(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】インパクトレンチによる拡張アンカーの据え付け方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20220204BHJP
B25B 29/00 20060101ALI20220204BHJP
E04B 1/41 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
E04G21/12 105Z
B25B29/00
E04B1/41 503G
(21)【出願番号】P 2020527889
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2018083504
(87)【国際公開番号】W WO2019120989
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-05-19
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ガウル, ハンス-ディーター
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526541(JP,A)
【文献】特開2009-190158(JP,A)
【文献】特開2001-277146(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005015900(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00559937(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00285815(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
E04G 21/16
E04B 1/41
B25B 19/00
B25B 21/02
B25B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インパクトレンチ(1)による拡張アンカー(35)の据え付け方法であって、
回転衝撃が前記拡張アンカー(35)のねじ要素に繰り返し加えられ、前記回転衝撃からねじ
頭(21)に伝達されるトルク(M)が推定され、前
記トルク(M)が前記拡張アンカー(35)に対して指定された閾値(M0)を超えるまで継続される、第1の段階(S1)と、
前記拡張アンカー(35)に対して指定された第1の数(N1)の回転衝撃が前記ねじ頭(21)に加えられる、第2の段階(S2)と、を含み、
少なくとも前記第1の段階(S1)の間、前
記トルク(M)の現在の変化率(w)が監視され、前記現在の変化率(w)が前記拡張アンカー(35)に対して指定された前記変化率(w)の制限値(w0)を超えることに応答して、修正された第2の段階(S2b)が開始され、前記拡張アンカー(35)に対して指定された第2の数(N2)の回転衝撃が前記ねじ頭(21)に加えられ、前記第2の数(N2)が前記第1の数(N1)よりも少ない、ことを特徴とする、据え付け方法。
【請求項2】
前記変化率(w)の前記制限値(w0)が、
所定の時
間(ΔT)と前
記トルク(M)の第2の閾値(M2)とによって定義され、前記閾値が、前記
所定の時
間(ΔT)内で達成される、ことを特徴とする、請求項1に記載の据え付け方法。
【請求項3】
第3の段階(S3)であって、回転衝撃の繰り返し率が前記第2の段階(S2)と比較して低減される、第3の段階(S3)を特徴とする、請求項1または2に記載の据え付け方法。
【請求項4】
前記第1の段階(S1)の開始前に
「拡張アンカー」動作モードを選択し、前記拡張アンカー(35)
のタイプを
指定し、前記
指定された拡張アンカー(35)に基づいて、前記閾値
(M0
)、前記指定された第1の数(N1)の回転衝撃、前記指定された第2の数(N2)の回転衝撃、および前記制限値(w0)を設定する、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の据え付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパクトレンチの制御方法として実施される、拡張アンカーの据え付け方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
拡張アンカーは、とりわけ、構造梁を固定するために使用される。構造梁は通常、暫定的に固定され、その後位置合わせされる。これを行うには、使用者は拡張アンカーを緩め、位置合わせ後に再度それを締め付ける。不適切な2回目の締め付けは、拡張アンカーを損傷する可能性がある。
【0003】
インパクトレンチによる拡張アンカーの据え付け方法の一実施形態は、第1の段階S1と第2の段階S2とを有する。第1の段階では、回転衝撃が拡張アンカーのねじ要素に繰り返し加えられ、回転衝撃からねじ頭に伝達されるトルクが推定される。推定伝達トルクが拡張アンカーに対して指定された閾値を超えると、第1の段階S1が終了する。第2の段階の間に、拡張アンカーに対して指定された第1の数の回転衝撃がねじ頭に加えられる。推定トルクの現在の変化率が、少なくとも第1の段階中に監視される。現在の変化率が、拡張アンカーに対して指定された変化率の制限値を超えることに応答して、修正された第2の段階が開始され、拡張アンカーに対して指定された第2の数の回転衝撃がねじ頭に加えられ、第2の数は第1の数よりも少ない。
【0004】
以下の説明は、例示的な実施形態および図を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図4】「拡張アンカー」動作モードのフローチャートである。
【
図9】「鋼構造」動作モードのフローチャートである。
【
図11】「鋼構造」動作モードのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
特に明記しない限り、図中の同一または機能的に同一の要素は、同じ参照記号で示されている。
【0007】
インパクトレンチ
図1は、インパクトレンチ1を模式的に示す。インパクトレンチ1は、電動機2、衝撃機構3および出力スピンドル4を有する。衝撃機構3は、電動機2により連続的に駆動される。出力スピンドル4の反作用トルクが閾値を超えるとすぐに、衝撃機構3は瞬間的であるが非常に高いトルクで出力スピンドル4に角運動量(回転衝撃)を繰り返し加える。したがって、出力スピンドル4は、作業軸5を中心に連続的または段階的に回転する。電動機2は、バッテリ6によって電力供給されるか、またはコンセントを使って電力供給され得る。
【0008】
インパクトレンチ1はハンドル7を有し、このハンドル7により、使用者は動作中にインパクトレンチ1を保持し誘導することができる。ハンドル7は、堅固に、または制動要素により機械ハウジング8に固定することができる。電動機2および衝撃機構3は、機械ハウジング8内に配置されている。電動機2は、ボタン9によりオン/オフを切り替えることができる。ボタン9は、例えば、ハンドル7上に直接配置され、ハンドルを囲む手で押すことができる。
【0009】
例示的な衝撃機構3は、ハンマー10およびアンビル11を有する。ハンマー10は、アンビル11の爪13に回転方向に当接する爪12を有する。ハンマー10は、爪12を介して連続トルクまたは瞬間角運動量をアンビル11に伝達することができる。コイルばね14は、ハンマー10をアンビル11の方向に予荷重し、その結果、ハンマー10はアンビル11と係合状態に保持される。トルクが閾値を超えると、爪12がアンビル11と係合しなくなるまで、ハンマー10はコイルばねの力に逆らって動く。電動機2は、ハンマー10がコイルばね14によって押されてアンビル11と再び係合するまで、ハンマー10を回転方向に加速することができる。ハンマー10は、その間に得られた運動エネルギーを1つの短いバーストでアンビル11に転送する。一実施形態によれば、ハンマー10は、螺旋経路16に沿って駆動スピンドル15上に確実に案内される。確実な案内は、例えば、駆動スピンドル15内の螺旋状のくぼみと、くぼみに係合するハンマー10のピンとして実装することができる。駆動スピンドル15は、電動機2により駆動される。
【0010】
出力スピンドル4は、機械ハウジング8から突出している。突出端は、ツールホルダ17を形成する。例示的なツールホルダ17は、正方形の断面を有する。ソケット18または同様のツールをツールホルダ17上に置くことができる。ソケット18は、正方形の中空断面を備えたブッシングを有し、その寸法は、実質的にツールホルダ17に対応する。ブッシングの反対側で、ソケット18は、ねじ頭21、すなわち六角ナット22または同様のねじを受け入れるための口20を有する。ソケット18は、ツールロック23により出力スピンドル4に固定することができる。ツールロック23は、例えば、出力スピンドル4とソケット18との両方の穴を通して挿入されるピンに基づいている。
【0011】
インパクトレンチ1は、制御ユニット24を有する。制御ユニット24は、例えば、マイクロプロセッサおよび外部または統合されたメモリ25によって実装することができる。マイクロプロセッサの代わりに、制御ユニットは同等のディスクリート構成要素、ASIC、ASSP等で構成することができる。
【0012】
インパクトレンチ1は、使用者が動作モードを選択することができる入力要素26を有する。次に、制御ユニット24は、選択された動作モードに従ってインパクトレンチ1を制御する。異なる動作モードの制御シーケンスは、メモリ25に記憶することができる。動作モードには、とりわけ、拡張アンカーを据え付けるための据え付け方法と、鋼構造のねじ接続を据え付けるための据え付け方法とが含まれる。
【0013】
入力要素26は、例えば、ディスプレイ27および1つ以上の入力ボタン28を含むことができる。制御ユニット24は、メモリ25に記憶された様々な動作モードおよびそれに関連付けられた任意の接続タイプを表示することができる。使用者は、入力ボタン28を使用して動作モードを選択することができる。加えて、使用者は、サイズ、直径、長さ、目標トルク、負荷容量、接続タイプのメーカー名などの仕様を入力することができる。代替の実施形態では、インパクトレンチ1は、外部入力要素30と通信する通信インターフェース29を有する。外部入力要素30は、例えば、携帯電話、ラップトップ、またはアナログモバイルデバイスであり得る。さらに、入力要素は、インパクトレンチ1とバッテリ6との間にアダプタとして配置できる追加モジュールにすることができる。いくつかの接続タイプが入力要素30上で実行されるアプリケーションに記憶され、または、アプリケーションは、モバイル無線インターフェースを介してサーバからこれらを照会することができる。外部入力要素30は、ディスプレイ31上の接続タイプに関する拡張アンカーまたは関連情報を示すことができる。使用者は、入力ボタン32またはタッチセンサ式ディスプレイ31を使用して接続タイプを選択する。外部入力要素30は、インパクトレンチ1への制御方法に関連する選択された接続タイプのタイプ指定またはパラメータを、通信インターフェース33を介してインパクトレンチ1の通信インターフェース29に送信する。通信インターフェース29は、例えばブルートゥース(登録商標)標準を使用する無線ベースであることが好ましい。それに加えて、またはその代わりに、内部入力要素28または外部入力要素30は、接続タイプのパッケージング上のバーコードを検出することができるカメラ34を備えることができる。入力要素28は、検出されたバーコードおよびメモリ25に記憶されたバーコードに基づいて接続タイプを決定する。カメラ34の代わりに、レーザベースのバーコードリーダ、RFIDリーダ等を使用して、パッケージング上または接続タイプ上のラベルを検出することができる。さらなる実施形態では、入力要素28における画像処理は、カメラ34によってキャプチャされた画像に基づいて接続タイプを識別することができ、または画像に基づいて使用者に提示される接続タイプの選択を少なくとも制限することができる。
【0014】
拡張アンカー
図3は、アタッチメント37を壁36に固定するために壁36に埋め込まれた拡張アンカー35を示している。拡張アンカー35は、アンカーロッド38を有する。アンカーロッド38の一端にはねじ頭21がある。拡張機構39は、ねじ頭21から離れた端部に設けられている。拡張機構39は、壁36のボアホールに挿入される。拡張機構39は、拡張機構39に作用するねじ頭21からの引張応力を、ボアホールの内壁に対する半径方向のクランプ力に変換する。拡張アンカー35は、アタッチメント37のために拡張アンカー35に対する引張荷重が増加すると、より高いクランプ力がもたらされるため、自己ロック効果を有する。据え付けられた拡張アンカー35の指定された荷重値を確保するために、拡張アンカー35は、ねじ頭21によって据え付け中に予荷重される。拡張アンカー35は、据え付け時にねじ頭21を締め付ける目標トルクが指定される。
【0015】
拡張アンカー35のための手動据え付けプロセスは、以下を提供する。準備ステップで、拡張アンカー35の仕様に従って、壁36にボアホールが開けられる。仕様は、とりわけ、拡張機構39の外径に等しいボアホールの直径を提供する。拡張機構39は、典型的にはハンマーの回転衝撃により、ボアホールに内打ち込まれる。アタッチメント37は、ねじ頭21に位置付けられる。ねじ頭21は、トルクレンチを使用して手動で締め付けられる。締め付け中、ねじ頭21は、アンカーロッド38に沿ってアタッチメント37によって壁36に間接的に支持され、その結果、引張応力が生成される。トルクレンチが、拡張アンカー35の指定された目標トルクが達成されたことを合図すると、使用者は締め付けを停止する。いくつかの用途では、次いで、例えばアタッチメント37を位置合わせするために、ねじ頭21が再び緩められる。次に、使用者は、トルクレンチと同じ指定された目標トルクとを使用して、ねじ頭21を再び締め付ける。他の用途では、アタッチメント37を固定するために複数の拡張アンカー35が必要とされる。使用者はまず、拡張アンカー35が目標トルクに従って締め付けられる前に、拡張アンカー35の各々をある程度まで予荷重することができる。さらに、使用者は、拡張アンカー35を締め付けるときに中断される可能性があり、そうすると、使用者は、うまくゆけばトルクレンチを用いて後でプロセスを継続することになる。
【0016】
拡張機構39は、例えば、スリーブ40およびアンカーロッド38上のコーン41に基づいている。スリーブ40は、アンカーロッド38に沿ってコーン41に対して可動である。例示的な表現では、アンカーロッド38は、スリーブ40が取り囲むより細い円筒状ネック42を有する。スリーブ40の内径は、ネック42の外径よりも大きい。コーン41は、ねじ頭21とは反対側に面するスリーブ40の側でスリーブ40に隣接して配置される。コーン41の外側面は、スリーブ40に向かって先細になっている。外側面の外径は、スリーブ40の内径より大きい値からスリーブ40の内径より小さい値へ減少する。ボアホールの指定された直径は、スリーブ40の外径に対応し、そのため、ボアホールの内壁に付着または摩擦する。アンカーロッド38に、したがってコーン41に締め付けがある場合、コーン41がスリーブ40に引き込まれる間、スリーブ40は所定の位置に留まる。コーン41はスリーブ40を広げる。スリーブ40およびコーン41は、多くの方法で設計することができる。例えば、スリーブ40には、コーン41に面する複数のタブを設けることができる。スリーブ40は、全周にわたって閉じるか、スロットを付けることができる。さらに、コーン41は、円錐形、波形またはピラミッド形であり得る。動作原理の重要な態様は、内壁上のスリーブ40の摩擦係数である。スリーブ40は、典型的には鋼または別の鉄ベースの材料でできている。壁36は、コンクリートまたは天然石などの鉱物建築材料でできている。
【0017】
ねじ頭21は、例えば、アンカーロッド38上の雄ねじ43と、雄ねじ38上に配置されたナット22とからなることができる。ナットは、六角形の外周を有することが好ましい。あるいは、アンカーロッド38は、ねじが挿入される雌ねじを有することができる。ねじは、アンカーロッド38を超えて半径方向に突出する頭部を有する。ねじの頭は、例えば六角形の外周を有する。
【0018】
「拡張アンカー」制御方法
インパクトレンチ1は、拡張アンカー35を据え付けるための据え付け方法、「拡張アンカー」動作モード(
図4)を実施する。据え付け方法は、拡張アンカー35を使用してアタッチメント37を壁36に締結するのに適している。準備ステップで、使用者は壁36にボアホールを開け、拡張アンカー35をボアホールに押し込む。インパクトレンチ1を使用してねじ頭21を締め付ける。連続的に回転する電動ドライバと比較して、インパクトレンチ1は、瞬間的な、したがって高いトルクで繰り返し回転衝撃が発生することを特徴としている。さらに、インパクトレンチ1の出力スピンドル4とハンドル7との間に堅固な結合はなく、そのため、使用者に作用する逆トルクは、典型的には加えられる回転衝撃よりも大幅に小さい。入力要素28を使用して、使用者は「拡張アンカー」動作モードを選択し、拡張アンカー35のタイプを指定する。
【0019】
据え付け方法のその後の適切な実行に必要な複数の制御パラメータは、各タイプの拡張アンカーに割り当てられる。制御パラメータは、拡張アンカーのタイプに従ってメモリ25に記憶される。拡張アンカー35の入力または選択に応答して、制御ユニット24は、対応する制御パラメータを読み出す。制御パラメータは、使用者が異なるタイプの拡張アンカー35を選択するまで保持されることが好ましい。各個別の据え付けの前に拡張アンカー35を選択する必要はない。
【0020】
ボタン9が押されていないとき、電動機2は電源、例えばバッテリ6から切断されている。電動機2の速度Dはゼロであるか、ゼロまで低下する。分離は、ボタン9自体によって、または電動機2と電源との間の電流経路内の電気スイッチング要素によって電気機械的に行われ得る。ボタン9は、据え付けプロセス全体を通して使用者が連続して押し続けなければならない。使用者がボタン9をリリースすると、電動機2は直ちに電源から切断され、その結果、据え付け方法が中断される。インパクトレンチ1は、ボタン9がリリースされるとスタンバイモード(スタンバイ)になることが好ましい。スタンバイモードでは、インパクトレンチ1は、特にバッテリ駆動のインパクトレンチ1において、エネルギー消費を低減する。例えば、制御ユニット24は、作動を停止し、その機能をボタン9および入力要素28などを単にチェックするだけに減らすことができる。
【0021】
ボタン9を押すと、据え付け方法が開始される。必要に応じて、インパクトレンチ1はスタンバイモードから復帰する。準備段階で、入力要素28の1つにより使用者が以前に拡張アンカー35を選択したかどうかを確認できる。対応する選択がまだ行われておらず、制御パラメータが設定されていない場合、使用者はそうするように促され、インパクトレンチ1は非アクティブのままである。そうでなければ、電動機2は電源に接続される。
【0022】
連続的に回転するドライバでは、トルク出力は電動機の電力消費と出力スピンドルの速度を介して非常に簡単に測定できるが、インパクトレンチ1では、出力スピンドル4と電動機2との間の機械的なデカップリングによりこれは不可能である。出力スピンドルのセンサによるトルク出力の直接測定は、機械的負荷が高いため技術的に非常に要求が厳しく、インパクトレンチには適していない。この据え付け方法は、第1の段階S1で加えられるトルクMの大まかな推定と、第2の段階S2でのその後の補正に役立つ。2段階方法は、据え付け挙動に対する先験的な未知の影響、特に据え付けプロセスに対する壁36の状態の影響に関してより堅牢である。
【0023】
ボタン9を押すことにより、典型的には前段階が開始するが、これは以下の説明ではより詳細に説明されない。前段階S1の間、インパクトレンチ1によって加えられるトルクMは非常に低いため、衝撃機構はトリガされず、インパクトレンチ1は連続的に典型的に増加するトルクを加える。据え付け方法の第1の段階S1は、インパクトレンチ1の最初の衝撃から始まる(時間t0)。トルクMの非常に概略的な曲線44を
図5に示す。第1の段階S1の間に、出力スピンドル4によって加えられるトルクMが推定される。第1の段階S1は、推定トルクMが閾値M0を超えると(C1)、デフォルトによって終了する。閾値M0は、典型的には、拡張アンカー35の目標トルクM9よりも小さい。
【0024】
第1の段階(S1)の間、電動機2は、好ましくは指定された第1の速度D1で駆動スピンドル15を回転させる。制御ユニット24は、例えば、駆動スピンドル15の回転センサ45を用いて直接的に、または電動機2の回転センサを介して間接的に、駆動スピンドル15の速度Dを決定することができる。第1の速度D1は、拡張アンカー35に割り当てられた制御パラメータのうちの1つである。速度は、インパクトレンチ1によって供給されるトルクに影響する。ハンマー10は、回転衝撃後にアンビル11から引き離され、次の回転衝撃まで駆動スピンドル15によってアンビル11に向かって加速される。次の回転衝撃は、ハンマー10がアンビル11に再び位置合わせされたときに発生する。主として所定の加速経路のため、駆動スピンドル15のより高い速度は、回転衝撃におけるハンマー10のより高い角速度およびより高い角運動量をもたらす。大まかな近似では、回転衝撃中に角運動量の大部分がアンビル11と出力スピンドル4とに伝達されると想定されている。一連のテストにおいて、角運動量または角運動量を表す変数をさまざまな速度で決定し、特性マップに記憶できる。
【0025】
第1の段階S1の間、回転衝撃により出力スピンドル4が回転する回転角δΦが決定される。出力トルクMは、伝達された角運動量と、回転衝撃により出力スピンドル4が回転する回転角δΦとに対応する。決定された回転角δΦと、角運動量および速度Dの近似相関とに基づいて、出力トルクMが推定される。トルクMまたはトルクを記述する変数を、速度Dおよび回転角δΦからなるペアリングに割り当てる特性マップは、例えば、メモリ25に記憶することができる。
【0026】
回転角δΦは、インパクトレンチ1内のセンサ46によって検出される。センサシステム46は、例えば回転センサ47を使用して出力スピンドル4の回転運動を直接検出することができる。回転センサ47は、出力スピンドル4上のマーキングを誘導的または光学的にスキャンすることができる。代替または追加として、センサシステム46は、2つの連続した回転衝撃間の駆動スピンドル15の回転運動に基づいて、出力スピンドル4の回転角δΦを推定することができる。2つの回転衝撃の間、駆動スピンドル15は、爪12間の角距離、例えば180度だけ回転し、かつ、アンビル11が回転した場合、さらに出力スピンドル4の回転角δΦだけ回転する。回転衝撃は、回転衝撃センサ48によって検出される。この目的のために、センサシステム46は、2つの直接に続く回転衝撃の間の期間における駆動スピンドル15の回転角を検出する。期間の開始または終了は、回転衝撃センサ48による回転衝撃の検出によって検出される。回転衝撃センサ48は、例えば、回転衝撃に関連付けられたインパクトレンチ1内の増加した瞬間振動を検出することができる。例えば、振動は閾値と比較され、開始または終了は、閾値を超えた時点に対応する。回転衝撃センサ48はまた、音量のピークを検出する音響マイクロホンまたは超低周波マイクロホンに基づくことができる。回転衝撃センサ48の別の変形は、電動機2の電力消費または速度変動を検出する。回転衝撃の間、電力消費は一時的に増加する。駆動スピンドル15の回転角は、例えば、速度Dまたは回転センサ45からの信号および期間から計算することができる。出力スピンドル4の回転角δΦは、駆動スピンドル15の回転角から爪12間の角距離を引いたものとして決定される。
【0027】
インパクトレンチ1は、第1の段階S1の間、推定トルクMを閾値M0と継続的に比較する。第1の段階S1は、閾値M0を超えるとすぐに終了する(C1)。一定速度D1の実施形態では、トルクMと閾値M0との比較は、回転衝撃当たりの回転角δΦと回転衝撃当たりの閾値δΦ0との比較に等しい。アンダーシュートされる速度D1と回転角δΦ0とのペアリングは、拡張アンカー35のためのメモリ25内に記憶することができる。第1の段階S1は、ねじ頭21がわずかだけ回転するときに終了する。回転角δΦの検出はますます不正確になる。速度と角運動量との間の相関も減少する。
【0028】
第2の段階S2は、第1の段階S1の直後に続く。駆動スピンドル15の速度Dは、依然として第1の速度D1に制御することができる。第2の段階の間、指定された数N1の回転衝撃が加えられる。回転衝撃の数N1は、拡張アンカーに固有のもう一つの制御パラメータである。拡張アンカー35の目標トルクM9は、回転衝撃の数N1によってほぼ達成される。第1の段階S1の後、回転角δΦは、さらなる回転衝撃ごとにほぼ同じである。このため、回転衝撃の数N1は、指定された回転角ΔΦ1の回転に対応する。拡張アンカー35の弾性挙動を仮定すると、拡張アンカー35の追加の引張応力は、回転角ΔΦ1に主として比例する。このため、引張り応力は、回転衝撃の数N1を介して計量的に調整できる。必要な回転衝撃の数N1または回転角δΦは、拡張アンカー35とインパクトレンチ1との一連のテストおよび第2の段階S2の指定速度D1で決定でき、メモリ25に記憶することができる。第2の段階S2の間に、加えられた回転衝撃の数Nがカウントされる。上述のように、回転衝撃は、例えば回転衝撃センサ48により検出することができる。第2の段階S2は、回転衝撃の数Nが目標数N1に達するとすぐに終了する(C2)。
【0029】
第2の段階S2の後には、好ましくは緩和段階S3が続く。回転衝撃の繰り返し率は、第2の段階S2と比較して減少する。速度Dは、第2の速度D2に減速される。第2の速度D2は、第1の速度D1よりも低い。特に、第2の速度D2は、インパクトレンチ1が目標トルクを達成するために必要とする臨界速度よりも低い。第2の速度D2は、例えば、第1の速度D1の50%から80%の間である。緩和段階S3は、好ましくは時間制御される。緩和段階S3の持続時間T1は、例えば、0.5秒[S]から5秒の間の範囲にある。
【0030】
前述の2段階または3段階の据え付け方法は、拡張アンカー35を、それがボアホールに挿入された直後に締め付けるのに適している。アタッチメント37のその後の位置合わせのために、使用者は張力をかけられた拡張アンカー35を緩め、その後再び締め付ける場合があり得る。それにもかかわらず、2つの段階または3つの段階を繰り返すと、拡張アンカー35またはサブ表面さえも損傷する可能性がある。
【0031】
したがって、「拡張アンカー」動作モードでの据え付け方法は、少なくとも第1の段階S1中に、拡張アンカー35がすでに締め付けられているかどうかを判定するテストルーチンを有する。例示的なテストルーチンは、推定トルクMの変化率wを判定する。すでに説明したように、トルクMは、回転衝撃から回転衝撃へ増加する。変化率w、すなわち、連続した回転衝撃間の、またはいくつかの回転衝撃にわたって平均されたトルクMの増加は、一度も締め付けられていない拡張アンカー35と再び緩められたことのある拡張アンカー35との間を区別するしっかりした特性であることが証明されている。前に緩められた拡張アンカー35の推定トルクMの曲線49が
図5に示されている。変化率wは、他のケース44よりも再び緩められた拡張アンカー35(曲線49)の方が特徴的に大きくなっている。インパクトレンチ1は、第1の段階S1中の変化率wを判定し、変化率wを限界値w0と比較する。変化率wは、好ましくは、いくつかの回転衝撃、または典型的にはいくつかの回転衝撃に及ぶ時間窓δTにわたって平均化される。限界値w0を超えると、インパクトレンチ1は第1の段階S1を終了する。限界値w0は、拡張アンカー35に割り当てられた別の制御パラメータである。限界値w0は、変化率として記憶することができる。変化率wは、所定の時間窓ΔTと、時間窓ΔT内で達成されるトルクMの所定の閾値M2とにより検出することもできる。時間窓ΔTは、最初の衝撃t0から始まる。時間窓ΔT内にトルクMが閾値M2を超える場合、閾値M2を超えると、第1の段階S1が終了する。それに応じて、時間窓ΔTおよび閾値M2が記憶される。
【0032】
時期尚早に終了した第1の段階S1の後に、修正された段階S2bが続く。修正された段階S2bは、第2の段階S2と実質的に同じである。インパクトレンチ1は、所定数N2の回転衝撃を加える。数N2は、第2の段階S2よりも大幅に少なくなっている。数N2は、数N1の半分未満、例えば数N1の3分の1未満である。修正された第2の段階S2bは、標準の第2の段階S2の場合よりも、拡張アンカー35に大幅に低い追加トルクを加える。したがって、修正された第2の段階S2は、標準の第2の段階S2よりも大幅に短くなる。緩和段階S3が提供される場合、これは修正された第2の段階S2bに続く。
【0033】
一実施形態では、第2の段階S2中に変化率wを監視することもできる。変化率wが指定された閾値w0を超える場合、第2の段階S2は時期尚早に終了し、方法は修正された第2の段階S2bで継続する。
【0034】
使用者は、据え付けプロセス中にボタン9を意図的または誤ってリリースすることがある。電動機2は直ちに停止されるか、または少なくとも電源から切断される。したがって、据え付け方法は中止される。制御方法は、達成された据え付け状態をメモリ25に記録する。特に、メモリ25は、据え付けプロセスの3つの段階のどれが達成されたかを記録する。その後、インパクトレンチ1は、スタンバイモードS0に入ることができる。
【0035】
この制御方法により、使用者が据え付けプロセスを完了することが可能になる。一実施形態において、使用者は、例えばディスプレイ27を介して、据え付けプロセスを完了するように要求される。使用者は、入力要素28を使用して、ボタン9の次の押下で据え付けプロセスを継続するか、または、代わりに、標準的な新しい据え付けプロセスを行うかを選択することができる。例えば、使用者がもう一度ボタン9を押すと、要求が表示され得る。あるいは、ディスプレイ27は、要求を使用者にいつまでも合図することができる。使用者は、入力要素28により要求に応答することができる。代替として、「据え付けプロセスを続行」モードにおいて、押下パターンをボタン9に割り当てることができる。例えば、ボタン9を完全に押す前に2回タップすることが「据え付けプロセスを続行」を選択することに対応し、一方、ボタン9をすぐに押すと「標準の新しい据え付けプロセス」を選択することに対応する。使用者が待機時間内、例えば30秒以内に要求に応答しない場合、制御方法は、標準動作に戻り、標準の新しい据え付けプロセスに従って次の据え付けプロセスを実行する。
【0036】
標準の新しい据え付けプロセスは、上記の2つまたは3つの段階の後に行われる。使用者が据え付けプロセスの継続を要求した場合、上記の据え付け方法は、すでに達成された据え付けステータスに応じて変更される。
【0037】
据え付けプロセスが第1の段階S1の間に中止した場合、据え付けプロセスは再び、すなわち第1の段階S1で開始する。第1の段階S1の中止条件に達するまでのトルクMが推定されるか、または、各回転衝撃の回転角δΦが判定され、その後、後続の段階が続く。
【0038】
据え付けプロセスが第2の段階S2中に中止した場合、欠落した回転衝撃のみが実行される。この目的のために、制御方法は、すでに実行された回転衝撃の数をログに記憶する。継続のために、指定された回転衝撃の数Nは、ログに記憶された回転衝撃の数だけ減らされる。緩和段階S3が続いてもよい。
【0039】
緩和段階S3中に据え付けプロセスが中断された場合、これは中止前にすでに実行された期間だけ短縮することができる。この目的のために、制御方法は、中止の場合にすでに実行された緩和段階S3の期間を記憶する。継続のために、既に実行された期間がメモリ25から読み出され、指定された期間から差し引かれる。
【0040】
鋼構造
図6は、土木工学における鋼構造のための2つの構造要素50、51のねじ接続を模式的に示す。2つの構造要素50、51は、1つ以上のねじ接続52により耐荷重様式で接続されている。構造要素50、51は、例えば、梁、パネル、パイプ、フランジ等を含むことができる。構造要素は、鋼または他の金属材料でできている。構造要素50、51は、例示ではそれらの接触平面部分に縮小されている。これらの部分には1つ以上の目53が設けられている。2つの構造要素の目53は、使用者によって互いに位置合わせされる。
【0041】
ねじ接続52は、ねじ山付きロッド55上のねじ頭54とねじナット56とを備えた典型的な構造を有することができる。ねじ山付きロッド55は、目53よりも小さい直径を有するが、ねじ頭54およびねじナット56は、目53よりも大きい直径を有する。他のねじ接続については、ねじ山付きロッドはすでに第1の構造要素50に接続されていてもよい。
【0042】
使用者は、位置合わせされた目53を通してねじ山付きロッド55を挿入する。次に、ねじナット56を装着する。手動締結の場合、使用者は、ねじ接続に対して指定された目標トルクが達成されるまで、トルクレンチを使用してねじナット56を締め付ける。仕様は、ねじ接続の製造元によって指定されているか、鋼構造のための関連規格で指定されている。目標トルクは、負荷、特に振動下でねじ接続が緩むことがないことを保証する。他方、ねじナット56を締め付けている間、ねじ山付きロッド55に不必要に負荷をかけたり、最悪の場合、永久に損傷することがあってはならない。
【0043】
トルクレンチでねじ接続52を締め付けることは信頼性が高く堅牢な方法であるが、この方法は手間がかかる。特に、ねじ接続52は、典型的には多くのねじを含むためである。ねじ接続52は、原則として、目標トルクが達成されるまで、古典的な電動ドライバと対応するスイッチオフとを使用して締め付けることができる。しかしながら、使用者は目標トルクに対して必要な保持力を加えることができず、使用者が負傷する危険性がかなりある。
【0044】
「鉄骨構造」制御方法
インパクトレンチ1は、ねじ接続52を据え付けるための堅牢な据え付け方法を実施する。使用者は、構造要素51を互いに位置合わせし、第2の構造要素51を通してねじ山付きロッド55を挿入し、ねじナット56を装着する。
図7に例として示されているように、構造要素50、51は時折、互いの上に平らに置かれない。準備ステップで、使用者は、ねじ接続52の領域で、構造要素50、51が互いの上に平らになることを確保しなければならない。この目的のために、使用者は1つ以上のねじナット56を手で締め付けることができる。締め付けトルクは、ねじ接続52の目標トルクMよりも低いままであり得る。トルクレンチの使用は任意選択である。次に、使用者はインパクトレンチ1を使用してねじ接続52を締め付け、これにより、ねじ接続52を目標トルクMまで締め付ける。構成要素50、51が最初は互いの上に平らに置かれていない場合、インパクトレンチ1は据え付けプロセスを中止し、使用者に準備ステップが欠落または不完全であることを通知する。この点で、使用者は「鋼構造」動作モードを選択し、ねじ接続52のタイプを指定する。
【0045】
据え付け方法のその後の適切な実行に必要とされる複数の制御パラメータが、各タイプのねじ接続52に割り当てられる。制御パラメータは、タイプに応じてメモリ25に記憶される。ねじ接続52の投入または選択に応答して、制御ユニット24は、対応する制御パラメータを読み出す。制御パラメータは、使用者が異なるタイプのねじ接続52を選択するまで保持されることが好ましい。各個別の据え付けの前にねじ接続52を選択する必要は無い。
【0046】
ボタン9が押されていないとき、電動機2は電源、例えばバッテリ6から切断されており、回転しない。インパクトレンチ1は、ボタン9がリリースされるとスタンバイモードになることが好ましい。ボタン9を押すと、据え付け方法が開始される。準備段階では、入力要素28の1つにより使用者が以前にねじ接続52のタイプを選択したかどうかを確認できる。対応する選択がまだ行われておらず、制御パラメータが設定されていない場合、使用者はそうするように促され、インパクトレンチ1は非アクティブのままである。そうでなければ、電動機2は電源に接続される。
【0047】
駆動スピンドル15は、ボタン9を押すことに応じて加速される。スピンドルは目標速度D0に加速される。最初は、ねじ接続52の反作用トルクは、非常に低くなり得るため、衝撃機構3は作動しない。この前段階については、以下でより詳しく説明しない。据え付け方法の第1の段階S11は、衝撃機構3の最初の衝撃から始まる。第1の段階S11の間に、出力スピンドル4によって加えられるトルクMが推定される。第1の段階S11は、推定トルクMが閾値M0を超えるとデフォルトによって終了する。閾値M0は、典型的には、ねじ接続52の目標トルクM9よりも小さい。トルクMは、拡張アンカーを締め付けるための段階S1に関連して説明したように推定される。これに必要とされる制御パラメータは、ねじ接続52用のメモリ25に記憶されている。
【0048】
第2の段階S12は、第1の段階S11の直後に続く。駆動スピンドル15の速度Dは、依然として目標速度D0に制御することができる。第2の段階の間、指定された数N3の回転衝撃が加えられる。回転衝撃の数N3は、拡張アンカーに固有のもう一つの制御パラメータである。ねじ接続52の目標トルクは、回転衝撃の数N3によってほぼ達成される。第2の段階S12は、拡張アンカー35を据え付けるときの第2の段階S2に主として対応する。
【0049】
説明した2段階の「鋼構造」据え付け方法は、互いの上に平らに横たわっているという条件で、2つの鋼構造要素50、51を接続するためにねじ接続52を締め付けるのに適している。第1の段階S11の間、鋼構造要素50、51が互いの上に平らに横たわっているかどうかを推定するテストルーチンC1がアクティブである。テストルーチンC1が、要素が互いの上に平らに横たわっていることを検出した場合、据え付け方法は完了するまで上記の段階で実行される。テストルーチンが、要素が互いの上に平らに横たわっていないことを発見した場合、保護ルーチンS13が実行される。保護ルーチンS13は、簡単な実装で据え付け方法を直ちに中止することができる。インパクトレンチ1のディスプレイ27は、据え付け方法が中止された理由に関して対応する指示を与えることができる。
【0050】
テストルーチンC11は、最初の衝撃(時刻t0)から始まるねじ接続の回転角Φを推定する。経時的な回転角Φの曲線57は、ねじ接続52のための記憶された制御パラメータと比較される。回転角Φは、いくつかの測定点から平均化されることが好ましい。
図8は、回転角Φの曲線57を示す。実質的に段階的に増加する回転角Φは、実際には多くのノイズを有してのみ検出することができる。回転角Φの増加率は、一連のテストから、ねじ接続52の各タイプについて測定することができる。曲線は、ねじ接続52の弾性挙動によって本質的に決定される。構造要素50、51は、互いの上に平らに横たわっている場合、曲線への影響はわずかである。他方、互いの上に平らに横たわっていない構造要素50、51の場合、その剛性および構造要素50、51間のギャップがシステム全体の剛性よりも優勢である。剛性は、典型的には低下する。同じ衝撃力で、回転角Φのより大きな進行が経時的に観察される。制御パラメータは、締め付け中に回転角Φが超えてはならない上限58を記述する。上限58を超えると、要素が互いの上に平らに横たわっていないとして認識される。テストルーチンは、据え付け方法が中止されるように促すS13。上限58は、好ましくは、固定値ではなく、時間とともに、または衝撃の数とともに増加する値である。テストルーチンは、時刻t0における最初の衝撃で起動されることが好ましい。テストルーチンは、好ましくは、所定の時間ΔT後に終了し、例えば、テストルーチンは、第1の段階S11の終わりで終了する。上限58は、一連のテストにより、異なるねじ接続52、特に異なるねじ直径について決定することができる。
【0051】
鋼構造II
代わりの据え付け方法「鋼構造II」は、上述のように第1の段階S11および第2の段階S12を経る。しかしながら、第2の段階S12の回転衝撃の数N8は予め定められていないが、以前の据え付けプロセス中の回転角Φの曲線59から導出される。推定ルーチンS14は、時間tにわたる回転角Φの曲線59をパターン60のセットと比較する(
図10)。パターン60は、鋼構造のねじ接続52を締め付ける際の一連のテストから決定される回転角Φの典型的な曲線である。推定ルーチンS14は、現在の曲線59に最も近いパターン60を決定する。第2の段階S12の回転衝撃の数N8は、ルックアップテーブルのパターン60に割り当てられる。
【0052】
図10は、構造要素51が互いの上に平らに横たわる曲線59の例を示す。例示的なパターン60は、開始部61、中間部62、および終了部63の、3つのセクションを有する。開始部は、第1の勾配の線形曲線を有する。終了部は、第1の勾配よりも小さい2番目の勾配の線形曲線を有する。中間部62は、例えば、単調に減少する勾配を有する指数関数によって記述される。あるいは、中間部は、連続的に単調に減少する勾配を有する他の関数、例えば指数関数、双曲線によって記述することができる。セクション間の移行は滑らかであることが好ましい。パターンには4~6の自由度がある。自由度は、とりわけ、開始部の勾配、終了部の勾配、開始部の持続期間、および中間部の持続期間である。曲線は、カーブフィッティングによりパターンと比較でき、カーブフィッティングでは、例えば最小二乗法を使用して、自由度の数値が変化する。パターン60は、メモリ25内の異なるタイプのねじ接続52に対して便宜的に提供される。使用者は、ねじ接続52を締め付ける前に入力要素28を介してタイプを入力することが好ましい。推定ルーチンS14は、選択されたタイプに属するパターン60への適応を制限する。
【0053】
推定ルーチンS14は、好ましくは、比較のための測定点を得るために、最初の衝撃t0から始まる時間tにわたる回転角Φを記録する。測定ポイントには、測定された回転角Φと関連する時間tが含まれる。回転角Φは、連続する回転衝撃間の駆動スピンドル15の回転角に基づいて推定することができる。時間記録は、回転角Φの時系列記録によって近似することができる。測定ポイントは、中間メモリに記憶することができる。
【0054】
推定ルーチンS14は、パターン60を測定点に適合させる。調整の有意義な結果を得るために、これは、最小数の回転衝撃の後に実行されることが好ましい。また、第2の段階S12の開始時に、すなわち推定トルクMが閾値M0を超えるときに適合を実行することが有利であることが証明されている。インパクトレンチ1の計算能力によって許される限り、適合は繰り返し実行することができる。あるいは、推定ルーチンS14は1回のみ実行される。
【0055】
推定ルーチンS14は、測定点からのパターン60の偏差が指定された許容範囲内にあるときに完了する。指定された数の回転衝撃または指定された持続期間の後、パターンが公差から逸脱するか、パターンの終了部の測定ポイントの最小数がアンダーショットになると、エラーメッセージが出力され、据え付け方法が中止する。
【0056】
決定されたパターン60は、ねじ接続52の弾性挙動に関する情報を提供する。弾性挙動に基づいて、第2の段階S12に必要とされる回転衝撃の数N8を導出することができる。一実施形態では、パターン60に関連付けられたN8の値が記憶される。ルックアップテーブルの代わりに、アルゴリズムは数値から目標数N8を決定することができる。推定ルーチンS14が第2の段階S12の回転衝撃の目標数N8を決定するとすぐに、第2の段階S12の目標数N8が設定される。据え付け方法は、第1の段階S11から第2の段階S12への変化から開始して加えられる回転衝撃の数をカウントする。数N8に達するとすぐに、据え付け方法は終了する。第2の段階S12の開始は、目標数N8が設定される前であることが好ましい。
【0057】
第1の段階S11から第2の段階S12への変化は、反作用トルクMの推定値に基づいている。この推定値は、重大な測定誤差の対象となる。一実施形態は、パターン60に基づいて、どの回転衝撃64で閾値M0を超えたかを判定する。第1の段階S11から第2の段階S12への以前の変化は、回転衝撃64以外の回転衝撃で発生した可能性がある。推定ルーチンS14は、偏差に従って目標数N8を適合させることができる。