(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】コヒーレンストモグラフの光学デバイスの方向を決定するデバイス、コヒーレンストモグラフ、及びレーザ処理システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220117BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20220117BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G01B11/00 G
B23K26/03
G02B21/00
(21)【出願番号】P 2020513837
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2019054528
(87)【国際公開番号】W WO2019174895
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】102018105877.2
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516234100
【氏名又は名称】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザウアー マティアス
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-051696(JP,A)
【文献】特表2016-538134(JP,A)
【文献】独国特許発明第102015012565(DE,B3)
【文献】国際公開第2014/138939(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/081808(WO,A1)
【文献】特表2011-508241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
B23K 26/03
G02B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレンストモグラフ(200)の光学デバイス(250)の方向を決定するデバイス(300、300’)であって、
光学参照形状(310、500)と、
前記光学デバイス(250)によって変位された前記コヒーレンストモグラフ(200)の光学測定ビーム(13)を前記光学参照形状(310、500)に向けるように構成された偏向光学系(320)と、
第1の参照平面(A)と
前記光学参照形状(310、500)の少なくとも一つの第2の参照平面(C、501)との間の距離
に基づいて、前記光学デバイス(250)の方向を決定するように構成された評価ユニット(240)と、
を備える、デバイス(300、300’)。
【請求項2】
前記偏向光学系(320)が、一つ又はそれ以上のミラー(322)、一つ又はそれ以上のガルバノスキャナ、一つ又はそれ以上のプリズム、及び一つ又はそれ以上の光学格子のうちの少なくとも一つを備える、請求項1に記載のデバイス(300、300’)。
【請求項3】
前記偏向光学系(320)が、前記光学測定ビーム(13)の一部を前記光学参照形状(310、500)に向け且つ前記光学測定ビーム(13)の他の部分を透過させるように構成された部分透過性ミラー(326)を備える、請求項1又は2に記載のデバイス(300、300’)。
【請求項4】
前記偏向光学系(320)が、前記光学測定ビーム(13)を前記光学参照形状(310、500)の前記少なくとも一つの前記第2の参照平面(C、501)に向けるように構成されたレンズ(324)を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のデバイス(300、300’)。
【請求項5】
前記評価ユニット(240)が、前記第1の参照平面(A)と前記光学参照形状(310、500)の上の一つ又はそれ以上の点との間の距離を決定するように構成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のデバイス(300、300’)。
【請求項6】
前記光学参照形状(310、500)の前記第2の参照平面(501)が平坦な拡散反射表面を有している、請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイス(300、300’)。
【請求項7】
前記光学参照形状(310、500)が4つの前記第2の参照平面(501)を含み、それらがお互いに対して傾斜していて且つ共通の校正零点(502)で交差している、請求項1から6のいずれか1項に記載のデバイス(300、300’)。
【請求項8】
前記第2の参照平面(501)の少なくとも2つが、前記光学デバイス(250)の第1の方向における向きのずれが距離の増加をもたらす結果となるように配置され、且つ少なくとも2つのさらなる前記第2の参照平面(501)が、前記光学デバイス(250)の第2の方向における向きのずれが距離の減少をもたらす結果となるように配置されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のデバイス(300、300’)。
【請求項9】
前記光学デバイス(250)が手作業で又は自動的に可動である、請求項1から8のいずれか1項に記載のデバイス(300、300’)。
【請求項10】
コヒーレンストモグラフ(200)であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載のデバイス(300、300’)と、
前記コヒーレンストモグラフ(200)の前記光学測定ビーム(13)を変位させるための前記光学デバイス(250)と、
を備える、コヒーレンストモグラフ(200)。
【請求項11】
前記コヒーレンストモグラフ(200)が、一つ又はそれ以上の空間次元における決定された距離に基づいて、前記光学デバイス(250)の向きのずれを補償するように構成されている、請求項10に記載のコヒーレンストモグラフ(200)。
【請求項12】
前記コヒーレンストモグラフ(200)が測定アームと参照アーム(246)とを備えており、前記光学デバイス(250)が前記参照アーム(246)に配置されている、請求項10又は11に記載のコヒーレンストモグラフ(200)。
【請求項13】
加工ビーム(10)を提供するレーザ装置(110)であって、前記レーザ装置(110)が前記加工ビーム(10)をワークピース(1)の加工エリア上に向けるように構成されている、レーザ装置(110)と、
請求項10から12のいずれか1項に記載の前記コヒーレンストモグラフ(200)と、
を備える、レーザ加工システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コヒーレンストモグラフの光学デバイスの位置又は方向を決定するためのデバイス、それを含むコヒーレンストモグラフ、及びそのようなコヒーレンストモグラフを含むレーザ加工システムに関する。本開示は特に、レーザ加工ヘッド、例えば、光コヒーレンストモグラフと、ミラー、プリズム、又は光学格子のようなコヒーレンストモグラフの一つ又はそれ以上の光学デバイスのドリフトを決定するためのデバイスと、を備えるレーザ溶接ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザを使用して材料を加工するためのデバイス、例えばレーザ溶接又はレーザ切断のためのレーザ加工ヘッドでは、レーザ光源又はレーザファイバの端から発せられたレーザビームが、ビームガイド及びフォーカシング光学系によって、加工対象のワークピース上にフォーカス又はコリメートされる。典型的には、レーザ加工ヘッドはコリメータ光学系及びフォーカシング光学系とともに使用され、レーザ光は、レーザ源とも称される光ファイバを介して供給される。
【0003】
レーザ材料加工では、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)が、レーザ切断の間のワークピースまでの距離、前もってのエッジ位置、ならびに溶接の間の溶接深さ及び/又はフォローアップにおける表面トポグラフィのような、様々なプロセスパラメータを測定するために使用され得る。この目的のために、OCT測定ビームがワークピース上に向けられ得る。オプションとして、OCT測定ビームは、例えば少なくとも一つの可動ミラーへの反射によって、加工対象のワークピース上を動かされ得る。可動ミラーは例えばガルバノメータに取り付けられ、これによりガルバノスキャナ又はガルバノメータスキャナを形成する。OCT測定は加工プロセスをモニタ及び制御するために使用されるので、ガルバノメータスキャナの角度位置、及びこれよりワークピース上の測定スポットの位置は、各々の記録された測定に対してできるだけ正確に既知でなければならない。OCTによる溶接プロセスのモニタリングは、例えば特許文献1から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際出願公開第2014/138939号明細書
【文献】独国特許第102015012565明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガルバノメータスキャナは、スキャナの回転軸の実際の位置を測定する位置検出器を含み得る。位置は、制御ループによって所定の所望の位置と比較され得て、ずれが最小化され得る。それゆえ理論的には、静止状態では、外部から特定された位置とスキャナによって達せられた位置との間のずれは零であるべきである。しかし、実際の動作では、熱的な効果、外部干渉、及びガルバノメータスキャナの使用されている位置検出器の劣化が、真の角度位置の所望の位置からのずれをもたらす結果となる。制御ループは、例えばその値が制御のために使用される位置検出器それ自身が熱的な影響の対象となり、このために制御ループが所望の位置からの実際の位置の小さなずれを検出できないために、このずれを補正することができない。この現象はまた、ガルバノスキャナのドリフトとも呼ばれて、時間及び温度の両方に依存する。それゆえ、ワークピース表面上の測定スポットの真の位置は、ミラーのターゲット位置が一定に保たれていても、測定スポットの位置がスキャナのドリフトで変化するので、常に十分な精度で決定されることができない。
【0006】
それゆえ、所望の位置と実際の位置との間のずれを最小化するために、ガルバノスキャナのドリフトを、例えばガルバノメータスキャナにインストールされた位置検出器を使うよりも正確に決定することが望まれる。特許文献2は、センサビームによって測定ビームにより測定されたワークピースのある領域を検出し且つそれに基づいて空間分解能情報を生成するように構成された空間分解能センサを含む測定デバイスを記述している。加えて、この空間分解能センサはシステムに導入されなければならず、それによって、システムの製造コスト及び複雑さを増す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
光学デバイスの方向を正確に決定することができるコヒーレンストモグラフの光学デバイスのドリフト又は方向を決定するためのデバイス、ならびにコヒーレンストモグラフ、及びそれを含むレーザ加工システムを提供することが、本開示の目的である。特に、可動ミラー、プリズム、又は光学格子のようなコヒーレンストモグラフの測定ビームを変位させるための光学デバイスの所望の位置と実際の位置との間の距離を、精度を増して決定することが、本開示の目的である。
【0008】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の有益な実施形態は、従属請求項にて特定される。
【0009】
本開示の実施形態によれば、コヒーレンストモグラフの光学デバイス又は光学素子の方向又はドリフトを決定するためのデバイスが特定される。この光学デバイス又は光学素子は、コヒーレンストモグラフの光学測定ビームを偏向させるように構成され得る。特に、光学デバイス又は光学素子は可動であり得る。このデバイスは、光学参照形状と、光学デバイスによって変位又は偏向されたコヒーレンストモグラフの光学測定ビームを光学参照形状の上に向けるように構成された偏向光学系と、光学デバイスの方向又はドリフトを決定するために、光学参照形状の第1の参照平面と少なくとも一つの第2の参照平面との間の距離を決定するように構成された評価ユニットと、を備える。ドリフトは、光学デバイスの方向の所定の方向からのずれを意味し得る。コヒーレンストモグラフの光学デバイス又は光学素子は可動であり得る。特に、光学デバイス又は光学素子は、コヒーレンストモグラフの光学測定ビームを変位させるか又はそれをワークピースの表面上で動かすように構成され得る。第2の参照平面は、好ましくは、光学測定ビームを反射又は拡散反射するために適している。
【0010】
本発明によれば、現存するOCT測定技法が、例えば光学デバイス、例えばガルバノメータミラーの一つ又はそれ以上のミラーの所望の位置と実際の位置との間の距離を測定するために使用され得る。光学デバイスの方向又はドリフトを決定するための付加的な空間分解能検出器の使用が、省かれることができる。光学デバイスの方向、及び特にガルバノメータスキャナのドリフトを決定するために、測定ビームが参照形状に向けられて、距離が測定される。測定された距離、あるいは参照又は校正値に対する測定された距離の変化から、光学デバイスの方向が決定され得て、且つ好ましくは引き続いて補正され得る。
【0011】
この開示の好適なオプションの実施形態及び特定の見地は、従属請求項、図面、及び本記述から明らかになるであろう。
【0012】
好ましくは、評価ユニットは、光学デバイスの方向の所定の方向からのずれ、すなわち例えば、光学デバイスの所望の位置と実際の位置との間の距離を決定するように構成され得る。
【0013】
好ましくは、偏向光学系が一つ又はそれ以上のミラーを備える。例えば、測定ビームは、この一つ又はそれ以上のミラーによって参照形状に向けられ得る。オプションとして、偏向光学系は、光学測定ビームを光学参照形状の上にフォーカスするように構成されたレンズを含む。ビームサイズをフォーカスすることによって、距離変化が精度を増して決定され得る。
【0014】
好ましくは、偏向光学系が、光学測定ビームの一部を偏向させるように構成された少なくとも一つの部分透過性ミラーを備え得る。例えば、測定ビームは部分透過性ミラーによって分けられ得て、それによって、ワーク平面及び参照形状に関する距離測定が同時に実行され得る。
【0015】
好ましくは、評価ユニットが、光学デバイスの位置決めを決定するように構成される。例えば、一つ又はそれ以上のミラーの角度位置、例えばガルバノメータスキャナの角度位置が、決定され得る。例えば、角度位置は、所望の位置と実際の位置との間の差に基づいて補正され得て、ドリフトを補償する。この目的のために、評価ユニットは、ドリフト補正に関する補正値を、例えば光学デバイスを位置合わせさせる制御ユニットに出力するように構成され得る。
【0016】
好ましくは、評価ユニットが、第1の参照平面と光学参照形状の上の1つ、2つ、又はそれ以上の点との間の距離を決定するように構成されている。参照形状の複数の点を測定することによって、光学デバイスの方向の決定の精度が増加し得る。
【0017】
好ましくは、光学参照形状は、少なくとも一つの平坦な拡散反射表面を有している。典型的には、参照形状は不連続を有する表面を持った光学素子である。特に、参照形状は複数の非平行な平面を有し得る。非平行な平面の各々は、それぞれの第2の参照平面を提供し得る。例えば、光学参照形状は2つ又はそれ以上の第2の参照平面を備え得て、これらの2つ又はそれ以上の第2の参照平面は各々が平坦な拡散反射表面である。2つ又はそれ以上の第2の参照平面は、4つの第2の参照平面を備え得る。4つの第2の参照平面は、お互いに対して傾斜して且つ共通の点で会合し得る。言い換えると、4つの第2の参照平面は、共通の点又は校正零点で交差し得る。参照形状は、少なくとも4つの第2の参照平面のサドル状の形状を有し得る。さらに、参照形状は、校正平面及び/又は校正零点を含み得る。
【0018】
好ましくは、第2の参照平面の少なくとも2つが、光学デバイスの第1の方向における向きのずれが、参照形状の上の校正点又は校正平面に対する距離の増加をもたらす結果となるように配置される。第2の参照平面のこれら少なくとも2つは、反対向きに傾斜した平面であり得る。少なくとも2つのさらなる第2の参照平面は、光学デバイスの第2の方向における向きのずれが、参照形状の上の校正点又は校正平面に対する距離の減少をもたらす結果となるように配置される。少なくとも2つのさらなる第2の参照平面は、反対向きに傾斜した平面であり得る。第1及び第2の方向は、同じ座標軸(例えばX軸及びY軸)に沿って正負の方向を指定し得る。あるいは、第1の方向は第1の座標軸に沿った方向を指定し得て、第2の方向は第1の座標軸に直交する第2の座標軸に沿った方向を指定し得る。
【0019】
本開示のさらなる実施形態によれば、コヒーレンストモグラフが提供される。このコヒーレンストモグラフは、光学デバイスと、上述の実施形態に従って光学デバイスの方向を決定するデバイスとを備える。
【0020】
光学デバイスは、コヒーレンストモグラフの光学測定ビームを変位させるか又はそれをワークピースの表面上で動かすように構成され得る。好ましくは、光学デバイスは、少なくとも一つのミラー、少なくとも一つの光学格子、及び少なくとも一つのプリズムから選択された少なくとも一つの素子を備える。光学デバイスは、ガルバノメータスキャナであり得るか、又はガルバノメータスキャナを備え得る。光学デバイス、例えば少なくとも一つのミラーは、X軸及びY軸のようなお互いに直交するように方向づけられた一つ又はそれ以上の軸の周囲で回転可能に搭載され得る。典型的には、2つのミラーが提供されて、そのうちの一つはX軸の周囲で且つ他方がY軸の周囲で、回転可能に搭載される。
【0021】
好ましくは、光コヒーレンストモグラフは、光学デバイスの方向におけるずれ、すなわちドリフトを、一つ又はそれ以上の空間次元における決定された距離に基づいて検出するように構成される。例えば、ガルバノメータスキャナの少なくとも一つのミラーの角度位置が、2つの空間次元における軸の周囲の回転によって補正され得る。2つの空間次元は、例えばX及びY方向であり得る。
【0022】
好ましくは、コヒーレンストモグラフは参照アームを備える。光学デバイスの方向を決定するデバイスは、参照アームに付加的に且つそこから別個に提供され得る。例えば、光学デバイスは、コヒーレンストモグラフの参照アームにおけるガルバノメータスキャナを備え得る。
【0023】
一つの実施形態によれば、レーザ加工システムが提供される。このレーザ加工システムは、加工ビームを提供してその加工ビームをワークピースの加工エリア上に向けるように構成されているレーザデバイスと、上述の実施形態に従ったコヒーレンストモグラフと、を備えている。
【0024】
本発明の更なる実施形態によれば、コヒーレンストモグラフの光学デバイスの方向を決定する方法が提供される。この方法は、光学測定ビームを光学参照形状に向けるステップと、光学参照形状の第1の参照平面と少なくとも第2の参照平面との間の距離を決定するステップと、測定された距離に基づいて光学デバイスの方向を決定するステップと、を包含する。
【0025】
本発明によれば、安価なガルバノスキャナが高精度のアプリケーションのために使用され得る。追加の検出器又は光源は必要ではなく、より単純で、よりロバストな設計をもたらし、コスト削減を達成する結果となる。いくつかの実施形態では。追加のビームスプリッタさえも省略され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の実施形態に従ったレーザ加工システムを示す図である。
【
図2】本開示の一つの実施形態に従って、コヒーレンストモグラフの光学デバイスの方向を決定するためのデバイスを含むレーザ加工システムを示す図である。
【
図3】本開示の更なる実施形態に従って、コヒーレンストモグラフの光学デバイスの方向を決定するためのデバイスを含むレーザ加工システムを示す図である。
【
図4】光学デバイスのドリフトによって生じた長さの変化を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に従った参照形状の斜視図である。
【
図7】参照形状とX方向におけるドリフトを示す図である。
【
図8】参照形状とY方向におけるドリフトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の実施形態が図面に描かれ且つより詳細に以下に記述される。
【0028】
以下では、そうではないと記されない限りは、同様の参照番号は同様で等価な要素に対して使用される。
【0029】
図1は、本開示の実施形態に従ったレーザ加工システム100の模式図である。このレーザ加工システム100はレーザ溶接ヘッド101、特にレーザ深溶接のためのレーザ溶接ヘッドを備え得る。
【0030】
レーザ加工システム100は、加工ビーム10(「レーザビーム」又は「加工レーザビーム」とも称される)を生成するためのレーザ装置110、及びここで記述される実施形態に従ったコヒーレンストモグラフ200を備える。レーザ加工システム100、及び特にコヒーレンストモグラフ200は、コヒーレンストモグラフ200の光学デバイスの方向を決定するデバイスを備える。このデバイスが、
図2~
図8を参照して、より詳細に記述される。
【0031】
レーザ装置110は、加工ビーム10をワークピース1の加工エリアに向けるように構成される。レーザ装置110は、加工ビーム10をコリメートするためにコリメータレンズ120を含み得る。レーザ溶接ヘッド101の内部で、加工ビーム10は、適切な光学系220によって、ワークピース1の方向で約90°だけ偏向される。コヒーレンストモグラフ200は典型的には、光学測定ビーム13をコリメートするように構成されたコリメータ光学系210と、光学測定ビーム13をワークピース1の上にフォーカスするように構成されたフォーカシング光学系230とを備える。
【0032】
いくつかの実施形態では、加工ビーム10及び光学測定ビーム13は、少なくとも部分的に同軸であり得て、特に少なくともセグメントでは同軸に重畳され得る。例えば、コヒーレンストモグラフ200は、光学測定ビーム13をレーザ装置110のビーム路に結合するように構成され得る。光学測定ビーム13及び加工ビーム10は、コリメータ光学系210の下流で且つフォーカシング光学系230の上流で、合成され得る。例えば、光学系220は半透明ミラーを備え得る。
【0033】
ここで記述される他の実施形態と組み合わせられ得る典型的な実施形態では、コリメータ光学系210及びフォーカシング光学系230は溶接ヘッド101に一体化される。例えば、溶接ヘッド101は、溶接ヘッド101に一体化されるか又は溶接ヘッド101に搭載されたコリメータモジュール102を備え得る。フォーカシング光学系230は、加工ビーム10及び測定ビーム13のためのフォーカスレンズのような共通のフォーカシング光学系であり得る。
【0034】
実施形態によれば、レーザ加工システム100、又は溶接ヘッド101のようなその一部は、加工方向20に沿って可動であり得る。加工方向20は、ワークピース1に対する切断又は溶接方向及び/又は溶接ヘッド101のようなレーザ加工システム100の移動方向であり得る。特に、加工方向20は水平方向であり得る。加工方向20はまた、「フィード方向」とも称される。
【0035】
典型的な実施形態では、ここで記述される距離測定の原理は、光コヒーレンストモグラフィの原理に基づいており、これは干渉計の光ベイ手段のコヒーレンス特性を利用する。コヒーレンストモグラフ200は、測定光を光導波路242に結合する広帯域光源(例えばスーパールミネッセントダイオード、SLD)を有する評価ユニット240を備え得る。好ましくはファイバカプラを含むビームスプリッタ244では、測定光は、参照アーム246と、光導波路248を介して溶接ヘッド101に進む測定アームとに分割される。
【0036】
コリメータ光学系210は、光導波路248から出てきた測定光(光学測定ビーム13)をコリメートするように構成される。いくつかの実施形態によれば、溶接ヘッド101における光学測定ビーム13は、加工ビーム10と同軸に重畳される。引き続いて、加工レーザビーム10及び光学測定ビーム13は、共通のレンズ又はフォーカシングレンズであり得るフォーカシング光学系230によって、ワークピース1の上にフォーカスされ得る。
【0037】
ワークピース1の上の光学測定ビーム13の位置は、光学デバイスによって調整され得る。例えば、光学デバイスはガルバノスキャナであり得る。光学デバイスは、少なくとも一つのミラー(例えば
図2及び
図3を参照)を備え得る。あるいは又は加えて、光学デバイスはまた、少なくとも一つの光学格子又は少なくとも一つのプリズムを備え得る。少なくとも一つのミラーのような光学デバイスは、X軸及び/又はY軸のような少なくとも一つの軸の周りで回転可能に搭載され得る。典型的には、光学デバイスは2つのミラーを備え得て、一つのミラーはX軸の周りに回転可能に搭載され、他のミラーはY軸の周りに回転可能に搭載される。光コヒーレンストモグラフ200はさらに、ドリフトを補償するために、一つ又はそれ以上の空間次元において、所定の距離に基づいて、ガルバノメータスキャナの少なくとも一つのミラー、プリズム、又は格子の角度位置を補正するように構成され得る。ここで、光学デバイスはまた、コヒーレンストモグラフの参照アームに配置され得る。
【0038】
光学測定ビーム13は、例えばワークピース1の蒸気キャピラリに向けられ得る。蒸気キャピラリから反射されて戻ってきた測定光は、フォーカシング光学系230によって光導波路248の出口/入口表面上にイメージングされ、ファイバカプラ244内で参照アーム246からの反射光と重畳されて、それから評価ユニット240に戻るように向けられる。重畳された光は、参照アーム246と測定アームとの間の経路長の差についての情報を含む。この情報が評価ユニット240にて評価され、それによってユーザは、蒸気キャピラリの底と、例えば溶接ヘッド101との間の距離について、あるいはワークピース表面のトポグラフィについての情報を得る。光学デバイスの方向を決定するためのデバイスは、参照アームに付加的に且つ別個に設けられ得る。
【0039】
実施形態によれば、コヒーレンストモグラフ200は、光学測定ビーム13によってワークピース1までの、例えばコヒーレンストモグラフ200によって規定された参照点又は参照平面に対する距離を測定するように構成され得る。特に、コヒーレンストモグラフ200は、溶接ヘッド101が加工方向20に沿って動く際の距離の変化を測定するように構成され得る。その結果として、例えば蒸気キャピラリの深さプロファイルが生成され得る。蒸気キャピラリの深さの測定に代えて又はそれに加えて、ワークピース1のトポグラフィ測定、例えば溶接シームが実行され得る。実施形態によれば、トポグラフィ測定は、一つ又はそれ以上のプロセス入力変数の誤り検出及び/又は制御のために使用され得る。プロセス入力変数は例えば、レーザ装置の加工速度、レーザパワー、レーザフォーカス、及び/又は動作パラメータを含み得る。
【0040】
本発明に従ったコヒーレンストモグラフ200は、距離測定を、例えばレーザ加工前、加工の間、及び/又は加工後に実行するように構成され得る。既に説明されたように、低エネルギー測定ビームであり得る光学測定ビーム13は、光導波路を介して加工ヘッドに供給され、コリメートされ、それから高エネルギービームに重畳されて、共通のフォーカス光学系によって加工対象のワークピース上にフォーカスされる。コヒーレンストモグラフ200の光学デバイスの方向の決定、及び引き続く方向の補正は、精度が増したワークピースまでの距離測定を可能にする。光学デバイスの方向の決定は、レーザ加工の間に、又は別個のプロセスにて別個に、実行され得る。
【0041】
図2は、本開示の実施形態に従ってコヒーレンストモグラフの光学デバイス250の方向を決定するためのデバイス300を含むレーザ加工システムを示す。特に、ガルバノメータスキャナのドリフトを決定するための測定ビーム13(「OCTビーム」とも称される)の変位が示される。
【0042】
デバイス300は、光学参照形状310と、光学デバイス250によって反射された光学測定ビーム13を光学参照形状310の上に向けるように構成された偏向光学系320と
、第1の参照平面Aと光学参照形状310又は光学参照形状310の一つ又はそれ以上の第2の参照平面Cとの間の距離
に基づいて、光学デバイス250の方向を決定するように構成された評価ユニットと、を備える。評価ユニットは、
図1に示されて参照番号240が与えられた評価ユニットであり得て、あるいはここで一体化され得る。
【0043】
図2に記述された例示的な実施形態では、OCT光源301は、少なくとも一つの可動ミラーを備え得る光学デバイス250を介して、ワークピース1の測定値を取るために(すなわち平面A及びBの間の距離を測定するために)ワークピース1に、あるいは平面A及びCの間の距離を測定するために偏向光学系320に、向けられる。これより、本開示に従うと、現存しているOCT測定技法が、光学デバイス250の所望の位置と実際の位置との間の距離を決定するために、使用され得る。付加的な空間分解能検出器の使用が、これより省略される。このことは、安価なガルバノスキャナが、高精密アプリケーションのために使用されることを可能にする。付加的な検出器、光源、又はビームスプリッタは必要とされず、このことは、より単純で且つよりロバストな設計、及びコスト低減を許容する。
【0044】
ドリフトを決定するために、測定ビーム13が参照形状310に向けられる。この目的のために、測定ビーム13は、例えば光学デバイス250の変位によって参照形状310にガイドされ得る。いくつかの実施形態では、偏向光学系320は一つ又はそれ以上のミラー322を含む。例えば、測定ビーム13は、参照形状310にそれを向けるために、複数のミラー322によって複数回だけ偏向され得る。オプションとして、偏向光学系320は、光学測定ビーム13を光学参照形状310の上にフォーカスするように構成されたレンズ324を含む。ビームサイズをフォーカスすることによって、距離の変化が、精度を増して決定されることができる。ドリフトは、材料加工の間に定期的に決定され得る(且つ好ましくは引き続いて補正され得る)。
【0045】
いくつかの実施形態では、評価ユニットは光学デバイス250の位置を決定するように構成される。例えば、一つ又はそれ以上のミラー、一つ又はそれ以上のガルバノメータスキャナ、一つ又はそれ以上のプリズム、又は一つ又はそれ以上の光学格子、又はそれらの組み合わせの角度位置が決定され得る。例えば、角度位置は、所望の位置と実際の位置との間の差に基づいて補正され得て、熱的効果、外部干渉、及び/又は使用されている位置検出器の劣化によって引き起こされるドリフトを補償する。この目的のために、評価ユニット240は、方向を補正するための補正値をコヒーレンストモグラフに送信し得る。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、光コヒーレンストモグラフ200は、一つ又はそれ以上の、及び特に2つの空間次元にて決定された距離に基づいて、光学デバイス250の方向のずれを補正するように構成される。2つの空間次元は、例えばX及びY方向であり得る(
図6~
図8参照)。例えば、光コヒーレンストモグラフ200は、少なくとも一つのガルバノメータスキャナの少なくとも一つのミラーのそれぞれの空間次元における角度位置を、平面A及びCの間の決定された距離に基づいて補正するように構成される。
【0047】
第1の参照平面Aは、ワークピース1までの距離の測定のためのコヒーレンストモグラフの測定アームにおける参照平面であり得て、且つ加えて、光学デバイス250の方向の決定のために使用され得る。言い換えると且つ前述したように、現存しているOCT測定技法が、測定ビーム13を光学デバイス250によって参照形状310に向けることによって、光学デバイス250の所望の位置と実際の位置との間の距離を決定するために使用され得る。典型的には、第1の参照平面Aはコヒーレンストモグラフの光源301の平面である。
【0048】
光学参照形状310は、一つ又はそれ以上の第2の参照平面Cを提供する。本発明に従ってデバイスによって決定された距離は、第1の参照平面Aと対応する第2の参照平面Cとの間と規定される。好ましくは、光源301の平面のような第1の参照平面Aとワークピース1の平面(すなわちワーク平面B)との間の距離は、第1の参照平面Aと少なくとも一つの第2の参照平面C又は光学参照形状310の校正点との間の距離に対応する。これは、OCT測定システムが通常は小さな測定範囲のみ、例えば約12mmの範囲で提供するからである。それゆえに、もし距離が測定範囲のサイズ以上に異なると、2つの距離のうちの一つのみが測定されることができる。あるいは、参照アームの長さは再調整され得るが、これは労力及びコストを増すことになる。平面AとCとの間の距離、及び特に平面Aと校正点との間の距離がI0とされ、例えばシステムをセットアップするときに、OCT測定技法によって、少なくとも一つの角度θ0について正確に決定され得る。
【0049】
図3は、本開示のさらなる実施形態に従ってコヒーレンストモグラフの光学デバイス250の方向を決定するためのデバイス300’を含むレーザ加工システムを示す。
図3のレーザ加工システムは
図2のレーザ加工システムと同様であり、同様な及び同一の特徴の記述は繰り返されない。
【0050】
図3の例においては、偏向光学系320が、光学測定ビーム13の一部を偏向するように構成された少なくとも一つのビームスプリッタ又は部分透過性ミラー326を備える。例えば、測定ビーム13は部分透過性ミラー326によって分割され得て、ワーク平面B及び光学参照形状310までの距離測定が同時に実行されることを可能にする。
【0051】
図4は、ドリフトによる角度θ
d(ドリフト角度)による長さの変化を示す。
【0052】
光学デバイスの方向におけるドリフト又はガルバノメータシステムのドリフトが動作中に発生すると、参照形状の上のOCTビームの位置が、
図4に示されるように、角度θ
0に対してドリフト角度θ
dだけ変化する。角度のこの変化は、OCTシステムによって検出可能な長さの変化ΔI=I
0-I
dをもたらす結果となる。測定された長さの変化はそれから、ガルバノメータスキャナのドリフトを補償するためにコントロールによって使用され得て、ワークピース上の測定点の真の位置が、補償無しの場合に可能であるよりも、より正確に決定されることを可能にする。これは、コヒーレンストモグラフによる測定を、より正確にする。
【0053】
いくつかの実施形態では、ドリフト角度θdの変化が光学的に変換され得て、長さにおいて、より大きな変化ΔIを作り出し、それによってドリフト決定の感度を増すことになる。
【0054】
典型的には、評価ユニットは参照平面Aと光学参照形状の上の2つ又はそれ以上の点との間の距離を決定するように構成される。例えば、システムを校正又はセットアップするとき、参照形状のさらなる点が、角度θ
1、θ
2、…、θ
nにおける光学デバイスの異なる方向で測定されて、関連する長さI
1、I
2、…、I
nを決定する。これらの点は、方向又はドリフトをより正確に決定するために使用され得る。参照形状上の複数の点を測定することによって、例えば方向の決定の精密さ、及び特に光学デバイス250のドリフトが、算術演算を介して増加され得る。加えて、参照形状上の複数の点は、複数の次元におけるドリフトを補償するために測定され得る。これは、
図6~
図8を参照して、より詳細に説明される。
【0055】
図5は、本開示の実施形態に従った参照形状500の斜視図を示す。参照形状500は複数の第2の参照平面501を含む。5つの第2の参照平面501が例として示されているが、本開示はそれに限られるものではなく、任意の適切な数の第2の参照平面が提供され得る。例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はより多くの第2の参照平面が提供され得る。特に好適なのは、共通の点で交差している4つの第2の参照平面である。
【0056】
典型的には、光学参照形状500は、少なくとも一つの平坦な拡散反射表面を含む。この平坦な拡散反射表面は、プロセス観察からの後方反射に比べて、OCTセンサについては後方反射が大きくなりすぎないことを確実にすることを可能にし、これより、光源の強度が低減される必要がなくなる。
【0057】
実施形態によれば、参照形状500は、不連続性を有する表面を持つ光学素子である。特に、参照形状は複数の非平行な平面を含み得る。例えば、これらの平面は共通の点502で会合している傾斜した平面であり得る。共通の点502は最も低い点であり得る。非平行な平面は第2の参照平面501を提供し得る。例えば、光学参照形状は2つ又はそれ以上の第2の参照平面501を含み得て、2つ又はそれ以上の第2の参照平面は、各々が平坦な拡散反射表面である。
【0058】
参照形状500は、校正平面、校正位置、又は校正点を含み得る。第1の参照平面と校正平面/点との間の距離はI
0と称され、システムをセットアップするときにOCT測定技法によって、少なくとも一つの角度θ
0について、精密に決定されることができる。例えば、
図5に示された4つの第2の参照平面は、共通の点502で会合する4つの傾斜した表面であり得て、点502は校正零点(又は校正位置)を表す。
【0059】
いくつかの実施形態では、参照形状は、長さの変化のタイプが、ドリフトが発生している次元(例えばX又はY方向)で計算するために使用されることができるような形状をしている。この目的のために、上述のように、4つの第2の参照平面501は、4つの第2の参照平面501が校正零点502で交差するように配置され得る。
【0060】
特に、第2の参照平面501のうちの少なくとも2つは、第1の次元における光学デバイスの方向のずれが距離の増加をもたらす結果となるように配置され得る。少なくとも2つのさらなる第2の参照平面は、第2の次元における光学デバイスの方向のずれが距離の減少をもたらす結果となるように配置され得る。このことは、
図6~
図8を参照して、さらに詳細に説明される。
【0061】
図6はドリフト無しの参照平面を示す。測定ビームは、校正位置又は校正点にあたり、光学デバイスの実際の位置と所望の位置との間のずれが零に等しい。
【0062】
図7は第1の次元又は方向におけるドリフトを示しており、これはX方向であり得る。第1の次元における光学デバイスの方向のずれは、距離の増加をもたらす。
【0063】
図8は第2の次元又は方向におけるドリフトを示しており、これはY方向であり得る。第2の次元又はY方向は第1の次元又はX方向に直交し得る。第2の次元における光学デバイスの方向のずれは、距離の減少をもたらす。
【0064】
これより、距離の変化の符号が、光学デバイスがドリフトする方向を暗示するように使用されることができる。例えば、光学デバイスがX偏向及びY偏向のために各一つのミラーを有していたら、2つのミラーのどちらがドリフトしているかが推測されることができる。
【0065】
好ましくは、光学コヒーレンストモグラフは、一つ又はそれ以上の空間次元における決定された距離に基づいて、光学デバイスの方向のずれを補償するように構成される。例えば、ガルバノメータスキャナの少なくとも一つのミラーの角度位置は、2つの空間次元において、軸の周囲で回転することによって、補正され得る。もしX方向にドリフトがあれば、対応するミラーはX軸の周囲で回転され得て、ドリフトを補償する。もしY方向にドリフトがあれば、対応するミラーはX軸の周囲で回転され得て、ドリフトを補償する。