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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/534 20060101AFI20220207BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20220207BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20220207BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220207BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A61F13/534
A61F13/535 100
A61F13/514 120
A61F13/53 300
A61F13/56 110
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018182563
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020048976
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷澤 敦子
(72)【発明者】
【氏名】堀切川 一男
(72)【発明者】
【氏名】山口 健
(72)【発明者】
【氏名】柴田 圭
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-138692(JP,A)
【文献】実開平04-128729(JP,U)
【文献】特表2010-507440(JP,A)
【文献】特開2001-355173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収体部とを有する吸収性物品であって、
前記バックシートと前記吸収体部との間に摩擦低減層が設けられており、
前記摩擦低減層と前記バックシートとの摩擦、又は前記摩擦低減層と前記吸収体部との摩擦は、前記吸収体部と前記バックシートとの摩擦より小さい、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性物品は、装着時に装着者の体液排出口に対応する体液排出口対応部を含む中央領域と、前記中央領域の後方に隣接する後方領域とを有し、
前記摩擦低減層は、少なくとも前記中央領域及び/又は前記後方領域に設けられている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記摩擦低減層は、前記バックシートと前記吸収体部との間に挿入された、少なくとも一方の面に摩擦低減処理が施されたシート状体である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記摩擦低減層は、前記バックシート及び前記吸収体部の少なくとも一方に摩擦低減処理を施すことによって形成されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記摩擦低減処理は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、及びポリアセタール樹脂のうち1以上を含む材料を塗布する処理である、請求項3又は4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記バックシートに、前記吸収性物品を下着に固定するためのズレ止め材が設けられており、
前記摩擦低減層は、平面視で、前記ズレ止め材に重なるように配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品として、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、両シート間に設けられた吸収体部とを有するものが知られている。
【0003】
吸収性物品の中には、装着者の身体の動きに配慮して変形しやすく構成したものがある。例えば、特許文献1には、表面シートと裏面シートとの間に配置された収縮性の吸収構造体を備え、吸収構造体が、個々に独立した多数のブロック状吸収部を備え、裏面シートが少なくとも長手方向に伸縮性を有し、非伸長時には収縮状態にあり且つ所定の引張荷重に対して長手方向に所定割合で伸長する構成が記載されている(請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5779414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の構成では、吸収性物品全体が伸縮性を有するため、身体の動きに伴う下着の伸縮には対応できるようになっている。しかしながら、特許文献1の開示の構成は、吸収性物品の装着中、例えば歩行時の身体の動きによって発生し得る吸収性物品と肌との擦れ等に関しては考慮されていない。このような擦れ等は、装着感が低下する原因となり得、場合によっては装着者が痒み、痛み等を感じる可能性がある。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、装着中に発生し得る吸収性物品と肌との間の擦れを防止し、装着感を向上させた吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収体部とを有する吸収性物品であって、前記バックシートと前記吸収体部との間に摩擦低減層が設けられており、前記摩擦低減層と前記バックシートとの摩擦、又は前記摩擦低減層と前記吸収体部との摩擦は、前記吸収体部と前記バックシートとの摩擦より小さい。
【0008】
上記第一の態様によれば、バックシートと吸収体部との間の摩擦低減層の存在により、バックシートと吸収体部との間の摩擦を低減することができる。これにより、バックシートと吸収体部とを相対的にスライド可能にすることができるので、バックシートと、吸収体部及びその上に配置されたトップシート等とが互いに追従しにくくなる。よって、バックシートが下着に固定されていた場合に脚の動きに伴って下着が動き、その動きに追従してバックシートが動いても、その動きは吸収体部及びトップシート等には伝わりにくいので、吸収体部及びトップシート等は、吸収性物品と接触している局部の肌に追従させることができる。これにより、吸収体部及びトップシート等と肌との間での相対的な動きを低減し、吸収性物品と肌との間の擦れを防止することができる。
【0009】
本発明の第二の態様では、前記吸収性物品は、装着時に装着者の体液排出口に対応する体液排出口対応部を含む中央領域と、前記中央領域の後方に隣接する後方領域とを有し、前記摩擦低減層は、少なくとも前記中央領域及び/又は前記後方領域に設けられている。
【0010】
上記第二の態様によれば、デリケートで柔らかい体液排出口及びの周辺の部位に対応する中央領域において、吸収性物品と肌との間に生じる擦れを防止することができ、且つ/又は、例えば歩行時等に吸収性物品が特に動きやすい後方領域において、吸収性物品と肌との間に生じる擦れを重点的に防止することができる。
【0011】
本発明の第三の態様では、前記摩擦低減層は、前記バックシートと前記吸収体部との間に挿入された、少なくとも一方の面に摩擦低減処理が施されたシート状体である。
【0012】
上記第三の態様によれば、確実に摩擦の低減を図ることができる。また、吸収性物品の用途に応じて摩擦低減層の構成を変更したい場合等には、挿入するシート状体を変更するだけで足り、製造工程の変更が少ない。
【0013】
本発明の第四の態様では、前記摩擦低減層は、前記バックシート及び前記吸収体部の少なくとも一方に摩擦低減処理を施すことによって形成されている。
【0014】
上記第四の態様によれば、摩擦低減層を、部材点数を増やす必要がないため、製造上のコストを低くすることができる。また、吸収性物品全体の厚みも小さくすることができる。
【0015】
本発明の第五の態様は、前記摩擦低減処理は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、及びポリアセタール樹脂のうち1以上を含む材料を塗布する処理である。
【0016】
上記第五の態様によれば、摩擦低減層の摩擦低減作用を向上させることができる。
【0017】
本発明の第六の態様では、前記バックシートに、前記吸収性物品を下着に固定するためのズレ止め材が設けられており、前記摩擦低減層は、平面視で、前記ズレ止め材に重なるように配置されている。
【0018】
上記第六の態様によれば、ズレ止め材を設けることで吸収性物品を下着へ安定的に固定させることができる。そして、この場合であっても、バックシートと吸収体部及びトップシート等との間で確実に相対的にスライドさせることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一形態によれば、装着中に発生し得る吸収性物品と肌との間の擦れを防止し、装着感を向上させた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一形態による吸収性物品の部分破断平面図である。
図2】本発明の一形態による吸収性物品のI-I線断面図である。
図3】本発明の一形態による吸収性物品における摩擦低減層の変形例を示す図である。
図4】本発明の一形態による吸収性物品における摩擦低減層の変形例を示す図である。
図5】本発明の一形態による吸収性物品の変形例を示す図である。
図6】本発明の一形態による吸収性物品の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものであり、一部の寸法が大きく又は小さくなっている場合がある。
【0022】
図1に、本発明の一形態による吸収性物品1の部分破断平面図を示す。また、図2(a)に、図1のI-I線断面を示す。図1及び図2(a)に示すように、吸収性物品1は、不透液性のバックシート2と、透液性のトップシート3と、これら両シート2、3間に設けられた吸収体部4とを有する本体(吸収性物品本体)8を備えている。吸収性物品1の使用時には、本体8のバックシート2側(下着側)がショーツ等の下着に固定され、トップシート3側(肌側)が肌と接触できるように装着する。バックシート2の下着側には、吸収性物品1を下着に固定するためのズレ止め材(図1では図示を省略)が設けられていてよい。
【0023】
吸収性物品本体8は、後述のウィングW、Wを除いた部分といえる。本体8は、全体としては、前後方向(長手方向、つまり図中の第1方向D1)に所定の長さを有し、この前後方向D1と直交する幅方向(図中の第2方向D2)に所定の幅を有する細長い形状を有している。本体8の幅は、図示の例では略一定となっているが、前後方向D1にわたって変化していてもよい。吸収性物品1は、前後方向に延びる中心線(前後方向中心線)CLに対し略線対称の形状及び構造を有していてよい。
【0024】
図1の形態では、バックシート2及びトップシート3はともに、吸収性物品1の前端から後端まで前後方向D1にわたっているが、トップシート3の幅は、バックシート2の幅より小さくなっている。また、トップシート3の肌側には、吸収体部4の両側部に沿って前後方向D1に延在するサイド不織布7、7が重ねられている。
【0025】
吸収性物品1は、本体8において、装着時に装着者の膣口等の体液排出口に対応する領域(体液排出口対応領域)Aを有し、体液排出口対応領域Aは中心Acを有している。中心Acは、前後方向中心線CL上にあり、体液排出口対応領域Aの前後方向D1長さの中央付近に位置している。そして、吸収性物品1は、体液排出口対応領域Aを含む中央領域Mと、中央領域Mの前方に隣接した前方領域Fと、中央領域Mの後方に隣接した後方領域Rとを有する。
【0026】
中央領域Mは、その両側方から延びる、吸収性物品1を装着の際に下着に確実に固定するためのウィングW、Wを有していてよい。前方領域Fは、ウィングWの前方の起点となる位置又はその付近から前端縁までの領域であり、後方領域Rは、ウィングWの後方の起点となる位置又はその付近から後端縁までの領域とすることができる。また、ウィングW、Wが設けられている場合、体液排出口対応領域Aの中心Acは、前後方向D1で見て、ウィングW、Wの側方の端縁の長さの中点の位置、或いはウィングW、Wの前方の基点と後方の基点との中点に位置するものとすることができる。
【0027】
図示の形態では、吸収性物品1はウィングW、Wを有しているが、吸収性物品1はウィングW、Wのない形態とすることができる。その場合、ウィングW、Wを形成すると仮定した場合に、ウィングW、W前方の起点となる位置又はその付近から前方の領域を前方領域Fとし、ウィングW、Wの後方の起点となる位置又はその付近から後方の領域を後方領域Rとすることができる。
【0028】
吸収性物品1の全長は、150~450mmとすることができ、より好ましくは170~290mmとすることができる。
【0029】
吸収体部4は、外部に露出しないように、トップシート2とバックシート3とに挟まれて設けられている。例えば、図1に示すように、吸収体部4は、平面視でバックシート2内に収まるように、すなわちバックシート2からはみ出ないように構成され、配置されていてよい。また、吸収体部4は、トップシート3及びサイド不織布7、7が設けられている領域内に収まるように、構成され、配置することができる。
【0030】
吸収体部4の前方及び後方の端縁部ではバックシート2とトップシート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合され、端部シールEe、Eeとすることができる。また、吸収体部4の両側方においては、サイド不織布7、7とバックシート2とが上記接着手段によって接合されており、これにより上述のウィングW、Wが形成されていてよい。ウィングW、Wには、接合強度を高めるため及びデザイン性を考慮して、エンボスEw、Ewが形成されていてもよい。
【0031】
このように、吸収体部4の周囲は、全周にわたってシールされていてよい。これにより、吸収体部4で吸収された体液が側方から漏れるのを防ぐとともに、吸収性物品1の形状安定性も高めることができる。なお、端部シールEe、Eeのシール強度は、側方のシールよりも大きくなっていると好ましい。これにより、後述のようにバックシート2と吸収体部4との相対的なスライドを可能にしつつ、吸収性物品1の形状を安定させることができる。
【0032】
バックシート2としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0033】
トップシート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートである。トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることができる。
【0034】
図1に示すように、吸収体部4は、実質的に体液を吸収する機能を担う吸収体41と、吸収体41を包んでいる被包シート45とを備えた構成とすることができる。被包シート45の材料は特に限定されないが、クレープ紙、不織布等とすることができる。被包シート45によって吸収体41が包まれていることによって、吸収体41のヨレや割れを防止することができる。被包シート45としては、無着色(すなわち、白色)のクレープ紙や不織布を用いることもできるし、着色されたものを用いることもできる。
【0035】
吸収体41は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水性ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水性ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。吸収体41は、積繊又はエアレイド法によって製造することができる。
【0036】
また、吸収体41には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用することができ、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。
【0037】
吸収体部4としては、肌側のシートと下着側のシートとの間の所定領域に高吸水性ポリマーを挟んでなるポリマーシートを用いてもよい。
【0038】
吸収体部4の厚みは、0.3~30mmの範囲内とすることができ、1.0~15mmの範囲であると好ましい。吸収体41は、前面にわたり均一な厚みを有していなくともよく、体液排出口対応領域50及びその付近の領域、また後方領域の幅方向中央部分を膨出させた構造とすることもできる。
【0039】
サイド不織布7としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。例えば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する効果又は肌触り感を高める場合は、シリコーン系、パラフィン系の撥水剤等をコーティングした撥水処理不織布を用いることが好ましい。また、ウィングWにおける経血等の吸収性を高める場合には、不織布の材料として、親水処理された不織布を用いることが好ましい。不織布の種類としては、折り癖が付きにくく、シワになりにくく柔らかいエアスルー不織布が好ましい。
【0040】
図1に示すように、本体8には、トップシート3側からバックシート2側へと窪む圧搾溝11(フィットエンボスともいう)が形成されていてよい。圧搾溝11は、吸収体部4の上に表面シート3を積層させて得られた積層体を、一対の加圧ロールの間に通過させることによって形成することができる。例えば、積層体の表面シート3側に凸状ロールが、吸収体部4側に平坦なロールがそれぞれ配置されるようにして、両ロールによって加圧することができる。圧搾溝11を形成することで、トップシート3と吸収体部4とは圧搾溝にて接合され、装着中、両者は一体的に変形し、動くことができる。
【0041】
摩擦低減層6は、接触する2つの物体の間に存在させることによって、その2つの物体間の摩擦又は摩擦力を低減できる機能を有する層である。本形態では、摩擦低減層6は、摩擦低減層6と吸収体部4との間の摩擦、及び摩擦低減層6とバックシート2との間の摩擦の少なくとも一方が、吸収体部4とバックシート2との間の摩擦より小さくなるように構成された層とすることができる。
【0042】
図1及び図2(a)に示すように、バックシート2と吸収体部4との間には、摩擦低減層6が設けられている。これにより、バックシート2と吸収体部4との間の摩擦を低減することができる。ここで、吸収体部4が、上述のように吸収体41が被包シート45で包まれている構成を有する場合には、摩擦低減層6を、摩擦低減層6と被包シート45との間の摩擦、及び摩擦低減層6とバックシート2との間の摩擦の少なくとも一方が、被包シート45とバックシート2との間の摩擦より小さくなるように構成された層とすることができる。また、吸収体部4としてポリマーシートを用いる場合には、摩擦低減層6を、摩擦低減層6とポリマーシートの下着側のシートとの間の摩擦、及び摩擦低減層6とバックシート2との間の摩擦の少なくとも一方が、ポリマーシートの下着側のシートとバックシート2との間の摩擦より小さくなるように構成された層とすることができる。このように、摩擦低減層6は、この摩擦低減層6がなければバックシート2と接触していたであろうシート又は層の面と、バックシート2の肌側の面との間の摩擦、より具体的には摺動摩擦を低減できる層である。
【0043】
吸収性物品1の装着中には、装着者が、例えば歩行動作等で脚を大きく、或いは継続的に動かすような場合もある。そのような場合には、脚の力及び動きによって下着が変形し、その変形に追従してバックシート2が変形、移動し得る。ここで、バックシート2と吸収体部4とが摩擦によって又は接着剤等で一体的になっていると、吸収体部4以上の構造(例えば、吸収体部4及びトップシート2並びに任意に追加される構成要素)は、バックシート2に追従して変形、移動することになり、吸収性物品に対向している装着者の肌に対して相対的に動く。そうすると、吸収性物品1のトップシート2側の面と肌とが擦れる場合がある。この擦れによって、装着感を低下させ、場合によっては装着者が痒みや痛みを感じる可能性もある。
【0044】
これに対し、本形態では、上述のように、バックシート2と吸収体部4との間に摩擦低減層6を配置したことで、バックシート2と吸収体部4とが、面方向に相対的にスライド(摺動)できるので、バックシート2と吸収体部4とが互いに追従しにくくなる。これにより、バックシート2が下着に追従して変形、移動しても、吸収体部4及び吸収体部4の上に配置されたトップシート3等が、装着者の肌に対して相対的に動かないようにできるか、又はそのような動きを低減することができる。よって、吸収性物品1のトップシート2側と肌との間の擦れを抑制し、装着感を向上させることができる。
【0045】
摩擦低減層6の材料としては、バックシート2と吸収体部4との間の摩擦を低減して、両者を接触面に沿った方向に相対的にスライド可能にすることができるものであれば、特に限定されない。例えば、摩擦低減層6は、基材シート6bの少なくとも一方の面の少なくとも一部に、摩擦低減処理を施して摩擦低減処理部6aを形成してなるシート状体であってよい。
【0046】
シート状体としての摩擦低減層6は、図2(a)に示すように、摩擦低減処理部6aが、基材シート6bの下着側に設けられたものであってよい。これにより、バックシート2の肌側の面と摩擦低減処理層6の下着側の面とを相対的にスライドさせやすくなる。
【0047】
なお、図2(a)の例では、摩擦低減処理層6の肌側(吸収体部4側)の面は、吸収体部4と接着されていてもよいし、されていなくてもよい。接着されていることで、吸収性物品1に大きな力がかかった場合でも、別体である摩擦低減層6の位置ズレを防止することができる。
【0048】
図2(b)及び(c)に、シート状体である摩擦低減層6の変形例を示す。図2(b)に示すように、摩擦低減層6は、摩擦処理部6aが基材シート6bの肌側に設けられたものであってもよい。図2(b)に示す例では、吸収体部4の下着側の面と摩擦低減処理層6の肌側の面とを相対的にスライドさせやすくなる。
【0049】
なお、図2(b)の例でも、摩擦低減処理層6の下着側(バックシート2側)の面は、バックシート2と接着されていてもよいし、されていなくてもよい。接着されていることで、吸収性物品1に大きな力がかかった場合でも、別体である摩擦低減層6の位置ズレを防止することができる。
【0050】
また、図2(c)に示すように、摩擦処理部6aは、基材シート6bの下着側及び肌側の両面に設けることもできる。これにより、基材シート6bの両面での摩擦を低減することができる。本例の場合には、摩擦低減層6は、バックシート2の肌側の面及び吸収体部4の下着側の面のうち、摩擦処理部6aとの摺動摩擦が低い方に対してスライドする。本例では、上述の相対的なスライドが、摩擦低減層6のバックシート2側及び吸収体部4側の少なくともどちらかでできるので、バックシート2及び吸収体部4の材料の選択範囲を広げることができる。
【0051】
ここで、摩擦低減処理は、例えば、滑性付与可能な物質を含む材料(組成物)、又は滑性付与可能な物質からなる材料を塗布することによって行うことができる。滑性付与可能な物質としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂等の有機物質、タルク、シリカ、マイカ等の無機物質等が挙げられる。塗布される材料の形態は限定されず、溶液、エマルジョン、サスペンション等であってよいし、粉末状態であってもよい。上記材料を粉末状態で塗布する場合、バックシート2に塗布することが好ましい。図2(a)~(c)に示すような、シート状体の摩擦低減層6を用いる場合には、摩擦低減処理により形成される摩擦低減処理部6aの量は10.0~30.0g/m程度(乾燥状態)であってよい。
【0052】
また、上記の滑性付与可能な物質を含む材料又は滑性付与可能な物質からなる材料は、粉体の形態であってもよい。その場合、分散性に優れていることから、シリコーンの粉体を使用することが好ましい。
【0053】
上記の基材シート6bとしては、熱可塑性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂の組合せによって形成されたフィルム、織布若しくは不織布等の繊維を含む面状体、パルプを含む面状体、又はこれらの積層体等を用いることができる。基材シート6bの材料として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が挙げられ、安価で加工性が良好であることからポリエチレンが好ましい。
【0054】
図2(a)~(c)に示す例では、摩擦低減層6は、バックシート2及び吸収体部4とは別体になっているが、図2(a)及び(b)に示す例の場合には、摩擦低減処理部6aが設けられていない側を、ホットメルト接着剤等で固着することもできる。すなわち、図2(a)に示す例では、摩擦低減層6を吸収体部4に固着することができ、また図2(b)に示す例では、摩擦低減層6をバックシート2に固着することができる。これにより、長期間使用した場合又は激しい運動等で大きな力がかかった場合等に、摩擦低減層6が当初の位置からズレてしまうことを防止でき、吸収性物品1全体の形状安定性を高めることができる。
【0055】
図3(a)及び(b)に、摩擦低減層6のさらなる変形例を示す。摩擦低減層6は、バックシート2及び吸収体部4とは別体のシート状体ではなく、バックシート2及び吸収体部4の少なくとも一方に、上述の摩擦低減処理を施すことによって、摩擦低減処理部6aを形成することによっても得ることができる。
【0056】
例えば、図3(a)に示すように、摩擦低減層6は、バックシート2の肌側の面に、滑性付与可能な物質を含む上述の材料を直接塗布することによって、摩擦低減処理部6aが設けられた構成とすることができる。また、図3(b)に示すように、吸収体部4の下着側の面に、滑性付与可能な物質を含む上述の材料を直接塗布することによって、摩擦低減処理部6aが設けられた構成とすることもできる。この場合、摩擦低減処理により形成される摩擦低減処理部6aの量は10.0~30.0g/m程度(乾燥状態)であってよい。
【0057】
図3(a)及び(b)に示す例では、バックシート2及び吸収体部4の少なくとも一方に直接的に摩擦低減処理部6aを形成することができ、別体のシートを形成する必要がない。そのため、部材点数を減らすことができ、製造上のコストは小さくすることができる。また、このように摩擦低減処理部6aが直接塗布された形態では、長期間の使用等によって生じ得る摩擦低減層の位置ズレも防ぐことができる。
【0058】
図4(a)及び(b)に、摩擦低減層6のさらに別の変形例を示す。図4(a)に示すように、摩擦低減層6全体を、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂等の滑性付与可能な物質を含む材料又は滑性付与可能な物質からなる材料で構成されたシート状体とすることもできる。その場合、シリコーン樹脂又はフッ素樹脂からなるシートであると好ましい。この例では、摩擦低減層6の厚さ方向にわたって、ほぼ均一な材料から形成することができるので、装着中に摩擦低減層6の表面に何らかの理由で剥がれたりした場合であっても、層として摩擦低減の作用が失われにくい。
【0059】
また、摩擦低減層6の摩擦低減の作用の大きさや吸収性物品1の用途等に応じて、摩擦低減層6の長さを吸収体部4の長さより小さくすることもできるし、且つ/又は摩擦低減層6の幅を吸収体部4の幅より小さくすることもできる。
【0060】
図4(b)は、図4(a)の例の変形例である。図4(b)の例では、滑性付与可能な物質を含む材料又は滑性付与可能な物質からなる材料のシート状体である摩擦低減層6が、ホットメルト接着剤等の接着剤5を介して吸収体部4に接着されている。これにより、吸収体部4及びバックシート2と別体である摩擦低減層6の位置ズレを防止することができ、長期間使用した場合でも吸収性物品1全体の形状安定性を維持することができる。なお、摩擦低減層6が接着されている場合、接着部分は連続していても、図3(d)に示すように不連続であってもよい。
【0061】
図2図4のいずれの例においても、摩擦低減処理部6aは、連続して設けられていてもよいし、不連続的に、すなわち複数の領域に分けられて並べて設けられていてもよい。また、図2図4に示す例では、基材シート6b自体が、連続して設けられていてもよいし、不連続に設けられていてもよい。
【0062】
摩擦低減層6がシート状体であっても(図2及び図4)、バックシート2及び/又は吸収体部4に直接設けられた摩擦低減処理部であっても(図3)、摩擦低減層6の平面視面積(別個の2以上の摩擦低減層が並置されている場合には、平面視面積の合計)は、吸収体部4の平面視面積100%に対して、40%以上とすることができ、好ましくは50%、より好ましくは60%、さらに好ましくは80%以上とすることができる。また、上記面積が100%以上であると、すなわち摩擦低減処理部6aが、吸収体部4が延在する領域全体にわたっているか、又は吸収体部4が延在する領域全体にわたり且つ吸収体部4が延在する領域をさらに越えて設けられていると、摩擦低減作用を高めることができ、バックシート2と吸収体部4との間の接触面に沿った方向に相対的なスライドがより容易となる。
【0063】
また、摩擦低減層6の大きさ及び形状も、バックシート2と吸収体部4との間の摩擦を低減して、両者を接触面に沿った方向で相対的にスライド可能にすることができるものであれば、特に限定はない。図1及び図2(a)の例においては、摩擦低減層6は、吸収体部4と同じ大きさ及び形状を有していて、両者の輪郭がほぼ重なるようにして配置されている。しかし、摩擦低減層6の平面視でも大きさは、吸収体部4の周囲におけるバックシート2とトップシート3及びサイド不織布7との間での接合を妨げることがなければ、吸収体部4より大きいものであってよい。すなわち、吸収体部4からはみ出ていてもよい(図5)。別言すれば、前後方向D1及び/又は幅方向D2で、摩擦低減層6の縁部が、吸収体部4から離れる方に吸収体部4の縁部を越えていてもよい。これにより、バックシート2と吸収体部4との間で一旦面方向のズレが生じ、そのズレが直ちに元に戻らなかったとしても、前後方向D1及び/又は幅方向D2にわたって、バックシート2と吸収体部4とを相対的にスライド可能にできるという上述の作用を維持することができる。
【0064】
摩擦低減層6の、バックシート2に対する静摩擦係数は、同じ条件で測定した吸収体部
4の、バックシート2に対する静摩擦係数の98%以下であると好ましく、90%以下であるとより好ましく、75%以下であるとさらに好ましく、60%以下であるとさらに好ましい。また、吸収体部4の、摩擦低減層6に対する静摩擦係数は、同じ条件で測定した吸収体部4の、バックシート2に対する静摩擦係数の90%以下であると好ましく、80%以下であるとより好ましく、65%以下であるとさらに好ましく、50%以下であるとさらに好ましい。
【0065】
摩擦低減層6の、バックシート2に対する動摩擦係数は、同じ条件で測定した吸収体部4の、バックシート2に対する動摩擦係数の98%以下であると好ましく、90%以下であるとより好ましく、75%以下であるとさらに好ましく、60%以下であるとさらに好ましい。また、吸収体部4の、摩擦低減層6に対する動摩擦係数は、同じ条件で測定した吸収体部4の、バックシート2に対する動摩擦係数の80%以下であると好ましく、50%以下であるとより好ましく、30%以下であるとさらに好ましく、10%以下であるとさらに好ましく、5%以下であるとさらに好ましい。
【0066】
吸収体部4が被包シート45で包まれている場合、上記の吸収体部4の、摩擦低減層6に対する静摩擦係数及び動摩擦係数はそれぞれ、被包シート45の、摩擦低減層6に対する静摩擦係数及び動摩擦係数とすることができる。
【0067】
なお、吸収性物品1の使用時には、摩擦低減層6とバックシート2又は吸収体部4との摩擦は、肌と吸収性物品1との間の摩擦(肌と表面シート3との間の摩擦)より小さくなっていてよい。
【0068】
図2図4の例ではいずれも、摩擦低減層6は1層であるが、摩擦低減層6は2以上設けられていてもよい。その場合、上述の摩擦低減層6(図2図4)の構成のうち2以上を任意に組み合わせることができる。
【0069】
また、摩擦低減層6の厚みは、50~1,000μm程度であってよい。摩擦低減層6がシート状体である場合(図2及び図4)には、その厚み(複数のシート状体が含まれる場合いはその合計)は100~1,000μmとすることが好ましい。また、摩擦低減層6が、バックシート2及び吸収体部4の少なくとも一方に形成される摩擦低減処理部6aである場合(図3)には、50~500μmとすることが好ましい。
【0070】
図5に、本発明の一形態による吸収性物品の別の変形例を示す。図5には、図1の吸収性物品1の、トップシート2及びサイド不織布7、7を取り去った状態を示す。図5には、バックシート3の下着側に配置されているズレ止め材9も示す。
【0071】
ズレ止め材9は、吸収性物品1を下着に固定するために設けられる粘着性又は非粘着性の層であってよい。粘着剤層としては、例えば、スチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤及びこれらの組合せを主成分とするものが好適に使用される。非粘着性の層として形成されるズレ止め材9の材料としては、吸収性物品1と被装着体との間の摩擦を増大させる材料であれば、特に限定はされない。天然又は合成の各種ゴム等をベースポリマーとする材料を単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0072】
図5の例では、前後方向D1に3条設けられているが、ズレ止め材9の形状、大きさ、またズレ止め材9が配置されている範囲は、図示のものに限られない。摩擦低減層6は、平面視で、ズレ止め材9に重なるように配置されていることが好ましい。
【0073】
バックシート2にズレ止め材9が設けられている部分は、下着への固定が強固になっている部分であるので、装着者が動く際に下着に追従して変形し、吸収性物品に対向する股下部分(局部)との擦れが生じやすい。しかし、摩擦低減層6とズレ止め材9とが平面視で重なっていると、その位置で、バックシート2と吸収体部4とが両者の接触面に沿った方向でスライドしやすくなり、吸収体部4及びその上に配置されたトップシート2等を身体に、バックシート2を下着に、それぞれ追従させやすくなる。
【0074】
摩擦低減層6は、少なくとも、中央領域M若しくは後方領域R又はその両方に、設けられていることが好ましい。図5に示す例では、摩擦低減層6は、中央領域M及び後方領域Rにわたって設けられており、前方領域Fには設けられていない。ここで、中央領域Mは、体液排出口対応領域Aを含み、特に身体のデリケートな又は柔らかい部位に対応する。よって、中央領域Mにおける擦れを防止することで、装着感を効果的に向上させることができる。
【0075】
また、後方領域Rは、例えば歩行時等の脚の動きによって吸収性物品が特に動きやすくなっている。すなわち、歩行時には左右の脚が歩行方向に順に踏み出される毎に、踏み出された方の脚につられて下着が、そしてそれに追従して吸収性物品が、歩行方向に引っ張られる。そのため、吸収性物品と、吸収性物品に対向している肌との間に擦れが生じやすくなっている。よって、摩擦低減層6を少なくとも後方領域Rに設けて擦れを防止することによっても、装着感を効果的に向上させることができる。さらに、後方領域Rが中央領域Mに隣接していることから、後方領域Rの動きは中央領域Mに伝わりやすいので、後方領域Rにおける摩擦低減層6の配置は、後方領域Rのみならず、後方領域Rの前方の中央領域Mにおける吸収性物品と肌との間の擦れ防止にも寄与することができる。
【0076】
なお、バックシート2と吸収体部4とは直接、又は摩擦低減層6を介して、部分的に接合されていてもよい。バックシート2と吸収体部4とが接合部分を有していることで、形状を安定させることができ、装着者が激しい動きをした場合等であっても吸収性物品全体の破壊を防止することができる。
【0077】
バックシート2と吸収体部4とが部分的に接合されている場合、その接合部分の領域の平面視面積は、吸収体部4の平面視面積100%に対して、20%以下とすることができ、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%とすることができ、さらに好ましくはバックシート2と吸収体部4とが、直接的に又は間接的に接合されていない構成とすることができる。上記平面視面積が20%以下であることで、バックシート2と吸収体部4との間でのスライド動作が阻害されることを回避することができる。
【0078】
また、バックシート2と吸収体部4とは、前方領域Fの少なくとも一部において接合されていてよい。前方領域Fは、身体の動きによる影響が比較的小さく、吸収性物品1と肌との間で擦れが生じる可能性が、中央領域M及び後方領域Rよりも小さい。そのため、前方領域Fの少なくとも一部を接合しておくことで、バックシート2と吸収体部4との相対的な動きを可能にして装着感を向上させるとの効果を維持しつつ、吸収性物品1の形状安定性を向上させることができる。
【0079】
図6に、バックシート2と吸収体部4との接合部分の例を示す。図6には、図5と同様、図1の吸収性物品1の、トップシート2及びサイド不織布7、7を取り去った状態を示す。図6に示す例では、吸収体部4と摩擦低減層6とは、平面視で輪郭が重なる形状及び配置になっている。図6に、吸収体部4とバックシート2とが摩擦低減層6を介して接合された接合部分20を網目で示す。図5に示すように、バックシート2と吸収体部4とが、吸収体部4の前端で、且つ/又は吸収体部4の両側部の前方で接合されていることにより、中央領域M及び後方領域Rにおける摩擦低減層6の機能を妨げることなく、吸収性物品1は破壊され難くなり、またその形状を安定させることができる。
【0080】
なお、図1~3の例で示すように、バックシート2と吸収体部4が接合されていない場合には、バックシート2と吸収体部4との間での相対的なスライドが、吸収体部4全体にわたって可能となるので、吸収性物品1と肌との間に発生し得る擦れを防止する作用は高くなる。
【0081】
本形態は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の他、おむつにも適用可能であるが、特に生理用ナプキンとして好適に用いることができる。生理用ナプキンは、肌側を局部に密着させて使用する場合が多いので、他の吸収性物品に比べて、装着者の動きによって吸収性物品と肌との間で擦れが起こりやすい。そのため、本形態を用いることで、吸収性物品と肌との間での擦れを低減でき、装着感の低下を防止できる。また、場合によって装着者が感じる痒み、痛み、かぶれ等も防止することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 吸収性物品
2 バックシート
3 トップシート
4 吸収体部
5 接着剤
6 摩擦低減層
6a 摩擦低減処理部
6b 基材シート
7 サイド不織布
8 本体(吸収性物品本体)
9 ズレ止め材
11 圧搾溝
20 バックシートと吸収体部との接合部分
41 吸収体
45 被包シート
CL 前後方向中心線
F 前方領域
M 中央領域
R 後方領域
D1 第1方向(前後方向)
D2 第2方向(幅方向)
W ウィング
図1
図2
図3
図4
図5
図6