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特許6998664ガスクラスター処理装置およびガスクラスター処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ガスクラスター処理装置およびガスクラスター処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
H01L21/304 645Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017057086
(22)【出願日】2017-03-23
(65)【公開番号】P2018160565
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】土橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】折居 武彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幸正
(72)【発明者】
【氏名】小池 国彦
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 武彦
(72)【発明者】
【氏名】泉 浩一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 裕
(72)【発明者】
【氏名】荘所 正
(72)【発明者】
【氏名】兼平 圭太
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/049959(WO,A1)
【文献】特開2004-061321(JP,A)
【文献】特開2010-164130(JP,A)
【文献】特開2001-027400(JP,A)
【文献】特開2003-247469(JP,A)
【文献】特開2008-288530(JP,A)
【文献】特開2009-267381(JP,A)
【文献】特開2015-041646(JP,A)
【文献】特開2000-077394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体にガスクラスターを照射して被処理体に所定の処理を行うガスクラスター処理装置であって、
被処理体が配置される処理容器と、
ガスクラスターを生成するためのガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部から供給されるガスの流量を制御する流量制御器と、
前記ガスクラスターを生成するためのガスが所定の供給圧力で供給され、前記ガスを真空保持された処理容器内に噴出して前記ガスを断熱膨張によりクラスター化させるクラスターノズルと、
前記流量制御器と前記クラスターノズルの間の配管に設けられ、前記ガスクラスターを生成するためのガスの供給圧力を制御する、背圧制御器を有する圧力制御部と、
前記流量制御器の設定流量を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記ガス供給部から供給される前記ガスの供給圧力が前記所定の供給圧力に達するまで、前記流量制御器の設定流量を、前記所定の供給圧力に到達するのに必要な流量を超える第1の流量に制御し、前記圧力制御部は、前記背圧制御器に流れるガスの流量を計測する流量計測器を有し、前記制御手段は、該流量計測器の計測値に基づいて、前記流量制御器の設定値を、前記所定の供給圧力を維持可能な流量より大きく、かつ、前記第1の流量より小さい第2の流量に制御することを特徴とするガスクラスター処理装置。
【請求項2】
前記背圧制御器は、前記配管から分岐される分岐配管に設けられ、前記背圧制御器として、前記分岐配管に直列に設けられた第1の背圧制御器および第2の背圧制御器を有し、前記第1の背圧制御器として差圧範囲が狭い高精度のものが用いられるとともに一次側の圧力が前記ガス供給圧力の設定値になるように設定され、前記第2の背圧制御器として差圧範囲が前記第1の背圧制御器よりも広いものが用いられるとともに一次側の圧力が前記ガス供給圧力の設定値よりも低い値になるように設定されることを特徴とする請求項1に記載のガスクラスター処理装置。
【請求項3】
前記ガス供給部は、前記ガスクラスターを生成するためのガスとして、少なくとも2種類のガスを別個に供給し、前記流量制御器として、前記少なくとも2種類のガスのそれぞれに対応する少なくとも2つの流量制御器を有し、前記少なくとも2種類のガスは、前記少なくとも2つの流量制御器の下流側で前記配管に合流し、前記圧力制御部は、前記配管の前記少なくとも2種類のガスの全てが合流した部分に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスクラスター処理装置。
【請求項4】
前記配管の前記圧力制御部が設けられた部分よりも上流側に設けられ、前記ガスを昇圧する昇圧器をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のガスクラスター処理装置。
【請求項5】
前記圧力制御部は、前記配管から前記背圧制御器をバイパスして排気するバイパス流路と、バイパス流路を開閉する開閉バルブとをさらに有し、ガスクラスター処理後に前記開閉バルブを開いて、前記クラスターノズルおよび前記配管内のガスを前記バイパス流路を介して排気することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のガスクラスター処理装置。
【請求項6】
前記第1の流量として、前記所定の供給圧力を維持可能な流量の1.5倍から50倍の範囲に制御し、前記第2の流量として、前記所定の供給圧力を維持可能な流量の1.02倍から1.5倍の範囲に制御することを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載のガスクラスター処理装置。
【請求項7】
ガスクラスター生成するためのガスを、配管を介してクラスターノズルに供給し、前記クラスターノズルから前記ガスを真空保持された処理容器内に噴出させて前記ガスを断熱膨張によりクラスター化させ、前記処理容器内に配置された被処理体にガスクラスターを照射し、被処理体に所定の処理を行うガスクラスター処理方法であって、
流量制御器により前記ガスの流量を所定の流量に制御し、背圧制御器により、前記ガスの一部を前記配管から排出することにより前記配管における供給圧力を所定の供給圧力に制御し、
前記ガスの供給圧力が前記所定の供給圧力に達するまで、前記流量制御器の設定流量を、前記所定の供給圧力に到達するのに必要な流量を超える第1の流量に制御し、前記配管から排出され、前記背圧制御器に流れるガスの流量を計測し、その計測値に基づいて、前記ガスの流量を、前記所定の供給圧力を維持可能な流量より大きく、かつ、前記第1の流量より小さい第2の流量に制御することを特徴とするガスクラスター処理方法。
【請求項8】
前記背圧制御器は、前記配管から分岐される分岐配管に設けられ、前記配管から排出されるガスが前記分岐配管を通って前記背圧制御器に流れ、前記背圧制御器は、その一次側の圧力が前記所定の供給圧力になるように設定され、前記一次側の圧力が前記所定の供給圧力に到達した時点で、前記背圧制御器を介して余分なガスが排出されることを特徴とする請求項に記載のガスクラスター処理方法。
【請求項9】
前記背圧制御器として、前記分岐配管に直列に設けられた第1の背圧制御器および第2の背圧制御器を有し、前記第1の背圧制御器として差圧範囲が狭い高精度のものが用いられるとともに一次側の圧力が前記ガス供給圧力の設定値になるように設定され、前記第2の背圧制御器として差圧範囲が前記第1の背圧制御器よりも広いものが用いられるとともに一次側の圧力が前記ガス供給圧力の設定値よりも低い値になるように設定されることを特徴とする請求項に記載のガスクラスター処理方法。
【請求項10】
前記ガスクラスターを生成するためのガスとして、少なくとも2種類のガスを別個に供給し、前記少なくとも2種類のガスをそれぞれ流量制御し、前記少なくとも2種類のガスは流量制御後、前記配管に合流し、前記少なくとも2種類のガスの全てが合流した後に前記ガスの一部が排出されることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載のガスクラスター処理方法。
【請求項11】
前記ガスは、前記ガスの一部が排出される位置よりも上流側で、昇圧器により昇圧されることを特徴とする請求項から請求項10のいずれか1項に記載のガスクラスター処理方法。
【請求項12】
前記第1の流量として、前記所定の供給圧力を維持可能な流量の1.5倍から50倍の範囲に制御し、前記第2の流量として、前記所定の供給圧力を維持可能な流量の1.02倍から1.5倍の範囲に制御することを特徴とする請求項から請求項11のいずれか1項に記載のガスクラスター処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクラスター処理装置およびガスクラスター処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造過程においては、基板に付着しているパーティクルが製品の欠陥につながるため、基板に付着したパーティクルを除去する洗浄処理が行われる。このような基板洗浄技術としては、基板表面にガスクラスターを照射して、その物理的な作用により基板表面のパーティクルを除去する技術が注目されている。
【0003】
ガスクラスターを基板表面に照射する技術としては、CO等のクラスター生成用ガスを高圧にしてノズルから真空中に噴射し、断熱膨張によりガスクラスターを生成させ、生成されたガスクラスターをイオン化部でイオン化し、これを加速電極により加速して形成されたガスクラスターイオンビームを基板に照射する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、CO等のクラスター生成用ガスおよびHe等の加速用ガスの複数のガスをノズルから真空中に噴射し、断熱膨張により生成した中性のガスクラスターを基板に照射する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ノズルから照射するガスクラスターの径はガスの供給圧力によって決まるため、ガス供給圧力を制御することが必要であるが、特許文献1、2にも記載されているように、従来はガスの供給圧力を主にガスの供給流量で制御している。すなわち、ガスの供給圧力と供給流量は比例するため、ガスの供給流量を制御することによりガスの供給圧力を制御することができる。また、特許文献2に示されるように、供給圧力の微調整は圧力調整バルブを用いて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2006-500741号公報
【文献】特開2013-175681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガスの供給流量は通常マスフローコントローラ(内部の流路におけるガスの質量流量に比例した温度変化を捉え、電気信号に変換し、外部からの設定流量に対応する電気信号に基づき、流量制御バルブを作動させ、設定された流量に制御する)により制御されるが、マスフローコントローラによる流量制御では、設定圧力に到達するまでに長時間を要してしまう。また、設定供給圧力に対応する供給量よりもガスの供給量を増加させて設定供給圧力に到達する時間を短縮しようとすると、供給圧力が圧力調整バルブにより設定した圧力に対してオーバーシュートし、圧力の制御性が低下してしまう。また、このようなオーバーシュートが生じると、マスフローコントローラ下流側の圧力が上昇してマスフローコントローラ前後の差圧がとれずガス供給量の制御自体ができなくなる。
【0008】
したがって、本発明は、基板にガスクラスターを照射して基板処理を行う際に、短時間でガスクラスターの生成に必要なガス供給圧力に到達させることができ、かつガス供給圧力の制御性が良好な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、被処理体にガスクラスターを照射して被処理体に所定の処理を行うガスクラスター処理装置であって、被処理体が配置される処理容器と、ガスクラスターを生成するためのガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部から供給されるガスの流量を制御する流量制御器と、前記ガスクラスターを生成するためのガスが所定の供給圧力で供給され、前記ガスを真空保持された処理容器内に噴出して前記ガスを断熱膨張によりクラスター化させるクラスターノズルと、前記流量制御器と前記クラスターノズルの間の配管に設けられ、前記ガスクラスターを生成するためのガスの供給圧力を制御する、背圧制御器を有する圧力制御部と、前記流量制御器の設定流量を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記ガス供給部から供給される前記ガスの供給圧力が前記所定の供給圧力に達するまで、前記流量制御器の設定流量を、前記所定の供給圧力に到達するのに必要な流量を超える第1の流量に制御し、前記圧力制御部は、前記背圧制御器に流れるガスの流量を計測する流量計測器を有し、前記制御手段は、該流量計測器の計測値に基づいて、前記流量制御器の設定値を、前記所定の供給圧力を維持可能な流量より大きく、かつ、前記第1の流量より小さい第2の流量に制御することを特徴とするガスクラスター処理装置を提供する。
【0010】
前記圧力制御部は、前記配管から分岐される分岐配管を有し、前記背圧制御器は前記分岐配管に設けられ、前記配管からのガスが前記背圧制御器に流れて排気されるように構成され、前記背圧制御器は、その一次側の圧力が前記所定の供給圧力になるように設定され、前記一次側の圧力が前記所定の供給圧力に到達した時点で、前記背圧制御器を介して余分なガスが排気されるようにすることができる。
【0011】
前記背圧制御器として、前記分岐配管に直列に設けられた第1の背圧制御器および第2の背圧制御器を有し、前記第1の背圧制御器として差圧範囲が狭い高精度のものが用いられるとともに一次側の圧力が前記ガス供給圧力の設定値になるように設定され、前記第2の背圧制御器として差圧範囲が前記第1の背圧制御器よりも広いものが用いられるとともに一次側の圧力が前記ガス圧力の設定値よりも低い値になるように設定されるものを用いることが好ましい。
【0013】
前記ガス供給部は、前記ガスクラスターを生成するためのガスとして、少なくとも2種類のガスを別個に供給し、前記流量制御器として、前記少なくとも2種類のガスのそれぞれに対応する少なくとも2つの流量制御器を有し、前記少なくとも2種類のガスは、前記少なくとも2つの流量制御器の下流側で前記配管に合流し、前記圧力制御部は、前記配管の前記少なくとも2種類のガスの全てが合流した部分に設けられるようにすることができる。
【0014】
前記配管の前記圧力制御部が設けられた部分よりも上流側に設けられ、前記ガスを昇圧する昇圧器をさらに有してもよい。また、前記圧力制御部は、前記配管から前記背圧制御器をバイパスして排気するバイパス流路と、バイパス流路を開閉する開閉バルブとをさらに有し、ガスクラスター処理後に前記開閉バルブを開いて、前記クラスターノズルおよび前記配管内のガスを前記バイパス流路を介して排気するようにしてもよい。前記圧力制御部が設けられた分岐配管部分よりも下流側に設けられ、かつ前記クラスターノズル部を含め、それより上流側に前記ガスを温調する温調器をさらに有してもよい。前記流量制御器としてはマスフローコントローラが好適である。
【0015】
前記第1の流量として、前記所定の供給圧力を維持可能な流量の1.5倍から50倍の範囲に制御し、前記第2の流量として、前記所定の供給圧力を維持可能な流量の1.02倍から1.5倍の範囲に制御することが好ましい。
【0016】
本発明の第2の観点は、ガスクラスター生成するためのガスを、配管を介してクラスターノズルに供給し、前記クラスターノズルから前記ガスを真空保持された処理容器内に噴出させて前記ガスを断熱膨張によりクラスター化させ、前記処理容器内に配置された被処理体にガスクラスターを照射し、被処理体に所定の処理を行うガスクラスター処理方法であって、流量制御器により前記ガスの流量を所定の流量に制御し、背圧制御器により、前記ガスの一部を前記配管から排出することにより前記配管における供給圧力を所定の供給圧力に制御し、前記ガスの供給圧力が前記所定の供給圧力に達するまで、前記流量制御器の設定流量を、前記所定の供給圧力に到達するのに必要な流量を超える第1の流量に制御し、前記配管から排出され、前記背圧制御器に流れるガスの流量を計測し、その計測値に基づいて、前記ガスの流量を、前記所定の供給圧力を維持可能な流量より大きく、かつ、前記第1の流量より小さい第2の流量に制御することを特徴とするガスクラスター処理方法を提供する。
【0017】
上記第2の観点において、前記背圧制御器は、前記配管から分岐される分岐配管に設けられ、前記配管から排出されるガスが前記分岐配管を通って前記背圧制御器に流れ、前記背圧制御器は、その一次側の圧力が前記所定の供給圧力になるように設定され、前記一次側の圧力が前記所定の供給圧力に到達した時点で、前記背圧制御器を介して余分なガスが排出されるようにすることができる。また、前記背圧制御器として、前記分岐配管に直列に設けられた第1の背圧制御器および第2の背圧制御器を有し、前記第1の背圧制御器として差圧範囲が狭い高精度のものが用いられるとともに一次側の圧力が前記ガス供給圧力の設定値になるように設定され、前記第2の背圧制御器として差圧範囲が前記第1の背圧制御器よりも広いものが用いられるとともに一次側の圧力が前記ガス圧力の設定値よりも低い値になるように設定されるものを用いることができる。
【0018】
前記第1の流量として、前記所定の供給圧力を維持可能な流量の1.5倍から50倍の範囲に制御し、前記第2の流量として、前記所定の供給圧力を維持可能な流量の1.02倍から1.5倍の範囲に制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ガス供給部から供給されるガスの流量を流量制御器により制御し、流量制御器とクラスターノズルの間の配管におけるガスクラスターを生成するためのガスの供給圧力を、背圧制御器を有する圧力制御部により制御するので、大流量でガスクラスターを生成するためのガスを流して、所定の供給圧力になった時点で余分なガスを排出させることができ、短時間で所定のガス供給圧力に到達させることができる。また、このように、所定の供給圧力に到達した時点で余分なガスを排出することにより、ガス供給圧力にオーバーシュートが生じることがなく、また、背圧制御器により処理中にガス供給圧力が一定に維持されるため、ガス供給圧力の制御性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
図2】ガス供給圧力とガス供給流量の関係を示す図である。
図3】従来のガス供給流量によりガス供給圧力を制御する場合における、供給圧力の経時変化を示す図である。
図4】従来のガス供給流量によりガス供給圧力を制御する場合に、設定供給圧力に対応する供給量よりもガスの供給量を増加させた際の圧力の経時変化を示す図である。
図5】本発明のガス供給圧力の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
図9】本発明の第5の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
図10】本発明の第6の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
図11】従来のガスクラスター処理装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
【0023】
本実施形態のガスクラスター処理装置100は、被処理体の表面にガスクラスターを照射して被処理体表面の洗浄処理を行うためのものである。
【0024】
このガスクラスター処理装置100は、洗浄処理を行うための処理室を画成する処理容器1を有している。処理容器1内の底部近傍には被処理体である基板Sを載置する基板載置台2が設けられている。
【0025】
基板Sとしては、半導体ウエハや、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板等、種々のものを挙げることができ、特に限定されない。
【0026】
処理容器1内の上部には、基板載置台2に対向するように、ガスクラスターを基板Sに向けて照射するクラスターノズル11が設けられている。クラスターノズル11は、本体部11aと、コニカル状をなす先端部11bとを有する。本体部11aと先端部11bの間には、径が例えば0.1mm程度のオリフィス部を有している。
【0027】
基板載置台2は、駆動部3により駆動されるようになっており、駆動部3により基板載置台2を駆動することにより、基板Sとクラスターノズル11との間に相対的な移動が生じるようになっている。駆動部3は、X軸レール3aと、Y軸レール3bとを有するXYテーブルとして構成されている。なお、基板載置台2を固定的に設けて、クラスターノズル11を駆動させてもよい。
【0028】
処理容器1の底部には排気口4が設けられており、排気口4には排気配管5が接続されている。排気配管5には、真空ポンプ6が設けられており、この真空ポンプ6により処理容器1内が真空排気されるようになっている。このときの真空度は排気配管5に設けられた圧力制御バルブ7により制御可能となっている。これら排気配管5、真空ポンプ6、および圧力制御バルブ7により排気機構10が構成され、これにより処理容器1内が所定の真空度、例えば0.1~300Paに保持される。
【0029】
処理容器1の側面には、基板Sの搬入出を行うための搬入出口8が設けられており、この搬入出口8を介して真空搬送室(図示せず)に接続されている。搬入出口8はゲートバルブ9により開閉可能となっており、真空搬送室内の基板搬送装置(図示せず)により、処理容器1に対する基板Sの搬入出が行われる。
【0030】
クラスターノズル11には、ノズル11内にガスクラスターを生成するためのガスであるクラスター生成ガスを供給するガス供給配管12の一端が処理容器1の天壁を貫通して接続されており、ガス供給配管12の他端には、そのようなガスを供給するガス供給源13が接続されている。ガス供給配管12には、クラスター生成ガスの供給流量を制御する流量制御器であるマスフローコントローラ14が設けられている。
【0031】
マスフローコントローラ14とクラスターノズル11との間には、クラスターノズル11に供給されるガスの供給圧力を制御する圧力制御部15が設けられている。
【0032】
圧力制御部15は、ガス供給配管12のマスフローコントローラ14とクラスターノズル11との間の部分から分岐した分岐配管16と、分岐配管16に設けられた背圧制御器17と、分岐配管16に流れるガスの流量を計測する流量計18とを有する。分岐配管16の他端は、排気配管5に接続されている。分岐配管16の背圧制御器17の上流側には、圧力計19が設けられている。背圧制御器17は、一次側、すなわち、背圧制御器17の上流側の圧力を一定値に制御する機能を有する。具体的には、背圧制御器17は逃し弁を備えており、一次側の圧力が設定圧力に到達すると逃し弁が開き、余分なガスが排気され、ガス供給圧力が一定に維持されるようになっている。背圧制御器17としては、一次側の圧力がクラスターノズル11に供給されるガスの供給圧力、例えば0.9MPaとなるように差圧制御されるものが用いられる。圧力計19は、背圧制御器17の上流側の圧力をモニタするものである。なお、流量計18は背圧制御器17の下流側に設けられているが、分岐配管16のガス流量が測定できれば設置位置は限定されない。
【0033】
なお、ガス供給配管12には、マスフローコントローラ14の前後に開閉バルブ21および22が設けられている。また、分岐配管16の背圧制御器17の下流側には開閉バルブ23が設けられている。
【0034】
ガス供給源13からクラスターノズル11に供給されるクラスター生成ガスの供給圧力は圧力制御部15により例えば0.3~5.0MPaの範囲の高圧に制御される。ガス供給源13から供給されるクラスター生成ガスは、クラスターノズル11から例えば0.1~300Paの真空に保持された処理容器1内に噴射されると、供給されたガスが断熱膨張し、ガスの原子または分子の一部がファンデルワールス力により数個から約10個凝集し、ガスクラスターとなる。
【0035】
クラスター生成ガスは特に限定されないが、クラスターを生成可能なガス、例えば、COガス、Arガス、Nガス、SFガス、CFガス等を好適に用いることができる。クラスター生成ガスを複数混合して供給するようにしてもよい。また、クラスター加速用にHガスやHeガスを混合してもよい。
【0036】
生成されたガスクラスターを破壊させずに基板Sに噴射させるためには、処理容器1内の圧力は低いほうがよく、例えば、クラスターノズル11に供給するガスの供給圧力が1MPa以下では100Pa以下、供給圧力が1~5MPaでは1000Pa以下であることが好ましい。
【0037】
ガスクラスター処理装置100は、制御部30を有している。制御部30は、ガスクラスター処理装置100の各構成部(バルブ、マスフローコントローラ、背圧制御器、駆動部等)を制御するものであり、特に、背圧制御器17に設定圧力の指令を与え、また、流量計18の計測流量に基づいてマスフローコントローラ14の流量制御を行う。
【0038】
次に、このように構成されるガスクラスター処理装置100の処理動作について説明する。
ゲートバルブ9を開けて搬入出口8を介して真空搬送室から基板Sを真空ポンプ6により常時排気された処理容器1内に搬入し、基板載置台2上に載置する。ゲートバルブ9を閉じた後、圧力制御バルブ7により処理容器1内の圧力を所定の圧力に制御する。
【0039】
この後、ガスクラスター生成ガスを所定の供給圧力でクラスターノズル11に供給する。このときのガス供給圧力の制御は、従来、マスフローコントローラを用いてガス供給流量を制御することにより行っていた。図2に示すように、ガス供給圧力とガス供給流量の関係は比例関係にあり、その関係はクラスターノズルのオリフィス径に依存する。また、ガス供給圧力の微調整は、マスフローコントローラの下流側に設けられた圧力制御バルブ(レギュレータ)により行っていた。
【0040】
しかし、ガス供給流量によりガス供給圧力を制御する場合には、所定の供給圧力になるようにマスフローコントローラのガス供給流量をセットしても、クラスターノズルのオリフィスからガスが流れる状態で昇圧を行うため、オリフィスから流れ出るガス量と供給するガス量が安定化するまで時間を要し、図3に示すように、設定した供給圧力までの到達時間が長くなってしまう。例えば、クラスター生成ガスとしてCOガスを用い、0.9MPaまで昇圧する場合、15分以上かかっていた。
【0041】
一方、設定供給圧力に対応する供給量よりもガスの供給量を増加させて設定供給圧力に到達する時間を短縮しようとすると、到達時間は従来より短縮されるものの、図4に示すように、設定した所望の圧力に対して、供給圧力がオーバーシュートし、圧力の制御性が低下してしまう。また、このようなオーバーシュートが生じると、マスフローコントローラ下流側の圧力が上昇してマスフローコントローラ前後の差圧がとれずガス供給流量の制御自体ができなくなる。マスフローコントローラの下流側にガス供給圧力の微調整用の圧力調整バルブ(レギュレータ)を設けたとしても、同様にマスフローコントローラ下流側の圧力は上昇し、マスフローコントローラ前後の差圧がとれず、ガス供給流量自体の制御ができなくなる。
【0042】
そこで、本実施形態では、このような不都合を解消すべく、クラスター生成ガスのガス供給圧力の制御を、背圧制御器17を有する圧力制御部15により行う。
【0043】
以下、ガス供給圧力の制御方法の一例を、図5のフローチャートを参照して説明する。
最初に、設定されたガス供給圧力に対応する到達必要流量を超える流量でクラスター生成ガスが供給されるように、マスフローコントローラ14により流量を第1の流量に制御しつつクラスター生成ガスを供給する(ステップ1)。
【0044】
設定されたガス供給圧に到達すると、背圧制御バルブ17の逃し弁が開き、余分なガスが分岐配管16を介して排出され、ガス供給配管12を介してクラスターノズル11へ供給されるクラスター生成ガスの供給圧力が一定に保たれ、この時点で基板Sの洗浄処理を開始する(ステップ2)。
【0045】
洗浄処理が開始された後、流量計18により計測された分岐配管16のガス流量値を、マスフローコントローラ14にフィードバックし、クラスター生成ガスの供給流量を、設定されたガス供給圧力を維持できる流量より大きく、かつ、第1の流量より小さい第2の流量に制御する(ステップ3)。
【0046】
このように、クラスター生成ガスの供給圧力を制御する圧力制御部15に背圧制御器17を設けて、ガス供給圧力自体を制御するようにしたので、マスフローコントローラ14の設定により大流量でクラスター生成ガスを供給しても、供給圧力が設定圧力に到達した時点で余分なガスを背圧制御器17を介して排出することにより、ガス供給圧力を設定圧力に制御することができる。このため、大流量のクラスター生成ガスを供給することができ、短時間で設定されたガス供給圧力に到達させることができる。例えば、供給圧力が0.9MPaのとき、従来、ガス供給開始から設定供給圧力に到達して安定するまでの時間が15分以上必要であったものが、本実施形態では4分以下まで短縮することができる。
【0047】
また、ステップ2で供給圧力が設定圧力に到達した時点で余分なガスを排出するので、ガス供給圧力にオーバーシュートが生じることがなく、また、背圧制御器17により洗浄処理中にガス供給圧力が一定に維持されるため、ガス供給圧力の制御性が良好である。
【0048】
さらに、洗浄処理が開始された後、余分なガスとして分岐配管16に流したガスの流量を流量計18により計測し、その計測値に基づいてクラスター生成ガスの流量を制御することができるので、ガスクラスターの生成に寄与しない無駄なガス量を減らすことができる。
【0049】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
本実施形態のガスクラスター処理装置101の基本構成は第1の実施形態の図1と同様であるが、ガスクラスターを生成するためのガスとして少なくとも2種類のガスを供給する点が図1とは異なっている。
【0050】
本実施形態では、ガスクラスターを生成するためのガスとして、少なくとも1種類のクラスター生成ガスを含む、少なくとも2種類のガスを別個に供給する。例えば、上述したCOガス、Arガス、Nガス、SFガス、CFガス等のクラスター生成ガスを2種類以上別個に供給するようにしてもよいし、クラスター生成ガスと、クラスター生成ガスを加速するための加速用ガスとをそれぞれ供給するようにしてもよい。加速用ガスは、クラスター生成ガス単独では必要な速度が得られない場合に用いられ、それ自体はクラスターを生成し難いが、クラスター生成ガスによって生成されたガスクラスターを加速する作用を有する。加速用ガスとしては、Heガス、Hガス等を用いることができる。基板Sの表面で所定の反応を生じさせる反応ガス等の他のガスを用いてもよい。
【0051】
図6の例では、第1のガスを供給する第1ガス供給源13aと、第2のガスを供給する第2ガス供給源13bとを有し、2種類のガスを供給する場合を示す。具体的には、第1ガス供給源13aから供給される第1のガスとしてクラスター生成ガスであるCOガス、第2ガス供給源13bから供給される第2のガスとして加速ガスであるHガスまたはHeガスの場合が例示される。第1のガスまたは第2のガスを、複数のガスを混合したものとしてもよい。
【0052】
第1ガス供給源13aには第1配管12aが接続され、第2ガス供給源13bには第2配管12bが接続されている。第1配管12aおよび第2配管12bは、クラスターノズル11から延びるガス供給配管12に接続されており、第1のガスおよび第2のガスは、それぞれ第1ガス供給源13aおよび第2ガス供給源13bから、第1配管12aおよび第2配管12bを通ってガス供給配管12で合流し、クラスターノズル11に供給される。第1配管12aには、第1のガスの供給流量を制御する流量制御器である第1マスフローコントローラ(MFC1)14aが設けられている。また、第2配管12bには、第2のガスの供給流量を制御する流量制御器である第2マスフローコントローラ(MFC2)14bが設けられている。
【0053】
なお、3種類以上のガスを供給する場合には、その数に応じて、ガス供給源、配管、マスフローコントローラをさらに設ければよい。
【0054】
本実施形態のガスクラスター処理装置101においても、図1に示す第1の実施形態のガスクラスター処理装置100と同様、圧力制御部15を有している。圧力制御部15は、第1マスフローコントローラ14aおよび第2マスフローコントローラ14bとクラスターノズル11との間に設けられており、ガス供給配管12から分岐した分岐配管16と、分岐配管16に設けられた背圧制御器17と、分岐配管16に流れるガスの流量を計測する流量計18とを有する圧力制御部15を有している。分岐配管16の背圧制御器17の下流側には、第1の実施形態と同様、開閉バルブ23が設けられている
【0055】
なお、第1配管12aには、第1マスフローコントローラ14aの前後に開閉バルブ21aおよび22bが設けられており、第2配管12bには、第2マスフローコントローラ14bの前後に開閉バルブ21bおよび22bが設けられている。
【0056】
また、本実施形態のガスクラスター処理装置101においても、第1の実施形態のガスクラスター処理装置100と同様、各構成部(バルブ、マスフローコントローラ、背圧制御器、駆動部等)を制御する制御部30を有している。本実施形態では、制御部30は、背圧制御器17に設定圧力の指令を与え、また、流量計18の計測流量に基づいて第1マスフローコントローラ14aおよび第2マスフローコントローラ14bの流量制御を行う。
【0057】
なお、他の構成については、第1の実施形態のガスクラスター処理装置100と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
次に、このように構成されるガスクラスター処理装置101の処理動作について説明する。
第1の実施形態と同様、ゲートバルブ9を開けて搬入出口8を介して真空搬送室から基板Sを真空ポンプ6により常時排気された処理容器1内に搬入し、基板載置台2上に載置する。ゲートバルブ9を閉じた後、圧力制御バルブ7により処理容器1内の圧力を所定の圧力に制御する。
【0059】
この後、ガスクラスターを生成するためのガスとして、少なくとも1種類のクラスター生成ガスを含む、少なくとも2種類のガスをクラスターノズル11へ供給する。図6の例では、第1ガス供給源13aおよび第2ガス供給源13bから、第1のガスおよび第2のガスを供給する。
【0060】
このように複数種類のガスを供給する場合、従来のマスフローコントローラを用いてガス供給流量を制御してガス供給圧力を制御する手法では、上述したような、設定した供給圧力までの到達時間が長い、供給圧力の制御性が悪いという問題点の他、ガス比率が不安定になる場合があるという問題点があった。
【0061】
すなわち、上述した図4に示すように、供給圧力がオーバーシュートして、マスフローコントローラ下流側の圧力が上昇し、マスフローコントローラ前後の差圧がとれなくなると、ガス供給流量の制御ができなくなって、複数種類のガスの比率を設定比率に維持することもできなくなる。
【0062】
例えば、クラスター生成ガスとしてCOガスを用い、加速用ガスとしてHeガスまたはHガスを用いる場合、これらのガス比率が設定からずれて、CO比が極端に高くなると、クラスターノズル11部分でCO分圧が上昇して液化が発生することがある。COの液化が生じると、巨大クラスターが生成し、基板S上のパターンにダメージが発生するおそれがある。
【0063】
これに対し、本実施形態では、第1ガス供給源13aからの第1のガスを第1マスフローコントローラ14aで制御し、第2ガス供給源13bからの第2のガスを第2マスフローコントローラ14bで制御して、第1ガスおよび第2ガスを所定比率で、かつこれらが設定されたガス供給圧力に対応する到達必要流量を超える流量になるように供給し、背圧制御器17により設定供給圧力になるようにしてクラスターノズル11に供給する。このため、第1の実施形態と同様、短時間で設定されたガス供給圧力に到達させることができ、かつガス供給圧力のオーバーシュートを生じさせずに良好なガス供給圧力の制御性が得られるという効果を奏する他、ガス供給圧力のオーバーシュートに起因するマスフローコントローラによる流量制御不能が生じることがなく、第1のガスおよび第2のガスの比率を設定比率に維持することができるという効果も得ることができる。3種類以上のガスを用いる場合も同様である。
【0064】
また、第1の実施形態と同様、洗浄処理が開始された後、余分なガスとして分岐配管16に流したガスの流量を流量計18により計測し、その計測値をマスフローコントローラ14a,14bにフィードバックする。これにより、ガスの比率を維持したまま、ガスクラスターの生成に寄与しない無駄なガス量を減らすことができる。
【0065】
なお、流量制御器の設定流量である第1の流量として、設定された供給圧力を維持可能な流量の1.5倍から50倍の範囲に設定することができる。50倍の範囲内であれば、同一の流量制御器での制御を精度よく行うことができる。さらに、1.5倍から5.0倍の範囲の流量であれば極端な流速の変化が生じず、第1のガスと第2のガスの比率をより精度よく維持することが可能となり、1.5倍から2.0倍の範囲の流量であるとなお良い。第2の流量としては、前記所定の供給圧力を維持可能な流量の1.02倍から1.5倍の範囲に制御することができる。
【0066】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
本実施形態のガスクラスター処理装置102の基本構成は第2の実施形態の図6と同様であるが、圧力制御部が直列に配置された2つの背圧制御器を有している点が図6とは異なっている。
【0067】
図7に示すように、本実施形態のガスクラスター処理装置102においては、圧力制御部15′は、マスフローコントローラ14a,14bとクラスターノズル11との間のガス供給配管12から分岐した分岐配管16と、分岐配管16に設けられた第1背圧制御器17aと、分岐配管16の第1背圧制御器17aの下流側に設けられた第2背圧制御器17bと、分岐配管16に流れるガスの流量を計測する流量計18とを有する。分岐配管16の他端は、排気配管5に接続されている。流量計18の位置は、分岐配管16のガス流量が測定できれば限定されない。分岐配管16の第1背圧制御器17aの上流側には、第1圧力計19aが設けられており、第2背圧制御器17bの上流側には、第2圧力計19bが設けられており、分岐配管16内のこれらの位置の圧力をモニタするようになっている。分岐配管16の第1背圧制御器17aの下流側、および第2背圧制御器17bの下流側には、それぞれ開閉バルブ23aおよび23bが設けられている。
【0068】
このように、2つの背圧制御器を直列に配置することにより、下流側の第2背圧制御器17bの一次側を所定の圧力に設定し、上流側の第1背圧制御器17aによりガス供給配管12におけるガス供給圧力の制御を行うようにすれば、ガス供給開始から設定供給圧力に到達して安定するまでの時間をさらに短縮することができる。すなわち、第1背圧制御器17aとして差圧レンジが小さい高精度のものを用い、第2背圧制御器17bとして差圧レンジが比較的大きいものを用いることにより、第2背圧制御器17bにより大まかな圧力制御を行い、第1背圧制御器17aにより狭い差圧範囲の制御を行うことができ、ガス供給開始から設定供給圧力に到達して安定するまでの時間を1分以下の短時間で行うことができる。
【0069】
例えば、第1背圧制御器17aとして電子制御式のΔ0.3MPa差圧(微差圧)制御タイプを用い、第2背圧制御器17bとして機械式のΔ1MPa差圧制御タイプのものを用いて、第1背圧制御器17aの一次側圧力(ガス供給圧力)を0.9MPaとし、第2背圧制御器17bの一次側圧力を0.75MPaとすることにより、ガス供給開始から設定供給圧力に到達して安定するまでの時間を、一つの背圧制御器を用いたときの4分程度から15~20sec程度まで短縮することができる。また、電子制御式の微差圧タイプの背圧制御器は、差圧レンジは狭いが誤差が±0.01MPaと高精度であるため、ガス供給圧力を高精度で制御することができる。
【0070】
なお、図7では第2の実施形態と同様、複数種類のガスを供給する場合について示したが、第1の実施形態のように1種類のガスを供給する場合であってもよい。また、背圧制御器を3つ以上直列に設けてもよい。
【0071】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第4の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
本実施形態のガスクラスター処理装置103の基本構成は第3の実施形態の図7と同様であるが、圧力制御部が、背圧制御器をバイパスするバイパス配管とバイパス配管を開閉する開閉バルブをさらに有している点が図7とは異なっている。
【0072】
図8に示すように、本実施形態のガスクラスター処理装置103においては、圧力制御部15″は、図7に示す第3の実施形態の圧力制御部15′の構成要素を全て有する他、さらに、一端が分岐配管16における第1背圧制御器17aの上流側部分に接続され、他端が第2背圧制御器17bの下流側部分に接続されて、第1背圧制御器17aおよび第2背圧制御器17bをバイパスするバイパス配管41と、バイパス配管41に設けられた開閉バルブ42とを有する。
【0073】
バイパス配管41および開閉バルブ42を設けない場合、基板処理が終了後、ガスの供給を停止しても、差圧によりクラスターノズル11および配管に残存したガスがクラスターノズル11から吐出され続ける。一般的に、処理容器1に隣接する真空搬送室は、処理容器1よりも低圧に保持されているため、基板Sの搬出にあたっては、処理容器1内の圧力をさらに低下させる必要があり、より差圧が大きくなって、ガス供給停止から実際にガスの吐出が停止するまでの時間が長くなってしまう。
【0074】
基板Sの搬出は、このようなガス供給停止後、クラスターノズル11からのガス吐出が止まった後に行う必要があり、このガス吐出時間により処理終了後の基板交換の時間が長くなってしまい、処理のスループットに悪影響を与える。
【0075】
これに対し、本実施形態では、バイパス配管41および開閉バルブ42を設けたので、処理中には開閉バルブ42を閉じておき、処理終了後に開閉バルブ42を開くようにすることにより、クラスターノズル11内および配管内のガスがバイパス配管41を介して排気機構10により速やかに吸引される。このため、ガス供給停止後、クラスターノズルからのガス吐出が止まるまで時間を短縮することができ、基板交換の時間を短縮することができる。
【0076】
実際に、ガス供給圧力を0.9MPaにし、バイパス配管および開閉バルブを用いない場合、ガス供給停止後、クラスターノズルからのガス吐出が止まるまで時間が12秒であった。これに対して、バイパス配管および開閉バルブを用い、ガス供給停止後に開閉バルブを開いてバイパス配管を介してガスを吸引することにより、その時間が1/6の2秒に短縮された。
【0077】
なお、図8のガスクラスター処理装置103は、図7に示すガスクラスター処理装置102の圧力制御部にバイパス配管および開閉バルブを適用した場合を示すものであるが、図1に示すガスクラスター処理装置100、図6に示すガスクラスター処理装置101にバイパス配管および開閉バルブを適用してもよい。
【0078】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。
図9は、本発明の第5の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
本実施形態のガスクラスター処理装置104の基本構成は第3の実施形態の図7と同様であるが、排気配管の圧力制御部の接続位置よりも上流側に昇圧器が設けられている点が図7とは異なっている。
【0079】
図9に示すように、本実施形態のガスクラスター処理装置104においては、ガス供給配管12の圧力制御部15′の接続部、すなわち分岐配管16の接続部よりも上流側に昇圧器45が設けられている。
【0080】
昇圧器45は、例えばガスブースターからなり、ガス供給配管12に供給されたガスの圧力を上昇させるものである。昇圧器45は、クラスターノズル11に供給されるガスの供給圧力を高くするために有効である。
【0081】
しかし、ガス供給圧力の制御を従来のようにマスフローコントローラによるガス供給流量の制御により行う場合、昇圧器を用いることにより、クラスターノズル11のオリフィスから流れ出るガス量と供給するガス量が安定化するまでの時間に加え、昇圧器45の圧力が安定するまでの時間も存在するため、設定した供給圧力までの到達時間が益々長くなってしまう。
【0082】
これに対し、本実施形態では、背圧制御器を用いてガス供給圧力自体を制御することにより、ガス供給圧力を短時間で設定圧力に制御できるようにしたので、昇圧器45の圧力安定化までに要する時間も短くすることができる。このため、本実施形態のように昇圧器45を設けた場合に、ガス供給開始から設定供給圧力に到達して安定するまでの時間を短縮する効果を一層高めることができる。
【0083】
なお、図9のガスクラスター処理装置104は、図7に示すガスクラスター処理装置102に昇圧器を適用した場合を示すものであるが、図1に示すガスクラスター処理装置100、図6に示すガスクラスター処理装置101、図8に示すガスクラスター処理装置103に昇圧器を適用してもよい。
【0084】
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態について説明する。
図10は、本発明の第6の実施形態に係るガスクラスター処理装置を示す断面図である。
本実施形態のガスクラスター処理装置105の基本構成は第3の実施形態の図7と同様であるが、クラスターノズルを温調する温調機構を有する点が図7とは異なっている。
【0085】
図10に示すように、本実施形態のガスクラスター処理装置105においては、クラスターノズル11の周囲に温調機構50が設けられている。温調機構50は、クラスターノズル11に供給されたガスの温調を行うものであり、温調機構50によるクラスター生成ガスの加熱または冷却によりガスクラスターサイズを調整することができる。これにより、ガスクラスターによる洗浄処理を効果的に行うことができる。
【0086】
温調機構50によりガスの温調を行う場合には、ガス供給部側のガス温度とクラスターノズル11直近の温調機構50付近でのガス温度に差が生じる。例えば、温調機構50によりガスの冷却を行うと、クラスターノズル11のオリフィス部分を通過するガス流量は増加する。したがって、この場合は、クラスターノズル11が常温時(非温調時)に設定したガス供給圧力を維持するために必要なガス流量では、所望のガス供給圧力に到達しない可能性がある。このため、従来のようにガス供給圧力の制御をマスフローコントローラによるガス供給流量の制御により行う場合は、クラスターノズル11の温度を変化させると、その都度それに対応するガス流量を設定する必要があり、ガス供給圧力の不安定化要因になっていた。
【0087】
これに対し、本実施形態では、クラスターノズル11に対するガス供給圧力が背圧制御器により常に一定に制御されるため、温調機構50による温度の変動が生じても安定したガス供給が可能となる。また、万一供給ガス流量が不足または過多の場合が生じても、流量計18の計測値がマスフローコントローラ14a,14bにフィードバックされるので安定したガス供給を維持することができる。
【0088】
なお、図10のガスクラスター処理装置105は、図7に示すガスクラスター処理装置102に温調機構を適用した場合を示すものであるが、図1に示すガスクラスター処理装置100、図6に示すガスクラスター処理装置101、図8に示すガスクラスター処理装置103、図9に示すガスクラスター処理装置104に温調機構を適用してもよい。
【0089】
<実験例>
次に、本発明の実験例について説明する。
ここでは、クラスター生成ガスとしてCOガス、加速用ガスとしてHガスまたはHeガスを用い、図6のガスクラスター処理装置101によりガスクラスターによる基板処理を行った。
【0090】
真空ポンプ6により常時排気された処理容器1に基板Sを搬入し、背圧制御器17の一次側の圧力、すなわちガス供給圧力を0.9MPaに設定した。本例では計算上、0.9MPa到達に必要な総流量は1000sccmであり、COガスとHガスまたはHeガスとの流量比を1:1とした場合の必要流量は、COガスとHガスまたはHeガスがいずれも500sccmであった。
【0091】
ステップ1として、COガスの流量およびHガスまたはHeガスの流量をいずれも0.9MPaに対応する到達必要流量を超える1000sccmで供給した。ステップ2として、背圧制御器17が作動して圧力が安定した時点で洗浄処理を開始した。洗浄処理が開始された後、ステップ3として、流量計18により計測された流量をマスフローコントローラ14a,14bにフィードバックし、COガスの流量およびHガスまたはHeガスの流量を、ガス供給圧力が0.9MPaに維持できるに足りる500sccmを超え1000sccm未満の流量に制御した。
【0092】
以上のように制御することにより、ガス供給開始から設定供給圧力に到達して安定するまでの時間を4分以内とすることができ、クラスターノズル11へのガス供給圧力は一定に維持され、安定した処理を行うことができた。
【0093】
比較のため、ガス供給圧力制御をマスフローコントローラの流量により行うガスクラスター処理装置を用いてガスクラスターによる基板処理を行った。この時の装置は、図11に示すように、図6と同様2つのガス供給源および2つのマスフローコントローラを有し、圧力制御部15の代わりに、ガス供給配管12に圧力制御バルブ60を設けたものを用いた。61は圧力計である。なお、図11において図6と同じものには同じ符号を付している。クラスター生成ガスとしてCOガス、加速用ガスとしてHガスまたはHeガスを用いた。
【0094】
真空ポンプ6により常時排気された処理容器1に基板Sを搬入し、ガス供給圧力を0.9MPaに設定した。本例では計算上、0.9MPa到達に必要な総流量は1000sccmであるので、COガスとHガスまたはHeガスとの流量比を1:1とし、COガスとHガスまたはHeガスをいずれも500sccmとした。この流量でガスを供給して、供給圧力を制御し、供給圧力が安定するのを待って処理を行った。このとき、ガスを供給してから供給圧力が安定するまで、15分以上かかった。
【0095】
供給圧力を安定するための時間を短縮すべく、マスフローコントローラにより供給開始時の流量設定をCOガスとHガスまたはHeガスをいずれも1000sccmとした。これにより設定圧力到達までの時間は短縮されたが、供給圧力がオーバーシュートした。また、オーバーシュートが生じた時点でマスフローコントローラの下流側の圧力が上昇しているので、マスフローコントローラ前後の差圧が取れず、制御にハンチングが生じ、流量制御ができなくなり、ガス比率が所定の範囲から外れてしまった。
【0096】
以上の結果から、本発明の効果が確認された。
【0097】
<他の適用>
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、本発明の思想の範囲内において種々変形可能である。
【0098】
例えば、上記実施形態では、ガスクラスターによる基板処理を基板洗浄処理に適用した場合について示したが、これに限らず例えばエッチングのような加工に適用してもよい。また、上記複数の実施形態を任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1;処理容器
2;基板載置台
3;駆動部
10;排気機構
11;クラスターノズル
12;ガス供給配管
13,13a,13b;ガス供給源
14,14a,14b;マスフローコントローラ
15,15′,15″;圧力制御部
16;分岐配管
17,17a,17b;背圧制御器
18;流量計
19,19a,19b;圧力計
21,22,23,23a,23b,42;開閉バルブ
30;制御部
41;バイパス配管
45;昇圧器
50;温調機構
100,101,102,103,104,105;ガスクラスター処理装置
S;基板(被処理体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11