(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】食品加工方法及び食品加工装置
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20220111BHJP
B02C 17/00 20060101ALI20220111BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20220111BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20220111BHJP
【FI】
A23L5/00 Z
B02C17/00 C
A23L11/00 Z
A23L27/60 A
A23L27/60 B
(21)【出願番号】P 2018009505
(22)【出願日】2018-01-24
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000190677
【氏名又は名称】新光産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】部坂 正樹
(72)【発明者】
【氏名】新名 隆博
(72)【発明者】
【氏名】今井 剛
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-196816(JP,A)
【文献】特開2012-044898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00-5/49
A23L 27/60
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水又は油を含む食品を容器に入れて、
該容器内に固定状態で配置され食品流動孔が偏心して設けられた固定板と
、前記容器内に前記固定板と隙間を有して配置され高速回転する回転板の間
に前記食品を通過させ、前記食品に剪断力を与えることによって、該食品を前記容器内で攪拌混合することを特徴とする食品加工方法。
【請求項2】
水又は油を含む食品を容器に入れて、冷却される固定板と高速回転する回転板の間に前記食品を通過させ、前記食品に剪断力を与えることによって、該食品を前記容器内で攪拌混合することを特徴とする食品加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の食品加工方法において、前記固定板と前記回転板を、前記容器内の高さ方向又は水平方向に複数組、隙間を設けて配置したことを特徴とする食品加工方法。
【請求項4】
請求項
1項に記載の食品加工方法において、前記固定板を冷却することを特徴とする食品加工方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の食品加工方法において、前記食品は、水を混合したおから、マヨネーズ、ケチャップ、及びドレッシングのいずれか1からなる原料食品、又は製品食品であることを特徴とする食品加工方法。
【請求項6】
水又は油を含む食品が入れられる容器と、該容器内に取り付けられ
食品流動孔が偏心して設けられた固定板と、前記容器内に前記固定板と隙間を有して配置された回転板と、該回転板を高速回転させる駆動手段とを有し、前記固定板と前記回転板の間を通過する前記食品に剪断力を与えることによって、該食品を前記容器内で攪拌混合することを特徴とする食品加工装置。
【請求項7】
水又は油を含む食品が入れられる容器と、該容器内に取り付けられ内部に冷却路を有する固定板と、前記容器内に前記固定板と隙間を有して配置された回転板と、該回転板を高速回転させる駆動手段とを有し、前記固定板と前記回転板の間を通過する前記食品に剪断力を与えることによって、該食品を前記容器内で攪拌混合することを特徴とする食品加工装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載の食品加工装置において、前記固定板と前記回転板は、前記容器内の高さ方向又は水平方向に複数組、隙間を有して配置されていることを特徴とする食品加工装置。
【請求項9】
請求項
6記載の食品加工装置において、前記固定板は内部に冷却路を有することを特徴とする食品加工装置。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の食品加工装置において、前記食品は、水を混合したおから、マヨネーズ、ケチャップ、及びドレッシングのいずれか1からなる原料食品、又は製品食品であることを特徴とする食品加工装置。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか1項に記載の食品加工装置において、前記回転板の直径は8~25cm、前記固定板と前記回転板との隙間は5~15mmであって、前記容器、前記固定板、及び前記回転板の材質は前記食品に対する耐蝕性を有することを特徴とする食品加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水又は油を含む食品の固形分を破砕(粉砕)、微細化し、水又は油と攪拌混合して、水又は油の中に分散、均質化させる食品加工方法及び食品加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品加工においては、原材料の用途の拡大、栄養価の効率的な摂取、口に入れた時の味や滑らかさ等の品質の向上等を目的として、原材料(固形分)を破砕(粉砕)し、水又は油と攪拌混合して、水又は油の中に分散させる加工が行われている。
例えば、特許文献1では、おからを種々の加工食品に有効利用するために、豆腐製造工程で排出された生おからに対して、無蒸煮発酵大豆乳化油脂材料1~90質量%、燻液1~90質量%、水分1~150質量%を混合し、平均粒子径が200μm~100μmになるように生おからを粉砕して、ペースト状に形成するおからペーストの製造方法が提案されている。
また、特許文献2では、固体原料及び液状原料を粉砕する装置において、固体原料を予め粗粉砕する粗粉砕手段と、粗粉砕手段に直結され、粗粉砕された固体原料を微粉砕する微粉砕手段とを有する微粉砕装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-106179号公報
【文献】特開2006-289225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、生おからを粉砕する装置として、石臼式の粉砕機械を用いることが例示されているだけで、具体的な装置の構成については記載されていない。また、特許文献2は、固体原料を粗粉砕手段によって粗粉砕した後、粗粉砕された固体原料を微粉砕手段によって微粉砕することにより、微粉砕手段の処理能力を高めて微粉砕手段での滞留時間を短くし、粉砕物の温度上昇を抑えて、風味の劣化を低減しようとするものであり、微粉砕手段の一例として、一対の回転砥石部及び固定砥石部を備えたグラインダー手段からなるものが記載されている。この固定砥石部の中央部には固体原料及び液体原料をグラインダー手段内に導入するための開口部が開穿されているが、回転砥石部の回転によって発生する遠心力等により、原料が回転砥石部と固定砥石部との間に十分にとどまることができずに、混合が不十分な状態で、グラインダー手段の外方へ排出されてしまうことがある。この場合、原料の粉砕も不十分となり、原料を十分に微細化することができず、分散性、均質性に欠け、滑らかさも低下するという問題がある。
つまり、食品加工の作業効率を重視して加工(粉砕)時間を短縮すると、粉砕物の粒子が粗く不均一となり易く、加工後の食品としての滑らかさが失われ、品質が低下するおそれがあるため、粉砕及び攪拌混合を均一かつ効率的に行うことが求められる。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、加工対象となる食品に十分な剪断力を与えて粉砕、微細化し、水又は油との攪拌混合を確実かつ効率的に行って、粉砕された固形分の分散性を向上させることができ、品質の均一性、安定性に優れる食品加工方法及び食品加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る食品加工方法は、水又は油を含む食品を容器に入れて、該容器内に固定状態で配置され食品流動孔が偏心して設けられた固定板と、前記容器内に前記固定板と隙間を有して配置され高速回転する回転板の間に前記食品を通過させ、前記食品に剪断力を与えることによって、該食品を前記容器内で攪拌混合する。
【0006】
ここで、回転板の回転軸が高さ方向に配置される場合、固定板は回転板の上又は下に隙間を設けて配置され、回転板の回転軸が水平方向に配置される場合、固定板は回転板の右又は左に隙間を設けて配置される(第2~第4の発明においても同様)。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係る食品加工方法は、水又は油を含む食品を容器に入れて、冷却される固定板と高速回転する回転板の間に前記食品を通過させ、前記食品に剪断力を与えることによって、該食品を前記容器内で攪拌混合する。
第1、第2の発明に係る食品加工方法において、前記固定板と前記回転板を、前記容器内の高さ方向又は水平方向に複数組、隙間を設けて配置することが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る食品加工方法において、前記固定板を冷却することが好ましい。
【0009】
第1、第2の発明に係る食品加工方法において、前記食品は、水を混合したおから、マヨネーズ、ケチャップ、及びドレッシングのいずれか1からなる原料食品、又は製品食品であることが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第3の発明に係る食品加工装置は、水又は油を含む食品が入れられる容器と、該容器内に取り付けられ食品流動孔が偏心して設けられた固定板と、前記容器内に前記固定板と隙間を有して配置された回転板と、該回転板を高速回転させる駆動手段とを有し、前記固定板と前記回転板の間を通過する前記食品に剪断力を与えることによって、該食品を前記容器内で攪拌混合する。
【0011】
前記目的に沿う第4の発明に係る食品加工装置は、水又は油を含む食品が入れられる容器と、該容器内に取り付けられ内部に冷却路を有する固定板と、前記容器内に前記固定板と隙間を有して配置された回転板と、該回転板を高速回転させる駆動手段とを有し、前記固定板と前記回転板の間を通過する前記食品に剪断力を与えることによって、該食品を前記容器内で攪拌混合する。
【0012】
第3、第4の発明に係る食品加工装置において、前記固定板と前記回転板は、前記容器内の高さ方向又は水平方向に複数組、隙間を有して配置されていることが好ましい。
【0013】
第3の発明に係る食品加工装置において、前記固定板は内部に冷却路を有することが好ましい。
【0014】
第3、第4の発明に係る食品加工装置において、前記回転板の直径は8~25cm、前記固定板と前記回転板との隙間は5~15mmであって、前記容器、前記固定板、及び前記回転板の材質は前記食品に対する耐蝕性を有することが好ましい。
【0015】
第3、第4の発明に係る食品加工装置において、前記食品は、水を混合したおから、マヨネーズ、ケチャップ、及びドレッシングのいずれか1からなる原料食品、又は製品食品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
第1、第2の発明に係る食品加工装置及び第3、第4の発明に係る食品加工方法は、水又は油を含む食品を容器に入れて、固定板と高速回転する回転板の間を通過する食品に剪断力を与えることによって、食品を容器内で攪拌混合するので、食品の固形分を短時間で十分かつ効率的に粉砕、微細化することができる。
【0017】
第1の発明に係る食品加工装置及び第3の発明に係る食品加工方法では、固定板を回転板と隙間を設けて配置し、固定板に食品流動孔を偏心させて設けたので、食品が食品流動孔を通過して固定板と回転板の間を確実に流動し、容器内を循環して攪拌混合、分散が効果的に行われ、品質の均一化、安定化が図られる。
【0018】
固定板と回転板を容器内の高さ方向又は水平方向に複数組、隙間を設けて配置した場合、食品が固定板と回転板の間を繰返し通過して、微細化が促進されると共に、容器内での滞留時間が長くなり、攪拌混合、分散が促進され、品質の均一性が向上する。
【0019】
第2の発明に係る食品加工装置及び第4の発明に係る食品加工方法では、固定板を冷却するので、粉砕時の摩擦による発熱を抑えて、食品の温度上昇を効果的に防ぐことができる。
【0020】
加工対象となる食品が、水を混合したおから、マヨネーズ、ケチャップ、及びドレッシングのいずれか1からなる原料食品、又は製品食品である場合、口当たりが滑らかで、風味や品質の劣化が少なく、高品質で保存性にも優れた食品を製造することができる。
【0021】
回転板の直径が8~25cm、固定板と回転板との隙間が5~15mmであって、容器、固定板、及び回転板の材質が食品に対する耐蝕性を有する場合、食品を短時間で効率的に加工することができ、単純構造であるため、装置の耐久性に優れ、衛生的で、食品の安全性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る食品加工装置の部分断面正面図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態に係る食品加工装置の部分断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
本発明の第1の実施の形態に係る食品加工装置10は、
図1、
図2に示すように、加工対象となる水又は油を含む食品を容器11に入れて、固定板12と高速回転する回転板13の間を通過させ、食品に剪断力を与えることによって、食品を容器11内で攪拌混合するものである。
以下、食品加工装置10の詳細について説明する。
食品加工装置10は、
図1に示すように、有底円筒状の容器11内に固定状態で取り付けられた3枚の固定板12と、同じく容器11内に各固定板12の上方に隙間を有してそれぞれ配置された3枚の回転板13を有している。容器11、固定板12、回転板13の材質としてはステンレス(例えばSUS304、SUS316等)が好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、食品に対する耐蝕性を有するものであればよい。回転板13の直径は、8~25cm、より好ましくは10~20cmが好適であり、回転板13の厚さは、8~20mm、より好ましくは10~15mmが好適であるが、これらに限定されるものではなく、適宜、選択することができる。また、固定板12と回転板13との隙間は5~15mm、より好ましくは6~12mmが好適であるが、これに限定されるものではなく、適宜、選択することができる。固定板12は回転板13と同様に円形に形成することが好ましいが、矩形等のその他の形状に形成してもよい。なお、固定板12を円形に形成する場合は、回転板13の直径と同等以上の直径に形成することにより、食品を効率的に破砕することができる。本実施の形態では、固定板12と回転板13を高さ方向に3組隙間を有して配置したが、固定板12と回転板13の数や配置は適宜、選択することができ、必ずしも固定板12を回転板13の下方に配置する必要はなく、固定板12と回転板13の数が同一である必要もない。例えば、固定板12と回転板13の配置を上下入れ替えてもよいし、
図1の最下段の固定板12の下方に回転板13を追加することや、最上段の回転板13の上方に固定板12を追加することもできる。
【0024】
3枚の回転板13は、1本の共通の回転軸14に取り付けられており、回転軸14の端部には、回転板13を高速回転させる駆動手段(例えば、電動モータ)15が連結されている。回転板13の周速は40~50m/sが好ましく、例えば回転板13の直径を18cmとすると、回転板13の回転数は4200~5300rpmとなるが、これらは食品の種類(固形分の大きさ、硬さ、含有量等)に応じて、適宜、選択することができる。
固定板12の中央には、
図1、
図2に示すように、回転軸14が貫通する貫通孔16が設けられている。この貫通孔16の直径は、固定板12と回転軸14が干渉しないように、回転軸14の外径よりも大きく(例えば、2~6mm程度大きく)形成される。なお、固定板12の位置に合わせて回転軸14に軸受を装着し、軸受を介して固定板12で回転軸14を回転可能に保持する構成としてもよい。特に、回転軸14が長尺になる場合は、回転軸14の振れ回りを防止し、動作を安定させることができる。但し、軸受は、全ての固定板12に対して取り付ける必要はなく、その数や配置は、適宜、選択することができる。
【0025】
次に、固定板12には、
図1、
図2に示すように、2つの食品流動孔(例えば、直径10mm)17を偏心させて設けている。このように、食品流動孔17を偏心させることにより、食品流動孔17を通過して固定板12と回転板13の間を流動する食品が、回転軸14に邪魔されることなく、スムーズに固定板12の外周方向に移動することができる。
なお、食品流動孔17の数、大きさ、配置は、食品の種類に応じて、適宜、選択することができる。
また、固定板12の内部には、冷却路18が設けられ、その両端には、冷却路18と連通する給水口19と排水口20がそれぞれ設けられている。そして、各固定板12の給水口19同士が給水管21で連結され、排水口20同士が排水管22で連結されている。なお、容器11の上端側の開口部24は、着脱可能な蓋部25で密閉されており、最上段の固定板12に連結された給水管21及び排水管22の先端は蓋部25を貫通している。これにより、冷却水(例えば、水道水)を給水管21から供給し、各固定板12の冷却路18に通して、排水管22から容器11の外に排水して各固定板12を冷却することができる。このとき、固定板12同士が給水管21及び排水管22で連結され、蓋部25を貫通する最上段の給水管21及び排水管22が蓋部25に固定されることにより、固定板12は容器11内に固定状態(吊下げ状態)で保持されるが、必要に応じて、固定板12同士を連結する連結棒又は連結パイプを追加してもよい。なお、冷却路18は、固定板12の内部に冷却水を通して固定板12を冷却できればよく、そのパターン(配置の形状)は、適宜、選択することができる。また、冷却水の通水量は、食品の種類、体積、冷却水の温度等に応じて、適宜、選択することができる。なお、排水管22から排水される冷却水は、回収して、再度、冷却してから給水管21に供給するようにして、循環させることもできる。この冷却路18は、食品の種類によっては省略することができるが、その場合は、給水管21及び排水管22の代わりに、連結棒又は連結パイプを用いて固定板12同士を連結し、蓋部25と固定することができる。なお、固定板12の厚さは、回転板13と同程度が好ましいが、冷却路18に必要な断面積に応じて、適宜、選択することができる。
【0026】
次に、容器11の底部中央には、食品供給口26が設けられ、食品供給管27が接続されている。そして、食品供給管27の途中にはポンプ28が取り付けられており、これにより、加工対象となる食品を容器11内へ圧送することができる。また、容器11の側部上端側には容器11内で処理(加工)された食品を排出する食品排出口30が設けられている。
さらに、容器11の外周には、容器11の周囲を冷却する水冷ジャケット31が設けられ、水冷ジャケット31の側部上端側及び側部下端側には、それぞれ冷却水給水部32及び冷却水排水部33が設けられている。冷却水給水部32から水冷ジャケット31に随時、冷却水(例えば、水道水)を給水し、冷却水排水部33から排水することにより、容器11を周囲から冷却することができる。この結果、容器11内を流動して攪拌混合される食品の温度上昇を防ぐことができ、容器11内での滞留時間が長くなっても、食品の変質、品質低下が発生することがなく、品質の安定性に優れる。なお、水冷ジャケット31への通水量は、容器11及び食品の体積、冷却水の温度等に応じて、適宜、選択することができる。
【0027】
次に、食品加工装置10は、容器11を底部から支持する支持脚部35を備えている。支持脚部35は、設置面36に設置される外筒部37と、外筒部37に内挿された筒状の摺動支持部38を有しており、摺動支持部38の上端部で容器11の底部を支持する。支持脚部35(外筒部37)には、高さ調整部(例えば、油圧ジャッキ)39が内蔵されており、必要に応じて、容器11の支持高さを調整することができる。具体的には、高さ調整部39が摺動部40を有し、摺動部40の先端に平板状の当接部41が設けられている。そして、摺動支持部38の下部側を閉塞するように設けられた支持板部42に当接部41を当接させ、高さ調整部39を駆動して摺動部40を摺動(上下動)させることにより、外筒部37に対して摺動支持部38を摺動(上下動)させ、容器11の支持高さを調整することができる。また、支持板部42上には、食品供給口26と摺動支持部38の間で容器11の底部を支持する筒状の補助支持部43を設けた。これにより、容器11を安全かつ確実に支持することができるが、補助支持部43は省略してもよい。なお、摺動支持部38及び補助支持部43の側部には、それぞれ食品供給口26に接続される食品供給管27を挿通するための切欠き状の供給管挿通口44、45が設けられている。また、外筒部37の側部上端側には供給管挿通口44、45の位置に合わせて切欠き46が設けられている。これにより、高さ調整部39を駆動して摺動支持部38を下降させた際に、食品供給管27が外筒部37と干渉することがなく、容器11の高さ調整をスムーズに行うことができる。このとき、食品供給管27として可撓性或いは屈曲性を有するホースを用いることにより、容器11の高さに応じて食品供給管27を変形させ、食品を確実に供給することができる。なお、支持脚部35は、容器11を下方から支持できるものであればよく、その構造は、適宜、変更することができ、必ずしも高さ調整部39を備えなくてもよい。
【0028】
次に、蓋部25の上面には、吊り上げ具(例えばアイボルト)47が取り付けられている。そして、食品加工装置10の側方に設置した吊り上げ機(例えばダビット)48のフック49と吊り上げ具47との間にチェーンやナイロンスリング等の固定具50を掛け渡すことにより、固定具50を介して蓋部25を保持することができる。食品加工装置10を使用する際には、容器11の上端外周に設けられた鍔部51と蓋部25の外周はクランプ等(図示せず)で固定されるので、蓋部25を保持することにより、容器11の転倒等を防ぐことができる。容器11内の清掃、回転板13の交換等のメンテナンス作業を行う際には、容器11と蓋部25との固定を外し、チェーンブロック等を用いて蓋部25を吊り上げ、高さ調整部39を駆動して容器11を下降させる。これにより、回転軸14及び給水管21、排水管22を介して蓋部25と一体化された、固定板12及び回転板13を容器11から取り出して、所望の作業を行うことができる。
【0029】
次に、食品加工装置10を用いた食品加工方法について説明する
。
当該食品加工方法は、水又は油を含む食品を容器11に入れて、固定板12と高速回転する回転板13の間を通過させ、食品に剪断力を与えることによって、食品を容器11内で攪拌混合するものである。このとき、固定板12を、容器11内に固定状態で回転板13の上又は下に隙間を設けて配置し、固定板12に食品流動孔17を偏心させて設けることにより、食品が食品流動孔17を通過して固定板12と回転板13の間を確実に流動し、容器11内を循環して攪拌混合、分散が効果的に行われる。また、固定板12と回転板13を容器11内の高さ方向に複数組(
図1では3組)、隙間を設けて配置することにより、食品が固定板12と回転板13の間を繰返し通過して、微細化が促進され、容器11内での滞留時間も長くなり、攪拌混合、分散が促進される。なお、容器11の周囲や固定板12を冷却水で冷却することにより、粉砕時の摩擦による発熱を抑えて、食品の温度上昇を効果的に防ぐことができ、容器11内での滞留時間が長くなっても、食品の変質、品質低下が発生することを防止できる。
以上説明した食品加工装置10及び食品加工方法によれば、水を混合したおから、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング等からなる原料食品、又は製品食品を加工することができ、口当たりが滑らかで、風味や品質の劣化が少なく、高品質で保存性にも優れた食品を製造することができる。
【0030】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る食品加工装置52について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図3に示す食品加工装置52が第1の実施の形態と異なる点は、円筒状の容器11が、軸心方向が水平方向となるように設置され、3組の固定板12と回転板13が容器11内の水平方向に隙間を有して配置されている点であり、その動作及び得られる作用、効果は第1の実施の形態と同様である。
なお、符号53は支持脚部であるが、支持脚部53は容器11を支持することができればよく、その構造は適宜、選択することができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、食品供給口26、食品排出口30、冷却水給水部32、冷却水排水部33の配置は適宜、選択することができる。
【符号の説明】
【0032】
10:食品加工装置、11:容器、12:固定板、13:回転板、14:回転軸、15:駆動手段、16:貫通孔、17:食品流動孔、18:冷却路、19:給水口、20:排水口、21:給水管、22:排水管、24:開口部、25:蓋部、26:食品供給口、27:食品供給管、28:ポンプ、30:食品排出口、31:水冷ジャケット、32:冷却水給水部、33:冷却水排水部、35:支持脚部、36:設置面、37:外筒部、38:摺動支持部、39:高さ調整部、40:摺動部、41:当接部、42:支持板部、43:補助支持部、44、45:供給管挿通口、46:切欠き、47:吊り上げ具、48:吊り上げ機、49:フック、50:固定具、51:鍔部、52:食品加工装置、53:支持脚部