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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】光源装置、及び光量調整方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20220118BHJP
   A61B 1/07 20060101ALI20220118BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61B1/06 612
A61B1/07 731
G02B23/26 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020558704
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2018044470
(87)【国際公開番号】W WO2020115807
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田端 基希
(72)【発明者】
【氏名】畑中 修平
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-228(JP,A)
【文献】特開2016-133746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに波長帯域が異なる複数の光をそれぞれ出射する複数の光源部と、
外部へ光を出射する第1の光路上にそれぞれ設けられ、互いに光の透過特性が異なる複数のダイクロイックミラーであって、各々が前記複数の光源部のいずれかにより出射された光を反射または透過する複数のダイクロイックミラーと、
前記第1の光路とは異なる光路であり、前記ダイクロイックミラーにより光が反射または透過された後に該光が伝播する光路である複数の第2の光路上にそれぞれ位置し、前記第2の光路を伝播する光の光量をそれぞれ検出する複数の光センサと、
前記複数の光センサがそれぞれ検出した光量に基づいて、前記複数の光の光量比を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記複数の光センサの各々は、各光センサの分光感度特性、各光センサへ入射する光の波長に応じた最大光量、および前記光源部が出射する光の強度分布に基づいて定まる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記複数の光センサの各々は、各光センサの各波長に対する相対分光感度、各光センサへ入射する光の波長に応じた最大光量、および前記光源部が出射する光の相対強度分布の積が略同一になる位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記複数の光センサは、前記第2の光路上の前記第2の光路と直交する1つの平面内において、光路中心からの距離が互いに異なる位置に配置される少なくとも2つの前記光センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
前記光センサは、前記複数の光の少なくとも一部を含む反射光または透過光の光量を検出し、
前記反射光または透過光の光量を前記光センサに対応付けられた1つの光の光量に補正する補正部をさらに備え、
前記制御部は、前記補正部が補正した光量に基づいて前記複数の光の光量比を制御することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記複数の光による各センサの検出値と、あらかじめ記憶された各波長の光に対する各センサの出力値と、の対応をもとに行列演算によって1つの光の光量を算出することを特徴とする請求項に記載の光源装置。
【請求項7】
2以上の光が伝播する前記第2の光路上において前記光センサの上流に設けられ、前記2以上の光のいずれか1つのみを透過する光学フィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記光源部は半導体レーザを含むことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項9】
第1波長帯域光を出射する第1光源部と、
第2波長帯域光を出射する第2光源部と、
外部へ光を出射する第1の光路上に設けられ、前記第1光源部より出射された光を反射または透過する第1ダイクロイックミラーと、
前記第1の光路上であって、前記第1ダイクロイックミラーよりも光の外部への出射位置側に配置される第2ダイクロイックミラーであって、前記第1ダイクロイックミラーと異なる光透過特性を有し、前記第2光源部より出射された光を前記第1の光路に向かう成分と、前記第1の光路とは異なる第2の光路に向かう成分とに分岐させ、前記第1ダイクロイックミラーにより反射された前記第1光源部からの光の一部を前記第2の光路に向けて反射する第2ダイクロイックミラーと、
前記第2の光路上に位置し、前記第2の光路を伝播する光の光量を検出する光センサユニットであって、前記第1波長帯域光を検出する第1光センサ、及び前記第2波長帯域光を検出する第2光センサを含む光センサユニットと、
を備え、
前記第1光センサおよび前記第2光センサは、分光感度特性、入射する光の波長に応じた最大光量、および、光の強度分布に基づいて定まる位置に設けられており、
前記第1光センサは、照度が異なる位置に設けられている2つ以上の光センサを有し、
前記第2光センサは、照度が異なる位置に設けえられている2つ以上の光センサを有し、
前記第1光センサおよび前記第2光センサは、前記2つ以上の光センサの検出値の組み合わせにより、1つの光センサよりも広いダイナミックレンジで光量の検出を行うことを特徴とする光源装置。
【請求項10】
互いに波長帯域が異なる複数の光をそれぞれ出射する複数の光源部と、
外部へ光を出射する第1の光路上にそれぞれ設けられ、互いに光の透過特性が異なる複数のダイクロイックミラーであって、各々が前記複数の光源部のいずれかにより出射された光を反射または透過する複数のダイクロイックミラーと、
を備える光源装置の光量を調整する光量調整方法であって、
複数の光センサが、前記複数のダイクロイックミラーにより前記複数の光が反射または透過されて前記第1の光路から分岐した複数の第2の光路を伝播する光の光量をそれぞれ検出し、
制御部が、前記複数の光センサが検出した光量に基づいて、前記複数の光の光量比を制御することを特徴とする光量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに波長が異なる光を出射する複数の光源を備える光源装置において、光源からの漏れ光を光センサが直接検出することによって各光源の出力を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/016172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、各光源の光路から外れた漏れ光を用いているため、検出する光量に揺らぎがあって照明光との一致性が低く、各光源の光量比を精度よく一定に保つことが難しかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の光源の光量比を精度よく一定に保つことができる光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光源装置は、互いに波長帯域が異なる複数の光をそれぞれ出射する複数の光源部と、外部へ光を出射する第1の光路上にそれぞれ設けられ、互いに光の透過特性が異なる複数のダイクロイックミラーであって、各々が前記複数の光源部のいずれかにより出射された光を反射または透過する複数のダイクロイックミラーと、前記第1の光路とは異なる光路であり、前記ダイクロイックミラーにより光が反射または透過された後に該光が伝播する光路である複数の第2の光路上にそれぞれ位置し、前記第2の光路を伝播する光の光量をそれぞれ検出する複数の光センサと、前記複数の光センサがそれぞれ検出した光量に基づいて、前記複数の光の光量比を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る光源装置は、上記発明において、前記複数の光センサの各々は、各光センサの分光感度特性、各光センサへ入射する光の波長に応じた最大光量、および前記光源部が出射する光の強度分布に基づいて定まる位置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る光源装置は、上記発明において、前記複数の光センサの各々は、各光センサの各波長に対する相対分光感度、各光センサへ入射する光の波長に応じた最大光量、および前記光源部が出射する光の相対強度分布の積が略同一になる位置に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る光源装置は、互いに波長帯域が異なる複数の光をそれぞれ出射する複数の光源部と、外部へ光を出射する第1の光路上にそれぞれ設けられ、互いに光の透過特性が異なる複数のダイクロイックミラーであって、各々が前記複数の光源部のいずれかにより出射された光を反射または透過する複数のダイクロイックミラーと、前記第1の光路とは異なる光路であり、前記第1の光路における光の外部への出射位置に最も近い前記ダイクロイックミラーにより光が反射または透過された後に該光が伝播する光路である第2の光路上に位置し、前記第2の光路を伝播する光の光量をそれぞれ検出する複数の光センサと、を備え、各光センサは、各光センサの分光感度特性、各光センサへ入射する光の波長に応じた最大光量、および前記光源部が出射する光の強度分布に基づいて定まる位置に設けられており、前記複数の光のうち他の光センサとは異なる光の光量を検出することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る光源装置は、上記発明において、前記複数の光センサは、前記第2の光路上の前記第2の光路と直交する1つの平面内において、光路中心からの距離が互いに異なる位置に配置される少なくとも2つの前記光センサを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る光源装置は、上記発明において、前記複数の光センサは、同じ波長の光源に対して照度の異なる領域の光量を検出し、複数のセンサの検出値の組み合わせにより、1つの光センサよりも広いダイナミックレンジで光量の検出を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る光源装置は、上記発明において、前記光センサは、前記複数の光の少なくとも一部を含む反射光または透過光の光量を検出し、前記反射光または透過光の光量を前記光センサに対応付けられた1つの光の光量に補正する補正部をさらに備え、前記制御部は、前記補正部が補正した光量に基づいて前記複数の光の光量比を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る光源装置は、上記発明において、前記補正部は、前記複数の光による各センサの検出値と、あらかじめ記憶された各波長の光に対する各センサの出力値と、の対応をもとに行列演算によってを1つの光の光量を算出することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る光源装置は、上記発明において、2以上の光が伝播する前記第2の光路上において前記光センサの上流に設けられ、前記2以上の光のいずれか1つのみを透過する光学フィルタをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る光源装置は、上記発明において、前記光源部は半導体レーザを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の光源の光量比を精度よく一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施の形態1に係る光源装置を備えた内視鏡システムの構成を示す図である。
図2図2は、赤色レーザ光を反射するダイクロイックミラーの透過特性を示す図である。
図3図3は、緑色レーザ光を反射するダイクロイックミラーの透過特性を示す図である。
図4図4は、赤色より短い波長帯域の光のみを透過する光学フィルタの透過特性を示す図である。
図5図5は、青色レーザ光を反射するダイクロイックミラーの透過特性を示す図である。
図6図6は、緑色より短い波長帯域の光のみを透過する光学フィルタの透過特性を示す図である。
図7図7は、バイオレットレーザ光を反射するダイクロイックミラーの透過特性を示す図である。
図8図8は、青色より短い波長帯域の光のみを透過する光学フィルタの透過特性を示す図である。
図9図9は、実施の形態1の変形例に係る光源装置の構成を示す図である。
図10図10は、光の波長と光センサの分光感度との関係、および入射する各色レーザ光の波長と光センサへ入射する最大光量との関係を示す図である。
図11図11は、実施の形態2に係る光源装置が備える光センサの配置位置を模式的に示す図である。
図12図12は、実施の形態3に係る光源装置の構成を示す図である。
図13A図13Aは、赤色の波長帯域より波長の長い光のみを透過する光フィルタの透過特性を示す図である。
図13B図13Bは、緑色付近の波長帯域の光のみを透過する光フィルタの透過特性を示す図である。
図13C図13Cは、青色付近の波長帯域の光のみを透過する光フィルタの透過特性を示す図である。
図13D図13Dは、バイオレットの波長帯域より短い波長帯域の光のみを透過する光フィルタの透過特性を示す図である。
図14図14は、実施の形態3に係る光源装置が備える光センサの配置位置を模式的に示す図である。
図15図15は、実施の形態4に係る光源装置の構成を示す図である。
図16図16は、実施の形態4に係る光源装置が備える光センサの配置位置を模式的に示す図である。
図17図17は、実施の形態5に係る光源装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る光源装置を備えた内視鏡システムの構成を示す図である。同図に示す内視鏡システム1は、被検体内に先端部を挿入されて被検体の体内画像を撮像する内視鏡2と、内視鏡システム1全体の動作を統括的に制御する処理装置3と、内視鏡2が撮像した画像などを表示する表示装置4と、内視鏡2の先端から出射する照明光を発生する光源装置5と、を備える。
【0020】
内視鏡2は、被検体内に挿入する挿入部の先端部に設けられて被検体からの光を集光する光学系21と、光学系21が集光した光を光電変換して電気的な画像信号を生成する撮像素子22と、光源装置5が発生した光を挿入部の先端部まで伝播するライトガイド23と、ライトガイド23の先端側に設けられ、ライトガイド23を伝播してきた光を照明光として内視鏡2の外部に照射する照明レンズ24とを有する。光学系21は、1または複数のレンズを用いて構成される。撮像素子22は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いて構成される。ライトガイド23は、例えば細径の光ファイバを複数本束ねることによって構成される。
【0021】
処理装置3は、画像処理部31と、同期信号生成部32と、入力部33と、制御部34と、記憶部35と、を備える。画像処理部31は、内視鏡2から受信した画像信号に所定の処理を施して表示用の画像データを生成し、表示装置4に出力する。同期信号生成部32は、内視鏡2および光源装置5と動作の同期を取るための同期信号を生成する。入力部33は、スイッチ、ボタン、タッチパネル、キーボード、マウス等のユーザインターフェースを用いて構成され、内視鏡システム1の動作を指示する動作指示信号等の各種信号の入力を受け付ける。
【0022】
制御部34は、処理装置3を含む内視鏡システム1の動作を統括して制御する。制御部34は、CPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の特定の機能を実行する専用集積回路等のハードウェアを単独でまたは組み合わせることによって構成される。
【0023】
記憶部35は、内視鏡システム1を動作させるための各種プログラム、および内視鏡システム1の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記憶する。RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリおよびROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリを用いて構成される。なお、外部から装着可能なメモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて記憶部35を構成してもよい。上述した各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0024】
表示装置4は、処理装置3の画像処理部31から受信した画像データに対応する表示画像を表示する。表示装置4は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等のモニタを用いて構成される。
【0025】
光源装置5は、互いに波長が異なるレーザ光を発生する4つの光源部51a~51dを備える。光源部51aは赤色半導体レーザを有し、光源部51bは緑色半導体レーザを有し、光源部51cは青色半導体レーザを有し、光源部51dはバイオレット半導体レーザを有する。半導体レーザは、レーザダイオード(LD)とも呼ばれる。
【0026】
光源部51aが発生する赤色レーザ光の光路上には、ダイクロイックミラー52aが設けられている。ダイクロイックミラー52aの表面は、赤色レーザ光の入射光路に対して45°傾斜しており、この表面において赤色レーザ光を反射して光路の向きを90°変更する。以下、赤色レーザ光がダイクロイックミラー52aで反射した後の光路を第1の光路という。
【0027】
図2は、ダイクロイックミラー52aの透過特性を示す図である。図2において、横軸は波長で縦軸は透過率であり、破線の棒R、G、B、Vは、それぞれ赤、緑、青、バイオレットの中心波長を示している。この点は、後述する図3図8についても同様である。
【0028】
ダイクロイックミラー52aは、図2の直線101によって示すように、全ての波長帯域の光をほとんど透過しない。このため、ダイクロイックミラー52aは、光源部51aから入射する赤色レーザ光の大部分を反射し、ごく少量を透過する。以下、赤色レーザ光がダイクロイックミラー52aを透過した後の光路を第2の光路という。第2の光路上には、ND(Neutral Density)フィルタ53a、光センサ54aが下流へ向けて順次設けられている。光センサ54aは、赤色レーザ光のみを受光する。
【0029】
光源部51bが発生する緑色レーザ光の光路上には、ダイクロイックミラー52bが設けられている。ダイクロイックミラー52bの表面は、緑色レーザ光の入射光路に対して45°傾斜しており、入射する緑色レーザ光を反射して光路の向きを90°変更する。ダイクロイックミラー52bの表面はダイクロイックミラー52aの表面と平行であり、緑色レーザ光の反射光路は第1の光路と一致する。緑色レーザ光がダイクロイックミラー52bを透過した後の光路(これも第2の光路という)上には、光学フィルタ55b、NDフィルタ53b、光センサ54bが第2の光路の下流へ向けて順次設けられている。
【0030】
図3は、ダイクロイックミラー52bの透過特性を示す図である。ダイクロイックミラー52bは、図3の曲線102によって示すように、4色のレーザ光のうち赤色レーザ光の大部分を透過し、他の3色のレーザ光はほとんど透過しない。このため、ダイクロイックミラー52bは、第1の光路を伝播してくる赤色レーザ光の大部分を透過する一方、光源部51bから入射する緑色レーザ光の大部分を反射し、これらのレーザ光を合波して第1の光路を伝播させる。また、ダイクロイックミラー52bは、ごく少量の赤色レーザ光を反射するとともに、ごく少量の緑色レーザ光を透過して第2の光路を伝播させる。
【0031】
図4は、光学フィルタ55bの透過特性を示す図である。光学フィルタ55bは、図4の曲線201によって示すように、赤より短い波長帯域の光については大部分を透過する一方、その波長帯域よりも長波長側の波長帯域の光をほとんど透過しない。したがって、光学フィルタ55bは、第2の光路を伝播するレーザ光のうち緑色レーザ光のみを透過する。その結果、光センサ54bは緑色レーザ光のみを受光する。
【0032】
光源部51cが発生する青色レーザ光の光路上には、ダイクロイックミラー52cが設けられている。ダイクロイックミラー52cの表面は、青色レーザ光の入射光路に対して45°傾斜しており、入射する青色レーザ光を反射して光路の向きを90°変更する。ダイクロイックミラー52cの表面はダイクロイックミラー52aの表面と平行であり、青色レーザ光の反射光路は第1の光路と一致する。青色レーザ光がダイクロイックミラー52cを透過した後の光路(これも第2の光路という)上には、光学フィルタ55c、NDフィルタ53c、光センサ54cが第2の光路の下流へ向けて順次設けられている。
【0033】
図5は、ダイクロイックミラー52cの透過特性を示す図である。ダイクロイックミラー52cは、図5の曲線103によって示すように、4色のレーザ光のうち赤色レーザ光および緑色レーザ光の大部分を透過し、青色レーザ光およびバイオレットレーザ光をほとんど透過しない。このため、ダイクロイックミラー52cは、第1の光路を伝播してくる赤色レーザ光および緑色レーザ光の大部分を透過する一方、光源部51cから入射する青色レーザ光の大部分を反射し、これらのレーザ光を合波して第1の光路を伝播させる。また、ダイクロイックミラー52cは、ごく少量の赤色レーザ光および緑色レーザ光を反射するとともに、ごく少量の青色レーザ光を透過して第2の光路を伝播させる。
【0034】
図6は、光学フィルタ55cの透過特性を示す図である。光学フィルタ55bは、図6の曲線202によって示すように、緑より短い波長帯域の光については大部分を透過し、その波長帯域よりも長波長側の波長帯域の光をほとんど透過しない。したがって、光学フィルタ55cは、第2の光路を伝播するレーザ光のうち青色レーザ光のみを透過する。その結果、光センサ54cは青色レーザ光のみを受光する。
【0035】
光源部51dが発生するバイオレットレーザ光の光路上には、ダイクロイックミラー52dが設けられている。ダイクロイックミラー52dの表面は、バイオレットレーザ光の入射光路に対して45°傾斜しており、入射するバイオレットレーザ光を反射して光路の向きを90°変更する。ダイクロイックミラー52dの表面はダイクロイックミラー52aの表面と平行であり、バイオレットレーザ光の反射光路は第1の光路と一致する。バイオレットレーザ光がダイクロイックミラー52dを透過した後の光路(これも第2の光路という)上には、光学フィルタ55d、NDフィルタ53d、光センサ54dが第2の光路の下流へ向けて順次設けられている。
【0036】
図7は、ダイクロイックミラー52dの透過特性を示す図である。ダイクロイックミラー52dは、図7の曲線104によって示すように、4色のレーザ光のうちバイオレットレーザ光を除く3色のレーザ光を透過する。このため、ダイクロイックミラー52dは、第1の光路を伝播してくる赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光の大部分を透過する一方、光源部51dから入射するバイオレットレーザ光の大部分を反射し、これらのレーザ光を合波して第1の光路を伝播させる。また、ダイクロイックミラー52dは、ごく少量の赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光を反射するとともに、ごく少量のバイオレットレーザ光を透過して第2の光路を伝播させる。
【0037】
図8は、光学フィルタ55dの透過特性を示す図である。光学フィルタ55dは、図8の曲線203によって示すように、青より短い波長帯域の光については大部分を透過し、その波長帯域よりも長波長側の波長帯域の光をほとんど透過しない。したがって、光学フィルタ55dは、第2の光路を伝播するレーザ光のうちバイオレットレーザ光のみを透過する。その結果、光センサ54dはバイオレットレーザ光のみを受光する。
【0038】
NDフィルタ53a~53dは、光センサ54a~54dにそれぞれ入射する各色レーザ光の光量を光センサ54a~54dの受光レンジに一致させる機能を有する。
【0039】
光センサ54a~54dは、例えばフォトダイオード等の受光素子を用いて構成される。光センサ54a~54dの受光面は、第2の光路の光路中心と交わる位置に光路と直交して配置される。光センサ54a~54dの分光感度特性は、互いに同等である。
【0040】
光源装置5は、第1の光路に設けられ、第1の光路を伝播してくる4色のレーザ光を集光してライトガイド23に供給するレンズ56と、光源部51a~51dを駆動するための回路を含む駆動部57と、光源51a~51dがそれぞれ出射する複数のレーザ光の光量比を一定とするように駆動部57を駆動させる制御部58とをさらに備える。制御部58はCPUまたはFPGA等を用いて構成される。なお、光源装置5を処理装置3と一体で形成してもよい。
【0041】
なお、図2図8に示す直線101、曲線102~104、201~203はあくまでも一例であり、その形状は図示したものに限られるわけではない。
【0042】
以上の構成を有する光源装置5は、光源部51a~51dがそれぞれ出射した光の大部分を、ダイクロイックミラー52a~52dを介して内視鏡2のライトガイド23へ供給する。また、光源部51a~51dが出射した光のうちごく少量がダイクロイックミラー52a~52dをそれぞれ透過して第2の光路を伝播し、光センサ54a~54dへそれぞれ単色のレーザ光が入射する。
【0043】
制御部58は、光センサ54a~54dが検出した各色のレーザ光の光量に基づいて、光源装置5が出射する照明光の各色成分が所定の光量比を保つように駆動部57を駆動させることによって光源部51a~51dの出力を制御する。
【0044】
以上説明した実施の形態1によれば、光源装置5の外部へ照明光を出射する第1の光路とは異なる第2の光路上に各色のレーザ光を検出する光センサを設けたため、複数の光源の光量比を精度よく一定に保つことができる。
【0045】
上記特許文献1の光量検出では、光源から直接の漏れ光を光路から外れた照明光として取得していたため、照明光の一部をあえて光路から外す構成とする必要があり、実際の出射光量の損失が大きくなっていた。これに対して実施の形態1では、光源部51a~51dが出射した光のうち、対応するダイクロイックミラー52a~52dをごく少量だけ透過する分を利用して光量を検出するため、余分な光量損失を発生させずに各レーザ光の光量をモニタすることができる。
【0046】
(変形例)
図9は、実施の形態1の変形例に係る光源装置の構成を示す図である。同図に示す光源装置5Aは、光源部51aを出射した赤色レーザ光の大部分を透過するダイクロイックミラー52eが赤色レーザ光の入射光路(第1の光路)上に設けられている。ダイクロイックミラー52eは、赤色レーザ光の大部分を透過し、ごく少量だけ反射する特性を有している。
【0047】
ダイクロイックミラー52eによって反射されて第2の光路を伝播する赤色レーザー光は、第2の光路上に設けられた光センサ54aに入射する。なお、本変形例では、NDフィルタ53aは必須ではない。ここで説明した事項を除く光源装置5Aの構成は、上述した光源装置5の構成と同様であり、得られる効果も実施の形態1と同様である。
【0048】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る光源装置は、光センサの配置位置を光センサの分光感度に基づいて設定する。この点を除く光源装置および内視鏡システムの構成は、実施の形態1と同様である。以下、光源装置5の構成要素と同じ構成要素には、光源装置5の構成要素と同じ符号を付して説明する。
【0049】
図10は、光の波長λと光センサの分光感度S(λ)との関係、および入射する各色レーザ光の波長λと光センサへ入射する最大光量P(λ)との関係を示す図である。図10において、曲線301は分光感度S(λ)を示す曲線である。また、棒401、402、403、404の高さは、それぞれ赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光、バイオレットレーザ光の最大光量P(λ)を示す。
【0050】
図10に示す場合、分光感度S(λ)は、λが400~800nm程度の波長帯域では波長の増加とともに単調増加して800nm付近で最大値に達し、それより大きい波長帯域では波長の増加とともに単調減少する。また、図10に示す場合、光センサへ入射する最大光量P(λ)は、大きい順に緑、赤、青、バイオレットである。なお、曲線301はあくまでも一例に過ぎず、光センサの分光特性がこれに限られるわけではない。
【0051】
光源部51a~51dを構成する半導体レーザが出射するレーザ光の強度分布は、レーザ光の中心からの距離の関数として、中心を最大値とするガウス分布によって表される。実施の形態2では、レーザ光の強度分布として、光センサの受光面内において、第2の光路の中心をゼロとするときの位置rにおける相対光強度I(r)を適用する。
【0052】
図11は、光センサ54a~54dの配置位置を模式的に示す図である。図11において、曲線501は、位置rに応じた相対光強度I(r)を示す曲線である。図11に示す光センサ54a~54dの配置位置は、第2の光路と直交する平面で見たときの配置位置である。4つの円の直径は、レーザ光のビーム径に相当している。ビーム径は、相対光強度I(λ)の最大値を1とするときの相対光強度が1/e2である2つの位置同士の距離である。光センサ54a~54dは、入射する最大光量P(λ)、位置rにおける相対光強度I(r)および分光感度S(λ)の積P(λ)×I(r)×S(λ)が互いに一定となる位置にそれぞれ配置される。
【0053】
光センサ54a~54dにおいて、積P(λ)×I(r)×S(λ)が一定である位置までの光路中心からの距離|r|をそれぞれra、rb、rc、rdとおくと、これらの距離は、図11に示すように、ra>rb>rc>rd=0の関係にある。このように光源部51a~51dを配置することにより、光源部51a~51dの出力を最大としたときに、光センサ54a~54dに対して互いに同等の照度のレーザ光を照射することができる。
【0054】
以上説明した実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、複数の光源の光量比を精度よく一定に保つことができる。
【0055】
また、実施の形態2によれば、各光センサの光路における配置位置をそれぞれ調整することにより、各光センサへの入射光量を最適化することができる。
【0056】
また、実施の形態2によれば、NDフィルタを用いることなく、光センサのダイナミックレンジを上げることができる。NDフィルタを用いて光センサのダイナミックレンジを上げる場合には、分光感度特性や光量比を考慮して各NDフィルタの光学濃度をそれぞれ調整して最適化する必要があった。これに対して、実施の形態2によれば、NDフィルタが不要であるため、部品点数を減らすことができる上、NDフィルタを個別に最適化する必要がない。その結果、製品組立時に類似部品の組間違いを防止し、組立手順も簡易化されるため、製造に要するコストを抑制することができ、経済的な光源装置を提供することができる。
【0057】
(実施の形態3)
図12は、実施の形態3に係る光源装置の構成を示す図である。同図に示す光源装置6は、4つの光源部51a~51d、3つのダイクロイックミラー52a~52d、NDフィルタ53e、駆動部57、制御部58、および光センサユニット61を備える。以下、光源装置5の構成要素と同じ構成要素には、光源装置5の構成要素と同じ符号を付して説明する。
【0058】
光センサユニット61は、赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光、およびバイオレットレーザ光をそれぞれ検出する4つの光センサ61a~61dを有する。光センサ61a~61dの各々は、透過する波長帯域が他と異なる光学フィルタと、フォトダイオード等の光学素子とを組み合わせて構成される。図13A図13Dは、光センサ61a~61dがそれぞれ有する光学フィルタの透過特性を示す図である。図13A図13Dにおいて、横軸は波長で縦軸は透過率であり、破線の棒R、G、B、Vは、それぞれ赤、緑、青、バイオレットの中心波長を示している。
【0059】
光センサ61aが有する光学フィルタは、図13Aの曲線601によって示すように、赤を含むとともに赤より長波長側の波長帯域の光については大部分を透過し、緑、青、バイオレットの光をほとんど透過しない。これにより、光センサ61aは、ダイクロイックミラー52dで反射された4色のレーザ光のうち赤色レーザ光の光量のみを検出する。
光センサ61bが有する光学フィルタは、図13Bの曲線602によって示すように、緑の近傍の波長帯域の光については大部分を透過し、赤、青、バイオレットの光はほとんど透過しない。これにより、光センサ61bは、ダイクロイックミラー52dで反射された4色のレーザ光のうち緑色レーザ光の光量のみを検出する。
光センサ61cが有する光学フィルタは、図13Cの曲線603によって示すように、青の近傍の波長帯域の光については大部分を透過し、赤、緑、バイオレットの光はほとんど透過しない。これにより、光センサ61cは、ダイクロイックミラー52dで反射された4色のレーザ光のうち青色レーザ光の光量のみを検出する。
光センサ61dが有する光学フィルタは、図13Dの曲線604によって示すように、バイオレットを含むとともにバイオレットより短波長側の波長帯域の光については大部分を透過し、赤、緑、青の光はほとんど透過しない。これにより、光センサ61dは、ダイクロイックミラー52dで反射された4色のレーザ光のうちバイオレットレーザ光の光量のみを検出する。
なお、曲線601~604はあくまでも一例であり、その形状は図示したものに限られるわけではない。
【0060】
実施の形態3において、光センサ61a~61dは、実施の形態2と同様に、レーザ光の強度分布として、光センサの受光面内において、第2の光路の中心をゼロとするときの位置rにおける相対光強度I(r)を適用し、光センサ61a~61dは、入射する最大光量P(λ)、位置rにおける相対光強度I(r)および分光感度S(λ)の積P(λ)×I(r)×S(λ)が互いに一定となる位置にそれぞれ配置される。
【0061】
図14は、光センサ61a~61dの配置位置を模式的に示す図である。具体的には、図14は、光の波長λと光センサの分光感度S(λ)との関係が、図10に示す曲線301によって表されるとともに、入射する各色レーザ光の波長λと光センサへ入射する最大光量P(λ)との関係が、図10に示す棒401~403によって表される場合の光センサ61a~61dの配置位置を模式的に示している。図14に示す曲線501は、図11と同じ曲線である。また、図14に示す光センサ61a~61dの配置位置は、第2の光路と直交する平面で見たときの配置位置であり、円の直径はレーザ光のビーム径に相当している。図14に示す場合にも、図11に示す場合と同様に、光路中心からの距離|r|は、ra>rb>rc>rd=0の関係を満たす。なお、図14に示す光センサ61a~61dの配置位置はあくまでも一例に過ぎず、P(λ)×I(λ)×S(λ)が一定であるという関係を満たしていれば適宜変更可能である。
【0062】
以上説明した実施の形態3によれば、実施の形態1と同様に、複数の光源の光量比を精度よく一定に保つことができる。
【0063】
また、実施の形態3によれば、同一の第2の光路上に4つの光センサ61a~61dを最適化して配置しているため、光源部51a~51dの出力を最大としたときに光センサ54a~54dに対して互いに同等の照度のレーザ光を照射することができる。
【0064】
また、実施の形態3によれば、照明光の外部への出射位置に対して最も近いダイクロイックミラー52dに対応する第2の光路上で各色レーザ光を検出することにより、ダイクロイックミラーの特性バラつきや変動などの影響を低減し、内視鏡2に供給する光との一致性をさらに向上させることができる。
【0065】
(実施の形態4)
図15は、実施の形態4に係る光源装置の構成を示す図である。同図に示す光源装置7は、実施の形態1で説明した光源装置5と光センサの構成が異なる。これ以外の光源装置7の構成は、光源装置5の構成と同様である。以下、光源装置5が有する構成要素と同じ構成要素には、実施の形態1と同じ符号を付して説明する。
【0066】
光源装置7は、4つの光センサユニット71a~71dを有する。光センサユニット71aは、高照度領域である光路中心に位置する光センサ711aと、光路中心からビーム径の1/2近くまで離れた低照度領域に位置する光センサ712aとを有する。
【0067】
図16は、光センサユニット71aにおける光センサ711a、712aの配置位置を模式的に示す図である。図16に示す曲線501は、図11と同じ曲線である。また、図16に示す光センサ711a、712aの配置位置は、第2の光路と直交する平面平面で見たときの配置位置であり、円の直径はビーム径に相当している。
【0068】
なお、光センサユニット71bが有する光センサ711b、712bの配置位置、光センサユニット71cが有する光センサ711c、712cの配置位置、光センサユニット71dが有する光センサ711d、712dの配置位置も同様である。
【0069】
以上説明した実施の形態4によれば、実施の形態1と同様に、複数の光源の光量比を精度よく一定に保つことができる。
【0070】
また、実施の形態4によれば、1つの色に対して互いに照度が異なる領域で各色のレーザ光を検出するため、1つの光センサがレーザ光を検出する場合と比較して、より広いダイナミックレンジの光を検出することができる。したがって、高い分解能で調光を行うことができ、内視鏡用の光源として好適である。
【0071】
また、実施の形態4によれば、一組の光センサと共通のNDフィルタを用いるだけで照度レンジを拡大することができ、NDフィルタの減光率の調整等が不要であるため、製造に要するコストを抑制することができ、経済的な光源装置を提供することができる。
【0072】
なお、実施の形態4において、各光センサユニットが有する光センサの数は3以上であってもよい。
【0073】
(実施の形態5)
図17は、実施の形態5に係る光源装置の構成を示す図である。同図に示す光源装置8は、実施の形態1で説明した光源装置5と比較して、NDフィルタ53a~53d、および光学フィルタ55b~55dを有しない一方、補正部81を有する。以下、説明の便宜上、光源部51a、51b、51c、51dを、それぞれ光源部51-1、51-2、51-3、51-4という。また、光センサ54a、54b、54c、54dをそれぞれ光センサ54-1、54-2、54-3、54-4という。これら以外の光源装置8の構成要素には、光源装置5の構成要素と同じ符号を付して説明する。
【0074】
補正部81は、光センサ54-1~54-4が検出した光量を補正する。補正部81は、補正の演算を行うために必要な各種プログラムや各種データを記憶している。補正部81は、CPUまたはFPGA等のハードウェア、およびRAM、ROM等のメモリを用いて構成される。
【0075】
以下、補正部81が行う補正の演算について説明する。
光センサ54-i(i=1~4)の検出値をsiとする。検出値siは光学フィルタを経ていないため、一般に互いに波長帯域が異なる複数の光が混色した状態の検出値である。このうち、検出値s1は赤のみの検出値であり、検出値s2は赤および緑が混色した検出値であり、検出値s3は赤、緑および青が混色した検出値であり、検出値s4は赤、緑、青およびバイオレットが混色した検出値である。
【0076】
補正部81は、検出値siを補正することによって単色での検出値s’iを算出する。具体的には、検出値s’1は赤色レーザ光の光量、検出値s’2は緑色レーザ光の光量、検出値s’3は青色レーザ光の光量、検出値s’4はバイオレットレーザ光の光量である。
【0077】
補正部81は、検出値s’iを算出するために、あらかじめ光源部51-iが発生するレーザ光の光センサ54-jへの寄与aijを記憶している。寄与aijは、光源部51-iのみを起動したときの光センサ54-jの検出値である。例えば、寄与a11は、光源部51-1のみを起動したときの光センサ54-1の検出値であり、a11=1である。同様に、a22=a33=a54=1である。また、光源装置8の構成からも明らかなように、aij=0(i<j)である。寄与aijは、以下に示す下三角行列Aの成分として表される。
【数1】
式(1)からも明らかなように、行列Aの行列式は1であり、逆行列A-1を有する。逆行列A-1は、
【数2】
と表される。
【0078】
ここで、単色の検出値siを成分とする列ベクトルs=(s1,s2,s3,s4Tと、混色の検出値s’iを成分とする列ベクトルs’=(s’1,s’2,s’3,s’4Tを定義する。(・・・)Tは転置行列を意味する。このとき、列ベクトルsと列ベクトルs’は、s=As’、またはs’=A-1sの関係にある。
【0079】
補正部81は、光センサ54-iの検出値を成分とする列ベクトルsと、あらかじめ成分aijを記憶している行列Aとを用いて、列ベクトルs’=A-1sを算出することにより、光源51-iが発生したレーザ光のうち光センサ54-iが受光する光量を補正する。
【0080】
以上説明した実施の形態5によれば、実施の形態1と同様に、複数の光源の光量比を精度よく一定に保つことができる。
【0081】
また、実施の形態5によれば、光学フィルタやNDフィルタが不要であるため、部品点数を減らして製造に要するコストを抑制し、経済的な光源装置を提供することができる。
【0082】
なお、ここでは光源装置8が光源部および光センサを4つずつ備える場合を説明したが、より一般に光源装置が同数の光源部および光センサを備える場合にも、補正部81が同様の演算を行うことによって単色の光量を算出することができる。例えば、光源部および光センサの数がN(Nは正の整数)である場合、列ベクトルs、s’はそれぞれN成分を有し、寄与aijを成分とする行列AはN行N列の行列となるが、補正部81が行う演算はs’=A-1sに他ならない。
【0083】
また、光源装置内での光の合成の仕方に応じて補正を組み合わせてもよい。例えば、5個の光源部を有する光源装置において、5つの光源部を3個のグループと2個のグループに分けて、各グループで上記同様の補正演算を行い、それらを用いて光を合成してもよい。
【0084】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態1~5によってのみ限定されるべきものではない。例えば、半導体レーザの代わりにLED(Light Emitting Diode)を用いることによって光源部を構成してもよい。
【0085】
また、複数の光源部の色の組み合わせおよび第1の光路における配置順序は、上述した実施の形態に限らない。複数のダイクロイックミラーや複数の光学フィルタの透過特性も、複数の光源部の色の組み合わせおよび第1の光路における配置順序に応じて適宜調整すればよい。
【0086】
また、超音波内視鏡または工業用内視鏡の光源装置として適用してもよいし、内視鏡以外の用途の光源装置として適用してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 内視鏡システム
2 内視鏡
3 処理装置
4 表示装置
5、5A、6、7、8 光源装置
21 光学系
22 撮像素子
23 ライトガイド
24 照明レンズ
31 画像処理部
32 同期信号生成部
33 入力部
34、58 制御部
35 記憶部
51a~51d、51-1~51-4 光源部
52a~52e ダイクロイックミラー
53a~53e NDフィルタ
54a~54d、54-1~54-4、61a~61d、711a~711d、712a~712d 光センサ
55b~55d 光学フィルタ
56 レンズ
57 駆動部
61、71a~71d 光センサユニット
81 補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
図17