(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/535 20060101AFI20220203BHJP
A61F 13/534 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61F13/535 100
A61F13/535 200
A61F13/534 100
(21)【出願番号】P 2017146879
(22)【出願日】2017-07-28
【審査請求日】2020-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾香
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063923(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190963(WO,A1)
【文献】特開2016-093212(JP,A)
【文献】特開2009-136311(JP,A)
【文献】特開2003-153948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/535
A61F 13/534
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部と、股間部の前側及び後側にそれぞれ延出する前側部分及び後側部分とを有しており、
前側部分から後側部分にかけて設けられた吸収体を有している、使い捨ておむつにおいて、
前記吸収体は、高吸収性ポリマー粒子を含むパルプ繊維の集合体である下層吸収体と、その表側に設けられた、高吸収性ポリマー粒子を含むパルプ繊維の集合体である上層吸収体とからなり、
前記下層吸収体は、前記股間部を含む前後方向の中間に設けられた括れ部分と、前記括れ部分の後端から前記下層吸収体の全幅に等しい幅をもって後方に延びた後部とを有し、
前記括れ部分は、その前後方向の中間に設けられた最小幅の部分と、この最小幅の部分から幅が漸増しつつ前記後部に至る幅増加部分とを有し、
前記上層吸収体は、前記下層吸収体の前記最小幅の部分よりも狭い幅をもって、前記下層吸収体の後部上まで延びており、
前記股間部を含む前後方向の中間領域に、
前記上層吸収体のみ
、又は
前記上層吸収体及び
前記下層吸収体を厚み方向に貫通する所定幅のスリットが前後方向に延びており、
前記スリットの後端は、前記幅増加部分上に位置しており、
前記吸収体における前記スリットの後方隣接部分に、前記スリットの前方隣接部分よりも
3~15mm高い堰部が
、前記スリット内から臀部側へあふれ出る尿を堰き止めるように設けられ
るとともに、前記吸収体におけるスリット配置領域の側方には前記堰部が設けられておらず、
前記堰部は、前記上層吸収体の両側縁から幅方向の中央側に離れた位置に設けられており、
前記上層吸収体におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が、前記下層吸収体におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率よりも高い、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記スリットは前記上層吸収体のみに形成され、前記下層吸収体には前記スリットと重なる領域にスリット又は凹部を有しない、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記スリット内の後端部に、
密度が100~300g/m
3
のパルプ繊維
のみの集合体からなる流速低下体が設けられている、
請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記上層吸収体におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が40~60%であり、
前記下層吸収体におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が20~30%であり、
前記堰部の高さが3~5mmである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記堰部の面積は、前記上層吸収体における前記スリットよりも後方部分の面積の50%以上である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記堰部は、
前記上層吸収体における前記堰部となる部分以外が厚み方向に圧縮されることにより、前記上層吸収体の一部が突出されて形成されたものである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面における臀部側への液流れを低減し、臀部側の吸収可能量及び逆戻り防止性を向上させた使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつにおいて要求される代表的な吸収性能の一つは吸収可能量であろう。通常、吸収可能量は製品の用途に応じて決定される。例えば夜間使用を想定した製品、特に成人用の夜間用製品は、一般に吸収可能量が多い製品である。このような製品では、吸収可能量を確保するために、
図17及び
図18に示す例のように吸収体23A,23Bを上下二層構造としたものが多い。
【0003】
しかし、吸収性物品の吸収体は、
図19に示すようにパルプ繊維23fと高吸収性ポリマー粒子23pを混合し集積したものが一般的であり、このような吸収体23A,23Bの吸収時には、同図中に吸収状態の変化を示すように、表側に位置する高吸収性ポリマー粒子23pほど先に吸収膨張し、下側への液透過性が低下する「ゲルブロッキング」が発生し、尿等の液分が吸収体23A,23Bの下側に浸透しにくくなる。このようなゲルブロッキングが発生すると、吸収体23A,23Bの吸収が飽和して吸収可能量が減少した状態と同じになり、吸収体23A,23Bの下側に吸収余力があるにもかかわらず、逆戻りしやすい状態となる。逆戻りとは、おむつの表面から内部の吸収体23A,23Bに一度吸収した尿が再びおむつ表面に戻り出てくる現象であり、逆戻りしやすいと、不必要に肌が排泄物で汚れ、肌トラブルが発生しやすくなるといった問題を引き起こすものである。なお、いうまでもないが、
図19では、高吸収性ポリマー粒子23pの含有比率や吸収膨張変化を分かりやすくするために、高吸収性ポリマー粒子23pの大きさを誇張して示している。
【0004】
吸収体を上下二層構造とした製品でゲルブロッキングを回避する一つの手法は、
図17及び
図18に示す例のように、吸収体23A,23Bの少なくとも上層吸収体23Aを厚み方向に貫通するスリット40を、股間部を含む前後方向の中間領域に前後方向に沿って延在させることである。この場合、スリット40により前後方向の尿の拡散性が高くなり、かつスリット40を介して下層吸収体23Bに対しても直接的に尿を吸収させることができるため、尿が吸収体23A,23Bの前後方向及び厚み方向に素早く拡散して吸収され、ゲルブロッキングによる逆戻りが発生にしにくくなる。
【0005】
しかし、このようなスリット40による解決策には、次のような問題点が残されていた。すなわち、就寝時等に装着者が仰臥位で排尿すると、スリット40に向かう傾斜及び臀部側へ向かう傾斜により、スリット40内に尿が集まりやすく、かつスリット40内の尿は、
図18に尿の流れを白抜き矢印で示すように障壁なく後方へ流下し、スリット40の後部に集中する。このとき、スリット40の後部における吸収面積及び吸収速度は限られており、一部の尿はスリット40から臀部側へあふれ出て、臀部側の表面から吸収体23A,23Bに吸収される結果、前述のメカニズムにより臀部側で吸収可能量が低下し、逆戻りしやすい状態となってしまうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-93212号公報
【文献】特開2012-10951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、臀部側の吸収可能量及び逆戻り防止性を向上させた使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した各種態様は次のとおりである。
<第1の態様>
股間部と、股間部の前側及び後側にそれぞれ延出する前側部分及び後側部分とを有しており、
前側部分から後側部分にかけて設けられた吸収体を有している、使い捨ておむつにおいて、
前記吸収体は、高吸収性ポリマー粒子を含むパルプ繊維の集合体である下層吸収体と、その表側に設けられた、高吸収性ポリマー粒子を含むパルプ繊維の集合体である上層吸収体とからなり、
前記股間部を含む前後方向の中間領域に、上層吸収体のみ又は上層吸収体及び下層吸収体を厚み方向に貫通する所定幅のスリットが前後方向に延びており、
前記吸収体における前記スリットの後方隣接部分に、前記スリットの前方隣接部分よりも高い堰部が設けられており、
前記上層吸収体におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が、前記下層吸収体におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率よりも高い、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0009】
(作用効果)
本態様では、就寝時等に装着者が仰臥位で排尿した場合のように、スリット内の尿が障壁なく後方へ流下し、スリットの後部に集中したとしても、スリットの後方隣接部分に堰部が設けられているため、尿がスリット内から臀部側へあふれ出にくくなる。ただし、スリット内の尿の吸収速度が上層吸収体よりも下層吸収体の方が遅いと、尿がスリット内に溜まりやすくなるため、このような状況下ではスリット後方に高い堰部を設けたとしても、あふれ防止効果は低下する。これに対して、本態様ではスリット内の尿が下層吸収体により直接的に吸収されるとともに、下層吸収体の吸収速度が上層吸収体よりも速い(高吸収性ポリマー粒子の含有比率が低い方が吸収速度が速い)ため、スリットの後方隣接部分に堰部を有することと相まって、あふれ防止効果が低下しにくく、臀部側の吸収可能量及び逆戻り防止性がより一層向上するものとなる。
なお、用語「スリット」とは吸収体の表裏に貫通する貫通部を意味する。また、スリットに関して「所定幅の」とは、隙間の幅が無い(対向する側壁が接触する)凹溝やスリットを含まない意味に過ぎず、幅が一定であることを意味するものではなく、したがって幅を有する限り、幅が変化する凹溝やスリットも含む意味である。
【0010】
<第2の態様>
前記スリットは前記上層吸収体のみに形成され、前記下層吸収体には前記スリットと重なる領域にスリット又は凹部を有しない、第1の態様の使い捨ておむつ。
【0011】
(作用効果)
スリットは上層吸収体のみに形成され、下層吸収体にはスリットと重なる領域にスリット又は凹部を有しない方が吸収量を確保する上では好ましい。しかし、このようにスリットの深さが上層吸収体の厚さのみで決まる場合、スリットの深さが浅くなりやすいため、前述のように、スリットの後方隣接部分の高さを高くし、下層吸収体における高吸収性ポリマー粒子の重量比率を上層吸収体のそれよりも低くすることが好ましい。
【0012】
<第3の態様>
前記スリット内の後端部に、前記下層吸収体よりも高吸収性ポリマー粒子の重量比率が低いパルプ繊維の集合体からなる流速低下体が設けられている、
第1又は2の態様の使い捨ておむつ。
【0013】
(作用効果)
本態様のように、スリット内の後端部に流速低下体が設けられていると、スリットの後壁に向かう尿の流速が低下し、尿がスリットの後方へあふれにくくなる。このため、堰部の高さを低くし、装着時における堰部による異物感を低減することもできる。
【0014】
<第4の態様>
前記上層吸収体におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が40~60%であり、
前記下層吸収体におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が20~30%であり、
前記堰部の高さが3~5mmである、
第1~3のいずれか1つの態様の使い捨ておむつ。
【0015】
(作用効果)
通常の場合、上層吸収体及び下層吸収体における高吸収性ポリマー粒子の重量比率、並びに堰部の高さは上記範囲内とすることが好ましい。
【0016】
<第5の態様>
前記堰部の面積は、前記上層吸収体における前記スリットよりも後方部分の面積の50%以上である、
第1~4のいずれか1つの態様の使い捨ておむつ。
【0017】
(作用効果)
堰部の面積が小さいと、装着時に堰部による異物感を感じやすくなったり、堰部が外力で崩れやすくなったりするため、本態様のように堰部の面積を大きくすることが好ましい。
【0018】
<第6の態様>
前記堰部は、スリット配置領域の側方にも設けられている、
第1~5のいずれか1つの態様の使い捨ておむつ。
【0019】
(作用効果)
このように、スリット配置領域の側方にも堰部が設けられていることにより、側方への尿のあふれ漏れを効果的に防止できる。特に、スリットを堰部で囲むと、尿がスリット内に溜まりやすくなるため、尿の排泄速度及び排泄量によっては、堰部によるあふれ防止効果は低下するおそれがある。しかし、前述のように、本態様ではスリット内の尿が下層吸収体により直接的に吸収されるとともに、下層吸収体の吸収速度が上層吸収体よりも速い(高吸収性ポリマー粒子の含有比率が低い方が吸収速度が速い)ため、スリットの後方隣接部分及び側方に堰部を有することと相まって、あふれ防止効果が低下しにくく、臀部側の吸収可能量及び逆戻り防止性がより一層向上するものとなる。
なお、スリット配置領域とは、スリットが一本の場合にはそのスリットの部分を意味し、スリットが複数本ある場合には最も幅方向一方側及び他方側に位置するスリットとその間の部分を含めた領域を意味する。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり本発明によれば、臀部側の吸収可能量及び逆戻り防止性を向上させた使い捨ておむつとなる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】使い捨ておむつの展開状態の内面側を示す平面図である。
【
図15】吸収体の吸収機構を概略的に示す断面図である。
【
図16】吸収体の吸収機構を概略的に示す断面図である。
【
図18】従来の吸収体の中心線に沿う断面図である。
【
図19】従来の吸収体の吸収機構を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。なお、本発明の用語のうち「股間部」とは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、製品によって、図示形態のように物品の前後方向LDの中央若しくはその近傍から前側の所定部位までの範囲であったり、物品の前後方向LDの中央の所定範囲であったりするものである。物品の前後方向LDの中間あるいは吸収体の前後方向LDの中間に幅の狭いくびれ部分を有する場合は、いずれか一方又は両方のくびれ部分の最小幅部位を前後方向LDの中央とする所定の前後方向範囲を意味する。また、「前側部分(腹側部分)」は股間部よりも前側の部分を意味し、「後側部分(背側部分)」は股間部よりも後側の部分を意味する。
【0023】
図1~
図6は、いわゆるパッドタイプの使い捨ておむつの一例を示している。この使い捨ておむつは、股間部Cと、その前後両側に延在する前側部分F及び後側部分Bとを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向LDの長さ)Lは350~700mm程度、全幅W1は130~400mm程度(ただし、おむつの吸収面の幅より広い)とすることができ、この場合における股間部Cの前後方向LDの長さは10~150mm程度、前側部分Fの前後方向LDの長さは50~350mm程度、及び後側部分Bの前後方向LDの長さは50~350mm程度とすることができる。また、股間部Cの幅W3は、大人用の場合、150cm以上、特に200~260cm程度とすることができる。
【0024】
使い捨ておむつ200は、液不透過性シート21と、液透過性のトップシート22との間に、吸収体23A,23Bが介在された基本構造を有している。
【0025】
吸収体23A,23Bの裏側には、液不透過性シート21が吸収体23A,23Bの周縁より若干はみ出すように設けられている。液不透過性シート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0026】
また、液不透過性シート21の外面は、不織布からなる外装シート27により覆われており、この外装シート27は、所定のはみ出し幅をもって液不透過性シート21の側縁より外側にはみ出している。外装シート27としては各種の不織布を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。外装シート27は省略することもできる。
【0027】
吸収体23A,23Bの表側は、液透過性のトップシート22により覆われている。図示形態ではトップシート22の側縁から吸収体23A,23Bが一部はみ出しているが、吸収体23A,23Bの側縁がはみ出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0028】
トップシート22と吸収体23A,23Bとの間には、中間シート25を介在させるのが望ましい。この中間シート25は、吸収体23A,23Bにより吸収した尿の逆戻りを防止するために設けられるものであり、保水性が低く、かつ液透過性の高い素材、例えば各種の不織布やメッシュフィルム等を用いるのが望ましい。トップシート22の前端を0%としトップシート22の後端を100%としたとき、中間シート25の前端は0~11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シート25の後端は92~100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シート25の幅W4は後述する吸収体23A,23Bのくびれ部分23nの最小幅W5の50~100%程度であるのが好ましい。
【0029】
パッドタイプ使い捨ておむつ200の前後方向LDの両端部では、外装シート27及びトップシート22が吸収体23A,23Bの前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23A,23Bの存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。パッドタイプ使い捨ておむつ200の両側部では、外装シート27が吸収体23A,23Bの側縁よりも外側にそれぞれ延在され、この延在部からトップシート22の側部までの部分の内面には、立体ギャザー24を形成するギャザーシート24sの幅方向WDの外側の部分24xが前後方向LDの全体にわたり貼り付けられ、吸収体23A,23Bの存在しないサイドフラップ部SFを構成している。これら貼り合わせ部分は、
図1では斜線模様で示されており、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成できる。外装シート27を設けない場合、外装シート27に代えて液不透過性シート21を使い捨ておむつの側縁まで延在させ、サイドフラップ部SFの外面側を形成することができる。
【0030】
ギャザーシート24sの素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布のような液透過性の低い素材を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコーンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0031】
ギャザーシート24sの幅方向WDの中央側の部分24cはトップシート22上にまで延在しており、その幅方向WDの中央側の端部には、細長状の弾性部材24Gが前後方向LDに沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この弾性部材24Gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0032】
また、両ギャザーシート24sは、幅方向WDの外側の部分24xが前後方向LDの全体にわたり物品内面(図示形態ではトップシート22表面及び外装シート27内面)に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向WDの中央側の部分24cが、前後方向LDの両端部では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に貼り合わされて固定され、かつ前後方向LDの両端部間では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に固定されていない。この非固定部分は、
図1に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に対して弾力的に起立する漏れ防止壁となる部分であり、その起立基端24bはギャザーシート24sにおける幅方向WDの外側の部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。
【0033】
吸収体23A,23Bは、
図3~
図6に示すように、下層吸収体23Bと、その表側に設けられた上層吸収体23Aとからなる二層構造を有している。上層吸収体23A及び下層吸収体23Bとしては、パルプ繊維23fを基本とし、高吸収性ポリマー粒子23pを混合した積繊体を用いる。
【0034】
上層吸収体23A及び下層吸収体23Bに含有される高吸収性ポリマー粒子23pとしては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、例えば上層吸収体23A及び下層吸収体23Bに同じ粒度分布の高吸収性ポリマー粒子を用いる場合等、通常の場合には、500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。また、上層吸収体23A及び下層吸収体23Bに異なる粒度分布の高吸収性ポリマー粒子を用いることもできる。この場合、上層吸収体23Aに用いる高吸収性ポリマー粒子の粒度分布は、上述の500μm及び180μmの標準ふるいを用いたふるい分けを行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が50重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が50重量%以上のものが望ましく、下層吸収体23Bに用いる高吸収性ポリマー粒子の粒度分布は、上述の500μm及び180μmの標準ふるいを用いたふるい分けを行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が25重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が70重量%以上のものが望ましい。
【0035】
高吸収性ポリマー粒子23pとしては、特に限定されるものではないが、吸水速度が20~50秒で、吸水量50~80g/gのものを好適に用いることができる。高吸収性ポリマー粒子23pとしては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。
【0036】
上層吸収体23A及び下層吸収体23Bは、必要に応じて形状及び高吸収性ポリマー粒子23p保持等のため、一体的又は個別に、クレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート26により包むことができる。
【0037】
上層吸収体23A及び下層吸収体23Bは、それぞれ前側部分Fから後側部分Bにかけて延在される。上層吸収体23Aは下層吸収体23Bと同じ寸法とすることもできるが、図示形態のように上層吸収体23Aの全長及び全幅は下層吸収体23Bのそれよりも短いことが望ましい。通常の場合、上層吸収体23Aの全長は下層吸収体23Bの全長の60~90%程度とすることができ、上層吸収体23Aの全幅は下層吸収体23Bの全幅の60~90%程度とすることができる。
【0038】
上層吸収体23A及び下層吸収体23Bの総目付け(パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の合計)は適宜定めることができるが、通常の場合、上層吸収体23Aの総目付けは350~700g/m2であることが好ましく、下層吸収体23Bの総目付けは250~450g/m2であることが好ましい。上層吸収体23Aの厚み(後述する堰部を除く)及び下層吸収体23Bの厚みは、それぞれの全体にわたり均一としてもよく、また前後方向LD及び幅方向WDの少なくとも一方の方向に変化してもよい。
【0039】
上層吸収体23A及び下層吸収体23Bの形状は適宜定めることができ、それぞれ長方形状とすることもできるが、少なくとも大きい方の吸収体23A,23B(図示例では下層吸収体23B)は、股間部Cを含む前後方向中間の所定部分が幅の狭いくびれ部分23nとして形成されていると好ましい。このくびれ部分23nの最小幅W5は、全幅W2(くびれ部分23nの前後に位置する非くびれ部分の幅)の50~65%程度であるのが好ましい。また、物品前端を0%とし物品後端を100%としたとき、くびれ部分23nの前端は10~25%の範囲に位置しているのが好ましく、くびれ部分23nの後端は40~65%の範囲に位置しているのが好ましく、くびれ部分23nの最小幅W5となる部位(最小幅部位)は25~30%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0040】
図1及び
図2に示す例では、上層吸収体23Aにのみ少なくとも股間部Cと対応する前後方向領域に、左右一対の所定幅のスリット40が前後方向LDに延在されている。このように、下層吸収体23Bには所定幅のスリット40を設けない形態(この場合、下層吸収体23Bには幅の無い切れ目を有していても良い)とする他、
図13及び
図14に示すように上層吸収体23A及び下層吸収体23Bを厚み方向に貫通する一体的なスリット40を形成してもよい。
【0041】
図4に示す例のように、トップシート22は上層吸収体23Aのスリット40内に落ち込んだ落ち込み部分を有していることが好ましい。図示形態では、トップシート22と上層吸収体23Aとの間に中間シート25と包装シート26の表側部分が存在するため、これら中間シート25及び包装シート26の表側部分もトップシート22とともに、スリット40内に落ち込むこととなる。中間シート25は省略することもできる。
【0042】
スリット40は股間部Cに設けられている限り、その前後方向LDの長さ40Lは特に限定されず、したがって上層吸収体23Aの前後方向LDの全体にわたり設けることもできるが、図示形態のように前側部分Fの股間側端部から後側部分Bの股間側端部まで延在させることが望ましい。また、図示しないが、スリット40の後側の部分を幅方向WDの外側に向かうように曲げることもできる(前側も同様に曲げることができる)。より具体的には、使い捨ておむつ200の前端を0%とし、使い捨ておむつ200の後端を100%としたとき、スリット40の前端は15~30%の範囲に位置しているのが好ましく、スリット40の後端は40~70%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0043】
図示形態の上層吸収体23Aでは、スリット40の前後端は上層吸収体23Aの周縁に突き抜けていないが、後端(前端又は両端でもよい)を周縁に達するようにしてもよい。なお、スリット40の前後両端が上層吸収体23Aの側縁に達する形態では、スリット40よりも側方の部分はスリット40間の部分とは別体となる。
【0044】
スリット40の本数は特に限定されず、幅方向WDに間隔を空けて複数本(図示例では左右両側に各1本)設けるほか、幅方向WDの中央に一本設けてもよい。スリット40の幅方向WDの位置は左右対称となることが好ましい。パッドタイプ使い捨ておむつは、吸収体23A,23Bの幅が装着者の股間幅よりも広く、股間部Cの幅方向両端部は装着者の内腿に対向する部分となり、幅方向WDの中間部が股間と対向する部分となる形態が一般的であるため、これらの部分の境界に沿ってスリット40を設けることが望ましい。このため、スリット40の間隔40Dは、通常の場合、吸収体23A,23Bのくびれ部分23nの最小幅W5の10~30%程度であるのが好ましい。
【0045】
スリット40の幅40Wは、対向する側壁が離間している限り特に限定されないが、通常の場合、吸収体23A,23Bのくびれ部分23nの最小幅W5の10~20%程度とすることが望ましく、具体的に大人用製品の場合5~32mm程度とすることができる。
【0046】
以上のように構成された使い捨ておむつ200では、トップシート22におけるスリット40の間に位置する領域は、排尿位置となるか、又は排尿位置の後方に位置し、股間側へ向かう傾斜により多くの尿が供給される位置である。
【0047】
特徴的には、
図1~
図6に示す例、
図7及び
図8に示す例、
図9及び
図10に示す例、
図11及び
図12に示す例、並びに
図13及び
図14に示す例では、吸収体23A,23Bにおけるスリット40の後方隣接部分に、スリット40の前方隣接部分よりも高い堰部30が設けられている。堰部30の高さ30h(スリット40の後方隣接部分の厚みと、スリット40の前方隣接部分の厚みとの差)は適宜定めることができるが、堰部30が低すぎるとあふれ防止効果に乏しく、高すぎると装着感が悪化するため3~15mmであると好ましく、3~5mmである特に好ましい。また、堰部30の高さは、堰部30の全体にわたり均一としてもよく、また前後方向LD及び幅方向WDの少なくとも一方の方向に変化してもよい。これらの点は、後述する側方の堰部31についても基本的に同様である。
【0048】
堰部30は、上層吸収体23Aの吸収体型に堰部形成用の凹部を形成し、上層吸収体23Aの製造時に上層吸収体23Aの一部として一体的に形成することができる。また、堰部30は、上層吸収体23Aの吸収体型に堰部形成用の凹部を形成せずに、製造後の上層吸収体23Aにおける堰部30となる部分以外を厚み方向に圧縮して、スリット40の後方隣接部分を突出させることにより、上層吸収体23Aの一部として一体的に形成することもできる。この他にも、別途製造した上層吸収体23A等と同様のパルプ繊維集合体や不織布を上層吸収体23Aにおけるスリット40の後方隣接部分上に積層することにより堰部30を形成してもよい。堰部30を上層吸収体23Aの一部として形成する場合には、堰部30におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率は上層吸収体23Aと同様になり、製造も容易であるのに対し、別体として形成する場合には、堰部専用の設計が可能となるものの、製造工程が増加する。
【0049】
また、特徴的には、上層吸収体23Aにおけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が、下層吸収体23Bにおけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率よりも高くなっている。上層吸収体23A及び下層吸収体23Bにおける高吸収性ポリマー粒子の重量比率の差は適宜定めることができるが、通常の場合、上層吸収体23Aにおけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が40~60%であり、下層吸収体23Bにおけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が20~30%であると好ましい。
【0050】
図1~
図6に示す例、
図7及び
図8に示す例、
図9及び
図10に示す例、
図11及び
図12に示す例、並びに
図13及び
図14に示す例のように堰部30が設けられていると、
図6、
図8、
図10、
図12及び
図14にそれぞれ白抜き矢印で示すように、スリット40内の尿が障壁なく後方へ流下し、スリット40の後部に集中したとしても、スリット40の後方隣接部分に堰部30が設けられているため、尿がスリット40内から臀部側へあふれ出にくくなる。ただし、スリット40内の尿の吸収速度が上層吸収体23Aよりも下層吸収体23Bの方が遅いと、尿がスリット40内に溜まりやすくなるため、このような状況下ではスリット40後方に高い堰部30を設けたとしても、あふれ防止効果は低下する。これに対して、上層吸収体23Aにおけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が、下層吸収体23Bにおけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率よりも高くなっていると、スリット40内の尿が下層吸収体23Bにより直接的に吸収されるとともに、下層吸収体23Bの吸収速度が上層吸収体23Aよりも速い(高吸収性ポリマー粒子の含有比率が低い方が吸収速度が速い)ため、スリット40の後方隣接部分に堰部30を有することと相まって、あふれ防止効果が低下しにくく、臀部側の吸収可能量及び逆戻り防止性がより一層向上するものとなる。
【0051】
また、
図15及び
図16に示すように、下層吸収体23Bにおけるパルプ繊維23fに対する高吸収性ポリマー粒子23pの重量比率が上層吸収体23Aのそれよりも低いと、上層吸収体23Aよりもゲルブロッキングが生じにくく排泄物の液分が下層吸収体23B内でより広範囲に拡散する。図中、液分の移動が矢印で示されている。そして下層吸収体23Bに吸収された液分は、少なくとも下層吸収体23Bの吸収飽和後には、上層吸収体23Aに吸い上げられるようにして上層吸収体23Aに移行するようになり、上層吸収体23Aに吸収保持される。このとき、上層吸収体23Aはパルプ繊維23fに対する高吸収性ポリマー粒子23pの重量比率が高く、より多量の液分を吸収保持できるとともに、下層吸収体23Bが優先的に吸収を行うため、上層吸収体23Aの表側(肌側)には最後まで吸収余力が残されることになる。その結果、逆戻り防止性に一段と優れたものとなる。なお、いうまでもないが、
図15及び
図16では、高吸収性ポリマー粒子23pの含有比率や吸収膨張変化を分かりやすくするために、高吸収性ポリマー粒子23pの大きさを誇張して示している。
【0052】
このような吸収メカニズムを考慮すると、下層吸収体23Bに含まれる高吸収性ポリマー粒子23pは液透過性に優れるもの、具体的には吸収速度が20~35秒かつ吸収量が50~70g/gであるものが好ましく、上層吸収体23Aに含まれる高吸収性ポリマー粒子23pは吸収量が多いもの、具体的には吸収速度が60~80秒かつ吸収量が50~80g/gであるものが好適である。
【0053】
他方、
図1~
図6に示す例、
図7及び
図8に示す例、
図9及び
図10に示す例、並びに
図11及び
図12に示す例のようにスリット40が上層吸収体23Aのみに形成され、下層吸収体23Bにはスリット40と重なる領域にスリット又は凹部を有しない形態は、
図13及び
図14に示す例のように下層吸収体23Bまでスリット40を有する形態と比較して、より多くの吸収量を確保する点では好ましい。しかし、このようにスリット40の深さが上層吸収体23Aの厚さのみで決まる場合、スリット40の深さが浅くなりやすいため、前述のように、スリット40の後方隣接部分に堰部30を設けるとともに、下層吸収体23Bにおける高吸収性ポリマー粒子の重量比率を上層吸収体23Aのそれよりも低くすることが好ましい。
【0054】
堰部30は、
図7及び
図8に示す例、
図11及び
図12に示す例、
図13及び
図14に示す例のように各スリット40に一つ設ける他、
図1~
図6に示す例、並びに
図9及び
図10に示す例のようにすべてのスリット40に対して一つ設けることもできる。堰部30の幅30Wは適宜定めればよいが、堰き止め効果等の観点から十分に広いことが好ましいため、各スリット40に一つの堰部30を設ける形態では一つのスリット40の後端部の幅40Wの1~6倍とすることが好ましい。また、すべてのスリット40に対して一つの堰部30設ける形態ではスリット配置領域(スリット40が複数本ある場合には最も幅方向WDの一方側及び他方側に位置するスリット40とその間の部分を含めた領域)の幅40Xの1倍以上、特に1.5倍以上で、かつ吸収体23A,23Bの全幅W2の0.5~1倍とすることが好ましい。各スリット40に一つ堰部30を設ける形態は、上層吸収体23A上の前後方向LDの尿の流れを比較的に阻害しないため、横漏れを助長するおそれが少ない。これに対し、すべてのスリット40に対して一つの堰部30設ける形態で、堰部30が吸収体23A,23Bの幅方向WDの全体にわたり延びていると、上層吸収体23A上の前後方向LDの尿の流れが阻害されることにより横漏れしやすくなるおそれがある。よって、堰部30の幅は上記範囲内とすることが好ましい。
【0055】
堰部30の面積は適宜定めればよいが、堰部30の面積が小さいと、装着時に堰部30による異物感を感じやすくなったり、堰部30が外力で崩れやすくなったりする。よって、堰部30の面積は、上層吸収体23Aにおけるスリット40よりも後方部分の面積の50%以上であると好ましく、80%以上であるとより好ましい。具体的な寸法としては、一つの堰部30の幅方向WDの寸法30Wは100~150mmであることが好ましく、堰部30の前後方向LDの寸法30Lは130~150mmであることが好ましい。
【0056】
堰部30は、
図9及び
図10に示す例、
図11及び
図12に示す例、並びに
図13及び
図14に示す例のように、スリット40の後方隣接部分に設けられているだけでもよいが、
図1~
図6に示す例、並びに
図7及び
図8に示す例のように、スリット配置領域(スリット40が一本の場合にはそのスリット40の部分を意味し、スリット40が複数本ある場合には最も幅方向WDの一方側及び他方側に位置するスリット40とその間の部分を含めた領域)の側方にも堰部31が設けられていると、側方への尿のあふれ漏れを効果的に防止できる。スリット40の後方隣接部分に設けられる堰部30と、スリット配置領域の側部に設けられる堰部31とは図示例では繋がっている又は接しているが、離間していてもよい。スリット配置領域の側部に設けられる堰部31の寸法は適宜定めればよいが、堰部31の幅はスリット40の後端部の幅40Wの1~2倍とすることが好ましく、堰部31の前後方向LDの寸法31Lは、スリット40の前後方向LDの長さ40Lの0.6~1倍とすることが好ましく、堰部31はスリット40の後端と同位置から前方に延びていることが好ましい。
【0057】
他方、
図11及び
図12に示す例のように、スリット40内の後端部に、下層吸収体23Bよりも高吸収性ポリマー粒子の重量比率が低いパルプ繊維の集合体からなる流速低下体41が設けられているのは一つの好ましい形態である。この流速低下体41により、スリット40の後壁に向かう尿の流速が低下し、尿がスリット40の後方へあふれにくくなる。このため、堰部30の高さを低くし、装着時における堰部30による異物感を低減することもできる。流速低下体41としては、密度が100~300g/m
3程度のパルプ繊維のみの繊維集合体や、密度が18~24g/m
3程度のエアレイド不織布を好適に用いることができる。
【0058】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後(縦)方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・吸収体の「厚み」は、株式会社尾崎製作所の厚み測定器(ピーコック、ダイヤルシックネスゲージ大型タイプ、型式J-B(測定範囲0~35mm)又は型式K-4(測定範囲0~50mm))を用い、試料と厚み測定器を水平にして、測定する。
・上記以外の「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
・吸水量は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、上記例のようなパッドタイプ使い捨ておむつの他、いわゆるテープタイプ使い捨ておむつやパンツタイプ使い捨ておむつ等、使い捨ておむつ全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0060】
B…後側部分、C…股間部、F…前側部分、21…液不透過性シート、22…トップシート、23A,23B…吸収体、23A…上層吸収体、23B…下層吸収体、24…立体ギャザー、24s…ギャザーシート、25…中間シート、26…包装シート、27…外装シート、30…堰部、40…スリット、41…流速低下体。