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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】伝熱装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20220118BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220118BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220118BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20220118BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20220118BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220118BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220118BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20220118BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220118BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/651
H01M50/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017248734
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019114492
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】岸 正幸
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-010648(JP,A)
【文献】特開2019-86183(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033412(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60-10/667
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平管を有する伝熱媒体流通体と、伝熱媒体流通体内に伝熱媒体を供給する入口部材とを備えており、伝熱媒体流通体の扁平管が、厚み方向に対向する1対の平坦壁を有するとともに、扁平管の幅方向に並んで並列状に形成された複数の通路を有しており、扁平管の全通路のうちの少なくとも一部によって、扁平管の幅方向に連続して並んだ複数の通路からなる通路群が設けられ、扁平管のいずれか一方の平坦壁の長手方向の中間部に、前記通路群の全通路を外部に通じさせる流入口が形成され、入口部材が流入口を通して通路群の全通路に伝熱媒体を供給するようになされ
入口部材が、前記通路群の全通路に通じる内部空間を有するヘッダ部と、ヘッダ部に一体に設けられた管部とよりなり、
扁平管の流入口が、扁平管の平坦壁を除去することにより形成されており、入口部材のヘッダ部の内部空間における扁平管の厚み方向から見た輪郭の形状が、前記流入口の外周縁部の形状と合致し、
入口部材のヘッダ部の前記輪郭の範囲内において、流入口に、入口部材から前記通路群の全通路への伝熱媒体の分流を制御する分流制御部が設けられている伝熱装置。
【請求項2】
入口部材の管部が横断面円形であるとともに、分流制御部が円形であり、分流制御部の直径が、入口部材の管部の内径の110%以上である請求項記載の伝熱装置。
【請求項3】
分流制御部の直径が、入口部材の管部の内径の110~120%である請求項記載の伝熱装置。
【請求項4】
分流制御部が、平坦壁の残存部からなる請求項1~3のうちのいずれかに記載の伝熱装置。
【請求項5】
扁平管の流入口が、扁平管の平坦壁のみを除去することにより形成されている請求項1~4のうちのいずれかに記載の伝熱装置。
【請求項6】
扁平管の複数の通路が、仕切壁を介して並列状に形成されており、扁平管の流入口の範囲内において、前記通路群の複数の通路を仕切る仕切壁の少なくとも一部が切除されている請求項1~4のうちのいずれかに記載の伝熱装置。
【請求項7】
伝熱媒体流通体が、一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第1流路、ならびに一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第2流路を有し、両流路の流入部に通じるように伝熱媒体流通体に入口部材が設けられ、両流路の流出部に通じるように伝熱媒体流通体に出口部材が設けられ、両流路のターン部が伝熱媒体流通体の長手方向の両端部に位置しており、
伝熱媒体流通体が、扁平管と、扁平管の両端部に設けられかつ全通路を通じさせる連通部とからなり、伝熱媒体流通体の扁平管の全通路が、連続して並んだ複数の通路からなる2つの通路群に分けられ、前記流入口が一方の通路群の全通路に通じるように形成され、流入口が形成された平坦壁に、他方の通路群の全通路に通じる流出口が形成され、流入口に通じる一方の通路群により第1流路および第2流路の第1直線部が構成され、流出口に通じる他方の通路群により第1流路および第2流路の第2直線部が構成され、一方の連通部により第1流路のターン部が構成されるとともに、他方の連通部により第2流路のターン部が構成され、前記一方の平坦壁の外面に前記入口部材が流入口に通じるように固定され、前記一方の平坦壁の外面に前記出口部材が流出口に通じるように固定されている請求項1~のうちのいずれかに記載の伝熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高温の物体から熱を奪って当該物体を冷却したり、低温の物体に熱を伝えて当該物体を加熱したりする伝熱装置に関する。
【0002】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
たとえばハイブリッド自動車、電気自動車等の電動機駆動用バッテリー装置として、たとえばリチウムイオン二次電池などの各種の二次電池からなる複数個の小型単電池を直列または並列に接続して組電池の形態としたものが用いられている。特に、電気自動車においては航続距離の延長のニーズから組電池の大容量化が求められるので、複数の組電池が直列または並列に接続されるように組み合わされている。
【0004】
ところで、二次電池は、使用温度によって性能や寿命が変化するので、長時間にわたって効率良く使用するためには適正な温度で使用する必要がある。しかしながら、上述した組電池においては、各単電池間に比較的大きな温度差が生じ、その結果単電池が劣化して寿命が短くなるという問題がある。
【0005】
そこで、組電池における各単電池間に生じる温度差をできるだけ小さくすることを目的として、本出願人は、先に、仕切壁を介して並列状に形成されかつ両端が開口した複数の通路を有する扁平板状のアルミニウム押出形材製冷却液流通体と、冷却液流通体における通路の長手方向の一端に、通路の並び方向に並んで設けられたアルミニウム製入口ヘッダおよび出口ヘッダと、冷却液流通体における通路の長手方向の他端に設けられたアルミニウム製中間ヘッダと、入口ヘッダに冷却液を流入させるアルミニウム製入口部材と、出口ヘッダから冷却液を流出させるアルミニウム製出口部材とを備えており、冷却液流通体の平坦な片面が発熱体取付面となり、全通路のうち冷却液流通体の片側に連続して並んで形成された複数の通路が流入側通路となるとともに、冷却液流通体の他側に連続して並んで形成された複数の残りの通路が流出側通路となり、入口ヘッダが流入側通路に通じるとともに、出口ヘッダが流出側通路に通じ、中間ヘッダが流入側通路および流出側通路に通じて両者を連通させており、入口ヘッダ、出口ヘッダおよび中間ヘッダが冷却液流通体にろう付され、入口部材が入口ヘッダにろう付され、出口部材が出口ヘッダにろう付されている液冷式冷却装置を提案した(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1記載の液冷式冷却装置の場合、冷却液流通体における通路の長手方向の一端に入口ヘッダおよび出口ヘッダが設けられているので、入口部材に冷却液を流入させる流入パイプ、および出口部材から冷却液を流出させる流出パイプを、組電池における単電池の並び方向の中間部に配置する必要がある場合、配管接続が複雑になる。したがって、種々の配管レイアウトに柔軟に対応することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-161158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記実情に鑑み、種々の配管レイアウトに柔軟に対応しうる伝熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)扁平管を有する伝熱媒体流通体と、伝熱媒体流通体内に伝熱媒体を供給する入口部材とを備えており、伝熱媒体流通体の扁平管が、厚み方向に対向する1対の平坦壁を有するとともに、扁平管の幅方向に並んで並列状に形成された複数の通路を有しており、扁平管の全通路のうちの少なくとも一部によって、扁平管の幅方向に連続して並んだ複数の通路からなる通路群が設けられ、扁平管のいずれか一方の平坦壁の長手方向の中間部に、前記通路群の全通路を外部に通じさせる流入口が形成され、入口部材が流入口を通して通路群の全通路に伝熱媒体を供給するようになされている伝熱装置。
【0011】
2)入口部材が、前記通路群の全通路に通じる内部空間を有するヘッダ部と、ヘッダ部に一体に設けられた管部とよりなる上記1)記載の伝熱装置。
【0012】
3)前記流入口が、扁平管の平坦壁を除去することにより形成されており、入口部材のヘッダ部の内部空間における扁平管の厚み方向から見た輪郭の形状が、前記流入口の外周縁部の形状と合致している上記2)記載の伝熱装置。
【0013】
4)入口部材のヘッダ部の前記輪郭の範囲内において、流入口に、入口部材から前記通路群の全通路への伝熱媒体の分流を制御する分流制御部が設けられている上記3)記載の伝熱装置。
【0014】
5)入口部材の管部が横断面円形であるとともに、分流制御部が円形であり、分流制御部の直径が、入口部材の管部の内径の110%以上である上記4)記載の伝熱装置。
【0015】
6)分流制御部の直径が、入口部材の管部の内径の110~120%である上記4)記載の伝熱装置。
【0016】
7)分流制御部が、平坦壁の残存部からなる上記3)~6)のうちのいずれかに記載の伝熱装置。
【0017】
8)扁平管の流入口が、扁平管の平坦壁のみを除去することにより形成されている上記3)~7)のうちのいずれかに記載の伝熱装置。
【0018】
9)扁平管の複数の通路が、仕切壁を介して並列状に形成されており、扁平管の流入口の範囲内において、前記通路群の複数の通路を仕切る仕切壁の少なくとも一部が切除されている上記3)~7)のうちのいずれかに記載の伝熱装置。
【0019】
10)伝熱媒体流通体が、一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第1流路、ならびに一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第2流路を有し、両流路の流入部に通じるように伝熱媒体流通体に入口部材が設けられ、両流路の流出部に通じるように伝熱媒体流通体に出口部材が設けられ、両流路のターン部が伝熱媒体流通体の長手方向の両端部に位置しており、
伝熱媒体流通体が、扁平管と、扁平管の両端部に設けられかつ全通路を通じさせる連通部とからなり、伝熱媒体流通体の扁平管の全通路が、連続して並んだ複数の通路からなる2つの通路群に分けられ、前記流入口が一方の通路群の全通路に通じるように形成され、流入口が形成された平坦壁に、他方の通路群の全通路に通じる流出口が形成され、流入口に通じる一方の通路群により第1流路および第2流路の第1直線部が構成され、流出口に通じる他方の通路群により第1流路および第2流路の第2直線部が構成され、一方の連通部により第1流路のターン部が構成されるとともに、他方の連通部により第2流路のターン部が構成され、前記一方の平坦壁の外面に前記入口部材が流入口に通じるように固定され、前記一方の平坦壁の外面に前記出口部材が流出口に通じるように固定されている上記1)~9)のうちのいずれかに記載の伝熱装置。
【発明の効果】
【0020】
上記1)~10)の伝熱装置によれば、扁平管を有する伝熱媒体流通体と、伝熱媒体流通体内に伝熱媒体を供給する入口部材とを備えており、伝熱媒体流通体の扁平管が、厚み方向に対向する1対の平坦壁を有するとともに、仕切壁を介して並列状に形成された複数の通路を有しており、扁平管の全通路のうちの少なくとも一部によって、扁平管の幅方向に連続して並んだ複数の通路からなる通路群が設けられ、扁平管のいずれか一方の平坦壁の長手方向の中間部に、前記通路群の全通路を外部に通じさせる流入口が形成され、入口部材が流入口を通して通路群の全通路に伝熱媒体を供給するようになされているので、入口部材を、伝熱媒体流通体の長手方向の両端部間の任意の位置に配置することができる。したがって、入口部材に伝熱媒体を流入させる流入パイプ、冷熱または温熱を与えるべき物体、たとえば組電池における単電池の並び方向の中間部に配置する必要がある場合であっても配管接続が簡単になり、種々の配管レイアウトに柔軟に対応することが可能になる。
【0021】
上記4)の伝熱装置によれば、入口部材から前記通路群の全通路への伝熱媒体の分流を均一化することが可能になる。
【0022】
上記5)および6)の伝熱装置によれば、入口部材から前記通路群の全通路への伝熱媒体の分流を効果的に均一化することが可能になる。
【0023】
上記7)の伝熱装置によれば、比較的簡単に分流制御部を設けることができる。
【0024】
上記8)の伝熱装置によれば、扁平管に流入口を形成する作業が簡単になるとともの作業時間が短くなり、しかも後工程での切り粉の除去を容易に行うことができる。
【0025】
上記9)の伝熱装置によれば、入口部材から前記通路群の全通路への伝熱媒体の分流を効果的に均一化することが可能になる。
【0026】
上記10)の伝熱装置によれば、入口部材および出口部材を、伝熱媒体流通体の長手方向の両端部間の任意の位置に配置することができる。したがって、入口部材に伝熱媒体を流入させる流入パイプ、および出口部材から伝熱媒体を流出させる流出パイプを、冷熱または温熱を与えるべき物体、たとえば組電池における単電池の並び方向の中間部に配置する必要がある場合であっても配管接続が簡単になり、種々の配管レイアウトに柔軟に対応することが可能になる。
【0027】
また、伝熱媒体流通体の扁平管の少なくともいずれか一方の平坦壁の外面に物体を熱的に接触させておくと、当該物体と少なくともいずれか一方の流路内を流れる伝熱媒体との間で熱が伝達される。したがって、第1流路および第2流路に低温の伝熱媒体を流すことによって、複数の高温物体から熱を奪って当該物体を同時に冷却することが可能となり、これとは逆に高温の伝熱媒体を流すことによって複数の低温物体に熱を与えて当該物体を同時に加熱することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明による伝熱装置の全体構成を示す斜視図である。
図2図1の伝熱装置の伝熱媒体流通体を示す各通路群の隣接する通路間の仕切壁を省略した水平断面図である。
図3図1のA-A線拡大断面図である。
図4図3のB-B線断面図である。
図5図1の伝熱装置の伝熱媒体流通体の変形例を示す図3相当の図である。
図6図5のC-C線断面図である。
図7図1の伝熱装置の伝熱媒体流通体の他の変形例を示す図3相当の図である。
図8図1の伝熱装置の伝熱媒体流通体のさらに他の変形例を示す図3相当の図である。
図9図8のD-D線断面図である。
図10】この発明の伝熱装置を用いて行った実験例の一部の結果を示すグラフである。
図11】この発明の伝熱装置を用いて行った実験例の残りの一部の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による伝熱装置を、複数の直方体状の角形単電池からなる組電池に冷熱を伝えたり、温熱を伝えたりするために用いられるものである。
【0030】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0031】
また、以下の説明において、図3の上下を上下というものとする。
【0032】
さらに、全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付す。
【0033】
図1はこの発明による伝熱装置の全体構成を示し、図2は伝熱媒体流通体の構成を模式的に示す。また、図3および図4図1の伝熱装置の要部の構成を示す。
【0034】
図1図3において、伝熱装置(1)は、アルミニウム製伝熱媒体流通体(2)と、伝熱媒体流通体(2)に設けられかつ伝熱媒体を伝熱媒体流通体(2)に供給するアルミニウム製入口部材(3)と、伝熱媒体流通体(2)に設けられかつ伝熱媒体を伝熱媒体流通体(2)から排出するアルミニウム製出口部材(4)とを備えており、伝熱媒体流通体(2)が、一端が流入部(7a)となった第1直線部(7)、流入部(7a)と同一端が流出部(8a)となった第2直線部(8)および両直線部(7)(8)の他端どうしを通じさせるターン部(9)を有する略U字状の第1流路(5)と、一端が流入部(11a)となった第1直線部(11)、流入部(11a)と同一端が流出部(12a)となった第2直線部(12)および両直線部(11)(12)の他端どうしを通じさせるターン部(13)を有する略U字状の第2流路(10)を有する。
【0035】
伝熱媒体流通体(2)は、仕切壁(14)(15)を介して並列状に形成されかつ両端が開口した複数の通路(16)を有するアルミニウム押出形材製扁平管(17)と、扁平管(17)の両端部に設けられて全通路(16)を通じさせる連通部(18)とよりなる。なお、図2においては仕切壁(14)(15)および通路(16)の図示は省略されている。
【0036】
伝熱媒体流通体(2)を形成する扁平管(17)の全通路(16)は、連続して並んだ複数の通路(16)からなる2つの通路群(19)(20)に分けられており、両通路群(19)(20)どうしが伝熱媒体流通体(2)の長手方向両端部において連通部(18)を介して通じさせられている。各通路群(19)(20)は、扁平管(17)の幅方向の略半分の部分に設けられており、両通路群(19)(20)間の仕切壁(15)の肉厚は、各通路群(19)(20)の隣り合う2つの通路(16)間の仕切壁(14)の肉厚よりも厚くなっている。
【0037】
扁平管(17)の厚み方向に対向する2つの平坦壁(21)(22)のうちいずれか一方の平坦壁、ここでは上側の平坦壁(21)における長手方向の中間部に、一方の通路群(19)の全通路(16)に通じる流入口(23)と、他方の通路群(20)の全通路(16)に通じる流出口(24)とが形成されている。流入口(23)の外周縁部の形状は、扁平管(17)の幅方向に長い長方形状である。
【0038】
伝熱媒体流通体(2)の連通部(18)は、扁平管(17)の端部に内部が両通路群(19)(20)の全通路(16)に通じる連通用空間(25a)となった中空状ヘッダ部材(25)を接合することによって形成されている。
【0039】
そして、扁平管(17)の流入口(23)に通じる一方の通路群(19)により第1流路(5)および第2流路(10)の第1直線部(7)(11)が構成されるとともに、両第1直線部(7)(11)の流入口(23)に臨んだ部分が流入部(7a)(11a)となっている。扁平管(17)の流出口(24)に通じる他方の通路群(20)により第1流路(5)および第2流路(10)の第2直線部(8)(12)が構成されるとともに、両第2直線部(8)(12)の流出口(24)に臨んだ部分が流出部(8a)(12a)となっている。また、両通路群(19)(20)どうしを通じさせる一方の連通部(18)により第1流路(5)のターン部(9)が構成されるとともに、同他方の連通部(18)により第2流路(10)のターン部(13)が構成されている。
【0040】
入口部材(3)は、上側平坦壁(21)の外面に流入口(23)に通じるように、たとえばろう材による接合により固定され、出口部材(4)は上側平坦壁(21)外面に流出口(24)に通じるように、たとえばろう材による接合により固定されている。入口部材(3)は、上方(扁平管(17)の厚み方向の外側)から見て扁平管(17)の幅方向に長い長方形状でありかつ流入口(23)を介して一方の通路群(19)の全通路(16)に通じるヘッダ部(3a)と、ヘッダ部(3a)に一体に設けられた横断面円形の管部(3b)とよりなる。出口部材(4)は、上方から見て扁平管(17)の幅方向に長い長方形状でありかつ流出口(24)を介して他方の通路群(20)の全通路(16)に通じるヘッダ部(4a)と、ヘッダ部(4a)に一体に設けられた管部(4b)とよりなる。
【0041】
図3および図4に示すように、一方の通路群(19)の全通路(16)に通じる流入口(23)の外周縁部(23a)の形状は、扁平管(17)の幅方向に長い長方形状である。入口部材(3)のヘッダ部(3a)の内部空間における上方(扁平管(17)の厚み方向の外側)から見た輪郭(30)の形状は、扁平管(17)の幅方向に長い長方形状であり、流入口(23)の外周縁(23a)の形状と合致している。また、入口部材(3)の管部(3b)は、ヘッダ部(3a)の内部空間の中央、すなわち輪郭(30)で囲まれた部分の中央に開口している。そして、入口部材(3)のヘッダ部(3a)の内部空間の輪郭(30)の範囲内において、流入口(23)に、通路群(19)の全通路(16)への伝熱媒体の分流を制御する分流制御部(28)が設けられている。分流制御部材(28)は流入口(23)の中央、すなわち入口部材(3)の管部(3b)の真下に設けられている。流入口(23)は、上側平坦壁(21)のみを除去することにより形成されており、分流制御部(28)は上側平坦壁(21)の残存部からなる。分流制御部(28)の上方から見た形状は円形であり、その直径は入口部材(3)の管部(3b)の内径の110%以上であることが好ましく、特に110~120%であることが好ましい。また、分流制御部(28)の中心は入口部材(3)の管部(3b)の中心と一致している。
【0042】
なお、出口部材(4)の構成は入口部材(3)と同様であり、流出口(24)の形状は分流制御部(28)が設けられていないことを除いては、流入口(23)と同様である。
【0043】
なお、図示は省略したが、複数の伝熱媒体流通体(2)が、扁平管(17)の幅方向に間隔をおいて配置され、すべての入口部材(3)が入口部材(3)に伝熱媒体を流入させる流入パイプに接続され、すべての出口部材(4)が出口部材から伝熱媒体を流出させる流出パイプに接続されていてもよい。
【0044】
また、図示は省略したが、連通部(18)は、扁平管(17)の全仕切壁(14)(15)における扁平管(17)の長手方向両端寄りの一定長さ部分を切除するとともに、扁平管(17)の両端開口を平板状のアルミニウム製閉鎖部材により閉鎖することによって形成されていてもよい。
【0045】
上述した伝熱装置(1)は、たとえば複数の角形リチウムイオン二次電池の扁平状角形単電池(26)からなる組電池(27)を、次のようにして複数同時に冷却するのに用いられる(図1参照)。
【0046】
すなわち、組電池(27)は、伝熱装置(1)の伝熱媒体流通体(2)の扁平管(17)の上面における入口部材(3)および出口部材(4)よりも両連通部(18)側の部分に、それぞれ第1流路(5)の両直線部(7)(8)および第2流路(10)の両直線部(11)(12)に跨るように配置される。なお、図示は省略したが組電池(27)と扁平管(17)との間には電気絶縁部材が介在させられる。
【0047】
この状態で、入口部材(3)に伝熱媒体である冷却液を供給すると、冷却液が分流制御部(28)に当たって広がりつつ通路群(19)の全通路(16)内に入る。ついで、冷却液は,伝熱媒体流通体(2)の両流路(5)(10)内を、第1直線部(7)(11)、ターン部(9)(13)および第2直線部(8)(12)の順に流れた後、出口部材(4)を通って排出され、冷却液が伝熱媒体流通体(2)内を流れる間に組電池(27)のすべての単電池(26)が冷却される。したがって、組電池(27)のすべての単電池(26)間に大きな温度差が生じることが抑制される。
【0048】
寒冷地において、使用開始前に単電池(26)を適正温度まで加熱する必要がある場合には、入口部材(3)に温熱を供給しうる伝熱媒体である高温の加熱液を供給する。すると、加熱液が分流制御部(28)に当たって広がりつつ通路群(19)の全通路(16)内に入り、伝熱媒体流通体(2)の両流路(5)(10)内を、第1直線部(7)(11)、ターン部(9)(13)および第2直線部(8)(12)の順に流れた後、出口部材(4)を通って排出され、加熱液が伝熱媒体流通体(2)内を流れる間に組電池(27)のすべての単電池(26)が適正温度に加熱される。
【0049】
図5および図6は伝熱媒体流通体の変形例を示す。
【0050】
図5および図6に示す伝熱媒体流通体(40)の場合、流入口(23)には分流制御部(28)は設けられていない。
【0051】
その他の構成は図3および図4に示す伝熱媒体流通体(2)と同様である。
【0052】
図7は伝熱媒体流通体の他の変形例を示す。
【0053】
図7に示す伝熱媒体流通体(45)の場合、流入口(23)の範囲内において、仕切壁(14)の少なくとも一部、ここでは全部が除去されている。
【0054】
その他の構成は図5および図6に示す伝熱媒体流通体(2)と同様である。
【0055】
図8および図9は伝熱媒体流通体の変形例を示す。
【0056】
図8および図9に示す伝熱媒体流通体(50)の場合、流入口(23)に設けられた分流制御部(51)は、扁平管(17)の幅方向に長い長円形である。
【0057】
その他の構成は図3および図4に示す伝熱媒体流通体(2)と同様である。
【0058】
以下、上述した伝熱媒体流通体を備えた伝熱装置を用いて行った実験例について説明する。
【0059】
まず、次の8種類の伝熱媒体流通体を用意した。
【0060】
タイプ1:図3および図4に示す構成で分流制御部(28)の直径が入口部材(3)の管部(3b)の内径の80%となっているもの。
【0061】
タイプ2:図3および図4に示す構成で分流制御部(28)の直径が入口部材(3)の管部(3b)の内径の100%となっているもの。
【0062】
タイプ3:図3および図4に示す構成で分流制御部(28)の直径が入口部材(3)の管部(3b)の内径の110%となっているもの。
【0063】
タイプ4:図3および図4に示す構成で分流制御部(28)の直径が入口部材(3)の管部(3b)の内径の120%となっているもの。
【0064】
タイプ5:図5および図6に示す構成のもの。
【0065】
タイプ6:図7に示す構成のもの。
【0066】
タイプ7:図8および図9に示す構成で分流制御部(51)の幅が入口部材(3)の管部(3b)の内径の80%であり、長さが入口部材(3)の内径の160%となっているもの。
【0067】
タイプ8:図8および図9に示す構成で分流制御部(51)の幅が入口部材(3)の管部(3b)の内径の100%であり、長さが入口部材(3)の内径の200%となっているもの。
【0068】
そして、入口部材(3)から流入口(23)に冷却液を供給し、図3図5図7および図8の最も左側の通路(16)(通路1)、同じく左から2番目の通路(16)(通路2)、同じく左から3番目の通路(16)(通路3)、同じく左から4番目の通路(16)(通路4)、同じく左から5番目の通路(16)(通路5)における冷却液の流量を調べた。
【0069】
その結果を図10および図11に示す。図10および図11において、通路1~5における流量の差が小さいほど性能が優れていることになる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明による伝熱装置は、たとえば複数のLiイオン二次電池の単電池からなる組電池を備えた電気自動車において、単電池の冷却や適正温度への加熱に用いられる。
【符号の説明】
【0071】
(1):伝熱装置
(2)(40)(45)(50):伝熱媒体流通体
(3):入口部材
(3a):ヘッダ部
(3b):管部
(4):出口部材
(5):第1流路
(7)(11):第1直線部
(7a)(11a):流入部
(8)(12):第2直線部
(8a)(12a):流出部
(9)(13):ターン部
(10):第2流路
(14)(15):仕切壁
(16):通路
(17):扁平管
(18):連通部
(19)(20):通路群
(21)(22):平坦壁
(23):流入口
(23a):外周縁部
(24):流出口
(28)(51):分流制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11