(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】建築物の柱梁構造、建築物、及び建築物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20220127BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
E04B1/30 E
E04B1/58 508S
E04B1/58 503H
(21)【出願番号】P 2021069156
(22)【出願日】2021-04-15
【審査請求日】2021-11-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519294985
【氏名又は名称】株式会社JTS
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100110641
【氏名又は名称】久保山 典子
(72)【発明者】
【氏名】津村 進一
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-177403(JP,A)
【文献】特許第6765735(JP,B1)
【文献】特開平02-272122(JP,A)
【文献】実公昭48-031604(JP,Y1)
【文献】特開平08-270071(JP,A)
【文献】特開平05-086645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24,1/30
E04B 1/38-1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の柱梁構造であって、
角型鋼管からなる下階柱及び上階柱と、
前記下階柱及び上階柱を高さ方向に連結して柱を形成する継ぎ手と、
前記建築物の桁行方向又は梁間方向に延伸する合成梁と、を備え、
前記継ぎ手は、
前記下階柱及び前記上階柱の外周径と同一とみなせる太さの角型鋼管からなる枠体と
、
前記枠体の内側に備えられた内底面と、
前記枠体の四つの側面のうち、一組の対向する側面を前記枠体から両端部を突出させ
て貫通する第1ボルト及び前記枠体の四つの側面のうち、残りの一組の対向する側面を前
記枠体から両端部を突出させて貫通する第2ボルトと、
前記枠体の内部に膨張コンクリートを充填して硬化させた充実部と、を備え、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトの各先端にはねじ溝が形成され、
前記合成梁は、
H形鋼からなる梁本体と、
前記梁本体の延伸方向の両端部のそれぞれに溶接された仕口プレートと、を備え、
前記合成梁の仕口プレートには、前記第1ボルト又は前記第2ボルトを貫通させるため
の貫通孔が形成され、
前記仕口プレートの貫通孔に前記第1ボルト又は前記第2ボルトを貫通させてナットを
はめ合わせることで前記合成梁を前記継ぎ手に接合し、前記仕口プレートと前記枠体とが
溶接される、
ことを特徴とする建築物の柱梁構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建築物の柱梁構造であって、
前記枠体を構成する角型鋼管の板厚は、前記下階柱及び前記上階柱を構成する角型鋼管
の壁厚の2倍以上である、
ことを特徴とする建築物の柱梁構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の建築物の柱梁構造を有することを特徴とする建築物。
【請求項4】
柱梁構造を有する建築物の施工方法であって、
前記柱梁構造は、角型鋼管からなる下階柱及び上階柱と、前記下階柱及び上階柱を高さ
方向に連結して柱を形成する継ぎ手と、前記建築物の桁行方向又は梁間方向に延伸する合
成梁と、を備え、
前記継ぎ手は、前記下階柱及び前記上階柱の外周径と同一とみなせる太さの角型鋼管か
らなる枠体と、前記枠体の内側に備えられた内底面と、前記枠体の四つの側面のうち、一
組の対向する側面を前記枠体から両端部を突出させて貫通する第1ボルト及び前記枠体の
四つの側面のうち、残りの一組の対向する側面を前記枠体から両端部を突出させて貫通す
る第2ボルトと、前記枠体の内部に膨張コンクリートを充填して硬化させた充実部と、を
備え、前記第1ボルト及び前記第2ボルトの各先端にはねじ溝が形成され、
前記合成梁は、H形鋼からなる梁本体と、前記梁本体の延伸方向の両端部のそれぞれに
溶接された仕口プレートと、を備え、前記合成梁の仕口プレートには、前記第1ボルト又
は前記第2ボルトを貫通させるための貫通孔が形成され、
前記下階柱の上端部に前記継ぎ手を接合するステップと、
前記仕口プレートの貫通孔に前記第1ボルト又は前記第2ボルトを貫通させてナットを
はめ合わせるステップと、
前記仕口プレートと前記枠体の側面とを溶接するステップと、
を含むことを特徴とする建築物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の柱梁構造、建築物、及び建築物の施工方法に係り、特に鉄骨建築物の柱梁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
角型鋼管柱を用いた柱梁構造の一例として、特許文献1には、「板状建築物の柱梁構造は、階層構造の各階で複数の専有部分が桁行方向に並べられるものであり、梁間方向に延びる梁間鉄骨梁と、桁行方向に延びる桁行鉄骨梁と、高さ方向に延びると共に梁間鉄骨梁及び桁行鉄骨梁が接合される鉄筋コンクリート柱とを備える(要約抜粋)」との記載が開示されている。
【0003】
鉄骨建築物において、在来工法では柱と梁との非接合部に特許文献1に開示されるような柱継ぎ手が用いられる。
図6は、在来工法による柱梁構造200を示す図である。
図7は、非特許文献1に開示された在来工法に用いられる柱継ぎ手220の模式図である。
【0004】
図6に示すように、従来の柱梁構造200は、施工現場にて下階柱210uの上端部と柱継ぎ手220の下端部、及び柱継ぎ手220の上端部と上階柱210tとを溶接し、柱210を構成する。下階柱210u、上階柱210tの名称は、注目する柱継ぎ手220を基準として下階、上階と称している。従って、注目する柱継ぎ手220が変われば、下階、上階の呼び名も変わる。構造物内において複数の柱210が水平方向(
図6では梁間方向(Z方向))に間隔をあけて立設し、それらを梁間方向(Z方向)に延伸する梁250により連結される。
【0005】
図7に示すように、柱継ぎ手220は、鋼管からなるパネル部221と、パネル部221の下端部に溶接される下ダイヤフラム222uと、パネル部221の上端部に溶接される上ダイヤフラム222tとを備える。更に柱継ぎ手220は、梁を接合させるための一つ以上、四つ以下のブラケット230を備える。
【0006】
図8、
図9、
図10を参照して、在来工法による柱梁接合処理について説明する。
図8は、柱継ぎ手220と梁250との接合処理を示す分解拡大図である。
図9は、柱継ぎ手220と梁250との接合処理が完了した状態を示す部分拡大説明図である。
図10は、柱継ぎ手220と梁250との接合処理が完了した状態を示す部分拡大側面図である。
【0007】
ブラケット230はH形鋼からなり、下フランジ231u、上フランジ231t、下フランジ231u及び上フランジ231tに直交するウェブ232を含む。下フランジ231uは下ダイヤフラム222uと、上フランジ231tは上ダイヤフラム222tと、ウェブ232はパネル部221と溶接される。
【0008】
柱継ぎ手220は、工場において下ダイヤフラム222u、パネル部221、上ダイヤフラム222tにブラケット230が溶接されて出荷される。
【0009】
施工現場では、H形鋼からなる梁250がブラケット230に接合される。具体的には、下スプライスプレート(大)240u及び下スプライスプレート(大)240uの半値幅からなる下スプライスプレート(小)240uh1,240uh2を用いて、ブラケット230の下フランジ231u及び梁250の下フランジ251uを挟み込み、高力ボルト260で締結する。同様に上スプライスプレート(大)240t及び上スプライスプレート(大)240tの半値幅からなる上スプライスプレート(小)240th1,240th2を用いて、ブラケット230の上フランジ231t及び梁250の上フランジ251tを挟み込み、高力ボルト260で締結する。更に、ブラケット230のウェブ232と梁250のウェブ252とは、二枚の側方スプライスプレート240w1、240w2を用いてブラケット230のウェブ232と梁250のウェブ252の板厚方向に沿って挟み込み、高力ボルト260で締結する。ブラケット230、梁250のそれぞれと上スプライスプレート(大)240t、上スプライスプレート(小)240th1,240th2、下スプライスプレート(大)240u、下スプライスプレート(小)240uh1,240uh2、側方スプライスプレート240w1、240w2とは溶接する。
【0010】
こうして在来工法に係る柱梁構造200では、柱継ぎ手220にブラケット230を予め溶接することで、下階柱210uと上階柱210tとを柱継ぎ手220を介して連結すると共に、ブラケット230に梁250を接合することで柱と梁250とを連結した剛接合を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【文献】https://seko-kanri.com/diaphragm/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の柱継ぎ手220は、ブラケット230がパネル部221、下ダイヤフラム222u、上ダイヤフラム222tから突出しているため、柱継ぎ手220を工場から施工現場に運搬する際に、柱継ぎ手220を運搬車両の荷台に並列に載置したり、積み上げたりできず、運搬がしづらいという課題がある。
【0014】
更に柱継ぎ手220に梁250を接合する際に、一つの梁250を接合するために下スプライスプレート(大)240u、下スプライスプレート(小)240uh1,240uh2、上スプライスプレート(大)240t、上スプライスプレート(小)240th1,240th2、側方スプライスプレート240w1、240w2とブラケット230及び梁250とを溶接する必要があり、溶接箇所が多いという課題がある。
【0015】
また、一つの梁250を接合するために下スプライスプレート(大)240u、下スプライスプレート(小)240uh1,240uh2、上スプライスプレート(大)240t、上スプライスプレート(小)240th1,240th2、側方スプライスプレート240w1、240w2を要することから、接合金具を減らしてコストダウンを図りたいという要望には応えられていない。
【0016】
加えて、柱継ぎ手220に梁250からかかる力に対する剛性は高い方が好ましい。柱継ぎ手220では、下ダイヤフラム222u及び上ダイヤフラム222tを用いて剛性を高めているものの、パネル部221は鋼管柱を用いて構成されるので、更なる工夫の余地がある。
【0017】
本発明は上記課題及び実情に鑑みてなされたものであり、運搬性及び施工作業性の改善、柱継ぎ手の剛性の向上、及び柱梁接合に必要な部品点数の削減を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は特許請求の範囲に記載の構成を備える。その一例をあげるならば、本発明に係る建築物の柱梁構造は、
建築物の柱梁構造であって、
角型鋼管からなる下階柱及び上階柱と、
前記下階柱及び上階柱を高さ方向に連結して柱を形成する継ぎ手と、
前記建築物の桁行方向又は梁間方向に延伸する合成梁と、を備え、
前記継ぎ手は、
前記下階柱及び前記上階柱の外周径と同一とみなせる太さの角型鋼管からなる枠体と、
前記枠体の内側に備えられた内底面と、
前記枠体の四つの側面のうち、一組の対向する側面を前記枠体から両端部を突出させて貫通する第1ボルト及び前記枠体の四つの側面のうち、残りの一組の対向する側面を前記枠体から両端部を突出させて貫通する第2ボルトと、
前記枠体の内部に膨張コンクリートを充填して硬化させた充実部と、を備え、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトの各先端にはねじ溝が形成され、
前記合成梁は、
H形鋼からなる梁本体と、
前記梁本体の延伸方向の両端部のそれぞれに溶接された仕口プレートと、を備え、
前記合成梁の仕口プレートには、前記第1ボルト又は前記第2ボルトを貫通させるための貫通孔が形成され、
前記仕口プレートの貫通孔に前記第1ボルト又は前記第2ボルトを貫通させてナットをはめ合わせることで前記合成梁を前記継ぎ手に接合し、前記仕口プレートと前記枠体とが溶接される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、運搬性及び施工作業性の改善、柱継ぎ手の剛性の向上、及び柱梁接合に必要な部品点数の削減を実現することができる。なお、上述した以外の目的、構成、効果については以下の実施形態において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】継ぎ手の梁の接合部の部分拡大図(側面視)。
【
図5】継ぎ手の梁との接合部の部分拡大断面図(側面視)。
【
図8】柱継ぎ手と梁との接合処理を示す分解拡大図。
【
図9】柱継ぎ手と梁との接合処理が完了した状態を示す部分拡大説明図。
【
図10】柱継ぎ手と梁との接合処理が完了した状態を示す部分拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。全図と通じて同一の構成には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0022】
<柱梁構造>
図1は、本実施形態に係る柱梁構造100を示す図である。
図2は、柱梁構造100の施工手順の一部を示す図である。
【0023】
図1に示す柱梁構造100は、鉄骨造りの建築物に用いられる構造である。柱梁構造100は、基礎10a、10bのそれぞれに角型鋼管からなる下階柱20a、20bを立設し、下階柱20a、20bの上端に接合された継ぎ手30a、30bを介して水平方向の一方向である梁間方向(Z方向)を合成梁50aし、更に継ぎ手30a、30bの上端に角型鋼管からなる上階柱40a、40bをそれぞれ立設して構成される。
【0024】
図2に示すように、継ぎ手30a、30bには、桁行方向(X方向)にも合成梁50bが連結される。下階柱20aと継ぎ手30との接合部、及び上階柱40aと継ぎ手30との接合部のそれぞれは溶接により固定する。継ぎ手30aは下階柱20a及び上階柱40aの外周径とほぼ等しい(同一とみなせる太さでよく予め定めた許容範囲内の外周径の差があってもよい。)角柱状に形成される。継ぎ手30aと継ぎ手30bとは同一部材であるので、以下の説明では継ぎ手30a、30bと合成梁50a、50bとを特に区別する必要がない場合は継ぎ手30、合成梁50として説明する。
【0025】
図3は、継ぎ手30の分解説明図である。
図4は、継ぎ手30の合成梁50の接合部の部分拡大図(側面視)である。
図5は、継ぎ手30の合成梁50の接合部の部分拡大断面図(側面視)である。
【0026】
図3に示すように、継ぎ手30は、鋼管からなる枠体31と、枠体31の内側に設けられた内底面32(
図5参照)とを備える。
【0027】
枠体31の板厚d2(
図5参照)は、下階柱20a及び上階柱40aの板厚d1(
図5参照)の2倍以上とする。上記“2倍以上”と規定したのは、建築基準法からの要請に従うためであり、建築基準法の更改に伴って、鋼管柱の板厚d1に対する継ぎ手30の板厚d2の比は適宜変更される。
【0028】
枠体31の各側面331,332,333,334には、2列3段、合計6個の貫通孔が設けられる。対向する側面331,333の各貫通孔に合計6本のボルト341を貫通させる。同様に対向する側面332,334の各貫通孔に合計6本のボルト342を貫通させる。ボルト341,342は枠体31の内部で交差するので、干渉しないよう高さ方向の位置を替えて枠体31を貫通して配置される。ボルト341,342は、第1ボルト、第2ボルトに相当する。
【0029】
ボルト341,342のそれぞれは両端部を枠体31の外に向けて突出させる。ボルト341,342の端部にはねじ溝が設けられており、ナット35が着脱可能にははめ込まれる。ナット35は、ボルト341,342の各先端、合計24個が装着される。継ぎ手30の出荷時にはナット35がボルト341,342にはめ込まれた状態で出荷される。
【0030】
継ぎ手30は、枠体31に12本のボルト341,342を貫通させた状態で、枠体31の内部を膨張コンクリートで充填し硬化させた充実部36を形成する。枠体31の内部を膨張コンクリートで充填することにより、枠体31の内側表面は硬化過程における膨張コンクリートの膨張に拘束を与え、枠体31と充実部36との間に隙間が生じにくくなる。充実部36は枠体31の内側表面に対して外側に向かう力を与えることで、枠体31が合成梁50から受ける力による変形を抑制する。すなわち、在来工法の柱継ぎ手220に用いた平板上のダイヤフラムを用いることなく、継ぎ手30に合成梁50から加わる力に対する剛性を向上させることができる。
【0031】
合成梁50は、H形鋼からなる梁本体53と、梁本体53の延伸方向両端部のそれぞれに、延伸方向に対して直交する仕口プレート55を予め溶接して形成される。梁本体53は、ウェブ52と、ウェブ52を上下に挟んで対向する上フランジ51t及び下フランジ51uを含む。
【0032】
仕口プレート55は鉄板により構成され、上フランジ51t,ウェブ52,下フランジ51uのそれぞれに溶接される。
【0033】
仕口プレート55は、枠体31の側面331から突出しているボルト341、又はボルト342を貫通させるためのボルト孔56を6つ備える。ボルト341とボルト342とは高さ方向の位置を変えて継ぎ手30に備えられているので、ボルト孔56の位置もそれに応じて変える。従って、継ぎ手30の側面331,333に接合する合成梁50と、継ぎ手30の側面332,334に接合する合成梁50とは、仕口プレート55に設けられるボルト孔56の位置が異なる。
図3では説明の便宜のため、枠体31の側面332に接合する仕口プレート55については、この仕口プレート55に溶接されている合成梁50の上フランジ51t,ウェブ52,下フランジ51uの図示を省略している。
【0034】
本実施形態にかかる柱梁構造100を含む建築物の施工方法について説明する。工場では、継ぎ手30と合成梁50とを含む建築部材を製造し、これらの建築部材(建築部材のキット)が施工現場に運び込まれる。
【0035】
継ぎ手30は、枠体31にボルト341,342を貫通させた状態で膨張コンクリートを枠体31に流し込み、硬化させる。そしてボルト341,342にナット35をはめた状態で出荷する。
【0036】
合成梁50は、H形鋼からなる梁本体53の両端部に仕口プレート55を溶接してから出荷する。
【0037】
施工現場における施工方法(継ぎ手30と合成梁50との接合処理)は以下のとおりである。
(1)下階柱20の上端部に継ぎ手30を溶接する。
(2)ボルト341にはまっているナット35を取り外す。
(3)合成梁50の仕口プレート55を継ぎ手30の側面331に対向させ、仕口プレート55のボルト孔56にボルト311を貫通させて仕口プレート55を枠体31の側面331に当接する。
(4)ボルト341にナット35をはめ合わせる。
(5)仕口プレート55と継ぎ手30とを溶接する。
(6)継ぎ手30の上端部に上階柱40を溶接する。
【0038】
従って、
図4、
図5に示すように、仕口プレート55をはさんでボルト341にナット35をはめ合わせた状態となる。
【0039】
本実施形態によれば、継ぎ手30は、枠体31を基本とし、ボルト341,342がわずかに突出した外径形状として構成できる。よって、継ぎ手30がほぼ直方体形状に形成でき、車両に積載して、又は並列させて積載でき、運搬効率を向上させることができる。
【0040】
更に在来工法では
図7、
図10に示すように柱継ぎ手220に合成梁50を溶接する際は、下スプライスプレート(大)240u、下スプライスプレート(小)240u1,240u2、上スプライスプレート(大)240t、上スプライスプレート(小)240t1,240t2、側方スプライスプレート240w1、240w2をブラケット230及び梁250のそれぞれに溶接する。これに対して本実施形態によれば、スプライスプレートを使うことなく、合成梁50の仕口プレート55の四辺を継ぎ手30に溶接すればよい。そのため、在来工法に比べて柱梁接合に際して接合金具を減らし、更に柱梁接合時の溶接箇所を減らし施工作業性を向上させることができる。
【0041】
上記実施形態は本発明の一実施形態を表したにすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない各種変形態様は、本発明に含まれる。
【0042】
例えば、枠体31に設けるボルト341,342の本数は、枠体31の一側面に6本に限定されない。
【0043】
また本発明は、下階柱20及び上階柱40を構成する角型鋼管からなる柱部材と、仕口プレート55を延伸方向の両端に備えるH形鋼(梁鋼材)と、継ぎ手30とを含む建築部材のキット、継ぎ手30、合成梁50の各建築部材は、本発明に係る建築部材の権利範囲に含まれる。また、継ぎ手30、合成梁50を用いた柱梁構造100を含む建築物、その施工方法も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10a,10b :基礎
20,20a,20b :下階柱
30,30a,30b :継ぎ手
31 :枠体
32 :内底面
35 :ナット
36 :充実部
40,40a,40b :上階柱
50,50a,50b :合成梁
51t :上フランジ
51u :下フランジ
52 :ウェブ
53 :梁本体
55 :仕口プレート
56 :ボルト孔
100 :柱梁構造
200 :柱梁構造(在来工法)
210 :柱
210t :上階柱
210u :下階柱
220 :柱継ぎ手
221 :パネル部
222t :上ダイヤフラム
222u :下ダイヤフラム
230 :ブラケット
231t :上フランジ
231u :下フランジ
232 :ウェブ
240t :上スプライスプレート(大)
240th1,240th2:上スプライスプレート(小)
240u :下スプライスプレート(大)
240uh1,240uh2:下スプライスプレート(小)
240w1,240w2 :側方スプライスプレート
250 :梁
251t :上フランジ
251u :下フランジ
252 :ウェブ
260 :高力ボルト
311 :ボルト
331,332,333,334 :側面
341,342 :ボルト
A,B :領域
d1,d2 :板厚
wl :溶接部
【要約】
【課題】鉄骨建築物の柱梁構造に用いる継ぎ手の運搬容易性と現場作業性を改善すること。
【解決手段】下階柱20及び上階柱40を連結する継ぎ手30は、枠体31と枠体側面を貫通するボルト341と、枠体の内部に膨張コンクリートを充填して硬化させた充実部36とを備える。合成梁50は、H形鋼からなる梁本体と、梁本体の延伸方向の両端部のそれぞれに溶接された仕口プレート55と、を備え、仕口プレート55はボルトを貫通させるための貫通孔56が形成される。下階柱20の上端に継ぎ手30を固定し、仕口プレート55の貫通孔56にボルト341を貫通させてナット35をはめ合わせ、仕口プレート55と枠体31とを溶接して接合する。
【選択図】
図3