差式給水方式は、タンク内の水量が減少すると、円形ブレードへの供給水量が減少するのでポンプで給水量をアップさせることが行われていた。
重力落差式の水供給システムの場合、路面切断工事現場が坂道で、移動式水タンクが円形ブレードより低い位置関係となると、冷却用及び路面洗浄用の給水量が減少してカッターの冷却が十分におこなわれない場合、カッターの寿命が短くなるという不都合が生ずる。また、洗浄水が不足して路面の洗浄が不十分な場合、切断終了後に路面に残留した泥の残留物の除去清掃を行わなければならず、手間がかかっていた。
【0011】
路面の切断作業中に路面の洗浄が十分でないことに路面カッターのオペレータが気付き、洗浄水を増加させようとしても重力落差方式の場合には即座には対応することができず、また、ポンプによって洗浄水と冷却水を供給している場合でも、路面カッターがポンプから離れた場所にある場合、オペレータが移動して水量を増大させるまでに時間がかかり、即座には対応することができなかった。
【0012】
また、増大させた水量を元に戻すにもオペレータが調整のために移動するのに時間を要するので、迅速な対応ができず、水量を減じるまでの間に無駄に水を消費していた。
本発明は、路面の切断及び清掃作業をしながら冷却水及び洗浄水の増減を路面カッターの操作を中断することなく、簡易かつ迅速に実施できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
水タンクから円形ブレードの冷却水用と切削粉の洗浄水用への分岐管の手前に電動ラインポンプを設け、電動ラインポンプの下流側において円形ブレードの冷却水用と洗浄水用に水流を分岐し、電動ラインポンプの入・切スイッチが洗浄水を吸引するバキュームポンプのスイッチと連動させてあり、路面カッターの操作盤に配置した入・切スイッチによって電動ラインポンプの稼働の開始・停止及び洗浄水の吸引を路面の切断状況に応じて即座に対応できるようにした路面カッター装置である。
【0014】
電動ラインポンプの形式は、ボリュート型ポンプが好ましく、電動ラインポンプを作動させた状態で電動ラインポンプの下流側に設置したコックを閉じて清浄水の供給を一時的に停止させても、電動ラインポンプの作動を長時間停止させない限り電動ラインポンプの焼損が起きることがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、従来の重力落差給水方式と比較して必要な洗浄水を必要に応じて路面カッターの操作をしながら即座に供給水量を増減することができるので、洗浄用及びブレード冷却用に供給する水量が不足して円形ブレードが加熱焼損することがなく、切削粉の洗浄除去が十分におこなわれずに路面が汚染された状態になるということを防止することができる。
従って、路面洗浄水が不足して路面に薄い泥の層が残留形成されるなどの好ましくない状態になることを防止することができる。
【0016】
また、電動ラインポンプが装備してあるので水タンクの位置が路面カッターより低い位置にある場合であっても、従来の重力給水方式において生じていた水量不足を回避することができ、十分な量の洗浄水を供給できるので切断作業を効率的に行うことができ、路面切断作業時間を短縮することができ、道路の交通制限の時間を短縮することができ、道路の車線規制によって生じる渋滞を短くすることができ、交通経済に与える影響を減じることができる。
【0017】
また、装着した電動ラインポンプにより円形ブレードに供給する冷却水量を従来の重力給水方式による冷却水供給に比して多くすることができるので、円形ブレードの冷却が十分おこなえ、円形ブレードの寿命を永くすることができ経済的であると共に、路面の切断速度をも向上させることができるので路面切断の作業時間を短縮することが可能であり、路面切断工事による道路占有時間を短縮でき、道路交通を阻害する時間を短くすることができる。
【0018】
本発明の利点を以下に列挙する。
(1)電動ラインポンプの採用により、従来の重力落差給水方式と比較し円形ブレードへの冷却水の給水量を少なくとも50%向上させることができ、円形ブレードの寿命を延ばすことができる。また、手元のスイッチによって電動ラインポンプのスイッチの入・切作動をおこなうことができる。
(2)路面切断時は円形ブレードの冷却水や路面洗浄水を路面から吸い上げるバキューム装置を必ず使用するものであり、電動ラインポンプの始動スイッチとバキューム作動スイッチを連動させているので操作性が良い。
(3)路面洗浄水の供給量を状況に応じて即座に増減することができるので洗浄水が効率的に使用され、水タンクへの水の供給回数を減らすことができ、また、路面清掃に十分な清浄水を供給できるので路面に泥が残留することがほとんどなくなると共に、切断跡が綺麗である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の路面カッターの実施例。
図2】本発明の実施例の路面カッターに用いる配管系統図。
図3】従来の路面カッターの概略図。
図4】従来の他の路面カッターの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1の模式的概略図に示すように、路面カッターAの車体内には、図示していない走行及び路面カッターAの駆動に必要な駆動源のエンジンや走行機構、更には路面カッターAの路面への切込み深さ調整用の油圧機器並びに路面に漏出した冷却水及び舗装材の切削粉と冷却水からなる泥水を吸引する吸引ポンプなどが装備されており、走行しながら舗装路面を切断するものである。
路面カッターAに装備されている円形ブレード2の回転によって舗装路面を切断するものであり、半円形のカバー20で円形ブレード2は覆われており、露出しないようにしてある。
【0021】
図1に示す実施例の水タンク1は、路面カッターAとは別体の独立したものであり、水タンク1をトラック等に搭載固定してあって移動可能であり、路面の切断工事現場に近接した所定の場所に固定し、水タンク1からホースHを介して路面カッターAに冷却水と洗浄水を供給する。
また、路面カッターAは、走行用の車輪W及び円形ブレード2の路面への切込み量の調整手段を備えており、円形ブレード2の路面への切込み深さは調整可能である。また、本発明に直接関係しないので図示は省略してあるが、洗浄泥水を吸引回収するバキュームポンプ、回収した汚泥を排出する汚泥排出ポンプ、汚泥と空気を分離するバキュームタンク等が装備されている。
【0022】
舗装路面の円形ブレード2による切断によって摩擦熱が発生するので水タンク1より円形ブレード2にホースHを介して冷却用の水が供給される。路面カッターAには、外付けの電動式ラインポンプ10が取付金具で本体に固定されており、電動式ラインポンプ10は水タンク1にホースHで連結され、コック55を介して分岐5が設けてあって水路は冷却水路51と洗浄水路52に分岐されている。
【0023】
冷却水路51は、半円形カバー20の頂部から円形ブレード2に向かって円形ブレード2を包囲する半円形カバー20の頂部に設けた散水ノズル25から円形ブレード2に向かって散水されて円形ブレード2を冷却し、円形ブレード2が過熱状態となるのを防止する。
【0024】
また、分岐された他方の洗浄水路52からは、路面カッターAの半円形カバー20の後方に位置する洗浄水ノズル4から洗浄ブラシ3aに向けて水が噴出され、蛇腹20aから漏れ出した泥水(冷却水と舗装路面の切断粉とが混合された泥水)を洗浄ブラシ3aに向かって押し流して洗浄ブラシ3aの吸引口から吸引させ、図示しない吸引ポンプによって泥水回収タンク6に搬送されるようにしてあり、汚泥と泥水は泥水回収タンク6に貯留され、脱水処理などを施すなどして適宜処分される。
また、半円形カバー20の先端側にも吸引ブラシ3bが設けてあり、蛇腹20aから漏出した泥水は同様に吸引されて泥水回収タンク6に送られて処分される。
【0025】
半円形カバー20の下端の路面に接する部分にはゴム製の蛇腹20aが設けてあり、この蛇腹20aの弾力によって下面が路面に密接するので半円形カバー20の頂部から円形ブレード2に向かって散水された冷却水は半円形カバー20の外側に洩れ出すことが防止され、従って、泥水が路面に流出して拡散されるのを防止している。
【0026】
図2に示すように、電動ラインポンプ10の入・切スイッチは、吸引ポンプの入・切スイッチと連動するように配線してあり、電動ラインポンプ10のスイッチを「入」にして電動ラインポンプ10を作動させると、同時に吸引ポンプも作動を開始するようにしてある。
従って、従来の水タンク1の水位差だけでなく、電動ラインポンプ10による吐水量が追加されるので洗浄ブラシ3a及びブレードカッターに冷却水として供給される水量が増加する。
通常の路面カッターに装備されているバッテリーによる駆動によって、円形ブレード2への冷却水の給水量が少なくとも50%向上することを確認した。
また、洗浄ブラシ3aに供給される洗浄水も少なくとも10%の水量増加が認められた。
更に、電動ラインポンプ10の下流であって、分岐5の手前側にコック55を設けることによって円形ブレード及び洗浄用に供給する水量を調整することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 水タンク
2 円形ブレード
20 半円形カバー
20a 蛇腹
25 散水ノズル
3a、3b 洗浄ブラシ
4 洗浄水ノズル
5 分岐
51 冷却水路
52 洗浄水路
55 コック
6 泥水回収タンク
A 路面カッター
H ホース
P 電動ラインポンプ
W 走行用車輪
【要約】
【課題】
路面カッター装置による舗装路面の切断作業において、泥水を路面から除去しながら冷却水・洗浄水の供給量を臨機応変に増減できるようにする。
【解決手段】
水タンク1から円形ブレード2の冷却水用と切削粉の洗浄水供給用への分岐の手前に電動ラインポンプ10を配設し、その下流側に円形ブレード冷却水用と洗浄水用に分岐させ、電動ラインポンプ10の入・切スイッチが使用済み洗浄水及び冷却水を吸引するバキュームポンプのスイッチと連動させることによって状況に応じて冷却水量の供給量を増減できるようにした。電動ラインポンプは、ボリュート型ポンプが好ましく、作動させた状態でポンプ下流側に設置したコックを閉じて洗浄水の供給を停止させてもポンプの焼損の確率が低い。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4