(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 77/34 20140101AFI20220125BHJP
E05B 85/02 20140101ALI20220125BHJP
E05B 85/24 20140101ALI20220125BHJP
E05B 81/54 20140101ALI20220125BHJP
E05B 81/42 20140101ALI20220125BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
E05B77/34
E05B85/02
E05B85/24
E05B81/54
E05B81/42
B60J5/00 N
(21)【出願番号】P 2019141667
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰之
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0175813(US,A1)
【文献】特許第6482537(JP,B2)
【文献】特開2012-110078(JP,A)
【文献】特開2017-197912(JP,A)
【文献】特開2015-224457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/34
E05B 85/02
E05B 85/24
E05B 81/54
E05B 81/42
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられて、前記車両の本体側に設けられたストライカをラッチおよびアンラッチすることにより前記ドアを閉扉および開扉するドアラッチ装置であって、
モータを含む電気部品と、
前記モータによって駆動される機械機構と、
前記電気部品と電気的に接続される回路基板と、
ケースと、
前記ケースの一方の面を覆うことによって前記モータおよび前記機械機構が収容される第1収容空間を形成する第1カバーと、
前記ケースの他方の面を覆うことによって前記回路基板が収容される第2収容空間を形成する第2カバーと、
前記ケースに設けられ、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間を連通するピン孔と、
前記回路基板から立設し、前記ピン孔から前記第1収容空間に突出するピンと、
前記ピンの根元の周囲を覆うことによって前記ピンを前記回路基板に対して支持するピンホルダと、
前記ケースと前記第2カバーとの間に設けられ、外部と前記第2収容空間との間を防水する対外防水シールと、
前記ピンホルダと前記ピン孔との間に設けられて、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間を防水する内部防水シールと、
を備えることを特徴とするドアラッチ装置。
【請求項2】
前記ピン、前記ピンホルダ、前記ピン孔および前記内部防水シールを備える内部防水構造は複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項3】
前記第2カバーは、前記回路基板における前記ピンホルダの当接部の裏側を支持する支持突起を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のドアラッチ装置。
【請求項4】
前記ピンホルダは、前記回路基板を挟んで前記支持突起と対向する位置に脚部を備えることを特徴とする請求項3に記載のドアラッチ装置。
【請求項5】
前記脚部は、前記ピンホルダの長尺方向に沿って、前記ピンの挿入部を挟んだ両側に一対設けられていることを特徴とする請求項4に記載のドアラッチ装置。
【請求項6】
前記支持突起と前記脚部とは前記回路基板の平面視で重なるように配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載のドアラッチ装置。
【請求項7】
前記ピンホルダは、前記回路基板に設けられた位置決め孔に挿入されて位置決めをする位置決め突起を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のドアラッチ装置。
【請求項8】
前記内部防水シールの一部は前記ピン孔から第1収容空間に突出して前記電気部品に当接していることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のドアラッチ装置。
【請求項9】
前記第2カバーは、
前記第2収容空間の一部を形成する凹部と、
前記凹部を囲む周壁と、
前記周壁の外周に沿って形成されるシール溝と、
を備え、
前記第2収容空間は前記凹部を前記第2カバーが覆うことによって形成され、
前記対外防水シールは前記シール溝に設けられていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のドアラッチ装置。
【請求項10】
前記回路基板は、前記ケースに設けられた第1回路基板サポータと前記第2カバーに設けられた第2回路基板サポータとによって挟持されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のドアラッチ装置。
【請求項11】
前記機械機構は、
前記ドアを閉扉状態に保持するラッチ機構と、
前記ラッチ機構を前記モータの動力により解放可能な電動リリース手段と、
前記ラッチ機構を手動操作力により解放可能な手動リリース手段と、
前記手動リリース手段の作動を不能にするロック状態と可能にするアンロック状態とに切り替えるロック機構と、
を備え、
前記電動リリース手段は前記モータの動力で基準位置から正転および反転するカム輪を有し、
前記ロック機構は前記カム輪が前記基準位置にあるとき前記ロック状態に保持され、
前記カム輪が前記基準位置からスプリング力に抗して正転することにより前記ラッチ機構が解放され、前記ロック機構は前記アンロック状態となり、さらに前記基準位置ヘスプリング力で前記基準位置に復帰すると前記ロック機構が前記ロック状態に切替えられ、
前記カム輪が前記基準位置から反転した後、正転して前記基準位置に復帰することにより前記ロック機構は前記ロック状態に復帰されることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のドアラッチ装置。
【請求項12】
前記ロック機構は、
前記手動リリース手段による開扉操作を前記ラッチ機構に伝達可能なアンロック位置と伝達不能にするロック位置とに切り替えられる位置切替部材と、
前記手動リリース手段または前記電動リリース手段に連動して前記位置切替部材を前記アンロック位置と前記ロック位置とに切り替え可能なロックレバーと、
を備え、
前記カム輪が前記基準位置からスプリング力に抗して正転するとき、前記位置切替部材が前記ロック位置から前記アンロック位置に切り替えられ、前記ロックレバーは動作しないことを特徴とする請求項11に記載のドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアを閉扉および開扉するドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアラッチ装置は、車両の本体側に設けられたストライカをラッチおよびアンラッチするラッチ機構を備えており、該ラッチ機構によってドアを閉扉および開扉する。
【0003】
特許文献1には、モータの動力によりラッチ機構とストライカとの噛合を解除可能な電動リリース機構と、手動操作力によりラッチ機構の噛合を解除可能な手動リリース機構と、手動リリース機構の解除作動を無効にするロック状態及び有効にするアンロック状態に切り替え可能なロック機構を備えたドアラッチ装置が記載されている。
【0004】
このドアラッチ装置は、ラッチ機構の噛合解除は専ら電動リリース機構により行い、手動リリース機構は事故、電気系統の故障、バッテリの電圧降下等により電動リリース機構の作動が不能になった場合の補完として設けられる。このため、ロック機構は、手動リリース機構の作動のみに使用され、常時はロック状態で使用されて所定の事態のみ、アンロック状態に切り替えられるようになっている。
【0005】
また、このドアラッチ装置では、ロック機構のロック状態とアンロック状態との切り替えは、モータの動力で回転するカム輪の正転及び逆転により行われる。カム輪は、中立復帰スプリングの付勢力によって基準位置に保持されており、基準位置から正転するとロック機構をロック状態に切り替え、基準位置から逆転するとロック機構をアンロック状態に切り替える構成を有している。
【0006】
さらに、カム輪は、基準位置から正転した場合にはラッチ機構の噛合解除も行う。これにより、単一のモータにより、ロック機構の切り替えと、ラッチ機構の噛合解除を行うことができる。
【0007】
一方、車両ドアを閉扉および開扉するドアラッチ装置にはモータやポジションスイッチなどの電気部品を備えるものがある。モータは仕様により、例えばオートロック機能や、ハーフラッチ状態からフルラッチ状態への移行などに用いられる。モータは、ポジションスイッチや他の信号に基づいて所定の回路基板によって制御が行われる。
【0008】
電気部品を含むドアラッチ装置は、例えば防滴構造となっている。一方、回路基板はモータ等の電気部品よりも高い防水性が求められることから、ドアラッチ装置とは別置きの防水型ECU内に収容されることが多い。
【0009】
しかしながら、ドアラッチ装置とは別置きの防水型ECUを設けることはそれだけ部品点数が増え、車両への搭載工程が増える。また、ドアラッチ装置と防水型ECUとの間のハーネス、およびその接続工程が必要になる。
【0010】
そこで、特許文献2ではモータを制御する回路基板をドアラッチ装置の内部に設けている。このドアラッチ装置では、回路基板が収容される空間と機構部が収容される空間とが仕切壁で区画分けされている。回路基板のある空間は所定のカバーで覆われており、外部空間に対して第1シールによって防水がなされている。また、回路基板からはピンが立設していて、仕切壁に設けられた孔から機構部の空間に突出している。そして、仕切壁の孔と回路基板との間には環状の第2シールが設けられて、該第2シールが回路基板の表面におけるピンの周囲に当接されることによって防水がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第6213927号公報
【文献】特許第6482537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載のドアラッチ装置では、手動でロック機構を切り替えるための施解錠ノブを有しない所謂ノブレスタイプにあっては、キーを用いた手動によるアンロック状態への切り替え、及びモータの動力によるアンロック状態への切り替えは、所定の事態が発生しない限り用いる必要はない。したがって、ロック機構は通常操作では動作することなく、ロック状態のまま長時間維持されることとなる。この結果、グリスの経年劣化による硬化や鋼材を用いたスプリングやレバー等に錆が発生し、所定の事態にロック機構がスムーズに機能しない懸念がある。したがって、所定の事態にロック機構がスムーズに機能するようにしたドアラッチ装置が望まれる。
【0013】
また、特許文献1に記載のドアラッチ装置は、ロック機構のアンロック状態からロック状態への切り替えはラッチ機構の噛合解除が条件となるため、単一のモータにより、ラッチ機構の噛合解除を行うことなく、ロック機構を単独でアンロック状態からロック状態に切り替えることができない。したがって、単一のモータにより、ラッチ機構の噛合解除、ロック機構のロック状態及びアンロック状態への切り替えを行うことができるドアラッチ装置が望まれる。また、この際にユーザが気になるような無駄な音が生じないことが好ましい。
【0014】
一方、特許文献2に記載のドアラッチ装置では、回路基板に設けられるピンはモータなどとの接続で力が加わることから、回路基板に対する固定強度が必要であり、複数本の半田付脚を備える変則型であり、それだけ広い面積を要する。また、回路基板の表面上において第2シールで囲まれた範囲については防水がなされないことから、ピンの根元の半田付け部分についても防水がなされず、耐久性に懸念がある。さらに、この非防水の範囲にはスルーホールやパターンなどを配置することができない。このように、特許文献2記載のドアラッチ装置では、十分な防水性が得られず、それにより部品配置などにおける制約がある。
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、回路基板の全面を防水することのできるドアラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるドアラッチ装置は、車両のドアに設けられて、前記車両の本体側に設けられたストライカをラッチおよびアンラッチすることにより前記ドアを閉扉および開扉するドアラッチ装置であって、モータを含む電気部品と、前記モータによって駆動される機械機構と、前記電気部品と電気的に接続される回路基板と、ケースと、前記ケースの一方の面を覆うことによって前記モータおよび前記機械機構が収容される第1収容空間を形成する第1カバーと、前記ケースの他方の面を覆うことによって前記回路基板が収容される第2収容空間を形成する第2カバーと、前記ケースに設けられ、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間を連通するピン孔と、前記回路基板から立設し、前記ピン孔から前記第1収容空間に突出するピンと、前記ピンの根元の周囲を覆うことによって前記ピンを前記回路基板に対して支持するピンホルダと、前記ケースと前記第2カバーとの間に設けられ、外部と前記第2収容空間との間を防水する対外防水シールと、前記ピンホルダと前記ピン孔との間に設けられて、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間を防水する内部防水シールと、を備えることを特徴とする。
【0017】
前記ピン、前記ピンホルダ、前記ピン孔および前記内部防水シールを備える内部防水構造は複数設けられていてもよい。
【0018】
前記第2カバーは、前記回路基板における前記ピンホルダの当接部の裏側を支持する支持突起を備えていてもよい。
【0019】
前記ピンホルダは、前記回路基板を挟んで前記支持突起と対向する位置に脚部を備えていてもよい。
【0020】
前記脚部は、前記ピンホルダの長尺方向に沿って、前記ピンの挿入部を挟んだ両側に一対設けられていてもよい。
【0021】
前記支持突起と前記脚部とは前記回路基板の平面視で重なるように配置されていてもよい。
【0022】
前記ピンホルダは、前記回路基板に設けられた位置決め孔に挿入されて位置決めをする位置決め突起を備えていてもよい。
【0023】
前記内部防水シールの一部は前記ピン孔から第1収容空間に突出して前記電気部品に当接していてもよい。
【0024】
前記第2カバーは、前記第2収容空間の一部を形成する凹部と、前記凹部を囲む周壁と、前記周壁の外周に沿って形成されるシール溝と、を備え、前記第2収容空間は前記凹部を前記第2カバーが覆うことによって形成され、前記対外防水シールは前記シール溝に設けられていてもよい。
【0025】
前記回路基板は、前記ケースに設けられた第1回路基板サポータと前記第2カバーに設けられた第2回路基板サポータとによって挟持されてもよい。
【0026】
前記機械機構は、前記ドアを閉扉状態に保持するラッチ機構と、前記ラッチ機構を前記モータの動力により解放可能な電動リリース手段と、前記ラッチ機構を手動操作力により解放可能な手動リリース手段と、前記手動リリース手段の作動を不能にするロック状態と可能にするアンロック状態とに切り替えるロック機構と、を備え、前記電動リリース手段は前記モータの動力で基準位置から正転および反転するカム輪を有し、前記ロック機構は前記カム輪が前記基準位置にあるとき前記ロック状態に保持され、前記カム輪が前記基準位置からスプリング力に抗して正転することにより前記ラッチ機構が解放され、前記ロック機構は前記アンロック状態となり、さらに前記基準位置ヘスプリング力で前記基準位置に復帰すると前記ロック機構が前記ロック状態に切替えられ、前記カム輪が前記基準位置から反転した後、正転して前記基準位置に復帰することにより前記ロック機構は前記ロック状態に復帰されてもよい。
【0027】
前記ロック機構は、前記手動リリース手段による開扉操作を前記ラッチ機構に伝達可能なアンロック位置と伝達不能にするロック位置とに切り替えられる位置切替部材と、前記手動リリース手段または前記電動リリース手段に連動して前記位置切替部材を前記アンロック位置と前記ロック位置とに切り替え可能なロックレバーと、を備え、前記カム輪が前記基準位置からスプリング力に抗して正転するとき、前記位置切替部材が前記ロック位置から前記アンロック位置に切り替えられ、前記ロックレバーは動作しなくてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかるドアラッチ装置では、対外防水シールと内部防水シールとにより回路基板の全面を防水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかるドアラッチ装置を車両外側の斜め後方からみた斜視図である。
【
図2】
図2は、ドアラッチ装置を車両外側の斜め前方からみた斜視図である。
【
図3】
図3は、ドアラッチ装置の内部を示す側面図である。
【
図5】
図5は、ロック機構を斜め内側後方からみた斜視図である。
【
図6】
図6は、ロック機構を斜め外側前方からみた斜視図である。
【
図7】
図7は、カム輪が正転するときのロック機構の動作を説明する図であり、(a)はカム輪が基準位置にある基本状態を示す図であり、(b)はカム輪が基準位置からわずかに正転した状態を示す図であり、(c)はカム輪が基準位置から略40°正転した状態を示す図であり、(d)はカム輪が基準位置から略90°正転した状態を示す図であり、(e)はカム輪が基準位置から略190°正転した状態を示す図であり、(f)はカム輪が基準位置から略250°正転した状態を示す図である。
【
図8】
図8は、はカム輪が反転と正転とを行うときのロック機構の動作を説明する図であり、(a)はカム輪が基準位置にある基本状態を示す図であり、(b)はカム輪が基準位置から略40°反転した状態を示す図であり、(c)は(b)の状態からカム輪が略40°正転した状態を示す図であり、(d)は(c)の状態からカム輪が略40°正転した状態を示す図である。
【
図9】
図9は、電気部品およびその収納にかかる部品等を斜め前方外側から見た分解斜視図である。
【
図10】
図10は、電気部品およびその収納にかかる部品等を斜め内側前方から見た分解斜視図である。
【
図11】
図11は、ピンホルダを示す図であり、(a)は斜め内側から見た斜視図であり、(b)は斜め外側から見た斜視図である。
【
図12】
図12は、回路基板、ピンホルダ、ピン、内部防水シールおよびケースの分解斜視図である。
【
図13】
図13は、ピンホルダおよびその周辺をピンホルダの長尺方向から見た一部断面側面図である。
【
図14】
図14は、ピンホルダおよびその周辺をピンホルダの短尺方向から見た一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明にかかるドアラッチ装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0031】
以下、ドアラッチ装置10の説明における方向の表記は車両を基準とする。車両を基準とした方向は、図面上で適宜上下、内外(つまり室内側と室外側)および前後を矢印で示す。また、回転する部品の回転方向(時計方向、反時計方向)の表記は、基本的にその時点で参照している図面に従う。各図に示すドアラッチ装置10は車両の右側ドアに適用されるものを例示しているが、左側ドアに適用されるものは左右対称構造とすればよい。
【0032】
図1は、本実施形態に係るドアラッチ装置10を斜め後方からみた斜視図であり、
図2はドアラッチ装置10を車両外側の斜め前方からみた斜視図である。
【0033】
ドアラッチ装置10は車両のドアの内部に取り付けられて、車両の本体側に設けられたストライカをラッチおよびアンラッチすることによりドアを閉扉および開扉する。ドアラッチ装置10が設けられてストライカをラッチするのは、例えば車両のサイドドアであるが、「ドア」は広義であり、ボンネット、トランクリッド、テールゲート等に適用されるものであってもよい。まず、ドアラッチ装置10の概略全体構成について説明する。
【0034】
図1および
図2に示すように、ドアラッチ装置10は、ストライカをラッチするラッチ12がストライカ進入溝14の奥に設けられている。ラッチ12は後述するラッチ機構44の一部である。ストライカ進入溝14はカバープレート16の一部として形成されている。カバープレート16の周りにはボディ18が設けられている。ラッチ機構44の内側および後側はカバープレート16およびボディ18によって覆われている。
【0035】
ドアラッチ装置10は、上記のカバープレート16およびボディ18以外に、ケース20、第1カバー22および第2カバー24によって覆われている。ケース20は主に外側を覆い、第1カバー22は主に内側を覆い、第2カバー24はケース20における内側の前方上部をさらに覆っている。カバープレート16、ボディ18、ケース20、第1カバー22および第2カバー24は、ドアラッチ装置10の筺体を形成する。
【0036】
ドアラッチ装置10は、さらに、上面を覆う防水カバー26と、内側下方のケーブルカバー28と、内側上部に設けられたカプラー30と、外側上部に設けられたキーシリンダ連結部32とを備える。防水カバー26はケース20と第1カバー22との境部を覆い、水滴の進入を防止する。ケーブルカバー28はケーブル35との接続部分を覆う。ケーブル35は、図示しないインナーハンドルにつながっている。カプラー30には図示しないハーネスコネクタが接続される。カプラー30の周りにはスポンジを設けてもよい。キーシリンダ連結部32はキーが差し込まれて操作される部分である。ドアラッチ装置10の外側面には、図示しないアウターハンドルに接続されるアウターレバー34の端部が露呈している。
【0037】
図3は、ドアラッチ装置10の内部を示す側面図である。
図3では、ボディ18、第1カバー22、防水カバー26およびケーブルカバー28を取り外した状態でドアラッチ装置10を示している。
【0038】
図3に示すように、ドアラッチ装置10の内側には第1収容空間36が形成される。第1収容空間36は外側がケース20で覆われ、内側が主に第1カバー22で覆われる領域である。第1収容空間36の内側は第1カバー22以外にも、カバープレート16、ボディ18およびケーブルカバー28で覆われる。
【0039】
第1収容空間36は、概略的に機械機構38が配置される機構領域40と、電気部品が配置される電気部品領域42とに区分できる。電気部品領域42は前方上方部を占め、機構領域40はその残余の部分を占める。機械機構38は、ラッチ12によってストライカをラッチおよびアンラッチするラッチ機構44と、該ラッチ機構44をロック状態およびアンロック状態にするロック機構46とを有する。ラッチ機構44は、第1収容空間36において後方に配置されており、カバープレート16およびボディ18で覆われている。なお、ドアラッチ装置10では第1収容空間36の他に第2収容空間124(
図10参照)が形成されている。第2収容空間124については後述する。
【0040】
また、機械機構38はラッチ機構44をモータ94の動力により解放可能な電動リリース手段と、ラッチ機構44を手動操作力により解放可能な手動リリース手段とを備えている。電動リリース手段は、後述するモータ94およびカム輪76等を有してストライカをアンラッチさせる手段である。手動リリース手段は、人手の操作に機械的に連動するアウターレバー34および後述するインナーレバー59を介してストライカをアンラッチさせる手段である。
【0041】
図4は、ラッチ機構44の斜視図である。
図4に示すように、ラッチ機構44は上記のラッチ12およびアウターレバー34に加えて、ベースブラケット50、ラチェット52、ラチェットホルダ54、ラチェットレバー56、アンチパニックレバー58、インナーレバー59を有する。ラッチ機構44の各要素は該ベースブラケット50に支持または枢支されている。
【0042】
ラッチ12は軸部60に枢支されており、ストライカ係合溝12aと、ラチェット係合部12bとを備える。ラッチ12は、開扉状態からストライカがストライカ係合溝12aに進入することによって図示しないスプリングに抗して回転し、ラチェット52がラチェット係合部12bに係合することによってストライカをフルラッチ位置でラッチし、閉扉する。
【0043】
ラチェット52は、軸部62で枢支されたベースレバー64と、該ベースレバー64に対して根元軸部66aが枢支されたポールレバー66とを有する。ベースレバー64は、スプリング65によって弾性付勢されている。ポールレバー66はベースレバー64に対して所定の角度範囲で屈曲する。ラチェット52は、ラチェットホルダ54によって側方から支持されることにより略直線状の姿勢が保持され、ポールレバー66の先端がラチェット係合部12bに係合し、ラッチ12をフルラッチ位置に保持する。
【0044】
ラチェットホルダ54は、軸部68によって枢支されており、スプリング70によって弾性付勢されることによりベースレバー64の側方を支持する。ラチェットホルダ54は、ラチェットレバー56の動作に基づいてスプリング70の弾性力に抗して回転し、ベースレバー64から離間する。そうするとラチェット52のベースレバー64とポールレバー66とは根元軸部66aを基準に中折れ状態となり、ポールレバー66はラチェット係合部12bから離脱してラッチ12を開放する。ラッチ12は弾性力によって回転してストライカをアンラッチし、開扉する。ラチェットホルダ54を介してラチェット52を操作することにより、ラチェット52を直接的に操作するよりも軽い力での操作が可能になる。
【0045】
ラチェットレバー56はベースブラケット50に枢支されており、回転軸よりも内側に突出した受動部56aと、回転軸よりも外側に突出した作用部56bとを備える。ラチェットレバー56は、受動部56aが上方に動くことによって作用部56bがラチェットホルダ54を回転させる。
【0046】
アウターレバー34は、軸部72によって枢支されており、軸部72よりも外側に突出したハンドル操作部34aと、軸部72よりも内側に突出した作用部34bおよびレバー受動片34cとを有する。ハンドル操作部34aはアウターハンドルによって操作される部分である。作用部34bはアンチパニックレバー58の孔58aに挿入されており、該アンチパニックレバー58に作用する部分である。作用部34bは後述するオープンリンク80の異形孔80bにも挿入されている。レバー受動片34cは、作用部34bよりも下方に配置されており、インナーレバー59によって操作される。アウターレバー34は、ハンドル操作部34aまたはレバー受動片34cの動作により回転し、アンチパニックレバー58を押し上げる。
【0047】
インナーレバー59は軸部74で枢支されており、ケーブル35の操作によって搖動し、操作片59aがレバー受動片34cを押し上げる。
【0048】
アンチパニックレバー58は作用部34bが挿入される孔58aと、上方で屈曲した作用片58bとを備える。アンチパニックレバー58は、後述するオープンリンク80がアンロック位置であるとき、アウターレバー34が回転することによって作用部34bによって押し上げられ、作用片58bがラチェットレバー56の受動部56aを押し上げる。これによりラチェットホルダ54およびラチェット52がアンラッチ動作を行う。アンチパニックレバー58は、アンチパニック機構のためにオープンリンク80とは別体構造となっている。
【0049】
図5は、ロック機構46を斜め内側斜め後方からみた斜視図であり、
図6は、ロック機構46を斜め外側前方からみた斜視図である。
図5ではロック機構46の配置が理解できるようにケース20を簡略的に併記している。
図5および
図6では、ロック機構46はロック状態となっている。
【0050】
図5および
図6に示すように、ロック機構46は、軸部76aで枢支されたカム輪76と、軸部78aで枢支されてカム輪76によって駆動されるカムレバー78と、該カムレバー78によって駆動されるオープンリンク(位置切替部材)80と、該オープンリンク80と連動するサブロックレバー82と、軸部84aで枢支されてカム輪76によって駆動されるオープンレバー84とを備える。ロック機構46は、さらにサブロックレバー82と連動するロックレバー86および補助レバー88と、キー操作に連動してサブロックレバー82を駆動するキーレバー90およびサブキーレバー92とを備える。各図において部品識別を容易とするためにロックレバー86を濃いドット地、オープンリンク80を薄いドット地で示している。
【0051】
カム輪76は円盤形状であり、モータ94の回転軸のウォーム94aによって外周面に設けられた歯が駆動されることにより回転する。歯の図示は省略する。モータ94は電気部品領域42(
図3参照)に配置されている。カム輪76の回転方向は、
図5を基準として時計方向を正転、反時計方向を反転とする。
【0052】
カム輪76はカム76bを備える。カム76bは、カム輪76が基準位置にあるときに軸部76aの直下から反時計方向に向かって略270°にわたって次第に大径となる形状で、略270°位置でカム輪76の半径に近くなり、反時計方向に向かってさらに略180°までその径が維持されている。
【0053】
図6に示すように、カム輪76には内側面に補助部品77が設けられている。カム輪76と補助部品77は固定されており実質的に1つの部品となっている。補助部品77が形成する筒77aの内部にはスプリング76cが設けられている。スプリング76cはカム輪76が中立の基準位置となるように付勢している。カム輪76は、モータ94の作用によってスプリング76cに抗して、基準位置から正転および反転が可能である。
【0054】
補助部品77は外周近傍部で内側に突出した突起77bと、該突起77bに対して略反対側に設けられた第1傾斜壁77cとを備える。突起77bは、カム輪76が反転するとき、ケース20(
図2参照)に設けられた弾性ストッパ96に当接し、カム輪76の回転を規制する。第1傾斜壁77cは、筒77aの筒面から径方向に向かって、反時計方向に沿って幅が広くなるように形成されている。
【0055】
カム輪76はさらに第2傾斜壁76dと、保持壁76eとを備える。第2傾斜壁76dは、筒77aの筒面から径方向に向かって、時計方向に沿って幅が広くなるように形成されている。第1傾斜壁77cと第2傾斜壁76dとは近い位置で対向するように形成されており、傾斜が逆向きとなっている。第1傾斜壁77cは第2傾斜壁76dよりも外側に配置されている。保持壁76eは第2傾斜壁76dよりもやや反時計方向側に設けられておりカム輪76の周面に沿って外側に突出した円弧状の壁である。
図6に示すように、保持壁76eの時計方向側は閉じており、反時計方向側は開放している。
【0056】
図5に戻り、カムレバー78は下面78dがカム76bに当接しており、カム輪76が回転するとカム76bによって駆動され、スプリング78bに抗して反時計方向に搖動する。カムレバー78の先端のノブ78cは、オープンリンク80の側面ガイド溝80aに嵌合しており、カムレバー78が時計方向に搖動すると、傾斜しているオープンリンク80を正立させる。
【0057】
オープンリンク80の下端部には異形孔80bが形成されている。異形孔80bにはアウターレバー34(
図4参照)の作用部34bが挿入されており、該アウターレバー34の動作によってオープンリンク80が上方に持ち上げられる。オープンリンク80の下端部にはアンチパニックレバー58が組み付けられており、該オープンリンク80と一体的に昇降および傾斜する。
【0058】
オープンリンク80はカムレバー78によって傾斜姿勢のロック位置(
図5の姿勢のとき)と正立姿勢のアンロック位置(
図8(b)参照)とに切り替えられる部品であって、ロック位置のときロック機構46がロック状態となり、アンロック位置のときロック機構46がアンロック状態となる。オープンリンク80はロックレバー86によっても位置が切り替えられる。
【0059】
すなわち、オープンリンク80がロック位置のときには、アウターレバー34によって持ち上げられてもアンチパニックレバー58(
図4参照)はオープンリンク80とともに傾斜していることからラチェットレバー56(
図4参照)に当接せず、いわゆる空振りになる。したがってラチェットレバー56は動作せず、ドアが閉扉されたままのロック状態となっている。
【0060】
一方、オープンリンク80がアンロック位置のときには、アウターレバー34によって持ち上げられると、アンチパニックレバー58もオープンリンク80とともに正立していることからラチェットレバー56に当接して押し上げる。したがってラチェットレバー56が動作して、ドアが開扉され得るアンロック状態となっている。
【0061】
サブロックレバー82は軸部82aで枢支されて搖動可能となっており、キーレバー90およびサブキーレバー92によって搖動駆動されてオープンリンク80をロック位置とアンロック位置とに切り替え可能である。つまり、サブロックレバー82はロック状態とアンロック状態とを切り替え可能である。サブロックレバー82がキーレバー90およびサブキーレバー92の作用下に反時計方向に搖動すると、オープンリンク80は上方部分がサブロックレバー82からロックレバー86の内ノブ86i(
図7(d)参照)を介して押し出されて時計方向に搖動してアンロック位置となる。サブロックレバー82が時計方向に搖動して元の位置に復帰すると、オープンリンク80はスプリング78bの弾性力がカムレバー78によって伝達されて反時計方向に搖動してロック位置となる。サブロックレバー82の上部には、軸部82aから前方に突出したアーム98が設けられている。アーム98は、ロック機構46がロック状態かアンロック状態かを識別する手段として用いられ、後述する第1ロックポジションスイッチ106および第2ロックポジションスイッチ108(
図3参照)のスイッチング操作をする。
【0062】
オープンレバー84は電動リリース、すなわち運転者のスイッチ操作等に基づいてドアを開扉させるために用いられる部品である。オープンレバー84は前方に突出したカム受動部84bと、後方に突出したラチェット操作部84cとを備えており、スプリング84dによって時計方向に付勢されている。カム輪76が正転することにより、カム76bがカム受動部84bを押し下げ、オープンレバー84はスプリング84dに抗して軸部84aを中心に反時計方向に回転し、ラチェット操作部84cが上昇する。ラチェット操作部84cが上昇することによりラチェットレバー56の受動部56aが押し上げられてラッチ機構44がアンラッチとなりドアが開扉される。カム輪76が基準位置に戻ると、オープンレバー84もスプリング84dによって基準姿勢に復帰する。
【0063】
オープンレバー84は、オープンリンク80とは独立的にラチェットレバー56を操作することができる。したがって、オープンレバー84によれば、ロック機構46がロック状態(つまり、オープンリンク80がロック位置)であっても電動リリース手段に基づいてドアを開扉させることができる。
【0064】
図6に示すように、ロックレバー86は、軸部86aで枢支されており、上方に延在するアーム86bと、該アーム86bの先端から外側に突出する外ノブ86cと、下方延在部86dから前方に突出する第1突起86eと、軸部86aの近傍から前方に突出する第2突起86fと、下方延在部86dから外側に突出するスプリング受部86gと、2つの押出部86hとを備える。外ノブ86cはサブロックレバー82の下端に形成されたガイド孔82bに嵌め込まれている。サブロックレバー82が搖動することにより、ロックレバー86は外ノブ86cによって搖動される。ロックレバー86は、オープンリンク80をロック位置からアンロック位置に切り替える作用位置と、オープンリンク80に対して切り替え作用をしない非作用位置とに変位可能である。ロックレバー86は、カム輪76またはサブロックレバー82によって駆動される。
【0065】
スプリング受部86gはスプリング100の屈曲部100aに当接しており、サブロックレバー82が搖動することによりスプリング受部86gが屈曲部100aを弾性変形させながら乗り越えることによってロック位置またはアンロック位置のいずれか一方に配置されることにより、サブロックレバー82は
図6に示すロック姿勢か、アンロック姿勢(
図8(b)参照)のいずれか一方の姿勢を取り得る。
【0066】
第1突起86eは第1傾斜壁77cによって押し出される。これによりロックレバー86は時計方向に回転する。第2突起86fは第2傾斜壁76dによって押し出される。これによりロックレバー86は反時計方向に回転する。第2突起86fは、カム輪76の側面と第1傾斜壁77cとの間の隙間に入り込むことができる。2つの押出部86hは、補助レバー88を下方から支持する。
【0067】
図5に示すように、補助レバー88は、ロックレバー86と同様に軸部86aで枢支されており、前方に突出したアーム88aと、該アーム88aの先端上方に設けられた円弧突起88bとを備える。円弧突起88bは保持壁76e(
図6参照)に係合可能な形状である。補助レバー88は、スプリング88cによってロックレバー86に対して反時計方向に付勢されており、下面が押出部86hに当接して支持される。
【0068】
次に、ロック機構46の作用について説明する。
【0069】
図7はカム輪76が正転するときのロック機構46の動作を説明する図であり、(a)はカム輪76が基準位置にある基本状態を示す図であり、(b)はカム輪76が基準位置からわずかに正転した状態を示す図であり、(c)はカム輪76が基準位置から略40°正転した状態を示す図であり、(d)はカム輪76が基準位置から略90°正転した状態を示す図であり、(e)はカム輪76が基準位置から略190°正転した状態を示す図であり、(f)はカム輪76が基準位置から略250°正転した状態を示す図である。
図7は、ロック機構46を内側から見た図であり、カム輪76の正転は時計方向である。
【0070】
図7(a)に示す基本状態からモータ94の作用によってカム輪76は正転する。
図7(b)に示すように、カム輪76がわずかに回転すると、カム76bがカムレバー78の下面78dに当接して、カムレバー78を反時計方向に駆動し始める。
図7(c)に示すように、カム輪76が略40°回転すると、カム76bの半径拡大開始部76baがオープンレバー84のカム受動部84bに当接し、オープンレバー84を反時計方向に駆動し始める。
図7(d)に示すように、カム輪76が略90°回転すると、カム76bの最大径円弧部76bbがカムレバー78の下面78dに達し、カムレバー78は反時計方向に最大変位し、これ以後
図7(f)に示す状態まで最大変位を維持する。カムレバー78が最大変位すると、オープンリンク80はノブ78cによって押し出されて搖動し、アンラッチ位置となる。ただし、このときサブロックレバー82、ロックレバー86および補助レバー88は動作せずに
図7(a)の姿勢を維持している。
【0071】
また、オープンレバー84が反時計方向に回転することによってラチェット操作部84cがラチェットレバー56の受動部56aに当接して押し上げる。受動部56aが押し上げられることにより、ラチェットレバー56は軸を中心に回動し始める。
【0072】
図7(e)に示すように、カム輪76が略190°回転すると、オープンレバー84は反時計方向に駆動され、ラチェット操作部84cがラチェットレバー56の受動部56aを押し上げる。おおよそこの時点でオープンレバー84がラチェットホルダ54(
図4参照)に作用し始めて、アンラッチ動作が開始される。
【0073】
図7(f)に示すように、カム輪76が略250°回転すると、カム76bの最大径円弧部76bbがカム受動部84bに達し、オープンレバー84は反時計方向に最大変位し、ラチェットレバー56の受動部56aは十分に押し上げられ、ラッチ機構44はストライカをアンラッチし、ドアが開扉される。この後、モータ94に対する給電を停止させることにより、カム輪76はスプリング76c(
図6参照)の作用によって反時計方向に回動し、ロック機構46は
図7(a)に示す基本状態に復帰する。
【0074】
このような電動リリース時には、
図7(a)~(f)に示すように、モータ94の作用下にオープンレバー84が回転してラッチ機構44に働きかけることによりストライカをアンラッチすることができる。またこの際、オープンリンク80もロック位置からアンロック位置までの間を往復する。オープンリンク80は他の部品に対して何らの作用もしないが、オートリリース時に同期して適度な時間間隔で動作することになり、グリスの経年劣化による硬化や鋼材を用いたスプリングやレバー等に錆が発生を防止することができる。これにより、所定の事態にロック機構46がスムーズに動作可能となる。
【0075】
また、オートリリースに同期動作するのはオープンリンク80だけであり、ロックレバー86は動作しない。したがって、ロックレバー86のスプリング受部86gが屈曲部100gを乗り越えることがなく、音が生じないため、ユーザに違和感を与えることがない。
【0076】
図8はカム輪76が反転と正転とを行うときのロック機構46の動作を説明する図であり、(a)はカム輪76が基準位置にある基本状態を示す図であり、(b)はカム輪76が基準位置から略40°反転した状態を示す図であり、(c)は(b)の状態からカム輪76が略40°正転した状態を示す図であり、(d)は(c)の状態からカム輪76が略40°正転した状態を示す図である。
図8は、ロック機構46を外側から見た図であり、カム輪76の反転は時計方向である。
【0077】
図8(a)に示す基本状態からモータ94の作用によってカム輪76は反転する。
図8(b)に示すように、カム輪76が略40°反転すると、カム輪76の第2傾斜壁76dが第2突起86fを押圧する。これによりロックレバー86は反時計方向に回動し、スプリング受部86gがスプリング100の屈曲部100aを乗り越えて所定の傾斜位置まで変位する。ロックレバー86の回動にともない、サブロックレバー82は外ノブ86cによって駆動されて時計方向に回動し、オープンリンク80は内ノブ86iによって駆動されて反時計方向に回動し、補助レバー88は押出部86h(
図5参照)によって駆動されて反時計方向に回動する。これによりサブロックレバー82およびオープンリンク80はアンロック位置となり、補助レバー88の円弧突起88bは筒77aに近い位置まで変位する。
【0078】
図8(c)に示すように、
図8(b)の状態からカム輪76が略40°正転することにより、該カム輪76は
図8(a)に示す位置に戻る。ただし、スプリング受部86gが屈曲部100aによって保持されていることから、ロックレバー86、サブロックレバー82およびオープンリンク80は
図8(b)に示す姿勢を保持する。これにより、ロック機構46はアンロック状態となる。
【0079】
またこのとき、円弧突起88bがカム輪76の保持壁76eの内径側面に係合し始め、補助レバー88は
図8(b)に示す姿勢を保持する。
【0080】
図8(d)に示すように、
図8(c)の状態からカム輪76が略40°さらに正転すると、第1傾斜壁77cが第1突起86eを押圧する。これによりロックレバー86は時計方向に回動し、スプリング受部86gがスプリング100の屈曲部100aを乗り越えて
図8(a)に示す位置まで復帰する。ロックレバー86の回動にともない、サブロックレバー82は外ノブ86cによって駆動されて反時計方向に回動し、オープンリンク80はカムレバー78(
図7参照)によって駆動されて時計方向に回動し、それぞれ
図8(a)に示す状態に復帰する。
【0081】
一方、円弧突起88bがカム輪76の保持壁76eの内径側面に係合していることから、補助レバー88は(d)に示す姿勢を保持している。そして、カム輪76がさらに正転すると、やがて円弧突起88bの反時計側端部が保持壁76eの反時計側の閉じた面に当接して回転が規制される。これにより、カム輪76の過度な回転が防止できる。この後、カム輪76は
図8(a)に示す位置まで反転すると、円弧突起88bと保持壁76eとの係合が解除されることから補助レバー88はスプリング88cの弾性力によって時計方向に回動し、
図8(a)に示す位置まで復帰する。こうしてロック機構46は全体として
図8(a)に示す基本姿勢に復帰する。このように、ドアラッチ装置10では、単一のモータ94により、ラッチ機構44の噛合解除、ロック機構46のロック状態及びアンロック状態への切り替えを行うことができる。
【0082】
図3に戻り、ドアラッチ装置10における電気部品としては、上記のモータ94の他に、ラッチ12の回転状態を検出するラッチポジションスイッチ102と、サブキーレバー92の回転状態を検出するキーレバーポジションスイッチ104と、アーム98を介してサブロックレバー82の回転状態を検出する第1ロックポジションスイッチ106および第2ロックポジションスイッチ108とが挙げられる。
【0083】
モータ94、キーレバーポジションスイッチ104、第1ロックポジションスイッチ106および第2ロックポジションスイッチ108は、電気部品領域42にまとめて配置されているが、ラッチポジションスイッチ102は、ラッチ12の近傍に配置するために、電気部品領域42から延出する2本のターミナル110a,110bに接続されている。ターミナル110a,110bはプレート112によって保持されている。
【0084】
図9は、電気部品およびその収納にかかる部品等を斜め前方外側から見た分解斜視図であり、
図10は、電気部品およびその収納にかかる部品等を斜め前方内側から見た分解斜視図である。
【0085】
図9および
図10に示すように、ドアラッチ装置10はモータ94を制御する回路基板120を備える。回路基板120が制御するモータは複数でもよい。ケース20の外側面の上部で、電気部品領域42の裏側にあたる領域には凹部122が形成されている。凹部122は外側面が上記の第2カバー24で覆われることによって第2収容空間124を形成する。回路基板120は第2収容空間124に収容されている。ケース20における凹部122の縁と第2カバー24との間には対外防水シール126が設けられており、外部と第2収容空間124との間が防水されている。対外防水シール126は紐状のシール材を所定長さに切断して得られ、専用成形品が不要である。対外防水シール126は下端部がやや重複して配置される。
【0086】
回路基板120は、外側に向かって立設するピン128,130,132,134,136(以下、代表的にピンPとも呼ぶ)と、ピンPの根元の周囲を覆うことによってピンを回路基板120に対して支持するピンホルダ138,140,142,144,146(以下、代表的にピンホルダHとも呼ぶ)と、2つの位置決め孔147a,147bとを備える。ピンホルダHは適度な強度を有しており、後述する内部防水シールBを押圧することができるまた、ピンホルダHは適度な弾性を有しており、挿入されるピンPとの間でシール作用を奏する。ピンホルダHは樹脂製であり、例えばポリアセタールによる成型品である。
【0087】
ピン128は2本でモータ94に接続される。ピン130は3本で第1ロックポジションスイッチ106および第2ロックポジションスイッチ108に接続される。ピン132は3本でキーレバーポジションスイッチ104に接続される。ピン134は2本でターミナル110a,110bを介してラッチポジションスイッチ102に接続される。ピン136は数本あり、第1カバー22のターミナル壁30aの孔から内側に突出してカプラー30の一部となる。ピンPは、回路基板120の裏面で半田付けされている。
【0088】
ピンホルダ138は2本のピン128を保持しており、ピンホルダ140は3本のピン130を直列に保持しており、ピンホルダ142は3本のピン132を直列に保持しており、ピンホルダ144は2本のピン134を保持しており、ピンホルダ146は数本のピン136を2列に保持している。
【0089】
位置決め孔147aと位置決め孔147bとは離間した位置に設けられている。位置決め孔147aは丸孔であり、位置決め孔147bは位置決め孔147aを指向する長孔であり、後述する位置決めピン167a,167bの製造誤差が許容される。回路基板120はさらに、図示しないCPU、メモリ、抵抗、コンデンサ等を備えている。回路基板120は第2収容空間124に略沿った変則形状となっている。
【0090】
ケース20における凹部122の底板122bには、ピン孔148,150,152,154,156(以下、代表的にピン孔Aとも呼ぶ)が形成されている。ピン孔Aは、第1収容空間36と第2収容空間124との間を連通する。ピン128,130,132,134,136は、順にピン孔148,150,152,154,156から第1収容空間36に突出し、各電気部品に設けられたピン接続孔に挿入されて電気的に接続される。各電気部品はケース20の外側面に設けられた保持壁165よって保持される。ピンホルダ138,140,142,144,146の外周縁とピン孔148,150,152,154,156との間には、順に矩形で環状の内部防水シール158,160,162,164,166(以下、代表的に内部防水シールBとも呼ぶ)が設けられている。内部防水シールBは第1収容空間36と第2収容空間124との間を防水する。第2収容空間124は対外防水シール126と内部防水シールBとによって防水されており、回路基板120を収容するのに適する。内部防水シールBは対応するピン孔Aに応じた矩形の環状であることが好ましいが、条件によっては対外防水シール126のように非環状体の一部を重複させて用いてもよい。
【0091】
底板122bにはさらに、2つの位置決めピン167a,167bと、複数の内側回路基板サポータ(第1回路基板サポータ)169とが形成されている。位置決めピン167a,167bは、位置決め孔147a,147bに挿入され、回路基板120が位置決めされる。内側回路基板サポータ169は、回路基板120の周囲に沿った位置に設けられており、該回路基板120の内側面に当接する。
【0092】
凹部122を囲む周壁122aの外周に沿ってシール溝173が形成されている。シール溝173には対外防水シール126が配置される。シール溝173には、対外防水シール126の下端部を重複して配置するための重複溝173aが形成されている。
【0093】
第2カバー24はその内側面に、それぞれ一対の支持突起168,170,172,174,176(以下、代表的に支持突起Cとも呼ぶ)が形成されている。支持突起168,170,172,174,176は、回路基板120を挟んで順にピンホルダ138,140,142,144,146と対向する位置に設けられている。支持突起Cは回路基板120におけるピンホルダHの当接部の裏側を支持する。支持突起Cおよび後述する脚部Hdは、ピンホルダHの長尺方向に沿って、ピンPを挟んだ両側に設けられている。
【0094】
第2カバー24の内側面にはさらに、2つの位置決めポスト177a,177bと、複数の外側回路基板サポータ(第2回路基板サポータ)178と、シール押え突起180と、浸透膜ホルダ182とが形成されている。位置決めポスト177aには丸穴が形成され,177bには位置決めポスト177aを指向する長穴が形成されている。位置決めポスト177a,177bの各穴には、位置決め孔147a,147bを貫通した位置決めピン167a,167bが挿入され、第2カバー24が位置決めされる。
【0095】
外側回路基板サポータ178は、回路基板120の周囲に沿った位置で、かつ該回路基板120を介して内側回路基板サポータ169に対向する位置に設けられており、該内側回路基板サポータ169とともに回路基板120を挟持して保持する。内側回路基板サポータ169と外側回路基板サポータ178とは互いに対向するように、同じ断面形状、同じ向きに設けられている。
【0096】
シール押え突起180は、シール溝173に沿った略環状の細い突起であって対外防水シール126の外面を押圧する。対外防水シール126はシール押え突起180によって押圧されて密封されることによりシール作用を奏する。
【0097】
浸透膜ホルダ182は外側に突出した筒体で先端に孔182aを有する。浸透膜ホルダ182には内側から浸透膜フィルタ184が取り付けられる。浸透膜フィルタ184は水滴の通過を防止するとともに孔182aから水蒸気を通過させることができ、第2収容空間124が高湿度状態となることを防止する。浸透膜ホルダ182および浸透膜フィルタ184は、第2収容空間124において回路基板120よりも下の空間に配置される。
【0098】
第2カバー24には周囲に複数のビス孔186が設けられており、該ビス孔186を通ったビス188がケース20に設けられたビスポスト190に螺合することにより、第2カバー24がケース20に固定される。
【0099】
第1カバー22には周囲に複数のフック192が設けられており、該フック192がケース20に設けられた爪194に係合することにより、第1カバー22がケース20に固定される。ケース20に対して第1カバー22および第2カバー24が取り付けられた後に上から防水カバー26が取り付けられる。
【0100】
なお、ケース20と第1カバー22との間に形成される第1収容空間36は完全防水ではなく、いわゆる防滴構造となっている。第1収容空間36に収容される各部品は防滴構造で足りるためである。これに対して、上記のように第2収容空間124は回路基板120上に精密電子部品などが実装されていることから、対外防水シール126および内部防水シールBによって防水構造となっている。
【0101】
次に、第2収容空間124における防水構造についてさらに説明する。
【0102】
図11は、ピンホルダHを示す図であり、(a)は斜め内側から見た斜視図であり、(b)は斜め外側から見た斜視図である。
図11はピンホルダ146を例示している。
【0103】
図11(a)に示すように、ピンホルダHは四隅が丸まった矩形である。ピンホルダHの内面Haは平面であり、該内面Haの周囲に傾斜面Hbが形成されている。内面Haおよび傾斜面Hbは滑らかである。ピンホルダHには対応するピンP(
図12参照)が挿入される孔Hcが形成されている。孔HcはピンPの数と形状とに応じて形成されており、該ピンPとの間でシール作用を奏する。
【0104】
図11(b)に示すように、ピンホルダHの外面には、短尺方向両側において長尺方向に沿って一対の脚部Hdが形成されている。一対の脚部Hdの間はやや窪んだ凹部Heとなっている。孔Hcは凹部Heで開口している。凹部Heには長尺方向にやや離間した2つの位置決め突起Hfaと位置決め突起Hfbとが設けられている。
【0105】
図12は、回路基板120、ピンホルダH、ピンP、内部防水シールBおよびケース20の分解斜視図である。
図12はピンホルダ146およびそれに係る部分を例示している。
【0106】
図12に示すように、複数のピンPはそれぞれ、ピン孔Aから突出して電機部品に対して電気的に接続される主部Paと、回路基板120の部品孔120aを通って半田付けされる半田付脚Pbと、ピンホルダHの孔Hcに挿入される部分で該孔Hcに係合する楔部Pcと、孔Hcに対する挿入深さを規制するストッパPdとを備える。ストッパPdは各ピンPに一対設けられている。ピンPは電気部品の接続口に対して直接的に接続されていてもよいし(
図13のモータ94および
図15のキーレバーポジションスイッチ104参照)、導電体を介して間接的に接続されていてもよい(
図9のラッチポジションスイッチ102参照)。
【0107】
回路基板120は、上記の部品孔120aと、位置決め突起Hfaが挿入される位置決め孔120bと位置決め突起Hfbが挿入される位置決め孔120cとを備える。位置決め孔120bは丸孔である。位置決め孔120cは位置決め孔120bを指向した長孔であり、位置決め突起Hfaと位置決め突起Hfbとの製造誤差を許容できる。
【0108】
内部防水シールBは、ピンホルダHの傾斜面Hb(
図11(a)参照)に被せられる部品であり該傾斜面Hbの傾斜に合わせた矩形の錐形状となっている。内部防水シールBは、傾斜面Hbに当接する外面Baと、ピン孔Aに当接する内面Bbと、矩形孔Bcとを有する。
【0109】
ピン孔Aは、ピンPが突出する矩形孔であり、内側に向かって窄まる傾斜面Aaを有する。傾斜面Aaは滑らかに形成されている。ピン孔Aの開口部は内部防水シールBの矩形孔Bcよりも大きく設定されている。傾斜面Aa、内部防水シールBの外面Baと内面BbおよびピンホルダHの傾斜面Hbは、それぞれ同じ傾斜である。
【0110】
回路基板120に複数のピンPを取り付ける際には、まずそれぞれのピンPを対応するピンホルダHの孔Hcに外面から差し込む。ピンPはストッパPdで適正深さまで挿入され、楔部Pcによって抜止がなされる。
【0111】
次に、ピンPが挿入されたピンホルダHを回路基板120の所定箇所に仮配置する。ピンホルダHは位置決め突起Hfa,Hfbが位置決め孔120b,120cに挿入されることによって正確に位置決めされる。ピンホルダHを用いることにより複数のピンPの半田付脚Pbはそれぞれ部品孔120aに正確かつ容易に挿入される。また、回路基板120にピンPを直接1本毎半田付けするよりも、別工程でピンホルダHに複数のピンPを挿入して準備する方が効率的である。
【0112】
複数のピンホルダHをすべて所定箇所に仮配置した後、半田付脚Pbのうち回路基板120の外面側に突出した部分を半田付けする。これにより各ピンPはピンホルダHとともに回路基板120に固定される。
【0113】
回路基板120は、ピンP、ピンホルダHおよび電子部品等を実装した後に第2収容空間124に収容される。このとき、ピンホルダHとピン孔Aとの間に内部防水シールBを配置しておく。さらに、
図10に示すように、シール溝173に対外防水シール126を配置した後に、第2カバー24をビス188によってケース20に取り付ける。
【0114】
図13は、ピンホルダHおよびその周辺をピンホルダHの長尺方向から見た一部断面側面図であり、
図14は、ピンホルダHおよびその周辺をピンホルダHの短尺方向から見た一部断面側面図である。
図13および
図14は、ピンホルダ138およびそれにかかる部分を例示している。
【0115】
図13に示すように、第2収容空間124に回路基板120を収容した後に、ケース20に対して第2カバー24を取り付けると、対外防水シール126はシール溝173とシール押え突起180とによって適度に押圧されて圧縮変形してシール作用を奏し、第2収容空間124と外部との間を防水する。また、回路基板120は内側回路基板サポータ169と外側回路基板サポータ178とによって挟持されて安定する。
【0116】
図13および
図14に示すように、ケース20に対して第2カバー24を取り付けると、第2カバー24は支持突起Cおよび回路基板120を介してピンホルダHおよび内部防水シールBを内側に押圧する。内部防水シールBは、ピン孔Aの傾斜面AaとピンホルダHの傾斜面Hbとによって適度に広い面積で挟持されており、適度に押圧されて圧縮変形してシール作用を奏する。内部防水シールBは、内面Bbが傾斜面Aaとの間でシール作用を奏するとともに、外面Baが傾斜面Hbとの間でシール作用を奏する。
【0117】
ピンP、ピンホルダH、ピン孔Aおよび内部防水シールBは内部防水構造200を形成する。内部防水構造200は第2収容空間124と第1収容空間36との間を防水する。すなわち、内面Bbと傾斜面Aaとの間のシール作用により、矩形孔Bcから第2収容空間124への水分の進入が防止される。また、ピンホルダHの孔HcはピンPとの間でシール作用があることから、水分がピンPの表面を伝って回路基板120の表面に進入することが防止される。このように、ドアラッチ装置10においては、第2収容空間124の全体が防水され、回路基板120についても全面が防水される。
【0118】
また、内部防水構造200は回路基板120を安定して保持する機能を有する。特に、内部防水構造200は複数が適度に分散して配置されているととから回路基板120が安定する。
【0119】
内部防水シールBはピン孔Aよりも僅かに内側に突出しており、その端面は電気部品に当接可能となっている。特に、モータ94は電気部品の中でも比較的重量が大きいが、内部防水シールBの端面に当接することにより、ピンPに加わる力を低減することができる。内部防水シールBは弾性があり電気部品の支持に適する。
【0120】
ピンホルダHにはいくつかの作用がある。すなわち、複数のピンPを保持して回路基板120の部品孔120aに対してまとめて挿入させる作用であり、部品孔120aに挿入されたピンPを立設状態に保持する作用であり、支持突起Cからの力を脚部Hdで受けて内部防水シールBに伝達して該内部防水シールBを圧縮させてピン孔Aとの間を防水する作用であり、傾斜面Hbと外面Baとの間を防水する作用であり、さらにピンPの主部Paに電気部品が接続される際にピンPおよび電気部品を補助的に支持する作用である。電気部品からピンPに加わる重力や振動はピンホルダHが受け止めて吸収および分散され、半田付け部分に加わる外力を抑制できる。したがって、ピンPは電機部品に対して電気的に接続されていればよく、電機部品を支持するための機械的強度は小さくて足りる。これにより、例えばピンPの根元部は、特許文献2に記載のピンのような複雑形状にする必要がなく、細い単純形状にすることができ、コストダウンおよび回路基板120の面積の有効利用を図ることができる。
【0121】
一対の支持突起Cは、一対の脚部Hdに対して回路基板120を挟んで対向していることから、ピンホルダHを内側に向けて確実に押圧することができる。特に、一対の支持突起Cと一対の脚部Hdとは同じ断面形状、同じ向きに設けられていることから、平面視で重なるように配置され、回路基板120の他の部分に無駄な力が加わることがなく、例えば回路基板120の曲げ変形などが防止できる。上記の内側回路基板サポータ169と外側回路基板サポータ178との関係も同様である。なお、支持突起Cと脚部Hdとの平面視の図は省略するが、両者が平面視で重なることは
図13および
図14から明らかであろう。
【0122】
支持突起Cおよび脚部HdはピンホルダHの長尺方向に沿って形成されていることから適度に広い面積が確保されて押圧力が分散され、しかも適度に長いことから安定する。支持突起Cおよび脚部HdはピンPを挟んだ両側に設けられていることからバランスがよい。ただし、支持突起Cおよび脚部Hdは、ある程度の面積が確保されているなどの条件が満たされていればピンPから見ていずれか一方だけに設けられていてもよい。また、回路基板120は外側を外側回路基板サポータ178で支持されていることから、条件によっては支持突起Cを省略してもよい。
【0123】
一対の脚部Hdの間には凹部Heが形成されていることから、該凹部Heと回路基板120の表面との間には隙間が確保される。回路基板120において凹部Heを臨む隙間にはスルーホール196や、図示しないパターン、ランドを設けることができ、該回路基板120の面におけるデッドエリアが少なくなる。
【0124】
図15は、
図13および
図14とは異なるピンホルダHおよびその周辺を示す一部断面側面図である。
図15は、ピンホルダ142およびそれにかかる部分を例示している。
【0125】
図13および
図14で示したピンホルダ138は傾斜面Hbを備え、対応するピン孔Aおよび内部防水シールBは傾斜面を備えているのに対して、
図15で示すピンホルダ142は傾斜面Hbのない略箱形状であり、対応する内部防水シール162は傾斜面のない平板形状であり、さらに対応するピン孔152は傾斜面Aaのない矩形孔である。
【0126】
この場合、内部防水シール162はピンホルダ142の内面Haと底板122bにおけるピン孔152の周辺部とによって押圧されてシール作用を奏する。このようなピンホルダ142および内部防水シール162は単純形状であって製造が容易である。
【0127】
なお、内部防水シールBとピンホルダHとは接着や溶着などの接合手段によって一体化されていていてもよい。これにより、内部防水シールBの位置合わせが不要となって組み立てが容易になる。また、接着すると内部防水シールBとピンホルダHとの間が完全に防水化される。さらに、内部防水シールBとピンホルダHとは同一材による一体成型品であってもよい。これにより部品点数の削減を図ることができる。
【0128】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0129】
10 ドアラッチ装置
12 ラッチ
14 ストライカ進入溝
16 カバープレート
18 ボディ
20 ケース
22 第1カバー
24 第2カバー
30 カプラー
32 キーシリンダ連結部
34 アウターレバー
34a ハンドル操作部
34c レバー受動片
34b 作用部
36 第1収容空間
38 機械機構
40 機構領域
42 電気部品領域
44 ラッチ機構
46 ロック機構
52 ラチェット
54 ラチェットホルダ
58 アンチパニックレバー
59 インナーレバー
66 ポールレバー
76 カム輪
76b カム
77 補助部品
78 カムレバー
80 オープンリンク(位置切替部材)
82 サブロックレバー
84 オープンレバー
84c ラチェット操作部
86 ロックレバー
88 補助レバー
90 キーレバー
92 サブキーレバー
94 モータ
120 回路基板
120a 部品孔
120b,120c,147a,147b 位置決め孔
122 凹部
124 第2収容空間
126 対外防水シール
128,130,132,134,136,P ピン
138,140,142,144,146,H ピンホルダ
148,150,152,154,156,A ピン孔
158,160,162,164,166,B 内部防水シール
168,170,172,174,176,C 支持突起
169 内側回路基板サポータ
173 シール溝
178 外側回路基板サポータ
182 浸透膜ホルダ
184 浸透膜フィルタ