(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】背負子および背負子の荷崩れ防止アタッチメント
(51)【国際特許分類】
A45F 3/08 20060101AFI20220128BHJP
【FI】
A45F3/08
(21)【出願番号】P 2020085768
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2020-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】518271042
【氏名又は名称】落合 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】特許業務法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 稔
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05579966(US,A)
【文献】特開平09-294630(JP,A)
【文献】実開昭57-057728(JP,U)
【文献】特開平11-075936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0262354(US,A1)
【文献】実開昭59-105574(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/06-3/10
A45C 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ材で構成され下部に荷台部を有する本体フレームに、左右一対の肩ベルトが設けられた背負子であって、
前記荷台部に設けられ、積載面から突出して積載された荷物の左右方向への移動を規制すると共に、前記荷物の左右方向の積載幅を広狭調整自在に構成された移動規制機構を備えたことを特徴とする背負子。
【請求項2】
前記移動規制機構は、対向配置された左右一対の対向規制部材を有し、
前記各対向規制部材は、
前記荷台部に対し左右方向に位置調節自在に取り付けられたアーム部と、前記アーム部に支持され、前記荷物の左右方向への移動を規制する規制突出部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の背負子。
【請求項3】
前記荷台部は、前後方向に延在する一対の縦フレーム部と、前記一対の縦フレーム部間に渡され、左右方向に延在する一対の横フレーム部と、を有し、
前記一対の横フレーム部の対向面には、それぞれ左右方向に列設した複数の係止受け部が形成され、
前記アーム部は、一方の端部で前記規制突出部を支持すると共に、前記規制突出部側を基点に相互に近接する方向にばね性を奏する前後一対の棒状アームを有し、
前記一対の棒状アームの他方の端部は、前記一対の棒状アームを相互に近接する方向に撓ませることで、前記各係止受け部に対し係脱可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の背負子。
【請求項4】
前記一対の棒状アームと前記規制突出部とは、棒材により一体に折曲げ形成されていることを特徴とする請求項3に記載の背負子。
【請求項5】
前記荷台部は、前後方向に延在する一対の縦フレーム部と、前記一対の縦フレーム部に交差するように渡され、左右方向に延在する一対の交差フレーム部と、を有し、
前記各交差フレーム部には、左右方向に列設した複数の係止受け部が形成され、
前記アーム部は、一方の端部で前記規制突出部を支持すると共に、他方の端部で前記一対の交差フレーム部にスライド自在に係合する前後一対のスライドアーム、を有し、
前記各対向規制部材は、前記一対のスライドアームに内蔵され、前記各係止受け部に係脱する一対の係脱機構と、前記規制突出部に設けられ、前記一対の係脱機構を係脱操作させる操作部と、を更に有していることを特徴とする請求項2に記載の背負子。
【請求項6】
前記規制突出部の前記積載面からの高さが、1~3cmであることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の背負子。
【請求項7】
パイプ材で構成され下部に荷台部を有する本体フレームに、左右一対の肩ベルトが設けられた背負子に取り付けられる、荷崩れ防止アタッチメントであって、
前記荷台部に設けられ、積載面から突出して積載された荷物の左右方向への移動を規制すると共に、前記荷物の左右方向の積載幅を広狭調整自在に構成された移動規制機構と、
前記移動規制機構を、前記荷台部に着脱自在に取り付けるための機構セット部と、を備えことを特徴とする背負子の荷崩れ防止アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を背負って運搬するための背負子および背負子の荷崩れ防止アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の背負子として、ビールケースなどの荷物を運搬するのに適するように改良されたものが知られている(特許文献1参照)。
この背負子は、荷物を載置する荷台と、荷台を支持する背負枠と、背負枠に取り付けた背負バンドと、背負枠に平行に荷台に立設した補助枠と、を備えている。荷台、背負枠および補助枠は、アルミニウム製の丸パイプを適宜折り曲げて形成されている。補助枠は、背負枠に沿わせるように配設され、その一対の側柱には、引掛片を有するスライド具がそれぞれ設けられている。各スライド具は、補助枠の側柱に対し摺動可能且つ回動可能に嵌合している。
荷台に載置したビールケースに対し、一対のスライド具を適宜摺動および回動させて、引掛片をビールケースの上端縁内側に掛け止めするようにする。これにより、ビールケースを荷台上から落ちないように載置することができると共に、バンドやひも等による、ビールケースの背負子への緊着を必要としない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、従来の背負子では、荷物がビールケースである場合には、一対の引掛片が有効に機能し、ビールケースの落下を防止することはできるが、ビールケース以外の荷物に対しては、引掛片が有効に機能しないものとなっている。すなわち、上記従来の背負子は、ビールケース(1つ)の運搬に特化したものであり、汎用性に欠けるものなっていた。
【0005】
ところで、背負子とバックパック(リュック:ザック)とでは、同じ背負うタイプの運搬具であるが、その背負い動作が異なるものとなっている。すなわち、バックパックでは、一方の腕を一方の肩ベルトに通し、前かがみに背負い上げてから、他方の腕を他方の肩ベルトに通すようにしている。また、逆の手順でバックパックを降ろすようにしている。これに対し背負子では、平らなところに置いた背負子に対し両腕を両肩ベルトに通し、その後、前かがみに背負い上げるようにしている。また、逆の手順で背負子を降ろすようにしている。
これは、バックパックでは、背負うときに傾いても、荷物がパッキングされていて荷崩れが生じないのに対し、背負子では、傾いたときに荷崩れ(荷の左右の重量バランスが崩れる)が生じてしまうからである。このため、大きな荷物を運搬可能な背負子ではあるが、背負うとき、降ろすときおよび休憩するときに、水平で且つある程度の高さを有する置台様のものを必要とする問題があった。また、荷崩れを考慮し、複数本のゴムバンドやゴムネットにより、荷物を背負子に強固に締結しておく必要があった。
【0006】
本発明は、背負うときおよび降ろすときを含め、荷崩れや重量バランスの崩れを抑制することができる背負子および背負子の荷崩れ防止アタッチメントを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の背負子は、パイプ材で構成され下部に荷台部を有する本体フレームに、左右一対の肩ベルトが設けられた背負子であって、荷台部に設けられ、積載面から突出して積載された荷物の左右方向への移動を規制すると共に、荷物の左右方向の積載幅を広狭調整自在に構成された移動規制機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、荷台部に積載した荷物は、移動規制機構により左右方向への移動が規制されるため、背負うときおよび降ろすときに傾いても、左右方向に位置ずれすることが無い。これにより、バックパックと同様に自然な背負い動作で荷物を背負うことが可能となると共に、荷物を左右バランス良く背負うことができる。また、運搬時において荷物の左右の重量バランスが崩れることがない。さらに、移動規制機構は、荷物の幅に合わせて、左右方向の積載幅を広狭調整可能に構成されているため、広狭幅の異なる荷物にも対応させることができる。したがって、荷物の幅を問わず、積載した荷物の荷崩れや重量バランスの崩れを抑制することができる。
このように、荷物の左右方向の位置ズレが抑制されるため、フレームへの前後方向の押さえのみで、極めて荷崩れ等のし難い積載が可能となる。したがって、荷物の積み下ろしも簡単且つ迅速に行うことができる。
【0009】
この場合、移動規制機構は、対向配置された左右一対の対向規制部材を有し、各対向規制部材は、荷台部に対し左右方向に位置調節自在に取り付けられたアーム部と、アーム部に支持され、荷物の左右方向への移動を規制する規制突出部と、を有していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、規制突出部およびアーム部から成る対向規制部材の一対を対向配置することで、移動規制機構が構成されているため、極めて簡単な構造で、荷崩れ等の発生を抑制することができる。
【0011】
この場合、荷台部は、前後方向に延在する一対の縦フレーム部と、一対の縦フレーム部間に渡され、左右方向に延在する一対の横フレーム部と、を有し、一対の横フレーム部の対向面には、それぞれ左右方向に列設した複数の係止受け部が形成され、アーム部は、一方の端部で規制突出部を支持すると共に、規制突出部側を基点に相互に近接する方向にばね性を奏する前後一対の棒状アームを有し、一対の棒状アームの他方の端部は、一対の棒状アームを相互に近接する方向に撓ませることで、各係止受け部に対し係脱可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、対向規制部材の一対の棒状アームを撓ませることで、一対の横フレーム部(荷台部)に対し、対向規制部材を付替え或いは着脱することができる。すなわち、各対向規制部材の付替えにより、積載幅の広狭調整を簡単に行うことができる。また、移動規制機構が邪魔な場合には、これを荷台部から取り外しておくことができる。さらに、一対の横フレーム部に、荷台部の一部と移動規制機構の一部とを兼用させることができる。
【0013】
この場合、一対の棒状アームと規制突出部とは、棒材により一体に折曲げ形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、対向規制部材を極めて単純な構造のものとすることができ、移動規制機構を設けることによるコストアップを抑制することができる。
【0015】
また、荷台部は、前後方向に延在する一対の縦フレーム部と、一対の縦フレーム部に交差するように渡され、左右方向に延在する一対の交差フレーム部と、を有し、各交差フレーム部には、左右方向に列設した複数の係止受け部が形成され、アーム部は、一方の端部で規制突出部を支持すると共に、他方の端部で一対の交差フレーム部にスライド自在に係合する前後一対のスライドアーム、を有し、各対向規制部材は、一対のスライドアームに内蔵され、各係止受け部に係脱する一対の係脱機構と、規制突出部に設けられ、一対の係脱機構を係脱操作させる操作部と、を更に有していることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、規制突出部に設けた操作部による一対の係脱機構の係脱操作と、一対の交差フレーム部に対する一対のスライドアームのスライド動作とにより、積載幅の広狭調整を極めて簡単に行うことができる。また、一対の交差フレーム部に、荷台部の一部と移動規制機構の一部とを兼用させることができる。
【0017】
一方、規制突出部の積載面からの高さが、1~3cmであることが好ましい。
【0018】
荷台部上の荷物は運搬時においても浮き上がることはなく、1~3cmの高さを有する規制突出部であっても、荷物の位置ずれを有効に防止することができる。したがって、規制突出部の積載面からの高さを1~3cmとすることで、荷崩れを抑制しつつ、規制突出部をコンパクトに構成することができる。また、例えばテントのような長い荷物では、左右一対の規制突出部に載せるように積載すれば、荷物自身の撓みを利用して荷崩れを抑制することもできる。なお、規制突出部の長さ(前後方向の長さ)は、荷台部の前後方向の長さよりも短く形成することが好ましい。
【0019】
本発明の背負子の荷崩れ防止アタッチメントは、パイプ材で構成され下部に荷台部を有する本体フレームに、左右一対の肩ベルトが設けられた背負子に取り付けられる、荷崩れ防止アタッチメントであって、荷台部に設けられ、積載面から突出して積載された荷物の左右方向への移動を規制すると共に、荷物の左右方向の積載幅を広狭調整自在に構成された移動規制機構と、移動規制機構を、荷台部に着脱自在に取り付けるための機構セット部と、を備えことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、移動規制機構の無い既存の背負子に、この荷崩れ防止アタッチメントを装着すれば、荷崩れが発生し難い且つ左右の重量バランスが崩れ難い背負子に改変することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る背負子の外観斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る背負子の荷台フレーム廻りの平面図である。
【
図3】背負子の荷台フレーム廻りの裁断正面図である。
【
図5】第2実施形態に係る背負子の荷台フレーム廻りの平面図である。
【
図6】背負子の荷台フレーム廻りの裁断正面図(a)、および規制部材を上下反転した状態の裁断正面図(b)である。
【
図7】移動規制機構における操作部および係脱機構廻りの構造図である。
【
図8】第3実施形態に係る背負子の荷台フレーム廻りの平面図である。
【
図10】背負子の荷台フレーム廻りの裁断正面図(a)、および側面図(b)である。
【
図11】アタッチメントを装着した既設背負子の荷台フレーム廻りの平面図である。
【
図12】アタッチメントを装着した既設背負子の荷台フレーム廻りの裁断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る背負子および背負子の荷崩れ防止アタッチメントについて説明する。この背負子は、主要部をパイプフレームで構成したものであり、積載した荷物の荷崩れや左右バランスの崩れを極力抑制できる構造を有している。また、荷崩れ防止アタッチメントは、既存の背負子に装着して用いられ、荷崩れ等を抑制する機能を有している。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る背負子の外観斜視図である。同図に示すように、背負子10は、スチールやアルミニウム等のパイプ材で構成した本体フレーム11と、本体フレーム11に設けた左右一対の肩ベルト12と、を有している。本体フレーム11は、一対の肩ベルト12が取り付けられた背負フレーム13と、背負フレーム13の下端から後方に延びる荷台フレーム14(荷台部)と、荷台フレーム14に設けられ、荷物Sの荷崩れを抑制する移動規制機構15と、を備えている。
【0024】
荷物Sは荷台フレーム14に積載されるが、その際、荷物Sの幅に合わせて移動規制機構15が幅調整される(詳細は後述する)。荷台フレーム14に積載された荷物Sは、ゴムバンド等で本体フレーム11に緊結されて、荷造りされる。そして、使用者は、一対の肩ベルト12に腕を通して、荷造りした本体フレーム11を背負い上げ、荷物Sを運搬する。
【0025】
背負フレーム13は、左右一対の側柱フレーム部21と、一対の側柱フレーム部21間に渡した上連結フレーム部22および下連結フレーム部23と、を有している。一対の側柱フレーム部21、上連結フレーム部22および下連結フレーム部23は、人間の背中の形状に合わせて湾曲させたパイプ材で形成されている。上連結フレーム部22および下連結フレーム部23は、それぞれ人間の肩および腰の位置に対応しており、この上連結フレーム部22および下連結フレーム部23に一対の肩ベルト12が、「ハ」字状を為すように取り付けられている。
【0026】
なお、背負フレーム13には、一対の肩ベルト12の他、ウェストベルトや チェストストラップ等が設けられていることが好ましい。また、上連結フレーム部22および下連結フレーム部23間において、一対の側柱フレーム部21間に渡すように、背当て部材が設けられていることが好ましい。
【0027】
図1ないし
図3に示すように、荷台フレーム14は、一対の側柱フレーム部21の下端から前後方向に延びる左右一対の縦フレーム部31と、一対の縦フレーム部31間に渡した前後一対の横フレーム部32と、を有している。各側柱フレーム部21と各縦フレーム部31とは、折り曲げた一体のパイプ材で形成されている。なお、後側の横フレーム部32は、一対の縦フレーム部31と一体に形成されたものであってもよい。
【0028】
一対の横フレーム部32は、前後方向に離間して且つ相互に平行に配設され、それぞれ外端部を縦フレーム部31の側面に突き当てるようにして溶着されている。一対の横フレーム部32の対向面には、それぞれ複数個の係止孔35(係止受け部)が列設されており、詳細は後述するが、荷台フレーム14の一部である一対の横フレーム部32は、移動規制機構15の一部をも兼ねている。
【0029】
図2ないし
図4に示すように、移動規制機構15は、荷台フレーム14上において、対向配置した左右一対の対向規制部材40を有している。各対向規制部材40は、一対の横フレーム部32に対し、上記の係止孔35を介して左右方向に位置調節自在に取り付けられたアーム部41と、アーム部41に支持され、荷物Sの左右方向への移動を規制する規制突出部42と、を有している。
【0030】
この場合のアーム部41は、先端部において、横フレーム部32の係止孔35に係止される先端係止部44aを折曲げ形成した、前後一対の棒状アーム44で構成されている。各棒状アーム44は、スチールやステンレス等の細い棒材により形成されている。一方、規制突出部42は、断面矩形の角パイプ材(型材)で形成され、縦フレーム部31と平行に延在している。この場合、規制突出部42は、一対の棒状アーム44の端部に載るようにして、これに溶着されている。
【0031】
また、一対の棒状アーム44は、規制突出部42側を基点に相互に近接する方向にばね性を奏するものとなっている。したがって、一対の棒状アーム44を相互に近接する方向に撓ませることで、先端係止部44aが、横フレーム部32の各係止孔35に対し係脱可能となる。
【0032】
各棒状アーム44の先端係止部44aは、縦横に折り曲げられており、これにより横フレーム部32に装着した対向規制部材40は、その一対の棒状アーム44が縦フレーム部31に支持される(載る)ようにして、ほぼ水平に配設されている。すなわち、荷台フレーム14に積載される荷物Sは、この一対の棒状アーム44の上(積載面)に載置され、この棒状アーム44が一対の縦フレーム部31に支持されることとなる(
図3参照)。
【0033】
また、一対の棒状アーム44に支持された規制突出部42は、その前後方向の長さが荷台フレーム14の前後方向の長さよりも幾分短く形成されている(
図2参照)。さらに、規制突出部42の積載面(棒状アーム44の上面)からの高さHは、1~3cmに形成されている(
図3参照)。この高さHの規制突出部42により、左右方向において背負子10が傾いたときに、荷物Sの下端部がつかえて位置規制されることとなる。この程度の突出高さでも、荷物Sの位置ずれを有効に防止することが可能となる。
【0034】
これにより、荷崩れを有効に防止しつつ、移動規制機構15が可能な限り邪魔にならないようにしている。また、テントやソフトクーラー等の柔らかく幅広の荷物Saにあっては、一対の規制突出部42上に積載することも可能にしており(
図3参照)、この場合には、荷物Saが撓むことで左右方向の位置ずれが抑制される。
【0035】
一方、各横フレーム部32に形成した複数の係止孔35は、例えば1cmピッチの係止孔35の複数個(実施形態のものは、8個)を1組とし、これが各横フレーム部32において左右対称に配設され、且つ前後一対の横フレーム部32において、対向するように配設されている。図示では省略したが、横フレーム部32には、各係止孔35に対応させて、荷物Sの積載幅、すなわち左右の規制突出部42の内法間距離が数値表示されている。
【0036】
使用者は、荷物Sの幅に合う数値の係止孔35に、一対の対向規制部材40(棒状アーム44)を装着しておいて、荷物Sを積載する。荷台フレーム14に荷物Sを積載すると、荷物Sの左右の側面下部に沿うように、左右の一対の規制突出部42が位置することとなる(
図3参照)。
【0037】
[変形例]
ここで、
図4を参照して、第1実施形態の変形例に係る対向規制部材40Aについて説明する。
この対向規制部材40Aは、アーム部41と規制突出部42Aとが、スチールやステンレス等の細い棒材により一体に折曲げ形成されている。
【0038】
対向規制部材40Aにおけるアーム部41は、先端部において、横フレーム部32の係止孔35に係止される先端係止部44aを折曲げ形成した、前後一対の棒状アーム44で構成され、規制突出部42Aは、一対の棒状アーム44に連なる棒材を、扁平「C」字状に折り曲げて形成されている。この場合も、一対の棒状アーム44は、規制突出部42A側を基点に相互に近接する方向にばね性を奏するものとなっている。したがって、一対の棒状アーム44を相互に近接する方向に撓ませることで、先端係止部44aが、横フレーム部32の各係止孔35に対し係脱可能となる。
【0039】
以上のように、第1実施形態の背負子10によれば、積載面からわずかに突出した左右の規制突出部42,42Aにより、積載した荷物Sが左右方向において位置規制されるため、荷台フレーム14に左右の傾きが生じても、荷物Sが左右方向に位置ずれしてしまうことがない。これにより、バックパックと同様に、一方の腕を一方の肩ベルト12に通し、前かがみに背負い上げてから、他方の腕を他方の肩ベルト12に通すようにしても、荷崩れや左右のバランスの崩れが生ずることがない。また、逆の手順で背負子10を降ろす場合も、同様である。加えて、荷物Sの運搬中においても、位置ずれにより荷物Sの左右の重量バランスが崩れることがない。
【0040】
また、荷台フレーム14に対し一対の対向規制部材40,40Aを付け替えるだけで、荷物Sの積載幅に合わせた左右の規制突出部42,42Aのセッティングを行うことができ、荷物Sの幅を問わず、その荷崩れやバランスの崩れを抑制することができる。
【0041】
このように、移動規制機構15により、荷台フレーム14に積載した荷物Sの左右方向の位置ずれを規制することができるため、荷造りでは、1~2本にゴムバンドにより荷物Sを本体フレーム11に掛け止めするだけで済む。したがって、背負子10に対する荷物Sの積み下ろしを、簡単且つ迅速に行うことができる。
【0042】
なお、一対の対向規制部材40,40Aは、取り外しておくことも可能である。また、第1実施形態におけるパイプ材は、いわゆる丸パイプ材であるが、これを角パイプ材としてもよい。
【0043】
[第2実施形態]
次に、
図5ないし
図7を参照して、第2実施形態に係る背負子10Bについて説明する。この実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
図5ないし
図7に示すように、第2実施形態の背負子10Bでは、荷台フレーム14において、一対の縦フレーム部31が後連結フレーム部33を介して、「U」字状に一体化している。また、上記の一対の横フレーム部32に代えて、一対の縦フレーム部31に交差するように、前後一対の交差フレーム部38が設けられている。また、移動規制機構15を構成する一対の対向規制部材40Bは、この一対の交差フレーム部38に、左右の両側からスライド自在に係合している。
【0044】
一対の交差フレーム部38は、前後方向において相互に離間して配設され、それぞれその両端部が一対の縦フレーム部31を貫通して、左右方向に延在している。各交差フレーム部38は、スチールやアルミニウム等の角パイプ材で形成され、一対の縦フレーム部31を貫通した状態でこれに溶着されている。そして、詳細は後述するが、各交差フレーム部38には、左右方向に列設した複数の係止小孔39(係止受け部)が形成されている。
【0045】
一方、対向規制部材40Bは、一対の交差フレーム部38にスライド自在に係合する前後一対のスライドアーム51(アーム部)と、一対のスライドアーム51に支持された規制突出部42Bと、を有している。この場合の規制突出部42Bは、積載面から突出して積載幅を規制する突出部本体52と、突出部本体52の下側に配設され、突出部本体52を支持すると共に、一対のスライドアーム51の端部同士を連結する連結パイプ部53と、で構成されている。
【0046】
各スライドアーム51は、断面が交差フレーム部38と相補形状の角パイプ材で形成され、連結パイプ部53は、スライドアーム51と同一断面形状の角パイプ材で形成されている。そして、一対のスライドアーム51および連結パイプ部53には、上記の係止小孔39に係脱する一対の係脱機構61が内蔵され(
図7参照)、さらに連結パイプ部53には、一対の係脱機構61を係脱操作させる操作部62が設けられている。
【0047】
図5および
図7に示すように、操作部62は、連結パイプ部53に内向きに取り付けられ、握るようにして操作される操作レバー64と、操作レバー64を操作可能に保持すると共に戻しばね66を有するレバーホルダ65と、を有している。そして、レバーホルダ65は、連結パイプ部53内に配設され、操作レバー64は、両サイドの延長出力部67を除いて、連結パイプ部53の外部に露出している。
【0048】
戻しばね66に抗して、操作レバー64を連結パイプ部53に没入させるように引くと、両延長出力部67を介して一対の係脱機構61が係止解除操作(アンロック)される。また、この状態から、操作レバー64を離して元の位置に復帰させると、両延長出力部67を介して一対の係脱機構61が係止操作(ロック)される。
【0049】
各係脱機構61は、交差フレーム部38の内側から係止小孔39に係脱するロックピン71と、ロックピン71を係止方向に付勢するロックばね72と、ロックばね72に抗して、ロックピン71を係止小孔39から離脱させる係脱プレート73と、係脱プレート73および操作レバー64間に渡した連結バー74と、を有している。そして、これらロックピン71、ロックばね72、係脱プレート73および連結バー74は、スライドアーム51に内蔵されている。
【0050】
ロックばね72は、断面「U」字状の板ばねで構成され、スライドアーム51の内壁面を受けとしてロックピン71を係止方向に付勢している。ロックピン71は、先端部を半球状に形成したピン本体71aとピン本体71aの基端側に連なるピンベース71bとから成り、ピンベース71bの部分でロックばね72の先端部に固定されている。ピンク本体71aは、スライドアーム51に形成したガイド孔75を介して、交差フレーム部38の係止小孔39に対し係脱する。
【0051】
係脱プレート73は、スライドアーム51の内壁面に沿って進退する進退プレート部73aと、進退プレート部73aの先端側に連なり、ロックピン71と係合する二股形状の傾斜カム部73bと、で一体に形成されている。進退プレート部73aは、その基端部で、連結バー74を介して操作レバー64の延長出力部67に連結されている。傾斜カム部73bは、ロックピン71のピン本体71aを跨いでピンベース71bに係合し、進退プレート部73aによる前進位置で後退位置との間で、ロックピン71をロック・アンロックさせる。
【0052】
戻しばね66に抗して操作レバー64を引くと、連結バー74を介して係脱プレート73の傾斜カム部73bが前進位置から後退位置に移動する。傾斜カム部73bが後退位置に移動すると、ロックピン71が、ロックばね72に抗して係止小孔39から離脱(アンロック)する。この離脱状態では、半球形のロックピン71の先端部が、係止小孔39側にわずかに残っており、交差フレーム部38に対しスライドアーム51をスライドさせると、ロックピン71は複数の係止小孔39にクリック的に係合する。
【0053】
一方、ロックピン71が任意の係止小孔39にクリック係合した状態で、操作レバー64を離すと、戻しばね66により操作レバー64が元の非操作位置に復帰する。また、ロックばね72により、傾斜カム部73bが後退位置から前進位置に移動すると同時に、ロックピン71が係止小孔39に係止される。係止小孔39に係止されたロックピン71により、交差フレーム部38に対するスライドアーム51のスライドがロックされる。
【0054】
この場合も、第1実施形態と同様に、交差フレーム部38には、各係止小孔39に対応させて荷物Sの積載幅、すなわち左右の規制突出部42Bの内法間距離が数値表示されていることが好ましい。使用者は、荷物Sの幅に合う数値の係止小孔39にロックピン71が来るように、一対の対向規制部材40B(スライドアーム51)を装着しておいて、荷物Sを積載する。もっとも、荷台フレーム14に荷物Sを積載してから、一対の対向規制部材40Bをスライド調整するようにしてもよい。
【0055】
また、一対のスライドアーム51に支持された規制突出部42Bは、その前後方向の長さが荷台フレーム14の前後方向の長さより幾分短く形成されている(
図5参照)。さらに、規制突出部42Bの積載面(交差フレーム部38の上面)からの高さHは、1~3cmに形成されている(
図6(a)参照)。
【0056】
このように、第2実施形態の背負子10Bでも、左右の規制突出部42Bにより、積載した荷物Sが左右方向において位置規制されるため、荷台フレーム14に左右の傾きが生じても、荷物Sが左右方向に位置ずれしてしまうことがない。したがって、左右方向の位置ずれにより生ずる荷崩れや左右のバランスの崩れを極力抑制することができる。また、積載幅を簡単に調整できると共に、荷物Sの幅を問わずその荷崩れ等を極力抑制することができる。さらに、荷物Sの積み下ろしを簡単且つ迅速に行うことができる。
【0057】
なお、一対の交差フレーム部38は、一対の縦フレーム部31の下面または上面に溶着されているものであってもよい。前者における荷物Sは、一対の縦フレーム部31に直接積載され、前者における荷物Sは、一対の交差フレーム部38に直接積載されこととなる。また、一対の対向規制部材40B(移動規制機構15)は、これが邪魔になる場合には、これを取り外しておくことは元より、これを上下反転させて一対の交差フレーム部38に装着しておくことも可能である(
図6(b)参照)。
【0058】
[第3実施形態]
次に、
図8ないし
図10を参照して、第3実施形態に係る背負子10Cについて説明する。この実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
図8ないし
図10に示すように、第3実施形態の背負子10Cでも、荷台フレーム14において、一対の縦フレーム部31が後連結フレーム部33を介して、「U」字状に一体化している。また、上記の一対の横フレーム部32に代えて、後述するアーム部41Cが左右方向にスライド自在に係合するスライドガイド部81が設けられている。
【0059】
スライドガイド部81は、スチールやアルミニウム等で細長い板状に形成されている。スライドガイド部81の両端部は、一対の縦フレーム部31を越えて左右方向に延在すると共に、下側から一対の縦フレーム部31に固着されている。この場合、スライドガイド部81は、一対の縦フレーム部31の補強材として荷台フレーム14の一部であるが、移動規制機構15の一部をも兼ねている。
【0060】
スライドガイド部81の内側には、延在方向に下向きの「あり溝」を形成されており、この「あり溝」の断面形状と、後述するアーム部41Cの断面形状とが相補的形状に形成されている。これにより、一対のアーム部41Cが、左右方向の両外側からスライドガイド部81にスライド自在に係合している。
【0061】
一方、移動規制機構15を構成する各対向規制部材40Cは、スライドガイド部81にスライド自在に係合するアーム部41Cと、アーム部41Cの先端部に設けた規制突出部42Cと、を有している。アーム部41Cは厚板状に形成され、また規制突出部42Cは角パイプ材を面取りした形状に形成されていて、これらは、アルミニウムやプラスチック等で一体に形成されている。
【0062】
アーム部41Cの中心部には、長手方向に沿って長孔41Caが形成され、長孔41Caには、ボルト83aと蝶ナット83bとから締結部83が臨んでいる(
図10(b)参照)。ボルト83aは、スライドガイド部81に固定され、その軸部が長孔41Caを貫通している。一方、蝶ナット83bは、長孔41Caを貫通したボルト83aに裏面側から螺合し、アーム部41Cをスライドガイド部81に締結する。また、各対向規制部材40Cは、蝶ナット83bを緩めることで左右方向にスライド自在となり、締め付けることで、左右方向の所望のスライド位置に固定される。
【0063】
スライドガイド部81の各ガイド片85には、荷物Sの積載幅、すなわち両規制突出部42Cの内法間距離が数値をもって表示されている。この数値表示86にアーム部41Cの端を合わせ込むことで、一対の規制突出部42Cによる所望の積載幅が調整される。この場合、使用者は、荷物Sの幅に合うように、一対の対向規制部材40Cをスライド調整しておいて、荷物Sを積載する。或いは、先に荷台フレーム14に荷物Sを積載し、この荷物Sを挟み込むように一対の対向規制部材40Cをスライド調整する。
【0064】
そして、アーム部41Cに支持された規制突出部42Cは、その前後方向の長さが荷台フレーム14の前後方向の長さよりも十分に短く形成されている(
図8参照)。また、規制突出部42Cの積載面(荷台フレーム14の上面)からの高さHは、1~3cmに形成されている(
図10(a)参照)。
【0065】
このように、第4実施形態の背負子10Cでも、左右の規制突出部42Cにより、積載した荷物Sが左右方向において位置規制されるため、荷台フレーム14に左右の傾きが生じても、荷物Sが左右方向に位置ずれしてしまうことがない。したがって、左右方向の位置ずれにより生ずる荷崩れや左右のバランスの崩れを極力抑制することができる。また、積載幅を簡単に調整できると共に、荷物Sの幅を問わずその荷崩れ等を極力抑制することができる。さらに、荷物Sの積み下ろしを簡単且つ迅速に行うことができる。
【0066】
[アタッチメント]
ここで、
図11および
図12を参照して、背負子10の荷崩れ防止アタッチメント90(以下、単に「アタッチメント90」と言う。)について説明する。アタッチメント90は、上記した第1実施形態ないし第3実施形態における移動規制機構15の基本構造を、既存の背負子10にセットするものであり、ここでは、上記の第2実施形態の移動規制機構15を適用したアタッチメント90について説明する。
【0067】
両図では、既存の背負子10における荷台フレーム14廻りの構造が、実線で示されており、荷台フレーム14は、一対の縦フレーム部31とこれらを繋ぐ後連結フレーム部33と、で「U」字状に形成されている。一方、この既存の荷台フレーム14にセットされるアタッチメント90は、上記の移動規制機構15と、この移動規制機構15を荷台フレーム14に着脱自在に取り付けるための機構セット部91と、を有している。
【0068】
移動規制機構15は、上述にように、一対の対向規制部材40Bを備えており、各対向規制部材40Bは、前後一対のスライドアーム51(アーム部)と、一対のスライドアーム51に支持された規制突出部42Bと、を有している。この場合も規制突出部42Bは、突出部本体52と連結パイプ部53と、で構成されている。そして、一対のスライドアーム51および連結パイプ部53には、後述する係止小孔39に係脱する一対の係脱機構61が内蔵され(
図7参照)、さらに連結パイプ部53には、一対の係脱機構61を係脱操作させる操作部62が設けられている。すなわち、移動規制機構15は、第2実施形態の移動規制機構15と同一の形態を有している。
【0069】
一方、機構セット部91は、上記一対の交差フレーム部38に相当する前後一対の装着横フレーム部92と、一対の装着横フレーム部92間に渡した左右一対の装着縦フレーム部93と、を有している。一対の装着横フレーム部92には、一対のスライドアーム51(対向規制部材40B)が外側からスライド自在に係合している。そして、各装着横フレーム部92には、係脱機構61が係脱する複数の係止小孔39(係止受け部)が形成されている。
【0070】
一対の装着縦フレーム部93は、荷台フレーム14の一対の縦フレーム部31に重なるように配設され、一対の装着横フレーム部92は、一対の縦フレーム部31を越えて延在している。すなわち、機構セット部91は、荷台フレーム14に載った状態で、これに着脱自在に装着されている(
図12参照)。
【0071】
一対の装着縦フレーム部93および後側の装着横フレーム部92には、それぞれパイプクリップ95が溶着されている。各装着縦フレーム部93に溶着されたパイプクリップ95は、装着縦フレーム部93を荷台フレーム14の縦フレーム部31に着脱自在に装着する。同様に、装着横フレーム部92に溶着されたパイプクリップ95は、装着横フレーム部92を荷台フレーム14の後連結フレーム部33に着脱自在に装着する。したがって、一対の装着縦フレーム部93を一対の縦フレーム部31に、且つ後側の装着横フレーム部92を後連結フレーム部33に、それぞれ位置合わせした後、これを上側から押圧することで、機構セット部91が荷台フレーム14に装着される。
【0072】
この場合も、第2実施形態と同様に、操作レバー64を引くことで、一対の装着横フレーム部92に対し対向規制部材40Bが左右方向にスライド可能となり、操作レバー64を離すことで、対向規制部材40Bのスライドがロックされる。なお、この場合も、規制突出部42Bの積載面(装着横フレーム部92の上面)からの高さHは、1~3cmに形成されている(
図12(a)参照)。
【0073】
このように構成された本実施形態のアタッチメント90では、これを既存の背負子10に装着することで、既存の背負子10を、荷崩れ等を極力抑制することができるものに改変することができる。
【0074】
なお、第2実施形態以外の実施形態における移動規制機構15も、上記の要領でアタッチメント化が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10,10B,10C…背負子、11…本体フレーム、12…肩ベルト、13…背負フレーム、14…荷台フレーム、15…移動規制機構、31…縦フレーム部、32…横フレーム部、33…後連結フレーム部、35…係止孔、38…交差フレーム部、39…係止小孔、40,40A,40B,40C…対向規制部材、41,41C…アーム部、42,42A,42B,42C…規制突出部材、44…棒状アーム、51…スライドアーム、61…係脱機構、62…操作部、81…スライドガイド部、83…締結部、90…アタッチメント、91…機構セット部、S…荷物、