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特許7017015ヒトCD19に特異的な抗体剤及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】ヒトCD19に特異的な抗体剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20220201BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220201BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20220201BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220201BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220201BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220201BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220201BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C12N15/13
C12N15/85 Z
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K35/17 Z
A61K47/68
A61K48/00
A61P35/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018539226
(86)(22)【出願日】2016-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 US2016056325
(87)【国際公開番号】W WO2017066136
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2019-10-11
(31)【優先権主張番号】62/240,624
(32)【優先日】2015-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518129259
【氏名又は名称】エウレカ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、 ホン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、 チンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 チーユアン
(72)【発明者】
【氏名】ロン、 リー
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ニール
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/010561(WO,A1)
【文献】Blood,2010年,Vol.116, No.21,Abstract 2865
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/28 - 16/30
C12N 15/00 - 15/90
C12N 5/00 - 5/28
A61K 39/395
A61K 35/12 - 35/55
A61K 47/68
A61K 48/00
A61P 1/00 - 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号151のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(HC-CDR1)、
配列番号152のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(HC-CDR2)及び
配列番号153のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(HC-CDR3)、並びに、
配列番号259のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(LC-CDR1)、
配列番号260のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(LC-CDR2)及び
配列番号261のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LC-CDR3)を含み、ヒト分化抗原群19(CD19)と特異的に結合する抗体又は抗体断片、ただし、前記抗体又は抗体断片は以下の(i)~(vi)のうちいずれか1つの置換を有していてもよい:
(i)HC-CDR3の配列番号153のアミノ酸配列におけるN末端側から21番目のL残基のM残基への置換;
(ii)HC-CDR3の配列番号153のアミノ酸配列におけるN末端側から21番目のL残基のM残基への置換、及び、LC-CDR3の配列番号261のアミノ酸配列におけるN末端側から8番目のD残基のE残基への置換;
(iii)HC-CDR3の配列番号153のアミノ酸配列におけるN末端側から21番目のL残基のM残基への置換、及び、LC-CDR3の配列番号261のアミノ酸配列におけるN末端側から8番目のD残基のG残基への置換;
(iv)HC-CDR3の配列番号153のアミノ酸配列におけるN末端側から21番目のL残基のM残基への置換、及び、LC-CDR3の配列番号261のアミノ酸配列におけるN末端側から6番目のS残基のT残基への置換;
(v)HC-CDR3の配列番号153のアミノ酸配列におけるN末端側から21番目のL残基のM残基への置換、及び、HC-CDR3の配列番号153のアミノ酸配列におけるN末端側から12番目のY残基のN残基への置換;
(vi)HC-CDR3の配列番号153のアミノ酸配列におけるN末端側から21番目のL残基のM残基への置換、HC-CDR1の配列番号151のアミノ酸配列におけるN末端側から7番目のY残基のF残基への置換、及び、HC-CDR3の配列番号153のアミノ酸配列におけるN末端側から1番目のA残基のV残基への置換。
【請求項2】
前記置換(i)、前記置換(ii)、前記置換(iii)又は前記置換(vi)を含んでいてもよい、請求項1に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項3】
前記置換(i)~(vi)を有しない、請求項1に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項4】
前記HC-CDR1、前記HC-CDR2、前記HC-CDR3、前記LC-CDR1、前記LC-CDR2及び前記LC-CDR3を含むアミノ酸配列として配列番号42のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項5】
免疫グロブリン、Fab、F(ab’)、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)若しくはdAbであるか、又は、免疫グロブリン、Fab、F(ab’)、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)若しくはdAbを含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項6】
治療薬、検出剤、細胞傷害性薬剤、細胞傷害性部分又は放射性同位元素と結合している、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項7】
ヒト抗体又はヒト抗体断片である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項8】
第一の抗原結合部位及び第二の抗原結合部位を含み、前記第一の抗原結合部位が、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片から得られたものであり、前記第一の抗原結合部位によりヒト分化抗原群19(CD19)と特異的に結合する、二重特異性抗体。
【請求項9】
前記第二の抗原結合部位がT細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、間葉系幹細胞及び神経幹細胞からなる群より選択される免疫細胞と結合する、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片の抗原結合部位を含み、ヒト分化抗原群19(CD19)と特異的に結合する、キメラ抗原受容体。
【請求項11】
膜貫通ドメイン、並びに、CD3ζ細胞内シグナル伝達配列及びCD28細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項10に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項12】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片、
請求項8若しくは請求項9に記載の二重特異性抗体、又は
請求項10若しくは請求項11に記載のキメラ抗原受容体
の全体をコードする核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸分子若しくは請求項13に記載のベクターを含む、又は、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片、請求項8若しくは請求項9に記載の二重特異性抗体、若しくは請求項10若しくは請求項11に記載のキメラ抗原受容体を発現する、細胞。
【請求項15】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片、請求項8若しくは請求項9に記載の二重特異性抗体、又は請求項10若しくは請求項11に記載のキメラ抗原受容体を発現する、エフェクター細胞。
【請求項16】
T細胞である、請求項15に記載のエフェクター細胞。
【請求項17】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片、請求項8若しくは請求項9に記載の二重特異性抗体、請求項10若しくは請求項11に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の核酸分子、請求項13に記載のベクター、又は請求項15若しくは請求項16に記載のエフェクター細胞を含み、且つ、医薬的に許容される担体又は希釈剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片、請求項8若しくは請求項9に記載の二重特異性抗体、請求項10若しくは請求項11に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の核酸分子、請求項13に記載のベクター、請求項15若しくは請求項16に記載のエフェクター細胞、又は請求項17に記載の医薬組成物を含む、対象におけるCD19発現を特徴とする医学的状態の治療用組成物。
【請求項19】
前記CD19発現を特徴とする医学的状態がB細胞リンパ腫、急性リンパ芽球白血病、慢性リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫又は急性骨髄性白血病である、請求項18に記載の治療用組成物。
【請求項20】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片、請求項8若しくは請求項9に記載の二重特異性抗体、請求項10若しくは請求項11に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の核酸分子、請求項13に記載のベクター、請求項15若しくは請求項16に記載のエフェクター細胞、又は請求項17に記載の医薬組成物を含む、がんの治療用組成物。
【請求項21】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片、請求項8若しくは請求項9に記載の二重特異性抗体、請求項10若しくは請求項11に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の核酸分子、請求項13に記載のベクター、請求項15若しくは請求項16に記載のエフェクター細胞、又は請求項17に記載の医薬組成物を含む、
腫瘍の増殖阻害又は腫瘍細胞の殺滅用の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全内容が本明細書に援用される、2015年10月13日に出願された米国仮特許出願第62/240,624号の利益を主張するものである。
【0002】
配列表
本明細書は、ファイル名「ETI-2015-11_ST25.txt」の.txtファイルとして電子データで提出された配列表を参照する。この.txtファイルは2016年10月5日に作成されたものであり、サイズは178,524バイトである。この配列表の全内容は参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
抗体に基づく技術の出現によって、がん治療用の新規な抗体ベースの治療薬の開発が過去10年間の非常に大きな関心事となっていた。実際に、種々の抗体フォーマット(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、放射性標識抗体、薬剤結合型抗体、多重特異性抗体等)の開発が続けられており、中にはがん治療においてかなりの見込みを示したものもある。2015年のリストには、新たに2ダースの治療用抗体剤が、種々のがんを適応症として、アメリカ又はヨーロッパにおいて、市販承認された、又は検討中であると報告された(Janice M. Reichert, PhD, Reichert Biotechnology Consulting LLC, May 26, 2015を参照)。特に有効な抗体剤の開発が尚も課題となっている。
【発明の概要】
【0004】
本発明はとりわけ、CD19、特にヒトCD19、と特異的に結合する、ヒト抗体剤、多重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)及びキメラ抗原受容体を提供する。いくつかの実施形態では、1又は複数の参照ヒト抗体剤、参照多重特異性結合剤及び/又は参照キメラ抗原受容体よりも、天然型の(例えば、細胞表面上に発現された)ヒトCD19に対する特異性が高い、ヒト抗体剤、多重特異性結合剤及びキメラ抗原受容体が提供される。いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤、多重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)及びキメラ抗原受容体は、確立された技術(例えば、操作された非ヒト動物、ファージディスプレイ、マウス由来抗体から作製されたヒト化抗体等)を用いて開発された抗体を基とした抗CD19治療薬に付随する次善的選択性(suboptimal selectivity)を超えるものである。いくつかの実施形態では、CD19発現を特徴とするがん細胞(例えば、リンパ腫及び/又は白血病)の殺滅を効果的に媒介する、ヒト抗体剤、多重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)及びキメラ抗原受容体が提供される。
【0005】
本明細書では、ヒト配列(すなわち、ヒトCDR配列を含むヒト重鎖可変領域配列及びヒト軽鎖可変領域配列)を含む抗体剤を使用する実施形態が広範に論じられるが、本発明は非ヒト抗体剤も提供する。いくつかの実施形態では、非ヒト抗体剤は、本明細書に記載の抗体剤から得られるヒトCDR配列と非ヒトフレームワーク配列とを含む。非ヒトフレームワーク配列には、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1又は複数のヒトCDR配列を用いた合成重鎖可変領域及び/又は合成軽鎖可変領域の作製に使用可能なあらゆる配列が包含され、例えば、哺乳類、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌ウシ、雄ウシ、水牛)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)等のフレームワーク配列が挙げられる。いくつかの実施形態では、提供される抗体剤として、本明細書に記載の1又は複数のヒトCDR配列を非ヒトフレームワーク配列(例えば、マウス又はニワトリフレームワーク配列)に移植することにより作製される抗体剤が包含される。多くの実施形態では、提供される抗体剤は、ヒト抗体剤(例えば、ヒトモノクローナル抗体又はその断片、ヒト抗原結合性のタンパク質又はポリペプチド、ヒト多重特異性結合剤[例えば、ヒト二重特異性抗体]、ヒト免疫グロブリンポリペプチドの1又は複数の構造成分を有するヒトポリペプチド)である。
【0006】
いくつかの実施形態では、本発明は、重鎖CDR1(HC-CDR1)、重鎖CDR2(HC-CDR2)及び重鎖CDR3(HC-CDR3)、並びに軽鎖CDR1(LC-CDR1)、軽鎖CDR2(LC-CDR2)及び軽鎖CDR3(LC-CDR3)を含む、ヒトCD19と特異的に結合する抗体剤であって、
前記HC-CDR1はG-X-X-F-X-S-X-X(配列番号291)を含み、ここで、XはF、G、Y若しくはVであり、XはS若しくはTであり、XはS若しくはTであり、XはN若しくはYであり、XはA、W若しくはYである;
前記HC-CDR2はI-X-P-X-X-X-X10-T(配列番号292)を含み、ここで、XはS、D若しくはYであり、XはE、S、G若しくはIであり、XはD、F若しくはVであり、XはG若しくはSであり、X10はK、E、Y、D若しくはTである;
前記LC-CDR1はS-S-N-X11-G-X12-X13-X14(配列番号293)若しくはN-I-G-S-X15-S(配列番号294)を含み、ここで、X11はI若しくはVであり、X12はN、S若しくはTであり、X13はN、H若しくはKであり、X14はY、A若しくはTであり、X15はK若しくはEである;且つ/又は
前記LC-CDR2はX16-X17-X18(配列番号295)を含み、ここで、X16はD、E、S、R若しくはYであり、X17はN若しくはDであり、X18はN、Y、S若しくはDである、
前記抗体剤を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、表2から選択される1若しくは複数の重鎖CDRと少なくとも50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%)同一の配列を有する1若しくは複数の重鎖CDR、及び/又は、表3から選択される1若しくは複数の軽鎖CDRと少なくとも50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%)同一の配列を有する1若しくは複数の軽鎖CDRを含む、ヒトCD19と特異的に結合するヒト抗体剤を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号73、配列番号74及び配列番号75に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号181、配列番号182及び配列番号183に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号76、配列番号77及び配列番号78に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号184、配列番号185及び配列番号186に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号79、配列番号80及び配列番号81に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号187、配列番号188及び配列番号189に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号82、配列番号83及び配列番号84に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号190、配列番号191及び配列番号192に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号85、配列番号86及び配列番号87に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号193、配列番号194及び配列番号195に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号88、配列番号89及び配列番号90に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号196、配列番号197及び配列番号198に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号91、配列番号92及び配列番号93に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号199、配列番号200及び配列番号201に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号94、配列番号95及び配列番号96に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号202、配列番号203及び配列番号204に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号97、配列番号98及び配列番号99に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号205、配列番号206及び配列番号207に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号100、配列番号101及び配列番号102に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号208、配列番号209及び配列番号210に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号103、配列番号104及び配列番号105に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号211、配列番号212及び配列番号213に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号106、配列番号107及び配列番号108に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号214、配列番号215及び配列番号216に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号109、配列番号110及び配列番号111に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号217、配列番号218及び配列番号219に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号112、配列番号113及び配列番号114に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号220、配列番号221及び配列番号222に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号115、配列番号116及び配列番号117に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号223、配列番号224及び配列番号225に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号118、配列番号119及び配列番号120に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号226、配列番号227及び配列番号228に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号121、配列番号122及び配列番号123に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに配列番号229、配列番号230及び配列番号231に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号73、配列番号74及び配列番号75の重鎖CDR、並びに配列番号181、配列番号182及び配列番号183の軽鎖CDRを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号76、配列番号77及び配列番号78の重鎖CDR、並びに配列番号184、配列番号185及び配列番号186の軽鎖CDRを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号79、配列番号80及び配列番号81の重鎖CDR、並びに配列番号187、配列番号188及び配列番号189の軽鎖CDRを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号82、配列番号83及び配列番号84の重鎖CDR、並びに配列番号190、配列番号191及び配列番号192の軽鎖CDRを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号85、配列番号86及び配列番号87の重鎖CDR、並びに配列番号193、配列番号194及び配列番号195の軽鎖CDRを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号88、配列番号89及び配列番号90の重鎖CDR、並びに配列番号196、配列番号197及び配列番号198の軽鎖CDRを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号91、配列番号92及び配列番号93の重鎖CDR、並びに配列番号199、配列番号200及び配列番号201の軽鎖CDRを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号94、配列番号95及び配列番号96の重鎖CDR、並びに配列番号202、配列番号203及び配列番号204の軽鎖CDRを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号97、配列番号98及び配列番号99の重鎖CDR、並びに配列番号205、配列番号206及び配列番号207の軽鎖CDRを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号100、配列番号101及び配列番号102の重鎖CDR、並びに配列番号208、配列番号209及び配列番号210の軽鎖CDRを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号103、配列番号104及び配列番号105の重鎖CDR、並びに配列番号211、配列番号212及び配列番号213の軽鎖CDRを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号106、配列番号107及び配列番号108の重鎖CDR、並びに配列番号214、配列番号215及び配列番号216の軽鎖CDRを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号109、配列番号110及び配列番号111の重鎖CDR、並びに配列番号217、配列番号218及び配列番号219の軽鎖CDRを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号112、配列番号113及び配列番号114の重鎖CDR、並びに配列番号220、配列番号221及び配列番号222の軽鎖CDRを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号115、配列番号116及び配列番号117の重鎖CDR、並びに配列番号223、配列番号224及び配列番号225の軽鎖CDRを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号118、配列番号119及び配列番号120の重鎖CDR、並びに配列番号226、配列番号227及び配列番号228の軽鎖CDRを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号121、配列番号122及び配列番号123の重鎖CDR、並びに配列番号229、配列番号230及び配列番号231の軽鎖CDRを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明は、CD19との結合において、以下を含むヒト抗体剤と競合するヒト抗体剤を提供する:(a)配列番号73、配列番号74及び配列番号75の重鎖CDR、並びに配列番号181、配列番号182及び配列番号183の軽鎖CDR;(b)配列番号76、配列番号77及び配列番号78の重鎖CDR、並びに配列番号184、配列番号185及び配列番号186の軽鎖CDR;(c)配列番号79、配列番号80及び配列番号81の重鎖CDR、並びに配列番号187、配列番号188及び配列番号189の軽鎖CDR;(d)配列番号82、配列番号83及び配列番号84の重鎖CDR、並びに配列番号190、配列番号191及び配列番号192の軽鎖CDR;(e)配列番号85、配列番号86及び配列番号87の重鎖CDR、並びに配列番号193、配列番号194及び配列番号195の軽鎖CDR;(f)配列番号88、配列番号89及び配列番号90の重鎖CDR、並びに配列番号196、配列番号197及び配列番号198の軽鎖CDR;(g)配列番号91、配列番号92及び配列番号93の重鎖CDR、並びに配列番号199、配列番号200及び配列番号201の軽鎖CDR;(h)配列番号94、配列番号95及び配列番号96の重鎖CDR、並びに配列番号202、配列番号203及び配列番号204の軽鎖CDR;(i)配列番号97、配列番号98及び配列番号99の重鎖CDR、並びに配列番号205、配列番号206及び配列番号207の軽鎖CDR;(j)配列番号100、配列番号101及び配列番号102の重鎖CDR、並びに配列番号208、配列番号209及び配列番号210の軽鎖CDR;(k)配列番号103、配列番号104及び配列番号105の重鎖CDR、並びに配列番号211、配列番号212及び配列番号213の軽鎖CDR;(l)配列番号106、配列番号107及び配列番号108の重鎖CDR、並びに配列番号214、配列番号215及び配列番号216の軽鎖CDR;(m)配列番号109、配列番号110及び配列番号111の重鎖CDR、並びに配列番号217、配列番号218及び配列番号219の軽鎖CDR;(n)配列番号112、配列番号113及び配列番号114の重鎖CDR、並びに配列番号220、配列番号221及び配列番号222の軽鎖CDR;(o)配列番号115、配列番号116及び配列番号117の重鎖CDR、並びに配列番号223、配列番号224及び配列番号225の軽鎖CDR;(p)配列番号118、配列番号119及び配列番号120の重鎖CDR、並びに配列番号226、配列番号227及び配列番号228の軽鎖CDR;又は(q)配列番号121、配列番号122及び配列番号123の重鎖CDR、並びに配列番号229、配列番号230及び配列番号231の軽鎖CDR。
【0043】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、重鎖CDR内及び/又は軽鎖CDR内に1又は複数のアミノ酸置換をさらに含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、重鎖CDR内及び/又は軽鎖CDR内に1以上又は5以下のアミノ酸置換をさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、重鎖CDR内及び/又は軽鎖CDR内に1以上又は3以下のアミノ酸置換をさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、重鎖フレームワーク内及び/又は軽鎖フレームワーク内に1又は複数のアミノ酸置換を含む。いくつかの特定の実施形態では、ヒト抗体剤は、重鎖フレームワーク内及び/又は軽鎖フレームワーク内に1~5個のアミノ酸置換を含む。
【0047】
いくつかの特定の実施形態では、1又は複数のアミノ酸置換(例えば、1~5個のアミノ酸置換)が、フレームワーク領域内(すなわち、重鎖フレームワーク内及び/又は軽鎖フレームワーク内)及び/又はCDR内(すなわち、重鎖CDR内及び/又は軽鎖CDR内)に存在する。
【0048】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、表8に示される1又は複数のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、表8に示されるバリアントクローンに見られるアミノ酸置換を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明は、表1に示される重鎖可変領域配列と少なくとも50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列を有する重鎖可変領域、及び、表1に示される軽鎖可変領域配列と少なくとも50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む、ヒトCD19と特異的に結合するヒト抗体剤を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号2に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号2に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号4に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号4に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号6に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号6に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号8に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号8に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号10に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号10に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号12に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号12に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号14に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号14に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号16に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号16に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号18に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号18に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号20に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号20に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号22に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号22に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号24に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号24に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号26に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号26に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号28に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号28に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号30に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号30に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号32に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号32に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号34に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号34に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32及び配列番号34のいずれか1つに現れる重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトCD19と特異的に結合するヒト抗体剤であって、親(又は参照)ヒト抗体剤と比べて1又は複数のアミノ酸置換を含み、且つ、以下を含む、前記ヒト抗体剤を提供する:(a)配列番号124、配列番号125及び配列番号126の重鎖CDR、並びに配列番号232、配列番号233及び配列番号234の軽鎖CDR;(b)配列番号127、配列番号128及び配列番号129の重鎖CDR、並びに配列番号235、配列番号236及び配列番号237の軽鎖CDR;(c)配列番号130、配列番号131及び配列番号132の重鎖CDR、並びに配列番号238、配列番号239及び配列番号240の軽鎖CDR;(d)配列番号133、配列番号134及び配列番号135の重鎖CDR、並びに配列番号241、配列番号242及び配列番号243の軽鎖CDR;(e)配列番号136、配列番号137及び配列番号138の重鎖CDR、並びに配列番号244、配列番号245及び配列番号246の軽鎖CDR;(f)配列番号139、配列番号140及び配列番号141の重鎖CDR、並びに配列番号247、配列番号248及び配列番号249の軽鎖CDR;(g)配列番号142、配列番号143及び配列番号144の重鎖CDR、並びに配列番号250、配列番号251及び配列番号252の軽鎖CDR;(h)配列番号145、配列番号146及び配列番号147の重鎖CDR、並びに配列番号253、配列番号254及び配列番号255の軽鎖CDR;(i)配列番号148、配列番号149及び配列番号150の重鎖CDR、並びに配列番号256、配列番号257及び配列番号258の軽鎖CDR;(j)配列番号151、配列番号152及び配列番号153の重鎖CDR、並びに配列番号259、配列番号260及び配列番号261の軽鎖CDR;(k)配列番号154、配列番号155及び配列番号156の重鎖CDR、並びに配列番号262、配列番号263及び配列番号264の軽鎖CDR;(l)配列番号157、配列番号158及び配列番号159の重鎖CDR、並びに配列番号265、配列番号266及び配列番号267の軽鎖CDR;(m)配列番号160、配列番号161及び配列番号163の重鎖CDR、並びに配列番号268、配列番号269及び配列番号270の軽鎖CDR;(n)配列番号163、配列番号164及び配列番号165の重鎖CDR、並びに配列番号271、配列番号272及び配列番号273の軽鎖CDR;(o)配列番号166、配列番号167及び配列番号168の重鎖CDR、並びに配列番号274、配列番号275及び配列番号276の軽鎖CDR;(p)配列番号169、配列番号170及び配列番号171の重鎖CDR、並びに配列番号277、配列番号278及び配列番号279の軽鎖CDR;(q)配列番号172、配列番号173及び配列番号174の重鎖CDR、並びに配列番号280、配列番号281及び配列番号282の軽鎖CDR;(r)配列番号175、配列番号176及び配列番号177の重鎖CDR、並びに配列番号283、配列番号284及び配列番号285の軽鎖CDR;又は(s)配列番号178、配列番号179及び配列番号180の重鎖CDR、並びに配列番号286、配列番号287及び配列番号288の軽鎖CDR。いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体剤は、本明細書に記載の親(又は参照)抗体剤と比べて1~5個のアミノ酸置換を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、10、16、25、34、52、54、68、69、72、75、93、95及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸位置のいずれかに1又は複数のアミノ酸置換を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの特定の実施形態では、1又は複数のアミノ酸置換は、V10M、K16E、S25N、V34I、D52N、L54Q、N68T、T69M、L72M、S75N、S93T、D95E、D95G又はこれらの組み合わせを包含する。
【0070】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、3、12、16、17、25、26、32、63、69、97、102、106、108、109、113、116、117及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸位置のいずれかに1又は複数のアミノ酸置換を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの特定の実施形態では、1又は複数のアミノ酸置換は、Q3R、K12E、E16G、S17F、S25A、G26A、Y32F、S63F、T69A、A97V、T102S、M106L、Y108N、D109E、Q113L、L116M、M117L又はこれらの組み合わせを包含する。
【0071】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換S75Nを有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換T69Mを有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換D52N及びD95Eを有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換V10M及びD95Gを有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換S93Tを有する軽鎖可変領域、並びにアミノ酸置換S17F及びT69Aを有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換N68Tを有する軽鎖可変領域、並びにアミノ酸置換S17F及びY108Nを有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換S63Fを有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換Q3R、Y32F及びA97Vを有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換K16Eを有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換M117Lを有する重鎖可変領域を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換L72Mを有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸置換S25Aを有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換T102S及びL116Mを有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換S25N及びV34Iを有する軽鎖可変領域、並びにアミノ酸置換K12E及びD109Eを有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換E16Gを有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換L54Qを有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸置換M106Lを有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換S25Nを有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換G26A及びQ113Lを有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換L54Qを有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、アミノ酸置換T102Sを有する重鎖可変領域を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は表8から選択されるものである。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトCD19と特異的に結合するヒト抗体剤であって、親(又は参照)ヒト抗体剤と比べて1又は複数のアミノ酸置換(例えば、1~5個のアミノ酸置換)を含み、且つ、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70及び配列番号72のうちいずれか1つに現れる重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む、前記ヒト抗体剤を提供する。いくつかの特定の実施形態では、親(又は参照)抗体剤は、配列番号30又は配列番号32のHCVR及びLCVRを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、ヒトモノクローナル抗体又はその断片である。
【0076】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、バリアントFc領域を含むヒトモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、バリアントFc領域は、親(又は参照)Fc領域と比較すると一つ又は複数のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、野生型(又は親、又は参照)Fc領域を含む親ヒトモノクローナル抗体と比べると異なっているグリコシル化パターンを含む。いくつかの実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体又はIgG4抗体である。いくつかの特定の実施形態では、ヒトモノクローナル抗体はIgG1である。
【0077】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は治療薬又は検出剤に結合されている。
【0078】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は細胞傷害性薬剤又は細胞傷害性部分に結合されている。
【0079】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は放射性同位元素に結合されている。
【0080】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、免疫グロブリン、Fab、F(ab’)、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)又はdAbであるか、又はそれを含む。いくつかの特定の実施形態では、ヒト抗体剤はscFvであるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、scFvはリンカー配列を含む。いくつかの実施形態では、scFvは治療薬又は検出剤に結合されている。いくつかの実施形態では、scFvはキメラ抗原受容体の一部である。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療又は診断で使用するための、本明細書に記載のヒト抗体剤を提供する。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明は、CD19発現を特徴とする疾患の治療、予防又は改善で使用するための、本明細書に記載のヒト抗体剤を提供する。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明は、がんの治療、予防又は改善で使用するための、本明細書に記載のヒト抗体剤を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒト抗体剤の抗原結合部位(複数可)と、細胞傷害性薬剤又は細胞傷害性部分とを含む、抗体-薬物複合体を提供する。
【0085】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性薬剤又は細胞傷害性部分は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)又はメイタンシンであるか、又はそれを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒト抗体剤から得られる(又はそれを基とした)第一の抗原結合部位、及び第二の抗原結合部位を含む、二重特異性抗体を提供する。
【0087】
いくつかの実施形態では、第一及び/又は第二の抗原結合部位は、免疫グロブリン分子、scFv、scFab、Fab、Fv及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、第一及び第二の抗原結合部位は、それらが1本鎖ポリペプチドを形成するように構成されている。いくつかの実施形態では、第一及び第二の抗原結合部位はscFvである。いくつかの実施形態では、第一及び第二の抗原結合部位はペプチドリンカーによって連結されている。いくつかの実施形態では、第二の抗原結合部位は第一の抗原結合部位のC末端に連結されている。いくつかの実施形態では、第二の抗原結合部位は第一の抗原結合部位のN末端に連結されている。
【0088】
いくつかの実施形態では、第一の抗原結合部位は免疫グロブリン分子から構成されており、第二の抗原結合部位はscFv、scFab、Fab又はFvから構成される。
【0089】
いくつかの実施形態では、第二の抗原結合部位は、T細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、間葉系幹細胞及び神経幹細胞からなる群より選択される免疫細胞と結合する。いくつかの実施形態では、第二の抗原結合部位はT細胞上のCD3と結合する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒト抗体剤の抗原結合部位を含む二重特異性T細胞動員モノクローナル抗体を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明は、CD19と特異的に結合する第一のscFv及びT細胞上のCD3と特異的に結合する第二のscFvから構成される二重特異性抗体であって、前記第一のscFvが配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70及び配列番号72のいずれか1つを含む、前記二重特異性抗体を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態では、第一のscFvのN末端が第二のscFvのC末端に連結されている。いくつかの実施形態では、第一のscFvのC末端が第二のscFvのN末端に連結されている。
【0093】
いくつかの実施形態では、第一のscFvのN末端がリンカー配列を介して第二のscFvのC末端に連結されている。いくつかの実施形態では、第一のscFvのC末端がリンカー配列を介して第二のscFvのN末端に連結されている。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療又は診断で使用するための、本明細書に記載の二重特異性抗体を提供する。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明は、CD19発現を特徴とする疾患の治療、予防又は改善で使用するための、本明細書に記載の二重特異性抗体を提供する。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒト抗体剤の抗原結合部位を含むキメラ抗原受容体を提供する。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、本明細書に記載のヒト抗体剤のの抗原結合部位を含み、且つ、天然細胞受容体の膜貫通ドメイン及び/又は細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの特定の実施形態では、天然細胞受容体はT細胞受容体(TCR)である。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、本明細書に記載のヒト抗体剤の抗原結合部位を含み、且つ、膜貫通ドメイン、並びに、CD3(例えば、CD3ζ)細胞内シグナル伝達配列及びCD28細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体の抗原結合部位は、scFvであるか、又はそれを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗原受容体の抗原結合部位は、V領域であるか、又はそれを含む。いくつかの特定の実施形態では、V領域は以下の軽鎖CDRを含む:(a)配列番号181、配列番号182及び配列番号183;(b)配列番号184、配列番号185及び配列番号186;(c)配列番号187、配列番号188及び配列番号189;(d)配列番号190、配列番号191及び配列番号192;(e)配列番号193、配列番号194及び配列番号195;(f)配列番号196、配列番号197及び配列番号198;(g)配列番号199、配列番号200及び配列番号201;(h)配列番号202、配列番号203及び配列番号204;(i)配列番号205、配列番号206及び配列番号207;(j)配列番号208、配列番号209及び配列番号210;(k)配列番号211、配列番号212及び配列番号213;(l)配列番号214、配列番号215及び配列番号216;(m)配列番号217、配列番号218及び配列番号219;(n)配列番号220、配列番号221及び配列番号222;(o)配列番号223、配列番号224及び配列番号225;(p)配列番号226、配列番号227及び配列番号228;(q)配列番号229、配列番号230及び配列番号231;(r)配列番号232、配列番号233及び配列番号234;(s)配列番号235、配列番号236及び配列番号237;(t)配列番号238、配列番号239及び配列番号240;(u)配列番号241、配列番号242及び配列番号243;(v)配列番号244、配列番号245及び配列番号246;(w)配列番号247、配列番号248及び配列番号249;(x)配列番号250、配列番号251及び配列番号252;(y)配列番号253、配列番号254及び配列番号255;(z)配列番号256、配列番号257及び配列番号258;(ab)配列番号259、配列番号260及び配列番号261;(ac)配列番号262、配列番号263及び配列番号264;(ad)配列番号265、配列番号266及び配列番号267;(ae)配列番号268、配列番号269及び配列番号270;(af)配列番号271、配列番号272及び配列番号273;(ag)配列番号274、配列番号275及び配列番号276;(ah)配列番号277、配列番号278及び配列番号279;(ai)配列番号280、配列番号281及び配列番号282;(aj)配列番号283、配列番号284及び配列番号285;又は(ak)配列番号286、配列番号287及び配列番号288。いくつかの特定の実施形態では、V領域は、以下のいずれか1つに現れる配列を含む:配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70及び配列番号72。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ受容体(chimeric receptor)の抗原結合部位は、V領域であるか、又はそれを含む。いくつかの特定の実施形態では、V領域は、以下の重鎖CDRを含む:(a)配列番号73、配列番号74及び配列番号75;(b)配列番号76、配列番号77及び配列番号78;(c)配列番号79、配列番号80及び配列番号81;(d)配列番号82、配列番号83及び配列番号84;(e)配列番号85、配列番号86及び配列番号87;(f)配列番号88、配列番号89及び配列番号90;(g)配列番号91、配列番号92及び配列番号93;(h)配列番号94、配列番号95及び配列番号96;(i)配列番号97、配列番号98及び配列番号99;(j)配列番号100、配列番号101及び配列番号102;(k)配列番号103、配列番号104及び配列番号105;(l)配列番号106、配列番号107及び配列番号108;(m)配列番号109、配列番号110及び配列番号111;(n)配列番号112、配列番号113及び配列番号114;(o)配列番号115、配列番号116及び配列番号117;(p)配列番号118、配列番号119及び配列番号120;(q)配列番号121、配列番号122及び配列番号123;(r)配列番号124、配列番号125及び配列番号126;(s)配列番号127、配列番号128及び配列番号129;(t)配列番号130、配列番号131及び配列番号132;(u)配列番号133、配列番号134及び配列番号135;(v)配列番号136、配列番号137及び配列番号138;(w)配列番号139、配列番号140及び配列番号141;(x)配列番号142、配列番号143及び配列番号144;(y)配列番号145、配列番号146及び配列番号147;(z)配列番号148、配列番号149及び配列番号150;(ab)配列番号151、配列番号152及び配列番号153;(ac)配列番号154、配列番号155及び配列番号156;(ad)配列番号157、配列番号158及び配列番号159;(ae)配列番号160、配列番号161及び配列番号163;(af)配列番号163、配列番号164及び配列番号165;(ag)配列番号166、配列番号167及び配列番号168;(ah)配列番号169、配列番号170及び配列番号171;(ai)配列番号172、配列番号173及び配列番号174;(aj)配列番号175、配列番号176及び配列番号177;又は(ak)配列番号178、配列番号179及び配列番号180。いくつかの特定の実施形態では、V領域は、以下のいずれか1つに現れる配列を含む:配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70及び配列番号72。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療又は診断で使用するための、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を提供する。
【0101】
いくつかの実施形態では、本発明は、CD19発現を特徴とする疾患の治療、予防又は改善で使用するための、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を提供する。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体(又は抗体剤若しくは二重特異性抗体)を発現する免疫エフェクター細胞を提供する。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞又はナチュラルキラーT細胞)又はNK細胞である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療又は診断で使用するための、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞を提供する。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明は、CD19発現を特徴とする疾患の治療、予防又は改善で使用するための、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞を提供する。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の、ヒト抗体剤、二重特異性抗体のポリペプチド鎖若しくは二重特異性抗体、又はキメラ抗原受容体を、全体又は一部としてコードする単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、単離核酸配列はコドン最適化配列を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、単離核酸配列は、以下のいずれか1つに現れる配列であるか、又はそれを含む:配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69及び配列番号71。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の単離核酸分子を含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えベクター、発現ベクター、レンチウイルス(lent-viral)ベクター、又はレトロウイルスベクターである。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明は、ベクター若しくは核酸分子を含む、又は、本明細書に記載の抗体剤、二重特異性抗体若しくはキメラ抗原受容体を発現する、細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は哺乳類細胞から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳類リンパ球(例えば、ヒトリンパ球)である。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒト抗体剤、二重特異性抗体、キメラ抗原受容体、単離核酸分子、ベクター又は細胞を含むキットを提供する。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明は、CD19関連疾患に罹患した対象、若しくはその素因を有する対象を診断するための、又は前記対象の状態の予後予測を与えるためのキットを提供する。前記キットは試験対象から得られた試料中に存在するCD19の濃度を検出するための検出手段を含み、前記検出手段は、各々所望により誘導体化されていてもよい、本明細書に記載のヒト抗体剤の抗原結合部位、本明細書に記載の二重特異性結合剤、本明細書に記載のキメラ抗原受容体、又は本明細書に記載の免疫エフェクター細胞を含み、前記試料中のCD19の存在によって前記対象がCD19関連疾患に罹患していることが示される。
【0111】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の単離核酸分子を含むワクチンを提供する。
【0112】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒト抗体剤、二重特異性抗体又はキメラ抗原受容体を含む組成物を提供する。いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物のヒト抗体剤又は二重特異性抗体は、細胞傷害性薬剤又は細胞傷害性部分に結合されている。
【0113】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を発現するヒト抗体剤、二重特異性抗体、キメラ抗原受容体、又は免疫細胞(若しくはその集団)を含み、且つ、医薬的に許容される担体又は希釈剤をさらに含む、医薬組成物を提供する。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明は、ヒト抗体剤、二重特異性抗体又はキメラ抗原受容体(又はキメラ抗原受容体を発現する細胞)の発現を可能にする条件下において培地中で本明細書に記載の細胞を培養する工程、及び、前記培地からヒト抗体剤、二重特異性抗体又はキメラ抗原受容体(又はキメラ抗原受容体を発現する細胞)を分離する工程を含む、本明細書に記載のヒト抗体剤、二重特異性抗体又はキメラ抗原受容体(又はキメラ抗原受容体を発現する細胞)の生産方法を提供する。
【0115】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療有効量の、本明細書に記載のヒト抗体剤、二重特異性抗体、キメラ抗原受容体(若しくはキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞)、核酸分子、又はベクターを前記対象に投与する工程を含む、対象におけるCD19発現を特徴とする医学的状態の治療方法を提供する。
【0116】
いくつかの実施形態では、CD19発現を特徴とする医学的状態は、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球白血病、慢性リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫又は急性骨髄性白血病である。
【0117】
いくつかの実施形態では、CD19発現を特徴とする医学的状態は、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病又は強皮症である。
【0118】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒト抗体剤、二重特異性抗体、キメラ抗原受容体(若しくはキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞)、核酸分子又はベクターを対象に投与する工程を含む、がんの治療方法を提供する。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明は、腫瘍増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞と、本明細書に記載のヒト抗体剤を基とした第一の抗原結合部位及び免疫細胞と結合する第二の抗原結合部位から構成される、二重特異性抗体(又は本明細書に記載のヒト抗体剤、本明細書に記載のキメラ抗原受容体、又は本明細書に記載の免疫エフェクター細胞、本明細書に記載の核酸分子、又は本明細書に記載のベクター)とを接触させる工程を含み、前記接触は腫瘍細胞の殺滅が確認される(又は、二重特異性抗体が結合している免疫細胞が腫瘍細胞の増殖を阻害する)のに十分な条件及び時間で実行される、前記方法を提供する。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明は、腫瘍細胞を殺滅する方法であって、腫瘍細胞と、本明細書に記載のヒト抗体剤を基とした第一の抗原結合部位及び免疫細胞と結合する第二の抗原結合部位から構成される、二重特異性抗体(又は本明細書に記載のヒト抗体剤、本明細書に記載のキメラ抗原受容体、又は本明細書に記載の免疫エフェクター細胞、本明細書に記載の核酸分子、又は本明細書に記載のベクター)とを接触させる工程を含み、前記接触は腫瘍細胞増殖の阻害が認められる(又は、二重特異性抗体が結合している免疫細胞が腫瘍細胞の殺滅を媒介する)のに十分な条件及び時間で実行される、前記方法を提供する。
【0121】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の抗体剤(又は本明細書に記載の二重特異性抗体若しくはキメラ抗原受容体)を投与する工程、及び、前記対象におけるCD19発現細胞への前記抗体剤(又は二重特異性抗体若しくはキメラ抗原受容体)の結合を測定する工程を含む、対象におけるCD19発現を特徴とする医学的状態を診断する方法を提供する。
【0122】
医学的状態を診断する方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記対象の1又は複数の細胞の1又は複数の活性を測定する工程をさらに含む。いくつかの特定の実施形態では、1又は複数の活性には、細胞成長及び/又はアポトーシスが包含される。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明は、腫瘍増殖の阻害において使用するための、本明細書に記載のヒト抗体剤を基とした第一の抗原結合部位及び免疫細胞と結合する第二の抗原結合部位から構成される二重特異性抗体を提供する。
【0124】
いくつかの実施形態では、本発明は、腫瘍細胞の殺滅において使用するための、本明細書に記載のヒト抗体剤を基とした第一の抗原結合部位及び免疫細胞と結合する第二の抗原結合部位から構成される二重特異性抗体を提供する。
【0125】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞又はNK細胞である。
【0126】
いくつかの実施形態では、第一及び第二の抗原結合部位はscFvである。
【0127】
いくつかの実施形態では、第二の抗原結合部位はT細胞上のCD3と結合する。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明は、T細胞にCD19発現標的細胞の殺滅を指示する方法であって、1又は複数のCD19発現標的細胞と、1又は複数のT細胞、並びに/又は、本明細書に記載のヒト抗体剤の第一の抗原結合部位及びT細胞上のCD3と結合する第二の抗原結合部位を含む二重特異性抗体(若しくは本明細書に記載のヒト抗体剤、本明細書に記載のキメラ抗原受容体若しくは本明細書に記載の免疫エフェクター細胞)とを接触させる工程を含み、前記接触は二重特異性抗体が結合しているT細胞がCD19発現標的細胞の殺滅を媒介するのに十分な条件及び時間で実行される、前記方法を提供する。いくつかの特定の実施形態では、第一及び第二の抗原結合部位はscFvである。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明は、T細胞へのCD19発現標的細胞の殺滅の指示において使用するための、本明細書に記載のヒト抗体剤を基とした第一の抗原結合部位及びT細胞上のCD3と結合する第二の抗原結合部位から構成される二重特異性抗体を提供する。
【0130】
種々の実施形態において、リンカー配列は、(GS)配列であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上と等しい。
【0131】
種々の実施形態において、リンカー配列は、SRGGGGSGGGGSGGGGSLEMA(配列番号289)であるか、又はそれを含む。
【0132】
種々の実施形態において、CD19はヒトCD19である。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明は、CD19発現と関連した状態の治療又は検出のための、本明細書に記載のヒト抗体剤、二重特異性抗体又はキメラ抗原受容体(又はキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞)の使用を提供する。
【0134】
いくつかの実施形態では、本発明は、医薬用の薬物の製造における、本明細書に記載のヒト抗体剤、二重特異性抗体又はキメラ抗原受容体(又はキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞)の使用を提供する。
【0135】
いくつかの実施形態では、本発明は、診断テスト用又は診断アッセイ用の薬物の製造における、本明細書に記載のヒト抗体剤、二重特異性抗体又はキメラ抗原受容体(又はキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞)の使用を提供する。
【0136】
いくつかの実施形態では、本発明は、がん診断用又はがん治療用の薬物の製造における、本明細書に記載のヒト抗体剤、二重特異性抗体又はキメラ抗原受容体(又はキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞)の使用を提供する。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明は、CD19の発現を特徴とする医学的状態の診断用又は治療用の薬物の製造における、本明細書に記載のヒト抗体剤、二重特異性抗体又はキメラ抗原受容体(又はキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞)の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0138】
本明細書に含まれる図面は、以下の図から構成され、例示のみを目的とし、限定は意図していない。
図1図1は、代表的な、選択された抗CD19ヒト抗体剤についての、ヒトCD19に対するファージクローン結合を示している。図1Aは、代表的な、組換えヒトCD19-Fcのファージクローン結合(OD450)を示している。図1Bは、代表的な、細胞表面発現型ヒトCD19のファージクローン結合(平均蛍光強度、MFI)を示している。コントロール1:非CD19結合性ファージscFv抗体クローン;コントロール2:市販のマウス抗ヒトCD19抗体(バイオレジェンド社(BioLegend));コントロール3:二次抗体のみ。
図2図2は、代表的な、選択された抗CD19ヒト抗体剤についてのフローサイトメトリーアッセイにおける、ヒトCD19陽性Raji細胞(Raji)、CD19ノックアウトRaji細胞(Raji -CD19 k.o.)及びヒトCD19陰性Jurkat細胞(Jurkat)のファージクローン結合の平均蛍光強度(MFI)を示している。コントロール1:二次抗体のみ(マウス抗M13抗体及びPE標識抗マウス抗体を含む)
図3図3は、代表的な、実施例2に記載される選択された二重特異性抗体を示すSDS-PAGEの画像を示している。レーンの番号がゲル画像上部に示されている。レーン1:マーカー;レーン2:クローン2を使用したCD19×CD3二重特異性抗体;レーン3:クローン3を使用したCD19×CD3二重特異性抗体;レーン4:クローン4を使用したCD19×CD3二重特異性抗体;レーン5:クローン37を使用したCD19×CD3二重特異性抗体;レーン6:BL19(比較対照用の二重特異性抗体;米国特許第7,635,472号の配列番号30を参照)。
図4図4は、代表的な、経時的(X軸、秒単位)な組換えヒトCD19 ECD-Fc融合タンパク質への例示的な二重特異性抗体分子の結合(Y軸、nm単位)についての、Octetによる結合/解離曲線を示している。動態段階(垂直の点線で分割)が各センサーグラムの上に示されている。a:ベースライン;b:ビオチン化ヒトCD19-Fc(5μg/mL);c:再平衡;d:ヒトCD19-Fc(10μg/mL)への抗体結合;e:抗体解離。試験された二重特異性抗体には、ファージクローン4、5、6、7、37を基としたCD19×CD3二重特異性抗体、及びBL19(比較対照用の二重特異性抗体;米国特許第7,635,472号の配列番号30を参照)が含まれた。
図5図5Aは、代表的な、CD20(Y軸)及びCD3(X軸)で染色されたヒトPBMCのフローサイトメトリー解析、並びに、図5Bにおける二重特異性抗体の結合性解析に使用されたB細胞集団のゲートを示している。図5Bは、代表的な、クローン4、5、6及び37を基とした例示的な二重特異性抗体分子についての、種々の細胞株のがん細胞の殺滅(単位は%特異的細胞溶解、Y軸)を示している。
図6図6Aは、代表的な、選択された親抗体ファージクローンの親和性成熟によって作製された例示的なバリアント抗体ファージクローンの細胞結合(フローサイトメトリーアッセイにおけるMFIで測定)を示している。バリアントクローンはハイフン付きで示されている(すなわち、クローン5-1、クローン5-3、クローン5-4等は親クローン5から得られ;クローン6-1、クローン6-2等は親クローン6から得られた)。アステリスク:クローン5-13は、Jeko-1細胞株、Raji-CD19 k.o.細胞株又はJurkat細胞株への結合について試験されなかった。図6Bは、代表的な、それぞれの親クローンと比較された、Raji細胞への選択されたバリアント抗体ファージクローンの細胞結合を示している。バリアントクローンはハイフン付きで示されており、すなわち、クローン5-1、クローン5-3、クローン5-4等は親クローン5から得られ;クローン6-1、クローン6-2等は親クローン6から得られた。破線は、対応する二重特異性抗体の競合的結合の下での、それぞれの親クローンのバックグラウンド結合を示している。
図7図7Aは、代表的な、実施例4に記載された親和性成熟抗体ファージクローンから構築された選択された二重特異性抗体を示すSDS-PAGEの画像を示している。クローンの番号を各レーンの上部に示す。図7Bは、代表的な、親和性成熟抗CD19ヒト抗体剤から構築された選択された二重特異性抗体分子についての、種々の細胞株のがん細胞の殺滅(単位は%特異的細胞溶解、Y軸)を示している。
【0139】
図8図8は、代表的な、抗CD19ヒト抗体剤から作製された選択されたキメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)についての、種々の細胞株のがん細胞の殺滅(単位は%特異的細胞溶解、Y軸)を示している。標的細胞株(CD19)にはRaji及びJeko-1が含まれ;ネガティブコントロール細胞株(CD19)にはJurkat細胞及びRaji-CD19 k.o.細胞が含まれ;BL19は米国特許第7,635,472号の配列番号30を基とした比較対照用CARであり;FMC63はGenBank登録番号DD064902、米国特許第7,446,179号を基とした比較対照用CARであり;コントロールはモック形質導入T細胞である。
図9図9は、代表的な、選択された抗CD19 CAR-T又はコントロールT細胞(モック形質導入)を用いた、種々のがん細胞株のCAR発現(上段パネル)及びインビトロ細胞の殺滅(下段パネル)を示している。CD19細胞:Raji、CA46、Jeko-1及びDaudi;CD19細胞:Raji-CD19KO(すなわち、Raji-CD19 k.o.)、Jurkat、THP-1、HeLa、MDA-MB-231、MCF-7、SK-Hep-1及びHepG2。
図10図10は、代表的な、種々のCD19細胞株(Raji、CA46)及びCD19細胞株(Raji-K/O、すなわち、Raji-CD19 k.o.、Jurkat)と共培養した後の、モック形質導入T細胞(mock)又は抗CD19 CAR(クローン5-3を基としたCar)を形質導入されたT細胞の、サイトカイン放出を示している。
図11図11は、代表的な、抗CD19ヒト抗体剤クローン5-9を基とした例示的な抗CD19 CAR-Tによる、NSGマウスにおけるインビボ腫瘍増殖の阻害を示している。左:代表的な、曲線下面積(AUC)で表示及び分析された、担癌NSGマウスからの光子放射のカイネティクス;右:代表的な、各処置群からの3週目のRaji-luc-GFP担癌マウスの光子放射画像。
図12図12は、3T3(左)及びRaji(右)由来細胞株におけるCD19発現のFACsヒストグラムを示している。
図13図13は、代表的な、抗CD19ヒト抗体剤クローン5-13を基とした例示的な抗CD19 CAR-Tで処置されたNSGマウスにおけるRajiリンパ腫異種移植片からの腫瘍由来生物発光を示している。図13A:代表的な、リン酸緩衝食塩水(ビヒクル、n=5)、CARをコードするコンストラクト無しで形質導入されたT細胞(モック、n=6)、又は抗CD19 CAR-Tクローン5-13をコードするコンストラクトを形質導入されたT細胞(CAR-T 5-13、n=7;5×10 CART細胞/マウスで1回処置されたNSGマウスにおけるRajiリンパ腫異種移植片からの腫瘍由来生物発光の多色画像;日数は腫瘍移植後日数である;投与は5日目に行った)。グレースケール変換されたヒートマップは、マウス画像上に重ねられた暗いスポットとして現れる、腫瘍部位における総光子/秒を示している;図13B:代表的な、NSGマウスにおける、Rajiリンパ腫異種移植片の全光束(p/s)対移植後日数として表された、モック処置群及びCAR-T 5-13処置群における腫瘍増殖の定量化;C:代表的な、初回移植及び処置の7週間後に腫瘍細胞を再投与されたNSGマウス(n=3、最初の移植後35日目にマウス1匹当たり0.5×10個のRaji細胞を注射)における、全光束(p/s)対再投与(re-challenge)後日数として表された、モック処置群及びCAR-T 5-13処置群における腫瘍増殖の定量化。無処置マウス(n=2)は、コントロールとして、1×10個のモック形質導入T細胞の注射の1日後にRaji細胞を移植された。
図14図14は、代表的な、抗CD19ヒト抗体剤クローン5-13を基とした例示的な抗CD19 CAR-Tで処置されたNSGマウスにおけるNALM-6白血病異種移植片からの腫瘍由来生物発光を示している。図14A:代表的な、リン酸緩衝食塩水(ビヒクル、n=6)、CARをコードするコンストラクト無しで形質導入されたT細胞(モック、n=6)、又は抗CD19 CAR-Tクローン5-13をコードするコンストラクトを形質導入されたT細胞(CAR-T 5-13、n=6;5×10 CAR+T細胞/マウスで1回処置されたNSGマウスにおけるNALM-6白血病異種移植片からの腫瘍由来生物発光の多色画像;日数は腫瘍移植後日数である;投与は5日目に行った);図14B:代表的な、NSGマウスにおける、全光束(p/s)対NALM-6白血病異種移植片移植後日数として表された、ビヒクル処置群、モック処置群及びCAR-T 5-13処置群における腫瘍増殖の定量化。
図15図15は、代表的な、選択された抗CD19 CAR-T又はコントロールT細胞(モック形質導入)を用いた、種々のがん細胞株のCAR発現(下段パネル)及びインビトロ細胞の殺滅(上段パネル)を示している。CD19細胞:Raji、IM9及びJeko-1;CD19細胞:Raji-CD19KO(すなわち、Raji-CD19 k.o.)及びTHP-1。
【発明を実施するための形態】
【0140】
定義
【0141】
本発明の範囲は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって定められ、本明細書に記載される特定の実施形態に限定されない。当業者であれば、本開示の教示により、そのような記載された実施形態と同等であり得る、あるいは特許請求の範囲内である、様々な変更形態に気が付くであろう。
【0142】
概して、本明細書で使用される専門用語は、特に指示がない限り、本技術分野において理解されるその意味に従うものとする。ある特定の用語の明確な定義を以下に記載するが、本明細書中の特定の場合におけるこれら及び他の用語の意味は、文脈から当業者には明らかとなる。
【0143】
本発明の理解をより容易にするために、まず、ある特定の用語を以下で定義する。本明細書の全体を通して、以下の用語及び他の用語への追加の定義が記載される。
【0144】
投与
本明細書で使用される場合、用語「投与」は、対象又は系(例えば、細胞、器官、組織、生物、又は関連成分、すなわちその一連の成分)への組成物の投与を指す。投与経路が、例えば、組成物が投与されている対象又は系、組成物の性質、投与の目的等によって異なる場合があることは、当業者には理解される。例えば、ある特定の実施形態では、動物対象(例えば、ヒト)への投与は、気管支投与(気管支注入による投与を含む)、頬側投与、経腸投与、皮中(interdermal)投与、動脈内投与、皮内投与、胃内投与、肝内投与、髄内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、くも膜下腔内投与、腫瘍内投与、静脈内投与、脳室内投与、粘膜投与、 経鼻投与、経口投与、直腸内投与、皮下投与、舌下投与、局所投与、気管投与(気管内注入による投与を含む)、経皮投与、膣内投与及び/又は硝子体内投与であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、間欠的に投与するものであり得る。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間持続的に投与するもの(例えば、灌流)であり得る。
【0145】
親和性
本技術分野で知られているように、「親和性」は、特定のリガンドのそのパートナーへの結合に伴う堅固さの尺度である。親和性は様々な方法で測定可能である。いくつかの実施形態では、親和性は定量的アッセイによって測定される。そのようないくつかの実施形態では、生理的条件の模倣のために、結合パートナーの濃度がリガンド濃度以上に固定され得る。あるいは又はさらに、いくつかの実施形態では、結合パートナー濃度及び/又はリガンド濃度が変動され得る。そのようないくつかの実施形態では、親和性は類似条件(例えば、濃度)下のリファレンスと比較され得る。
【0146】
親和性成熟(又は親和性成熟抗体)
親和性成熟(又は親和性成熟抗体)とは、本明細書で使用される場合、その1又は複数のCDR内(又は、いくつかの実施形態では、フレームワーク領域内)に1又は複数の変化を有する抗体であって、それらの変化を有さない親抗体との比較で、抗原に対する抗体の親和性が向上した抗体を指す。いくつかの実施形態では、親和性成熟抗体は標的抗原に対して、ナノモル、さらにはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は本技術分野において公知の種々の方法のいずれにより作製されてもよい。Marks et al., 1992, BioTechnology 10:779-783には、V及びVドメインシャッフリングによる親和性成熟が記載されている。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム変異誘発が以下に記載されている:Barbas et al., 1994, Proc. Nat. Acad. Sci., U.S.A. 91:3809-3813; Schier et al., 1995, Gene 169: 147-155; Yelton et al., 1995. J. Immunol. 155:1994-2004; Jackson et al., 1995, J. Immunol. 154(7):3310-9;およびHawkins et al., 1992, J. Mol. Biol. 226:889-896。結合特性が向上した結合剤の選別が、Thie et al., 2009, Methods Mol. Bio. 525:309-22に記載されている。
【0147】

剤とは、本明細書で使用される場合、例えば、ポリペプチド、核酸、糖類、脂質、小分子、金属、又はこれらの組み合わせを含む、あらゆるケミカルクラスの化合物又は実体を指し得る。いくつかの実施形態では、剤は、天然に存在する、且つ/又は天然から得られるという点で、天然物であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、剤は、人為的に設計、操作、及び/若しくは生産される、且つ/又は天然に存在しないという点で、1若しくは複数の人工的な実体であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、剤は、単離された形態で利用されてもよいし、純粋な形態で利用されてもよい。いくつかの実施形態では、剤は未精製の形態で利用されてもよい。いくつかの実施形態では、有望な剤が、例えば、中に含まれる活性薬剤を同定又は特徴付けするためにスクリーニングされ得る、コレクション又はライブラリーとして得られる。本発明において利用され得る剤のいくつかの特定の実施形態には、小分子、抗体、抗体断片、アプタマー、核酸(例えば、siRNA、shRNA、DNA/RNAハイブリッド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム)、ペプチド、ペプチド模倣薬等が包含される。いくつかの実施形態では、剤は重合体であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、剤は重合体ではない、且つ/又は、いかなる重合体も実質的に含まない。いくつかの実施形態では、剤は、少なくとも1つの重合体部分を含有する。いくつかの実施形態では、剤は、重合体部分を欠いているか、又は、いかなる重合体部分も実質的に含まない。
【0148】
改善
改善(amelioration)とは、本明細書で使用される場合、ある状態の予防、低減若しくは一時的緩和、又は、対象のある状態の改善(improvement)を指す。改善(amelioration)には、疾患、傷害又は状態(例えば、放射線損傷)の、完全な回復又は完全な予防が含まれるが、それが必要というわけではない。
【0149】
アミノ酸
本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、その最も広い意味では、ポリペプチド鎖に組み入れることが可能なあらゆる化合物及び/又は物質を指す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は一般構造H2N-C(H)(R)-COOHを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は天然アミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は合成アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はd-アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はl-アミノ酸である。「標準アミノ酸」とは、天然ペプチドによく見られる20種の標準l-アミノ酸のいずれかを指す。「非標準アミノ酸」とは、合成によって作製されたか天然源から得られたかに関わらず、標準アミノ酸以外のあらゆるアミノ酸を指す。本明細書で使用される場合、「合成アミノ酸」は化学修飾アミノ酸を包含し、例えば、限定はされないが、塩、アミノ酸誘導体(アミド等)、及び/又は置換が挙げられる。ペプチド内のカルボキシ末端及び/又はアミノ末端のアミノ酸を含むアミノ酸は、活性を邪魔せずにペプチドの循環系内半減期を変化させ得る、メチル化、アミド化、アセチル化、保護基、及び/又は他の化学基との置換によって修飾することが可能である。アミノ酸は、ジスルフィド結合に参加している場合がある。アミノ酸は、1又は複数の化学成分(例えば、メチル基、酢酸基、アセチル基、リン酸基、ホルミル部分、イソプレノイド基、硫酸基、ポリエチレングリコール部分、脂質部分、炭水化物部分、ビオチン部分等)との結合等、一つ又は翻訳後修飾を含み得る。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と同義的に使用され、遊離アミノ酸及び/又はペプチドのアミノ酸残基を指し得る。遊離アミノ酸又はペプチドの残基のどちらを指しているかは、前記用語が使用されている文脈から明らかである。
【0150】
動物
動物は、本明細書で使用される場合、動物界のあらゆる構成員を指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、いずれかの性別の、あらゆる発達段階の、ヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、あらゆる発達段階の、非ヒト動物を指す。ある特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/又はブタ)である。いくつかの実施形態では、動物には、限定はされないが、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚、昆虫(insect)、及び/又は蠕虫(worm)が包含される。いくつかの実施形態では、動物は、遺伝子導入動物、遺伝子改変動物、及び/又はクローンであり得る。
【0151】
抗体
抗体は、本明細書で使用される場合、本技術分野で理解される意味を有し、特定の抗原に特異的に結合する免疫グロブリン(Ig)を指す。当業者には公知であるように、天然において産生される抗体は、典型的には、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖からなる4つのポリペプチド鎖から構成される。それぞれの重鎖及び軽鎖は、可変領域(本明細書では、それぞれHCVR又はV及びLCVR又はVと略される)及び定常領域から構成される。重鎖の定常領域は、C1ドメイン、C2ドメイン及びC3ドメイン(並びに、IgM及びIgEの場合では、所望によりC4ドメイン)を含む。軽鎖の定常領域は1個のCドメインから構成される。V領域及びV領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が挟まれた、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域を含有する。V及びVはそれぞれ、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順番で配置された、3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。免疫グロブリン分子は、あらゆる種類(例えば、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgE)、あらゆるクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)、又はあらゆるサブクラス、の免疫グロブリン分子とすることができる。
【0152】
抗体剤
本明細書で使用される場合、用語「抗体剤」は、特定の抗原に特異的に結合する剤を指す。いくつかの実施形態では、前記用語は、特異的な結合性を付与するのに十分な免疫グロブリン構造要素を有するあらゆるポリペプチドを包含する。種々の実施形態において、好適な抗体剤としては、限定はされないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体又は多重特異性抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメ単一ドメイン抗体(例えば、IgNAR又はその断片))、結合型抗体(すなわち、他のタンパク質、放射標識、細胞毒に結合又は融合した抗体)、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、一本鎖抗体、ラクダ科(cameloid)抗体、抗体断片等が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、前記用語はステープルペプチドを指す可能性がある。いくつかの実施形態では、前記用語は抗体様結合性ペプチド模倣薬(antibody-like binding peptidomimetic)を指す可能性がある。いくつかの実施形態では、前記用語は抗体様結合性足場タンパク質(antibody-like binding scaffold protein)を指す可能性がある。いくつかの実施形態では、前記用語はモノボディ(monobody)又はアドネクチン(adnectin)を指す可能性がある。多くの実施形態において、抗体剤は、相補性決定領域(CDR)として当業者が認識する1又は複数の構造要素を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、抗体剤は、参照抗体(例えば、親抗体)に存在するものと実質的に同一な少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/又は少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRとの比較で、配列が同一である、又は1~5個のアミノ酸置換を含有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと少なくとも96%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRとの比較で、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が欠失、付加、又は置換されているという点で、参照CDRと実質的に同一であるが、含まれるCDRは、参照CDRのアミノ酸配列と他の点では同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRとの比較で、含まれるCDR内の1~5個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換されているという点で、参照CDRと実質的に同一であるが、含まれるCDRは、参照CDRと他の点では同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRとの比較で、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が置換されているという点で、参照CDRと実質的に同一であるが、含まれるCDRは、参照CDRのアミノ酸配列と他の点では同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRとの比較で、含まれるCDR内の1~5個のアミノ酸が置換されているという点で、参照CDRと実質的に同一であるが、含まれるCDRは、参照CDRと他の点では同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体剤は、免疫グロブリン可変ドメインとして当業者が認識する構造要素を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、抗体剤は、免疫グロブリン結合ドメインと相同又は大部分相同である結合ドメインを有するポリペプチドタンパク質(polypeptide protein)である。いくつかの実施形態では、抗体剤は、特定の参照抗体の1つ又は複数の鎖(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)に存在する全てのCDRを含むポリペプチドであるか、又はそれを含む。
【0153】
抗体成分(Antibody component)
抗体成分とは、本明細書で使用される場合、エピトープ又は抗原に特異的に結合し、且つ、1又は複数の免疫グロブリン構造特徴を含む、ポリペプチド成分(完全ポリペプチドであってもよいし、又は、例えば本明細書に記載の融合ポリペプチド等のより大きなポリペプチドの一部であってもよい)を指す。一般的に、抗体成分は、抗体結合領域に特有の成分(例えば、所望により1又は複数のフレームワーク領域の存在下の、抗体軽鎖若しくはその可変領域若しくはその1若しくは複数の相補性決定領域(「CDR」)、又は、抗体重鎖若しくはその可変領域若しくはその1つ複数のCDR)を含むアミノ酸配列を有するあらゆるポリペプチドである。いくつかの実施形態では、抗体成分は、完全長抗体であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、抗体成分は、完全長に満たないが、少なくとも1つの結合部位(既知の抗体「可変領域」の構造を有する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの配列を含む)を含む。いくつかの実施形態では、用語「抗体成分」は、免疫グロブリン結合ドメインと相同又は大部分相同である結合ドメインを有するあらゆるタンパク質を包含する。特定の実施形態では、含まれる「抗体成分」は、免疫グロブリン結合ドメインと少なくとも99%の同一性を示す結合ドメインを有するポリペプチドを包含する。いくつかの実施形態では、含まれる「抗体成分」は、免疫グロブリン結合ドメイン、例えば参照免疫グロブリン結合ドメインと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%の同一性を示す結合ドメインを有するあらゆるポリペプチドである。含まれる「抗体成分」は、天然源に存在する抗体(又はその一部、例えば、その抗原結合性部分)のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有してもよい。抗体成分は、単一特異性であっても、二重特異性であっても、又は多重特異性であってもよい。抗体成分は、あらゆるヒトクラス(IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE)を含む、あらゆる免疫グロブリンクラスに特有の構造要素を含んでもよい。抗体の抗原結合性機能は完全長抗体の断片によって実行可能であることが示されている。そのような抗体の実施形態は、2つ以上の異なる抗原に特異的に結合する、二重特異性(bi-specific)フォーマットであってもよいし、両特異性(dual specific)フォーマットであってもよいし、又は多重特異性フォーマットであってもよい。抗体の用語「抗原結合性部分」に包含される結合断片の例としては、(i)Vドメイン、Vドメイン、C1ドメイン及びCドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋で連結された2個のFab断片を含む二価断片であるF(ab’)断片;(iii)Vドメイン及びC1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体のシングルアームのVドメイン及びVドメインからなるFv断片、(v)単一可変ドメインを含むdAb断片(Ward et al, 1989, Nature 341:544-546);並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン(Vドメイン及びVドメイン)は別々の遺伝子にコードされているが、組換え法を用いて、V領域及びV領域が対となって一価の分子を形成している単一タンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al., 1988, Science 242:423-426;およびHuston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879-5883を参照)としての作製を可能にする合成リンカーによって、連結可能である。いくつかの実施形態では、「抗体成分」は、本明細書に記載されるように、そのような一本鎖抗体であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、「抗体成分」は、ダイアボディであるか、又はそれを含む。ダイアボディは、Vドメイン及びVドメインを1本鎖ポリペプチド上で発現させ、ただし、同一鎖上のこの2つのドメイン間での対合を可能とするには短過ぎるリンカーを使用することで、これらのドメインと別の鎖の相補的ドメインとを強制的に対合させ、2つの抗原結合部位をつくり出した、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger, P., et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6444-6448; Poljak, R. J., et al., 1994, Structure 2:1121-1123を参照)。このような抗体結合部分は本技術分野において公知である(Kontermann and Dubel eds., Antibody Engineering, 2001, Springer-Verlag. New York. 790 pp. ISBN 3-540-41354-5)。いくつかの実施形態では、抗体成分は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する、一対の直列型Fvセグメント(V-C1-V-C1)を含む、一本鎖「直鎖抗体」であるか、又はそれを含む(Zapata et al., 1995, Protein Eng. 8(10):1057-1062;及び米国特許第5,641,870号)。いくつかの実施形態では、抗体成分は、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体に特有の構造要素を有し得る。一般的に、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力(capacity)を有するマウス、ラット又はウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの実施形態では、抗体成分は、ヒト抗体に特有の構造要素を有し得る。いくつかの実施形態では、抗体成分は、1又は複数の追加のポリペプチド又はポリペプチド断片(例えば、シグナル伝達成分、膜貫通型成分等)をさらに含むキメラ分子に含まれ得る。
【0154】
抗体断片
本明細書で使用される場合、「抗体断片」には、例えば抗体の抗原結合性領域又は可変領域等の、インタクトな抗体の一部が包含される。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;トリアボディ;テトラボディ;直鎖抗体;一本鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成された多重特異性抗体に含まれるCDR含有部分が挙げられる。用語「抗体断片」が、いかなる特定の作製様式も暗示せず、それに限定されないことは、当業者に理解される。抗体断片は、インタクトな抗体の切断、化学合成、組換え産生等を含むがこれらに限定はされない、あらゆる適切な方法論の使用を通じて生産され得る。
【0155】
抗体ポリペプチド
本明細書で使用される場合、用語「抗体ポリペプチド(antibody polypeptide)」又は「抗体」、又は「その抗原結合性断片」は、同義的に使用されている場合があり、エピトープに結合することが可能なポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、抗体ポリペプチドは完全長抗体であり、いくつかの実施形態では、完全長に満たないが少なくとも1つの結合部位(抗体「可変領域」の構造を有する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの配列を含む)を含む。いくつかの実施形態では、用語「抗体ポリペプチド」は、免疫グロブリン結合ドメインと相同又は大部分相同である結合ドメインを有するあらゆるタンパク質を包含する。特定の実施形態では、含まれる「抗体ポリペプチド」は、免疫グロブリン結合ドメインと少なくとも99%の同一性を示す結合ドメインを有するポリペプチドを包含する。いくつかの実施形態では、「抗体ポリペプチド」は、免疫グロブリン結合ドメイン、例えば参照免疫グロブリン結合ドメインと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の同一性を示す結合ドメインを有するあらゆるポリペプチドである。含まれる「抗体ポリペプチド」は、天然源に存在する抗体のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有してもよい。本発明における抗体ポリペプチドは、例えば、天然源若しくは抗体ライブラリーからの単離、宿主系内での、若しくは宿主系による組換え産生、化学合成等、又はこれらの組み合わせを含む、利用可能なあらゆる手段によって作製され得る。抗体ポリペプチドはモノクローナルであってもポリクローナルであってもよい。抗体ポリペプチドは、あらゆるヒトクラス(IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE)を含む、あらゆる免疫グロブリンクラスの構成要素を含んでもよい。ある特定の実施形態では、抗体はIgG免疫グロブリンクラスの構成要素であり得る。本明細書で使用される場合、用語「抗体ポリペプチド」又は「抗体の特徴的部分」は、同義的に使用され、目的のエピトープへの結合能を有する抗体のあらゆる誘導体を指す。ある特定の実施形態では、「抗体ポリペプチド」は、完全長抗体の特異的結合能の、少なくとも1つの重要な部分を保持する抗体断片である。抗体断片の例としては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、及びFd断片が挙げられる。あるいは又はさらに、抗体断片は、例えばジスルフィド結合によって互いに連結されている複数の鎖を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、抗体ポリペプチドはヒト抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体ポリペプチドはヒト化抗体であり得る。包含されるヒト化抗体ポリペプチドは、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又は抗体ポリペプチド(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)又は他の抗原結合性抗体部分配列等)であり得る。一般的に、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット又はウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0156】
抗原結合性断片(Antigen-binding fragment)
用語「抗原結合性断片」は、本明細書で使用される場合、抗原への結合能を保持する、抗体の1又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合性機能はインタクトな抗体の断片によって実行可能であることが示されている。抗体の用語「抗原結合性断片」に包含される結合断片の例としては、(i)Vドメイン、Vドメイン、Cドメイン及びC1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋で連結された2個のFab断片を含む二価断片であるF(ab’)断片;(iii)Vドメイン及びC1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体のシングルアームのVドメイン及びVHドメインからなるFv断片、(v)VドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);(vi)追加配列(リンカー、フレームワーク領域等)を含む又は含まない、単離された相補性決定領域(CDR)、例えば、V CDR3、並びに、(vii)追加配列(リンカー、フレームワーク領域等)を含む又は含まない、2~6個の単離CDRの組み合わせが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン(VLドメイン及びVHドメイン)は別々の遺伝子にコードされているが、組換え法を用いて、VL領域及びVH領域が対合して一価の分子を形成している単一ポリペプチド鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;及びHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照)としての作製を可能にする合成リンカーによって、連結可能である。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合性断片」という用語に包含されることが意図される。さらに、抗原結合性断片には、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合された結合ドメインポリペプチド(重鎖可変領域、軽鎖可変領域、又はリンカーペプチドを介して軽鎖可変領域に融合された重鎖可変領域等)、(ii)ヒンジ領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び、(iii)CH2定常領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH3定常領域、を含む、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質が包含される。前記ヒンジ領域は、二量体化を阻止する目的で、1又は複数のシステイン残基のセリン残基との置換により、修飾されていてもよい。そのような結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質については、米国特許出願公開第2003/0118592A1号及び米国特許出願公開第2003/0133939A1号にさらなる開示がある。抗体断片は、当業者に公知の従来技術を用いて得られ、インタクトな抗体と同様に有効性についてスクリーニングされる。さらに、抗原結合性断片は、二価の一本鎖可変断片(di-scFv、bi-scFv)又は、あるいは、標準的な分子生物学的手段によって操作可能な、いわゆるダイアボディも包含する。
【0157】
生物活性(Biological activity)
本明細書で使用される場合、生物活性とは、目的の剤若しくは実体によって達成される、観察可能な生物学的効果又は結果を指す。例えば、いくつかの実施形態では、特異的結合相互作用が生物活性である。いくつかの実施形態では、生物学的経路又は生物学的事象の調節(例えば、誘導、増強、又は阻害)が生物活性である。いくつかの実施形態では、生物活性の存在又は程度が、目的の生物学的経路又は生物学的事象によって産生された直接的又は間接的な産物の検出を通じて評価される。
【0158】
二重特異性抗体(Bi-specific antibody)
本明細書で使用される場合、二重特異性抗体とは、結合部分の少なくとも一方、典型的には両方が、抗体成分であるか、又はそれを含む、二重特異性結合剤を指す。種々様々な二重特異性抗体の構造が本技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、抗体成分であるか、又はそれを含む、二重特異性抗体内の各結合部分は、V領域及び/又はV領域を含み;いくつかのそのような実施形態では、V領域及び/又はV領域は特定のモノクローナル抗体に存在するV領域及び/又はV領域である。二重特異性抗体が2個の抗体成分結合部分を含有するいくつかの実施形態では、各々は、異なるモノクローナル抗体に由来するV領域及び/又はV領域を含む。
【0159】
二重特異性結合剤(Bi-specific binding agent)
二重特異性結合剤とは、本明細書で使用される場合、異なる標的と各々結合する2個の別々の結合部分を有するポリペプチド剤を指す。いくつかの実施形態では、二重特異性結合剤は単一ポリペプチドであり;いくつかの実施形態では、二重特異性結合剤は複数のペプチドであるか、又はそれを含み、いくつかのそのような実施形態では、前記複数のペプチドは、例えば架橋結合によって、互いに共有結合している場合がある。いくつかの実施形態では、二重特異性結合剤の2個の結合部分は、同じ標的(例えば、抗原)の異なる部位(例えば、エピトープ)を認識し;いくつかの実施形態では、二重特異性結合剤の2個の結合部分は、異なる標的を認識する。いくつかの実施形態では、二重特異性結合剤は、構造が異なる2つの標的に同時に結合することが可能である。
【0160】
担体
担体とは、本明細書で使用される場合、組成物と共に投与される、希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。いくつかの例示的な実施形態では、担体には、例えば、水及び、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油等の、石油由来、動物由来、植物由来又は合成由来の油を包含する油等の、無菌の液体が包含され得る。いくつかの実施形態では、担体は、1又は複数の固体成分であるか、又はそれを含む。
【0161】
CDR
CDRとは、本明細書で使用される場合、抗体可変領域内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の各可変領域には3つのCDRが存在し、可変領域の各々においてCDR1、CDR2及びCDR3と称される。「一連のCDR」又は「CDRセット」とは、抗原と結合可能な単一の可変領域、又は抗原と結合可能な同起源の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のCDRのいずれかに生じる、3個又は6個のCDR群を指す。CDRの境界は系に応じて定義が異なっており、その中のいくつかは本技術分野において公知である(例えば、Kabat、Chothia、IMGT等)。
【0162】
キメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor:CAR)
単鎖可変領域フラグメント(scFv)を包含する本発明の抗体剤は、キメラ抗原受容体の調製に使用され得るが、その調製及び使用は本技術分野において一般に知られている。キメラ抗原受容体(CAR)は、典型的には、免疫細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)シグナル伝達ドメインに連結された、scFvの抗原結合性ドメイン、又は他の抗体剤を含有する、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はハイブリッドポリペプチドである。CARの特徴としては、モノクローナル抗体の抗原結合特性を活用して、MHC拘束的(TCR模倣抗体の場合)又は非MHC拘束的(T細胞表面タンパク質に対する抗体の場合)に、選択された標的に対する特異性及び反応性を免疫細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)に再指示する能力が挙げられる。非MHC拘束性抗原認識が、CARを発現している免疫細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)に抗原プロセシングとは無関係の抗原認識能を与えることで、腫瘍エスケープの主要機構が迂回される。
【0163】
キメラ抗原受容体(CAR)療法(又は養子免疫細胞療法)
キメラ抗原受容体(CAR)療法(又は養子免疫細胞療法)とは、本明細書で使用される場合、例えば養子免疫細胞療法(adoptive cell therapy)を含む、治療的処置のための、キメラ抗原受容体の使用を指す。養子免疫細胞療法は、典型的には、免疫細胞(例えば、NK細胞又はT細胞)の単離及び生体外増殖及び/又は操作を行うことと、その後に、例えばがん治療のために、患者にこれらの細胞を投与することと、を含む治療的アプローチである。投与される細胞は自己細胞であっても同種細胞であってもよい。細胞は、例えば、全て本技術分野において公知の技術である、RNA及びDNAトランスフェクション、ウイルスによる形質導入、エレクトロポレーションの使用による、公知の方法のいずれか1つにおいて、キメラ抗原受容体を発現するように操作され得る。
【0164】
同等の(comparable)
同等の(comparable)とは、本明細書で使用される場合、2つ以上の剤、実体、状況、一連の条件等が、互いに同一でなくともよいが、互いの比較が可能であり、その結果、観察された差異又は類似に基づいて結論が合理的に引き出され得るほど、十分に類似していることを指す。いくつかの実施形態では、同等の一連の条件、状況、個体、又は集団は、複数の実質的に同一な特徴及び1つ又は少数の異なる特徴によって特徴づけられる。あらゆる所与の状況において、2つ以上のそのような剤、実体、状況、一連の条件等が同等と見なされるために、どの程度の同一性が必要とされているかは、文脈によって当業者に理解される。例えば、異なる一連の状況、個体、又は集団の下で、又はそれを用いて、得られた結果又は観察された現象における差異が、異なる特徴における差異によって生じたものである、又はそれを示すものであるという、合理的な結論の根拠となるほどの、十分な数及び種類の実質的に同一な特徴によって特徴付けられた場合に、一連の状況、個体、又は集団が互いに同等であることは、当業者に理解される。
【0165】
コントロール
コントロールとは、本明細書で使用される場合、結果を比較する際の基準となる、本技術分野において理解される意味の「コントロール」を指す。典型的には、コントロールは、変項に関しての結論を出すために、そのような変項を分離することにより、実験の完全性を増強するために使用される。いくつかの実施形態では、コントロールは、比較対照を与えるために、試験反応又は試験分析と同時に実行される反応又は分析である。本明細書で使用される場合、「コントロール」は「コントロール抗体」を指し得る。「コントロール抗体」は、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体、多重特異性抗体、又は本明細書に記載の二重特異性抗体、本明細書に記載の異なる抗体、抗体断片又は抗体成分、又は親抗体であり得る。1つの実験には、「試験」(すなわち、試験対象の変項)が適用される。第二の実験、「コントロール」では、前記試験対象の変項が適用されない。いくつかの実施形態では、コントロールはヒストリカルコントロール(すなわち、以前に行われた試験若しくは分析のコントロール、又は既知の量若しくは結果)である。いくつかの実施形態では、コントロールは、印刷された、又は保存された記録であるか、又はそれを含む。コントロールはポジティブコントロール又はネガティブコントロールであり得る。
【0166】
対応する(Corresponding to)
本明細書で使用される場合、対応する(Corresponding to)とは、目的のポリペプチド中のアミノ酸残基の位置/同一性を示す。簡素化のため、ポリペプチド中の残基は、参照関連ポリペプチドに基づいて規範的番号付けシステムを用いてしばしば示され、その結果、例えば、190位の残基「に対応する」アミノ酸は、実際には特定のアミノ酸鎖中の190番目のアミノ酸である必要はなく、むしろ、参照ポリペプチドの190位に存在する残基と対応していることは当業者には理解され、「対応する」アミノ酸を特定する方法は当業者に容易に理解される。
【0167】
検出体/検出剤
検出体/検出剤は、本明細書で使用される場合、検出可能なあらゆる要素、分子、官能基、化合物、断片又は部分を指す。いくつかの実施形態では、検出体は、単独で提供又は利用される。いくつかの実施形態では、検出体は、別の剤と組み合わせて(例えば、連結されて)提供及び/又は利用される。検出体の例としては、限定はされないが、種々のリガンド、放射性核種(例えば、H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu、89Zr等)、蛍光色素(特定の例示的な蛍光色素については下記を参照)、化学発光剤(例えば、アクリジニウムエステル(acridinum ester)、安定化ジオキセタン等)、生物発光剤、スペクトル的に分解可能な(spectrally resolvable)無機蛍光性半導体ナノ結晶(すなわち、量子ドット)、金属ナノ粒子(例えば、金、銀、銅、白金等)ナノクラスター、常磁性金属イオン、酵素(酵素の具体例については下記を参照)、比色標識(colorimetric label)(例えば、色素、コロイド金等)、ビオチン、ジオキシゲニン(dioxigenin)、ハプテン、及び抗血清又はモノクローナル抗体が利用可能なタンパク質が挙げられる。
【0168】
エフェクター機能
エフェクター機能とは、本明細書で使用される場合、抗体Fc領域とFc受容体又はリガンドとの相互作用から生じる生化学的事象を指す。エフェクター機能には、限定はされないが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシス(ADCP)、及び補体媒介性細胞傷害(CMC)が包含される。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、抗原の結合後に作動する機能、抗原結合とは無関係に作動する機能、又はその両方である。
【0169】
エフェクター細胞
エフェクター細胞とは、本明細書で使用される場合、1又は複数のエフェクター機能を媒介する免疫系の細胞を指す。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞としては、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、大顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、Tリンパ球、Bリンパ球のうちの1又は複数が包含され得るが、これらに限定されなくてもよく、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びサルを含むがこれらに限定されない、あらゆる生物に由来し得る。
【0170】
操作された(engineered)
本明細書で使用される場合、操作された(engineered)とは、概して、人為的に操作された(manipulated)態様を指す。例えば、いくつかの実施形態では、天然においてその順序で連結されていない2つ以上の配列が、操作された(engineered)ポリヌクレオチドにおいては互いに直接的に連結しているように人為的に操作されている(manipulated)場合、ポリヌクレオチドは「操作された(engineered)」と見なされ得る。いくつかの特定のそのような実施形態では、操作されたポリヌクレオチドは、天然においては、第一のコード配列とは作動的に結合しているが、第二のコード配列とは作動的に結合せずに存在している、第二のコード配列と作動的に結合しているように人為的に連結された、制御配列を含み得る。あるいは又はさらに、いくつかの実施形態では、天然においては互いに連結されていないポリペプチドエレメント又はドメインを各々コードする第一及び第二の核酸配列が、単一の操作されたポリヌクレオチドにおいて互いに連結され得る。同等に、いくつかの実施形態では、細胞又は生物は、その遺伝情報が変化するように操作されている(manipulated)(例えば、以前は存在しなかった新たな遺伝物質が導入されている、又は以前は存在した遺伝物質が変化若しくは除去されている)場合、「操作された(engineered)」と見なされ得る。慣習であり、当業者には理解されることであるが、実際の操作が前の実体に対して行われたものであったとしても、操作されたポリヌクレオチド又は細胞の子孫は「操作された」と通常見なされる。さらに、当業者には理解されることであるが、本明細書に記載の「操作(engineering)」を達成し得る、種々の方法論が利用可能である。例えば、いくつかの実施形態では、「操作」は、解析若しくは比較を実行するように、又は、配列、変化等を解析、推奨、及び/若しくは選択するようにプログラムされているコンピュータシステムの使用を通じた、選択又は設計(例えば、核酸配列、ポリペプチド配列、細胞、組織、及び/又は生物の選択又は設計)を含み得る。あるいは又はさらに、いくつかの実施形態では、「操作」は、インビトロ化学合成法、及び/又は、例えば、核酸増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を介した) ハイブリダイゼーション、変異、形質転換、トランスフェクション等の組換え核酸技術、及び/又は、種々の制御交配法(controlled mating methodology)の使用を含み得る。当業者には理解されることであるが、種々の確立されたそのような手法(例えば、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション等)のための手法)は、本技術分野において周知であり、本明細書の全体を通して引用及び/又は考察される種々の一般的な参考文献及びより具体的な参考文献に記載されている。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)を参照されたい。
【0171】
エピトープ
エピトープには、本明細書で使用される場合、免疫グロブリン(例えば、抗体又は受容体)の結合成分によって特異的に認識されるあらゆる部分が包含される。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗原上の複数の化学的原子又は化学基から構成される。いくつかの実施形態では、そのような化学的原子又は化学基は、抗原が関連する立体構造をとっている場合、表面に露出されている。いくつかの実施形態では、そのような化学的原子又は化学基は、抗原がそのような高次構造をとっている場合、空間的に物理的に互いに近接している。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかのそのような化学的原子又は化学基は、抗原が別の高次構造をとった場合(例えば、直線化された場合)、物理的に互いに隔てられている。
【0172】
賦形剤
賦形剤とは、本明細書で使用される場合、例えば所望の稠度又は安定化効果を与える、又はそれに寄与する、医薬組成物に含まれる場合がある非治療的な剤を指す。好適な医薬品賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。
【0173】
Fcリガンド
Fcリガンド(Fc ligand)とは、本明細書で使用される場合、抗体のFc領域に結合してFc-リガンド複合体(Fc-ligand complex)を形成する、あらゆる生物由来の分子、好ましくはポリペプチド、を指す。Fcリガンドとしては、限定はされないが、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16A)、FcγRIIIB(CD16B)、FcγRI(CD64)、FcεRII(CD23)、FcRn、Clq、C3、ブドウ球菌プロテインA、連鎖球菌プロテインG、及びウイルス性FcγRが挙げられる。Fcリガンドには、Fcと結合する未発見の分子も包含され得る。
【0174】
フレームワーク又はフレームワーク領域
フレームワーク又はフレームワーク領域とは、本明細書で使用される場合、CDRを抜いた可変領域の配列を指す。CDR配列は様々な系によって決定され得るため、同様にフレームワーク配列も、対応して様々な解釈を受ける。6個のCDRによって、重鎖上及び軽鎖上のフレームワーク領域が、各鎖上で4つの小領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)に分割され、CDR1はFR1とFR2との間に位置し、CDR2はFR2とFR3との間に位置し、CDR3はFR3とFR4との間に位置する。特定の小領域をFR1、FR2、FR3又はFR4と指定しない、別の呼び方としての、フレームワーク領域は、単一の天然免疫グロブリン鎖の可変領域内のFRの組み合わせを表す。本明細書で使用される場合、FR(a FR)は、これら4つの小領域のうちの1つを表し、例えば、FR1は可変領域のアミノ末端に最も近く且つCDR1の5’側の第一のフレームワーク領域を表し、FR(FRs)はフレームワーク領域を構成するこれらの小領域のうちの2つ以上を表す。
【0175】
宿主細胞
宿主細胞とは、本明細書で使用される場合、外来DNA(組換えDNA又は別のDNA)を導入された細胞を指す。当業者であれば、本開示を読み取る際に、係る用語が、特定の対象細胞を指すだけでなく、そのような細胞の子孫も指すと理解するだろう。突然変異又は環境の影響によってある特定の改変が後の世代において生じ得るため、そのような子孫は実際には親細胞と同一でない場合があるが、本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲内に尚も包含される。いくつかの実施形態では、宿主細胞には、外来DNA(例えば、組換え核酸配列)の発現に好適な、あらゆる界の生命から選択される原核細胞及び真核細胞が含まれる。例示的な細胞としては、原核生物及び真核生物の細胞(単細胞又は多細胞)、細菌細胞(例えば、大腸菌(E.coli)、バチルス属種(Bacillus spp.)、ストレプトマイセス属種(Streptomyces spp.)等の菌株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、出芽酵母(S. cerevisiae)、分裂酵母(S. pombe)、メタノール資化酵母(P. pastoris)、メチロトローフ酵母(P. methanolica)等)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)等)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、又は、例えばハイブリドーマ若しくはクアドローマ等の細胞融合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、宿主細胞はヒト細胞、サル細胞、類人猿細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、又はマウス細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核細胞であり、以下の細胞から選択される:CHO(例えば、CHO Kl、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293EBNA、MSR293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC5、Colo205、HB8065、HL-60、(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(上皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT060562、Sertoli細胞、BRL3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、及び前記細胞由来の細胞株。いくつかの実施形態では、宿主細胞は1又は複数のウイルス遺伝子を含み、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)がある。
【0176】
ヒト抗体
ヒト抗体には、本明細書で使用される場合、ヒト免疫グロブリン配列から作製(又は構築)された可変領域及び定常領域を有する抗体が包含されることが意図される。いくつかの実施形態では、抗体(又は抗体成分)は、それらのアミノ酸配列が、例えば1又は複数のCDR内に、具体的にはCDR3内に、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされない残基又は要素を含んでいても(例えば、インビトロにおけるランダム変異誘発若しくは部位特異的変異誘発によって、又はインビボにおける体細胞突然変異によって(最初に)導入されている場合がある、配列多様性を含んでいても)、「ヒト」抗体(又はヒト抗体成分)と見なされ得る。
【0177】
ヒト化(humanized)
本技術分野で知られているように、用語「ヒト化」は、一般には、非ヒト種(例えば、マウス)で産生された参照抗体由来のV領域配列及びV領域配列を含むが、より「ヒト様」にする、すなわちヒト生殖細胞系列可変配列により似せることを目的とした参照抗体に対する配列内の改変も含む、アミノ酸配列を有する抗体(又は抗体成分)を指して用いられる。いくつかの実施形態では、「ヒト化」抗体(又は抗体成分)は、目的抗原に免疫特異的(immunospecifically)に結合し、且つ、ヒト抗体のフレームワーク(FR)領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するFR領域、及び、非ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するCDRを有する、抗体である。ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー免疫グロブリン)のものに一致し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)、FabC、Fv)の実質的に全てを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖、及び重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含有する。前記抗体は重鎖定常領域のC1領域、ヒンジ領域、C2領域、C3領域、及び、所望により、C4領域も含み得る。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体はヒト化V領域のみを含有する。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体はヒト化V領域のみを含有する。いくつかの特定の実施形態では、ヒト化抗体はヒト化V領域及びヒト化V領域を含有する。
【0178】
親水性
本明細書で使用される場合、用語「親水性」及び/又は「極性」とは、水と混ざる、又は水に容易に溶解する傾向を指す。
【0179】
疎水性
本明細書で使用される場合、用語「疎水性」及び/又は「無極性」とは、水をはじく、水と混ざらない、又は水に容易に溶解し得ない傾向を指す。
【0180】
改善、増加又は減少
本明細書で使用される場合、改善、増加若しくは減少、又はその文法的同等物は、本明細書に記載の治療開始前の同一個体における測定値、又は本明細書に記載の治療のない場合のコントロール個体(又は複数のコントロール個体)における測定値等の、ベースライン測定値に対しての値を表す。「コントロール個体」は、治療を受けている個体と同じ形態の疾患又は傷害を患う個体である。
【0181】
インビトロ
インビトロとは、本明細書で使用される場合、多細胞生物内ではなく、人工環境、例えば、試験管内又は反応器内、細胞培養液中等で起こる事象を指す。
【0182】
インビボ
インビボとは、本明細書で使用される場合、ヒト及び非ヒト動物等の多細胞生物内で起こる事象を指す。細胞に基づく系との関連においては、前記用語は、生細胞内で起こる事象を指して用いられ得る(例えば、インビトロ系とは対照的)。
【0183】
単離された(isolated)
単離された(isolated)とは、本明細書で使用される場合、(1)最初に生産された(天然及び/若しくは実験環境にかかわらず)ときに付随した成分のうちの少なくともいくつかから分離された、並びに/又は、(2)人工的に設計、生産、作製、及び/若しくは製造された、物質及び/又は実体を指す。単離された物質及び/又は実体は、元は付随していた、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%超のその他の成分と分離されたものであり得る。いくつかの実施形態では、単離された剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%超の純度を有する。本明細書で使用される場合、物質は、他の成分を実質的に含んでいないならば、「純粋」とする。いくつかの実施形態では、当業者には理解されることであるが、物質は、例えば1又は複数の担体又は賦形剤(例えば、緩衝液、溶媒、水等)等のある特定の他の成分と組み合わされた後も、「単離されている」、又は、さらには「純粋である」と見なされ得る。そのような実施形態では、前記物質の単離パーセント又は純度パーセントはそのような担体又は賦形剤を含まずに算出される。一例に過ぎないが、いくつかの実施形態では、天然に生じるポリペプチド又はポリヌクレオチド等の生体高分子は、以下の場合に「単離されている」と見なされる:a)その派生の起点又は源に基づいて、天然において未変性状態のそれに付随する成分のうちのいくらか又は全てを伴わない場合;b)天然においてそれを産生する種由来の同一種の他のポリペプチド又は核酸を実質的に含まない場合;c)天然においてそれを産生する種のものではない細胞若しくは他の発現系によって発現される場合、又は、それとは異なり、該細胞若しくは該発現系由来の成分を伴う場合。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、化学合成された、又は、天然においてそれを産生する細胞系と異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドであると見なされる。あるいは又はさらに、いくつかの実施形態では、1又は複数の精製法にかけられたポリペプチドは、a)天然において付随する他の成分、及び/又は、b)最初に産生されたときに付随した他の成分、から分離されている限り、「単離された」ポリペプチドであると見なされ得る。
【0184】

とは、本明細書で使用される場合、結合剤(例えば、抗体剤又はその結合成分)の、そのパートナー(例えば、抗体剤又はその結合成分が結合するエピトープ)との複合体からの解離定数を指す。
【0185】
off
offとは、本明細書で使用される場合、結合剤(例えば、抗体剤又はその結合成分)の、そのパートナー(例えば、抗体剤又はその結合成分が結合するエピトープ)との複合体からの解離速度定数(off rate constant for dissociation)を指す。
【0186】
on
onとは、本明細書で使用される場合、結合剤(例えば、抗体剤又はその結合成分)の、そのパートナー(例えば、抗体剤又はその結合成分が結合するエピトープ)との複合体からの結合速度定数(on rate constant for association)を指す。
【0187】
リンカー
リンカーとは、本明細書で使用される場合、複数の構成要素からなるポリペプチドの、異なる構成要素を互いに連結させる部分を指して用いられる。例えば、2つ以上の機能ドメイン又は組織ドメイン(organizational domain)を含む構造を有するポリペプチドが、係るドメインの間に、それらを互いに繋げる一続きのアミノ酸をしばしば含むことは、当業者に理解される。いくつかの実施形態では、リンカー要素を含むポリペプチドは一般形態S1-L-S2の全体構造を有し、ここでS1及びS2は、同じであっても異なっていてもよく、リンカーを介して互いに結合している2つのドメインを表す。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100又はそれ以上のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、堅くて曲がらない三次元構造をとらない傾向にあり、むしろ当該ポリペプチドに可動性を与えるという特徴を有する。本技術分野において公知の、ポリペプチドを操作する場合(例えば、融合ポリペプチド)に適切に使用できる種々様々なリンカー要素(例えば、Holliger, P., et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6444-6448; Poljak, R. J. et al., 1994, Structure 2:1121-1123を参照)。
【0188】
多価結合剤(又は多重特異性結合剤)
多価結合剤(又は多重特異性結合剤)とは、本明細書で使用される場合、同一分子上又は異なる分子上に存在し得る2つ以上の抗原に結合可能な結合剤を指す。本明細書に記載の多価結合剤は、いくつかの実施形態では、2つ以上の抗原結合部位を有するように操作されており、通常は自然発生するタンパク質ではない。本明細書に記載の多価結合剤は、2つ以上の関連し合う標的又は関連がない標的と結合することが可能な結合剤を指す。多価結合剤は、単一の抗体成分の複数のコピーから構成されていてもよいし、あるいは、異なる抗体成分の複数のコピーから構成されていてもよい。そのような結合剤は、2つ以上の抗原に結合することが可能であり、四価又は多価の結合剤とされる。多価結合剤は、例えば、免疫調節剤、毒素又はRNase等の治療薬をさらに含んでいてもよい。本明細書に記載の多価結合剤は、いくつかの実施形態では、構造が異なる少なくとも2つの標的、例えば、2つの異なる抗原、同一抗原上の2つの異なるエピトープ、又はハプテン及び/若しくは抗原若しくはエピトープに、同時に結合することが可能である。多くの実施形態において、本発明の多価結合剤は、本明細書に記載の多価結合剤の特徴を有するように操作されたタンパク質である。本発明の多価結合剤は、単一特異性(1つの抗原と結合可能)であっても、又は多重特異性(2つ以上の抗原と結合可能)であってもよく、2つの重鎖ポリペプチド及び2つの軽鎖ポリペプチドから構成され得る。各々の結合部位は、いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインから構成され、1つの抗原結合部位あたり抗原結合に関与する合計6個のCDRが含まれる。
【0189】
核酸
核酸とは、本明細書で使用される場合、その最も広い意味では、オリゴヌクレオチド鎖に組み入れられている、又は組み入れることが可能な、あらゆる化合物及び/又は物質を指す。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合を介してオリゴヌクレオチド鎖に組み入れられている、又は組み入れることが可能な、あらゆる化合物及び/又は物質を指す。文脈から明らかとなるが、いくつかの実施形態では、「核酸」は個々の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及び/又はヌクレオシド)を指し;いくつかの実施形態では、「核酸」は個々の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を指す。いくつかの実施形態では、「核酸」はRNAであるか、又はそれを含み;いくつかの実施形態では、「核酸」はDNAであるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1又は複数の天然核酸残基であるか、それらを含むか、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、1又は複数の核酸アナログであるか、それらを含むか、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸アナログは、ホスホジエステル骨格を利用していないという点において核酸と異なる。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、本技術分野において公知であり、且つ、骨格内にホスホジエステル結合ではなくペプチド結合を有する、1又は複数の「ペプチド核酸」であるか、それらを含むか、又はそれらからなり、これも本発明の範囲内と見なされる。あるいは又はさらに、いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合ではなく、1又は複数のホスホロチオエート結合及び/又は5’-N-ホスホラミダイト結合を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1又は複数の天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)であるか、それらを含むか、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、1又は複数のヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、介在塩基(intercalated base)、及びこれらの組み合わせ)であるか、それらを含むか、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、天然核酸内の糖との比較した場合に、1又は複数の修飾された糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNA又はタンパク質等の機能的な遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1又は複数のイントロンを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、天然源からの単離、相補的な鋳型に基づく重合による酵素的合成(インビボ又はインビトロ)、組換え細胞又は組換え系における複製、及び化学合成のうちの1又は複数によって調製される。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、少なくとも190、少なくとも20、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、少なくとも400、少なくとも425、少なくとも450、少なくとも475、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも3000、少なくとも3500、少なくとも4000、少なくとも4500、少なくとも5000又はそれ以上の残基長である。いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖であり;いくつかの実施形態では、核酸は二本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、ポリペプチドをコードする、又はポリペプチドをコードする配列の相補体である、少なくとも1つのエレメントを含むヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は酵素活性を有する。
【0190】
機能的に連結した
機能的に連結したとは、本明細書で使用される場合、記載された成分同士が、それらの意図された様式で、機能することを互いに許容し合う関係にある、並列を指す。コード配列に「機能的に連結した」制御配列は、該制御配列に適合する条件下で該コード配列の発現が達成されるように、連結されている。「機能的に連結した」配列には、目的遺伝子と隣接した発現制御配列及び前記目的遺伝子を制御するトランス作動性すなわち遠位作動性の発現制御配列の両方が包含される。用語「発現制御配列」は、本明細書で使用される場合、連結しているコード配列の発現及びプロセシングの実行に欠かせないポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列には、適切な転写開始配列、転写終結配列、プロモーター配列及びエンハンサー配列;スプライシングシグナル及びポリアデニル化シグナル等の効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質内mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;並びに、所望の場合、タンパク質分泌を増強する配列が包含される。そのような制御配列の性質は宿主生物によって異なる。例えば、原核生物では、そのような制御配列としては、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列が通常含まれ、一方、真核生物では、そのような制御配列としてはプロモーター及び転写終結配列が通常含まれる。用語「制御配列」は、発現及びプロセシングのために存在することが必須とされる成分を含むことが意図され、存在することが有利とされる追加成分、例えば、リーダー配列及び融合パートナー配列を含む可能性もある。
【0191】
ペプチド
用語「ペプチド」とは、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合によって互いに連結した2つ以上のアミノ酸を指す。特定の実施形態では、「ペプチド」は、約100アミノ酸未満、約50アミノ酸未満、20アミノ酸未満、又は10アミノ酸未満の長さを有するポリペプチドを指す。
【0192】
生理的条件
生理的条件は、本明細書で使用される場合、本技術分野において理解されるその意味を有し、細胞又は生物が生存及び/又は繁殖する条件を指す。いくつかの実施形態では、前記用語は、生物系又は細胞系において自然に発生し得る外部環境又は内部環境の条件を指す。いくつかの実施形態では、生理的条件は、ヒト又は非ヒト動物の身体内に存在する条件、特に、手術部位に、及び/又は手術部位内に存在する条件である。生理的条件には、典型的には、例えば、20~40℃の温度範囲、気圧1、pH6~8、グルコース濃度1~20mM、大気中レベルのの酸素濃度、及び地上で受ける重力が含まれる。いくつかの実施形態では、実験室中の条件が生理的条件に操作及び/又は維持される。いくつかの実施形態では、生理的条件は生物内で見られるものである。
【0193】
ポリペプチド
ポリペプチドとは、本明細書で使用される場合、あらゆるアミノ酸重合鎖を指す。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然において生じるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然においては生じないアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、人工的に設計及び/又は生産されたという点において操作されたアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、又はその両方を含み得るか、又はそれからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸のみ又は非天然アミノ酸のみを含み得るか、又はそれからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、D-アミノ酸、L-アミノ酸、又はその両方を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、D-アミノ酸のみを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、L-アミノ酸のみを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、例えば、1若しくは複数のアミノ酸側鎖を修飾する、又はそれに結合した、1又は複数の側基又は他の修飾を、ポリペプチドのN末端において、ポリペプチドのC末端において、又はそのあらゆる組み合わせにおいて、含み得る。いくつかの実施形態では、そのような側基又は修飾は、アセチル化、アミド化、脂質化、メチル化、ペグ化等(これらの組み合わせも含む)からなる群より選択され得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、環式であり得る、且つ/又は、環式部分を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、環式ではなく、且つ/又は、いかなる環式部分も含まない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは直鎖状である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ステープルペプチドであり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、用語「ポリペプチド」は、参照ポリペプチドの名称、活性、又は構造に付記される場合があり;そのような場合、前記用語は、関連する活性又は構造を共有し、故に同じポリペプチドクラス又はポリペプチドファミリーの構成員と見なすことができる、ポリペプチドを言及するために、本明細書では使用される。そのようなクラスの各々について、アミノ酸配列及び/又は機能が既知である、該クラスに含まれる例示的なポリペプチドが、本明細書によって提供され、及び/又は、当業者によって知られており、いくつかの実施形態では、そのような例示的なポリペプチドは、該ポリペプチドクラスについての参照ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドクラス又はポリペプチドファミリーの構成員は、該クラスの参照ポリペプチドと(いくつかの実施形態では、該クラス内の全てのポリペプチドと)、有意な配列相同性又は配列同一性を示し、共通の配列モチーフ(例えば、特有の配列エレメント)を共有し、且つ/又は、共通の活性(いくつかの実施形態では、同等レベル又は指定範囲内の共通の活性)を共有する。例えば、いくつかの実施形態では、一構成員のポリペプチドは、参照ポリペプチドと、少なくとも約30~40%の、しばしば約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%若しくはそれ以上を超える、全体的な配列相同性又は配列同一性の程度を示し、且つ/又は、しばしば90%、さらには95%、96%、97%、98%、若しくは99%を超える非常に高い配列同一性を示す、少なくとも1つの領域(すなわち、いくつかの実施形態では、特有の配列エレメントであり得る、若しくはそれを含み得る、保存領域)を含む。そのような保存領域は通常、3~4個以上、且つしばしば20個以下、又はそれ以上のアミノ酸を含み;いくつかの実施形態では、保存領域は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15又はそれ以上の連続アミノ酸からなる少なくとも1配列を含む。いくつかの実施形態では、有用なポリペプチドは、親ポリペプチドの断片を含み得るか、又はそれからなり得る。いくつかの実施形態では、有用なポリペプチドは、目的ポリペプチド内で存在する空間配置とは互いに異なる空間配置で同一の親ポリペプチド内に各々存在する複数の断片(例えば、該親ポリペプチド内では直接連結されている断片は、目的ポリペプチド内では空間的に分離されている場合があり(逆もまた同じ)、及び/又は、断片は、親ポリぺプチド内での順番と異なる順番で、目的ポリペプチド内で存在している場合がある)を含み得るか、又はそれからなり得ることから、目的ポリペプチドはその親ポリペプチドの類縁体である。
【0194】
予防する(prevent)又は予防(prevention)
本明細書で使用される、予防する(prevent)又は予防(prevention)とは、疾患、障害、及び/又は状態の発生との関連において使用されている場合、該疾患、障害及び/若しくは状態に罹るリスクを低減すること、並びに/又は、該疾患、障害若しくは状態の1若しくは複数の特徴若しくは症状の発症を遅延させること、を指す。予防は、疾患、障害又は状態の発症が所定の期間遅延された場合、完全予防と見なされ得る。
【0195】
組換え体(Recombinant)
組換え体(Recombinant)とは、本明細書で使用される場合、以下を指すことが意図される:組換え手段によって設計、操作、調製、発現、産生若しくは単離されたポリペプチド(例えば、本明細書に記載の抗体若しくは抗体成分、若しくは多重特異性結合剤)、例えば、宿主細胞内にトランスフェクションされた組換え発現ベクターを用いて発現されたポリペプチド、組換えヒトポリペプチドコンビナトリアルライブラリーから単離されたポリペプチド(Hoogenboom H.R., 1997, TIB Tech. 15:62-70; Azzazy H., and Highsmith W.E., 2002, Clin. Biochem. 35:425-45; Gavilondo J.V., and Larrick J.W., 2002, BioTechniques 29:128-45; Hoogenboom H., and Chames P., 2000, Immunol. Today 21:371-8)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor, L.D., et al., 1992, Nucl. Acids Res. 20:6287-95; Kellermann S-A., and Green L.L., 2002, Curr. Opin. Biotech. 13:593-7; Little, M. et al., 2000, Immunol. Today 21:364-70; Murphy, A.J. et al., 2014, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111(14):5153-8を参照)、又は、選択された配列エレメントを互いにスプライスすることを含むあらゆる他の手段により調製、発現、産生若しくは単離されたポリペプチド。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列エレメントのうちの1又は複数は、天然に存在している。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列エレメントのうちの1又は複数は、コンピュータで設計される。いくつかの実施形態では、1又は複数のそのような選択された配列エレメントは、例えば天然又は合成の供給源由来の、既知の配列エレメントの変異誘発(例えば、インビボ又はインビトロ)から得られる。例えば、いくつかの実施形態では、組換え抗体ポリペプチドは、目的の供給源生物(例えば、ヒト、マウス等)の生殖細胞系列に存在する配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え抗体が、変異誘発(例えば、インビトロ又はインビボでの変異誘発、例えば遺伝子導入動物におけるインビボ変異誘発)から生じたアミノ酸配列を有することで、組換え抗体のV領域及びV領域のアミノ酸配列が、生殖系列V配列及び生殖系列V配列に由来し、それと関連している一方で、インビボにおける生殖系列抗体レパートリー内には天然に存在しない可能性がある、配列となる。
【0196】
参照
参照とは、本明細書で使用される場合、それに対して本明細書に記載の比較が行われる、スタンダード、コントロール、又は他の適切な参照を示す。例えば、いくつかの実施形態では、参照は、それに対して目的の剤、動物、個体、集団、試料、配列、一連の工程、一連の条件、又は値が比較される、スタンダード又はコントロールとしての剤、動物、個体、集団、試料、配列、一連の工程、一連の条件、又は値である。いくつかの実施形態では、参照は、目的の試験又は測定と実質的に同時に、試験及び/又は測定される。いくつかの実施形態では、参照は、ヒストリカルな(historical)参照であり、所望により有形媒体に含まれている。典型的には、当業者には理解されることであるが、参照は、目的の評価で利用された条件と同等の条件下で測定又は特徴付けされる。
【0197】
特異的結合
特異的結合とは、本明細書で使用される場合、結合が起こる環境内の可能なパートナーを区別する結合剤の能力を指す。他の標的候補が存在する場合にある特定の標的と相互作用する結合剤は、相互作用する標的に「特異的に結合する」と言われる。いくつかの実施形態では、特異的結合は、結合剤とそのパートナーとの間の結合を検出する、又はその程度を測定することによって評価され;いくつかの実施形態では、特異的結合は、結合剤-パートナー複合体の解離を検出する、又はその程度を測定することによって評価され;いくつかの実施形態では、特異的結合は、結合剤による、そのパートナーと別の実体との間の別の相互作用に対する競合を検出する、又はその能力を測定することによって評価される。いくつかの実施形態では、特異的結合は、一連の濃度に亘ってそのような検出又は測定を行うことにより評価される。いくつかの実施形態では、特異的結合は、同系標的と非同系標的との間の結合親和性の差を測定することにより評価される。例えば、結合剤は、非同系標的に対する結合親和性の約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍又はそれ以上の、同系標的に対する結合親和性を有し得る。
【0198】
特異性
本技術分野で知られているように、「特異性」は、特定のリガンドがその結合パートナーを他の可能な結合パートナーから区別する能力の尺度である。
【0199】
対象
対象とは、本明細書で使用される場合、ヒトを含むあらゆる哺乳動物を意味する。本発明のある特定の実施形態では、対象は成人、青年又は乳児である。いくつかの実施形態では、用語「個体」又は「患者」が使用されており、これらは「対象」と代替可能であると意図される。また、胎内での医薬組成物の投与及び/又は治療法の実施も、本発明によって企図されている。
【0200】
実質的
本明細書で使用される場合、用語「実質的に」とは、目的の特徴又は特性の完全又はほぼ完全な範囲又は程度を示している、質的状態を指す。生物学的現象及び化学的現象が、例えあるにしても、めったに完結しないこと、及び/又は、めったに完全性へと進行しない、すなわち、めったに絶対的な結果を達成しない、すなわち絶対的な結果を回避することは、生物学の当業者に理解される。用語「実質的に」は、従って、多くの生物学的現象及び化学的現象が内包する潜在的な完全性の欠如を捕える目的で、本明細書では使用されている。
【0201】
実質的配列相同性
本明細書で使用される場合、句「実質的相同性」とは、アミノ酸配列間又は核酸配列間の比較を指す。当業者には理解されるように、2つの配列は、対応する位置に相同の残基を含有するならば、「実質的に相同」と一般に見なされる。相同残基は同一残基であり得る。あるいは、相同残基は、構造的及び/又は機能的特徴が適当に類似している、非同一残基であり得る。例えば、当業者にはよく知られていることであるが、ある特定のアミノ酸は、典型的には、「疎水性」アミノ酸若しくは「親水性」アミノ酸に分類され、及び/又は、「極性」側鎖若しくは「無極性」側鎖を有するものと分類される。あるアミノ酸の同じ種類の別のアミノ酸への置換は、しばしば、「相同」置換と見なされ得る。典型的なアミノ酸分類は以下の通りに要約される。
【0202】
【0203】
【0204】
本技術分野において周知であるように、アミノ酸又は核酸配列は、ヌクレオチド配列用のBLASTN、及びBLASTP、gapped BLAST、並びにアミノ酸配列用のPSI-BLAST等の市販のコンピュータプログラムで利用可能なアルゴリズムを含む、種々のアルゴリズムのうちのいずれかを用いて比較され得る。そのようなプログラムの例示が、Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol., 215(3):403-410; Altschul et al., 1996, Meth. Enzymology 266:460-480; Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; Baxevanis et al, Bioinformatics: A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins, Wiley, 1998;およびMisener, et al, (eds.), Bioinformatics Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology, Vol. 132), Humana Press, 1999に記載されている。相同配列の同定に加えて、上記のプログラムは、典型的には、相同性の度合いの指標を与える。いくつかの実施形態では、2つの配列は、それらの対応する残基の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又はそれ以上が関連する一続きの残基に亘って相同である場合、実質的に相同であると見なされる。いくつかの実施形態では、前記関連する一続きは完全配列である。いくつかの実施形態では、前記関連する一続きは、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、少なくとも400、少なくとも425、少なくとも450、少なくとも475、少なくとも500又はそれ以上の残基である。
【0205】
実質的同一性
本明細書で使用される場合、句「実質的同一性」とは、アミノ酸配列間又は核酸配列間の比較を指す。当業者には理解されるように、2つの配列は、対応する位置に同一の残基を含有するならば、「実質的に同一」と一般に見なされる。本技術分野において周知であるように、アミノ酸又は核酸配列は、ヌクレオチド配列用のBLASTN、及びBLASTP、gapped BLAST、並びにアミノ酸配列用のPSI-BLAST等の市販のコンピュータプログラムで利用可能なアルゴリズムを含む、種々のアルゴリズムのうちのいずれかを用いて比較され得る。そのようなプログラムの例示が、Altschul, et al, 1990, J. Mol. Biol., 215(3):403-410, 1990; Altschul et al, 1996, Methods in Enzymology 266:460-480; Altschul et al, 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; Baxevanis et al, Bioinformatics: A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins, Wiley, 1998;およびMisener, et al, (eds.), Bioinformatics Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology, Vol. 132), Humana Press, 1999に記載されている。同一配列の同定に加えて、上記のプログラムは、典型的には、同一性の度合いの指標を与える。いくつかの実施形態では、2つの配列は、それらの対応する残基の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又はそれ以上が関連する一続きの残基に亘って同一である場合、実質的に同一であると見なされる。いくつかの実施形態では、前記関連する一続きは完全配列である。いくつかの実施形態では、前記関連する一続きは、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、少なくとも400、少なくとも425、少なくとも450、少なくとも475、少なくとも500又はそれ以上の残基である。CDRとの関連においては、「実質的同一性」とは、典型的には、参照CDRのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有するCDRを指す。
【0206】
表面プラズモン共鳴
表面プラズモン共鳴とは、本明細書で使用される場合、例えば、BIAcoreシステム(ファルマシア・バイオセンサーAB社(Pharmacia Biosensor AB)、ウプサラ、スウェーデン及びピスカタウェイ、ニュージャージー州)等の使用による、バイオセンサーマトリックス内でのタンパク質濃度における変化の検出を介した、特異的結合相互作用のリアルタイム解析を可能にする光学現象を指す。さらなる説明については、Jonsson, U. et al., 1993, Ann. Biol. Clin. 51:19-26; Jonsson, U. et al., 1991, Biotechniques 11:620-627; Johnsson, B. et al., 1995, J. Mol. Recognit. 8:125-131;およびJohnnson, B. et al., 1991, Anal. Biochem. 198:268-277を参照されたい。
【0207】
治療薬
治療薬とは、本明細書で使用される場合、通常は、生物に投与された場合に所望の薬理効果を及ぼすあらゆる剤を指す。いくつかの実施形態では、剤は、適切な集団の全体に亘って統計的に有意な効果を示す場合、治療薬であると見なされる。いくつかの実施形態では、前記適切な集団は、モデル生物の集団であり得る。いくつかの実施形態では、適切な集団は、ある特定の年齢群、性別、遺伝的背景、先在臨床状態等の様々な基準によって定められ得る。いくつかの実施形態では、治療薬は、疾患、障害、及び/又は状態の1又は複数の症状又は特徴を、軽減する、改善する、緩和する、抑制する、予防する、その発症を遅延する、その重症度を低減する、及び/又はその発生率を減少させるのに使用することができる物質である。いくつかの実施形態では、「治療薬」は、ヒトへの投与用に販売可能となるのに先立ち、政府機関によって承認された、又は承認が必要とされる、剤である。いくつかの実施形態では、「治療薬」は、ヒトへの投与のために処方箋が必要とされる剤である。
【0208】
治療有効量
治療有効量とは、本明細書で使用される場合、所望の効果を与えるために投与される量を意味する。いくつかの実施形態では、前記用語は、疾患、障害、及び/又は状態に罹患した、又は罹患し易い集団に、治療的投与計画に従って投与された場合に、前記疾患、障害、及び/又は状態を治療するのに十分な量を指す。いくつかの実施形態では、治療有効量は、前記疾患、障害、及び/若しくは状態の発生率及び/若しくは重症度を減少させ、且つ/又は、前記疾患、障害、及び/若しくは状態の1若しくは複数の症状の発症を遅延させる量である。用語「治療有効量」が、特定の個体における好結果の治療の達成を実際には必要としないことは、当業者に理解される。むしろ、治療有効量は、そのような治療を必要としている患者に投与された場合に、有意な数の対象において特定の所望の薬理反応をもたらす量であり得る。いくつかの実施形態では、治療有効量とは、1又は複数の特定組織(例えば、疾患、障害又は状態の影響を受ける組織)又は体液(例えば、血液、唾液、血清、汗、涙、尿等)において測定される量を指し得る。当業者には理解されることであるが、いくつかの実施形態では、治療有効量の特定の剤又は療法は、単回量で処方及び/又は投与され得る。いくつかの実施形態では、治療効果のある剤は、例えば投与計画の一部として、複数回量で処方及び/又は投与され得る。
【0209】
形質転換
形質転換とは、本明細書で使用される場合、それにより外来DNAが宿主細胞に導入される、あらゆるプロセスを指す。形質転換は、本技術分野において周知の種々の方法を用いて、天然条件下又は人工条件下で起こり得る。形質転換は、外来核酸配列を原核宿主細胞又は真核宿主細胞に挿入するための、あらゆる公知の方法に依存し得る。いくつかの実施形態では、形質転換される宿主細胞に基づいて特定の形質転換法が選択され、形質転換法としては、限定はされないが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、交配、リポフェクションが包含され得る。いくつかの実施形態において、「形質転換された」細胞は、挿入されたDNAが、自己複製プラスミドとして、又は宿主染色体の一部として複製可能であるという点で、安定に形質転換されたものである。いくつかの実施形態では、形質転換細胞は、限定された期間、導入された核酸を一過性に発現する。
【0210】
処置
本明細書で使用される場合、用語「処置」(また、「処置する」又は「処置すること」)は、その最も広い意味において、特定の疾患、障害、及び/又は状態の1又は複数の症状、特徴、及び/又は原因を、部分的又は完全に、軽減する、改善する、緩和する、抑制する、その発症を遅延する、その重症度を低減する、及び/又は、その発生率を減少させる物質(例えば、提供される組成物)の、あらゆる投与を指す。いくつかの実施形態では、そのような処置は、関連する疾患、障害及び/若しくは状態の兆候を示していない対象、並びに/又は、該疾患、障害、及び/若しくは状態の初期兆候のみを示している対象に投与され得る。あるいは又はさらに、いくつかの実施形態では、処置は、関連する疾患、障害及び/又は状態の1又は複数の確立された兆候を示している対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、処置は、前記関連する疾患、障害、及び/又は状態に罹患していると診断された対象の処置であり得る。いくつかの実施形態では、処置は、前記関連する疾患、障害、及び/又は状態の発症リスクの増加と統計的に相関している1又は複数の感受性因子を有することが知られている対象の処置であり得る。
【0211】
バリアント
本明細書で使用される場合、用語「バリアント」とは、参照実体との有意な構造的同一性を示すが、該参照実体と比較した場合に、1又は複数の化学部分の有無又はレベルにおいて該参照実体と構造的に異なる、実体を指す。多くの実施形態では、バリアントはその参照実体と機能的にも異なっている。一般的に、特定の実体が参照実体の「バリアント」であると適切に見なされるかどうかは、該参照実体との構造的同一性の程度に基づく。当業者には理解されることであるが、あらゆる生物学的又は化学的な参照実体が、ある特定の特徴的な構造要素を有している。バリアントは、定義によれば、1又は複数のそのような特徴的な構造要素を共有する、異なる化学的実体である。少数の単なる例示として、ポリペプチドは、線形空間若しくは三次元空間において互いに対して指定の位置を有する複数のアミノ酸を含み、且つ/若しくは、特定の生物学的機能に寄与する、特徴的な配列エレメントを有し得る;核酸は、線形空間若しくは三次元空間において互いに対して指定の位置を有する複数のヌクレオチド残基を含む、特徴的な配列エレメントを有し得る。例えば、バリアントポリペプチドは、アミノ酸配列における1若しくは複数の差異、及び/又は、ポリペプチド骨格に共有結合した化学部分(例えば、炭水化物、脂質等)における1若しくは複数の差異、の結果として、参照ポリペプチドと異なり得る。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドと、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも99%の配列同一性を全体として示す。あるいは又はさらに、いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、少なくとも1つの特徴的配列エレメントを参照ポリペプチドと共有していない。いくつかの実施形態では、参照ポリペプチドは1又は複数の生物活性を有する。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドの生物活性のうちの1又は複数を共有する。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドの生物活性のうちの1又は複数を欠いている。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドと比較して、レベルが低下した1又は複数の生物活性を示す。多くの実施形態では、目的ポリペプチドが、特定の位置における少数の配列変異を除いて、親ポリペプチドのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する場合、目的ポリペプチドは、親ポリペプチド又は参照ポリペプチドの「バリアント」であると見なされる。典型的には、親と比較すると、バリアント内の残基のうちの20%未満、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満が置換されている。いくつかの実施形態では、バリアントは、親と比べて10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個の置換残基を有する。しばしば、バリアントは、非常に少数(例えば、5未満、4未満、3未満、2未満、又は1)の置換された機能的残基(すなわち、特定の生物活性に関与する残基)を有する。さらに、バリアントは、親と比較すると、典型的には、5以下、4以下、3以下、2以下、又は1以下の挿入又は欠失を有し、しばしば、挿入も欠失も有していない。さらに、いかなる付加又は欠失も、典型的には約25未満、約20未満、約19未満、約18未満、約17未満、約16未満、約15未満、約14未満、約13未満、約10未満、約9未満、約8未満、約7未満、約6未満の残基であり、一般には、約5未満、約4未満、約3未満、又は約2未満の残基である。いくつかの実施形態では、親ポリペプチド又は参照ポリペプチドは、天然に存在するものである。当業者には理解されることであるが、特定の目的ポリペプチドの複数のバリアントが天然には通常存在し得る(特に目的ポリペプチドが感染体ポリペプチドである場合)。
【0212】
ベクター
ベクターとは、本明細書で使用される場合、それに連結された別の核酸を運搬可能な核酸分子を指す。1種のベクターとして「プラスミド」があり、プラスミドとは、その中に追加のDNAセグメントが連結され得る、環状の二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターとしてウイルスベクターがあり、ウイルスゲノムの中に追加のDNAセグメントが連結され得る。ある特定のベクターは導入された宿主細胞内で自律増殖が可能である(例えば、細菌性複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソーム性の哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性の哺乳類ベクター)は、宿主細胞内への導入後に宿主細胞のゲノムに組み入れられることで、宿主ゲノムと共に複製され得る。さらに、ある特定のベクターは、機能的に連結した遺伝子の発現を指示することが可能である。そのようなベクターは「発現ベクター」と呼ばれる。
【0213】
野生型
本明細書で使用される場合、用語「野生型」は、本技術分野において理解されるその意味を有し、「正常な」(変異した、異型の、患部の、変化した、等とは対照的)状態又は状況において、天然に存在するような構造及び/又は活性を有する実体を指す。野生型遺伝子及び野生型ポリペプチドがしばしば複数の異なる形態(例えば、対立遺伝子)で存在することは、当業者に理解される。
【0214】
実施形態の詳細
本発明は、部分的には、天然型(すなわち、細胞表面上に発現された形態)のCD19への優先的結合性を有する、CD19、具体的にはヒトCD19、に対して高い特異性を有するヒト抗体剤(例えば、ヒトモノクローナル抗体)を作製できるという認識に基づく。さらに、そのようなヒト抗体剤は、概して、組換え型又は固定化型のCD19(例えば、プレートに結合したCD19)に優先的結合する抗体剤と比べて、より良好なインビボ特性を伴う。また本発明は、無処理のレパートリーから開発されたヒト抗体剤が、いくつかの実施形態では、臨床的に意義のあるエピトープに対して特異性を有するヒト抗体剤を提供しない場合があるという認識に基づく。単なる一例であるが、本開示により、特に、本明細書に記載の抗CD19ヒト抗体剤、具体的には、自己免疫疾患対象より得られた配列から作製された抗体ライブラリーを用いて開発されたヒト抗体剤が、細胞表面上に発現されたCD19に対する結合性は示すが、一方、融合タンパク質との関連において組換え型ヒトCD19に対しては結合性を示さなかったことが示される。すなわち、提供されたヒト抗体剤は、いくつかの実施形態では、治療上の関連性がほとんどない可能性がある非天然型のヒトCD19ではなく、天然ヒトCD19に対する高い特異性によって、特徴付けられ得る。
【0215】
本発明により、特に、いくつかのがん細胞株及び初代ヒトB細胞の表面上に発現されたヒトCD19と発現する多重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)の産生の成功が示される。具体的には、本発明により、特に、CD19特異的にいくつかのがん細胞株と結合し、且つ、高効率の標的細胞溶解を媒介する、多重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)が提供される。そのような多重特異性結合剤は、細胞毒性(cytoxicity)アッセイにおける高い特異性及び効力によって特徴づけられる。
【0216】
また本発明により、提供されたヒト抗体剤を用いたキメラ抗原受容体(CAR)の作製と、その後の形質導入T細胞における発現、それによる操作されたCAR-T細胞(CAR-T)の作製、の成功も示される。具体的には、本開示により、種々のがん細胞株の表面上に発現されたヒトCD19を特異的に認識するCAR-Tが提供される。本明細書に記載されるように、提供された抗CD19 CAR-Tは、いくつかの実施形態においては、他の抗CD19抗体成分から作製されたCAR-Tに優って効率的に標的細胞を殺滅する。さらに、本明細書に記載されるように、提供された抗CD19 CAR-Tは、ヒトリンパ腫異種移植片を移植された動物から、腫瘍を効果的に根絶する。すなわち、本開示は、少なくともいくつかの実施形態において、がん診断用及びがん治療用の天然ヒトCD19に対する高い特異性を有するヒト抗体剤の開発を包含し、ヒト用の多重特異性結合剤及びCAR発現免疫細胞の作製のための抗体成分の供給源を提供する。
【0217】
CD19
表面抗原分類(Cluster of Differentiation)19、又はCD19は、B細胞、具体的には、形質細胞を除く広範なB細胞系統、の上に発現される膜貫通型糖タンパク質である。CD19は多くの悪性B細胞上にも発現される。CD19は、抗原-BCR相互作用の刺激閾値の制御において、B細胞表面上の補助受容体として機能する。CD19はまた、CD21、CD81及びCD82等の細胞表面上の他の分子とも相互作用する。CD19の活性化(すなわち、細胞質ドメインのリン酸化)は、種々のキナーゼ(例えば、Srcファミリー)を含む種々のシグナル伝達経路を惹起し、種々の免疫細胞プロセスをもたらす。CD19は、様々ながん及び自己免疫疾患と結び付けられている。実際に、CD19は、がん治療用の抗体ベースの治療薬を開発するための標的として鋭意研究されたが(例えば、Hammer, 2012, mAbs 4:5, 571-577; Reichert, J.M. and E. Dhimolea, 2012, Drug Discovery Today 17(17/18):954-963; Suresh, T. et al., 2014, J. Hematol. 7:58を参照)、そのような抗体剤の大部分は、ヒト化型及び/又はキメラ型のマウス抗体である。理想的には、ヒト患者の治療用には完全ヒト抗体剤が好ましい。ヒトCD19のアミノ酸配列を以下に記載する(シグナル配列は下線部)。
【0218】
【0219】
抗CD19抗体剤
抗CD19抗体は、公知であり、ヒトにおけるがん及び自己免疫障害を治療するための治療薬としての将来性を示してきたが、その多くがマウス起源である。この関連においてはヒト抗体剤の使用が特に好ましく、というのも、ヒト抗体剤の使用が、投与された抗体に対する免疫応答の可能性を減らすためである。したがって、本発明は、ヒトCD19に対して高い特異性を示し、且つ、いくつかの実施形態では、既存のヒト化型及び/又はキメラ型の非ヒト由来(例えば、マウス)抗体に付随する制限を克服する、ヒトB細胞ライブラリーから開発された完全ヒト抗体剤(例えば、ヒトモノクローナル抗体及びその断片)を提供する。
【0220】
本発明は、抗CD19ヒト抗体剤(例えば、モノクローナル抗体)、並びに、いくつかの実施形態では、ヒトCD19と結合する第一の抗原結合部位及び免疫細胞(例えば、T細胞)と結合する第二の抗原結合部位を有する多重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)の投与に基づく、CD19が関連した疾患、障害及び状態、並びに関連悪性腫瘍を治療するための方法及び組成物を提供する。
【0221】
本発明は特に、ヒトCD19と結合する、特にその天然型(すなわち、細胞表面発現型)に結合する、ある特定のヒト抗体の配列、及びまた、ある特定の親和性成熟抗体の配列を提供する。例えば、本明細書では特に、本明細書に記載の配列エレメントを含有するポリペプチドを含む、ヒト抗体剤(例えば、完全長抗体、その断片、一本鎖抗体、二重特異性抗体、又は本明細書に記載の若しくは本技術分野において公知の他の抗体剤フォーマット)が例示される。
【0222】
ヒトCD19と結合する例示的なヒト抗体剤(例えば、scFv)を表1に示す(軽鎖可変領域配列(DNA及びアミノ酸)は太字で示し、重鎖可変領域配列(DNA及びアミノ酸)はイタリック体で示し、リンカー配列は下線で示す)。
【0223】
【表1】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
種々の実施形態において、本発明による抗CD19ヒト抗体剤は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域から構成され、前記重鎖可変領域は表1に示される重鎖可変領域と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列を有する。
【0242】
種々の実施形態において、本発明による抗CD19ヒト抗体剤は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域から構成され、前記重鎖可変領域は表1に示される重鎖可変領域と同一又は実質的に同一の配列を有する。
【0243】
種々の実施形態において、本発明による抗CD19ヒト抗体剤は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域から構成され、前記軽鎖可変領域は表1に示される軽鎖可変領域と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列を有する。
【0244】
種々の実施形態において、本発明による抗CD19ヒト抗体剤は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域から構成され、前記軽鎖可変領域は表1に示される軽鎖可変領域と同一又は実質的に同一の配列を有する。
【0245】
種々の実施形態において、本発明による抗CD19ヒト抗体剤は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域から構成され、前記重鎖可変領域は表1に示される重鎖可変領域と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列を有し、前記軽鎖可変領域は表1に示される軽鎖可変領域と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列を有する。
【0246】
種々の実施形態において、本発明による抗CD19ヒト抗体剤は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域から構成され、前記重鎖可変領域は表1に示される重鎖可変領域と同一又は実質的に同一の配列を有し、前記軽鎖可変領域は表1に示される軽鎖可変領域と同一又は実質的に同一の配列を有する。
【0247】
種々の実施形態において、本発明による抗CD19ヒト抗体剤は、表1に示される重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列から選択される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域から構成される。
【0248】
種々の実施形態において、本発明による抗CD19ヒト抗体剤は、表1に示されるscFvと少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列を含む単鎖可変領域フラグメント(scFv)であるか、又はそれを含む。
【0249】
種々の実施形態において、本発明による抗CD19ヒト抗体剤は、表1に示されるscFvと同一又は実質的に同一の配列を含む単鎖可変領域フラグメント(scFv)であるか、又はそれを含む。
【0250】
種々の実施形態において、本発明による抗CD19ヒト抗体剤は、表1から選択される単鎖可変領域フラグメント(scFv)であるか、又はそれを含む。
【0251】
抗体及び/若しくはその特徴的部分を包含する、提供される抗体剤、又はそれらをコードする核酸は、利用可能ないかなる手段で産生されてもよい。例えば、抗体産生のためのプロトコルは、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, (1988)に記載されている。抗体(例えば、モノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体)を作製するための技術は、本技術分野において周知である。広範な動物種が抗血清の作製に使用可能であることは理解されることであり、例えば、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット又はヤギが挙げられる。当業者であれば知っているように、動物の選択は処置の容易さ、費用又は必要な血清量に基づいて決定され得る。抗体剤が、目的の免疫グロブリンの重鎖配列及び軽鎖配列を遺伝子導入された哺乳動物又は植物(例えば、ヒト免疫グロブリンの重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子を遺伝子導入されたトランスジェニックげっ歯類)の作製を通じて、遺伝子導入によっても産生可能であることは理解されよう。哺乳類における遺伝子導入による産生に関連して、抗体は、ヤギ、雌ウシ、又は他の哺乳類の乳において産生させ、それから回収することが可能である(例えば、米国特許第5,827,690号、同第5,756,687号、同第5,750,172号、及び同第5,741,957号;これらの全体が参照によって本明細書に援用される)。典型的には、抗体はマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ラクダ、ラマ、サメ、又は他の適切な宿主において作製可能である。あるいは、抗体はIgY分子を産生するニワトリにおいて作製される場合がある(Schade et al., 1996, ALTEX 13(5):80-85)。いくつかの実施形態では、本発明に好適な抗体は、類人猿抗体である。例えば、ヒヒにおいて治療上有効な抗体を産生させるための一般的手法が、例えば、国際特許出願第1991/11465号及びLosman et al., 1990, Int. J. Cancer 46:310に見出され得る。いくつかの実施形態では、ハイブリドーマ法(Milstein and Cuello, 1983, Nature 305(5934):537-40)を用いてモノクローナル抗体が作製され得る。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は組換え法(例えば、米国特許第4,166,452号)によっても作製され得る。
【0252】
B細胞不死化によるモノクローナル抗体作製に付随する困難の多くは、ファージディスプレイを用いた、大腸菌(E.coli)(又は酵母)における抗体断片の操作と発現を行うことにより、克服することができる。高親和性モノクローナル抗体が確実に回収するために、コンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーは通常、大サイズのレパートリーを含んでいる必要がある。典型的な戦略には、免疫化マウスのリンパ球又は脾臓細胞から得られたmRNAが利用され、逆転写酵素によりcDNAが合成される。重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子をPCRにより別々に増幅し、ファージクローニングベクター内に連結する。2つの異なるライブラリーが作製され、1つは重鎖遺伝子を含有し、1つは軽鎖遺伝子を含有する。これらのライブラリーは無処理ライブラリーとすることもできるし、あるいは、重鎖CDR3が合成された、全てのアミノ酸(システイン以外)が等しく重鎖CDR3領域内のあらゆる所与の位置に存在している可能性が高い、半合成ライブラリーとすることもできる。ファージDNAが各ライブラリーから単離され、重鎖配列と軽鎖配列とが連結及びパッケージ化されて、コンビナトリアルライブラリーが形成される。各々のファージは重鎖cDNA及び軽鎖cDNAのランダムペアを含有しており、大腸菌(E.coli)感染後、感染細胞内でのこれらの抗体鎖の発現を指示する。目的の抗原(例えば、CD19)を認識する抗体を同定するため、ファージライブラリーを蒔き、プラーク内に存在する抗体分子をフィルターに移す。フィルターを放射標識抗原と一緒にインキュベートし、その後洗浄により過剰な未結合リガンドを除去する。オートラジオグラフ上の放射性スポットにより、目的抗原と結合する抗体を含有するプラークを特定する。あるいは、目的の抗原(例えば、CD19)を認識する抗体の同定は、固相、例えばビーズ又は哺乳類細胞に結合された目的抗原にファージを繰り返し結合させた後、未結合のファージを除去し、特異的に結合したファージを溶出することにより、達成され得る。そのような実施形態では、抗原をまず、例えばストレプトアビジン結合型Dynabeads M-280への固定化のためにビオチン化する。ファージライブラリーをこれらの細胞、ビーズ又は他の固相とインキュベートし、未結合ファージを洗浄により取り除く。目的抗原と結合する抗体ファージクローンを選別し、さらなる特徴付けのために試験する。
【0253】
選別後、陽性scFvクローンを、生細胞表面上に発現された目的抗原への結合力について、インダイレクトフローサイトメトリーにより試験する。簡潔に説明すると、ファージクローンを、目的抗原を発現する、又は発現しない、細胞(例えば、目的抗原を発現するように操作された細胞、又は抗原を天然に発現する細胞)とインキュベートする。細胞を洗浄し、その後マウス抗M13コートタンパク質モノクローナル抗体で標識する。細胞を再度洗浄し、蛍光結合型二次抗体(例えば、FITC-ヤギ(Fab)抗マウスIgG)で標識し、その後フローサイトメトリーにかける。ヒト免疫グロブリンファージライブラリーを作製するために有用なクローニングベクター及び発現ベクターは、例えば、ストラタジーン・クローニング・システムズ社(Stratagene Cloning Systems)(カリフォルニア州ラ・ホーヤ)から入手することができる。
【0254】
高親和性scFvを得るために、同様の戦略を使用できる(例えば、Vaughn et al., 1996, Nat. Biotechnol., 14:309-314を参照)。大きなレパートリーを有するscFvライブラリーは、全ての既知のV遺伝子ファミリー、Vκ遺伝子ファミリー及びVλ遺伝子ファミリーに対応するPCRプライマーを用いて、非免疫ヒトドナーからV遺伝子を単離することによって、構築できる。増幅後、Vκプール及びVλプールを合わせて1つのプールにする。これらの断片をファージミドベクター内に連結する。次に、scFvリンカー(例えば、(GS))を、ファージミド内のV断片の上流(又は、望ましい場合はV断片の上流)に連結する。V及びリンカー-V断片(又はV及びリンカー-V断片)を増幅し、J領域上でアセンブルする。得られたV-リンカー-V(又はV-リンカー-V)断片を、ファージミドベクター内に連結する。ファージミドライブラリーは、上記のようにフィルターを用いて、又は、イムノチューブ(ヌンク社;Maxisorp)を用いて、パニングすることができる。免疫ウサギのリンパ球又は脾臓細胞からコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーを構築することにより、及び、メタノール資化酵母(P. pastoris)においてscFvコンストラクトを発現させることにより(例えば、Ridder et al., 1995, Biotechnology, 13:255-260を参照)、同様の結果を達成できる。さらに、適切なscFvを単離した後、CDR3変異誘発及び鎖シャフリング等の親和性成熟プロセスを通じて、結合親和性がより高く、解離速度がより遅い抗体断片を得ることができる(例えば、Jackson et al., 1998, Br. J. Cancer, 78:181-188); Osbourn et al., 1996, Immunotechnology, 2:181-196を参照)。
【0255】
抗体断片の別の形態は、単一のCDRをコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより、得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することにより、作製される(例えば、Larrick et al., 1991, Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106; Courtenay-Luck, “Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies,” in Monoclonal Antibodies: Production, Engineering And Clinical Application, Ritter et al., eds., p. 166-179, Cambridge University Press 1995;およびWard et al., “Genetic Manipulation and Expression of Antibodies,” in Monoclonal Antibodies: Principles And Applications, Birch et al., eds., p. 137-185, Wiley-Liss, Inc. 1995を参照)。
【0256】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー(Hoogenboom et al., 1991, Mol. Immunol. 28(9):1027-37; Marks et al., 1991, J. Mol. Biol. 222(3):581-97)及びヒトモノクローナル抗体の作製(Reisfeld and Sell, 1985, Cancer Surv. 4(l):271-90)を含む、様々な手法を用いて産生可能である。同様に、内因性Ig遺伝子が部分的又は完全に不活性化されている遺伝子導入動物に、ヒトIg遺伝子を導入することは、ヒト抗体を合成するのに利用できる(例えば、Fishwild et al., 1996, Nat. Biotechnol. 14(7):845-51; Lonberg et al., 1994, Nature 368(6474):856-9; Lonberg and Huszar, 1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93; Taylor, L.D., et al., 1992, Nucl. Acids Res. 20:6287-95; Kellermann S-A., and Green L.L., 2002, Curr. Opin. Biotechnol. 13:593-7; Little, M. et al., 2000, Immunol. Today 21:364-70; Murphy, A.J. et al., 2014, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111(14):5153-8を参照)。暴露後、ヒト抗体産生が認められる。いくつかの実施形態では、抗原暴露に応答してヒト抗体を産生するように操作された非ヒト動物の、ヒトCD19による免疫化によって、抗CD19ヒト抗体が作製される。
【0257】
提供されるヒト抗体剤(抗体及び/又は特徴的な部分を含む)は、例えば、本発明の抗体をコードする核酸を発現するように操作された宿主細胞系を利用することによって、産生され得る。あるいは又はさらに、提供されるヒト抗体剤は、部分的又は完全に、化学合成によって(例えば、自動ペプチド合成機又は抗体剤をコードする核酸の遺伝子合成を用いて)作製され得る。
【0258】
目的のヒト抗体剤は、あらゆる適切なベクターを用いて発現させることができる。種々のベクター(例えば、ウイルスベクター)が本技術分野において知られており、そのようなベクターが導入された細胞(又はそのような細胞の子孫)は、本技術分野において知られているように(例えば、連続培養系又は流加培養系を用いて)培養することができる。いくつかの実施形態では、細胞は遺伝子操作されてもよく;操作されたポリペプチド(例えば、本明細書に記載の抗体剤ポリペプチド)を発現するように細胞を遺伝子操作するための技術は、本技術分野において周知である(例えば、Ausabel et al., eds., 1990, Current Protocols in Molecular Biology (ワイリー社、ニューヨーク)を参照)。
【0259】
いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤は、所望により、濾過、遠心分離及び/又はHPLC若しくはアフィニティークロマトグラフィー等の種々のクロマトグラフ技術を用いて精製され得る。いくつかの実施形態では、ペプシン若しくはパパイン等の酵素による消化を含む方法によって、及び/又は、化学還元によるジスルフィド結合の切断によって、提供されるヒト抗体剤の断片が得られる。
【0260】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、提供されるヒト抗体剤は、例えば、ポリクローナル抗体;モノクローナル抗体若しくはその抗原結合性断片;親和性成熟抗体、バリアント抗体(例えば、参照抗体と比べて1若しくは複数のアミノ酸置換を有する)、若しくはその断片(例えば、Fab’、Fab、F(ab’))等の改変抗体;又は、生合成抗体、例えば、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、一本鎖Fv(scFv)、多重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)、キメラ抗原受容体(CAR)等であり得るか、又はそれを含み得る。
【0261】
提供されるヒト抗体剤が、抗体剤の特徴及び/又は活性が向上するように、操作、産生、及び/又は精製され得ることは、理解されよう。例えば、提供される抗体剤の特徴の向上としては、特に、安定性の増加、結合親和性及び/又は結合活性の向上、結合特異性の増加、産生の増加、凝集の減少、非特異的結合の減少が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0262】
いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤は、タンパク質安定性、抗原結合、発現レベルを向上する、又は、治療薬、診断薬若しくは検出剤を結合するための部位若しくは位置を与える、1又は複数のアミノ酸置換(例えば、免疫グロブリン又はその断片[例えば、scFv]との関連ではフレームワーク領域内に)を含み得る。
【0263】
いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、又はこれらの断片からなる群より選択される抗体クラスの構成員(すなわち、アイソタイプ)である免疫グロブリン(すなわち、抗体)であるか、又はそれを含む。
【0264】
いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤には、参照Fc領域(又は親Fc領域)に対して少なくとも1つのアミノ酸改変を含むバリアントFc領域を含むヒトモノクローナル抗体が包含される。そのような実施形態では、バリアントFc領域を含むヒト抗体剤は、Fc受容体(例えば、FcγR)に対して変化した親和性を示し得るが、ただし、Sondermann et al., 2000, Nature, 406:267-273に開示されるもの等の、Fc-Fc受容体相互作用の結晶学的及び構造学的な解析に基づいて、前記バリアントFc領域がFc受容体と直接接触する位置に置換を持たない。FcγR等のFc受容体と直接接触するFc領域内の位置の例は、アミノ酸234~239(ヒンジ領域)、アミノ酸265~269(B/Cループ)、アミノ酸297~299(C’/Eループ)、及びアミノ酸327~332(F/G)ループである。いくつかの実施形態では、提供される、本発明の、バリアントFc領域を含むヒト抗体剤は、構造学的及び結晶学的な解析に基づいてFcγRと直接接触する少なくとも1つ残基の改変を含む。
【0265】
いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤は、参照Fc領域(又は親Fc領域)と比べて1又は複数のアミノ酸改変を含むバリアントFc領域を有する抗CD19ヒトモノクローナル抗体である。例えば活性化及び/又は抑制性受容体に対する親和性を変化させたり、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)等のエフェクター機能の向上をもたらしたり、C1qに対する結合親和性を増加させたり、FcR結合性を低減又は除去したり、半減期を延長したりするようなバリアントFc領域をもたらすFc領域内のアミノ酸改変は、本技術分野において公知である(例えば、米国特許第9,051,373号、同第9,040,041号、同第8,937,158号、同第8,883,973号、同第8,883,147号、同第8,858,937号、同第8,852,586号、同第8,809,503号、同第8,802,823号、同第8,802,820号、同第8,795,661号、同第8,753,629号、同第8,753,628号、同第8,735,547号、同第8,735,545号、同第8,734,791号、同第8,697,396号、同第8,546,543号、同第8,475,792号、同第8,399,618号、同第8,394,925号、同第8,388,955号、同第8,383,109号、同第8,367,805号、同第8,362,210号、同第8,338,574号、同第8,324,351号、同第8,318,907号、同第8,188,231号、同第8,124,731号、同第8,101,720号、同第8,093,359号、同第8,093,357号、同第8,088,376号、同第8,084,582号、同第8,039,592号、同第8,012,476号、同第7,799,900号、同第7,790,858号、同第7,785,791号、同第7,741,072号、同第7,704,497号、同第7,662,925号、同第7,416,727号、同第7,371,826号、同第7,364,731号、同第7,335,742号、同第7,332,581号、同第7,317,091号、同第7,297,775号、同第7,122,637号、同第7,083,784号、同第6,737,056号、同第6,538,124号、同第6,528,624号及び同第6,194,551号を参照)。
【0266】
いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤は、(例えば、グリコシル化されていない)親Fc領域(parent Fc region (e.g.,aglycosylated)と比べてバリアントグリコシル化されたFc領域(Fc region with variant glycosylation)を有する抗CD19ヒトモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、バリアントグリコシル化は、操作された細胞株における発現から生じる(例えば、Umana, P. et al., 1999, Nat. Biotechnol. 17(2):176-80; Yamane-Ohnuki, N. et al., 2004, Biotechnol. Bioeng. 87(5):614-22; von Horsten, H.H. et al., 2010, Glycobiol. 20(12):1607-18; Beck, A. et al., 2010, Expert Opin. Drug Discov. 5(1):95-111;並びに米国特許第8,080,415号及び同第8,084,222号を参照;これらは全て参照によって本明細書に援用される)。いくつかの実施形態では、本発明は、バリアントFc領域を含むヒト抗CD19抗体成分を有する多重特異性結合剤を提供する。いくつかの実施形態では、提供される多重特異性結合剤は、抗体成分が由来し得る親抗体との比較において、バリアントグリコシル化(例えば、非グリコシル化)を示す抗体成分(antibody component that shows variant glycosylation (e.g., is aglycosylated))を含む。
【0267】
いくつかの実施形態では、本発明は、エフェクター機能及び/又はFcRに対する親和性の変化(例えば、増加及び/又は減少)が参照Fcと比較して増強又は減弱されたことを特徴とする、バリアントFc領域(すなわち、Fc領域が適切な参照Fcに対し1又は複数の付加、欠失、及び/又は置換を含む)を含む抗体又は抗体剤を提供及び/又は利用する。これらのバリエーションも当業者の技術の範囲内である。
【0268】
したがって、本発明は特に、より高い親和性で1又は複数のFcγRに結合するバリアントFc領域を含む抗体剤及び多重特異性結合剤(例えば、抗体剤)を提供する。そのような剤は、後述のように、より効率的にエフェクター機能を媒介するため好ましい。いくつかの実施形態では、本発明は、より弱い親和性で1又は複数のFcγRに結合するバリアントFc領域を含む抗体剤及び多重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)を提供する。エフェクター機能の低減又は消失は、ある特定の場合、例えば、その作用機序が、ブロッキング又は拮抗作用を含むが、標的抗原を有する細胞の殺滅は含まない抗体の場合、望ましい。さらに、いくつかの実施形態において、後述の二重特異性抗体を作製する場合、エフェクター機能の消失は望ましい。エフェクター機能の低減又は消失は、エフェクター細胞におけるFcγR活性化受容体が遮断される(この種の機能は宿主細胞に存在する)自己免疫疾患の場合、望ましいであろう。一般に、エフェクター機能の増加は、腫瘍及び外来抗原を発現する細胞に向けられ得るが、いくつかの実施形態では、腫瘍細胞から離れるようにエフェクター機能が方向付けられ得る。
【0269】
本発明における使用のためのFcバリアントは、例えばエフェクター機能を変化させる改変を含む、他のFc改変と組み合わせられ得る。本発明は、抗体又はFc融合物における相加的、相乗的、又は新規の特性をもたらす、本明細書に記載のFcバリアントと、他のFc改変との組み合わせを含む。そのようないくつかの実施形態では、Fcバリアントは、組み合わされた改変物の表現型を増強し得る。例えば、Fcバリアントが、野生型Fc領域を含む対比分子よりも高い親和性でFcγRIIIAと結合することが知られている変異体と組み合わされる場合、変異体との組み合わせは、FcγRIIIA親和性におけるより高い倍率の増強をもたらす。
【0270】
本発明におけるいくつかの実施形態では、本明細書に記載のFcバリアントが、抗体又はFc融合物に組み込まれることにより、操作された剤(engineered agent)が作製される。当該剤は、Fc領域を含む分子に対して、Fcグリコフォームを1又は複数(すなわち、1又は複数の炭水化物が共有結合しているFcポリペプチドを1又は複数)含み、ここで、グリコフォームの炭水化物組成は、Fc領域を含む親分子のそれとは化学的に異なる。
【0271】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多重特異性結合剤(例えば、抗体剤)は、バリアントグリコシル化を示すFcバリアントを含み得、且つ/又は、適切な参照Fc領域(例えば、親Fc領域)、若しくはグリコシル化が欠乏していない細胞株で発現されたFc領域と比べて、前記剤のFc領域がグリコシル化を欠いて産生されるように、グリコシル化欠乏性細胞株において発現され得る。
【0272】
いくつかの実施形態では、本発明において利用される抗体は、好ましくは、抗体の機能性、例えば、抗原に対する結合活性を変化させない、目的抗原(例えば、CD19)に結合する適切な参照抗体と比較して改変された糖鎖付加部位を有し得る。本明細書で使用される場合、「糖鎖付加部位」は、オリゴ糖(すなわち、互いに結合した2つ以上の単糖を含有する炭水化物)が特異的且つ共有結合的に結合する、抗体内のあらゆる特定のアミノ酸配列を含む。オリゴ糖側鎖は、典型的には、N結合又はO結合を介して抗体の骨格に連結される。N結合型グリコシル化とは、アスパラギン残基の側鎖へのオリゴ糖部分の結合をいう。O結合型グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、例えば、セリン、スレオニンへのオリゴ糖部分の結合をいう。例えば、フコースを含むある特定のオリゴ糖及び末端のN-アセチルグルコサミンを欠くFc-グリコフォームは、特殊なCHO細胞で産生され、増強されたADCCエフェクター機能を示し得る。
【0273】
いくつかの実施形態では、本発明は、糖鎖付加部位を付加又は欠失させることにより、本明細書に記載の抗体の炭水化物内容物を改変する方法を包含する。抗体の炭水化物内容物を改変するための方法は、本技術分野において周知であり、本開示に包含される(例えば、米国特許第6,218,149号、同第6,472,511号;米国特許出願公開第2003-0115614A1号、同第2002-0028486A1号;国際公開第2003/035835号;欧州特許第0359096B1号を参照)。いくつかの実施形態では、本発明は、抗体の1又は複数の内在性炭水化物部分を欠失させることにより、抗体の炭水化物内容物(又はその関連する部分又は成分)を改変する方法を提供する。
【0274】
操作されたグリコフォームは、エフェクター機能の増強又は低減を含むがこれらに限定はされない、種々の目的において有用であり得る。操作されたグリコフォームは、当業者に公知のあらゆる方法によって、例えば、操作された発現株若しくはバリアント発現株を使用することにより、1若しくは複数の酵素、例えばN-アセチルグルコサミン転移酵素I(GnTI)との共発現により、種々の生物若しくは種々の生物に由来する細胞株においてFc領域(又はバリアントFc領域)を含む分子を発現させることにより、又は、Fc領域を含む分子が発現された後に炭水化物を改変することにより、作製され得る。操作されたグリコフォームを作製するための方法は、本技術分野において公知であり、限定はされないが、以下に記載されるものが挙げられる:Umana et al., 1999, Nat. Biotechnol. 17:176-180; Davies et al., 2001, Biotechnol. Bioeng. 74:288-294; Shields et al., 2002, J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Shinkawa et al., 2003, J. Biol. Chem. 278:3466-3473;米国特許第6,602,684号;米国特許出願公開第2003-0157108A1号、同第2003-0003097A1号;国際公開第2000/61739号、同第2001/292246号、同第2002/311140号及び同第2002/30954号;POTILLEGENT(商標)技術(バイオワ社(Biowa, Inc.)、ニュージャージー州プリンストン);GLYCOMAB(商標)グリコシル化操作技術(グリカート・バイオテクノロジー社(GLYCART biotechnology AG)、スイス、チューリヒ)。例えば、Okazaki et al., 2004, JMB, 336:1239-49;米国特許出願公開第2003-0115614A1号;国際公開第2000/061739号を参照されたい。
【0275】
特定の例示的実施形態:免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の組み合わせ
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号2に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号2に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号2に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号2に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0276】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号4に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号4に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号4に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号4に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0277】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号6に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号6に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号6に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号6に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0278】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号8に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号8に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号8に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号8に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0279】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号10に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号10に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号10に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号10に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0280】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号12に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号12に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号12に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号12に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0281】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号14に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号14に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号14に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号14に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0282】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号16に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号16に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号16に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号16に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0283】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号18に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号18に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号18に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号18に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0284】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号20に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号20に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号20に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号20に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0285】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号22に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号22に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号22に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号22に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0286】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号24に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号24に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号24に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号24に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0287】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号26に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号26に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号26に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号26に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0288】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号28に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号28に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号28に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号28に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0289】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号30に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号30に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号30に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号30に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0290】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号32に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号32に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号32に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号32に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0291】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号34に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び/又は配列番号34に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤は、配列番号34に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域及び配列番号34に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体である。
【0292】
特定の例示的実施形態:特定のアミノ酸置換
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、アミノ酸位置3、12、16、17、25、26、32、63、69、97、102、106、108、109、113、116、117及びこれらの組み合わせのいずれかにおける1又は複数のアミノ酸置換を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、フレームワーク内及び/又はCDR領域内に1以上5以下のアミノ酸置換を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む。
【0293】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32及び34からなる群より選択される配列番号に現れる免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、且つ、アミノ酸位置3、12、16、17、25、26、32、63、69、97、102、106、108、109、113、116、117及びこれらの組み合わせのいずれかにおける1又は複数のアミノ酸置換をさらに含む。
【0294】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、Q3R、K12E、E16G、S17F、S25A、G26A、Y32F、S63F、T69A、A97V、T102S、M106L、Y108N、D109E、Q113L、L116M、M117L及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1又は複数の置換を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む。
【0295】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、参照免疫グロブリン重鎖可変領域と比べて1又は複数の置換を含み、且つ、配列番号36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70及び72のいずれか1つに現れる配列を有する、免疫グロブリン重鎖可変領域を含む。
【0296】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、アミノ酸位置10、16、25、34、52、54、68、69、72、75、93、95及びこれらの組み合わせのいずれかにおける1又は複数のアミノ酸置換を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、フレームワーク内及び/又はCDR領域内に1以上5以下のアミノ酸置換を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。
【0297】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32及び34からなる群より選択される配列番号に現れる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、且つ、アミノ酸位置10、16、25、34、52、54、68、69、72、75、93、95及びこれらの組み合わせのいずれかにおける1又は複数のアミノ酸置換をさらに含む。
【0298】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、V10M、K16E、S25N、V34I、D52N、L54Q、N68T、T69M、L72M、S75N、S93T、D95E、D95G及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1又は複数の置換を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。
【0299】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、参照免疫グロブリン軽鎖可変領域と比べて1又は複数の置換を含み、且つ、配列番号36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70及び72のいずれか1つに現れる配列を有する、免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。
【0300】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤は、フレームワーク内及び/又はCDR領域内に1以上5以下のアミノ酸置換を共に含む、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。
【0301】
特に、本開示は、本発明の抗CD19ヒト抗体剤内のそのようなアミノ酸置換の存在が、親ヒト抗体剤との比較において、ヒト抗体剤のヒトCD19に対する結合親和性及び/又は特異性を増加させることを示す。すなわち、抗CD19ヒト抗体剤内へのかかるアミノ酸置換の導入は、CD19に対する、特に天然CD19(すなわち、細胞表面発現型CD19)に対する、結合親和性を向上させる。
【0302】
かかる導入を達成するための、又は、他の方法でかかる配列を含有するポリペプチドを作製、準備、又は製造するための、本技術分野において公知の種々の技術は、当業者に知られている。この関連で有用な例示的な技術は、例えば、Green & Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2012に記載されている。
【0303】
具体的な例示的実施形態……具体的なCDR
本技術分野において一般に知られているように、モノクローナル抗体は、可変領域及び定常領域を各々含む、2つの重鎖及び2つの軽鎖からできている。重鎖可変領域は通常、フレームワーク領域に挟まれた、本明細書ではHCDR1、HCDR2及びHCDR3とされる、3つのCDRを含む(例えば、William E. Paul, Fundamental Immunology (7th ed.), Lippincott Williams & Wilkins 2013参照)。軽鎖可変領域は通常、フレームワーク領域に挟まれた、本明細書ではLCDR1、LCDR2及びLCDR3とされる、3つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0304】
本発明は、表2(HCDR)及び表3(LCDR)に記載のCDRをあらゆる可能な組み合わせで含むヒト抗体剤を提供する。限定を意図していない例示として、本発明は、それぞれ配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号181、配列番号182及び配列番号183である、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含むヒト抗体剤を包含する。
【0305】
所望のCDR領域及び/又はフレームワーク領域を有する抗体の製造は、本技術分野において一般的に知られており、例えば、Strohl & Strohl, Therapeutic Antibody Engineering, Woodhead Publishing Limited 2012に記載されている。
【0306】
【表2】

【0307】

【0308】
【0309】
【表3】
【0310】
【0311】
【0312】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は、表2に示されるHCDRのうちの少なくとも1つ及び/又は表3に示されるLCDRのうちの少なくとも1つを含む。
【0313】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は、表2に示されるHCDRのうちの少なくとも2つ及び/又は表3に示されるLCDRのうちの少なくとも2つを含む。
【0314】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は、表2に示されるいずれか3つのHCDR及び/又は表3に示されるいずれか3つのLCDRを含む。
【0315】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は、表2に示される一連の3つのHCDR及び/又は表3に示される対応する一連の3つのLCDRを含む。
【0316】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は、表2に示される3つのHCDRと少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列をそれぞれ有する、3つのHCDRを含む。
【0317】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は、表3に示される3つのLCDRと少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列をそれぞれ有する、3つのLCDRを含む。
【0318】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は3つのHCDR及び3つのLCDRを含み、前記3つのHCDRはそれぞれ、表2に示される3つのHCDRと少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列を有し、前記3つのLCDRはそれぞれ、表3に示される3つのLCDRと少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の配列を有する。
【0319】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は3つのHCDR及び/又は3つのLCDRを含み、前記HCDR及びLCDRはそれぞれ、表2及び表3にそれぞれ示されるHCDR及びLCDRと同一又は実質的に同一の配列を有する。
【0320】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は、それぞれ表2及び表3から選択されるHCDR及びLCDRを含む免疫グロブリン(例えば、モノクローナル抗体)であるか、又はそれを含む。
【0321】
一本鎖Fv(scFv)
一本鎖Fv(scFv)は、本技術分野において広く知られ、広く使用されている。一本鎖Fvは、短いリンカーペプチドで連結されている場合がある、免疫グロブリンの重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)の融合タンパク質である(例えば、Benny K. C. Lo (ed.), Antibody Engineering - Methods and Protocols, Humana Press 2004、及びそれに引用された参考文献を参照)。
【0322】
本発明は、ヒトCD19と特異的に結合する一本鎖Fv(scFv)を提供し、いくつかの実施形態では、リンカー配列を含有するscFvが提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるscFvのV領域及びV領域は、SRGGGGSGGGGSGGGGSLEMA(配列番号289)であるか、又はそれを含む、リンカー配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー配列は(GS)配列であるか、又はそれを含み、ここで、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上と等しい。
【0323】
いくつかの実施形態では、リンカーのアミノ酸長は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100又はそれ以上である。いくつかの実施形態では、リンカーは、堅くて曲がらない三次元構造をとらない傾向にあり、むしろポリペプチド(例えば、第一及び/又は第二の結合成分)に可動性を与えるという特徴を有する。
【0324】
いくつかの実施形態では、提供されるscFvポリペプチドは、以下のいずれか1つに現れる配列を含む:配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70及び配列番号72。
【0325】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は、それぞれ表2及び表3から選択されるHCDR及びLCDRを含む単鎖可変領域フラグメント(scFv)であるか、又はそれを含む。
【0326】
種々の実施形態において、本発明のヒト抗体剤は、表1に示される重鎖可変領域配列及び/又は軽鎖可変領域配列を含む、単鎖可変領域フラグメント(scFv)であるか、又はそれを含む。
【0327】
いくつかの実施形態では、提供されるscFvポリペプチドは、治療薬又は検出剤に結合されている。
【0328】
当業者に公知であるように、本発明におけるscFvの作製及びそれらの改変は、本技術分野において公知である(例えば、Benny K. C. Lo (ed.), Antibody Engineering - Methods and Protocols, Humana Press 2004、及びそれに引用された参考文献を参照)。
【0329】
多重特異性結合剤
多重特異性結合剤が、2つ以上の標的(例えば、エピトープ)に特異的に結合する結合成分を含む分子的な独立体又は複合体であることは、当業者が認めるところである。そのような多重特異性結合剤には、本技術分野において、治療用途を含め、種々の利用法が見出されている。一例に過ぎないが、当業者に知られているように、多重特異性結合剤は、細胞傷害性T細胞を腫瘍部位に向かわせる(又はリクルートする)ことにより腫瘍細胞の殺滅を促進するように操作されたものである。腫瘍抗原の例としては、αフェトプロテイン(AFP)、CA15-3、CA27-29、CA19-9、CA-125、カルレチニン、癌胎児抗原、CD34、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、上皮膜タンパク質(epithelial membrane protein)(EMA)、第VIII因子、CD31 FL1、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、嚢胞症液タンパク質(gross cystic disease fluid protein)(GCDFP-15)、HMB-45、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、インヒビン、ケラチン、CD45、リンパ球マーカー、MART-1(Melan-A)、Myo Dl、筋特異的アクチン(muscle-specific actin)(MSA)、神経フィラメント、神経特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤型アルカリフォスファターゼ(PLAP)、前立腺特異的抗原、S100タンパク質、平滑筋アクチン(SMA)、シナプトフィジン、チログロブリン、甲状腺転写因子1(thyroid transcription factor- 1)、腫瘍内M2-PK(tumor M2-PK)、及びビメンチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0330】
いくつかの実施形態では、本発明に係る使用のための多重特異性結合剤は、二重特異性結合剤である。多くの実施形態において、そのような二重特異性結合剤は腫瘍細胞に結合することが可能である。多くの実施形態において、そのような二重特異性結合剤は、CD19細胞、すなわち細胞表面上にCD19ポリペプチドを発現している細胞(例えば、腫瘍細胞)、に結合することが可能である。
【0331】
いくつかの実施形態では、本明細書にて提供される多重特異性結合剤(例えば、二重特異性結合剤)は、抗体成分であるか、それを含む。抗体成分を含む多重特異性結合剤を設計、構築、及び/又は産生するための種々の技術は、本技術分野において公知である。
【0332】
例えば、完全免疫グロブリンフレームワーク(例えば、IgG)、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、又はこれらの組み合わせを利用する多重特異性結合剤が構築されている。縦一列の2つのscFvユニットから構成される二重特異性結合剤は、臨床において好結果をもたらす二重特異性抗体フォーマットであることが示されている。抗腫瘍免疫療法の場合においては、CD3(例えば、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ等)との結合によりT細胞を引き付けるscFvを腫瘍抗原と結合するscFvと連結した形で、2つの単鎖可変領域フラグメント(scFv)を縦一列として含む二重特異性結合剤が、設計されている。このようにして、前記二重特異性結合剤が、ある特定のT細胞が有する細胞傷害特性による腫瘍細胞の殺滅を媒介し得ることを期待して、T細胞が腫瘍部位にリクルートされる。かかる二重特異性結合剤の一例として、リンパ腫用のCD19及びCD3を標的とするものが作製されており(二重特異性T細胞誘導抗体、又はBiTE抗体と呼ばれる;例えば、Dreier et al., 2003, J. Immunol. 170:4397-4402; Wolf, E. et al., 2005, Drug Discovery Today 10(18):1237-1244; Molhoj, M. et al. 2007, Mol. Immunol. 44:1935-43; Bargou et al., 2008, Science 321:974-977; Baeuerle, P.A. and C. Reinhardt, 2009, Cancer Res. 69(12):4941-44; Hoffman, L.M and L. Gore, Frontiers in Oncol. 4(Art. 63), 5頁を参照)、これは、動物異種移植片試験において腫瘍増殖の予防において好結果を残した。ヒト試験において、この二重特異性結合剤は、5例の部分寛解及び2例の完全寛解を含む、客観的な腫瘍反応を示した。
【0333】
例示的な二重特異性結合剤として、腫瘍抗原(例えば、CD19)に特異的な第一の抗体成分及び免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞等)に特異的な第二の抗体成分を有するものが挙げられる。二重特異性結合剤は、例えば、同一又は異なる抗原の異なるエピトープを認識する重鎖及び/又は軽鎖を組み合わせることにより、作製することができる。いくつかの実施形態では、分子機能により、二重特異性結合剤は、その2本の結合腕の一方(一方のV/V対)上で1つの抗原(又はエピトープ)と結合し、且つ、その第二の腕(異なるV/V対)上で異なる抗原(又はエピトープ)と結合する。この定義によると、二重特異性結合剤は、2つの異なる抗原結合腕を有し(特異性及びCDR配列の両方において)、且つ、結合するそれぞれの抗原に対し一価である。
【0334】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性結合剤は、構造が異なる2つの標的に同時に結合できることを特徴とする。いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性結合剤は、例えば、B細胞、T細胞、骨髄、血漿、又はマスト細胞抗原又はエピトープに特異的に結合する少なくとも1つの他の成分、及び、CD19、具体的には細胞表面上に発現されたCD19、と特異的に結合する少なくとも1つの他の成分を有する。
【0335】
種々の実施形態において、本発明に係る二重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)は、第一の結合成分及び第二の結合成分から構成される。多くの実施形態では、本明細書に記載の二重特異性結合剤の第一及び第二の結合成分は、それぞれ、異なる特異性を特徴とする抗体成分から構成される。多くの実施形態において、抗体成分は表1から選択される。
【0336】
種々の実施形態において、本発明に係る二重特異性結合剤は、第一の結合成分及び第二の結合成分を含む。種々の実施形態において、本発明に係る二重特異性結合剤は、第一の結合成分、第二の結合成分、並びに前記第一及び第二の結合成分の両方に連結されたリンカー(例えば、前記第一及び第二の結合成分の間に位置する)を含む。
【0337】
種々の実施形態において、本明細書に記載の第一及び/又は第二の結合成分は、抗体成分を含むか、又は抗体成分である。種々の実施形態において、本明細書に記載の第一及び/又は第二の結合成分は、リンカー配列を含むか、又はリンカー配列を介して連結されている。
【0338】
いくつかの実施形態では、リンカーのアミノ酸長は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100又はそれ以上である。いくつかの実施形態では、リンカーは、堅くて曲がらない三次元構造をとらない傾向にあり、むしろポリペプチド(例えば、第一及び/又は第二の結合成分)に可動性を与えるという特徴を有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、例えば、凝集の低減及び/又は安定性の増加などの、二重特異性結合剤に付与された特定の性質に基づいて、本明細書に記載の二重特異性結合剤に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性結合剤はGSリンカーを含む。いくつかの特定の実施形態では、本発明の二重特異性結合剤は(GS)リンカーを含み、式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又はそれ以上である。
【0339】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第一及び/又は第二の結合成分は、免疫グロブリン(例えば、IgG)であるか、それを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第一及び/又は第二の結合成分は、抗体断片(例えば、scFv)であるか、それを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第一の結合成分は抗体断片であるかそれを含み、第二の結合成分は免疫グロブリンであるかそれを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第一の結合成分は免疫グロブリンであるかそれを含み、第二の結合成分は抗体断片であるかそれを含む。いくつかの特定の実施形態では、第一の結合成分は免疫グロブリンであり、第二の結合成分は抗体断片である。いくつかの特定の実施形態では、第一の結合成分はIgGであり、第二の結合成分はscFvである。
【0340】
いくつかの特定の実施形態では、本発明に係る二重特異性結合剤は、第一及び第二のscFvを含む。いくつかの特定の実施形態では、第一のscFvは第二のscFvのC末端に連結されている。いくつかの特定の実施形態では、第二のscFvが第一のscFvのC末端に連結されている。いくつかの特定の実施形態では、scFvはリンカー配列を介して互いに連結されている。いくつかの特定の実施形態では、scFvはリンカー配列無しで互いに連結されている。
【0341】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性結合剤は、2つの異なる重鎖又は重鎖可変領域及び2つの異なる軽鎖又は軽鎖可変領域を含む。
【0342】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性結合剤は2つの特異性を有し、その1つはヒトCD19と結合し、もう一方はT細胞上のヒトCD3(例えば、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ等)と結合する。
【0343】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性結合剤は、表1に示される1又は複数の配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)同一の1又は複数の配列を含む。
【0344】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性結合剤は、表1に示される1又は複数の配列と実質的に同一又は同一の1又は複数の配列を含む。
【0345】
種々の実施形態において、本明細書に記載の二重特異性結合剤の第一の結合成分は1又は複数のHCDR及び1又は複数のLCDRを含み、前記1又は複数のHCDRはそれぞれ、表2に示される1又は複数のHCDRと少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一の配列を有し、前記1又は複数のLCDRはそれぞれ、表3に示される1又は複数のLCDRと少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一の配列を有する。
【0346】
種々の実施形態において、本明細書に記載の二重特異性結合剤の第一の結合成分は3つのHCDR及び3つのLCDRを含み、前記3つのHCDRはそれぞれ、表2に示される3つのHCDRと少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一の配列を有し、前記3つのLCDRはそれぞれ、表3に示される3つのLCDRと少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一の配列を有する。
【0347】
種々の実施形態において、本明細書に記載の二重特異性結合剤の第一の結合成分は一連の3つのHCDR及び一連の3つのLCDRを含み、前記一連の3つのHCDRはそれぞれ、表2に示される一連の3つのHCDRと少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一の配列を有し、前記一連の3つのLCDRはそれぞれ、表3に示される一連の3つのLCDRと少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一の配列を有する。
【0348】
種々の実施形態において、本明細書に記載の二重特異性結合剤の第一の結合成分は、表2に示される一連の3つのHCDR及び表3に示される一連の3つのLCDRを含む。
【0349】
種々の実施形態において、本明細書に記載の二重特異性結合剤の第一の結合成分は、表1に示される抗体成分と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一の配列を有する抗体成分を含む。
【0350】
種々の実施形態において、本明細書に記載の二重特異性結合剤の第一の結合成分は、表1に示される抗体成分と同一又は実質的に同一の配列を有する抗体成分を含む。
【0351】
種々の実施形態において、本明細書に記載の二重特異性結合剤の第二の結合成分は、T細胞と結合する抗体成分を含む。本明細書に記載の二重特異性結合剤の第二の結合成分の標的として利用できる例示的なT細胞マーカーとしては、CD3(例えば、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ等)、CD4、CD8、CD28、OX40(TNFRSF4又はCD134)、GITR(TNFRSF18又はCD357)、CD137(TNFRSF9又は4-1BB)、CD27(TNFRSF7)、CD40L(TNFSF5又はCD154)、HVEM(TNFRSF14又はCD270)等が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の二重特異性結合剤の第二の結合成分は、CD3と結合する抗体成分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の二重特異性結合剤の第二の結合成分は、CD3εと結合する抗体成分を含む。本発明の二重特異性結合剤に利用できる例示的な抗CD3抗体成分は、本技術分野において公知であり、例えば、Routledge et al., 1991, Eur. J. Immunol. 21:2717-25; Adair et al., 1994, Hum. Antibodies Hybridomas 5:41-7; Norman et al., 2000, Clin. Transplant. 70(12):1707-12; Chatenoud, 2003, Nat. Rev. Immunol. 3(2):123-32; Cheadle, 2006, Curr. Opin. Mol. Ther. 8(1):62-8; Herold et al., 2009, Clin. Immunol. 132:166-73; Heiss and Murawa, 2010, Int. J. Cancer 127(9):2209-21; Keymeulen et al., 2010, Diabetologia, 53: 614-23; Silke and Gires, 2011, MAbs, 3(1):31-7; Cioffi, M. et al., 2012, Clin. Cancer Res. 18:465-474; Dean et al., 2012, Swiss Med. Wkly. 142:w13711; Labrijn et al., 2013, Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 110(13):5145-50; Portell et al., 2013, Clin. Pharmacol. 5:5-11;米国特許第7,112,324号、同第7,575,923号、同第8,076,459号、同第8,101,722号に見出すことができ、これらは全てその全体が参照によって本明細書に援用される。
【0352】
あるいは、既存の非ヒト(例えば、マウス)抗CD3抗体成分が、本発明の二重特異性結合剤に利用するための抗体成分の貴重な供給源を提供する(例えば、EMBL登録番号A22259.1 GL641464マウスOKT3軽鎖、及びEMBL登録番号A22261.1 GL21727144のマウスOKT3重鎖を参照)。そのような非ヒト抗体成分は有用ではあるが、ヒト対象の治療においてはそのヒト化型のほうが好ましく、これは、特に、投与抗体(又は二重特異性結合剤)に対する免疫反応の可能性がヒト化型では低減されるからである。ヒト化抗体を作製するための方法は本技術分野において周知である。
【0353】
キメラ抗原受容体
本発明はまた、本明細書に記載のヒト抗体剤及び/又は多重特異性結合剤を含むキメラ抗原受容体を提供する。CARは、本技術分野において公知の方法によって構築され得る(例えば、国際特許出願第2012/079000号、同第2013/126726号、同第2015/177789号及び同第2015/080981号;米国特許出願公開第2012/0213783A1号、米国特許第7,446,179号及び同第5,912,172号;Milone, M.C. et al., 2009, Mol. Therapy 17(8):1453-64; Kochenderfer, J.N. et al., 2010, Blood 116(19):3875-86; 2011, N. Engl. J. Med. 365(20):1937-9; Grupp, S.A. et al., 2013, N. Engl. J. Med. 368(16):1509-18; Romas, C.A. et al., 2014, Cancer J. 20(2):112-18; Singh, H. et al., 2014, Immunol. Rev. 257(1):181-90; Fujiwara, H., 2014, Pharmaceuticals 7:1049-68; Maude, S.L. et al., 2015, Blood 125(26):4017-23を参照;これらは全て参照によって本明細書に援用される)。免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞等)を、本明細書に記載の抗体成分を含有するキメラ抗原受容体を発現するように操作することで、検出回避のためにがん細胞が用いる免疫系監視機構に打ち克つ抗腫瘍性免疫エフェクター細胞を作製することができる。いくつかの実施形態では、本発明は、キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞を提供し、ここでキメラ抗原受容体は、本明細書に記載のヒト抗体剤又は多重特異性結合剤の抗原結合部位を、1又は複数含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞には、本明細書に記載のヒト抗体剤の抗原結合部位を発現するよう操作されたT細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、抗原結合部位は、本明細書に記載の抗体成分であるか、又はそれを含む。
【0354】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ヒトの、且つ/又は、人為的に操作された(例えば、1又は複数のアミノ酸置換を含む)、キメラ抗原受容体を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の成分(例えば、抗体成分、結合成分、シグナル伝達成分等)を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、膜貫通型成分及び/又は細胞内シグナル伝達成分を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、該キメラ抗原受容体を発現した免疫細胞に由来する成分(例えば、天然免疫細胞受容体)を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、T細胞受容体(TCR)ポリペプチドの、1又は複数の膜貫通型成分及び/又は1又は複数の細胞内成分を含む。
【0355】
用語「T細胞受容体」、又は「TCR」とは、本明細書で使用される場合、T細胞の表面上で対合するαβ鎖又はγδ鎖から構成されるヘテロ二量体の受容体を指す。α鎖、β鎖、γ鎖、及びδ鎖はそれぞれ2つのIg様ドメインから構成される。TCRのCDRを介した抗原認識を与える可変ドメイン(V)、これに、C-ペプチド及び膜貫通(TM)領域によって細胞膜に繋留された定常ドメイン(C)が続き、定常ドメイン(C)は細胞質内配列/細胞内成分と連絡している。TM領域はCD3シグナル伝達装置のインバリアントサブユニットと協同する。TCR Vドメインのそれぞれは3つのCDRを有する。これらのCDRは、主要組織適合遺伝子複合体(pMHC)にコードされるタンパク質に結合した抗原ペプチドの間で複合体と相互作用する(例えば、Davis and Bjorkman,1988, Nature 334:395-402; Davis et al., 1998, Annu. Rev. Immunol. 16:523-44; Murphy, Kenneth P. Janeway’s Immunobiology. 8th Edition. New York: Garland Science, Taylor & Francis Group, LLC, 2012. Print. Chapters 5 & 6を参照されたい)。TCRのVドメイン及びCDR配列は典型的には、抗体のVドメイン及びCDR配列と非常に異なる。
【0356】
いくつかの実施形態では、提供されるキメラ抗原受容体(CAR)は、第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドのヘテロ二量体から構成され、前記第一のポリペプチドは本明細書に記載の抗CD19重鎖可変領域及びTCRγ鎖のTM領域を含み、前記第二のポリペプチドは本明細書に記載の抗CD19軽鎖可変領域及びTCRδ鎖のTM領域を含む。いくつかの実施形態では、CARヘテロ二量体の前記第一のポリペプチドは本明細書に記載の抗CD19重鎖可変領域及びTCRδ鎖のTM領域を含み、前記第二のポリペプチドは本明細書に記載の抗CD19軽鎖可変領域及びTCRγ鎖のTM領域を含む。いくつかの実施形態では、提供されるキメラ抗原受容体はTCRαβ鎖のTM領域を含む。いくつかの実施形態では、提供されるキメラ抗原受容体はTCRの細胞内ドメインを含む。特定の実施形態では、提供されるキメラ抗原受容体はTCRのTM領域及び細胞内領域の両方を含む。
【0357】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗原受容体の成分は、免疫細胞のCD19細胞への結合を促進する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、本明細書に記載の抗体剤である、又はそれを基としている、抗体成分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、ヒトCD19と結合する抗体成分を含み、且つ、1又は複数の細胞質内シグナル伝達ドメインの全体又は一部、及び、1又は複数の共起刺激分子の全体又は一部を、さらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗原受容体の抗体成分はscFvであるか、又はそれを含む。いくつかのある特定の実施形態では、scFvは表1から選択される。
【0358】
標的
特に、本発明は、多重特異性結合剤(及び/又はキメラ抗原受容体)、特に、二重特異性抗体等の二重特異性結合剤が、細胞殺滅を促進するのに特に有用且つ/又は有効であるという認識を有する。具体的には、本発明は、標的細胞関連エピトープ(例えば、がん細胞上のCD19)及びリンパ球関連エピトープ(例えば、T細胞表面タンパク質)の両方に特異的に結合する多重特異性結合剤の活性が、B細胞関連疾患及び悪性腫瘍に対する有効な免疫療法となり得ることを示すものである。
【0359】
例えば、本発明のいくつかの実施形態では、多重特異性結合剤は腫瘍細胞関連エピトープ及びT細胞エピトープに特異的に結合する。そのような実施形態においては、前記多重特異性結合剤は、その標的エピトープの一方又は両方への前記剤の結合を促進させることができ、且つ/又は、標的T細胞によって媒介される標的腫瘍細胞の殺滅を増強させることができる。単なる別の例示として、本発明のいくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体はがん細胞上のCD19と結合する。そのような実施形態においては、前記キメラ抗原受容体のその標的エピトープとの結合後に、免疫細胞がCD19細胞の殺滅を促進させ得る。
【0360】
いくつかの実施形態では、殺滅対象の標的細胞として、例えば、CD19を発現する細胞(例えば、リンパ腫又は白血病細胞)が含まれる。当業者であれば、本明細書に記載の多重特異性結合剤が望ましく結合する細胞上の適切な標的エピトープを知っているであろう。
【0361】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の標的細胞の殺滅を媒介し得るリンパ球細胞として、T細胞(例えば、CD8T細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、顆粒球及び抗体依存性細胞傷害性細胞が含まれる。当業者であれば、本明細書に記載の多重特異性結合剤が望ましく結合するリンパ球上の適切な標的エピトープを知っているであろう。代表的なそのようなエピトープは、例えば、IgGのFc受容体(例えば、FcγRIIB)、CD1d、CD3(例えば、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ等)、CD4、CD7、CD8、CD13、CD14、CD16、CD27、CD28、CD31、CD38、CD40L、CD56、CD68、MAC-l/MAC-3、IL-2Ra、OX40、GITR、HVEM、Ly49、及びCD94、CD137等の抗原上に見出され得る。
【0362】
核酸の構築及び発現
本明細書に記載のヒト抗体剤(例えば、ヒトモノクローナル抗体、scFv等)、多重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)及びキメラ抗原受容体は、本技術分野で公知の分子生物学的方法を用いて、核酸分子から産生され得る。適切な宿主細胞内に導入された場合に融合タンパク質を発現することが可能なベクター内に核酸分子が挿入される。適切な宿主細胞として、限定はされないが、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳類細胞が挙げられる。ベクター内にDNA断片を挿入するための当業者に公知のいかなる方法も、転写/翻訳調節シグナルの制御下の、本発明の融合タンパク質をコードする発現ベクターの構築に使用されてよい。これらの方法には、インビトロにおける組換えDNA法及び合成的手法、並びにインビボにおける組換えが含まれ得る(Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory; Current Protocols in Molecular Biology, Eds. Ausubel, et al, Greene Publ. Assoc., Wiley-Interscience, NYを参照)。
【0363】
本発明においては、核酸分子の発現は、組換えDNA分子で形質転換された宿主内で該分子が発現されるように、第二の核酸配列によって制御され得る。例えば、本発明の核酸分子の発現はプロモーターエレメント及び/又はエンハンサーエレメントによって制御され得るが、このことは本技術分野において公知である。
【0364】
核酸構築体は、抗体及び/又は抗体成分から作製された多重特異性結合タンパク質(又はキメラ抗原受容体)をコードする領域を含む。典型的には、そのような多重特異性結合タンパク質(又はキメラ抗原受容体)はV領域よび/又はV領域から作製される。所望の結合特性及び/又は機能特性を示す抗体の同定及び選別の後、各抗体の可変領域が単離、増幅、クローン化及び配列決定される。V及びVのヌクレオチド配列に修飾を加えてもよく、例えば、アミノ酸をコードする、及び/若しくは制限酵素認識部位を保有するヌクレオチド配列の付加、アミノ酸をコードするヌクレオチド配列の欠失、又はアミノ酸をコードするヌクレオチド配列の置換が挙げられる。前記抗体及び/又は抗体成分は、ヒト抗体、非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体から作製され得る。
【0365】
本発明の核酸構築体は、本技術分野において公知の方法によって発現ベクター又はウイルスベクター内に挿入され、核酸分子は発現制御配列に機能的に連結される。
【0366】
適切であれば、本明細書に記載のヒト抗体剤、多重特異性結合剤、及びキメラ抗原受容体をコードする核酸配列は、特定の細胞型又は生物内での発現用に最適化されたコドンを含むように修飾されてよい(例えば、米国特許第5,670,356号及び同第5,874,304号を参照)。コドン最適化配列は合成配列であり、非コドン最適化親ポリヌクレオチドにコードされた同一ポリペプチド(又は、完全長ポリペプチドと実質的に同一の活性を有する完全長ポリペプチドの生物学的に活性な断片)をコードすることが好ましい。いくつかの実施形態では、抗体成分をコードする遺伝物質のコード領域は、全体又は一部として、特定の細胞型(例えば、真核細胞又は原核細胞)用にコドン使用頻度を最適化するために、改変配列を含み得る。例えば、本明細書に記載のヒト重鎖(又は軽鎖)可変領域のコード配列は、細菌細胞内での発現用に最適化され得る。あるいは、前記コード配列は、哺乳類細胞(例えば、CHO)内での発現用に最適化され得る。そのような配列はコドン最適化配列と称され得る。
【0367】
核酸分子を含有する発現ベクターが好適な宿主細胞に形質転換されることで、該核酸構築体にコードされるタンパク質の産生が可能となる。例示的な宿主細胞として、原核生物(例えば、大腸菌)及び真核生物(例えば、COS細胞又はCHO細胞)が挙げられる。発現ベクターで形質転換された宿主細胞が、本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体の産生を可能とする条件下で増殖された後、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性結合剤又はキメラ抗原受容体の回収が行われる。いくつかの実施形態では、宿主細胞には、1又は複数の発現ポリペプチドにおいて異なるグリコシル化パターンを示すものが含まれる(例えば、米国特許第8,080,415号及び同第8,084,222号を参照)。
【0368】
本発明のヒト抗体剤及び/又は多重特異性結合剤は、後の安定な抗体分子又は結合剤分子の形成を可能にするいかなる手法で精製されてもよい。例えば、理論に束縛されることを望むものではないが、ヒト抗体剤及び/又は多重特異性結合剤は、細胞から可溶性ポリペプチドとして、又は封入体として回収され、該可溶性ポリペプチド又は該封入体から、8Mグアニジニウム塩酸塩及び透析により定量的に抽出され得る。本発明のヒト抗体剤及び/又は多重特異性結合剤をさらに精製する目的で、従来のイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー又はゲル濾過を使用してよい。本発明のヒト抗体剤及び/又は多重特異性結合剤は、真核細胞又は原核細胞から分泌された後に、培養上清から回収されてもよい。
【0369】
キメラ抗原受容体の免疫細胞表面上での発現は、本技術分野において公知の方法によって達成され得る。典型的には、キメラ抗原受容体ポリペプチドをコードする核酸配列を保有する発現ベクターを、発現用の宿主細胞に形質転換する。上記のように、そのような宿主細胞は、PBMC由来T細胞等の、細胞株又は初代ヒト細胞単離物とすることができる。キメラ抗原受容体の発現が細胞膜へと標的化されるように、前記発現ベクターはシグナルペプチド及び/又は膜貫通ドメイン及び/又はシグナル伝達ドメインをコードする配列を含んでもよい。そのようなシグナルペプチドは当業者に公知である。キメラ抗原受容体ポリペプチドをコードする発現ベクターは、本技術分野において公知の方法によって宿主細胞に導入され、これらの方法としては、例えば、DNAトランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスフェクション及び感染(例えば、アデノウイルス又はレトロウイルス等のウイルスの感染)が挙げられる。
【0370】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸分子は、T細胞における発現を可能にし、それによりキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)の作製を可能にする。キメラ抗原受容体をコードする核酸分子は、T細胞等の、宿主免疫エフェクター細胞における発現のために、1又は複数のベクター(例えば、レンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクター)に含ませることができる。例示的な免疫細胞としては、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、及び調節性T細胞が挙げられる。キメラ抗原受容体をコードする核酸分子及び係るキメラ抗原受容体を含むT細胞を作製する方法は、本技術分野において公知である(例えば、Till, B.G. et al., 2008, Blood 112(6):2261-71; Brentjens, R. et al., 2010, Molecular Therapy 18(4):666-8; Morgan, R.A. et al., 2010, Molecular Therapy 18(4):843-51; Park, T.S. et al., 2011, Trends Biotechnol. 29(11):550-7; Grupp, S.A. et al., 2013, N. Engl. J. Med. 368(16):1509-18; Han, E.Q. et al., 2013, J. Hematol. Oncol. 6:47;国際公開第2012/079000号、同第2013/126726号;及び米国特許出願公開第2012/0213783号を参照)。
【0371】
抱合体
抗体剤に治療薬又は検出剤を結合又は抱合するためのいくつかの技術が、本技術分野において公知である。結合技術の中には金属キレート錯体の使用を含むものもあり、例えば、抗体に結合された、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA)等の有機キレート化剤;エチレントリアミン五酢酸;N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド;及び/又はテトラクロロ-3α-6α-ジフェニルグリコルリル-3を使用する(例えば、米国特許第4,472,509号及び同第4,938,948号を参照)。提供されたヒト抗体剤は、グルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩等のカップリング剤の存在下で酵素と反応させてもよい。フルオレセインマーカーとの抱合体は、例えば、これらのカップリング剤の存在下で、又は、イソチオシアン酸塩との反応によって作製される。
【0372】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト抗体剤は積載実体(payload entity)と結合されている。いくつかの実施形態では、積載実体は治療薬であるか、又はそれを含み;いくつかの実施形態では、積載実体は検出剤であるか、又はそれを含む。
【0373】
保護基
本発明のヒト抗体剤(又は多重特異性結合剤又はキメラ抗原受容体)は、本技術分野において公知の保護基を備えていてもよい。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、保護基の付加により、いくつかの実施形態では、保護基が付加されたポリペプチド又はペプチドの1又は複数の特徴、例えば安定性及び/又は有効性等、が向上され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト抗体剤(又は多重特異性結合剤又はキメラ抗原受容体)は、1又は複数の(例えば、1、2、3、4、5又はそれ以上の)保護基を有し得る。保護基は、本明細書に記載のヒト抗体剤(又は多重特異性結合剤又はキメラ抗原受容体)のポリペプチド鎖又はポリペプチド鎖のN末端及び/又はC末端に結合され得る。本発明における使用に好適な保護基としては、参照によって本明細書に援用される米国仮特許出願第62/131,128号に記載のものが挙げられる。
【0374】
治療薬
治療薬は、例えば、限定はされないが、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸、有機小分子、非生体高分子、金属、イオン、放射性同位元素等を含む、あらゆる種類の化学的実体であり得る、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、本発明における使用のための治療薬は、がんの1又は複数の症状又は原因の治療に関連する生物活性を有し得る。いくつかの実施形態では、本発明における使用のための治療薬は、免疫系の調節及び/又はT細胞媒介性細胞傷害の増強に関連する生物活性を有し得る。いくつかの実施形態では、本発明における使用のための治療薬は、1又は複数の他の活性を有する。
【0375】
いくつかの実施形態では、抱合される治療薬は、放射性同位元素、薬剤抱合体、ナノ粒子、免疫毒素、又はあらゆる他の治療用積載物である。
【0376】
検出剤
検出剤は、例えばその特定の機能特性及び/又は化学的特徴により、アッセイを用いて検出され得るあらゆる部分を含む。そのような剤の非限定例としては、酵素、放射標識、ハプテン、蛍光ラベル、リン光性分子、化学発光性分子、発色団、発光性分子、光親和性分子、着色粒子又はビオチン等のリガンドが挙げられる。
【0377】
多くの検出剤が本技術分野において公知であり、それらを抗体に結合するためのシステムも同様である(例えば、米国特許第5,021,236号;同第4,938,948号;及び同第4,472,509号を参照)。そのような検出剤の例としては、特に、常磁性イオン、放射性同位元素、蛍光色素、NMRで検出可能な物質、X線造影剤が挙げられる。例えば、いくつかの実施形態では、常磁性イオンは、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及び/又はビスマス(III)のうちの1又は複数である。
【0378】
前記放射性同位元素は、アクチニウム-225、アスタチン-211、ビスマス-212、炭素-14、クロム-51、塩素-36、コバルト-57、コバルト-58、銅-67、ユウロピウム-152、ガリウム-67、水素-3、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、ヨウ素-131、インジウム-111、鉄-59、鉛-212、ルテチウム-177、リン-32、ラジウム-223、ラジウム-224、レニウム-186、レニウム-188、セレン-75、硫黄-35、テクネチウム(technicium)-99m、トリウム-227、イットリウム-90、及びジルコニウム-89のうちの1又は複数であり得る。放射標識されたヒト抗体剤は、本技術分野において周知の技術に従って作製され得る。例えば、モノクローナル抗体は、ヨウ化ナトリウム及び/又はヨウ化カリウム、並びに、次亜塩素酸ナトリウム等の化学的酸化剤、又はラクトペルオキシダーゼ等の酵素的酸化剤との接触によりヨウ素化することが可能である。提供されるヒト抗体剤は、テクネチウム-99mで、配位子交換法により、例えば、第一スズ溶液で過テクネチウム酸を還元し、還元したテクネチウムをセファデックスカラム上にキレート化し、このカラムに抗体をアプライすることにより、標識され得る。いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤は、直接標識手法を用いて、例えば、過テクネチウム酸、SNCl等の還元剤、フタル酸ナトリウム-カリウム溶液等の緩衝溶液、及び抗体をインキュベートすることによって、標識される。いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤は、介在官能基に結合され得る。介在官能基は、金属イオンとして存在する放射性同位元素を抗体に結合するためにしばしば使用される。放射性同位元素は、例えば、線量測定によって検出され得る。
【0379】
蛍光ラベルは、特に、Alexa350、Alexa430、AMCA、BODIPY630/650、BODIPY650/665、BODIPY-FL、BODIPY-R6G、BODIPY-TMR、BODIPY-TRX、Cascade Blue、Cy3、Cy5,6-FAM、フルオレセインイソチオシアネート、HEX、6-JOE、Oregon Green488、Oregon Green500、Oregon Green514、Pacific Blue、REG、Rhodamine Green、Rhodamine Red、Renographin、ROX、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン、及び/又はTexas Redのうちの1又は複数であり得る、又はそれを含み得る。
【0380】
いくつかの実施形態では、抱合された検出剤は診断薬又は造影剤である。
【0381】
スクリーニング、検出及び治療法
本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤及び/又はキメラ抗原受容体は、1つの細胞又は複数の細胞の1又は複数の活性(例えば、アポトーシス又は細胞増殖)を検出及び/又は測定することが望ましい、インビトロスクリーニング法又はインビボスクリーニング法においても使用され得る。スクリーニング法は本技術分野において周知であり、無細胞アッセイ、細胞ベースアッセイ、及び動物アッセイを包含する。インビトロアッセイは、標的分子(例えば、細胞表面抗原)に結合しているヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体を同定可能な標識又は検出可能基の使用を含む、本技術分野で公知のいくつかの方法で達成され得る、固体又は可溶性の標的分子検出とすることができる。検出可能標識は、本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤又はキメラ抗原受容体を用いるアッセイと併せて使用され得る。
【0382】
CD19に対し高親和性及び/又は特異性を示す、本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤及び/又はキメラ抗原受容体の能力は、CD19を発現する細胞(例えば、リンパ腫又は白血病細胞)の効率的な標的化において、それらを治療上有用なものにしている。すなわち、いくつかの実施形態では、ヒト抗体剤又は多重特異性結合剤の、ある標的抗原(例えば、CD19)に対する親和性を増加させ、該多重特異性結合剤(又はヒトモノクローナル抗体の場合はFc受容体)が結合するその他の標的抗原に対する親和性は増加させないことが望ましい場合がある。例えば、腫瘍殺滅においては、ある特定の条件は、腫瘍抗原(例えば、CD19)に対する親和性の増加から恩恵を受けることができるが、腫瘍の殺滅を媒介可能な細胞(例えば、T細胞)の表面上の抗原に対する親和性の増加からは恩恵を受けることはできない。すなわち、本明細書に記載のヒト抗体剤、多重特異性結合剤又はキメラ抗原受容体の使用を通じて、ヒト抗体剤、多重特異性結合剤又はキメラ抗原受容体の、腫瘍抗原を発現する腫瘍を有する患者における腫瘍抗原に対する結合親和性及び/又は特異性を増加することは、有益であり得る。
【0383】
本発明は、本明細書に記載のヒト抗体剤、多重特異性結合剤及び/又はキメラ抗原受容体を、それが結合可能な抗原を発現する腫瘍を有する患者を治療するための治療薬として、提供する。そのようなヒト抗体剤、多重特異性結合剤及び/又はキメラ抗原受容体は、ヒト若しくは動物の身体の治療法において、又は診断法において、使用され得る。
【0384】
いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体は、医学において有用である。いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体は、CD19関連疾患又は悪性腫瘍の治療又は予防において、(例えば、予防薬として)有用である。いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体は、CD20関連疾患又は悪性腫瘍と関連又は相関した負の結果(例えば、非効率的な内部移行)を示す患者の治療において有用である。いくつかの実施形態では、提供されるヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体は、例えば、CD19関連疾患若しくは悪性腫瘍に罹患した、又はそれに罹患し易い個体における治療適用において有用である。
【0385】
投与
本発明は、有効量の本明細書に記載の治療薬(therapeutic active)(例えば、ヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体)を、治療を必要としている対象に投与する方法を提供する。
【0386】
本明細書に記載のヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体は、対象における標的細胞殺滅若しくは増殖阻害のための、ヒト抗体剤、多重特異性結合剤若しくはキメラ抗原受容体、又は、本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤、若しくはキメラ抗原受容体をコードする核酸の治療的送達に使用することができる、タンパク質又は核酸等の剤の治療的送達のための本技術分野において公知の様々な方法、例えば、細胞トランスフェクション、遺伝子治療、送達ビヒクル又は医薬的に許容される担体との直接的投与、本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体をコードする核酸を含む組換え細胞を与えることによる間接的送達、を通じて投与され得る。
【0387】
例えばリポソーム内封入、微小粒子内封入、マイクロカプセル内封入、前記抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体を発現可能な組換え細胞、受容体依存性エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-32を参照)、レトロウイルスベクター又は他のベクターの一部としての核酸の構築等、様々な送達系が知られており、本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体を投与するために使用することができる。投与経路は経腸又は非経口とすることができ、静脈内、皮下、筋肉内、非経口、経皮、又は経粘膜(例えば、経口又は経鼻)を含むがこれらに限定はされない。いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体は、皮下投与される。いくつかの実施形態では、本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体は、1又は複数の生理活性物質と共に投与される。
【0388】
医薬組成物
本発明はさらに、本発明のヒト抗体剤、多重特異性結合剤、又はキメラ抗原受容体、及び医薬的に許容される担体又は賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。前記組成物は、必要であれば、追加的な、治療効果を有する物質も、1又は複数含有することができる。
【0389】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体を含む医薬組成物は、対象から単離された自家性T細胞を感染させるために使用される、ウイルス(例えば、レンチウイルス又はレトロウイルス)として提供され得る。そのような実施形態では、自家性T細胞を、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を発現するよう操作されたウイルスに感染させ、それにより、対象(例えば、ヒト患者)に再注入するためのキメラ抗原受容体T細胞を作製する。
【0390】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体を含む医薬組成物は、前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(又はその集団)、及び医薬的に許容される(pharmaceutically acceptor)担体として提供され得る。例示的な宿主細胞としては、T細胞又はNK細胞が挙げられ、自家性であっても同種間のものであってもよい。すなわち、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を発現する宿主細胞を、対象(例えば、ヒト)への投与のための医薬組成物に含ませて製剤化することができる。そのような医薬組成物は、同一又は異なる(2種、3種、4種等)本明細書に記載のキメラ抗原受容体を発現する宿主細胞集団を含み得る。あるいは、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を発現する宿主細胞を含む医薬組成物は、例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン等の、1又は複数の追加の薬剤的に活性な剤又は薬をさらに含んでいてもよい。種々の実施形態において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を含む医薬組成物は、前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞又はその集団として提供される。
【0391】
本明細書にて提供される医薬組成物の説明は主にヒトへの倫理的(ethical)投与に好適な医薬組成物を対象としているが、そのような組成物が概してあらゆる動物への投与に好適であることは、当業者には理解される。組成物を種々の動物への投与に好適なものにするための、ヒトへの投与に好適な医薬組成物の改変は十分に理解されており、当業者である獣医薬理学者は、たとえあっても通常の実験法のみで、そのような改変を設計及び/又は実行し得る。
【0392】
医薬組成物は無菌注射剤の剤形(例えば、皮下注射又は点滴静注に好適な剤形)で提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、医薬組成物は注射に好適な液体剤形で提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、所望により真空下の、散剤(例えば、凍結乾燥及び/又は滅菌した散剤)として提供され、注射前に水性希釈剤(例えば、水、緩衝液、塩類溶液等)で再構成される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、水、塩化ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、ベンジルアルコール溶液、リン酸緩衝食塩水等で希釈及び/又は再構成される。いくつかの実施形態では、散剤は水性希釈剤と穏やかに混合されるべきである(例えば、振盪しない)。
【0393】
本明細書に記載の医薬組成物の製剤形態は、薬理学分野において公知又は今後開発される、あらゆる方法で調製され得る。一般に、そのような調製法には、活性成分に、希釈剤若しくは別の賦形剤、及び/又は1若しくは複数の他の副成分を付随させる工程、並びにその後の、必要な場合及び/又は望ましい場合、生成物を所望の単回又は多回投与単位に成形及び/又は包装する工程が含まれる。
【0394】
本発明の医薬組成物は、単回単位用量として、及び/又は複数の単回単位用量として、バルクで、調製、包装、及び/又は販売され得る。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む、分散させた医薬組成物の量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与されるであろう活性成分の投与量に等しく、及び/又は、例えば、そのような投与量の2分の1若しくは3分の1等、そのような投与量の好都合な分数である。
【0395】
本発明の医薬組成物中の活性成分、医薬的に許容される賦形剤、及び/又はあらゆる追加成分の相対量は、処置される対象の素性、サイズ、及び/又は状態に応じて、並びに、さらには組成物の投与経路に応じて、変動する。例として、前記組成物は0.1%~100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0396】
医薬製剤は医薬的に許容される賦形剤をさらに含んでいてもよく、前記医薬的に許容される賦形剤には、本明細書で使用される場合、望まれる特定の剤形に好適な、あらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液状ビヒクル、分散又は懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤等が包含される。RemingtonのThe Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, A. R. Gennaro (Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2006)には、医薬組成物の製剤化で使用される種々の賦形剤、及びその調製のための公知の手法が開示されている。任意の従来の賦形剤媒体が、任意の望ましくない生物学的効果を生じさせるか、又はそうでなければ医薬組成物の任意の他の成分と有害に相互作用するなどにより、物質又はその誘導体と不適合である場合を除いて、その使用は本発明の範囲内であると企図される。
【0397】
いくつかの実施形態では、医薬的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%純粋である。いくつかの実施形態では、賦形剤はヒトでの使用が認可されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は動物で使用が認可されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は米国食品医薬品局に認可されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は医薬品グレードである。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方の基準を満たしている。
【0398】
医薬組成物の製造で使用される医薬的に許容される賦形剤としては、不活性希釈剤、分散剤及び/又は造粒剤、界面活性剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、滑沢剤、及び/又は油が挙げられ、これらに限定はされない。このような賦形剤が、所望により医薬製剤中に含まれていてもよい。処方者の判断に従って、カカオ脂及び座薬ワックス等の賦形剤、着色料、コーティング剤、甘味剤、香味剤、並びに/又は芳香剤が、前記組成物中に存在できる。
【0399】
いくつかの実施形態では、提供される医薬組成物は、1又は複数の医薬的に許容される賦形剤(例えば、保存剤、不活性希釈剤、分散剤、界面活性剤及び/又は乳化剤、緩衝剤等)を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1又は複数の保存剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は保存剤を含まない。
【0400】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は冷蔵及び/又は凍結可能な形態で提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は冷蔵及び/又は凍結不可な形態で提供される。いくつかの実施形態では、再構成液及び/又は液体剤形は、再構成後にある特定の期間(例えば、2時間、12時間、24時間、2日間、5日間、7日間、10日間、2週間、1ヵ月間、2ヵ月間、又はそれより長期間)貯蔵され得る。いくつかの実施形態では、抗体を基とした組成物の特定の時間よりも長期の貯蔵は、抗体を基とした実体の分解をもたらす。
【0401】
液体剤形及び/又は再構成液は、投与前に微粒子状物質及び/又は変色を含み得る。いくつかの実施形態では、溶液は、変色若しくは濁っていた場合、且つ/又は、微粒子状物質が濾過後も残っていた場合、使用されるべきではない。
【0402】
医薬品の製剤及び/又は製造における一般的な考察は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 21st ed., Lippincott Williams & Wilkins, 2005に見出され得る。
【0403】
キット
本発明はさらに、本明細書に記載の少なくとも1つヒト抗体剤、多重特異性結合剤(例えば、二重特異性抗体)、又はキメラ抗原受容体(又はキメラ抗原受容体免疫エフェクター細胞)が詰められた1又は複数の容器を含む医薬品パック又はキットを提供する。キットは、例えば診断方法を含む、あらゆる適用可能な方法において使用され得る。そのような容器には、医薬品若しくは生物由来物質の製造、使用若しくは販売を規制する政府当局が定めた形式の、(a)ヒトへの投与のための製造、使用又は販売に関する当局による承認、(b)使用方法、又は両方を示す通知が、付随されていてもよい。
【0404】
本発明の他の特徴は以下の例示的な実施形態を説明する過程で明らかとなるが、これらの実施形態は、本発明の例示を目的としており、その限定を意図していない。本明細書で引用された全ての特許及び非特許文献は、それらの全体が参照によって本明細書に援用される。
【実施例
【0405】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をいかに作製及び使用するかを当業者に説明するためのものであり、本発明者らが発明と見なすものの範囲を限定することを意図していない。特に指示が無い限り、温度は摂氏単位で示され、圧力は大気圧か又はそれに近い圧力である。
【0406】
実施例1:ヒトCD19に特異的なヒト抗体剤の作製及び選別
本実施例は、ヒトCD19に特異的なヒト抗体剤の生産を示すものである。具体的には、本実施例は、天然型のヒトCD19と特異的に結合するヒト単鎖可変領域フラグメント(scFv)の生産を示すものである。本明細書に記載のヒト抗体剤が、健常ドナー及び/又は自己免疫疾患患者ドナー(autoimmune diseases donor)から作製した無処理又は半合成のヒト抗体ライブラリーを用いて開発され、天然高次構造を有する細胞表面発現型ヒトCD19に対するパニングにより、ヒトCD19に対する高い特異性に基づいて選別された。すなわち、そのようなヒト抗体剤によって、天然に存在するレパートリーから削除されかねない、特に、完全長IgG、多重特異性結合剤及びキメラ抗原受容体を構築するための貴重な抗体成分源が提供される。
【0407】
簡潔にではあるが、抗ヒトCD19抗体剤の開発の例示的な概略を表4に示す。この方法は、エウレカ社製(Eureka)ALPHA(商標)ファージライブラリーからの、ヒトCD19に特異的であり且つ生物学的に活性な抗体剤の同定から開始された。最上位の抗体剤候補を親和性成熟にかけ、標的がん細胞に対する結合親和性が向上し且つ細胞傷害性がより良好となった抗体剤を作製した。
【0408】
ALPHA(商標)ファージライブラリーという名称の、エウレカ・セラピューティクス社(Eureka Therapeutics)で構築されたヒトscFv抗体ファージディスプレイライブラリーコレクション(多様性=10×1010)を、ヒトCD19に特異的なヒト抗体剤の選別に用いた。ALPHA(商標)ファージライブラリーは、完全無処理ヒト重鎖レパートリー及び完全無処理ヒト軽鎖レパートリーからなる無処理ライブラリー、並びに、完全無処理ヒト軽鎖レパートリー及び完全ランダム化重鎖CDR3領域を有する半合成重鎖を含有する半合成ライブラリーを含むものであった。無処理抗体レパートリーは、健常ドナーのPBMC及び脾臓から、又は自己免疫疾患患者ドナー(全身性エリテマトーデス及び関節リウマチ等)のPBMCから、クローニングした。scFvライブラリーを、組換えヒトCD19 ECD-Fc融合タンパク質並びにRaji細胞及び3T3-CD19細胞を含むヒトCD19陽性細胞に対するパニングで使用した(以下に記載)。タンパク質パニングでは、Fc融合タンパク質を96ウェルプレート上に直接コートし、ヒトscFvファージライブラリーと混合した。PBS緩衝液で長期に洗浄した後、結合したクローンを溶出し、E.coli XL1-Blue感染に使用した。細胞パニングでは、まず、3T3-CD19細胞又はRaji細胞をヒトscFvファージライブラリーと混合した。PBSで延長洗浄した後、scFv抗体ファージが結合した細胞を遠心沈殿させた。次に、結合したクローンを溶出し、E.coli XL1-Blue細胞感染に使用した。ファージクローンを細菌内で発現させ、精製した。このパニングを3~4回行って、ヒトCD19の細胞外領域と特異的に結合したscFvファージクローンを濃縮した。
【0409】
表5(ALPHA(商標)ファージディスプレイの概要)に示されるように、タンパク質パニングがパニング工程として使用され、且つ、組換えヒトCD19 ECD-Fc融合タンパク質に対するELISA結合が一次ファージクローンスクリーニング法として使用された場合、パニングにより濃縮されたファージプール中の762のファージクローンをスクリーニングした後、ただ1つのユニークな抗体クローンが、細胞表面ヒトCD19結合剤として同定された。次に本発明者らは、細胞パニングのみを実施し、ヒトCD19陽性細胞株を一次スクリーニング法としてのFACSアッセイで使用した。このパニングキャンペーン(panning campaign)を用いてスクリーニングされた690のクローンから、細胞表面ヒトCD19と結合したユニークなクローンが、追加で7つ同定された。
【0410】
ELISAアッセイでは、標準的なELISAプレートを、それぞれヒトCD19 ECD-Fc又はネガティブコントロールの901-Fcで被覆した。濃縮されたファージディスプレイパニングプールからの個々のファージクローンを、被覆プレート内でインキュベートした。ファージクローンの結合をHRP結合型抗M13抗体で検出し、HRP基質を用いて発色させた。450nmでの吸光度を測定した。複数のヒトCD19ELISA特異的ファージクローンが同定された。例示的なクローンを図1Aに示した。ELISAアッセイによる測定により、スクリーニングされた762のファージクローンのうち、85のユニークな抗体クローンが、hCD19特異的であることが分かった。
【0411】
ELISAで陽性を示したファージクローンを、次に、細胞表面ヒトCD19との結合性について、ヒトCD19陽性のRaji細胞株及び3T3-hCD19細胞株、並びにヒトCD19陰性のJurkat細胞株及び3T3細胞株を用いたフローサイトメトリーによって調べた(図1B)。まず、細胞を、精製されたscFvファージクローン、次いでマウス抗M13モノクローナル抗体、最後にR-PE結合型ウマ抗マウスIgG(ベクター・ラボラトリーズ社(Vector Labs))と混合して染色した。各染色工程は氷上で30~60分間行い、染色間で2回細胞を洗浄した。1つのユニークなクローン(クローン37)が、ヒトCD19陽性のRaji細胞及び3T3-CD19細胞と特異的に結合し、ヒトCD19陰性のJurkat細胞及び3T3細胞とは特異的に結合しないことが特定された(図1B)。
【0412】
細胞パニングのみによりファージクローンを選別した二次スクリーニングのヒットを、ELISA結合スクリーニングを使用せずに、細胞表面ヒトCD19との直接的な結合性について調べた。図2に示されるように、例示的なクローン4、クローン5及びクローン6はRaji細胞に対して特異的な結合を示し、一方、クローン7はRaji-CD19ノックアウト細胞に対してもいくらかの検出可能な結合を示した。
【0413】
本実施例で示されたように、一次スクリーニングで同定された1452の個別のファージクローンから特異的且つ(配列が)ユニークなクローンはたった8つしか同定されず、ヒトCD19抗体のファージ-パニング効率は非常に低いものであった。1つのクローン(37)が自己免疫疾患無処理ライブラリーから作製され、他7つのクローンが健常ドナーB細胞由来の無処理又は半合成のヒト抗体ライブラリーから作製された。
【0414】
【表4】

【0415】
【表5】

【0416】
実施例2:ヒトCD19抗体剤を用いた二重特異性抗体コンストラクトの作製
本実施例は、ヒトCD19に特異的なヒトscFv断片を用いた多重特異性結合剤の構築を示すものである。具体的には、本実施例は、特に、天然型の(細胞表面に発現された)ヒトCD19と結合する第一の抗原結合部位及びT細胞上のCD3と結合する第二の抗原結合部位を有する二重特異性抗体の構築を示すものである。すなわち、本実施例は、いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体成分を含有する多重特異性結合剤を用いることで、T細胞に、ヒトCD19を発現する標的細胞の殺滅を指示可能であることを示すものである。
【0417】
ヒトCD19特異的ファージクローンのscFv配列を用いて、二重特異性抗体を作製した。これらの二重特異性抗体は、N末端にヒトCD19特異的ファージクローンのV-V scFv配列を含み、C末端には抗ヒトCD3εマウスモノクローナルscFvを含む、一本鎖フォーマットを用いて構築した(例えば、Brischwein, K. et al., Mol. Immunol. 43:1129-1143, 2006を参照)。ヒトCD19 scFv及び抗ヒトCD3ε scFvをコードするDNA断片を、ジーンウィズ社(Genewiz)又はジェンスクリプト社(Genscript)に合成させ、標準的な組換えDNA技術を用いて哺乳類発現ベクターpQD-T(エウレカ・セラピューティクス社)にサブクローニングした。精製及び検出用に、ヘキスヒスタミンタグ(hexhistamine tag)をC末端に挿入した。HEK293細胞を二重特異性抗体発現ベクターでトランスフェクトし、二重特異性抗体を産生させるために7日間培養した。HEK293細胞上清から、FPLC AKTAシステムにより、HisTrap HPカラム(GEヘルスケア社)を用いて、二重特異性抗体を精製した。HEK293細胞培養物を純化し、低イミダゾール濃度(20mM)でカラムにロードし、次いで、均一溶媒の高イミダゾール濃度の溶出緩衝液(500mM)を用いて、結合した二重特異性抗体を溶出させた。精製されたヒトCD19二重特異性抗体の分子量を、非還元条件下でゲル電気泳動により測定した。タンパク質(4μg)を、2.5μLのNuPAGE LDS Sample Buffer(ライフテクノロジーズ社、NP0008)と混合し、10μLとなるように脱イオン水を加えた。試料を70℃で10分間加熱し、ゲルにロードした。ゲル電気泳動を180Vで1時間行った。二重特異性抗体に対応するバンド(約55kD)がゲル上の主要物質種として認められた(図3)。
【0418】
まとめると、本実施例は、細胞表面上に発現された(すなわち、天然型の)ヒトCD19に特異的な第一の抗原結合部位及びCD3に特異的な第二の抗原結合部位を有する二重特異性分子の構築が成功したことを示すものである。さらに、このような二重特異性分子の特徴付けについて、以下の実施例で説明する。
【0419】
実施例3:ヒトCD19二重特異性抗体の特徴付け
本実施例は、選択された二重特異性分子のCD19結合プロファイルを示すものである。具体的には、本実施例は、特に、溶液中の組換えヒトCD19(すなわち、ヒトCD19 ECD-Fc)に対する選択された二重特異性抗体分子の結合プロファイルについて記述する。
【0420】
組換えヒトCD19 ECD-Fc融合タンパク質に対する結合性
細胞表面ヒトCD19に対する特異的な結合剤として同定されたファージクローンを、溶液中の組換えヒトCD19 ECD-Fc融合タンパク質に対する結合性について、フォルテバイオ社製(Fortebio)Octetを用いて調べた。ビオチン化ヒトCD19 ECD-Fc融合タンパク質(5μg/mL)を、ストレプトアビジンバイオセンサー上にロードした。過剰な抗原を洗い流した後、二重特異性抗体を、PBS緩衝液中10μg/mLにおいて、結合及び解離について調べた。ELISA陽性クローンであったクローン37を含む、細胞表面表現型ヒトCD19を認識した試験クローンのいずれも、組換えヒトCD19 ECD-Fc融合タンパク質に対して結合性を示さなかった。図4は、例示的なクローン及び比較対照用抗CD19二重特異性抗体であるBL19の、OctetによるhCD19結合性データを示している。ここから、本発明者らは、組換えhCD19タンパク質が、天然ヒトCD19(すなわち、細胞表面上のヒトCD19)及びELISAプレートに結合したヒトCD19とは異なる高次構造を有しているかもしれないと推論した。組換えヒトCD19によるELISAプレートの被覆は、天然hCD19を模倣するある特定の高次構造を形成させ得るが、その効率は極めて低い。85のヒトCD19 ELISA特異的抗体クローンのうち1つだけが、細胞表面ヒトCD19に対する特異性を示した。ヒトCD19発現細胞を用いた細胞パニングでは、細胞表面表現型ヒトCD19に特異的な、より陽性の抗体クローンが得られていた。
【0421】
初代ヒトB細胞に対する結合性
ヒトPBMCをPerCP結合型抗ヒトCD20抗体、APC標識抗ヒトCD3抗体及び抗CD19二重特異性抗体で共染色することによって、ヒトB細胞を、抗CD19抗体との結合性について調べた。PBS緩衝液で短く1回洗浄した後、FITC標識抗Hisタグ抗体を、二重特異性抗体を検出するための二次抗体として混合物に添加した。フローサイトメトリーアッセイでは、ヒトB細胞はCD20染色陽性及びCD3染色陰性でゲーティングした(図5A中のボックスを参照)。これらのCD20CD3細胞上で発現されたヒトCD19を認識する能力について、抗CD19二重特異性抗体を評価した。
【0422】
CD20CD3細胞に対する抗CD19の結合性レベルを、FITCチャネルの平均蛍光強度(MFI)により測定した。表6に示されるように、ネガティブコントロールの二重特異性抗体(NC-ET901)は、ヒトB細胞と結合しなかった。その一方、試験された全ての抗ヒトCD19二重特異性抗体クローンがヒトB細胞を認識し、陽性の結合シグナルを示した。
【0423】
T細胞殺滅アッセイ
LDH Cytotoxicity Assay(プロメガ社)を用いて腫瘍細胞傷害性を評価した。ヒトT細胞(オールセルズ社(AllCells))又は全血(ブラッド・センターズ・オブ・ザ・パシフィック社(Blood Centers of the Pacific))からFicollで精製された細胞を、CD3/CD28 Dynabeads(インビトロジェン社)で、製造者の仕様書に従って、活性化及び増殖させた。活性化T細胞を、10%FBS及び100U/mL IL-2を含有するRPMI1640培地中で培養及び維持し、活性化後7~14日目に使用した。FACS解析により、T細胞は99%超がCD3であった。活性化T細胞及び標的細胞を5:1の比で二重特異性抗体と一緒に16時間共培養した。培養上清中のLDH活性の測定により、細胞傷害性を測定した。
【0424】
図5Bに示されるように、クローン4、クローン5及びクローン6を基とした二重特異性抗体分子は、0.2μg/mlにおいて、ヒトCD19特異的に、がん細胞の殺滅を効果的に仲介した。また、クローン37を基とした二重特異性抗体分子は、CD19陰性細胞株(Jurkat及びTHP-1)に対しても、いくらかの検出可能な殺滅効果を示した。scFvについては、クローン37は、フローサイトメトリーではJurkat細胞に対し結合性を示さなかった(図1B)。
【0425】
【表6】

【0426】
実施例4:抗ヒトCD19抗体剤の親和性成熟
本実施例は、抗ヒトCD19抗体剤の親和性成熟を示すものである。具体的には、本実施例は、特に、選択された抗ヒトCD19抗体剤(クローン4、5及び6)へのランダム変異の組み込みと、その後の抗体バリアントのスクリーニング及び特徴付けによる、一連の抗体バリアントの作製を示すものである。
【0427】
バリアントファージライブラリーの作製
抗ヒトCD19 scFvをコードするDNAを、GeneMorph II Random Mutagenesis kit(アジレント・テクノロジー社)を用い、製造者の仕様書に従って、ランダム変異誘発にかけた。変異誘発後、DNA配列をscFv発現ファージミドベクターにクローニングし、バリアント抗体ファージライブラリーを構築した。抗ヒトCD19特異的クローンの各々について別々に、変異ライブラリーを構築した。各変異ライブラリーには約5×10のユニークなファージクローンが含まれた。バリアントクローンは、親抗ヒトCD19クローンと比較して、scFv配列1つあたり1~4個の範囲のヌクレオチド変異、平均2個のヌクレオチド変異を有する。親クローン4、5及び6から3つのライブラリーを構築した(表7)。それぞれの親クローンと比較した場合の、選択された親和性成熟抗ヒトCD19抗体剤のV領域及びV領域における例示的な変異を、表8に示す。
【0428】
バリアントクローンと名付けられた、濃縮されたファージパニングプールからの個々のファージクローンを、それぞれの親クローンと比較した場合の、細胞表面ヒトCD19に対する増強された結合性について試験した。図6Aに示されるように、複数のバリアントファージクローンが、Raji細胞及びJeko-1細胞を含むヒトCD19陽性がん細胞株を特異的に認識した。いずれのクローンも、Raji-CD19 k.o.細胞又はJurkat細胞等のヒトCD19陰性細胞株に対しては結合性を示さなかった。特に、複数のクローンが、それぞれの親クローンと比較して、Raji細胞及びJeko-1細胞に対して増強された結合性を示した。
【0429】
競合的細胞結合アッセイ(competition cell-binding assay)を行って、親クローンとの比較において、バリアントクローンの結合親和性を比較した(図6B)。簡潔に説明すると、バリアントファージクローンを、対応する親二重特異性抗体クローンとプレインキュベートされたRaji細胞と混合し、その後、マウス抗M13抗体及びPE結合型抗マウス抗体で染色した。
【0430】
バリアントクローン5-1、5-3、5-4、5-9、5-13、及び6-1が、親クローンとの比較において改善された標的結合性を示した。親二重特異性抗体クローンの存在下において、これらのファージクローンは、親ファージクローンのクローン5又は6と比べると、Raji細胞に対する結合性が増強されていた。フローサイトメトリーを用いた二重特異性抗体のタイトレーションによって、抗体結合親和性をより正確に測定した(後掲の表9を参照)。
【0431】
【表7】
【0432】
【表8】

【0433】
実施例5:抗ヒトCD19抗体剤バリアントを基とした二重特異性抗体分子の作製及び特徴付け
本実施例は、ヒトCD19に特異的なバリアントヒトscFv断片を用いた多重特異性結合剤の構築を示すものである。具体的には、本実施例は、特に、天然型の(細胞表面に発現された)ヒトCD19と結合する第一の抗原結合部位及びT細胞上のCD3と結合する第二の抗原結合部位を有する二重特異性抗体の構築を示すものである。すなわち、本実施例は、いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体成分を含有する多重特異性結合剤を用いることで、T細胞に、ヒトCD19を発現する標的細胞の殺滅を指示可能であることを示すものである。
【0434】
バリアント二重特異性抗体クローンの作製
親和性が向上されたバリアント抗体クローン由来の二重特異性抗体を、実施例2に記載の通りに作製した。クローンの大部分がSDS-PAGEで純度90%超のシングルバンドを示した(図7A)。
【0435】
バリアント二重特異性抗体の結合親和性測定
親抗体及びそれらの誘導体(バリアントクローン)は、その全てが細胞表面表現型ヒトCD19には結合したが、そのいずれも組換えヒトCD19は認識しなかった。これから、本発明者らは、親抗体と比較した場合のバリアントクローンの相対結合親和性を、ヒトCD19陽性がん細胞を用いたフローサイトメトリーによる抗体のタイトレーションを通じて決定した(表9)。
【0436】
段階希釈濃度の二重特異性抗体クローンを、同量のRaji細胞と混合した。フローサイトメトリーの結合シグナルに基づいて、抗体のEC50及び見掛けのKを算出した。表9に示されるように、親クローン5を基としたバリアントクローンの多くが、ただしクローン5-4を除いて、わずかに増加した親和性(より低いEC50及び見掛けのK)を示した。親クローン6を基としたバリアントクローンについて、クローン6-1及びクローン6-4も、それぞれの親クローンと比べて親和性(より低いEC50及び見掛けのK)が増加していた。
【0437】
T細胞殺滅アッセイ
LDH Cytotoxicity Assay(プロメガ社)を用いて腫瘍細胞傷害性を測定した。ヒトT細胞を、製造者の仕様書に従ってCD3/CD28 Dynabeads(インビトロジェン社)を用いて活性化及び増殖した。活性化T細胞を、10%FBS及び100U/mL IL-2を含有するRPMI1640培地中で培養及び維持し、活性化後7~14日目に使用した。FACS解析により、T細胞は99%超がCD3であった。活性化T細胞及び標的細胞を5:1の比で二重特異性抗体と一緒に16時間共培養した。培養上清中のLDH活性の測定により、細胞傷害性を測定した(図7B)。
【0438】
図8に示されるように、試験されたバリアントクローンは、親抗体としての元の結合特異性を維持していた。図11に示される細胞殺滅アッセイでは、例示的なバリアントクローンが、クローン37(このクローンはヒトCD19陰性細胞のRaji-CD19 k.o.、Jurkat及びTHP-1に対して検出可能な非特異的細胞傷害性を示したため、ポジティブコントロール二重特異性抗体として使用した)と共に、試験された。複数の試験バリアントクローンが、それぞれの親クローンとの比較において、ヒトCD19陽性細胞株(Raji及びJeko-1)の一方又は両方に対して、等しい又は増加した細胞殺滅効率を示した。
【0439】
【表9】

【0440】
実施例6:抗ヒトCD19キメラ抗原受容体を発現するT細胞(CAR-T)の特徴付け
本実施例は、上記実施例に記載された抗ヒトCD19抗体剤を用いたキメラ抗原受容体(CAR)の構築を示すものである。具体的には、本実施例は、特に、CD19ヒト抗体剤の抗原結合部位を含み、且つ、T細胞表面上に発現される、CARの構築を示すものである。さらに、T細胞によって発現されたCARを、ヒトリンパ腫異種移植モデルに対する細胞傷害性アッセイに使用した。すなわち、本実施例は、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のヒト抗体剤由来の抗原結合部位を含むCARの使用が、ヒトCD19を発現する標的細胞(例えば、リンパ腫)の殺滅に有用であることを示すものである。
【0441】
ヒトCD19形質導入T細胞のインビトロ細胞傷害性
293T細胞をCARベクターでトランスフェクトすることにより、ヒトCD19特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含有するレンチウイルスを産生させた。ヒトT細胞を、100U/mLのIL-2の存在下でCD3/CD28ビーズ(Dynabeads(登録商標)、インビトロジェン社)により1日刺激した後に、形質導入に使用した。濃縮したレンチウイルスを、Retronectin(タカラバイオ社)被覆6ウェルプレート内で72時間、T細胞に適用した。LDH Cytotoxicity Assayを用いて、形質導入T細胞(CD19/CAR-T細胞)の機能評価を行った。エフェクター細胞対標的細胞の比は5:1とした。代表的な結果を図8に示す。
【0442】
図8に示されるように、バリアント抗体クローン(クローン5-3、5-9及び5-13)を基とした3種のCARが、親クローン5との比較において、Raji細胞株及びJeko-1細胞株の両方に対して、有意に増加したがん細胞殺滅効率を示した。この実験で使用したエフェクター細胞対標的細胞の比は5:1であった。ヒトCD19陰性細胞(Raji-CD19 k.o.及びJurkat)の殺滅レベルが低いことが示されたことから、殺滅特異性がCD19特異的であることが確認された。さらに、本明細書に記載のヒト抗体剤を用いて作製されたCARを発現するT細胞は、他の抗CD19抗体(BL19、FMC63)を用いて作製されたCAR-Tと同様又はより高い細胞殺滅効率を示した。
【0443】
同様の実験において、大きなCD19陽性及び陰性がん細胞株パネルを用いて、ヒトCD19 CAR-T(上述)を試験した。簡潔に説明すると、初代T細胞に、モック(Mock)又は抗CD19抗体をコードする選択されたCARを形質導入した。形質導入T細胞を、抗myc抗体を用いてCAR構築物の細胞外ドメイン内のmycタグを検出するFACSで解析した。
【0444】
その結果、上記の通りにヒト抗体剤から作製された抗CD19 CAR-T細胞が約80%の導入効率を有することが示された(図9、上段)。CAR-T細胞のCD19発現がん細胞を特異的に殺滅する能力を、5:1のエフェクター細胞対標的細胞比で試験した。図9(下段)に示されるように、試験された抗CD19クローンを発現するCAR-T細胞は、共にCD19細胞(Raji、CA46、Jeko-1及びDaudi)を特異的に殺滅したが、CD19細胞(Raji-CD19 k.o.、Jurkat、THP-1、HeLa、MDA-MB-231、MCF-7、SK-Hep-1及びHepG2)の特異的な殺滅は認められなかった。
【0445】
別の同様の実験において、上記の通りに、CD19陽性及び陰性がん細胞株パネルを用いて、本明細書に記載の選択されたヒト抗体剤から作製されたCAR-T及び非ヒト(例えば、マウス)抗体から作製されたCAR-Tを試験した。簡潔に説明すると、初代T細胞に、モック(Mock)、又は本明細書に記載の抗ヒトCD19 scFvをコードする選択されたCAR(CAR-T5、CAR-T5-9、又はCAR-T5-13)若しくはマウス抗ヒトCD19 mAbのFMC63(Zola, H. et al., 1991, Immunol. Cell Biol. 69(Pt 6):411-22)由来の可変領域配列を有する抗ヒトCD19 scFvをコードするCARを形質導入した。V-リンカー(下線付き)-Vのフォーマットを有するマウス抗CD19 scFvの配列を以下に示す。形質導入T細胞を上記の通りにFACsで解析した。
【0446】

【0447】
配列番号296に記載のマウス抗CD19 scFvのCDR配列は以下の通りである:
LC-CDR1:QDISKY(配列番号297)
LC-CDR2:HTS(配列番号298)
LC-CDR3:QQGNTLPYT(配列番号299)
HC-CDR1:GVSLPDYG(配列番号300)
HC-CDR2:IWGSETT(配列番号301)
HC-CDR3:AKHYYYGGSYAMDY(配列番号302)
【0448】
これらの結果から、ヒトscFvクローン5及び2つの親和性成熟バリアント(5-9、5-13)から作製された抗CD19 CAR-T細胞が、マウス抗CD19抗体から作製された抗CD19 CAR-T細胞と比較して、より高い導入効率及び有意により高いCD19特異的がん細胞溶解を示したことが示された(図15)。
【0449】
別の実験において、活性化ヒトCD19 CAR-T細胞の例示的なサイトカインの放出プロファイルを決定した。モック形質導入T細胞(mock)又は選択された抗CD19 CAR-T(クローン5-3が示される)を、標的細胞と共培養した。インビトロ殺滅後のIL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、GM-CSF、IFN-γ及びTNF-αの培地への放出を、Bio-plex Pro Human Cytokine 8-plex Assay(バイオラド社)と共にMagpixマルチプレックスシステム(ルミネックス社)を用いて測定した。培地、標的細胞単独及びクローン5-3形質導入T細胞単独からの放出を減算した後、既知の検量線を用いてサイトカイン濃度を決定した。代表的な結果を図10に示す。
【0450】
図10に示されるように、サイトカイン放出は、抗CD19 CAR-T細胞がCD19細胞(Raji及びCA46)と共培養された場合にのみ検出され、CD19細胞(Raji-CD19 k.o.及びJurkat)と共培養された場合は検出されなかった。CD19がん細胞と共培養されたモック形質導入T細胞は最低量のサイトカインしか放出しなかった。同様に、クローン5-13を基とした活性化ヒトCD19 CAR-T細胞のサイトカイン放出プロファイルは、サイトカイン(IL-2、GM-CSF、IFN-γ及びTNF-α)の放出を、抗CD19 CAR-T細胞がCD19細胞(Raji及びJeKo-1)と共培養された場合にのみ示し、CD19細胞(Raji-CD19 k.o.)と共培養された場合は示さなかった。また、CD19がん細胞と共培養されたモック形質導入T細胞はゼロ~最低量のサイトカインしか放出しなかった。
【0451】
ヒトリンパ腫異種移植片におけるCD19 CAR-T細胞のインビボ有効性
例示的なCAR-T細胞(クローン5-9を基としたもの)のインビボにおける抗腫瘍活性を、NOD SCIDγ(NSG)マウスのCD19陽性ヒトリンパ腫異種移植モデルにおいて試験した。簡潔に説明すると、Raji-luc-GFP細胞をコンパラティブ・バイオサイエンス社(Comparative Biosciences, Inc.)(94085、カリフォルニア州サニーベール)から購入し、RPMI培地+10%FBS及び1%L-グルタミン中、加湿雰囲気下5%CO、37℃で培養した。Raji-luc-GFP細胞は、生物発光イメージングを用いてインビボで追跡できる細胞をもたらす、ホタルルシフェラーゼ(luc)及び緑色蛍光タンパク質を両方コードするデュアルレポーター遺伝子の安定導入の後の、CD19陽性バーキットリンパ腫細胞株のRajiから得られたものである。NSGマウスを、ジャクソン・ラボラトリーズ社(Jackson Laboratories)(04609、メーン州バーハーバー、米国)から購入し、実験の前に少なくとも7日間順化させた。Raji-luc-GFP細胞をPBSに再懸濁し、1×10細胞/100μL/マウスで尾静脈を介してNSGマウスに静脈内移植した。移植後の5日目に、腫瘍量の評価のために、Xenogen IVISイメージングシステムを用いて、動物をイメージングした。マウスを光子放射に基づいて平均光子放射が6.7×10光子となるように3群に無作為化した(1群あたりn=6マウス):(i)無処置、(ii)モック(CAR-T細胞の同一ドナーから得られた形質導入していない活性化ヒトT細胞)、及び(iii)5-9 CAR-T。無作為化後直ちに、動物にMock又はクローン5-9 CAR-T細胞を、10T細胞/マウス(群(iii)については、1用量あたり6~8×10 CAR+T細胞を含む)の用量で、2週間に1回、計3回、静脈内処置した。投与後、動物を注意深くモニターした。Xenogen IVISシステムを用いた生物発光イメージングを、週1回撮影した。以下の状態を呈した動物は安楽死させ、「条件付き死亡(conditional death)」と記録した:(i)初期体重の25%超の体重減少、及び(ii)マウスの移動に影響する肢麻痺。代表的な結果を図11に示す。
【0452】
モックT細胞及び5-9 CAR-T細胞の両方が、今回の用量及びスケジュールにおいて、耐容性良好であった(図11)。投与に関連した健康への悪影響は試験全体を通じて観察されなかった。モックT細胞処置はRaji-luc-GFP腫瘍の成長を遅延させ(p<0.05)、一方、CAR-T 5-9処置は腫瘍成長を有意に阻害した(p<0.05;図11、右)。
【0453】
同様の実験において、別の例示的なCAR-T細胞(クローン5-13を基としたもの)のインビボにおける抗腫瘍活性を、NSGマウスのCD19陽性ヒトリンパ腫異種移植モデルにおいて試験した。抗CD19 CAR-形質導入T細胞(5×10個の、クローン5-13を基としたCART細胞)の各マウスへの投与が1回のみであったことを除き、上述のクローン5-9におけると同様に実験を行った。代表的な結果を図13に示す。
【0454】
図13Aに示されるように、腫瘍はビヒクル処置群及びモック処置群のマウスにおいては急速に成長したが、抗CD19 CAR 5-13形質導入T細胞で処置されたNSGマウスは腫瘍成長の阻害を示した。実際には、早くも11日目には処置群間の腫瘍成長に有意差が検出可能であった(p<0.0001、ダネット検定、図13B)。さらに、抗CD19 CAR 5-13形質導入T細胞で処理したNSGマウスは、移植後45日目まで腫瘍の退縮を示した。
【0455】
腫瘍移植後35日目に、抗CD19 CAR 5-13形質導入T細胞処置群から代表して3匹のマウスに、5×10個のRajiリンパ腫細胞を静脈内移植により再投与し、抗CD19-CAR形質導入T細胞が存続しているかどうか、及び、抗原(CD19)への応答能を維持しているかどうかを確認した。無処置NSGマウス(すなわち、Rajiリンパ腫細胞を移植されなかった、又はT細胞で事前に処置されたマウス、n=2)には、コントロールとして、1×10個のモック形質導入T細胞の注射(34日目に注射)の1日後に5×10個のRajiリンパ腫細胞を移植した。本発明者らは、そのようなモック形質導入T細胞が、Rajiリンパ腫細胞の移植より前のマウスにおける循環T細胞が低レベルである状態を模倣するであろうと推論した。各群の腫瘍量をルシフェラーゼ活性によって測定した(上記の通り)。代表的な結果を図13Cに示す。
【0456】
図13Cに示されるように、腫瘍はモック処置群では急速に成長した。対照的に、抗CD19 CAR 5-13形質導入T細胞による事前処置は、Rajiリンパ腫細胞の再投与後の腫瘍成長を妨げた(p<0.01)。すなわち、これらのデータは、抗CD19-CAR形質導入T細胞が、移植後35日目になってもこれらのマウスに残存していたこと、及び、CD19に応答してCD19腫瘍細胞を殺滅する能力を維持することで、腫瘍量再増加(reoccurring tumor burden)に対する保護をあたえていたこと、を示している。
【0457】
別の同様の実験において、例示的なCAR-T細胞(クローン5-13を基としたもの)のインビボにおける抗腫瘍活性を、NSGマウスのCD19陽性ヒト白血病異種移植モデル(NALM)において試験した。NALM-6-luc-GFP細胞(スローンケタリング記念がんセンターのEric Smith博士の好意により提供を受けた)は、生物発光イメージングを用いてインビボで追跡できる細胞をもたらす、ホタルルシフェラーゼ(luc)及び緑色蛍光タンパク質(GFP)を両方コードするデュアルレポーター遺伝子の安定導入後の、CD19陽性急性リンパ芽球白血病細胞株NALM-6から得られたものである。
【0458】
簡潔に説明すると、NALM-6-luc-GFPを、RPMI培地+10%FBS中、加湿雰囲気下5%CO、37℃で培養した。NSGマウスを、ジャクソン・ラボラトリーズ社(04609、メーン州バーハーバー、米国)から購入し、実験の前に少なくとも3日間順化させた。NALM-6-luc-GFP細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁し、5×10細胞/100μL/マウスで、尾静脈注射により、雌NSGマウス(n=20、6~8週齢)に静脈内移植した。移植後の4日目に、腫瘍量の評価のために、Xenogen IVISイメージングシステムを用いて、動物をイメージングした。NSGマウスを光子放射に基づいて3群に無作為化した:(i)ビヒクル(PBS、n=6);(ii)10個のモック形質導入ヒトT細胞(n=6);及び(iii)5×10個のクローン5-13抗CD19 CAR形質導入T細胞(CAR-T 5-13、n=8)。上記の通りのT細胞又はビヒクルの移植及び投薬の後、動物を注意深くモニターした。代表的な結果を図14に示す。
【0459】
図14のパネルA及びパネルBに示されるように、ビヒクル処置群及びモック処置群はNALM-6腫瘍成長の急速な進行を示した。対照的に、抗CD19 CAR-T細胞(クローン5-13を基としたもの)による処置は、早くも11日目には、腫瘍成長を有意に(p<0.0001)阻害し、腫瘍成長の巻き戻し(revert)さえ起こした。これらのデータは、CAR-T 5-13細胞が、インビボにおいてCD19NALM-6腫瘍を標的化して溶解したことを証するものであり、それにより、例示的なCARフォーマットで本明細書にて提供される抗CD19抗体が、複数のがんモデルにおける腫瘍成長を阻害するのに有効であることを示すものである。
【0460】
まとめると、本実施例は、前述の実施例に従って作製された抗CD19ヒト抗体剤を基としたキメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞の作製及び使用の成功を示すものである。さらに、そのような抗CD19 CAR-T細胞は、CD19特異的に、種々のがん細胞株を効率的に殺滅した。すなわち、本明細書に記載のヒト抗体剤は、種々のB細胞疾患及び悪性腫瘍、具体的にはCD19発現を特徴とするもの、の治療及び診断で使用することができる。
【0461】
方法
Raji細胞株、Jeko-1細胞株、Jurkat細胞株、THP-1細胞株及びNIH/3T3細胞株はアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)から入手された。Raji細胞株はCD19陽性のバーキットリンパ腫細胞株(ATCC CCL-86)である。Jeko-1細胞株はCD19陽性のマントル細胞リンパ腫細胞株(ATCC CRL-3006)である。Jurkat細胞株は、T細胞白血病由来のヒトTリンパ球細胞株であり、CD19陰性である。THP-1細胞株は、急性単球性白血病細胞株であり、これもCD19陰性(ATCC TIB-202)である。NIH/3T3細胞株はマウス胎仔線維芽細胞株(ATCC CRL-1658)である。Raji-CD19ノックアウト細胞株(Raji-CD19 k.o.)は、市販のCRISPR-Cas9ベクター(オリジン社(Origene))を用いてCD19をノックアウトすることにより作製された。Raji-CD19 k.o.細胞は、配列決定、及び市販のマウス抗ヒトCD19抗体(バイオレジェンド社(BioLegend))を用いたFACS(図12)によって、CD19陰性であることが確認された。3T3-CD19は、NIH/3T3細胞株に、高レベルのhCD19細胞表面発現をもたらすヒトCD19(hCD19)発現哺乳類ベクターを形質導入することにより、作製された(図16)。CA46、Daudi、Hela、HepG2、SK-Hep1、MDA-MB-231及びMCF7等の、CAR-T殺滅アッセイで試験された他の細胞株も、ATCCから購入された。細胞株は、10%FBSが添加されたRPMI1640又はDMEM中、37℃/5%COで培養された。
【0462】
ファージM13に対するマウスモノクローナル抗体はGE社(カタログ番号27-9421-01)から購入された。PE標識抗マウスIgG二次抗体はベクター・ラボラトリーズ社(カタログ番号EI-2007)から購入された。PE結合型マウス抗hCD19抗体はバイオレジェンド社(カタログ番号302208)から購入された。901-Fc及びNC-ET901二重特異性抗体は、エウレカ・セラピューティクス社で作製された、ヒトIgG1フォーマット及び二重特異性抗体フォーマットをそれぞれ有するネガティブコントロール抗体である。前記抗体はいかなるヒト抗原も認識しない。FITC標識抗His抗体は、C末端に6×Hisタグを有する二重特異性抗体の検出用に、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社(カタログ番号MA1-81891)から購入された。PerCP結合型抗ヒトCD20抗体は、ヒトB細胞の検出用に、BD社(9Cat 302208)から購入された。
【0463】
組換えヒトCD19 ECD-Fc融合タンパク質は、C1ドメインを欠くがヒンジ領域を含むヒトIgG1のFcに融合された、ヒトCD19の細胞外ドメインを含む。HEK293(インビトロジェン社)細胞は、リポフェクタミン3000(インビトロジェン社)によって、ヒトCD19 ECD-Fc融合タンパク質をコードするベクターでトランスフェクトされた。融合タンパク質はプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって培養上清から精製された。
【0464】
特定の態様の列挙
本発明は以下に列挙される態様も提供する。
1. ヒトCD19と特異的に結合するヒト抗体剤であって、表2から選択される1若しくは複数の重鎖CDRと少なくとも95%同一である配列を有する1若しくは複数の重鎖CDR、並びに/又は、表3から選択される1若しくは複数の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である配列を有する1若しくは複数の軽鎖CDRを含む、前記ヒト抗体剤。
2. 配列番号73、配列番号74及び配列番号75に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号181、配列番号182及び配列番号183に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
3. 配列番号76、配列番号77及び配列番号78に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号184、配列番号185及び配列番号186に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
4. 配列番号79、配列番号80及び配列番号81に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号187、配列番号188及び配列番号189に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
5. 配列番号82、配列番号83及び配列番号84に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号190、配列番号191及び配列番号192に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
6. 配列番号85、配列番号86及び配列番号87に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号193、配列番号194及び配列番号195に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
7. 配列番号88、配列番号89及び配列番号90に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号196、配列番号197及び配列番号198に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
8. 配列番号91、配列番号92及び配列番号93に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号199、配列番号200及び配列番号201に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
9. 配列番号94、配列番号95及び配列番号96に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号202、配列番号203及び配列番号204に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
10. 配列番号97、配列番号98及び配列番号99に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号205、配列番号206及び配列番号207に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
11. 配列番号100、配列番号101及び配列番号102に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号208、配列番号209及び配列番号210に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
12. 配列番号103、配列番号104及び配列番号105に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号211、配列番号212及び配列番号213に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
13. 配列番号106、配列番号107及び配列番号108に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号214、配列番号215及び配列番号216に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
14. 配列番号109、配列番号110及び配列番号111に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号217、配列番号218及び配列番号219に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
15. 配列番号112、配列番号113及び配列番号114に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号220、配列番号221及び配列番号222に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
16. 配列番号115、配列番号116及び配列番号117に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号223、配列番号224及び配列番号225に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
17. 配列番号118、配列番号119及び配列番号120に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号226、配列番号227及び配列番号228に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
18. 配列番号121、配列番号122及び配列番号123に記載の重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3、並びに、配列番号229、配列番号230及び配列番号231に記載の軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3の各々と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3を含む、態様1に記載のヒト抗体剤。
19. 配列番号73、配列番号74及び配列番号75の重鎖CDR、並びに配列番号181、配列番号182及び配列番号183の軽鎖CDRを含む、態様2に記載のヒト抗体剤。
20. 配列番号76、配列番号77及び配列番号78の重鎖CDR、並びに配列番号184、配列番号185及び配列番号186の軽鎖CDRを含む、態様3に記載のヒト抗体剤。
21. 配列番号79、配列番号80及び配列番号81の重鎖CDR、並びに配列番号187、配列番号188及び配列番号189の軽鎖CDRを含む、態様4に記載のヒト抗体剤。
22. 配列番号82、配列番号83及び配列番号84の重鎖CDR、並びに配列番号190、配列番号191及び配列番号192の軽鎖CDRを含む、態様5に記載のヒト抗体剤。
23. 配列番号85、配列番号86及び配列番号87の重鎖CDR、並びに配列番号193、配列番号194及び配列番号195の軽鎖CDRを含む、態様6に記載のヒト抗体剤。
24. 配列番号88、配列番号89及び配列番号90の重鎖CDR、並びに配列番号196、配列番号197及び配列番号198の軽鎖CDRを含む、態様7に記載のヒト抗体剤。
25. 配列番号91、配列番号92及び配列番号93の重鎖CDR、並びに配列番号199、配列番号200及び配列番号201の軽鎖CDRを含む、態様8に記載のヒト抗体剤。
26. 配列番号94、配列番号95及び配列番号96の重鎖CDR、並びに配列番号202、配列番号203及び配列番号204の軽鎖CDRを含む、態様9に記載のヒト抗体剤。
27. 配列番号97、配列番号98及び配列番号99の重鎖CDR、並びに配列番号205、配列番号206及び配列番号207の軽鎖CDRを含む、態様10に記載のヒト抗体剤。
28. 配列番号100、配列番号101及び配列番号102の重鎖CDR、並びに配列番号208、配列番号209及び配列番号210の軽鎖CDRを含む、態様11に記載のヒト抗体剤。
29. 配列番号103、配列番号104及び配列番号105の重鎖CDR、並びに配列番号211、配列番号212及び配列番号213の軽鎖CDRを含む、態様12に記載のヒト抗体剤。
30. 配列番号106、配列番号107及び配列番号108の重鎖CDR、並びに配列番号214、配列番号215及び配列番号216の軽鎖CDRを含む、態様13に記載のヒト抗体剤。
31. 配列番号109、配列番号110及び配列番号111の重鎖CDR、並びに配列番号217、配列番号218及び配列番号219の軽鎖CDRを含む、態様14に記載のヒト抗体剤。
32. 配列番号112、配列番号113及び配列番号114の重鎖CDR、並びに配列番号220、配列番号221及び配列番号222の軽鎖CDRを含む、態様15に記載のヒト抗体剤。
33. 配列番号115、配列番号116及び配列番号117の重鎖CDR、並びに配列番号223、配列番号224及び配列番号225の軽鎖CDRを含む、態様16に記載のヒト抗体剤。
34. 配列番号118、配列番号119及び配列番号120の重鎖CDR、並びに配列番号226、配列番号227及び配列番号228の軽鎖CDRを含む、態様17に記載のヒト抗体剤。
35. 配列番号121、配列番号122及び配列番号123の重鎖CDR、並びに配列番号229、配列番号230及び配列番号231の軽鎖CDRを含む、態様18に記載のヒト抗体剤。
36. CD19との結合において、以下を含むヒト抗体剤と競合するヒト抗体剤:(a)配列番号73、配列番号74及び配列番号75の重鎖CDR、並びに配列番号181、配列番号182及び配列番号183の軽鎖CDR;(b)配列番号76、配列番号77及び配列番号78の重鎖CDR、並びに配列番号184、配列番号185及び配列番号186の軽鎖CDR;(c)配列番号79、配列番号80及び配列番号81の重鎖CDR、並びに配列番号187、配列番号188及び配列番号189の軽鎖CDR;(d)配列番号82、配列番号83及び配列番号84の重鎖CDR、並びに配列番号190、配列番号191及び配列番号192の軽鎖CDR;(e)配列番号85、配列番号86及び配列番号87の重鎖CDR、並びに配列番号193、配列番号194及び配列番号195の軽鎖CDR;(f)配列番号88、配列番号89及び配列番号90の重鎖CDR、並びに配列番号196、配列番号197及び配列番号198の軽鎖CDR;(g)配列番号91、配列番号92及び配列番号93の重鎖CDR、並びに配列番号199、配列番号200及び配列番号201の軽鎖CDR;(h)配列番号94、配列番号95及び配列番号96の重鎖CDR、並びに配列番号202、配列番号203及び配列番号204の軽鎖CDR;(i)配列番号97、配列番号98及び配列番号99の重鎖CDR、並びに配列番号205、配列番号206及び配列番号207の軽鎖CDR;(j)配列番号100、配列番号101及び配列番号102の重鎖CDR、並びに配列番号208、配列番号209及び配列番号210の軽鎖CDR;(k)配列番号103、配列番号104及び配列番号105の重鎖CDR、並びに配列番号211、配列番号212及び配列番号213の軽鎖CDR;(l)配列番号106、配列番号107及び配列番号108の重鎖CDR、並びに配列番号214、配列番号215及び配列番号216の軽鎖CDR;(m)配列番号109、配列番号110及び配列番号111の重鎖CDR、並びに配列番号217、配列番号218及び配列番号219の軽鎖CDR;(n)配列番号112、配列番号113及び配列番号114の重鎖CDR、並びに配列番号220、配列番号221及び配列番号222の軽鎖CDR;(o)配列番号115、配列番号116及び配列番号117の重鎖CDR、並びに配列番号223、配列番号224及び配列番号225の軽鎖CDR;(p)配列番号118、配列番号119及び配列番号120の重鎖CDR、並びに配列番号226、配列番号227及び配列番号228の軽鎖CDR;又は(q)配列番号121、配列番号122及び配列番号123の重鎖CDR、並びに配列番号229、配列番号230及び配列番号231の軽鎖CDR。
37. 重鎖CDR内及び/又は軽鎖CDR内に1又は複数のアミノ酸置換をさらに含む、態様1~36のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
38. 重鎖CDR内及び/又は軽鎖CDR内に1以上又は5以下のアミノ酸置換をさらに含む、態様37に記載のヒト抗体剤。
39. 重鎖CDR内及び/又は軽鎖CDR内に1以上又は3以下のアミノ酸置換をさらに含む、態様38に記載のヒト抗体剤。
40. ヒトCD19と特異的に結合するヒト抗体剤であって、表1に示される重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、表1に示される軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、前記ヒト抗体剤。
41. 配列番号2に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号2に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
42. 配列番号4に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号4に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
43. 配列番号6に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号6に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
44. 配列番号8に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号8に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
45. 配列番号10に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号10に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
46. 配列番号12に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号12に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
47. 配列番号14に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号14に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
48. 配列番号16に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号16に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
49. 配列番号18に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号18に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
50. 配列番号20に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号20に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
51. 配列番号22に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号22に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
52. 配列番号24に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号24に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
53. 配列番号26に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号26に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
54. 配列番号28に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号28に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
55. 配列番号30に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号30に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
56. 配列番号32に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号32に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
57. 配列番号34に現れる重鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び、配列番号34に現れる軽鎖可変領域配列と少なくとも95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様40に記載のヒト抗体剤。
58. 配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32及び配列番号34のいずれか1つに現れる重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む、態様40~57のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
59. ヒトCD19と特異的に結合するヒト抗体剤であって、親ヒト抗体剤と比べて1又は複数のアミノ酸置換を含み、且つ、以下を含む、前記ヒト抗体剤:(a)配列番号124、配列番号125及び配列番号126の重鎖CDR、並びに配列番号232、配列番号233及び配列番号234の軽鎖CDR;(b)配列番号127、配列番号128及び配列番号129の重鎖CDR、並びに配列番号235、配列番号236及び配列番号237の軽鎖CDR;(c)配列番号130、配列番号131及び配列番号132の重鎖CDR、並びに配列番号238、配列番号239及び配列番号240の軽鎖CDR;(d)配列番号133、配列番号134及び配列番号135の重鎖CDR、並びに配列番号241、配列番号242及び配列番号243の軽鎖CDR;(e)配列番号136、配列番号137及び配列番号138の重鎖CDR、並びに配列番号244、配列番号245及び配列番号246の軽鎖CDR;(f)配列番号139、配列番号140及び配列番号141の重鎖CDR、並びに配列番号247、配列番号248及び配列番号249の軽鎖CDR;(g)配列番号142、配列番号143及び配列番号144の重鎖CDR、並びに配列番号250、配列番号251及び配列番号252の軽鎖CDR;(h)配列番号145、配列番号146及び配列番号147の重鎖CDR、並びに配列番号253、配列番号254及び配列番号255の軽鎖CDR;(i)配列番号148、配列番号149及び配列番号150の重鎖CDR、並びに配列番号256、配列番号257及び配列番号258の軽鎖CDR;(j)配列番号151、配列番号152及び配列番号153の重鎖CDR、並びに配列番号259、配列番号260及び配列番号261の軽鎖CDR;(k)配列番号154、配列番号155及び配列番号156の重鎖CDR、並びに配列番号262、配列番号263及び配列番号264の軽鎖CDR;(l)配列番号157、配列番号158及び配列番号159の重鎖CDR、並びに配列番号265、配列番号266及び配列番号267の軽鎖CDR;(m)配列番号160、配列番号161及び配列番号163の重鎖CDR、並びに配列番号268、配列番号269及び配列番号270の軽鎖CDR;(n)配列番号163、配列番号164及び配列番号165の重鎖CDR、並びに配列番号271、配列番号272及び配列番号273の軽鎖CDR;(o)配列番号166、配列番号167及び配列番号168の重鎖CDR、並びに配列番号274、配列番号275及び配列番号276の軽鎖CDR;(p)配列番号169、配列番号170及び配列番号171の重鎖CDR、並びに配列番号277、配列番号278及び配列番号279の軽鎖CDR;(q)配列番号172、配列番号173及び配列番号174の重鎖CDR、並びに配列番号280、配列番号281及び配列番号282の軽鎖CDR;(r)配列番号175、配列番号176及び配列番号177の重鎖CDR、並びに配列番号283、配列番号284及び配列番号285の軽鎖CDR;又は(s)配列番号178、配列番号179及び配列番号180の重鎖CDR、並びに配列番号286、配列番号287及び配列番号288の軽鎖CDR。
60. 10、16、25、34、52、54、68、69、72、75、93、95及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸位置のいずれかに1又は複数のアミノ酸置換を含む軽鎖可変領域を含む、態様59に記載のヒト抗体剤。
61. 前記1又は複数のアミノ酸置換がV10M、K16E、S25N、V34I、D52N、L54Q、N68T、T69M、L72M、S75N、S93T、D95E、D95G又はこれらの組み合わせを包含する、態様60に記載のヒト抗体剤。
62. 3、12、16、17、25、26、32、63、69、97、102、106、108、109、113、116、117及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸位置のいずれかに1又は複数のアミノ酸置換を含む重鎖可変領域を含む、態様59~61のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
63. 前記1又は複数のアミノ酸置換がQ3R、K12E、E16G、S17F、S25A、G26A、Y32F、S63F、T69A、A97V、T102S、M106L、Y108N、D109E、Q113L、L116M、M117L又はこれらの組み合わせを包含する、態様62に記載のヒト抗体剤。
64. アミノ酸置換S75Nを有する軽鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
65. アミノ酸置換T69Mを有する軽鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
66. アミノ酸置換D52N及びD95Eを有する軽鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
67. アミノ酸置換V10M及びD95Gを有する軽鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
68. アミノ酸置換S93Tを有する軽鎖可変領域、並びにアミノ酸置換S17F及びT69Aを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
69. アミノ酸置換N68Tを有する軽鎖可変領域、並びにアミノ酸置換S17F及びY108Nを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
70. アミノ酸置換S63Fを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
71. アミノ酸置換Q3R、Y32F及びA97Vを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
72. アミノ酸置換K16Eを有する軽鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
73. アミノ酸置換M117Lを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
74. アミノ酸置換L72Mを有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸置換S25Aを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
75. アミノ酸置換T102S及びL116Mを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
76. アミノ酸置換S25N及びV34Iを有する軽鎖可変領域、並びにアミノ酸置換K12E及びD109Eを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
77. アミノ酸置換E16Gを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
78. アミノ酸置換L54Qを有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸置換M106Lを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
79. アミノ酸置換S25Nを有する軽鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
80. アミノ酸置換G26A及びQ113Lを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
81. アミノ酸置換L54Qを有する軽鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
82. アミノ酸置換T102Sを有する重鎖可変領域を含む、態様59~63のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
83. 配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70及び配列番号72のいずれか1つに現れる重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む、態様59~82のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
84. バリアントFc領域を含むヒトモノクローナル抗体である、態様1~83のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
85. 前記ヒトモノクローナル抗体が、野生型Fc領域を含む親ヒトモノクローナル抗体と比べると異なっているグリコシル化パターンを含む、態様84に記載のヒト抗体剤。
86. 治療薬又は検出剤に結合されている、態様1~85のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
87. 細胞傷害性薬剤又は細胞傷害性部分に結合されている、態様1~85のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
88. 放射性同位元素に結合されている、態様1~85のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
89. 免疫グロブリン、Fab、F(ab’)、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)又はdAbであるか、又はそれを含む、態様1~88のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
90. scFvであるか、又はそれを含む、態様89に記載のヒト抗体剤。
91. 前記scFvがリンカー配列を含む、態様90に記載のヒト抗体剤。
92. 前記scFvが治療薬又は検出剤に結合されている、態様90又は91に記載のヒト抗体剤。
93. 前記scFvがキメラ抗原受容体の一部である、態様90又は91に記載のヒト抗体剤。
94. 治療又は診断で使用するための、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
95. CD19発現を特徴とする疾患の治療、予防又は改善で使用するための、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤。
96. がんの治療、予防又は改善で使用するための、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤の使用。
97. 態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤をコードする単離核酸分子。
98. コドン最適化配列を含む、態様97に記載の単離核酸分子。
99. 配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69及び配列番号71のいずれか1つに現れる配列であるか、又はそれを含む、態様97に記載の単離核酸分子。
100. 態様97~99のいずれか1つに記載の単離核酸分子を含むベクター。
101. 態様100に記載のベクターを含む細胞。
102. 態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤、態様97~99のいずれか1つに記載の単離核酸分子、態様100に記載のベクター、又は態様101に記載の細胞を含むキット。
103. 態様97~99のいずれか1つに記載の単離核酸分子を含むワクチン。
104. ヒト抗体剤の発現を可能にする条件下において培地中で態様101に記載の細胞を培養する工程、及び培地からヒト抗体剤を分離する工程を含む、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤の生産法。
105. 態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤を含む組成物。
106. 前記ヒト抗体剤が細胞傷害性薬剤又は細胞傷害性部分に結合されている、態様105に記載の組成物。
107. 態様105若しくは106に記載の組成物又は態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤を含み、且つ、医薬的に許容される担体又は希釈剤をさらに含む、医薬組成物。
108. 対象におけるCD19発現を特徴とする医学的状態を治療する方法であって、治療有効量の、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤を前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
109. CD19発現を特徴とする医学的状態がB細胞リンパ腫、急性リンパ芽球白血病、慢性リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫又は急性骨髄性白血病である、態様108に記載の方法。
110. CD19発現を特徴とする前記医学的状態が関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病又は強皮症である、態様108に記載の方法。
111. 態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤を対象に投与する工程を含む、がんを治療する方法。
112. CD19発現と関連した状態の治療又は検出のための、態様1~93のいずれか1つに記載の抗体剤の使用。
113. 態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤由来の第一の抗原結合部位、及び第二の抗原結合部位を含む、二重特異性抗体。
114. 前記第一及び第二の抗原結合部位がscFvである、態様113に記載の二重特異性抗体。
115. 前記第一の抗原結合部位が免疫グロブリン分子から構成されており、且つ、前記第二の抗原結合部位がscFv、scFab、Fab又はFvから構成されている、態様113に記載の二重特異性抗体。
116. 前記第二の抗原結合部位がT細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、間葉系幹細胞及び神経幹細胞からなる群より選択される免疫細胞と結合する、態様113~115のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
117. 前記第二の抗原結合部位がT細胞上のCD3と結合する、態様116に記載の二重特異性抗体。
118. 態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤の抗原結合部位を含む、二重特異性T細胞動員モノクローナル抗体。
119. 治療又は診断で使用するための、態様113~118のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
120. 態様113~118のいずれか1つに記載の二重特異性抗体のポリペプチド鎖を全体又は一部としてコードする単離核酸分子。
121. コドン最適化配列を含む、態様120に記載の単離核酸分子。
122. 態様120又は121に記載の核酸配列を含むベクター。
123. 態様122に記載のベクターを含む細胞。
124. 態様113~118のいずれか1つに記載の二重特異性抗体、態様120又は121に記載の単離核酸分子、態様122に記載のベクター、又は態様123に記載の細胞を含む、キット。
125. 態様113~118のいずれか1つに記載の二重特異性抗体を含む組成物。
126. 態様125に記載の組成物又は態様113~118のいずれか1つに記載の二重特異性抗体を含み、且つ、医薬的に許容される担体又は希釈剤をさらに含む、医薬組成物。
127. 態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤の抗原結合部位を含むキメラ抗原受容体。
128. 抗原結合部位がscFvであるか、又はそれを含む、態様127に記載のキメラ抗原受容体。
129. 抗原結合部位がV領域であるか、又はそれを含む、態様127に記載のキメラ抗原受容体。
130. 前記V領域が以下の軽鎖CDRを含む、態様129に記載のキメラ抗原受容体:(a)配列番号181、配列番号182及び配列番号183;(b)配列番号184、配列番号185及び配列番号186;(c)配列番号187、配列番号188及び配列番号189;(d)配列番号190、配列番号191及び配列番号192;(e)配列番号193、配列番号194及び配列番号195;(f)配列番号196、配列番号197及び配列番号198;(g)配列番号199、配列番号200及び配列番号201;(h)配列番号202、配列番号203及び配列番号204;(i)配列番号205、配列番号206及び配列番号207;
(j)配列番号208、配列番号209及び配列番号210;(k)配列番号211、配列番号212及び配列番号213;(l)配列番号214、配列番号215及び配列番号216;(m)配列番号217、配列番号218及び配列番号219;(n)配列番号220、配列番号221及び配列番号222;(o)配列番号223、配列番号224及び配列番号225;(p)配列番号226、配列番号227及び配列番号228;(q)配列番号229、配列番号230及び配列番号231;(r)配列番号232、配列番号233及び配列番号234;(s)配列番号235、配列番号236及び配列番号237;(t)配列番号238、配列番号239及び配列番号240;(u)配列番号241、配列番号242及び配列番号243;(v)配列番号244、配列番号245及び配列番号246;(w)配列番号247、配列番号248及び配列番号249;(x)配列番号250、配列番号251及び配列番号252;(y)配列番号253、配列番号254及び配列番号255;(z)配列番号256、配列番号257及び配列番号258;(ab)配列番号259、配列番号260及び配列番号261;(ac)配列番号262、配列番号263及び配列番号264;(ad)配列番号265、配列番号266及び配列番号267;(ae)配列番号268、配列番号269及び配列番号270;(af)配列番号271、配列番号272及び配列番号273;(ag)配列番号274、配列番号275及び配列番号276;(ah)配列番号277、配列番号278及び配列番号279;(ai)配列番号280、配列番号281及び配列番号282;(aj)配列番号283、配列番号284及び配列番号285;又は(ak)配列番号286、配列番号287及び配列番号288。
131. 前記V領域が以下の配列番号のいずれか1つに現れる配列を含む、態様129に記載のキメラ抗原受容体:配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70及び配列番号72。
132. 抗原結合部位がV領域であるか、又はそれを含む、態様127に記載のキメラ抗原受容体。
133. 前記V領域が以下の重鎖CDRを含む、態様132に記載のキメラ抗原受容体:(a)配列番号73、配列番号74及び配列番号75;(b)配列番号76、配列番号77及び配列番号78;(c)配列番号79、配列番号80及び配列番号81;(d)配列番号82、配列番号83及び配列番号84;(e)配列番号85、配列番号86及び配列番号87;(f)配列番号88、配列番号89及び配列番号90;(g)配列番号91、配列番号92及び配列番号93;(h)配列番号94、配列番号95及び配列番号96;(i)配列番号97、配列番号98及び配列番号99;(j)配列番号100、配列番号101及び配列番号102;(k)配列番号103、配列番号104及び配列番号105;(l)配列番号106、配列番号107及び配列番号108;(m)配列番号109、配列番号110及び配列番号111;(n)配列番号112、配列番号113及び配列番号114;(o)配列番号115、配列番号116及び配列番号117;(p)配列番号118、配列番号119及び配列番号120;(q)配列番号121、配列番号122及び配列番号123;(r)配列番号124、配列番号125及び配列番号126;(s)配列番号127、配列番号128及び配列番号129;(t)配列番号130、配列番号131及び配列番号132;(u)配列番号133、配列番号134及び配列番号135;(v)配列番号136、配列番号137及び配列番号138;(w)配列番号139、配列番号140及び配列番号141;(x)配列番号142、配列番号143及び配列番号144;(y)配列番号145、配列番号146及び配列番号147;(z)配列番号148、配列番号149及び配列番号150;(ab)配列番号151、配列番号152及び配列番号153;(ac)配列番号154、配列番号155及び配列番号156;(ad)配列番号157、配列番号158及び配列番号159;(ae)配列番号160、配列番号161及び配列番号163;(af)配列番号163、配列番号164及び配列番号165;(ag)配列番号166、配列番号167及び配列番号168;(ah)配列番号169、配列番号170及び配列番号171;(ai)配列番号172、配列番号173及び配列番号174;(aj)配列番号175、配列番号176及び配列番号177;又は(ak)配列番号178、配列番号179及び配列番号180。
134. 前記V領域が以下の配列番号のいずれか1つに現れる配列を含む、態様132に記載のキメラ抗原受容体:配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70及び配列番号72。
135. 治療又は診断で使用するための、態様127~134のいずれか1つに記載のキメラ抗原受容体。
136. CD19発現を特徴とする疾患の治療、予防又は改善で使用するための、態様127~134のいずれか1つに記載のキメラ抗原受容体。
137. 態様127~134のいずれか1つに記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
138. コドン最適化配列を含む、態様137に記載の単離核酸分子。
139. 態様127~134のいずれか1つに記載のキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞。
140. T細胞又はNK細胞である、態様139に記載の免疫エフェクター細胞。
141. 治療又は診断で使用するための、態様139又は態様140に記載の免疫エフェクター細胞。
142. CD19発現を特徴とする疾患の治療、予防又は改善で使用するための、態様139又は態様140に記載の免疫エフェクター細胞。
143. 態様127~134のいずれか1つに記載のキメラ抗原受容体、態様137若しくは態様138に記載の単離核酸分子、又は態様139若しくは態様140に記載の免疫エフェクター細胞を含む、キット。
144. CD19発現と関連した医学的状態の治療又は検出のための、態様127~134のいずれか1つに記載のキメラ抗原受容体の使用。
145. 腫瘍増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞と、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤を基とした第一の抗原結合部位及び免疫細胞と結合する第二の抗原結合部位から構成される二重特異性抗体とを接触させる工程を含み、前記接触は腫瘍細胞の殺滅が認められるのに十分な条件及び時間で実行される、前記方法。
146. 腫瘍細胞を殺滅する方法であって、腫瘍細胞と、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤を基とした第一の抗原結合部位及び免疫細胞と結合する第二の抗原結合部位から構成される二重特異性抗体とを接触させる工程を含み、前記接触は腫瘍細胞増殖の阻害が認められるのに十分な条件及び時間で実行される、前記方法。
147. 前記免疫細胞がT細胞又はNK細胞である、態様145又は態様146に記載の方法。
148. 前記第一及び第二の抗原結合部位がscFvである、態様145~147のいずれか1つに記載の方法。
149. 前記第二の抗原結合部位がT細胞上のCD3と結合する、態様148に記載の方法。
150. 腫瘍増殖の阻害において使用するための、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤を基とした第一の抗原結合部位及び免疫細胞と結合する第二の抗原結合部位から構成される二重特異性抗体。
151. 腫瘍細胞の殺滅において使用するための、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤を基とした第一の抗原結合部位及び免疫細胞と結合する第二の抗原結合部位から構成される二重特異性抗体。
152. T細胞にCD19を発現する標的細胞の殺滅を指示する方法であって、1又は複数のCD19発現標的細胞と、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤の第一の抗原結合部位及びT細胞上のCD3と結合する第二の抗原結合部位を含む二重特異性抗体とを接触させる工程を含み、前記接触は前記二重特異性抗体が結合しているT細胞がCD19発現標的細胞の殺滅を媒介するのに十分な条件及び時間で実行される、前記方法。
153. 前記第一及び第二の抗原結合部位がscFvである、態様152に記載の方法。
154. T細胞へのCD19発現標的細胞の殺滅の指示において使用するための、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤を基とした第一の抗原結合部位及びT細胞上のCD3と結合する第二の抗原結合部位から構成される二重特異性抗体。
155. CD19と特異的に結合する第一のscFv及びT細胞上のCD3と特異的に結合する第二のscFvを含む二重特異性抗体であって、前記第一のscFvのN末端が前記第二のscFvのC末端に連結されており、且つ、前記第一のscFvが配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70及び配列番号72のいずれか1つを含む、前記二重特異性抗体。
156. 前記第一のscFvのN末端がリンカー配列を介して前記第二のscFvのC末端に連結されている、態様155に記載の二重特異性抗体。
157. 前記リンカー配列が(GS)リンカーを含む、態様156に記載の二重特異性抗体。
158. nが1、2、3、4又は5と等しい、態様157に記載の二重特異性抗体。
159. 前記リンカー配列がSRGGGGSGGGGSGGGGSLEMA(配列番号289)であるか、又はそれを含む、態様156に記載の二重特異性抗体。
160. 態様155~159のいずれか1つに記載の二重特異性抗体を含み、且つ、医薬的に許容される担体又は希釈剤をさらに含む、医薬組成物。
161. 治療又は診断で使用するための、態様155~159のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
162. 態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤の抗原結合部位、及び細胞傷害性薬剤又は細胞傷害性部分を含む、抗体-薬物複合体。
163. CD19関連疾患に罹患した対象、若しくはその素因を有する対象を診断するための、又は前記対象の状態の予後予測を与えるためのキットであって、前記キットは試験対象から得られた試料中に存在するCD19の濃度を検出するための検出手段を含み、前記検出手段は、各々所望により誘導体化されていてもよい、態様1~93のいずれか1つに記載のヒト抗体剤の抗原結合部位、態様113~118及び態様155~159のいずれか1つに記載の二重特異性結合剤、態様127~134のいずれか1つに記載のキメラ抗原受容体、又は態様138若しくは態様139に記載の免疫エフェクター細胞を含み、前記試料中のCD19の存在によって前記対象がCD19関連疾患に罹患していることが示される、前記キット。
【0465】
均等物
特許請求の範囲における、「第一の」、「第二の」、「第三の」等の順序を示す語の使用によるクレーム構成要素の修飾は、それ自体は、あるクレーム構成要素の別のクレーム構成要素に対する、いかなる優先(priority)、優先(precedence)、若しくは序列(order)も、又はある方法の行為が実行される時間的順序も意味しておらず、ある特定の名称を有するあるクレーム構成要素を、同じ名称(順序を示す語の使用は除く)を有する別のクレーム構成要素と区別することで、これらのクレーム構成要素を区別するための、単なる標示として使用されている。
【0466】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される、冠詞「a」及び「an」は、反対の趣旨が示されていない限り、複数の指示対象を包含すると理解されるべきである。ある群の1又は複数の構成要素の間に「又は」を含むクレーム又は記述は、反対の趣旨が示されていない限り、又は文脈から明らかでない限り、前記群の構成要素の1、2以上、又は全てが、所与の製品又は工程に存在していれば、それに使用されていれば、又はそれに関連していれば、満たされているものとする。本発明は、前記群の厳密に1つの構成要素が所与の製品又は工程に存在している、それに使用されている、又はそれに関連している、実施形態を包含する。また本発明は、前記群の2以上又は全ての構成要素が所与の製品又は工程に存在している、それに使用されている、又はそれに関連している、実施形態も包含する。さらに、特に記載がない限り、又は矛盾又は不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、本発明には、列挙されたクレームのうちの1又は複数からの1又は複数の限定、構成要素、節、記述用語等が、同じ基本クレームに従属した(又は、関連するあらゆる他のクレームとしての)別のクレームに導入された、全ての変形形態、組み合わせ、及び置き換えが包含されることを理解されたい。構成要素が列挙として(例えば、マーカッシュ群形式又は類似の形式で)示されている場合、その構成要素の各々の部分群も開示されており、任意の要素(複数可)をその群から除去できることを理解されたい。一般に、本発明又は本発明の態様が、特定の構成要素、特徴等を含むものとして言及される場合、本発明又は本発明の態様の特定の実施形態は、係る構成要素、特徴等からなる、又は本質的になることが理解されよう。本明細書では簡素化のために、それらの実施形態は、あらゆる場合において、それほど多くの言葉では、具体的に記載されていない。また、本発明のあらゆる実施形態又は態様は、特定の除外が本明細書に記載されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲から明確に除外できることを理解されたい。発明の背景の記述及びその実施に関するさらなる詳細の提供のために本明細書で引用された刊行物、ウェブサイト及び他の参考資料は、参照によって本明細書に援用される。
【0467】
本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの側面についてこれまで説明したが、様々な変更、修正、及び改善が当業者には容易に明らかになることが理解されよう。そのような変更、修正、及び改善は本開示の一部であることが意図されており、本発明の精神及び範囲に含まれることが意図されている。したがって、上記の説明及び図面は単なる例示であり、本発明は以下の特許請求の範囲によって詳細に記述される。
図1
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【配列表】
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