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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/02 20060101AFI20220112BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H05B3/02 B
C04B37/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017231816
(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公開番号】P2019102274
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】川邊 保典
(72)【発明者】
【氏名】大川 善裕
(72)【発明者】
【氏名】寺本 竜一
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-509989(JP,A)
【文献】特開2006-222008(JP,A)
【文献】特開2006-287213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0194374(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02
C04B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなる基体と、
柱形状であり、少なくとも一部が前記基体の内部において一方向に沿って位置する金属端子と、を備え、
前記金属端子は、3個以上であり、前記一方向に直交する断面において、それぞれの前記金属端子が同一円の円周に重なって位置し、
前記基体は、前記断面において、それぞれの前記金属端子が重なる最大同一円の線上およびそれぞれの前記金属端子が重なる最小同一円の線上を含む間の領域Rに列状に位置する空隙を有し、
前記金属端子は、前記断面において円状であり、前記最小同一円の中心から遠い部分を輪郭A、前記最小同一円の中心に近い部分を輪郭Bとしたとき、前記輪郭Aが前記輪郭Bより曲率半径が大きい構造体。
【請求項2】
セラミックスからなる基体と、
柱形状であり、少なくとも一部が前記基体の内部において一方向に沿って位置する金属端子と、を備え、
前記金属端子は、3個以上であり、前記一方向に直交する断面において、それぞれの前記金属端子が同一円の円周に重なって位置し、
前記基体は、前記断面において、それぞれの前記金属端子が重なる最大同一円の線上およびそれぞれの前記金属端子が重なる最小同一円の線上を含む間の領域Rに列状に位置する空隙を有し、
前記基体は、前記断面において、前記最大同一円よりも前記最小同一円の中心に近い部分を領域C、前記最大同一円よりも前記基体の外周に近い部分を領域Dとしたとき、前記領域Cにおける前記セラミックスの結晶粒子の平均円相当径Eが、前記領域Dにおける前記セラミックスの結晶粒子の平均円相当径Fよりも大きい構造体。
【請求項3】
前記平均円相当径Eは5μm以上15μm以下であり、前記平均円相当径Fは3μm以上10μm以下である請求項に記載の構造体。
【請求項4】
前記空隙の列は、前記断面において、前記最大同一円の線上よりも前記最小同一円の中心の近くに位置している請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の構造体。
【請求項5】
前記空隙の列は、前記断面において、前記最小同一円の中心から離れる方に膨らんでいる円弧状である請求項1乃至請求項のいずれかに記載の構造体。
【請求項6】
前記空隙は、前記断面における平均長径が60μm以上400μm以下であり、前記断面における平均短径が5μm以上40μm以下である請求項1乃至請求項のいずれかに記載の構造体。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の構造体において、前記基体は、板形状であるとともに、前記基体の内部に位置し、前記金属端子に繋がる電極と、前記基体の厚み方向に貫通する複数の貫通孔とを有しているシャワープレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスは、金属または樹脂と比較して、耐熱性に優れている。そこで、セラミックスからなる基体を有する構造体は、基体の内部に電極を設けて、電極に電流を流すことで加熱する用途に広く用いられている。ここで、電極に電流を流すために、電極と外部電源とを繋ぐ金属端子が必要になる。
【0003】
例えば、特許文献1には、AlN焼結体基材と、該AlN焼結体基材の一面側に設けられた抵抗発熱体と、前記AlN焼結体基材に設けられ他面側から前記一面側に連通された端子挿入孔と、該端子挿入孔に嵌合され抵抗発熱体に接合された金属製の端子と、前記抵抗発熱体を覆うように前記AlN焼結体基材に取付けられたAlN焼結体蓋体とを有し、前記端子は、ほぼ円柱形状をなし、前記抵抗発熱体との接合面が縮径されているAlNヒータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-87392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極に電流を流すと発熱し、構造体が加熱される。ここで、給電端子と基体とが直に接していると、加熱および冷却が繰り返された際に、金属からなる金属端子とセラミックスからなる基体との熱膨張係数差に起因する応力(以下、熱応力と記載する)が繰り返しかかり、基体に亀裂が生じるおそれがある。
【0006】
本開示は、このような事情を鑑みて案出されたものであり、加熱および冷却が繰り返されても、基体に亀裂が生じにくい構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の構造体は、セラミックスからなる基体と、柱形状であり、少なくとも一部が前記基体の内部において一方向に沿って位置する金属端子と、を備える。また、前記金属端子は、3個以上であり、前記一方向に直交する断面において、それぞれの前記金属端子が同一円の円周に重なって位置する。そして、前記基体は、前記断面において、それぞれの前記金属端子が重なる最大同一円の線上およびそれぞれの前記金属端子が重なる最小同一円の線上を含む間の領域Rに列状に位置する空隙を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の構造体は、加熱および冷却が繰り返されても、基体に亀裂が生じにくく、長期間に亘って使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図1におけるII-II線にて切断した断面図である。
図3】本開示のシャワープレートの一例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の構造体について、各図を参照しながら説明する。
【0011】
本開示の構造体10は、図1に示すように、基体1と、柱形状であり、少なくとも一部が基体1の内部において一方向に沿って位置する金属端子2と、を備える。なお、図1においては、円板形状である基体1を示しているが、これに限定されるものではなく、基体1はどのような形状であってもよい。また、図1においては、一方向が基体1の厚み方向である。
【0012】
そして、基体1はセラミックスからなる。セラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム質セラミックス、酸化ジルコニウム質セラミックス、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムの複合セラミックス、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、炭化珪素質セラミックスまたはムライト質セラミックス等が挙げられる。なお、基体1が窒化アルミニウム質セラミックスからなるならば、放熱性に優れる。
【0013】
ここで、例えば、窒化アルミニウム質セラミックスとは、窒化アルミニウム質セラミックスを構成する全成分100質量%のうち、窒化アルミニウムが70質量%以上を占めるものである。
【0014】
ここで、基体1の材質は、以下の方法により確認することができる。まず、X線回折装置(XRD)を用いて基体1を測定し、得られた2θ(2θは、回折角度である。)の値をJCPDSカードで同定することで、基体1の成分を同定する。次に、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置(ICP)を用いて、基体1の定量分析を行なう。このとき、XRDで同定された成分が窒化アルミニウムであり、ICPで測定したアルミニウム(Al)の含有量から窒化アルミニウム(AlN)に換算した値が70質量%以上であれば、窒化アルミニウム質セラミックスである。なお、他のセラミックスに関しても、同じ方法で確認できる。
【0015】
また、本開示の構造体10における金属端子2は、3個以上であり、図2に示すように、一方向に直交する断面(以下、単に断面とも記載する)において、それぞれの金属端子2が同一円の円周に重なって位置している。なお、断面とは、柱形状の金属端子2の軸方向に直交する断面と言い換えることができるものであり、断面位置は、金属端子2を含むものである。また、それぞれの金属端子2が同一円の円周に重なって位置しているとは、言い換えれば、断面において、それぞれの金属端子2の少なくとも一部に接する円が描けるように、それぞれの金属端子2が位置していることをいう。
【0016】
ここで、図1および図2においては、金属端子2が3個(金属端子2a、金属端子2b、金属端子2c)である例を示しているが、金属端子2の個数は3個以上であればよい。このように、金属端子2の個数が3個以上であることで、仮に金属端子2のうち1個(金属端子2a)が電気的にショートした場合でも、残りの金属端子2(金属端子2b、金属端子2c)により電極への給電を維持することができることから、信頼性に優れる。そして、3個以上の金属端子2が、同一円の円周に重なって位置していることで、3個以上の金属端子2が同一円の円周に重ならないように位置している場合に比べて、加熱および冷却が繰り返される際に発生する熱応力が分散され、基体1に亀裂が発生し難い。
【0017】
なお、本開示の構造体10においては、同一円の円周に重なって位置している3個以上の金属端子2のグループが少なくとも1つあればよく、このグループは複数個あってもよい。
【0018】
また、このグループにおいて、隣り合う金属端子2同士の最短距離が同等であれば、熱応力がさらに分散され、基体1に亀裂がより発生しにくくなる。具体的には、図2に示す構造体10を例に挙げると、断面において、金属端子2aおよび金属端子2bの最短距離をX、金属端子2bおよび金属端子2cの最短距離をY、金属端子2cおよび金属端子2aの最短距離をZとしたとき、X、YおよびZが同等であればよい。ここで、X、YおよびZが同等とは、X、YおよびZの平均値の±20%の範囲内にX、YおよびZが入っていることをいう。
【0019】
そして、本開示の構造体10における基体1は、図2に示すように、断面において、それぞれの金属端子2が重なる最大同一円R1の線上およびそれぞれの金属端子2が重なる最小同一円R2の線上を含む間の領域Rに列状に位置する空隙3を有する。ここで、最大同一円R1とは、それぞれの金属端子2と接触する円のうち最も半径が大きい円のことである。一方、最小同一円R2とは、それぞれの金属端子2と接触する円のうち最も半径が小さい円のことである。そして、領域Rとは、最大同一円R1の線上および最小同一円R2の線上を含む、最大同一円R1および最小同一円R2の間の領域のことである。また、列状に位置する空隙3とは、3個以上の空隙3が、隣り合う空隙3同士の最短距離が500μm以下(0μmを除く)となるように並んでいることをいう。なお、空隙3を、領域R以外の箇所にも有していても構わない。
【0020】
ここで、セラミックからなる基体1には、空隙3以外にも気孔が存在する場合があるが、空隙3と気孔とは大きさで識別することが可能である。具体的には、断面における、空隙3の長径は、基板1を構成するセラミックスの結晶粒子の平均円相当径より大きいものである。一方、断面における、気孔の長径は、基板1を構成するセラミックスの結晶粒子の平均円相当径以下のものである。これは気孔がセラミックスの結晶粒子同士の3重点に形成され易いためである。なお、長径とは、断面における、空隙3または気孔の最大長さのことである。また、後述するように、断面において、最大同一円R1よりも最小同一円R2の中心Mに近い部分である領域Cにおけるセラミックスの結晶粒子の平均円相当径Eと、最大同一円R1よりも基体1の外周に近い部分である領域Dにおけるセラミックスの結晶粒子の平均円相当径Fとが異なる場合がある。この場合は、平均円相当径Eと長径とを比較すればよい。
【0021】
3個以上の金属端子2が同一円の円周に重なって位置している場合は、基体1の領域Rにおいて亀裂が発生しやすいが、このような構成を満足していることで、空隙3の列が熱応力を緩和する役割を果たし、本開示の構造体10は、加熱および冷却が繰り返されても、基体1に亀裂が生じにくく、長期間に亘って使用することができる。
【0022】
また、本開示の構造体10における金属端子2は、図2に示すように、断面において円状であり、最小同一円R2の中心Mから遠い部分を輪郭A、最小同一円R2の中心Mに近い部分を輪郭Bとしたとき、輪郭Aが輪郭Bより曲率半径が大きくてもよい。
【0023】
金属端子2において、輪郭Bに比べて曲率半径が大きい輪郭A側に相対的に大きな熱応力が発生する。よって、このような構成を満足するならば、輪郭Aが輪郭Bより曲率半径が小さい場合に比べて、3個以上の金属端子2によって熱応力が集中しやすい中心M側の熱応力を低減することができ、基体1に亀裂がさらに生じにくくなる。
【0024】
また、本開示の構造体10における空隙3の列は、断面において、最大同一円R1の線上よりも最小同一円R2の中心Mの近くに位置していてもよい。このような構造を満足するならば、基体1の領域Rの中でも熱応力が集中しやすい中心M側に空隙3の列が位置していることで、基体1に亀裂がさらに生じにくくなる。
【0025】
また、本開示の構造体10における空隙3の列は、断面において、最小同一円R2の中心Mから離れる方に膨らんでいる円弧状であってもよい。このような構成を満足するならば、空隙3の列により熱応力を効果的に緩和することができ、基体1に亀裂がさらに生じにくくなる。
【0026】
また、本開示の構造体10における空隙3は、断面における平均長径が60μm以上400μm以下であり、断面における平均短径が5μm以上40μm以下であってもよい。ここで、空隙3の平均長径とは、断面における、各空隙3の最大長さの平均値のことである。一方、空隙3の短径とは、各空隙3の長径の線分の中央で、長径の線分に直交する直線の長さの平均値のことである。
【0027】
このような構成を満足するならば、空隙3による基体1の機械的強度の低下を低減しつつ、空隙3の列により熱応力を効果的に緩和することができ、基体1に亀裂がさらに生じにくくなる。
【0028】
ここで、空隙3の平均長径および平均短径は、以下の方法で算出すればよい。まず、本開示の構造体10を、一方向に直交する方向に切断する。次に、この切断面を、クロスセクションポリッシャー(CP)を用いて研磨することで観察面を得る。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてこの観察面を撮影する。次に、この写真を用いて、白紙において空隙3の箇所を黒色に塗りつぶしトレースする。そして、トレースした紙を画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製、なお、以降に画像解析ソフト「A像くん」と記した場合、旭化成エンジニアリング(株)製の画像解析ソフトを示すものとする。)の粒子解析という手法を適用して画像解析を行なう。なお、「A像くん」の解析条件としては、結晶粒子の明度を「暗」、2値化の方法を「自動」、シェーディングを「有」とする。そして、この粒子解析によって、測定された各空隙3の長径および短径から、空隙3の平均長径および平均短径を算出すればよい。
【0029】
また、本開示の構造体10における基体1は、断面において、最大同一円R1よりも最小同一円R2の中心Mに近い部分を領域C、最大同一円R1よりも基体1の外周に近い部分を領域Dとしたとき、領域Cにおけるセラミックスの結晶粒子の平均円相当径Eが、領域Dにおけるセラミックスの結晶粒子の平均円相当径Fよりも大きくてもよい。ここで、領域Cとは、言い換えるならば、最大同一円R1に対応する領域である。また、領域Dとは、言い換えるならば、断面のうち最大同一円R1を除く部分に対応する領域のことである。
【0030】
このような構造を満足するならば、基体1において、領域Dよりも領域Cにおけるセラミックスの結晶粒子同士の粒界が少ないことから、領域Cは領域Dよりも熱伝導率が高い。よって、領域Cは、領域Dに比べて金属端子2の熱伝導率に近くなることから、加熱および冷却が繰り返された際に、金属端子2の温度に領域Cの温度が追従しやすく、熱応力が集中しやすい領域Cにおいて熱応力を緩和することができることから、基体1に亀裂がさらに生じにくくなる。なお、本開示の構造体10において、平均円相当径Eは5μm以上15μm以下であり、平均円相当径Fは3μm以上10μm以下であってもよい。
【0031】
ここで、平均円相当径Eは、以下の方法で算出すればよい。まず、本開示の構造体10を、一方向に直交する方向に切断する。次に、この切断面を、CPを用いて研磨することで観察面を得る。次に、SEMを用いてこの観察面を撮影する。そして、この写真において、領域Cにあるセラミックスの結晶粒子の輪郭を黒く縁取る。次に、縁取りを行なった写真を用いて、画像解析ソフト「A像くん」の粒子解析という手法を適用して画像解析を行なう。なお、「A像くん」の解析条件としては、結晶粒子の明度を「明」、2値化の方法を「自動」、シェーディングを「有」とする。そして、この粒子解析によって測定された、セラミックスの結晶粒子の円相当径から、平均円相当径Eを算出すればよい。
【0032】
なお、平均円相当径Fは、上述した平均円相当径Eを算出した方法において、領域Dにあるセラミックスの結晶粒子の輪郭を黒く縁取った写真を用いること以外は同じように算出すればよい。
【0033】
また、本開示の構造体10における金属端子2は、金属を主成分とする。ここで、金属を主成分とするとは、金属端子2を構成する全成分100質量%のうち、金属が90質量%以上を占めることをいう。なお、この金属が、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の高融点金属であれば、耐熱性に優れる。この中でも、金属がタングステンまたはモリブデンであれば、耐熱性と低熱膨張性とに優れる。
【0034】
次に、図3を用いて、上述した構造体10を用いた、本開示のシャワープレート20について説明する。本開示のシャワープレート20は、図3において、図示面とこの図示面の反対の面を貫く複数の貫通孔4と、4個の金属端子2を有する4つのグループとを有している例を示している。なお、図示していないが、シャワープレート20は、金属端子2に繋がる電極を有している。そして、複数の貫通孔4、金属端子2および電極を除く部分が、本開示の構造体10における基体1に相当する。
【0035】
ここで、複数の貫通孔4は、ハロゲン系腐食性ガス等を流すためのものである。また、金属端子2に繋がる電極は、電流を流すことで、シャワープレート20を加熱するためのものである。
【0036】
次に、本開示の構造体の製造方法の一例について説明する。なお、ここでは、基体が窒化アルミニウム質セラミックスからなり、金属端子がタングステンからなる場合について説明する。また、金属端子の本数が3個である場合について説明する。
【0037】
まず、公知の方法で、柱形状であり、窒化アルミニウムの第1成形体を準備する。また、柱形状であり、タングステンからなる金属端子も準備する。
【0038】
次に、第1成形体に、第1成形体の長さ方向に貫通する3つの第1貫通孔を設ける。ここで、この3つの第1貫通孔は、第1成形体の厚み方向に直交する断面において、それぞれの第1貫通孔が同一円の円周に重なって位置するように設ける。なお、第1貫通孔の径の大きさは、後述する焼成後において金属端子を拘束できるように、第1成形体の収縮を加味して設定する。
【0039】
次に、第1成形体のそれぞれの第1貫通孔に金属端子を挿入した後、窒素ガス中において焼成し、焼成体を得る。次に、それぞれの金属端子の側面が露出するように焼成体を研削加工するとともに、焼成体の側面に、空隙の列となる微小な凹凸を形成することにより第1部材を得る。
【0040】
なお、第1部材を得る際に、金属端子において、輪郭Aの曲率半径が輪郭Bの曲率半径より大きくなるように研削加工してもよい。
【0041】
次に、公知の方法で、第2貫通孔を有する、窒化アルミニウムの第2成形体を準備する。ここで、この第2貫通孔の径の大きさは、後述する焼成後において第1部材を拘束できるように、第2成形体の収縮を加味して設定する。以下において、第2成形体を第2部材と記載する。
【0042】
次に、第2部材の第2貫通孔に第1部材を挿入した後、窒素ガス中において焼成する。これにより、上述した微小な凹凸が空隙の列となり、本開示の構造体を得る。
【0043】
また、断面において、最小同一円の中心から離れる方に膨らんでいる円弧状である空隙の列を得るには、上述した第1部材を得る際に、第1部材が円柱状になるように研削加工すればよい。
【0044】
また、断面における平均長径が60μm以上400μm以下であり、断面における平均短径が5μm以上40μm以下である空隙を得るには、上述した第1部材を得る際に、空隙が上記大きさとなるように大きさを調整した凹凸を形成すればよい。
【0045】
また、断面において、平均円相当径Eを平均円相当径Fよりも大きくするには、第1成形体の形成にあたり、第2成形体を得る際に使用する窒化アルミニウム粉末よりも平均粒径が大きい窒化アルミニウム粉末を使用すればよい。なお、第1成形体および第2成形体を得る際に使用するそれぞれの窒化アルミニウム粉末の平均粒径を調整することで、平均円相当径Eおよび平均円相当径Fの値を任意の値とすることができる。
【0046】
また、本開示のシャワープレートを得るには、上述した本開示の構造体の製造方法において、第1部材を挿入する第1貫通孔およびガスの流通路となる第3貫通孔を有しているとともに、金属端子に繋がる電極となるペーストを備えた板形状の第2成形体を準備し、第1部材を第1貫通孔に挿入した後、焼成すればよい。なお、焼成後において、表面を研削加工してもよく、ガスの流通路となる第3貫通孔は、焼成後に形成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:基体
2、2a、2b、2c:金属端子
3:空隙
4:貫通孔
10:構造体
20:シャワープレート
図1
図2
図3