(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極板およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20220112BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220112BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220112BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220112BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220112BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220112BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220112BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/134
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0566
(21)【出願番号】P 2017538396
(86)(22)【出願日】2016-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2016001954
(87)【国際公開番号】W WO2016137285
(87)【国際公開日】2016-09-01
【審査請求日】2017-07-20
【審判番号】
【審判請求日】2019-05-20
(31)【優先権主張番号】10-2015-0027448
(32)【優先日】2015-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515013926
【氏名又は名称】イルジン エレクトリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】チェー,ヨン-ピル
(72)【発明者】
【氏名】パク,チョル-ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョン-ハン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン-ギョン
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】池渕 立
【審判官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/132856(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/183717(WO,A1)
【文献】特表2009-517850(JP,A)
【文献】特開2006-164952(JP,A)
【文献】特表2018-502419(JP,A)
【文献】特開2016-100329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
C22C1/00-49/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)の組成式を有するシリコン系負極活物質3~9重量%および黒鉛系負極活物質87.5~95.5重量%を含む、前記シリコン系負極活物質の非晶質化度は25%以上の範囲を有することを特徴とする、リチウム二次電池用負極板。
組成式:SixTiyFezAlu・・・式(1)
(x:1-(y+z+u)、y:0.09~0.14、z:0.09~0.14、u:0.01超過0.2未満、y=z、金属間化合物Si
2TiFeが形成されている)
【請求項2】
前記リチウム二次電池用負極板は、増粘剤0.5~1.5重量%およびバインダー1~2重量%を更に含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極板。
【請求項3】
前記リチウム二次電池用負極板にカーボンナノチューブ(CNT)0.05~0.2重量%を更に含む、請求項2に記載のリチウム二次電池用負極板。
【請求項4】
前記シリコン系負極活物質は、50サイクル後の膨張率が70~150%の範囲内である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極板。
【請求項5】
前記シリコン系負極活物質において原子%(at%)でAlが5~19%の範囲である、請求項
4に記載のリチウム二次電池用負極板。
【請求項6】
前記シリコン系負極活物質において原子%(at%)でAlが10~19%の範囲である、請求項
5に記載のリチウム二次電池用負極板。
【請求項7】
前記シリコン系負極活物質は、原子%(at%)でTiとFeがそれぞれ9~12.5%の範囲を有する、請求項
4に記載のリチウム二次電池用負極板。
【請求項8】
前記増粘剤は、CMC(carboxymethyl cellulose)系列の増粘剤である、請求項2に記載のリチウム二次電池用負極板。
【請求項9】
前記バインダーは、SBR(styrene-butadiene rubber)系列のバインダーである、請求項2に記載のリチウム二次電池用負極板。
【請求項10】
二次電池用負極板は、下記式(1)の組成式を有するシリコン系負極活物質3~9重量%、黒鉛系負極活物質87.5~95.5重量%、増粘剤0.5~1.5重量%およびバインダー1~2重量%を含む、前記シリコン系負極活物質の非晶質化度は25%以上の範囲を有する、リチウム二次電池。
組成式:SixTiyFezAlu・・・(1)
(x:1-(y+z+u)、y:0.09~0.14、z:0.09~0.14、u:0.01超過0.2未満、y=z、金属間化合物Si
2TiFeが形成されている)
【請求項11】
前記リチウム二次電池用負極板にカーボンナノチューブ(CNT)0.05~0.2重量%を更に含む、請求項
10に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極板に関するものであり、より詳細には、極板の効率が高く、容量維持率に優れたリチウム二次電池用負極板およびこれを含むリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウム電池の負極活物質としてはリチウム金属を使用したが、リチウム金属を使用する場合、デンドライト(dendrite)形成による電池短絡が発生して爆発の危険性があるため、リチウム金属の代わりに炭素系物質が負極活物質として多く使用されている。
【0003】
前記炭素系活物質としては、グラファイトおよび人造黒鉛のような結晶質系炭素とソフトカーボン(soft carbon)およびハードカーボン(hard carbon)のような非晶質系炭素がある。しかし、前記非晶質系炭素は容量が大きいものの、充放電過程で非可逆性が大きいという問題点がある。結晶質系炭素としては、グラファイトが代表的に使用され、理論限界容量が372mAh/gと容量が高くて負極活物質として用いられている。
【0004】
しかし、このようなグラファイトやカーボン系活物質は、理論容量が多少高いとはいえ、380mAh/g程度に過ぎず、今後高容量リチウム電池の開発時に上述した負極を使用できなくなるという問題点がある。
【0005】
このような問題点を改善するために現在活発に研究されている物質が、金属系または金属間化合物(intermetallic compounds)系の負極活物質である。例えば、アルミニウム、ゲルマニウム、シリコン、スズ、亜鉛、鉛などの金属または半金属を負極活物質として活用したリチウム電池が研究されている。このような材料は、高容量かつ高エネルギー密度を有し、炭素系材料を用いた負極活物質よりも多くのリチウムイオンを吸蔵、放出でき、高容量および高エネルギー密度を有する電池を製造することができる。例えば、純粋なシリコンは4017mAh/gの高い理論容量を有することが知られている。
【0006】
しかし、これを炭素系材料と比較すると、サイクル特性が低下してまだ実用化に障害となっているが、それは、負極活物質として前記シリコンなどをそのままリチウム吸蔵および放出物質として使用する場合、充放電過程で体積変化によって活物質間の導電性が低下するか、負極集電体から負極活物質が剥離される現象が発生するからである。即ち、負極活物質に含まれた前記シリコンなどは充電によってリチウムを吸蔵して、体積が約300~400%に至るほど膨張し、放電する場合にリチウムが放出されれば、無機質粒子は収縮することになる。
【0007】
このような充放電サイクルを繰り返すことになると、負極活物質のクラックによって電気的絶縁が発生することがあり、寿命が急激に低下するので、リチウム電池への使用に問題点を持っている。
【0008】
従って、このような問題点を解決するために本出願人の国内特許出願第10-2014-0165114号には、膨張率が顕著に改善された金属系負極活物質を提示している。また、本出願人の大韓民国特許出願第10-2015-0001837号には、このような金属系負極活物質の非晶質化度が25%以上の範囲であることが好ましいことが開示されている。
【0009】
このように膨張率が改善された金属系、特にシリコン系負極活物質と既存の黒鉛系負極活物質を配合して二次電池負極板を製造すれば、性能が改善された二次電池負極板を製造することができる。従って、金属系、特にシリコン系負極活物質と黒鉛系負極活物質の適切な配合を通じた合金/黒鉛ブレンディング負極活物質を用いて二次電池負極板を製造する必要性が増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点を鑑みて、これを解消するためのものであって、本発明は、効率および容量維持特性に優れたリチウム二次電池用負極板およびこれを含むリチウム二次電池を提供するためのものである。
【0011】
また、本発明は、二次電池の充放電時にも高い容量維持率を維持することができるリチウム二次電池用負極板およびこれを含むリチウム二次電池を提供するためのものである。
【0012】
また、本発明は、シリコン系負極活物質、黒鉛系負極活物質などの最適の混合割合を介して、優れた性能を示すリチウム二次電池用負極板およびこれを含むリチウム二次電池を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施例によれば、下記式(1)の組成式を有するシリコン系負極活物質3~9重量%、黒鉛系負極活物質87.5~95.5重量%を含むリチウム二次電池用負極板を提供する。
【0014】
SixTiyFezAlu・・・式(1)
(x、y、z、uは原子%であり、x:1-(y+z+u)、y:0.09~0.14、z:0.09~0.14、u:0.01超過0.2未満)
前記リチウム二次電池用負極板は、増粘剤0.5~1.5重量%、バインダー1~2重量%を更に含むリチウム二次電池用負極板を提供する。
【0015】
前記リチウム二次電池用負極板は、カーボンナノチューブ(CNT)0.05~0.2重量%を更に含むことができる。
【0016】
前記リチウム二次電池用負極板は、50サイクル後の容量維持率が90%以上である。
【0017】
前記カーボンナノチューブ(CNT)を含むリチウム二次電池用負極板は、50サイクル後の容量維持率が95%以上である。
【0018】
前記シリコン系負極活物質は、50サイクル後の膨張率が70~150%の範囲を有することが好ましい。
【0019】
前記シリコン系負極活物質において原子%(at%)でAlが5~19%の範囲を有することが好ましい。
【0020】
前記シリコン系負極活物質において原子%(at%)でAlが10~19%の範囲を有することが好ましい。
【0021】
前記シリコン系負極活物質は、原子%(at%)でTiとFeがそれぞれ9~12.5%の範囲を有することが好ましい。
【0022】
前記リチウム二次電池用負極板の増粘剤は、CMC(carboxymethyl cellulose)系列の増粘剤であってもよい。
【0023】
前記リチウム二次電池用負極板のバインダーは、SBR(styrene-butadiene rubber)系列のバインダーであってもよい。
【0024】
前記式(1)の化学式からなる合金において合金内のマトリックス上微細結晶領域の非晶質化度は25%以上の範囲を有することが好ましい。
【0025】
本発明の他の実施例によれば、下記式(1)の組成式を有するシリコン系負極活物質3~9重量%、黒鉛系負極活物質87.5~95.5重量%、増粘剤0.5~1.5重量%、バインダー1~2重量%を含むリチウム二次電池を提供する。
【0026】
前記リチウム二次電池用負極板にカーボンナノチューブ(CNT)0.05~0.2重量%を更に含むことができる。
【0027】
前記リチウム二次電池用負極板は、50サイクル後の容量維持率が90%以上である。
【0028】
前記カーボンナノチューブ(CNT)を含むリチウム二次電池用負極板は、50サイクル後の容量維持率が95%以上である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、効率および容量維持特性に優れたリチウム二次電池用負極板およびこれを含むリチウム二次電池を提供することができる。
【0030】
また、本発明によれば、充放電時にも高い容量維持率を維持することができるリチウム二次電池用負極板およびこれを含むリチウム二次電池を提供することができる。
【0031】
また、本発明によれば、シリコン系負極活物質と黒鉛系負極活物質を相互混合して、優れた性能を示すことができるリチウム二次電池用負極板およびこれを含むリチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1a】比較例によるシリコン系負極活物質において50サイクル後の膨張特性を測定した組織写真図である。
【
図1b】比較例によるシリコン系負極活物質において50サイクル後の膨張特性を測定した組織写真図である
【
図1c】比較例によるシリコン系負極活物質において50サイクル後の膨張特性を測定した組織写真図である
【
図2】本発明の実施例によるシリコン系負極活物質において50サイクル後の膨張特性を測定した組織写真図である。
【
図3】本発明によるシリコン系負極活物質を適用した場合と、適用しない場合の極板容量をそれぞれ示すグラフである。
【
図4】本発明によるシリコン系負極活物質をそれぞれ5.8重量%、9.6重量%適用したときの極板容量と、シリコン系負極活物質、黒鉛系負極活物質にカーボンナノチューブ(CNT)を更に含めた場合の極板容量を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施例によるシリコン系負極活物質の非晶質化度の測定を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一実施例によれば、下記式(1)の組成式を有するシリコン系負極活物質3~9重量%、黒鉛系負極活物質87.5~95.5重量%を含むリチウム二次電池用負極板を提供する。
【0034】
SixTiyFezAlu・・・式(1)
(x、y、z、uは原子%であり、x:1-(y+z+u)、y:0.09~0.14、z:0.09~0.14、u:0.01超過0.2未満)
二次電池用負極板を構成するための必須要素であるが、増粘剤の重量%が増加するほど相対的にシリコン系負極活物質および黒鉛系負極活物質の投入量が減少することになり、これは二次電池の性能減少につながるので、好ましくない。従って、本発明では、リチウム二次電池用負極板に投入される増粘剤の重量%の上限を1重量%に限定したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、増粘剤の種類および性能に応じて、或いはシリコン系負極活物質、黒鉛系負極活物質、バインダーに応じて少量投入されてもよい。
【0035】
また、増粘剤はCMC(carboxymethyl cellulose)系列の増粘剤を使用することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0036】
バインダーは、1~2重量%の範囲を有することが好ましい。バインダーは、リチウム二次電池用負極板の構成要素の結合力を増加させてクラックの発生を防止し、構造的安定性を増加させる役割をする。従って、バインダーが1重量%未満で使用される場合、リチウム二次電池用負極板の構成要素の構造的安定性が減少して、二次電池の性能に否定的な影響を及ぼすので、好ましくない。
【0037】
また、上述した増粘剤と同様に、バインダーもリチウム二次電池用負極板を構成するための必須要素であるが、バインダーの重量%が増加するほど相対的にシリコン系負極活物質および黒鉛系負極活物質の投入量が減少することになり、これは二次電池の性能減少につながるので、好ましくない。従って、本発明では、リチウム二次電池用負極板に投入されるバインダーの重量%の上限を2重量%に限定したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、バインダーの種類および性能に応じて、或いはシリコン系負極活物質、黒鉛系負極活物質、増粘剤に応じて少量投入されてもよい。
【0038】
また、バインダーはSBR(styrene-butadiene rubber)系列のバインダーを使用することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0039】
本発明のリチウム二次電池用負極板に投入される黒鉛系負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵および放出に関与する役割をする。黒鉛系負極活物質の投入量は特別に限定されるものではなく、シリコン系負極活物質、増粘剤およびバインダーの投入量に応じて流動的に投入することができる。
【0040】
[シリコン系負極活物質、黒鉛系負極活物質にカーボンナノチューブの混合]
また、本発明のリチウム二次電池用負極板にカーボンナノチューブ(CNT)を更に含めることができる。カーボンナノチューブ(CNT)は、充放電過程で極板の膨張-収縮時に活物質が離脱することを防止する役割をする。カーボンナノチューブ(CNT)は、0.05~0.2重量%の範囲を有することが好ましい。カーボンナノチューブ(CNT)が0.05重量%未満で使用される場合、活物質の離脱を防止する効果が微々たるものになって好ましくない。また、カーボンナノチューブ(CNT)が0.2重量%を超えて使用される場合、カーボンナノチューブ(CNT)の投入量に比例して活物質の離脱防止効果が増加しないので、費用対比効率が落ちて好ましくない。
【0041】
以下、本発明を実施例を介してより詳細に説明する。
【0042】
(実施例1):本発明の実施例に利用されたシリコン系負極活物質の特性
本発明の実施例に利用されたシリコン系負極活物質においてSiは原子%(at%)で60~70%の範囲を有し、TiおよびFeは9~14%の範囲を有する。一方、前記Alは1%超過および20%未満の範囲を有するが、好ましくは5~19%の範囲であり、最も好ましくは10~19%の範囲である。
【0043】
下記表1は、実施例と比較例の組成範囲を示したテーブルである。一方、下記表2は、前記表1の組成を基盤とするシリコン系負極活物質の評価に関するもので、特に実施例と比較例の1CY-充放電量、1CY-効率、1CY-極板容量、50CY-放電容量、50CY-効率、50CY-容量維持率、50CY-膨張率、非晶質化度(%)を示したものである。表2の各項目に対する技術的意味は後述して詳細に説明する。
【0044】
本発明の実施例に利用されたシリコン系負極活物質では、充放電を50回繰り返してこれを測定した。上記で充放電方式は、この分野で一般に公知されているリチウム二次電池用活物質に対する充放電方式に準じて行った。
【0045】
まず、実施例1~実施例5の場合、Alがat%で5~19%の範囲内の組成からなり、比較例1はAlを添加しておらず、比較例2はAlを1%添加した場合を示す。比較例3はAlを20%添加した場合を示す。
【0046】
一方、Ti、Feの場合、Siと結合してSi2TiFeという金属間化合物を形成する。従って、Ti、Feの含量が高い場合、Siと金属間化合物を形成するために消耗されて、活物質のg当たりの容量が減少する現象が現れ、この場合、1000mAh/g以上の容量を得るためにはSiの投入含量を非常に高くしなければならない。一般に、半金属であるSiを多く含有した場合、溶融の際に溶湯の粘度が高くて急冷凝固作業性が悪くなる傾向が現れるので、Siの含有量を可能な限り70%以内の範囲に維持することが良い。従って、Ti、Feの含量はSiとの金属間化合物を形成することを考慮して、14%を超えないことが好ましい。
【0047】
下記表1および表2を見ると、Ti、Feの含量を膨張率と関係付けて最適の合金成分を導き出す過程で、14%以下に下げることが好ましいことを導き出した。
【0048】
また、Alはat%で1%超過および20%未満の範囲を有することが好ましい。Alが1%程度含まれた場合、50サイクル後の膨張が激しくなり、この場合、活物質が分散される現象が現れて好ましくない。また、Alが20%である場合、Si:Matrix体積分率の変化による放電容量が急激に減少して好ましくない。本発明の実施例では、原子%(at%)で5~19%の範囲を有するときに最も好ましい膨張率の範囲を有することができることを導き出し、また、この範囲内で放電容量の減少が発生しないことが分かった。最も好ましくは、Alは10~19%であり、この範囲で最も好ましい50サイクル膨張率の範囲を得ることができ、放電容量の減少も発生しない。
【0049】
下記表2において実施例1~実施例5を見ると、Alを添加することにより活物質の性能が改善されたことが確認できる。特にAlを添加したときの放電容量、可逆効率、膨張特性が顕著に改善されたことが分かる。一方、Alを添加しない比較例1の場合、50サイクル膨張特性が200%を超える値を示す。また、比較例2の場合、Alを1%添加した場合、同様に50サイクル膨張特性が200%を超える。一方、Alを20%添加した比較例3の場合、50サイクル膨張が40.2%と非常に低く示されるが、この場合、放電容量が顕著に減少するので、二次電池負極活物質の性能改善効果がむしろ低くなる問題がある。
【0050】
従って、上記表1および表2を見ると、負極活物質でAlの添加による放電容量、可逆効率、膨張特性が顕著に改善されたことが分かる。また、このときのAlの添加量をat%で少なくとも1%は超えるが、20%未満の範囲で最適の性能を示すことが分かる。また、比較例1、2の場合、非晶質化度(%)は25%未満を示すことが分かり、従って、本発明の実施例においてAlの成分範囲内で好ましい非晶質化度は、少なくとも25%以上であることが分かる。
【0051】
図1a、b、cおよび
図2は、それぞれ比較例2、実施例5に関する50サイクル後の膨張率特性を示すための組織写真図である。
図1a、b、cで明るい色の粒子形状をなす部分がMatrixであり、暗い色の背景部分がSiであるが、寿命テスト前の初期には、
図1cと同様にMatrixがよく集まっている形状であったが、50サイクルの充放電を繰り返すにつれてSi部分の体積が大きくなり、Matrixをなす明るい色の粒子が分散されていくことが確認できる。
図1cの場合のような50サイクル後の様子であるにもかかわらず、Matrixがシリコンの収縮、膨張に関係なく、互いに分散されずによく集まっている。活物質Matrixが分散される現象は、50サイクル後の膨張数値の急激な増加をもたらしている。比較例1、2のようにAlが1%以下で添加された場合、50サイクル後の膨張が200%以上と非常に激しく現れるのに対し、活物質の分散現象が観察されない実施例5の場合、50サイクル後の膨張率が約78%と非常に優れており、寿命特性も非常に優れていることが分かる。
【0052】
【表1】
まず、本発明の実施例に利用されたシリコン系負極活物質の評価は、下記のような組成の極板を製作して行った。
【0053】
シリコン合金活物質は、導電性添加剤(カーボンブラック系列):バインダー(有機系、PAIバインダー)の割合が86.6%:3.4%:10%である組成の極板を製作して評価し、NMP溶媒に分散させたスラリーを製造して銅箔集電体の上にドクターブレード方式でコーティングした後、摂氏110℃のオーブンで乾燥し、210℃でAr雰囲気で1時間熱処理をしてバインダーを硬化させた。
【0054】
上記のような方法で製作した極板をリチウム金属を対極としてコインセルをつくり、以下のような条件で化成工程を経った。
【0055】
充電(リチウム挿入):0.1C、0.005V、0.05C cut-off
放電(リチウム放出):0.1C、1.5V cut-off
化成工程以後には、以下のような条件でサイクルテストを行った。
【0056】
充電:0.5C、0.01V、0.05C cut-off
放電:0.5C、1.0V cut-off
上記表2で1CY-充電(mAh/g)は、活物質1g当たりの化成充電容量であり、コインセルの組立後、最初の充電段階である化成工程のうち充電段階の電荷量を測定して、コインセル極板に含まれている活物質の重量で割った値である。
【0057】
1CY-放電(mAh/g)は、活物質1g当たりの化成放電容量であり、コインセルの組立後、最初の放電段階である化成工程のうち放電段階の電荷量を測定して、コインセル極板に含まれている活物質の重量で割った値である。本実施例でのg当たりの容量は、このときに測定された放電容量である0.1C化成放電容量を意味する。
【0058】
1CY-効率は、最初の充放電工程である化成工程で放電容量を充電容量で割った値をパーセントで表したものである。一般に、黒鉛は94%の高い初期効率を有しており、シリコン合金は80~90%の初期効率、シリコンオキサイド(SiOx)の場合には、最大70%の初期効率値を有している。
【0059】
どの物質でも初期効率が100%未満である理由は、化成工程のうち充電時に最初に投入されるリチウムが不可逆的にトラップされたり、SEI形成など副反応で消耗される現象が発生するからであり、初期効率が低い場合、その分追加的に負極活物質および正極活物質を投入しなければならない損失を引き起こすため、初期効率が高いことが電池の設計時に重要である。
【0060】
本発明の実施例で使用しているシリコン合金の場合、85%の初期効率値を有し、導電性添加剤およびバインダーも初期に不可逆的にリチウムを消耗させるので、実質的な活物質自体の初期効率値は約90%である。
【0061】
50CY-放電は、50サイクルでの活物質g当たりの放電容量であり、化成工程後0.5Cで行われるサイクルテストのうち、化成工程を含めて50番目のサイクルで放電時に測定される電荷量を活物質の重量で割った値である。活物質がサイクルテストの進行中に劣化されれば、初期放電容量に比べて低い数値を示すことになり、劣化が殆どなければ、初期放電容量と類似する数値を示すことになる。
【0062】
50CY-効率は、50サイクルで充電量対比放電量の割合を%で表したものである。50CY-効率が高いほど、当該サイクルでの副反応およびその他の劣化によるリチウムの損失が少ないことを意味する。一般に50CY-効率が99.5%以上である場合、非常に良好な値であると判断し、実験室環境上、コインセル組立の散布を無視できないので、98%以上の場合も良好な値であると判断する。
【0063】
50CY-維持は、化成工程時に進行されたサイクルを除いて、以後0.5Cサイクル遂行時、最初のサイクルの放電容量を基準に50番目のサイクルでの放電容量の割合を%で表したものである。
【0064】
50CY-維持割合が高いほど電池寿命の傾きが水平に近いものと見ることができ、50CY-維持割合が90%以下である場合、サイクル進行中に劣化が発生して放電容量が減少したことを意味する。一部実施例では、50CY-維持割合が100%を超える場合も現れるが、これは寿命進行中に劣化が殆ど発生しないと同時に、追加的に活性化されるシリコン粒子が現れているものと判断される。
【0065】
50CY-膨張は、初期極板の厚さ対比50サイクル以後の厚さ増加値を%で表したものである。50CY-膨張の測定方法を詳細に説明すれば、以下のようである。
【0066】
まず、初期集電体の厚さを測定する。
【0067】
以後、コインセルに組み立てるために円形に切断した状態の極板をマイクロメーターを利用してその厚さを測定した後、集電体の厚さを引いて活物質のみの厚さを計算する。
【0068】
続いて、50サイクルテストを完了した後、コインセルをドライルームで解体して負極極板のみを分離した後、DEC溶液を用いて極板に残っている電解液を洗浄および乾燥してマイクロメーターを利用して厚さを測定し、集電体の厚さを引いてサイクル以後の活物質のみの厚さを計算する。つまり、初期活物質の厚さ対比50サイクル以後増加した活物質の厚さを初期活物質の厚さで割って百分率で表示したものが50CY-膨張である。
【0069】
(実施例2):シリコン系負極活物質と黒鉛系負極活物質、カーボンナノチューブ(CNT)の配合および特性
下記表3~表5は、上記式(1)の組成を有するシリコン系負極活物質と黒鉛系負極活物質をブレンディングして負極極板を製造したときの電池の性能を確認するための実験に対して、実施例と比較例の活物質容量、極板容量、効率、1CY膨張、50CY膨張、容量維持率を示したものである。表3のシリコン系負極活物質は、式(1)による組成とat%を適用した負極活物質であり、一般金属系負極活物質は、Alを除いてSi、Ti、Feで構成された負極活物質である。
【0070】
また、下記表3~表5は、前記式(1)の組成を有するシリコン系負極活物質にカーボンナノチューブ(CNT)を追加適用したときの電池の性能を確認するための実験に対して、本発明の実施例と比較例の活物質容量、極板容量、効率、1CY膨張、50CY膨張、容量維持率を示したものである。
【0071】
実施例6はシリコン系負極活物質が3~9重量%の範囲内の組成からなり、比較例4は一般金属系負極活物質を実施例6と同じ割合で適用した場合を示す。比較例5はシリコン系負極活物質を9重量%を超えて適用した場合を示した比較例である。
【0072】
また、実施例7はシリコン系負極活物質を3~9重量%の範囲内の組成で適用したが、カーボンナノチューブ(CNT)を更に追加した場合を示した実施例である。
【0073】
増粘剤およびバインダーは、実施例6、実施例7、比較例4、比較例5に全て同一にそれぞれ1%、2%を適用し、シリコン系負極活物質、増粘剤、バインダー、カーボンナノチューブ(CNT)の重量%を除いた残りの量を計算して、黒鉛系負極活物質を投入した。
【0074】
【表2】
上記表3~表5と
図3を見ると、本発明によるシリコン系負極活物質と黒鉛系負極活物質のブレンディングよる二次電池の性能を確認することができる。
図3はシリコン系負極活物質を適用した場合と、一般金属系負極活物質を適用した場合の二次電池の極板容量をそれぞれ示すグラフである。
図3のグラフでAISAは、シリコン系負極活物質を適用した実施例6の極板容量を示し、70v1は一般金属系負極活物質を適用した比較例4の極板容量を示す。
【0075】
図3のグラフを見ると、二次電池用負極極板の製造時、シリコン系負極活物質を使用することにより極板容量が増加することが確認できた。また、表5によれば、シリコン系負極活物質を使用したとき、50サイクル以後の容量維持率が82.8%から90.2%に増加することが分かった。一方、一般金属系負極活物質を適用した比較例4の場合、活物質容量、極板容量、効率、膨張率が全てシリコン系負極活物質を適用した実施例6よりも低い性能を示すことが分かった。
【0076】
また、シリコン系負極活物質を9.6重量%適用した比較例5の場合、50サイクル後の膨張が激しくなり、電池効率も減少することが分かった。
図4で420-Refは、シリコン系負極活物質を9.6%重量%適用した比較例2の極板容量を示し、充放電サイクルが進行されるほど極板容量が顕著に落ちることが確認できる。これは、シリコン系負極活物質が9重量%を超えて投入される場合、黒鉛系負極活物質との膨張率の差によるクラックが発生して、初期極板容量は上昇するが、容量維持率および膨張率が落ちて二次電池の性能が低下する問題がある。
【0077】
従って、本発明の実施例では、Alが添加されたシリコン系負極活物質を3~9重量%使用すれば、活物質容量、極板容量、効率、1CY膨張率、容量維持率が改善された性能を示すことが分かる。
【0078】
一方、上記表3~表5と
図4を見ると、本発明によるシリコン系負極活物質にカーボンナノチューブ(CNT)を適用したとき、カーボンナノチューブ(CNT)の適用効果を確認することができる。
図4は本発明によるシリコン系負極活物質を5.8重量%適用したときの極板容量と、カーボンナノチューブ(CNT)を適用した場合の極板容量を示すグラフである。
図4のグラフで400-Refは、シリコン系負極活物質を適用した実施例6の極板容量を示し、400-CNTは、シリコン系負極活物質にカーボンナノチューブ(CNT)を追加して適用した実施例7の極板容量を示すグラフであるが、カーボンナノチューブ(CNT)を更に追加した実施例7の場合のほうが、シリコン系負極活物質のみを使用した実施例6よりも良い性能を示すことが分かる。
【0079】
カーボンナノチューブ(CNT)は、充放電過程で極板の膨張-収縮時に活物質が離脱することを防止する役割をして、電池の容量維持率の改善に良い効果を見せる。例えば、シリコン系負極活物質、黒鉛系負極活物質にカーボンナノチューブ(CNT)が更に含まれた実施例7と、カーボンナノチューブ(CNT)が含まれていない実施例6を比較した場合、50サイクル後の容量維持率が90.2%から95.4%に改善されたことが確認できた。
【0080】
また、カーボンナノチューブ(CNT)は、0.05~0.2重量%の範囲を有することが好ましい。カーボンナノチューブ(CNT)が0.05重量%未満で使用される場合、カーボンナノチューブ(CNT)の活物質離脱防止効果が微々たるものになって好ましくなく、0.2重量%を超えて使用される場合、カーボンナノチューブ(CNT)の投入量に比例して活物質離脱防止効果が増加しないので、費用対比効率が落ちて好ましくない。
【0081】
また、上記実施例6、実施例7、比較例4、比較例5は全てCMC(carboxymethyl cellulose)系列の増粘剤を使用して1%添加したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、増粘剤の種類および性能に応じて、或いはシリコン系負極活物質、黒鉛系負極活物質、バインダーに応じて投入される重量%は変動可能である。
【0082】
バインダーも増粘剤と同様に、実施例6、実施例7、比較例4、比較例5は全てSBR(styrene-butadiene rubber)系列のバインダーを使用して2%添加したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、バインダーの種類および性能に応じて、或いはシリコン系負極活物質、黒鉛系負極活物質、バインダーに応じて投入される重量%は変動可能である。
【0083】
本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解するはずである。従って、以上で記述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであって限定的なものではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、上記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。