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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/261 20110101AFI20220117BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20220117BHJP
   B60N 2/427 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B60R21/261
B60R21/207
B60N2/427
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018002036
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019119391
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】山部 篤史
(72)【発明者】
【氏名】栗山 大輔
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-287578(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094600(WO,A1)
【文献】特開2015-147431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/261
B60R 21/207
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体を含むエアバッグモジュールを具備する乗物用シートであって、
前記エアバッグモジュールが取り付けられるフレーム部材と、
前記袋体の展開方向を案内する第1力布と、
前記フレーム部材に取り付けられ、前記第1力布を固定するための力布ブラケットと、を備え、
前記第1力布は、輪状に形成された第1係止部を有し、
前記力布ブラケットは、
前記第1力布を取り付けるための第1スリットを有し、
前記第1スリットは、
前記力布ブラケットの第1縁部に設けられた第1開口部と、
前記第1開口部を介して通された前記第1力布の前記第1係止部を保持する第1保持部と、を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記第1スリットは、前記第1開口部と前記第1保持部とを連結する第1屈曲部を有することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第1開口部の角部は、面取りされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記力布ブラケットは、前記第1保持部に沿って形成されたフランジ部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記フランジ部は、前記第1保持部よりも長いことを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記エアバッグモジュールに向けて突出していることを特徴とする請求項4又は5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記第1保持部は、前記第1力布の幅よりも長く直線状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記第1屈曲部は、前記第1保持部の上下の端部の間に連結していることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記力布ブラケットは、前記第1スリットを跨ぐ位置に形成された、前記エアバッグモジュールを取り付けるための第1貫通孔と第2貫通孔を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔には、前記エアバッグモジュールに含まれるインフレータに設けられたボルトが取り付けられることを特徴とする請求項9に記載の乗物用シート。
【請求項11】
前記第1保持部と、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを結ぶ線分とは略平行であることを特徴とする請求項9又は10に記載の乗物用シート。
【請求項12】
前記第1保持部は、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔を結ぶ線分と上下方向において重なる位置に形成されていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の乗物用シート。
【請求項13】
前記袋体の展開方向を案内する第2力布を備え、
前記第2力布は、輪状に形成された第2係止部を有し、
前記力布ブラケットは、
前記第2力布を取り付けるための第2スリットを有し、
前記第2スリットは、
前記力布ブラケットの第2縁部に設けられた第2開口部と、
前記第2開口部を介して通された前記第2力布の前記第2係止部を保持する第2保持部と、を有することを特徴とする請求項9に記載の乗物用シート。
【請求項14】
前記第1力布は、インナ側力布であり、
前記第2力布は、アウタ側力布であり、
前記力布ブラケットは、前記第2保持部の下方に設けられたボルト締結部を有することを特徴とする請求項13に記載の乗物用シート。
【請求項15】
前記ボルト締結部は、上側が閉塞し、下側が開放していることを特徴とする請求項14に記載の乗物用シート。
【請求項16】
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを結ぶ線分は、前記第1保持部と前記第2保持部との間に位置することを特徴とする請求項14又は15に記載の乗物用シート。
【請求項17】
前記力布ブラケットは、前記ボルト締結部と前記第2保持部との間に形成された段差部を有することを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載の乗物用シート。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特にエアバッグを備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突時に車両用シートの側部に設けられたエアバッグを膨出展開させて、乗員を保護するサイドエアバッグ装置を備えた車両用シートが知られている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用シートにおいては、サイドフレームに固定されたブラケットには穴が形成されており、穴に力布の端部を通した上で、力布の端部を縫合することにより、力布をブラケットに取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/035619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術では、力布をブラケットの穴に通した後に力布を縫合する作業が必要であるため、力布をブラケットに取り付ける作業の労力が大きかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアバッグの展開方向を案内する力布の取り付けを容易とすることができる乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明に係る乗物用シートによれば、袋体を含むエアバッグモジュールを具備する乗物用シートであって、前記エアバッグモジュールが取り付けられるフレーム部材と、前記袋体の展開方向を案内する第1力布と、前記フレーム部材に取り付けられ、前記第1力布を固定するための力布ブラケットと、を備え、前記第1力布は、輪状に形成された第1係止部を有し、前記力布ブラケットは、前記第1力布を取り付けるための第1スリットを有し、前記第1スリットは、前記力布ブラケットの第1縁部に設けられた第1開口部と、前記第1開口部を介して通された前記第1力布の前記第1係止部を保持する第1保持部と、を有することにより解決される。
【0008】
上記の乗物用シートによれば、力布ブラケットにおいて第1力布を取り付けるための第1スリットの一部が開放しているため、第1力布の輪状の第1係止部を、第1スリットを通じて力布ブラケットに取り付けることができる。
すなわち、上記の乗物用シートによれば、力布の取り付けを容易とすることができる。
【0009】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1スリットは、前記第1開口部と前記第1保持部とを連結する第1屈曲部を有するとよい。
こうすることで、力布ブラケットから第1力布が抜けることを抑制できる。
【0010】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1開口部の角部は、面取りされているとよい。
こうすることで、第1力布を第1スリットに取り付ける際に、第1力布が傷つくことを抑制できる。
【0011】
上記の乗物用シートにおいて、前記力布ブラケットは、前記第1保持部に沿って形成されたフランジ部を有するとよい。
こうすることで、力布ブラケットの剛性を向上できる。これにより、力布ブラケットが第1力布を安定して保持可能となる。
また、第1力布の第1係止部と力布ブラケットの当接箇所を分散させることで、第1係止部への荷重を分散できる。これにより、第1力布の損傷を抑制できる。
【0012】
上記の乗物用シートにおいて、前記フランジ部は、前記第1保持部よりも長いとよい。
こうすることで、力布ブラケットの剛性をより一層向上できる。これにより、力布ブラケットが第1力布をより安定して保持可能となる。
【0013】
上記の乗物用シートにおいて、前記フランジ部は、前記エアバッグモジュールに向けて突出しているとよい。
こうすることで、エアバッグの展開時に、第1力布が力布ブラケットのフランジ部によって損傷することを抑制できる。
【0014】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1保持部は、前記第1力布の幅よりも長く直線状に形成されているとよい。
こうすることで、第1力布の端部に皺を作ることなく、力布ブラケットに第1力布を保持できる。
【0015】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1屈曲部は、前記第1保持部の上下の端部の間に連結しているとよい。
こうすることで、力布ブラケットから第1力布が抜けることをより一層抑制できる。
【0016】
上記の乗物用シートにおいて、前記力布ブラケットは、前記第1スリットを跨ぐ位置に形成された、前記エアバッグモジュールを取り付けるための第1貫通孔と第2貫通孔を有するとよい。
このように、第1スリットを跨ぐ位置にエアバッグモジュールを取り付けることで、第1力布が力布ブラケットから抜けることを抑制できる。
【0017】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔には、前記エアバッグモジュールに含まれるインフレータに設けられたボルトが取り付けられるとよい。
このように第1スリットを塞ぐようにインフレータを取り付けることで、第1力布が力布ブラケットから抜けることをより一層抑制できる。
【0018】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1保持部と、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを結ぶ線分とは略平行であるとよい。
このように、第1保持部を、第1貫通孔と第2貫通孔を結ぶ線分と略平行に設けたことにより、エアバッグ展開時に第1力布の第1係止部に掛かる力をバランス良く分散させることができる。これにより、エアバッグを安定して展開させることができる。
【0019】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1保持部は、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔を結ぶ線分と上下方向において重なる位置に形成されているとよい。
こうすることで、エアバッグ展開時に第1力布の第1係止部に掛かる力をバランス良く分散させることができる。これにより、エアバッグをより一層安定して展開させることができる。
【0020】
上記の乗物用シートにおいて、前記袋体の展開方向を案内する第2力布を備え、前記第2力布は、輪状に形成された第2係止部を有し、前記力布ブラケットは、前記第2力布を取り付けるための第2スリットを有し、前記第2スリットは、前記力布ブラケットの第2縁部に設けられた第2開口部と、前記第2開口部を介して通された前記第2力布の前記第2係止部を保持する第2保持部と、を有するとよい。
こうすることで、1つの力布ブラケットに対し第1力布と第2力布を取り付けることができる。これにより、エアバッグの展開方向をより安定させることができる。
【0021】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1力布は、インナ側力布であり、前記第2力布は、アウタ側力布であり、前記力布ブラケットは、前記第2保持部の下方に設けられたボルト締結部を有するとよい。
こうすることで、エアバッグの展開方向をより安定させることができる。
また、力布ブラケットにボルト締結部がさらに形成されていることにより、外側への引っ張り力に対する力布ブラケットの取り付け剛性を向上できる。
【0022】
上記の乗物用シートにおいて、前記ボルト締結部は、上側が閉塞し、下側が開放しているとよい。
このようにボルト締結部の上側が閉塞しているため、ボルト締結部に取り付けるボルトの位置決めが容易となる。
【0023】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを結ぶ線分は、前記第1保持部と前記第2保持部との間に位置するとよい。
こうすることで、第1保持部と第2保持部を、エアバッグモジュールの締結点を隔てて配置させることができる。これにより、エアバッグ展開時の第1力布と第2力布の引っ張り方向を逆として、互いの引っ張る力を相殺可能となる。そのため、エアバッグ展開時に力布ブラケットに強い力が掛かることを抑制し、それにより力布ブラケットが外れることを抑制できる。
【0024】
上記の乗物用シートにおいて、前記力布ブラケットは、前記ボルト締結部と前記第2保持部との間に形成された段差部を有するとよい。
こうすることで、ボルト締結部に、第1力布と第2力布の引っ張り力が強く掛かることを抑制できる。これにより、エアバッグ展開時に力布ブラケットに強い力が掛かることを抑制し、それにより力布ブラケットが外れることを一層抑制できる。
【0025】
本発明によれば、エアバッグの展開方向を案内する力布の取り付けを容易とすることができる。
本発明によれば、力布ブラケットから第1力布が抜けることを抑制できる。
本発明によれば、第1力布を第1スリットに取り付ける際に、第1力布が傷つくことを抑制できる。
本発明によれば、力布ブラケットの剛性を向上できる。
本発明によれば、エアバッグの展開時に、第1力布が力布ブラケットのフランジ部によって損傷することを抑制できる。
本発明によれば、第1力布の端部に皺を作ることなく、力布ブラケットに第1力布を保持できる。
本発明によれば、エアバッグ展開時に第1力布の第1係止部に掛かる力をバランス良く分散させることができる。
本発明によれば、エアバッグの展開方向をより安定させることができる。
本発明によれば、外側への引っ張り力に対する力布ブラケットの取り付け剛性を向上できる。
本発明によれば、ボルト締結部に取り付けるボルトの位置決めが容易となる。
本発明によれば、エアバッグ展開時の第1力布と第2力布の引っ張り方向を逆として、互いの引っ張る力を相殺可能となる。
本発明によれば、ボルト締結部に、第1力布と第2力布の引っ張り力が強く掛かることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係るシートの斜視図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】サイドフレームに取り付けたエアバッグモジュールを示す図である。
図4】サイドフレームに取り付けた力布ブラケットを示す図である。
図5】サイドフレームの構成を示す図である。
図6】力布ブラケットの構成を示す図である。
図7】力布ブラケットに第1力布及び第2力布を取り付けた状態を示す図である。
図8】第1変形例に係る力布ブラケットを示す図である。
図9】第2変形例に係る力布ブラケットを示す図である。
図10】第3変形例に係る力布ブラケットを示す図である。
図11】第4変形例に係る力布ブラケットを示す図である。
図12】第5変形例に係る力布ブラケットを示す図である。
図13】第6変形例に係る力布ブラケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1乃至図13を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係るシートSについて説明する。
本実施形態では、シートSとして、車両に搭載される乗物用シートを例に挙げて説明することとするが、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される乗物用シートに限定されるものではなく、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートであってもよい。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0028】
以下の説明中、「前後方向」とは、シートSの着座者から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。
「シート幅方向」とは、シートSの横幅方向を意味し、シートSの着座者から見たときの左右方向と一致する。
また、「上下方向」とは、シートSの高さ方向を意味し、シートSを正面から見たときの上下方向と一致する。
【0029】
<シートSの構成>
図1には、シートSの斜視図を示した。なお、図1中、シートSの一部(具体的には、シートバックS1の前端角部)については、図示の都合上、表皮材2を外した構成にて図示している。
【0030】
シートSは、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバックS1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッションS2、及び、シートバックS1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレストS3を主な構成要素とする。
【0031】
シートバックS1は、シートバックフレームにパッド材1を載置して表皮材2で覆うことで構成されている。
シートクッションS2は、シートクッションフレームにパッド材1を載置し表皮材2で覆うことで構成されている。
ヘッドレストS3は、芯材にパッド材1を配して表皮材2で被覆して構成されている。
パッド材1は、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材である。
また、シートSに設けられる表皮材2は、例えばクロスや革等の素材からなる。
【0032】
また、図1に示されるように、シートバックS1の側方内部には、エアバッグモジュール10が設けられている。
図2に示されるように、エアバッグモジュール10は、内部に袋体11、インフレータ12を備える。インフレータ12は、車両の衝突を感知するセンサーから作動信号の入力を受けた場合にガスを発生させる装置であり、発生したガスを袋体11に注入して袋体11を膨出展開させる。
以下、エアバッグモジュール10の取り付け構造について詳細に説明する。
【0033】
図2及び図3に示されるように、エアバッグモジュール10は、サイドフレーム20に取り付けられる。サイドフレーム20は、シートバックS1の骨格を構成するシートバックフレームの側部を構成するフレーム部材である。本実施形態では、サイドフレーム20は、板状部材の前端部と後端部をそれぞれシート幅方向内側に屈曲させた形状に構成される。
【0034】
そして、図4に示されるように、サイドフレーム20の側面には、力布ブラケット40が取り付けられる。具体的には、サイドフレーム20のシート幅方向外側の側面に対して、力布ブラケット40が取り付けられる。
ここで、力布ブラケット40は、エアバッグモジュール10の袋体11の展開方向を案内するための力布である第1力布30(インナ側力布)と第2力布35(アウタ側力布)とを取り付けるための部材である。以下、図6及び図7を参照しながら、力布ブラケット40の構成について説明する。
【0035】
<力布ブラケット40の構成>
図6及び図7に示されるように、力布ブラケット40は、板部40Aと、板部40Aの前方及び後方の端部に設けられるフランジ部43(前方フランジ部43A及び後方フランジ部43B)、及びボルト締結部46を有する。
なお、板部40Aは、例えば樹脂や金属等の材料により構成されることとしてよい。
【0036】
ここで、板部40Aは、第1力布30、第2力布35及びエアバッグモジュール10が取り付けられる平板状の部分である。
具体的には、板部40Aには、第1スリット41、第2スリット42、第1貫通孔44及び第2貫通孔45が形成される。
【0037】
<<第1スリット41>>
第1スリット41は、力布ブラケット40において、第1力布30を取り付けるために形成されたスリットであり、板部40Aの上端の第1縁部40Bから内部に向かって形成される。
具体的には、第1スリット41は、第1開口部41A、第1保持部41B及び第1屈曲部41Cを有する。
【0038】
また、図2及び図7に示すように、第1力布30は、端部を折り返して第1縫製部31Aにより縫製することにより輪状に構成された第1係止部31を有する。
そして、第1力布30の第1係止部31を、第1開口部41A、第1屈曲部41C、第1保持部41Bの順に通すことで、図7に示すように、第1力布30の第1係止部31を第1保持部41Bに係止することができる。
【0039】
第1開口部41Aは、第1縁部40Bに設けられており、第1開口部41Aの角部41Aaは面取りされて、丸まっている。これにより、第1開口部41Aに第1力布30の第1係止部31を通す際に、第1力布30が傷つくことを抑制できる。
【0040】
第1保持部41Bは、第1開口部41Aを介して通された第1力布30の第1係止部31を保持する。
ここで、第1保持部41Bは、上下方向に延出している。換言すれば、第1保持部41Bは、力布ブラケット40の前後方向の端部に形成されたフランジ部43と略平行の直線状に形成されている。
なお、フランジ部43(前方フランジ部43A、後方フランジ部43B)は、第1保持部41Bよりも上下方向に長くなっている。
【0041】
また、第1保持部41Bは、板部40Aにおいて、第1縁部40Bと第2縁部40Cとの間に形成されている。
また、図7に示されるように、第1保持部41Bは、第1力布30(第1係止部31)の幅よりも長く直線状に形成されている。
このように、第1保持部41Bが第1力布30の幅よりも長く直線状に形成されているため、第1力布30の第1係止部31に皺を作ることなく、力布ブラケット40に第1力布30を保持させることができる。
【0042】
そして、第1スリット41は、第1開口部41Aと第1保持部41Bとを連結する第1屈曲部41Cを有する。
具体的には、第1屈曲部41CはL字状に屈曲しており、第1屈曲部41Cが第1保持部41Bに連結する部分は、第1保持部41Bの上方端部41Baと下方端部41Bbの間に位置する。
こうすることで、第1保持部41Bに保持される第1係止部31が上方にずれた場合にも、第1係止部31が第1屈曲部41C側に移動することを抑制できる。これにより、第1力布30が第1保持部41Bから抜けてしまうことを抑制できる。
【0043】
<<第2スリット42>>
次に、第2スリット42について説明する。
第2スリット42は、力布ブラケット40において、第2力布35を取り付けるために形成されたスリットであり、板部40Aの下端の第2縁部40Cから内部に向かって形成される。
具体的には、図7に示されるように、第2スリット42は、第2開口部42A、第2保持部42B及び第2屈曲部42Cを有する。
【0044】
また、図2及び図7に示すように、第2力布35は、端部を折り返して第2縫製部36Aにより縫製することにより輪状に構成された第2係止部36を有する。
そして、第2力布35の第2係止部36を、第2開口部42A、第2屈曲部42C、第2保持部42Bの順に通すことで、図7に示すように、第2力布35の第2係止部36を第2保持部42Bに係止することができる。
【0045】
第2開口部42Aは、第2縁部40Cに設けられており、第2開口部42Aの角部42Aaは面取りされて、丸まっている。これにより、第2開口部42Aに第2力布35の第2係止部36を通す際に、第2力布35が傷つくことを抑制できる。
【0046】
第2保持部42Bは、第2開口部42Aを介して通された第2力布35の第2係止部36を保持する。
ここで、第2保持部42Bは、上下方向に延出している。換言すれば、第2保持部42Bは、力布ブラケット40の前後方向の端部に形成されたフランジ部43と略平行の直線状に形成されている。
なお、フランジ部43(前方フランジ部43A、後方フランジ部43B)は、第2保持部42Bよりも上下方向に長くなっている。
また、第2保持部42Bは、板部40Aにおいて、第1縁部40Bと第2縁部40Cとの間に形成されている。
【0047】
また、図7に示されるように、第2保持部42Bは、第2力布35(第2係止部36)の幅よりも長く直線状に形成されている。
このように、第2保持部42Bが第2力布35の幅よりも長く直線状に形成されているため、第2力布35の第2係止部36に皺を作ることなく、力布ブラケット40に第2力布35を保持させることができる。
【0048】
そして、第2スリット42は、第2開口部42Aと第2保持部42Bとを連結する第2屈曲部42Cを有する。
具体的には、第2屈曲部42CはL字状に屈曲しており、第2屈曲部42Cが第2保持部42Bに連結する部分は、第2保持部42Bの上方端部42Baと下方端部42Bbの間に位置する。
こうすることで、第2保持部42Bに保持される第2係止部36が上方にずれた場合にも、第2係止部36が第2屈曲部42C側に移動することを抑制できる。これにより、第2力布35が第2保持部42Bから抜けてしまうことを抑制できる。
【0049】
<<フランジ部43>>
フランジ部43は、力布ブラケット40において前側に設けられた前方フランジ部43Aと、後側に設けられた後方フランジ部43Bとを有する。そして、フランジ部43は、シート幅方向外側、換言すれば、エアバッグモジュール10側に突出するように板部40Aから屈曲している。
【0050】
<<第1貫通孔44及び第2貫通孔45>>
また、力布ブラケット40において、第1スリット41を跨ぐ位置には、第1貫通孔44と第2貫通孔45が形成されている。具体的には、第1屈曲部41Cの上側に第1貫通孔44が形成され、第1屈曲部41Cの下側に第2貫通孔45が形成される。
【0051】
この第1貫通孔44と第2貫通孔45には、エアバッグモジュール10に含まれるインフレータ12に設けられた第1ボルト13A及び第2ボルト13Bがそれぞれ取り付けられる。
図2に示されるように、第1ボルト13Aは、インフレータ12からシート幅方向内側に向けて延出しており、第1貫通孔44と、サイドフレーム20の凸部21に形成された貫通孔に挿通された状態でナット15により締結される。
具体的には、図5に示されるようにサイドフレーム20の側板には上下に並ぶ第1凸部21A及び第2凸部21Bが形成される。第1凸部21Aと第2凸部21Bとは共にサイドフレーム20の側板においてシート外側に突出した部分である。そして、第1凸部21Aと第2凸部21Bのそれぞれには中心部に第1貫通孔22Aと第2貫通孔22Bが形成される。
力布ブラケット40の第1貫通孔44が、第1凸部21Aの第1貫通孔22Aに対向し、力布ブラケット40の第2貫通孔45が、第2凸部21Bの第2貫通孔22Bに対向した位置に配される。
そして、サイドフレーム20とエアバッグモジュール10との間に力布ブラケット40を配置し、インフレータ12から延出する第1ボルト13Aが第1貫通孔22Aに、第2ボルト13Bが第2貫通孔22Bに挿通されるようにして、第1ボルト13Aと第2ボルト13Bにそれぞれナット15を螺合させて締結する。
これにより、エアバッグモジュール10、力布ブラケット40、サイドフレーム20が共締めされる。この際、図2に示されるように、力布ブラケット40は、サイドフレーム20の凸部21(第1凸部21A、第2凸部21B)に当接した状態で支持される。
【0052】
ここで、第1保持部41B、第2保持部42B、第1貫通孔44及び第2貫通孔45の位置関係について説明する。
図6に示されるように、第1貫通孔44と第2貫通孔45とを結ぶ線分Lは、第1保持部41B及び第2保持部42Bと略平行である。
また、第1保持部41B及び第2保持部42Bは、第1貫通孔44と第2貫通孔45を結ぶ線分Lと上下方向において重なる位置に形成されている。
また、第1貫通孔44と第2貫通孔45とを結ぶ線分Lは、第1保持部41Bと第2保持部42Bとの間に位置している。換言すれば、シートの前後方向において、第1貫通孔44及び第2貫通孔45は、第1保持部41Bと第2保持部42Bとの間に設けられる。
【0053】
<<ボルト締結部46>>
次に、ボルト締結部46について説明する。
図6及び図7に示されるように、第2スリット42の下方にはボルト締結部46が設けられる。ここで、ボルト締結部46は、上側が閉塞し、下側が開放した切欠き部46Aを有する。
そして、図4及び図5に示されるように、ボルト締結部46の切欠き部46Aと、サイドフレーム20に形成される第3貫通孔23にボルト16を通して締結することで、力布ブラケット40をサイドフレーム20に固定することができる。
なお、本実施形態では、インフレータ12から延出する第1ボルト13A及び第2ボルト13B、さらに上記のボルト16の3点において、力布ブラケット40はサイドフレーム20に対して締結される。これにより、力布ブラケット40をサイドフレーム20に対する取り付けを強固にできる。
【0054】
また、板部40Aと、ボルト締結部46とはシート幅方向において位置がずれている。換言すれば、ボルト締結部46は、板部40Aに対してシート幅方向の内側に配される。具体的には、板部40Aとボルト締結部46との間には、シート幅方向に傾斜する段差部47が形成されている。
また、板部40Aは、サイドフレーム20においてシート幅方向外側に突出した凸部21により支持され、これにより、板部40Aの一部は、サイドフレーム20と離間するようになっている。
なお、図6に示されるように、ボルト締結部46は、第1スリット41及び第2スリット42よりも下方に設けられている。
【0055】
<エアバッグモジュール10の取り付け作業>
次に、エアバッグモジュール10の取り付け作業について説明する。
まず、図7に示されるように、力布ブラケット40に対して第1力布30及び第2力布35を取り付ける。具体的には、力布ブラケット40の第1スリット41に第1力布30の輪状の第1係止部31を通して、第1保持部41Bに第1係止部31を係止する。同様に、力布ブラケット40の第2スリット42に第2貫通孔45の第2係止部36を通して、第2保持部42Bに第2係止部36を係止する。
【0056】
次に、第1力布30及び第2力布35を取り付けた力布ブラケット40をサイドフレーム20に取り付ける。具体的には、ボルト締結部46にボルト16を取り付けて力布ブラケット40をサイドフレーム20に取り付ける。
【0057】
次に、エアバッグモジュール10を力布ブラケット40に取り付ける。具体的には、エアバッグモジュール10のインフレータ12から突出する第1ボルト13A及び第2ボルト13Bを、力布ブラケット40の第1貫通孔44及び第2貫通孔45に通してそれぞれをサイドフレーム20の内側からナット15により締結する。これにより、エアバッグモジュール10、力布ブラケット40及びサイドフレーム20が共締めされる。
【0058】
次に、エアバッグモジュール10の前方と側方にパッド材1を配置し、さらにパッド材1を被覆する表皮材2を配置する。ここで、パッド材1においてエアバッグモジュール10のシート外側であって僅かに前方に位置する箇所に破断部50が設けられる。例えば、破断部50はパッド材1に上下方向にスリットを形成した部分である。
そして、破断部50において、第1力布30の破断部側端部32、第2力布35の破断部側端部37、及び表皮材2の端部を引き込んだ状態で共縫いする。
なお、上記の破断部側端部32とは、第1力布30において第1係止部31とは反対側の端部である。同様に、破断部側端部37とは、第2力布35において第2係止部36とは反対側の端部である。
【0059】
そして、エアバッグモジュール10のインフレータ12が作動した場合には、インフレータ12により発生したガスが袋体11に注入されて袋体11が膨張する。この際、袋体11は、シート内側に配される力布ブラケット40と、破断部50と力布ブラケット40の第1保持部41Bに取り付けられるインナ側力布としての第1力布30と、破断部50と力布ブラケット40の第2保持部42Bに取り付けられるアウタ側力布としての第2力布35と、により展開方向が破断部50に向かうように案内される。
具体的には、袋体11が膨張することに伴い、第1力布30と第2力布35が破断部50を引き裂くように作用し、これにより、袋体11が破断部50を破断して、破断部50からシート外側に膨出するようになる。
【0060】
以上のように、シートSにおいては、第1力布30の第1係止部31及び第2力布35の第2係止部36を力布ブラケット40の第1スリット41及び第2スリット42に通すことにより、第1力布30及び第2力布35を力布ブラケット40に容易に取り付けることができる。
【0061】
<力布ブラケット40の変形例>
次に、図8乃至図13を参照しながら、力布ブラケット40の第1変形例~第4変形例について説明する。
【0062】
図8には、第1変形例に係る力布ブラケット140を示した。図8に示されるように、第1変形例に係る力布ブラケット140は、板部40Aに第3貫通孔48及び第4貫通孔49が更に形成されている点で、力布ブラケット40と相違し、その他の点では一致する。
【0063】
第3貫通孔48及び第4貫通孔49にはボルトを通して、力布ブラケット40とサイドフレーム20に締結する際に用いることとしてもよいし、第1貫通孔44及び第2貫通孔45に代えてエアバッグモジュール10を取り付ける際に用いてもよい。
【0064】
図9には、第2変形例に係る力布ブラケット240を示した。図9に示されるように、第2変形例に係る力布ブラケット240は、ボルト締結部46Xにおいて、切欠き部46Aではなく、孔部46Xaが形成されている点で、力布ブラケット40と相違し、その他の点では一致する。
この孔部46Xaには、力布ブラケット40と同様に、ボルト16が通される。これにより、力布ブラケット240をサイドフレーム20に対して取り付けることができる。
【0065】
図10には、第3変形例に係る力布ブラケット340を示した。図10に示されるように、第3変形例に係る力布ブラケット340は、ボルト締結部46Yに形成される切欠きが、後方に向けて開口している点で、力布ブラケット40と相違し、その他の点では一致する。
このボルト締結部46Yには、力布ブラケット40と同様に、ボルト16が通される。これにより、力布ブラケット340をサイドフレーム20に対して取り付けることができる。
【0066】
図11には、第4変形例に係る力布ブラケット440を示した。図11に示されるように、第4変形例に係る力布ブラケット440は、ボルト締結部46Zに形成される切欠きが、前方に向けて開口している点で、力布ブラケット40と相違し、その他の点では一致する。
このボルト締結部46Zには、力布ブラケット40と同様に、ボルト16が通される。これにより、力布ブラケット440をサイドフレーム20に対して取り付けることができる。
【0067】
図12には、第5変形例に係る力布ブラケット540を示した。図12に示されるように、力布ブラケット540では、力布ブラケット40におけるボルト締結部46及び段差部47を有していない点で力布ブラケット40と相違し、その他の点では一致する。すなわち、力布ブラケット540は、第1貫通孔44と第2貫通孔45の二点においてサイドフレーム20に締結される。
【0068】
図13には、第6変形例に係る力布ブラケット640を示した。図13に示されるように、力布ブラケット640では、力布ブラケット40における段差部47の代わりにビード部51が形成されている点で力布ブラケット40と相違し、その他の点では一致する。
ビード部51は、板部40Aからシート幅方向内側に凹んだ部分であり、ボルト締結部46と連結している。具体的には、ビード部51は、ボルト締結部46の切欠き部46Aの上部に形成される。そして、ビード部51とボルト締結部46はサイドフレーム20の側板に当接した状態で、力布ブラケット640がサイドフレーム20に取り付けられる。こうすることで、力布ブラケット640をサイドフレーム20に取り付けた際のガタツキを抑制することができる。また、ビード部51を設けたことで、力布ブラケット640の剛性を向上させることができる。
【0069】
<まとめ>
本実施形態に係るシートSの主な特徴は以下の通りである。
[1]シートSは、袋体11を含むエアバッグモジュール10を具備する乗物用シートである。シートSは、エアバッグモジュール10が取り付けられるフレーム部材(例えばサイドフレーム20)と、袋体11の展開方向を案内する第1力布30と、フレーム部材に取り付けられ、第1力布30を固定するための力布ブラケット40と、を備える。第1力布30は、輪状に形成された第1係止部31を有し、力布ブラケット40は、第1力布30を取り付けるための第1スリット41を有する。第1スリット41は、力布ブラケット40の第1縁部40Bに設けられた第1開口部41Aと、第1開口部41Aを介して通された第1力布30の第1係止部31を保持する第1保持部41Bと、を有する。
上記のシートSによれば、力布ブラケット40において第1力布30を取り付けるための第1スリット41の一部が開放しているため、第1力布30の輪状の第1係止部31を、第1スリット41を通じて力布ブラケット40に取り付けることができる。
すなわち、上記のシートSによれば、力布の取り付けを容易とすることができる。
なお、上記の第1力布はインナ側力布、アウタ側力布のいずれであっても構わない。
【0070】
[2]上記のシートSにおいて、第1スリット41は、第1開口部41Aと第1保持部41Bとを連結する第1屈曲部41Cを有する。
こうすることで、力布ブラケット40から第1力布30が抜けることを抑制できる。
【0071】
[3]上記のシートSにおいて、第1開口部41Aの角部41Aaは、面取りされている。
こうすることで、第1力布30を第1スリット41に取り付ける際に、第1力布30が傷つくことを抑制できる。
【0072】
[4]上記のシートSにおいて、力布ブラケット40は、第1保持部41Bに沿って形成されたフランジ部43を有する。
こうすることで、力布ブラケット40の剛性を向上できる。これにより、力布ブラケット40が第1力布30を安定して保持可能となる。
また、第1力布30の第1係止部31と力布ブラケット40の当接箇所を分散させることで、第1係止部31への荷重を分散できる。これにより、第1力布30の損傷を抑制できる。
【0073】
[5]上記のシートSにおいて、フランジ部43は、第1保持部41Bよりも長い。
こうすることで、力布ブラケット40の剛性をより一層向上できる。これにより、力布ブラケット40が第1力布30をより安定して保持可能となる。
【0074】
[6]上記のシートSにおいて、フランジ部43は、エアバッグモジュール10に向けて突出している。
こうすることで、エアバッグの展開時に、第1力布30が力布ブラケット40のフランジ部43によって損傷することを抑制できる。
【0075】
[7]上記のシートSにおいて、第1保持部41Bは、第1力布30の幅よりも長く直線状に形成されている。
こうすることで、第1力布30の端部に皺を作ることなく、力布ブラケット40に第1力布30を保持できる。
【0076】
[8]上記のシートSにおいて、第1屈曲部41Cは、第1保持部41Bの上下の端部の間に連結している。
こうすることで、力布ブラケット40から第1力布30が抜けることをより一層抑制できる。
【0077】
[9]上記のシートSにおいて、力布ブラケット40は、第1スリット41を跨ぐ位置に形成された、エアバッグモジュール10を取り付けるための第1貫通孔44と第2貫通孔45を有する。
このように、第1スリット41を跨ぐ位置にエアバッグモジュール10を取り付けることで、第1力布30が力布ブラケット40から抜けることを抑制できる。
【0078】
[10]上記のシートSにおいて、第1貫通孔44と第2貫通孔45には、エアバッグモジュール10に含まれるインフレータ12に設けられたボルト13が取り付けられる。
このように第1スリット41を塞ぐようにインフレータ12を取り付けることで、第1力布30が力布ブラケット40から抜けることをより一層抑制できる。
【0079】
[11]上記のシートSにおいて、第1保持部41Bと、第1貫通孔44と第2貫通孔45とを結ぶ線分Lとは略平行である。
このように、第1保持部41Bを、第1貫通孔44と第2貫通孔45を結ぶ線分Lと略平行に設けたことにより、エアバッグ展開時に第1力布30の第1係止部31に掛かる力をバランス良く分散させることができる。これにより、エアバッグを安定して展開させることができる。
【0080】
[12]上記のシートSにおいて、第1保持部41Bは、第1貫通孔44と第2貫通孔45を結ぶ線分Lと上下方向において重なる位置に形成されている。
こうすることで、エアバッグ展開時に第1力布30の第1係止部31に掛かる力をバランス良く分散させることができる。これにより、エアバッグをより一層安定して展開させることができる。
【0081】
[13]上記のシートSにおいて、袋体11の展開方向を案内する第2力布35を備え、第2力布35は、輪状に形成された第2係止部36を有し、力布ブラケット40は、第2力布35を取り付けるための第2スリット42を有する。第2スリットは、力布ブラケット40の第2縁部40Cに設けられた第2開口部42Aと、第2開口部42Aを介して通された第2力布35の第2係止部36を保持する第2保持部42Bと、を有する。
こうすることで、1つの力布ブラケット40に対し第1力布30と第2力布35を取り付けることができる。これにより、エアバッグの展開方向をより安定させることができる。
【0082】
[14]上記のシートSにおいて、第1力布30は、インナ側力布であり、第2力布35は、アウタ側力布であり、力布ブラケット40は、第2保持部42Bの下方に設けられたボルト締結部46を有する。
こうすることで、エアバッグの展開方向をより安定させることができる。
また、力布ブラケット40にボルト締結部46がさらに形成されていることにより、外側への引っ張り力に対する力布ブラケットの取り付け剛性を向上できる。
【0083】
[15]上記のシートSにおいて、ボルト締結部46は、上側が閉塞し、下側が開放している。
このようにボルト締結部46の上側が閉塞しているため、ボルト締結部46に取り付けるボルト16の位置決めが容易となる。
【0084】
[16]上記のシートSにおいて、第1貫通孔44と第2貫通孔45とを結ぶ線分Lは、第1保持部41Bと第2保持部42Bとの間に位置する。
こうすることで、第1保持部41Bと第2保持部42Bを、エアバッグモジュール10の締結点を隔てて配置させることができる。これにより、エアバッグ展開時の第1力布30と第2力布35の引っ張り方向を逆として、互いの引っ張る力を相殺可能となる。そのため、エアバッグ展開時に力布ブラケット40に強い力が掛かることを抑制し、エアバッグ展開時に力布ブラケット40が外れることを抑制できる。
【0085】
[17]上記のシートSにおいて、力布ブラケット40は、ボルト締結部46と第2保持部42Bとの間に形成された段差部47を有する。
こうすることで、ボルト締結部46に、第1力布30と第2力布35の引っ張り力が強く掛かることを抑制できる。これにより、エアバッグ展開時に力布ブラケット40に強い力が掛かることを抑制し、それにより力布ブラケット40が外れることを一層抑制できる。
【0086】
また、上記のシートSにおいて、力布ブラケット40は、インフレータ12のボルト13によって、フレーム部材に取り付けられる。そして、力布ブラケット40は、インフレータ12のボルト13とは別のボルト16を用いて、ボルト締結部46においてフレーム部材に取り付けられる。
なお、上記のフレーム部材とは、サイドフレーム20に限らず、シートS内部の金属フレーム、金属ワイヤー、樹脂プレート等の各種部材を含むものである。
【0087】
<その他の実施形態>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
シートSの片側にエアバッグモジュール10を取り付けた例を示したが、シートSの両側にエアバッグモジュール10を取り付けることとしてもよい。
この場合には、車両のドアに近い側がニアサイドエアバッグとなり、車両のドアから遠い側がファーサイドエアバッグとなる。
【0088】
また、力布ブラケット40が取り付けられるフレーム部材は、サイドフレーム20に限定されるものではない。力布ブラケット40は、車両内部に設けられるフレーム部材に対しても取付可能である。
この際、力布ブラケット40が、フレーム部材とエアバッグモジュール10との間に配されることとしてもよい。
【0089】
また、力布ブラケット40とサイドフレーム20との間には、他のフレーム部材が配されることとしてもよい。
また、力布ブラケット40(及び他の変形例についても同様)には、全体にナイロンコーティングが施されていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
S シート
S1 シートバック
S2 シートクッション
S3 ヘッドレスト
1 パッド材
2 表皮材
10 エアバッグモジュール
11 袋体
12 インフレータ
13 ボルト
13A 第1ボルト
13B 第2ボルト
15 ナット
16 ボルト
20 サイドフレーム
21 凸部
21A 第1凸部
21B 第2凸部
22A 第1貫通孔
22B 第2貫通孔
23 第3貫通孔
30 第1力布(インナー力布)
31 第1係止部
31A 第1縫製部
32 破断部側端部
35 第2力布(アウター力布)
36 第2係止部
36A 第2縫製部
37 破断部側端部
40 力布ブラケット
40A 板部
40B 第1縁部
40C 第2縁部
41 第1スリット
41A 第1開口部
41Aa 角部
41B 第1保持部
41Ba 上方端部
41Bb 下方端部
41C 第1屈曲部
42 第2スリット
42A 第2開口部
42Aa 角部
42B 第2保持部
42Ba 上方端部
42Bb 下方端部
42C 第2屈曲部
43 フランジ部
43A 前方フランジ部
43B 後方フランジ部
44 第1貫通孔
45 第2貫通孔
46 ボルト締結部
46A 切欠き部
46X ボルト締結部
46Xa 孔部
46Y ボルト締結部
46Z ボルト締結部
47 段差部
48 第3貫通孔
49 第4貫通孔
50 破断部
51 ビード部
140 力布ブラケット
240 力布ブラケット
340 力布ブラケット
440 力布ブラケット
540 力布ブラケット
640 力布ブラケット
L 線分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13