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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】床版の切断方法、及び、切断装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20220120BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20220120BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
E01D24/00
E04G23/08 D
E04G23/02 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019069487
(22)【出願日】2019-03-30
(65)【公開番号】P2020165271
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】596118530
【氏名又は名称】テクノス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502345278
【氏名又は名称】株式会社誠和ダイア
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 寧
(72)【発明者】
【氏名】森田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】谷内 健治
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝
(72)【発明者】
【氏名】田近 正春
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-311605(JP,A)
【文献】特開平02-311603(JP,A)
【文献】特開平02-311604(JP,A)
【文献】特開平06-299709(JP,A)
【文献】米国特許第05645040(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E04G 23/08
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーソーと、ワイヤーソーの駆動機構と、ワイヤーソーをガイドするガイド手段と、ガイド手段の上下位置を調整するための上下位置調整機構とを有した切断装置を用いて、ワイヤーソーの駆動機構及びガイド手段を床版の下面に取付けた状態で、ワイヤーソーを駆動して、ワイヤーソーにより、桁の上面に取付けられた床版と桁の上面との境界近傍における床版の切断対象部位を切断する床版の切断方法において、
ワイヤーソーによる切断位置の上下高さ位置の変更が必要な場合に、上下位置調整機構を用いてガイド手段の上下位置を調整することにより、ワイヤーソーによる切断位置の上下高さ位置を調整するようにしたことを特徴とする床版の切断方法。
【請求項2】
桁と桁とを接続する添接板が設置された添接板設置区間においては、上下位置調整機構を用いてガイド手段の上下位置を調整することにより、床版の切断対象部位を、当該添接板及び添接板を固定するボルトの上方の位置に設定したことを特徴とする請求項1に記載の床版の切断方法。
【請求項3】
桁の幅方向の一端縁に沿って切断動作中のワイヤーソーの下面と接触する回転可能な円周面を有したローラを配置するとともに、桁の幅方向の他端縁に沿って切断動作中のワイヤーソーをガイドするプーリを配置したことを特徴とする請求項又は請求項に記載の床版の切断方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の床版の切断方法に用いる切断装置であって、
ワイヤーソーと、ワイヤーソーの駆動機構と、ワイヤーソーをガイドするガイド手段と、ガイド手段及び駆動機構を床版の下面に取付けるための取付手段と、ガイド手段の上下位置を調整するための上下位置調整機構とを備えたことを特徴とする切断装置。
【請求項5】
取付手段が、ガイド手段の上下位置を調整するための上下位置調整機構を備えたことを特徴とする請求項に記載の切断装置。
【請求項6】
上下位置調整機構は、
床版の下面に取付けられて上下方向に延長する上下延長板を有した床側取付部材と、
床側取付部材の上下延長板に対して上下方向に移動可能なように取付けられた支持体側取付部材と、
支持体側取付部材に取付けられて、床版の下面よりも下方において床版の下面に沿って延長するように設けられた支持体と、
ブラケットを介して支持体の延長方向に固定位置を変更できるように支持体に固定されたガイド手段とを備え、
支持体側取付部材を床側取付部材の上下延長板に対して上下方向に移動させることにより、支持体を介してガイド手段の上下位置を調整可能に構成されたことを特徴とする請求項5に記載の切断装置。
【請求項7】
上下位置調整機構は、
床版の下面に取付けられた床側取付部材と、
上端が床側取付部材の下面に連結されて垂直方向に延長するように設けられた第1の支持体と、
上下方向に移動可能なようにスライダを介して第1の支持体に取付けられ、かつ、ガイド手段が連結された第2の支持体と、
上端が床側取付部材に連結されたボルトと、
スライダに連結されたとともに、上下方向に移動可能なようにボルトの下端側に連結された支持体側取付部材とを備え、
支持体側取付部材を上下移動させることによって、スライダ及び第2の支持体を介してガイド手段の上下位置を調整可能に構成されたことを特徴とする請求項5に記載の切断装置。
【請求項8】
ガイド手段は、ワイヤーソーが掛け渡される複数のプーリを備えたことを特徴とする請求項乃至請求項7のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項9】
各プーリの回転中心軸が当該プーリの上面より上方に突出しないように構成されたことを特徴とする請求項8に記載の切断装置。
【請求項10】
ガイド手段は、切断動作中のワイヤーソーの下面と接触する回転可能な円周面を有したローラを備えたことを特徴とする請求項乃至請求項7のいずれか一項に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーソーを備えた切断装置を用いて床版を切断する際の切断方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、橋梁の構造物としてのコンクリート床版(以下、床版という)を更新する工事においては、現存の桁を再利用することから、桁の上面に取付けられた古い床版を切断して撤去し、新しい床版と桁とを接合するようにしている。
当該橋梁の床版を更新する際の解体工事においては、桁の上面に取付けられた床版と桁の上面との境界近傍部分を、ワイヤーソーを備えた切断装置を用いて切断する切断方法が知られている。
例えば、当該切断装置を、床版の上面、即ち、道路の上面側に設置して切断する方法(特許文献1参照)、あるいは、切断装置を床版の下面側に設置して切断する方法(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-145797号公報
【文献】特開2018-145668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された切断装置を用いた切断方法では、切断装置を道路の上面側に設置して切断するため、道路の通行止め期間が長期化してしまうという課題があった。
一方、特許文献2に開示された切断装置を用いた切断方法では、切断装置を床版の下面側に設置して切断するため、道路の通行止め期間を短縮できる。
しかしながら、特許文献2の切断方法では、切断装置のガイド部材を取付部材を介して桁に取付けているので、桁が損傷する可能性がある。
また、特許文献2の切断方法では、床版と桁の上面との間に、ワイヤーソーを挿入するため、及び、ガイド部材の取付部材を桁の上フランジに取付けるための貫通孔を形成しているが、ガイド部材の取付部材を桁に取付けるために、桁の上フランジの上面が露出するような貫通孔を形成しなくてはならず、当該貫通孔の形成時に桁の上面を損傷する可能性もある。
また、特許文献2の切断方法では、ワイヤーソーと桁の上フランジの上面との間の間隔は、桁の上面に位置される取付部材の上端部を形成する板の板厚しかないため、当該板厚が薄い場合には、ワイヤーソーを駆動した場合に、ワイヤーソーが桁の上フランジの上面に接触して桁の上面を損傷する可能性もある。
以上説明したように、特許文献2の切断方法によれば、切断して撤去する部分以外の桁等の再利用する部分を損傷してしまう可能性が高いという問題点があった。
本発明は、床版周辺の利用を損なうことなく、かつ、切断して撤去する部分以外の再利用する部分を損傷する可能性を低くできる床版の切断方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る床版の切断方法は、ワイヤーソーと、ワイヤーソーの駆動機構と、ワイヤーソーをガイドするガイド手段と、ガイド手段の上下位置を調整するための上下位置調整機構とを有した切断装置を用いて、ワイヤーソーの駆動機構及びガイド手段を床版の下面に取付けた状態で、ワイヤーソーを駆動して、ワイヤーソーにより、桁の上面に取付けられた床版と桁の上面との境界近傍における床版の切断対象部位を切断する床版の切断方法において、ワイヤーソーによる切断位置の上下高さ位置の変更が必要な場合に、上下位置調整機構を用いてガイド手段の上下位置を調整することにより、ワイヤーソーによる切断位置の上下高さ位置を調整するようにしたことを特徴とするので、構造物周辺の利用を損なうことなく、かつ、予定の切断位置にワイヤーソーを精度良く案内できるようになるとともに、切断中に支障物がある場合、ワイヤーソーによる切断位置のレベルを調整することができることから、支障物を回避できて、切断して撤去する部分以外の再利用する部分を損傷する可能性を低くできる。また、床版更新工事において、床版周辺の利用、すなわち、道路の利用を損なうことなく、かつ、再利用する桁を損傷する可能性を低くできる。
また、桁と桁とを接続する添接板が設置された添接板設置区間においては、上下位置調整機構を用いてガイド手段の上下位置を調整することにより、床版の切断対象部位を、当該添接板及び添接板を固定するボルトの上方の位置に設定したので、支障物であるこれら添接板及びボルトを回避して切断でき、再利用する桁の損傷の可能性を低くできる。
また、桁の幅方向の一端縁に沿って切断動作中のワイヤーソーの下面と接触する回転可能な円周面を有したローラを配置するとともに、桁の幅方向の他端縁に沿って切断動作中のワイヤーソーをガイドするプーリを配置したので、ローラ及びプーリにより、ワイヤーソーを予定の切断位置に精度良く導くことができて、切断精度が向上するとともに、ワイヤーソーがローラ上を滑らかに移動し、ワイヤーソーによる切断動作をスムーズに行えるようになる。
また、本発明に係る切断装置は、上述した床版の切断方法に用いる切断装置であって、ワイヤーソーと、ワイヤーソーの駆動機構と、ワイヤーソーをガイドするガイド手段と、ガイド手段及び駆動機構を床版の下面に取付けるための取付手段と、ガイド手段の上下位置を調整するための上下位置調整機構とを備えたことを特徴とするので、構造物周辺の利用を損なうことなく、かつ、切断して撤去する部分以外の再利用する部分を損傷する可能性を低くできる切断装置を提供できる。また、予定の切断位置にワイヤーソーを精度良く案内できるようになるとともに、切断中に支障物がある場合、ワイヤーソーによる切断位置のレベルを調整することができることから、支障物を回避できて、再利用する部分の損傷の可能性を低くできる。
また、取付手段が、ガイド手段の上下位置を調整するための上下位置調整機構を備えたことを特徴とするので、予定の切断位置にワイヤーソーを精度良く案内できるようになるとともに、切断中に支障物がある場合、ワイヤーソーによる切断位置のレベルを調整することができることから、支障物を回避できて、再利用する部分の損傷の可能性を低くできる。
また、上下位置調整機構は、床版の下面に取付けられて上下方向に延長する上下延長板を有した床側取付部材と、床側取付部材の上下延長板に対して上下方向に移動可能なように取付けられた支持体側取付部材と、支持体側取付部材に取付けられて、床版の下面よりも下方において床版の下面に沿って延長するように設けられた支持体とブラケットを介して支持体の延長方向に固定位置を変更できるように支持体に固定されたガイド手段とを備え、支持体側取付部材を床側取付部材の上下延長板に対して上下方向に移動させることにより、支持体を介してガイド手段の上下位置を調整可能に構成されたことを特徴とする。
また、上下位置調整機構は、床版の下面に取付けられた床側取付部材と、上端が床側取付部材の下面に連結されて垂直方向に延長するように設けられた第1の支持体と、上下方向に移動可能なようにスライダを介して第1の支持体に取付けられ、かつ、ガイド手段が連結された第2の支持体と、上端が床側取付部材に連結されたボルトと、スライダに連結されたとともに、上下方向に移動可能なようにボルトの下端側に連結された支持体側取付部材とを備え、支持体側取付部材を上下移動させることによって、スライダ及び第2の支持体を介してガイド手段の上下位置を調整可能に構成されたことを特徴とする。
また、ガイド手段は、ワイヤーソーが掛け渡される複数のプーリを備えたことを特徴とするので、予定の切断位置にワイヤーソーを精度良く案内できるようになる。
また、各プーリの回転中心軸が当該プーリの上面より上方に突出しないように構成されたことを特徴とするので、プーリを構造物の下面により近付けることができるようになり、切断対象部位を決める際の設定範囲の自由度が増すという効果が得られる。
また、ガイド手段は、切断動作中のワイヤーソーの下面と接触する回転可能な円周面を有したローラを備えたことを特徴とするので、ワイヤーソーを予定の切断位置に精度良く導くことができて、切断精度が向上するとともに、ワイヤーソーがローラ上を滑らかに移動し、ワイヤーソーによる切断動作をスムーズに行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】床版の下面に取付けられた切断装置を床版の上方から見た平面図。
図2】床版の下面に取付けられた切断装置を図1の右側から見た側面図。
図3】床版の下面に取付けられた切断装置を図1の下側から見た正面図。
図4】従動プーリを示す図であって、(a)は無頭ボルトによる回転中心軸を備えたプーリを示す断面図、(b)は有頭ボルトによる回転中心軸を備えたプーリを示す断面図。
図5】取付手段を示す図であって、(a)は第1取付部材を示す斜視図、(b)は第2取付部材を示す斜視図。
図6】床版の下面に取付けられた第1取付部材の拡大図。
図7】駆動側配列プーリ群の他例を示す側面図。
図8】切断方向に並ぶように配置された複数の従動プーリ及び駆動プーリにより構成されたガイド手段を備えた切断装置を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図。
図9】ローラコンベヤを有したガイド手段を備えた切断装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)はローラコンベヤで案内されるワイヤーソーを示す斜視図。
図10】ローラを有したガイド手段を備えた切断装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)はローラで案内されるワイヤーソーを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係る構造物の切断方法及び切断装置を、図1乃至図6に基づいて説明する。
尚、図1は橋梁の床版を更新する際の解体工事において、床版の下面に取付けられた切断装置を床版の上方から見た平面図であるので、床版の下方に位置する切断装置及び桁は、本来、点線で示すべきであるが、構成を明確に表すため実線で示した。
【0008】
実施形態1に係る構造物の切断方法は、例えば、橋梁の床版を更新する際の解体工事において、図3に示すように、ワイヤーソー10を備えた切断装置1を用いて、桁2の上面2tにずれ止め2K等の定着部材を介して取付けられた構造物としての鉄筋コンクリート製の床版3と桁2の上面2tとの境界近傍における床版3の切断対象部位3Aを切断する場合に、切断装置1を床版3の下面3uに取付けて切断装置1を床版3に支持させた状態でワイヤーソー10を駆動して、床版3における桁2の上面2tとの境界近傍部分である切断対象部位3Aを切断するようにしたことにより、切断装置1を床版3の下面3u側に設置して床版3を切断できるとともに、切断して撤去する部分以外の再利用する部分である桁2を損傷する可能性を低くできるようにした切断方法である。
尚、切断対象部位3Aは、例えば、桁2の上面2tの幅方向両端側より上方に向けて傾斜する傾斜下面3utに形成された床版3のハンチ(テーパ)部分における桁2の上面2tとの境界近傍部分である。
また、床版3の下面3uは、ハンチ部分の傾斜下面3ut以外の下面である。
尚、本明細書において、幅方向は、図1図3において「W」で示した方向、上下方向は、図2図3において「上下」で示した方向と定義して説明する。
また、図2,3において、符号4は足場板などの作業台である。
【0009】
切断装置1は、ワイヤーソー10と、ワイヤーソー10のガイド部と、ワイヤーソー10の駆動装置と、ガイド部及び駆動機構を床版3の下面3uに取付けるための取付手段とを備える。
【0010】
ワイヤーソー10は、例えば、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだビーズを一定間隔に装着した無端環状のワイヤー(ダイヤモンドワイヤー)により構成される。
【0011】
切断装置1は、ワイヤーソー10が、例えば、床版3の切断対象部位3Aであるハンチ部分の一方の傾斜下面3utと他方の傾斜下面3utとに亘って貫通するように形成された貫通孔3aに通されるとともに、駆動プーリ20、複数の従動プーリに掛け渡されて無端環状に構成され、駆動プーリ20が回転しながら移動してワイヤーソー10を牽引することにより、ワイヤーソー10がコンクリート部分に食い込んで切断対象部位3Aを切断するように構成されている。
【0012】
ワイヤーソー10のガイド部は、ガイド手段と、ガイド手段を支持する支持手段とを備える。
【0013】
ガイド手段は、例えば、駆動プーリ20と、複数の従動プーリ群とを備える。
【0014】
複数の従動プーリ群は、例えば図1図2に示すように、ワイヤーソー10を切断方向にガイドする切断側配列プーリ群21と、ワイヤーソー10の循環経路を構成する切断方向に沿った切断側経路と駆動側経路との境界に設けられた少なくとも2つの経路変換用プーリ22,22と、ワイヤーソー10を駆動側にガイドする駆動側配列プーリ群23とを備える。
切断側配列プーリ群21は、例えば図1に示すように、桁2の上面2tの幅方向両側において、桁2の上面2tの延長方向に沿って間隔を隔てて配置された2個のプーリ、即ち、合計4個の従動プーリ25,25…により構成される。尚、切断側配列プーリ群21、及び、駆動側配列プーリ群23を構成する従動プーリの数は、複数個であればよい。
【0015】
切断側配列プーリ群21を構成する複数の各従動プーリ25,25…は、例えば図4(a)に示すように、回転中心軸25aと、回転中心軸25aを回転中心として回転可能なように設けられたプーリ本体(回転体)25bと、回転中心軸25aとプーリ本体25bとの間に位置されるように、プーリ本体25bの中心孔に組み込まれたベアリング25cとを備え、回転中心軸25aがブラケット25Zに固定された構成である。
尚、当該従動プーリ25は、図4(a)に示すように、回転中心軸25aとして無頭のボルトを使用し、当該回転中心軸25aの上端(一端)がプーリ本体25bの上面25rより上方に突出しないように構成されている。そして、当該回転中心軸25aの上端(一端)には、ベアリング押さえとして機能する低頭ねじ25dの雄ねじ部25eが螺着される雌ねじ部25fが形成されている。
当該従動プーリ25は、例えば、ブラケット25Zを介して後述する支持体28の延長方向に固定位置を変更できるように当該支持体28に固定される。例えば、従動プーリ25がブラケット25Zに固定され、当該ブラケット25Zが支持体28の延長方向に固定位置を変更できるよう図外のねじ等を用いて当該支持体28に固定される(図6参照)。
【0016】
即ち、ブラケット25Zに形成された貫通孔25gに回転中心軸25aの他端側を貫通させて当該回転中心軸25aの他端側のねじ部に座金25hを挿入してナット25iを締結することにより、回転中心軸25aをブラケット25Zに固定する。そして、回転中心軸25aの一端側から当該回転中心軸25aに、スペーサ25jを挿入した後、ベアリング25cが組み込まれたプーリ本体25bを挿入し、その後、回転中心軸25aの一端(上端)に低頭ねじ25dを締結することにより、ブラケット25Zに固定された従動プーリ25が構成される。
尚、プーリ本体25bの円形外周面には、ワイヤーソー10が挿入されてワイヤーソー10を循環移動させるためのガイド溝25mが形成されている。
また、低頭ねじ25dの低頭部25tの上面の中心には、六角レンチ等の工具を挿入して低頭ねじ25dを回転させるための工具挿入孔25kが形成されている。
【0017】
駆動側配列プーリ群23を構成する複数の各従動プーリ27,27…、及び、経路変換用プーリ22は、通常構成のプーリを使用すれば良い。
即ち、従動プーリ27,22は、例えば図4(b)に示すように、回転中心軸として有頭のボルト27aが使用された構成のプーリを用いればよい。
即ち、当該従動プーリ27,22は、ボルト27aを、ベアリング押さえ27cの中心孔、ベアリング25cが組み込まれたプーリ本体25bにおける軸受孔、スペーサ25jの中心孔、ブラケット25Zの貫通孔25gに貫通させた後、ボルト27aの先端側に座金25hを挿入してナット25iを締結することにより構成される。
尚、駆動側配列プーリ群23を構成する複数の各従動プーリ27,27…、及び、経路変換用プーリ22として、図4(a)に示した構成のプーリを使用しても良い。
【0018】
従動プーリ25の低頭ねじ25dの低頭部25tの高さ寸法h1(図4(a)参照)は、プーリ27,22の回転中心軸を構成する有頭のボルト27aの頭部27bの高さ寸法h2(図4(b)参照)よりも小さい。
即ち、切断側配列プーリ群21を構成する複数の各従動プーリ25,25…は、プーリ本体25bの上面25rから上方への突出量が、プーリ27,22と比べて小さくなるように構成されている。
【0019】
支持手段は、切断側配列プーリ群21を構成する各従動プーリ25,25…を支持する第1支持装置と、駆動側配列プーリ群23を構成する各従動プーリ27,27…、2つの経路変換用プーリ22,22、駆動プーリ20、及び、ワイヤーソー10の駆動装置を支持する第2支持装置と、経路変換用プーリ22を支持する第3支持装置とを備える。
【0020】
第1支持装置は、例えば図1に示すように、床版3の下面3uよりも下方において床版3の下面3uに沿って延長するように設けられた複数本の支持体28,28により構成される。
第2支持装置は、例えば図2に示すように、床版3の下面3uよりも下方において床版3の下面3uに沿って延長するように設けられた複数本の支持体28,28と、垂直方向に延長するように設けられた複数本の支持体29,29とが組み合わされた支持枠289により構成される。
第3支持装置は、例えば図3図5(b)に示すように、支持体29に対して上下方向に移動可能に設けられた支持体30により構成される。
支持体28,29,30は、例えば、断面矩形状の金属管等の長尺材により形成される。
【0021】
ワイヤーソー10の駆動装置は、駆動プーリ20と、駆動プーリ20を回転させるとともに、駆動プーリ20を直線往復移動させる駆動制御装置32とを備えて構成される。
駆動制御装置32は、例えば、駆動プーリ20の回転中心軸20Cに連結された回転駆動源としての図外のプーリ回転用モータ、駆動プーリ20の回転中心軸20Cを回転可能に支持する図外の軸受、駆動プーリ20を支持体29に沿って上下方向に往復動させる直線移動機構33とを備える。
【0022】
直線移動機構33は、例えば、支持体29側に設けられた図外のラックと、筐体側に設けられてラックと噛み合う図外のピニオンと、ピニオンを回転させる駆動源としての図外のプーリ移動用モータ(例えば油圧モータ)と、当該プーリ移動用モータの制御回路等とを備えて構成される。
即ち、ピニオンを回転させることで、ラックの延長方向、即ち、支持体29の上下延長方向に駆動プーリ20が往復動可能となるように構成されている。
【0023】
ガイド部及び駆動機構を床版3の下面3uに取付けるための取付手段は、第1支持装置を構成する複数本の支持体28,28を床版3の下面3uに取付けるための複数の第1取付部材41,41…と、第2支持装置を構成する支持枠289、及び、第3支持装置を構成する支持体30を床版3の下面3uに取付けるための複数の第2取付部材42とを備える。
【0024】
第1取付部材41は、例えば、図5(a),図6に示すように、床版3の下面3uにアンカーボルト40等で取付けられる床側取付部材43と、支持体28に取付けられる支持体側取付部材44とを備え、支持体側取付部材44が床側取付部材43の上下延長板43bに対して上下方向に移動可能となるように取付けられていることにより、支持体28の上下を位置調整して従動プーリ25の上下位置を調整可能な上下位置調整機構を備えた構成となっている
即ち、第1取付部材41は、ガイド手段としての従動プーリ25を床版3の下面3uに固定するとともに、従動プーリ25の上下位置を調整するための上下位置調整機構を備えた構成となっている。
【0025】
床側取付部材43は、アンカーボルト40等で床版3の下面3uに固定される固定板43aと、固定板43aの板面より当該板面と直交する下方に延長する上下延長板43bと、上下延長板43bの下端より上下延長板43bの板面と直交する方向に延長する落下防止板43cとを備える。
固定板43aにはアンカーボルト40を貫通させる貫通孔43dが形成され、上下延長板43bには上下延長板43bの延長方向に延長するように形成された長孔43eが形成され、落下防止板43cには上下調整用のねじ47が螺着される貫通ねじ孔44f(図6参照)が形成されている。
【0026】
支持体側取付部材44は、図外のブラケット及びボルト,ナット等の連結具で支持体28に連結された連結板44aと、連結板44aの一端より連結板44aの板面と直交する方向に延長して板面と上下延長板43bの板面とが接触した状態で上下延長板43bに連結される上下移動連結板44bとを備える。上下移動連結板44bには、連結ボルト45が貫通する貫通孔44c(図6参照)が形成されている。
【0027】
第1取付部材41は、支持体側取付部材44の上下移動連結板44bの上端が床側取付部材43の固定板43a側に位置されるように、上下移動連結板44bの板面と床側取付部材43の上下延長板43bの板面とを接触させ、かつ、支持体側取付部材44の連結板44aの下面を形成する板面と落下防止板43cの上面を形成する板面とを対向させた状態で、連結ボルト45を上下移動連結板44bの貫通孔44c及び上下延長板43bの長孔43eに通して、長孔43eより突出する連結ボルト45の先端側にナット46を締結することにより、支持体側取付部材44と床側取付部材43とが連結される。
そして、上下調整用のねじ47を、例えば、二重ナット48,49のねじ孔及び落下防止板43cの貫通ねじ孔44fに貫通させて、ねじ47の先端47t(図6参照)を連結板44aの下面を形成する板面に接触させることにより、第1取付部材41が構成される。
【0028】
従って、当該第1取付部材41の固定板43aがアンカーボルト40等で床版3の下面3uに固定されたことによって、支持体28,28が床版3に固定され、切断側配列プーリ群21を構成する複数の各従動プーリ25,25…が床版3に支持された構成となる。
そして、当該第1取付部材41が床版3に固定された状態で、連結ボルト45の先端側に締結されたナット46を緩めて、上下調整用のねじ47を上下動させることにより、連結板44aに連結された支持体28、及び、支持体28にブラケット25Zを介して固定された従動プーリ25の上下位置を調整できるようになる。
【0029】
例えば、図1の左側の3つの第1取付部材41の上下位置調整機構を調整して、図1の左側の支持体28のレベルを調整することによって、当該支持体28上にブラケット25Zを介して固定された図1の左側の2つの従動プーリ25,25を切断面上に位置させることができる。
また、図1の右側の3つの第1取付部材41の上下位置調整機構を調整して、図1の右側の支持体28のレベルを調整することによって、当該支持体28上にブラケット25Zを介して固定された図1の右側の2つの従動プーリ25,25を切断面上に位置させることができる。
【0030】
そして、上下位置調整が完了したら、連結ボルト45の先端側のナット46を締結するとともに、二重ナット48,49を締結することにより、従動プーリ25の上下位置が固定されることになる。
即ち、当該第1取付部材41は、従動プーリ25がブラケット25Zを介して連結された連結板44aを上下移動可能とした、長孔43e、連結ボルト45,ナット46,上下調整用のねじ47等を有し、従動プーリ25の上下位置を調整可能とした上下位置調整機構を備えている。
【0031】
支持枠289、及び、支持体30を床版3の下面3uに取付けるための第2取付部材42は、例えば、図5(b),図3に示すように、床版3の下面3uにアンカーボルト40等で取付けられる床側取付部材50と、ボルト51と、ボルト51の延長方向に移動自在となるようボルト51に連結された支持体側取付部材52とを備える。
床側取付部材50にはアンカーボルト40を貫通させる貫通孔50aが形成され、支持体側取付部材52にはボルト51を貫通させるための貫通孔52aが形成されている。
【0032】
例えば、図5(b)に示すように、ボルト51の上端(一端)が例えば床側取付部材50の下面に溶接された袋ナット56等の連結具によって床側取付部材50に連結され、ボルト51の下端(他端)を、ナット53のねじ孔、床側取付部材50の貫通孔50a、ナット54のねじ孔、ナット55のねじ孔に貫通させることにより、第2取付部材42が構成される。
そして、支持枠289の支持体29の上端(一端)が図外のブラケット及びボルト,ナット等の連結具によって床側取付部材50の下面に連結される。
また、支持体30がスライダ31を介して支持体29に上下方向に移動可能に取付けられており、当該スライダ31と支持体側取付部材52とが例えばブラケット57等の連結具を介して連結される。
さらに、図3に示すように、経路変換用プーリ22が、ブラケット22Zを介して支持体30に連結される。
【0033】
従って、当該第2取付部材42の床側取付部材50がアンカーボルト40等で床版3の下面3uに固定されたことによって、支持枠289,支持体30が床版3に固定され、駆動側配列プーリ群23を構成する各従動プーリ27,27…、2つの経路変換用プーリ22,22、駆動プーリ20、及び、ワイヤーソー10の駆動装置が、床版3に支持された構成となる。
そして、当該第2取付部材42が床版3に固定された状態で、経路変換用プーリ22が、ブラケット22Z,支持体30,スライダ31,ブラケット57を介して連結された支持体側取付部材52を上下移動させることによって、経路変換用プーリ22の上下位置を調整できるようになる。
即ち、当該第2取付部材42は、経路変換用プーリ22が連結された支持体側取付部材52を上下移動可能としたボルト51とナット53,54,55とを有し、経路変換用プーリ22の上下位置を調整可能とした上下位置調整機構を備えている。
【0034】
従って、第1取付部材41の上下位置調整機構、及び、第2取付部材42の上下位置調整機構を操作することで、ガイド手段としての従動プーリ25,22の上下位置を調整し、これら従動プーリ25,22に掛け渡されるワイヤーソー10を切断面上に位置させることができ、予定の切断対象部位3Aを正確に切断できるようになる。
【0035】
実施形態1の切断方法によれば、切断装置1が床版3の下面3uに固定された状態で、プーリ回転用モータとプーリ移動用モータとを駆動させて、駆動プーリ20を回転させて複数の従動プーリと駆動プーリ20とに掛け渡されたワイヤーソー10を循環移動させるとともに、駆動プーリ20を上下方向に移動させてワイヤーソー10を牽引することによって、ワイヤーソー10が切断対象部位3Aのコンクリートに食い込むので、コンクリートが切断される。
この際、取付手段としての第1取付部材41及び第2取付部材42の上下位置調整機構により、切断対象部位3Aに合わせて従動プーリ25,22の上下位置を調整することができ、予定の切断対象部位3Aを正確に切断できるようになる。
【0036】
尚、ワイヤーソー10による切断動作が進行するにつれて図1のワイヤーソー10の下側の部分が図1の上方側に移動する。そして、ワイヤーソー10の下側の部分が図1の下側の両方の従動プーリ25,25の位置まで到達したならば、ワイヤーソー10の駆動を停止してワイヤーソー10の図1の下側の部分を下側の両方の従動プーリ25,25から外して、下側の両方の従動プーリ25,25を図1の下方に移動させた後に、ワイヤーソー10の駆動を再開する。その後、ワイヤーソー10が図1の左上側の従動プーリ25に到達したならば、ワイヤーソー10の駆動を停止してワイヤーソー10の図1の左上の部分を左上の従動プーリ25から外して、当該左上の従動プーリ25を図1の上方に移動させた後に、ワイヤーソー10の駆動を再開することにより、図1の下の貫通孔3aから上の貫通孔3aまでの間の床版3の切断対象部位3Aを切断できる。
そして、所定範囲の床版3を桁2から切り離した後、当該切り離した床版3をクレーンで楊重可能な適当な大きさに分割して、クレーンで撤去する。
【0037】
以上説明したように、実施形態1の切断方法によれば、桁2の上面2tに取付けられた床版3と桁2の上面2tとの境界近傍における床版3の切断対象部位3Aとなるコンクリート部分をワイヤーソー10を有した切断装置1を用いて切断する際に、ワイヤーソー10の駆動機構及びガイド手段を床版3の下面3uに取付けた状態で、ワイヤーソー10を駆動することにより、床版3の切断対象部位3Aを切断するようにした。
即ち、実施形態1の切断方法によれば、切断装置1を床版3の下面3uにのみ取付けた状態でワイヤーソー10を駆動することにより、床版3と桁2の上面2tとの境界近傍における床版3の切断対象部位3Aを切断するようにしたので、床版更新工事において、切断装置1を床版3の下面3u側に設置して床版3を切断することにより、床版3の周辺の利用、すなわち、道路の利用を損なうことなく、かつ、切断して撤去する部分以外の再利用する部分である桁2を損傷する可能性を低くできるようになる。
【0038】
また、実施形態1の切断装置1によれば、ガイド手段は、ワイヤーソー10が掛け渡される複数のプーリ(従動プーリ群、及び、駆動プーリ)により構成されたので、予定の切断位置にワイヤーソー10を精度良く案内できるようになる。
【0039】
また、実施形態1の切断装置1によれば、ワイヤーソー10と、ワイヤーソー10の駆動機構と、ワイヤーソー10をガイドするガイド手段としての駆動プーリ20及び従動プーリ群と、ガイド手段及び駆動機構を床版3の下面3uに取付けるための取付手段としての第1取付部材41及び第2取付部材42を備えたので、床版更新工事において、床版3の下面3u側に設置して床版3を切断できるようになり、床版3の周辺の利用、すなわち、道路の利用を損なうことなく、かつ、切断して撤去する部分以外の再利用する部分である桁2を損傷する可能性を低くできる切断装置を提供できる。
【0040】
また、実施形態1の切断装置1によれば、ワイヤーソー10をガイドするガイド手段としての従動プーリ25,22を備え、取付手段としての第1取付部材41及び第2取付部材42が従動プーリ25,22の上下位置を調整する上下位置調整機構とを備えたので、第1取付部材41及び第2取付部材42により切断装置1が床版3の下面3uに固定された状態で、従動プーリ25の上下位置と経路変換用プーリ22の上下位置とを揃えることができるので、ワイヤーソー10による切断位置のレベル(上下高さ位置)を自由に設定できるようになる。
例えば、桁2と桁2とを接続する添接板が設置された添接板設置区間において、当該添接板及び添接板を固定するボルト等の支障物を逃げるように従動プーリ25を上方位置に設定できるようになり、桁2を損傷する可能性が低くなる。
【0041】
また、実施形態1の切断装置1によれば、従動プーリ25の回転中心軸25aの上端が当該プーリ25の上面25rより上方に突出しないように構成され、当該回転中心軸25aの上端には、ベアリング押さえとして機能する低頭ねじ25dが設けられたので、プーリ25(プーリ本体25b)の上面25rから上方への突出量が、通常構成のプーリ27,22と比べて小さくなる。
従って、例えば、従動プーリ25を、床版3のハンチ(テーパ)部分の傾斜下面3utの下方に位置させる場合において、上述した添接板設置区間で上述した添接板やボルト等の支障物を逃げるように従動プーリ25を上方に設置したい場合に、従動プーリ25を床版3の傾斜下面3utや下面3uにより近付けることができるようになって、上述した添接板やボルト等の支障物よりも上方の位置を切断できるようなり、桁2を損傷する可能性が低くくなる。
即ち、従動プーリ25を床版3の傾斜下面3utや下面3uにより近付けることができるようになり、切断対象部位を決める際の設定範囲の自由度が増すという効果が得られる。
【0042】
尚、添接板やボルト等の支障物を逃げるようにプーリを上方に設置できない場合、当該添接板やボルト等の支障物を切断しないように、ワイヤーソーによる切断動作を中止させたりする必要があり、作業効率が悪くなる。
一方、実施形態1に係る切断装置1によれば、従動プーリ25,22の上下位置を調整可能とする上下位置調整機構、及び、低頭ねじ25dを備えた従動プーリ25を用いて従動プーリ25を床版3の傾斜下面3utや下面3uにより近付けることができるようにした構成を備えているので、上述した添接板やボルト等の支障物を逃げるように従動プーリ25を設置できるようになり、ワイヤーソー10による切断動作を中止させることなく、効率的に切断作業を行えるようになる。
【0043】
実施形態2
実施形態1の切断装置1は、ワイヤーソー10を経路変換用プーリ22を介して経路変換用プーリ22の真下に位置させた従動プーリ27又は駆動プーリ20に導くように構成したが、図7に示すように、ワイヤーソー10を経路変換用プーリ22を介して経路変換用プーリ22の斜め下方に位置させた従動プーリ27又は駆動プーリ20に導くように構成された駆動側配列プーリ群23Aを備えた構成の切断装置としてもよい。尚、斜め下方は、どのような方向であってもよい。即ち、斜め下方の方向は、自在な方向に設定できる。
【0044】
実施形態2に係る切断装置によれば、ワイヤーソー10の長さを長くできるため、ワイヤーソー10による切断対象範囲を大きくすることが可能となる。
【0045】
実施形態3
実施形態1では、ワイヤーソー10を切断方向にガイドする切断側配列プーリ群21と、少なくとも2つの経路変換用プーリ22,22と、ワイヤーソー10を駆動側にガイドする駆動側配列プーリ群23と、駆動プーリ20とを有した構成のガイド手段を備えた切断装置1を例示したが、図8に示すように、ガイド手段が、床版3の下面3uと対向する位置において切断方向に並ぶように配列された複数の従動プーリ25,25…及び駆動プーリ20により構成された切断装置1であってもよい。
即ち、ワイヤーソー10が、切断方向に配列された駆動プーリ20及び複数の従動プーリ25,25…に掛け渡されて、駆動プーリ20が回転しながら切断方向に移動してワイヤーソー10を牽引することにより、ワイヤーソー10が床版3の切断対象部位3Aを切断するように構成された切断装置1であってもよい。
【0046】
実施形態3によれば、床版3の下方に作業スペースを確保できない現場などにおいて有効に活用できる切断装置1を提供できる。
【0047】
実施形態4
実施形態1で説明したガイド手段を構成する切断側配列プーリ群21の代わりに、図9に示すように、ローラコンベヤ5A,5Aと従動プーリ25,25とで構成されてワイヤーソー10を切断方向に案内するガイド手段を備えた切断装置としてもよい。
ローラコンベヤ5A,5Aは、桁2の上面2tの幅方向の両方の端縁に沿って、即ち、切断方向に沿って延長するように設けられる。
ローラコンベヤ5Aは、所定の間隔を隔てて並ぶように配置されて回転中心軸5bを回転中心として回転可能に設けられた複数のローラ5a,5a…を備えて構成される。
また、各ローラ5a,5a…の各回転中心軸5b,5b…は、例えば、桁2の上面2tの延長方向と直交するように、同一平面上に配置される。
ローラコンベヤ5Aを構成する複数のローラ5a,5a…は、例えば回転中心軸5bの両端部がローラ5aの両端側に設置された側板5c;5cに回転可能に支持された構成である。
また、ローラコンベヤ5Aは、例えば、第1取付部材41,41…に連結された並列配置の支持体28,28Aの上に側板5c;5cが固定されて設けられる。
【0048】
実施形態4に係る切断装置によれば、ローラコンベヤ5Aにより、ワイヤーソー10を予定の切断位置に精度良く導くことができて、切断精度が向上するとともに、ワイヤーソー10が駆動された場合、切断動作中のワイヤーソー10の下面とローラコンベヤ5Aの各ローラ5a,5a…の回転可能な円周面とが接触し、ワイヤーソー10による切断進行に伴って、ワイヤーソー10がローラ5a,5a…の回転可能な円周面上で形成される切断面上を滑らかに移動するようになるので、ワイヤーソー10による切断動作がスムーズになる。
尚、断動作中のワイヤーソー10は、従動プーリ25,25により経路変換用プーリ22,22に導かれる。
【0049】
実施形態5
実施形態1で説明したガイド手段を構成する切断側配列プーリ群21の代わりに、図10に示すように、ガイドローラ5B,5Bと従動プーリ25,25とで構成されてワイヤーソー10を切断方向に案内するガイド手段を備えた切断装置としてもよい。
ガイドローラ5B,5Bは、桁2の上面2tの幅方向の両方の端縁に沿って、即ち、切断方向に沿って延長するように設けられる。
各ガイドローラ5B,5B…の各回転中心軸5g,5g…は、例えば、桁2の上面2tの延長方向に沿って延長するように、同一平面上に配置される。
ガイドローラ5Bは、例えば回転中心軸5gの両端部がガイドローラ5Bの両端側に設置された端板5f;5fに回転可能に支持された構成である。
また、ガイドローラ5Bは、例えば、第1取付部材41,41…に連結された並列配置の支持体28Aの上に端板5f;5fが固定されて設けられる。
【0050】
実施形態5に係る切断装置によれば、ガイドローラ5Bにより、ワイヤーソー10を予定の切断位置に精度良く導くことができて、切断精度が向上するとともに、ワイヤーソー10が駆動された場合、切断動作中のワイヤーソー10の下面とガイドローラ5Bの回転可能な円周面とが接触し、ワイヤーソー10による切断進行に伴って、ワイヤーソー10がガイドローラ5Bの回転可能な円周面上で形成される切断面上を滑らかに移動するようになるので、ワイヤーソー10による切断動作がスムーズになる。
尚、断動作中のワイヤーソー10は、従動プーリ25,25により経路変換用プーリ22,22に導かれる。
【0051】
即ち、実施形態4及び請求項5に係る切断装置によれば、ガイド手段が、切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な円周面を有したローラ(ローラ5a,ガイドローラ5B)を備えた構成としたので、ローラにより、ワイヤーソー10を予定の切断位置に精度良く導くことができて、切断精度が向上するとともに、ワイヤーソー10がローラ上を滑らかに移動し、ワイヤーソー10による切断動作をスムーズに行えるようになる。
また、実施形態4及び請求項5に係る切断装置によれば、切断側配列プーリ群21を用いた場合と比べて、切断動作の途中でワイヤーソー10を従動プーリ25から外す作業を少なくできるので、作業者の作業の簡易化が図れるようになる。
【0052】
尚、ガイド手段は、切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な円周面を有したローラの代わりに、切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な球面を有した複数の球体を備えた構成としてもよい。
【0053】
また、ガイド手段は、切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な円周面を有したローラの代わりに、ベルトコンベヤを備えた構成としてもよい。
【0054】
実施形態6
実施形態4及び請求項5に係る切断装置では、図9及び図10に示すように、桁2の幅方向の両方の端縁に沿って切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な円周面を有したローラコンベヤ5A,5Aやガイドローラ5B,5Bを配置した構成のものを例示したが、桁2の幅方向の一端縁に沿って切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な円周面を有したローラを配置するとともに、桁2の幅方向の他端縁に沿って切断動作中のワイヤーソー10をガイドするプーリを配置した構成の切断装置を用いて、床版3の切断対象部位3Aを切断するようにしてもよい。
実施形態6によれば、ローラ及びプーリにより、ワイヤーソー10を予定の切断位置に精度良く導くことができて、切断精度が向上するとともに、ワイヤーソー10がローラ上を滑らかに移動し、ワイヤーソー10による切断動作をスムーズに行えるようになる。
【0055】
尚、各実施形態の切断装置では、取付手段が、ガイド手段の上下位置を調整するための上下位置調整機構を備えた構成を例示したが、取付手段に上下調整機構を設けずに、ガイド手段を構成するプーリ、ローラコンベヤ5A、ガイドローラ5Bを個別に上下調整できるような上下位置調整機構を備えた構成としてもよい。
【0056】
また、各実施形態では、切断装置1を下面3uに取り付けた構成を例示したが、切断装置1を、床版3のハンチ部分の傾斜下面3utに取付けるようにしても良い。例えば、第1取付部材41を床版3のハンチ部分の傾斜下面3utに取付けるようにしても良い。
【0057】
また、各実施形態では、プーリ、ローラコンベヤ5A、ガイドローラ5B等のガイド手段を、桁2の幅方向の両方の端縁に沿った位置にそれぞれ設けるようにした例を示したが、当該ガイド手段を、桁2の幅方向の両方の端縁のうちの一方の端縁に沿った位置にのみ設けるようにしてもよい。
【0058】
また、各実施形態では、コンクリート構造物としての床版を切断対象として切断する方法を例示したが、切断対象は、床版以外のコンクリート構造物や鋼構造物等の構造物であってもよい。
例えば、本発明は、道路架橋、鉄道架橋、又は、ボックスカルバート、壁高欄等の構造物を切断する場合にも適用できるので、切断装置をこのような構造物の下面側に設置して当該構造物を切断でき、当該構造物周辺の利用を損なうことなく、かつ、切断して撤去する部分以外の再利用する部分を損傷する可能性を低くできるようになる。
即ち、ワイヤーソーと、ワイヤーソーの駆動機構と、ワイヤーソーのガイド部とを有した切断装置を用いて、ワイヤーソーにより構造物を切断する構造物の切断方法において、ワイヤーソーの駆動機構及びガイド部を構造物の下面に取付けた状態で、ワイヤーソーを駆動することにより、構造物を切断するようにすればよい。
【符号の説明】
【0059】
1 切断装置、2 桁、3 床版(コンクリート構造物)、
3u 床版(コンクリート構造物)の下面、5A ローラコンベヤ(ローラ)、
5B ガイドローラ(ローラ)、10 ワイヤーソー、20 駆動プーリ、
22,25,27 従動プーリ、25a プーリの回転中心軸、
25r プーリの上面、41 第1取付部材(取付手段)、
42 第2取付部材(取付手段)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10