(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】表面波探査解析方法及び表面波探査解析装置
(51)【国際特許分類】
G01V 1/28 20060101AFI20220106BHJP
G01V 1/00 20060101ALI20220106BHJP
E02D 1/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01V1/28
G01V1/00 Z
E02D1/02
(21)【出願番号】P 2020171698
(22)【出願日】2020-10-12
(62)【分割の表示】P 2016217303の分割
【原出願日】2016-11-07
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591213519
【氏名又は名称】ビイック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 長範
(72)【発明者】
【氏名】向 浩司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 康二
(72)【発明者】
【氏名】小石 祐介
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-007859(JP,A)
【文献】特開2002-318285(JP,A)
【文献】特開2002-006056(JP,A)
【文献】米国特許第05466157(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
E02D 1/00-1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面を
、励振周波数fを変化させながら上下に起振することにより、その周囲に発生する表面波を検出して、地盤探査を行う地盤探査システム用の表面波探査解析装置であって、
該表面波探査解析装置は、間隔Lをおいて起振現場に配置された少なくとも2つの加速度検出器の出力信号を、A/D変換機能を持つ計測部を経由して入力信号SA、SBとして受信し、受信した前記入力信号SA、SBを処理して
、前記励振周波数f毎に表面波の伝搬平均速度Vrb(f)と深度D(f)とを算出し、前記伝搬平均速度Vrb(f)と前記深度D(f)とを算出する処理を繰り返して深度D-伝搬平均速度Vrb曲線を生成した後、生成した深度D-伝搬平均速度Vrb曲線に対して複数の変曲点の選定を行い、選定した複数の変曲点に基づいて変曲点間の区間速度を算出するものであり
、
前記表面波探査解析装置は、前記入力信号SA,SBに対して前記励振周波数fの単位周波数毎の加速度変化量ΔL
A
、ΔL
B
を算出した後、算出した加速度変化量ΔL
A
とΔL
B
の差分を求めると共に、この差分の前記励振周波数fの単位周波数あたりの変化量を求め、この変化量の符号が、“+”から“-”に変わるデータ位置を深度D、伝搬平均速度Vrbについて抽出して前記変曲点の選定を行うことを特徴とする表面波探査解析装置。
【請求項2】
地表面を
、励振周波数fを変化させながら上下に起振することにより、その周囲に発生する表面波を検出して、地盤探査を行う地盤探査システム用の表面波探査解析方法であって、
間隔Lをおいて起振現場に配置された少なくとも2つの加速度検出器の出力信号を、A/D変換機能を持つ計測部を経由して入力信号SA、SBとして受信し、受信した前記入力信号SA、SBを処理して
、前記励振周波数f毎に表面波の伝搬平均速度Vrb(f)と深度D(f)とを算出し、前記伝搬平均速度Vrb(f)と前記深度D(f)とを算出する処理を繰り返して深度D-伝搬平均速度Vrb曲線を生成するステップと、
生成した深度D-伝搬平均速度Vrb曲線に対して複数の変曲点の選定を行うステップと、
選定した複数の変曲点に基づいて変曲点間の区間速度を算出するステップと、を含み
、
前記複数の変曲点の選定を行うステップにおいては、前記入力信号SA,SBに対して前記励振周波数fの単位周波数毎の加速度変化量ΔL
A
、ΔL
B
を算出した後、算出した加速度変化量ΔL
A
とΔL
B
の差分を求めると共に、この差分の前記励振周波数fの単位周波数あたりの変化量を求め、この変化量の符号が、“+”から“-”に変わるデータ位置を深度D、伝搬平均速度Vrbについて抽出して前記変曲点の選定を行うことを特徴とする表面波探査解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤探査システムのための表面波探査解析方法及び表面波探査解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤探査の一手法として表面波探査法が知られている。表面波探査法は、地面の振動により地中を伝わる表面波(特にレイリー波)が、硬い地盤ほど速く伝わり、柔らかい地盤ほどゆっくりと伝わるという性質を持ち、振動する周波数が変わると伝わる深さが変化するという性質を利用している。表面波探査法では、起振機で地面に微弱な振動を与えて地中を伝わる表面波の速さを、起振現場に配置した少なくとも2つの検出器で検出し、これらの検出信号を用いて表面波の伝わる伝搬状況と速度を解析する。
【0003】
このような表面波探査法を利用した地盤探査装置が特許文献1に記載されており、以下に簡単に説明する。
【0004】
オペレータは、地盤探査を必要とする場所に起振機を設置すると共に、その近くの地盤上には間隔をおいて少なくとも2つの加速度検出器を設置する。起振機により地表面を起振周波数で上下に起振することにより、その周囲に表面波を発生させる。2つの加速度検出器からの検出信号は、A(Analog)/D(Digital)変換等の信号処理機能を持つ計測部を通して加速度時系列信号A(t)、B(t)として出力される。計測部には、パーソナルコンピュータ等による解析装置が接続される。解析装置は、計測部からの加速度時系列信号A(t)、B(t)を入力信号SA、SBとして受け、入力信号SA、SBに対してあらかじめ定められた解析プログラムに基づく信号処理を行い、伝搬平均速度Vrb(f)と深度D(f)とを算出する。なお、伝搬平均速度は、通常、速度を表わすVrの上に平均を意味するバーを付して示されるが、ここでは、特に断りを入れない限り、表記の便宜上、バーを付さずにVrbで示すこととする。
【0005】
オペレータが、起振機による起振を、起振周波数を変化させながら繰り返し行うことにより、解析装置は深度D-伝搬平均速度Vrb曲線(以下、D-Vrb曲線と略称する)を生成し、それをモニターに表示する。D-Vrb曲線の生成過程については後述する。
【0006】
オペレータは、モニターに表示されたD-Vrb曲線を確認し、D-Vrb曲線上において地盤の物理的な性質が変化していると判定した箇所を変曲点(複数個)として選定する。変曲点の選定についてはマニュアル化されており、オペレータの選定作業はこのマニュアルに則って行われる。
【0007】
すべての変曲点の選定後、選定された変曲点情報を基に変曲点間の区間速度が算出される。区間速度についても後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
変曲点の選定についてはマニュアル化されているとは言え、オペレータの選定作業には熟練を必要とし、熟練したオペレータになるまでにはかなりの経験を必要とする。また、オペレータが変わると選定結果にもばらつきの生じることが避けられず、その結果、各種の算出結果にもばらつきが生じてしまう。
【0010】
そこで、本発明の課題は、D-Vrb曲線における変曲点の抽出を自動化できるようにして地盤探査に伴う作業の簡略化を実現できるようにすることにある。
【0011】
本発明はまた、オペレータの違いによる計測結果のばらつきの解消と、計測精度の向上を実現できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、地表面を上下に起振することにより、その周囲に発生する表面波を検出して、地盤探査を行う地盤探査システム用の表面波探査解析装置であって、該表面波探査解析装置は、間隔Lをおいて起振現場に配置された少なくとも2つの加速度検出器の出力信号を、A/D変換機能を持つ計測部を経由して入力信号SA、SBとして受信し、受信した前記入力信号SA、SBを処理して表面波の伝搬平均速度Vrb(f)と深度D(f)とを算出し、前記伝搬平均速度Vrb(f)と前記深度D(f)とを算出する処理を繰り返して深度D-伝搬平均速度Vrb曲線を生成した後、生成した深度D-伝搬平均速度Vrb曲線に対して複数の変曲点の選定を行い、選定した複数の変曲点に基づいて変曲点間の区間速度を算出するものであり、該表面波探査解析装置はまた、前記複数の変曲点の選定を、前記入力信号SA、SBの変化を因数として行うことを特徴とする表面波探査解析装置が提供される。
【0013】
上記の第1の態様による表面波探査解析装置においては、前記入力信号SA,SBに対して単位周波数毎の加速度変化量ΔLA、ΔLBを算出した後、算出した加速度変化量ΔLAとΔLBの差分を求めると共に、この差分の単位周波数あたりの変化量を求め、この変化量の符号が、“+”から“-”に変わるデータ位置を深度D、伝搬平均速度Vrbについて抽出して変曲点とすることができる。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、地表面を上下に起振することにより、その周囲に発生する表面波を検出して、地盤探査を行う地盤探査システム用の表面波探査解析方法であって、
間隔Lをおいて起振現場に配置された少なくとも2つの加速度検出器の出力信号を、A/D変換機能を持つ計測部を経由して入力信号SA、SBとして受信し、受信した前記入力信号SA、SBを処理して表面波の伝搬平均速度Vrb(f)と深度D(f)とを算出し、前記伝搬平均速度Vrb(f)と前記深度D(f)とを算出する処理を繰り返して深度D-伝搬平均速度Vrb曲線を生成するステップと、
生成した深度D-伝搬平均速度Vrb曲線に対して複数の変曲点の選定を行うステップと、
選定した複数の変曲点に基づいて変曲点間の区間速度を算出するステップと、を含み、
前記複数の変曲点の選定を行うステップは、前記入力信号SA、SBの変化を因数として行うことを特徴とする表面波探査解析方法が提供される。
【0015】
上記の第2の態様において前記複数の変曲点の選定を行うステップにおいては、前記入力信号SA,SBに対して単位周波数毎の加速度変化量ΔLA、ΔLBを算出した後、算出した加速度変化量ΔLAとΔLBの差分を求めると共に、この差分の単位周波数あたりの変化量を求め、この変化量の符号が、“+”から“-”に変わるデータ位置を深度D、伝搬平均速度Vrbについて抽出して変曲点とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、D-Vrb曲線における変曲点の抽出を自動化できるようにしたことにより地盤探査に伴う作業の簡略化を実現することができる。
【0017】
本発明によればまた、オペレータの違いによる計測結果のばらつきの解消と、計測精度の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明が適用され得る、地盤探査装置の構成例を示した図である。
【
図2】
図1に示された起振機に与えられる電力の周波数バンドの一例(図a)と、
図1に示された解析装置(パーソナルコンピュータ)で生成されるD-Vrb曲線の一例(図b)を示した図である。
【
図3】本発明において表面波探査解析装置に格納される、
図2(b)に示されたD-Vrb曲線のデータ構成の一例を示す。
【
図4】本発明において表面波探査解析装置に格納される、allデータのデータ構成の一例を示す。
【
図5】本発明において表面波探査解析装置に格納される、FLデータのデータ構成の一例を示す。
【
図6】区間速度の算定例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について説明する前に、
図1、
図2を参照して、特許文献1に記載されている地盤探査装置について説明する。この地盤探査装置は、本発明にも適用可能である。
【0020】
図1において、本地盤探査装置は、起振現場の地盤に設置される少なくとも2つの加速度検出器11A、11Bと、これらの加速度検出器11A、11Bからの加速度検出信号を受ける計測部12と、を含む。計測部12は、地震計部12-1、A/D変換部12-2、通信部12-3、発振部12-4とから成る。地震計部12-1は、ローパスフィルタ回路を内蔵し、アナログの加速度検出信号から加速度時系列信号を生成する。A/D変換部12-2は、地震計部12-1からのアナログの加速度時系列信号をディジタルの加速度時系列信号A(t)、B(t)に変換するためのもので、入力感度の自動調整機能を有する。通信部12-3は、ディジタルの加速度時系列信号A(t)、B(t)を、計測部12に接続される機器、例えばモニター付きのパーソナルコンピュータ(以下、PCと略称する)13に送信する。PC13は加速度時系列信号A(t)、B(t)を入力信号SA、SBとして受け、内蔵メモリにあらかじめインストールされている解析プログラムソフトに基づいて入力信号SA、SBの処理を行う機能を有し、地盤解析を行うための解析装置として機能する。ここで、(t)は、時系列に沿って変化する任意の値を示す。
【0021】
次に、動作について説明する。まず、探査場所に起振機15、加速度検出器11A、11Bを一直線上に設置する。加速度検出器11A、11B間の距離をL(m)とする。起振機15を使って地表面を上下方向に起振することにより、起振機15の周りに表面波を発生させる。地表面付近を伝搬する表面波(レイリー波)の上下振動を、加速度検出器11A、11Bで検出する。加速度検出器11A、11Bからの加速度検出信号は、地震計部12-1のローパスフィルタ回路を通すことで、アナログの時系列信号となり、A/D変換部12-2に入力される。A/D変換部12-2でA/D変換された時系列信号A(t)、B(t)は通信部12-3からPC13へ転送される。
【0022】
PC13では、あらかじめ定められた解析プログラムに基づいて入力信号SA、SBのパワースペクトルGAA(f)、GBB(f)、クロススペクトルGBA(f)、伝達関数H(f)、コヒーレンス関数γ2 (f)等を計算する。これらのパワースペクトルGAA(f)、GBB(f)、クロススペクトルGBA(f)、伝達関数H(f)、コヒーレンス関数γ2 (f)等は、内蔵のハードディスクに保存される。PC13ではまた、伝達関数H(f)より加速度検出器11A、11B間の位相差Δθ(f)を求め、続いてその時間差Δt(f)を求める。ここで、(f)は、周波数軸にそって変化する任意の値を示す。
【0023】
PC13では更に、時間差Δt(f)と加速度検出器11A、11B間の間隔Lより、表面波の伝搬平均速度Vrb(f)と深度D(f)とを求める。
【0024】
上記のパワースペクトルGAA(f)、GBB(f)、クロススペクトルGBA(f)、伝達関数H(f)、コヒーレンス関数γ2 (f)等の計算過程については本発明の要旨ではなく、特許文献1に記載されているので省略するが、表面波の伝搬平均速度Vrb(m/sec)と深度D(m)はそれぞれ、以下の式により算出する。
Vrb=L/Δt(f)=2π×F×L/-Δθ(f)
D=λ/2=Vrb/2F=π×L/-Δθ(f)
但し、Fは励振(起振)信号の周波数、λは加速度検出信号の波長である。
【0025】
上記の算出は所望のD-Vrb曲線が得られるまで繰り返し行われる。すなわち、計測を1回行う毎に起振機15に与える励振信号の周波数を変化させる。つまり、表面波の伝搬速度と逆数関係にある伝達関数H(f)の位相差Δθ(f)が、周波数別に計測される。次に、この位相差と周波数の関係から伝搬平均速度Vrbと深度Dとを計算し、繰り返し計測を行った結果としてモニター上にD-Vrb曲線が生成、表示される。
【0026】
図2(a)は、起振機15に与えられる電力の周波数バンドを示し、周波数f
1~f
nの領域を、ここではf
1~f
i(バンドB
1)、f
i~f
k(バンドB
2)、f
k~f
n(バンドB
3)の3つのバンドに分割している。この場合、
図2(b)に示すように、バンドB
1での計測でD-Vrb面には曲線C
1が、バンドB
2での計測で曲線C
2が、バンドB
3での計測で曲線C
3がそれぞれ得られ、これらの曲線C
1~C
3がモニター上に自動合成表示される。
【0027】
図2(b)には、D-Vrb曲線に存在する変曲点のうち、以後の区間速度等の算出に必要とされる変曲点を○印で示している。以降の説明においては、特に断らない限り、D-Vrb曲線に存在する変曲点のうち、以後の区間速度等の算出に必要とされる変曲点のみを変曲点と呼ぶこととする。
【0028】
いずれにしても、オペレータは、モニター上の
図2(b)に示されるようなD-Vrb曲線に対して変曲点の選定を行う。選定は、カーソルによる指示や、タッチペンによる指定で行われる。尚、変曲点は、D-Vrb曲線が著しく変化している箇所が該当するが、計測する範囲において一番軟らかい地盤部分の速度を選択するため、D-Vrb曲線の変化の左端、すなわち速度Vrbが小さい箇所を変曲点として選別する。
【0029】
変曲点の選定が終了すると、PC13は、選定された変曲点の情報を基に、区間速度等の算出を行う。
【0030】
本発明による表面波探査解析装置は、PC13と同様のパーソナルコンピュータで実現することができ、入力信号SA、SB(時系列信号A(t)、B(t))の入力からD-Vrb曲線の生成までは、PC13に格納されている解析プログラムソフトと同じ機能を持つ解析プログラムソフトを搭載することで実現することができる。
【0031】
次に、本発明の実施形態において扱われるデータの種類について説明する。
【0032】
本発明による表面波探査解析装置は、
図1で説明した少なくとも2つの加速度検出器11A、11Bと、計測部12と、電力増幅器14と、起振機15と共に組み合わせて構成される地盤探査システム用の表面波探査解析装置として適用され得る。それゆえ、本発明による表面波探査解析装置の実施形態においては、
図1で説明したように、一定距離Lをおいて2箇所に設置された検出器からの検出信号を基に得られた伝搬平均速度Vrb、深度D、励振信号の周波数Fの3種類のデータを、拡張子“
**.DV”のD-Vrb曲線として内蔵のメモリに収納する。
【0033】
図3はD-Vrb曲線のデータ構成の一例を示す。D-Vrb曲線のデータ構成は、データヘッダー部とデータ部とからなる。データヘッダー部にはソフト識別番号、計測番号、データ数、計測時速度軸最大値、等の変数が収納され、データ部には計算深度D(m)、伝搬平均速度Vrb(m/sec)、周波数(Hz)の変数が収納される。
【0034】
一方、計測に係るすべてのデータを、拡張子“**.all”のallデータとして内蔵のメモリに収納している。
【0035】
図4はallデータのデータ構成の一例を示す。allデータのデータ構成もデータヘッダー部とデータ部とからなる。データヘッダー部にはソフト識別番号、計測番号、データ数、機器製造番号、等の変数が収納され、データ部には計算深度D(m)、伝搬平均速度Vrb(m/sec)、周波数F(Hz)を含む13種類の変数が収納される。
【0036】
次に、本発明による表面波探査解析装置で実現される、表面波探査解析方法の特徴部分とも言える、D-Vrb曲線における自動変曲点計算について説明する。
【0037】
本発明における自動変曲点計算は、D-Vrb曲線におけるデータの変化量ΔVから変曲点を計算する第1の自動変曲点計算と、2箇所に設置された検出器からの検出信号に基づく時系列信号A(t)、B(t)の変化を因数として変曲点を計算する第2の自動変曲点計算と、に大別される。第1、第2の自動変曲点計算のいずれも表面波探査解析装置によって実行することができる。
【0038】
[第1の自動変曲点計算]
第1の自動変曲点計算は、前述したD-Vrb曲線の生成後に実行される。第1の自動変曲点計算は、D-Vrb曲線における速度データの変化ΔVを因数とした自動変曲点計算であり、変化ΔVの計算方法によって、さらに名称を“計算R”、“計算B”、“計算N”、“計算G”とする4種類の計算方法がある。
【0039】
なお、D-Vrb曲線は、前述のようにメモリに格納された拡張子“**.DV”のDVデータに基づく。拡張子“**.DV”のDVデータは、計算深度D、伝搬平均速度Vrbの2つの値が、計測時における励振信号の周波数Fの降順に格納されている。これらの計算深度、伝搬平均速度、周波数に関する計測データを、計測データDV(D)i、計測データDV(V)i、計測データDV(F)iとし、総じて計測データDV(D,V,F)iとして表す。また、iは整数(i=1,2,・・・)であり、データの格納された順位を示す。
【0040】
“計算R”は、変化ΔVを1階差分中心)計算によって算定し、算定結果の符号が変わるデータ位置(伝搬平均速度、計算深度)を抽出し、変曲点とする。以下に詳しく説明する。
【0041】
“計算R”算定内容
D-Vrb曲線の計測データDV(D,V,F)iのうちの、計測データDV(V)iの変化ΔVに対して、1階差分を算定する。算定の際は、中心差分の計算を行い、条件式により、深度Dj、速度Vj、周波数Fjに関する変曲点データFL(D,V,F)jを判別する。なお、変曲点データFL(D,V,F)jは、深度Dj、速度Vj、周波数fjによる変曲点データFL(D)j、FL(V)j、FL(F)jでも表される。
【0042】
つまり、後述する条件式を満たすiを用いて、FL(D)j=DV(D)i、FL(V)j=DV(V)i、FL(F)j=DV(F)iとなるデータを計測データDV(D,V,F)iの中から抽出し、これを変曲点データFL(D,V,F)jとする。また、jは整数(j=1,2,・・・)であり、周波数Fの降順となるデータ順位を示す。
【0043】
1.1:速度データDV(V)のi+1番目とi-1番目の値の差分をΔViとする。
ΔVi=DV(V)i-1-DV(V)i+1
【0044】
1.2:FL(D,V,F)jの有無を判別し、データ数を判別の上、
FL(D,V,F)1=DV(D,V,F)1とする(初点の決定、および再設定)。
【0045】
1.3:ΔViとΔVi+2との条件により、1階差分の値の符号が、マイナスからプラスに転じる位置(ゼロクロス点)を抽出する。
条件式1:(ΔVi≧0∩ΔVi+1<0)∪(ΔVi>0∩ΔVi+1≦0)
条件式1を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式2:(ΔVi≦0∩ΔVi+1>0)∪(ΔVi<0∩ΔVi+1≧0)
条件式2を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式3:条件式1あるいは条件式1を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式1~条件式3の選定は、基本は条件式2を用いるものとし、同一の現場においては、同一の条件式を適用するものとする。
【0046】
1.4:選別したiを代入して、DViとする。この値に対して、以下の3つの条件を満たすか否かを確認する。(自動変曲点のデータ数、間隔の調整)
条件式4:自動変曲点の判断を行う深度Ds(任意で与える)に対して、
DV(D)i≦k×Dsを満たす。但し、kは任意の値で通常は“1.1”とする。
任意で与える削除(深度)レベルD_DEに対して
abs(FL(D)j-1-DV(D)i)≧D_DEを満たす。但し、D_DEは任意の値で通常は“0.1”とする。
任意で与える削除(速度)レベルV_DEに対して
abs(FL(V)j-1-DV(V)i)≧V_DEを満たす。但し、V_DEは任意の値で通常は“4.0”とする。
【0047】
1.5:上記1.4の条件を満たすDViにより、FLjを決定する。
FL(D)j=DV(D)i、FL(V)j=DV(V)i、FL(F)j=DV(F)i
【0048】
以上のように、“計算R”によれば、これまでオペレータがD-Vrb曲線に対して行っていた変曲点の選定と同様に、
図2(b)に○で示されるような、D-Vrb曲線が著しく変化しかつ左端の変化箇所を、変曲点データFL(D)
j、FL(V)
j、FL(F)
jとして選別することができる。
【0049】
“計算B”は、速度の変化ΔVを2階差分(前進)計算によって算定し、算定結果の符号が変わるデータ位置(伝搬平均速度、計算深度)を抽出し、変曲点とする。以下に詳しく説明する。
【0050】
“計算B”算定内容
D-Vrb曲線のデータDV(D,V,F)iのうちの、速度Vの変化に対して、2階差分を算定する。算定の際は、前進差分の計算を行い、条件式により変曲点データFL(D,V,F)jを算定する。
【0051】
つまり、後述する条件式を満たすiを用いて、FL(D)j=DV(D)i、FL(V)j=DV(V)i、FL(F)j=DV(F)iとなるデータを計測データDV(D,V,F)iの中から抽出し、これを変曲点データFL(D,V,F)jとする。
【0052】
2.1:速度データDV(V)のi-2番目、i-1番目およびi番目の速度の値による、2階差分をΔ2Viとする。
Δ2Vi=DV(V)i-2-2DV(V)i-1+DV(V)i
【0053】
2.2:FL(D,V,F)jの有無を確認し、データ数を確認の上、
FL(D,V,F)1=DV(D,V,F)1
とする(初点の決定、および再設定)。
【0054】
2.3:Δ2ViとΔ2Vi+2との条件により、1階差分の値の符号がマイナスからプラスに転じる位置(ゼロクロス点)を抽出する。
条件式1:(Δ2Vi≧0∩Δ2Vi+1<0)∪(Δ2Vi>0∩Δ2Vi+1≦0)
条件式を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式2:(Δ2Vi≦0∩Δ2Vi+1>0)∪(Δ2Vi<0∩Δ2Vi+1≧0)
条件式を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式3:条件式1あるいは条件式2を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式1~条件式3の選定は、基本は条件式2を用いるものとし、同一の現場においては、同一の条件式を適用するものとする。
【0055】
2.4:選別したiを代入して、DViとする。この値に対して、以下の3つの条件を満たすか否かを確認する。(自動変曲点のデータ数、間隔の調整)
条件式4:自動変曲点の判断を行う深度Ds(任意で与える)に対して、
DV(D)i≦k×Dsを満たす。但し、kは任意の値で通常は“1.1”とする。
任意で与える削除(深度)レベルD_DEに対して
abs(FL(D)j-1-DV(D)i)≧D_DEを満たす。但し、D_DEは任意の値で通常は“0.1”とする。
任意で与える削除(速度)レベルV_DEに対して
abs(FL(V)j-1-DV(V)i)≧V_DEを満たす。但し、V_DEは任意の値で通常は“4.0”とする。
【0056】
2.5:上記2.4の条件を満たす、DViにより、FLjを決定する。
FL(D)j=DV(D)i、FL(V)j=DV(V)i、FL(F)j=DV(F)i
【0057】
以上のように、“計算B”によれば、これまでオペレータがD-Vrb曲線に対して行っていた変曲点の選定と同様に、
図2(b)に○で示されるような、D-Vrb曲線が著しく変化しかつ左端の変化箇所を、変曲点データFL(D)
j、FL(V)
j、FL(F)
jとして選別することができる。
【0058】
“計算N”は、“R”/ “B”計算によって変化ΔVを算定し、算定結果の符号が変わるデータ位置(伝搬平均速度、計算深度)を抽出し、変曲点とする。以下に詳しく説明する。
【0059】
“計算N”算定内容
D-Vrb曲線のデータDV(D,V,F)iのうちの、速度Vの変化に対して、1階差分、2階差分を算定する。算定の際には1階差分は中立、2階差分は前進計算を行い、両計算の結果並びに、条件式により変曲点データFL(D,V,F)jを算定する。
【0060】
つまり、後述する条件式を満たすiを用いて、FL(D)j=DV(D)i、FL(V)j=DV(V)i、FL(F)j=DV(F)iとなるデータを計測データDV(D,V,F)iの中から抽出し、これを変曲点データFL(D,V,F)jとする。
【0061】
3.1:速度データDV(V)の(i-1)番目と(i+1)番目の速度Vの値の差分をΔViとする。
ΔVi=DV(V)i-1-DV(V)i+1
【0062】
3.2:変曲点データFL(D,V,F)jの有無を確認し、データ数を確認の上、
FL(D,V,F)1=DV(D,V,F)1
とする(初点の決定、および再設定)。
【0063】
3.3:差分ΔViとΔVi+2との条件により、1階差分の値の符号が、マイナスからプラスに転じる位置(ゼロクロス点)を抽出し、その位置での深度、伝搬平均速度を抽出する。
条件式1:(ΔVi≧0∩ΔVi+1<0)∪(ΔVi>0∩ΔVi+1≦0)
条件式を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式2:(ΔVi≦0∩ΔVi+1>0)∪(ΔVi<0∩ΔVi+1≧0)
条件式を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式3:条件式1あるいは条件式2を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式1~条件式3の選定は、基本は条件式1を用いるものとし、同一の現場においては、同一の条件式を適用するものとする。
【0064】
3.4:上記3.3の条件を満たす、DViにより、FLjを仮決定する。
FL(D)j=DV(D)i、FL(V)j=DV(V)i、FL(F)j=DV(F)i
【0065】
3.5:上記3.4で得られた、変曲点データFL(D,V,F)jのうち深度Dと、任意で与える設定最大層厚DT_Lとに対して、
FL(D)j+1-FL(D)j<DT_Lを満たすjを抽出する。但し、DT_Lは任意の値で通常は“3.0”とする。
【0066】
3.6:FL(D,V,F)jのうち、周波数Fを用いて、FL(F)j=DV(F)iならびにFL(F)j+1=DV(F)iとなるiを抽出し、各々をSi、Eiとする。
【0067】
3.7:速度データDV(V)のi-2番目、i-1番目およびi番目の速度の値による、2階差分をΔ2Viとする。
Δ2Vi=DV(V)i-2-2DV(V)i―1+DV(V)i
但し、iは、SiからEiまでの整数とする。
【0068】
3.8:Δ2ViとΔ2Vi+2との条件により、2階差分の値の符号が、マイナスからプラスに転じる位置(ゼロクロス点)を抽出し、その位置での深度、伝搬平均速度を抽出する。
ここまでの計算N算定について要約すると、最初に1階差分による計算で、仮の変曲点を抽出し、次に、仮の変曲点の各点の深度の差が上記3.5で決められた3.0(m)以内であるかを判定する。もし3.0m以上空いた場合は、この3.0m以上空いた範囲を抽出し、この範囲に対して、改めて2階差分の計算を実施する。
条件式1:(Δ2Vi≧0∩Δ2Vi+1<0)∪(Δ2Vi>0∩Δ2Vi+1≦0)
条件式を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式2:(Δ2Vi≦0∩Δ2Vi+1>0)∪(Δ2Vi<0∩Δ2Vi+1≧0)
条件式を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式3:条件式1あるいは条件式2を満たす、i(i≧2)を選別する。
条件式1~条件式3の選定は、基本は条件式2を用いるものとし、同一の現場においては、同一の条件式を適用するものとする。
【0069】
3.9:選別したiを代入して、DViとする。この値に対して、以下の3つの条件を満たすか否かを確認する。(自動変曲点のデータ数、間隔の調整)
条件式4:自動変曲点の判断を行う深度Ds(任意で与える)に対して、
DV(D)i≦k×Dsを満たす。但し、kは任意の値で通常は“1.1”とする。
任意で与える削除(深度)レベルD_DEに対して
abs(FL(D)j-1-DV(D)i)≧D_DEを満たす。但し、D_DEは任意の値で通常は“0.1”とする。
任意で与える削除(速度)レベルV_DEに対して
abs(FL(V)j-1-DV(V)i)≧V_DEを満たす。但し、V_DEは任意の値で通常は“4.0”とする。
【0070】
3.10:上記3.9の条件を満たす、DViにより、FLjjを決定する。
FL(D)jj=DV(D)i、FL(V)jj=DV(V)i、FL(F)jj=DV(F)i
【0071】
3.11:上記3.4で得られたFLjにFLjjを追加し、変曲点データFL(D,V,F)jとする。
【0072】
以上のように、“計算N”によれば、これまでオペレータがD-Vrb曲線に対して行っていた変曲点の選定と同様に、
図2(b)に○で示されるような、D-Vrb曲線が著しく変化しかつ左端の変化箇所を、変曲点データFL(D)
j、FL(V)
j、FL(F)
jとして選別することができる。
【0073】
“計算G”は、D-Vrb曲線におけるデータ変化ΔV(伝搬平均速度値の変化)に加えてデータ変化ΔD(深度方向の変化)を同時に確認する。これらの値から、データの粗密の度合いTGを算定し、データの粗密の度合いTGの値があらかじめ設定した値GRlevelを上回るデータ位置(伝搬平均速度、計算深度)を抽出し、変曲点とする。
【0074】
“計算G”算定内容
D-Vrb曲線のデータDV(D,V,F)iのうちの、速度Vの変化、並びに深度Dの変化を整理し、データの粗密の度合いの程度により変曲点データFL(D,V,F)jを算定する。
【0075】
つまり、後述する条件式を満たすiを用いて、FL(D)j=DV(D)i、FL(V)j=DV(V)i、FL(F)j=DV(F)iとなるデータを計測データDV(D,V,F)iの中から抽出し、これを変曲点データFL(D,V,F)jとする。
【0076】
4.1:D-Vrb曲線のデータDV(D,V,F)
iの、速度V、深度Dのi-1番目およびi番目の値による変化量ΔD_V
iを以下の数式(1)により算出する。
【数1】
但し、ΔD_V
iは速度、深度の変化量、D
iはi番目の深度データ、V
iはi番目の速度データ、iは整数(i=1,2,・・・)、V
Tは計測時に設定した最大速度値であり、自動計算に際しては、この最大速度値より小さい速度データについて処理を行う。同様に、D
Tは計測時に設定した最大深度値であり、自動計算に際しては、この最大深度値より小さい深度データについて処理を行う。
【0077】
4.2:データの平均化に関する係数T_D
iを以下の数式(2)により設定する。
【数2】
但し、T_D
iは平均化に関する係数で、T_D
1=0、EMは計算のための設定値(1~9の整数で、通常4とする)である。
【0078】
4.3:データの粗密の度合いを示す変数TG
iを以下の数式(3)により設定する。
【数3】
【0079】
4.4:データの粗密度合いの程度を示す値として変数GRLを設定し、変数GRLと変数TGiとの条件を設け、これを満たすi(i≧2)を選別する。但し、変数GRLはデータの粗密度合いの程度を示す値で、0.1~1.5の値をとり、通常は0.5とする。
条件式1:|TGi|≧GRL
条件式を満たす、i(i≧2)を選別する。
【0080】
4.5:選別したiを代入して、DViとする。この値に対して、以下の3つの条件を満たすか否かを確認する。(自動変曲点のデータ数、間隔の調整)
条件式2:自動変曲点の判断を行う深度Ds(任意で与える)に対して、
DV(D)i≦k×Dsを満たす。但し、kは任意の値で通常は“1.1”とする。
任意で与える削除(深度)レベルD_DEに対して
abs(FL(D)j-1-DV(D)i)≧D_DEを満たす。
任意で与える削除(速度)レベルV_DEに対して
abs(FL(V)j-1-DV(V)i)≧V_DEを満たす。
【0081】
4.6:上記4.5の条件を満たすDViにより、FLjを決定する。
FL(D)j=DV(D)i、FL(V)j=DV(V)i、FL(F)j=DV(F)i
【0082】
以上のように、“計算G”によれば、これまでオペレータがD-Vrb曲線に対して行っていた変曲点の選定と同様に、
図2(b)に○で示されるような、D-Vrb曲線が著しく変化しかつ左端の変化箇所を、変曲点データFL(D)
j、FL(V)
j、FL(F)
jとして選別することができる。
【0083】
[第2の自動変曲点計算]
第2の自動変曲点計算は、前述した計測部12からの時系列信号A(t)、B(t)を入力信号SA、SBとして受けて実行される。すなわち、第2の自動変曲点計算は、2か所に設置された加速度検出器11A、11Bからの検出信号を計測部12経由で入力した入力信号SA、SBの変化を因数とした自動変曲点計算である。加速度検出器11A、11Bからの入力信号は、
図4で説明したように、計測を実施した周波数に対する値として、“allデータ”に収録されている。加速度検出器11A、11BからのAch、Bch各々の入力信号SA、SBに対して、単位周波数毎の加速度変化量ΔL
A、ΔL
Bを求め、さらに2つの加速度検出器11A、11B間におけるΔL
AならびにΔL
Bの差分を求める。この差分の単位周波数あたりの変化量を求め、この変化量の符号が、“+”から“-”に変化するデータ位置を変曲点とする。以下に、第2の自動変曲点計算の算定内容について詳細に説明する。
【0084】
第2の自動変曲点計算の算定内容
5.1:2つの加速度検出器11A、11BによるAch、Bch各々の入力信号SA、SBに対して、単位周波数毎の加速度変化量ΔLA、ΔLBを求め、さらに2つの加速度検出器11A、11B間におけるΔLAならびにΔLBの差分を求める。この差分の単位周波数あたりの変化量を求め、変曲点データFL(D,V,F)jを算定する。
【0085】
つまり、加速度変化量ΔLAならびにΔLBに基づく条件式を設け、この条件式を満たすDV(F)iを用いて、FL(D)j=DV(D)i、FL(V)j=DV(V)i、FL(F)j=DV(F)iとなるデータを計測データDV(D,V,F)iの中から抽出し、これを変曲点データFL(D,V,F)jとする。
【0086】
5.2:加速度検出器11A、11Bによる計測時に、Ach、Bch各々で得られる周波数毎の最大加速度値を以下の数式(4)、(5)により変換し、デシベル値L
AVa、L
BVaとする。
【数4】
【数5】
但し、L
AVaはAchの振動加速度(db)、S
AはAchの加速度(gal)、L
BVaはBchの振動加速度(db)、S
BはBchの加速度(gal)であり、いずれも周波数毎の振動加速度の最大値である。
【0087】
SAおよびSBは、計測データDV(D,V,F)iと同様に計測時にメモリに記録された拡張子**.all”のallデータに格納されている。拡張子“**.DV”のD-Vrb曲線並びに拡張子“**.all”のallデータは、計測に係る値をすべて同じ周波数変化に対して格納している。このことから、SAおよびSB、あるいはLAVaおよびLBVaは、計測データDV(D,V,F)iと同様、整数iを用いて順位を表している(i=1,2,・・・)。
【0088】
最後に、以下の数式(6)、(6‘)、(7)、(7’)により、ある点とその前後1点の3点の振動加速度L
AVa(i),L
AVa(i-1),L
AVa(i+1)及び振動加速度L
BVa(i),L
BVa(i-1),L
BVa(i+1)の平均化を行う。
【数6】
L
AVa(i)=L
AVa(i)‘ (6’)
【数7】
L
BVa(i)=L
BVa(i)‘ (7’)
【0089】
5.3:振動加速度データのすべての打点に対し、以下の数式(8)、(9)により単位周波数毎の加速度変化量ΔL
A、ΔL
Bを求める。
【数8】
【数9】
但し、ΔL
A、ΔL
BはAch、Bchの振動加速度データの1Hz当たりの変化量、DV(F)
iは計測データDVのi番目の周波数、L
AVa(i)、L
BVa(i)は拡張子“
**.all”に格納されているAch、Bchのi番目の振動加速度(db)を示す。
【0090】
5.4:上記5.3で得られた、Ach、Bch各々の振動加速度データの変化量の差ΔΔLを求める。
ΔΔL=ΔLA-ΔLB
但し、ΔΔLは1Hz当たりのAchの振動加速度データの変化量とBchの振動加速度データの変化量の差である。
【0091】
最後に、以下の数式(10)~(14)により、振動加速度データの変化量について、ある点とその前後1~5点の平均化を1~5回行う。平均化の内容については、境界面の自動判別の内容を確認しながら調整を行うことが望ましい。
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
上記の数式(10)~数式(14)に共通して、以下の数式(15)が適用される。
ΔΔL
(i)=ΔΔL’
(i) (15)
【0092】
数式(10)、(15)はある点とその前後1点の平均化の際の計算内容を示す。同様に、数式(11)、(15)はある点とその前後2点の平均化の際の計算内容、数式(12)、(15)はある点とその前後3点の平均化の際の計算内容、数式(13)、(15)はある点とその前後4点の平均化の際の計算内容、数式(14)、(15)はある点とその前後5点の平均化の際の計算内容をそれぞれ示す。数式(10)~(14)は繰り返して行うことが可能であるが、5回を上限とする。
【0093】
5.5:上記5.4で得られた振動加速度データの変化量の差ΔΔLに対して以下の数式(16)により単位周波数毎の変化量ΔΔΔLを求める。
【数15】
但し、DV(F)
iは計測データDVのi番目の周波数、ΔΔΔLはΔΔLデータの1Hz当たりの変化量、ΔΔL
(i)はΔΔLデータのi番目の値である。
【0094】
5.6:上記5.5で得られたΔΔΔLデータに対して境界面の判別を行う。
k=ΔΔΔL(i)並びにkk=ΔΔΔL(i+1)
条件(k×kk<0、且つkk<k)(但し、kはΔΔΔLデータのi番目、kkはΔΔΔLデータの(i+1)番目の値を示す)を満たすiに対してFL(D,V,f)jを決定する。
FL(F)j=DV(F)i
FL(D)j=DV(D)i
FL(V)j=DV(V)i
【0095】
以上のように、“第2の自動変曲点計算”によれば、これまでオペレータがD-Vrb曲線に対して行っていた、変曲点の選定と同様に、
図2(b)に○で示されるような、D-Vrb曲線が著しく変化しかつ左端の変化箇所を、変曲点データFL(D)
j、FL(V)
j、FL(F)
jとして選別することができる。
【0096】
以上、第1、第2の自動変曲点計算について説明したが、上述した第1、第2の自動変曲点計算のいずれにおいても、
図3で説明したように、変曲点の選定結果は、拡張子を“
**.FL”とし、FLデータとして保存する。
【0097】
図5は、表面波探査解析装置に格納される、FLデータのデータ構成の一例を示す。FLデータのデータ構成もデータヘッダー部とデータ部とからなる。データヘッダー部にはソフト識別番号、計測番号、データ数等の変数が収納され、データ部には変曲点における計算深度D(m)、伝搬平均速度V(m/s)、周波数F(Hz)の3つの値を収録する。
【0098】
FLデータに収録されている伝搬平均速度Vrbは、地表面から計算深度Dまで、全体の地盤が振動した速度値を指す。ここで、変曲点によって区分した深度方向の各々範囲における速度値を区間速度として算定することで、深度方向における速度構造を算定することができる。
【0099】
図6は、区間速度の算定例を説明するための図である。
図6(a)に示すように、D-Vrb曲線から変曲点が抽出されると、地表面から第1、第2、第3、第4の4層の地盤が想定される。
【0100】
区間速度の算定については、例えば
図2(b)に示す第2層について言えば、第2層の上位の変曲点における伝搬平均速度V
j、計算深度D
j、並びに第2層の下位の変曲点における伝搬平均速度V
j+1、計算深度D
j+1により算定する。
【0101】
本実施形態では、区間速度を求める算定式を、区間速度計算式(1-1)、(1-2)、(1-3)として4種類用意している。これらの算定式の組み合わせ、条件式を用いて、探査場所における地盤の速度構造を求める。以下に、第2の区間速度の算定内容について詳細に説明する。
【0102】
区間速度算定内容
下記の区間速度計算式(1-1)~(1-3)を用いて、得られた変曲点データから区間速度Vrjを計算する。ここでは、伝搬平均速度と区間速度を区別するために、これまでの説明において使用した表記を変更して、区間速度をVrjと表記し、伝搬平均速度をVの上にバーを付けて表記し、Vバーと呼ぶこととする。
【0103】
6.1:区間速度計算式(1-1)
【数16】
但し、V
jバーはFLデータのj番目の伝搬平均速度、D
jはFLデータのj番目の深度、jは整数(j=1,2,・・・)である。
【0104】
【0105】
【0106】
6.4:第1の区間速度計算方法(区間速度計算式(1-1)と下記の複数の条件式を用いる)
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
但し、ρVは伝搬平均速度Vrbに対する補正値であり、後述する数式(12-8)において、補正後の値CVが算出される。
【0107】
【数23】
【数24】
【数25】
【数26】
【数27】
【数28】
【数29】
【数30】
【数31】
但し、下記の条件式(12-11)の場合、区間速度計算式(1-2)を用いる。
【0108】
【数32】
【数33】
【数34】
【数35】
但し、下記の条件式(12-13)の場合、区間速度計算式(1-2)を用いる。
【0109】
【0110】
6.5:第2の区間速度計算方法(区間速度計算式(1-3)、(1-2)と下記の複数の条件式を用いる)
【数38】
【数39】
【数40】
【数41】
【0111】
6.6:第3の区間速度計算方法(区間速度計算式(1-1)、(1-2)と下記の複数の条件式を用いる)
【数42】
【数43】
【数44】
【数45】
【0112】
6.7:第4の区間速度計算方法(区間速度計算式(1-3)を用いる)
【数46】
以上のようにして、地表面から第1層、第2層、・・・、第j層の各層の地盤の区間速度が算定される。
【0113】
以上説明してきたように、本発明の実施形態によれば、D-Vrb曲線における複数の変曲点を自動的に抽出することができるので、地盤探査に伴う作業の簡略化を実現することができるうえに、オペレータの違いによる計測結果のばらつきの解消と、計測精度の向上を実現することができる。そして、抽出した複数の変曲点によって区分される深度方向の複数の地盤層の各層における区間速度を算出することにより、探査地盤の深度方向における速度構造を算定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明による表面波探査解析装置及び表面波探査解析方法は、地盤探査への適用に適している。
【符号の説明】
【0115】
11A、11B 加速度検出器
12 計測部
13 パーソナルコンピュータ