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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】光硬化性組成物、及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20220204BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20220204BHJP
   C09J 175/16 20060101ALI20220204BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J7/10
C09J175/16
C08F290/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016243333
(22)【出願日】2016-12-15
(65)【公開番号】P2018095770
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】中西 健一
(72)【発明者】
【氏名】池谷 達宏
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210895(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013510(WO,A1)
【文献】特開2012-131981(JP,A)
【文献】特開2007-279234(JP,A)
【文献】特開2009-084372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00-290/14
C08G 18/00-18/87
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性組成物の硬化物を含む粘着シートであって、
前記光硬化性組成物は、
(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)と、
(メタ)アクリルアミド単量体(B)と、
多官能(メタ)アクリレート(C)と、
(A)成分、(B)成分、(C)成分以外のラジカル重合性単量体(D)と、
光重合開始剤(E)と
を含み、
前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)がポリオキシアルキレンポリオール由来構造を骨格とし、且つ末端に(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量が5万~20万のポリウレタン樹脂であり、
前記光硬化性組成物の(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計100質量部に対して、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)を30~60質量部、(メタ)アクリルアミド単量体(B)を5~30質量部、多官能(メタ)アクリレート(C)を0.2~3質量部、ラジカル重合性単量体(D)を7~59質量部の割合で含有し、
前記硬化物の引張破断強度が8N/mm 以上であり、引張破断伸度が500%以上であり、かつ、ゲル分率が85~100%であり、
基材シートを有しない
ことを特徴とする粘着シート
【請求項2】
前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)が、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとの反応物の末端に、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂であり、
前記ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が500~5000であり、
前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート水素添加物又はイソホロンジイソシアネートである、
ことを特徴とする請求項1に記載の粘着シート
【請求項3】
前記多官能(メタ)アクリレート(C)が、3官能以上の(メタ)アクリレートである、請求項1又は2に記載の粘着シート
【請求項4】
剥離強度が10~20N/25mmである請求項1~3の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
部材固定用に使用される請求項のいずれか1項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物、及び粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン等の携帯型電子機器の部材の固定には両面粘着テープが使用されている。この用途に用いられる粘着テープには、部材の固定時には優れた接着強度を有し、その一方で、部材の修理や交換、検査、リサイクル等の際には、糊残りや千切れ等の損傷を生じることなく、部材から容易に剥離することができ、さらには部材に変形や損傷を生じさせないことが求められる。一般に、これら用途では部材の固定時に粘着テープの一部を部材の外部に露出させておき、部品の修理や交換、検査、リサイクルの際には、外部に露出させた部分を引っ張る(延伸)することで粘着テープを部材から剥離する方法が採用されている。
【0003】
この種の従来技術を開示する文献として、例えば、特許文献1及び2が挙げられる。特許文献1ではポリオレフィン系発泡体からなる基材の両面に粘着剤層が形成された延伸剥離用両面粘着テープが提案されている。特許文献2では、フィルム状基材の第一面に設けられたフィラー粒子を含有する第一粘着剤層と、該フィルム状基材の第二面に設けられたフィラー粒子を含有する第二粘着剤層、とを備えた粘着シートが提案されている。
上記の提案はいずれも基材(芯材)の両面に粘着剤層を設けた構成となっており、さらに特許文献2については粘着層にフィラー粒子を含有させるなどしており、製造工程が煩雑である。
【0004】
このため、接着信頼性が高く、かつ基材がなくても部材からの延伸剥離性に優れる粘着シートが提供されれば有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-8288号公報
【文献】特開2016-65211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被着体の固定時には優れた接着強度を有し、一方で、被着体の修理や交換、検査、リサイクル等の際には、糊残りや千切れ等の損傷を生じることなく被着体から容易に剥離することができ、さらには被着体に変形や損傷を生じさせることのない粘着シート、及び粘着シート製造用の光硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下の事項に関する。
〔1〕(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)と、(メタ)アクリルアミド単量体(B)と、多官能(メタ)アクリレート(C)と、(A)成分、(B)成分、(C)成分以外のラジカル重合性単量体(D)と、光重合開始剤(E)とを含む光硬化性組成物であって、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)がポリオキシアルキレンポリオール由来構造を骨格とし、且つ末端に(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量が5万~20万のポリウレタン樹脂であることを特徴とする光硬化性組成物。
〔2〕光硬化性組成物の(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計100質量部に対して、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)を30~60質量部、(メタ)アクリルアミド単量体(B)を5~30質量部、多官能(メタ)アクリレート(C)0.2~3質量部、ラジカル重合性単量体(D)を7~59質量部の割合で含有することを特徴とする〔1〕に記載の光硬化性組成物。
〔3〕前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)が、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとの反応物の末端に、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂であり、前記ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が500~5000であり、前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物又はイソホロンジイソシアネートであることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の光硬化性組成物。
〔4〕前記多官能(メタ)アクリレート(C)が、3官能以上の(メタ)アクリレートである、請求項〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の光硬化性組成物。
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の光硬化性組成物の硬化物を含む粘着シートであって、前記硬化物の引張破断強度が8N/mm以上であり、引張破断伸度が500%以上であり、かつ、ゲル分率が85~100%であることを特徴とする粘着シート。
〔6〕剥離強度が10~20N/25mmである〔5〕に記載の粘着シート。
〔7〕基材シートを有しない〔5〕又は〔6〕に記載の粘着シート。
〔8〕部材固定用に使用されることを特徴とする〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光硬化性組成物の硬化物を備える粘着シートは、被着体への優れた接着強度を有し、その一方で、被着体の修理や交換、検査、リサイクル等の際には、糊残りや千切れ等の損傷を生じることなく被着体から容易に剥離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、(メタ)アクリロイル基とは、化学式 CH=CH-CO- で表される基、または化学式 CH=C(CH)-CO- で表される基を意味し、イソシアナト基とは、化学式 -N=C=O で表される基を意味する。
【0010】
(光硬化性組成物)
本発明の光硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)と、(メタ)アクリルアミド単量体(B)と、多官能(メタ)アクリレート(C)と、前記(A)~(C)成分以外のラジカル重合性単量体(D)と、光重合開始剤(E)とを含有するものである。
【0011】
<(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)>
本発明の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)は、ポリオキシアルキレンポリオール由来のポリウレタン構造を骨格とし、且つ末端に(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量が5万~20万のポリウレタン樹脂である。(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)を製造するために、使用できるポリオキシアルキレンポリオールとしては、炭素数2~4のアルキレン鎖を有するものが好ましく、その具体例として、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシブチレンポリオール等が挙げられる。また、2種以上のオキシアルキレンポリオールの共重合体を使用することもでき、2種以上のポリオキシアルキレンポリオールをブレンドして使用することもできる。中でも、ポリオキシアルキレンジオールが好ましく用いられる。
【0012】
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、通常、500~5,000であり、800~4,000であることが好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が過度に小さいと、粘着シートの剥離強度が低下することがある。一方、ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が過度に大きくなると、ポリウレタン中のウレタン結合が少なくなることから粘着シートの凝集力が低下する懸念がある。
【0013】
本発明の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)の製造に用いられるポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、トリレンジイソシアネート及びその水素添加物、キシリレンジイソシアネート及びその水素添加物、ジフェニルメタンジイソシアネート及びその水素添加物、1,5-ナフチレンジイソシアネート及びその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、耐光性、反応性の制御の点から、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物又はイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0014】
<<(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)の製造方法>>
本発明において使用する(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)は、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートを用いて常法にしたがって製造することができる。
【0015】
好ましい第一の合成法は、以下のとおりである。
まず、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートを、イソシアナト基量がヒドロキシ基量より多くなる割合で反応させて、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンを合成する。このとき、ヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の比を調整することで、分子量を調整することが可能である。具体的には、ヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の比が小さい程、イソシアナト基を有するポリウレタンの分子量は大きくなり、ヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の比が大きい程、イソシアナト基を有するポリウレタ化合物の分子量は小さくなる。
【0016】
次に、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンと、ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて、ポリウレタン(A)を合成する。
【0017】
ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;1,3-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、3-メチルペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の各種ポリオール由来の(メタ)アクリロイル基を有するモノオール等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、イソシアナト基との反応性、光硬化性の点で、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
このとき、ヒドロキシ基が一つのアルキルアルコールを、イソシアナト基を有するポリウレタンと反応させることで、(メタ)アクリロイル基の導入量を調整することができる。アルキルアルコールとしては、特に限定されないが、直鎖型、分岐型、脂環型のアルキルアルコール等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
(メタ)アクリロイル基の導入量は、通常、イソシアナト基に対して、90~100mol%であり、好ましくは95~100mol%であり、さらに好ましくは100mol%である。(メタ)アクリロイル基の導入量が、イソシアナト基に対して、90mol%以上であれば、光硬化性組成物を硬化して得られる粘着シートの凝集力が十分に得られる。
【0020】
次に、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)の好ましい第二の合成方法について説明する。
まず、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートを、ヒドロキシ基量がイソシアナト基量より多くなる割合で反応させて、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンを合成する。このとき、イソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の比を調整することで、分子量を調整することが可能である。具体的には、イソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の比が小さい程、ヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量は大きくなり、イソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の比が大きい程、ヒドロキシ基を有するポリウレタン化合物の分子量は小さくなる。次に、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンと、イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)を合成する。
【0021】
このとき、イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物の量を調整することで、(メタ)アクリロイル基の含有量を調整することができる。(メタ)アクリロイル基の導入量は、通常、ヒドロキシ基に対して、90~100mol%であり、より好ましくは95~100mol%であり、さらに好ましくは100mol%である。(メタ)アクリロイル基の導入量が、ヒドロキシ基に対して、90mol%以上であれば、光硬化性組成物を硬化して得られる粘着シートの凝集力が十分に得られる。
【0022】
イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。また、イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製のカレンズMOI(登録商標)やカレンズAOI(登録商標)などが例示できる。これらは、二種以上を併用してもよい。中でも、ヒドロキシ基との反応性、光硬化性の点から、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。
【0023】
(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)の合成において、ヒドロキシ基とイソシアナト基の反応は、イソシアナト基に不活性な有機溶媒の存在下で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジオクチルスズジラウレート等のウレタン化触媒を用いて、通常、30~100℃で1~5時間程度継続して行われる。ウレタン化触媒の使用量は、通常、反応物の総質量に対して、50~500質量ppmである。
【0024】
<<(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量>>
本発明で用いる(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、50,000~200,000であり、好ましくは60,000~150,000であり、さらに好ましくは70,000~100,000である。(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が50,000未満であると、粘着シートの剥離強度が低下し、逆に重量平均分子量が200,000を超えると、取り扱いが困難となり、作業性が低下する。
【0025】
なお、本発明における重量平均分子量の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(昭和電工株式会社製Shodex GPC-101)を用いて、下記条件にて常温で測定し、ポリスチレン換算にて算出されるものである。
カラム:昭和電工株式会社製LF-804
カラム温度:40℃
試料:(メタ)アクリル基含有ポリウレタン樹脂の0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI検出器(示差屈折率検出器)
【0026】
<<(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)の含有量>>
光硬化性組成物中の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)の含有量は適宜選択すればよいが、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計100質量部に対して30~60質量部であることが好ましく、より好ましくは35~55質量部であり、さらに好ましくは40~50質量部である。(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)の含有量が30~60質量部であれば、粘着シートとして使用する際の凝集力、剥離強度が適したものとなる。
【0027】
<(メタ)アクリルアミド単量体(B)>
(メタ)アクリルアミド単量体(B)は、アクリルアミドまたはN置換アクリルアミドを示す。窒素原子の置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、モルホリノ基等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド単量体(B)は、光硬化性組成物の硬化物からなる粘着シートの凝集力を高める。(メタ)アクリルアミド単量体(B)としては、特に限定されないが、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。これらの(メタ)アクリルアミド単量体(B)は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
これらの(メタ)アクリルアミド単量体(B)の中でも、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)との相溶性、得られる粘着シートの凝集力の点から、特にアクリロイルモルホリン、N,N-ジメチルアクリルアミドが好ましい。
【0029】
(メタ)アクリルアミド単量体(B)の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計100質量部に対して、5~30質量部が好ましく、より好ましくは10~28質量部であり、さらに好ましくは12~25質量部であり、特に好ましくは15~25質量部である。上記の(メタ)アクリルアミド単量体(B)の含有量が5~30質量部であると、以下に示す効果が得られる。すなわち、粘着剤組成物の硬化物の凝集力が大きくなり、強靭な粘着シートにすることが出来る。さらに、被接着物への密着性および耐水性が良好であり、高温高湿下での耐発泡性および耐湿熱白化性も良好なシートとなる。
【0030】
<多官能(メタ)アクリレート(C)>
多官能(メタ)アクリレート(C)は、光硬化性組成物の硬化物からなる粘着シートの強度と伸度のバランスを調整する。
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレート(C)は、2官能以上の(メタ)アクリレートであれば良く、特に制限はない。ただし、硬化性の観点から3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、2官能とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個有することをいう。なお、(A)成分、(B)成分に設定する多官能アクリレートは本(C)成分には含めない。
多官能(メタ)アクリレート(C)としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ビス(ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチルヒダントインジ(メタ)アクリレート、α,ω-ジ(メタ)アクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジアクリロキシエチルフォスフェート、ジペンタエリスリトールトリヒドロキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート(C)は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、架橋度が高く、より強度の高い粘着シートが得られるという観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリヒドロキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計100質量部に対して、0.2~3質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3~2質量部であり、さらに好ましくは0.4~1質量部である。多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量が0.2~3質量部であれば、得られる粘着シートの強度と伸度のバランスが良いものとなる。
【0032】
<ラジカル重合性単量体(D)>
本実施形態の光硬化性組成物では、前記(A)成分と、前記(B)成分、前記(C)成分以外に、光硬化性組成物を硬化させた際の硬化物のガラス転移点の調整の目的で(A)成分、(B)成分、(C)成分以外のラジカル重合性単量体(D)を含有していてもよい。
ラジカル重合性単量体(D)としては、ラジカル重合可能な官能基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。これらのラジカル重合性単量体(D)は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、ここで言うラジカル重合可能な官能基とは、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などラジカル重合可能なエチレン性C-C二重結合を指す。
【0033】
ラジカル重合性単量体(D)としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレートが挙げられ;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレートが挙げられ;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、3-メチルペンタンジオール(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ;エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられ;オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル(メタ)アクリレートが挙げられ;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
また、上記アクリレート以外のその他のラジカル重合性単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル又はジエチレングリコールモノビニルエーテル、メチルビニルケトン、N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。
これらの中でも、得られる粘着シートの強度、伸度、剥離強度のバランス、及び粘着剤組成物の粘度の観点から、アルキル(メタ)アクリレート、環状アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0035】
ラジカル重合性単量体(D)の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計100質量部に対して、7~59質量部であることが好ましく、より好ましくは15~52質量部であり、さらに好ましくは24~44質量部である。
【0036】
<光重合開始剤(E)>
本発明の光重合開始剤(E)としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ω-ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルホルメート、2,2-ジエトキシアセトフェノン、4-N,N’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のカルボニル系光重合開始剤が挙げられる。
【0037】
また、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルアンモニウムモノスルフィド等のスルフィド系光重合開始剤が挙げられる;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類が挙げられる。
【0038】
さらに、ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン系光重合開始剤;スルホクロリド系光重合開始剤;チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0039】
これらは、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。中でも、光硬化性組成物における溶解性の点から、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び/又は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0040】
光重合開始剤(E)の含有量は、光硬化性及び得られる粘着シートの強度、粘着性のバランスの点から、(A)~(D)成分の総量100質量部に対して0.2~5質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.5~3質量部である。光重合開始剤(E)の含有量が0.2質量部以上であれば光硬化するのに十分な量であり、5質量部以下であれば得られる粘着シートの剥離強度も良好である。
【0041】
<粘着付与樹脂>
本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて、得られる粘着シートの接着力を向上させるため、粘着付与樹脂を添加してもよい。粘着付与樹脂の例としては、ロジンやロジンのエステル化物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα-ピネン-フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9系)等の石油樹脂;その他、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも耐光性の点から不飽和二重結合が少ない水添ロジンや不均化ロジンのエステル化物や、脂肪族や芳香族系石油樹脂、高Tgアクリル樹脂等を粘着シートに添加することが好ましい。粘着付与樹脂の添加量としては、光硬化性組成物100質量部中、1~10質量部の範囲である。
【0042】
<その他の添加剤>
また、本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて、公知の各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、ベンゾトリアゾール系等の光安定剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、界面活性剤のような帯電防止剤、染料などが挙げられる。
【0043】
<有機溶媒>
本発明の光硬化性組成物は、低分子量成分として、(メタ)アクリルアミド単量体(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、(A)成分、(B)成分、(C)成分以外のラジカル重合性単量体(D)を含んでいるため、有機溶媒を加えなくとも塗布可能な粘度に調整することができるが、塗工時の粘度調整を目的として有機溶媒を添加してもよい。用いられる有機溶媒としては、特に限定されないが、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサノン、n-へキサン、トルエン、キシレン、n-プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
<光硬化性組成物の硬化物>
本発明の光硬化性組成物の硬化物のゲル分率は85%~100%であることが好ましい。ゲル分率が85%~100%であれば、このような硬化物からなる粘着シートの凝集力が大きくなり、粘着シートが強靭となる。
【0045】
本発明の光硬化性組成物の硬化物の引張破断強度は8N/mm以上であり、かつ、引張破断伸度が500%以上であることが好ましい。
ここで、引張破断強度、及び引張破断伸度は、JISK6767に準じて測定した値を指す。具体的には、標線長さ20mm及び幅10mmの大きさに切り取った粘着シートを、引張試験機を用い、23℃及び50%RHの環境下で、引張速度300mm/minで引っ張り測定を行い、得られた値を指す。
【0046】
引張破断強度が8N/mm以上であり、かつ、引張破断伸度が500%以上であれば、このような硬化物を含む粘着シートを延伸剥離する際に糊残りや千切れ等の損傷が生じることなく、被着体から容易に剥離することができる。
【0047】
(粘着シート)
本発明の粘着シートは、上記の光硬化性組成物の硬化物を含む。
【0048】
<基材なし延伸剥離粘着シート>
本発明の粘着シートの一実施態様は、部材固定用の基材なし延伸剥離粘着シートである。より具体的には携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン等の携帯型電子機器の情報表示部の保護パネルや画像表示モジュール、バッテリー、スピーカー、レシーバー、圧電素子、プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、カメラモジュール、センサー、クッション材、ゴム製部品、加飾用部品等を固定する用途に用いられる基材なし延伸剥離粘着シートであり、これらの中でも特にバッテリーの固定用途に好適に適用できる。
【0049】
<粘着シートの製造方法>
本発明の粘着シートは、例えば、剥離フィルムに光硬化性組成物を塗布し、塗布した組成物に紫外線照射装置等を用いて紫外線を照射して光硬化させることにより得ることができる。粘着シートの膜厚は、通常、30~500μmであり、好ましくは40~400μm、さらに好ましくは50~300μmである。粘着シートの膜厚が30μm以上であれば粘着シートの強度が十分であり、膜厚が500μm以下であれば粘着シート製造時の膜厚の制御も容易である。なお、本発明の粘着シートの形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0050】
本発明の粘着シートの表面(粘着面)は、使用時までは剥離フィルム(セパレータ)により保護されていてもよい。なお、本発明の一実施態様である基材なし延伸剥離粘着シートの場合、粘着シートの各粘着面(両面)は、2枚の剥離フィルムによりそれぞれ保護されていてもよいし、両面が剥離面となっている剥離フィルム1枚により、ロール状に巻回される形態で保護されていてもよい。剥離フィルムは粘着剤層の保護材として用いられており、被着体に貼着する際に剥がされる。なお、剥離フィルムは必ずしも設けられていなくてもよい。上記剥離フィルムとしては、慣用されている剥離フィルムなどを使用でき、特に限定されないが、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムが挙げられる。なお、剥離フィルムは公知の方法により形成することができる。また、剥離フィルムの厚さ等も特に制限されず、2枚の剥離フィルムの厚さが両方同じでも異なっていてもよい。また剥離フィルムは異なる種類でもよく、その剛性を変えて、剥離性を制御することも可能である。
【0051】
<粘着シートの剥離強度>
本発明の粘着シートの剥離強度は10~20N/25mmであることが好ましい。
ここで、剥離強度はJISZ0237に準じて測定した値を指す。具体的には、コロナ処理が施された25μm厚のPETフィルムで裏打ちした粘着シートを長さ100mm×幅25mmに切りとって試験片を作製した。23℃及び50%RH環境下、前記試験片の粘着面をSUS鋼板(表面仕上げBA)に貼り合わせ、その上面を2kgの圧着ローラーを1往復させることによって、それらを圧着した。圧着から30分後に引張試験機を用いて、剥離速度300mm/minで180°方向に引き剥がし測定を行い、得られた値を指す。
【0052】
剥離強度が10N/25mm以上であれば、被着体を固定するのに十分な接着強度である。一方で、剥離強度が20N/25mm以上になると、接着強度が高すぎて、引張破断強度、引張破断伸度が十分であっても被着体から延伸剥離する際に糊残りや千切れ等の損傷が生じる場合がある。
【実施例
【0053】
以下に実施例、及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0054】
(合成例1)
<ポリウレタン(A-1)の合成>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(デスモジュールW、住化コベストロウレタン製)、及び水酸基価が56mgKOH/gのヒドロキシ基を末端に有するポリプロピレングリコールD-2000(三井化学製)を、前者が21モル、後者が20モルの割合で仕込んだ後、60℃まで昇温して4時間反応させ、イソシアナト基を両末端に有するポリウレタンを得た。次に、得られたポリウレタン1モルに対して、2-ヒドロキシエチルアクリレート2モルを加えた後、70℃まで昇温して2時間反応させ、アクリロイル基を末端に有するポリウレタン(A-1)を得た。このとき、IRにより、イソシアナト基由来のピークが消失したことを確認した後、反応を終了した。得られたポリウレタン(A-1)の重量平均分子量は、70,000であった。
【0055】
(合成例2)
<ポリウレタン(A-2)の合成>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(デスモジュールW、住化コベストロウレタン製)、及び水酸基価が56mgKOH/gのヒドロキシ基を末端に有するポリプロピレングリコールD-2000(三井化学製)を、前者が20モル、後者が21モルの割合で仕込んだ後、60℃まで昇温して反応させ、ヒドロキシ基を両末端に有するポリウレタンを得た。このとき、IR測定により、残存するイソシアナト基が0.1%以下となった時点で、得られたポリウレタン1モルに対して、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート2モルを加え、70℃まで昇温して2時間反応させ、アクリロイル基を末端に有するポリウレタン(A-2)を得た。このとき、IRにより、イソシアナト基由来のピークが消失したことを確認した後、反応を終了した。得られたポリウレタン(A-2)の重量平均分子量は、70,000であった。
【0056】
(合成例3)
<ポリウレタン(A-3)の合成>
ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物に代えてイソホロンジイソシアネート(デスモジュールI、住化コベストロウレタン製)を用いること以外はポリウレタン(A-1)の合成法と同様にして、アクリロイル基を末端に有するポリウレタン(A-4)を得た。得られたポリウレタン(A-3)の重量平均分子量は、67,000であった。
【0057】
(合成例4)
<ポリウレタン(A-4)の合成>
ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物、水酸基価が56mgKOH/gのヒドロキシ基を末端に有するポリプロピレングリコールD-2000(三井化学製)の仕込み比を、前者が6モル、後者が7モルに変えること以外はポリウレタン(A-2)の合成法と同様にして、アクリロイル基を末端に有するポリウレタン(A-4)を得た。得られたポリウレタン(A-4)の重量平均分子量は、30,000であった。
【0058】
(実施例1~12)
<光硬化性組成物の調整>
(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)、(メタ)アクリルアミド単量体(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、(A)成分、(B)成分、(C)成分以外のラジカル重合性単量体(D)、及び光重合開始剤(E)を、表1~2に記載の組成で配合し、室温下でディスパーを用いて混合することで均一な光硬化性組成物を調製した。
【0059】
<粘着シートの作製>
次いで、調製した光硬化性組成物を、以下の2種類の硬化条件で硬化させ、粘着シートを作製した。
【0060】
<硬化条件A>
調整した光硬化性組成物をアプリケーターを用い、硬化後の膜厚が150μmとなるように剥離PETフィルム(200mm×150mm×75μm)に塗布し、上面を50μm厚の剥離PETフィルムで覆った後、紫外線照射装置(日本電池株式会社製 UV照射装置4kw×1、出力:160W/cm、メタルハライドランプ)を用い、照射距離12cm、ランプ移動速度20m/min、照射量約500mJ/cmの条件で紫外線を照射して硬化させ、剥離PETフィルムに挟まれた粘着シートを得た。
【0061】
<硬化条件B>
調整した光硬化性組成物をアプリケーターを用い、硬化後の膜厚が150μmとなるように剥離PETフィルム(200mm×150mm×75μm)に塗布し、上面を50μm厚の剥離PETフィルムで覆った後、ブラックライト(東芝ライテック株式会社製 FHF32BLB-T)を用い、照射距離10cm、照射時間90s、照射量約80mJ/cmの条件で紫外線を照射して硬化させ、剥離PETフィルムに挟まれた粘着シートを得た。
【0062】
<粘着シートの評価>
これらの粘着シートについて、ゲル分率、引張破断強度、引張破断伸度、剥離強度、及び延伸剥離性を以下に記載する方法により評価した。結果を表1~2に示す。
【0063】
<ゲル分率>
粘着シートのゲル分率は、トルエン浸漬前シート質量と、トルエン中に室温下で24時間浸漬した後、80℃で5時間乾燥した後のシートの質量をもとに、下記の式から求めた。
ゲル分率(%)=[A/B]×100
A:粘着シートのトルエン浸漬後における乾燥質量(トルエンの質量は含まない)
B:粘着シートのトルエン浸漬前の質量
【0064】
<引張破断強度、及び引張破断伸度>
粘着シートの引張破断強度、及び引張破断伸度はJISK6767に準じて測定した。具体的には、標線長さ20mm及び幅10mmの大きさに切り取った粘着シートを、引張試験機(テンシロン(商標)、オリエンテック社)を用い、23℃及び50%RHの環境下で、引張速度300mm/minで引っ張り測定した。測定によって粘着シートが破断した際の強度を引張破断強度とし、破断した際の伸度を引張破断伸度とした。
【0065】
<剥離強度>
粘着シートの剥離強度はJISZ2037に準じて測定した。具体的には、コロナ処理が施された25μm厚のPETフィルムで裏打ちした粘着シートを長さ100mm×幅25mmに切りとって試験片を作製した。23℃及び50%RH環境下、前記試験片の粘着面をSUS鋼板(表面仕上げBA)に貼り合わせ、その上面を2kgの圧着ローラーを1往復させることによって、それらを圧着した。圧着から30分後に引張試験機(テンシロン、オリエンテック社)を用いて、剥離速度300mm/minで180°方向に引き剥がし測定を行い、得られた値を剥離強度とした。
【0066】
<延伸剥離性>
粘着シートの延伸剥離性は以下の方法により評価した。粘着シートを長さ40mm×幅10mmに切り取って試験片を作製した。この試験片を縦70mm×横150mm×厚さ1mmのSUS鋼板(表面仕上げBA)に貼付した。その際、試験片の半分(長さ20mm×幅10mm)はSUS鋼板の表面に貼付され、残りの半分(長さ20mm×幅10mm)はSUS鋼板に貼付されず、その一辺からはみ出した状態になるようにした。
【0067】
次に、この上面に縦70mm×横150mm×厚さ1mmのSUS鋼板(表面仕上げBA)を前記SUS鋼板の端と合うように積層し、その上面を2kgの圧着ローラーを1往復させることによって圧着した。この試験体を23℃及び50%RH環境下、24時間静置したのち、SUS鋼板からはみ出した粘着テープを引張り、その引き抜き状態から延伸剥離性を以下のように評価した。
○:SUS鋼板の間から引き抜くことができた。
×:SUS鋼板の間から引き抜く途中でテープが千切れ、SUS鋼板側に残った。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表1~2に示す通り、実施例1~12では引張破断強度、引張破断伸度、剥離強度が高く、かつ延伸剥離性に優れた粘着シートが得られた。
【0071】
(比較例1~6)
(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂(A)、(メタ)アクリルアミド単量体(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、(A)成分、(B)成分、(C)成分以外のラジカル重合性単量体(D)、及び光重合開始剤(E)を、表3に記載の組成で配合した以外に、実施例1と同じ方法で光硬化性組成物を調製した。
【0072】
次いで、調製した光硬化性組成物を、実施例1と同じ方法で粘着シートを作製した。
【0073】
これらの粘着シートについて、ゲル分率、引張破断強度、引張破断伸度、剥離強度、及び延伸剥離性を実施例1と同じ方法により評価した。結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
表4に示す通り、比較例3では150μmの粘着シートを良好に作成することができなかった。比較例1,2,4,5,6では、いずれも延伸剥離性が悪く、引張破断強度、引張破断伸度、剥離強度についても低い値を示すものがあるなど、物性バランスの悪い粘着シートであることがわかる。