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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】熱交換器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/10 20060101AFI20220125BHJP
   F28D 21/00 20060101ALI20220125BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
F28D7/10 A
F28D21/00 A
F28F21/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019166656
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021042922
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】麓 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 竜生
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 健
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/114949(WO,A1)
【文献】特開2017-015042(JP,A)
【文献】特開2012-037165(JP,A)
【文献】特開2004-176849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0222845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F28F 1/00 - 99/00
F01N 3/00 - 5/04
B01D 46/42
F02M 26/22 - 26/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面から第2端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と、外周壁とを有する柱状のハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の前記外周壁面に嵌合される内筒部材と、
前記内筒部材の径方向外側に、少なくとも一部が第2流体の流路を構成するように間隔をおいて配置される外筒部材と、
筒部及びフランジ部を有し、前記ハニカム構造体の前記第1端面側に位置するとともに、前記フランジ部の端部が前記内筒部材及び/又は前記外筒部材と接合される上流側筒状部材と、
筒部及びフランジ部を有し、前記ハニカム構造体の前記第2端面側に位置するとともに、前記フランジ部の端部が前記内筒部材及び/又は前記外筒部材と接合される下流側筒状部材と
を備え、
前記第2流体の流路の軸方向両端部は、前記ハニカム構造体の前記第1端面及び前記第2端面よりも軸方向外側に位置しており、
前記上流側筒状部材及び前記下流側筒状部材の少なくとも一方は、前記フランジ部の立ち上がり位置が前記第2流体の流路の前記軸方向両端部よりも軸方向内側に位置している熱交換器。
【請求項2】
前記フランジ部は折り返し構造を有する、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記フランジ部は曲面構造を有する、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記フランジ部は、前記筒部の軸方向に対して垂直方向に屈曲した構造を有する、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記上流側筒状部材は、前記フランジ部の立ち上がり位置が前記第2流体の流路の前記軸方向両端部よりも軸方向内側に位置している請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記上流側筒状部材及び前記下流側筒状部材は、前記筒部と前記フランジ部とが一体的に構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記筒部の内周面に連続する前記フランジ部の面が、前記内筒部材及び/又は前記外筒部材と接合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記上流側筒状部材及び前記下流側筒状部材の前記筒部の軸方向に垂直な断面積が、前記ハニカム構造体の軸方向に垂直な断面積よりも小さい、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
第1端面から第2端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と、外周壁とを有する柱状のハニカム構造体と、前記ハニカム構造体の前記外周壁面に嵌合される内筒部材とを備える熱交換部材を準備する工程と、
前記内筒部材の径方向外側に、少なくとも一部が第2流体の流路を構成するように間隔をおいて外筒部材を配置する工程と、
筒部及びフランジ部を有する上流側筒状部材を前記ハニカム構造体の前記第1端面側に配置し、前記フランジ部の端部を前記内筒部材及び/又は前記外筒部材と接合する工程と、
筒部及びフランジ部を有する下流側筒状部材を前記ハニカム構造体の前記第2端面側に配置し、前記フランジ部の端部を前記内筒部材及び/又は前記外筒部材と接合する工程と
を含む熱交換器の製造方法であって、
前記第2流体の流路の軸方向両端部は、前記ハニカム構造体の前記第1端面及び前記第2端面よりも軸方向外側に位置しており、
前記上流側筒状部材及び前記下流側筒状部材の少なくとも一方は、前記フランジ部の立ち上がり位置が前記第2流体の流路の前記軸方向両端部よりも軸方向内側に位置している熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費改善が求められている。特に、エンジン始動時などのエンジンが冷えている時の燃費悪化を防ぐため、冷却水、エンジンオイル、オートマチックトランスミッションフルード(ATF:Automatic Transmission Fluid)などを早期に暖めて、フリクション(摩擦)損失を低減するシステムが期待されている。また、排ガス浄化用触媒を早期に活性化するために触媒を加熱するシステムが期待されている。
【0003】
このようなシステムとして、例えば、熱交換器がある。熱交換器は、内部に第1流体を流通させるとともに外部に第2流体を流通させることにより、第1流体と第2流体との間で熱交換を行う装置である。このような熱交換器では、高温の流体(例えば、排ガスなど)から低温の流体(例えば、冷却水など)へ熱交換することにより、熱を有効利用することができる。
【0004】
本出願人は、特許文献1において、第1端面から第2端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と、外周壁とを有する柱状のハニカム構造体と、該ハニカム構造体の外周壁面に嵌合される内筒部材と、該内筒部材の径方向外側に、少なくとも一部が第2流体の流路を構成するように間隔をおいて配置される外筒部材とを備える熱交換器を提案した。このような構造を有する熱交換器では、柱状のハニカム構造体の軸方向に垂直な方向の断面積を大きくすることによって圧力損失を低減することができる。一方、この熱交換器は、第1流体が流通する排気筒に接続されるため、排気筒のサイズに対応する接続部を設けることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-037165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排気筒のサイズに対応する接続部を設けるため、本発明者らは、排気筒との接続部として、コーンと呼ばれる筒状の部材を更に備える熱交換器を検討した。この熱交換器に用いられるコーンは、排気筒に接続される筒部と、外筒部材に接合されるフランジ部とを有している。このような構造を有するコーンをハニカム構造体の第1端面側及び第2端面側に設けることにより、排気筒のサイズに対応する接続部を設けることが可能となる。
【0007】
しかしながら、近年、コンパクトな構造を有する熱交換器に対するニーズが高くなっており、上記のコーンを熱交換器に設けると、熱交換器の軸方向長さが長くなり、熱交換器のコンパクト化を図ることが難しいという課題があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、コンパクトな構造を有する熱交換器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、熱交換器の構造について鋭意研究を行った結果、特定の構造を有する熱交換器とすることにより、上記の問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、第1端面から第2端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と、外周壁とを有する柱状のハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の前記外周壁面に嵌合される内筒部材と、
前記内筒部材の径方向外側に、少なくとも一部が第2流体の流路を構成するように間隔をおいて配置される外筒部材と、
筒部及びフランジ部を有し、前記ハニカム構造体の前記第1端面側に位置するとともに、前記フランジ部の端部が前記内筒部材及び/又は前記外筒部材と接合される上流側筒状部材と、
筒部及びフランジ部を有し、前記ハニカム構造体の前記第2端面側に位置するとともに、前記フランジ部の端部が前記内筒部材及び/又は前記外筒部材と接合される下流側筒状部材と
を備え、
前記第2流体の流路の軸方向両端部は、前記ハニカム構造体の前記第1端面及び前記第2端面よりも軸方向外側に位置しており、
前記上流側筒状部材及び前記下流側筒状部材の少なくとも一方は、前記フランジ部の立ち上がり位置が前記第2流体の流路の前記軸方向両端部よりも軸方向内側に位置している熱交換器である。
【0010】
また、本発明は、第1端面から第2端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と、外周壁とを有する柱状のハニカム構造体と、前記ハニカム構造体の前記外周壁面に嵌合される内筒部材とを備える熱交換部材を準備する工程と、
前記内筒部材の径方向外側に、少なくとも一部が第2流体の流路を構成するように間隔をおいて外筒部材を配置する工程と、
筒部及びフランジ部を有する上流側筒状部材を前記ハニカム構造体の前記第1端面側に配置し、前記フランジ部の端部を前記内筒部材及び/又は前記外筒部材と接合する工程と、
筒部及びフランジ部を有する下流側筒状部材を前記ハニカム構造体の前記第2端面側に配置し、前記フランジ部の端部を前記内筒部材及び/又は前記外筒部材と接合する工程と
を含む熱交換器の製造方法であって、
前記第2流体の流路の軸方向両端部は、前記ハニカム構造体の前記第1端面及び前記第2端面よりも軸方向外側に位置しており、
前記上流側筒状部材及び前記下流側筒状部材の少なくとも一方は、前記フランジ部の立ち上がり位置が前記第2流体の流路の前記軸方向両端部よりも軸方向内側に位置している熱交換器の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンパクトな構造を有する熱交換器及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図2図1の熱交換器におけるa-a’線の断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。また、図2は、図1の熱交換器におけるa-a’線の断面図である。
図1及び2に示されるように、本発明の実施形態に係る熱交換器100は、柱状のハニカム構造体10と、内筒部材20と、外筒部材30と、上流側筒状部材40と、下流側筒状部材50とを備えている。
【0015】
<柱状のハニカム構造体10>
柱状のハニカム構造体10は、第1端面11aから第2端面11bまで延びる第1流体の流路となる複数のセル12を区画形成する隔壁13と、外周壁14とを有する。
柱状のハニカム構造体10の形状(外形)としては、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。
【0016】
第1流体の流路方向に垂直な方向の断面における柱状のハニカム構造体10の外径(直径)は、特に限定されないが、好ましくは20~200mm、より好ましくは30~100mmである。このような外径とすることにより、圧力損失を低減させつつ、熱回収効率を向上させることができる。当該断面が円形でない場合には、当該断面に内接する最大内接円の直径を、柱状のハニカム構造体10の外径とする。
【0017】
第1流体の流路方向に平行な方向の柱状のハニカム構造体10の長さ(軸方向長さ)は、特に限定されないが、柱状のハニカム構造体10の外径(直径)の好ましくは10倍以下、より好ましくは4倍以下である。このような軸方向長さとすることにより、熱交換器をコンパクト化することができる。
【0018】
セル12の形状としては、特に限定されず、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、又はその他の多角形などとすることができる。また、セル12は、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、放射状に設けられていることが好ましい。このような構成とすることにより、セル12を流通する第1流体の熱を柱状のハニカム構造体10の外部に効率良く伝達することができる。
【0019】
隔壁13の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1~1.0mm、より好ましくは0.2~0.6mmである。隔壁13の厚みを0.1mm以上とすることにより、柱状のハニカム構造体10の機械的強度を十分なものとすることができる。また、隔壁13の厚さを1.0mm以下とすることにより、開口面積の低下によって圧力損失が大きくなったり、第1流体との接触面積の低下によって熱回収効率が低下したりするなどの問題を抑制することができる。
【0020】
外周壁14の厚みは、特に限定されないが、隔壁13の厚みよりも大きいことが好ましい。このような構成とすることにより、外部からの衝撃、第1流体と第2流体との間の温度差による熱応力などによって破壊(例えば、ひび、割れなど)が起こり易い外周壁14の強度を高めることができる。
なお、外周壁14の厚みは、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。例えば、外周壁14の厚みは、熱交換器100を一般的な熱交換用途に用いる場合は、好ましくは0.3mm~10mm、より好ましくは0.5mm~5mm、更に好ましくは1mm~3mmである。また、熱交換器100を蓄熱用途に用いる場合は、外周壁14の厚みを10mm以上として外周壁14の熱容量を増大させてもよい。
【0021】
隔壁13及び外周壁14は、セラミックスを主成分とする。ここで、本明細書において「セラミックスを主成分とする」とは、全成分の質量に占めるセラミックスの質量比率が50質量%以上であることをいう。
【0022】
隔壁13及び外周壁14は、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)を主成分として含むことが好ましい。このような材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si34、及びSiCなどが挙げられる。これらの中でも、安価に製造でき、高熱伝導であることからSi含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを用いることが好ましい。
【0023】
隔壁13及び外周壁14の気孔率は、特に限定されないが、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。また、隔壁13及び外周壁14の気孔率は0%であってもよい。隔壁13及び外周壁14の気孔率を10%以下とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。
【0024】
第1流体の流路方向に垂直な方向の柱状のハニカム構造体10の断面におけるセル密度(すなわち、単位面積当たりのセル12の数)は、特に限定されないが、好ましくは4~320セル/cm2である。セル密度を4セル/cm2以上とすることにより、隔壁13の強度、ひいては柱状のハニカム構造体10自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分に確保することができる。また、セル密度を320セル/cm2以下とすることにより、第1流体が流れる際の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0025】
柱状のハニカム構造体10のアイソスタティック強度は、特に限定されないが、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、更に好ましくは200MPa以上である。柱状のハニカム構造体10のアイソスタティック強度を100MPa以上とすることにより、柱状のハニカム構造体10の耐久性を向上させることができる。柱状のハニカム構造体10のアイソスタティック強度は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505-87に規定されているアイソスタティック破壊強度の測定方法に準じて測定することができる。
【0026】
柱状のハニカム構造体10の熱伝導率は、特に限定されないが、25℃において、好ましくは50W/(m・K)以上、より好ましくは100~300W/(m・K)、更に好ましくは120~300W/(m・K)である。柱状のハニカム構造体10の熱伝導率を、このような範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、柱状のハニカム構造体10内の熱を外部に効率良く伝達させることができる。なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法(JIS R1611-1997)により測定した値を意味する。
【0027】
柱状のハニカム構造体10のセル12に、第1流体として排ガスを流す場合、柱状のハニカム構造体10の隔壁13に触媒を担持させてもよい。隔壁13に触媒を担持させると、排ガス中のCO、NOx、HCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になるとともに、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることも可能になる。触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。上記元素は、金属単体、金属酸化物、又はそれ以外の金属化合物として含有されていてもよい。
【0028】
触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、特に限定されないが、好ましくは10~400g/Lである。また、貴金属を含む触媒を用いる場合、その担持量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~5g/Lである。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすることにより、触媒作用が発現し易くなる。また、触媒(触媒金属+担持体)の担持量400g/L以下とすることにより、圧力損失とともに製造コストの上昇を抑えることができる。担持体とは、触媒金属が担持される担体のことである。担持体としては、アルミナ、セリア、及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものを用いることができる。
【0029】
<内筒部材20>
内筒部材20は、柱状のハニカム構造体10の外周壁14面に嵌合されている。
内筒部材20の軸方向は、柱状のハニカム構造体10の軸方向と一致し、内筒部材20の中心軸は柱状のハニカム構造体10の中心軸と一致することが好ましい。また、内筒部材20の軸方向の中央位置は、柱状のハニカム構造体10の軸方向の中央位置と一致することが好ましい。さらに、内筒部材20の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向両端部など)が縮径又は拡径していてもよい。
内筒部材20としては、柱状のハニカム構造体10の外周壁14面に嵌合するものであれば特に限定されない。例えば、内筒部材20として、柱状のハニカム構造体10の外周壁14面に嵌合して柱状のハニカム構造体10の外周壁14を周回被覆する筒状部材を用いることができる。
【0030】
ここで、本明細書において、「嵌合」とは、柱状のハニカム構造体10と内筒部材20とが、相互に嵌まり合った状態で固定されていることをいう。したがって、柱状のハニカム構造体10と内筒部材20との嵌合においては、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などにより、柱状のハニカム構造体10と内筒部材20とが相互に固定されている場合なども含まれる。
【0031】
内筒部材20は、柱状のハニカム構造体10の外周壁14面に対応した内周面形状を有することが好ましい。内筒部材20の内周面が柱状のハニカム構造体10の外周壁14面に直接接触することで、熱伝導性が良好となり、柱状のハニカム構造体10内の熱を内筒部材20に効率良く伝達することができる。
【0032】
熱回収効率を高めるという観点からは、柱状のハニカム構造体10の外周壁14の全面積に対する、内筒部材20によって周回被覆される柱状のハニカム構造体10の外周壁14の部分の面積の割合は高い方が好ましい。具体的には、当該面積割合は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは100%(すなわち、柱状のハニカム構造体10の外周壁14の全部が内筒部材20によって周回被覆される。)である。
なお、ここでいう「外周壁14」とは、柱状のハニカム構造体10の第1流体の流路方向に平行な面を指し、柱状のハニカム構造体10の第1流体の流路方向と垂直な面(第1端面11a及び第2端面11b)は含まれない。
【0033】
内筒部材20の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から金属であることが好ましい。また、内筒部材20が金属製であると、後述する外筒部材30などとの溶接が容易に行える点でも優れている。内筒部材20の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0034】
内筒部材20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。内筒部材20の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、内筒部材20の厚みは、好ましくは10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。内筒部材20の厚みを10mm以下とすることにより、熱抵抗を低減して熱伝導性を高めることができる。
【0035】
<外筒部材30>
外筒部材30は、内筒部材20の径方向外側に、少なくとも一部が第2流体の流路60を構成するように間隔をおいて配置されている。
外筒部材30の軸方向は、柱状のハニカム構造体10及び内筒部材20の軸方向と一致し、外筒部材30の中心軸は柱状のハニカム構造体10及び内筒部材20の中心軸と一致することが好ましい。また、外筒部材30の軸方向の中央位置は、柱状のハニカム構造体10の軸方向の中央位置及び内筒部材20の軸方向の中央位置と一致することが好ましい。
【0036】
外筒部材30は、第2流体を外筒部材30と内筒部材20との間の領域に供給するための供給管31、及び第2流体を外筒部材30と内筒部材20との間の領域から排出するための排出管32に接続されていることが好ましい。供給管31及び排出管32は、柱状のハニカム構造体10の軸方向両端部に対応する位置に設けられていることが好ましい。
また、供給管31及び排出管32は、同じ方向に向けて延出されていても、異なる方向に向けて延出されていてもよい。
【0037】
外筒部材30は、軸方向両端部の内周面が内筒部材20の外周面と直接的又は間接的に接するように配置されていることが好ましい。
外筒部材30の軸方向両端部の内周面を内筒部材20の外周面に固定する方法としては、特に限定されないが、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などを用いることができる。
【0038】
外筒部材30の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向中央部、軸方向両端部など)が縮径又は拡径していてもよい。例えば、外筒部材30の軸方向中央部を縮径させることにより、供給管31及び排出管32側の外筒部材30内で第2流体を内筒部材20の外周方向全体に行き渡らせることができる。そのため、軸方向中央部で熱交換に寄与しない第2流体が低減するため、熱交換効率を向上させることができる。
【0039】
外筒部材30の材料は、特に限定されず、上記内筒部材20の材料について述べた内容と同様である。
【0040】
外筒部材30の厚みは、特に限定されず、上記内筒部材20の厚みについて述べた内容と同様である。
【0041】
外筒部材30と内筒部材20との間に形成される第2流体の流路60の軸方向両端部61は、柱状のハニカム構造体10の第1端面11a及び第2端面11bよりも軸方向外側に位置している。このような構成とすることにより、熱交換効率を向上させることができる。
【0042】
<上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50>
上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50は、コーンとも称される筒状の部材である。
上流側筒状部材40は、筒部41及びフランジ部42を有する。同様に、下流側筒状部材50は、筒部51及びフランジ部52を有する
上流側筒状部材40は、柱状のハニカム構造体10の第1端面11a側に位置し、フランジ部42の端部が内筒部材20と接合されている。また、下流側筒状部材50は、柱状のハニカム構造体10の第2端面11b側に位置し、フランジ部52の端部が内筒部材20と接合されている。
なお、図1では、フランジ部42,52の端部が内筒部材20と接合されている例を示しているが、フランジ部42,52の端部は、外筒部材30、又は内筒部材20及び外筒部材30の両方と接合されていてもよい。
【0043】
上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50の少なくとも一方(好ましくは両方)は、フランジ部42,52の立ち上がり位置43,53が第2流体の流路60の軸方向両端部61よりも軸方向内側に位置している。このような構成とすることにより、上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50の少なくとも一方(好ましくは両方)の軸方向長さを短くすることができるため、熱交換器100をコンパクト化することが可能になる。また、第1流体が排ガスである場合には、上流側筒状部材40を上記のような構成にすることにより、高温の排ガスが、第2流体の流路60の上流側の軸方向端部に接触してヒートスポットが生じる恐れが抑制される。これにより、熱害が抑制される。
【0044】
上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50の軸方向は、柱状のハニカム構造体10、内筒部材20及び外筒部材30の軸方向と一致し、上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50の中心軸は、柱状のハニカム構造体10、内筒部材20及び外筒部材30の中心軸と一致することが好ましい。
【0045】
フランジ部42,52の構造としては、特に限定されず、様々な構造とすることができる。例えば、フランジ部42,52は折り返し構造を有していてもよい。折り返し構造の折り返し部の数は特に限定されず、1つであっても複数であってもよい。また、フランジ部42,52は、曲面構造を有していてもよい。さらに、フランジ部42,52は、筒部41,51の軸方向に対して垂直方向に屈曲した構造を有していてもよい。
【0046】
筒部41,51の内周面に連続するフランジ部42,52の面は、内筒部材20及び/又は外筒部材30と接合されていることが好ましい。このような構成とすることにより、フランジ部42,52の構造を簡素化することができる。
【0047】
ここで、様々な構造のフランジ部42,52を有する上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50を備える熱交換器の例を図3及び4に示す。なお、図3及び4は、熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図3に示す熱交換器200は、フランジ部42,52が、2つの折り返し部を有する折り返し構造及び曲面構造を有する上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50を備えている。この熱交換器200では、筒部41,51の外周面に連続するフランジ部42,52の面が、内筒部材20と接合されている。
【0048】
図4に示す熱交換器300は、フランジ部42,52が、1つの折り返し部を有する折り返し構造、及び筒部41,51の軸方向に対して垂直方向に屈曲した構造を有する上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50を備えている。この熱交換器300では、筒部41,51の内周面に連続するフランジ部42,52の面が、内筒部材20と接合されている。
なお、図3及び4では、フランジ部42の構造とフランジ部52の構造とを同一にした例を示しているが、フランジ部42の構造とフランジ部52の構造とが異なっていてもよい。
【0049】
上流側筒状部材40は、筒部41とフランジ部42とを溶接などによって接合することによって構成されていてもよいが、1つの筒状部材を機械加工することによって筒部41とフランジ部42とが一体的に構成されていることが好ましい。なお、一体的とは、別々の部材を溶接や接着などによって接合するのではなく、上記の通り、1つの筒状部材を加工することによって、筒部41とフランジ部42とがシームレスに設けられていることを意味する。同様に、下流側筒状部材50は、筒部51とフランジ部52とを溶接などによって接合することによって構成されていてもよいが、1つの筒状部材を機械加工することによって筒部51とフランジ部52とが一体的に構成されていることが好ましい。
【0050】
上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50の筒部41,51の軸方向に垂直な断面積は、柱状のハニカム構造体10の軸方向に垂直な断面積よりも小さいことが好ましい。このような構成とすることにより、熱交換器100,200,300の圧力損失を低減しつつ、上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50の筒部41,51を排気筒のサイズに適合させることができる。
【0051】
上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50の材料は、特に限定されず、上記内筒部材20の材料について述べた内容と同様である。
【0052】
上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50の厚みは、特に限定されず、上記内筒部材20の厚みについて述べた内容と同様である。
【0053】
<その他の部材>
熱交換器100,200,300は、本発明の効果を阻害しない範囲において、所望の目的を達成するために各種部材を更に備えていてもよい。
例えば、熱交換抑制時の異音などを低減するために、内筒部材20と外筒部材30との間に、第2流体の流路60内を仕切る中筒部材を設けてもよい。中筒部材は、特に限定されないが、内筒部材20の軸方向両端部に設けられたスペーサーなどによって保持すればよい。
【0054】
<第1流体及び第2流体>
第1流体及び第2流体としては、特に限定されず、種々の液体及び気体を利用することができる。例えば、熱交換器100,200,300が自動車に搭載される場合、第1流体として排ガスを用いることができ、第2流体として水又は不凍液(JIS K2234:2006で規定されるLLC)を用いることができる。また、第1流体は、第2流体よりも高温の流体とすることができる。
【0055】
<熱交換器100,200,300の製造方法>
熱交換器100,200,300は、当該技術分野において公知の方法に準じて製造することができる。例えば、熱交換器100,200,300の典型的な製造方法は、第1端面11aから第2端面11bまで延びる第1流体の流路となる複数のセル12を区画形成する隔壁13と、外周壁14とを有する柱状のハニカム構造体10と、柱状のハニカム構造体10の外周壁14面に嵌合される内筒部材20とを備える熱交換部材を準備する工程(第1工程)と、内筒部材20の径方向外側に、少なくとも一部が第2流体の流路60を構成するように間隔をおいて外筒部材30を配置する工程(第2工程)と、筒部41及びフランジ部42を有する上流側筒状部材40を柱状のハニカム構造体10の第1端面11a側に配置し、フランジ部42の端部を内筒部材20及び/又は外筒部材30と接合する工程(第3工程)と、筒部51及びフランジ部52を有する下流側筒状部材50を柱状のハニカム構造体10の第2端面11b側に配置し、フランジ部52の端部を内筒部材20及び/又は外筒部材30と接合する工程(第4工程)とを含む。
なお、第1工程~第4工程の順序は特に限定されず、作製する熱交換器100,200,300の形状に応じて、工程の順序を入れ替えてもよい。また、供給管31及び排出管32は、外筒部材30に予め設けておいてもよいが、適切な段階で外筒部材30に設けてもよい。また、各部材の配置(固定)方法は、上述した方法を用いればよい。
【0056】
この製造方法において、第2流体の流路60の軸方向両端部61は、柱状のハニカム構造体10の第1端面11a及び第2端面11bよりも軸方向外側に位置するように設けられる。また、上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50の少なくとも一方は、フランジ部42,52の立ち上がり位置43,53が第2流体の流路60の軸方向両端部61よりも軸方向内側に位置するように設けられる。
【0057】
柱状のハニカム構造体10は、次のようにして製造することができる。まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、柱状のハニカム成形体を作製する。このとき、適切な形態の口金及び治具を選択することにより、セル12の形状及び密度、隔壁13及び外周壁14の形状及び厚さなどを制御することができる。また、柱状のハニカム成形体の材料としては、前述のセラミックスを用いることができる。例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム成形体を製造する場合、所定量のSiC粉末に、バインダーと、水及び/又は有機溶媒とを加え、得られた混合物を混練して坏土とし、成形して柱状のハニカム成形体を得ることができる。そして、得られた柱状のハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、柱状のハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって柱状のハニカム構造体10を得ることができる。
【0058】
上記のようにして製造される熱交換器100,200,300は、特定の構造を有する上流側筒状部材40及び下流側筒状部材50を用いているため、軸方向長さを短くすることができ、コンパクト化を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0059】
10 柱状のハニカム構造体
11a 第1端面
11b 第2端面
12 セル
13 隔壁
14 外周壁
20 内筒部材
30 外筒部材
31 供給管
32 排出管
40 上流側筒状部材
41 筒部
42 フランジ部
43 立ち上がり位置
50 下流側筒状部材
51 筒部
52 フランジ部
53 立ち上がり位置
60 第2流体の流路
61 軸方向両端部
100,200,300 熱交換器
図1
図2
図3
図4