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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】移動体プラットフォームシステム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220113BHJP
   F24F 1/0076 20190101ALI20220113BHJP
   F24F 1/0353 20190101ALI20220113BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 T
F24F1/0076
F24F1/0353
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017141348
(22)【出願日】2017-07-20
(65)【公開番号】P2019021220
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】514183134
【氏名又は名称】フラワー・ロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】特許業務法人iRify国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】今橋 景人
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-246588(JP,A)
【文献】特開2017-117353(JP,A)
【文献】特開2016-220174(JP,A)
【文献】特開2014-209293(JP,A)
【文献】特開2003-290102(JP,A)
【文献】特開2005-333495(JP,A)
【文献】特開2004-007297(JP,A)
【文献】特開2015-184054(JP,A)
【文献】特開2017-108259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0324271(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
F24F 1/0076
F24F 1/0353
F24F 7/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のデバイスを駆動することによりユーザに所定のサービスを提供するサービス機器と、前記サービス機器を搭載して移動する移動体と、からなる移動体プラットフォームシステムであって、
前記移動体は、
空間マップを生成するマップ生成部と、
各種センシングを行うセンサ部と、
前記空間マップを時系列に従って記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された空間マップを参照して巡回コースを予測し決定するコース決定部と、
前記巡回コースに基づいて移動するよう駆動制御する駆動制御部と、
前記移動の過程で前記センサ部による測定を行う測定制御部と、
前記測定の結果に基づいて前記巡回コースを更新し前記記憶部に記憶する更新部と、
カメラ部と、
前記カメラ部で撮像された画像信号を画像処理して画像データを得る画像処理部と、
を備え、
前記サービス機器は、
オゾン・イオンを発生するオゾン・イオン発生部と、
温度を測定する温度センサと、
湿度を測定する湿度センサと、
空気汚染度を測定する匂いセンサと、
CO2濃度を測定するCO2センサと、
照度を測定する照度センサと、
少なくとも前記温度センサ、前記湿度センサ、前記CO2センサ、前記匂いセンサと、及び前記照度センサによる測定動作を制御する測定制御部と、
を備え、
前記マップ生成部は、前記画像処理部で得られた画像データに基づいて3次元の第1の空間マップを生成し、当該第1の空間マップに基づいて2次元の第2の空間マップを生成し、前記空間マップとして前記第1の空間マップを、少なくとも前記カメラ部での撮像の日時情報と共に、前記記憶部に記憶し、
前記コース決定部は、少なくとも前記巡回コースの決定の日時情報に基づいて、当該日時情報と相関のある日時情報に対応する前記第1の空間マップを前記記憶部より抽出し、抽出した前記第1の空間マップに基づいて前記巡回コースを予測し決定し、
前記マップ生成部は、前記第1の空間マップ上に外部機器の設置場所を特定し、外部機器設置場所情報を前記記憶部に記憶し、
前記サービス機器は、前記移動体に搭載されると、当該移動体からの電源供給、或いは電源部からの電源供給を受け、前記移動体の巡回中に、前記測定制御部は、前記温度センサ、前記湿度センサ、前記CO2センサ、前記匂いセンサと、及び前記照度センサの少なくともいずれかによる測定を行い、測定結果を環境情報として前記移動体に送信し、
前記移動体では、前記マップ生成部は、前記第1の空間マップ上に前記環境情報を対応付け前記記憶部に記憶し、
前記移動体は、前記記憶部に記憶された前記第1の空間マップに対応付けられた前記日時情報、前記外部機器設置場所情報、及び前記環境情報に基づいて、前記外部機器の設定場所及び設置時期を予測し提案する予測部を更に備えた
移動体プラットフォームシステム。
【請求項2】
前記移動体又は前記サービス機器は、
外部機器までの距離を測距し前記外部機器の設置場所を特定すると共に、前記外部機器に対してリモコン信号を送信する遠隔操作部を更に有する
請求項1に記載の移動体プラットフォームシステム。
【請求項3】
充電ステーションを更に備え、
前記移動体及び前記サービス機器は、前記充電ステーションを介して外部サーバ装置と通信する通信部を更に備え、
前記移動体又は前記サービス機器は、前記充電ステーションを介して前記外部サーバ装置より前記外部機器に対応する前記リモコン信号に係る赤外線リモコン情報、又はブルートゥース(登録商標)信号に係る情報を取得する
請求項2に記載の移動体プラットフォームシステム。
【請求項4】
前記予測部は、電子メールの送信、音声出力、発光、或いは所定動作の少なくともいずれかにより前記提案を行う
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の移動体プラットフォームシステム。
【請求項5】
前記移動体は、
人物の存在を検知する人物検知部と、
環境を特定する環境特定部と、を更に備え、
前記人物検知部により人物の存在を検知した時には、前記環境特定部により当該人物に係る環境を特定し、前記予測部により予測動作を実行して前記環境を実現する動作を予測し、前記サービス機器又は外部機器を当該環境に合わせて駆動する
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の移動体プラットフォームシステム。
【請求項6】
前記移動体は、
人物のスケジュールを管理するスケジュール管理部と、
環境を特定する環境特定部と、を更に備え、
前記スケジュール管理部により所定のタイミングを検知した時には、前記環境特定部により当該スケジュールに合致した環境を特定し、前記予測部により予測動作を実行して前記環境を実現する動作を予測し、前記サービス機器又は外部機器を当該環境に合わせて駆動する
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の移動体プラットフォームシステム。
【請求項7】
前記予測動作に基づく動作についてユーザからのフィードバックを受けたときは、当該フィードバックに係る情報を前記空間マップと対応付けて記憶部に記憶する
請求項5又は請求項6に記載の移動体プラットフォームシステム。
【請求項8】
前記第1の空間マップに基づいて、他の移動体プラットフォームシステムを遠隔より駆動制御する制御信号を送信する主制御部を更に備えた
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の移動体プラットフォームシステム。
【請求項9】
前記サービス機器は、ロボットアームの機能を備え、
前記ロボットアームにより外部機器を把持し移動する
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の移動体プラットフォームシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、屋内等において、サービス機器を搭載して床面等を移動しつつ、所定の予測動作に基づいて空気清浄などの各種サービスを提供する移動体プラットフォームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自走式の電子機器の中には、一般的な掃除機能に加えて、空気清浄機能やイオン発生機能等といった種々の機能を備えるものがある。
【0003】
例えば、特許文献1では、自走式の電子機器で、掃除機能、空気清浄機能、及びイオン発生部を備え、温度測定部の測定により異常温度を検知すると外部に通知し、自機も移動する自走式電子機器が開示されている。
【0004】
特許文献2では、空気調和機と自走式掃除機との連携システムが開示されている。同システムでは、自走式掃除機が空気調和機に開始信号を送り当該空気調和機を駆動制御するもので、汚れ検知センサも備え、その検知信号に基づいて空調運転する。
【0005】
さらに、特許文献3では、自走式の空気清浄器と、汚れ検知センサを有する電気機器とを備えたシステムが開示されている。同システムでは、検知信号を受信すると、電気機器に対応した位置まで移動して移動先で空気清浄を行う。
【0006】
一方、今日では、スマートホーム等に代表されるようにホームネットワークを活用したIoT(Internet Of Things)が屋内に構築され、エアコンや照明器具等といった様々な情報家電が遠隔制御可能となっている。
【0007】
この種の技術としては、例えば特許文献4では、家電から取得した状態情報をネットワーク接続された複数の家電と共有する家電管理システムが開示されている。
【0008】
さらに、特許文献5では、所謂ホームゲートウェイにより家電を制御する家電認識システムが開示されている。同システムでは、機器認識機能部は、電子機器が反応している場合に、送信した電源ON/OFF信号の機種が電子機器の機種であることを認識し、認識した機種に対応したすべての制御用コマンド情報をダウンロードし制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-146310号公報
【文献】特開2015-197250号公報
【文献】特開2017-44408号公報
【文献】国際公開公報 WO2016/052018A1
【文献】特開2009-288859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した従来技術では、部屋の汚染等の環境の現状を時系列的に連続する空間マップにより予測することは実現されていない。つまり、仮に空間マップを利用するとしても、現状の把握に止まり、予測動作を実施することは困難であった。
【0011】
さらに、ホームゲートウェイのように、部屋に設置することで、部屋内の複数の情報家電を統括制御する技術は、前述のように存在するが、自走式の移動体が屋内のIoTのハブ的な役割を担う場合に、空間マップ、部屋の環境情報等、及び予測結果に基づいて、周辺家電の最適な駆動制御を行うことは実現されていない。
【0012】
また、家電の設置時期、及び設置場所の提案を、時系列的に連続した空間マップに基づく予測動作により得られた予測結果に基づいて行うことは実現されていない。
【0013】
以上が実現すれば、室内を移動する移動体により、従来にない付加価値の高いサービスを実現し、快適なライフスタイルをユーザに提供できるであろう。例えば、予測動作に基づいて、環境を整える環境リフレッシャとしてのサービス提供も期待される。
【0014】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ユーザにサービスを提供するサービス機器を移動体に搭載して室内等を自動走行しつつ利用者に快適なライフスタイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る移動体プラットフォームシステムは、所定のデバイスを駆動することによりユーザに所定のサービスを提供するサービス機器と、前記サービス機器を搭載して移動する移動体と、からなる移動体プラットフォームシステムであって、前記移動体は、空間マップを生成するマップ生成部と、各種センシングを行うセンサ部と、前記空間マップを時系列に従って記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された空間マップを参照して巡回コースを予測し決定するコース決定部と、前記巡回コースに基づいて移動するよう駆動制御する駆動制御部と、前記移動の過程で前記センサ部による測定を行う測定制御部と、前記測定の結果に基づいて前記巡回コースを更新し前記記憶部に記憶する更新部と、カメラ部と、前記カメラ部で撮像された画像信号を画像処理して画像データを得る画像処理部と、を備え、前記サービス機器は、オゾン・イオンを発生するオゾン・イオン発生部と、温度を測定する温度センサと、湿度を測定する湿度センサと、空気汚染度を測定する匂いセンサと、CO2濃度を測定するCO2センサと、照度を測定する照度センサと、少なくとも前記温度センサ、前記湿度センサ、前記CO2センサ、前記匂いセンサと、及び前記照度センサによる測定動作を制御する測定制御部と、を備え、前記マップ生成部は、前記画像処理部で得られた画像データに基づいて3次元の第1の空間マップを生成し、当該第1の空間マップに基づいて2次元の第2の空間マップを生成し、前記空間マップとして前記第1の空間マップを、少なくとも前記カメラ部での撮像の日時情報と共に、前記記憶部に記憶し、前記コース決定部は、少なくとも前記巡回コースの決定の日時情報に基づいて、当該日時情報と相関のある日時情報に対応する前記第1の空間マップを前記記憶部より抽出し、抽出した前記第1の空間マップに基づいて前記巡回コースを予測し決定し、前記マップ生成部は、前記第1の空間マップ上に外部機器の設置場所を特定し、外部機器設置場所情報を前記記憶部に記憶し、前記サービス機器は、前記移動体に搭載されると、当該移動体からの電源供給、或いは電源部からの電源供給を受け、前記移動体の巡回中に、前記測定制御部は、前記温度センサ、前記湿度センサ、前記CO2センサ、前記匂いセンサと、及び前記照度センサの少なくともいずれかによる測定を行い、測定結果を環境情報として前記移動体に送信し、前記移動体では、前記マップ生成部は、前記第1の空間マップ上に前記環境情報を対応付け前記記憶部に記憶し、前記移動体は、前記記憶部に記憶された前記第1の空間マップに対応付けられた前記日時情報、前記外部機器設置場所情報、及び前記環境情報に基づいて、前記外部機器の設定場所及び設置時期を予測し提案する予測部を更に備えた。
【0018】
本発明の第の態様に係る移動体プラットフォームシステムは、第1の態様において、前記移動体又は前記サービス機器は、外部機器までの距離を測距し、前記外部機器の設置場所を特定すると共に、前記外部機器に対してリモコン信号を送信する遠隔操作部を更に有する。
【0020】
本発明の第3の態様に係る移動体プラットフォームシステムは、第2態様において、充電ステーションを更に備え、前記移動体及び前記サービス機器は、前記充電ステーションを介して外部サーバ装置と通信する通信部を更に備え、前記移動体又は前記サービス機器は、前記充電ステーションを介して前記外部サーバ装置より前記外部機器に対応する前記リモコン信号に係る赤外線リモコン情報、又はブルートゥース(登録商標)信号に係る情報を取得する。
【0023】
本発明の第の態様に係る移動体プラットフォームシステムは、第1乃至第3の態様において、前記予測部は、電子メールの送信、音声出力、発光、或いは所定動作の少なくともいずれかにより前記提案を行う。
【0024】
本発明の第の態様に係る移動体プラットフォームシステムは、第1乃至第4の態様
において、前記移動体は、人物の存在を検知する人物検知部と、環境を特定する環境特定
部と、を更に備え、前記人物検知部により人物の存在を検知した時には、前記環境特定部
により当該人物に係る環境を特定し、前記予測部により予測動作を実行して前記環境を実
現する動作を予測し、前記サービス機器又は外部機器を当該環境に合わせて駆動する。
【0025】
本発明の第の態様に係る移動体プラットフォームシステムは、第1乃至第5の態様において、前記移動体は、人物のスケジュールを管理するスケジュール管理部と、環境を特定する環境特定部と、を更に備え、前記スケジュール管理部により所定のタイミングを検知した時には、前記環境特定部により当該スケジュールに合致した環境を特定し、前記予測部により予測動作を実行して前記環境を実現する動作を予測し、前記サービス機器又は外部機器を当該環境に合わせて駆動する。
【0026】
本発明の第7の態様に係る移動体プラットフォームシステムは、第5又は第6の態様において、前記予測動作に基づく動作についてユーザからのフィードバックを受けたときは、当該フィードバックに係る情報を前記空間マップと対応付けて記憶部に記憶する。
【0027】
本発明の第の態様に係る移動体プラットフォームシステムは、第1乃至第の態様において、前記空間マップに基づいて、他の移動体プラットフォームシステムを遠隔より駆動制御する制御信号を送信する主制御部を更に備える。
【0028】
本発明の第の態様に係る移動体プラットフォームシステムは、第1乃至第の態様において、前記サービス機器は、ロボットアームの機能を備え、前記ロボットアームにより外部機器を把持し移動する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ユーザにサービスを提供するサービス機器を移動体に搭載して室内等を自動走行しつつ、空間マップを用いた予測動作に基づき駆動することで、利用者に最適なサービスを提供し、更には快適なライフスタイルを提供する移動体プラットフォームシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態の移動体プラットフォームシステムの構成図である。
図2】同システムの移動体の制御系の詳細な構成を示すブロック図である。
図3】同システムのサービス機器の制御系の詳細な構成を示すブロック図である。
図4】同システムの充電ステーションの制御系の詳細な構成を示すブロック図である。
図5】同システムによる空間マップ生成の処理手順を示すフローチャートである。
図6】空間マップに係るデータ一例を示す図である。
図7】空間マップの表示例を示す図である。
図8】同システムによる外部機器の制御について説明する概念図である。
図9】同システムにより遠隔駆動制御される外部機器に設置する遠隔操作ユニットの制御系の構成を示すブロック図である。
図10】移動体及び外部機器間の距離算定を実現する構成を示す図である。
図11】発光部及び受光部の特性を説明する図である。
図12】発光部及び受光部の特性を説明する図である。
図13】移動体及び外部機器間の距離算定の原理について説明する図である。
図14】同システムによる動作の流れを示すフローチャートである。
図15】本発明の第2実施形態に係る移動体プラットフォームシステムの移動体の制御系の構成の一部を示すブロック図である。
図16】本発明の第2実施形態に係る移動体プラットフォームシステムによる動作を説明するためのフローチャートである。
図17】本発明の第3実施形態に係る移動体プラットフォームシステムの移動体の制御系の構成の一部を示すブロック図である。
図18】本発明の第3実施形態に係る移動体プラットフォームシステムによる動作を説明するためのフローチャートである。
図19】本発明の第4実施形態に係る移動体プラットフォームシステムの構成図である。
図20】本発明の第5実施形態に係る移動体プラットフォームシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ本発明の第1乃至第5実施形態について説明する。
【0032】
本発明の実施形態に係る移動体プラットフォームシステムは、第1に、空間認識により空間マップの生成を行うと共に、時系列に連続する複数の空間マップに基づいて汚染箇所等を予測し、その予測結果に基づいて、自機(サービス機器を含む)及び周辺の家電等の外部機器の最適な駆動制御を実施することを特徴の1つとする。
【0033】
第2に、予測動作により得られた予測結果に基づいて、家電等の外部機器の最適な設置時期、及び設置場所等を提案することも特徴の1つとする。
【0034】
そして、第3に、複数の家電等の外部機器を駆動制御するにあたっては、移動体がIoTのハブ的な役割も担うことも特徴の1つとする。その場合、移動体プラットフォームシステムは、外部機器に貼り付け等された遠隔操作ユニットと通信し、各外部機器の設置位置を確認した上で、それら外部機器の遠隔制御を実行する。
【0035】
第4に、ロボットアーム等をサービス機器として用いることで、深度カメラ等を用いた高さ検出により高さ方向も加味した空間マップの生成及び巡回コースの算定を行うことも特徴の1つとする。その場合、ロボットアーム等に、例えばAIスピーカ等といったユーザの嗜好に合った付加的なユニットを適宜装着して活用できる。
【0036】
以下、第1乃至第5実施形態について詳細に説明する。
【0037】
<第1実施形態>
図1には、本発明の第1実施形態に係る移動体プラットフォームシステムの構成を示し説明する。同図に示されるように、移動体プラットフォームシステムは、所定のデバイスをプログラムに従って駆動することによりユーザに所定のサービスを提供するサービス機器2と、サービス機器2を搭載して床面等を移動する移動体1とからなる。これら構成に充電ステーション3までを加えて移動体プラットフォームと定義してもよい。移動体プラットフォームシステムでは、充電ステーション3は、クラウドネットワーク5上のサーバ装置4と無線等により通信自在となっている。
【0038】
このような構成において、移動体1は、詳細は後述する各種センサを備えており、撮影により得られた画像データ等に基づいて空間マップを生成し、蓄積された空間マップを参照して巡回コースを決定し、オムニホイール等の駆動により当該巡回コースに従って室内等の床面等を走行する。サービス機器2は、ここでは不図示のコネクタ部を介して移動体1の上部に装着される。このコネクタ部は、電力端子と信号端子とを備えている。サービス機器2は、コネクタ部を介して移動体1から電源供給を受け、ここでは不図示のバッテリ等からなる電源部を充電すると共に、各種の制御信号のやりとりを行う。サービス機器2は、移動体1からの電力供給、或いは電源部からの電力供給により駆動する。
【0039】
サービス機器2に実装される所定のデバイスとしては、空気清浄デバイス、照明デバイスなど、多様なものを採用できる。充電ステーション3は、移動体1がピットインしたときに当該移動体1と電気的に接続され、移動体1の電源部に対して充電を行う。
【0040】
さらに、移動体1やサービス機器2が測定(センシング)により取得した情報、生成した空間マップ、環境情報等は、詳細は後述するが、充電ステーション3を介してクラウドネットワーク5上のサーバ装置4にも送信され、充電ステーション3及びサーバ装置4に蓄積される。したがって、複数の移動体プラットフォームシステムの間で、或いは外部機器との間でも、蓄積データの共有が可能となる。
【0041】
図2には、本発明の第1実施形態に係る移動体プラットフォームシステムにおける移動体の制御系の詳細な構成を示し説明する。
【0042】
同図に示されるように、移動体1は、移動体全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)等の制御部11を備えており、制御部11は、コネクタ部12、カメラ部24(RGBカメラ部13、及び深度カメラ部14からなる)、センサ部15、記憶部20、通信部21、及び電源部22と接続されている。センサ部15は、詳細には、赤外線測距センサ16、超音波測距センサ17、温度センサ18、及び照度センサ19等からなる。
【0043】
通信部21は、充電ステーション3を介して、クラウドネットワーク5上のサーバ装置4等と通信するための通信インタフェースである。電源部22は、各部に電源を供給するものであり、充電ステーション3へのピットイン時には、当該充電ステーション3により充電される。コネクタ部12は、電力端子と信号端子とを少なくとも備えている。コネクタ部12はサービス機器2のコネクタ部と接続される。移動体1は、この電力端子を介して、サービス機器2に電力供給する。なお、サービス機器2は、この移動体1からの電力供給を受けて、後述する電源部を充電する。また、移動体1は、この信号端子を介して、サービス機器2との間で各種の制御信号のやりとりを行う。
【0044】
また、カメラ部24において、RGBカメラ部13は、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を備えており、室内等を撮像し、画像信号を出力する。深度カメラ部14は、深度を測定する。
【0045】
そして、記憶部20は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等からなり、制御部11で実行されるプログラム23を記憶している。また、記憶部20は、生成された空間マップ、及びそれに付随する情報等を時系列に記憶している。記憶内容は適宜更新される。
【0046】
センサ部15の各要素について更に詳述すると、赤外線測距センサ16は、この例では移動体1の前方(床面測定用)と前後左右(近接測定用)に設けられている。超音波測距センサ17は、この例では、移動体1の前方1か所に設けられており、近接測定に用いられる。温度センサ18は、移動体1内部の温度と室内等の温度を測定するセンサである。照度センサ19は、移動体1の周囲の照度を測定するセンサである。
【0047】
このような構成において、制御部11は、記憶部20のプログラム23を実行することで、主制御部11a、画像処理部11b、駆動制御部11c、マップ生成部11d、遠隔制御部11e、コース決定部11f、測定制御部11g、更新部11h、及び予測部11iとして機能する。
【0048】
各部について詳述すると、主制御部11aは、サービス機器2に対する制御信号の送信等、統括的な制御を司る。画像処理部11bは、RGBカメラ部13や深度カメラ部14による撮像で得られた画像信号に対して画像処理を実行し、当該処理で得られた画像データを記憶部20に記憶する。駆動制御部11cは、後述する予測動作により決定された巡回コースに従って移動するように移動体1を駆動制御する。例えばオムニホイール等を駆動制御することで、移動体1の部屋等における巡回を実現する。
【0049】
マップ生成部11dは、画像処理部11bで得られた画像データに基づいて3次元の第1の空間マップを生成し、当該第1の空間マップに基づいて2次元の第2の空間マップをリアルタイムに生成し、第1の空間マップを、少なくともRGBカメラ部13等での撮像の日時情報と共に、記憶部20に記憶する。さらに、マップ生成部11dは、空間マップ上に外部機器の設置場所情報等を対応付けて記憶部20に記憶する。また、マップ生成部11dは、空間マップ上に環境情報等を対応付けて記憶部20に記憶する。なお、外部機器の設置場所情報の取得、環境情報の取得については後に詳述する。
【0050】
遠隔制御部11eは、例えばエアーコンディショナ(エアコン)やヒーター等の外部機器や、他の移動体プラットフォームシステム(子機)を遠隔より駆動制御する。より具体的には、外部機器に対する制御信号をサービス機器2側に送信し、サービス機器2より制御信号を赤外線リモコン信号等によって外部機器に送信することで、外部機器の遠隔制御を実現する。このとき、移動体1又はサービス機器2は、充電ステーション3を介して外部のサーバ装置4と通信し、当該サーバ装置4より外部機器に対応するリモコン信号に係る赤外線リモコン情報等を取得するようにしてもよい。
【0051】
コース決定部11fは、記憶部20に記憶された空間マップを参照して巡回コースを決定する。より詳細には、コース決定部11fは、少なくとも巡回コースの決定の日時情報に基づいて、当該日時情報と相関のある日時情報に対応する空間マップを記憶部20より抽出し、抽出した空間マップに基づいて巡回コースを予測し、決定する。例えば、コース決定部11fは、巡回コース決定の日時が4月1日であるときは、過去3年間の4月1日前後2週間の空間マップを参照し、最適な巡回コースを予測し、決定する。
【0052】
測定制御部11gは、移動体1の部屋等における巡回の過程で、センサ部15による測定を行うよう制御する。更新部11hは、この測定制御部11gによる測定の結果に基づいて巡回コースを更新し、記憶部20に記憶する。
【0053】
そして、予測部11iは、記憶部20に記憶された空間マップに対応付けられた日時情報、外部機器設置場所情報、及び環境情報等に基づいて、外部機器の好適な設置場所及び設置時期等を予測し、所定の提案を行う。予測部11iは、提案動作については、例えば電子メールの送信、音声出力、発光、或いは所定動作の少なくともいずれかにより行うこととしてよい。ここで、環境情報には、例えば部屋の各領域の温度、湿度、匂い、及びCO2濃度等、各種の情報が含まれる。但し、これには限定されない。提案に対するフィードバックがユーザよりあった場合には、空間マップと対応させて当該フィードバックの情報も保存する。例えばエアコンの制御を予測動作に基づいて行った場合に、ユーザより快適であった旨のフィードバックを音声や操作により受けたときは、その情報も空間マップに対応付けて保存するようにしている。
【0054】
図3には、本発明の第1実施形態に係る移動体プラットフォームシステムにおけるサービス機器の制御系の詳細な構成を示し説明する。
【0055】
同図に示されるように、サービス機器2は、当該サービス機器2全体の制御を司るCPU等の制御部31を備えている。制御部31は、センサ部32、遠隔操作部36、コネクタ部39、通信部40、オゾン・イオン発生部42、記憶部43、及び投影部44等を備える。センサ部32は、詳細には、温度センサ33、湿度センサ34、匂いセンサ45、CO2センサ35、電源部46、及び電源制御部47等を備えている。詳細には、温度センサ33は、サービス機器2の周辺温度を測定するものである。湿度センサ34は、移動体1の周辺の湿度を測定するものである。匂いセンサ45は空気の汚染度を測定するものである。CO2センサ35は、サービス機器2周辺のCO2(二酸化炭素)濃度を測定するものである。遠隔操作部36は、発光部37と受光部38を備えている。
【0056】
通信部40は、充電ステーション3を介して、クラウドネットワーク5等上のサーバ装置4等と通信する通信インタフェースである。オゾン・イオン発生部42は、オゾン及びイオンを発生するものである。記憶部43は、RAMやROM等のメモリやHDD等で構成されており、制御部31で実行されるプログラム41が記憶されている。そして、投影部44は、プロジェクタ機能を実現するものであり、投影像を机上や壁面等に投影するものである。尚、ここでは、投影部44を1つのサービス機器2内に実装する例を示したが、これに限定されず、別のサービス機器に実装し、当該別のサービス機器を本サービス機器に所謂重箱的に搭載し、電気的に接続するように構成してもよい。
【0057】
コネクタ部39は、少なくとも電力端子と制御端子とを備える。サービス機器2は、コネクタ部39が移動体1のコネクタ部12に接続されると、当該電力端子を介して電力の給電を受け、電源制御部47の制御の下、電源部46を充電する。また、サービス機器2は、制御端子を介して、移動体1との間で制御信号のやりとりを行う。
【0058】
遠隔操作部36は、エアコンやヒーター等といった外部機器に設置される遠隔操作ユニットとの間の距離や方向を測定することで外部機器の設置場所を特定すると共に、遠隔操作時には所定の遠隔操作信号を送出する。遠隔操作信号としては、発光部37及び受光部38が赤外線対応のものであれば、赤外線リモコン信号を送出する。また、発光部37及び受光部38がBluetooth(登録商標)対応のものであれば、Bluetooth(登録商標)信号を送出する。
【0059】
このような構成において、制御部31は、記憶部43のプログラム41を実行することで、主制御部31a、測定制御部31b、遠隔制御部31c、投影制御部31d、及びオゾン・イオン発生制御部31e等として機能する。
【0060】
主制御部31aは、移動体1への制御信号の送出等、統括的な制御を司る。測定制御部31bは、少なくとも温度センサ33、湿度センサ34、及びCO2センサ35による測定動作を制御する。遠隔制御部31cは、外部機器や他の移動体プラットフォームシステムに対して遠隔操作部36より遠隔制御信号を送出するなどして遠隔制御する。投影制御部31dは、投影部44による壁面等への映像の投影を制御する。そして、オゾン・イオン発生制御部31eは、オゾン・イオン発生部42によるオゾン及びイオンの発生を制御する。
【0061】
サービス機器2は、移動体1に搭載されると、当該移動体1より電源供給を受け、移動体1の部屋等における巡回中に、測定制御部31bの制御の下、温度センサ33、湿度センサ34、匂いセンサ45、及びCO2センサ35による測定を行い、測定結果を環境情報として移動体1に送信する。移動体1では、前述したマップ生成部11dが、空間マップ上に環境情報を対応付け、記憶部43に記憶する。環境情報としては、温度分布、湿度分布、及び花粉の蓄積状態等、種々のものがある。サービス機器2は、電源制御部47の制御の下、電源部46を充電できるようになっているが、当該電源部46からの電源供給により駆動することもできる。マップ生成部11dにより生成された空間マップ及びそれに付随する環境情報等は、移動体1から充電ステーション3に定期的に送信され、更に充電ステーション3からクラウドネットワーク5上のサーバ装置4に送信される。例えば、充電ステーション3は、数週間分の空間マップ及びそれに付随する環境情報等を記憶しており、クラウドネットワーク5上のサーバ装置4は、数年分の空間マップ及びそれに付随する環境情報等を記憶している。移動体1は、定期的に、充電ステーション3、又は充電ステーション3を介してクラウドネットワーク5上のサーバ装置4より、最新の空間マップ及びそれに付随する環境情報等をダウンロードし、予測動作に用いる。
【0062】
また、サービス機器2は、移動体1に搭載されていない状態でも、内部の電源部46からの電源供給を受けて、所謂スタンドアロン型の家電製品としても機能する。その場合においても、サービス機器2は、設置された場所において、測定制御部31bの制御の下で温度センサ33、湿度センサ34、匂いセンサ45、及びCO2センサ35による測定を行い、オゾン・イオン発生制御部31eが、それら測定結果に基づいて、オゾン・イオン発生部42によるオゾン及びイオンの発生を制御する。
【0063】
図4には、充電ステーション3の詳細な構成を示し説明する。
【0064】
同図に示されるように、充電ステーション3は、全体の制御を司るCPU等からなる制御部91を備えている。制御部91は、給電部92、通信部93、電源部94、記憶部95、表示部96、及び操作部97と接続されている。給電部92は、移動体1が充電ステーション3にピットインしたときに、当該移動体1と電気的に接続され、当該移動体1に対して給電を行う。通信部93は、クラウドネットワーク5を介してサーバ装置4等と通信をする通信インタフェースである。電源部94は、バッテリ等で構成され、各部に電源供給をする。記憶部95は、例えば、数週間分の空間マップ及びそれに付随する環境情報等を記憶する記憶デバイスである。表示部96は、この例では、作動状態を示すLED等で構成されている。そして、操作部97は、各種操作入力を行うものである。
【0065】
制御部91は、記憶部95のプログラムを実行することで、主制御部91a、及び表示制御部91b等として機能する。主制御部91aは、移動体1より送信された空間マップ及びそれに付随する環境情報等を記憶部95にダウンロードすると共に、通信部93を介してクラウドネットワーク5上のサーバ装置4にアップロードするように制御する。表示制御部91bは、表示部96における各種表示を制御する。
【0066】
以下、図5のフローチャートを参照して、本発明の第1実施形態の移動体プラットフォームシステムによる空間マップ生成による処理手順を説明する。
【0067】
処理を開始すると、移動体1は、マップ生成部11dが、空間マップを生成し、記憶部20に記憶する(S1)。より具体的には、RGBカメラ部13や深度カメラ部14による撮像で得られた画像信号を、画像処理部11bで画像処理して画像データを出力し、マップ生成部11dが当該画像データに基づいてスタティックな3Dマップを生成し、続いてリアルタイムに当該3Dマップに基づいて2Dマップを生成する。即ち、全ての画像データは3Dデータで生成し保存され、適宜リアルタイムに2Dデータが生成される。このようにして記憶部20に記憶された空間マップには、通常書き換える事のないマップデータ(部屋の形状等)であるGCM(グローバルコストマップ)と、移動体1運行時のマップデータ(例えば、室内等における突然の人の出現や障害物の場所を反映したもの)であるLCM(ローカルコストマップ)が含まれる。
【0068】
移動体1は、コース決定部11fが、記憶部20から、図6に示されるように、時系列に連続して記憶された空間マップを蓄積データとして参照し(S2)、巡回コースを予測し決定する(S3)。移動体1は、例えば充電ステーション3、又は充電ステーション3を介してクラウドネットワーク5上のサーバ装置4より、数週間以内の最新の空間マップをダウンロードして、記憶部20に記憶し、それらに基づく予測動作を行うことで、障害物等の場所を把握して、それらを回避するように巡回コースを決定する。巡回コースは、部屋を近似的に凸包に見立てて、その頂点を巡回点と定義したものである。空間マップは例えば図7に示される。同図に示される例では、GCM200の上に障害物等により立ち入りできない領域のLCM201が観測される。
【0069】
移動体1は、決定された巡回コースに従って、駆動制御部11cの制御の下、室内等を巡回する。この巡回の過程で、測定制御部11gの制御の下、センサ部15による室内環境の測定を実施する(S4)。そして、新たに測定された室内環境に基づいて、巡回コースを変更し(S5)、記憶部20の記憶内容を更新し蓄積(S6)、空間マップ生成に関わる一連の処理を終了する。巡回の途中で電源部22の電力が規定値以下になったときは、帰還コースに切り替えて、充電ステーション3にピットインして充電を行ってもよい。
【0070】
以上の処理は、マップ生成部11dにより生成され蓄積された空間マップに基づき生成される巡回コースを、赤外線測距センサ16や超音波測距センサ17等といったセンサ部15の各種センサ出力に基づいて生成された最新のLCMに基づいて学習し、最適なものとすることを意味する。
【0071】
次に、図8には、本発明の第1実施形態に係る移動体プラットフォームシステムによる外部機器の制御の様子を概念的に示し説明する。
【0072】
同図に示されるように、移動体1にはサービス機器2が搭載されている。この状態で移動体1は、床面等を移動するが、室内等に設置された各種外部機器と通信し当該外部機器を遠隔操作することが可能である。ここでは、一例として、エアコン100、ヒーター102、空気清浄器101のそれぞれに、遠隔操作ユニット6が設置されており、移動体プラットフォームシステムは、当該遠隔操作ユニット6との間で通信を行うことで、それら外部機器を遠隔制御することができる。この遠隔操作にあたっては、先ずは各外部機器の設置場所の特定を行い、その特定した場所に対して遠隔操作信号を送信することで外部機器を駆動制御する。
【0073】
例えば、遠隔操作信号が赤外線リモコン信号である場合には、クラウドネットワーク5上のサーバ装置4より制御対象の外部機器に対応した赤外線リモコン情報をダウンロードして適宜用いるようにしてよい。また、赤外線リモコン信号の届かない領域に外部機器が位置するときは、当該外部機器の設置場所まで移動して、遠隔操作を行ってもよい。
【0074】
次に、図9には、本発明の第1実施形態に係る移動体プラットフォームシステムにより遠隔より駆動制御される外部機器に設置される遠隔操作ユニット6の制御系の構成を示し説明する。
【0075】
同図に示されるように、遠隔制御ユニット6は、CPU等の制御部51を備える。この制御部51は、通信部53、電源部54、被遠隔操作部52と接続されている。通信部53は、例えば屋内にWiFiやBluetooth(登録商標)等の通信環境が整っている場合、当該通信環境を活用した通信等を実現する。電源部54は、ボタン電池等で構成される。被遠隔操作部52は、発光部55と受光部56とで構成されており、移動体プラットフォームシステムからの測距光の発光/受光、及び赤外線リモコン信号の受信を行う。制御部51は、主制御部51a、及び遠隔制御部51bとして機能する。主制御部51aは、統括的な制御を行う。そして、遠隔制御部51bは、対象となる外部機器を遠隔制御する。この例では、サービス機器2が遠隔制御部36を備える例を示したが、これに限定されるものではなく、遠隔制御部36を移動体1が備えていても、或いは移動体1に対する付属ユニットとして当該移動体1に実装させてもよい。
【0076】
ここで、図10乃至図13を参照して、遠隔操作部36、被遠隔制御部52の発光及び受光の仕組みについて更に言及する。図10乃至図12に示されるように、受光部38,55として一般的な赤外線リモコン受光モジュールを採用した場合には、光の強弱を判別することができず、変調された所定の周波数のパルスを復調することになる。この例では、発光部37,56で600μsの間に23回の点滅がなされると、受光部38,55がそれを検出し、反転出力を行う。しかしながら、受光部38,55として一般的な赤外線リモコン受光モジュールを採用すると、発光の強弱に関わらず、所定の点滅のパルスを受光すると、受光部38,55側では同じ電圧出力をしてしまう。そこで、本実施形態の移動体プラットフォームシステムでは、出力信号に含まれるID番号と発光部37,56の出力する赤外線の光量とに基づいて距離を認識し、得られたデータのうち、最遠の赤外線データのみを有効なものとして取り扱う。発光部37,56の赤外線光量の調整は電流値で行うものとする。
例えば、図13(a)乃至図13(c)に示されるように、
ID番号001、赤外線光量1/3のときは、“0010103”:1m(図13(a))
ID番号001、赤外線光量2/3のときは、“0010203”:2m(図13(b))
ID番号001、赤外線光量3/3のときは、“0010303”:3m(図13(c))
と受光部38,55側で認識し、最遠のデータ“0010303”を有効なものとして取り扱う。尚、同じ方向から赤外線データが発光されると、データの衝突、合成が行われ、正しいデータとして読み取れないことがあるが、本実施形態では、通信部40、53にて同期をとることで、この問題を解決している。以上に加えて、発光部37,56又は受光部38,55側にスリットを設ければ、所定角度以外の赤外線を遮断できるので、方向の算出も可能となる。
【0077】
次に、図14のフローチャートを参照して、本発明の第1実施形態に係る移動体プラットフォームシステムによる部屋内の巡回、及びサービス機器又は外部機器の駆動制御に係る動作の流れを詳細に説明する。
【0078】
移動体1は、コース決定部11fが、充電ステーション3、又は充電ステーション3を介してクラウドネットワーク5上のサーバ装置4より、最新の蓄積データをダウンロードして、記憶部20に記憶し、それら時系列に連続して記憶された空間マップを蓄積データとして参照し、巡回コースを予測し決定する(S11)。例えば数週間以内の空間マップを記憶部20より読み出し、予測動作を行うことで、障害物等の場所を把握して、それらを回避するように巡回コースを決定する。巡回コースは、部屋を近似的に凸包に見立てて、その頂点を巡回点と定義したものである。
【0079】
移動体1は、決定された巡回コースに従って、駆動制御部11cの制御の下、室内を巡回する(S12)。この巡回の過程で、測定制御部11gの制御の下、センサ部15による室内環境の測定を実施する(S13)。
【0080】
そして、予測部11iは、室内環境の改善にサービス機器2で十分対応可能であるか予測動作を行う(S14)。ここで、予測部11iによる予測動作により対応が可能であると判断された場合には(S15をYesに分岐)、サービス機器2に制御信号を送出し、サービス機器2を駆動制御する(S16)。一方、予測部11iによる予測動作により対応不可能であると判断された場合には(S15をNoに分岐)、遠隔制御部11eの制御の下、遠隔制御する外部機器を特定し、遠隔操作する(S17)。
こうして、一連の処理を終了する。
【0081】
ここで、サービス機器2で十分対応可能な場合とは、空気の汚染の度合いが低く、蓄積された過去の実績からサービス機器2のオゾン・イオン発生部42の作用により空気の汚染を十分に解消できる場合等をいう。サービス機器2で対応できない場合とは、温度湿度が高く、エアコン100による作用を要する場合や、空気の汚染の度合い高く、サービス機器2のオゾン・イオン発生部42では解消できない場合等を意味している。但し、これらには限定されない。
【0082】
より具体的には、例えば外部機器がエアコン100である場合、冷房、暖房を作動させても部屋が快適な温度になるまでには時間がかかる。そこで、予測部11iは、過去の履歴(例えば12カ月×3年または1シーズン前)を参照し、冷房、暖房の電源投入時刻を前後させることで省エネルギー化を併せて実現する。このとき、暖まりやすい場所、暖まりにくい場所等を環境情報として空間マップと対応付けて記憶部20に記憶しているので、過去の履歴からどのようなパターンで駆動すればよいのか(例えば、開始時間、風量、及び風向等)、或いはサーキュレータや空気清浄器を同時に駆動した方が効率的に暖まるか等についても予測し、駆動制御することができる。
【0083】
また、外部機器が空気清浄器102である場合、予測部11iにより、過去の○月○日に部屋内の位置(x,y,z)で空気中に花粉の飛散が検知されたので、その場所を重点的に空気清浄するべきと言った予測を行い、その予測結果に基づく駆動制御も可能となる。
【0084】
あるいは、外部機器がスマートスピーカ103である場合には、予測部11iは、ユーザが所定の時間帯には所定の場所で使う傾向にあると履歴情報より予測できるので、その予測結果に基づいて移動体1が移動することで、スマートスピーカ103を時間帯毎に最適な場所で利用可能とする。
【0085】
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、空間認識により空間マップの生成を行うと共に、時系列に連続する複数の空間マップに基づいて汚染箇所等を予測し、その予測結果に基づいて、自機(サービス機器を含む)及び周辺の外部機器(家電など)の最適な駆動制御を行うことができる。
【0086】
さらに、予測部11iによる予測動作による予測結果に基づいて、家電の設置時期、及び設置場所を提案することができる。例えば、過去の○月○日に、外部機器であるファインヒータやサーキュレータを設置した履歴が確認でき、その季節は快適に過ごせたとの記録がある場合に、予測部11iは、外部機器の設置提案を出力すると共に、過去の設置時点での室温等の設定条件を併せて出力することもできる。即ち、予測部11iは、記憶部20に記憶された空間マップ及びそれに対応付けられた家電設置場所情報、環境情報等に基づいて外部機器の設置に係る予測動作を行い、外部機器を設置するのに適した時期、場所、及び設定条件等を出力してもよい。そのとき、移動体である特質を生かして、実際に外部機器を設置するのに適した場所まで移動し、当該場所に設置すべき旨を音声や表示によりユーザに指示するようにしてもよい。また、複数の外部機器の設置提案を出力する場合には、それぞれの設置場所や設定温度等の設定条件を併せて出力してもよい。
【0087】
さらに、複数の外部機器(家電など)を駆動制御するにあたっては、移動体プラットフォームシステムがIoTのハブ的な役割も担うことができる。従って、移動体プラットフォームシステムを導入することで、所謂スマートホームを実現できる。
【0088】
<第2実施形態>
図15には、本発明の第2実施形態に係る移動体プラットフォームシステムの移動体の制御系の構成の一部を詳細に示し説明する。
【0089】
同図に示されるように、移動体1は、図2の構成に加えて、制御部11が、人物の存在を検知する人物検知部11jと、環境を特定する環境特定部11kとしても機能することを特徴としている。その他の構成は、図2と同様であるので、図示と説明を省略する。
【0090】
以下、図16のフローチャートを参照して、本発明の第2実施形態に係る移動体プラットフォームシステムによる動作を説明する。
【0091】
RGBカメラ部13等により室内の撮影を行った後(S21)、人物検知部11jにより人物の存在を検知し(S22)、環境特定部11kにより当該人物に係る環境を特定し(S23)、予測部11iが、前述したような予測動作を行って認識されたユーザにとって最適な環境を実現する動作(例えば、外部機器制御など)について予測し(S24)、サービス機器2又は外部機器を予測された最適な環境に合わせて駆動制御し(S25)、一連の処理を終了する。上記最適な環境を実現する外部機器制御としては、室内温度の調整や照明のON/OFF等、種々のものに対応することができる。
【0092】
以上説明したように、本発明の第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加えて、ユーザの属性や嗜好等に合致したサービスを提供することができる。
【0093】
<第3実施形態>
図17には、本発明の第3実施形態に係る移動体プラットフォームシステムの移動体の制御系の構成の一部を詳細に示し説明する。
【0094】
同図に示されるように、移動体1は、図2の構成に加えて、制御部11が、人物のスケジュールを管理するスケジュール管理部11lと、環境を特定する環境特定部11kとしても機能することに特徴を有している。その他の構成は、図2と同様であるので、図示と説明を省略する。
【0095】
以下、図18のフローチャートを参照して、本発明の第3実施形態に係る移動体プラットフォームシステムによる動作を説明する。
【0096】
スケジュール管理部11lがスケジュールを参照し(S31)、スケジュール管理部11lにより所定のタイミングを検知した時には(S32をYes)、環境特定部11kにより当該スケジュールに合致した環境を特定し(S33)、予測部11iが前述したような予測動作を行ってユーザにとって最適な環境を実現する動作(例えば、外部機器制御など)を予測し(S34)、サービス機器2又は外部機器を当該最適な環境に合わせて駆動し(S35)、こうして一連の処理を終了する。最適な環境を実現する外部機器制御としては、室内温度の調整や照明のON/OFF等、種々のものに対応することができる。
【0097】
以上説明したように、本発明の第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加えて、ユーザのスケジュールに合致したサービスを提供することができる。
【0098】
<第4実施形態>
図19には、本発明の第4実施形態に係る移動体プラットフォームシステムの構成を示し説明する。この実施形態に係る移動体プラットフォームシステムは、サービス機器としてロボットアームを採用した例になる。
【0099】
同図に示されるように、移動体71には、ロボットアームの機能を備えたサービス機器72が装着される。前述したように、移動体71、及びサービス機器72には、所定のコネクタ部が設けられており、両コネクタ部を接続すると、サービス機器72は、移動体71からの電力供給を受け、バッテリ等からなる電源部を充電する。また、サービス機器72は、移動体71よりロボットアームの駆動に関する各種の制御信号に基づいて駆動制御される。そして、この例で特に特徴的なのは、ロボットアーム部分の把持部に、RGBカメラ部73や深度カメラ部74が設けられている点にある。
【0100】
前述した例では、移動体にRGBカメラ部や深度カメラ部が設けられていたが、移動体自体の高さの制約、各カメラの画角に関する制約の関係で、部屋などを撮影するときに所定高以上の障害物を正確に検知することができなかった。この点、第4本実施形態に係る移動体プラットフォームシステムでは、サービス機器72のロボットアーム部分の把持部にRGBカメラ部73と深度カメラ部74を設けたので、より高い障害物まで検知し、その結果を空間マップに反映することが可能となる。従って、障害物の高さまで考慮した巡回コースの算定ができるので、部屋内を正確に巡回することが可能となる。
【0101】
<第5実施形態>
図20には、本発明の第5実施形態に係る移動体プラットフォームシステムの構成を示し説明する。この実施形態に係る移動体プラットフォームシステムは、サービス機器としてロボットアームを採用した例になる。さらに、サービス機器のロボットアームで各種の外部機器を把持することで、当該外部機器の制御並びに移動を実行する。
【0102】
同図に示されるように、移動体71には、ロボットアームの機能を備えたサービス機器72が装着される。前述したように、移動体71、及びサービス機器72には、所定のコネクタ部が設けられており、両コネクタ部を接続すると、サービス機器72は、移動体71からの電力供給を受け、バッテリ等からなる電源部を充電する。また、サービス機器72は、移動体1からのロボットアームの駆動に関する各種の制御信号に基づいて駆動制御される。
【0103】
そして、サービス機器72のロボットアームにより、外部機器を把持して移動することを特徴とする。この例では、外部機器として、AIスピーカ81を電源ユニット82の上に電気的に接続させつつ載置し、さらに電源ユニット82と固着されている筐体部83の開口部83aにロボットアームの把持部を挿入させることで把持する。一般に、AIスピーカ81は、部屋のいたるところで使用が嘱望されるものであるが、移動体1は部屋の中を移動自在であることから、ユーザに追従しつつ移動し、ユーザのスケジュールに合わせて移動することができるので、ユーザの日常生活に即した最適な外部機器の使用が可能となる。
【0104】
以上、本発明の第1乃至第5実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能である。
【0105】
例えば、ひとつの移動体プラットフォームシステムが指令機となり、他の複数の移動体プラットフォームシステムに対して、空間マップにより予測された汚染状況等の環境情報に基づいて対応場所等の統括管理及び指令を実施し、室内環境の改善を作業分担して行うようにしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0106】
1…移動体、2…サービス機器、3…充電ステーション、4…サーバ装置、5…クラウドネットワーク、11…制御部、11a…主制御部、11b…画像処理部、11c…駆動制御部、11d…マップ生成部、11e…遠隔制御部、11f…コース決定部、11g…測定制御部、11h…更新部、11i…予測部、12…コネクタ部、13…RGBカメラ部、14…深度カメラ部、15…センサ部、16…赤外線測距センサ、17…超音波測距センサ、18…温度センサ、19…照度センサ、20…記憶部、21…通信部、22…電源部、23…プログラム、24…カメラ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20