(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】操舵制御システム、及び操舵装置の停止方法
(51)【国際特許分類】
B63H 25/30 20060101AFI20220113BHJP
F15B 20/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B63H25/30 F
B63H25/30 D
F15B20/00 B
(21)【出願番号】P 2017128854
(22)【出願日】2017-06-30
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 周丙
(72)【発明者】
【氏名】下舞 高志
(72)【発明者】
【氏名】田中 辰喜
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-113197(JP,A)
【文献】特開2015-020660(JP,A)
【文献】特開2012-210847(JP,A)
【文献】特開平06-316292(JP,A)
【文献】特開2013-112090(JP,A)
【文献】特開2012-136148(JP,A)
【文献】特開2011-068225(JP,A)
【文献】特開2004-150516(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0040265(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0060571(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0091484(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/30
F15B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される液圧の流れ方向に応じた方向に舵板を動かす舵板駆動部と、入力される操舵信号に応じた流れ方向の圧液を前記舵板駆動部に供給する圧液供給機と、前記圧液供給機から前記舵板駆動部への圧液の供給及びその停止を切換える遮断機構と、を有する操舵装置と、
前記操舵装置における互いに異なる部位の状態を検出する複数の検出器と、
前記複数の検出器にて検出される検出結果に応じて前記操舵装置の状態を判定し、判定結果に基づいて前記遮断機構によって圧液の供給を停止する判定遮断装置と、を備える操舵制御システム。
【請求項2】
前記複数の検出器は、操舵検出器と、舵板作動検出器とを少なくとも有し、
前記操舵検出器は、操舵部に対する操作の有無を検出し、
前記舵板作動検出器は、前記舵板駆動部の作動の有無を検出し、
前記判定遮断装置は、前記操舵検出器及び前記舵板作動検出器の検出結果に応じて前記操舵装置における作動状態を判定する、請求項1に記載の操舵制御システム。
【請求項3】
前記圧液供給機は、前記圧液を排出すべくタンクを有しており、
前記複数の検出器は、圧力検出器と、液面検出器とを少なくとも有し、
前記圧力検出器は、前記舵板駆動部に供給される圧液の圧力を検出し、
前記液面検出器は、前記タンクの液面の位置を検出し、
前記判定遮断装置は、前記圧力検出器及び前記液面検出器の検出結果に応じて前記操舵装置における液漏れ状態を判定する、請求項1又は2に記載の操舵制御システム。
【請求項4】
前記操舵装置は、前記圧液供給機と異なり且つ入力される前記操舵信号に応じた流れ方向の圧液を前記舵板駆動部に供給可能である予備圧液供給機を更に備え、前記舵板駆動部に圧液を供給する圧液供給源を前記圧液供給機から予備圧液供給機に切換え可能に構成され、
前記判定遮断装置は、判定結果に基づいて前記遮断機構によって圧液の供給を停止すると共に、前記圧液供給源を前記圧液供給機から前記予備圧液供給機に切換える、請求項1乃至3の何れか1つに記載の操舵制御システム。
【請求項5】
前記遮断機構の作動の有無の指示をする指示部を更に備え、
前記判定遮断装置は、前記判定結果と前記指示部に対する指示に基づいて前記遮断機構によって圧液の供給を停止する、請求項1乃至4の何れか1つに記載の操舵制御システム。
【請求項6】
前記判定遮断装置は、前記判定結果に基づいて前記遮断機構によって圧液の供給を停止する場合、判定してから予め定められた時間が経過した後に前記遮断機構によって圧液の供給を停止する、請求項1乃至5の何れか1つに記載の操舵制御システム。
【請求項7】
供給される液圧の流れ方向に応じた方向に舵板を動かす舵板駆動部と、入力される操舵信号に応じた流れ方向の圧液を前記舵板駆動部に供給する圧液供給機と、前記圧液供給機から前記舵板駆動部への圧液の供給及びその停止を切換える遮断機構と、を備える操舵装置の停止方法であって、
複数の検出器によって前記操舵装置における互いに異なる部位の状態を検出する検出工程と、
前記検出工程における検出結果に応じて前記操舵装置の状態を判定する状態判定工程と、
前記状態判定工程における判定結果に基づいて前記遮断機構によって圧液の供給を停止する停止工程とを備える、前記操舵装置の停止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舵板の舵角を変更する操舵制御システム、及び操舵装置の停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶には、進行する方向を変えるべく操舵制御システムが備わっており、操舵制御システムの一例として例えば特許文献1のような舶用操舵装置が知られている。特許文献1の舶用操舵装置は、舵板駆動部と液圧ポンプとを備えており、液圧ポンプから舵板駆動部に圧液を供給することによって舵板駆動部が駆動するようになっている。また、舵板駆動部と液圧ポンプとの間には切換弁が介在している。切換弁は、舵板駆動部に流す圧液の方向を切換えることができ、舶用操舵装置は切換えることによって舵板の舵角が変わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、舶用操舵装置の故障について何ら言及されていない。よって、例えば、切換弁が開いたままの状態でスティックした場合、舵板駆動部に意図しない作動液が流れ、舵板駆動部が不所望に動くことになる。また、液圧ポンプの駆動する電動機に繋がる配線が断線し、その状態で切換弁が作動した場合、舵板に外力がかかるとその力によって不所望に動くことになる。その他、舶用操舵装置における故障は多岐にわたり、その故障により舵板駆動部が不所望に動く可能性がある。それ故、舶用制御装置、即ち操舵制御システムにおける故障の発生を検出し、故障発生時において操舵制御システムにおける舵板駆動部が不所望な動きをしないようにすることが望まれている。
【0005】
そこで本発明は、故障発生時に舵板駆動部が不所望な動きをしないようにすることができる操舵制御システム、及びその停止方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の操舵制御システムは、供給される液圧の流れ方向に応じた方向に舵板を動かす舵板駆動部と、入力される操舵信号に応じた流れ方向の圧液を前記舵板駆動部に供給する圧液供給機と、前記圧液供給機から前記舵板駆動部への圧液の供給及びその停止を切換える遮断機構と、を有する操舵装置と、前記操舵装置における互いに異なる部位の状態を検出する複数の検出器と、前記複数の検出器にて検出される検出結果に応じて前記操舵装置の状態を判定し、判定結果に基づいて前記遮断機構によって圧液の供給を停止する、判定遮断装置と、を備えるものである。
【0007】
本発明に従えば、操舵装置における種々の部位の状態を検出し、検出される状態に基づいて操舵装置全体の状態を判定する。更に、判定結果に基づいて舵板駆動部への圧液の給排を停止することができる。即ち、判定される操舵装置の状態に応じて舵板駆動部の動きを止め、且つ舵板の舵角をそのままの状態に維持することができる。これにより、例えば操舵装置が故障した又は操舵装置において故障の恐れがある、即ち故障等が発生した場合において、舵板に外力が作用して舵板が不所望な方向を向いたり、舵板駆動部が制御不能な状態で舵板が動かされたりすることを防ぐことができる。つまり、故障等が発生した時に舵板駆動部が不所望な動きをしないようにすることができる。
【0008】
上記発明において、前記複数の検出器は、操舵検出器と、舵板作動検出器とを少なくとも有し、前記操舵検出器は、操舵部に対する操作の有無を検出し、前記舵板作動検出器は、前記舵板駆動部の作動の有無を検出し、前記判定遮断装置は、前記操舵検出器及び前記舵板作動検出器の検出結果に応じて前記操舵装置における作動状態を判定してもよい。
【0009】
上記構成に従えば、圧液供給機が操舵信号に対して無反応な状態であることを判定することができ、その状態において舵板駆動部の動きを止め且つ舵板の舵角をそのままの状態に維持することができる。
【0010】
上記発明において、前記圧液供給機は、前記圧液を排出すべくタンクを有しており、前記複数の検出器は、圧力検出器と、液面検出器とを少なくとも有し、前記圧力検出器は、前記舵板駆動部に供給される圧液の圧力を検出し、前記液面検出器は、前記タンクの液面の位置を検出し、前記判定遮断装置は、前記圧力検出器及び前記液面検出器の検出結果に応じて前記操舵装置における液漏れ状態を判定してもよい。
【0011】
上記構成に従えば、圧液の圧力とタンクの液面を検出することによって操舵装置において液漏れ状態を判定することができ、その状態において舵板駆動部の動きを止め且つ舵板の舵角をそのままの状態に維持することができる。
【0012】
上記発明において、前記操舵装置は、前記圧液供給機と異なり且つ入力される前記操舵信号に応じた流れ方向の圧液を前記舵板駆動部に供給可能である予備圧液供給機を更に備え、前記舵板駆動部に圧液を供給する圧液供給源を前記圧液供給機から予備圧液供給機に切換え可能に構成され、前記判定遮断装置は、判定結果に基づいて前記遮断機構によって圧液の供給を停止すると共に、前記圧液供給源を前記圧液供給機から前記予備圧液供給機に切換えてもよい。
【0013】
上記構成に従えば、故障等が発生した際に舵板駆動部の動きを止め且つ舵板の舵角をそのままの状態に維持された後も、操舵系統を圧液供給機から予備圧液供給機に切換えることによって舵板駆動部を動かすことができる。これにより、圧液供給機が故障等した後も船舶の向きを制御することができる。
【0014】
上記発明において、前記遮断機構における作動の有無の指示をする指示部を更に備え、前記判定遮断装置は、前記判定結果と前記指示部に対する指示に基づいて前記遮断機構によって圧液の供給を停止してもよい。
【0015】
上記構成に従えば、故障等した場合でも、指示に基づいて舵板駆動部の停止を行うので、圧液供給機が不所望に停止させられることを抑制することができる。
【0016】
上記発明において、前記判定遮断装置は、前記判定結果に基づいて前記遮断機構によって圧液の供給を停止する場合、判定してから予め定められた時間が経過した後に前記遮断機構によって圧液の供給を停止してもよい。
【0017】
上記構成に従えば、突発的なトラブルにより一時的に故障等の状態となり、その後故障等が解消された際に舵板駆動部を停止することを抑制することができる。これにより、舵板駆動部の停止回数が増加することを抑制することができる。
【0018】
本発明の操舵装置の停止方法は、供給される液圧の流れ方向に応じた方向に舵板を動かす舵板駆動部と、入力される操舵信号に応じた流れ方向の圧液を前記舵板駆動部に供給する圧液供給機と、前記圧液供給機から前記舵板駆動部への圧液の供給及びその停止を切換える遮断機構と、を備える操舵装置の停止方法であって、複数の検出器によって前記操舵装置における互いに異なる部位の状態を検出する検出工程と、前記検出工程における検出結果に応じて前記操舵装置の状態を判定する状態判定工程と、前記状態判定工程における判定結果に基づいて前記遮断機構によって圧液の供給を停止する停止工程とを備える方法である。
【0019】
上記構成に従えば、操舵装置における種々の部位の状態を検出し、検出される状態に基づいて操舵装置の状態を判定する。更に、判定結果に基づいて舵板駆動部への圧液の給排を停止することができる。即ち、操舵装置の状態に応じて舵板駆動部の動きを止め、且つ舵板の舵角をそのままの状態に維持することができる。これにより、例えば操舵装置が故障した又は操舵装置において故障の恐れがある、即ち故障等した場合において、舵板に外力が作用して舵板が不所望な方向を向いたり、舵板駆動部が制御不能な状態で舵板が動かされたりすることを防ぐことができる。つまり、故障等が発生した時に舵板駆動部が不所望な動きをしないようにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、故障発生時に舵板駆動部が不所望な動きをしないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の操舵制御システムの構成を示す油圧回路図である。
【
図2】
図1の操舵制御システムが実行する舵角停止処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図1の操舵制御システムが実行する舵角停止処理(第2実施例)の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図1の操舵制御システムが実行する舵角停止処理(第3実施例)の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図1の操舵制御システムが実行する舵角停止処理(第4実施例)の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の操舵制御システムが実行する舵角停止処理(第5実施例)の手順を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態の操舵制御システムの構成を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る第1及び第2実施形態の操舵制御システム1,1A及びそれが実行する操舵装置30の停止方法について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する操舵制御システム1,1Aは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0023】
<第1実施形態>
[操舵制御システム]
船舶では、操舵室にある操舵部5の舵輪の操作、及びオートパイロット機能等に基づいて入力される操舵信号に応じて船舶の進行方向を変えられるようになっており、船舶はその進行方向を変えるべく操舵制御システム1を備えている。操舵制御システム1は、圧液(例えば、油又は水等の液体)によって駆動するようになっており、舵板12と、舵板駆動部2と、電液駆動装置3と、制御ユニット4と、操舵部5、センサ群6、表示操作部7とを備えている。
【0024】
[舵板]
舵板12は、船舶の進行方向を変えるための部材であり、船舶の船尾辺りに取付けられている。より詳細に説明すると、舵板12は、側面視で大略矩形の板状の部材であり、舵板12は舵軸11に固定されている。舵軸11は、その軸線が略垂直に延在し且つその軸線回りに回動可能な状態で船舶の船尾に取付けられており、舵板12は、上下方向に立ち且つ前後方向に延在するように舵軸11に固定されている。また、舵軸11には、舵柄13が取付けられている。舵柄13は、舵軸11からその軸線に直交する方向に延在しており、舵柄13には、舵軸11を回動させるべく舵板駆動部2が設けられている。
【0025】
[舵板駆動部]
舵板駆動部2は、いわゆるラムシリンダであり、ラム14と、2つのシリンダ15,16を有している。ラム14は、ラム軸14aとラムピン14bとを有している。ラム軸14aは、その軸線方向に延在する長手状の部材であり、その軸線方向中央部分にラムピン14bが突設されている。ラムピン14bは、ラム軸14aと一体的に移動し、またラムピン14bには舵柄13が係合されている。それ故、ラム軸14aが移動すると、舵柄13が舵軸11を中心に揺動し、それに伴って舵板12がその軸線回りに回動する。このように構成されているラム軸14aには、それを軸線方向に移動させるべく2つのシリンダ15,16が取付けられている。
【0026】
2つのシリンダ15,16は、ラム軸14aの軸線方向一端部及び他端部に夫々設けられている。即ち、第1シリンダ15には、その内空間である第1シリンダ室15aにラム軸14aの軸線方向一端部が進退可能に挿入され、第2シリンダ16には、その内空間である第2シリンダ室16aにラム軸14aの軸線方向他端部が進退可能に挿入されている。また、2つのシリンダ15,16は、各シリンダ室15a,16aに圧液を供給可能に構成されており、ラム軸14aは、各シリンダ室15a,16aの液圧を各々端部で受けて移動するようになっている。即ち、第1シリンダ室15aに圧液が供給されると、ラム軸14aと共にラムピン14bが軸線方向一方に移動する。これにより、舵柄13が軸線回りの周方向一方に回動し、それに伴って舵板12もまた周方向一方に揺動する。また、第2シリンダ室16aに圧液が供給されると、ラム軸14aと共にラムピン14bが軸線方向他方に移動する。これにより、舵柄13が軸線回りの周方向他方に回動し、それに伴って舵板12もまた周方向他方に揺動する。このように、舵板駆動部2は、各シリンダ室15a,16aへの圧液の供給によって舵板12を動かすことができるようになっており、舵板駆動部2には、各シリンダ室15a,16aに圧液を供給すべく電液駆動装置3が接続されている。
【0027】
[電液駆動装置]
電液駆動装置3は、本実施形態において2つの操舵系統3L,3Rを有している。2つの操舵系統3L,3Rは、共に同一の機能を有している。即ち、2つの操舵系統3L,3Rは、共に舵板駆動部2に圧液を供給可能であって、且つその圧液の方向を切換え可能に構成されている。このように構成されている電液駆動装置3は、2つの操舵系統3L,3Rを有しているが、主に一方の操舵系統3Lである第1操舵系統3Lによって舵板駆動部2を作動させる。他方、第2操舵系統3Rは、第1操舵系統3Lが故障等した際に舵板駆動部2を作動させる。以下では、2つの操舵系統3L,3Rの構成について説明するが、2つの操舵系統3L,3Rは、同一の構成を有している。それ故、第1操舵系統3Lの構成についてのみ説明し、第2操舵系統3Rの構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0028】
第1操舵系統3Lは、圧液供給機20を備えており、圧液供給機20は、舵板駆動部2に圧液を供給して舵板駆動部2を駆動させると共に、そこに入力される操舵信号に基づいて舵板駆動部2に流す圧液の方向を変えて舵板12の舵角を変えられるようになっている。更に詳細に説明すると、圧液供給機20は、主に液圧ポンプ21と、電動機22と、方向切換弁23と、パイロット切換弁24と、を備えている。液圧ポンプ21は、例えば固定容量形の斜軸ポンプであり、舵板駆動部2に供給する作動液を吐出するようになっている。更に詳細に説明すると、液圧ポンプ21は、入力軸21aを有しており、入力軸21aが電動機22に連結されている。電動機22は、図示しない電源装置からの電力を受けて入力軸21aを回転駆動可能に構成されている。液圧ポンプ21は、入力軸21aが回転することによって吸入ポート21bから作動液を吸入し、更に加圧しながら作動液を吐出ポート21cから吐出する。このように構成される液圧ポンプ21は、吸入ポート21bに吸入側通路31aが接続され、且つ吐出ポート21cに吐出側通路31bが接続され、更にこれら2つの通路31a,31bを介して方向切換弁23に接続されている。
【0029】
方向切換弁23は、例えばパイロット式の切換弁であり、後で詳述するパイロット切換弁24から出力されるパイロット圧p1,p2に応じて作動液の流れを変える。更に詳細に説明すると、方向切換弁23は、4つのポートを有しており、4つのポートは、吸入側通路31a、吐出側通路31b、第1給排通路32a及び第2給排通路32bに夫々接続されている。第1給排通路32aは、方向切換弁23と第1シリンダ15とを接続し、第2給排通路32bは、方向切換弁23と第2シリンダ16とを接続している。また、方向切換弁23は、スプール23aを有しており、スプール23aの位置に応じて作動液の流れ方向を切換えるようになっている。
【0030】
更に詳細に説明すると、スプール23aは、中立位置M1、第1オフセット位置L1、及び第2オフセット位置R1に移動可能に構成されている。スプール23aが中立位置M1に位置する場合、スプール23aによって吸入側通路31aと吐出側通路31bとが接続され、液圧ポンプ21がアンロード状態になる。他方、第1給排通路32a及び第2給排通路32bの各々は遮断され、第1シリンダ15及び第2シリンダ16への作動液の給排が止められる。スプール23aが第1オフセット位置L1へと移動すると、スプール23aによって第1給排通路32aと吐出側通路31bとが接続され、且つ第2給排通路32bと吸入側通路31aとが接続される。これにより、作動液が第1シリンダ室15aに供給されると共に第2シリンダ室16aの作動液が排出され、ラム軸14aが軸線方向一方に移動する。即ち、舵板12が周方向一方に回動する。他方、スプール23aが第2オフセット位置R1へと移動すると、スプール23aによって第1給排通路32aと吸入側通路31aとが接続され、且つ第2給排通路32bと吐出側通路31bとが接続される。これにより、作動液が第2シリンダ室16aに供給されると共に第1シリンダ室15aの作動液が排出され、ラム軸14aが軸線方向他方に移動する。即ち、舵板12が周方向他方に回動する。
【0031】
このように、方向切換弁23は、スプール23aの位置によって作動液の流れを切換えることができ、作動液の切換えることによって舵板12の向き(即ち、舵角)を変えたり舵板12の舵角を維持したりすることができる。また、スプール23aには、その位置を変えるべく2つのパイロット圧p1,p2が作用している。更に詳細に説明すると、スプール23aには、2つのパイロット圧p1,p2が互いに抗するように作用しており、それらの差圧(p1-p2)に応じて位置を変えるようになっている。このような2つのパイロット圧p1,p2をスプール23aに作用させるべく、方向切換弁23にはパイロット切換弁24が接続されている。
【0032】
パイロット切換弁24は、いわゆる電磁切換弁であって、そこに入力される操舵信号に応じてパイロット圧p1,p2を制御するようになっている。更に詳細に説明すると、パイロット切換弁24は、4つのポートを有しており、4つのポートは、自己圧供給通路33a、タンク通路33b、第1パイロット通路34a、及び第2パイロット通路34bに夫々繋がっている。自己圧供給通路33aは、吐出側通路31bに接続され、タンク通路33bは、タンク28に接続されている。他方、第1パイロット通路34aは、スプール23aに第1パイロット圧p1を与えるべく方向切換弁23に接続され、第2パイロット通路34bは、スプール23aに第2パイロット圧p2を与えるべく方向切換弁23に接続されている。また、パイロット切換弁24は、スプール24aを有しており、スプール24aは、パイロット切換弁24に入力される操舵信号に応じて位置を変える。また、スプール24aは、その位置を変えることによって作動液の流れ方向を切換えるようになっている。
【0033】
更に詳細に説明すると、パイロット切換弁24では、スプール24aが中立位置M2、第1オフセット位置L2、及び第2オフセット位置R2に移動可能に構成されている。スプール24aが第1オフセット位置L2に位置する場合、スプール24aによってタンク通路33bと第2パイロット通路34bとが繋がり、また自己圧供給通路33aと第1パイロット通路34aとが繋がる。これにより、第2パイロット通路34bのパイロット液がタンク28に排出され、第2パイロット圧p2がタンク圧となる。他方、第1パイロット通路34aには、自己圧供給通路33aを介して吐出側通路31bの液圧が導かれる。吐出側通路31bには、自己圧供給通路33aとの接続箇所よりも下流側において絞り25が設けられているので、吐出側通路31bの液圧は、絞り25によって吸入側通路31aより高く維持されている。それ故、第2パイロット圧p2より高い第1パイロット圧p1がパイロット切換弁24から出力され、方向切換弁23のスプール23aが第1オフセット位置L1へと移動する。これにより、舵板12が周方向一方に移動する。
【0034】
他方、スプール24aが第2オフセット位置R2に位置する場合、タンク通路33bと第1パイロット通路34aとが繋がり、自己圧供給通路33aと第2パイロット通路34bとが繋がる。これにより、第1パイロット通路34aのパイロット液がタンク28に排出され、第1パイロット圧p1がタンク圧となる。他方、第2パイロット通路34bには、自己圧供給通路33aを介して吐出側通路31bの液圧が導かれる。これにより、第1パイロット圧p1より高い第2パイロット圧p2がパイロット切換弁24から出力され、方向切換弁23のスプール23aが第2オフセット位置R1へと移動する。これにより、舵板12が周方向一方に移動する。
【0035】
最後に、スプール24aが中立位置M2に位置する場合には、自己圧供給通路33aが遮断され、第1パイロット通路34a及び第2パイロット通路34bが共にタンク通路33bに接続される。これにより、第1パイロット圧p1及び第2パイロット圧p2がタンク圧となり、方向切換弁23のスプール23aが中立位置に戻される。これにより、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間の作動液の行き来が止められ、舵板12が動かなくなる。即ち、舵板12の舵角を維持することができる。
【0036】
このようにパイロット切換弁24は、そこに入力される操舵信号に応じて2つのパイロット圧p1、p2を制御し、方向切換弁23のスプール23aを移動させることができる。スプール23aを移動させることによって、その位置に応じた方向へと作動液の給排を行うことができる。これにより、舵板12を操舵信号に応じた方向に揺動させることができる。また、電液駆動装置3には、作動液をリリーフするためのリリーフ機構26が備わっている。
【0037】
リリーフ機構26は、第1給排通路32a及び第2給排通路32bの液圧をリリーフ圧以下に抑えるべく、各々の液圧が予め定められたリリーフ圧を超えると作動液をタンク28に排出するようになっている。更に詳細に説明すると、リリーフ機構26は、第1リリーフ弁26a及び第2リリーフ弁26bを有しており、第1リリーフ弁26aが第1給排通路32aに接続され、第2リリーフ弁26bが第2給排通路32bに接続されている。また、第1リリーフ弁26aは、第1給排通路32aの液圧が予め定められた第1リリーフ圧を超えると、第1給排通路32aを流れる作動液をタンク28に排出する。他方、第2リリーフ弁26bは、第2給排通路32bの液圧が予め定められた第2リリーフ圧を超えると、第2給排通路32bを流れる作動液をタンク28に排出する。これにより、電液駆動装置3内を流れる作動液が過度に加圧され、各構成が損傷を受けることを抑制することができる。また、第1給排通路32aには、第1逆止弁29aが接続され、第2給排通路32bには、第2逆止弁29bが接続されている。各逆止弁29a、29bは、共にタンク28に接続されており、各々が接続される通路32a,32bの作動液が不足した際にタンク28から前記通路32a,32bに作動液を導くことができる、キャビティ防止機能を有している。
【0038】
このように構成されている電液駆動装置3では、操舵制御システム1において故障等が生じた場合、舵板12の動きを止めると共に舵板12の舵角を維持するようになっている。このような機能を達成すべく、電液駆動装置3は遮断機構27を備えている。遮断機構27は、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間、本実施形態において方向切換弁23と舵板駆動部2との間に介在している。即ち、遮断機構27は、第1給排通路32a及び第2給排通路32bの途中に介在している。また、遮断機構27は、そこに切換信号が入力されるようになっており、この切換信号に応じて第1給排通路32a及び第2給排通路32bを開閉する。即ち、遮断機構27は、そこに入力される切換信号に応じて液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間の作動液の行き来を止めることができるようになっている。このような機能を有する遮断機構27は、アンロード遮断弁41と、遮断切換弁42とを有している。
【0039】
アンロード遮断弁41は、第1給排通路32a及び第2給排通路32bに介在し、第1給排通路32a及び第2給排通路32bにおいてリリーフ機構26及び2つの逆止弁29a,29bより方向切換弁23側に配置されている。また、アンロード遮断弁41は、そこに入力されるパイロット圧p3,p4の差圧(p4-p3)に応じて第1給排通路32a及び第2給排通路32bの各々を開閉する。即ち、差圧(p4-p3)が所定圧力(ばね41aの付勢力に応じて決まる圧力)以下である場合、アンロード遮断弁41は閉状態になり、アンロード遮断弁41によって第1給排通路32a及び第2給排通路32bの各々が閉じられる。これにより、方向切換弁23のスプール23aの位置に関わらず液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間における作動液に行き来が止められる。また、閉状態では、第1給排通路32a及び第2給排通路32b同士がアンロード遮断弁41によって互い接続されて、液圧ポンプ21がアンロード状態となる。他方、差圧(p4-p3)が所定圧力を超えている場合、アンロード遮断弁41は開状態となり、第1給排通路32a及び第2給排通路32bの各々がアンロード遮断弁41によって開かれる。これにより、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間で作動液の行き来が可能になる。このようにアンロード遮断弁41は、2つのパイロット圧p3,p4に応じて開閉状態を切換えるようになっている。このように構成されるアンロード遮断弁41には、そこにパイロット圧p3,p4を与えるべく遮断切換弁42が接続されている。
【0040】
遮断切換弁42は、いわゆる電磁切換弁であって、そこに入力される切換信号に応じてパイロット圧p3,p4を制御するようになっている。更に詳細に説明すると、遮断切換弁42は、4つのポートを有しており、4つのポートは、自己圧供給通路33a、タンク通路33b、第3パイロット通路34c、及び第4パイロット通路34dに夫々繋がっている。第3パイロット通路34c及び第4パイロット通路34dは、パイロット圧p3,p4を与えるべくアンロード遮断弁41に接続されている。遮断切換弁42は、これら2つのパイロット通路34c,34dの各々の接続先を自己圧供給通路33a及びタンク通路33bの何れかに切換え、これによってパイロット圧p3,p4を切換えるようになっている。なお、遮断切換弁42は、切換信号に応じてだけでなく手動でも接続先を切換可能に構成されている。
【0041】
遮断切換弁42について更に詳細に説明すると、遮断切換弁42は、切換信号が入力されると、第3パイロット通路34cをタンク通路33bに接続する。これにより、第3パイロット圧p3がタンク圧になる。他方、第4パイロット通路34dは自己圧供給通路33aに接続され、第4パイロット通路34dに吐出側通路31bの液圧に応じたパイロット液が導かれる。そうすると、第4パイロット圧p4が吐出側通路31bの液圧に応じた圧力となり、差分(p4-p3)が所定圧力を超え、アンロード遮断弁41が開状態となる。これにより、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間の作動液の行き来が可能になる。他方、切換信号が入力されなくなると、遮断切換弁42は、第4パイロット通路34dをタンク通路33bに接続する。これにより、第4パイロット圧p4がタンク圧になる。他方、第3パイロット通路34cは自己圧供給通路33aに接続され、第3パイロット通路34cに吐出側通路31bの液圧に応じたパイロット液が導かれる。そうすると、第3パイロット圧p3が吐出側通路31bの液圧に応じた圧力となり、差分(p4-p3)が所定圧以下となり、アンロード遮断弁41が閉状態となる。これにより、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間で作動液の行き来ができなくなり、舵板12をその舵角にて維持される。
【0042】
このように、遮断機構27は、切換信号の入力状態(即ち、切換信号の入力の有無)に応じて2つの給排通路32a,32bを開閉し、液圧ポンプ21から舵板駆動部2に圧液を流したり止めたりすることができる。また、遮断機構27は、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間を遮断した際に液圧ポンプ21をアンロード状態にしており、その際に液圧ポンプ21にかかる負荷を低減することができる。これにより、遮断時における操舵制御システムの消費エネルギーを低減することができ、また液圧ポンプ21の損傷を抑制することができる。
【0043】
また、アンロード遮断弁41は、閉状態においてそれより液圧ポンプ21側に形成される回路3aにて故障等が生じ、吐出された作動液を吸入ポート21bに返すことができない場合に備えて、以下のような機能を有している。即ち、アンロード遮断弁41は、2つのチェック弁41b,41cを有しており、2つのチェック弁41b,41cは、アンロード遮断弁41の前後において液圧ポンプ21側の圧力が舵板駆動部2側の圧力より高くなった場合、液圧ポンプ21から舵板駆動部2への作動液の流れを許容するようになっている。更に詳細に説明すると、2つのチェック弁41b,41cは、2つの給排通路32a,32bを閉じるべくその途中に介在し、また2つの給排通路32a,32bの互いに連通する部分より舵板駆動部2側に配置されている。それ故、アンロード遮断弁41の前後において液圧ポンプ21側が舵板駆動部2側より低圧となるアンロード状態では、2つのチェック弁41b,41cは閉じたままとなり、液圧ポンプ21から舵板駆動部2への作動液の流れが止められる。他方、故障等によって前記回路3a内の液圧が上昇し、アンロード遮断弁41の前後において液圧ポンプ21側が舵板駆動部2側より高圧となる場合、チェック弁41b,41cが開き回路3a内の作動液がリリーフ機構26を介してタンク28へと排出される。このように、アンロード遮断弁41の前後において液圧ポンプ21側が舵板駆動部2側より高圧になっている際には、液圧ポンプ21側の作動液を排出して回路3a内が過度に昇圧されることを防ぐことができ、回路3a内が昇圧しすぎることを抑制している。
【0044】
このように構成されている第1操舵系統3Lは、遮断切換弁42に切換信号が入力されている状態にてパイロット切換弁24に入力される操舵信号が入力されると、操舵信号に応じた方向に舵板12を駆動させることができる。他方、遮断切換弁42への切換信号の入力が停止すると、操舵信号の有無に関わらず舵板駆動部2の動きを止め舵板12の舵角を維持するようになっている。前述の通り、第2操舵系統3Rもまた第1操舵系統3Lと同じ構成を有しており、第1操舵系統3Lと同じ機能を発揮する。このように構成される2つの操舵系統3L,3Rは、舵板駆動部2と共に操舵装置30を構成しており、操舵装置30に切換信号及び操舵信号を入力すべく制御ユニット4が電気的に接続されている。
【0045】
[制御ユニット等]
制御ユニット4は、舵板駆動部2を作動させるべく、2つの操舵系統3L,3Rのうち一方、例えば第1操舵系統3Lに切換信号及び操舵信号を夫々出力し、遮断機構27及びパイロット切換弁24の動きを制御する。更に詳細に説明すると、制御ユニット4は、操舵制御装置4a及び判定遮断装置4bを有している。なお、操舵制御装置4a及び判定遮断装置4bは、制御ユニット4を構成すべく必ずしも一つの個所に纏まっている必要なく、別々に設けられまた別々に製造されてもよい。操舵制御装置4aは、操舵部5と繋がっており、操舵部5は、図示しない舵輪を有しており、舵輪は、操舵手等が操作可能に構成されている。操舵部5は、舵輪の操作(即ち、操作方向及び操作量)に応じた操舵指令を操舵制御装置4aに出力し、操舵制御装置4aは、操舵指令が入力されると電動機22を駆動させて液圧ポンプ21から作動液を吐出させる。また、操舵制御装置4aは、操舵部5からの操舵指令に基づいて舵板12の舵角を算出し、更に算出される舵角に応じた操舵信号を第1操舵系統3Lのパイロット切換弁24に出力する。また、操舵制御装置4aは、オートパイロット機能を有しており、その機能に基づいて算出される操舵信号もパイロット切換弁24に出力するようになっている。
【0046】
また、判定遮断装置4bは、操舵制御システム1の状態(即ち、操舵制御システム1における故障の有無)を判定し、判定結果に基づいて遮断機構27に対する切換信号の出力状態を切換えるようになっている。このような機能を有する判定遮断装置4bは、操舵制御システム1の状態を判定すべくセンサ群6と接続されている。センサ群6には、操舵装置30における互いに異なる部位の状態を検出すべく複数のセンサが含まれている。複数のセンサとしては、例えば圧力センサ、方向切換弁作動検出センサ、舵角検出センサ、断線検出センサ、タンク油面センサ、地絡・短絡検出センサ、漏液検出センサ等がある。
【0047】
圧力センサは、シリンダ15,16に夫々設けられ、シリンダ室15a,16aの液圧を検出し、方向切換弁作動検出センサは、方向切換弁23のスプール23aの位置を検出することによって方向切換弁23の作動の有無を検出する。舵角検出センサは、舵柄13の軸線回りの回動角を検出することによって舵板12の舵角を検出し、断線検出センサは、制御ユニット4と各機器とを繋ぐ配線に信号等を流してそれらの断線を検出する。また、タンク油面センサは、タンク28の油面のレベルを検出し、地絡・短絡検出センサは、制御ユニット4と各機器とを繋ぐ配線が地絡又は短絡していないかを検出する。更に、漏液検出センサは、各操舵系統3L,3Rにおいて圧液が通路から漏れ出ていないかを検出する。なお、前述する種々のセンサは、あくまでセンサ群6に含まれるセンサの一例であり、これら以外のセンサが含まれていてもよく、また前述するセンサの何れか1つ又はそれ以上が含まれていなくてもよい。
【0048】
このようにして構成されるセンサ群6からは各々のセンサで検出される結果が判定遮断装置4bに出力される。また、操舵検出器である判定遮断装置4bは、前述するセンサ群6の他に操舵制御装置4aから操舵信号を取得し、操舵信号の出力の有無を検出する。即ち、判定遮断装置4bは、操舵信号の出力の有無を検出するセンサとしての役割を果たしている。更に、判定遮断装置4bは、各種機器、例えば電動機22のスタータ、センサ群6の各センサ、操舵制御装置4aのオートパイロット機能部分からの起動信号を取得し、各種機器の起動の有無を検出する。即ち、判定遮断装置4bは、起動信号の出力の有無を検出するセンサとしての役割を果たしている。判定遮断装置4bは、このようにして取得される検出結果に基づいて操舵装置30の状態(本実施形態では、主に各操舵系統3L,3Rの状態)を判定する。以下の表1には、各操舵系統3L,3Rの状態を判定する際に用いられるセンサの検出結果の一例について示す。
【0049】
【0050】
表1は、行方向に各種センサ及び信号を示し、列方向に各操舵系統3L,3Rの状態を示している。判定遮断装置4bは、主に表1における「○」で示されるセンサの検出結果(検出した値及び状態だけでなく、何も検出されない状態も含む)に基づいて、各操舵系統3L,3Rの状態を判定する。例えば、舵板作動検出センサである方向切換弁作動検出センサ及び舵角検出センサの検出結果と、操舵信号及び各種起動信号に関する検出結果とに基づいて各操舵系統3L,3Rの状態、具体的には各操舵系統3L,3Rが無反応状態(舵角を自発的に変えることができな状態)か否かを判定遮断装置4bが判定する。即ち、操舵信号及び電動機22のスタータの起動信号のうち少なくとも1つが出力され、且つ方向切換弁作動検出センサによって方向切換弁23が作動していない(即ち、動きを検出できない状態である)ことを検出し且つ舵角検出センサによって舵角の変動が維持されていることを検出すると、各操舵系統3L,3Rが無反応状態であると判定遮断装置4bが判定する。
【0051】
また、判定遮断装置4bは、圧力センサ、方向切換弁作動検出センサ及び舵角検出センサの検出結果と、操舵信号及び各種起動信号に関する検出結果とに基づいて、各操舵系統3L,3Rが制御不能状態(即ち、舵角を制御できない状態)か否かを判定遮断装置4bが判定する。即ち、操舵信号及び電動機22のスタータの起動信号のうち少なくとも1つが出力され、且つ圧力センサ、方向切換弁作動検出センサ及び舵角検出センサによって検出される検出結果が操舵信号に対応した値と異なっている場合、各操舵系統3L,3Rが制御不能状態であると判定遮断装置4bが判定する。
【0052】
更に、判定遮断装置4bは、圧力センサ、タンク油面センサ、及び漏液検出センサの検出結果に基づいて、各操舵系統3L,3Rが液漏れ状態(即ち、電液駆動装置3において圧液が漏れている状態)か否かを判定遮断装置4bが判定する。即ち、圧力センサにおいて圧力低下が生じ、且つタンク油面センサ及び漏液検出センサのうち何れか一方に応じて不良(油面の低下及び液漏れ)が検出されると、液漏れ状態であると判定遮断装置4bが判定する。また、判定遮断装置4bは、断線検出センサ及び地絡・短絡検出センサの検出結果、及び各種起動信号に関する検出結果に基づいて各操舵系統3L,3Rが断線状態(即ち、各種機器に接続される配線が断線している状態)か否か、及び電源喪失状態(即ち、各種機器への電源が喪失している状態)を判定遮断装置4bが判定する。即ち、起動信号が出力されている状態において、断線検出センサが断線を検出し且つ地絡・短絡センサが地絡・短絡を検出しない場合、各操舵系統3L,3Rが断線状態であると判定遮断装置4bが判定する。他方、起動信号が出力されている状態において、地絡・短絡センサが地絡・短絡を検出し且つ断線検出センサが断線を検出しない場合、各操舵系統3L,3Rが電源喪失状態であると判定遮断装置4bが判定する。
【0053】
このように判定遮断装置4bは、各操舵系統3L,3Rが、前述するような無反応状態、制御不能状態、液漏れ状態、断線状態、及び電源喪失状態等の状態であるか否かを判定する。何れの状態にも当てはまらない場合、判定遮断装置4bは、各操舵系統3L,3Rが良好な状態であると判定し、前述する何れかの状態に当てはまる場合、判定遮断装置4bは、各操舵系統3L,3Rが故障している又は故障の恐れがある状態(即ち、故障等の状態)であると判定する。
【0054】
このような機能を有する判定遮断装置4bは、遮断機構27に接続されており、各操舵系統3L,3Rの状態に応じて遮断機構27に対する切換信号の出力状態を切換える。即ち、各操舵系統3L,3Rが良好な状態である場合、判定遮断装置4bは遮断機構27に切換信号を出力し、舵板駆動部2が作動できるようにする。他方、各操舵系統3L,3Rが故障状態である場合、判定遮断装置4bは切換信号の出力を停止し、舵板駆動部2が動かないようにし且つ舵板12の舵角が維持されるようにする。また、判定遮断装置4bは、各操舵系統3L,3Rの状態を報知すべく表示操作部7に接続されている。指示部の一例である表示操作部7は、例えばタッチパネル等であって、各操舵系統3L,3Rの状態を表示して操舵手等に警告する。また、表示操作部7には、その表示部分に触れることによって種々の指令を入力できるようになっている。
【0055】
このように構成されている操舵制御システム1では、操舵部5から操舵制御装置4aに入力される操舵指令に応じて操舵制御装置4aが舵板12の舵角を調整する。また、判定遮断装置4bは、そこからの信号の出力の有無及びセンサ群6の検出結果に基づいて操舵制御システム1の状態を判定し、その判定結果に応じて舵板駆動部2を停止させ且つ舵角を維持するようになっている。即ち、操舵制御システム1では、判定遮断装置4bが第1操舵系統3Lの状態を判定し、第1操舵系統3Lが故障等の状態である場合に舵板駆動部2を停止させ且つ舵角を維持する。このように判定遮断装置4bは、第1操舵系統3Lの状態が故障状態であると判定した際に舵板駆動部2を停止させ且つ舵角を維持すべく舵角停止処理を実行する。以下では、舵角停止処理について説明する。なお、舵角停止処理としては、例えば5つの実施例があり、以下では第1実施例から第5実施例を
図2乃至6を参照しながら順に説明する。
【0056】
[舵角停止処理]
(第1実施例)
操舵制御システム1では、図示しない電源装置から制御ユニット4への電源供給が行われると
図2に手順が示されている舵角停止処理が実行され、ステップS1に移行する。状態判断工程であるステップS1では、制御ユニット4の判定遮断装置4bがセンサ群6における検出結果及び各信号に関する検出結果に基づいて第1操舵系統3Lの状態を判定する。例えば、以下のような場合において、判定遮断装置4bは、第1操舵系統3Lが良好な状態であると判定する。即ち、センサ群6における検出結果及び各信号に関する検出結果において異常が検出されない場合、及びセンサ群6における検出結果及び各信号に関する検出結果の何れかにおいて異常が検出されるものの前述する表1に示す各状態と判定されるまでに至らない場合には、第1操舵系統3Lが良好な状態であると判定する。他方、センサ群6における検出結果及び各信号に関する検出結果において異常が検出され、前述する5つの状態の何れかに当てはまる場合には、判定遮断装置4bは、第1操舵系統3Lがその当てはまる状態に至っていると判定する。このように第1操舵系統3Lの状態が判定されると、ステップS2に移行する。
【0057】
故障判定工程であるステップS2では、ステップS1にて判定された判定結果に基づいて第1操舵系統3Lが故障状態及び故障の虞がある(即ち、故障等がある)状態か否かを判定する。例えば、ステップS1において第1操舵系統3Lが良好な状態であると判定されると、判定遮断装置4bは第1操舵系統3Lに故障等がないと判定し、ステップS3に移行する。作動待機工程であるステップS3では、判定遮断装置4bが遮断機構27に切換信号を出力する。これにより、2つの供給通路32a,32bが遮断機構27によって開かれ、操舵制御システム1が舵板駆動部2を作動可能になる。
【0058】
なお、この状態において操舵部5から制御ユニット4の操舵制御装置4aに操舵指令を出力されると、操舵制御装置4aは、操舵部5からの操舵指令に応じた操舵信号をパイロット切換弁24に出力する。その後、舵板12の舵角が操舵指令に応じた角度まで達すると、制御ユニット4はパイロット切換弁24に出力される操舵信号を止め、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間を停止させる。これにより、舵板12の舵角を舵指令に応じた角度にし、且つその舵角にて維持することができる。
【0059】
また、舵板駆動部2を駆動可能な状態にした後、予め定められた時間T0が経過するとステップS1に戻る。そして、ステップS1にて第1操舵系統3Lの状態が判定される。そして、ステップS1において、第1操舵系統3Lが良好な状態以外の状態、即ち無反応状態、制御不能状態、液漏れ状態、断線状態、及び電源喪失状態の何れかの状態であると判定された場合、ステップS2にて第1操舵系統3Lが故障等であると判定され、ステップS4に移行する。
【0060】
警報作動工程であるステップS4では、第1操舵系統3Lが故障等である状態である旨を報知する。即ち、判定遮断装置4bは、表示操作部7によって第1操舵系統3Lに故障等がある旨を表示し、操舵手等に故障等があることを警告する。また、舵角停止処理では、ステップS4に平行してステップS5が実行される。遮断工程であるステップS5では、判定遮断装置4bが遮断機構27への切換信号の出力を停止する。これにより、2つの供給通路32a,32bが遮断機構27によって閉じられ、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間における作動液の行き来(即ち、液圧ポンプ21から舵板駆動部2への作動液の供給)を停止することができる。それ故、舵板駆動部2が作動できなくなり、舵角がその状態にて維持されることになる。これにより、故障時において舵板12に外力が作用して舵板12が不所望な方向を向いたり、舵板駆動部2が制御不能な状態で舵板12が動かされたりすることを防ぐことができる。即ち、故障等が発生した時に舵板駆動部2が不所望な動きをしないようにすることができる。このように舵板駆動部2が止められて舵角の維持がなされると、舵角停止処理が終了する。
【0061】
(第2実施例)
第2実施例の舵角停止処理の手順は、第1実施例の舵角停止処理の手順と類似している。それ故、第2実施例の舵角停止処理の手順については、
図3を参照しながら第1実施例の舵角停止処理の手順と異なる点についても主に説明する。
【0062】
第2実施例の舵角停止処理では、ステップS4にて故障等している旨を警告し、且つステップS5にて舵角を維持させると、ステップS6に移行する。操舵系統切換工程であるステップS6では、制御ユニット4が作動させる操舵系統を第1操舵系統3Lから第2操舵系統3Rに切換える。切換えた後、第1操舵系統3Lに関して舵角停止処理が終了し、次に第2操舵系統3Rに対して舵角停止処理が実行される。即ち、圧液供給源を第1操舵系統3Lの圧液供給機20から予備液圧供給機である第2操舵系統3Rの圧液供給機20に切換え、第2操舵系統3Rの圧液供給機20によって舵板駆動部2を作動させる。なお、第2操舵系統3Rに対して実行される舵角停止処理は、対象とする操舵系統が異なるだけで、第1操舵系統3Lに対して実行される第1実施例の舵角停止処理と同じである。
【0063】
このように第2実施例の舵角停止処理では、第1操舵系統3Lが故障等した場合でも自動的に第2操舵系統3Rが作動するようになっている。それ故、第1操舵系統3Lが故障した場合でも第2操舵系統3Rによってそのまま舵板駆動部2を駆動させて舵角を変更することができ、船舶の向きを制御することができる。
【0064】
その他、第2実施例の舵角停止処理では、第1実施例の舵角停止処理を実行する場合と同様の作用効果を奏する。
【0065】
(第3実施例)
第3実施例の舵角停止処理の手順は、第1実施例の舵角停止処理の手順と類似している。それ故、第3実施例の舵角停止処理の手順については、
図4を参照しながら第1実施例の舵角停止処理の手順と異なる点についても主に説明する。
【0066】
第3実施例の舵角停止処理では、ステップS2にて故障等であると判定されるとステップS4に移行し、判定遮断装置4bは表示操作部7に操舵手等に故障等があることを警告させる。また、判定遮断装置4bは警告と共に第1操舵系統3Lの停止に関する承認の有無(即ち、指示)を入力すべき旨を表示操作部7に表示する。警告及び入力すべき旨を表示した後は、ステップS7に移行する。停止承認工程であるステップS7では、表示操作部7に表示した承認の有無に対して操舵手等が有無の何れを入力したかを判定遮断装置4bが判定する。承認しない旨の入力がなされた場合、第1操舵系統3Lを停止せず、即ち遮断機構27に対して切換信号を出力したままの状態にて舵角停止処理を終了する。他方、承認する旨の入力がなされた場合、第1操舵系統3Lを停止すべくステップS5に移行し、遮断機構27への切換信号の出力が停止される。
【0067】
このように第3実施例の舵角停止処理では、第1操舵系統3Lが故障等した場合でも承認しない場合には自動的に舵板駆動部2が停止することがない。それ故、第1操舵系統3Lが不所望に停止させられることを抑制することができ、原因等が明らかになった後に第1操舵系統3Lを停止するようにすることができる。
【0068】
その他、第3実施例の舵角停止処理では、第1実施例の舵角停止処理を実行する場合と同様の作用効果を奏する。
【0069】
(第4実施例)
第4実施例の舵角停止処理の手順は、第3実施例の舵角停止処理の手順と類似している。それ故、第4実施例の舵角停止処理の手順については、
図5を参照しながら第3実施例の舵角停止処理の手順と異なる点についても主に説明する。
【0070】
第4実施例の舵角停止処理では、ステップS4にて警告及び入力すべき旨を表示した後、ステップS8に移行する。指示待ち工程であるステップS8では、予め定められた時間T1秒以内に表示操作部7を介して承認の有無に関する指令が入力されたか否かを判定する。T1秒経過する前に表示操作部7に承認の有無に関する指令が入力された場合、ステップS7に移行する。他方、T1秒以内に表示操作部7に承認の有無に関する指令が入力されなかった場合、ステップS5に移行する。
【0071】
このように第4実施例の舵角停止処理では、長時間の間に承認の有無が選択されずに舵板駆動部2を停止させるか否かが曖昧になって船舶の航行により悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0072】
その他、第4実施例の舵角停止処理では、第3実施例の舵角停止処理を実行する場合と同様の作用効果を奏する。
【0073】
(第5実施例)
第5実施例の舵角停止処理の手順は、第3実施例の舵角停止処理の手順と類似している。それ故、第4実施例の舵角停止処理の手順については、
図6を参照しながら第3実施例の舵角停止処理の手順と異なる点についても主に説明する。
【0074】
第5実施例の舵角停止処理では、ステップS4にて警告及び入力すべき旨を表示した後、ステップS9に移行する。遮断待機工程であるステップS9では、ステップS2において故障等であると判定されてから予め定められた時間T2秒経過しているか否かを判定する。時間T2秒経過していない場合には、ステップS3に移行して、遮断機構27に切換信号を出力することを継続する。他方、時間T2秒経過している場合には、ステップS5に移行し、舵板駆動部2を停止し舵角を維持する。その後、ステップS6に移行して、作動させる操舵系統を第1操舵系統3Lから第2操舵系統3Rに切換える。
【0075】
このように第5実施例の舵角停止処理では、突発的なトラブルにより一時的に故障等の状態になり、その後故障等が解消された際に、舵板駆動部2を停止することを抑制することができる。これにより、舵板駆動部2が誤って停止してしまって舵板駆動部2の停止回数が増加することを抑制することができる。
【0076】
その他、第5実施例の舵角停止処理では、第3実施例の舵角停止処理を実行する場合と同様の作用効果を奏する。
【0077】
<第2実施形態>
第2実施形態の操舵制御システム1Aは、第1実施形態の操舵制御システム1と構成が類似している。従って、第2実施形態の操舵制御システム1Aの構成については、第1実施形態の操舵制御システム1と異なる点について主に説明し、同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
第2実施形態の操舵制御システム1Aは、
図7に示すように、舵板駆動部2と、電液駆動装置3Aと、制御ユニット4と、操舵部5、センサ群6A、表示操作部7とを備えている。電液駆動装置3Aは、複数の操舵系統(本実施形態では、2つの操舵系統3AL,3AR)を有しており、2つの操舵系統3AL,3ARは、共に同一の機能を有している。即ち、電液駆動装置3Aでもまた、一方の操舵系統3ALである第1操舵系統3ALが主に作動し、第1操舵系統3ALが故障等した際に第2操舵系統3ARが舵板駆動部2を作動させる。また、2つの操舵系統3AL,3ARは、舵板駆動部2と共に操舵装置30Aを構成している。以下では、2つの操舵系統3AL,3ARについて説明するが、2つの操舵系統3AL,3ARは、同一の構成を有している。それ故、第1操舵系統3ALの構成についてのみ説明し、第2操舵系統3ARの構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
第1操舵系統3ALは、圧液供給機20Aと、リリーフ機構26と、遮断機構27とを備えており、圧液供給機20Aは、主に液圧ポンプ21Aと、電動機22と、傾転機構51と、パイロットポンプ52とを備えている。液圧ポンプ21Aは、例えば可変容量形の斜軸ポンプであって、2つの油通路53a,53bを介して第1シリンダ室15a及び第2シリンダ室16aに夫々接続されている。また、液圧ポンプ21Aの入力軸21aには、電動機22が連結されており、電動機22によって入力軸21aを回転することで液圧ポンプ21Aから作動液を吐出させることができる。また、液圧ポンプ21Aは、その斜軸の傾転角を変えることによって作動液の吐出方向を切換えることができるようになっている。即ち、液圧ポンプ21Aは、斜軸を一方に傾転させると2つの油通路53a,53bの一方から作動液を吸入し、更にその作動液を加圧して他方に吐出するようになっている。また、液圧ポンプ21Aは、斜軸を他方に傾転させると、2つの油通路53a,53bの他方から作動液を吸入し、更にその作動液を加圧して一方に吐出するようになっている。それ故、液圧ポンプ21Aは、斜軸の傾転角を変えることによって第1シリンダ室15a及び第2シリンダ室16aの何れかに作動液を供給することができようになっている。このように構成される液圧ポンプ21Aには、その斜軸の傾転角を変えるべく傾転機構51が設けられている。
【0080】
傾転機構51は、サーボピストン61と方向制御弁62とトルクモータ63とを有している。サーボピストン61は、そこに供給される圧液の流れ方向に応じて軸線方向に移動し、移動することによって液圧ポンプ21Aの傾転角を変えるようになっている。また、サーボピストン61は、方向制御弁62を介してパイロットポンプ52及びタンク28に接続されている。パイロットポンプ52は、例えば固定容量形のポンプであり、パイロット液を吐出する。吐出されるパイロット液は、方向制御弁62に導かれ、方向制御弁62によって流れる方向が切替えられるようになっている。
【0081】
方向制御弁62は、スプール62aを有しており、スプール62aの位置に応じてサーボピストン61に対する圧液の給排を制御する。即ち、スプール62aの位置を変えることによってサーボピストン61が移動し、それによって傾転角が変わる。このような機能を有するスプール62aは、トルクモータ63に繋がっており、トルクモータ63によってその位置を変えられるようになっている。また、トルクモータ63は、操舵制御装置4aと接続されており、操舵制御装置4aから出力される信号に応じてスプール62aの位置を変更する。
【0082】
このように傾転機構51は、パイロットポンプ52から吐出されるパイロット油の流れ方向を方向制御弁62によって制御することによってサーボピストン61を移動させ、液圧ポンプ21Aの傾転角を変更する。即ち、操舵制御装置4aは、トルクモータ63の動きを制御して液圧ポンプ21Aから舵板駆動部2に流れる作動液の方向を切換える。これにより、舵板12を周方向一方及び他方に揺動させ、その舵角を調整することができる。また、パイロットポンプ52から吐出されるパイロット液は、遮断機構27にも導かれている。遮断機構27は、自己圧供給通路33aによって導かれる圧液に代えてパイロットポンプ52からのパイロット液によって駆動するようになっている。
【0083】
即ち、遮断機構27では、遮断切換弁42に切換信号が入力されると、第3パイロット通路34cがタンク通路33bに接続されると共に、第4パイロット通路34dがパイロットポンプ52に接続される。これにより、アンロード遮断弁41が開状態となる。これにより、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間の作動液の行き来が可能になり、この状態で電動機22が駆動すると舵板駆動部2が作動して舵板12が揺動する。他方、遮断切換弁42への切換信号が停止すると、第4パイロット通路34dがタンク通路33bに接続されると共に、第3パイロット通路34cがパイロットポンプ52に接続される。これにより、アンロード遮断弁41が閉状態となる。これにより、液圧ポンプ21と舵板駆動部2との間で作動液の行き来ができなくなり、舵板12の舵角が維持される。
【0084】
このように構成される操舵制御システム1Aでは、操舵部5から制御ユニット4の操舵制御装置4aに入力される操舵指令に応じて操舵制御装置4aが電動機22を駆動させて舵板12の舵角を調整する。また、判定遮断装置4bは、操舵制御装置4aから出力される信号(操舵信号及び起動信号等)の有無及びセンサ群6Aの検出結果に基づいて操舵装置30Aの状態を判定し、その判定結果に応じて舵板駆動部2を停止させ且つ舵角を維持する。なお、センサ群6Aには、基本的に第1実施形態のセンサ群6Aと同じセンサが含まれているが、操舵装置30Aには方向切換弁23が備わっていないので、方向切換弁作動検出センサに代えてポンプ傾転角センサが含まれている。また、舵板作動検出センサであるポンプ傾転角センサは、液圧ポンプ21Aの傾転角を検出するセンサであり、検出結果を判定遮断装置4b等に出力する。
【0085】
このように構成されている操舵制御システム1Aでは、第1実施形態と同様に2つの操舵系統3L,3Rのうち何れか一方だけを作動させて舵板駆動部2を駆動させており、判定遮断装置4bは、一方の操舵系統3L,3R(本実施形態では、第1操舵系統3L)の状態を判定する。なお、第2実施形態において各操舵系統3L,3Rの状態を判定する際に用いられるセンサの検出結果の一例を表2に示す。
【0086】
【0087】
なお、表2は、表1と同様に行方向に各種センサ及び信号を示し、列方向に各操舵系統3L,3Rの状態を示している。判定遮断装置4bは、主に表1における「○」で示されるセンサの検出結果(検出した値及び状態だけでなく、何も検出されない状態も含む)に基づいて、各操舵系統3L,3Rの状態を判定する。即ち、無反応状態及び制御不能状態の判定では、ポンプ傾転角センサが用いられる。
【0088】
判定遮断装置4bは、センサ群6A及び信号の検出結果に基づいて第1操舵系統3Lが故障状態にあると判定すると、舵板駆動部2を停止させ且つ舵角を維持するようになっている。このように、制御ユニット4の判定遮断装置4bは、第1操舵系統3Lの状態が故障状態であると判定した際に舵板駆動部2を停止させ且つ舵角を維持する舵角停止処理を実行するようになっている。なお、実行される舵角停止処理は、第1実施形態の操舵制御システム1にて実行される舵角停止処理と同じであるので、その詳細については説明を省略する。
【0089】
このように舵角停止処理は、双方向に吐出可能な液圧ポンプ21Aを備える操舵制御システム1Aであっても適用することができ、多種多様な操舵制御システムに適用することができる。また、適用された操舵制御システム1Aでは、第1実施形態の操舵制御システム1と同様の作用効果を奏することができる。
【0090】
<その他の実施形態>
第1及び第2実施形態の操舵制御システム1,1Aでは、電液駆動装置3が2つの操舵系統3L,3R、3AL,3ARを備えているが、必ずしも2つに限定されない。例えば、1つの操作系統だけであってもよく、また3つ以上の操舵系統を備えていてもよい。また、2つ以上の操舵系統を備えている場合、作動する操舵系統の数は1つに限定されず2つ以上であってもよい。また、第1及び第2実施形態の操舵制御システム1,1Aでは、遮断機構27によって作動液の行き来を止めるようになっているが、遮断機構27の構造は前述するものに限定されない。切換信号に入力状態に応じて作動液の行き来を止めることができる機構であればよい。また、遮断機構27では、切換信号が入力されると作動液の行き来を可能にし、また切換信号が停止すると作動液の行き来が止められるようになっているが、逆であってもよい。即ち、遮断機構27は、切換信号が入力されると作動液の行き来を止め、また切換信号が停止すると作動液の行き来を可能にするように構成されてもよい。
【0091】
第1及び第2実施形態の操舵制御システム1,1Aで実行される舵角停止処理について5つの実施例を示しているが、このような実施例に限定されない。舵角停止処理は、判定される状態に応じて舵板駆動部2の動きを止め且つ舵角を維持するような処理であればよい。また、判定遮断装置4bは、少なくとも3つ以上の検出結果に基づいて操舵装置30,30Aの状態を判定しているが、必ずしも3つ以上である必要はない。即ち、2つの検出結果に基づいて操舵装置30,30Aの状態を判定してもよい。また、本実施形態では、主に操舵系統3L,3Rの状態を検出しているが、舵板駆動部2の状態を検出するようにしいてもよい。
【0092】
また、第1及び第2実施形態の操舵制御システム1,1Aでは、液圧ポンプ21,21Aとして斜軸ポンプが採用されているが、斜板ポンプであってもよい。また、第1及び第2実施形態の操舵制御システム1,1Aに備わる圧液供給機20,20Aの構成も図に示されるような構成に限定されず、切換信号に基づいて舵板駆動部2の給排を停止できるような構成であればよい。
【0093】
更に、第1及び第2実施形態の操舵制御システム1,1Aでは、舵板駆動部2としてラムシリンダタイプのものが採用されているが、必ずしもこのような機構に限定されない。即ち、舵板駆動部2は、ロータリベーンタイプのものであってもよく、またトランクピストンタイプのものであってもよい。また、前述する電液駆動装置3、3Aもまた一例に過ぎず、舵板駆動部2に圧液を供給し且つその流れ方向を切換えることができるものであればよい。
【0094】
更に、第1及び第2実施形態の操舵制御システム1,1Aでは、制御ユニット4が複数の操舵系統3L,3R,3AL,3ARに対して1つしか設けられていないが、各操舵系統3L,3R,3AL,3AR毎に1つずつ設けられていてもよい。また、制御ユニット4を構成する操舵制御装置4a及び判定遮断装置4bは、必ずしも1つのユニットとして構成されている必要はなく、別々に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1,1A 操舵制御システム
2 舵板駆動部
3,3A 電液駆動装置
4b 判定遮断装置(操舵検出器)
5 操舵部
6 センサ群(複数のセンサ、舵板作動検出器、液面検出器)
7 表示操作部(指示部)
12 舵板
20,20A 圧液供給機(予備圧液供給機)
27 遮断機構
28 タンク
30,30A 操舵装置