(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】タンデム太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 51/44 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
H01L31/04 122
H01L31/04 112Z
H01L31/04 114
H01L31/04 130
H01L31/04 135
(21)【出願番号】P 2019149055
(22)【出願日】2019-08-15
(62)【分割の表示】P 2017152240の分割
【原出願日】2017-08-07
【審査請求日】2019-09-05
(31)【優先権主張番号】10-2016-0163838
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】LG ELECTRONICS INC.
【住所又は居所原語表記】128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu, 07336 Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100159259
【氏名又は名称】竹本 実
(72)【発明者】
【氏名】アン セ-ウォン
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-124481(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106025087(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0126401(US,A1)
【文献】Miha Filipic et al.,"CH3NH3PbI3 perovskite / silicon tandem solar cells: characterization based optical simulations",OPTICS EXPRESS ,2015年,Vol.23, No.7,pp.A263-A278
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078、31/18-31/20
H01L 51/42-51/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶シリコン基板の第1面に配置されたエミッタ層と、前記エミッタ層上に配置されて、前記エミッタ層の一部が露出する開口部を有するようにパターニングされた第1のパッシベーションパターンと、を有するシリコン太陽電池
であって、前記第1のパッシベーションパターンは水素を含むシリコン太陽電池と、
ペロブスカイト吸収層を有するペロブスカイト太陽電池と、
前記シリコン太陽電池の前記第1のパッシベーションパターン上及び前記開口部を通じて露出する前記エミッタ層上に配置され、前記エミッタ層の一部と接触し、前記シリコン太陽電池と前記ペロブスカイト太陽電池とを接合し、透明導電性酸化物(Transparent Conductive Oxide;TCO)材料からなる接合
層と、
前記ペロブスカイト太陽電池上に配置された第1電極と、
前記結晶シリコン基板の第2面上に配置された後面電界層と、
前記後面電界層上に配置された第2のパッシベーション層と、
前記結晶シリコン基板の第2面に配置された第2電極であって、前記第2のパッシベーション層を貫通して前記後面電界層に直接接触し、前記第2電極を前記第2のパッシベーション層を貫通して前記後面電界層に連結するよう700℃以上の高温で行われる熱処理のためのガラスフリット及び無機添加物を有する第2電極と、を有する、タンデム太陽電池。
【請求項2】
前記ペロブスカイト太陽電池は、
電子伝達層及び正孔伝達層をさらに有する、請求項1に記載のタンデム太陽電池。
【請求項3】
前記第1電極は、
前記ペロブスカイト太陽電池上に配置された透明電極層と、
前記透明電極層上に配置されたグリッド電極層と、を有する、請求項1に記載のタンデム太陽電池。
【請求項4】
前記透明電極層は、
凹凸構造を有する、請求項3に記載のタンデム太陽電池。
【請求項5】
前記第1のパッシベーションパターンは、10~100nmの厚さを有する、請求項1に記載のタンデム太陽電池。
【請求項6】
前記結晶シリコン基板は、
第1面及び第2面のうち少なくとも一つに配置されたテクスチャリングパターンを有する、請求項1に記載のタンデム太陽電池。
【請求項7】
前記ペロブスカイト太陽電池は、
前記電子伝達層とペロブスカイト吸収層との間に配置されたメソポーラス層をさらに有する、請求項2に記載のタンデム太陽電池。
【請求項8】
結晶シリコン基板の第1面にエミッタ層を形成する第1段階と、
前記結晶シリコン基板の第2面上に後面電界層を形成する段階と、
前記エミッタ層上に第1のパッシベーション層を形成する第2段階と、
前記後面電界層上に第2のパッシベーション層を形成する段階と、
前記結晶シリコン基板の第2面に第2電極を形成する第3段階であって、前記第2電極は、前記第2のパッシベーション層を貫通して前記後面電界層に直接接触し、前記第2電極を前記第2のパッシベーション層を貫通して前記後面電界層に連結するよう700℃以上の高温で行われる熱処理のためのガラスフリット及び無機添加物を有する第3段階と、
前記第1のパッシベーション層の一部をエッチングして、前記エミッタ層の一部を露出する開口部を有するようにパターニングされた第1のパッシベーションパターンを有するシリコン太陽電池を形成する第4段階
であって、前記第1のパッシベーションパターンは水素を含む第4段階と、
前記開口部を通じて露出する前記エミッタ層上及び前記第1のパッシベーションパターン上に透明導電性酸化物(Transparent Conductive Oxide;TCO)材料からなる接合層を形成する第5段
階と、
前記接合層上にペロブスカイト吸収層を有するペロブスカイト太陽電池を形成する第6段階と、
前記ペロブスカイト太陽電池上に第1電極を形成する第7段階と、を有する、タンデム太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記第2電極は、前記第2のパッシベーション層上に塗布されて、第1温度を有する熱処理により前記第2のパッシベーション層を貫通して、前記後面電界層に連結される、請求項
8に記載のタンデム太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記エミッタ層を形成する段階の前に、
前記結晶シリコン基板の第1面及び第2面を平坦化した後、前記第1面及び第2面のうち少なくとも一つをテクスチャリングして、テクスチャリングパターンを形成する段階をさらに有する、請求項8に記載のタンデム太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記第1のパッシベーション層は、
10~100nmの厚さに形成される、請求項8に記載のタンデム太陽電池の製造方法。
【請求項12】
前記第2電極は、ガラスフリット及び焼成貫通用無機添加物を有する電極ペーストを用い、
前記第1電極は、ガラスフリットを有しない電極ペーストを用いる、請求項8に記載のタンデム太陽電池の製造方法。
【請求項13】
前記ペロブスカイト太陽電池を形成する段階は、
前記接合層上に電子伝達層を形成する段階と、
前記電子伝達層上に前記ペロブスカイト吸収層を形成する段階と、
前記ペロブスカイト吸収層上に正孔伝達層を形成する段階と、を有する、請求項8に記載のタンデム太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンデム太陽電池及びその製造方法に関するものであり、より具体的には、シリコン太陽電池上にペロブスカイト太陽電池を積層して接合したタンデム太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶シリコン(crystalline Silicon;c-Si)太陽電池は、代表的な単一接合(single junction)太陽電池であり、ここ数十年間太陽電池市場を支配してきた。
【0003】
しかし、結晶シリコンのバンドギャップは、Shockley-Queisser限界を考慮するとき、ほとんど理想的であるにもかかわらず、シリコン基盤(基板)太陽電池の光電変換効率をAuger再結合により約30%の水準に制限されているのが実情である。
【0004】
すなわち、従来の結晶シリコン太陽電池の光電効率は、バンドギャップよりもずっと高いエネルギを有する光子が入射する際に発生する熱化損失(thermalization loss)と、バンドギャップよりも低いエネルギを有するフォトンの透過損失と、により低い限界値を有する。
【0005】
ここで、熱化損失とは、太陽電池へ吸収された光の超過エネルギが格子振動の量子形態であるフォトンに転換せず、熱エネルギに損失されることを言い、透過損失とは、バンドギャップよりも低いエネルギを有する光子が電子を十分に励起させないことによる損失を意味する。
【0006】
単一接合太陽電池において、熱化損失を減らすためには適切な大きさのバンドギャップが必要であると共に、低いエネルギのフォトンが寄与するためにはバンドギャップが低い必要があるため、互いにトレードオフ(trade-off)関係が成り立つ。
【0007】
このようなトレードオフ関係は、単一接合太陽電池では解決が困難であるため、最近は、タンデム太陽電池(tandem solar cell又はdouble-junction solar cell)のように、多様なエネルギバンドギャップを有する材料等を用いることで、広いスペクトル領域の光エネルギを効果的に利用しようとする試みが行われている。
【0008】
このような試みの一環として、異なるバンドギャップを有する吸収層を含む単一接合太陽電池を連結(接続)して、一つの太陽電池を構成するタンデム太陽電池が提案されたことがある。
【0009】
一般に、タンデム太陽電池は、比較的大きいバンドギャップを有する吸収層を含む単一接合太陽電池が先に入射光を受けるように上部に位置し、比較的バンドギャップの小さい吸収層を含む単一接合太陽電池が下部に位置する。
【0010】
これにより、タンデム太陽電池は、上部で短波長領域の光を吸収して、下部で長波長領域の光を吸収することで、限界波長(threshold wavelength)を長波長の方に移動することができ、結果的に全(全体)吸収波長の領域を広く利用することができるという利点がある。
【0011】
また、全吸収波長の領域を二つの帯域に分けて利用することで、電子-正孔を生成する際に熱損失の減少を期待することができる。
【0012】
このようなタンデム太陽電池は、単一接合太陽電池の接合形態及び電極の具備される位置によって、大きく2端子(two-terminal)タンデム太陽電池と4端子(four-terminal)タンデム太陽電池とに分類される。
【0013】
具体的には、2端子タンデム太陽電池は、二つのサブ太陽電池がトンネル接合されて、タンデム太陽電池の上部及び下部にそれぞれ電極が具備された構造を有し、4端子タンデム太陽電池は、二つのサブ太陽電池が互いに離隔した状態で存在して、それぞれサブ太陽電池の上部及び下部に電極が具備された構造を有する。
【0014】
4端子タンデム太陽電池の場合は、各サブ太陽電池が別の基板を必要とし、2端子タンデム太陽電池に比べて比較的多くの透明導電性接合を必要とするため抵抗が高く、必然的に光学損失が生じるため、2端子タンデム太陽電池が次世代太陽電池として注目されている。
【0015】
図1は、一般的な2端子タンデム太陽電池を概略的に示した模式図である。
【0016】
図1を参照すれば、一般的な太陽電池は、比較的大きいバンドギャップを有する吸収層を含む単一接合太陽電池と、比較的バンドギャップの小さい吸収層を含む単一接合太陽電池と、が接合層を媒介としてトンネル接合される。
【0017】
多様な種類の2端子タンデム太陽電池のうち、比較的大きいバンドギャップを有する吸収層を含む単一接合太陽電池をペロブスカイト太陽電池として使用して、比較的バンドギャップの小さい吸収層を含む単一接合太陽電池を結晶シリコン太陽電池として使用したペロブスカイト/結晶シリコンタンデム太陽電池が、30%以上の光電効率を達成できる有力な候補として注目されている。
【0018】
ペロブスカイト/結晶シリコンタンデム太陽電池において、ペロブスカイト太陽電池は、結晶シリコン太陽電池上に接合層を形成した後、接合層上に蒸着することになる。
【0019】
図面には詳しく示さないが、一般的なタンデム太陽電池は、結晶シリコン太陽電池の後面に後面金属電極が配置されて、ペロブスカイト太陽電池の前面に前面金属電極が配置される。
【0020】
このとき、後面金属電極及び前面金属電極は、ガラスフリットが添加された電極ペーストをそれぞれ塗布した後、700℃以上の高温で焼成して製造している。
【0021】
すなわち、一般的なタンデム太陽電池の場合は、ペロブスカイト太陽電池を形成してからガラスフリットの添加された電極ペーストをそれぞれ塗布した後、700℃以上の高温で焼成して、後面金属電極と前面金属電極とを同時に形成している。
【0022】
この結果、一般的なタンデム太陽電池では、ペロブスカイト太陽電池を結晶シリコン太陽電池と接合させた後に後面金属電極及び前面金属電極を形成するため、ペロブスカイト太陽電池が700℃以上の高温にそのまま露出することに起因してペロブスカイト太陽電池の特性が劣化する問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、ホモ接合(同種接合)(homo-junction)シリコン太陽電池で具現されるタンデム太陽電池において、第1のパッシベーションパターンを導入して、第1のパッシベーションパターンの下部のエミッタ層の一部を露出させることで、第2電極を形成するための高温焼成の際に、第1のパッシベーションパターンによりエミッタ層が保護されて、エミッタ層の表面欠陷を減少させ、ペロブスカイト太陽電池の特性劣化問題を改善するタンデム太陽電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0024】
また、本発明は、第1のパッシベーションパターンの導入で、エミッタ層及び第1のパッシベーションパターンの上部に積層される接合層がエミッタ層の一部と直接接合されることにより、シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池との電気的接合の信頼性を向上させるタンデム太陽電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0025】
さらに、本発明は、結晶シリコン基板の第1面及び第2面のうち少なくとも一つに配置されたテクスチャリングパターンを有するテクスチャ構造を有するように設計することで、接合層とシリコン太陽電池との境界面における反射率を下げると共に、シリコン太陽電池において長波長光の利用率を向上させるタンデム太陽電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上述の技術的課題を解決するために本発明の一側面によれば、結晶シリコン基板の第1面に配置されたエミッタ層と、エミッタ層上に配置されて、エミッタ層の一部が露出する開口部を有するようにパターニングされた第1のパッシベーションパターンを有するシリコン太陽電池と、ペロブスカイト吸収層を有するペロブスカイト太陽電池と、シリコン太陽電池の第1のパッシベーションパターンと、開口部を通じて露出するエミッタ層上に配置されて、シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池とを接合する接合層と、ペロブスカイト太陽電池上に配置された第1電極と、結晶シリコン基板の第2面に配置された第2電極と、を有するタンデム型太陽電池を提供することができる。
【0027】
本発明の他の側面によれば、結晶シリコン基板の第1面にエミッタ層を形成して、シリコン太陽電池を形成する段階と、エミッタ層上に第1のパッシベーション層を形成する段階と、結晶シリコン基板の第2面に第2電極を形成する段階と、第1のパッシベーション層の一部をエッチングして、エミッタ層の一部を露出する開口部を有する第1のパッシベーションパターンを形成する段階と、開口部を通じて露出するエミッタ層及び第1のパッシベーションパターン上に接合層を形成する段階と、接合層上にペロブスカイト吸収層を形成して、ペロブスカイト太陽電池を形成する段階と、ペロブスカイト太陽電池上に第1電極を形成する段階と、を有するタンデム太陽電池の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、エミッタ層の上部に一定の間隔で離隔して配置されるように設計された第1のパッシベーションパターンを導入して、第1のパッシベーションパターンの下部のエミッタ層の一部が露出するようにした。
【0029】
この結果、本発明によるタンデム太陽電池は、第2電極を形成するための高温焼成の際に、第1のパッシベーションパターンによりエミッタ層が保護されて、エミッタ層の表面欠陷を減少させるため、ペロブスカイト太陽電池の特性劣化問題を改善することができる。
【0030】
さらに、本発明によるタンデム太陽電池は、第1のパッシベーションパターンの導入で、エミッタ層及び第1のパッシベーションパターンの上部に積層される接合層がエミッタ層の一部と直接接合されることにより、シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池との電気的接合の信頼性を向上させることができる。
【0031】
また、本発明によるタンデム太陽電池の製造方法は、第2電極と第1電極とを同時に形成するのではなく、ペロブスカイト太陽電池を形成する前に、700℃以上の高温焼成工程で第2電極を形成して、ペロブスカイト太陽電池を形成した後、250℃以下の低温焼成工程で第1電極を形成する、二元化(二段階)方式で行われるため、ペロブスカイト太陽電池が700℃以上の高温焼成工程で露出するおそれはなくなる。
【0032】
この結果、本発明によるタンデム太陽電池の製造方法は、ペロブスカイト太陽電池が第1電極を形成するための250℃以下の低温焼成工程でのみ露出し、第2電極を形成するための700℃以上の高温焼成工程では露出するおそれがないため、ペロブスカイト太陽電池が高温焼成により劣化する問題を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】一般的なタンデム太陽電池を概略的に示した模式図である。
【
図2】本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池を示した断面図である。
【
図3】
図2のペロブスカイト太陽電池を詳細に示した断面図である。
【
図4】本発明の第2実施例によるタンデム太陽電池を示した断面図である。
【
図5】本発明の複数の太陽電池を直列に連結した第1実施例の概略図である。
【
図6】本発明の複数の太陽電池を直列に連結した第2実施例の概略図である。
【
図7】本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池の製造方法を示した工程断面図である。
【
図8】本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池の製造方法を示した工程断面図である。
【
図9】本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池の製造方法を示した工程断面図である。
【
図10】本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池の製造方法を示した工程断面図である。
【
図11】本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池の製造方法を示した工程断面図である。
【
図12】本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池の製造方法を示した工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本願に添付した図面を参照しながら本発明の望ましい実施例によるタンデム太陽電池及びこれを製造する方法を詳しく説明する。
【0035】
本発明は、以下に開示する実施例に限るものではなく、異なる多様な形態で具現することができるが、但、本実施例は、本発明の開示を完全なものにし、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものである。
【0036】
[タンデム太陽電池]
第1実施例
図2は、本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池を示した断面図であり、
図3は、
図2のペロブスカイト太陽電池を詳細に示した断面図である。
【0037】
図2及び
図3を参照すれば、本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池100は、比較的大きいバンドギャップを有する吸収層を含むペロブスカイト太陽電池120と比較的バンドギャップの小さい吸収層を含むシリコン太陽電池110とが、接合層130を媒介として直接トンネル接合された2端子タンデム太陽電池の構造を有する。
【0038】
これにより、タンデム太陽電池100に入射した光のうち、短波長領域の光は、上部に配置されたペロブスカイト太陽電池120に吸収されて電荷を生成し、ペロブスカイト太陽電池120を透過する長波長領域の光は、下部に配置されたシリコン太陽電池110に吸収されて電荷を生成する。
【0039】
上述した構造を有するタンデム太陽電池100は、上部に配置されたペロブスカイト太陽電池120で短波長領域の光を吸収して発電し、下部に配置されたシリコン太陽電池110で長波長領域の光を吸収して発電することで、限界波長(threshold wavelength)を長波長の方に移動させることができ、結果的に全太陽電池が吸収する波長帯を広げるという利点がある。
【0040】
前述した本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池100は、シリコン太陽電池110、ペロブスカイト太陽電池120、接合層130、第1電極140及び第2電極150を含む。
【0041】
シリコン太陽電池110は、ホモ接合(homo-junction)結晶シリコン太陽電池で具現することができる。具体的には、シリコン太陽電池110は、結晶シリコン基板111の第1面に配置されたエミッタ層112を有する。また、シリコン太陽電池110は、結晶シリコン基板111の第2面に配置された後面電界層113をさらに有してもよい。すなわち、シリコン太陽電池110は、シリコン基板111及びエミッタ層112が順次積層された2層構造を有することができる。また、シリコン太陽電池110は、後面電界層113、シリコン基板111及びエミッタ層112が順次積層される3層構造を有してもよい。
【0042】
ここで、エミッタ層112としては、結晶シリコン基板111と相違する導電型を有する不純物ドーピング層が用いられ、後面電界層113としては、結晶シリコン基板111と同じ導電型を有する不純物ドーピング層が用いられることで、ホモ接合結晶シリコン太陽電池110を具現することができる。
【0043】
例えば、結晶シリコン基板111がn型の単結晶シリコン基板である場合は、エミッタ層112は、p型の不純物でドーピングされた半導体層が用いられ、後面電界層113は、n型の不純物でドーピングされた半導体層が用いられる。このとき、後面電界層113は、結晶シリコン基板111にドーピングされたn型の不純物の濃度よりさらに高濃度でドーピングされたn+型の半導体層であってもよい。
【0044】
また、結晶シリコン基板111としては、n型の単結晶シリコン基板の代わりにp型の単結晶シリコン基板又は結晶シリコン太陽電池に通常使用される他の結晶シリコン基板を用いても構わない。同様に、エミッタ層112及び後面電界層113も、結晶シリコン基板111の導電型によって適切な導電型を有する不純物でドーピングされるように設計されてもよい。
【0045】
ここで、シリコン太陽電池110の結晶シリコン基板111は、第1面及び第2面のうち少なくとも一つに配置されたテクスチャリングパターンを有するテクスチャ構造を有する。
【0046】
このように、結晶シリコン基板111の第2面にテクスチャ構造を導入して、結晶シリコン基板111の第2面上に順次配置される後面電界層113及び第2のパッシベーション層160もテクスチャ構造を有する。また、結晶シリコン基板111の第1面にテクスチャ構造を導入することで、結晶シリコン基板111の第1面上に順次具備されるエミッタ層112、第1のパッシベーションパターン114、接合層130及びペロブスカイト太陽電池120もテクスチャ構造を有する。
【0047】
これにより、タンデム太陽電池100に入射する長波長光は、斜め方向にペロブスカイト太陽電池120を透過して、シリコン太陽電池110に入射することで、接合層130とシリコン太陽電池110との境界面における反射率を下げることができる。さらに、シリコン太陽電池110内における長波長光の移動経路が斜め方向になるにつれて光の経路が増加し、これを通じてシリコン太陽電池110で長波長光の利用率を向上させることができる。
【0048】
このようなシリコン太陽電池110は、エミッタ層112上に配置されて、エミッタ層112の一部が露出する開口部Gを有するようにパターニングされた第1のパッシベーションパターン114をさらに有する。
【0049】
このような第1のパッシベーションパターン114の材質としては、結晶シリコン基板111の欠陷を減らせる水素を含むSiNx:Hが一般に用いられるが、水素を含む他の絶縁膜を用いることも可能であり、SiOx、SiNx、SiOxNy、Al2O3、SiCx等から選択された1種以上の他の膜と多層構造で適用することもできる。
【0050】
このとき、第1のパッシベーションパターン114は、長波長光の反射率を下げるためにその厚さを最大に薄く形成しなければならない。このために、第1のパッシベーションパターン114は、10~100nmの厚さを有することが望ましい。第1のパッシベーションパターン114の厚さが10nm未満である場合は、その厚さが薄すぎることから、第2電極150の形成過程時にエミッタ層112を安定的に保護せず、エミッタ層112に表面欠陷を生成するおそれがある。逆に、第1のパッシベーションパターン114の厚さが100nmを超える場合は、長波長光の反射率を下げる問題を引き起こすので望ましくない。
【0051】
ペロブスカイト太陽電池120は、ペロブスカイト吸収層122を有する。また、ペロブスカイト太陽電池120は、電子伝達(輸送)層121及び正孔伝達(輸送)層123をさらに含む。
【0052】
このとき、電子伝達層121は、ペロブスカイト吸収層122の下部に配置されて、正孔伝達層123は、ペロブスカイト吸収層122の上部に配置されてもよい。このとき、電子伝達層121と正孔伝達層123との位置は、必要に応じて入れ替えてもよい。
【0053】
電子伝達層121は、金属酸化物が用いられてもよい。電子伝達層121を構成する金属酸化物の非制限的な例としては、Ti酸化物、Zn酸化物、In酸化物、Sn酸化物、W酸化物、Nb酸化物、Mo酸化物、Mg酸化物、Zr酸化物、Sr酸化物、Yr酸化物、La酸化物、V酸化物、Al酸化物、Y酸化物、Sc酸化物、Sm酸化物、Ga酸化物、In酸化物及びSrTi酸化物等がある。より望ましくは、電子伝達層121は、ZnO、TiO2、SnO2、WO3及びTiSrO3から選択される少なくとも1種の金属酸化物が用いられてもよい。
【0054】
また、電子伝達層121上には、電子伝達層121と同一又は相違する金属酸化物を含むメソポーラス層125がさらに具備されてもよい。メソポーラス層125は、ペロブスカイト吸収層122で発生した正孔-電子対が電子又は正孔に分解された後、特に電子が後述の接合層130に伝達されることを容易にする役割を行う。また、光学的に散乱構造を形成することで、光の経路を増加させる役割を同時に行う。
【0055】
ペロブスカイト吸収層122は、ペロブスカイト構造を有する化合物を含む光活性層であって、ペロブスカイト構造は、AMX3(ここで、Aは1価の有機アンモニウムカチオン又は金属カチオン、Mは2価の金属(金属)カチオン、Xはハロゲンアニオンを意味する)で表される。ペロブスカイト構造を有する化合物の非制限的な例としては、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbIxCl3-x、CH3NH3PbIxBr3-x、CH3NH3PbClxBr3-x、HC(NH2)2PbI3、HC(NH2)2PbIxCl3-x、HC(NH2)2PbIxBr3-x、HC(NH2)2PbClxBr3-x、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbI3、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbIxCl3-x、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbIxBr3-x又は(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbClxBr3-x等がある(0≦x、y≦1)。AMX3のAに一部のCsがドーピングされる場合も含むことができる。
【0056】
正孔伝達層123は、導電性高分子で具現することができる。すなわち、導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ-3,4-エチレンジオキシポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸(PEDOT-PSS)、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)、スピロ-ミオタード(Spiro-MeOTAD)又はポリアニリン-カンファースルホン酸(PANI-CSA)等が用いられる。このとき、正孔伝達層123は、必要によってn型又はp型のドーパントをさらに含むことができる。
【0057】
接合層130は、シリコン太陽電池110の第1のパッシベーションパターン114及び開口部Gを通じて露出するエミッタ層112上に配置されて、シリコン太陽電池110とペロブスカイト太陽電池120とを接合する役割を行う。これにより、ペロブスカイト太陽電池120は、接合層130を媒介としてシリコン太陽電池110と電気的に連結される。
【0058】
仮に、エミッタ層112の上部全面を覆う第1のパッシベーション層(未図示)を設計すると、第1のパッシベーション層によりエミッタ層112の全面が遮蔽されることに起因して、エミッタ層112と接合層130及びペロブスカイト太陽電池120とが電気的に接合されない問題を引き起こす。また、エミッタ層112上に第1のパッシベーションパターン114を配置することなく、接合層130及びペロブスカイト太陽電池120を直接形成する場合は、エミッタ層112の表面欠陥のためシリコン太陽電池110と接合されるペロブスカイト太陽電池120の特性が劣化する問題を引き起こす。
【0059】
これを解決するために、本発明では、エミッタ層112の上部に一定の間隔で離隔して配置されるように設計された第1のパッシベーションパターン114を導入して、第1のパッシベーションパターン114の下部のエミッタ層112の一部が露出するようにした。この結果、本発明では、第2電極150を形成するための高温焼成の際に、第1のパッシベーションパターン114によりエミッタ層112が保護されて、エミッタ層112の表面欠陷を減少させることができ、ペロブスカイト太陽電池120の特性劣化問題を改善することができる。さらに、エミッタ層112及び第1のパッシベーションパターン114の上部に積層される接合層130がエミッタ層112の一部と直接接合されることにより、シリコン太陽電池110とペロブスカイト太陽電池120との電気的接合の信頼性を向上させることになる。
【0060】
このように、接合層130は、シリコン太陽電池110とペロブスカイト太陽電池120とを電気的に連結する。また、接合層130は、ペロブスカイト太陽電池120を透過する長波長光を透過損失なく下部に配置されたシリコン太陽電池110に入射するように、透明導電性酸化物、炭素質導電性素材、金属性素材又は導電性高分子を用いて具現することができる。また、接合層150にn型又はp型の物質をドーピングして用いることができる。
【0061】
このとき、透明導電性酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)又はZnO等が用いられる。炭素質導電性素材としては、グラフェン又はカーボンナノチューブ等が用いられるし、金属性素材としては、金属(Ag)ナノワイヤ、Au/Ag/Cu/Mg/Mo/Ti等の多層構造の金属薄膜が用いられる。導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン-ポリスチレンスルホン酸(PEDOT-PSS)、ポリ-[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)、スピロ-ミオタード(Spiro-MeOTAD)又はポリアニリン-カンファースルホン酸(PANI-CSA)等が用いられる。
【0062】
また、接合層130は、異なる屈折率を有するシリコン層を複数回交互に積層させた複層構造で具現することもできる。このとき、複層構造は、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された構造を有してもよい。これにより、接合層130を基準として短波長光は、ペロブスカイト太陽電池120側へ反射させて、長波長光は、シリコン太陽電池110側へ透過させることができる。これを通じて、ペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池100の選択的な光の捕集を可能にすることができる。
【0063】
ここで、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された構造を透明導電性酸化物層又はn+型のシリコン層の上部又は下部に設けることで、上述した光の選択的な反射及び透過を具現することができる。
【0064】
第1電極140は、ペロブスカイト太陽電池120上に配置される。このとき、第1電極140は、ペロブスカイト太陽電池120上でグリッド状に直接配置されてもよい。すなわち、第1電極140は、透明電極層142なしでペロブスカイト太陽電池120上に直接配置されたグリッド電極層144のみからなってもよい。
【0065】
この場合、第1電極140は、ガラスフリットを含まない第1電極ペーストを選択的に塗布した後、250℃以下の低温で焼成することで製造されてもよい。このような第1電極ペーストは、焼成貫通用無機添加物を含むことができるが、必要によって省略してもよい。
【0066】
また、第1電極140は、ペロブスカイト太陽電池120上に配置された透明電極層142と、透明電極層142上に配置されたグリッド電極層144と、を含むことができる。
【0067】
このとき、透明電極層142は、ペロブスカイト太陽電池120の上面全体に形成されて、ペロブスカイト太陽電池120で生成された電荷を捕集する役割を行う。このような透明電極層142は、多様な透明導電性素材として具現することができる。すなわち、透明導電性素材としては、接合層130の透明導電性素材と同じものが用いられる。
【0068】
グリッド電極層144は、透明電極層142上に配置されて、透明電極層142のうちの一部の領域に配置される。
【0069】
第2電極150は、結晶シリコン基板111の第2面に配置される。このとき、シリコン結晶基板111の第2面には第2のパッシベーション層160がさらに配置されてもよいが、これは必ずしも配置すべきであるものではなく、必要によって省略してもよい。このような第2のパッシベーション層160には、SiOx、SiNx、SiOxNy、Al2O3、SiCx等から選択された1種以上が用いられる。
【0070】
ここで、第2電極150は、第2のパッシベーション層160を貫通して、後面電界層113と電気的に連結される。このために、第2電極150は、第2のパッシベーション層160の下部にガラスフリット及び焼成貫通用無機添加物を含む第2電極ペーストを選択的に塗布した後、700℃以上の高温で焼成することにより、第2のパッシベーション層160を貫通して後面電界層113の下面に電気的に接地されることになる。
【0071】
このとき、焼成貫通用無機添加物は、焼成温度で所定の膜を焼成貫通できる成分を言う。すなわち、焼成貫通とは、焼成の際に第2のパッシベーション層160をなす成分との化学反応により、第2のパッシベーション層160を貫通することを意味する。
【0072】
このために、焼成貫通用無機添加物は、窒化物、酸化物又はこれらの組合(組合せ)より酸化力の大きい金属及びこれらの酸化物から選択された少なくとも一つを含むことができる。これにより、高温焼成により窒化物、酸化物又はこれらの組合は酸化されて、無機添加物は還元されることで、第2のパッシベーション層160を貫通することになる。
【0073】
このために、焼成貫通用無機添加物としては、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)及びこれらの酸化物から選択された1種以上を含むことができる。
【0074】
このような第2電極150は、第2のパッシベーション層160の下面の一部の領域に配置されて、第2のパッシベーション層160を貫通して後面電界層113に電気的に接地される。
【0075】
これにより、シリコン太陽電池110で生成された電荷は、第2電極150で捕集される。このとき、第2電極150は、第2のパッシベーション層160の下面に全面的に配置させるのではなく、第2のパッシベーション層160の下面のうちの一部の領域にのみ選択的に配置させることで、シリコン太陽電池110の下面から太陽光が入射するように設計することが望ましい。
【0076】
このとき、第2電極150は、第2のパッシベーション層160の下面の全面積のうち1~30%を占めるように配置されることが望ましい。第2電極150の占有面積が1%未満である場合は、第2電極150によるシリコン太陽電池110で生成された電荷の捕集効果が足りないおそれがある。逆に、第2電極150の占有面積が30%を超える場合は、第2電極150による占有面積が広すぎて、シリコン太陽電池110の後面から入射する光の利用率が低下するおそれがある。
【0077】
このとき、本発明では、第1電極140と第2電極150とを同時に形成するのではなく、ガラスフリットを含まない第1電極ペーストを用いて250℃以下の低温焼成で第1電極140を形成する工程と、700℃以上の高温焼成工程で第2電極150を形成する工程と、を二元化して行った。
【0078】
特に、高温焼成工程で製造される第2電極150を先に形成してから、ペロブスカイト太陽電池120及び第1電極140を順次形成した。この結果、ペロブスカイト太陽電池120が第1電極140を形成するための250℃以下の低温焼成工程でのみ露出し、第2電極150を形成するための700℃以上の高温焼成工程では露出するおそれがないため、ペロブスカイト太陽電池120が高温焼成により劣化する問題を未然に防ぐことができる。
【0079】
今まで考察したように、本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池は、エミッタ層の上部に一定の間隔で離隔して配置されるように設計された第1のパッシベーションパターンを導入して、第1のパッシベーションパターンの下部のエミッタ層の一部が露出するようにした。
【0080】
この結果、本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池は、第2電極を形成するための高温焼成の際に第1のパッシベーションパターンによりエミッタ層が保護されて、エミッタ層の表面欠陷を減少させるため、ペロブスカイト太陽電池の特性劣化問題を改善することができる。
【0081】
さらに、本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池は、第1のパッシベーションパターンの導入で、エミッタ層及び第1のパッシベーションパターンの上部に積層される接合層がエミッタ層の一部と直接接合されることにより、シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池との電気的接合の信頼性を向上させることになる。
【0082】
また、本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池は、結晶シリコン基板の第1面及び第2面のうち少なくとも一つに配置されたテクスチャリングパターンを有するテクスチャ構造を有するように設計することで、接合層とシリコン太陽電池との境界面における反射率を下げると共に、シリコン太陽電池での長波長光の利用率を向上させることになる。
【0083】
第2実施例
図4は、本発明の第2実施例によるタンデム太陽電池を示した断面図である。
【0084】
図4を参照すれば、本発明の第2実施例によるタンデム太陽電池200は、第1実施例によるタンデム太陽電池(
図2の100)と違っており、第1及び第2電極240、250構造において差異を表す。
【0085】
第1電極240は、ペロブスカイト太陽電池220上に配置されて、凹凸構造を有する透明電極層242と、透明電極層242上に配置された第1のグリッド電極層244を含む。
【0086】
第2電極250は、後面電界層213と接触する第2のグリッド電極層252を含む。
【0087】
また、本発明の第2実施例によるタンデム太陽電池200は、第1実施例によるタンデム太陽電池(
図2の100)と違って、第1電極240の透明電極層242を凹凸構造に形成することで、結晶シリコン基板211の下面にのみテクスチャリングパターンを有するテクスチャ構造を導入した。
【0088】
このように、結晶シリコン太陽電池210の上面にテクスチャ構造を導入しなくても、ペロブスカイト太陽電池220を透過する長波長光は、透明電極層242により斜め方向に屈折し、シリコン太陽電池210に向けて入射することで、接合層230とシリコン太陽電池210との境界面で反射することを減少させることができる。
【0089】
このとき、透明電極層242に具備された凹凸パターンは、透明電極層242と一体型に設計されたことを示したが、これに限られることではない。すなわち、凹凸パターンは、透明電極層242とは別の層として具備されてもよい。
【0090】
このように、凹凸パターン構造を有する透明電極層242により、タンデム太陽電池200に向けて垂直に入射する光が屈折し、ペロブスカイト太陽電池220及び結晶シリコン太陽電池210に向けて斜め方向に入射することができる。これにより、ペロブスカイト太陽電池220及び結晶シリコン太陽電池210を通過する入射光の経路が増加することになり、結果的に各太陽電池における光吸収率が向上する。
【0091】
前述した本発明の第2実施例によるタンデム太陽電池は、第1電極の透明電極層を凹凸構造に形成することで、結晶シリコン基板211の下面にのみテクスチャリングパターンを有するテクスチャ構造を有するように設計される。
【0092】
この結果、本発明の第2実施例によるタンデム太陽電池は、結晶シリコン太陽電池の上面にテクスチャ構造を導入しなくても、ペロブスカイト太陽電池を透過する長波長光が透明電極層により斜め方向に屈折し、シリコン太陽電池に向けて入射することで、接合層とシリコン太陽電池との境界面で反射することを減少させて光の吸収率を増加させることができる。
【0093】
図5は、上記第1実施例又は第2実施例の複数の太陽電池を直列に連結したモジュール構造の第1実施例であって、隣り合う太陽電池の第1電極と第2電極とを導電性連結材で電気的に連結した構造である。上記直列連結セルは、前面包装材及び後面包装材により封止されて、前面基板及び後面基板がそれぞれ配置されてモジュールを構成することができる。
【0094】
導電性連結材として金属ワイヤを用いる場合は、隣り合う複数の太陽電池のうち第1太陽電池の第1電極144、244と第2の太陽電池の第2電極150、250とにそれぞれ連結された複数の金属ワイヤを含む。
【0095】
このとき、金属ワイヤは、円筒形又は楕円形の断面構造を有するものが望ましい。これにより、金属ワイヤに向けて垂直に入射する光を散乱させて、タンデム太陽電池200に再び入射する確率を増加させることができる。また、断面が四角形である金属リボンを導電性連結材として用いることも可能である。
【0096】
図6は、上記第1実施例又は第2実施例の複数の太陽電池を直列に連結したモジュール構造の第2実施例であって、導電性連結材なしで隣り合うセルの第1電極と第2電極とをオーバーラップして(重ねて)連結した構造であり、この場合は連結部位に導電性接着剤を形成する。
【0097】
第1電極及び第2電極の構造は、モジュール連結のために導電性連結材が連結される位置又は第1電極と第2電極とが上記オーバーラップされる位置に、上記第1電極又は上記第2電極の上記グリッド電極以外にパッド電極を形成することができる。通常、パッド電極は、上記グリッド電極と交差する方向に形成されて、上記複数の導電性連結材と連結されるか、又は上記オーバーラップ部位で隣り合うセルの電極と直接又は導電性接着剤により接合して接着力を高める。
【0098】
[タンデム太陽電池の製造方法]
図7ないし
図12は、本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池の製造方法を示した工程断面図である。
【0099】
図7に示されたように、結晶シリコン基板111の第1面及び第2面を平坦化した後、第1及び第2面のうち少なくとも一つをテクスチャリングしてテクスチャリングパターンを形成する。
【0100】
このとき、結晶シリコン基板111のテクスチャ構造の導入は、湿式化学エッチング法、乾式化学エッチング法、電気化学エッチング法、機械的エッチング法のうちいずれかの方法が用いられるが、必ずしもこれに限られるものではない。一例として、結晶シリコン基板111の第1面及び第2面のうち少なくとも一つを塩基性水溶液内でエッチングしてテクスチャ構造を導入することができる。
【0101】
次いで、結晶シリコン基板111の第1面にエミッタ層112を形成する。このようなエミッタ層112を形成した後は、結晶シリコン基板111の第2面に後面電界層113をさらに形成することができる。
【0102】
このとき、エミッタ層112及び後面電界層113は、インプラント工程を通じて形成することができる。エミッタ層112は不純物として硼素(boron)がドーピングされて、後面電界層113は不純物として燐(phosphorous)がドーピングされる。インプラント工程により、エミッタ層112及び後面電界層113を形成する場合は、不純物の活性化のために700~1,200℃の熱処理を伴うことが望ましい。また、インプラント工程の代わりにBBr3又はPOCl3等を用いる高温拡散工程を通じてエミッタ層112及び後面電界層113を形成することも可能である。
【0103】
図8に示されたように、エミッタ層112上に第1のパッシベーション層115を形成する。このとき、第1のパッシベーション層115を形成した後、後面電界層113上に第2のパッシベーション層160をさらに形成することができる。これと違って、第2のパッシベーション層160は、第1のパッシベーション層115と同時に形成されてもよい。
【0104】
このとき、第1及び第2のパッシベーション層115、160は、異なる厚さを有してもよい。ここで、第1のパッシベーション層115の材質としては、結晶シリコン基板111の欠陷を減らせる水素を含むSiNx:Hが一般に用いられるが、水素を含む他の絶縁膜を用いることも可能であり、SiOx、SiNx、SiOxNy、Al2O3、SiCx等から選択された1種以上の他の膜と多層構造に適用することもできる。そして、第2のパッシベーション層160は、SiOx、SiNx、SiOxNy、Al2O3、SiCx等から選択された1種以上に形成することが望ましい。
【0105】
特に、第1のパッシベーション層115は、長波長光の反射率を下げるためにその厚さを最大に薄く形成するものが望ましい。このために、第1のパッシベーション層115は、10~100nmの厚さを有するものが望ましい。
【0106】
図9に示されたように、結晶シリコン基板111の第2面に第2電極150を形成する。
【0107】
すなわち、第2電極150は、第2のパッシベーション層160上に第2電極ペーストをスクリーンプリンティング(スクリーン印刷)法で印刷して、第2温度を有する熱処理により第2のパッシベーション層160を貫通して後面電界層113に連結されてもよい。
【0108】
このとき、第2電極ペーストは、Agペースト及びAg-Alペーストのうちから選択されたいずれかであってもよい。また、第2電極ペーストは、ガラスフリット及び焼成貫通用無機添加物を含み、第2温度は700℃以上、より具体的には700~1100℃であってもよい。
【0109】
焼成貫通用無機添加物は、焼成温度で所定の膜を焼成貫通できる成分を言う。すなわち、焼成貫通とは、焼成の際に第2のパッシベーション層160をなす成分との化学反応により、第2のパッシベーション層160を貫通することを意味する。
【0110】
このために、焼成貫通用無機添加物は、窒化物、酸化物又はこれらの組合より酸化力の大きい金属及びこれらの酸化物から選択された少なくとも一つを含むことができる。これにより、高温焼成により窒化物、酸化物又はこれらの組合は酸化されて、無機添加物は還元されることで、第2のパッシベーション層160を貫通することができる。
【0111】
このために、焼成貫通用無機添加物としては、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)及びこれらの酸化物から選択された1種以上を含むことができる。
【0112】
このような第2電極150は、第2のパッシベーション層160の下面に全面的に配置させるのではなく、第2のパッシベーション層160の下面のうちの一部の領域にのみ選択的に配置させることで、シリコン太陽電池110の下面から太陽光が入射するように設計することが望ましい。特に、第2電極150は、第2のパッシベーション層160の下面の全体面積のうち1~30%を占めるように配置されることが望ましい。
【0113】
図10に示されたように、第1のパッシベーション層(
図9の115)の一部をエッチングして、エミッタ層112の一部を露出する開口部Gを有するようにパターニングされた第1のパッシベーションパターン114を有するシリコン太陽電池110を形成する。
【0114】
このとき、エッチングは、乾式エッチングを用いることが望ましいが、これに限られるものではない。一例として、レーザを用いたエッチング工程は、第1のパッシベーション層の一部にのみレーザを照射して除去することにより、一定の間隔で開口部Gが配置される第1のパッシベーションパターン114が形成されてもよい。ここで、第1のパッシベーションパターン114は、ストライプ状、格子状及びホール状のうちいずれかの形状を有する開口部Gが一定の間隔で配置された構造を有してもよい。
【0115】
このとき、上記開口部により露出する面積は、セル表面全体の0.1%~30%以下となるようにする。開口率が低すぎる場合は、電気的特性が低下し、高すぎるとパッシベーション効果が落ちるため効率低下を防ぎがたくなる。
【0116】
このとき、本発明では、エミッタ層112の上部全体を覆う第1のパッシベーション層で保護した状態で第2電極150を形成するため、第2電極150を形成するための高温焼成の際に第1のパッシベーション層によりエミッタ層112を安定的に保護することが可能であり、エミッタ層112の表面に欠陷が発生するおそれがないため、ペロブスカイト太陽電池(
図11の120)の特性が劣化する問題を改善することができる。
【0117】
さらに、第2電極150を形成するための高温焼成後は、エミッタ層112の一部が露出するよう第1のパッシベーション層の一部のみを選択的にエッチングして、第1のパッシベーションパターン114を形成するので、エミッタ層112及び第1のパッシベーションパターン114の上部に積層される接合層(
図11の130)がエミッタ層112の一部と直接接合されることにより、シリコン太陽電池110とペロブスカイト太陽電池との電気的接合の信頼性を向上させることになる。
【0118】
図11に示されたように、開口部Gを通じて露出するエミッタ層112及び第1のパッシベーションパターン114上に接合層130を形成する。
【0119】
このとき、接合層130の材質としては、透明導電性酸化物、炭素質導電性素材、金属性素材又は導電性高分子が用いられる。また、接合層にn型又はp型の物質をドーピングして用いることができる。
【0120】
このとき、接合層130としてITO(Indium Tin Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)等の透明導電性酸化物を用いる場合は、接合層130は、スパッタリングを通じて蒸着することができる。また、接合層130で透明導電性酸化物の代わりにn型の非晶質シリコン層をPECVDで蒸着して用いることも可能である。
【0121】
次いで、接合層130上にペロブスカイト吸収層を有するペロブスカイト太陽電池120を形成する。
【0122】
図3及び
図11に示されたように、ペロブスカイト太陽電池の形成段階は、接合層130上に電子伝達層121を形成する過程と、電子伝達層121上にペロブスカイト吸収層122を形成する過程と、ペロブスカイト吸収層122上に正孔伝達層123を形成する過程と、を含むことができる。
【0123】
また、電子伝達層の形成過程とペロブスカイト吸収層の形成過程との間に、メソポーラス層を形成する過程がさらに含まれてもよい。電子伝達層121及びメソポーラス層125は、同じ金属酸化物で形成されてもよい。
【0124】
例えば、電子伝達層121は5~100nmの厚さ、メソポーラス層125は500nm以下の厚さを有するTiO2層で形成されてもよい。メソポーラス層125の前面にはペロブスカイト吸収層122が形成されて、ペロブスカイト吸収層122はメソポーラス層125内のメソポーラスを満たした後、100~500nmの厚さで形成されてもよい。ペロブスカイト吸収層122の上部には導電性高分子を用いて正孔伝達層123を5~100nmの厚さに形成することができる。
【0125】
ペロブスカイト太陽電池120を構成する各層は、例えば、物理的蒸着法(物理蒸着法)、化学的蒸着法(化学蒸着法)又は印刷法等を通じて形成することができる。ここで、印刷法はインクジェットプリンティング(インクジェット印刷)、グラビアプリンティング(グラビア印刷)、スプレーコーティング、ドクターブレード、バーコーティング、グラビアコーティング、ブラシペインティング及びスロットダイコーティング等を含む。
【0126】
図12に示されたように、ペロブスカイト太陽電池120上に第1電極140を形成する。
【0127】
このとき、第1電極140は、ペロブスカイト太陽電池120上に配置された透明電極層142と、透明電極層142上に配置されたグリッド電極層144と、を含むことができる。
【0128】
このとき、透明電極層142は、ペロブスカイト太陽電池120の上面全体に形成されて、ペロブスカイト太陽電池120で生成された電荷を捕集する役割を行う。このような透明電極層142は、多様な透明導電性素材として具現することができる。すなわち、透明導電性素材としては、接合層130の透明導電性素材と同じものが用いられる。
【0129】
グリッド電極層144は、透明電極層142上に配置されて、透明電極層142のうちの一部の領域に配置される。
【0130】
このとき、第1電極140は、ガラスフリットを含まない第1電極ペーストを選択的に塗布した後、第1温度で低温焼成することにより製造されてもよい。ここで、このような第1電極ペーストは、金属粒子及び低温焼成用バインダである有機物が含まれていてもよいし、第1電極ペーストにはガラスフリットは含まれない。特に、第1温度は250℃以下、より具体的には100~200℃であってもよい。
【0131】
このように、本発明では、第2電極150と第1電極140とが同時に形成されるのではなく、ペロブスカイト太陽電池120を形成する前に、700℃以上の高温焼成工程で第2電極150を形成して、ペロブスカイト太陽電池120を形成した後は、250℃以下の低温焼成工程で第1電極140を形成する二元化方式で行われるため、ペロブスカイト太陽電池120が700℃以上の高温焼成工程で露出するおそれはなくなる。
【0132】
この結果、ペロブスカイト太陽電池120が第1電極140を形成するための250℃以下の低温焼成工程でのみ露出し、第2電極150を形成するための700℃以上の高温焼成工程では露出するおそれがないため、ペロブスカイト太陽電池120が高温焼成により劣化する問題を未然に防ぐことができる。
【0133】
上述したように、本発明では、新しい構造の第1のパッシベーションパターン114を用いることで、結晶シリコン基板111の表面上にある欠陷を減らすことができ、素子の特性が向上する。
【0134】
前述した本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池の製造方法は、第2電極と第1電極とを同時に形成するのではなく、ペロブスカイト太陽電池を形成する前に、700℃以上の高温焼成工程で第2電極を形成して、ペロブスカイト太陽電池を形成した後は、250℃以下の低温焼成工程で第1電極を形成する二元化方式で行われるため、ペロブスカイト太陽電池が700℃以上の高温焼成工程で露出するおそれがなくなる。
【0135】
この結果、本発明の第1実施例によるタンデム太陽電池の製造方法は、ペロブスカイト太陽電池が第1電極を形成するための250℃以下の低温焼成工程でのみ露出し、第2電極を形成するための700℃以上の高温焼成工程では露出するおそれがないため、ペロブスカイト太陽電池が高温焼成により劣化する問題を未然に防ぐことができる。
【0136】
以上のように、本発明について例示した図面を参照して説明したが、本明細書に開示された実施例及び図面により本発明が限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で通常の技術者により多様な変形がなされることは自明である。さらに、上記本発明の実施例を説明しながら本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、当該構成により予測可能な効果も認められるべきである。
【符号の説明】
【0137】
100 タンデム太陽電池
110 シリコン太陽電池
111 結晶シリコン基板
112 エミッタ層
113 後面電界層
114 第1のパッシベーションパターン
115 第1のパッシベーション層
120 ペロブスカイト太陽電池
121 電子伝達層
122 ペロブスカイト吸収層
123 正孔伝達層
125 メソポーラス層
130 接合層
140 電極
142 透明電極層
144 グリッド電極層
150 電極
160 第2のパッシベーション層
200 タンデム太陽電池
210 シリコン太陽電池
211 結晶シリコン基板
213 後面電界層
220 ペロブスカイト太陽電池
230 接合層
240 電極
242 透明電極層
244 グリッド電極層
250 電極
252 グリッド電極層
G 開口部