(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】液圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
F04B 1/22 20060101AFI20220111BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F04B1/22
F15B11/00 F
(21)【出願番号】P 2017150164
(22)【出願日】2017-08-02
【審査請求日】2020-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 英紀
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勇
(72)【発明者】
【氏名】服部 智秀
(72)【発明者】
【氏名】尾形 麻里子
(72)【発明者】
【氏名】穴田 忠
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-308047(JP,A)
【文献】特開2017-089564(JP,A)
【文献】特開2004-257448(JP,A)
【文献】特開2009-264525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/16
F04B 1/26
F04B 1/22
F15B 11/00
F15B 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータによって駆動される可変容量型のポンプであって、前記電動モータの回転方向によって吐出側と吸込側とが切り換わる一対のポンプポートを有するポンプと、
第1給排ラインおよび第2給排ラインにより前記一対のポンプポートと接続された液圧アクチュエータと、
前記液圧アクチュエータに対するアクチュエータ位置指令値に基づいて前記電動モータを制御する制御装置と、を備え、
前記ポンプは、回転軸と、前記回転軸と共に回転する、複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックと、前記複数のシリンダボアにそれぞれ挿入された複数のピストンと、前記一対のポンプポートが形成されたポートプレートと、前記複数のピストンのストロークを規定する斜板と、前記斜板を押圧するスプリングと、を含み、
前記一対のポンプポートのそれぞれは、前記回転軸の中心でスプリング側と反スプリング側とに分割したときにスプリング側の部分よりも反スプリング側の部分が長くなる形状を有し、
前記ポンプは、
前記一対のポンプポート間の圧力差に応じて前記ピストンが前記斜板を傾動させるモーメントを発生させるように構成されている、液圧駆動装置。
【請求項2】
前記液圧アクチュエータは、互いに揺動可能に連結された一対の部材間の関節角度を変更する液圧シリンダである、請求項
1に記載の液圧駆動装置。
【請求項3】
電動モータと、
前記電動モータによって駆動される可変容量型のポンプであって、前記電動モータの回転方向によって吐出側と吸込側とが切り換わる一対のポンプポートを有するポンプと、
第1給排ラインおよび第2給排ラインにより前記一対のポンプポートと接続された液圧アクチュエータと、
前記液圧アクチュエータに対するアクチュエータ位置指令値に基づいて前記電動モータを制御する制御装置と、
前記電動モータの回転角度であるモータ角度実績値を検出する位置センサ
と、を備え、
前記ポンプは、前記第1給排ラインと前記第2給排ラインとの差圧が大きくなるほど当該ポンプの容量が小さくなるように構成されており、
前記制御装置は、前記ポンプの傾転角と対応する減速比を決定し、前記アクチュエータ位置指令値および前記減速比を使用して前記電動モータに対するモータ角度指令値を算出し、前記モータ角度指令値および前記位置センサで検出されるモータ角度実績値を用いて位置フィードバック制御を行う
、液圧駆動装置。
【請求項4】
電動モータと、
前記電動モータによって駆動される可変容量型のポンプであって、前記電動モータの回転方向によって吐出側と吸込側とが切り換わる一対のポンプポートを有するポンプと、
第1給排ラインおよび第2給排ラインにより前記一対のポンプポートと接続された、互いに揺動可能に連結された一対の部材間の関節角度を変更する液圧シリンダである液圧アクチュエータと、
前記一対の部材間の関節角度指令値であ
る、前記液圧アクチュエータに対するアクチュエータ位置指令値に基づいて前記電動モータを制御する制御装置と、
前記一対の部材間の関節角度実績値を検出する位置センサ
と、を備え、
前記ポンプは、前記第1給排ラインと前記第2給排ラインとの差圧が大きくなるほど当該ポンプの容量が小さくなるように構成されており、
前記制御装置は、前記関節角度指令値および前記位置センサで検出される関節角度実績値の検出値を用いて位置フィードバック制御を行う
、液圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータにより液圧アクチュエータを作動させる液圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動モータにより液圧アクチュエータを作動させる液圧駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この液圧駆動装置では、電動モータによって駆動されるポンプが、電動モータの回転方向によって吐出側と吸込側とが切り換わる一対のポンプポートを有し、これらのポンプポートが一対の給排ラインにより液圧アクチュエータと接続される。
【0003】
このような液圧駆動装置では、液圧アクチュエータは、電動モータの回転量に応じた作動量だけ作動する。つまり、電動モータのトルクが液圧アクチュエータの推力(液圧アクチュエータが液圧シリンダの場合)またはトルク(液圧アクチュエータが液圧モータの場合)に変換される。また、液圧アクチュエータが液圧シリンダの場合も液圧アクチュエータが液圧モータの場合も、ポンプは、電動モータの回転速度を、比較的に遅い液圧アクチュエータの速度(シリンダ速度またはモータ速度)に変換する減速機として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の液圧駆動装置では、ポンプが固定容量型である。従って、電動モータの回転数およびトルクが一定であれば、液圧アクチュエータの推力またはトルクも一定である。
【0006】
しかしながら、電動モータの回転数およびトルクが一定であっても、液圧アクチュエータに必要な推力またはトルクに応じて減速比を変更できるようにすることが望まれる。例えば、液圧アクチュエータが液圧シリンダの場合は、シリンダ速度を遅くして推力を大きくしたり、シリンダ速度を速くして推力を小さくしたりすることが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、電動モータの回転数およびトルクが一定であっても液圧アクチュエータに必要な推力またはトルクに応じて減速比を変更することができる液圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の液圧駆動装置は、電動モータと、前記電動モータによって駆動される可変容量型のポンプであって、前記電動モータの回転方向によって吐出側と吸込側とが切り換わる一対のポンプポートを有するポンプと、第1給排ラインおよび第2給排ラインにより前記一対のポンプポートと接続された液圧アクチュエータと、前記液圧アクチュエータに対するアクチュエータ位置指令値に基づいて前記電動モータを制御する制御装置と、を備え、前記ポンプは、前記第1給排ラインと前記第2給排ラインとの差圧が大きくなるほど当該ポンプの容量が小さくなるように構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
液圧アクチュエータが液圧シリンダの場合も液圧モータの場合も、通常、液圧アクチュエータへの作動油の供給側の給排ラインの圧力は高く、液圧アクチュエータからの作動液の排出側の給排ラインの圧力は低い。すなわち、第1給排ラインと第2給排ラインとの差圧が大きいことは液圧アクチュエータに必要な推力またはトルクが大きいことを意味する。また、ポンプの容量が小さいことは、減速比が大きいことを意味する。従って、上記の構成によれば、電動モータの回転数およびトルクが一定であっても液圧アクチュエータに必要な推力またはトルクに応じて減速比を変更することができる。
【0010】
前記ポンプは、回転軸と、前記回転軸と共に回転する、複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックと、前記複数のシリンダボアにそれぞれ挿入された複数のピストンと、前記一対のポンプポートが形成されたポートプレートと、前記複数のピストンのストロークを規定する斜板と、前記斜板を押圧するスプリングと、を含み、前記一対のポンプポート間の圧力差に応じて前記ピストンが前記斜板を傾動させるモーメントを発生させるように構成されていてもよい。この構成によれば、電動モータ、ポンプおよび液圧アクチュエータで構成される機械ユニットを小型化することができるとともに、第1給排ラインと第2給排ラインの差圧に応じてポンプの傾転角を自動的に切り替えることができる。
【0011】
前記液圧アクチュエータは、互いに揺動可能に連結された一対の部材間の関節角度を変更する液圧シリンダであってもよい。この構成によれば、液圧駆動装置をヒューマノイドロボットや産業用ロボットなどの関節に使用することができる。
【0012】
例えば、上記の液圧駆動装置は、前記電動モータの回転角度であるモータ角度実績値を検出する位置センサをさらに備え、前記制御装置は、前記ポンプの傾転角と対応する減速比を決定し、前記アクチュエータ位置指令値および前記減速比を使用して前記電動モータに対するモータ角度指令値を算出し、前記モータ角度指令値および前記位置センサで検出されるモータ角度実績値を用いて位置フィードバック制御を行ってもよい。
【0013】
前記アクチュエータ位置指令値は、前記一対の部材間の関節角度指令値であり、上記の液圧駆動装置は、前記一対の部材間の関節角度実績値を検出する位置センサをさらに備え、前記制御装置は、前記関節角度指令値および前記位置センサで検出される関節角度実績値の検出値を用いて位置フィードバック制御を行ってもよい。この構成によれば、減速比が正確に決定されなくても、液圧アクチュエータの作動位置を高精度に制御することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電動モータの回転数およびトルクが一定であっても液圧アクチュエータに必要な推力またはトルクに応じて減速比を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液圧駆動装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す液圧駆動装置の機械ユニットの概略構成図である。
【
図5】(a)は本実施形態の制御装置内のブロック図、(b)は変形例の制御装置内のブロック図である。
【
図6】(a)はポンプの傾転角が小さい場合のシリンダ速度とシリンダ推力の関係を示す図、(b)はポンプの傾転角が大きい場合のシリンダ速度とシリンダ推力の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る液圧駆動装置1を示す。この液圧駆動装置1は、機械ユニット2と制御装置5を含む。
【0017】
図2に示すように、機械ユニット2は、電動モータ21、ポンプ3および液圧アクチュエータ22が一体となったものである。また、機械ユニット2には、タンク29(
図1参照)として、小容積の貯留室が形成されている。
【0018】
本実施形態では、液圧アクチュエータ22が、互いに揺動可能に連結された一対の部材71,72間の関節角度を変更する、単ロッドの液圧シリンダである。例えば、部材71,72のそれぞれは、ロボットアームである。ただし、液圧アクチュエータ22は、両ロッドの液圧シリンダであってもよい。あるいは、液圧アクチュエータ22は、液圧モータであってもよい。
【0019】
機械ユニット2には、ポンプ3および液圧アクチュエータ22を含む液圧回路が設けられている。液圧回路を流れる作動液は、典型的には油であるが、水などのその他の液体であってもよい。
【0020】
ポンプ3は、電動モータ21の出力軸と連結された回転軸31を含む。つまり、ポンプ3は、電動モータ21により駆動される。なお、ポンプ3の回転軸31は、電動モータ21の出力軸と直接的に連結されてもよいし、減速機などを介して間接的に連結されてもよい。
【0021】
ポンプ3は、一対のポンプポート3a,3bを有する。ポンプポート3a,3bは、電動モータ21の回転方向によって吐出側と吸入側とが切り換わる。例えば、電動モータ21が一方向に回転すれば、ポンプポート3aが吸入ポート、ポンプポート3bが吐出ポートとなり、電動モータ21が逆方向に回転すれば、ポンプポート3bが吸入ポート、ポンプポート3aが吐出ポートとなる。
【0022】
ポンプ3のポンプポート3a,3bは、第1給排ライン23および第2給排ライン24により液圧アクチュエータ22と接続されている。本実施形態では、液圧アクチュエータ22が単ロッドの液圧シリンダであるために、液圧アクチュエータ22への供給量と液圧アクチュエータ22からの排出量が異なる。そのために、液圧シリンダのロッド側の第1給排ライン23は、チェック弁26が設けられた第1調整ライン25によりタンク29と接続されており、液圧シリンダのヘッド側の第2給排ライン24は、パイロットチェック弁28が設けられた第2調整ライン27によりタンク29と接続されている。
【0023】
チェック弁26およびパイロットチェック弁28は、タンク29から導出される流れは許容し、その逆の流れは禁止する。さらに、第2調整ライン27に設けられたパイロットチェック弁28には、パイロットライン28aを通じて第1給排ライン23の圧力が導かれ、パイロットチェック弁28は、第1給排ライン23の圧力が設定圧よりも高くなったときに逆流防止機能を解除する。
【0024】
なお、液圧アクチュエータ22が両ロッドの液圧シリンダまたは液圧モータである場合は、第2調整ライン27にはパイロットチェック弁28の代わりに単なるチェック弁が設けられてもよい。
【0025】
ポンプ3は、可変容量型のポンプである。ポンプ3は、第1給排ライン23と第2給排ライン24との差圧が大きくなるほど当該ポンプ3の容量(1回転あたりに押しのける容積)が小さくなるように構成されている。
【0026】
本実施形態では、ポンプ3が斜板ポンプである。そして、ポンプ3の傾転角が、第1給排ライン23と第2給排ライン24の差圧に応じて自動的に切り替えられる。
【0027】
具体的に、ポンプ3は、
図3に示すように、上述した回転軸31をベアリングを介して回転可能に支持するポートブロック44およびケーシング45を含む。そして、これらのポートブロック44およびケーシング45で囲まれる空間内に、ポートプレート43、シリンダブロック32、斜板35などが収容されている。
【0028】
シリンダブロック32は、回転軸31と共に回転する。シリンダブロック32には、複数のシリンダボア41が形成されている。これらのシリンダボア41には、複数のピストン33がそれぞれ挿入されている。また、シリンダブロック32には、各シリンダボア41の底に連通路42が形成されている。
【0029】
斜板35は、ピストン33のストロークを規定する。より詳しくは、ピストン33の頭部には、複数のシュー34がそれぞれ嵌合しており、これらのシュー34が、シリンダブロック32の回転に伴って斜板35上を摺動する。斜板35のシュー34側の摺動面と回転軸31に対する直交面とのなす角度が、ポンプ3の傾転角である。
【0030】
本実施形態では、シリンダブロック32の脇に、スプリング37が配置されている。スプリング37は、斜板35とポートブロック44との間に介在し、押圧板36を介して斜板35を回転軸31の軸方向に押圧する。
【0031】
ポートプレート43は、ポートブロック44に固定されており、シリンダブロック32がポートプレート43上を摺動する。
図4に示すように、ポートプレート43には、上述したポンプポート3a,3bが形成されている。シリンダブロック32に形成された連通路42は、ポンプポート3a,3bと連通したりポンプポート3a,3bから切り離されたりする。
【0032】
ポンプ3は、ポンプポート3a,3b間の圧力差に応じてピストン33が斜板35を傾動させるモーメントを発生させるように構成されている。本実施形態では、ポンプポート3a,3bのそれぞれが、回転軸31の中心でスプリング側と反スプリング側とに分割したときにスプリング側の部分よりも反スプリング側の部分が長くなる形状を有する。なお、説明の便宜上、以下では、回転軸31の中心からスプリング側を上方、回転軸31の中心から反スプリング側を下方という。
【0033】
このため、ポンプポート3a,3bのどちらが吐出口となったとしても、ピストン33が斜板35の上側部分を押圧する力よりも斜板35の下側部分を押圧する力が大きくなる。逆に、吸入口では、ピストン33が斜板35の上側部分を押圧する力よりも斜板35の下側部分を押圧する力が小さくなる。従って、吐出圧が高くなるほど、換言すればポンプポート3a,3b間の圧力差が大きくなるほど、ピストン33が斜板35をスプリング37の付勢力に抗してポンプ3の傾転角が小さくなる方向に傾動させるモーメントが大きくなる。
【0034】
上述した制御装置5は、液圧アクチュエータ22に対するアクチュエータ位置指令値に基づいて電動モータ21を制御する。例えば、制御装置5は、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有するコンピュータであり、ROMに記憶されたプログラムがCPUにより実行される。なお、制御装置5は、単一の機器であってもよいし、複数の機器に分割されてもよい。
【0035】
具体的に、制御装置5は、
図5(a)に示すように、モータ角度変換部51、位置制御部52、速度制御部53、インバータ部54および微分部55を含む。制御装置5には、図略の別の装置から、アクチュエータ位置指令値が入力される。本実施形態では、アクチュエータ位置指令値が、部材71,72間の関節角度指令値θcである。
【0036】
さらに、本実施形態では、制御装置5が2つのエンコーダ61,62(位置センサ)と電気的に接続されている。エンコーダ61は、
図1に示すように電動モータ21の出力軸に設けられており、電動モータ21の回転角度であるモータ角度実績値θmfを検出する。エンコーダ62は、
図2に示すように部材71,72同士を連結する揺動軸に設けられており、部材71,72間の関節角度実績値θfを検出する。
【0037】
なお、関節角度実績値θfを検出する位置センサとしては、エンコーダ62以外にも、液圧アクチュエータ22である液圧シリンダに設けられるストロークセンサなどを用いることが可能である。
【0038】
本実施形態では、制御装置5が、
図5(a)に示すように、関節角度指令値θcおよびエンコーダ62で検出される部材71,72間の関節角度実績値θfを用いて位置フィードバック制御を行う。また、制御装置5は、電動モータ21に対するモータ速度指令値ωmcおよびエンコーダ61で検出される電動モータ21のモータ角度実績値θmfの微分値ωmfを用いて速度フィードバック制御を行う。以下、制御装置5の各部の機能を詳しく説明する。
【0039】
モータ角度変換部51は、ポンプ3の傾転角と対応し、かつ部材71,72等のリンク機構に依存する減速比Rを決定し、関節角度指令値θcおよび減速比Rを使用して電動モータ21に対するモータ位置偏差θmeを算出する。
【0040】
減速比Rは、第1給排ライン23と第2給排ライン24との差圧にも依存する。例えば、モータ角度変換部51は、電動モータ21に設けられたトルク計または第1および第2給排ライン23,24に設けられた圧力計の検出値などに基づいて、減速比Rを算出する。
【0041】
そして、モータ角度変換部51は、部材71,72間の関節角度指令値θcとエンコーダ62で検出される関節角度実績値θfとの偏差を減速比Rで割って電動モータ21に対するモータ位置偏差θmeを算出する。
【0042】
位置制御部52は、モータ位置偏差θmeに位置ゲインKpを乗算して電動モータ21に対するモータ速度指令値ωmcを算出する。ただし、制御装置5は、モータ位置偏差θmeを算出せずに、部材71,72間の関節角度指令値θcとエンコーダ62で検出される関節角度実績値θfとの偏差にKp/Rを乗算することでモータ速度指令値ωmcを算出してもよい。
【0043】
微分部55は、エンコーダ61で検出されるモータ角度実績値θmfを微分してモータ速度実績値ωmfを算出する。速度制御部53は、は、モータ速度指令値ωmcとモータ速度実績値ωmfとの偏差に速度ゲインKvを乗算して、電動モータ21に対する電流指令値Imcを算出する。インバータ部54は、電流指令値Imcに基づいて電動モータ21へ電力を供給する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の液圧駆動装置1では、ポンプ3が、第1給排ライン23と第2給排ライン24との差圧が大きくなるほど当該ポンプ3の容量が小さくなるように構成されている。通常、液圧アクチュエータ22への作動油の供給側の給排ラインの圧力は高く、液圧アクチュエータ22からの作動液の排出側の給排ラインの圧力は低い。すなわち、第1給排ライン23と第2給排ライン24との差圧が大きいことは液圧シリンダである液圧アクチュエータ22に必要な推力が大きいことを意味する。また、ポンプ3の容量が小さいことは、減速比Rが大きいことを意味する。従って、本実施形態の液圧駆動装置1によれば、電動モータ21の回転数およびトルクが一定であっても液圧アクチュエータ22に必要な推力に応じて減速比Rを変更することができる。
【0045】
例えば、
図6(a)に示すように、液圧シリンダである液圧アクチュエータ22に必要な推力が大きな場合は、第1給排ライン23と第2給排ライン24との差圧が大きくなるために、減速比Rを大きくすることができる。逆に、
図6(b)に示すように、液圧アクチュエータ22に必要な推力が小さな場合は、第1給排ライン23と第2給排ライン24との差圧が小さくなるために、減速比Rを小さくすることができる。なお、シリンダ推力およびシリンダ速度で形成される矩形面積は、
図6(a)および(b)中に示す二点鎖線に沿って変化する。
【0046】
また、本実施形態では、液圧アクチュエータ22が部材71,72間の関節角度を変更する液圧シリンダであるので、液圧駆動装置1をヒューマノイドロボットや産業用ロボットなどの関節に使用することができる。
【0047】
ところで、制御装置5が行う位置フィードバック制御では、エンコーダ62で検出される部材71,72間の関節角度実績値θfの代わりに、
図5(b)に示すように、エンコーダ61で検出される電動モータ21に対するモータ角度実績値θmfが用いられてもよい。つまり、制御装置5は、関節角度指令値θcおよび減速比Rを使用してモータ角度指令値θmcを算出し、モータ角度指令値θmcおよびモータ角度実績値θmfを用いて位置フィードバック制御を行ってもよい。ただし、前記実施形態のようにエンコーダ62で検出される部材71,72間の関節角度実績値θfを用いて位置フィードバック制御を行うことで、減速比Rが正確に決定されなかったり、液圧回路からの作動液のリークがあったとしても、液圧アクチュエータ22の作動位置を高精度に制御することができる。
【0048】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0049】
例えば、ポンプ3の傾転角は、必ずしも自動的に切り替えられる必要はなく、電動アクチュエータにより変更されてもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、ポンプ3が斜板ポンプであったが、ポンプ3は斜軸ポンプであってもよい。あるいは、ポンプ3は、可変容量型である限り特に限定されず、例えばベーンポンプや可変容量ギアポンプなどであってもよい。ただし、前記実施形態のようにポンプ3が斜板ポンプであれば、電動モータ21、ポンプ3および液圧アクチュエータ22で構成される機械ユニット2を小型化することができる。
【0051】
また、制御装置5は、オブザーバなどの制御理論によるセンサレス制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 液圧駆動装置
21 電動モータ
22 液圧アクチュエータ
23 第1給排ライン
24 第2給排ライン
3 ポンプ
3a,3b ポンプポート
31 回転軸
32 シリンダブロック
33 ピストン
35 斜板
37 スプリング
41 シリンダボア
43 ポートプレート
44 ポートブロック
5 制御装置
61,62 エンコーダ(位置センサ)
71,72 部材