(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ダクト
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20220119BHJP
F16L 17/06 20060101ALI20220119BHJP
F16L 23/024 20060101ALI20220119BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
F02M35/10 101K
F02M35/10 101N
F16L17/06
F16L23/024
F16J15/06 P
(21)【出願番号】P 2018072682
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上山 展弘
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-322954(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167100(WO,A1)
【文献】特開2003-269157(JP,A)
【文献】特開平10-159665(JP,A)
【文献】実開平5-62787(JP,U)
【文献】特開平5-65960(JP,A)
【文献】特開2015-55303(JP,A)
【文献】特開平9-255086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F16L 17/06
F16J 15/06
F16B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のパイプの端部に設けられたフランジに金属板が固定されており、シール面が前記金属板によって構成されているダクトであり、
前記フランジにおける前記金属板と対向するフェイス面及び前記金属板における前記フランジと対向するフェイス面のそれぞれに、前記パイプの開口端の周囲を取り囲む環状の溝が設けられており、
前記溝に収容される環状の本体部と、同本体部から同本体部の径方向内側に突出し、前記フランジにおけるフェイス面及び前記金属板におけるフェイス面に挟まれてバインダによる接合箇所を区画するバインダ保持部と、を有するシール部材を備え、
前記本体部を各々のフェイス面に設けられた前記溝に収容し、且つ前記バインダ保持部を挟んだ状態で、前記フランジと前記金属板とが、前記バインダ保持部によって区画された箇所においてバインダを介して化学結合しているダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂製のパイプの端部に設けられたフランジに金属製の板材が取り付けられているインテークマニホールドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製のフランジと金属製の板材とを接合する際には、バインダを用いて化学結合させることが考えられる。しかし、バインダを用いて化学結合させる場合には、フランジ及び板材の接合面の平面度を厳しく管理する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するためのダクトは、樹脂製のパイプの端部に設けられたフランジに金属板が固定されており、シール面が前記金属板によって構成されている。このダクトでは、前記フランジにおける前記金属板と対向するフェイス面及び前記金属板における前記フランジと対向するフェイス面のそれぞれに、前記パイプの開口端の周囲を取り囲む環状の溝が設けられている。そして、このダクトは、前記溝に収容される環状の本体部と、同本体部から同本体部の径方向内側に突出し、前記フランジにおけるフェイス面及び前記金属板におけるフェイス面に挟まれてバインダによる接合箇所を区画するバインダ保持部と、を有するシール部材を備えている。また、このダクトでは、前記本体部を各々のフェイス面に設けられた前記溝に収容し、且つ前記バインダ保持部を挟んだ状態で、前記フランジと前記金属板とが、前記バインダ保持部によって区画された箇所においてバインダを介して化学結合している。
【0006】
上記構成では、バインダを介在させて接合する箇所が、バインダ保持部を挟んでいる箇所に限られている。そのため、上記構成によれば、平面度の管理が必要な箇所を、バインダ保持部を挟む部分に絞り込むことができる。したがって、フランジと金属板とのフェイス面全体にバインダを介在させて化学結合させるダクトと比較して、フェイス面の平面度の管理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】パイプのフランジにおけるフェイス面の正面図。
【
図6】ガスケットを取り付けた状態のフランジの正面図。
【
図7】ダクトの端部における接合箇所近傍を拡大して示す断面図。
【
図8】変更例のダクトにおけるガスケット及びフランジの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ダクトの一実施形態について、
図1~
図7を参照して説明する。
図1に示されているように、ダクト10では、樹脂製のパイプ100の端部に設けられているフランジ110に金属板200が固定されている。これにより、このダクト10では、シール面11が金属板200によって構成されている。
【0009】
なお、このダクト10は、ターボチャージャと接続される吸気ダクトである。ダクト10には、フランジ110及び金属板200を貫通するボルト孔12が2つ設けられている。ダクト10は、ターボチャージャにおける取付座面とシール面11との間に金属のガスケットを挟んだ状態で、これらのボルト孔12に挿通させたボルトによって取付座面に締結される。
【0010】
ダクト10では、金属板200は、フランジ110にバインダを介した化学結合によって接合されている。
図2に示されているように、パイプ100におけるフランジ110のフェイス面111には、パイプ100の開口端114の周囲を取り囲む環状の溝113が設けられている。なお、
図2は、金属板200を接合する前のフランジ110のフェイス面111を示している。フェイス面111とは、フランジ110において金属板200と対向する面のことである。また、フランジ110には、ボルト孔12を構成するボルト孔112が2つ設けられている。
【0011】
図3に示されているように、金属板200の中央部には、パイプ100の開口端114と等しい直径の貫通孔214が設けられている。この貫通孔214は、金属板200をフランジ110に接合した際に、パイプ100の開口端114と重なる位置に設けられている。すなわち、この貫通孔214は、
図1に示されているように金属板200をフランジ110に接合した際に、ダクト10の開口端になる。
【0012】
また、金属板200のフェイス面211には、貫通孔214の周囲を取り囲む環状の溝213が設けられている。なお、フェイス面211とは、金属板200において、フランジ110のフェイス面111と対向する面のことである。溝213は、溝113と同じ寸法になっており、貫通孔214を開口端114に重ねるようにフェイス面111とフェイス面211とを向かい合わせたときに、溝213と溝113とが全周に亘って向かい合うように設計されている。すなわち、金属板200がフランジ110に接合された際には、溝213も溝113と同様に、パイプ100の開口端114の周囲を取り囲むことになる。
【0013】
そして、金属板200には、ボルト孔12を構成するボルト孔212が2つ設けられている。これらのボルト孔212は、貫通孔214を開口端114に重ねるようにフェイス面111とフェイス面211とを向かい合わせたときに、2つのボルト孔112と重なる位置に設けられている。これにより、フランジ110と金属板200とを接合したときには、ボルト孔112とボルト孔212とが連通し、これらボルト孔112,212によってダクト10のボルト孔12が構成される。
【0014】
ダクト10では、フランジ110と金属板200との間に、
図4に示されている金属のガスケット300を挟みこむとともに、バインダを介してフランジ110と金属板200とを化学結合させて接合している。なお、ガスケット300は、フランジ110や金属板200よりも柔らかく、変形しやすい金属で構成されている。
【0015】
図4に示されているように、ガスケット300の本体部310は、円環状をなしている。本体部310は、溝113,213に挿入できるように、内径及び外径が設定されている。そして、本体部310は、フランジ110に金属板200を接合する際に、溝113と溝213の双方に跨るように溝113,213内に収容される。
【0016】
図5に示されているように、本体部310は断面形状が六角形をなしており、本体部310におけるフランジ110の溝113に収容される下端部に六角形の頂点の1つが位置し、この頂点の部分が下端PBになっている。また、本体部310における金属板200の溝213に収容される上端部にも六角形の頂点の1つが位置しており、この頂点の部分が上端PTになっている。
【0017】
また、
図4及び
図5に示されているように、ガスケット300は、円環状の本体部310に加え、本体部310から径方向内側に突出した3つのバインダ保持部320を有している。
図5に示されているように、バインダ保持部320は、高さ、幅ともに本体部310よりも小さく、本体部310の上端PTと下端PBとの間の中央部から本体部310の径方向内側に突出している。なお、
図5及び
図7では、説明の便宜上、バインダ保持部320の高さを大きめに誇張して図示している。
【0018】
また、
図4に示されているように、バインダ保持部320は円弧状に湾曲していて両端が本体部310に接続している。これにより、
図4及び
図5に示されているように、バインダ保持部320と本体部310とに取り囲まれた部分には、バインダを収容するバインダ収容空間SP1が形成されている。
【0019】
図6には、ガスケット300をフランジ110に取り付けた状態を示している。金属板200をフランジ110に接合する際には、
図6に示されているように、フェイス面111の溝113にガスケット300の本体部310を嵌め込み、ガスケット300のバインダ保持部320をフェイス面111上に配置する。次に、フェイス面111上におけるバインダ保持部320によって取り囲まれたバインダ収容空間SP1内にバインダを塗布する。そして、金属板200のフェイス面211における溝213にガスケット300の本体部310が嵌り込むように、金属板200の位置を合わせ、金属板200をフランジ110側に押し付けて本体部310を溝213に嵌め込む。
【0020】
これにより、
図7に示されているように、このダクト10では、ガスケット300のバインダ保持部320がフランジ110のフェイス面111と金属板200のフェイス面211とに挟まれた状態になっている。そして、バインダ保持部320と本体部310との間のバインダ収容空間SP1にバインダ400が閉じ込められており、バインダ400が介在している箇所においてフランジ110と金属板200とが化学結合している。すなわち、ダクト10では、バインダ保持部320によってバインダ400による接合箇所が区画されており、バインダ保持部320によって区画された箇所においてフランジ110と金属板200とがバインダ400を介して化学結合している。
【0021】
なお、フランジ110のフェイス面111におけるバインダ保持部320を挟む部分と、金属板200のフェイス面211におけるバインダ保持部320を挟む部分は、バインダ400による化学結合を実現する上で必要な平面度になるように、表面に加工が施されている。
【0022】
また、
図7に示されているように、溝213に収容されている本体部310の上端PT及び溝113に収容されている本体部310の下端PBは、金属板200をフランジ110に取り付けるために押し付けた際に潰されている。これにより、ガスケット300の本体部310が溝113,213の底に密着し、フランジ110と金属板200との間をシールしている。
【0023】
本実施形態の効果について説明する。
(1)バインダ400を介在させて接合する箇所が、バインダ保持部320を挟んでいる箇所に限られているため、平面度の管理が必要な箇所を、バインダ保持部320を挟む部分に絞り込むことができる。そのため、フランジ110と金属板200とのフェイス面111,211全体にバインダを介在させて化学結合させるダクトと比較して、平面度の管理が容易である。
【0024】
(2)バインダ保持部320によって、バインダ400を閉じ込めることができるため、バインダ400がフェイス面111,211からはみ出してしまうことを抑制できる。これにより、はみ出したバインダ400によって吸気の清浄度が低下したり、ダクト10の見た目が悪くなったりしてしまうことを抑制できる。
【0025】
(3)ダクト10は、シール面11が金属板200で構成されているため、金属のガスケットを使用して、ターボチャージャとの接合面をシールすることができる。したがって、高いシール性を確保しやすい。
【0026】
(4)ダクト10では、シール面11を金属で構成している一方で、パイプ100を樹脂で構成している。そのため、全体を金属で構成しているダクトよりも軽量化しやすい。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0027】
・バインダ保持部320の形状は適宜変更可能である。例えば、
図8に示されているように、ガスケット300の本体部310とパイプ100の開口端114との距離を確保できる場合には、バインダ収容空間SP2を本体部310から離間させることが好ましい。
図8に示されている変更例では、本体部310との間に脚部322,323を設け、湾曲したアーク部321を本体部310から離間させるとともに、本体部310から離間した位置で脚部322,323間に亘って延びる桁部324を設け、アーク部321と桁部324とによってバインダ収容空間SP2を区画している。こうした構成によれば、バインダ収容空間SP2に収容されたバインダが桁部324によって堰き止められる。そのため、バインダが溝113,213に入り込んでしまい、ガスケット300によるシール性が悪化してしまうことも抑制することができる。
【0028】
・上記実施形態では、バインダ保持部320が3つ設けられている構成を例示したが、バインダ保持部320の数は3つには限らない。例えば、バインダ保持部320は1つでも、2つでもよく、また4つ以上であってもよい。また、ガスケット300の周方向におけるバインダ保持部320の位置の配分も適宜変更してもよい。
【0029】
・シール部材として金属製のガスケット300を示したが、シール部材の素材は金属に限らない。シール部材をゴム製のガスケットにしてもよい。例えば、シール部材をゴム製のO(オー)リングなどにしてもよい。なお、はみ出したバインダがゴム製の部品などに付着すると化学変化により部品を変質させてしまうおそれがある。その点、
図8に示した変更例のように、本体部とバインダ収容空間との距離を確保する構成を採用すれば、ゴム製のガスケットを採用した場合でも、バインダの付着による本体部の変質を抑制し、シール性の低下を抑制できる。
【0030】
・ターボチャージャと連結される吸気ダクトを例示したが、同様の構成はターボチャージャに接続される部分に限らずに適用することができる。また、同様の構成は、吸気ダクトに限らず、フランジを備えたダクトに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10…ダクト、11…シール面、12…ボルト孔、100…パイプ、110…フランジ、111…フェイス面、112…ボルト孔、113…溝、114…開口端、200…金属板、211…フェイス面、212…ボルト孔、213…溝、214…貫通孔、300…ガスケット、310…本体部、320…バインダ保持部、321…アーク部、322,323…脚部、324…桁部、400…バインダ、SP1,SP2…バインダ収容空間。