(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/30 20060101AFI20220119BHJP
B60N 2/36 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B60N2/30
B60N2/36
(21)【出願番号】P 2017203326
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】三上 恵仁
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-084058(JP,A)
【文献】特開2005-053240(JP,A)
【文献】特開2012-131287(JP,A)
【文献】中国実用新案第204398921(CN,U)
【文献】特開2015-229486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0273211(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するときの着座状態と、シートクッションが前記着座状態から前側かつ下側に移動してフロアの近くに配置される収納状態とに切替可能な乗物用シートであって、
前記シートクッションのフレームを構成するクッションフレームと、
前記フロアに固定されるベース部材と、
前記クッションフレームの前部に上端部が回動可能に結合され、前記ベース部材に下端部が回動可能に結合されたリンクと、
前記クッションフレームに設けられ、前記着座状態から前記収納状態に切り替えたときに前記ベース部材に当接する緩衝部材と、
前記クッションフレームに固定され、前記リンクの上端部が回動可能に結合されたブラケットと、を備え、
前記ベース部材は、前記リンクの下端部が回動可能に結合された前側結合部と、前記前側結合部の位置から前に延びる前側延出部とを有し、
前記前側延出部は、前記着座状態から前記収納状態に切り替えたときに前記緩衝部材が当接する当接部を有
し、
前記緩衝部材は、前記ブラケットに固定されており、
前記ブラケットは、前後に順に並ぶ第1壁、第2壁および第3壁と、前記第1壁と前記第2壁の下端同士を連結する第4壁と、前記第2壁と前記第3壁の左右方向の一端同士を連結する第5壁とを有し、
前記第1壁、前記第2壁および前記第3壁の上端部は、前記クッションフレームに固定され、
前記第5壁には、前記リンクの上端部が回動可能に結合され、
前記第4壁には、前記緩衝部材が固定されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記リンクの上端部は、左右方向において、前記第5壁の、前記緩衝部材が配置された側とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
乗員が着座するときの着座状態と、シートクッションが前記着座状態から前側かつ下側に移動してフロアの近くに配置される収納状態とに切替可能な乗物用シートであって、
前記シートクッションのフレームを構成するクッションフレームと、
前記フロアに固定されるベース部材と、
前記クッションフレームの前部に上端部が回動可能に結合され、前記ベース部材に下端部が回動可能に結合されたリンクと、
前記クッションフレームに設けられ、前記着座状態から前記収納状態に切り替えたときに前記ベース部材に当接する緩衝部材と、
前記クッションフレームに固定され、前記リンクの上端部が回動可能に結合されたブラケットと、を備え、
前記ベース部材は、前記リンクの下端部が回動可能に結合された前側結合部と、前記前側結合部の位置から前に延びる前側延出部とを有し、
前記前側延出部は、前記着座状態から前記収納状態に切り替えたときに前記緩衝部材が当接する当接部を有
し、
前記ブラケットは、前後に順に並ぶ第1壁、第2壁および第3壁と、前記第1壁と前記第2壁の下端同士を連結する第4壁と、前記第2壁と前記第3壁の左右方向の一端同士を連結する第5壁とを有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項4】
前記リンクおよび前記緩衝部材は、前記クッションフレームの左右にそれぞれ設けられ、
左右の前記緩衝部材は、左右の前記リンクよりも左右方向外側に配置されて
おり、
前記緩衝部材は、下から上に向けて前記クッションフレームに取り付けられていることを特徴とする請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第3壁の下端面は、左右方向の前記一端から他端にいくにつれて上に位置する傾斜面となっていることを特徴とする請求項
1から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記クッションフレームは、一部が屈曲したパイプフレームを含み、
前記ブラケットは、前記パイプフレームの直線状に延びた部分に
下から取り付けられていることを特徴とする請求項
1から請求項
5のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記前側延出部は、前記当接部より前に前記フロアに固定される固定部を有することを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
シートバックが前に倒れて前記シートクッションに重なる動作に連動して前記着座状態から前記収納状態に切り替わるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記シートバックのフレームを構成するバックフレームを備え、
前記バックフレームは、板金からなるバックパネルを含み、
前記バックパネルは、前記収納状態のときに、前記フロアの、前記ベース部材が固定される面に対して平行に配置されることを特徴とする請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記シートバックのフレームを構成するバックフレームを備え、
前記ベース部材は、前記バックフレームが結合された後側結合部と、
前記フロア上で前後に延びて前記前側結合部と前記後側結合部をつなぐ接続部とを有することを特徴とする請求項
8または請求項9に記載の乗物用シート。
【請求項11】
前記クッションフレームの後部は、前記バックフレームに回動可能に結合され、
前記バックフレームは、前記クッションフレームと前記バックフレームの回動軸よりも下で前記後側結合部に回動可能に結合されていることを特徴とする請求項10に記載の乗物用シート。
【請求項12】
前記緩衝部材は、略円柱状の本体部と、前記本体部の上面から上方に突出したネジとを有することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員が着座するときの着座状態と、シートクッションが着座状態から前側かつ下側に移動してフロアの近くに配置される収納状態とに切替可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートとして、特許文献1には、乗員が着座するときの状態と、シートバックをシートクッションの上に重ね合わせ、支持脚を前へ回動させることにより、シートをフロントフロア上に載置して収納した状態とに切替可能な車両の着座シートが開示されている。この技術では、シートフレームのフロア側の面に緩衝部材が配設されており、収納した状態において緩衝部材がフロントフロアに当接してシートを支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-055566号公報(
図1および
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術は、フロントフロアの形状に合わせて緩衝部材の形状が形成されているので、収納状態におけるシートの支持構造が、シートの構成部品ではない車両のフロアの形状に依存してしまうという問題がある。そのため、フロアの形状に応じて収納状態におけるシートの姿勢が変わってしまう可能性や、フロアの形状ごとに形状の異なる緩衝部材を用意する必要性が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、フロアの形状に依存しない、収納状態におけるシートの支持構造を実現することができる乗物用シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、収納状態のシートを安定して支持することを目的とする。
また、本発明は、リンクおよび緩衝部材の取付剛性を向上させることを目的とする。
また、本発明は、リンクと緩衝部材を取り付けるためのブラケットをコンパクトな構成とすることを目的とする。
また、本発明は、ブラケットを簡易な構成とすることを目的とする。
また、本発明は、着座状態から収納状態に切り替えるときの作業性を向上させることを目的とする。
また、本発明は、シートをフロアに取り付けるときの作業性を向上させることを目的とする。
また、本発明は、緩衝部材が外れるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明の乗物用シートは、乗員が着座するときの着座状態と、シートクッションが前記着座状態から前側かつ下側に移動してフロアの近くに配置される収納状態とに切替可能な乗物用シートであって、前記シートクッションのフレームを構成するクッションフレームと、前記フロアに固定されるベース部材と、前記クッションフレームの前部に上端部が回動可能に結合され、前記ベース部材に下端部が回動可能に結合されたリンクと、前記クッションフレームに設けられ、前記着座状態から前記収納状態に切り替えたときに前記ベース部材に当接する緩衝部材と、を備え、前記ベース部材は、前記リンクの下端部が回動可能に結合された前側結合部と、前記前側結合部の位置から前に延びる前側延出部とを有し、前記前側延出部は、前記着座状態から前記収納状態に切り替えたときに前記緩衝部材が当接する当接部を有することを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、フロアの形状に依存しない、収納状態におけるシートの支持構造を実現することができる。
【0008】
前記した乗物用シートにおいて、前記リンクおよび前記緩衝部材は、前記クッションフレームの左右にそれぞれ設けられ、左右の前記緩衝部材は、左右の前記リンクよりも左右方向外側に配置されている構成とすることができる。
【0009】
これによれば、左右の緩衝部材の間隔を広くすることができるので、収納状態のシートを安定して支持することができる。
【0010】
前記した乗物用シートは、前記クッションフレームに固定され、前記リンクの上端部が回動可能に結合されたブラケットを備え、前記緩衝部材は、前記ブラケットに固定されている構成とすることができる。
【0011】
前記した乗物用シートにおいて、前記ブラケットは、前後に順に並ぶ第1壁、第2壁および第3壁と、前記第1壁と前記第2壁の下端同士を連結する第4壁と、前記第2壁と前記第3壁の左右方向の一端同士を連結する第5壁とを有し、前記第1壁、前記第2壁および前記第3壁の上端部は、前記クッションフレームに固定され、前記第5壁には、前記リンクの上端部が回動可能に結合され、前記第4壁には、前記緩衝部材が固定されている構成とすることができる。
【0012】
これによれば、第4壁および第5壁の剛性を向上させることができるので、これらに取り付けられる緩衝部材およびリンクの取付剛性を向上させることができる。
【0013】
前記した乗物用シートにおいて、前記リンクの上端部は、左右方向において、前記第5壁の、前記緩衝部材が配置された側とは反対側に配置されている構成とすることができる。
【0014】
これによれば、リンクと緩衝部材の干渉を抑制しつつ、ブラケットをコンパクトな構成とすることができる。
【0015】
前記した乗物用シートにおいて、前記第3壁の下端面は、左右方向の前記一端から他端にいくにつれて上に位置する傾斜面となっている構成とすることができる。
【0016】
前記した乗物用シートにおいて、前記クッションフレームは、一部が屈曲したパイプフレームを含み、前記ブラケットは、前記パイプフレームの直線状に延びた部分に固定されている構成とすることができる。
【0017】
これによれば、ブラケットをパイプフレームの屈曲部分の形状に倣った形状に形成する必要がないので、ブラケットを簡易かつコンパクトな構成とすることができる。
【0018】
前記した乗物用シートにおいて、前記前側延出部は、前記当接部より前に前記フロアに固定される固定部を有する構成とすることができる。
【0019】
これによれば、当接部より前の固定部でベース部材をフロアに固定することで、フロアに対する当接部の位置が安定するので、収納状態のシートを安定して支持することができる。
【0020】
前記した乗物用シートは、シートバックが前に倒れて前記シートクッションに重なる動作に連動して前記着座状態から前記収納状態に切り替わるように構成することができる。
【0021】
これによれば、シートを着座状態から収納状態に切り替えるときの作業性を向上させることができる。
【0022】
前記した乗物用シートは、前記シートバックのフレームを構成するバックフレームを備え、前記ベース部材は、前記バックフレームが結合された後側結合部と、前後に延びて前記前側結合部と前記後側結合部をつなぐ接続部とを有する構成とすることができる。
【0023】
これによれば、ベース部材にクッションフレームとバックフレームの両方を結合させることができるので、シートをフロアに取り付けるときの作業性を向上させることができる。
【0024】
前記した乗物用シートにおいて、前記クッションフレームの後部は、前記バックフレームに回動可能に結合され、前記バックフレームは、前記クッションフレームと前記バックフレームの回動軸よりも下で前記後側結合部に回動可能に結合されている構成とすることができる。
【0025】
前記した乗物用シートにおいて、前記緩衝部材は、下から前記クッションフレームに取り付けられている構成とすることができる。
【0026】
これによれば、収納状態のシートに加わった荷重が緩衝部材の取付方向に沿うので、緩衝部材がクッションフレームから外れるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、フロアの形状に依存しない、収納状態におけるシートの支持構造を実現することができる。
【0028】
また、本発明によれば、左右の緩衝部材を左右のリンクよりも左右方向外側に配置することで、収納状態のシートを安定して支持することができる。
【0029】
また、本発明によれば、ブラケットの、第1壁と第2壁を連結する第4壁に緩衝部材を固定し、第2壁と第3壁を連結する第5壁にリンクを結合することで、緩衝部材およびリンクの取付剛性を向上させることができる。
【0030】
また、本発明によれば、リンクを、第5壁の、緩衝部材が配置された側とは反対側に配置することで、リンクと緩衝部材の干渉を抑制しつつ、ブラケットをコンパクトな構成とすることができる。
【0031】
また、本発明によれば、ブラケットをパイプフレームの直線状に延びた部分に固定することで、ブラケットを簡易かつコンパクトな構成とすることができる。
【0032】
また、本発明によれば、前側延出部の、当接部より前に固定部を設けることで、収納状態のシートを安定して支持することができる。
【0033】
また、本発明によれば、シートバックが前に倒れてシートクッションに重なる動作に連動して着座状態から収納状態に切り替わる構成とすることで、シートを着座状態から収納状態に切り替えるときの作業性を向上させることができる。
【0034】
また、本発明によれば、ベース部材が前側結合部、後側結合部および接続部を有することで、シートをフロアに取り付けるときの作業性を向上させることができる。
【0035】
また、本発明によれば、緩衝部材が下からクッションフレームに取り付けられていることで、緩衝部材がクッションフレームから外れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施形態に係る乗物用シートの斜視図であり、着座状態を示す図(a)と、収納状態を示す図(b)である。
【
図3】クッションフレームの左に設けられたベース部材、リンクおよび緩衝部材の拡大斜視図である。
【
図4】ブラケット、リンクおよび緩衝部材の斜視図である。
【
図5】クッションパイプフレームに固定されたブラケットの斜視図である。
【
図6】クッションパイプフレーム、緩衝部材およびベース部材を上側から見た図である。
【
図7】左右の緩衝部材とリンクを前側から見た図である。
【
図8】シートフレーム、ベース部材、リンクおよび緩衝部材の側面図であり、着座状態を示す図(a)と、収納状態を示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照しながら発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートに座った者(乗員)から見た、前後、左右、上下を基準とする。
【0038】
図1(a)に示すように、本実施形態の乗物用シートは、自動車に搭載される車両用シートSであり、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを備えている。車両用シートSは、
図1(a)に示す着座状態と、
図1(b)に示す収納状態とに切替可能な構成となっている。着座状態とは、シートクッションS1に対してシートバックS2が立ち上がった状態、すなわち、乗員が着座するときの状態である。また、収納状態とは、シートバックS2が前に倒れてシートクッションS1に重なり、シートクッションS1が着座状態から前側かつ下側に移動して車両のフロアFLの近くに配置される状態である。
【0039】
車両用シートSは、
図2に示すようなシートフレームFに、ウレタンフォームなどからなるパッド材と、布地や皮革などからなる表皮材を被せることで構成されている。シートフレームFは、シートクッションS1のフレームを構成するクッションフレームF1と、シートバックS2のフレームを構成するバックフレームF2とを備えている。
【0040】
クッションフレームF1は、パイプフレームとしてのクッションパイプフレーム11と、左右のリアサイドフレーム12と、リアフレーム13とを含んで構成されている。
クッションパイプフレーム11は、金属製のパイプ材の一部が屈曲した略U字状のフレームであり、略前後に延びる左右のフロントサイドフレーム11Aと、フロントサイドフレーム11Aの前端同士を連結するフロントフレーム11Bとを有している。
リアサイドフレーム12は、板金からなり、側面視略L字状に形成されている。リアサイドフレーム12の前部には、フロントサイドフレーム11Aの後部が溶接などにより接続されている。
リアフレーム13は、左右のリアサイドフレーム12同士を連結している。
【0041】
バックフレームF2は、バックパイプフレーム21と、左右のロアサイドフレーム22と、ロアフレーム23と、バックパネル24とを含んで構成されている。
バックパイプフレーム21は、金属製のパイプ材の一部が屈曲した略U字状のフレームであり、略上下に延びる左右のアッパーサイドフレーム21Aと、アッパーサイドフレーム21Aの上端同士を連結するアッパーフレーム21Bとを有している。アッパーフレーム21Bには、ヘッドレストS3を取り付けるための一対のサポートブラケット25が溶接などにより固定されている。
ロアサイドフレーム22は、板金からなり、上下に長い長尺状に形成されている。ロアサイドフレーム22の上部には、左右のアッパーサイドフレーム21Aの下部が溶接などにより接続されている。
ロアフレーム23は、板金からなり、左右のロアサイドフレーム22同士を連結している。
【0042】
バックパネル24は、板金からなる。バックパネル24は、バックパイプフレーム21、左右のロアサイドフレーム22およびロアフレーム23を後ろから覆うように配置され、バックパイプフレーム21および左右のロアサイドフレーム22に溶接などにより接合されている。バックパネル24には、前方に突出し、後から見て凹む形状をなす複数のビード部24Aが形成されている。
【0043】
車両用シートSは、ベース部材30と、リンク40と、緩衝部材50と、ブラケット60とを備えている。ベース部材30、リンク40、緩衝部材50およびブラケット60は、クッションフレームF1の左右にそれぞれ設けられている。本実施形態において、左右のベース部材30、リンク40、緩衝部材50およびブラケット60は、略左右対称の形状に形成されている。そこで、以下では、主に、クッションフレームF1の左に設けられたベース部材30、リンク40、緩衝部材50およびブラケット60を図示しながらその構成を詳細に説明する。
【0044】
図3に示すように、ベース部材30は、車両のフロアFLに固定される部材であり、前後に長く延びている。ベース部材30は、板金からなり、フロアFLに沿うように配置されるベース部31と、ベース部31の左右方向内側の端から上方へ立ち上がるように形成された側壁32とを有している。また、ベース部材30は、前側結合部34と、前側延出部35と、後側結合部36と、後側延出部37と、接続部38とを有している。
【0045】
前側結合部34は、リンク40の下端部が結合された部分であり、側壁32に設けられている。
前側延出部35は、前側結合部34の位置から前に延びる部分であり、当接部35Aと、固定部としての前側固定部35Bとを有している。当接部35Aは、車両用シートSを着座状態から収納状態に切り替えたときに緩衝部材50が当接する部分であり、ベース部31の上面のうち、前側結合部34よりも前側に設けられている。前側固定部35Bは、フロアFLに固定される部分であり、当接部35Aより前のベース部31の前端部に設けられている。前側固定部35Bには、上下に貫通する挿通穴35Cが形成されている。前側固定部35B(ベース部材30の前部)は、挿通穴35Cに通したボルト91をフロアFLに溶接されたナット92(
図8参照)に締結することで、フロアFLに固定されている。
【0046】
後側結合部36は、バックフレームF2の下端部が結合された部分である。本実施形態において、後側結合部36は、ベース部31および側壁32の後部に溶接されたフレーム取付ブラケット36Bにより形成されている。フレーム取付ブラケット36Bは、板金を断面視略U字状に屈曲して形成されており、その上端部にバックフレームF2の下端部が結合されている。なお、後側結合部36は、側壁32の一部として側壁32と一体に形成されていてもよい。
後側延出部37は、後側結合部36の位置から後ろに延びる部分であり、後側固定部37Bを有している。後側固定部37Bは、フロアFLに固定される部分であり、後側結合部36より後ろのベース部31の後端部に設けられている。後側固定部37Bには、上下に貫通する挿通穴37Cが形成されている。後側固定部37B(ベース部材30の後部)は、挿通穴37Cに通したボルト91をフロアFLに溶接されたナット92(
図8参照)に締結することで、フロアFLに固定されている。
【0047】
接続部38は、前側結合部34と後側結合部36をつなぐ部分であり、前後に延びている。具体的に、接続部38は、ベース部31および側壁32の、前側結合部34と後側結合部36の間の部分により構成されている。
【0048】
緩衝部材50は、車両用シートSを着座状態から収納状態に切り替えたときにベース部材30に当接して衝撃を緩和する部材であり、クッションフレームF1やベース部材30よりも軟らかい部材からなる。一例として、緩衝部材50は、ゴムまたは樹脂を含んでなる。
図4に示すように、緩衝部材50は、略円柱状の本体部51と、本体部51の上面から上方に突出したネジ52とを有している。緩衝部材50は、ブラケット60に固定されていることで、ブラケット60を介してクッションフレームF1(
図5参照)に設けられている。
【0049】
ブラケット60は、板金からなり、第1壁61と、第2壁62と、第3壁63と、第4壁64と、第5壁65とを有している。
第1壁61、第2壁62および第3壁63は、前後方向(詳しくは、フロントサイドフレーム11Aが延びる方向)に略直交するように形成された壁であり、前後に、具体的には、前から後ろに向けて第1壁61、第2壁62および第3壁63の順に並んで配置されている。第3壁63は、その下端面が、左右方向の一端から他端、具体的には、左右方向内側の端(右端)から外側の端(左端)にいくにつれて上に位置する傾斜面63Aとなっている。
【0050】
第4壁64は、第1壁61と第2壁62の下端同士を連結する壁である。第4壁64には、緩衝部材50が固定されている。詳しくは、第4壁64は、略中央に上下に貫通したネジ穴64Aを有し、緩衝部材50は、ネジ52がネジ穴64Aに下から係合して取り付けられていることで、第4壁64に固定されている。
第5壁65は、第2壁62と第3壁63の左右方向の一端同士、具体的には、左右方向内側の端(右端)同士を連結する壁である。
【0051】
図5に示すように、ブラケット60は、第1壁61、第2壁62および第3壁63の上端部が溶接(溶接部W参照)によりクッションフレームF1に固定されている。より詳しく説明すると、
図6に示すように、ブラケット60は、クッションパイプフレーム11の直線状に延びた部分、具体的には、略前後にまっすぐ延びるフロントサイドフレーム11Aの前部に固定されている。言い換えると、本実施形態において、ブラケット60は、クッションパイプフレーム11の屈曲した部分、具体的には、フロントサイドフレーム11Aとフロントフレーム11Bの連結部分を避けた位置に固定されている。
【0052】
図5に戻り、ブラケット60は、フロントサイドフレーム11Aの下側の面に下から上に向けて取り付けられている。また、前述したとおり、緩衝部材50は、ブラケット60の第4壁64に下から上に向けて取り付けられている(
図4参照)。そのため、緩衝部材50は、下から上に向けてクッションフレームF1に取り付けられている。
【0053】
図8(a)に示すように、緩衝部材50は、左右方向から見て、クッションフレームF1とベース部材30の間に配置されている。また、
図6に示すように、緩衝部材50は、上下方向から見て、クッションフレームF1およびベース部材30と重なって配置されている。また、
図7に示すように、緩衝部材50は、左右方向において、対応するリンク40の外側に配置されている。これにより、左右の緩衝部材50は、左右方向において左右のリンク40を挟むように、左右のリンク40よりも左右方向外側に配置されている。
【0054】
図3に示すように、リンク40は、金属からなる略上下に長い板状の部材である。リンク40は、その下端部がベース部材30に回動可能に結合されている。詳しくは、リンク40の下端部は、ベース部材30に設けられた前側結合部34の左右方向内側に第1軸A1を介して回動可能に結合されている。また、
図4および
図5に示すように、リンク40は、その上端部がブラケット60に回動可能に結合されている。詳しくは、リンク40の上端部は、ブラケット60の第5壁65の左右方向内側に第2軸A2を介して回動可能に結合されている。これにより、リンク40の上端部は、ブラケット60を介してクッションフレームF1の前部に回動可能に結合されている。リンク40の上端部は、左右方向において、第5壁65の、緩衝部材50が配置された側とは反対側に配置されている。具体的には、緩衝部材50が第5壁65の左右方向外側(左側)に配置され、リンク40の上端部が第5壁65の左右方向内側(右側)に配置されている。
【0055】
図3に戻って、クッションフレームF1の後部は、バックフレームF2に回動可能に結合されている。詳しくは、クッションフレームF1は、略L字状のリアサイドフレーム12の後部の上端部が、バックフレームF2を構成するロアサイドフレーム22の上下方向略中央であって左右方向内側に第3軸A3を介して回動可能に結合されている。
また、バックフレームF2は、ベース部材30に回動可能に結合されている。詳しくは、バックフレームF2は、ロアサイドフレーム22の下端部が、ベース部材30に設けられた後側結合部36の左右方向内側に第4軸A4を介して回動可能に結合されている。第4軸A4は、第3軸A3よりも下に配置されているため、本実施形態において、バックフレームF2は、クッションフレームF1とバックフレームF2の回動軸である第3軸A3よりも下で後側結合部36に回動可能に結合されている。
【0056】
次に、本実施形態に係る車両用シートSの作用効果について説明する。
図8(a)に示す着座状態からシートバックS2のロックを解除し、シートバックS2をシートクッションS1に対して前に倒していくと、バックフレームF2が第4軸A4を中心に前側に回動する。これにより、第3軸A3が第4軸A4を中心に前側に回動し、クッションフレームF1が前側に移動していく。また、クッションフレームF1が前側に移動すると、第2軸A2が第1軸A1を中心に前側かつ下側に回動することで、リンク40が第1軸A1を中心に前へ倒れるように回動し、クッションフレームF1が前側かつ下側に移動する。
【0057】
そして、
図8(b)に示すように、緩衝部材50がベース部材30の前側延出部35に設けられた当接部35Aに当接すると、車両用シートSは、シートクッションS1が着座状態よりもフロアFLの近くに配置され、シートバックS2がシートクッションS1に対して重なる収納状態に切り替わる。このように、本実施形態では、車両用シートSは、シートバックS2が前に倒れてシートクッションS1に重なる動作に連動して着座状態から収納状態に切り替わるように構成されている。
【0058】
一方、
図8(b)に示す収納状態からシートバックS2をシートクッションS1に対して起こしていくと、バックフレームF2が第4軸A4を中心に上側に回動する。これにより、第3軸A3が第4軸A4を中心に上側に回動し、クッションフレームF1が上側に移動していく。また、クッションフレームF1が上側に移動すると、第2軸A2が第1軸A1を中心に上側かつ後側に回動することで、リンク40が第1軸A1を中心に立ち上がるように回動し、クッションフレームF1が上側かつ後側に移動する。そして、
図8(a)に示すように、シートバックS2がシートクッションS1に対して所定の角度で立ち上がると、シートバックS2がそれ以上後ろに倒れないようにロックがかかり、車両用シートSは、着座状態に切り替わる。
【0059】
本実施形態では、着座状態から収納状態に切り替わったときに、緩衝部材50が、フロアFLではなく、車両用シートS自身の一部であるベース部材30の前側延出部35に設けられた当接部35Aに当接するので、フロアFLの形状に依存しない、収納状態におけるシートの支持構造を実現することができる。これにより、例えば、フロアFLの形状に応じて収納状態におけるシートの姿勢が変わるということがないため、収納状態におけるシートの姿勢を、フロアFLの形状によらずに、一定の姿勢とすることができる。また、フロアFLの形状ごとに形状の異なる緩衝部材50を用意する必要がないため、例えば、部品の在庫管理などの手間やコストを削減することができる。
【0060】
また、左右の緩衝部材50が左右のリンク40よりも左右方向外側に配置されているので、左右の緩衝部材50の間隔を広くすることができる。これにより、車両用シートSが着座状態から収納状態に切り替わって左右の緩衝部材50が左右の対応するベース部材30に当接することで、収納状態のシートを安定して支持することができる。
【0061】
また、ブラケット60の、クッションフレームF1に固定される第1壁61と第2壁62の間にこれらを連結するように第4壁64が設けられ、クッションフレームF1に固定される第2壁62と第3壁63の間にこれらを連結するように第5壁65が設けられているので、第4壁64および第5壁65の剛性を向上させることができる。そして、剛性が向上した第4壁64に緩衝部材50が固定され、第5壁65にリンク40の上端部が結合されているので、緩衝部材50およびリンク40の取付剛性を向上させることができる。
【0062】
また、リンク40の上端部が、左右方向において、第5壁65の、緩衝部材50が配置された側とは反対側に配置されているので、リンク40と緩衝部材50の干渉を抑制することができる。また、リンク40と緩衝部材50の干渉を考慮しなくてもよい分、ブラケット60をコンパクトな構成とすることができる。
【0063】
また、ブラケット60がクッションパイプフレーム11の直線状に延びた部分(フロントサイドフレーム11A)に固定されているので、ブラケット60を簡易かつコンパクトな構成とすることができる。補足すると、ブラケットをクッションパイプフレーム11の屈曲した部分に固定する場合、例えば、ブラケットをクッションパイプフレーム11の屈曲部分の形状に倣った形状に形成する必要があるが、本実施形態では、その必要がないので、ブラケット60を簡易かつコンパクトな構成とすることができる。
【0064】
また、前側延出部35が当接部35Aより前に前側固定部35Bを有するので、前側固定部35Bでベース部材30をフロアFLに固定することで、フロアFLに対する当接部35Aの位置が安定する。これにより、例えば、当接部35Aのがたつきなどを抑制することができる。そのため、緩衝部材50が当接部35Aに当接した収納状態のシートを安定して支持することができる。
【0065】
また、車両用シートSは、シートバックS2が前に倒れてシートクッションS1に重なる動作に連動して着座状態から収納状態に切り替わるように構成されているので、例えば、シートバックをシートクッションに重ね合わせ、その後、シートクッションを前側かつ下側へ移動させる場合と比較して、シートを着座状態から収納状態に切り替えるときの作業性を向上させることができる。
【0066】
また、ベース部材30が前側結合部34、後側結合部36、および、前後に延びて前側結合部34と後側結合部36をつなぐ接続部38を有するので、ベース部材30にクッションフレームF1とバックフレームF2の両方を結合させることができる。これにより、例えば、クッションフレームF1が結合されるベース部材と、バックフレームF2が結合されるベース部材を別に備える場合と比較して、ベース部材30をフロアFLに固定する際に、クッションフレームF1およびバックフレームF2を安定させた状態で固定作業を行うことできるので、シートをフロアFLに取り付けるときの作業性を向上させることができる。
【0067】
また、緩衝部材50が下から上に向けてクッションフレームF1に取り付けられているので、収納状態のシートに加わった荷重が緩衝部材50の取付方向に沿うようにして上から下にベース部材30に伝わる。これにより、緩衝部材50に対しクッションフレームF1から外れる方向の荷重、具体的には、前後や左右からの荷重がかかりにくいので、緩衝部材50がクッションフレームF1から外れるのを抑制することができる。
【0068】
以上、発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、左右のベース部材30、リンク40、緩衝部材50、ブラケット60が略左右対称の形状に形成されていたが、これに限定されない。例えば、左右のベース部材は、同じの作用効果を発揮できる構成であれば、左右対称の形状でなくてもよい。左右のリンク、緩衝部材、ブラケットについても同様である。
【0069】
また、前記実施形態では、緩衝部材50が、ブラケット60を介してクッションフレームF1のパイプ材からなるクッションパイプフレーム11に固定されていたが、これに限定されない。例えば、緩衝部材は、板金などからなる板状のフレームに固定されていてもよい。また、前記実施形態では、左右の緩衝部材50が左右のリンク40よりも左右方向外側に配置されていたが、これに限定されず、例えば、左右のリンクよりも左右方向内側に配置されていてもよいし、左右方向において左右のリンクと同じ位置(前後方向から見て重なる位置)に配置されていてもよい。また、前記実施形態では、緩衝部材50が、クッションフレームF1の左右に1つずつ、合計で2つ設けられていたが、これに限定されず、例えば、1つだけ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0070】
また、前記実施形態で説明したブラケット60は、発明に係るブラケットの一例であり、前記実施形態に限定されない。例えば、前記実施形態では、ブラケット60の第5壁65が、第2壁62と第3壁63の左右方向内側の端同士を連結する壁であったが、第2壁62と第3壁63の左右方向外側の端同士を連結する壁であってもよい。また、前記実施形態では、ブラケット60がクッションパイプフレーム11の直線状に延びた部分に固定されていたが、例えば、パイプフレームの屈曲した部分に固定されていてもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、車両用シートSがリンク40と緩衝部材50の両方をクッションフレームF1に固定する一体のブラケット60を備えていたが、これに限定されない。例えば、車両用シートは、リンクをクッションフレームに固定する第1のブラケットと、緩衝部材をクッションフレームに固定する第2のブラケットを別に備えていてもよい。また、リンクや緩衝部材は、ブラケットを介さずに、クッションフレームに直接取り付けられていてもよい。
【0072】
また、前記実施形態で説明したベース部材30は、発明に係るベース部材の一例であり、前記実施形態に限定されない。例えば、前記実施形態では、ベース部材30が前後にまっすぐ延びていたが、これに限定されず、ベース部材の前端部および後端部の少なくとも一方が屈曲して下方に向けて延びていてもよい。また、例えば、ベース部材の前端部が屈曲して下方に延びる構成の場合、この前端部にフロアに固定される固定部を設けてもよい。また、車両用シートは、発明に係るベース部材(リンクを介してクッションフレームが結合される第1のベース部材)とは別に、バックフレームが結合される第2のベース部材をさらに備えていてもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、車両用シートSは、シートバックS2が前に倒れてシートクッションS1に重なる動作に連動して着座状態から収納状態に切り替わるように構成されていたが、これに限定されず、シートバックの動作とシートクッションの動作が連動しない構成であってもよい。例えば、車両用シートは、シートバックを前に倒してシートクッションに重ねた後に、シートクッションを着座状態から前側かつ下側に移動させるように構成されていてもよい。
【0074】
また、前記実施形態では、乗物用シートとして自動車に搭載される車両用シートSを例示したが、これに限定されず、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などに搭載されるシートであってもよい。
【0075】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0076】
11 クッションパイプフレーム
11A フロントサイドフレーム
30 ベース部材
34 前側結合部
35 前側延出部
35A 当接部
35B 前側固定部
36 後側結合部
38 接続部
40 リンク
50 緩衝部材
60 ブラケット
61 第1壁
62 第2壁
63 第3壁
63A 傾斜面
64 第4壁
65 第5壁
A3 第3軸
F1 クッションフレーム
F2 バックフレーム
FL フロア
S 車両用シート
S1 シートクッション
S2 シートバック