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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】操舵制御システム
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/30 20060101AFI20220113BHJP
   B63H 25/36 20060101ALI20220113BHJP
   F15B 20/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B63H25/30 F
B63H25/30 D
B63H25/36
F15B20/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017128853
(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2019010963
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 周丙
(72)【発明者】
【氏名】下舞 高志
(72)【発明者】
【氏名】田中 辰喜
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-113197(JP,A)
【文献】特開2015-020660(JP,A)
【文献】特開2012-210847(JP,A)
【文献】特開平06-316292(JP,A)
【文献】特開2011-068225(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0040265(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0091484(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0060571(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/30
B63H 25/36
F15B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される圧液の方向に応じた方向に舵板を動かす舵板駆動部と、
前記舵板駆動部に供給する圧液を吐出する液圧ポンプと、
前記液圧ポンプと前記舵板駆動部との間に配置され、入力される操舵信号に応じて前記液圧ポンプから前記舵板駆動部に供給される圧液の流れる方向を切換える方向切換弁と、
前記方向切換弁とは別に前記液圧ポンプと前記舵板駆動部との間に配置され、それらの間を閉じることによって前記液圧ポンプから前記舵板駆動部に供給される圧液の流れを止める遮断機構と
予め定められる遮断条件を充足する場合に前記遮断機構によって前記液圧ポンプから前記舵板駆動部に供給される圧液の流れを止めさせる制御装置と、を備える操舵制御システム。
【請求項2】
前記方向切換弁は、舵板を操作するための操舵部からの操舵指令に応じた操舵信号が入力されるようになっており、
前記遮断条件には、前記操舵指令に対して前記舵板の舵角を変えることができない状態又はそのおそれがある状態であることを含む、請求項1に記載の操舵制御システム。
【請求項3】
前記遮断機構は、圧液の流れを止める際に前記液圧ポンプをアンロード状態にする、請求項1又は2に記載の操舵制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記遮断条件を充足の有無に応じて前記遮断機構に切換信号を出力し、
前記遮断機構は、遮断切換弁と、遮断弁とを有し、
前記遮断切換弁は、前記切換信号の入力状態に応じたパイロット圧を前記遮断弁に出力し、
前記遮断弁は、入力されるパイロット圧に応じて前記液圧ポンプと前記舵板駆動部との間を開閉する、請求項3に記載の操舵制御システム。
【請求項5】
前記液圧ポンプは、油通路を介して前記方向切換弁に接続され、
前記制御装置は、前記遮断条件を充足の有無に応じて前記遮断機構に切換信号を出力し、
前記遮断機構は、遮断切換弁と、遮断弁とを有し、
前記遮断弁は、入力されるパイロット圧に応じて前記液圧ポンプと前記舵板駆動部との間を開閉し、
前記遮断切換弁は、前記切換信号の入力状態に応じたパイロット圧を前記遮断弁に出力し、前記油通路の圧液をパイロット圧として出力すべく前記油通路に接続され、
前記油通路には、前記遮断切換弁との接続箇所よりも下流側の部分を流れる圧液を昇圧すべく昇圧部が形成されている、請求項1乃至3の何れか1つに記載の操舵制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記遮断条件を充足の有無に応じて前記遮断機構に切換信号を出力し、
前記遮断機構は、電磁遮断弁を有し、
前記電磁遮断弁は、前記切換信号の入力状態に応じて前記液圧ポンプと前記舵板駆動部との間を開閉する、請求項1乃至3の何れか1つに記載の操舵制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舵板の舵角を変更する操舵制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶には、進行する方向を変えるべく操舵制御システムが備わっており、操舵制御システムの一例として例えば特許文献1のような舶用操舵装置が知られている。特許文献1の舶用操舵装置は、舵板駆動部と液圧ポンプとを備えており、液圧ポンプから舵板駆動部に圧液を供給することによって舵板駆動部が駆動するようになっている。また、舵板駆動部と液圧ポンプとの間には切換弁が介在している。切換弁は、舵板駆動部に流す圧液の方向を切換えることができ、これによって舵板の舵角を変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-136148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、舶用操舵装置の故障について何ら言及されていない。よって、例えば、切換弁が開いたままの状態でスティックした場合、舵板駆動部に意図しない作動液が流れ、舵板駆動部が不所望に動くことになる。また、液圧ポンプの駆動する電動機に繋がる配線が断線し、その状態で切換弁が作動した場合、舵板に外力がかかるとその力によって舵板駆動部が不所望に動くことになる。その他、舶用操舵装置における故障は多岐にわたり、その故障により舵板駆動部が不所望に動く可能性がある。それ故、故障時等において操舵制御システムにおける舵板駆動部が不所望な動きをしないようにすることが望まれている。
【0005】
そこで本発明は、舵板駆動部が不所望な動きをすることを防ぐことができる操舵制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、供給される圧液の方向に応じた方向に舵板を動かす舵板駆動部と、前記舵板駆動部に供給する圧液を吐出する液圧ポンプと、前記液圧ポンプと前記舵板駆動部との間に配置され、入力される操舵信号に応じて前記液圧ポンプから前記舵板駆動部に供給される圧液の流れる方向を切換える方向切換弁と、前記方向切換弁とは別に前記液圧ポンプと前記舵板駆動部との間に配置され、それらの間を閉じることによって前記液圧ポンプから前記舵板駆動部に供給される圧液の流れを止める遮断機構と、予め定められる遮断条件を充足する場合に前記遮断機構によって前記液圧ポンプから前記舵板駆動部に供給される圧液の流れを止めさせる制御装置と、を備えるものである。
【0007】
本発明に従えば、遮断条件を充足した際に液圧ポンプから舵板駆動部への作動液の供給を止めることができる。即ち、遮断条件を充足した際に、舵板の動きを止め且つその舵角を維持することができ、舵板駆動部が不所望な動きをすることを防ぐことができる。
【0008】
上記発明において、前記方向切換弁は、舵板を操作するための操舵部からの操作指令に応じた操舵信号が入力されるようになっており、前記遮断条件には、前記操舵指令に対して前記舵板を目標舵角に動かすことができない状態又はそのおそれがある状態であることを含んでもよい。
【0009】
上記構成に従えば、例えば操舵制御システムが故障する等して、操舵指令に対して舵板を目標舵角に動かすことができない状態又はそのおそれがある状態において、舵板の舵角を維持させることができる。これにより、操舵制御システムが故障する等した際に舵板に外力が作用しても、舵板が不所望な方向に向くことを防ぐことができる。
【0010】
上記発明において、前記遮断機構は、圧液の流れを止める際に前記液圧ポンプをアンロード状態にしてもよい。
【0011】
上記構成に従えば、遮断条件を充足すると、液圧ポンプはアンロード状態となり、液圧ポンプにかかる負荷を低減することができる。これにより、遮断時における操舵制御システムの消費エネルギーを低減することができ、また液圧ポンプの損傷を抑制することができる。
【0012】
上記発明において、前記制御装置は、前記遮断条件を充足の有無に応じて前記遮断機構に切換信号を出力し、前記遮断機構は、遮断切換弁と、遮断弁とを有し、前記遮断切換弁は、前記切換信号の入力状態に応じたパイロット圧を前記遮断弁に出力し、前記遮断弁は、入力されるパイロット圧に応じて前記液圧ポンプと前記舵板駆動部との間を開閉してもよい。
【0013】
上記構成に従えば、パイロット圧による駆動力によって遮断弁を作動させることができる。それ故、電磁式の遮断弁に比べて大きな流量の作動液を通過させることができるので、操舵制御システムを大型の舵板駆動部に適用することができる。
【0014】
上記発明において、前記液圧ポンプは、油通路を介して前記方向切換弁に接続され、前記制御装置は、前記遮断条件を充足の有無に応じて前記遮断機構に切換信号を出力し、前記遮断機構は、遮断切換弁と、遮断弁とを有し、前記遮断弁は、入力されるパイロット圧に応じて前記液圧ポンプと前記舵板駆動部との間を開閉し、前記遮断切換弁は、前記切換信号の入力状態に応じたパイロット圧を前記遮断弁に出力し、前記油通路の圧液をパイロット圧として出力すべく前記油通路に接続され、前記油通路には、前記遮断切換弁との接続箇所よりも下流側の部分を流れる圧液を昇圧すべく昇圧部が形成されていてもよい。
【0015】
上記構成に従えば、液圧ポンプから吐出される作動液によって遮断切換弁を作動させることができる。これにより、操舵制御システムにおける部品点数の増加を抑制することができる。
【0016】
上記発明において、前記制御装置は、前記遮断条件を充足の有無に応じて前記遮断機構に切換信号を出力し、前記遮断機構は、電磁遮断弁を有し、前記電磁遮断弁は、前記切換信号の入力状態に応じて前記液圧ポンプと前記舵板駆動部との間を開閉してもよい。
【0017】
上記構成に従えば、制御装置から遮断弁に直接切換信号を出力して動かすことができるので、遮断弁を動かすべくパイロット弁が不要である。それ故操舵制御システム1Bにおいて部品点数を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、舵板駆動部が不所望な動きをすることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の操舵制御システムの構成を示す油圧回路図である。
図2】操舵制御システムが実行する舵角停止処理の手順を示すフローチャートである。
図3】第2実施形態の操舵制御システムの構成を示す油圧回路図である。
図4】第3実施形態の操舵制御システムの構成を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る第1乃至第3実施形態の操舵制御システム1,1A,1Bについて図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する操舵制御システム1,1A,1Bは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0021】
<第1実施形態>
[操舵制御システム]
船舶では、操舵室にある操舵部5の舵輪の操作、及びオートパイロット機能等に基づいて入力される操舵信号に応じて船舶の進行方向を変えられるようになっており、船舶はその進行方向を変えるべく操舵制御システム1を備えている。操舵制御システム1は、圧液(例えば、油又は水等の液体)によって駆動するようになっており、舵板12と、舵板駆動部2と、電液駆動装置3と、制御装置4と、操舵部5、センサ群6とを備えている。
【0022】
[舵板]
舵板12は、船舶の進行方向を変えるための部材であり、船舶の船尾辺りに取付けられている。より詳細に説明すると、舵板12は、側面視で大略矩形の板状の部材であり、舵板12は舵軸11に固定されている。舵軸11は、その軸線が略垂直に延在し且つその軸線回りに回動可能な状態で船舶の船尾に取付けられており、舵板12は、上下方向に立ち且つ前後方向に延在するように舵軸11に固定されている。また、舵軸11には、舵柄13が取付けられている。舵柄13は、舵軸11からその軸線に直交する方向に延在しており、舵柄13には、舵軸11を回動させるべく舵板駆動部2が設けられている。
【0023】
[舵板駆動部]
舵板駆動部2は、例えばラムシリンダ機構であり、ラム14と、2つのシリンダ15,16を有している。ラム14は、ラム軸14aとラムピン14bとを有している。ラム軸14aは、その軸線方向に延在する長手状の部材であり、その軸線方向中央部分にラムピン14bが突設されている。ラムピン14bは、ラム軸14aと一体的に移動し、またラムピン14bには舵柄13が係合されている。それ故、ラム軸14aが移動すると、舵柄13が舵軸11を中心に揺動し、それに伴って舵板12がその軸線回りに回動する。このように構成されているラム軸14aには、それを軸線方向に移動させるべく2つのシリンダ15,16が取付けられている。
【0024】
2つのシリンダ15,16は、ラム軸14aの軸線方向一端部及び他端部に夫々設けられている。即ち、第1シリンダ15には、その内空間である第1シリンダ室15aにラム軸14aの軸線方向一端部が進退可能に挿入され、第2シリンダ16には、その内空間である第2シリンダ室16aにラム軸14aの軸線方向他端部が進退可能に挿入されている。また、2つのシリンダ15,16は、各シリンダ室15a,16aに圧液を供給可能に構成されており、ラム軸14aは、各シリンダ室15a,16aの液圧を各々端部で受けて移動するようになっている。即ち、第1シリンダ室15aに圧液が供給されると、ラム軸14aと共にラムピン14bが軸線方向一方に移動する。これにより、舵柄13が軸線回りの周方向一方に回動し、それに伴って舵板12もまた周方向一方に揺動する。また、第2シリンダ室16aに圧液が供給されると、ラム軸14aと共にラムピン14bが軸線方向他方に移動する。これにより、舵柄13が軸線回りの周方向他方に回動し、それに伴って舵板12もまた周方向他方に揺動する。このように、舵板駆動部2は、各シリンダ室15a,16aへの圧液の供給によって舵板12を動かすことができるようになっており、舵板駆動部2には、各シリンダ室15a,16aに圧液を供給すべく電液駆動装置3が接続されている。
【0025】
[電液駆動装置3]
電液駆動装置3は、舵板駆動部2に圧液を供給して舵板駆動部2を駆動させると共に、そこに入力される操舵信号に基づいて舵板駆動部2に流す圧液の方向を変えて舵板12の舵角を変えられるようになっている。更に詳細に説明すると、電液駆動装置3は、主に液圧ポンプ21と、電動機22と、方向切換弁23と、パイロット切換弁24と、絞り25と、リリーフ機構26と、遮断機構27と、を備えている。液圧ポンプ21は、例えば固定容量型の斜軸ポンプであり、舵板駆動部2に供給する作動液を吐出するようになっている。更に詳細に説明すると、液圧ポンプ21は、入力軸21aを有しており、入力軸21aが電動機22に連結されている。電動機22は、図示しない電源装置からの電力を受けて入力軸21aを回転駆動可能に構成されている。液圧ポンプ21は、入力軸21aが回転することによって吸入ポート21bから作動液を吸入し、更に加圧しながら作動液を吐出ポート21cから吐出する。このように構成される液圧ポンプ21は、吸入ポート21bに吸入側通路31aが接続され、且つ吐出ポート21cに吐出側通路31bが接続され、更にこれら2つの通路31a,31bを介して方向切換弁23に接続されている。
【0026】
方向切換弁23は、例えばパイロット式の切換弁であり、後で詳述するパイロット切換弁24から出力されるパイロット圧p1,p2に応じて作動液の流れを変える。更に詳細に説明すると、方向切換弁23は、4つのポートを有しており、4つのポートは、吸入側通路31a、吐出側通路31b、第1給排通路32a及び第2給排通路32bに夫々接続されている。第1給排通路32aは、方向切換弁23と第1シリンダ15とを接続し、第2給排通路32bは、方向切換弁23と第2シリンダ16とを接続している。また、方向切換弁23は、スプール23aを有しており、スプール23aの位置に応じて作動液の流れ方向を切換えるようになっている。
【0027】
更に詳細に説明すると、スプール23aは、中立位置M1、第1オフセット位置L1、及び第2オフセット位置R1に移動可能に構成されている。スプール23aが中立位置M1に位置する場合、スプール23aによって吸入側通路31aと吐出側通路31bとが接続され、液圧ポンプ21がアンロード状態になる。他方、第1給排通路32a及び第2給排通路32bの各々は遮断され、第1シリンダ15及び第2シリンダ16への作動液の給排が止められる。スプール23aが第1オフセット位置L1へと移動すると、スプール23aによって第1給排通路32aと吐出側通路31bとが接続され、且つ第2給排通路32bと吸入側通路31aとが接続される。これにより、作動液が第1シリンダ室15aに供給されると共に第2シリンダ室16aの作動液が排出され、ラム軸14aが軸線方向一方に移動する。即ち、舵板12が周方向一方に回動する。他方、スプール23aが第2オフセット位置R1へと移動すると、スプール23aによって第1給排通路32aと吸入側通路31aとが接続され、且つ第2給排通路32bと吐出側通路31bとが接続される。これにより、作動液が第2シリンダ室16aに供給されると共に第1シリンダ室15aの作動液が排出され、ラム軸14aが軸線方向他方に移動する。即ち、舵板12が周方向他方に回動する。
【0028】
このように、方向切換弁23は、スプール23aの位置によって作動液の流れを切換えることができ、作動液の流れを切換えることによって舵板12の向き(即ち、舵角)を変えたり舵板12の舵角を維持したりすることができる。また、スプール23aには、その位置を変えるべく2つのパイロット圧p1,p2が作用している。更に詳細に説明すると、スプール23aには、2つのパイロット圧p1,p2が互いに抗するように作用しており、それらの差圧(p1-p2)に応じて位置を変えるようになっている。このような2つのパイロット圧p1,p2をスプール23aに作用させるべく、方向切換弁23にはパイロット切換弁24が接続されている。
【0029】
パイロット切換弁24は、いわゆる電磁切換弁であって、そこに入力される操舵信号に応じてパイロット圧p1,p2を制御するようになっている。更に詳細に説明すると、パイロット切換弁24は、4つのポートを有しており、4つのポートは、自己圧供給通路33a、タンク通路33b、第1パイロット通路34a、及び第2パイロット通路34bに夫々繋がっている。自己圧供給通路33aは、吐出側通路31bに接続され、タンク通路33bは、タンク28に接続されている。他方、第1パイロット通路34aは、スプール23aに第1パイロット圧p1を与えるべく方向切換弁23に接続され、第2パイロット通路34bは、スプール23aに第2パイロット圧p2を与えるべく方向切換弁23に接続されている。また、パイロット切換弁24は、スプール24aを有しており、スプール24aは、パイロット切換弁24に入力される操舵信号に応じて位置を変える。また、スプール24aは、その位置を変えることによって作動液の流れ方向を切換えるようになっている。
【0030】
更に詳細に説明すると、パイロット切換弁24では、スプール24aが中立位置M2、第1オフセット位置L2、及び第2オフセット位置R2に移動可能に構成されている。スプール24aが第1オフセット位置L2に位置する場合、スプール24aによってタンク通路33bと第2パイロット通路34bとが繋がり、また自己圧供給通路33aと第1パイロット通路34aとが繋がる。これにより、第2パイロット通路34bのパイロット液がタンク28に排出され、第2パイロット圧p2がタンク圧となる。他方、第1パイロット通路34aには、自己圧供給通路33aを介して吐出側通路31bの液圧が導かれる。吐出側通路31bには、自己圧供給通路33aとの接続箇所よりも下流側において絞り25(昇圧部)が設けられているので、吐出側通路31bの液圧は、絞り25によって吸入側通路31aより高く維持されている。それ故、第2パイロット圧p2より高い第1パイロット圧p1がパイロット切換弁24から出力され、方向切換弁23のスプール23aが第1オフセット位置L1へと移動する。これにより、舵板12が周方向一方に移動する。
【0031】
他方、スプール24aが第2オフセット位置R2に位置する場合、タンク通路33bと第1パイロット通路34aとが繋がり、自己圧供給通路33aと第2パイロット通路34bとが繋がる。これにより、第1パイロット通路34aのパイロット液がタンク28に排出され、第1パイロット圧p1がタンク圧となる。他方、第2パイロット通路34bには、自己圧供給通路33aを介して吐出側通路31bの液圧が導かれる。これにより、第1パイロット圧p1より高い第2パイロット圧p2がパイロット切換弁24から出力され、方向切換弁23のスプール23aが第2オフセット位置R1へと移動する。これにより、舵板12が周方向一方に移動する。
【0032】
最後に、スプール24aが中立位置M2に位置する場合には、自己圧供給通路33aが遮断され、第1パイロット通路34a及び第2パイロット通路34bが共にタンク通路33bに接続される。これにより、第1パイロット圧p1及び第2パイロット圧p2がタンク圧となり、方向切換弁23のスプール23aが中立位置に戻される。これにより、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間の作動液の行き来が止められ、舵板12が動かなくなる。即ち、舵板12の舵角を維持することができる。
【0033】
このようにパイロット切換弁24は、そこに入力される操舵信号に応じて2つのパイロット圧p1、p2を制御し、方向切換弁23のスプール23aを移動させることができる。スプール23aを移動させることによって、その位置に応じた方向へと作動液の給排を行うことができる。これにより、舵板12を操舵信号に応じた方向に揺動させることができる。また、電液駆動装置3には、電液駆動装置3の作動液をリリーフするためのリリーフ機構26、及び前記作動液のコンタミ等を捕捉すべくフィルター機構30を備えている。
【0034】
リリーフ機構26は、第1給排通路32a及び第2給排通路32bの液圧をリリーフ圧以下に抑えるべく、各々の液圧が予め定められたリリーフ圧を超えると作動液をタンク28に排出するようになっている。更に詳細に説明すると、リリーフ機構26は、第1リリーフ弁26a及び第2リリーフ弁26bを有しており、第1リリーフ弁26aが第1給排通路32aに接続され、第2リリーフ弁26bが第2給排通路32bに接続されている。また、第1リリーフ弁26aは、第1給排通路32aの液圧が予め定められた第1リリーフ圧を超えると、第1給排通路32aを流れる作動液をタンク28に排出する。他方、第2リリーフ弁26bは、第2給排通路32bの液圧が予め定められた第2リリーフ圧を超えると、第2給排通路32bを流れる作動液をタンク28に排出する。これにより、電液駆動装置3内を流れる作動液が過度に加圧され、各構成が損傷を受けることを抑制することができる。また、第1給排通路32aには、第1逆止弁29aが接続され、第2給排通路32bには、第2逆止弁29bが接続されている。各逆止弁29a、29bは、共にタンク28に接続されており、各々が接続される通路32a,32bの作動液が不足した際にタンク28から前記通路32a,32bに作動液を導くことができる、キャビティ防止機能を有している。
【0035】
また、電液駆動装置3に備わるフィルター機構30は、前述の通り、作動液に含まれるコンタミ等を捕捉するためのものである。このような機能を有するフィルター機構30は、吸入側通路31a及び吐出側通路31bの何れか一方から一定量の作動液をフィルター30aを介してタンク28に戻すようになっている。更に詳細に説明すると、フィルター機構30は、フィルター30a、シャトル弁30b及びブリードオフ弁30cを有しており、吸入側通路31a及び吐出側通路31bのうち圧力の高い方を選択するようになっている。また、シャトル弁30bは、ブリードオフ弁30cに接続されており、選択された通路をブリードオフ弁30cと繋ぐようになっている。ブリードオフ弁30cは、シャトル弁30bによって選択された通路から予め設定される一定流量の作動液をフィルター30aを介してタンク28に流すようになっている。このように構成されるフィルター機構30は、作動中において吸入側通路31a及び吐出側通路31bを流れる作動液に関して一定流量をフィルター30aに常時導くことができ、作動液を含まれるコンタミ等をフィルター30aによって捕捉することができる。
【0036】
このように構成されている電液駆動装置3では、操舵制御システム1において故障等が生じた場合、舵板12の動きを止めると共に舵板12の舵角を維持するようになっており、このような機能を達成すべく電液駆動装置3は遮断機構27を備えている。遮断機構27は、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間、本実施形態において方向切換弁23と舵板駆動部2との間に介在している。即ち、遮断機構27は、第1給排通路32a及び第2給排通路32bの途中に介在している。また、遮断機構27は、そこに入力される切換信号が入力されるようになっており、この切換信号に応じて第1給排通路32a及び第2給排通路32bを開閉する。即ち、遮断機構27は、そこに入力される切換信号に応じて液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間の作動液の行き来を止めることができるようになっている。このような機能を有する遮断機構27は、アンロード遮断弁41と、遮断切換弁42とを有している。
【0037】
アンロード遮断弁41は、第1給排通路32a及び第2給排通路32bに介在し、第1給排通路32a及び第2給排通路32bにおいてリリーフ機構26及び2つの逆止弁29a,29bより方向切換弁23側に配置されている。また、アンロード遮断弁41は、そこに入力されるパイロット圧p3,p4の差圧(p4-p3)に応じて第1給排通路32a及び第2給排通路32bの各々を開閉する。即ち、差圧(p4-p3)が所定圧力(ばね41aの付勢力に応じて決まる圧力)以下である場合、アンロード遮断弁41は閉状態になり、アンロード遮断弁41によって第1給排通路32a及び第2給排通路32bの各々が閉じられる。これにより、方向切換弁23のスプール23aの位置に関わらず液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間における作動液に行き来が止められる。また、閉状態では、第1給排通路32a及び第2給排通路32b同士がアンロード遮断弁41によって互い接続されて、液圧ポンプ21がアンロード状態となる。他方、差圧(p4-p3)が所定圧力を超えている場合、アンロード遮断弁41は開状態となり、第1給排通路32a及び第2給排通路32bの各々がアンロード遮断弁41によって開かれる。これにより、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間で作動液の行き来が可能になる。このようにアンロード遮断弁41は、2つのパイロット圧p3,p4に応じて開閉状態を切換えるようになっている。このように構成されるアンロード遮断弁41には、そこにパイロット圧p3,p4を与えるべく遮断切換弁42が接続されている。
【0038】
遮断切換弁42は、いわゆる電磁切換弁であって、そこに入力される切換信号に応じてパイロット圧p3,p4を制御するようになっている。更に詳細に説明すると、遮断切換弁42は、4つのポートを有しており、4つのポートは、自己圧供給通路33a、タンク通路33b、第3パイロット通路34c、及び第4パイロット通路34dに夫々繋がっている。第3パイロット通路34c及び第4パイロット通路34dは、パイロット圧p3,p4を与えるべくアンロード遮断弁41に接続されている。遮断切換弁42は、これら2つのパイロット通路34c,34dの各々の接続先を自己圧供給通路33a及びタンク通路33bの何れかに切換え、パイロット圧p3,p4を切換えるようになっている。なお、遮断切換弁42は、切換信号に応じてだけでなく手動でも接続先を切換可能に構成されている。
【0039】
遮断切換弁42について更に詳細に説明すると、遮断切換弁42は、切換信号が入力されると、第3パイロット通路34cをタンク通路33bに接続する。これにより、第3パイロット圧p3がタンク圧になる。他方、第4パイロット通路34dは自己圧供給通路33aに接続され、第4パイロット通路34dに吐出側通路31bの液圧に応じたパイロット液が導かれる。そうすると、第4パイロット圧p4が吐出側通路31bの液圧に応じた圧力となり、差分(p4-p3)が所定圧力を超え、アンロード遮断弁41が開状態となる。これにより、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間の作動液の行き来が可能になる。他方、切換信号が入力されなくなると、遮断切換弁42は、第4パイロット通路34dをタンク通路33bに接続する。これにより、第4パイロット圧p4がタンク圧になる。他方、第3パイロット通路34cは自己圧供給通路33aに接続され、第3パイロット通路34cに吐出側通路31bの液圧に応じたパイロット液が導かれる。そうすると、第3パイロット圧p3が吐出側通路31bの液圧に応じた圧力となり、差分(p4-p3)が所定圧以下となり、アンロード遮断弁41が閉状態となる。これにより、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間で作動液の行き来ができなくなり、舵板12をその舵角にて維持される。
【0040】
このように、遮断機構27は、切換信号の入力状態(即ち、切換信号の入力の有無)に応じて2つの給排通路32a,32bを開閉し、液圧ポンプ21から舵板駆動部2に圧液を流したり止めたりすることができる。また、遮断機構27は、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間を遮断した際に液圧ポンプ21をアンロード状態にしており、その際に液圧ポンプ21にかかる負荷を低減することができる。これにより、遮断時における操舵制御システムの消費エネルギーを低減することができる。
【0041】
また、アンロード遮断弁41は、閉状態においてそれより液圧ポンプ21側に形成される回路3aにて故障等が生じ、吐出された作動液を吸入ポート21bに戻すことができない場合に備えて、以下のような機能を有している。即ち、アンロード遮断弁41は、2つのチェック弁41b,41cを有しており、2つのチェック弁41b,41cは、アンロード遮断弁41の前後において液圧ポンプ21側の圧力が舵板駆動部2側の圧力より高くなった場合において、液圧ポンプ21から舵板駆動部2への作動液の流れを許容するようになっている。更に詳細に説明すると、2つのチェック弁41b,41cは、2つの給排通路32a,32bを閉じるべくその途中に介在し、また2つの給排通路32a,32bの互いに連通する部分より舵板駆動部2側に配置されている。それ故、アンロード遮断弁41の前後において液圧ポンプ21側が舵板駆動部2側より低圧となるアンロード状態では、2つのチェック弁41b,41cは閉じたままとなり、液圧ポンプ21から舵板駆動部2への作動液の流れが止められる。他方、故障等によって前記回路3a内の液圧が上昇し、アンロード遮断弁41の前後において液圧ポンプ21側が舵板駆動部2側より高圧となる場合、チェック弁41b,41cが開き回路3a内の作動液がリリーフ機構26を介してタンク28へと排出される。このように、アンロード遮断弁41の前後において液圧ポンプ21側が舵板駆動部2側より高圧になっている際には、液圧ポンプ21側の作動液を排出して回路3a内が過度に昇圧されることを防ぐことができ、回路3a内が昇圧しすぎて損傷することを抑制している。このように構成されている遮断機構27には、そこに切換信号を与えるべく制御装置4が電気的に接続されている。
【0042】
[制御装置等]
制御装置4は、遮断機構27に切換信号を出力して遮断機構27の動きを制御する。また、制御装置4は、遮断機構27の他に、パイロット切換弁24にも操舵信号を出力してパイロット切換弁24の動作を制御可能に構成されている。更に詳細に説明すると、制御装置4は、操舵部5と繋がっており、操舵部5は、図示しない舵輪を有している。舵輪は、操舵手等が操作可能に構成されており、操舵部5は、舵輪の操作(即ち、操作方向及び操作量)に応じた操舵指令を制御装置4に出力する。そして制御装置4は、操舵部5からの操舵指令に基づいて舵板12の舵角を算出し、更に算出される舵角に応じた操舵信号をパイロット切換弁24に出力する。また、制御装置4は、オートパイロット機能を有しており、その機能に基づいて算出される操舵信号もパイロット切換弁24に出力するようになっている。
【0043】
また、制御装置4は、操舵制御システムにおける故障の発生を検知し、それを検知した際に遮断機構27を作動させて舵板12の舵角を維持する機能を有している。更に詳細にすると、制御装置4は、異常の発生を検知すべく複数のセンサによって構成されているセンサ群6と接続されている。センサ群6には、例えば方向切換弁作動検知センサ、舵角検出センサ、断線検知センサ、及びタンク油面センサが含まれている。方向切換弁作動検知センサは、方向切換弁23のスプール23aの位置を検出することによって方向切換弁23の作動の有無を検知し、舵角検出センサは、舵柄13の軸線回りの回動角を検出することによって舵板12の舵角を検出する。また断線検知センサは、制御装置4と各機器とを繋ぐ配線に信号等を流してそれらの断線を検知する。なお、前述する種々のセンサは、あくまでセンサ群6に含まれるセンサの一例であり、これら以外のセンサが含まれていてもよく、また前述するセンサの何れかが含まれていなくてもよい。
【0044】
このように構成されるセンサ群6からは各々のセンサで検知される結果が制御装置4に出力され、制御装置4は、その検知結果に基づいて遮断条件を充足するか否かを判断する。遮断条件は、操舵制御システム1が故障状態、即ち操舵指令に応じて舵角を動かすことができない状態(制御不能状態及び断線状態等)、及びそれになるおそれがある状態(油漏れ等)等になることである。例えば、操舵信号が出力されたことに対して方向切換弁作動検知センサが方向切換弁23の作動を検知できなかったり、操作信号が出力されたにもかかわらず舵角検出センサで検出される舵角に変化が無かったりする場合において、制御装置4は、操舵指令に応じた舵角に動かすことができない状態にあると判断する。また、タンク液面センサによって検知される液面が低い場合には、液漏れ等が発生して舵角に動かすことができない状態になるおそれがあると制御装置4は判断する。制御装置4は、このようにして故障の有無の判断、即ち遮断条件の充足の有無を判断し、充足していると判断される場合には遮断機構27を作動させて液圧ポンプ21から舵板駆動部2への作動液の流れを止める。これにより、舵板12を動かないようにすることができ、また舵板12の舵角を維持することができる。
【0045】
このように操舵制御システム1では、操舵部5から制御装置4に入力される操舵指令に応じて制御装置4が舵板12の舵角を調整すると共に、操舵制御システム1が故障した場合、その故障を検知して舵板12が動かないようにすることができる。このような機能を有する操舵制御システム1は、故障を検知して舵板12を動かないようにするべく舵角停止処理を実行している。以下では、舵角停止処理について図2を参照しながら説明する。
【0046】
[舵角停止処理について]
操舵制御システム1では、図示しない電源装置から制御装置4への電源供給が行われると舵角停止処理が実行され、ステップS1に移行する。遮断条件充足判断工程であるステップS1では、制御装置4がセンサ群6からの検知結果に基づいて遮断条件を充足しているか否かを判断する。遮断条件を充足していない、即ち操舵制御システム1が故障していない場合、ステップS2に移行する。
【0047】
待機状態切換工程であるステップS2では、制御装置4が遮断機構27に切換信号を出力する。これにより、2つの供給通路32a,32bが開き、操舵制御システム1が舵板駆動部2を駆動可能な状態に切替えられる。なお、この状態において操舵部5から制御装置4に操舵指令を出力されると、制御装置4は、電動機22を駆動させて液圧ポンプ21を駆動させると共に、操舵部5からの操舵指令に応じた操舵信号をパイロット切換弁24に出力する。その後、舵板12の舵角が操舵指令に応じた角度まで達すると、制御装置4はパイロット切換弁24に出力される操舵信号を止め、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間を停止させる。これにより、舵板12の舵角を舵指令に応じた角度にし、且つその舵角にて維持することができる。また、舵板駆動部2を駆動可能な状態にした後、予め定められた時間が経過するとステップS1に戻り、再度、遮断条件の充足の有無を判断される。そして、遮断条件を充足していると判断されると、ステップS3に移行する。
【0048】
遮断状態切換工程であるステップS3では、制御装置4が遮断機構27への切換信号の入力を止める。これにより、2つの供給通路32a,32bが閉じられ、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間における作動液の行き来(即ち、液圧ポンプ21から舵板駆動部2への作動液の供給)を停止することができる。それ故、舵板12が動けなくなり、舵板12がその舵角にて維持されることになる。これにより、方向切換弁23が開いたままの状態でスティックした場合(即ち、スプール23aが動かなくなった場合)であっても、舵板駆動部に意図しない作動液が流れて舵板駆動部が不所望に動くことを防ぐことができる。また、電動機22に繋がる配線が断線しその状態で方向切換弁が作動された場合であっても、外力が作用して舵板12が不所望な方向を向くことを防ぐことができる。このように舵板12の動きを止めて舵板12の舵角を維持させることによって、舵板駆動部2が不所望な動きをすることを防ぐことができる。
【0049】
このように構成されている操舵制御システム1では、アンロード遮断弁41と遮断切換弁42とによって遮断機構27がパイロット式の遮断弁として構成されている。即ち、遮断切換弁42からのパイロット圧によってアンロード遮断弁41を作動させることができるので、電磁式の遮断弁に比べて大きな流量の作動液をアンロード遮断弁41に通すことができる。それ故、舵板駆動部2を駆動させるべく大きな流量が必要な大型の舵板駆動部に操舵制御システム1を適用することができる。
【0050】
<第2実施形態>
第2実施形態の操舵制御システム1Aは、第1実施形態の操舵制御システム1と構成が類似している。従って、第2実施形態の操舵制御システム1Aの構成については、第1実施形態の操舵制御システム1と異なる点について主に説明し、同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。なお、第3実施形態の操舵制御システム1Bについても同様である。
【0051】
操舵制御システム1Aは、図3に示すように、舵板駆動部2と、電液駆動装置3Aと、制御装置4と、操舵部5、センサ群6とを備えている。また、電液駆動装置3Aは、主に液圧ポンプ21と、電動機22と、方向切換弁23と、パイロット切換弁24と、絞り25と、リリーフ機構26Aと、遮断機構27Aと、を備えている。遮断機構27Aの遮断切換弁42Aは、切換信号が入力されていない状態において2つのパイロット通路34c,34dをタンク28に接続する。これによって、アンロード遮断弁41Aにおける差圧(p3-p4)が設定圧以下となる。そうすると、2つの給排通路32a,32bは、アンロード遮断弁41Aによって閉じられ且つ互いが接続され、液圧ポンプ21がアンロード状態になる。他方、アンロード遮断弁41Aは、第1実施形態のアンロード遮断弁41と異なり、2つのチェック弁41b,41cを有していない。他方、第2実施形態の電液駆動装置3では、リリーフ機構26Aが吐出側通路31aの作動液を直接リリーフできるようになっている。
【0052】
即ち、リリーフ機構26Aは、リリーフ弁26cと、2つの逆止弁26d,26eとを有しており、リリーフ弁26cは、その入口圧がリリーフ圧を超えると開いて作動液を排出するようになっている。リリーフ弁26cには、リリーフ通路35を介して吐出側通路31bが接続され、リリーフ通路35には、逆止弁26d,26eを夫々介して第1給排通路32a及び第2給排通路32bが接続されている。また、リリーフ通路35には、2つの給排通路32a,32bが接続されている箇所より吐出側通路31b側に29cが介在している。このように構成されているリリーフ機構26は、これら3つの逆止弁26d,26e,29cによって、吐出側通路31a、第1給排通路32a及び第2給排通路32bのうち最も液圧が高い通路の作動液がリリーフ弁26cに導かれる。そして、この作動液の液圧がリリーフ圧を超えると、リリーフ弁26cからタンク28へと作動液が排出される。
【0053】
このように操舵制御システム1Aでは、遮断機構27Aのアンロード遮断弁41Aが2つのチェック弁41b,41cを有しなくとも、電液駆動装置3内の液圧が過度に上昇することを抑えることができる。また、アンロード遮断弁41Aが2つのチェック弁41b,41cを有しないので、アンロード遮断弁41Aを簡単な構成とすることができる。
【0054】
その他、第2実施形態の操舵制御システム1Aは、第1実施形態の操舵制御システム1と同様の作用効果を奏する。
【0055】
<第3実施形態>
第3実施形態の操舵制御システム1Bは、図4に示すように舵板駆動部2と、電液駆動装置3Bと、制御装置4と、操舵部5、センサ群6とを備えている。また、電液駆動装置3Bは、主に液圧ポンプ21と、電動機22と、方向切換弁23と、パイロット切換弁24と、絞り25と、リリーフ機構26Aと、遮断機構27Bと、を備えている。遮断機構27Bは、アンロード遮断弁41Bを有している。アンロード遮断弁41Bは、いわゆる電磁遮断弁であり、そこに入力される切換信号に応じて(即ち、切換信号の入力状態に応じて)2つの給排通路32a,32bを閉じ且つそれら同士を接続して液圧ポンプ21をアンロード状態にするようになっている。即ち、アンロード遮断弁41Bは、切換信号に応じて作動する電磁駆動式である点を除いて第1実施形態のアンロード遮断弁41と同様の機能を有している。
【0056】
このように構成される操舵制御システム1Bは、制御装置4からアンロード遮断弁41Bに直接切換信号を出力して動かすことができるので、遮断切換弁42が不要である。即ち、操舵制御システム1Bにおいて部品点数を低減することができる。
【0057】
その他、第3実施形態の操舵制御システム1Bは、第1実施形態の操舵制御システム1と同様の作用効果を奏する。
【0058】
<その他の実施形態>
第1乃至第3実施形態の操舵制御システム1,1A,1Bでは、電液駆動装置3が舵板駆動部2と液圧ポンプ21との間でクローズ回路を形成しているが、必ずしもこのような回路に限定されない。例えば、液圧ポンプ21の吸入ポート21b及び吸入側通路32bがタンク28に夫々接続されるようなオープン回路であってもよい。また、第1乃至第3実施形態の操舵制御システム1,1A,1Bでは、液圧ポンプ21として斜軸ポンプが採用されているが、斜板ポンプであってもよい。また、液圧ポンプ21として固定容量型の液圧ポンプが示されているが、固定容量型に限定されず可変容量型であってもよい。更に、第1乃至第3実施形態の操舵制御システム1,1A,1Bでは、舵板駆動部2に対して1つの電液駆動装置3しか接続されていないが、舵板駆動部2に対して2つ以上の電液駆動装置3が接続されていてもよい。この場合、制御装置4は、各電液駆動装置3に対して別々に遮断条件を充足しているか否かを判断し、遮断条件を充足している場合、充足している電液駆動装置3に関して遮断機構27によって液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間を遮断する。なお、制御装置4は、各電液駆動装置3に対して1つずつ対応させて設けられていてもよく、また複数の電液駆動装置3に対して1つだけしか設けられていなくてもよい。
【0059】
また、第1乃至第3実施形態の操舵制御システム1,1A,1Bでは、1つの制御装置4が操舵信号及び切換信号の両方を出力するように構成されているが、必ずしもこのような構成である必要はない。例えば、第1乃至第3実施形態の操舵制御システム1,1A,1Bは、操舵用制御装置及び遮断用制御装置を備えていてもよい。操舵用制御装置は、操舵部からの操舵指令に応じた操舵信号を出力する。遮断用制御装置は、遮断条件を充足しているか否かを判定し、充足している場合に遮断信号を出力する。なお、操舵用制御装置及び遮断用制御装置は、別々の個所に配置されたり別々に製造されたりしてもよく、上述する制御装置4のように1つの制御ユニットとして配置されてもよい。
【0060】
更に、第1乃至第3実施形態の操舵制御システム1,1A,1Bでは、遮断機構27,27A,27Bが方向切換弁23と舵板駆動部2との間、即ち2つの給排通路32a、32bに介在させて設けられているが、必ずしもこの位置に限定されない。例えば、遮断機構27,27A,27Bは、液圧ポンプ21と方向切換弁23との間、即ち吐出側通路31b及び吸入側通路31aに介在するように配置されてもよい。即ち、遮断機構27,27A,27Bは、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間に介在するように配置されればよい。また、遮断機構27,27A,27Bのアンロード遮断弁41,41A,41Bは、閉状態において必ずしも2つの供給通路32a,32b同士を接続する必要はない、即ち液圧ポンプ21をアンロード状態にするような構成がなくてもよい。
【0061】
また、第1乃至第3実施形態の操舵制御システム1,1A,1Bでは、制御装置4から遮断機構27,27A,27Bに切換信号が入力されると、2つの給排通路32a、32bが開くように構成されているが、必ずしもこのような態様である必要なない。即ち、制御装置4から遮断機構27,27A,27Bに切換信号が入力されると2つの給排通路32a,32bが閉じられ、切換信号を止めると2つの給排通路32a,32bが開くような態様であってもよい。即ち、遮断機構27,27A,27Bは、切換信号の入力状態に応じて2つの給排通路32a,32bを開閉するような構成であればよい。また、制御装置4は、操舵制御システム1,1A,1Bの故障及び故障のおそれを検知すると遮断条件を充足すると判断しているが、遮断条件は、必ずしも操舵制御システム1,1A,1Bの故障及び故障のおそれを検知することに限定されない。即ち、制御装置4は、舵板12を動かさずにその舵角を維持したい状態、例えば電動機22を停止したことを検知すると、遮断条件を充足すると判断して液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間を遮断する。
【0062】
更に、第1乃至第3実施形態の操舵制御システム1,1A,1Bでは、舵板駆動部2としてラムシリンダタイプのものが採用されているが、必ずしもこのような機構に限定されない。即ち、舵板駆動部2は、ロータリベーンタイプのものであってもよく、またトランクピストンタイプのものであってもよい。また、前述する電液駆動装置3、3Aもまた一例に過ぎず、舵板駆動部2に圧液を供給し且つその流れ方向を切換えることができるものであればよい。また、第1乃至第3実施形態の操舵制御システム1,1A,1Bでは、昇圧部の一例として絞り25が採用されているが、必ずしも絞りに限定されず、ロジック弁であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,1A,1B 操舵制御システム
2 舵板駆動部
3,3A,3B 電液駆動装置
4 制御装置
5 操舵部
6 センサ群
21 液圧ポンプ
23 方向切換弁
25 絞り(昇圧部)
27,27A,27B 遮断機構
41,41A,41B アンロード遮断弁(遮断弁)
42,42A 遮断切換弁
図1
図2
図3
図4