(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】油性固形化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A45D 40/16 20060101AFI20220118BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220118BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20220118BHJP
B65B 3/04 20060101ALI20220118BHJP
A61Q 1/06 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A45D40/16 B
A61Q1/00
A61K8/92
B65B3/04
A61Q1/06
(21)【出願番号】P 2016232470
(22)【出願日】2016-11-30
【審査請求日】2019-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167900
【氏名又は名称】福井 仁
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 廉雄
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳世子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 誠士
(72)【発明者】
【氏名】吉田 三紀
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06695510(US,B1)
【文献】特開昭63-166816(JP,A)
【文献】特開2006-069945(JP,A)
【文献】実開昭62-010818(JP,U)
【文献】国際公開第2016/153174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/16
A61Q 1/00
A61K 8/92
B65B 3/04
A61Q 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性成分を含有する複数色の化粧料を容器に収容した油性固形化粧料の製造方法であって、
前記容器の開口を介して仕切り部材を前記容器の収容部に挿入し、前記収容部を仕切ることによって、前記収容部の一部の領域を区分けする仕切りステップと、
前記仕切りステップにて区分けされた前記収容部の一部の領域に流動性を有する第1の化粧料を充填する第1の充填ステップと、
前記第1の充填ステップにて充填された前記第1の化粧料を冷却して固化させる第1の冷却ステップと、
前記第1の化粧料の表面を再加熱することによって、前記第1の化粧料の表面に生じた窪みを均す第1の再加熱ステップと、
前記仕切りステップにて前記収容部に挿入した前記仕切り部材を抜去する抜去ステップと、
前記抜去ステップにて前記仕切り部材を抜去することによって、前記収容部に形成された領域に前記第1の化粧料と異なる色の流動性を有する第2の化粧料を充填する第2の充填ステップと、
前記第2の充填ステップにて充填された前記第2の化粧料を冷却して固化させる第2の冷却ステップと
、
前記第2の化粧料の表面を再加熱することによって、前記第2の化粧料の表面に生じた窪みを均す第2の再加熱ステップとを備え、
前記容器は、有底筒状に形成された繰り出し容器であることを特徴とする油性固形化粧料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された油性固形化粧料の製造方法において、
前記第2の再加熱ステップは、前記第1の化粧料の表面を断熱部材にて覆い隠して前記第2の化粧料の表面を再加熱することを特徴とする油性固形化粧料の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載された油性固形化粧料の製造方法において、
前記第2の再加熱ステップは、前記第1の化粧料および前記第2の化粧料の境界を跨ぐように前記第1の化粧料の表面を前記断熱部材にて覆い隠して前記第2の化粧料の表面を再加熱することを特徴とする油性固形化粧料の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された油性固形化粧料の製造方法において、
前記抜去ステップは、前記第1の冷却ステップにて固化した前記第1の化粧料の移動を規制しながら前記仕切り部材を抜去することを特徴とする油性固形化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性成分を含有する複数色の化粧料を容器に収容した油性固形化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油性成分を含有する複数色の化粧料を容器に収容した油性固形化粧料が知られている。
例えば、特許文献1に記載された固形口紅(油性固形化粧料)の製造方法は、口紅の形状と同一の形状の収容部を有する原型を分割して複数の原型片とし、板材を介して対向するように各原型片を合わせる。そして、板材にて仕切られた一方の領域に口紅原液(化粧料)を充填し、これを凝固させる。次に、板材を抜き取って各原型片を合わせ、先に充填した口紅原液と異なる色の口紅原液を他方の領域に充填し、これを凝固させることによって、固形口紅を得ることができる。その後、この固形口紅を容器に収容することによって、固形口紅を製造している。
【0003】
このような製造方法によれば、複数色の化粧料を容器に収容した油性固形化粧料を製造することができる。しかしながら、特許文献1に記載された発明では、原型に充填された複数色の化粧料を容器に移し替えなければならないので、製造工程は複雑になってしまうという問題がある。
これに対して、例えば、特許文献2に記載された油性固形化粧料の製造方法は、繰出容器の収容部に充填装置のノズルを挿入し、流動状化粧液(化粧料)を充填することによって、油性固形化粧料を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭36-17099号公報
【文献】特開昭49-33780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された製造方法では、製造工程は簡単になるものの、複数色の化粧料を容器に収容した油性固形化粧料を製造することができないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、複数色の化粧料を容器に収容した油性固形化粧料を容易に製造することができる油性固形化粧料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の油性固形化粧料の製造方法は、油性成分を含有する複数色の化粧料を容器に収容した油性固形化粧料の製造方法であって、容器の開口を介して仕切り部材を容器の収容部に挿入し、収容部を仕切ることによって、収容部の一部の領域を区分けする仕切りステップと、仕切りステップにて区分けされた収容部の一部の領域に流動性を有する第1の化粧料を充填する第1の充填ステップと、第1の充填ステップにて充填された第1の化粧料を冷却して固化させる第1の冷却ステップと、第1の化粧料の表面を再加熱することによって、第1の化粧料の表面に生じた窪みを均す第1の再加熱ステップと、仕切りステップにて収容部に挿入した仕切り部材を抜去する抜去ステップと、抜去ステップにて仕切り部材を抜去することによって、収容部に形成された領域に第1の化粧料と異なる色の流動性を有する第2の化粧料を充填する第2の充填ステップと、第2の充填ステップにて充填された第2の化粧料を冷却して固化させる第2の冷却ステップと、第2の化粧料の表面を再加熱することによって、第2の化粧料の表面に生じた窪みを均す第2の再加熱ステップとを備え、容器は、有底筒状に形成された繰り出し容器であることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、油性固形化粧料の製造方法は、仕切りステップにて区分けされた収容部の一部の領域に流動性を有する第1の化粧料を充填する第1の充填ステップと、抜去ステップにて仕切り部材を抜去することによって、収容部に形成された領域に第1の化粧料と異なる色の流動性を有する第2の化粧料を充填する第2の充填ステップとを備えているので、複数色の化粧料を容器に移し替えることなく、容器に直接的に充填することができる。
【0009】
また、油性固形化粧料の製造方法は、抜去ステップおよび第2の充填ステップを実行する前に、第1の充填ステップにて充填された第1の化粧料を冷却して固化させる第1の冷却ステップを実行するので、抜去ステップにて仕切り部材を抜去することによって、第2の化粧料を充填する領域を確実に収容部に形成することができる。したがって、本発明によれば、油性固形化粧料の製造方法は、複数色の化粧料を容器に収容した油性固形化粧料を容易に製造することができる。
【0011】
ここで、第1の化粧料および第2の化粧料は、第1の冷却ステップおよび第2の冷却ステップを実行したときに、収縮してしまうので、第1の化粧料および第2の化粧料を容器に直接的に充填すると、第1の化粧料および第2の化粧料の表面は、窪みを生じてしまい、複数色の化粧料の外観を損なってしまうという問題がある。
本発明によれば、油性固形化粧料の製造方法は、第1の化粧料の表面を再加熱する第1の再加熱ステップを備えているので、第1の化粧料の表面を均すことができ、第2の化粧料の表面を再加熱する第2の再加熱ステップを備えているので、第2の化粧料の表面を均すことができる。したがって、油性固形化粧料の製造方法は、複数色の化粧料の外観を良好にすることができる。
【0012】
本発明では、第2の再加熱ステップは、第1の化粧料の表面を断熱部材にて覆い隠して第2の化粧料の表面を再加熱することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、第2の再加熱ステップは、第1の化粧料の表面を断熱部材にて覆い隠しているので、第2の再加熱ステップにて第2の化粧料の表面を再加熱する熱は、第1の化粧料の表面を再加熱することはない。したがって、油性固形化粧料の製造方法は、複数色の化粧料の外観を更に良好にすることができる。
【0014】
本発明では、第2の再加熱ステップは、第1の化粧料および第2の化粧料の境界を跨ぐように第1の化粧料の表面を断熱部材にて覆い隠して第2の化粧料の表面を再加熱することが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、第2の再加熱ステップは、第1の化粧料および第2の化粧料の境界を跨ぐように第1の化粧料の表面を断熱部材にて覆い隠しているので、第2の再加熱ステップにて第2の化粧料の表面を再加熱する熱は、第1の化粧料および第2の化粧料の境界を再加熱することはなく、境界を鮮明に維持することができる。したがって、油性固形化粧料の製造方法は、複数色の化粧料の外観を更に良好にすることができる。
【0016】
本発明では、抜去ステップは、第1の冷却ステップにて固化した第1の化粧料の移動を規制しながら仕切り部材を抜去することが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、油性固形化粧料の製造方法は、抜去ステップにて仕切り部材を抜去する際に第1の化粧料の移動を規制することができるので、製造不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る油性固形化粧料を示す斜視図
【
図3】乳白色の化粧料を再加熱している状態、および仕切り部材を抜去している状態を示す図
【
図6】繰り出し容器に2つの仕切り部材を挿入した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る油性固形化粧料を示す斜視図である。
油性固形化粧料1は、
図1に示すように、有底筒状に形成された繰り出し容器2に収容されている。
繰り出し容器2は、油性固形化粧料1を収容する収容部21Aを有し、楕円筒状に形成された本体部21と、本体部21の内部に収納されるとともに、油性固形化粧料1を載置する載置部22(
図2参照)と、本体部21の中心軸回りに回動自在に本体部21の底面に取り付けられた回動部(図示略)と、本体部21の収容部21Aを閉塞すべく本体部21の開口21Bに取り付けるキャップ23とを備えている。この繰り出し容器2は、回動部を回動させることによって、本体部21の中心軸方向に沿って載置部22を昇降させることができるようになっている。
油性固形化粧料1の使用者は、順方向に回動部を回動させることによって、本体部21から露出させて油性固形化粧料1を使用することができ(
図1参照)、逆方向に回動部を回動させることによって、本体部21に油性固形化粧料1を収納することができる。
【0020】
ここで、油性固形化粧料1は、油性成分を含有する化粧料である。具体的には、油性固形化粧料1は、キャンデリラロウ等の固体脂や、炭化水素などの液状油などに対して必要に応じて顔料などを配合したものである。この油性固形化粧料1は、皮膚に対する親和性が良く、例えば、グロス、口紅、アイシャドウ、アイライナー、および油性ファンデーション等のメークアップ化粧料に用いられている。また、その剤形は、固形、液状、ペースト状、および乳液状などの種々のものがある。本実施形態では、油性固形化粧料1は、常温では形状を保持できる程度の固形性を保っているが、70℃以上(より好ましくは75℃以上)に加熱することによって溶融して流動性を生じるものを採用している。
【0021】
この油性固形化粧料1は、一端側(図中右上側)に配置された乳白色の化粧料11(第1の化粧料)と、乳白色の化粧料11と異なる色を有し、乳白色の化粧料11に連続して他端側(図中左下側)に配置された茶色の化粧料12(第2の化粧料)とを備え、全体としてスティック状に形成されている。換言すれば、油性固形化粧料1は、油性成分を含有する複数色の化粧料(乳白色の化粧料11および茶色の化粧料12)を一端側から他端側にかけて連続して配置している。
【0022】
ここで、異なる色の化粧料とは、人間の視覚に基づいて、両者の違いを区別できる化粧料を言うものとし、明度、彩度、および色相の異なる化粧料はもとより、パール等を加えたものと、そうでないものといったように同一色であっても光沢感の異なる化粧料などを含むものとする。
【0023】
以下、油性固形化粧料1の製造方法を説明する。なお、この油性固形化粧料1の製造方法は、全ての工程を製造装置にて実施してもよく、各工程に作業者の手作業を介在させて実施してもよい。
【0024】
図2は、乳白色の化粧料を充填している状態を示す図である。
油性固形化粧料1を製造するには、まず、
図2(A)に示すように、繰り出し容器2の開口21Bを介して仕切り部材3を繰り出し容器2の収容部21Aに挿入し、収容部21Aを仕切ることによって、収容部21Aの一部の領域21A1を区分けする(仕切りステップ)。
仕切り部材3は、茶色の化粧料12と同一の形状を有する基部31と、繰り出し容器2の開口21Bに当接すべく繰り出し容器2の外側に張り出したフランジ部32とを備えている。この仕切り部材3は、シリコンゴム製の部材である。
【0025】
したがって、仕切りステップは、茶色の化粧料12と同一の形状を有する領域と、それ以外の一部の領域21A1(乳白色の化粧料11と同一の形状を有する領域)とに収容部21Aを区分けしている。
なお、本実施形態では、仕切り部材3は、シリコンゴム製の部材であったが、例えば、ステンレスや、アルミなどの金属の部材であってもよく、合成樹脂などの部材であってもよく、これら以外の材質の部材であってもよい。要するに、仕切り部材は、容器の収容部に挿入し、収容部を仕切ることができればよく、化粧料の処方などに応じて適宜選択すればよい。
【0026】
仕切りステップを実行した後、油性成分を含有する乳白色の化粧料11を加熱することによって溶融して流動性を生じさせた状態とし、
図2(B)に示すように、仕切りステップにて区分けされた収容部21Aの一部の領域21A1にノズルN1を介して乳白色の化粧料11を充填する(第1の充填ステップ)。
第1の充填ステップを実行した後、
図2(C)に示すように、第1の充填ステップにて充填された乳白色の化粧料11を冷却して固化させる(第1の冷却ステップ)。ここで、乳白色の化粧料11は、第1の冷却ステップを実行したときに、収縮してしまうので、乳白色の化粧料11の表面は、窪みを生じてしまうことになる。
【0027】
図3は、乳白色の化粧料を再加熱している状態、および仕切り部材を抜去している状態を示す図である。
第1の冷却ステップを実行した後、
図3(A)に示すように、乳白色の化粧料11の表面を近傍に設置されたヒーターHにて再加熱する(第1の再加熱ステップ)。これによって、乳白色の化粧料11の表面に生じた窪みを均すことができる。
【0028】
第1の再加熱ステップを実行した後、ヒーターHを除去し、
図3(B)の矢印に示すように、仕切りステップにて収容部21Aに挿入した仕切り部材3を抜去する(抜去ステップ)。この抜去ステップは、冷却ステップにて固化した乳白色の化粧料11の移動を板状の押さえ部材4にて規制しながら仕切り部材3を抜去する。この押さえ部材4は、乳白色の化粧料11の表面への接触を抑制すべく、乳白色の化粧料11に対して所定の空間(例えば、1mm未満の空間)を隔てて配設されている。
そして、抜去ステップにて仕切り部材3を抜去することによって、
図3(C)に示すように、茶色の化粧料12と同一の形状を有する領域21A2を収容部21Aに形成することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、抜去ステップは、冷却ステップにて固化した乳白色の化粧料11の移動を板状の押さえ部材4にて規制しながら仕切り部材3を抜去していたが、乳白色の化粧料11の移動を規制することなく仕切り部材3を抜去してもよい。要するに、抜去ステップは、仕切りステップにて収容部に挿入した仕切り部材を抜去すればよい。
【0030】
図4は、茶色の化粧料を充填している状態を示す図である。
抜去ステップを実行した後、油性成分を含有する茶色の化粧料12を加熱することによって溶融して流動性を生じさせた状態とし、
図4(A)に示すように、抜去ステップにて仕切り部材3を抜去することによって、収容部21Aに形成された領域21A2にノズルN2を介して茶色の化粧料12を充填する(第2の充填ステップ)。
第2の充填ステップを実行した後、
図4(B)に示すように、第2の充填ステップにて充填された茶色の化粧料12を冷却して固化させる(第2の冷却ステップ)。ここで、茶色の化粧料12は、第2の冷却ステップを実行したときに、収縮してしまうので、茶色の化粧料12の表面は、窪みを生じてしまうことになる。
【0031】
第2の冷却ステップを実行した後、
図4(C)に示すように、乳白色の化粧料11の表面を断熱部材5にて覆い隠す。具体的には、乳白色の化粧料11および茶色の化粧料12の境界を跨ぐように乳白色の化粧料11の表面を断熱部材5にて覆い隠す。この断熱部材5は、乳白色の化粧料11および茶色の化粧料12の表面への接触を抑制すべく、乳白色の化粧料11および茶色の化粧料12に対して所定の空間(例えば、数mm程度の空間)を隔てて配設されている。
なお、本実施形態では、断熱部材5は、乳白色の化粧料11および茶色の化粧料12の境界を跨ぐように乳白色の化粧料11の表面を覆い隠しているが、乳白色の化粧料11のみを覆い隠してもよい。
【0032】
図5は、茶色の化粧料を再加熱している状態を示す図である。
乳白色の化粧料11の表面を断熱部材5にて覆い隠した後、
図5(A)に示すように、茶色の化粧料12の表面を近傍に設置されたヒーターHにて再加熱する(第2の再加熱ステップ)。これによって、茶色の化粧料12の表面に生じた窪みを均すことができる。
【0033】
このように、第2の再加熱ステップは、乳白色の化粧料11の表面を断熱部材5にて覆い隠して茶色の化粧料12の表面を再加熱している。
なお、本実施形態では、第2の再加熱ステップは、乳白色の化粧料11の表面を断熱部材5にて覆い隠して茶色の化粧料12の表面を再加熱しているが、乳白色の化粧料11の表面を断熱部材5にて覆い隠すことなく茶色の化粧料12の表面を再加熱してもよい。この場合には、乳白色の化粧料11の表面を再加熱することなく茶色の化粧料12の表面のみを再加熱するように、例えば、ヒーターHの位置などを調整することが好ましい。
【0034】
第2の再加熱ステップを実行した後、断熱部材5を乳白色の化粧料11の表面から取り外すことによって、
図5(B)に示すように、油性固形化粧料1を製造することができる。
【0035】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)油性固形化粧料1の製造方法は、仕切りステップにて区分けされた収容部21Aの一部の領域21A1に流動性を有する乳白色の化粧料11を充填する第1の充填ステップと、抜去ステップにて仕切り部材3を抜去することによって、収容部21Aに形成された領域21A2に乳白色の化粧料11と異なる色の流動性を有する茶色の化粧料12を充填する第2の充填ステップとを備えているので、複数色の化粧料11,12を繰り出し容器2に移し替えることなく、繰り出し容器2に直接的に充填することができる。
【0036】
(2)油性固形化粧料1の製造方法は、抜去ステップおよび第2の充填ステップを実行する前に、第1の充填ステップにて充填された乳白色の化粧料11を冷却して固化させる第1の冷却ステップを実行するので、抜去ステップにて仕切り部材3を抜去することによって、茶色の化粧料12を充填する領域21A2を確実に収容部21Aに形成することができる。したがって、油性固形化粧料1の製造方法は、複数色の化粧料11,12を繰り出し容器2に収容した油性固形化粧料1を容易に製造することができる。
【0037】
(3)油性固形化粧料1の製造方法は、乳白色の化粧料11の表面を再加熱する第1の再加熱ステップを備えているので、乳白色の化粧料11の表面を均すことができ、茶色の化粧料12の表面を再加熱する第2の再加熱ステップを備えているので、茶色の化粧料12の表面を均すことができる。したがって、油性固形化粧料1の製造方法は、複数色の化粧料11,12の外観を良好にすることができる。
(4)第2の再加熱ステップは、乳白色の化粧料11の表面を断熱部材5にて覆い隠しているので、第2の再加熱ステップにて茶色の化粧料12の表面を再加熱する熱は、乳白色の化粧料11の表面を再加熱することはない。したがって、油性固形化粧料1の製造方法は、複数色の化粧料11,12の外観を更に良好にすることができる。
【0038】
(5)第2の再加熱ステップは、乳白色の化粧料11および茶色の化粧料12の境界を跨ぐように乳白色の化粧料11の表面を断熱部材5にて覆い隠しているので、第2の再加熱ステップにて茶色の化粧料12の表面を再加熱する熱は、乳白色の化粧料11および茶色の化粧料12の境界を再加熱することはなく、境界を鮮明に維持することができる。したがって、油性固形化粧料1の製造方法は、複数色の化粧料11,12の外観を更に良好にすることができる。
【0039】
(6)抜去ステップは、冷却ステップにて固化した乳白色の化粧料11の移動を規制しながら仕切り部材3を抜去するので、製造不良を低減することができる。
(7)仕切りステップは、シリコンゴム製の仕切り部材3を繰り出し容器2の収容部21Aに挿入する。したがって、仕切り部材3は、その形状を変化させつつ繰り出し容器2に挿入することができるので、容易に挿入することができる。また、仕切り部材3は、繰り出し容器2の収容部21Aに密着するので、隙間なく確実に収容部21Aの一部の領域を区分けすることができる。
【0040】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、複数色の化粧料として乳白色の化粧料11および茶色の化粧料12の2色の化粧料を採用していたが、これら以外の色の化粧料を採用してもよく、3色以上の複数の化粧料を採用してもよい。
【0041】
図6は、繰り出し容器に2つの仕切り部材を挿入した状態を示す図である。
例えば、3色の化粧料を繰り出し容器2に収容した油性固形化粧料を製造するには、
図6に示すように、繰り出し容器2の開口21Bを介して第1の仕切り部材6を繰り出し容器2の収容部21Aに挿入した後、第2の仕切り部材7を繰り出し容器2の収容部21Aに第1の仕切り部材6と重ねて挿入し、収容部21Aを仕切ることによって、収容部21Aの一部の領域を区分けする。
【0042】
ここで、第1の仕切り部材6は、基部61と、繰り出し容器2の開口21Bに当接すべく繰り出し容器2の外側に張り出したフランジ部62とを備えている。また、第2の仕切り部材7は、基部71と、第1の仕切り部材6のフランジ部62に当接すべく繰り出し容器2の外側に張り出したフランジ部72とを備えている。そして、第1の仕切り部材6および第2の仕切り部材7は、シリコンゴム製の部材である。換言すれば、第1の仕切り部材6および第2の仕切り部材7は、仕切り部材3と略同様の形状を有している。
【0043】
そして、第1の仕切り部材6および第2の仕切り部材7にて区分けされた収容部21Aの一部の領域に流動性を有する第1の化粧料を充填し、これを冷却して固化させた後、第2の仕切り部材7を抜去する。次に、第2の仕切り部材7を抜去することによって、収容部21Aに形成された領域に第1の化粧料と異なる色の流動性を有する第2の化粧料を充填し、これを冷却して固化させた後、第1の仕切り部材6を抜去する。最後に、第1の仕切り部材6を抜去することによって、収容部21Aに形成された領域に第1の化粧料および第2の化粧料と異なる色の流動性を有する第3の化粧料を充填し、これを冷却して固化させる。これによって、3色の化粧料を繰り出し容器2に収容した油性固形化粧料を製造することができる。
【0044】
また、前記実施形態では、第1の再加熱ステップは、第1の冷却ステップを実行した後、乳白色の化粧料11の表面を近傍に設置されたヒーターHにて再加熱していたが、例えば、第1の冷却ステップと並行して実行してもよい。要するに、第1の再加熱ステップは、第1の充填ステップにて第1の化粧料を充填した後、抜去ステップにて仕切り部材を抜去する前に、第1の化粧料の表面を再加熱すればよい。なお、乳白色の化粧料11の表面を均さなくてもよい場合には、油性固形化粧料1の製造方法は、第1の再加熱ステップを実行しなくてもよい。
【0045】
さらに、前記実施形態では、第2の再加熱ステップは、乳白色の化粧料11の表面を断熱部材5にて覆い隠した後、茶色の化粧料12の表面を近傍に設置されたヒーターHにて再加熱していたが、例えば、第2の冷却ステップと並行して実行してもよい。要するに、第2の再加熱ステップは、第2の充填ステップにて第2の化粧料を充填した後、第2の化粧料の表面を再加熱すればよい。なお、茶色の化粧料12の表面を均さなくてもよい場合には、油性固形化粧料1の製造方法は、第2の再加熱ステップを実行しなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明は、油性成分を含有する複数色の化粧料を容器に収容した油性固形化粧料およびその製造方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 油性固形化粧料
2 繰り出し容器(容器)
3 仕切り部材
4 押さえ部材
5 断熱部材
11 乳白色の化粧料(第1の化粧料)
12 茶色の化粧料(第2の化粧料)
21 本体部
21A 収容部
21B 開口
22 載置部
23 キャップ
31 基部
32 フランジ部