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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】油圧システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
F15B11/08 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018010391
(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公開番号】P2019128008
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】山崎 好司
(72)【発明者】
【氏名】原 健二朗
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-308073(JP,A)
【文献】実開平03-014384(JP,U)
【文献】特開2018-054031(JP,A)
【文献】特開2016-169814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータを第1方向に作動させるための第1パイロットポートおよび前記油圧アクチュエータを第2方向に作動させるための第2パイロットポートを有する制御弁と、
二次圧ラインにより前記第1パイロットポートと接続されるとともに、一次圧ラインにより圧力源と接続された正比例型の電磁比例弁と、
前記一次圧ラインと前記第2パイロットポートとを接続する中継ラインに設けられた、出力圧が一定の減圧弁と、
操作部に対する操作量に応じた操作信号を出力する操作装置と、
前記操作部が中立状態のときには前記電磁比例弁が前記減圧弁の出力圧と等しい二次圧を出力し、前記操作部が操作されたときには前記操作装置から出力される操作信号に応じて前記電磁比例弁の二次圧が変化するように前記電磁比例弁へ指令電流を送給する制御装置と、
前記中継ラインを前記一次圧ライン側の第1中継ラインと前記第2パイロットポート側の第2中継ラインとに分断するように前記減圧弁と前記第2パイロットポートとの間に設けられた切換弁であって、中立位置では前記第1中継ラインをブロックするとともに前記第2中継ラインをタンクラインと連通し、前記電磁比例弁の二次圧が設定値を上回ったときに、当該二次圧によって、前記第1中継ラインを前記第2中継ラインと連通する作動位置に切り換えられる切換弁と、を備え、
前記減圧弁の出力圧は、前記設定値よりも大きく設定されている、油圧システム。
【請求項2】
前記減圧弁の出力圧は、前記電磁比例弁の二次圧の最大値と前記設定値の平均値の±10%の範囲内に設定されている、請求項に記載の油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向に作動する油圧アクチュエータを含む油圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、双方向に作動する油圧アクチュエータを電気的に制御する油圧システムでは、油圧アクチュエータと接続された、第1および第2パイロットポートを有する制御弁と、それらの第1および第2パイロットポートへ二次圧を出力する一対の電磁比例弁とが用いられる。
【0003】
近年では、双方向に作動する油圧アクチュエータを単一の電磁比例弁を用いて電気的に制御することが可能な油圧システムが提案されている。例えば、特許文献1には、図4に示すような油圧システム100が開示されている。
【0004】
この油圧システム100では、制御弁110の第1パイロットポート111が二次圧ライン122により電磁比例弁130と接続されており、電磁比例弁130が一次圧ライン121により圧力源140と接続されている。また、一次圧ライン121が第1中継ライン151により切換弁160と接続されており、切換弁160が第2中継ライン152により制御弁110の第2パイロットポート112と接続されている。
【0005】
切換弁160は、中立位置では第1中継ライン151をブロックするとともに、第2中継ライン152をタンクライン153と連通する。このため、制御弁110は、電磁比例弁130の二次圧に応じて中立位置から図4の右方向へシフトする。
【0006】
一方、電磁比例弁130の二次圧が切換弁160の設定値を上回ったときは、切換弁160が作動位置に切り換えられる。作動位置では、切換弁160は、第1中継ライン151を第2中継ライン152と連通する。これにより、制御弁110の第2パイロットポート112には圧力源140の圧力(一次圧)が導かれ、制御弁110は、電磁比例弁130の二次圧に応じて中立位置から図4の左方向へシフトする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-169814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4に示す油圧システム100に対しては、さらなる制御性の向上が望まれる。
【0009】
そこで、本発明は、双方向に作動する油圧アクチュエータに対して単一の電磁比例弁を用いた場合の制御性に優れた油圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の油圧システムは、油圧アクチュエータを第1方向に作動させるための第1パイロットポートおよび前記油圧アクチュエータを第2方向に作動させるための第2パイロットポートを有する制御弁と、二次圧ラインにより前記第1パイロットポートと接続されるとともに、一次圧ラインにより圧力源と接続された電磁比例弁と、前記一次圧ラインと前記第2パイロットポートとを接続する中継ラインに設けられた、出力圧が一定の減圧弁と、操作部に対する操作量に応じた操作信号を出力する操作装置と、前記操作部が中立状態のときには前記電磁比例弁が前記減圧弁の出力圧と等しい二次圧を出力し、前記操作部が操作されたときには前記操作装置から出力される操作信号に応じて前記電磁比例弁の二次圧が変化するように前記電磁比例弁へ指令電流を送給する制御装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、中立状態の操作部が操作されると、第1パイロットポートに導入される電磁比例弁の二次圧が、第2パイロットポートに導入される減圧弁の出力圧と等しい状態から徐々に大きくなったり徐々に小さくなったりする。すなわち、操作信号の出力範囲においては、制御弁に作用するパイロット圧が連続的に変化する。このため、制御性に優れた油圧システムを得ることができる。
【0012】
前記電磁比例弁は、正比例型であり、上記の油圧システムは、前記中継ラインを前記一次圧ライン側の第1中継ラインと前記第2パイロットポート側の第2中継ラインとに分断するように前記減圧弁と前記第2パイロットポートとの間に設けられた切換弁であって、中立位置では前記第1中継ラインをブロックするとともに前記第2中継ラインをタンクラインと連通し、前記電磁比例弁の二次圧が設定値を上回ったときに、当該二次圧によって、前記第1中継ラインを前記第2中継ラインと連通する作動位置に切り換えられる切換弁をさらに備え、前記減圧弁の出力圧は、前記設定値よりも大きく設定されてもよい。この構成によれば、電気機器または電磁比例弁自身の故障等により電磁比例弁の二次圧がゼロとなった場合には、切換弁が中立位置に切り換わって第2中継ラインがタンクラインと連通する。これにより、制御弁が中立位置に維持されるため、フェイルセーフを図ることができる。
【0013】
前記減圧弁の出力圧は、前記電磁比例弁の二次圧の最大値と前記設定値の平均値の±10%の範囲内に設定されていてもよい。この構成によれば、減圧弁の出力圧を中心とする制御弁の動作特性を調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、双方向に作動する油圧アクチュエータに対して単一の電磁比例弁を用いた場合の制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る油圧システムの概略構成図である。
図2】前記実施形態における電磁比例弁の二次圧と制御弁のシフト量との関係を示すグラフである。
図3】油圧アクチュエータが複数ある場合の信号圧回路図である。
図4】従来の油圧システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る油圧システム1Aを示す。この油圧システム1Aは、双方向(第1方向Aおよび第2方向B)に作動する油圧アクチュエータ4と、一対の給排ライン41,42により油圧アクチュエータ4と接続された制御弁3と、操縦者により操作される操作装置9を含む。
【0017】
図例では、油圧アクチュエータ4が油圧シリンダであり、第1方向Aが伸長方向、第2方向が短縮方向である。ただし、第1方向Aが短縮方向、第2方向Bが伸長方向であってもよい。あるいは、油圧アクチュエータ4は、例えば時計回り(第1方向)および反時計回り(第2方向)に回転する油圧モータであってもよい。
【0018】
制御弁3は、供給ライン12により第1圧力源11と接続されるとともに、タンクライン13によりタンクと接続されている。制御弁3は、当該制御弁3につながる全てのライン12,13,41,42をブロックする中立位置と、一対の給排ライン41,42の一方を供給ライン12と連通し、他方をタンクライン13と連通する第1位置(図1の左側位置)および第2位置(図1の右側位置)との間でシフトする。なお、油圧アクチュエータ4の用途によっては、制御弁3は、中立位置で給排ライン41,42をタンクライン13と連通してもよい。
【0019】
より詳しくは、制御弁3は、当該制御弁3を中立位置から第1位置にシフトさせて油圧アクチュエータ4を第1方向Aに作動させるための第1パイロットポート31と、当該制御弁3を中立位置から第2位置にシフトさせて油圧アクチュエータ4を第2方向Bに作動させるための第2パイロットポート32を含む。また、制御弁3は、当該制御弁3を中立位置に維持するための一対のスプリング33,34を含む。
【0020】
第1パイロットポート31は、二次圧ライン52により電磁比例弁5と接続されている。電磁比例弁5は、一次圧ライン51により第2圧力源14と接続されている。本実施形態では、電磁比例弁5が、当該電磁比例弁5に送給される指令電流と当該電磁比例弁5が出力する二次圧P2が正の相関を示す正比例型である。
【0021】
一次圧ライン51は、中継ライン60により第2パイロットポート32と接続されている。中継ライン60には、出力圧Pbが一定の減圧弁7が設けられている。一次圧ライン51の圧力と中継ライン60における減圧弁7の上流側の圧力は、第2圧力源14の圧力(一次圧)P1である。
【0022】
本実施形態では、中継ライン60における減圧弁7と第2パイロットポート32との間に切換弁6が設けられている。切換弁6は、中継ライン60を一次圧ライン51側の第1中継ライン61(減圧弁7を経由するもの)と第2パイロットポート32側の第2中継ライン62とに分断するように設けられている。また、切換弁6は、タンクライン63によりタンクと接続されている。
【0023】
切換弁6は、電磁比例弁5の二次圧P2に応じて作動するパイロット式である。切換弁6は、中立位置(図2の右側位置)では、第1中継ライン61をブロックするとともに、第2中継ライン62をタンクライン63と連通する。
【0024】
切換弁6は、電磁比例弁5の二次圧P2が設定値Paを上回ったときに、当該二次圧P2によって作動位置(図2の左側位置)に切り換えられる。作動位置では、切換弁6は、第1中継ライン61を第2中継ライン62と連通する。
【0025】
減圧弁7の出力圧Pbは、切換弁6が中立位置から作動位置に切り換わる設定値Paよりも大きく設定されている。本実施形態では、減圧弁7の出力圧Pbが、電磁比例弁5の二次圧の最大値P2maxと設定値Paの平均値((P2max+Pa)/2)の±10%の範囲内に設定されている。なお、電磁比例弁5の二次圧の最大値P2maxは、第2圧力源14の圧力P1と等しい。
【0026】
上述した操作装置9は、操作部91を有し、操作部91に対する操作量に応じた操作信号を出力する。つまり、操作装置9から出力される操作信号は、操作量が大きくなるほど大きくなる。操作部91は、例えば操作レバーであるが、フットペダルなどであってもよい。例えば、操作装置9は、操作信号として電気信号を出力する電気ジョイスティックである。
【0027】
操作装置9から出力される操作信号は、制御装置8へ入力される。制御装置8は、操作信号に基づいて電磁比例弁5を制御する。例えば、制御装置8は、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有するコンピュータであり、ROMに格納されたプログラムがCPUにより実行される。
【0028】
より詳しくは、制御装置8は、操作装置9の操作部91が中立状態のとき(操作装置9から出力される操作信号がゼロのとき)には、電磁比例弁5が減圧弁7の出力圧Pbと等しい二次圧P2を出力するように電磁比例弁5へ指令電流を送給する。一方、操作部91が操作されたとき(操作装置9から出力される操作信号がゼロより大きいとき)には、制御装置8は、操作装置9から出力される操作信号に応じて電磁比例弁5の二次圧P2が、減圧弁7の出力圧Pbを基準として変化するように、電磁比例弁5へ指令電流を送給する。
【0029】
つまり、操作信号の出力範囲に対応する電磁比例弁5の二次圧P2の使用範囲は、図2に示すように減圧弁7の出力圧Pbを中心とする、設定値Paと最大値P2maxの間の範囲である。なお、図2における「第1方向作動側」とは図1の右方向(制御弁3が中立位置から左側位置にシフトする方向)であり、図2における「第2方向作動側」とは図1の左方向(制御弁3が中立位置から右側位置にシフトする方向)である。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の油圧システム1Aでは、中立状態の操作部91が操作されると、第1パイロットポート31に導入される電磁比例弁5の二次圧P2が、第2パイロットポート32に導入される減圧弁7の出力圧Pbと等しい状態から徐々に大きくなったり徐々に小さくなったりする。すなわち、操作信号の出力範囲においては、制御弁3に作用するパイロット圧が連続的に変化する。このため、制御性に優れた油圧システム1Aを得ることができる。
【0031】
また、本実施形態では、電磁比例弁5が正比例型であり、中継ライン60にパイロット式の切換弁6が設けられているので、電気機器または電磁比例弁5自身の故障等により電磁比例弁5の二次圧P2がゼロとなった場合には、切換弁6が中立位置に切り換わって第2中継ライン62がタンクライン63と連通する。これにより、制御弁3が中立位置に維持されるため、フェイルセーフを図ることができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、減圧弁7の出力圧Pbが、電磁比例弁5の二次圧の最大値P2maxと設定値Paの平均値の±10%の範囲内に設定されているので、減圧弁7の出力圧を中心とする制御弁3の動作特性を調整することができる。
【0033】
<変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0034】
例えば、図1では、油圧アクチュエータ4と制御弁3のセットの数が1つであったが、そのセットの数が複数である場合には、図3に示すように、各制御弁3に対して電磁比例弁5および切換弁6を設けるとともに、全ての制御弁3に対して1つの減圧弁7が共通に使用されてもよい。
【0035】
また、切換弁6は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1A、1B 油圧システム
3 制御弁
31 第1パイロットポート
32 第2パイロットポート
4 油圧アクチュエータ
5 電磁比例弁
51 一次圧ライン
52 二次圧ライン
6 切換弁
60 中継ライン
61 第1中継ライン
62 第2中継ライン
63 タンクライン
7 減圧弁
8 制御装置
9 操作装置
91 操作部
図1
図2
図3
図4