(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】航空機部品組立治具および航空機部品検査治具
(51)【国際特許分類】
B64F 5/10 20170101AFI20220113BHJP
B64C 1/06 20060101ALI20220113BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20220113BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B64F5/10
B64C1/06
B23P21/00 303Z
B23P19/00 304E
B23P19/00 303A
(21)【出願番号】P 2020539640
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034211
(87)【国際公開番号】W WO2020045649
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-17
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 豪生
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 史宗
(72)【発明者】
【氏名】笠原 健治
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193241(JP,A)
【文献】特開2017-193242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0040008(US,A1)
【文献】特開2012-213836(JP,A)
【文献】特開2013-198918(JP,A)
【文献】特開2008-169038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 5/10
B64C 1/06
B23P 21/00
B23P 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機部品を載置した状態で、当該航空機部品の下面または上面に沿う形状を成し、前記航空機部品の所定方向に並ぶ複数のヘッダープレートと、
複数の前記ヘッダープレートのそれぞれに複数設けられ、その先端には前記航空機部品の下面に当接する受け部材を有し、当該受け部材を進退移動させる受け部材移動部と、
複数の前記受け部材移動部をそれぞれ独立して駆動可能に制御する制御部と、
前記航空機部品を載置した状態では、少なくとも複数の前記受け部材によって前記航空機部品の下面が支持されており、それぞれの前記受け部材による前記航空機部品の下面を支持する状態を制御データとして検出する受け部材状態検出部と、
を備え、
前記制御部は、
検出した前記制御データの検出値と予め設定されている基準値とを比較して、全ての前記受け部材による前記航空機部品の均等な支持状態が実現されているか否かを判断し、
均等な支持状態にないと判断したときには、全ての受け部材移動部のうち調整が必要な受け部材移動部を制御し、図面公差内でそれぞれの前記受け部材の進退位置を調整する、
航空機部品組立治具。
【請求項2】
前記受け部材状態検出部は、前記制御データとして、前記受け部材移動部に加えられる荷重、前記受け部材移動部が備える駆動モータの電流値、および、前記受け部材移動部と前記航空機部品との間隔の少なくともいずれかを制御データとして検出し、
前記制御部は、
当該制御データの検出値と予め設定されている基準値とを比較して、複数の前記受け部材のうち、前記航空機部品の下面の押上げが過剰であるもの、前記航空機部品の下面の押上げが不足しているもの、もしくはその両方が存在するか否かを識別し、
押上げが過剰もしくは押上げが不足している前記受け部材が存在すれば、前記航空機部品の図面公差範囲内で前記下面の位置を調整するように、前記受け部材移動部を駆動させて前記受け部材の位置を進退移動させる、
請求項1に記載の航空機部品組立治具。
【請求項3】
前記受け部材状態検出部として、
前記受け部材移動部に加えられる荷重を測定するロードセルまたはフォースセンサ、
前記駆動モータの電流値を測定する電流計、および
前記受け部材と航空機部品との距離を測定する距離センサの少なくともいずれかを備えている、
請求項2に記載の航空機部品組立治具。
【請求項4】
前記航空機部品の下面が少なくとも前記受け部材によって支持されている状態を撮像する撮像部をさらに備え、
前記制御部は、前記航空機部品の図面公差範囲内で前記下面の位置を調整するように、前記受け部材移動部を駆動させて前記受け部材の位置を進退移動させた後に、
さらに、前記撮像部で撮像された画像から、前記航空機部品と前記ヘッダープレートまたは前記受け部材の間に隙間が生じているか否か、もしくは、前記航空機部品の下面が予め設定される正規の形状であるか否かを識別し、
隙間が生じていない、もしくは、正規の形状であると識別されたときには、前記航空機部品が組立て作業可能な状態にあると判定する、
請求項1に記載の航空機部品組立治具。
【請求項5】
前記航空機部品が、航空機胴体パネルであり、
当該航空機胴体パネルを載置した状態で、当該航空機胴体パネルを構成する部材の両端を位置決めするためのフレームインデックスを備えている、
請求項1に記載の航空機部品組立治具。
【請求項6】
航空機部品を載置した状態で、当該航空機部品の下面または上面に沿う形状を成し、前記航空機部品の所定方向に並ぶ複数のヘッダープレートと、
複数の前記ヘッダープレートのそれぞれに複数設けられ、その先端には前記航空機部品の下面に当接する受け部材を有し、当該受け部材を進退移動させる受け部材移動部と、
複数の前記受け部材移動部をそれぞれ独立して駆動可能に制御する制御部と、
を備え、
前記受け部材をノミナルの位置に設定した状態で、少なくとも当該受け部材の上に前記航空機部品を載置し、
前記制御部は、
前記航空機部品が前記受け部材上に載置されている状態で、当該受け部材による前記航空機部品の均等な支持状態が実現されているか否かを判断し、
均等な支持状態にないと判断した場合には、図面公差内で前記受け部材の少なくともいずれかを進退移動させるように前記受け部材移動部を制御し、図面公差内の移動では、均等な支持状態を実現できないと判断した場合には、
前記航空機部品が正規の部品形状から外れていると判断する、
航空機部品検査治具。
【請求項7】
前記均等な支持状態にないとの判定は、
いずれかの前記受け部材の移動量が図面公差以上になるとき、
いずれかの前記受け部材にかかる荷重が均等の範囲から外れるとき、または、
前記受け部材と前記航空機部品の下面との間に隙間があるとき、の少なくともいずれかである、
請求項6に記載の航空機部品検査治具。
【請求項8】
前記航空機部品が、航空機胴体パネルであり、
当該航空機胴体パネルを載置した状態で、当該航空機胴体パネルを構成する部材の両端を位置決めするためのフレームインデックスを備えている、
請求項6に記載の航空機部品検査治具。
【請求項9】
少なくとも複数の前記受け部材によって前記航空機部品の下面が支持されているときに、それぞれの前記受け部材による前記航空機部品の下面を支持する状態を制御データとして検出する受け部材状態検出部を備え、
前記制御部は、検出した前記制御データの検出値と予め設定されている基準値とを比較して、全ての前記受け部材による前記航空機部品の均等な支持状態が実現されているか否かを判断する、
請求項6に記載の航空機部品検査治具。
【請求項10】
前記受け部材状態検出部として、
前記受け部材移動部に加えられる荷重を測定するロードセルまたはフォースセンサ、
前記受け部材移動部が備える駆動モータの電流値を測定する電流計、および
前記受け部材と航空機部品との距離を測定する距離センサの少なくともいずれかを備えている、
請求項9に記載の航空機部品検査治具。
【請求項11】
前記航空機部品の下面が少なくとも前記受け部材によって支持されている状態を撮像する撮像部をさらに備え、
前記制御部は、均等な支持状態を実現できないと判定した後に、さらに、前記撮像部で撮像された画像から、前記航空機部品と前記受け部材との間に隙間が生じているか否か、もしくは、前記航空機部品の下面が予め設定される正規の形状であるか否かを識別し、
隙間が生じている、もしくは、正規の形状でないと識別されたときには、前記航空機部品が正規の部品形状から外れていると判定する、
請求項6に記載の航空機部品検査治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機胴体パネルあるいはスキン等の航空機部品を組み立てる際に、その組立性の向上を図ることが可能な航空機部品組立治具と、組み立てられた航空機部品が正規の部品形状であるか否かを良好に判定することが可能な航空機部品検査治具と、に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機胴体パネル等の航空機部品を組み立てる際に用いられる部品組立治具としては、例えば、Assembly Jig(AJ)と呼ばれるものが知られている。このAJは、一般的にCAD上で描かれた理想的な形状の部品(たとえば胴体スキンや胴体フレーム、胴体パネル等)を保持できるよう、CADで描かれた理想的な部品の受け位置(もしくは図面公差最小位置)に、複数の点あるいは線上に保持するような形のものが多い。
【0003】
このようなAJとしては、例えば、特許文献1または特許文献2に開示される構成が知られている。特許文献1に開示されるAJは、複数の航空機胴体フレームの両端を位置決めするための複数のフレームインデックスが設けられたベースと、前記ベースから航空機胴体パネルに沿うように突出する、互いに平行に前記航空機胴体パネルの軸方向に並ぶ複数のヘッダープレートと、前記複数のヘッダープレートのそれぞれに放射状に設けられた複数の電動シリンダであって、各々が前記航空機胴体パネルに含まれるスキンに当接する受け部材を前記航空機胴体パネルの径方向に移動する電動シリンダと、を備えており、大きさまたは形状の異なる複数の航空機胴体パネルに使用することができる。
【0004】
特許文献1に開示のAJでは、電動シリンダのストロークを調整し受け部材をCAD上の理想位置に設定することにより、スキンまたはパネル等を適切な位置に載置し、フレーム等と締結する。また、特許文献2に開示されるAJも、特許文献1と同様の構成を有しており、前記スキンを前記受け部材の受け面から浮き上がらせて前記航空機胴体パネルをスライド可能に支持する空気浮上装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-193241号公報
【文献】特開2017-193242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、航空機部品が胴体パネルのような大型構造物であると、仮に単品では航空機部品の形状が図面公差範囲内に製造されているとしても、組立姿勢で、CAD通りの理想の位置に当該航空機部品をAJに載置すると、当該航空機部品が全ての受け部材に載置されず、一部の受け部材に当たる(片当たりする)ことがある。
【0007】
このように受け部材に当たった部分は、スキンまたはパネルを担いでしまい、そこでわずかばかりスキンまたはパネルの一部を跳ね上げてしまう現象が生じることが、本発明者らの検討により明らかとなった。特に、スキンまたはパネルの端部(あるいは辺縁)等では、跳ね上がりが大きくなるため、スキンまたはパネルを良好に組み付けできないという問題が生じる。諸条件によっては、受け部材によるわずかな担ぎによって、スキンまたはパネルの端部では、跳ね上がりが特に大きくなり、もはや隣のスキンまたはパネルとのリベットによる締結が成立しないほどに、間隔が開いてしまうこともある。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、受け部材による航空機部品のわずかな担ぎを良好に抑制または回避することが可能な航空機部品組立治具と、受け部材による担ぎの抑制または回避を利用して、航空機部品の部品形状を良好に判定することが可能な航空機部品検査治具と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る航空機部品組立治具は、前記の課題を解決するために、航空機部品を載置した状態で、当該航空機部品の下面または上面に沿う形状を成し、前記航空機部品の所定方向に並ぶ複数のヘッダープレートと、複数の前記ヘッダープレートのそれぞれに複数設けられ、その先端には前記航空機部品の下面に当接する受け部材を有し、当該受け部材を進退移動させる受け部材移動部と、複数の前記受け部材移動部をそれぞれ独立して駆動可能に制御する制御部と、前記航空機部品を載置した状態では、少なくとも複数の前記受け部材によって前記航空機部品の下面が支持されており、それぞれの前記受け部材による前記航空機部品の下面を支持する状態を制御データとして検出する受け部材状態検出部と、を備え、前記制御部は、検出した前記制御データの検出値と予め設定されている基準値とを比較して、全ての前記受け部材による前記航空機部品の均等な支持状態が実現されているか否かを判断し、均等な支持状態にないと判断したときには、全ての受け部材移動部のうち少なくとも一部の受け部材移動部を制御し、図面公差内でそれぞれの前記受け部材の進退位置を調整する構成である。
【0010】
前記構成によれば、受け部材による航空機部品の下面を支持する(下面を受ける)状態を制御データとして検出し、この制御データに基づいて、航空機部品の下面が受け部材により均等支持されているか否か(均等支持状態にあるか否か)を制御部で判定する。これにより、航空機部品が例えば航空機胴体パネルのスキンのような大型構造物であっても、航空機部品を載置したときに、当該航空機部品が一部の受け部材に当たる(片当たりする)ことを有効に抑制または回避し、全ての受け部材で航空機部品の下面を均等に支持することができる。
【0011】
その結果、大型の航空機部品であってもその一部を跳ね上げることなく、載置した航空機部品の姿勢を良好に保持することが可能になる。また、航空機部品におけるパネル同士の結合部といったインターフェース部位(部品同士の接触部位または連結部位)において、無理に力を加えることなく良好な位置調整を行うことが可能になる。
【0012】
また、本発明に係る航空機部品検査治具は、前記の課題を解決するために、航空機部品を載置した状態で、当該航空機部品の下面または上面に沿う形状を成し、前記航空機部品の所定方向に並ぶ複数のヘッダープレートと、複数の前記ヘッダープレートのそれぞれに複数設けられ、その先端には前記航空機部品の下面に当接する受け部材を有し、当該受け部材を進退移動させる受け部材移動部と、複数の前記受け部材移動部をそれぞれ独立して駆動可能に制御する制御部と、を備え、前記受け部材をノミナルの位置に設定した状態で、少なくとも当該受け部材の上に前記航空機部品を載置し、前記制御部は、前記航空機部品が前記受け部材上に載置されている状態で、当該受け部材による前記航空機部品の均等な支持状態が実現されているか否かを判断し、均等な支持状態にないと判断した場合には、図面公差内で前記受け部材の少なくともいずれかを進退移動させるように前記受け部材移動部を制御し、図面公差内の移動では、均等な支持状態を実現できないと判断した場合には、前記航空機部品が正規の部品形状から外れていると判断する構成である。
【0013】
前記構成によれば、航空機部品を載置したときに、受け部材の図面公差範囲内の位置調整により均等な支持状態を実現できるか否か(受け部材の位置調整により解が見つかるか否か)を基準として、当該航空機部品が正規の部品形状にあるか否かを判断する。これにより、航空機部品が例えば航空機胴体パネルのスキンのような大型構造物であっても、当該航空機部品の部品形状の良否を判定することができる。その結果、航空機部品が大型構造物であっても良好な部品形状の判断が可能になる。また、前記構成によれば、航空機部品組立治具と実質同じ構成を航空機部品の検査に利用することができるので、航空機部品組立治具が航空機部品検査治具を兼用することが可能になる。
【0014】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、以上の構成により、受け部材による航空機部品のわずかな担ぎを良好に抑制または回避することが可能な航空機部品組立治具と、受け部材による担ぎの抑制または回避を利用して、航空機部品の部品形状を良好に判定することが可能な航空機部品検査治具と、を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る航空機部品組立治具の代表的な構成例を示す模式的斜視図である。
【
図2】
図1に示す航空機部品組立治具が備えるヘッダープレートの代表的な構成例を示す模式的正面図である。
【
図3】
図1に示す航空機部品組立治具の代表的な制御構成例を示す要部ブロック図である。
【
図4】
図4A~
図4Cは、
図3に示す航空機部品組立治具における受け部材状態検出部の代表的な一例を示す要部ブロック図である。
【
図5】
図3に示す航空機部品組立治具による受け部材の状態制御の代表的な一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図3に示す航空機部品組立治具の他の制御構成例を示す要部ブロック図である。
【
図7】
図7Aは、従来の航空機部品組立治具を用いた場合に部材同士の結合部位に生じる間隔の一例を示す図であり、
図7Bは、本実施の形態1に係る航空機部品組立治具を用いた場合に部材同士の結合部位が良好に重なっている状態を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態2に係る航空機部品検査治具の代表的な制御構成例を示す要部ブロック図である。
【
図9】
図8に示す航空機部品検査治具による部品形状の判定制御の代表的な一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図8に示す航空機部品検査治具による部品形状の判定制御の代表的な他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(航空機部品組立治具および航空機部品検査治具の基本構成)
本開示に係る航空機部品組立治具および航空機部品検査治具は、いずれも、AJ(Assembly Jig)の受け部材をノミナル位置(CAD上の理想位置)に設定して、代表的にはスキンまたはパネル等の航空機部品を載置した後に、スキンまたはパネル等を搭載した際の受け部材の状態(例えば、受け部材に係る荷重、載置したものと受け部材との隙間等)を検出してフィードバックし、図面公差で許される所定の範囲内で受け部材の位置を調整する基本構成を有している。
【0018】
本開示に係る航空機部品組立治具では、この基本構成により、受け部材が部分的にスキンまたはパネル等を担ぐことなく、形状を良好に保持した状態でAJに載置することが可能になる。また、本発明者らの検討によれば、フィードバックにより許される所定の範囲内で受け部材の位置を調整する基本構成を応用することで、航空機部品の形状が正規の形状であるか否かを判定することが可能であることを独自に見出し、本開示に係る航空機部品検査治具を独自に見出した。
【0019】
本開示に係る航空機部品組立治具および航空機部品検査治具は、ハードウェアとしては、特許文献1または2に開示されるAJと同様の構成を有する。したがって、これら特許文献1および2に記載される内容は、本明細書で参照することにより本明細書の記載の一部とする。
【0020】
本開示では、AJが備える複数の受け部材は、載置する航空機部品に対し面直またはスライド軸等の指定の方向に位置を変更可能(進退移動可能)である。また、本開示のAJは、受け部材の位置を変更する受け部材移動部として、例えば電動シリンダ等を備えているとともに、複数の受け部材を制御可能な制御部を有する。
【0021】
さらに、本開示のAJでは、各受け部材(あるいは電動シリンダ等)において、航空機部品を載置した際の受け部材(あるいは電動シリンダ等)の状態を検出可能とし、検出した状態より全ての受け部材が均等に航空機部品を支持したかを判別する判断部を有する。制御部および判断部はそれぞれ独立した構成要素であってもよいし、制御部および判断部は一つの構成要素として統合されていてもよい。後述する実施の形態では、航空機部品組立治具の判断部は「均等支持判断部」として構成され、航空機部品検査治具の判断部は「検査結果判断部」として構成される。
【0022】
本開示では、AJの制御フロー等は、航空機部品組立治具であっても航空機部品検査治具であっても、例えば下記のような(1)~(5)のステップを有する。
(1)例えばNC制御によりAJの受け部材を、載置する航空機部品のCAD形状のノミナル位置にする。
(2)航空機部品をAJに載置する。
(3)各受け部材(あるいは電動シリンダ等)の状態センサ(受け部材状態検出部)により、航空機部品を載置した際の受け部材(あるいは電動シリンダ等)の状態を検出する。例えば、検出する状態が受け部材と航空機部品との間隔または隙間等であれば、レーザ等を用いることができる。あるいは、検出する状態が荷重であれば、ロードセルまたはフォースセンサ、もしくはサーボモータ等の電流値等を用いることができる。
(4)検出した受け部材(あるいは電動シリンダ等)の状態により、全ての受け部材が均等に部品を支持しているか否かを判別する。具体的な判別方法は特に限定されないが、状態が基準値から所望の振れ幅の範囲内にある、閾値以下である、閾値以上である等の様々な方法が考えられる。
(5)全ての受け部材が均等に部品を支持していないと判別した場合は、航空機部品組立治具であれば、所定の範囲内(例えば図面公差の範囲内)で、検出した状態値に応じて各受け部材の位置を調整する。航空機部品検査治具であれば、所定の条件(例えば、図面公差内の受け部材の動作で解が見つかるか否か)により良品または不良品を判断する。
【0023】
なお、本開示においては、AJが次のような付加的要素を備えてもよい。例えば、パネルの載置状態をより好適に把握するため、メインセンサの他に複数のサブセンサ(例えば、荷重を測るセンサをメインセンサとし、間隔または隙間等を測るセンサをサブセンサとし、サブセンサをメインセンサと併用して使用)が設置されていてもよい。あるいは、受け部材の位置を調整した後に、パネル結合部等のインターフェース部あるいはパネル載置状態をカメラ等で撮影した画像で確認し、組付けを実施するか否かの最終的な判断を行ってもよい。
【0024】
さらには、後述するように、航空機部品組立治具の構成を、パネル等の検査治具(航空機部品検査治具)として利用することも可能である。検査における良否判定としては、前記の通り、受け部材の位置の調整が繰り返されても図面公差内の動作では解が見つからないとき(例えば、各受け部材のノミナル位置からの移動量を図面公差以上にしないと全ての受け部材が均等に支持した状態にならない、図面公差の範囲内で各受け部材を動かしても各受け部材にかかる荷重が均等にならない、受け部材と検査部品に隙間がある、等)に不良と判断する構成であればよい。
【0025】
本開示に係るAJはこのような基本構成を有しているので、スキンのような大型構造物であっても、受け部材に片当たりすることなく載置させることが可能となる。これにより、航空機部品を跳ね上げることなく好適な組み付け姿勢を保持することが可能となる。また、本開示に係るAJでは、構造に対して無理に力を加えることなく、パネル結合部等の重要なインターフェース部位の位置調整をより一層良好に行うことが可能になる。
【0026】
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態1では、航空機部品組立治具の代表的な一例について具体的に説明する。まず、
図1および
図2を参照して、本実施の形態1に係る航空機部品組立治具の具体的な構造の一例について説明する。
【0028】
[航空機部品組立治具の構造例]
図1および
図2に示すように、本実施の形態1に係る航空機部品組立治具10Aは、ベース11、ヘッダープレート12、複数の受け部材13および受け部材移動部14、フレームインデックス15,16、並びに、エンドプレート17等を備えている。本実施の形態1では、航空機部品組立治具10Aは、航空機部品として例えば航空機胴体パネルを支持する
。
【0029】
ベース11は、
航空機部品組立治具10Aの下側を支持する台座であり、一対のサイドビーム11a,11bと、サイドビーム11a,11bの間に位置する中央ビーム11cと、サイドビーム11a,11bがそれぞれ有する複数の支柱11dとを備えている。
図1では、図の手前側にサイドビーム11aが位置し、奥側にサイドビーム11bが位置する。図示しない航空機胴体パネルは、例えば、胴体の軸方向に沿って外側に突出するように湾曲する矩形状である。航空機胴体パネルは
航空機部品組立治具10Aの上面に載置されるので、
航空機部品組立治具10Aのベース11は、航空機胴体パネルの形状に応じた長さを有していればよい。
【0030】
航空機胴体パネルの軸方向の長さは特に限定されず、航空機の種類または胴体構造等の諸条件に応じて適宜設定される。代表的には、軸方向に直行する幅方向の長さよりも軸方向の長さが大きい(軸方向に長い)形状すなわち長方形状を挙げることができる。それゆえ、
図1に示す
航空機部品組立治具10Aのベース11も航空機胴体パネルと同様の長方形状を有しており、一対のサイドビーム11a,11bが航空機胴体パネルの軸方向に対応する長さを有している。
【0031】
なお、航空機部品組立治具10A(ベース11)の長手方向の長さが十分であれば、軸方向の長さが相対的に大きい(長い)長方形状の航空機胴体パネルだけでなく、軸方法の長さが相対的に小さい(短い)(例えば正方形状または幅方向が長い長方形状)航空機胴体パネルであっても、載置可能であることは言うまでもない。
【0032】
一対のサイドビーム11a,11bの間には、当該サイドビーム11a,11bに交差(好ましくは直交)する方向に沿って複数のヘッダープレート12が設けられている。
図1に示す例では、合計5枚のヘッダープレート12が互いに平行となるように、サイドビーム11a,11b間を架橋するように、当該サイドビーム11a,11bの上面に設けられている。また、サイドビーム11a,11bの下面には、複数の支柱11dが設けられている(
図1では、サイドビーム11a,11bはそれぞれ6本の支柱11dを有する)。これにより、サイドビーム11a,11bの上面は、支柱11dの高さ(およびサイドビーム11a,11bの高さ)の分、地面から見て上側に位置する。
【0033】
ヘッダープレート12は、航空機胴体パネルを載置した状態で、当該航空機胴体パネルの下面(上面であってもよい)に沿う形状を成しており、
図1および
図2に示す例では、上側に突出する湾曲した板部材として構成される。
図1および
図2に示すように、ヘッダープレート12には複数の受け部材13および受け部材移動部14が設けられており、複数の受け部材13が上側に向かって放射状となるように、ヘッダープレート12に固定されている。
【0034】
複数のヘッダープレート12は、航空機部品の所定方向に沿って例えば互いに平行に配列する配置を挙げることができる。本実施の形態では、航空機胴体パネルの軸方向に沿って並列配置している。ヘッダープレート12の配置は平行配置に限定されず、例えば、所定方向に交差する配置であってもよいし、平行配置と交差配置とが組み合わせられてもよい。
【0035】
航空機部品組立治具10Aが備えるヘッダープレート12の枚数は特に限定されず、載置対象となる航空機胴体パネルの軸方向の長さおよび構造等の諸条件に応じて適宜設定することができる。また、
図1に示す例では、それぞれのヘッダープレート12の間隔は一定ではなく、相対的に間隔が狭かったり広かったりしているが、このヘッダープレート12同士の間隔も特に限定されず、航空機胴体パネルの諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0036】
前記の通り、サイドビーム11a,11bの間には中央ビーム11cが位置しており、これら3本のビーム部材は互いに平行の位置関係にある。すなわち、中央ビーム11cもサイドビーム11a,11bと同様に、航空機胴体パネルの軸方向に沿って延伸している。中央ビーム11cは、全てのヘッダープレート12に交差しており、
図1に示す例では、ヘッダープレート12の中央部を中央ビーム11cが貫通している。
【0037】
一対のサイドビーム11a,11bの上面であって、複数のヘッダープレート12同士の間には、第一フレームインデックス15が設けられている。第一フレームインデックス15は、航空機胴体パネルを構成するフレームの両端を位置決めするための部材である。フレームは、航空機胴体パネルの幅方向に沿って位置するので、第一フレームインデックス15は、航空機胴体パネルの軸方向を基準とすると、当該航空機胴体パネルの両側縁に対応するように、ヘッダープレート12同士の間に設けられる。
【0038】
図1に示す例では、ヘッダープレート12同士の両端部の間にそれぞれ3~4枚の第一フレームインデックス15が設けられている。第一フレームインデックス15の枚数は特に限定されず、航空機胴体パネルが備えるフレームの数等に応じて適宜設定することができる。同様に、第一フレームインデックス15同士の間隔も特に限定されず、航空機胴体パネルが備えるフレームの間隔に合わせて設定すればよい。また、第一フレームインデックス15とヘッダープレート12との間隔も諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0039】
中央ビーム11cの上面であって、複数のヘッダープレート12同士の間には、第二フレームインデックス16が設けられている。航空機胴体パネルを構成するフレームの略中央を位置決めするための部材である。
図1に示す例では、ヘッダープレート12同士の両端部の間にそれぞれ3~4枚の第二フレームインデックス16が設けられているが、第二フレームインデックス16の枚数も特に限定されず、航空機胴体パネルが備えるフレームの数等に応じて適宜設定することができる。同様に、第二フレームインデックス16同士の間隔も特に限定されず、航空機胴体パネルが備えるフレームの間隔に合わせて設定すればよい。
【0040】
これらフレームインデックス15,16は、サイドビーム11a,11bまたは中央ビーム11cの上面に固定される構成(固定型)であってもよいし、サイドビーム11a,11bまたは中央ビーム11cの上面から上側に進退可能な構成(可動型)であってもよいし、これら固定型および可動型の混在であってもよい。
図1では、フレームインデックス15,16は、固定型として図示しているが、可動型であれば、受け部材移動部14と同様の移動部(例えば電動シリンダ等)を備えていればよい。また、フレームインデックス15,16は、航空機胴体パネルを構成するフレームだけでなく、スキンまたは他の部材を位置決めする部材であってもよい。
【0041】
エンドプレート17は、複数のヘッダープレート12と同様に、ヘッダープレート12と平行の位置関係で、サイドビーム11a,11bの一方の端部上面同士を架橋するように配置される。エンドプレート17の中央部には、中央ビーム11cの一方の端部が固定されている。
図1では、エンドプレート17は、図中手前側に位置し、最も手前側のヘッダープレート12との間隔は、他のヘッダープレート12同士の間隔よりも狭くなっている。
【0042】
また、エンドプレート17と隣接するヘッダープレート12との間には、サイドビーム11a,11b上に1枚の第一フレームインデックス15が設けられ、中央ビーム11c上には1枚の第二フレームインデックス16が設けられる。エンドプレート17とヘッダープレート12との間隔、並びに、これらプレートの間に設けられるフレームインデックス15,16の枚数も特に限定されず、航空機胴体パネルの具体的な種類等に応じて適宜設定することができる。
【0043】
エンドプレート17は、ヘッダープレート12とは異なり、受け部材13および受け部材移動部14は設けられておらず、サイドビーム11a,11bおよび中央ビーム11cのそれぞれの端部に固定されることで、ベース11の端部を支持する役割を有している。なお、
図1には図示しないが、エンドプレート17には、航空機胴体パネルを構成するスキンの端部を位置決めするための位置決め装置等が設けられてもよい。
【0044】
図2では、
図1に示す複数枚のヘッダープレート12のうち代表的な1枚のヘッダープレート12を図示している。なお、サイドビーム11a,11bおよび中央ビーム11cは、それぞれその断面を模式的に図示している。本実施の形態では、中央ビーム11cが位置するヘッダープレート12の中央部(湾曲形状の突出側の部位)には、受け部材13および受け部材移動部14は設けられていないが、それ以外の部位には、下側から外側に放射状となるように、複数の受け部材13および受け部材移動部14が設けられている。
【0045】
受け部材移動部14は、その先端に受け部材13が設けられ、当該受け部材13を進退移動させる。受け部材13の上面(表面、受け面)は、航空機胴体パネル(航空機部品)の下面(あるいは内面)に当接する。受け部材13および受け部材移動部14の具体的な構成は特に限定されないが、受け部材13は航空機胴体パネルに好適に当接できる面を有するブロック状の部材であればよく、受け部材移動部14は、受け部材13を進退移動可能とする電動シリンダ等の公知のアクチュエータであればよい。
【0046】
受け部材移動部14は、柱状の形状であって、ヘッダープレート12に対して上側(外側)に受け部材13を進退移動できるように放射状に設けられている。それゆえ、受け部材移動部14の軸方向(長手方向)は、実質的に航空機胴体パネルの径方向に対応している(径方向に沿った方向である)ことが好ましい。したがって、受け部材13の進退方向も、航空機胴体パネルの径方向に対応していることになる。
【0047】
1枚のヘッダープレート12に設けられる受け部材13および受け部材移動部14の数、並びに、受け部材移動部14同士(受け部材13同士)の間隔等については特に限定されず、載置対象の航空機部品(航空機胴体パネル等)の大きさ、形状、構造等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
図2(および
図1)に示す例では、中央部付近が密となり、両側縁側が相対的に粗となるように受け部材13および受け部材移動部14が配置しているが、このような配置に限定されない。例えば、受け部材13および受け部材移動部14は、ヘッダープレート12に対して全体的に等間隔となるように設けられてもよいし、部分的に間隔が異なるように設けられてもよい。
【0048】
[航空機部品組立治具の制御構成例]
次に、
図3~
図5を参照して、本実施の形態1に係る航空機部品組立治具10Aの制御構成の一例について具体的に説明する。
【0049】
図3に示すように、本実施の形態1に係る
航空機部品組立治具10Aは、複数の受け部材移動部14をそれぞれ独立して駆動可能に制御する制御部20Aを備えている。
図3には図示しないが、受け部材移動部14は前記の通り受け部材13を進退移動可能に支持するので、航空機胴体パネル等の航空機部品を載置した状態では、少なくとも複数の受け部材13によって航空機部品の下面が支持されるが、制御部20Aの制御により、複数の受け部材移動部14がそれぞれ独立して制御されるので、航空機部品の下面を支持する受け部材13の進退位置もそれぞれ独立して変更可能となっている。
【0050】
また、
図3に示すように、それぞれの受け部材移動部14に対しては、受け部材状態検出部30が設けられている。受け部材状態検出部30は、受け部材移動部14(または受け部材13)から、受け部材13による航空機部品の支持状態を取得し、制御部20Aに出力する。制御部20Aは、全ての受け部材13が均等に航空機部品を支持しているか否か(均等支持状態にあるか否か)を判別する「判断部」として均等支持判断部21を備えており、取得した全ての支持状態に基づいて、均等支持状態を判断する。
【0051】
制御部20Aは、均等支持判断部21の判断結果に基づいて、それぞれの受け部材移動部14の駆動を制御し、受け部材13の進退位置を変化させる。制御部20Aは、均等支持状態でないと判断されたときには、均等支持状態が実現されるまで、受け部材13による支持状態の取得、均等支持判断部21による判断、および受け部材移動部14の制御を繰り返す。なお、受け部材状態検出部30は、
図3のブロックで示すように「状態検出部30」と略す場合がある。
【0052】
制御部20Aおよび均等支持判断部21の具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を採用することができる。例えば、制御部20Aは、公知のマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラのCPU等といった演算装置で構成されればよい。また、均等支持判断部21は、制御部20Aを構成する演算装置の機能構成としてソフトウェアにより実現されてもよいし、制御部20Aから独立した専用の演算器(公知の演算素子あるいは公知の演算回路等)により実現されてもよい。
【0053】
状態検出部30の具体的な構成は特に限定されないが、
図4Aに示すように、受け部材移動部14に加えられる荷重を測定するロードセルまたはフォースセンサ31であってもよいし、
図4Bに示すように、受け部材移動部14が備える駆動モータの電流値を測定する電流計32であってもよいし、
図4Cに示すように、受け部材13と航空機部品との距離を測定する距離センサ33であってもよい。また、それぞれの受け部材移動部14(または受け部材13)が、状態検出部30として、ロードセルまたはフォースセンサ31、電流計32、および距離センサ33の少なくともいずれか2種(あるいは3種すべて)を備えてもよいし、他の状態検出部30を備えてもよい。
【0054】
なお、状態検出部30が距離センサ33である場合には、受け部材13と航空機部品との実際の距離を測定してもよいが、受け部材移動部14が受け部材13を支持する支持軸(支持ロッド)の進退移動量を測定し、受け部材13が航空機部品に接触するまでの進退移動量を受け部材13と航空機部品との距離としてもよい。また、
図4C(並びに
図3)では、距離センサ33が受け部材移動部14から支持状態データを直接検出している(図中点線矢印)ように図示しているが、この図示は便宜上のものであり、受け部材13と航空機部品の下面との距離を測定している構成を排除するものではない。
【0055】
次に、状態検出部30、制御部20Aおよび均等支持判断部21による均等支持状態の判断(判定)の代表的な一例について、
図5を参照して具体的に説明する。
【0056】
まず、制御部20Aにより全ての受け部材移動部14の駆動を制御して、全ての受け部材13の進退位置を、CAD上の理想位置(設計上の理想位置)であるノミナル位置にセットする(ステップS11)。そして、航空機部品組立治具10Aに航空機胴体パネル等の航空機部品を載置する(ステップS12)。
【0057】
航空機部品が載置された後に、状態検出部30が受け部材13の支持状態を検出し、制御部20Aに出力する(ステップS13)。制御部20Aは、取得した全ての受け部材13の支持状態に基づき、全ての受け部材13が均等に航空機部品を支持しているか否か、すなわち均等支持状態にあるか否かを均等支持判断部21に判断させる(ステップS14)。均等支持状態にあると判断すれば(ステップS14でYes)、制御部20Aはこの制御を終了する。
【0058】
一方、均等支持判断部21が均等支持状態にないと判断すれば(ステップS14でNo)、制御部20Aは、全ての受け部材移動部14のうち調整が必要な受け部材移動部14を制御し、所定の範囲内で各受け部材13の進退位置を調整する(ステップS15)。その後は、受け部材13の支持状態を再び検出して(ステップS13)、均等支持判断部21による判断が繰り返される(ステップS14)。なお、均等支持判断部21の判断結果によっては、制御部20Aは、一部の受け部材移動部14ではなく、全ての受け部材移動部14の調整が必要と判断して、全ての受け部材13の進退位置を調整することもあり得る。
【0059】
ここで、均等支持判断部21による均等支持状態の判断について、より具体的に説明する。状態検出部30がロードセルまたはフォースセンサ31であれば(
図4A参照)、支持状態を示す制御データは、受け部材移動部14に加えられる加重であり、状態検出部30が電流計32であれば(
図4B参照)、支持状態を示す制御データは、受け部材移動部14が備える駆動モータの電流値であり、状態検出部30が距離センサ33であれば、支持状態を示す制御データは、受け部材13と航空機部品との間隔である。
【0060】
そこで、均等支持判断部21では、制御データの検出値と予め設定されている基準値とを比較して、複数の受け部材13のうち、航空機部品の下面の押上げが過剰である(受け部材13が航空機部品を担いでいる)もの、航空機部品の下面の押上げが不足している(航空機部品が受け部材13に十分に載ってない)もの、もしくはその両方が存在するか否かを識別する。そして、均等支持判断部21は、押上げが過剰もしくは押上げが不足している受け部材13が存在すれば、均等支持状態にないと判断する。制御部20Aは、均等支持状態にないとの判断結果を取得して、航空機部品の図面公差範囲内で当該航空機部品の下面の位置を調整するように、受け部材移動部14を駆動させて受け部材13の位置を進退移動させる。
【0061】
なお、本実施の形態1に係る
航空機部品組立治具10Aの制御構成は、
図3に示す構成に限定されない。例えば、
図6に示すように、
航空機部品組立治具10Aの変形例としては、航空機部品の下面が少なくとも受け部材13によって支持されている状態を撮像する撮像部34をさらに備える構成を挙げることができる。この撮像部34による撮像画像は、航空機部品が組立作業可能な状態にあるか否かを判定するために制御部20Aにより利用される。
【0062】
具体的には、例えば、制御部20Aが、航空機部品の図面公差範囲内で下面の位置を調整するように、前記の通り、受け部材移動部14を駆動させて受け部材13の位置を進退移動させるとする(
図5のステップS15)。その後に、撮像部34が航空機部品の下面が少なくとも受け部材13によって支持されている状態を撮像し、制御部20Aに出力される。制御部20Aは、この撮像画像から、航空機部品とヘッダープレート12または受け部材13の間に隙間が生じているか否か、もしくは、航空機部品の下面が予め設定される正規の形状であるか否かを識別する。
【0063】
制御部20Aにより、隙間が生じていない、もしくは、正規の形状であると識別されたときには、制御部20Aは、航空機部品が組立て作業可能な状態にあると判定すればよい。一方、隙間が生じている、もしくは、正規の形状でないと識別されたときには、受け部材移動部14を駆動させて受け部材13の位置を進退移動させて(
図5のステップS15)、再び撮像部34から撮像画像を取得して、隙間の発生または正規の形状であるか否かを識別すればよい。
【0064】
ここで、本実施の形態1に係る
航空機部品組立治具10Aにより、航空機部品を構成する部材同士の結合部位すなわち重要なインターフェース部位において、部材の位置を良好に調整可能であることについて、
図7Aおよび
図7Bを参照して説明する。
図7Aおよび
図7Bでは、航空機部品が航空機胴体パネルであり、航空機胴体パネルを構成する部材が複数枚のスキンである場合を例示している。なお、
図7Aでは、図示の便宜上、スキンの輪郭を白線で強調している。
【0065】
従来の
航空機部品組立治具により複数枚(2枚)のスキン41,42(
図7A,
図7Bでは、下側がスキン41であり、上側がスキン42である)を端部(側部または縁部)同士で結合しようとする。この場合、下側のスキン41と上側のスキン42との結合部位(インターフェース部位)では、
図7Aに示すように、下側のスキン41に対して上側のスキン42の端部が大きく跳ね上がってしまい、スキン41とスキン42との間では、リベットによる締結が成立しないほどに大きな間隔が生じている。
【0066】
これに対して、本実施の形態1に係る
航空機部品組立治具10Aでは、前記の通り、検出した制御データの検出値と予め設定されている基準値とを比較して、受け部材13によるスキン41,42の均等支持状態が実現されているか否かを判断し、均等支持状態にないと判断したときには、調整が必要な受け部材移動部14を制御し、図面公差内でそれぞれの受け部材13の進退位置を調整する。これにより、
図7Bに示すように、下側のスキン41の端部に対して上側のスキン42の端部を良好に重ねることが可能になる。
【0067】
このように、本実施の形態1に係る航空機部品組立治具は、航空機部品を載置した状態で、当該航空機部品の下面または上面に沿う形状を成し、前記航空機部品の所定方向に並ぶ複数のヘッダープレートと、複数の前記ヘッダープレートのそれぞれに複数設けられ、その先端には前記航空機部品の下面に当接する受け部材を有し、当該受け部材を進退移動(上げ下げ)させる受け部材移動部(例えば電動シリンダ)と、複数の前記受け部材移動部をそれぞれ独立して駆動可能に制御する制御部と、前記航空機部品を載置した状態では、少なくとも複数の前記受け部材によって前記航空機部品の下面が支持されており、それぞれの前記受け部材による前記航空機部品の下面を支持する状態を制御データとして検出する受け部材状態検出部と、を備え、前記制御部は、検出した前記制御データの検出値と予め設定されている基準値とを比較して、全ての前記受け部材による前記航空機部品の均等な支持状態が実現されているか否かを判断し、均等な支持状態にないと判断したときには、全ての受け部材移動部のうち少なくとも一部の受け部材移動部を制御し、図面公差内でそれぞれの前記受け部材の進退位置を調整する構成であればよい。
【0068】
前記構成によれば、受け部材による航空機部品の下面を支持する(下面を受ける)状態を制御データとして検出し、この制御データに基づいて、航空機部品の下面が受け部材により均等支持されているか否か(均等支持状態にあるか否か)を制御部で判定する。これにより、航空機部品が例えば航空機胴体パネルのスキンのような大型構造物であっても、航空機部品を載置したときに、当該航空機部品が一部の受け部材に当たる(片当たりする)ことを有効に抑制または回避し、全ての受け部材で航空機部品の下面を均等に支持することができる。
【0069】
その結果、大型の航空機部品であってもその一部を跳ね上げることなく、載置した航空機部品の姿勢を良好に保持することが可能になる。また、航空機部品におけるパネル同士の結合部といったインターフェース部位(部品同士の接触部位または連結部位)において、無理に力を加えることなく良好な位置調整を行うことが可能になる。
【0070】
前記構成の航空機部品組立治具においては、前記受け部材状態検出部は、前記制御データとして、前記受け部材移動部に加えられる荷重、前記受け部材移動部が備える駆動モータの電流値、および、前記受け部材移動部と前記航空機部品との間隔の少なくともいずれかを制御データとして検出し、前記制御部は、当該制御データの検出値と予め設定されている基準値とを比較して、複数の前記受け部材のうち、前記航空機部品の下面の押上げが過剰である(前記受け部材が前記航空機部品を担いでいる)もの、前記航空機部品の下面の押上げが不足している(前記航空機部品が前記受け部材に十分に乗っていない)もの、もしくはその両方が存在するか否かを識別し、押上げが過剰もしくは押上げが不足している前記受け部材が存在すれば、前記航空機部品の図面公差範囲内で前記下面の位置を調整するように、前記受け部材移動部を駆動させて前記受け部材の位置を進退移動させる構成であってもよい。
【0071】
また、前記構成の航空機部品組立治具においては、前記受け部材状態検出部として、(1)前記受け部材移動部に加えられる荷重を測定するロードセルまたはフォースセンサ、(2)前記駆動モータの電流値を測定する電流計、および(3)前記受け部材と航空機部品との距離を測定する距離センサの少なくともいずれかを備えている構成であってもよい。
【0072】
また、前記構成の航空機部品組立治具においては、前記航空機部品の下面が少なくとも前記受け部材によって支持されている状態を撮像する撮像部をさらに備え、前記制御部は、前記航空機部品の図面公差範囲内で前記下面の位置を調整するように、前記受け部材移動部を駆動させて前記受け部材の位置を進退移動させた後に、さらに、前記撮像部で撮像された画像から、前記航空機部品と前記ヘッダープレートまたは前記受け部材の間に隙間が生じているか否か、もしくは、前記航空機部品の下面が予め設定される正規の形状であるか否かを識別し、隙間が生じていない、もしくは、正規の形状であると識別されたときには、前記航空機部品が組立て作業可能な状態にあると判定する構成であってもよい。
【0073】
また、前記構成の航空機部品組立治具においては、前記航空機部品が、航空機胴体パネルであり、当該航空機胴体パネルを載置した状態で、当該航空機胴体パネルを構成する部材の両端を位置決めするためのフレームインデックスを備えている構成であってもよい。
【0074】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、航空機部品組立治具の代表的な一例を説明したが、本実施の形態2では、航空機部品組立治具と同様の構造および制御を利用した航空機部品検査治具について代表的な一例を説明する。
【0075】
本実施の形態2に係る検査治具の具体的な構造例は、前記実施の形態1で例示した
図1および
図2に示す
航空機部品組立治具10Aと同様であるので、その説明を省略する。また、
図8に示すように、本実施の形態2に係る検査治具10Bの制御構成も、前記実施の形態1で例示した
図3に示す
航空機部品組立治具10Aの制御構成と同様であるが、制御部20Bは、制御部20Aの均等支持判断部21に変えて検査結果判断部22を備えている点で異なっている。
【0076】
なお、状態検出部30は、前記実施の形態1で説明したように、ロードセルまたはフォースセンサ31、電流計32、または距離センサ33(
図4A~
図4C参照)、あるいはその他の検出器であればよい。また、
図8には図示しないが、前記実施の形態1の変形例と同様に撮像部34を備え、制御部20Bが、撮像部34により撮像された航空機部品の支持状態の画像から、航空機部品とヘッダープレート12または受け部材13の間に隙間が生じているか否か、もしくは、航空機部品の下面が予め設定される正規の形状であるか否かを識別する構成であってもよい(
図6参照)。
【0077】
次に、本実施の形態2に係る
航空機部品検査治具10Bによる航空機部品の検査方法の代表的な一例について、
図9に示す第一の例または
図10に示す第二の例を参照して具体的に説明する。なお、検査方法の具体的な手法は諸条件により適宜変更が可能であり、必ずしも
図9に示す第一の例または
図10に示す第二の例に限定されないことはいうまでもない。
【0078】
まず、
図9に示す検査方法の第一の例について説明する。
航空機部品検査治具10Bは、制御部20Bにより全ての受け部材移動部14の駆動を制御して、全ての受け部材13の進退位置を、CAD上の理想位置(設計上の理想位置)であるノミナル位置にセットする(ステップS21)。このとき、受け部材13の動作範囲は図面公差までに制限される。そして、
航空機部品検査治具10Bに航空機胴体パネル等の航空機部品を載置する(ステップS22)。
【0079】
航空機部品が載置された後に、状態検出部30が受け部材13の支持状態を検出し、制御部20Bに出力する(ステップS23)。制御部20Bは、取得した全ての受け部材13の支持状態に基づき、全ての受け部材13が均等に航空機部品を支持しているか否か、すなわち均等支持状態にあるか否かを検査結果判断部22に判断させる(ステップS24)。このとき、測定したギャップがゼロであれば均等である(均等支持状態にある)と判断してもよい。均等支持状態にあると判断すれば(ステップS24でYes)、検査結果判断部22は、載置された航空機部品が正規の部品形状にあるため「良品」と判断し(ステップS25)、制御部20Bはこの制御を終了する。
【0080】
一方、検査結果判断部22が均等支持状態にないと判断すれば(ステップS24でNo)、制御部20Bは、図面公差内で受け部材13の少なくともいずれかを進退移動させるように受け部材移動部14を制御し、図面公差内の移動(動作)で解が見つかるか否か、すなわち、図面公差内の移動により均等支持状態が実現できるか否かを判定する(ステップS26)。このとき、受け部材13の動作が予め設定される上限を超えている、もしくは、検査結果判断部22による判断の繰り返しが予め設定される指定数を超えているときに、解が見つからないと判断することができる。図面公差内の移動で解が見つからなければ(ステップS26でYes)、検査結果判断部22は、載置された航空機部品が正規の部品形状にないため「不良品」と判断し、(ステップS27)、制御部20Bはこの制御を終了する。
【0081】
これに対して、図面公差内の移動で解が見つかれば(ステップS26でNo)、制御部20Bは、調整が必要な受け部材移動部14を制御し、所定の範囲内で各受け部材13の進退位置を調整し(ステップS28)、再び、受け部材13の支持状態を再び検出して(ステップS23)、検査結果判断部22による判断が繰り返される(ステップS24)。
【0082】
次に、
図10に示す検査方法の第二の例について説明する。
航空機部品検査治具10Bは、制御部20Bにより全ての受け部材13の進退位置をノミナル位置にセットし(ステップS31)、
航空機部品検査治具10Bに航空機胴体パネル等の航空機部品を載置し(ステップS32)、状態検出部30が受け部材13の支持状態を検出して制御部20Bに出力し(ステップS33)、制御部20Bは、全ての受け部材13の支持状態に基づき均等支持状態にあるか否かを検査結果判断部22に判断させる(ステップS34)。これらステップ31~34は、
図9に示す検査方法の第一の例のステップS21~S24と同様である。
【0083】
検査結果判断部22が均等支持状態にあると判断すれば(ステップS34でYes)、さらに検査結果判断部22は、受け部材13の動作範囲が図面公差を超えていないか否かを判断する(ステップS35)。図面公差を超えていない、もしくは、受け部材13の動作が予め設定される上限を超えていないと判断すれば(ステップS35でYes)、検査結果判断部22は、載置された航空機部品が正規の部品形状にあるため「良品」と判断し(ステップS36)、制御部20Bはこの制御を終了する。
【0084】
一方、検査結果判断部22が均等支持状態にないと判断すれば(ステップS34でNo)、制御部20Bは、調整が必要な受け部材移動部14を制御し、所定の範囲内で各受け部材13の進退位置を調整し(ステップS37)、再び、受け部材13の支持状態を再び検出して(ステップS33)、検査結果判断部22による判断が繰り返される(ステップS34)。
【0085】
また、検査結果判断部22が受け部材13の動作範囲が図面公差を超えていると判断すれば(ステップS35でNo)、検査結果判断部22は、載置された航空機部品が正規の部品形状にないため「不良品」と判断し、(ステップS38)、制御部20Bはこの制御を終了する。
【0086】
なお、検査結果判断部22が均等支持状態にないと判断する基準は、前記実施の形態1における均等支持判断部21の判断と同様であり、(1)いずれかの受け部材13の移動量が図面公差以上になるとき、(2)いずれかの受け部材13にかかる荷重が均等の範囲から外れるとき、または、(3)受け部材13と航空機部品の下面との間に隙間があるとき、の少なくともいずれかであればよい。また、受け部材13と航空機部品の下面との間に隙間があるか否かについては、検査結果判断部22は、状態検出部30により検出される支持状態だけでなく、前述した撮像部34による撮像画像を利用して判断することができる。
【0087】
また、本実施の形態2では、航空機部品検査治具10Bは、前記実施の形態1に係る航空機部品組立治具10Aとは異なる治具(装置)として説明しているが、前記の通り、本実施の形態2に係る
航空機部品検査治具10Bと前記実施の形態1に係る
航空機部品組立治具10Aとは、その治具構造が共通している。それゆえ、例えば、前記実施の形態1に係る
航空機部品組立治具10Aの制御部20Aに対して、本実施の形態2に係る検査治具10Bの制御部20Bが実施する制御構成(例えば
図8および
図9に例示する制御構成)を適用することで、
航空機部品組立治具10Aを
航空機部品検査治具10Bとしても用いることが可能になる。
【0088】
このように、本実施の形態2に係る航空機部品検査治具は、航空機部品を載置した状態で、当該航空機部品の下面または上面に沿う形状を成し、前記航空機部品の所定方向に並ぶ複数のヘッダープレートと、複数の前記ヘッダープレートのそれぞれに複数設けられ、その先端には前記航空機部品の下面に当接する受け部材を有し、当該受け部材を進退移動(上げ下げ)させる受け部材移動部(例えば電動シリンダ)と、複数の前記受け部材移動部をそれぞれ独立して駆動可能に制御する制御部と、を備え、前記受け部材をノミナルの位置に設定した状態で、少なくとも当該受け部材の上に前記航空機部品を載置し、前記制御部は、前記航空機部品が前記受け部材上に載置されている状態で、当該受け部材による前記航空機部品の均等な支持状態が実現されているか否かを判断し、均等な支持状態にないと判断した場合には、図面公差内で前記受け部材の少なくともいずれかを進退移動させるように前記受け部材移動部を制御し、図面公差内の移動では、均等な支持状態を実現できないと判断した場合には、前記航空機部品が正規の部品形状から外れていると判断する構成である。
【0089】
前記構成によれば、航空機部品を載置したときに、受け部材の図面公差範囲内の位置調整により均等な支持状態を実現できるか否か(受け部材の位置調整により解が見つかるか否か)を基準として、当該航空機部品が正規の部品形状にあるか否かを判断する。これにより、航空機部品が例えば航空機胴体パネルのスキンのような大型構造物であっても、当該航空機部品の部品形状の良否を判定することができる。その結果、航空機部品が大型構造物であっても良好な部品形状の判断が可能になる。また、前記構成によれば、航空機部品組立治具と実質同じ構成を航空機部品の検査に利用することができるので、航空機部品組立治具が航空機部品検査治具を兼用することが可能になる。
【0090】
前記構成の航空機部品検査治具においては、前記均等な支持状態にないとの判定は、(1)いずれかの前記受け部材の移動量が図面公差以上になるとき、(2)いずれかの前記受け部材にかかる荷重が均等の範囲から外れるとき、または、(3)前記受け部材と前記航空機部品の下面との間に隙間があるとき、の少なくともいずれかである構成であってもよい。
【0091】
また、前記構成の航空機部品検査治具においては、前記航空機部品が、航空機胴体パネルであり、当該航空機胴体パネルを載置した状態で、当該航空機胴体パネルを構成する部材の両端を位置決めするためのフレームインデックスを備えている構成であってもよい。
【0092】
また、前記構成の航空機部品検査治具においては、少なくとも複数の前記受け部材によって前記航空機部品の下面が支持されているときに、それぞれの前記受け部材による前記航空機部品の下面を支持する状態を制御データとして検出する受け部材状態検出部を備え、前記制御部は、検出した前記制御データの検出値と予め設定されている基準値とを比較して、全ての前記受け部材による前記航空機部品の均等な支持状態が実現されているか否かを判断する構成であってもよい。
【0093】
また、前記構成の航空機部品検査治具においては、前記受け部材状態検出部として、前記受け部材移動部に加えられる荷重を測定するロードセルまたはフォースセンサ、前記受け部材移動部が備える駆動モータの電流値を測定する電流計、および前記受け部材と航空機部品との距離を測定する距離センサの少なくともいずれかを備えている構成であってもよい。
【0094】
また、前記構成の航空機部品検査治具においては、前記航空機部品の下面が少なくとも前記受け部材によって支持されている状態を撮像する撮像部をさらに備え、前記制御部は、均等な支持状態を実現できないと判定した後に、さらに、前記撮像部で撮像された画像から、前記航空機部品と前記受け部材との間に隙間が生じているか否か、もしくは、前記航空機部品の下面が予め設定される正規の形状であるか否かを識別し、隙間が生じている、もしくは、正規の形状でないと識別されたときには、前記航空機部品が正規の部品形状から外れていると判定する構成であってもよい。
【0095】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、例えば航空機胴体パネル等の航空機部品を組み立てる分野に広く好適に用いることができる。さらには、本発明は、航空機胴体パネル等の航空機部品を検査する分野にも広く好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0097】
10A:航空機部品組立治具
10B:航空機部品検査治具
11:ベース
11a,11b:サイドビーム
11c:中央ビーム
11d:支柱
12:ヘッダープレート
13:受け部材
14:受け部材移動部
15:第一フレームインデックス
16:第二フレームインデックス
17:エンドプレート
20A,20B:制御部
21:均等支持判断部
22:検査結果判断部
30:受け部材状態検出部
31:ロードセルまたはフォースセンサ
32:電流計
33:距離センサ
34:撮像部