(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20220204BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20220204BHJP
G06F 1/26 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
H02M3/00 W
H02M3/00 B
H02M3/00 U
H02J1/00 306K
G06F1/26
(21)【出願番号】P 2017201783
(22)【出願日】2017-10-18
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】箱田 康徳
(72)【発明者】
【氏名】田中 正幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 圭一
(72)【発明者】
【氏名】馬場崎 忠利
(72)【発明者】
【氏名】臼井 健一
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-304690(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136475(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0022685(US,A1)
【文献】特開平10-094252(JP,A)
【文献】特開2006-345608(JP,A)
【文献】特開2007-274868(JP,A)
【文献】特開2006-034047(JP,A)
【文献】特開2001-112169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00,7/00
H02J 1/00
G06F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力が共通化された複数の電源部と、
前記複数の電源部のそれぞれに割り当てられた識別情報と、起動時刻が分散するように設定された遅延時間と、を対応付けた遅延テーブル情報に基づいて、前記識別情報が割り当てられた前記電源部に対して、当該識別情報に対応する前記遅延時間により遅延させて起動を開始させる起動制御部と
、
前記複数の電源部のそれぞれは、前記起動制御部と、
前記電源部が接続される複数の接続部と
を備え
、
前記起動制御部は、前記遅延テーブル情報に基づいて、前記起動制御部を備える前記電源部に割り当てられた前記識別情報に対応する前記遅延時間により遅延させて起動を開始させ、
前記複数の電源部のそれぞれは、前記接続部に着脱可能に構成されており、
前記複数の接続部のそれぞれには、アドレス情報が割り当てられており、
前記接続部は、前記アドレス情報を設定し、当該アドレス情報を示す電気信号を供給するアドレス設定部を備え、前記電源部が接続された場合に、当該接続部に割り当てられている前記アドレス情報を示す電気信号を、前記識別情報として前記電源部に供給する
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記複数の電源部に対して1つの前記起動制御部を備え、
前記起動制御部は、前記遅延テーブル情報に基づいて、前記複数の電源部に対して順次起動を開始させる
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電源部は、
入力された直流電圧を昇圧する昇圧部と、
前記昇圧部が昇圧した昇圧電圧と、前記直流電圧とのいずれかを所定の出力電圧に変換する変換部と
を備え、
前記起動制御部は、前記遅延テーブル情報に基づいて、前記識別情報が割り当てられた前記電源部が備える前記昇圧部を起動する
ことを特徴とする請求項1
又は請求項
2に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の電源部を備え、各電源部の出力を並列に動作させる電源装置が知られている。このような電源装置では、電源部を並列に動作させる台数に比例して起動電流(入力電流)が大きくなるため、例えば、入力電力線のインピーダンスが大きい場合に、入力電圧が低下することがある。このような入力電圧の低下を低減するために、従来の電源装置では、例えば、第1順位の電源部の定電流動作を検知して、第2順位の電源部を起動させるように順次段階的に各電源部を起動させることを行っていた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の電源装置では、1つの順位の電源部を起動した後に、次の順位の電源部を起動するため、例えば、起動できない電源部がある場合に、電源装置が起動できない、又は電源部の起動に時間がかかる場合に、電源装置の起動に時間が掛かるなど、適切に起動できないことがあった。このように、従来の電源装置では、適切に起動させつつ、起動時の入力電流を低減することができない場合があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、適切に起動させつつ、起動時の入力電流を低減することができる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、入力が共通化された複数の電源部と、前記複数の電源部のそれぞれに割り当てられた識別情報と、起動時刻が分散するように設定された遅延時間と、を対応付けた遅延テーブル情報に基づいて、前記識別情報が割り当てられた前記電源部に対して、当該識別情報に対応する前記遅延時間により遅延させて起動を開始させる起動制御部と、前記複数の電源部のそれぞれは、前記起動制御部と、前記電源部が接続される複数の接続部とを備え、前記起動制御部は、前記遅延テーブル情報に基づいて、前記起動制御部を備える前記電源部に割り当てられた前記識別情報に対応する前記遅延時間により遅延させて起動を開始させ、前記複数の電源部のそれぞれは、前記接続部に着脱可能に構成されており、前記複数の接続部のそれぞれには、アドレス情報が割り当てられており、前記接続部は、前記アドレス情報を設定し、当該アドレス情報を示す電気信号を供給するアドレス設定部を備え、前記電源部が接続された場合に、当該接続部に割り当てられている前記アドレス情報を示す電気信号を、前記識別情報として前記電源部に供給することを特徴とする電源装置である。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の電源装置において、前記複数の電源部に対して1つの前記起動制御部を備え、前記起動制御部は、前記遅延テーブル情報に基づいて、前記複数の電源部に対して順次起動を開始させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の電源装置において、前記電源部は、入力された直流電圧を昇圧する昇圧部と、前記昇圧部が昇圧した昇圧電圧と、前記直流電圧とのいずれかを所定の出力電圧に変換する変換部とを備え、前記起動制御部は、前記遅延テーブル情報に基づいて、前記識別情報が割り当てられた前記電源部が備える前記昇圧部を起動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、起動制御部が、複数の電源部のそれぞれに割り当てられた識別情報と、起動時刻が分散するように設定された遅延時間とを対応付けた遅延テーブル情報に基づいて、識別情報が割り当てられた電源部に対して、当該識別情報に対応する遅延時間により、順次起動を開始させる。これにより、電源装置は、例えば、電源装置が起動できない、又は電源装置の起動に時間が掛かることなく、起動時の入力電流を低減することができる。よって、電源装置は、適切に起動させつつ、起動時の入力電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態による電源装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】第1の実施形態による遅延テーブル情報の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態による電源装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第1の実施形態による電源装置の動作及び効果を説明する図である。
【
図5】第2の実施形態による電源装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】第2の実施形態による電源装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第3の実施形態による電源装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図8】第3の実施形態における昇圧部の構成例を示す図である。
【
図9】第3の実施形態による電源装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第3の実施形態による電源装置の動作及び効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による電源装置について図面を参照して説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態による電源装置1の一例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、電源装置1は、複数の接続コネクタ(10-1、10-2、・・・)と、複数の電源部(100-1、100-2、・・・)とを備えている。電源装置1は、直流電源2から供給される入力電圧Vinを変換した出力電圧Voutを出力する。
【0016】
なお、接続コネクタ10-1、接続コネクタ10-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1が備える任意の接続コネクタを示す場合、又は特に区別しない場合には、接続コネクタ10として説明する。
また、電源部100-1、電源部100-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1が備える任意の電源部を示す場合、又は特に区別しない場合には、電源部100として説明する。
【0017】
接続コネクタ10(接続部の一例)は、例えば、電源部100の基板を装着するスロットに備えられたコネクタであり、電源部100が接続される。接続コネクタ10は、接続された電源部100に、直流電源2から供給された入力電圧Vinを供給する。また、接続コネクタ10は、例えば、スロットごとにユニークなアドレス情報(識別情報の一例)が定められており、当該接続コネクタ10に接続された電源部100に、当該アドレス情報を供給する。すなわち、接続コネクタ10には、アドレス情報が割り当てられており、接続コネクタ10は、電源部100が接続された場合に、当該接続コネクタ10に割り当てられているアドレス情報を示す電気信号を、識別情報として電源部100に供給する。
【0018】
また、複数の接続コネクタ10のそれぞれには、異なるアドレス情報が設定されているアドレス設定部(20-1、20-2、・・・)のいずれかを備えている。例えば、接続コネクタ10-1は、アドレス設定部20-1を備え、接続コネクタ10-2は、アドレス設定部20-2を備えている。
【0019】
なお、アドレス設定部20-1、アドレス設定部20-2、・・・は、電源装置1が備える任意のアドレス設定部を示す場合、又は特に区別しない場合には、アドレス設定部20として説明する。接続コネクタ10は、アドレス設定部20を備えている。
【0020】
アドレス設定部20は、アドレス情報を設定し、当該アドレス情報を示す電気信号を、接続コネクタ10を介して電源部100に供給する。
【0021】
複数の電源部100は、入力が共通化されており、直流電源2から供給される入力電圧Vinにより、それぞれが並列に動作する。また、複数の電源部100は、出力が共通化されており、それぞれが出力電圧Voutを出力する。
【0022】
また、電源部100は、接続コネクタ10に着脱可能に構成されており、接続コネクタ10に装着されることにより、上述したアドレス情報が、識別情報として割り当てられる。例えば、電源部100-1には、アドレス情報“アドレス1”が割り付けられ、電源部100-2には、アドレス情報“アドレス2”が割り付けられている。また、電源部100は、テーブル情報記憶部30と、起動制御部40と、DC/DC変換部50とを備えている。
【0023】
なお、電源部100-1が備えるテーブル情報記憶部30を、テーブル情報記憶部30-1とし、電源部100-2が備えるテーブル情報記憶部30を、テーブル情報記憶部30-2とする。テーブル情報記憶部30-1、テーブル情報記憶部30-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1が備える任意のテーブル情報記憶部を示す場合、又は特に区別しない場合には、テーブル情報記憶部30として説明する。
また、電源部100-1が備える起動制御部40を、起動制御部40-1とし、電源部100-2が備える起動制御部40を、起動制御部40-2とする。起動制御部40-1、起動制御部40-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1が備える任意の起動制御部を示す場合、又は特に区別しない場合には、起動制御部40として説明する。
【0024】
また、電源部100-1が備えるDC/DC変換部50を、DC/DC変換部50-1とし、電源部100-2が備えるDC/DC変換部50を、DC/DC変換部50-2とする。DC/DC変換部50-1、DC/DC変換部50-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1が備える任意のDC/DC変換部を示す場合、又は特に区別しない場合には、DC/DC変換部50として説明する。
【0025】
テーブル情報記憶部30は、複数の電源部100のそれぞれに割り当てられた識別情報と、起動時刻が分散するように設定された遅延時間と、を対応付けた遅延テーブル情報を記憶する。ここで、
図2を参照して、テーブル情報記憶部30が記憶する遅延テーブル情報について説明する。
【0026】
図2は、本実施形態による遅延テーブル情報の一例を示す図である。
図2に示すように、遅延テーブル情報には、「遅延時間」と、「アドレス情報」とが対応付けられている。「遅延時間」は、例えば、複数の電源部100の起動時間が分散するように予め定められている。なお、
図2に示す遅延テーブル情報は、電源部100が6台である場合の一例を示している。
【0027】
図2に示す例では、遅延テーブル情報は、「遅延時間」が“0”において、「アドレス情報」が“アドレス1”に割り当てられた電源部100を起動し、「遅延時間」が“t”において、「アドレス情報」が“アドレス2”に割り当てられた電源部100を起動することを示している。また、遅延テーブル情報は、「遅延時間」が“2t”において、「アドレス情報」が“アドレス3”に割り当てられた電源部100を起動し、「遅延時間」が“3t”において、「アドレス情報」が“アドレス4”に割り当てられた電源部100を起動することを示している。また、遅延テーブル情報は、「遅延時間」が“4t”において、「アドレス情報」が“アドレス5”に割り当てられた電源部100を起動し、「遅延時間」が“5t”において、「アドレス情報」が“アドレス6”に割り当てられた電源部100を起動することを示している。
【0028】
テーブル情報記憶部30は、このように「遅延時間」と、「アドレス情報」とを対応付けた遅延テーブル情報を記憶している。なお、本実施形態では、テーブル情報記憶部30-1、テーブル情報記憶部30-2、・・・は、同一の遅延テーブル情報を記憶しているものとする。
【0029】
DC/DC変換部50(変換部の一例)は、直流電源2から供給された電圧(入力電圧Vin)を、出力電圧Voutに変換するDC/DCコンバータである。DC/DC変換部50は、起動制御部40から供給される起動信号に応じて、動作を開始して起動する。
【0030】
起動制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、電源装置1の起動などを制御する。起動制御部40は、遅延テーブル情報に基づいて、識別情報(アドレス情報)が割り当てられた電源部100に対して、当該識別情報(アドレス情報)に対応する遅延時間により遅延させて起動を開始させる。すなわち、起動制御部40は、遅延テーブル情報に基づいて、当該起動制御部40を備える電源部100に割り当てられた識別情報に対応する遅延時間により遅延させて起動を開始させる。
【0031】
具体的に、起動制御部40は、アドレス設定部20によって電源部100に割り当てられたアドレス情報を取得する。さらに、起動制御部40は、テーブル情報記憶部30が記憶する遅延テーブル情報を取得し、遅延テーブル情報のうちから自身の電源部100に割り当てられたアドレス情報に対応する遅延時刻によりDC/DC変換部50に起動信号を出力して、DC/DC変換部50の起動を開始させる。ここで、自身の電源部100とは、例えば、自身の起動制御部40が備えられている電源部100のことである。
【0032】
例えば、電源部100-1のアドレス情報が、“アドレス1”に割り当てられている場合に、電源部100-1が備える起動制御部40-1は、
図2に示す遅延テーブル情報に基づいて、遅延時間の“0”経過後に、DC/DC変換部50-1に起動信号を出力する。また、例えば、電源部100-2のアドレス情報が、“アドレス2”に割り当てられている場合に、電源部100-2が備える起動制御部40-2は、
図2に示す遅延テーブル情報に基づいて、遅延時間の“t”経過後に、DC/DC変換部50-2に起動信号を出力する。
【0033】
次に、図面を参照して、本実施形態による電源装置1の動作について説明する。
図3は、本実施形態による電源装置1の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、本実施形態による電源装置1の起動処理について説明する。
【0034】
図3に示すように、電源装置1の起動制御部40は、まず、アドレス情報を取得する(ステップS101)。起動制御部40は、アドレス設定部20に設定されたアドレス情報を、自身の電源部100が接続された接続コネクタ10を介して取得する。すなわち、起動制御部40は、自身の電源部100に割り当てられたアドレス情報を取得する。
【0035】
次に、起動制御部40は、遅延テーブル情報からアドレス情報に対応する遅延時間を取得する(ステップS102)。起動制御部40は、例えば、テーブル情報記憶部30が記憶する遅延テーブル情報のうちから、自身の電源部100に割り当てられたアドレス情報に対応する遅延時刻を取得する。起動制御部40は、遅延時刻を取得後に、待機状態になる。
【0036】
次に、起動制御部40は、電源部100の起動開始であるか否かを判定する(ステップS103)。起動制御部40は、例えば、電源部100の起動開始のトリガー信号を受信したか否かを判定する。起動制御部40は、起動開始のトリガー信号を受信した場合(ステップS103:YES)に、待機状態を解除して遅延時間のカウントを開始し、処理をステップS104に進める。また、起動制御部40は、起動開始のトリガー信号を受信していない場合(ステップS103:NO)に、待機状態を維持し、ステップS103の処理を繰り返す(起動開始のトリガー信号の受信を待つ)。
【0037】
次に、起動制御部40は、遅延時刻に達したか否かを判定する(ステップS104)。すなわち、起動制御部40は、例えば、タイマー(不図示)などにより時間を計時して、取得した自身の電源部100に割り当てられたアドレス情報に対応する遅延時刻に達したか否かを判定する。起動制御部40は、遅延時刻に達した場合(ステップS104:YES)に、処理をステップS105に進める。また、起動制御部40は、遅延時刻に達していない場合(ステップS104:NO)に、処理をステップS104に戻す。
【0038】
ステップS105において、起動制御部40は、電源部100(起動制御部40が備えられている電源部100)を起動させる。起動制御部40は、DC/DC変換部50に起動信号を出力して、DC/DC変換部50の動作を開始させて、電源部100を起動させる。ステップS105の処理後に、起動制御部40は、電源装置1の起動処理を終了する。
【0039】
なお、本実施形態では、上述した電源装置1の起動処理は、複数の電源部100のそれぞれが備える各起動制御部40によって実行される。すなわち、本実施形態では、起動制御部40-1、起動制御部40-2、・・・のそれぞれが、上述した電源装置1の起動処理を実行する。
【0040】
次に、電源部100を同時に起動する従来の電源装置と、本実施形態による電源装置1とを比較して、本実施形態による電源装置1の動作及び効果を説明する図である。
図4は、本実施形態による電源装置1の動作及び効果を説明する図である。
図4(a)は、電源部100を同時に起動する従来の電源装置の動作を示している。また、
図4(b)は、本実施形態による電源装置1の動作を示している。なお、
図4に示す例は、電源部100が6台である場合の一例を示している。
【0041】
図4(a)において、各グラフの縦軸は、上から順に、電源部100(DC/DC変換部50)の運転台数、起動電流、及び入力電圧Vinを示し、横軸は、時間を示している。また、波形W1~W3は、上から順に、電源部100(DC/DC変換部50)の運転台数の波形、起動電流の波形、及び入力電圧Vinの波形を示している。ここで、起動電流(波形W2)、及び入力電圧Vin(波形W3)は、従来の電源装置の入力電流及び入力電圧Vinを示している。
【0042】
また、
図4(b)において、各グラフの縦軸は、上から順に、電源部100(DC/DC変換部50)の運転台数、起動電流、及び入力電圧Vinを示し、横軸は、時間を示している。また、波形W4~W6は、上から順に、電源部100(DC/DC変換部50)の運転台数の波形、起動電流の波形、及び入力電圧Vinの波形を示している。ここで、起動電流(波形W5)、及び入力電圧Vin(波形W6)は、本実施形態の電源装置1の入力電流及び入力電圧Vinを示している。
【0043】
図4(a)に示すように、電源部100を同時に起動する従来の電源装置では、6台の電源部100が同時に起動するため(波形W1参照)、突入電流により起動電流が通常動作電流I1よりも大幅に上昇する(波形W2参照)。そのため、入力電圧Vinが、起動時に入力電圧値V1から大幅に低下する(波形W3参照)。
【0044】
これに対して、本実施形態による電源装置1では、
図4(b)に示すように、電源部100が遅延テーブル情報に基づいて、起動時刻が分散される(波形W4参照)。そのため、本実施形態による電源装置1では、起動電流が各電源部100の順次起動に応じて、徐々に上昇するため、急激な電流増加を抑えて通常動作電流I1となる(波形W5参照)。また、入力電圧Vinが、電源部100を同時に起動する従来の電源装置に比べて、起動時に入力電圧値V1から大幅に低下することはない(波形W6参照)。
このように、本実施形態による電源装置1は、電源部100の起動時刻を分散させるため、電源部100を同時に起動する従来の電源装置に比べて、起動電流を低減することができ、起動時における入力電圧Vinの低下を低減することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態による電源装置1は、入力が共通化された複数の電源部100と、起動制御部40とを備える。起動制御部40は、複数の電源部100のそれぞれに割り当てられた識別情報と、起動時刻が分散するように設定された遅延時間と、を対応付けた遅延テーブル情報に基づいて、識別情報が割り当てられた電源部100に対して、当該識別情報に対応する遅延時間により遅延させて起動を開始させる。
【0046】
これにより、起動制御部40が、遅延テーブル情報に基づいて、電源部100を順次起動を開始させるため、本実施形態による電源装置1は、例えば、電源装置1が起動できない、又は電源装置1の起動に時間が掛かることなく、起動時の入力電流を低減することができる。よって、本実施形態による電源装置1は、適切に起動させつつ、起動時の入力電流を低減することができる。
また、本実施形態による電源装置1は、上述した
図4(b)に示すように、起動時の入力電流を低減することができるため、例えば、入力の配線インピーダンスが比較的大きい場合や、インダクタンス成分が大きい場合などであっても、入力電圧Vinの低下を低減することができる。よって、本実施形態による電源装置1は、安定した出力電圧Voutを出力することができる。
【0047】
また、本実施形態では、複数の電源部100のそれぞれは、起動制御部40を備え、起動制御部40は、遅延テーブル情報に基づいて、起動制御部40を備える電源部100に割り当てられた識別情報に対応する遅延時間により遅延させて起動を開始させる。
これにより、本実施形態による電源装置1は、各起動制御部40により分散処理を行うことができ、電源部100の外部に起動制御部を設けて、電源部100の起動を集中管理する必要がない。
【0048】
また、本実施形態による電源装置1は、電源部100が接続される複数の接続コネクタ10(接続部)を備える。複数の電源部100のそれぞれは、接続コネクタ10に着脱可能に構成されている。複数の接続コネクタ10のそれぞれには、アドレス情報が割り当てられており、接続コネクタ10は、電源部100が接続された場合に、当該接続コネクタ10に割り当てられているアドレス情報を示す電気信号を、識別情報として電源部100に供給する。
【0049】
これにより、本実施形態による電源装置1は、接続コネクタ10に電源部100を接続する簡易な手法により、電源部100に識別情報(アドレス情報)を適切に割り当てることができる。また、本実施形態による電源装置1は、接続コネクタ10に電源部100を接続するだけで、電源部100に自動的にアドレス情報を設定できるため、アドレス情報を設定する上での利便性を向上さえることができる。また、本実施形態による電源装置1は、例えば、電源部100が故障した際に、容易に電源部100を交換することができ、メンテナンス性(保守性)を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、接続コネクタ10は、アドレス情報を設定し、当該アドレス情報を示す電気信号を供給するアドレス設定部20を備える。
これにより、本実施形態による電源装置1は、簡易な手法により、電源部100に適切にアドレス情報を供給することができる。
【0051】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照して、第2の実施形態による電源装置1aについて説明する。
上述した第1の実施形態では、複数の電源部100のそれぞれが、起動制御部40を備える一例を説明したが、本実施形態では、電源部100の外部に、1つの起動制御部40aを備える場合の一例について説明する。
【0052】
図5は、本実施形態による電源装置1aの一例を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、電源装置1aは、複数の接続コネクタ(10a-1、10a-2、・・・)と、複数の電源部(100a-1、100a-2、・・・)と、起動制御部40aと、テーブル情報記憶部30とを備えている。電源装置1aは、直流電源2から供給される入力電圧Vinを変換した出力電圧Voutを出力する。
【0053】
なお、接続コネクタ10a-1、接続コネクタ10a-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1aが備える任意の接続コネクタを示す場合、又は特に区別しない場合には、接続コネクタ10aとして説明する。
また、電源部100a-1、電源部100a-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1aが備える任意の電源部を示す場合、又は特に区別しない場合には、電源部100aとして説明する。
【0054】
なお、
図5において、上述した
図1に示す構成と同一の構成には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0055】
接続コネクタ10a(接続部の一例)は、例えば、電源部100aの基板を装着するスロットに備えられたコネクタであり、電源部100aが接続される。接続コネクタ10aは、接続された電源部100aに、直流電源2から供給された入力電圧Vinを供給する。接続コネクタ10aは、アドレス設定部20を備えない点を除いて、上述した第1の実施形態の接続コネクタ10と同様である。
【0056】
複数の電源部100aは、入力が共通化されており、直流電源2から供給される入力電圧Vinにより、それぞれが並列に動作する。また、複数の電源部100aは、出力が共通化されており、それぞれが出力電圧Voutを出力する。
【0057】
また、電源部100aは、接続コネクタ10aに着脱可能に構成されており、DC/DC変換部50を備えている。なお、電源部100aは、起動制御部40及びテーブル情報記憶部30を備えない点を除いて、上述した第1の実施形態の電源部100と同様である。なお、電源部100aには、後述する起動制御部40aによって、予めアドレス情報が割り当てられているものとする。
【0058】
本実施形態におけるテーブル情報記憶部30は、複数の電源部100aに対して、電源部100aの外部に1つ備えられている点を除いて、上述した第1の実施形態と同様である。テーブル情報記憶部30が記憶する遅延テーブル情報は、
図2に示す第1の実施形態と同様である。
【0059】
起動制御部40aは、例えば、CPUなどを含むプロセッサであり、電源装置1aの起動などを制御する。起動制御部40aは、複数の電源部100aに対して1つ備えられている。起動制御部40aは、遅延テーブル情報に基づいて、複数の電源部100aに対して順次起動を開始させる。
具体的に、起動制御部40aは、テーブル情報記憶部30が記憶する遅延テーブル情報を取得する。起動制御部40aは、遅延テーブル情報に基づいて、遅延時間に達した場合に、当該遅延時間に対応するアドレス情報が割り当てられている電源部100aのDC/DC変換部50に起動信号を出力して、DC/DC変換部50の起動を開始させる。起動制御部40aは、この処理を繰り返すことにより、複数の電源部100aに対して順次起動を行う。なお、起動制御部40aは、DC/DC変換部50に起動信号を出力する際に、接続コネクタ10aを経由してDC/DC変換部50に起動信号を出力してもよいし、他の通信手段(例えば、無線通信など)を利用して、DC/DC変換部50に起動信号を出力してもよい。
【0060】
例えば、電源部100a-1のアドレス情報が、“アドレス1”に割り当てられている場合に、起動制御部40aは、
図2に示す遅延テーブル情報に基づいて、遅延時間の“0”経過後に、電源部100a-1のDC/DC変換部50-1に起動信号を出力する。また、例えば、電源部100a-2のアドレス情報が、“アドレス2”に割り当てられている場合に、起動制御部40aは、
図2に示す遅延テーブル情報に基づいて、遅延時間の“t”経過後に、電源部100a-2のDC/DC変換部50-2に起動信号を出力する。
【0061】
次に、図面を参照して、本実施形態による電源装置1aの動作について説明する。
図6は、本実施形態による電源装置1aの動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、本実施形態による電源装置1aの起動処理について説明する。
【0062】
図6に示すように、電源装置1aの起動制御部40aは、まず、遅延テーブル情報を取得する(ステップS201)。起動制御部40aは、テーブル情報記憶部30から遅延テーブル情報を取得する。起動制御部40aは、遅延テーブル情報を取得後に、待機状態になる。
【0063】
次に、起動制御部40aは、電源部100aの起動開始であるか否かを判定する(ステップS202)。起動制御部40aは、例えば、電源部100aの起動開始のトリガー信号を受信したか否かを判定する。起動制御部40aは、起動開始のトリガー信号を受信した場合(ステップS202:YES)に、待機状態を解除して遅延時間のカウントを開始し、処理をステップS203に進める。また、起動制御部40aは、起動開始のトリガー信号を受信していない場合(ステップS202:NO)に、待機状態を維持し、ステップS202の処理を繰り返す(起動開始のトリガー信号の受信を待つ)。
【0064】
次に、起動制御部40aは、遅延テーブル情報に存在する遅延時間に達したか否かを判定する(ステップS203)。起動制御部40aは、取得した遅延テーブル情報に含まれる遅延時間に達したか否かを判定する。起動制御部40aは、遅延時間に達した場合(ステップS203:YES)に、処理をステップS204に進める。また、起動制御部40aは、遅延時間に達していない場合(ステップS203:NO)に、処理をステップS203に戻す。
【0065】
ステップS204において、起動制御部40aは、遅延時間に対応する電源部100aを起動させる。起動制御部40aは、遅延テーブル情報において、達した遅延時間に対応付けられているアドレス情報が割り当てられている電源部100aの起動を開始させる。具体的に、起動制御部40aは、アドレス情報が割り当てられている電源部100aのDC/DC変換部50に起動信号を出力して、DC/DC変換部50の動作を開始させて、電源部100aを起動させる。
【0066】
次に、起動制御部40aは、遅延テーブル情報の全ての電源部100aを起動したか否かを判定する(ステップS205)。起動制御部40aは、全ての電源部100aを起動した場合(ステップS205:YES)に、電源装置1aの起動処理を終了する。また、起動制御部40aは、全ての電源部100aを起動していない場合(ステップS205:NO)に、処理をステップS203に戻して、次の遅延時間に達するのを待たせる。
【0067】
このように、本実施形態では、複数の電源部100aに対して1つの起動制御部40aが、遅延テーブル情報に基づいて、電源部100aを順次起動させる。
また、本実施形態の電源装置1aの起動電流の波形、及び入力電圧Vinの波形は、上述した
図4(b)に示す第1の実施形態の動作と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態による電源装置1aは、入力が共通化された複数の電源部100aと、起動制御部40aとを備える。起動制御部40aは、複数の電源部100aのそれぞれに割り当てられた識別情報と、起動時刻が分散するように設定された遅延時間と、を対応付けた遅延テーブル情報に基づいて、識別情報が割り当てられた電源部100aに対して、当該識別情報に対応する遅延時間により遅延させて起動を開始させる。
これにより、本実施形態による電源装置1aは、第1の実施形態と同様の効果を奏し、適切に起動させつつ、起動時の入力電流を低減することができる。
【0069】
また、本実施形態による電源装置1aは、複数の電源部100aに対して1つの起動制御部40aを備えている。起動制御部40aは、遅延テーブル情報に基づいて、複数の電源部100aに対して順次起動を開始させる。
これにより、本実施形態による電源装置1aは、複数の電源部100aの起動を集中管理して、適切に起動させつつ、起動時の入力電流を低減することができる。また、本実施形態による電源装置1aでは、複数の電源部100aのそれぞれに対して、割り当てられたアドレス情報を供給する必要がなく、電源部100aの構成を簡略化することができる。
【0070】
[第3の実施形態]
次に、図面を参照して、第3の実施形態による電源装置1bについて説明する。
上述した第1の実施形態では、電源部100の起動の一例として、DC/DC変換部50を起動する例を説明したが、本実施形態では、電源部100の起動の別の一例として、電源部100が備える昇圧部60を起動する場合について説明する。
【0071】
図7は、本実施形態による電源装置1bの一例を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、電源装置1bは、複数の接続コネクタ(10-1、10-2、・・・)と、複数の電源部(100b-1、100b-2、・・・)とを備えている。電源装置1bは、直流電源2から供給される入力電圧Vinを変換した出力電圧Voutを出力する。
【0072】
なお、
図7において、上述した
図1に示す構成と同一の構成には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
また、電源部100b-1、電源部100b-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1bが備える任意の電源部を示す場合、又は特に区別しない場合には、電源部100bとして説明する。
【0073】
複数の電源部100bは、入力が共通化されており、直流電源2から供給される入力電圧Vinにより、それぞれが並列に動作する。また、複数の電源部100bは、出力が共通化されており、それぞれが出力電圧Voutを出力する。
【0074】
また、電源部100bは、接続コネクタ10に対して着脱可能に構成されており、接続コネクタ10に装着されることにより、アドレス情報が、識別情報として割り当てられる。例えば、電源部100b-1には、アドレス情報“アドレス1”が割り付けられ、電源部100b-2には、アドレス情報“アドレス2”が割り付けられている。また、電源部100bは、テーブル情報記憶部30と、起動制御部40bと、昇圧部60と、DC/DC変換部50aとを備えている。
【0075】
なお、電源部100b-1が備える起動制御部40bを、起動制御部40b-1とし、電源部100b-2が備える起動制御部40bを、起動制御部40b-2とする。起動制御部40b-1、起動制御部40b-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1bが備える任意の起動制御部を示す場合、又は特に区別しない場合には、起動制御部40bとして説明する。
また、電源部100b-1が備える昇圧部60を、昇圧部60-1とし、電源部100b-2が備える昇圧部60を、昇圧部60-2とする。昇圧部60-1、昇圧部60-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1bが備える任意の昇圧部を示す場合、又は特に区別しない場合には、昇圧部60として説明する。
【0076】
また、電源部100b-1が備えるDC/DC変換部50aを、DC/DC変換部50a-1とし、電源部100b-2が備えるDC/DC変換部50aを、DC/DC変換部50a-2とする。DC/DC変換部50a-1、DC/DC変換部50a-2、・・・は、同一の構成であり、電源装置1bが備える任意のDC/DC変換部を示す場合、又は特に区別しない場合には、DC/DC変換部50aとして説明する。
【0077】
昇圧部60は、入力された直流電圧(入力電圧Vin)を昇圧する昇圧回路である。昇圧部60は、例えば、入力電圧Vinが所定の閾値以下に低下するなどの起動条件を満たした場合に、後述する起動制御部40bによって起動される。なお、昇圧部60は、起動制御部40bから供給される起動信号に応じて、動作を開始して起動する。また、昇圧部60は、例えば、入力電圧Vinが所定の閾値より高くなるなどの停止条件を満たした場合に、後述する起動制御部40bによって停止される。ここで、
図8を参照して、昇圧部60の構成例について説明する。なお、昇圧部60に入力電圧Vinを供給する電源供給線を、入力電圧供給線L1と、GND線L2とし、昇圧された電圧の出力線を昇圧出力線L3とする。
【0078】
図8は、本実施形態における昇圧部60の構成例を示す図である。
図8に示すように、昇圧部60は、チョークコイル(昇圧インダクタ)61と、トランジスタ62と、ダイオード(63、64)と、コンデンサ65と、駆動信号生成部66とを備えている。
【0079】
チョークコイル61は、第1端が入力電圧供給線L1に、第2端がダイオード64のアノード端子(ノードN1)に、それぞれ接続されている。
トランジスタ62は、例えば、nチャネル型電界効果トランジスタであり、ドレイン端子がノードN1に、ゲート端子が駆動信号生成部66の出力信号線に、ソース端子がGND線L2に、それぞれ接続されている。
【0080】
ダイオード63は、アノード端子が入力電圧供給線L1に、カソード端子が昇圧出力線L3に、それぞれ接続されている。ダイオード63は、昇圧部60が動作していない場合(起動していない場合)に、入力電圧Vinを昇圧出力線L3に出力する。
ダイオード64は、アノード端子がノードN1に、カソード端子が昇圧出力線L3に、それぞれ接続されている。ダイオード64は、昇圧部60が動作している場合(起動している場合)に、昇圧部60によって昇圧された電圧を昇圧出力線L3に出力する。
【0081】
コンデンサ65は、例えば、平滑コンデンサであり、第1端が昇圧出力線L3に、第2端がGND線L2に、それぞれ接続されている。コンデンサ65は、チョークコイル61及びトランジスタ62によって昇圧された電圧を平滑化する。
駆動信号生成部66は、トランジスタ62を駆動する駆動信号(発振信号)を生成する。駆動信号生成部66は、起動制御部40bから供給される起動信号に基づいて、駆動信号の出力開始、及び駆動信号の出力停止の制御が行われる。
【0082】
DC/DC変換部50a(変換部の一例)は、昇圧部60が昇圧した昇圧電圧と、入力電圧Vinとのいずれかを出力電圧Vout(所定の出力電圧)に変換するDC/DCコンバータである。
【0083】
起動制御部40bは、例えば、CPUなどを含むプロセッサであり、電源装置1bの起動などを制御する。起動制御部40bは、遅延テーブル情報に基づいて、識別情報(アドレス情報)が割り当てられた電源部100bに対して、当該識別情報(アドレス情報)に対応する遅延時間により遅延させて起動を開始させる。起動制御部40bは、例えば、入力電圧Vinが所定の閾値以下に低下するなどの昇圧部60の起動条件を満たした場合に、遅延テーブル情報に基づいて、識別情報が割り当てられた電源部100bが備える昇圧部60を起動する。すなわち、起動制御部40bは、昇圧部60を起動する場合に、当該起動制御部40bを備える電源部100bが備えている昇圧部60を、当該起動制御部40bを備える電源部100bに割り当てられた識別情報に対応する遅延時間により遅延させて起動を開始させる。
【0084】
具体的に、起動制御部40bは、アドレス設定部20によって電源部100bに割り当てられたアドレス情報を取得する。さらに、起動制御部40bは、テーブル情報記憶部30が記憶する遅延テーブル情報を取得し、遅延テーブル情報のうちから自身の電源部100bに割り当てられたアドレス情報に対応する遅延時刻により昇圧部60に起動信号を出力して、昇圧部60の起動を開始させる。ここで、自身の電源部100bとは、例えば、自身の起動制御部40bが備えられている電源部100bのことである。
【0085】
例えば、電源部100b-1のアドレス情報が、“アドレス1”に割り当てられている場合に、電源部100b-1が備える起動制御部40b-1は、
図2に示す遅延テーブル情報に基づいて、遅延時間の“0”経過後に、昇圧部60-1に起動信号を出力する。また、例えば、電源部100b-2のアドレス情報が、“アドレス2”に割り当てられている場合に、電源部100b-2が備える起動制御部40b-2は、
図2に示す遅延テーブル情報に基づいて、遅延時間の“t”経過後に、昇圧部60-2に起動信号を出力する。
【0086】
次に、図面を参照して、本実施形態による電源装置1bの動作について説明する。
図9は、本実施形態による電源装置1bの動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、本実施形態による電源装置1bの昇圧部60の起動処理について説明する。
【0087】
図9に示すように、電源装置1bの起動制御部40bは、まず、アドレス情報を取得する(ステップS301)。起動制御部40bは、アドレス設定部20に設定されたアドレス情報を、自身の電源部100bが接続された接続コネクタ10を介して取得する。すなわち、起動制御部40bは、自身の電源部100bに割り当てられたアドレス情報を取得する。
【0088】
次に、起動制御部40bは、遅延テーブル情報からアドレス情報に対応する遅延時間を取得する(ステップS302)。起動制御部40bは、例えば、テーブル情報記憶部30が記憶する遅延テーブル情報のうちから、自身の電源部100bに割り当てられたアドレス情報に対応する遅延時刻を取得する。起動制御部40は、遅延時刻を取得後に、待機状態になる。
【0089】
次に、起動制御部40bは、昇圧開始であるか否かを判定する(ステップS303)。起動制御部40bは、入力電圧Vinが所定の閾値以下に低下したなどの昇圧部60の起動条件を満たしたか否かを判定したトリガー信号を受信する。起動制御部40bは、昇圧開始である場合(ステップS303:YES)に、待機状態を解除して遅延時間のカウントを開始し、処理をステップS304に進める。また、起動制御部40bは、昇圧開始でない場合(ステップS303:NO)に、処理をステップS303に戻す。
【0090】
次に、起動制御部40bは、遅延時刻に達したか否かを判定する(ステップS304)。すなわち、起動制御部40bは、例えば、タイマー(不図示)などにより時間を計時して、取得した自身の電源部100bに割り当てられたアドレス情報に対応する遅延時刻に達したか否かを判定する。起動制御部40bは、遅延時刻に達した場合(ステップS304:YES)に、処理をステップS305に進める。また、起動制御部40bは、遅延時刻に達していない場合(ステップS304:NO)に、処理をステップS304に戻す。
【0091】
ステップS305において、起動制御部40bは、(自身の電源部100bが備えている)昇圧部60を起動させる。起動制御部40bは、昇圧部60に起動信号を出力して、昇圧部60の動作を開始させて、昇圧部60を起動させる。ステップS305の処理後に、起動制御部40bは、昇圧部60の起動処理を終了する。
【0092】
なお、本実施形態では、上述した電源装置1bの昇圧部60の起動処理は、複数の電源部100bのそれぞれが備える各起動制御部40bによって実行される。すなわち、本実施形態では、例えば、起動制御部40b-1が、昇圧部60-1の起動処理を実行し、起動制御部40b-2が、昇圧部60-2の起動処理を実行する。
【0093】
次に、昇圧部60を同時に起動する従来の電源装置と、本実施形態による電源装置1bとを比較して、本実施形態による電源装置1bの動作及び効果を説明する図である。
図10は、本実施形態による電源装置1bの動作及び効果を説明する図である。
図10(a)は、昇圧部60を同時に起動する従来の電源装置の動作を示している。また、
図10(b)は、本実施形態による電源装置1bの動作を示している。なお、
図10に示す例は、電源部100bが6台である場合の一例を示している。
【0094】
図10(a)において、各グラフの縦軸は、上から順に、昇圧部60の運転台数、起動電流、及び入力電圧Vinを示し、横軸は、時間を示している。また、波形W11~W13は、上から順に、昇圧部60の運転台数の波形、起動電流の波形、及び入力電圧Vinの波形を示している。ここで、起動電流(波形W12)、及び入力電圧Vin(波形W13)は、従来の電源装置の入力電流及び入力電圧Vinを示している。
【0095】
また、
図10(b)において、各グラフの縦軸は、上から順に、昇圧部60の運転台数、起動電流、及び入力電圧Vinを示し、横軸は、時間を示している。また、波形W14~W16は、上から順に、昇圧部60の運転台数の波形、起動電流の波形、及び入力電圧Vinの波形を示している。ここで、起動電流(波形W15)、及び入力電圧Vin(波形W16)は、本実施形態の電源装置1bの入力電流及び入力電圧Vinを示している。
【0096】
図10(a)に示すように、昇圧部60を同時に起動する従来の電源装置では、6台の昇圧部60が同時に起動するため(波形W11参照)、突入電流により起動電流が通常動作電流I1よりも大幅に上昇する(波形W12参照)。そのため、入力電圧Vinが、起動時に入力電圧値V1から大幅に低下する(波形W13参照)。
【0097】
これに対して、本実施形態による電源装置1bでは、
図10(b)に示すように、昇圧部60が遅延テーブル情報に基づいて、起動時刻が分散される(波形W14参照)。そのため、本実施形態による電源装置1bでは、起動電流が各昇圧部60の順次起動に応じて、徐々に上昇するため、
図10(a)に示す昇圧部60を同時に起動する従来の電源装置に比べて、起動電流を低減することができる(波形W15参照)。また、入力電圧Vinが、昇圧部60を同時に起動する従来の電源装置に比べて、起動時に入力電圧値V1から大幅に低下することはない(波形W16参照)。
このように、本実施形態による電源装置1bは、昇圧部60の起動時刻を分散させるため、昇圧部60を同時に起動する従来の電源装置に比べて、起動電流を低減することができ、起動時における入力電圧Vinの低下を低減することができる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態による電源装置1bは、入力が共通化された複数の電源部100bと、起動制御部40bとを備える。起動制御部40bは、複数の電源部100bのそれぞれに割り当てられた識別情報と、起動時刻が分散するように設定された遅延時間と、を対応付けた遅延テーブル情報に基づいて、識別情報が割り当てられた電源部100b(昇圧部60)に対して、当該識別情報に対応する遅延時間により遅延させて起動を開始させる。
これにより、本実施形態による電源装置1bは、第1の実施形態と同様の効果を奏し、適切に起動させつつ、起動時の入力電流を低減することができる。
【0099】
また、本実施形態では、電源部100bは、入力された直流電圧を昇圧する昇圧部60と、昇圧部60が昇圧した昇圧電圧と、直流電圧とのいずれかを所定の出力電圧に変換するDC/DC変換部50a(変換部)とを備える。起動制御部40bは、遅延テーブル情報に基づいて、識別情報が割り当てられた電源部100bが備える昇圧部60を起動する。
これにより、本実施形態による電源装置1bは、適切に昇圧部60を起動させつつ、起動時の入力電流を低減することができる。
【0100】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の各実施形態において、遅延テーブル情報は、1つの遅延時間に、1つのアドレス情報を対応付ける例を説明したが、1つの遅延時間に複数のアドレス情報を対応付けるようにしてもよい。例えば、電源装置1(1a、1b)が、12台の電源部100(100a、100b)を備える場合に、6種類の遅延時間のそれぞれに対して、2台ずつの電源部100(100a、100b)を対応付けてもよい。
【0101】
また、遅延テーブル情報は、電源装置1(1a、1b)が搭載している電源部100(100a、100b)の台数や構成に応じて、変更できるようにしてもよい。こうすることで、電源装置1(1a、1b)は、構成に応じて、起動の順番及び遅延時間を設定変更できるため、構成に応じて柔軟に対応することができる。
【0102】
また、上記の各実施形態において、電源部100(100a、100b)は、DC/DC変換部50(50a)を備える例を説明したが、交流電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換部やその他の電源部を備えるようにしてもよい。また、電源部100(100a、100b)は、直流電源2から電圧が供給される例を説明したが、直流電源2の代わりに、交流電源、又は商用電源などから交流電圧が供給されるようにしてもよい。
【0103】
また、上記の第1及び第3の実施形態において、接続コネクタ10が備えるアドレス設定部20により、アドレス情報を設定する例を説明したが、これに限定されるものではない。電源部100(100b)が、ディップスイッチや設定記憶部などによりアドレス情報を設定するアドレス設定部を備えるようにしてもよい。また、設定記憶部によりアドレス設定部を実現する場合には、電源部100(100b)の外部からの通信によって、アドレス情報が設定、及び変更されるようにしてもよい。
【0104】
また、上記の第2の実施形態において、アドレス設定部20を備えない例を説明しているが、これに限定されるものではなく、第1及び第3の実施形態と同様のアドレス設定部20を有する接続コネクタ10を備え、アドレス設定部20によりアドレス情報を設定するようにしてもよい。
また、上記の第2の実施形態において、アドレス情報が電源部100aに予め割り当てられている例を説明したが、電源部100a又は電源装置1aが、上述したディップスイッチや設定記憶部などによりアドレス情報を設定するアドレス設定部を備えるようにしてもよい。
また、上記の第2の実施形態は、第1の実施形態に対して適用する例を説明したが、第2の実施形態に対して適用してもよい。すなわち、電源部100aが、昇圧部60を備えて、起動制御部40aは、複数の電源部100aが備える各昇圧部60を順次起動するように制御してもよい。
【0105】
また、上記の第3の実施形態において、DC/DC変換部50aが自動で動作を開始する例を説明したが、第1の実施形態と同様に、遅延テーブル情報に基づいて、順次起動させるようにしてもよい。
【0106】
なお、上述の電源装置1(1a、1b)の起動制御部40(40a、40b)は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した起動制御部40(40a、40b)による処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0107】
また、上述した起動制御部40(40a、40b)が備える機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1、1a、1b 電源装置
2 直流電源
10、10-1、10-2、10a、10a-1、10a-2 接続コネクタ
20、20-1、20-2 アドレス設定部
30、30-1、30-2 テーブル情報記憶部
40、40-1、40-2、40a、40b、40b-1、40b-2 起動制御部
50、50-1、50-2、50a、50a-1、50a-2 DC/DC変換部
60、60-1、60-2 昇圧部
61 チョークコイル
62 トランジスタ
63、64 ダイオード
65 コンデンサ
66 駆動信号生成部
100、100-1、100-2、100a、100a-1、100a-2、100b、100b-1、100b-2 電源部