(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】車両運転制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/035 20120101AFI20220106BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220106BHJP
B60T 8/94 20060101ALI20220106BHJP
B60T 8/96 20060101ALI20220106BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B60W50/035
B60T7/12 D
B60T8/94
B60T8/96
B62D6/00
(21)【出願番号】P 2018518312
(86)(22)【出願日】2017-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2017018394
(87)【国際公開番号】W WO2017199967
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2016099946
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515213711
【氏名又は名称】先進モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 啓二
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-015741(JP,A)
【文献】特開2004-338630(JP,A)
【文献】国際公開第2015/000739(WO,A1)
【文献】特開2000-344067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32― 8/96
B62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキ装置を制御するブレーキ制御部と、
前記ブレーキ制御部を制御することで前記車両の運転を制御する運転制御部と、を備える車両運転制御システムであって、
前記ブレーキ制御部によって制御されて、前記ブレーキ装置をエアによって作動させるブレーキエア回路を備え、
前記ブレーキ制御部が2重化され
、第1ブレーキ制御部及び第2ブレーキ制御部を備え、
前記ブレーキエア回路も2重化され、前記第1ブレーキ制御部によって制御される
第1ブレーキエア回路及び前記第2ブレーキ制御部によって制御される第2ブレーキエア回路を備え、
前記第1ブレーキエア回路及び前記第2ブレーキエア回路からエアが供給されて、供給された圧力のうち高い方を前記ブレーキ装置に出力する弁を備え、
前記
第1ブレーキ制御部
及び前記第2ブレーキ制御部のうち一方のみが失陥した場合には
、前記
第1ブレーキ制御部
及び前記第2ブレーキ制御部のうち他方が
対応する前記ブレーキエア回路を作動させて前記車両の速度を所定の速度まで減少させる
車両運転制御システム。
【請求項2】
前記運転制御部によって制御されて、前記ブレーキ装置をエアによって作動させる保安ブレーキエア回路と、
前記
弁である第1弁及び前記保安ブレーキエア回路からエアが供給されて、供給された圧力のうち高い方を前記ブレーキ装置に出力する
第2弁と、を備え、
前記
第1ブレーキ制御部
及び前記第2ブレーキ制御部の両方が失陥した状態、及び前記運転制御部が失陥した状態の少なくとも一方に該当する場合には、前記保安ブレーキエア回路を作動させて前記車両を停止させる
請求項1に記載の車両運転制御システム。
【請求項3】
前記車両の動力源を制御する動力源制御部と、
前記車両の変速機を制御する変速機制御部と、
前記車両の操舵を行う操舵装置を制御する操舵制御部と、を備え、
前記運転制御部が2重化され、前記2重化された運転制御部のうち一方のみが失陥した場合には、他方の前記運転制御部が前記動力源制御部、前記変速機制御部、前記ブレーキ制御部、及び前記操舵制御部を制御することで、前記車両の運転制御を継続しながら前記車両を減速させる
請求項1又は2に記載の車両運転制御システム。
【請求項4】
前記動力源制御部、前記変速機制御部、前記ブレーキ制御部、及び前記操舵制御部には、両前記運転制御部から制御するための制御信号がそれぞれ出力される
請求項3に記載の車両運転制御システム。
【請求項5】
前記操舵制御部が2重化され
、第1操舵制御部及び第2操舵制御部を備え、
前記操舵装置も2重化され、前記
第1操舵制御部によって制御される第1操舵装置及び前記第2操舵制御部によって制御される第2操舵装置を備え、
前記第1操舵制御部及び前記第2操舵制御部のうち一方のみが失陥した場合には、前記第1ブレーキ制御部及び前記第2ブレーキ制御部のうち失陥していない前記ブレーキ制御部に対応する前記ブレーキエア回路を作動させて前記車両の速度を所定の速度まで減少させる
請求項3又は4に記載の車両運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、トラック等の貨物車両による輸送の合理化を図るため、自動追従走行システムの研究・開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。この自動追従走行システムでは、運転者が運転する先導車に、無人又は有人の追従車が自動追従走行する。
【0003】
自動追従走行システムに用いられる車両(追従車)は、運転者の代わりに制御を行う制御ECUを備える。この制御ECUは、ステアリングや、エンジン、トランスミッション、ブレーキ等を制御して、自動追従走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記システムでは、追従車が無人で走行する場合に、システムを構成する装置の一部に失陥が発生した状態に対応することができない。そのため、非常時にも対応可能なシステムが求められている。
【0006】
本発明の目的は、冗長性を高めた車両運転制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両運転制御システムは、車両のブレーキ装置を制御するブレーキ制御部と、前記ブレーキ制御部を制御することで前記車両の運転を制御する運転制御部と、を備え、前記ブレーキ制御部及び前記運転制御部の少なくとも1つの制御部が2重化されている。
【0008】
上記構成によれば、ブレーキ制御部及び運転制御部の少なくとも1つの制御部の2重化によって車両運転制御システムの冗長性を高めることができる。
上記車両運転制御システムについて、前記2重化された制御部のうち一方のみが失陥した場合には、前記ブレーキ制御部が前記車両の速度を所定の速度まで減少させることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、2重化された制御部のうち一方のみが失陥した場合に、ブレーキ制御部が車両の速度を所定の速度に減少させるので、その後、2重化された制御部の両方が失陥したとしても車両を停止させるまでに要する時間及び走行距離を短くすることができる。
【0010】
上記車両運転制御システムについて、前記車両の動力源を制御する動力源制御部と、前記車両の変速機を制御する変速機制御部と、前記車両の操舵を行う操舵装置を制御する操舵制御部と、前記車両に異常が発生したときに、前記ブレーキ装置を作動させる保安ブレーキと、を備え、前記運転制御部は、前記動力源制御部及び前記操舵制御部を制御することで前記車両の運転を制御し、前記2重化された制御部であって同じ制御対象を制御する2つの制御部の両方が失陥した状態、前記ブレーキ制御部及び前記運転制御部のうち2重化されていない制御部が失陥した状態の少なくとも一方に該当する場合には、前記保安ブレーキが前記車両を停止させることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、2重化された運転制御部のうち一方の運転制御部が失陥したとしても他方の運転制御部が失陥していなければ当該他方の運転制御部によって動力源制御部、ブレーキ制御部、及び操舵制御部を制御することができる。また、2重化された制御部の両方と2重化されていない制御部との少なくとも1つに失陥が生じることによって制御対象を制御不可能となる場合には、保安ブレーキが、ブレーキ制御部等を介さずにブレーキ装置を作動させることで車両を停止させることができる。よって、非常時にも対応可能であって、車両運転制御システムの冗長性を高めることができる。
【0012】
上記車両運転制御システムについて、前記運転制御部が2重化された場合に、一方の前記運転制御部が失陥した際には、他方の前記運転制御部が前記動力源制御部、前記変速機制御部、前記ブレーキ制御部、及び操舵制御部を制御することで、前記車両の運転制御を継続しながら車両を減速させることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、一方の運転制御部が失陥したとしても他方の運転制御部が失陥していなければ当該他方の運転制御部が動力源制御部、変速機制御部、ブレーキ制御部、及び操舵制御部を制御することで車両の運転制御を継続しながら車両を減速させることができる。
【0014】
上記車両運転制御システムについて、前記運転制御部が2重化された場合に、前記動力源制御部、前記変速機制御部、前記ブレーキ制御部、及び前記操舵制御部には、両前記運転制御部から制御するための制御信号がそれぞれ出力されることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、2重化された両運転制御部が動力源制御部、変速機制御部、ブレーキ制御部、及び操舵制御部それぞれに制御信号を出力する。このため、一方の運転制御部が失陥したとしても他方の運転制御部が失陥していなければ当該他方の運転制御部からの制御信号によって動力源制御部、変速機制御部、ブレーキ制御部、及び操舵制御部を制御することができる。
【0016】
上記車両運転制御システムについて、前記操舵制御部が2重化されるとともに、前記操舵装置も2重化され、前記操舵制御部はそれぞれ異なる前記操舵装置を制御することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、2重化された操舵制御部はそれぞれ異なる操舵装置のみを制御する。このため、一方の操舵制御部が失陥したときに制御対象である操舵装置を切り替える必要がなく、操舵制御部が制御している操舵装置を制御するだけでよい。
【0018】
上記車両運転制御システムについて、前記ブレーキ制御部が2重化されるとともに、前記ブレーキ装置を作動させるブレーキエア回路も2重化され、前記ブレーキ制御部はそれぞれ異なる前記ブレーキエア回路を制御することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、2重化されたブレーキ制御部はそれぞれ異なるブレーキ装置のみを制御する。このため、一方のブレーキ制御部が失陥したときに制御対象であるブレーキ装置を切り替える必要がなく、ブレーキ制御部が制御しているブレーキ装置を制御するだけでよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両運転制御システムの冗長性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】車両運転制御システムの一実施形態における隊列走行を示す図。
【
図2】
図1の車両運転制御システムの概略構成を示すブロック図。
【
図3】
図1の車両運転制御システムのブレーキシステムの概略構成を示すブロック図。
【
図4】
図1の車両運転制御システムの失陥発生時における対応を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~
図4を参照して、車両運転制御システムの一実施形態について説明する。
まず、
図1に示されるように、車両運転制御システムを備えたトラック等の車両100によって隊列走行が行われる。この隊列走行では、運転者により運転操作される先頭車両100aと、無人運転による後続車両100bとによって形成される隊列が走行する。各車両100は、無線通信等によって各種情報を互いに送受信して、一定の車間距離を維持しながら走行する。例えば、有人の先頭車両100aは運転者のブレーキ操作に基づきブレーキを作動させ、無人の後続車両100bは直前の車両100a,100bに追従してブレーキを作動させる。なお、
図1では、3台の車両100によって隊列を形成したが、2台の車両100によって隊列を形成してもよく、4台以上の車両100で隊列を形成してもよい。
【0023】
図2に示されるように、車両100は、車両100の動力源(例えばエンジン)(図示略)を制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)31を備えている。車両100は、車両100の変速機(図示略)を制御するAMT(機械式全自動変速機:Automated Mechanical Transmission)ECU37を備えている。車両100は、車両100の操舵を行う第1操舵モジュール32及び第2操舵モジュール33の2つの操舵モジュールを備えている。第1操舵モジュール32は、第1操舵モータ32bと、第1操舵モータ32bを制御する第1操舵ECU32aとを有している。第2操舵モジュール33は、第2操舵モータ33bと、第2操舵モータ33bを制御する第2操舵ECU33aとを有している。操舵ECU32a,33aは、それぞれ異なる操舵モータ32b,33bに接続されて、接続された操舵モータ32b,33bを制御する。すなわち、車両100の操舵制御は2重化されているとともに、車両100の操舵のための駆動も2重化されている。換言すると、車両運転制御システムは、第1及び第2の操舵制御部としての第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aを備え、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aは2重化されている。また、車両運転制御システムは、第1及び第2の操舵装置としての第1操舵モータ32b及び第2操舵モータ33bを備え、第1操舵モータ32b及び第2操舵モータ33bは2重化されている。なお、エンジンECU31は動力源制御部に相当する。AMTECU37は変速機制御部に相当する。第1操舵モータ32b及び第2操舵モータ33bは操舵装置に相当する。第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aは操舵制御部に相当する。
【0024】
車両100は、車両100のブレーキ装置であるブレーキチャンバ2(
図3参照)を作動させる第1ブレーキモジュール34及び第2ブレーキモジュール35の2つのブレーキモジュールを備えている。第1ブレーキモジュール34は、第1ブレーキエア回路34bと、第1ブレーキエア回路34bを電子制御する第1EBSECU34aとを有している。第2ブレーキモジュール35は、第2ブレーキエア回路35bと、第2ブレーキエア回路35bを電子制御する第2EBSECU35aとを有している。第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aは、第1ブレーキエア回路34b及び第2ブレーキエア回路35bを制御することによって、ブレーキチャンバ2を制御する。なお、EBSは、電子制御ブレーキシステム(Electronic Brake System)の略である。すなわち、車両100のブレーキ制御は2重化されている。なお、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aはブレーキ制御部に相当する。換言すると、車両運転制御システムは、車両100のブレーキ装置としてのブレーキチャンバ2を制御する第1及び第2のブレーキ制御部としての第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aを備え、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aは2重化されている。
【0025】
ここで、
図3を参照して、車両100のブレーキ回路の具体的な構成を説明する。
図3に示すように、ブレーキチャンバ2は、第1ブレーキタンク1の圧縮空気を用いる第1ブレーキモジュール34、第2ブレーキモジュール35と、第2ブレーキタンク5(
図3参照)の圧縮空気を用いる保安ブレーキエア回路36とのいずれかによって作動される。
【0026】
第1ブレーキモジュール34は、第1ブレーキタンク1から第1ブレーキエア回路34bを介して供給される圧縮空気の流量を制御する。第1ブレーキモジュール34とブレーキチャンバ2とは、第1ブレーキタンク1の圧縮空気がブレーキチャンバ2に供給されるように、第1シャトル弁3及び第2シャトル弁4を介して接続されている。第1ブレーキエア回路34bは、第1ブレーキタンク1から供給された圧縮空気の流路を開閉する第1リレーバルブ41と、第1EBSECU34aからの制御信号に基づいて第1リレーバルブ41を駆動させる第1ソレノイドバルブ42とを備えている。第1ブレーキエア回路34bは、第1リレーバルブ41と第1シャトル弁3との間の圧力(第1ブレーキエア回路34bの圧力)を検出する第1圧力センサ43を備えている。第1圧力センサ43は、検出した第1ブレーキエア回路34bの圧力を第1EBSECU34aに出力する。
【0027】
第2ブレーキモジュール35は、第1ブレーキタンク1から第2ブレーキエア回路35bを介して供給される圧縮空気の流量を制御する。第2ブレーキモジュール35とブレーキチャンバ2とは、第1ブレーキタンク1の圧縮空気がブレーキチャンバ2に供給されるように、第1シャトル弁3及び第2シャトル弁4を介して接続されている。第2ブレーキエア回路35bは、第1ブレーキタンク1から供給された圧縮空気の流路を開閉する第2リレーバルブ51と、第2EBSECU35aからの制御信号に基づいて第2リレーバルブ51を駆動させる第2ソレノイドバルブ52とを備えている。第2ブレーキエア回路35bは、第2リレーバルブ51と第1シャトル弁3との間の圧力(第2ブレーキエア回路35bの圧力)を検出する第2圧力センサ53を備えている。第2圧力センサ53は、検出した第2ブレーキエア回路35bの圧力を第2EBSECU35aに出力する。すなわち、車両運転制御システムは、第1ブレーキエア回路34b及び第2ブレーキエア回路35bを備え、第1ブレーキエア回路34b及び第2ブレーキエア回路35bは2重化されている。
【0028】
第1シャトル弁3は、第1ブレーキエア回路34bから供給される圧縮空気の圧力と、第2ブレーキエア回路35bから供給される圧縮空気の圧力とのうち高いほうの圧力を第2シャトル弁4に出力する。
【0029】
保安ブレーキエア回路36は、第1ブレーキタンク1とは異なる第2ブレーキタンク5から供給される圧縮空気の流量を制御する。保安ブレーキエア回路36とブレーキチャンバ2とは、第2ブレーキタンク5の圧縮空気がブレーキチャンバ2に供給されるように、第2シャトル弁4を介して接続されている。保安ブレーキエア回路36は、第2ブレーキタンク5から供給された圧縮空気の流路を開閉する第3リレーバルブ61と、第1CPU10又は第2CPU20からの制御信号に基づいて第3リレーバルブ61を駆動させる第3ソレノイドバルブ62とを備えている。
【0030】
第2シャトル弁4は、第1シャトル弁3から供給される圧縮空気の圧力と、保安ブレーキエア回路36から供給される圧縮空気の圧力とのうち高いほうの圧力をブレーキチャンバ2に出力する。
【0031】
また、
図2に示されるように、車両100は、運転制御部として第1CPU10と第2CPU20との2つのCPUを備えている。第1CPU10と第2CPU20とは各々、エンジンECU31、AMTECU37、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aを制御することで車両100の運転を制御する。すなわち、車両100の運転制御は2重化されている。換言すると、車両運転制御システムは、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aを制御する第1及び第2の運転制御部としての第1CPU10及び第2CPU20を備え、第1CPU10及び第2CPU20は2重化されている。
【0032】
第1CPU10及び第2CPU20には、CAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)等の車載ネットワークNWを介して各種センサ等からの信号が入力されている。各種センサ等は、車両100の速度を検出する速度センサ71、車両100の前方や後方等を撮影するカメラ72、車両100の位置を検出するGPS(Global Positioning System)センサ73を備えている。また、各種センサ等は、車両100の後側方の物体を検出する後側方ミリ波レーダ74、前後の車両100と無線や光等によって通信を行う車車間通信機75、前方の車両100までの距離を検出する車間距離レーダ76、車両100の加速度を検出するGセンサ77(加速度センサ)を備えている。速度センサ71、カメラ72、GPSセンサ73、後側方ミリ波レーダ74、車車間通信機75、車間距離レーダ76、Gセンサ77は、車載ネットワークNWを介して第1CPU10及び第2CPU20の両方に検出結果を含む信号を出力する。
【0033】
第1CPU10は、各種センサ等から入力された信号を変換する入力変換部11、車両100が車線を維持するように制御する車線維持制御部12、車両100の位置を算出する自律航法制御部13を備えている。また、第1CPU10は、車両100の位置を、車線維持制御部12及び自律航法制御部13にて算出された位置に追従させるトラッキング制御部14、車両100の速度を制御する速度制御部15を備えている。更に、第1CPU10は、CPU自体が失陥しているか否かを監視するCPU監視部16、CPUが失陥したときに出力を遮断する出力遮断部17を備えている。同様に、第2CPU20は、入力変換部21、車線維持制御部22、自律航法制御部23、トラッキング制御部24、速度制御部25、CPU監視部26、出力遮断部27を備えている。
【0034】
第1CPU10の入力変換部11にて変換された信号は、車線維持制御部12、自律航法制御部13、トラッキング制御部14、及び速度制御部15にそれぞれ入力される。車線維持制御部12、自律航法制御部13、トラッキング制御部14から出力された制御信号は、統合された上で出力される。
【0035】
同様に、第2CPU20の入力変換部21にて変換された信号は、車線維持制御部22、自律航法制御部23、トラッキング制御部24、及び速度制御部25にそれぞれ入力される。車線維持制御部22、自律航法制御部23、トラッキング制御部24から出力された制御信号は、統合された上で出力される。
【0036】
第1CPU10のCPU監視部16は、出力遮断部17を制御することで第1CPU10から外部へ出力される信号を遮断する。同様に、第2CPU20のCPU監視部26は、出力遮断部27を制御することで第2CPU20から外部へ出力される信号を遮断する。これらのCPU監視部16,26は、ロックステップ方式等によって互いの出力を比較することで失陥を監視している。
【0037】
また、第1CPU10及び第2CPU20は、エンジンECU31、AMTECU37、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aに対して各装置を制御するための制御信号を出力可能である。エンジンECU31、AMTECU37、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aは、通常時には第1CPU10から出力される制御信号によって制御され、第1CPU10が失陥したときには第2CPU20から出力される制御信号によって制御される。すなわち、エンジンECU31、AMTECU37、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aには、第1CPU10から出力された制御信号及び第2CPU20から出力された制御信号のいずれかが入力されている。よって、第1CPU10及び第2CPU20の一方が失陥したとしても、失陥していない他方のCPUから出力された制御信号によって、エンジンECU31、AMTECU37、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aの制御が継続して行われる。なお、通常時には第2CPU20の出力遮断部27が第2CPU20からの制御信号の出力を遮断している。一方、第1CPU10のCPU監視部16が第1CPU10の異常を検出すると、第1CPU10の出力遮断部17によって第1CPU10からの制御信号の出力を停止するとともに、第2CPU20の出力遮断部27による第2CPU20からの制御信号の遮断を停止させる。
【0038】
車両運転制御システムは、2重化された制御部であって同じ制御対象を制御する2つの制御部の両方が失陥した状態、すなわち一対の運転制御部である第1CPU10及び第2CPU20の2つともが失陥した状態と、一対のブレーキ制御部である第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの2つともが失陥した状態とのうちの少なくとも1つの状態に該当する場合には、保安ブレーキエア回路36が車両100を停止させる。すなわち、車両100には、車両100に異常が発生したときに第1EBSECU34a又は第2EBSECU35aを介さずブレーキチャンバ2を直接作動させる保安ブレーキとしての保安ブレーキエア回路36が備えられている。保安ブレーキエア回路36は、第1CPU10及び第2CPU20の両方が失陥したときに、第1CPU10からの制御信号及び第2CPU20からの制御信号を受信しなくなることによって作動する。また、第1CPU10及び第2CPU20は、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの異常状態を検出可能である。保安ブレーキエア回路36は、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの両方が失陥したときに、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの異常状態を検出した第1CPU10又は第2CPU20からの制御信号によって作動する。さらに、第1CPU10及び第2CPU20は、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aの異常状態を検出可能である。第1CPU10及び第2CPU20は、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aの両方が失陥したときに、第1EBSECU34a又は第2EBSECU35aによってブレーキエア回路34b,35bを作動させる。
【0039】
また、車両運転制御システムは、2重化された制御部のうち一方のみが失陥した場合、すなわち、第1CPU10及び第2CPU20のうち一方のみが失陥した状態、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aのうち一方のみが失陥した状態、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aのうち一方が失陥した状態、の少なくとも1つの状態に該当する場合には、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aのうち失陥していないEBSECUが対応するブレーキエア回路34b,35bを制御して、車両100の速度を所定の速度(例えば、時速20km)まで減少させる。詳細には、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの両方が失陥していない場合、第1EBSECU34a、第2EBSECU35aはそれぞれ、ブレーキエア回路34b,35bを制御する。第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aのうち一方が失陥した状態では、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aのうち他方、すなわち失陥していないEBSECUが対応するブレーキエア回路34b,35bを制御する。
【0040】
次に、
図1~
図4を参照して、上記のように構成された車両運転制御システムによる失陥発生時における動作について説明する。
図4に示されるように、車両運転制御システムを備えた車両100が走行時に以下のNo.1~No.9に挙げられる状態のようになった場合についてそれぞれ説明する。
【0041】
No.1の状態では、2重化された第1CPU10及び第2CPU20のうち第1CPU10が失陥し、第2CPU20、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aが失陥していないときを示している。
【0042】
第1CPU10が失陥しても、第2CPU20が車両100の制御を継続して行うことで、車両100の走行が可能である。しかしながら、第2CPU20にも失陥が発生すると車両100の走行が不可能になるため、第2CPU20は第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aに減速を指示する。第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aは、ブレーキエア回路34b,35bを制御して、車両100の速度を所定の速度(例えば、時速20km)まで減少させる。
【0043】
このように、車両100の走行速度を抑制することで、この後に第2CPU20も失陥したときであっても、車両100が停止するまでの時間及び走行距離を短くすることができる。また、車両100が減速したことでなにかしらの失陥が車両100に発生したことを先頭車両100aの運転者が認識することができる。したがって、先頭車両100aの運転者は、車両100が高速道路を走行中であればサービスエリアやパーキングエリア等の退避できる場所へ車両100を移動させた後、停止させることができる。
【0044】
No.2の状態では、2重化された第1CPU10及び第2CPU20のうち第2CPU20が失陥し、第1CPU10、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aが失陥していないときを示している。
【0045】
第2CPU20が失陥しても、第1CPU10が車両100の制御を継続して行うことで、車両100の走行が可能である。しかしながら、第1CPU10にも失陥が発生すると車両100の走行が不可能になるため、第1CPU10は第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aに減速を指示する。第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aは、ブレーキエア回路34b,35bを制御して、車両100の速度を所定の速度(例えば、時速20km)まで減少させる。
【0046】
このようにNo.1の状態と同様に車両100の走行速度を抑制することで、この後に第1CPU10も失陥したときであっても、車両100が停止するまでの時間及び走行距離を短くすることができる。
【0047】
No.3の状態では、2重化された制御部であって同じ制御対象を制御する2つの第1CPU10及び第2CPU20の両方が失陥し、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aが失陥していないときを示している。
【0048】
第1CPU10及び第2CPU20の両方が失陥すると、車両100の制御を継続することができなくなる。そこで、保安ブレーキエア回路36は、第1CPU10からの制御信号及び第2CPU20からの制御信号を受信しなくなることによって作動して、車両100を停止させる。
【0049】
このように、車両100を停止させることで、制御できない状態での走行を止めることができる。また、車両100が停止したことでなにかしらの失陥が車両100に発生したことを先頭車両100aの運転者が認識することができる。
【0050】
No.4の状態では、2重化された第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aのうち第1EBSECU34aが失陥し、第1CPU10、第2CPU20、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、及び第2EBSECU35aが失陥していないときを示している。
【0051】
第1EBSECU34aが失陥しても、第2EBSECU35aが第2ブレーキエア回路35bの制御を行うことで、車両100の走行が可能である。しかしながら、第2EBSECU35aにも失陥が発生すると走行が不可能になるため、第1CPU10は第2EBSECU35aに減速を指示する。第2EBSECU35aは、第2ブレーキエア回路35bを制御して、車両100の速度を所定の速度(例えば、時速20km)まで減少させる。
【0052】
このようにNo.1の状態と同様に車両100の走行速度を抑制することで、この後に第2EBSECU35aも失陥したときであっても、車両100が停止するまでの時間及び走行距離を短くすることができる。
【0053】
No.5の状態では、2重化された第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aのうち第2EBSECU35aが失陥し、第1CPU10、第2CPU20、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、及び第1EBSECU34aが失陥していないときを示している。
【0054】
第2EBSECU35aが失陥しても、第1EBSECU34aが第1ブレーキエア回路34bの制御を行うことで、車両100の走行が可能である。しかしながら、第1EBSECU34aにも失陥が発生すると走行が不可能になるため、第1CPU10は第1EBSECU34aに減速を指示する。第1EBSECU34aは、第1ブレーキエア回路34bを制御して、車両100の速度を所定の速度(例えば、時速20km)まで減少させる。
【0055】
このようにNo.1の状態と同様に車両100の走行速度を抑制することで、この後に第1EBSECU34aも失陥したときであっても、車両100が停止するまでの時間及び走行距離を短くすることができる。
【0056】
No.6の状態では、2重化された制御部であって同じ制御対象を制御する2つの第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの両方が失陥し、第1CPU10、第2CPU20、第1操舵ECU32a、及び第2操舵ECU33aが失陥していないときを示している。
【0057】
第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの両方が失陥すると、車両100の制御を継続して行うことができなくなる。そこで、第1CPU10は、保安ブレーキエア回路36を作動させて、車両100を停止させる。
【0058】
このように、車両100を停止させることで、制御できない状態での走行を止めることができる。また、車両100が停止したことでなにかしらの失陥が車両100に発生したことを先頭車両100aの運転者が認識することができる。
【0059】
No.7の状態では、2重化された第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aのうち第1操舵ECU32aが失陥し、第1CPU10、第2CPU20、第2操舵ECU33a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aが失陥していないときを示している。
【0060】
第1操舵ECU32aが失陥しても、第2操舵ECU33aが第2操舵モータ33bを制御することで、車両100の走行が可能である。しかしながら、第2操舵ECU33aにも失陥が発生すると走行が不可能になるため、第1CPU10は第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aに減速を指示する。第1EBSECU34aは第1ブレーキエア回路34bを制御して、及び第2EBSECU35aは第2ブレーキエア回路35bを制御して、車両100の速度を所定の速度(例えば、時速20km)まで減少させる。
【0061】
このようにNo.1の状態と同様に車両100の走行速度を抑制することで、この後に第2操舵ECU33aも失陥したときであっても、車両100が停止するまでの時間及び走行距離を短くすることができる。
【0062】
No.8の状態では、2重化された第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aのうち第2操舵ECU33aが失陥し、第1CPU10、第2CPU20、第1操舵ECU32a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aが失陥していないときを示している。
【0063】
第2操舵ECU33aが失陥しても、第1操舵ECU32aが第1操舵モータ32bを制御することで、車両100の走行が可能である。しかしながら、第1操舵ECU32aにも失陥が発生すると走行が不可能になるため、第1CPU10は第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aに減速を指示する。第1EBSECU34aは第1ブレーキエア回路34bを制御して、及び第2EBSECU35aは第2ブレーキエア回路35bを制御して、車両100の速度を所定の速度(例えば、時速20km)まで減少させる。
【0064】
このようにNo.1の状態と同様に車両100の走行速度を抑制することで、この後に第2操舵ECU33aも失陥したときであっても、車両100が停止するまでの時間及び走行距離を短くすることができる。
【0065】
No.9の状態では、2重化された制御部であって同じ制御対象を制御する2つの第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aの両方が失陥し、第1CPU10、第2CPU20、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aが失陥していないときを示している。
【0066】
第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aの両方が失陥すると、車両100の制御を継続して行うことができなくなる。そこで、第1CPU10は、第1EBSECU34a、第2EBSECU35aに第1ブレーキエア回路34b、第2ブレーキエア回路35bを制御させて、車両100を停止させる。
【0067】
このように、車両100を停止させることで、制御できない状態での走行を止めることができる。また、車両100が停止したことでなにかしらの失陥が車両100に発生したことを先頭車両100aの運転者が認識することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)EBSECU及びCPUそれぞれの2重化によって車両運転制御システムの冗長性を高めることができる。
【0069】
(2)2重化された第1CPU10及び第2CPU20のうち一方、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aのうち一方、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aのうち一方の少なくとも1つが失陥した場合に、第1EBSECU34a又は第2EBSECU35aが車両100を所定の速度に減少させるので、その後、2重化された第1CPU10及び第2CPU20の両方、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aの両方、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの両方の少なくとも1つが失陥したとしても車両を停止させるまでに要する時間及び走行距離を短くすることができる。
【0070】
(3)2重化された第1CPU10及び第2CPU20のうち一方が失陥したとしても他方の第1CPU10及び第2CPU20が失陥していなければ当該他方の第1CPU10及び第2CPU20によってエンジンECU31、AMTECU37、第1EBSECU34a、第2EBSECU35a、第1操舵ECU32a、及び第2操舵ECU33aを制御することができる。また、2重化された第1CPU10及び第2CPU20の両方と、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの両方との少なくとも1つに失陥が生じることによって制御対象を制御不可能となる場合には、保安ブレーキエア回路36が、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35a等を介さずにブレーキチャンバ2を作動させることで車両100を停止させることができる。よって、非常時にも対応可能であって、車両運転制御システムの冗長性を高めることができる。
【0071】
(4)第1CPU10及び第2CPU20の一方が失陥したとしても他方の第1CPU10及び第2CPU20が失陥していなければ当該他方の第1CPU10又は第2CPU20がエンジンECU31、AMTECU37、第1EBSECU34a、第2EBSECU35a、第1操舵ECU32a、及び第2操舵ECU33aを制御することで車両100の運転制御を継続しながら車両を減速させることができる。
【0072】
(5)2重化された両第1CPU10及び第2CPU20がエンジンECU31、AMTECU37、第1EBSECU34a、第2EBSECU35a、第1操舵ECU32a、及び第2操舵ECU33aそれぞれに制御信号を出力する。このため、第1CPU10及び第2CPU20の一方が失陥したとしても他方の第1CPU10及び第2CPU20が失陥していなければ当該他方の第1CPU10及び第2CPU20からの制御信号によってエンジンECU31、AMTECU37、第1EBSECU34a、第2EBSECU35a、第1操舵ECU32a、及び第2操舵ECU33aを制御することができる。
【0073】
(6)2重化された第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aはそれぞれ異なる第1操舵モータ32b及び第2操舵モータ33bのみを制御する。このため、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aの一方が失陥したときに制御対象である第1操舵モータ32b及び第2操舵モータ33bを切り替える必要がない。第1操舵ECU32aが制御している第1操舵モータ32b、及び第2操舵ECU33aが制御している第2操舵モータ33bを制御するだけでよい。
【0074】
(7)2重化された第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aはそれぞれ異なる第1ブレーキエア回路34b及び第2ブレーキエア回路35bのみを制御する。このため、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの一方が失陥したときに制御対象である第1ブレーキエア回路34b及び第2ブレーキエア回路35bを切り替える必要がない。第1EBSECU34aが制御している第1ブレーキエア回路34b、第2EBSECU35aが制御している第2ブレーキエア回路35bを制御するだけでよい。
【0075】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aの両方が失陥したときに、第1EBSECU34a又は第2EBSECU35aによってブレーキエア回路34b,35bを作動させた。しかしながら、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aの両方が失陥したときに、第1CPU10からの制御信号又は第2CPU20からの制御信号によって保安ブレーキエア回路36が作動してもよい。
【0076】
・上記実施形態において、第1操舵ECU32a、第2操舵ECU33a、第1EBSECU34a、及び第2EBSECU35aが失陥したときには、それらを備える各モジュールにおいて失陥が起きたことを各ECUが検出したときも含まれてよい。
【0077】
・上記実施形態では、第1ブレーキエア回路34b、第2ブレーキエア回路35bに第1ブレーキタンク1から圧縮空気を供給し、保安ブレーキエア回路36に第2ブレーキタンク5から圧縮空気を供給した。しかしながら、第1ブレーキエア回路34b及び第2ブレーキエア回路35bに圧縮空気を供給するタンクと、保安ブレーキエア回路36に圧縮空気を供給するタンクとを同じタンクとしてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aが異なる第1ブレーキエア回路34b及び第2ブレーキエア回路35bを制御するようにした。しかしながら、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aが同じブレーキエア回路を制御するようにしてもよい。
【0079】
・上記実施形態では、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aが異なる第1操舵モータ32b及び第2操舵モータ33bを制御するようにした。しかしながら、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aが同じ操舵モータを制御するようにしてもよい。
【0080】
・上記実施形態では、通常時に第1CPU10がエンジンECU31、AMTECU37、第1EBSECU34a、第2EBSECU35a、第1操舵ECU32a、及び第2操舵ECU33aにそれぞれ制御信号を出力して、第1CPU10の失陥時には第2CPU20がそれらに制御信号を出力した。しかしながら、通常時に第2CPU20がエンジンECU31、AMTECU37、第1EBSECU34a、第2EBSECU35a、第1操舵ECU32a、及び第2操舵ECU33aにそれぞれ制御信号を出力して、第2CPU20の失陥時に第1CPU10がそれらに制御信号を出力してもよい。
【0081】
・上記実施形態では、第1CPU10及び第2CPU20が第1EBSECU34a、第2EBSECU35a、第1操舵ECU32a、及び第2操舵ECU33aのそれぞれに制御信号を出力するようにした。しかしながら、第1CPU10及び第2CPU20の一方が第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aのいずれか一方、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aのいずれか一方にのみ制御信号を出力し、第1CPU10及び第2CPU20の他方が第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aの他方、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aの他方にのみ制御信号を出力するようにしてもよい。
【0082】
・上記実施形態では、運転制御部であるCPU、ブレーキ制御部であるEBSECU、操舵制御部である操舵ECUをそれぞれ2重化した。しかしながら、運転制御部であるCPU及びブレーキ制御部であるEBSECUの少なくとも1つのみが2重化されている車両100であってもよい。
【0083】
・上記実施形態において、車両100を停止させるときに、停止までの時間又は減速度は、任意に設定可能である。
・上記実施形態では、2重化された第1CPU10及び第2CPU20のうち一方のみが失陥した状態、第1EBSECU34a及び第2EBSECU35aのうち一方のみが失陥した状態、第1操舵ECU32a及び第2操舵ECU33aのうち一方のみが失陥した状態の少なくとも1つの状態では、第1EBSECU34a又は第2EBSECU35aが車両100を所定の速度まで減速させるようにした。しかしながら、このような場合には、車両100の走行は可能であるので、車両100を減速させず、失陥が発生したことを報知するようにしてもよい。
【0084】
・上記構成において、保安ブレーキエア回路36の構成を省略してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…第1ブレーキタンク、2…ブレーキチャンバ、3…第1シャトル弁、4…第2シャトル弁、5…第2ブレーキタンク、10…第1CPU、20…第2CPU、11,21…入力変換部、12,22…車線維持制御部、13,23…自律航法制御部、14,24…トラッキング制御部、15,25…速度制御部、16,26…CPU監視部、17,27…出力遮断部、31…エンジンECU、32…第1操舵モジュール、32a…第1操舵ECU、32b…第1操舵モータ、33…第2操舵モジュール、33a…第2操舵ECU、33b…第2操舵モータ、34…第1ブレーキモジュール、34a…第1EBSECU、34b…第1ブレーキエア回路、35…第2ブレーキモジュール、35a…第2EBSECU、35b…第2ブレーキエア回路、36…保安ブレーキとしての保安ブレーキエア回路、37…AMTECU、41…第1リレーバルブ、42…第1ソレノイド、第1圧力センサ、51…第2リレーバルブ、52…第2ソレノイドバルブ、53…第2圧力センサ、61…第3リレーバルブ、62…第3ソレノイドバルブ、71…速度センサ、72…カメラ、73…GPSセンサ、74…後側方ミリ波レーダ、75…車車間通信機、76…車間距離レーダ、77…Gセンサ、100…車両、100a…先頭車両、100b…後続車両、NW…車載ネットワーク。